説明

成形素材の検査方法、及び、光学素子の製造方法

【課題】成形素材の検査方法及び光学素子の製造方法において、光学素子の製造不良の発生を抑える。
【解決手段】成形素材の検査方法は、光学素子の材料である成形素材1について上記光学素子の光学機能面へと変形する領域である対応領域1a,1bを確認する対応領域確認工程と、成形素材1を対応領域1a,1b以外の部分である保持領域において保持する保持工程と、保持された成形素材1の少なくとも対応領域1a,1bを検査する検査工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の材料である成形素材を検査する成形素材の検査方法、及び、光学素子を製造する光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形素材から光学素子を製造する光学素子の製造方法として、成形素材を加熱により軟化させ、加圧により変形させ、冷却により硬化させることで、光学素子を製造する手法が用いられている。
【0003】
成形素材を検査する方法としては、それぞれに成形素材が挿入される複数の貫通孔が設けられた上側の板材が下側の板材上の数個〜100個の成形素材を保持し、上下の板材が相対移動することにより、成形素材を同時に一方向に一定距離回転させて目視検査を行う方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−2242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の検査方法のように上下の板材を相対移動させて成形素材を転動させながら全面を検査すると、検査した面が再び板材と接触することになり、成形素材にキズが付いたり、ゴミが付着したりする。
【0006】
外観規格が厳しい光学素子では、数ミクロンの大きさのキズ・ゴミが不良となるため、上記のようなキズ・ゴミのある成形素材から光学素子を製造すると、光学素子の製造不良を招く。なお、成形素材のゴミが成形型に付着することによっても、成形型が劣化するため、光学素子の製造不良を招く。
【0007】
本発明の目的は、光学素子の製造不良の発生を抑えることができる成形素材の検査方法及び光学素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の成形素材の検査方法は、光学素子の材料である成形素材について上記光学素子の光学機能面へと変形する領域である対応領域を確認する対応領域確認工程と、上記成形素材を上記対応領域以外の部分である保持領域において保持する保持工程と、保持された上記成形素材の少なくとも前記対応領域を検査する検査工程と、を有する。
【0009】
また、上記成形素材の検査方法において、保持された上記成形素材を上記対応領域が非接触となるように転動させる転動工程を更に有し、上記検査工程では、上記成形素材を上記転動工程で転動させて検査するようにしてもよい。
【0010】
また、上記成形素材の検査方法において、上記転動工程では、静止状態の第1の治具上で上記成形素材を転動させるようにしてもよい。
また、上記成形素材の検査方法において、上記転動工程では、長手方向の両端に近づくほど上方に位置する側面視円弧状の溝が形成された第2の治具を上記溝の円弧方向に移動させることにより上記成形素材を転動させるようにしてもよい。
【0011】
また、上記成形素材の検査方法において、上記検査工程では、貫通孔が形成された静止状態の第3の治具の上記貫通孔上で静止した上記成形素材を、上記第3の治具を挟んだ両側から検査するようにしてもよい。
【0012】
本発明の光学素子の製造方法は、光学素子の材料である成形素材について上記光学素子の光学機能面へと変形する領域である対応領域を確認する対応領域確認工程と、上記成形素材を上記対応領域以外の部分である保持領域において保持する保持工程と、保持された上記成形素材の少なくとも前記対応領域を検査する検査工程と、検査された上記成形素材を加熱する加熱工程と、加熱された上記成形素材を加圧する加圧工程と、加圧された上記成形素材を冷却する冷却工程と、を有する。
【0013】
また、上記光学素子の製造方法において、検査された上記成形素材を上記保持領域において保持した状態で一対の成形型へ向けて搬送して、上記成形素材を上記一対の成形型間に位置させる搬送工程を更に有するようにしてもよい。
【0014】
また、上記光学素子の製造方法において、上記検査工程では、治具上で上記成形素材を検査し、上記搬送工程では、検査された上記成形素材を上記治具上に載置したまま上記一対の成形型へ向けて搬送するようにしてもよい。
【0015】
また、上記光学素子の製造方法において、上記加熱工程、上記加圧工程、及び上記冷却工程は、上記成形素材が上記治具上に載置された状態で行われるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光学素子の製造不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態における光学素子の製造装置を示す要部断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における成形素材を示す断面図である。
【図3A】本発明の第1実施形態に係る成形素材の検査方法を説明するための治具上の成形素材の断面図である。
【図3B】図3AのA方向矢視図である。
【図3C】本発明の第1実施形態に係る成形素材の検査方法を説明するための治具上の成形素材の平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における搬送工程を説明するための吸着搬送部材の断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る成形素材の検査方法を説明するための治具上の成形素材の側面図である。
【図6A】本発明の第2実施形態における検査時の治具上の成形素材を示す平面図(その1)である。
【図6B】本発明の第2実施形態における検査時の治具上の成形素材を示す平面図(その2)である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る成形素材の検査方法を説明するための位置決め部材上の成形素材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る成形素材の検査方法及び光学素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態における光学素子の製造装置10を示す要部断面図である。
【0020】
図2は、本実施形態における成形素材1を示す断面図である。
図1に示す光学素子の製造装置10は、上型11と、下型12と、位置決め部材13とを備える。上型11及び下型12は、対向して配置された一対の第1の成形型及び第2の成形型の一例である。位置決め部材13は、上型11(第1の成形型)と下型12(第2の成形型)との間に配置される第3の成形型の一例である。
【0021】
上型11は、円柱形状を呈する。上型11の底面中央には、図2に示す成形素材1に凸型形状を転写する凹型の成形面11aが形成されている。なお、本実施形態では、成形素材1は、転動するため、転動可能な形状の一例として球状を呈する。
【0022】
下型12は、円柱形状を呈するベース部12aと、このベース部12aよりも小径な円柱形状を呈する小径部12bとを有する。この小径部12bは、ベース部12aの上端中央から上方に延びる。小径部12bの上端には、成形素材1に凹型形状を転写する凸型の成形面12cが形成されている。
【0023】
位置決め部材13は、リング状を呈する。位置決め部材13の中央には、下方から下型12の小径部12bが挿入される貫通孔13aが形成されている。この貫通孔13aは、小径部分13a−1と、この小径部分13a−1の下端から下方にいくほど径が大きくなる傾斜部分13a−2とを含む。
【0024】
位置決め部材13は、後述する成形工程(加熱工程、加圧工程、及び冷却工程)の開始時点、即ち加熱工程の開始時点において、図2に示すように貫通孔13aの上端で成形素材1を位置決めする。
【0025】
図1に示すように、光学素子100は、上型11の凹型の成形面11aと下型12の凸型の成形面12cとに形状を転写されることでメニスカス形状を呈する。光学素子100の上面側の光学機能面100aは、上型11の凹型の成形面11aに形状を転写される転写面の内側に位置し、底面側の光学機能面100bは、下型12の凸型の成形面12cに形状を転写される転写面の内側に位置する。
【0026】
なお、光学機能面は、光学的特性を発揮しうる部分として形成された面であり、成形型の成形面に形状を転写される転写面の全体、或いは、本実施形態のように転写面の内側に位置する部分である。光学機能面は、転写面の内側に位置する場合、他の転写面よりも、より一層滑らかに(より一層凹凸が少なく)形成されることがある。
【0027】
図2に示すように、成形素材1には、光学素子100の上面側の光学機能面100aへと変形する領域である対応領域1aと、光学素子100の底面側の光学機能面100bへと変形する領域である対応領域1bとが含まれる。対応領域1a,1bは、図3B及び図3Cに二点鎖線(仮想線)で示すように例えば円形状を呈する。
【0028】
対応領域1a,1bは、例えば、シミュレーションにより、或いは、成形素材1にマーキングを施して光学素子100を製造することにより確認することができる(対応領域確認工程)。なお、対応領域確認工程は、例えば、同一の成形素材1から同一の光学素子100を製造する場合など、対応領域1a,1bが判明していれば成形素材1ごとに行わなくとも良い。
【0029】
図3A〜図3Cは、本実施形態に係る成形素材1の検査方法を説明するための治具20上の成形素材1の断面図、図3AのA方向矢視図、及び平面図である。
図3A〜図3Cに示す治具20は、第1の治具の一例であり、例えば平板状を呈する。治具20の上面には、成形素材1を保持する溝21が形成されている。この溝21は、底面部分21aと、この底面部分21aから上面に近づくほど互いに遠ざかるように傾斜した左側面部分21b及び右側面部分21cとを含む。
【0030】
左側面部分21b及び右側面部分21cは、対応領域1a,1bの外側の接触点1d,1eにおいて成形素材1に接触することで、成形素材1を保持する。詳しくは後述するが、成形素材1が溝21に沿って転動するため、接触点1d,1eの軌跡L1,L2は、成形素材1の回転軸Rを中心とする円形状になる。なお、成形素材1は、溝21の左側面部分21b及び右側面部分21cにより保持されるだけでなく、後述する移動アーム32,33によっても保持される。
【0031】
成形素材1に接触する左側面部分21b及び右側面部分21cの表面は、成形素材1の接触点1d,1eと同等以上の表面粗さ(例えば鏡面)であることが望ましい。左側面部分21b及び右側面部分21cの表面が粗いと、成形素材1にキズをつけるおそれが生じ、たとえキズが対応領域1a,1bに直接影響しないとしても、キズができることで成形素材1の粉を発生させコンタミとなる問題が発生するからである。また、治具20は、リング状の部材や3本の棒状の部材など他の形状であっても構わないが、成形素材1との接触面を極力少なくすることが望ましい。治具20以外の部材を後述する転動工程及び検査工程の治具として用いる場合、例えば、移動アーム32,33により成形素材1を同一位置で転動させたり、或いは、成形素材1を例えばエアにより転動させたりすることができる。
【0032】
図3Bに示す外観検査用カメラ31は、撮像手段の一例であり、成形素材1を上方から撮像する。また、外観検査用カメラ31は、溝21の例えば鉛直上方を溝21の長手方向と平行に移動する。
【0033】
図3Cに示す移動アーム32,33は、対応領域1a,1b以外の部分である保持領域の一例として成形素材1を左右両端近傍において保持する。また、移動アーム32,33は、成形素材1を溝21に沿って転動させる。そのため、移動アーム32,33は、溝21の長手方向と平行に移動するとともに、成形素材1を保持した状態で成形素材1とともに回転する。なお、外観検査用カメラ31と移動アーム32,33とは、溝21の長手方向に同期して移動するとよい。
【0034】
以下、成形素材の検査方法について説明する。
まず、上述のとおり、成形素材1の対応領域1a,1bの位置が、例えば、シミュレーションにより、或いは、成形素材1にマーキングを施して光学素子100を製造することにより確認される(対応領域確認工程)。この対応領域確認工程は、成形素材1の検査の都度行わなくともよい。
【0035】
次に、成形素材1が治具20の溝21に載置される。そして、溝21の左側面部分21b及び右側面部分21cは、対応領域1a,1bの外側の接触点1d,1eにおいて成形素材1を保持する(保持工程)。
【0036】
また、移動アーム32,33は、対応領域1a,1bの外側の左右両端近傍において成形素材1を保持した状態で(保持工程)、静止状態の治具20上において成形素材1を溝21の長手方向に沿って転動させる(転動工程)。この際、成形素材1は、対応領域1a,1bが治具20や移動アーム32,33などの部材と非接触で転動する。
【0037】
外観検査用カメラ31は、移動アーム32,33と例えば同期移動して成形素材1を撮像する。これにより、成形素材1は、保持された状態で(本実施の形態では転動工程で転動して)検査される(検査工程)。外観検査用カメラ31は、接触点1d,1eの2つの軌跡L1,L2の間の領域である、回転軸Rを中心とする帯状かつ環状の検査領域1cを撮像するが、対応領域1a,1bを含む領域であればよい。なお、本実施形態では、成形素材1の対応領域1a,1b以外の部分である保持領域は検査していないが、必要に応じて当該保持領域を検査することもできる。また、本実施形態では、撮像手段の一例として外観検査用カメラ31を採用しているが、成形素材1の内部を撮像して検査するようにしてもよい。また、散乱光の撮像、反射光の撮像など、撮像方法は特に限定されない。
【0038】
上記の検査工程は、成形素材1を転動工程で転動させて行われるが、「転動させて検査する」場合には、転動中の成形素材1の検査を行う場合と、転動動作の前後の静止状態の成形素材1の検査を行う場合とが含まれ、これらのうち少なくとも一方の検査を行えばよい。
【0039】
対応領域1a,1bの形状は、上記のとおり例えば円形状を呈するが、対応領域1a,1bの位置は、転動後の姿勢によって変動する。そのため、対応領域1a,1bは、例えば、成形素材1の回転軸Rの位置が一定であれば、検査領域1cと同様に回転軸Rを中心とする帯状かつ環状の領域で対応領域1a,1bを認識してもよい。
【0040】
以下、上述の成形素材1の検査方法(保持工程、転動工程、検査工程等)と同様に光学素子100の製造方法に含まれる、搬送工程並びに成形工程(加熱工程、加圧工程、及び冷却工程)について説明する。
【0041】
図4は、本実施形態における搬送工程を説明するための吸着搬送部材40の断面図である。
図4に示す吸着搬送部材40は、搬送部材の一例であり、円筒形状を呈する。吸着搬送部材40の中央には、成形素材1を吸引する吸引孔41が形成されている。この吸引孔41は、下端から上方にいくほど径が小さくなる傾斜部分41aと、この傾斜部分41aの上端から吸着搬送部材40の上端まで一定の径を有する小径部分41bとを含む。
【0042】
吸着搬送部材40は、図示しない吸引手段に接続され、傾斜部分41aが、対応領域1a,1bの外側の接触点1f,1gにおいて成形素材1に接触することで、成形素材1を保持する。成形素材1の傾斜部分41aとの接触点1f,1gは、例えば、検査領域1cの左右両端(軌跡L1,L2上の位置)又は検査領域1cよりも外側とするとよい。
【0043】
成形素材1に接触する傾斜部分41aの表面粗さも、治具20の左側面部分21b及び右側面部分21cと同様に、成形素材1の接触点1e,1fと同等以上の表面粗さ(例えば鏡面)であることが望ましい。人手によるピンセットなどの他の搬送部材による搬送であっても成形素材1と接触した状態での搬送は、対応領域1a,1b以外の部分である保持領域として、検査領域1cの外側の両端を掴むようにすることが望ましい。
【0044】
傾斜部分41aの表面が粗いと、成形素材1にキズをつけるおそれが生じ、たとえキズが対応領域1a,1bに直接影響しないとしても、キズができることで成形素材1の粉を発生させコンタミとなる問題が発生するからである。
【0045】
検査された成形素材1は、上述のように対応領域1a,1bの外側の接触点1f,1gにおいて吸着搬送部材40により保持された状態で、吸着搬送部材40により図1に示す上型11及び下型12へ向けて搬送され、上型11と下型12との間に載置される(搬送工程)。
【0046】
そして、吸着搬送部材40による吸引が解除されることで、成形素材1は、例えば、上型11と下型12との間に位置する位置決め部材13に載置される。このとき、下型12は、図1に示す位置よりも下方において待機している。成形素材1は、吸着搬送部材40により上型11及び下型12へ向けて搬送された後に、例えば図示しない移送ロボットによって、吸着搬送部材40から位置決め部材13に移送されるようにしてもよい。
【0047】
なお、転動工程及び検査工程で用いた治具20上に載置された成形素材1を上型11及び下型12へ向けて搬送するようにした場合には、吸着搬送部材40(搬送部材)を省略して、搬送部材が成形素材1に接触するのを避けることができる。
【0048】
また、図1及び図2に示すように、位置決め部材(第3の成形型)13を治具として転動工程及び検査工程に用い、更に搬送工程に用いることで、吸着搬送部材40のみならず治具20をも省略することができる。なお、位置決め部材13を転動工程及び検査工程の治具として用いる場合、例えば、移動アーム32,33により成形素材1を同一位置で転動させたり、或いは、移動アーム32,33を省略して成形素材1を例えばエアにより転動させたりするとよい。
【0049】
上述のように検査され上型11及び下型12間に搬送された成形素材1は、図1に示す上型11と下型12との間で、図示しないヒータによって例えばガラス転移点以上になるまで加熱されて軟化する(加熱工程)。
【0050】
加熱された成形素材1は、例えば下型12が上昇することにより、加圧されて変形する(加圧工程)。
【0051】
加圧された成形素材1は、例えば、上記のヒータの温度が降下することによって、或いは、更に強制冷却が行われることによって、ガラス転移点以下になるまで冷却される(冷却工程)。
【0052】
上述の成形工程(加熱工程、加圧工程、及び冷却工程)によって、成形素材1の対応領域1a,1bが光学素子100の光学機能面100a,100bへと変形する。
そして、上型11及び下型12が互いに遠ざかる方向に相対移動することにより離型が行われ、位置決め部材13上から光学素子100が取り出される。
【0053】
以上説明した本実施形態の成形素材1の検査方法及び光学素子100の製造方法は、光学素子100の光学機能面100a,100bへと変形する領域である対応領域1a,1bを確認する対応領域確認工程を有する。また、成形素材1の検査方法及び光学素子100の製造方法は、成形素材1を対応領域1a,1b以外の部分である保持領域において保持する保持工程と、保持された成形素材1の少なくとも対応領域1a,1bを検査する検査工程と、を有する。
【0054】
これにより、保持工程、検査工程等において、例えば治具20などの部材に接触することにより成形素材1にキズが付いたりゴミが付着したりするのを防ぐことができる。そのため、成形素材1のキズ・ゴミが光学素子100に残って光学素子100が製造不良となるのを抑えることができる。また、成形素材1のゴミが成形型(上型11、下型12、及び位置決め部材13)に付着して成形型が劣化するのを抑えることでも、光学素子100が製造不良となるのを抑えることができる。
【0055】
よって、本実施形態によれば、光学素子100の製造不良の発生を抑えることができる。
【0056】
更には、対応領域1a,1bのみ、或いは、軌跡L1,L2間の検査領域1cのみを検査した場合には、検査時間が短くなるとともに、成形素材1の全面を見るための機構などが不要になり成形素材1の検査装置の設備を簡素化することができる。
【0057】
また、本実施形態では、保持された成形素材1を対応領域1a,1bが非接触となるように転動させる転動工程が行われ、検査工程では、成形素材1が転動工程で転動して検査される。そのため、成形素材1にキズが付いたりゴミが付着したりするのを防ぎながら、成形素材1を効率良く検査することができる。
【0058】
また、本実施形態の転動工程では、静止状態の治具20上で成形素材1が転動する。そのため、後述する第2実施形態のように治具を移動させる場合に比べて、簡単な制御で成形素材1を検査することができる。
【0059】
また、本実施形態の搬送工程では、検査された成形素材1は、対応領域1a,1b以外の部分である保持領域において保持された状態で一対の成形型(上型11及び下型12)へ向けて搬送される。そのため、転動工程のみならず搬送工程においても、成形素材1にキズが付いたりゴミが付着したりするのを防ぐことができる。したがって、光学素子100の製造不良の発生を確実に抑えることができる。
【0060】
また、本実施形態の搬送工程において、例えば、検査された成形素材1が、検査工程における治具20上に載置されたまま一対の成形型(上型11及び下型12)へ向けて搬送される場合には、吸着搬送部材40等の搬送部材を省略することができる。更には、搬送部材が成形素材1に接触するのを避けることができるため、光学素子100の製造不良の発生を確実に抑えることができる。
【0061】
また、本実施形態において、例えば、図1及び図2に示す位置決め部材(第3の成形型)13を、治具として転動工程及び検査工程に用い、更に搬送部材として搬送工程に用いることで、治具20及び吸着搬送部材(搬送部材)40を省略することができる。これによっても、搬送のために成形素材1に接触するのを避けることができるため、光学素子100の製造不良の発生を確実に抑えることができる。
【0062】
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る成形素材の検査方法を説明するための治具50上の成形素材1の側面図である。
【0063】
図6A及び図6Bは、検査時の治具50上の成形素材1を示す平面図である。
本実施形態では、転動工程において、第2の治具の一例である治具50を溝51の円弧方向に移動させることにより成形素材1を転動させる点において上述の第1実施形態と相違し、それ以外の点は第1実施形態と同様のことがいえる。そのため、詳細な説明は省略する。
【0064】
図5に示す治具50には、長手方向の両端に近づくほど上方に位置する側面視(図5参照)円弧状の溝51が形成されている。溝51と成形素材1との接触点1d,1e、接触点1d,1eの軌跡L1,L2、回転軸R、外観検査用カメラ61等については、上述のとおりである。
【0065】
治具50自体の形状も図5の側面視において円弧状を呈するが、側面視円弧状の溝51が形成されていれば、直方体のブロック形状など、他の形状とすることも可能である。
【0066】
成形素材1の検査方法及び図1に示す光学素子100の製造方法については、保持工程、転動工程、及び検査工程のみについて説明する。
まず、成形素材1が治具50の溝51に載置される。そして、溝51(治具50)は、図2に示す対応領域1a,1b以外の部分である接触点1d,1eにおいて成形素材1を保持する(保持工程)。
【0067】
そして、図6A及び図6Bに示すように、治具50は、図示しない駆動手段によって、溝51の円弧方向に移動することにより成形素材1を例えば同一位置において転動させる(転動工程)。
【0068】
治具50が成形素材1を転動させながら外観検査用カメラ61が成形素材1を撮像することで、成形素材1の検査が行われる(検査工程)。
【0069】
以上説明した本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様の点については、光学素子100の製造不良の発生を抑えることができるなどの上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
また、本実施形態の転動工程では、長手方向の両端に近づくほど上方に位置する側面視円弧状の溝51が形成された治具50が溝51の円弧方向に移動することにより成形素材1が転動する。そのため、移動アーム32,33等の成形素材1を転動させるための部材を省略して、この部材と成形素材1とが接触するのを避けることができる。また、成形素材1の位置ズレを防ぐことができる。したがって、光学素子100の製造不良の発生を確実に抑えることができる。
【0071】
また、成形素材1が同一位置において転動する場合には、成形素材1の検査を容易に行うことができる。
【0072】
<第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態に係る成形素材の検査方法を説明するための位置決め部材13上の成形素材1の平面図である。
【0073】
本実施形態では、転動工程が行われず、検査工程において、第1実施形態において説明した静止状態の位置決め部材(第3の治具の一例)13の貫通孔13a上で静止した成形素材1を、位置決め部材13を挟んだ両側から検査する点において上述の第1実施形態と相違し、それ以外の点は第1実施形態と同様のことがいえる。そのため、詳細な説明は省略する。
【0074】
成形素材1の検査方法及び図1に示す光学素子100の製造方法については、検査工程のみについて説明する。
位置決め部材13により保持され、貫通孔13a上に静止した成形素材1は、位置決め部材13の一方側(上側)から撮像する上側外観検査用カメラ71と、位置決め部材13の他方側(下側)から撮像する外観検査用カメラ72とによって、検査される(検査工程)。上側外観検査用カメラ71及び下側外観検査用カメラ72は、少なくとも対応領域1a,1bを含む検査領域の全体を撮像するように移動可能とするとよい。
【0075】
検査工程の後、位置決め部材13は、搬送部材として上述の搬送工程に用いられ、上述の成形工程にも第3の成形型として用いられる。なお、貫通孔が形成された第3の治具として、位置決め部材及び搬送部材を兼ねない治具、或いは、位置決め部材及び搬送部材のうち搬送部材のみを兼ねる治具を用いて、このような治具を挟んだ両側から検査工程において検査が行われるようにしてもよい。
【0076】
以上説明した本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様の点については、光学素子100の製造不良の発生を抑えることができるなどの上述の第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0077】
また、本実施形態の検査工程では、貫通孔13aが形成された静止状態の位置決め部材(第3の治具の一例)13の貫通孔13a上で静止した成形素材1は、位置決め部材(第3の治具の一例)13を挟んだ両側から検査される。そのため、成形素材1が転動しなくとも、成形素材1を検査することができ、転動工程において治具などの部材に成形素材1が接触することにより成形素材1にキズが付いたりゴミが付着したりするのを防ぐことができる。そのため、光学素子100の製造不良の発生を確実に抑えることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 成形素材
1a,1b 対応領域
1c 検査領域
1d,1e,1f,1g 接触点
10 光学素子の製造装置
11 上型
11a 成形面
12 下型
12a ベース
12b 小径部
12c 成形面
13 位置決め部材
13a 貫通孔
13a−1 小径部分
13a−2 傾斜部分
20 治具
21 溝
21a 底面部分
21b 左側面部分
21c 右側面部分
31 外観検査用カメラ
32,33 移動アーム
40 吸着搬送部材
41 吸引孔
41a 傾斜部分
41b 小径部分
50 治具
51 溝
61 外観検査用カメラ
71 上側外観検査用カメラ
72 下側外観検査用カメラ
100 光学素子
100a,100b 光学機能面
L1,L2 接触点1d,1eの軌跡
R 成形素材1の回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子の材料である成形素材について前記光学素子の光学機能面へと変形する領域である対応領域を確認する対応領域確認工程と、
前記成形素材を前記対応領域以外の部分である保持領域において保持する保持工程と、
保持された前記成形素材の少なくとも前記対応領域を検査する検査工程と、を有する、成形素材の検査方法。
【請求項2】
保持された前記成形素材を前記対応領域が非接触となるように転動させる転動工程を更に有し、
前記検査工程では、前記成形素材を前記転動工程で転動させて検査する、請求項1記載の成形素材の検査方法。
【請求項3】
前記転動工程では、静止状態の第1の治具上で前記成形素材を転動させる、請求項2記載の成形素材の検査方法。
【請求項4】
前記転動工程では、長手方向の両端に近づくほど上方に位置する側面視円弧状の溝が形成された第2の治具を前記溝の円弧方向に移動させることにより前記成形素材を転動させる、請求項2記載の成形素材の検査方法。
【請求項5】
前記検査工程では、貫通孔が形成された静止状態の第3の治具の前記貫通孔上で静止した前記成形素材を、前記第3の治具を挟んだ両側から検査する、請求項1記載の成形素材の検査方法。
【請求項6】
光学素子の材料である成形素材について前記光学素子の光学機能面へと変形する領域である対応領域を確認する対応領域確認工程と、
前記成形素材を前記対応領域以外の部分である保持領域において保持する保持工程と、
保持された前記成形素材の少なくとも前記対応領域を検査する検査工程と、
検査された前記成形素材を加熱する加熱工程と、
加熱された前記成形素材を加圧する加圧工程と、
加圧された前記成形素材を冷却する冷却工程と、を有する光学素子の製造方法。
【請求項7】
検査された前記成形素材を前記保持領域において保持した状態で一対の成形型へ向けて搬送して、前記成形素材を前記一対の成形型間に位置させる搬送工程を更に有する、請求項6記載の光学素子の製造方法。
【請求項8】
前記検査工程では、治具上で前記成形素材を検査し、
前記搬送工程では、検査された前記成形素材を前記治具上に載置したまま前記一対の成形型へ向けて搬送する、請求項7記載の光学素子の製造方法。
【請求項9】
前記加熱工程、前記加圧工程、及び前記冷却工程は、前記成形素材が前記治具上に載置された状態で行われる、請求項8記載の光学素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92475(P2013−92475A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235413(P2011−235413)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】