説明

成形金型

【課題】従来の成形金型における、気体剥離による離型ムラ等による転写異常の発生を防ぎ、気体放出口が成型品に転写される等の問題を解決する。
【解決手段】固定側コア8の内表面10と可動側コア14の内表面15の合わせ面に成形空間16が形成されており、可動側ベース金型11の可動側凹所12の内側周面に沿って、成形空間16に向けて突出する突出縁30が形成されており、突出縁30と固定側コア8との間に固定側細隙31が形成され、該固定側細隙31から剥離用の気体を固定側コア8の内表面10に向けて吹き込み、突出縁30と可動側コア14との間に可動側細隙32が形成され、可動側細隙32から剥離用の気体を可動側コア14の内表面15に向けて吹き込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形金型に関し、特にナノメータサイズの構造体を成形する成形装置に使用される成形金型に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、反射防止機能等を利用する光学素子の技術分野、又はバイオ、医療用のナノピラー、分子センシング等のチップの技術分野等において用いられるナノメータサイズの構造物を備えた成形品を成形する成形金型に関する。
【0002】
ここでナノメータサイズの構造物とは、具体的には、例えば、、光学レンズ、発光素子(たとえば、LEDやレーザー)、光学パネル、受光素子一般(フォトダイオード、太陽電池)等の光学素子に形成される反射防止機能を有する微細な凹凸構造面、又はバイオや医療用ナノピラー等に用いられるDNAやタンパク質の分離チップ、ラマン共鳴や干渉等を用いたセンシングチップ等に形成される微細な凹凸構造面等である。
【背景技術】
【0003】
近年、マイクロメータ又はナノメータサイズの構造体の形成された金型を用いて、マイクロメータ又はナノメータサイズの構造物を備えた成型品が作製されている。例えば、マイクロメータサイズ構造物を備えた成形品として、導光板、光学レンズ、液晶パネル、マイクロレンズアレイ等が作製されている。
【0004】
一方、ナノメータサイズの構造体を備えた成型品としては、ブルーレィディスクを代表例とする高密度光ディスクなどが作製されている。これら成型品は射出成型法により成形されるのが通例である。一般に、これら微細な構造体が形成された金型からの離型法は、エジェクタースリーブによる機械的な突き出しと、剥離用エアーを両者の密着面間に吹き入れることにより行われている。
【0005】
しかしながら、微細構造が形成された金型と成型品間の剥離プロセスにおいて、剥離が全面にわたりスムーズに行われないため基板形状の歪や微細構造物の破壊等の異常転写等が発生する。このような異常転写が発生する理由としては、成型品と金型の剥離の仕方に原因があり、これら剥離の仕方は重要な技術となっている。
【0006】
例えば、光ディスク基板の成形において、異常転写の発生を抑え良好な剥離性を得るために、ディスク基板の内周部から外周部に向かってエアー剥離を行い、異常転写等の問題を解決している構成が知られている。
【0007】
すなわち、光ディスクのようにドーナツ形状に重要な情報があり、最内周部はエアー剥離用の吹き出し口が構成できる金型を用いた場合、内周部に構成されたエアー吹き出し口から放出されたエアーは、内側から外周部を通るしか流路はないので、密閉が高く、容易に均一なエアー剥離が実現可能となる。
【0008】
しかしながら、導光板、光学レンズ、液晶パネル、マイクロレンズアレイ等の成形品では、成型品の中央部が重要な機能を発揮する成型物となるため、金型の中央部にエアー剥離用のエアー吹き出し口を設ける構成とすることは出来ない。そのため、金型の外周部、若しくはコア金型とベース金型の隙間からエアー剥離用のエアー放出口を設ける構成が採用されている(特許文献1、2参照)。
【0009】
また、ディスク基板の製造装置においても、気体供給源からの気体を可動金型と外周リングとの間に形成される隙間を介して、可動金型の成形面とディスク基板との間に供給し、外周から気体を供給する構成が知られている(特許文献3参照)。
【0010】
ここで、本発明に係る成形金型に対して従来例の一例として、成形金型を図8において説明する。この従来例の成形金型は、後記する本発明に係る成形金型と剥離用気体の供給手段が基本的に異なる。
【0011】
図8において、従来例の成形金型40は、固定側金型2と、固定側金型2に対して近接及び離間(型締め及び型開き)する方向に移動可能に設けられた可動側金型3とを備えている。成形が完了して、固定側金型2と可動側金型3を型開きするために、可動側金型に突き出しピン4が摺動可能に挿通されている。
【0012】
固定側金型2は、固定側ベース金型5と、固定側ベース金型5の内側の固定側凹所6内に嵌合して設けられた固定側コア8とを備えている。固定側コア8の内表面10には、ナノ構造物を成形するための微細構造体が形成されている。
【0013】
可動側金型3は、可動側ベース金型11と、可動側ベース金型11の内側の可動側凹所12内に嵌合して設けられた可動側コア14とを備えている。可動側コア14の内表面15には、ナノ構造物を成形するための微細構造体が形成されている。
【0014】
固定側コア8と可動側コア14が型締めされて互いに当接すると、両者のそれぞれの内表面の間に成形空間16(キャビティー)が形成され、この成形空間16内に溶融された樹脂が樹脂供給道17及び樹脂供給路18を通して供給、充填されて成型品の射出成形が行われる。
【0015】
成形空間16から成型品を剥離するために、気体供給源から供給される窒素や空気等の剥離用気体を、気体通路41から固定側コア8及び可動側コア14の側面に形成された気体流路42を通して、気体放出口43から成形空間16内に側方から放出する(吹き込む)。
【0016】
【特許文献1】特開2002−326260号公報
【特許文献2】特開2007−106043号公報
【特許文献3】特開2000−326372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来例で説明したドーナツ形状の光ディスクの成型用金型ように、最内周部に剥離用のエアー吹き出し口を設けた成形金型では、気体放出口が成型品に転写される等の問題があり、特に光学レンズや液晶パネル等の外装部品には適用出来ない。
【0018】
そこで、上記図8に示す従来例の成形金型を採用した場合は、気体放出口43が成型品に転写される等の問題を防ぐことが可能であるが、固定側コア8及び可動側コア14の外周部の気体放出口43から、気体を成形空間に金型の枠から垂直に成型品の側方に向けて気体を放出するため、剥離ムラ等による転写異常が発生し易いという問題が生じる。
【0019】
特に、これら転写異常の問題において、ピッチ100nm±50nm、高さ150nm以上の構造を持ち、可視域波長以下の間隔で制御された反射防止ナノ構造物の成形に適用した場合には、転写異常による離型むらが発生し、成型品の光学特性の悪化と機能面に離型マークとして残ってしまうという問題が発生していた。
【0020】
また、特許文献3記載の金型は、金型の外周方向から気体を供給するものであるが、可動金型の周囲に別途外周リングを設ける必要があり、可動金型とディスク基板の間に気体を供給する構成であり、固定金型とディスク基板の間に気体を供給することはできない。
【0021】
本発明は、従来の成形金型における、気体剥離による離型ムラ等による転写異常の発生を防ぎ、気体放出口が成型品に転写される等の問題を解決することを目的とするものであり、光学レンズや液晶パネル等に用いられる位相板、偏光板、マイクロレンズ、導光板、グレーティングやナノメータサイズの構造物をもつ反射防止構造、バイオテンプレート等の部品に適用可能な気体剥離手段を備えた成形金型を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記課題を解決するために、互いに離間可能な固定側金型と可動側金型とを有し、固定側金型は、固定側ベース金型と該固定側ベース金型の凹所内に設けられた固定側コアとを備え、可動側金型は、可動側ベース金型と該可動側ベース金型の凹所内に設けられた可動側コアとを備え、固定側コアの内表面及び可動コアの内表面の両方又はいずれか一方にナノ構造体が形成されており、固定側コアの内表面と可動側コアの内表面の合わせ面に成形空間が形成される成形金型であって、可動側ベース金型の凹所内周面に沿って、成形空間に向けて突出する突出縁が形成されており、突出縁と固定側コアとの間に固定側細隙が形成され、該固定側細隙から剥離用の気体を固定側コアの内表面に向けて吹き込み可能な構成とし、突出縁と可動側コアとの間に可動側細隙が形成され、該可動側細隙から剥離用の気体を可動側コアの内表面に向けて吹き込み可能な構成としたことを特徴とする成形金型を提供する。
【0023】
本発明は上記課題を解決するために、互いに離間可能な固定側金型と可動側金型とを有し、固定側金型は、固定側ベース金型と該固定側ベース金型の凹所内に設けられた固定側コアとを備え、可動側金型は、可動側ベース金型と該可動側ベース金型の凹所内に設けられた可動側コアとを備え、固定側コアの内表面及び可動コアの内表面の両方又はいずれか一方にナノ構造体が形成されており、固定側コアの内表面と可動側コアの内表面の合わせ面に成形空間が形成される成形金型であって、固定側コアの側周面に沿って固定側膨出縁が形成され、可動側コアの側周面に沿って可動側膨出縁が形成されており、可動側ベース金型の凹所内周面に沿って、成形空間に向けて突出する突出縁が形成されており、突出縁と固定側膨出縁及び固定側コアとの間に固定側細隙が形成され、該固定側細隙から剥離用の気体を固定側コアの内表面に向けて吹き込み可能な構成とし、突出縁と可動側膨出縁及び可動側コアとの間に可動側細隙が形成され、該可動側細隙から剥離用の気体を可動側コアの内表面に向けて吹き込み可能な構成としたことを特徴とする成形金型を提供する。
【0024】
固定側ベース金型の凹所内面と固定側コアの間に、気体供給源から供給された剥離用の気体を固定側細隙に向けておくる固定側気体流路を設けるとともに、可動側ベース金型の凹所内面と可動側コアの間に、気体供給源から供給された剥離用の気体を可動側細隙に向けておくる通路を設けた構成とすることが好ましい。
【0025】
固定側ベース金型の凹所内であって、該凹所の底部と固定側コアとの間に気体制御用金型を設け、該気体制御用金型には気体供給源から固定側気体流路に剥離用気体を供給する固定側気体供給路を設け、可動側ベース金型の凹所内であって、該凹所の底部と可動側コアとの間に気体制御用金型を設け、該気体制御用金型には気体供給源から可動側気体流路に剥離用気体を供給する可動側気体供給路を設けた構成とすることが好ましい。
【0026】
突出縁は、樹脂供給口を除いて、可動側ベースの凹所の内周面に沿って全周面又は一部に形成されている構成とすることが好ましい。
【0027】
固定側膨出縁は、固定側コアの内周面に沿って全周面又は少なくとも突出縁の形成されている位置に対応した一部周面に形成されている構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、波長以下のピッチで制御された反射防止ナノ構造物を備えた成型品の成形において、離型むらによる転写付与から起因する光学特性不良を防ぎ、離型マーク等を残すことなく良好な意匠面が得られる成型品が実現できる。そのため、本発明により、マイクロ・ナノメータサイズの構造物を持つ反射防止構造の成型品の製造をはじめ、バイオテンプレート、光学レンズ、又は液晶パネル等に用いられる位相板や偏光板等を精度良く成形可能である。
【0029】
本発明に係る成形金型は、特に、ピッチ100nm±50nmであり、高さ150nm以上の構造を持ち、可視域波長以下の間隔で制御された反射防止ナノ構造体を備えた成形品を成形するための成形金型コアの場合には、離型マーク等を残すことなく成型品の剥離が実現できるために有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明に係る成形金型を実施するための最良の形態を図面を参照し、実施例に基づき、以下説明する。
【0031】
「光学レンズ」、「液晶パネル等に用いられる位相板、偏光板、マイクロレンズ、導光板若しくはグレーティング」、又は「ナノメータサイズの構造物をもつ反射防止構造若しくはバイオテンプレート」のような成形品は、その中央部が重要な機能面を有し、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネイト、ゼオネックス、アートン等の熱可塑性樹脂材料が射出成形されることにより成形される。
【0032】
本発明に係る成形金型は、上記のような成形品を成形する射出成形装置に金型として組み込まれて使用されるものである。以下においては、一例として、可視域の波長以下に間隔が制御されたナノ構造物からなる反射防止構造を備えた樹脂製の成型品の射出成形装置で使用される本発明の成形金型の実施例1及び実施例2について説明する。実施例1は、平坦面であるコアを有する成形金型であり、実施例2は自由曲面コアを有する成形金型である。
【実施例1】
【0033】
樹脂製の成型品の射出成形装置は、樹脂材料を加熱溶融して射出する射出部を構成するホッパ及びシリンダ(図示せず)と、加熱溶融された樹脂材料を冷却固化して成型品を成形する本発明の実施例1の成形金型1(図1参照)と、成型された成型品の離型性を良好にするための窒素や圧縮空気等の剥離用の気体(以下単に「気体」という。)を、後記する固定側コア及び可動側ココアと成型品の間に放出する気体供給源(図示せず)とを備えている。
【0034】
射出成形装置のホッパ及びシリンダは、従来の装置に使用されているものと特に異ならないので、ここでは、簡単な説明に止める。ホッパには、ペレット状の樹脂材料が投入される。ホッパは、投入された樹脂材料を乾燥し、水分を十分に除去した後に、シリンダに供給する。
【0035】
シリンダは、加熱ヒータを備えており、ホッパより供給された樹脂材料を加熱溶融する。そして、シリンダは、加熱溶融した樹脂材料を、例えば、スクリューの作用により前方へ押し出し、その先端部に設けられたノズルを介して、成形金型1に供給する。
【0036】
図1は、本発明の実施例1の成形金型1の構成を示す断面図であり、図3は実施例1の成形金型1の平面図である。本発明の成形金型1は、固定側金型2と、固定側金型2に対して近接及び離間(型締め及び型開き)する方向に移動可能に設けられた可動側金型3とを備えている。成形が完了して、固定側金型2と可動側金型3を型開きするために、可動側金型に突き出しピン4が摺動可能に挿通されている。
【0037】
固定側金型2は、固定側ベース金型5と、固定側ベース金型5の内側の固定側凹所6内に嵌合して設けられた固定側気体制御金型7及び固定側コア8とを備えている。固定側気体制御金型7は固定側凹所6の底部6’に設けられ、さらに固定側コア8が重ねられて設けられ、固定側コア8の内表面10には、成型品のナノ構造物を成形するための微細なナノ構造体(図示せず)が形成されている。
【0038】
可動側金型3は、可動側ベース金型11と、可動側ベース金型11の内側の可動側凹所12内に嵌合して設けられた可動側気体制御金型13及び可動側コア14とを備えている。可動側気体制御金型13は可動側凹所12の底部12’に設けられ、さらに可動側コア14が重ねられて設けられ、可動側コア14の内表面15には、成型品のナノ構造物を成形するための微細なナノ構造体が形成されている。
【0039】
なお、この実施例1では、固定側コア8の内表面10及び可動側コア14の内表面15の両方に、成型品のナノ構造物を成形するための微細なナノ構造体が形成されている構成であるが、固定側コア8の内表面10及び可動側コア14の内表面15のいずれか一方に成型品のナノ構造物を成形するための微細なナノ構造体が形成されている構成としてもよい。
【0040】
固定側コア8と可動側コア14が型締めされて互いに当接すると、両者のそれぞれの内表面10、15の間に成形空間16(通常、「キャビティー」とも言う。)が形成され、ここに溶融された樹脂が供給されて成型品が成形される。固定側ベース金型5には、シリンダの先端部のノズルに接続され、ノズルから溶融された樹脂を供給する樹脂供給道17が形成されている。この樹脂供給道17に連通して、固定側ベース金型5と可動側ベース金型11と当接面の間の成形空間に連通し、溶融された樹脂を供給する樹脂供給路18が形成されている。
【0041】
固定側コア8と可動側コア14の表面10、15は、それぞれ微細なナノ構造体が形成されており、このナノ構造体によって、射出成形された成型品には、アスペクト比が1.5以上、平均ピッチが50nm〜1000nmのナノ構造の凹凸表面を持ち、例えば、反射防止機能が得られる光学素子など成型品を形成することができる。なお、光学素子表面に成形されるナノ構造物の平均ピッチが100nm±50nm、アスペクト比が1.5〜2.5の場合には、最も良好な反射防止特性が得ることができる。
【0042】
固定側コア8と可動側コア14の表面10、15の微細なナノ構造体は、成膜装置を用いて、金型コアの表面に1層以上から構成されるエッチング転写層と島状微粒子作製の為の銀、金、白金、パラジウムを主成分とする薄膜物質を成膜した後に、熱、光またはガス分解作用を用いて、凝集作用、核形成採用又は分解作用を発現させ、波長以下の間隔で、ランダムに配置された島状微粒子を作製される。
【0043】
その後、エッチング装置を用いて、島状微粒子をマスクとしてエッチングを行い、エッチング転写層にナノ構造体を作製する。ここで、島状粒子構造におけるエッチング速度よりエッチング転写層におけるエッチング速度の方が高くなる反応性ガス又は溶液を用いて、ナノ構造体が作製される。作製されたナノ構造体は、再び成膜装置を用いて、「PTFE、ポリイミド、フッ素有機基導入シラン化合物、フッ素シラン化合物及びフルオロアルキルシラザンのうち1種類若しくは2種類以上からなる混合物」、 「C,Cr,Al,Ti, Mo,W,Ta,Au,Pt及びAgのうち1種類若しくは2種類以上を主成分とする金属の窒化物、硫黄化合物若しくはフッ化物」、又は「これらの複合物からなる離型膜」を成膜することにより作製できる。ここで「これらの複合物」とは、上記混合物、上記金属の窒化物、上記硫黄化合物、及び上記フッ化物のうちの2種類以上から成る複合物である。
【0044】
なお、固定側コア8と可動側コア14の表面の微細なナノ構造体は、成型品が目的とする波長帯域によって構成されるため、特に限定されない。また、反射防止構造以外の光学素子又はバイオセンサーチップ等に用いる場合には、周期的、意図的に配置されたパターン等を用いる構造物を有する。
【0045】
固定側気体制御金型7と固定側コア8の当接面には、それぞれ冷却媒体通路19を形成する溝が形成されている。成形空間16内に鋳込まれた成型品を冷却する際に、この冷却媒体通路19を通して冷却媒体が流される構成となっている。冷却媒体は、水、油が最も望ましいが、液体二酸化炭素、窒素、空気、アルコール、フッ化物溶液等でも冷却上の効果が得られる。
【0046】
固定側ベース金型5と可動側ベース金型11には、それぞれ埋設された加熱手段20及び外周面を加熱する加熱手段21が設けられ、金型温度を一定又は可変できる構成となっている。例えば、樹脂を鋳込む際に、加熱手段20、21によって、固定側金型2と可動側金型3の全体は加熱することができる。
【0047】
なお、加熱手段20、21は、加熱媒体を加熱チューブに流す構成としても良いが、赤外線、レーザー光線、マイクロ波などの電磁波を用いた構成としても同様の効果が得られる。加熱媒体としては、水、油が最も望ましいが、液体二酸化炭素、窒素、空気、アルコールなどを用いてもよい。
【0048】
以上が本発明の全体構成であるが、本発明のきわめて特徴的な構成について、以下に説明する。固定側ベース金型5及び可動側ベース金型11には、それぞれ気体供給源に接続される固定側気体通路22及び可動側気体通路23が形成されている。
【0049】
そして、固定側気体制御金型7及び可動側気体制御金型13には、それぞれ固定側気体供給路24及び可動側気体供給路25が形成されており、固定側気体供給路24及び可動側気体供給路25は、それぞれ固定側気体通路22及び可動側気体通路23に連通している。
【0050】
固定側気体供給路24及び可動側気体供給路25は、図3に示すように、固定側気体制御金型7及び可動側気体制御金型13の平面視でほぼ中央部から、周縁方向(放射方向)に分岐して形成されている。
【0051】
固定側ベース金型5の固定側凹所6の内面と、固定側気体制御金型7及び固定側コア8の側周面との間に、固定側気体供給路24に連通する固定側気体流路26が形成されている。この固定側気体流路26は、分岐された固定側気体制御金型7の周縁方向に伸びる固定側気体供給路24の数に対応して、固定側気体制御金型7及び固定側コア8の側周面の周方向に一定の間隔をおいて、複数形成されている。
【0052】
図1及び図2(a)、(b)に示すように、可動側ベース金型11の可動側凹所12の内面と、可動側気体制御金型13及び可動側コア14の側周面との間に、可動側気体供給路25に連通する可動側気体流路27が形成されている。この可動側気体流路27は、分岐された可動側気体制御金型13の周縁方向に伸びる可動側気体供給路25の数に対応して、可動側気体制御金型13及び可動側コア14の側周面の周方向に一定の間隔をおいて、複数形成されている。
【0053】
固定側コア8及び可動側コア14の内端における側周面には、それぞれ側方に向けて突出している固定側膨出縁28及び可動側膨出縁(膨出フランジ)29が形成されている。固定側膨出縁28及び可動側膨出縁29は、固定側気体流路26及び可動側気体流路27に向けて突出しているので、この部分では、固定側気体流路26及び可動側気体流路27はそれぞれ狭くなっている。
【0054】
ところで、上記説明では、固定側膨出縁28及び可動側膨出縁29は、固定側コア8及び可動側コア14の内端における側周面の全周に形成されているが、側周面の全周でなくても一部でもよいが、その場合は少なくとも、固定側気体流路26及び可動側気体流路27、さらには後記する突出縁30に対応して設けられていることが必要である。
【0055】
また、固定側膨出縁28及び可動側膨出縁29は、図1に示すような膨出縁の形状でなくても、凹凸構造、ジグザグ構造、流線形、又はこれら複合構造を、固定側コア8及び可動側コア14の内端における側周面に設け、固定側気体流路26及び可動側気体流路27が狭くなる構成としても良い。
【0056】
図1及び図2(a)、(b)において、可動側ベース金型11の可動側凹所12の内端部における内周面には、固定側コア8と可動側コア14が型締めされた際に形成される成形空間16側に向けて突出する突出縁30(「イジェクタ」とも言う。)が形成されている。この突出縁30は、可動側凹所12の内端における内側周面のうち、成形空間16への樹脂供給入口(ゲート部)を除いて、全周に形成されている。
【0057】
突出縁30は、固定側膨出縁28と可動側膨出縁29の間からさらに成形空間16内に突出している。これによって、固定側コア8の内表面10及び該内表面10と連成する固定側膨出縁28と、突出縁30との間に固定側細隙31が形成される。また、可動側コア14の内表面15及び該内表面15と連成する可動側膨出縁29と、突出縁30との間に可動側細隙32が形成される。
【0058】
そして、固定側コア8、可動側コア14及び突出縁30によって、ほぼ閉空間である成形空間16が形成される。
【0059】
なお、上記において、突出縁30を可動側凹所15の内端における内側周面のうち、成形空間16への樹脂供給入口(ゲート部)33を除いて全周面に形成されている構成を説明したが、突出縁30を可動側凹所15の内側周面の全周面でなくても一部周面でもよい。その場合は少なくとも、可動側及び固定側の気体流路26、27及び膨出縁28、29に対応して設けられていることが必要である。
【0060】
可動側凹所15の内側周面の一部に形成される場合には、突出縁30を可動側凹所15の内側周面の全周長の50%に形成することで効果が得られる。より好ましくは、可動側凹所15の内側周面の全周長の85%以上に形成することが望ましい。
【実施例2】
【0061】
図4は、本発明の成形金型の実施例2を説明する図で、(a)は断面図であり、(b)は(a)の要部Aの拡大図を示す。この実施例2は、湾曲面を有するレンズ等の光学素子を成形する成形金型であり、固定側コア8及び可動側コア14が湾曲状に形成されている構成については、実施例1と相違するが、その他の構成については、実施例1と同じ構成である。このように、実施例2は、実施例1とほぼ同じ構成であり、符号も実施例1と全く同じ符号を付し、実施例1の説明を準用できるので、詳細な説明は省略する。
【0062】
(作用)
以上の構成から成る本発明の成形金型を使用し成型品(具体例として、反射防止ナノ構造物)を成形する射出成形の工程を図5を参照して説明するとともに、本発明の成形金型の独特の作用、効果について、以下説明する。
【0063】
なお、図5では、チャージ、射出、冷却、型開等の各工程における諸作業を示すとともに、固定側コア8及び可動側コア14の温度(コア金型設定温度)、固定側ベース金型5及び可動側ベース金型11の温度(ベース金型温度)を示している。
【0064】
射出成型時において最初に、対向する固定側金型2と可動側金型3が近接移動前(型締め前)に、加熱手段20、21及び冷却手段(冷却媒体通路19)によって、固定側コア8及び可動側コア14表面の金型温度を、樹脂の軟化温度より高く、且つ樹脂の分解温度より低い温度まで昇温する。このときに設定される金型温度は樹脂の「軟化温度」+「5℃〜20℃」以内が、成形サイクルや転写性の観点から最も効果的である。
【0065】
固定側コア8及び可動側コア14の昇温の後に、可動側金型3を固定側金型2に近接する方向に移動し、型締めを行う。これにより、固定側コア8、可動側コア14及び突出縁30によって、樹脂が充填され成形されるべきほぼ閉空間である成形空間16が形成される。そして、コア金型設定温度はT1に昇温される(図5のチャージ工程の「型締開始」〜「型締完了」参照)。
【0066】
この成形空間16が形成された後に、シリンダから供給される樹脂は、樹脂供給道17から樹脂供給路18を通過して成形空間16内に射出されて充填される(図5の射出工程の「射出開始」〜「射出完了」参照)。ここで、樹脂の充填速度は30mm/s以下することにより、固定側コア8及び可動側コア14のナノ構造体による滞在ガスの影響を抑えることが可能になる。
【0067】
樹脂充填後に、固定側コア8及び可動側コア14の型締め状態を維持し、樹脂への充填圧力を保持(保圧)しながら、上記加熱手段20、21及び冷却手段によって、コア金型設定温度を、樹脂の軟化温度より低い温度はT2に降温されるまで冷却し、形成された樹脂成型品の冷却を行う(図5の冷却工程の「射出完了」〜「型開開始」参照)。
【0068】
この冷却工程の完了前において、気体供給源から気体を、固定側気体通路22及び固定側気体供給路24を通して、固定側気体流路26から成形空間16内に放出し(吹き出し)、成型品を固定側コア8の内面から離型する(引き剥がす)(図5の冷却工程の「固定側エアー離型」参照)。
【0069】
次に、固定側金型2と可動側金型3は突き出しピン4により型開きを開始してから、気体供給源から気体を、可動側気体通路23及び可動側気体供給路25を通して、可動側気体流路27から成形空間16内に放出し(吹き出し)、成型品を可動側コア14の内面から離型する(引き剥がす)(図5の型開工程の「可動側エアー離型」参照)。
【0070】
なお、気体を供給するタイミングは、上記のとおり型開きを行う前に気体を供給するのではなく、型開きと同時でもよい。固定側と可動側の気体供給タイミングは、上記のとおり、前後するのではなく、同時にしてもよい。いずれにしろ、成型品の離型性を非常に良好なものとすることができる。
【0071】
この型開工程において、その後、成形空間16から取り出される(図5の型開工程の「エジェクト開始」〜「エジェクト完了」参照)。このようにして、可視光波長以下のピッチで制御されたナノ構造物が表面に付与された成型品が成形される。
【0072】
成形工程の概要は以上のとおりであるが、本発明の成形金型1によると、気体による固定側コア8と可動側コア14の内面から引き剥がす際に、次のような作用、効果が生じる。まず、本発明のきわめて特徴的な構成として、固定側膨出縁28と可動側膨出縁29の間からさらに突出縁30を成形空間16内に突出するように設けることで、供給される気体は、固定側コア8と可動側コア14の内面に沿うように放出されるので、成型品の剥離効果を高めることが可能となる。
【0073】
しかも、気体供給源から固定側気体通路22から供給される気体は、固定側コア8の固定側気体供給路24によって、固定側コア8の中央部から径方向(放射方向)に送られ、固定側流路から成形空間16内にその外周の一方向からではなく、複数方向から放出されるので、成型品の剥離効果を高めることが可能となる。
【0074】
同様に、気体供給源から可動側気体通路23から供給される気体は、可動側コア14の可動側気体供給路25によって、可動側コア14の中央部から径方向(放射方向)に送られ、可動側気体流路27から可動側コア14の内面方向にその外周の一方向からではなく、複数方向から放出されるので、成型品の剥離効果を高めることが可能となる。
【0075】
そして、固定側膨出縁28及び可動側膨出縁29により固定側気体流路26及び可動側気体流路27は狭くなっているので、気体の流速が速められ、さらに、固定側膨出縁28及び可動側膨出縁29と突出縁30との間の固定側細隙31及び可動側細隙32で速められて成形空間16内に放出することができるので、流速の速められた気体は、成型品の剥離効果を高めることが可能となる。
【0076】
以上のとおり、本発明の成形金型1によれば、成形空間16内にその外周の一方向からではなく複数方向から送る構成とし、さらに突出縁30と、固定側膨出縁28及び可動側膨出縁29とを設ける構成によって、流速を高め、しかも、その気体が固定側コア8と可動側コア14の内面に沿うように放出されるので、それぞれの効果が相乗的に作用し、成型品の剥離効果をきわめて高めることが可能となり、しかも剥離に伴う破損等生じることなく行うことが可能となる。
【0077】
なお、上記構成では、固定側膨出縁28と可動側膨出縁29を設けた構成を挙げて説明したが、そのいずれか一方又は両方を設けない構成としてもよい。しかし、膨出縁を設けない構成とした場合でも、突出縁30を設ける構成、しかも突出縁30と固定側コア8及び可動側コア14の間に固定側細隙31及び可動側細隙32を形成した構成は、本発明の成形金型1では必須の構成である。
【0078】
(試作例)
本発明の成形金型1の構成、効果を実証するために、本発明者らは、本発明の成形金型1の試作を行った。成形金型1としては上記実施例1と同じ構成のものであって、アスペクト比が1以上で10以内のナノ構造体を表面に有する固定側コア8と可動側コア14を使用し、アスペクト比が1以上のナノ構造物を表面にもつ反射防止機能が付与された光学素子成型品の試作を行った。
【0079】
具体的に使用した実施例1の成形金型1は、固定側コア8と可動側コア14の表面に形成されているナノ構造体は、アスペクト比は1.5であり、ピッチは約100nm、深さは約200nmである。射出成形に用いた樹脂は、三菱レイヨン製の商品であるアクリペットのグレードVH(以下、「アクリペットVH」という)を用いた。
【0080】
加熱及び冷却される固定側コア8と可動側コア14の表面の金型温度(「コア表面の金型温度」という。)の加熱及び冷却は、図5のフロー図に示すように行った。本発明に係る射出成形方法では、図5に示すように、樹脂の充填前にコア表面を設定温度T1まで昇温し、その後、ベース金型の型締めを行う。そして、型締めが完了した後に、樹脂の充填を行う。
【0081】
その後、型締め状態を維持して、充填した樹脂を保圧(充填している樹脂に対する圧力を保持する意味)し、固定側コア8と可動側コア14を、樹脂の軟化温度より低い所定の温度T2まで冷却するとともに、この温度を維持し、形成された樹脂成型品の冷却を行う。
【0082】
このような樹脂成型品の冷却後に、固定側コア8と固定側成形面の間に窒素を流し込み離型を行った。その後、型開きを行った後に、可動側コア14と可動側成形面の間に窒素を流し込み離型を行った。最後に成型品の取り出しを行う。
【0083】
具体的には、(例えば)アクリペットVHの軟化温度は、およそ107℃であることから、固定側ベース金型5及び可動側ベース金型11の温度を通常の成形条件である95℃に設定する。そして、図5のフロー図で示すように、樹脂の充填前の固定側コア8及び可動側コア14の表面温度を樹脂の軟化温度107℃以上に昇温してから樹脂の充填を行う。
【0084】
次に、樹脂の充填後に、固定側コア8及び可動側コア14の表面温度を樹脂の軟化温度107℃より低い所定の温度まで冷却する。その後、剥離用の気体として5MPaの圧力で供給される窒素を、固定側気体通路22及び固定側気体供給路24を通して、固定側細隙31から固定側コア8内面に吹き付けて固定側成形面の離型を行った。
【0085】
その後、同様に、剥離用の気体として5MPaの圧力で供給される窒素を、可動側気体通路23及び可動側気体供給路25を通して、可動側細隙32から可動側コア14内面に吹き付け可動側成形面の離型を行った。
【0086】
図6は、従来金型を用いて射出成形した反射防止機能を有する成型品の中央部と端の反射特性を測定した結果を示し、図7は、本発明金型を用いて射出成形した反射防止機能を有する成型品の中央部と端の反射特性を測定した結果を示す。
【0087】
図6及び図7によって、従来金型を用いて射出成形した成形品と本発明金型を用いて射出成形した成型品の機能面の位置による光学特性を比較すると、従来の金型を用いると、位相面の位置により反射防止特性のバラツキが見られるが(図6参照)、本発明の成形金型は機能面の位置にかかわらず均一で良好な反射防止特性が得られている(図7参照)ことが確認できた。
【0088】
なお、成形材料として、樹脂をアクリルから、ポリカーボネイト、アートン、ゼオネックスに変更した場合において検討した。このとき、ポリカーボネイトは、三菱エンジニアリングプラスチック社製のユーピロン、グレードH−3000R(いずれも商品名)、アートンはJSR株式会社の(商品名)、ゼオネックスは日本ゼオン社製のゼオネックス、グレード330R(いずれも商品名)、について検討を行い、アクリルの場合と同様の効果があることを確認した。
【0089】
また、本発明に係る射出成形方法によると、さらに高いナノ構造物の成形を行った結果、アスペクト比10までの成形において、良好な成形特性が得られることを確認した。
【0090】
以上、本発明に係る射出成形方法を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。例えば、本発明はプレス成形、ナノインプリント成形、トランスファー成形、モールド成形など他の成形手段に用いても、同様の効果が生じる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る成形金型は、上記のような構成であるから、ナノメータサイズの構造物を用いる反射防止機能を必要とする分野、バイオ・医療用のナノピラー、分子センシングチップ等の分野において利用可能である。
【0092】
具体的には、反射防止機能を必要とする分野としては、透過率向上を目指す光学レンズ、発光素子(例えば、LEDやレーザー)、光学パネル、受光素子一般(フォトダイオード、太陽電池)等である。また、バイオ・医療用ナノピラーとしては、DNAやタンパク質の分離チップ等があり、さらに、分子センシングチップとしては、ラマン共鳴・干渉等を用いたセンシングチップなどがある。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の成形金型の実施例1の断面図を示す図である。
【図2】本発明の成形金型の実施例1の要部の拡大図を示し、作用を説明する図である。
【図3】本発明の成形金型の実施例1の平面図を示す図である。
【図4】本発明の成形金型の実施例2を説明する図であり、(a)は断面図であり、(b)は(a)の要部Aの拡大図である。
【図5】本発明の成形金型を使用した射出成形の工程を説明するフロー図である。
【図6】従来例の成形金型で成形した反射防止成型品の光学特性の測定結果を示す図である。
【図7】本発明の成形金型で成形した反射防止成型品の光学特性の測定結果を示す図である。
【図8】従来例の成形金型を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1 成形金型
2 固定側金型
3 可動側金型
4 突き出しピン
5 固定側ベース金型
6 固定側凹所
6’ 固定側凹所の底部
7 固定側気体制御金型
8 固定側コア
10 固定側コアの内表面
11 可動側ベース金型
12 可動側凹所
12’ 可動側凹所の底部
13 可動側気体制御金型
14 可動側コア
15 可動側コアの内表面
16 成形空間
17 樹脂供給道
18 樹脂供給路
19 冷却媒体通路
20、21 加熱手段
22 固定側気体通路
23 可動側気体通路
24 固定側気体供給路
25 可動側気体供給路
26 固定側気体流路
27 可動側気体流路
28 固定側膨出縁
29 可動側膨出縁
30 突出縁
31 固定側細隙
32 可動側細隙
33 樹脂供給入口(ゲート部)
40 従来例の成形金型
41 気体通路
42 気体流路
43 気体放出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間可能な固定側金型と可動側金型とを有し、
固定側金型は、固定側ベース金型と該固定側ベース金型の凹所内に設けられた固定側コアとを備え、
可動側金型は、可動側ベース金型と該可動側ベース金型の凹所内に設けられた可動側コアとを備え、
固定側コアの内表面及び可動コアの内表面の両方又はいずれか一方にナノ構造体が形成されており、固定側コアの内表面と可動側コアの内表面の合わせ面に成形空間が形成される成形金型であって、
可動側ベース金型の凹所内周面に沿って、成形空間に向けて突出する突出縁が形成されており、
突出縁と固定側コアとの間に固定側細隙が形成され、該固定側細隙から剥離用の気体を固定側コアの内表面に向けて吹き込み可能な構成とし、
突出縁と可動側コアとの間に可動側細隙が形成され、該可動側細隙から剥離用の気体を可動側コアの内表面に向けて吹き込み可能な構成としたことを特徴とする成形金型。
【請求項2】
互いに離間可能な固定側金型と可動側金型とを有し、
固定側金型は、固定側ベース金型と該固定側ベース金型の凹所内に設けられた固定側コアとを備え、
可動側金型は、可動側ベース金型と該可動側ベース金型の凹所内に設けられた可動側コアとを備え、
固定側コアの内表面及び可動コアの内表面の両方又はいずれか一方にナノ構造体が形成されており、固定側コアの内表面と可動側コアの内表面の合わせ面に成形空間が形成される成形金型であって、
固定側コアの側周面に沿って固定側膨出縁が形成され、可動側コアの側周面に沿って可動側膨出縁が形成されており、
可動側ベース金型の凹所内周面に沿って、成形空間に向けて突出する突出縁が形成されており、
突出縁と固定側膨出縁及び固定側コアとの間に固定側細隙が形成され、該固定側細隙から剥離用の気体を固定側コアの内表面に向けて吹き込み可能な構成とし、
突出縁と可動側膨出縁及び可動側コアとの間に可動側細隙が形成され、該可動側細隙から剥離用の気体を可動側コアの内表面に向けて吹き込み可能な構成としたことを特徴とする成形金型。
【請求項3】
固定側ベース金型の凹所内面と固定側コアの間に、気体供給源から供給された剥離用の気体を固定側細隙に向けておくる固定側気体流路を設けるとともに、可動側ベース金型の凹所内面と可動側コアの間に、気体供給源から供給された剥離用の気体を可動側細隙に向けておくる通路を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の成形金型。
【請求項4】
固定側ベース金型の凹所内であって、該凹所の底部と固定側コアとの間に気体制御用金型を設け、該気体制御用金型には気体供給源から固定側気体流路に剥離用気体を供給する固定側気体供給路を設け、
可動側ベース金型の凹所内であって、該凹所の底部と可動側コアとの間に気体制御用金型を設け、該気体制御用金型には気体供給源から可動側気体流路に剥離用気体を供給する可動側気体供給路を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形金型。
【請求項5】
突出縁は、樹脂供給口を除いて、可動側ベースの凹所の内周面に沿って全周面又は一部に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形金型。
【請求項6】
固定側膨出縁は、固定側コアの内周面に沿って全周面又は少なくとも突出縁の形成されている位置に対応した一部周面に形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−58298(P2010−58298A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224138(P2008−224138)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(391007507)伊藤光学工業株式会社 (27)
【出願人】(591262621)東海精密工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】