説明

成膜成型品の製造方法および製造装置

【課題】射出工程で成形した未成膜成形品1Xの表面に、成膜工程で成膜を施すにあたり、該未成膜成形品1Xが型残りする固定金型3の型面に邪魔されないようにして成膜する。
【解決手段】成膜成形品1は裏面に支持脚1cが形成されるものとし、成膜工程時、支持脚1cをエジェクターピン11で中間位置まで押出して未成膜成形品1Xが固定金型3から持ち上がった離間状態とし、この状態で成膜を施すことで、成膜成形品1の周端部の成膜2が固定金型3の型面によって邪魔されることなく綺麗に成膜ができるばかりでなく、未成膜成形品1Xの裏面と型面3aとの隙間が大きくなって真空引きする際の時間短縮が図れることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成型した未成膜成型品の表面に成膜をして成膜成型品を製造するための成膜成型方法および成膜成型装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンブレム等の成膜成型品は射出成形した未成膜成型品の表面に成膜を施して製造することになるが、このようなものの製造手段として、射出成型用の金型に成膜装置を設け、未成膜状態の成型品を射出成型した後、該未成膜成型品の表面を成膜装置に突き当て、該表面に成膜を施すようにしたものを提唱し、これによって成膜成型品を一連の製造工程で簡単に製造できるようにした(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−168160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが前記提唱したものにおいて、成膜を施す部分が金型を脱型したときに露出している表面全体であるような場合、金型と未成膜成型品との境界部分(周端縁部分)金型が存在するため、該金型が邪魔になって綺麗で整然とした成膜を施すことができないという問題がある。しかも成膜時、成膜空間を真空にする必要があるが、型面と未成膜成型品とのあいだの狭い隙間にガス(空気)が存在し、このガスまでを吸引して真空状態にするのに時間がかかって作業性が悪いという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、型合わせした第一金型と第二金型とのあいだで未成膜成型品を射出成型する射出工程と、該未成膜成型品を第二金型から型離れしたときに露出する該未成膜成型品の表面に、成膜装置により成膜して成膜成型品を製造する成膜工程とを備えた成膜成型方法であって、未成膜成型品は、第一金型に設けられる孔状の型面に入り込む支持脚が裏面に形成されたものとし、前記成膜工程では、支持脚を中間位置まで孔状型面から押出して未成膜成型品の裏面が第一金型の裏面成型用型面から浮き上げた状態で行うようにしたことを特徴とする成膜成型品の製造方法である。
請求項2の発明は、成膜工程での支持脚の中間位置までの押出しは、成膜成型品を第一金型から脱型するためのエジェクターピンであることを特徴とする請求項1記載の成膜成型品の製造方法である。
請求項3の発明は、未成膜成型品を射出成型するための型面が形成される第一、第二の金型と、該成型された未成膜成型品を第二金型から型離れしたときに露出する該未成膜成型品の表面に成膜を施すべく設けた成膜装置とを備えた成膜成型品の成膜成型装置であって、第一金型には、未成膜成型品の裏面に支持脚を成型するための孔状型面が形成されたものとし、該孔状型面には、前記成膜を施す際に支持脚を中間位置まで孔状型面から押出して未成膜成型品の裏面が第一金型の裏面成型用型面から浮き上げた状態で行うための押出しピンが設けられていることを特徴とする成膜成型品の製造装置である。
請求項4の発明は、押出しピンは、成膜成型品を第一金型から脱型するためのエジェクターピンであることを特徴とする請求項3記載の成膜成型品の製造装置である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1または3の発明とすることにより、射出成型された未成膜成型品の第二金型から脱型されて第一金型から露出する表面は、該第一金型から離間した浮き上がった状態になり、この結果、成膜工程において第一金型が邪魔になることがないばかりでなく、未成膜成型品と第一金型の型面とのあいだが開くことになって、ここに入り込んでいるガス抜きが容易になり、製品精度が向上すると共に生産性のアップを図れることになる。
請求項2または4の発明とすることにより、成膜工程で未成膜成型品を浮き上がらせるピンが、成膜成型品を第一金型から脱型するためのエジェクターピンに兼用されるため、装置の部品点数を低減できて簡略化を達成できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図中、1はエンブレムに代表される成型成膜品であって、該成型成膜品1は、本体1aの表面全体に成膜2が施されると共に、裏面1bには該本体1aを躯体(組込み部材)側に取り付けるため躯体側に設けた取付け孔(図示せず)に挿入支持するための支持脚1cが突設されて形成されている。
【0007】
3、4は前記成型成膜品を製造するための金型であって、本実施の形態では、金型3を固定金型(本発明の「第一金型」に相当する)、金型4を可動金型(本発明の「第二金型」に相当する)とし、そして可動金型4を、固定金型3に対して離接移動と型面同士の平行移動とを行うことで相対移動ができるようになっているが、これらの移動機構については何れも従来のものを採用することができるので、その詳細については省略する。
【0008】
前記固定金型3には、成型成膜品1の裏面1bを形成するための型面3aと支持脚1cとを形成するための型面3bが形成されている。これに対し可動金型4には、成型成膜品1の表面を形成するための型面4aと、未成膜成型品1Xの表面に成膜2を施すための成膜装置5が設けられた凹状の成膜部6とが形成されている。前記成膜装置5は、成膜部6に一体的に設けられるケーシング7を備えて構成されており、該ケーシング7には、可動金型4側が開口する凹溝形状のターゲット室7aが形成され、該ターゲット室7aに、未成膜成型品1Xの表面に成膜2を施す手段であるマグネトロンスパッタリング装置5aが収容(内装)されている。ここで、成膜装置5として組み込まれる成膜手段としては、種々のスパッタリング装置、真空蒸着装置等、通常知られたものを適宜用いることができ、本実施の形態では、前述したように、マグネトロンスパッタリング装置5aが用いられている。前記マグネトロンスパッタリング装置5aは、成膜方向の直進性が低減され、よりムラのない成膜ができるような装置として汎用されており、ここでの詳細な説明は省略するが、真空ポンプP、吸気路8、マグネット9、成膜素材(金属)が設けられたターゲット10、図示しない不活性ガス供給路等の各種部材装置を備えて構成されている。尚、本実施の形態では、生産効率を高めるため、固定金型4には、成膜装置5の両側に位置して成型成膜品1の表面を形成するための前記型面4aがそれぞれ形成され、これによって成型と成膜とを同時的に行えるようになっている。
【0009】
11は固定金型3に設けられるエジェクターピンであって、該エジェクターピン11は、支持突起1cを型面3bから突き出して成膜成型品1を固定金型3から脱型するようになっているが、該エジェクターピン11は、前記成膜工程では、未成膜成型品1Xの支持突起1cを型面3bの中途位置まで押出すようになっており、そして未成膜成型品1Xの表面に成膜2を施して成型成膜品1にした後、さらに支持突起1cを押出して固定金型3から成膜成型品1を脱型するように設定されている。
【0010】
叙述のごとく構成された本発明の実施の形態において、成膜成型品1を製造するにあたり、成膜成型品1の裏面に、躯体側に取付け支持するための支持脚1cが形成されたものとし、そしてこの支持脚1cを、成膜工程では、型面3bから中間位置まで押出して、未成膜成型品1Xの裏面が固定金型3の裏面形成用型面3aから離間した浮き上がった状態で該未成膜成型品1Xの表面に成膜が施されることになる。この結果、未成膜成型品1Xの周端縁は固定金型3から離間した状態で成膜されることになって、固定金型3が邪魔して周端縁の成膜が綺麗に施されないような不具合が解消される。しかも未成膜成形体1Xの裏面と固定金型の型面3aとが離間して隙間が開くことになるから、この間に存在するガス抜きが容易になって真空引きの時間が短縮し、作業性が向上する。
【0011】
しかもこのものでは、成膜工程で未成膜成型品1Xの支持脚1cを中間まで押出すピンが、成膜成型品を固定金型3から離型させるため設けられるエジェクターピンであるから、専用の押出しピンが不要になって部品の兼用化が図れ、これによって装置の部品点数を殊更増加させることもなく、単にエジェクターピンの押出し位置を二段に制御すればよいことになって装置構成が複雑になることを回避できる。
【0012】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものでないことは勿論であって、前記成膜後、成膜面に樹脂材を二次射出する等の後加工ができることはいうまでもない。また金型については、両者が相対移動するものであれば良く、固定金型、可動金型を逆の構成にしても勿論実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(A)成膜成型品の平面図、(B)成膜成型品の断面図である。
【図2】成膜成形装置の概略図である。
【図3】成膜成形装置の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0014】
1 成膜成型品
1X 未成膜成型品
1c 支持脚
2 成膜
3 固定金型
3a 裏面の型面
3b 支持脚の型面
4 可動金型
4a 表面の型面
5 成膜装置
11 エジェクターピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型合わせした第一金型と第二金型とのあいだで未成膜成型品を射出成型する射出工程と、該未成膜成型品を第二金型から型離れしたときに露出する該未成膜成型品の表面に、成膜装置により成膜して成膜成型品を製造する成膜工程とを備えた成膜成型方法であって、未成膜成型品は、第一金型に設けられる孔状の型面に入り込む支持脚が裏面に形成されたものとし、前記成膜工程では、支持脚を中間位置まで孔状型面から押出して未成膜成型品の裏面が第一金型の裏面成型用型面から浮き上げた状態で行うようにしたことを特徴とする成膜成型品の製造方法。
【請求項2】
成膜工程での支持脚の中間位置までの押出しは、成膜成型品を第一金型から脱型するためのエジェクターピンであることを特徴とする請求項1記載の成膜成型品の製造方法。
【請求項3】
未成膜成型品を射出成型するための型面が形成される第一、第二の金型と、該成型された未成膜成型品を第二金型から型離れしたときに露出する該未成膜成型品の表面に成膜を施すべく設けた成膜装置とを備えた成膜成型品の成膜成型装置であって、第一金型には、未成膜成型品の裏面に支持脚を成型するための孔状型面が形成されたものとし、該孔状型面には、前記成膜を施す際に支持脚を中間位置まで孔状型面から押出して未成膜成型品の裏面が第一金型の裏面成型用型面から浮き上げた状態で行うための押出しピンが設けられていることを特徴とする成膜成型品の製造装置。
【請求項4】
押出しピンは、成膜成型品を第一金型から脱型するためのエジェクターピンであることを特徴とする請求項3記載の成膜成型品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−23189(P2009−23189A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187793(P2007−187793)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000149468)株式会社大嶋電機製作所 (89)
【Fターム(参考)】