説明

成形用ポリイミドフィルム、その製造方法並びに成形品

【課題】軽量で表面平滑性、安全性、成形性、耐熱性および取り扱い性が優れ、照明機器用反射体基材として適した成形用ポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】芳香族テトラジカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを反応して得られる熱可塑性ポリイミドからなるフィルムであって、粘弾性の貯蔵弾性率(E’)の最低粘弾性率が10Pa以下で、且つガラス転移温度(E”)A時の引張り伸度が150%以上であることを特徴とする成形用ポリイミドフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば自動車のヘッドランプやデンタルミラ−及び手術灯などのランプリフレクタ−用の照明機器用反射体基材として使用する成形フィルム、その製造方法及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のヘッドランプ(前照灯)やフォグランプの反射体並びに医療用干渉膜反射体(手術灯、デンタルミラ−)としては、ガラス、アルミニウム等の金属およびポリフェニルサルファイドや不飽和ポリエステル樹脂、ポリエーテルイミドなどの樹脂を射出成形体また圧縮成形体などからなる反射体基材に、反射物質としてアルミニウム、ニッケル、ニッケル−クロム、干渉膜としてダイクロイック蒸着などによって膜を形成したものが主として用いられている。
【0003】
すなわち、自動車のヘッドランプ(前照灯)やフォグランプの反射体並びに医療用干渉膜反射体(手術灯、デンタルミラー)には、光源としてハロゲン球およびキセノン球、高輝度LEDなどの電球が使用され、電球の接続部の温度は200℃以上に加熱されることがあるため、熱変形を起こさない金属、あるいはガラス繊維や炭酸カルシウムなどの無機強化剤を混入することにより耐熱性を向上させたプラスチックの射出成形体また圧縮成形体などが使用されてきた。
【0004】
しかるに、ガラスを反射体基材とするものは、重量がおおきいことおよび破損しやすいことなどの問題があった。また、金属および強化樹脂成形体を反射体基材とするものは、重量が大きいことに加えて、反射鏡面性能(平滑性)を向上させるために、反射物質を蒸着する前に樹脂コートなどの二次加工を必要とし、製造加工数が多いことなどの問題を有していた。
【0005】
しかも、強化樹脂成形体を反射体基材とするものは、金属を反射体基材とするものに比較し軽量であるが、基材強度の観点、また、成形技術上の制約から相当の肉厚を必要とするため、基材自体の放熱性が低く、プロジェクター型などの蓄熱しやすい構造を持つランプにおいては、形状保持に耐熱的な不安があり、またハウジング内の温度上昇を助長して電球自身の寿命を短くするという問題があった。
【0006】
さらに、強化樹脂成形体を反射基材とするものは、ランプの点灯加熱時に塩素化合物などのガスを発生することがあり、このガスがヘッドランプなどの前面レンズ、反射面に付着凝固して曇らせ、ランプの照度を低下させるという問題を包含していた。
【0007】
一方、アルミニウム蒸着により鏡面処理されたフィルムシートからなるシート製反射体(例えば、特許文献1参照)が知られており、このシート製反射体は鏡面性を得るための脱脂などの前処理が不要であるという利点を有しているが、ここで用いられるフィルムシートは、耐熱性に劣るポリエチレンであることから、このシート製反射体をハロゲン球などの高発熱ランプを用いたヘッドランプなどの反射体として適用することは、耐熱形状保持力の点で不可能であった。
【0008】
また、ポリイミド樹脂およびポリエーテルケトン製フィルムからなる反射体基材に可視光反射赤外線透過多層膜を形成した反射鏡(例えば、特許文献2参照)が知られており、この反射鏡は破損しにくさなどに加え、ポリイミド樹脂などを利用することによりハロゲン球などの発熱にも耐え得るものであるが、この反射鏡は可視光反射赤外線透過多層膜を基材上に形成したものであって、自動車用ヘッドランプおよびフォグランプの反射体としては実用出来ないものであった。さらに、「反射体基材としてポリイミド樹脂などを使用することによりハロゲン球などの発熱にも耐え得る」という特徴は、成形時においては、型加熱や冷却に長時間を要するため成形時間が長くなり、コスト面、量産面で実用に適さない事を意味するばかりか、ガラス転移点の低い熱可塑性フィルムを使用した場合には、耐熱性に劣ることが問題であった。
【特許文献1】:実公昭62−10887号公報
【特許文献2】:特公平5−88481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0010】
したがって、本発明の第1の目的は、軽量で表面平滑性、安全性、成形性、耐熱性および取り扱い性が優れた成形用ポリイミドフィルムを提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、反射層形成時の前処理が不要で大量生産に適し軽量で鏡面性が高く、耐熱性、放熱性、安全性および取り扱い性が優れると共に低コストかつ高品質の成形体、特に照明機器用反射体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため本発明によれば、芳香族テトラジカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを反応して得られる熱可塑性ポリイミドからなるフィルムであって、粘弾性の貯蔵弾性率(E’)の最低粘弾性率が10Pa以下で、且つガラス転移温度(E”)A時の引張り伸度が150%以上であることを特徴とする成形用ポリイミドフィルムが提供される。
【0013】
なお、本発明の成形用ポリイミドフィルムにおいては、ガラス転移温度(E”)Aと最低粘弾性率(E’)を示す温度Bとの温度差B−Aが20℃以上150℃以下であること、芳香族テトラカルボン酸二無水物および芳香族ジアミンのいずれかの分子構造に、下記式(I)で表されるエーテル結合を1個以上含むこと、
【0014】
【化1】

【0015】
ただし、式中のRは、
【0016】
【化2】

【0017】
のいずれかの基を、Rは、
【0018】
【化3】

【0019】
から選ばれたいずれかの基を示す。
成形性評価用四角錘金型のh(高さ)/D(一辺の長さ)比で 0.75で転写率80%以上であることが、いずれも好ましい条件として挙げられる。
【0020】
また、本発明の上記成形用ポリイミドフィルムの製造方法は、フィルムのガラス転移温度(E”)よりも30℃以上高い温度でフィルムを予熱してから、金型温度をガラス転移温度(E”)で成形し、次いでガラス転移温度(E”)から10℃以上低い好ましくは、50℃低い温度まで冷却して成形品を取り出すこと特徴とする。
【0021】
さらに、本発明の成形体は、上記の成形用ポリイミドフィルムを用いたことを特徴とし、反射面を形成する本体部、外フランジ部および内フランジ部を有する照明機器用反射体基材である場合に最良の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば以下に説明するとおり、軽量で表面平滑性、安全性、成形性、耐熱性および取り扱い性が優れた成形用ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0023】
また、反射層形成時の前処理が不要で大量生産に適し軽量で鏡面性が高く、耐熱性、放熱性、安全性および取り扱い性が優れると共に低コストかつ高品質の成形体、特に照明機器用反射体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明について詳述する。
【0025】
まず、本発明の成形用ポリイミドフィルムについて説明する。
【0026】
本発明の成形用ポリイミドフィルムは、芳香族テトラジカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを反応して得られる熱可塑性ポリイミドからなるフィルムであって、粘弾性の貯蔵弾性率(E’)の最低粘弾性率が10Pa以下で、且つガラス転移温度(E”)A時の引張り伸度が150%以上であることを特徴とする。
【0027】
ここで、フィルムの最低粘弾性率が10Paを越えると柔軟性が無く転写性が甘くなり、ガラス転移温度(E”)A時の引張り伸度が150%未満では、フィルムが十分深絞り成形出来なくなり、転写性が劣る傾向が招かれるため好ましくない。
【0028】
また、本発明の成形用ボリアミドフィルムは、ガラス転移温度(E”)Aと最低粘弾性率(E’)を示す温度Bとの温度差B−Aが、フィルムの生産性、転写性、耐熱性を考慮して20℃以上150℃以下であることが望ましい。
【0029】
本発明の成形用ポリイミドフィルムを構成するポリイミドは、1ユニットの重量平均分子量が420以上であるポリアミック酸を閉環させることによって得られたポリイミドからなることが望ましい。ポリイミドフィルムの化学構造に注目した場合、上記式(I)で示される構造単位を含んでいることが好ましく、この構造単位が全構成単位の50%以上であることがより好ましい。その他の構造単位については、特に限定されない。
【0030】
本発明の芳香族ポリイミドフィルムは、通常公知の方法により製造することができ、その一例を挙げれば、ポリアミック酸を溶液状態のまま支持体上にキャストして自己支持性のポリアミック酸フィルムを得た後、前記ポリアミック酸を加熱イミド化することによって製造することができる。
【0031】
上記のポリアミック酸溶液とは、1種類以上のジアミン成分と、1種類以上のテトラカルボン酸二無水物とを重合させることによって得られるものである。
【0032】
ポリアミック酸溶液の重合方法としては、ジアミン化合物を溶媒中に入れた後、反応成分に対して1種類以上のテトラカルボン酸二無水物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、さらにジアミン化合物を添加し、続いて1種類以上のテトラカルボン酸二無水物を全ジアミン成分と全テトラカルボン酸二無水物成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法、および1種類以上のテトラカルボン酸二無水物を溶媒中に入れた後、反応成分に対してジアミン化合物が95〜105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、1種類以上のテトラカルボン酸二無水物を添加し、続いてジアミン化合物を全ジアミン成分と1種類以上のテトラカルボン酸二無水物成分とがほぼ等量になるよう添加して重合する方法などが挙げられる。
【0033】
上記ポリアミック酸の具体例としては、ジアミノジフェニルエーテル、1,3ビス−(4アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、フェニレンジアミンなどの芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸酸二無水物に代表されるピロメリット酸類や、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸またはその二無水物や3,3’−4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸またはその二無水物などの2個以上のベンゼン環を有する芳香族テトラカルボン酸類化合物とを、溶媒中で重合させることによって得られ、熱可塑性ポリイミドを生成するものが挙げられる。
【0034】
上記の重合で使用する溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンおよびジメチルスルホンなどが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0035】
上記の重合で得られるポリアミック酸は、前記溶媒中に10〜30重量%の割合となるように調整するのが一般的である。
【0036】
転写率に関しては、成形性評価用四角錘金型高さ一定で、一辺の長さの違う金型、h(高さ)/d(一辺の長さ)比が、0.5、0.75、1.0.1.5の四種類について成形を行いその金型の高さh’と成形の高さ比を転写率とした。
転写率(%)=h成形品高さ/h’(金型高さ) ×100
【0037】
次に、本発明の成形用ポリイミドフィルムを得る方法の一例を説明する。
【0038】
まず、押出し口金を使用して、ポリアミック酸溶液を支持体上にキャストして自己支持性のポリアミック酸フィルムを得る。次いで、得られたポリアミック酸フィルムの端部を固定し、200℃から400℃の温度で熱処理を行うことによりポリイミドゲルフィルムを得る。
【0039】
なお、この熱処理工程において、2軸延伸を行うことが、ポリイミドフィルムの機械特性・等方性を向上させる上で好ましい。延伸倍率については、特に限定されるものではないが、フィルム走行方向に1.05〜1.5、フィルム走行方向に直行する方向に1.5から2.0の倍率で延伸するのが一般的である。
【0040】
また、上記において、キャストとは、ポリアミック酸を支持体上に展開することを意味する。キャストの一例としては、バーコート、スピンコート、あるいは任意の空洞形状を有するパイプ状物質からポリアミック酸を押し出し、支持体上に展開する方法が挙げられる。
【0041】
得られたポリアミック酸を環化させて熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムにする際には、脱水剤と触媒を用いて脱水する化学閉環法、熱的に脱水する熱閉環法、あるいはその両者を併用した閉環法のいずれで行ってもよい。
【0042】
化学閉環法で使用する脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、フタル酸無水物などの酸無水物などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。また、触媒としては、ピリジン、ピコリン、キノリンなどの複素環式第3級アミン類、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、N,N−ジメチルアニリンなどの第3級アミン類などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0043】
このようにして得られるポリイミドフィルムは厚みについては、特に限定されるものではないが、25μm〜250μmであることが好ましく、より好ましくは75μm〜125μmである。
【0044】
なお、本発明では、上記の製造方法において、フィルムのガラス転移温度(E”)よりも30℃以上高い温度でフィルムを予熱してから、金型温度をガラス転移温度(E”)で成形し、次いでガラス転移温度(E”)から10℃以上低い好ましくは、50℃低い温度まで冷却して成形品を取り出すことが重要である。
【0045】
このように、フィルムの成形温度と成形後に冷却して取り出し可能となる温度とを近接させることにより、成形から取り出しまでの時間を短くすることができる上、コストを低減することができるからである。
【0046】
かくして得られる本発明の成形用ポリイミドフィルムは、軽量で表面平滑性、安全性、成形性、耐熱性および取り扱い性が優れているため、高品質の成形体、特に照明機器用反射体としての用途に好ましく適用することができる。
【0047】
また、本発明の成形用ポリイミドフィルムを使用してなる成形体、特に照明機器用反射体は、反射層形成時の前処理が不要で大量生産に適し軽量で鏡面性が高く、耐熱性、放熱性、安全性および取り扱い性が優れると共に低コストかつ高品質であることから、たとえば自動車のヘッドランプやデンタルミラー及び手術灯などのランプリフレクターとして極めて有用である。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0049】
なお、上記及び以下の実施例における各種特性の評価は、以下に述べる方法にしたがって行った。
【0050】
[貯蔵弾性率:E’]
セイコ−インスツルメント社のEXTORA−6000にて、周波数2KHz、昇温速度2℃/minにて測定を行った。貯蔵弾性カーブにおける最低点を最低粘弾性率とした。
【0051】
[ガラス転移温度:Tg]
セイコ−インスツルメント社のEXTORA−6000にて、周波数2KHz、昇温速度2℃/minにて測定を行った。得られた損失弾性率カーブのE”の変曲点をTgとした。
【0052】
[引っ張り伸度]
精密万能材料試験機2005型 インテスコ社製を使用し、三井化学ダンベル試験片について、引っ張り速度:300mm/minにて、試験温度をフィルムのガラス転移温度に最も近い220、270,290、320℃から選択して、引っ張り試験に供した。
【0053】
[成形性評価]
各フィルムの成形は、高さ一定の四角錐の1辺長さの比、h/dが表2に示したように異なる4種の型を用いて、真空プラス圧空アシスト成形することにより比較した。
【0054】
成形性判定基準は、成形品高さ(L)/金型高さ(L0)=90%以上転写を◎、80%以上転写を○とした。それ以下は×とした。
【0055】
ただし、成形条件については、
フィルム予熱:最低粘弾性温度
成型温度:Tg(E”)温度
取り出し温度:Tg(E”)−50℃
とした。
【0056】
[実施例1]
DCスターラを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン36.7g(89.52mmol)、N,N’−ジメチルアセトアミド230.823gを入れ、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。
【0057】
30分後から1時間かけて3,4,3’、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物11.538g(35.80mmol)を数回に分けて投入して1時間撹拌した後、ピロメリット酸二無水物11.129g(51.03mmol)を数回に分けて投入した。 さらに1時間撹拌した後、ピロメリット酸二無水物N,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6重量%)9.763gを30分かけて滴下し、さらに1時間撹拌した。
【0058】
ここで得られたポリアミック酸は4000ポイズであった。得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをβ−ピコリン/無水酢酸混合溶液(50:50)に5分間浸しイミド化させた。
【0059】
得られたポリイミドゲルフィルムを、200℃30分、300℃20分、400℃5分で熱処理を行いポリイミドフィルムを得た。
【0060】
得られたフィルムの厚みは126μmであった。
【0061】
得られたフィルムを使用し、真空・圧空成形により成形性評価を行うと共に転写性を算出した。また、粘弾性率、高温引っ張り試験を行った。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0062】
[実施例2]
DCスターラを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン30.027g(102.725mmol)、N,N’−ジメチルアセトアミド229.506gを入れ窒素雰囲気下、室温で撹拌した。
【0063】
30分後から1時間かけて4,4オキシジフタール酸二無水物25.492g(82.18mmol)を数回に分けて投入して1時間撹拌した後、ピロメリット酸二無水物3.809g(17.463mmol)を数回に分けて投入した。さらに1時間撹拌した後、ピロメリット酸二無水物N,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6重量%)11.164gを30分かけて滴下し、さらに1時間撹拌した。
【0064】
ここで得られたポリアミック酸は4000ポイズであった。
【0065】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをβ−ピコリン/無水酢酸混合溶液(50:50)に5分間浸しイミド化させた。
【0066】
得られたポリイミドゲルフィルムを200℃30分、300℃20分、400℃5分で熱処理を行いポリイミドフィルムを得た。
【0067】
得られたフィルムの厚みは125μmであった。
【0068】
得られたフィルムを使用し、真空・圧空成形により成形性評価を行うと共に転写性を算出した。また、粘弾性率、高温引っ張り試験を行った。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0069】
[実施例3]
DCスターラを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル26.104g(130.388mmol)、N,N’−ジメチルアセトアミド229.506gを入れ窒素雰囲気下、室温で撹拌した。
【0070】
30分後から1時間かけて4,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物21.098g(71.71mmol)を数回に分けて投入して1時間撹拌した後、ピロメリット酸二無水物4.835g(22.166mmol)を数回に分けて投入した。さらに1時間撹拌した後、ピロメリット酸二無水物N,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6重量%)14.22gを30分かけて滴下し、さらに1時間撹拌した。
【0071】
ここで得られたポリアミック酸は3500ポイズであった。
【0072】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをβ−ピコリン/無水酢酸混合溶液(50:50)に5分間浸しイミド化させた。
【0073】
得られたポリイミドゲルフィルムを200℃30分、300℃20分、400℃5分で熱処理を行いポリイミドフィルムを得た。
【0074】
得られたフィルムの厚みは127μmであった。
【0075】
得られたフィルムを使用し、真空・圧空成形により成形性評価を行うと共に転写性を算出した。また、粘弾性率、高温引っ張り試験を行った。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0076】
[実施例4]
DCスターラを備えた500mlセパラブルフラスコ中に、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン23.538g(80.52mmol)、N,N’−ジメチルアセトアミド229.506gを入れ窒素雰囲気下、室温で撹拌した。
【0077】
30分後から1時間かけて3,4,3’、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物31.459g(97.63mmol)を数回に分けて投入してさらに1時間撹拌した後、3,4,3’、4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物N,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6重量%)11.164gを30分かけて滴下し、さらに1時間撹拌した。
【0078】
ここで得られたポリアミック酸は4000ポイズであった。
【0079】
得られたポリアミック酸の一部をポリエステルフィルム上に取り、スピンコーターを用いて均一な膜を形成した。これをβ−ピコリン/無水酢酸混合溶液(50:50)に5分間浸しイミド化させた。
【0080】
得られたポリイミドゲルフィルムを200℃30分、300℃20分、400℃5分で熱処理を行いポリイミドフィルムを得た。
【0081】
得られたフィルムの厚みは125μmであった。
【0082】
得られたフィルムを使用し、真空・圧空成形により成形性評価を行うと共に転写性を算出した。また、粘弾性率、高温引っ張り試験を行った。これらの結果を表1及び表2に示す。
【0083】
[比較例1]
東レ・デュポン製カプトンEN(PMDA/BPDA//ODA/PPD)100μmフィルムを用いて、粘弾性の測定、高温引っ張り伸度の測定と成形性評価用金型を用いての評価を行った。
【0084】
ポリマ−構造中にエーテル結合が含まれているが、Tgでの高温伸度が低く転写性は悪かった。結果を表1、2に併せて示す
[比較例2]
東レ・デュポン製カプトンH(PMDA//ODA)100μmフィルムを用いて粘弾性の測定、高温引っ張り伸度の測定と成形性評価用金型を用いての評価を行った。
【0085】
非熱可塑ポリイミドのためTg、最低粘弾性を示さなかったばかりか、成形は不可能であった。結果を表1、2に併せて示す
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の成形用ポリイミドフィルムは、軽量で表面平滑性、安全性、成形性、耐熱性および取り扱い性が優れているため、高品質の成形体、特に照明機器用反射体としての用途に好ましく適用することができる。
【0089】
また、本発明の成形用ポリイミドフィルムを使用してなる成形体、特に照明機器用反射体は、反射層形成時の前処理が不要で大量生産に適し軽量で鏡面性が高く、耐熱性、放熱性、安全性および取り扱い性が優れると共に低コストかつ高品質であることから、たとえば自動車のヘッドランプやデンタルミラー及び手術灯などのランプリフレクターとして極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族テトラジカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンを反応して得られる熱可塑性ポリイミドからなるフィルムであって、粘弾性の貯蔵弾性率(E’)の最低粘弾性率が10Pa以下で、且つガラス転移温度(E”)A時の引張り伸度が150%以上であることを特徴とする成形用ポリイミドフィルム。
【請求項2】
ガラス転移温度(E”)Aと最低粘弾性率(E’)を示す温度Bとの温度差B−Aが150℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の成形用ポリイミドフィルム。
【請求項3】
芳香族テトラカルボン酸二無水物および芳香族ジアミンのいずれかの分子構造に、下記式(I)で表されるエーテル結合を1個以上含むことを特徴とする請求項1または2に記載の成形用ポリイミドフィルム。
【化1】

ただし、式中のRは、
【化2】

のいずれかの基を、Rは、
【化3】

から選ばれたいずれかの基を示す。
【請求項4】
成形性評価用四角錐金型のh(高さ)/D(一辺の長さ)比で 0.75で転写率80%以上の転写性の優れた請求項1のポリイミドフィルム。
【請求項5】
フィルムのガラス転移温度(E”)よりも30℃以上高い温度でフィルムを予熱してから、金型温度をガラス転移温度(E”)で成形し、次いでガラス転移温度(E”)から10℃以上低い好ましくは、50℃低い温度まで冷却して成形品を取り出すこと特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形用ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載の成形用ポリイミドフィルムを用いたことを特徴とする成形体。
【請求項7】
反射面を形成する本体部、外フランジ部および内フランジ部を有する照明機器用反射体基材である請求項6記載の成形体。

【公開番号】特開2008−144049(P2008−144049A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333208(P2006−333208)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000219266)東レ・デュポン株式会社 (288)
【Fターム(参考)】