説明

成形用樹脂材料及び人工芝のリサイクル方法

【課題】成形後に砂が残存していても砂による違和感を軽減することができる成形用樹脂材料及び人工芝のリサイクル方法を提供する。
【解決手段】人工芝10の芝葉1を用いた場合には芝葉1に付着した充填材層4に含まれる砂が成形用樹脂材料に混入するのが不可避であるが、成形用樹脂材料に更に砂以外のフィラーが配合されていることで、配合された粉末状フィラーによって具備される表面の性状により砂の存在感が薄められて、成形後の砂による違和感を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの人工芝を活用した成形用樹脂材料及び人工芝のリサイクル方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工芝は、天然芝と比較して耐久性が高く、メンテナンスに係る費用を低減できるという利点があるが、使用環境の過酷な場所に用いられる場合や、長期間使用した場合には再生が行われないことから張り替えを行う必要が生じてくる。張り替えられて使用済みとなった人工芝は、産業廃棄物として埋め立てされるのが一般的ではあるが、リサイクル方法について種々の模索がなされてきている。
【0003】
例えば、パイルが基材に植設され、上記パイルが接着剤により上記基材に固定されており、上記パイル及び上記基材が熱可塑性樹脂からなり、上記接着剤には熱可塑性を示さないポリマー材料からなる非熱可塑性樹脂が用いられている人工芝を再資源化するリサイクル方法において、上記接着剤を劣化させる接着剤劣化工程を含むリサイクル方法、並びに当該リサイクル方法が適用された人工芝を細片化もしくはペレット化してなるリサイクル材が開示されている(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−192120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような従来の人工芝のリサイクル方法によるリサイクル材では、単にリサイクルした人工芝をペレット化するのみであり、かかる成形用樹脂材料を用いたとしても残存する砂により表面のざらつき感が生じて樹脂成形品としては違和感のあるものとなる恐れがあった。また砂を完全に分離しようとすると、莫大な手間や費用がかかり、完全な分離は全く現実性に乏しいものであった。
【0006】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、成形後に砂が残存していても砂による違和感を軽減することができる成形用樹脂材料及び人工芝のリサイクル方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる成形用樹脂材料は、砂を含む充填材を用いていて設置面から取り外された人工芝の、少なくとも芝葉の部分を用いると共に、更に砂以外の粉末状フィラーが配合されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係わる成形用樹脂材料によれば、人工芝の芝葉を用いた場合には、芝葉に付着した砂が成形用樹脂材料に混入するのが不可避であるが、成形用樹脂材料に更に砂以外のフィラーが配合されていることで、配合された粉末状フィラーによって具備される表面の性状により砂の存在感が薄められて、成形後の砂による違和感を軽減することができる。
【0009】
また前記粉末状フィラーは、木粉、シリカ粉、炭酸カルシウム、金属粉、雲母片、金属水酸化物粉及びガラスビーズからなる群から選ばれた少なくとも1つであれば、これら粉末状フィラーにより砂の存在感が薄められると共に、各々が配合される事による特有の性状が発現されるようにできる。
【0010】
粉末状フィラーとして木粉を用いることで木質感を得ることができ、シリカ粉を用いれば表面に適度なざらつきを生じさせることができ、炭酸カルシウムを用いれば増容と共に強度の向上を図ることができ、金属粉を用いれば金属調に、雲母片を用いればマイカ調にすることができ、金属水酸化物粉を用いれば難燃性を備えさせることができ、更にはガラスビーズを用いれば再帰反射性を備えさせることができる。
【0011】
また本発明に係る人工芝のリサイクル方法は、砂を含む充填材を用いた人工芝を設置面から取り外し、該人工芝から充填材とを分離すると共に少なくとも芝葉の部分と砂以外の粉末状フィラーとを熱成形により混練し、成形用樹脂材料を形成することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る人工芝のリサイクル方法によれば、不要となった人工芝を有効に活用して成形用樹脂材料を得ることができるが、成形用樹脂材料に更に砂以外のフィラーが配合されていることで、配合された粉末状フィラーによって具備される表面の性状により砂の存在感が薄められて、成形後の砂による違和感を軽減することができる。
【0013】
更にまた本発明に係る人工芝のリサイクル方法は、粒状のゴムと砂とを含む充填材を用いた人工芝を設置面から取り外し、人工芝から充填材を分離すると共に、該充填材の粒状のゴムと砂とを合成樹脂に配合し、舗装材として用いることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る人工芝のリサイクル方法によれば、不要となった人工芝を有効に活用して舗装材を得ることで、人工芝のリサイクルを促進できるが、舗装材は上面を車両や歩行者等が通過するものであることから、砂が残存していても砂による違和感がなく、リサイクルとして用いる材料としては好適なものとなり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係わる成形用樹脂材料によれば、人工芝の芝葉を用いた場合には、芝葉に付着した砂が成形用樹脂材料に混入するのが不可避であるが、成形用樹脂材料に更に砂以外のフィラーが配合されていることで、配合された粉末状フィラーによって具備される表面の性状により砂の存在感が薄められて、成形後の砂による違和感を軽減することができる。
【0016】
また本発明に係る人工芝のリサイクル方法によれば、不要となった人工芝を有効に活用して成形用樹脂材料を得ることができるが、成形用樹脂材料に更に砂以外のフィラーが配合されていることで、配合された粉末状フィラーによって具備される表面の性状により砂の存在感が薄められて、成形後の砂による違和感を軽減することができる。
【0017】
更にまた本発明に係る人工芝のリサイクル方法によれば、不要となった人工芝を有効に活用して舗装材を得ることで、人工芝のリサイクルを促進できるが、舗装材は上面を車両や歩行者等が通過するものであることから、砂が残存していても砂による違和感がなく、リサイクルとして用いる材料としては好適なものとなり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る人工芝のリサイクル方法が適用される人工芝の、実施の一形態を示す縦断面図である。人工芝10は、地表面20上にその自重により載置されて設けられたものであり、人工芝10は、ポリプロピレン樹脂等からなる基布2に、ポリエチレン樹脂やナイロン樹脂製の芝葉1が適宜間隔をおいて植設され、基布2の裏面にはウレタン樹脂やSBR樹脂等によりバッキング層3が設けられて芝葉1が固定される。基布2上にはゴムチップと砂とが重量比で1:1にて混合された充填材4が充填され、芝葉1は充填材4の上面から上方に芝葉1の長さの1/2〜1/3程度が突出されて設けられている。
【0020】
かかる芝葉1は、人工芝10上面を歩行者が通行したり、スポーツ競技等により人間が走ったりした場合に芝葉1が千切れたり、摩耗したり、芝葉1が割れて所定の性能が失われたりした場合には、芝葉1のみの交換は困難であることから、人工芝10を全て取り外し張り替えを行う必要が生じてくる。かかる人工芝10のリサイクルにおいては、まず人工芝10が地表面20から取り外され、人工芝10から充填材4が分離される。分離された充填材4の内、砂については再度の利用が可能であるが、ゴムチップについては劣化していることから通常燃焼させてその熱を利用するサーマルリサイクルがなされる。
【0021】
またゴムチップ、すなわち粒状のゴムと、砂については、合成樹脂に配合して舗装材として用いてもよい。ゴムを配合した弾性舗装材としては、通常ウレタン系樹脂等をバインダーとして、ゴムチップ及び硅砂を配合して形成するが、このゴムチップ及び硅砂として人工芝に使用し不要となった充填材4を用いることで、人工芝のリサイクルを図ることができると共に舗装材用の材料を簡便に得ることができる。バインダーとして用いる合成樹脂としては、ウレタン系樹脂の他に、エポキシ系樹脂、アスファルト等を用いることができる。またバインダーは、粒状のゴム及び砂が約1:1で配合された充填材100リットルに対し、0.5〜3.0kg程度配合するのが好適であり、かかる配合比に応じて充填材4に加え、新たに粒状のゴム又は砂を追加して舗装材を形成するようにしてもよい。
【0022】
芝葉1、基布2及びバッキング材3については、合成樹脂製であることから軟化又は溶融により成形用樹脂材料を形成することができる。ここで芝葉1と基布2との間には、分離しきれない充填材4の砂が残存するのが不可避であるが、芝葉1、基布2及びバッキング材3を用いて成形用樹脂材料を形成する際に、木粉等の粉末状フィラーを配合して軟化又は溶融することで粉末状フィラーが配合されたものとできる。芝葉1、基布2及びバッキング材3については、同時に軟化又は溶融させれば分別の手間がなく簡便に成形用樹脂材料を形成できるが、バッキング材3を溶剤等を用いて取り除いて基布2から芝葉1を引き抜いて芝葉1のみを樹脂成分として用いるようにしてもよく、またバッキング材3のみを取り除いて芝葉1と基布2とを樹脂成分として用いるようにしてもよい。
【0023】
芝葉1は、耐久性やナイロン樹脂やポリエチレン樹脂等が好適に用いられてきているが、成形用樹脂材料の形成において好適なのはポリエチレン樹脂である。また基布2についてはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が好適に用いられるが、芝葉1との成形用樹脂材料の形成においては、芝葉1と同じ材料を用いて形成すれば物性や成形の容易さ等で利点があり好ましい。バッキング材3については、SBR等のゴム材料や液状のウレタン系樹脂を塗布及び硬化させて形成するのが好ましいが、適宜の材料を用いて形成してよく、またバッキング材3を用いることなく、芝葉1を基布2に挿通するのみとしたり、また溶着等により固定するようにしたりしてもよい。
【0024】
少なくとも芝葉1を用いて成形用樹脂材料を形成するには、軟化又は溶融させて粉末状フィラーを配合できれば適宜の方法により行ってよいが、押出機を用いて溶融及び混練し、押出ダイから押し出された紐状物を細断してペレット状にすれば簡便に形成できると共に、成形用樹脂材料を用いた成形も簡便なものとでき好ましい。
【0025】
更には、攪拌衝撃翼を装備するミキサーを用いて芝葉1等の樹脂成分と粉末状フィラーとを溶融及び混練するようにしてもよい。かかるミキサーを用いることで、例えば木粉を用いた場合には、攪拌衝撃翼の回転により、投入された木粉に発生する摩擦熱により木粉が乾燥され、更に投入される芝葉1等が軟化又は溶融されると共に、撹拌衝撃翼によって混練され、こちらも簡便に成形用樹脂材料を得ることができる。
【0026】
成形用樹脂材料において、粉末状フィラーの配合量は、樹脂成分100重量部に対し、50〜150重量部程度が好適であるが特に限定されるものではなく、芝葉1等に由来する樹脂成分の物性や成形の容易さに応じて適宜の割合を配合するようにしてよい。また樹脂成分を追加したり、滑剤や可塑剤等の成形助剤を配合したりして成形性を高めることもできる。更にまた粉末状フィラーの粒径は、1〜1500μm程度が好ましく、より好ましくは10〜500μm程度である。
【0027】
成形用樹脂材料は、配合された粉末状フィラーの性状が物性、外観及び触感等として現れることから、木粉を配合したものについては合成木材等として好適に用いられ、またシリカ粉や炭酸カルシウムを配合した場合は樹脂製パレット等の汎用の樹脂材料として、金属粉や雲母片によって光輝性が備えられれば手摺等として、金属水酸化物粉を配合して難燃性が備えられれば難燃性の建材等として、更にまたガラスビーズにより再帰反射性が備えられれば道路標識等として好適に用いることができる。また成形用樹脂材料により内部層を形成し、内部層の外側に別途合成樹脂材料を用いて外部層を形成して成形用樹脂材料を隠蔽し、外観を所望のものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る人工芝のリサイクル方法が適用される人工芝の、実施の一形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 芝葉
2 基布
3 バッキング材
4 充填材
10 人工芝
20 地表面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂を含む充填材を用いていて設置面から取り外された人工芝の、少なくとも芝葉の部分を用いると共に、更に砂以外の粉末状フィラーが配合されていることを特徴とする成形用樹脂材料。
【請求項2】
前記粉末状フィラーは、木粉、シリカ粉、炭酸カルシウム、金属粉、雲母片、金属水酸化物粉及びガラスビーズからなる群から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の成形用樹脂材料。
【請求項3】
砂を含む充填材を用いた人工芝を設置面から取り外し、該人工芝から充填材とを分離すると共に少なくとも芝葉の部分と砂以外の粉末状フィラーとを熱成形により混練し、成形用樹脂材料を形成することを特徴とする人工芝のリサイクル方法。
【請求項4】
粒状のゴムと砂とを含む充填材を用いた人工芝を設置面から取り外し、人工芝から充填材を分離すると共に、該充填材の粒状のゴムと砂とを合成樹脂に配合し、舗装材として用いることを特徴とする人工芝のリサイクル方法。


【図1】
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【公開番号】特開2008−222952(P2008−222952A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66544(P2007−66544)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】