説明

成長ホルモンおよび関連タンパク質の誘導体

【課題】20を超える構造的に関連するサイトカインおよび成長因子を含む、成長ホルモンスーパー遺伝子ファミリーにシステイン残基を付加する、またはシステイン置換を導入するための好ましい部位ならびにそれによって産生されるタンパク質およびタンパク質誘導体を提供する。
【解決手段】βインターフェロン等の成長ホルモンスーパー遺伝子ファミリータンパク質の、部位特異的な生物学的に活性な結合体を作製するための一般的な方法。この方法は、このタンパク質の必須でない領域にシステイン残基を付加する工程、または部位特異的変異誘発を用いてこのタンパク質における必須でないアミノ酸をシステイン残基で置換する工程、次いでこの付加されたシステイン残基を介してこのタンパク質にシステイン反応性ポリマーまたは他の型のシステイン反応性部分を共有結合させる工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子操作された治療タンパク質に関する。より詳細には、この操作されたタンパク質は、成長ホルモンおよび関連タンパク質を含む。
【背景技術】
【0002】
以下のタンパク質は、成長ホルモン(GH)スーパー遺伝子ファミリーの遺伝子によってコードされる(Bazan(1990);MottおよびGampbell(1995);SilvennoinenおよびIhle(1996)):成長ホルモン、プロラクチン、胎盤ラクトゲン、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン2(IL−2)、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12(p35サブユニット)、IL−13、IL−15、オンコスタチンM、毛様体神経栄養因子、白血病阻害因子、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、ωインターフェロン、τインターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)およびカルジオトロフィン1(CT−1)(「GHスーパー遺伝子ファミリー」)。この遺伝子ファミリーのさらなるメンバーが将来、遺伝子クローニングおよび配列決定によって同定されることが予期される。GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーは、それらが一般に限定されたアミノ酸配列またはDNA配列の同一性を有するという事実にも拘らず、類似する二次構造および三次構造を有する。共有された構造的特徴によって、この遺伝子ファミリーの新たなメンバーを容易に同定することが可能になる。
【0003】
長期に作用する、「ユーザーフレンドリ」なタンパク質療法の開発において患者および保健医療提供者の側においてかなりの関心が存在する。タンパク質は、製造するには高価で、そして従来の低分子薬物とは異なり、身体によっては容易に吸収されない。さらに、それらは、経口投与される場合に消化される。従って、天然のタンパク質は、注射によって投与されねばならない。注射後、ほとんどのタンパク質は、身体から迅速に除去される。このことは、頻繁な(しばしば、毎日の)注射を必要とさせる。患者は注射を嫌がるので、コンプライアンスの低下および薬物効力の減少がもたらされる。いくつかのタンパク質(例えば、エリスロポエチン(EPO))は、それほど頻繁に投与されない(EPOについては1週間に3回)場合でも、有効である。なぜなら、それらはグリコシル化されているからである。しかし、グリコシル化タンパク質は、高価な哺乳動物細胞発現系を用いて産生される。
【0004】
注射されたタンパク質が体内に残留する時間の長さは有限であり、そして例えば、そのタンパク質の大きさ、およびそのタンパク質が共有結合性の改変(例えば、グリコシル化)を含むか否かによって決定される。注射されたタンパク質の循環濃度は、定常的に、24時間の期間にわたって、しばしば、数桁変化する。タンパク質アゴニストが迅速に濃度を変えることは、劇的な下流の結果を有し得、あるときは標的細胞を刺激するに満たずそして別のときには過剰刺激する。類似の問題がタンパク質アンタゴニストを悩ませる。これらの変動は、タンパク質治療について、効力の減少および有害な副作用の頻度の増加を導き得る。組換えタンパク質の身体からの迅速な除去は、1患者あたりに必要とされるタンパク質の量を有意に増加させ、そして治療費を劇的に増加させる。ヒトタンパク質医薬品の費用は、向こう数年間劇的に増加することが予測される。なぜなら、新たなおよび既存の薬物がより多くの疾患適応について承認されるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、患者および保健医療提供者にとってタンパク質治療の費用を低下させるタンパク質送達技術の開発の必要性が存在する。本発明は、体内のタンパク質治療剤の循環半減期を延長する方法を提供し、その結果そのタンパク質が頻繁に注射される必要をなくならせることによって、この問題に対する解決策を提供する。この解決策はまた、「ユーザーフレンドリー」であるタンパク質治療、すなわち、頻繁な注射を必要としないタンパク質治療についての、患者の必要性および要求を満足する。本発明は、成長ホルモンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーの、生物学的に活性なシステイン付加改変体を提供することによって、これらおよび他の問題を解決する。本発明はまた、システイン反応性ポリマーまたは他の型のシステイン反応性部分を用いるこれらの改変体の化学的改変を提供して、その誘導体およびそのように産生される分子を産生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーのシステイン改変体を提供する。この改変体は、そのタンパク質の必須でないアミノ酸について置換されたシステイン残基を含む。好ましくは、この改変体は、ループ領域のアミノ酸、αヘリックスの末端付近のアミノ酸、第一の両親媒性ヘリックスの近位のアミノ酸、および最後の両親媒性ヘリックスの遠位のアミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸について置換されたシステイン残基を含むか、または、このシステイン残基がそのタンパク質のN末端またはC末端に付加されている。置換について好ましい部位は、N結合型およびO結合型のグリコシル化部位である。
【0007】
置換されるアミノ酸が、GHスーパー遺伝子ファミリーのインターフェロン/インターフェロン10様メンバーのA−Bループ、B−Cループ、C−Dループ、またはD−Eループに存在するシステイン改変体もまた提供される。
【0008】
このシステイン残基が天然タンパク質における2つのアミノ酸間に導入されているGHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーのシステイン改変体もまた提供される。詳細には、このシステイン残基は、ループ領域、αヘリックスの末端、第一の両親媒性ヘリックスの近位、または最後の両親媒性ヘリックスの遠位に導入される。さらにより詳細には、このシステイン改変は、N−O結合型グリコシル化部位における2つのアミノ酸の間、あるいはN結合型またはO結合型のグリコシル化部位におけるアミノ酸の近位に導入される。
【0009】
より詳細には、このシステインが導入されるループ領域がGHスーパー遺伝子ファミリーのインターフェロン/インターフェロン10様メンバーのA−Bループ、B−Cループ、C−DループまたはD−Eループである、システイン改変体が提供される。
【0010】
このようなシステイン置換または挿入変異はまた、このシステイン置換または挿入に対してアミノ末端またはカルボキシ末端での1以上のさらなるアミノ酸の挿入を含み得る。
このシステイン改変体をPEG化することおよびそれにより産生された誘導体化されたタンパク質を含むことによってさらに誘導体化されているシステイン改変体もまた提供される。
【0011】
実施例に示されるように、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーの特定のシステイン改変体(例えば、GHの改変体を含む)もまた提供される。GHシステイン改変体は、A−Bループ、B−Cループ、C−DループのN末端に位置する置換されるアミノ酸または挿入されたシステイン、A、B、CおよびDヘリックスにおける最初の3つまたは最後の3つのアミノ酸、ならびにヘリックスAの近位およびヘリックスDの遠位のアミノ酸を有し得る。
【0012】
より詳細には、このシステインは、以下のアミノ酸から置換され得る:F1、T3、P5、E33、A34、K38、E39、K40、S43、Q46、N47、P48、Q49、T50、S51、S55、T60、A98、N99、S100、G104、A105、S106、E129、D130、G131、S132、P133、T135、G136、Q137、K140、Q141、T142、S144、K145、D147、T148、N149、S150、H151、N152、D153、S184、E186、G187、S188、およびG190。
【0013】
本発明に従うシステイン改変体の他の例は、エリスロポエチン改変体を含む。エリスロポエチン改変体は、置換されるアミノ酸が、A−Bループ、B−Cループ、C−Dループに位置する改変体、ならびにヘリックスAの近位およびヘリックスDの遠位であり、かつN末端またはC末端のアミノ酸である、改変体を含む。さらにより具体的には、このEPOシステイン改変体は、以下に示すのアミノ酸がシステインで置換されている分子を含む:セリン126、N24、I25、T26、N38、I39、T40、N83、S84、A1、P2、P3、R4、D8、S9、T27、G28、A30、E31、H32、S34、N36、D43、T44、K45、N47、A50、K52、E55、G57、Q58、G77、Q78、A79、Q86、W88、E89、T107、R110、A111、G113、A114、Q115、K116、E117、A118、S120、P121、P122、D123、A124、A125、A127、A128、T132、K154、T157、G158、E159、A160、T163、G164、D165、R166およびS85。
【0014】
GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーは、成長ホルモン、プロラクチン、胎盤ラクトゲン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、インターロイキン2、インターロイキン3、インターロイキン4、インターロイキン5、インターロイキン6、インターロイキン7、インターロイキン9、インターロイキン10、インターロイキン11、インターロイキン12(p35サブユニット)、インターロイキン13、インターロイキン15、オンコスタチンM、毛様体神経栄養因子、白血病阻害因子、αインターフェロン、βインターフェロン、γインターフェロン、ωインターフェロン、τインターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、カルジオトロフィン1、およびこのファミリーのメンバーとして同定されそして分類された他のタンパク質を含む。これらのタンパク質は、ヒト、コンパニオン動物および家畜を含む任意の動物種に由来し得る。
【0015】
本発明についての他の改変および変更は、本明細書および本明細書に示される「規則」に基づけば、当業者に明らかである。これらのすべては、本発明の一部であるとみなされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、システイン改変体、およびとりわけ、ポリエチレングリコール(PEG)または他のこのような部分でのこのようなタンパク質の部位特異的な結合に関する。PEGは、非抗原性の不活性ポリマーであり、体内を循環するタンパク質の時間の長さを有意に延長する。このことにより、このタンパク質がより長い時間にわたって有効であることを可能にする。PEGでのタンパク質の共有結合的改変は、体内でのタンパク質の循環半減期を延長するに有用な方法であることが証明されている(Abuchowskiら、1984;Hershfield、1987;Meyersら、1991)。PEGのタンパク質への共有結合は、そのタンパク質の有効な大きさを増大させ、そして体内からの除去速度のその速度を減少させる。PEGは、いくつかのサイズで市販されており、このことは、異なる大きさのPEGの使用を通じて、PEG改変タンパク質の循環半減期が個々の適応について変更されることを可能にする。PEG改変の他の利点は、タンパク質溶解性
の増加、インビボでのタンパク質安定性の増加、およびタンパク質免疫原性の減少を含む(Katreら、1987;Katre、1990)。
【0017】
タンパク質をPEG化するための好ましい方法は、システイン反応性PEGを用いてシステイン残基にPEGを共有結合させることである。異なる反応基(例えば、マレイミド、ビニルスルホン)および異なる大きさのPEG(2〜20kDa)を有する高度に特異性なシステイン反応性PEGが多く市販されている(例えば、Shearwater、Polymers,Inc.、Huntsville、AL)。中性のpHでは、これらのPEG試薬は、「遊離の」システイン残基(すなわち、ジスルフィド結合に関与しないシステイン残基)に選択的に結合する。この結合体は、加水分解に対して安定である。システイン反応性PEGの使用により、規定された構造の均質なPEGタンパク質結合体の開発が可能である。
【0018】
商業的に重要なタンパク質治療剤の構造の決定およびそれらがそれらのタンパク質標的(例えば、細胞表面レセプター、プロテアーゼなど)とどのように相互作用するかについての理解が、ここ数年かなり伸展してきた。この構造の情報を使用して、システイン反応性PEGを用いたPEGタンパク質結合体を設計し得る。ほとんどのタンパク質のシステイン残基は、ジスルフィド結合に関与しており、そしてシステイン反応性PEGを用いたPEG化には利用可能でない。組換えDNA技術を用いたインビトロ変異誘発を通じて、さらなるシステイン残基を、タンパク質の任意の場所に導入し得る。付加されたシステインは、そのタンパク質の始まり、そのタンパク質の終末、そのタンパク質配列の2つのアミノ酸の間に導入され得るか、または好ましくは、そのタンパク質配列において存在するアミノ酸と置換され得る。新たに付加された「遊離の」システインは、システイン反応性PEGを用いたPEG分子の特異的な付加についての部位として作用し得る。付加されたシステインは、この方法が成功であるためには、PEG化のためにタンパク質の表面に曝露され、そして接近可能でなければならない。付加されるシステイン部位を導入するのに使用される部位が生物学的活性に必須でない場合、PEG化タンパク質は、本質的に、野生型(正常な)インビトロ生物活性を示す。システイン反応性PEGでタンパク質をPEG化する際の主な技術的障害は、システイン残基が、生物活性の損失を伴うことなく、付加され得るか、または存在するアミノ酸と置換され得る場合に、標的タンパク質において、表面に曝露され、必須でない領域を同定することである。
【0019】
いくつかのヒトタンパク質のシステイン付加改変体およびこれらのタンパク質のPEGポリマー結合体が記載されている。米国特許第5,206,344号は、IL−2のシステイン付加改変体を記載する。このシステイン付加改変は、成熟IL−2ポリペプチド鎖のアミノ末端から最初の20アミノ酸以内に位置する。好ましいシステイン改変は、この成熟ポリペプチド鎖の3位に存在し、これは、天然に存在するタンパク質においてO−グリコシル化されるスレオニン残基に対応する。3位でのスレオニンのシステインでの置換は、システイン反応性PEGでPEG化され得、そしてインビトロ生物活性を充分保持し得るIL−2改変体を生じる(GoodsonおよびKatre、1990)。対照的に、リジン反応性PEGでの天然のIL−2 PEG化は、インビトロ生物活性の減少を示す(GoodsonおよびKatre,1990)。IL−2での他の位置でのシステイン置換の効果は、報告されなかった。
【0020】
米国特許第5,166,322号は、IL−3のシステイン付加改変体を教示する。この改変は、成熟タンパク質配列のN末端から最初の14アミノ酸内に存在する。この特許は、細菌でのこのタンパク質の発現およびシステイン反応性PEGでのタンパク質の共有結合性改変を教示する。IL−3のこのシステイン付加改変体およびPEG結合体が生物学的に活性であるか否かに関してはなんら情報は提供されていない。このポリペプチド鎖における他の位置でのシステイン付加改変は、報告されなかった。
【0021】
国際特許出願WO9412219およびPCT出願US95/06540は、インスリン様成長因子I(IGF−I)のシステイン付加改変体を教示する。IGF−Iは、GHとは非常に異なる構造を有し、そしてGHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーではない(MottおよびCampbell、1995)。IGF−Iタンパク質における多くの位置でのシステイン置換が記載される。このシステイン付加改変体の特定のものだけが生物学的に活性である。このシステイン付加改変体について好ましい部位は、成熟タンパク質鎖におけるアミノ酸69位である。タンパク質のN末端付近(残基1〜3)でのシステイン置換は、生物学的活性の減少および不適切なジスルフィド結合を伴うIGF−I改変体を生じた。
【0022】
国際特許出願WO9422466は、インスリン様成長因子(IGF)結合タンパク質1の2つのシステイン付加改変体を教示する。このタンパク質は、GHとは非常に異なる構造を有し、そしてGHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーではない。開示されている、この2つのシステイン付加IGF結合タンパク質1の改変は、成熟タンパク質鎖において98位および101位に位置し、そして天然に存在するタンパク質においてリン酸化されているセリン残基に対応する。
【0023】
米国特許出願07/822296は、腫瘍壊死因子結合タンパク質のシステイン付加改変体を教示する。このタンパク質は、腫瘍壊死因子細胞レセプターの可溶性の短縮型形態である。腫瘍壊死因子結合タンパク質は、GHとは非常に異なる構造を有し、そしてGHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーではない。
【0024】
IGF−I、IGF結合タンパク質1および腫瘍壊死因子結合タンパク質は、GHとは非常に異なる二次構造および三次構造を有し、そしてこれらのタンパク質は、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーではない。このため、IGFI、IGF結合タンパク質1および腫瘍壊死因子結合タンパク質の研究から得られた情報を使用して、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーのシステイン付加改変体を作製することは、困難である。IL−2およびIL−3を用いた研究は、IL−2およびIL−3の構造が公知となる(McKay、1992;Bazan、1992)前、およびこれらのタンパク質がGHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであることが公知となる前に行われた。IL−2およびIL−3へのシステイン残基の付加について好ましい部位を同定することを目的とした以前の実験は、主として経験的であり、そしてGHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーが類似の二次構造および三次構造を有することを示す実験の前に行われた。
【0025】
GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーについて現在利用可能となった構造情報に基づいて、本発明は、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーにおけるどの領域およびアミノ酸残基を使用して生物学的活性の有意な損失を伴うことなくシステイン残基を導入または置換し得るかについて演繹的に決定するための「規則」を提供する。天然に存在するタンパク質とは対照的に、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーのこれらのシステイン付加改変体は、そのポリペプチド鎖内での規定された部位でのシステイン反応性ポリマーまたは他の型のシステイン反応性部分での共有結合的に改変される能力のような新規の特性を有する。これらの共有結合的に改変されたタンパク質は生物学的に活性である。
【0026】
GHは、GHスーパー遺伝子ファミリーにおいて最も充分に研究されたメンバーである。GHは、脳下垂体によって分泌される22kDaタンパク質である。GHは、骨、軟骨および筋肉の代謝を刺激し、そして小児期の間の身体の成長を刺激するための身体の主要なホルモンである。組換えヒトGH(rhGH)は、小児におけるGHの不足および腎不全から生じる低身長を処置するのに使用される。GHは、グリコシル化されておらず、そして細菌において完全に活性な形態で産生され得る。このタンパク質は、短いインビボで
の半減期を有しており、そして最大限の効果のために毎日皮下注射によって投与されねばならない(MacGillivrayら、1996)。組換えヒトGH(rhGH)は、AIDS患者における悪液質を処置するために最近承認され、そして他の疾患に関連する悪液質を処置することについて研究中である。
【0027】
ヒトGHの配列は周知である(例えば、Martialら、1979;Goeddelら、1979を参照のこと、これは、本明細書において参考として援用される;配列番号1)。GHは、プロラクチンおよび胎盤ラクトゲンと配列が密接に関連しており、そしてこれらの3つのタンパク質は、もともと、小さな遺伝子ファミリーを含むと考えられていた。GHの一次配列は、動物種間で非常に保存されている(Abdel−Meguidら、1987)。このことは、このタンパク質の広範な種の交叉反応性と一致する。ブタGHの三次元折り畳みパターンは、X線結晶学によって解析された(Abdel−Meguidら、1987)。このタンパク質は、コンパクトな球状の構造を有し、ループによって結合される両親媒性のαヘリックスルの4つの束を含む。ヒトGHは、類似の構造を有する(de Vosら、1992)。この4つのαヘリックス領域は、タンパク質のN末端から始まって、A〜Dと称される。このループ領域は、それらが結合する(例えば、A−BループはAおよびBのヘリックスの束を結合する)ヘリックス領域によって言及される。A−BループおよびC−Dループは長いが、BCループは短い。GHは、4つのシステイン残基を含み、それらの全てがジスルフィド結合に関与する。ジスルフィドの割り当ては、システイン53のシステイン165への結合、およびシステイン182のシステイン189への結合である。
【0028】
そのレセプターに結合したGHの結晶構造は、GHが2つのレセプター結合部位を有し、そして2つのレセプター分子を結合することを示す(Cunninghamら、199
1;de Vosら、1992)。この2つのレセプター結合部位は、部位Iおよび部位
IIと呼ばれる。部位Iは、ヘリックスDのカルボキシ(C)末端ならびにヘリックスAおよびA−Bループの一部を包含し、その一方、部位IIは、ヘリックスAのアミノ(N)末端領域およびヘリックスCの部分を包含する。GHのそのレセプターへの結合は、部位Iが常に最初に結合して続いて起こる。次いで部位IIが、第2のGHレセプターに係合し、GHに対する細胞内応答に至る、レセプターの二量体化および細胞内シグナル伝達経路の活性化を生じる。部位IIが変異したGHムテイン(アミノ酸120におけるグリシン
からアルギニンへの変異)は、単一のGHレセプターに結合し得るが、GHレセプターを
二量体化し得ない;このムテインは、おそらく、細胞内シグナル伝達経路を活性化することなくGHレセプター部位を占有することにより、インビトロでGHアンタゴニストとして作用する(Fuhら、1992)。
【0029】
GHレセプター結合および細胞内シグナル伝達における特定領域およびアミノ酸の役割はまた、変異誘発、モノクローナル抗体およびタンパク質分解消化のような技術を用いて研究されている。最初の変異誘発実験は、GHの全領域を、近縁のタンパク質であるプロラクチンの類似の領域で置き換えることを伴った(Cunninghamら、1989)。1つの知見は、GHのB−Cループのプロラクチンのそれとの置換が、ハイブリッドGHタンパク質のヒトGHレセプターの可溶性形態への結合に影響しなかったことであり、これは、B−Cループがレセプター結合に必須ではなかったことを示す。アラニンスキャニング突然変異誘発(個々のアミノ酸のアラニンでの置換)は、GH生体活性に重要である14のアミノ酸を同定した(CunninghamおよびWells,1989)。これらのアミノ酸は、ヘリックスA、B、C、およびDならびにA−Bループ中に位置し、そして構造研究から同定された部位IおよびIIに対応する。アミノ酸位置41および172の2つのリジン残基であるK41およびK172は、部位Iのレセプター結合部位の重要な成分であると決定され、これは、K172がアセチル化された時に観察された生体活性の減少を説明する(TehおよびChapman、1988)。K168の修飾もまた、GH
レセプター結合および生体活性を顕著に低減させた(de la Llosaら、198
5;Martalら、1985;TehおよびChapman、1988)。GHレセプ
ターを結合することに関係するGHの領域はまた、モノクローナル抗体を用いて研究された(Cunninghamら、1989)。一連の8つのモノクローナル抗体がヒトGHに対して生成され、そしてGH活性を中和し、そしてGHのその組換え可溶性レセプターへの結合を防げる能力について分析された。後者の研究は、各モノクローナル抗体に対する推定の結合部位を、GH三次元構造内に局在化することにした。興味深いのは、モノクローナル抗体1および8は、GHをそのレセプターを結合することから置換し得なかったことであった。これらのモノクローナル抗体に対する結合部位は、B−Cループ(モノクロ
ーナル番号1)およびA−BループのN末端(モノクローナル番号8)に局在化した。C−
Dループに特異的に結合したモノクローナル抗体は研究されなかった。このモノクローナル抗体研究は、B−CループおよびA−BループのN末端がレセプター結合に必須ではないことを示唆する。最後に、トリプシンを用いたGHの限定切断は、完全活性を保持した2つの鎖誘導体を生成することが見出された(Millsら、1980;Li、1982)。マッピング研究は、トリプシンがC−Dループに対応する位置134と位置149との間を切断および/またはその間のアミノ酸を欠失したことを示した。これらの研究は、C
−Dループがレセプター結合またはGH生体活性に関与しないことを示唆する。
【0030】
G−CSF(Hillら、1993)、GM−CSF(Diederichsら、199
1;Walterら、1992)、IL−2(Bazan、1992;Mckay、1992)、IL−4(Redfieldら、1991;Powersら、1992)、およびI
L−5(Milburnら、1993)を含む多くのサイトカインの構造が、X線回折研究およびNMR研究により決定され、そして顕著な一次配列相同性の欠如にも拘わらず、GH構造をともなう顕著な保存を示す。モデリングおよび変異誘発研究に基づいて、EPOは、このファミリーのメンバーであると考えられている(Boisselら、1993;
Wenら、1994)。毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病阻害因子(LIF)、トロ
ンボポイエチン(TPO)、オンコスタチンM、マクロファージコロニー刺激因子(M−C
SF)、IL−3、IL−6、IL−7、IL−9、IL−12、IL−13、IL−1
5、およびα−、β−、ω−、τ−およびγ−インターフェロンを含む多くの数のさらなるサイトカインおよび成長因子がこのファミリーに属する(MottおよびCampbe
ll、1995:SilvcnnoinenおよびIhle1996に総説がある)。上
記のサイトカインおよび成長因子のすべては、GHがプロトタイプである、1つの大きな遺伝子ファミリーを構成すると現在考えられている。
【0031】
類似の二次構造および三次構造を共有することに加えて、このファミリーのメンバーは、それらが細胞表面レセプターをオリゴマー形成し、細胞内シグナル伝達経路を活性化させるに違いないという性質を共有する。いくつかのGHファミリーのメンバー、例えば、GHおよびEPOは、単一のタイプのレセプターに結合し、そしてそれをホモダイマーを形成するようにする。他のファミリーメンバー、例えば、IL−2、IL−4、およびIL−6は、1つより多いタイプのレセプターに結合し、そしてこれらレセプターをヘテロダイマーまたはより上位の凝集体を形成するようにする(Davisら、1993;Pa
onessaら、1995;MottおよびCampbell、1995)。変異誘発研
究は、GHのように、これら他のサイトカインおよび成長因子が、複数の、代表的には2つのレセプター結合部位を含み、そしてそれらの同族のレセプターを逐次的に結合することを示した(MottおよびCampbell、1995;Marthewsら、199
6)。GHのように、これらの他のファミリーのメンバーに対する主要なレセプター結合
部位は、主に4つのαヘリックスおよびA−Bループに生じる(MottおよびCamp
bell、1995に総説がある)。レセプター結合に関与するヘリックス状の束にある
特定アミノ酸は、ファミリーのメンバー間で異なる(MottおよびCampbell、
1995)。GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーと相互作用する細胞表面レセプタ
ーの大部分は構造的に関連し、そして第2の大きな複数遺伝子ファミリーを構成する(B
azan、1990;MottおよびCampbell、1995;SilvennoinenおよびIhle、1996)。
【0032】
GHスーパー遺伝子ファミリーの種々のメンバーの変異的研究から到達した一般的な結論は、αヘリックスを結合型するループは、一般にレセプター結合に関与しない傾向にあることである。特に、短いB−Cループは、全てではないにしても大部分のファミリーメンバーにおいてレセプター結合に必須ではないようである。この理由のため、B−Cループは、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーにシステイン置換を導入するための好適な領域である。A−Bループ、BCループ、C−Dループ(およびGHスーパー遺伝子フ
ァミリーのインターフェロン/IL−10様メンバーのD−Eループ)はまた、システイン変異を導入するための好適な部位である。ヘリックスAの近位方向にあってかつ最終ヘリックスの遠位方向にあるアミノ酸はまた、レセプター結合に関与しない傾向にあり、そしてまたシステイン置換を導入するための好適な部位でもある。GHファミリーの特定のメンバー、例えば、EPO、IL−2、IL−3、IL−4、IL−6、G−CSF、GM−CSF、TPO、IL−10、IL−12p35、IL−13、IL−15およびβ-
インターフェロンは、N結合型糖およびO結合型糖を含む。タンパク質中のグリコシル化部位は、ほとんど独占的にループ領域中にあり、そしてα−ヘリックス束中にはない。ループ領域は、一般に、レセプター結合に関与しないため、そしてそれらは糖基の共有結合のための部位であるので、それらはタンパク質中にシステイン置換を導入するための好適な部位である。タンパク質中にN結合型グリコシル化部位およびO結合型グリコシル化部位を含むアミノ酸は、システイン置換の好適な部位である。なぜなら、これらのアミノ酸は表面にむき出しであり、天然のタンパク質は、これらの部位でタンパク質に付着するかさばる糖基に耐え得て、そしてグリコシル化部位は、レセプター結合部位から離れて位置する傾向にあるからである。
【0033】
多くのさらなる、GH遺伝子ファミリーのメンバーが将来発見されるようである。GHスーパー遺伝子ファミリーの新たなメンバーは、推定されたタンパク質配列のコンピューター支援二次および三次構造分析により同定され得る。GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーは、非ヘリックスアミノ酸により結合型された4つまたは5つの両親媒性ヘリックス(ループ領域)を所有する。これらタンパク質は、それらのN末端に疎水性のシグナル配列を含み、細胞からの分泌を促進し得る。このような後に発見されたGHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーもまた、本発明に含まれる。
【0034】
本発明は、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーの生物学的に活性なシステインが付加された改変体を作成するための「規則」を提供する。これらの「規則」は、現存するかまたは将来のGHスーパー遺伝子ファミリーの任意のメンバーに適用され得る。このシステインが付加された改変体は、天然に存在するタンパク質によって共有されない新たな性質を所有する。最も重要なことは、このシステインが付加された改変体は、それらがシステイン反応性ポリマーまたはその他のタイプのシステイン反応性成分で共有結合により修飾され、増加したインビボ半減期、増加した溶解度および改善されたインビボ効力のような改善された性質をもつ生物学的に活性なタンパク質を生成し得るという性質を所有することである。
【0035】
より詳細には、本発明は、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーの生物学的に活性なシステイン改変体を、タンパク質中の非必須アミノ酸をシステイン残基で置換することにより提供する。好ましくは、このシステイン残基は、ループ領域を構成するアミノ酸、α−ヘリックスの末端近くのアミノ酸およびこれらタンパク質の第1の両親媒性ヘリックスの近位方向にあるかまたは最後の両親媒性ヘリックスの遠位方向にあるアミノ酸に置き換わる。システイン残基を付加するための他の好適な部位は、これらタンパク質のN末端
またはC末端である。システイン残基はまた、このポリペプチド鎖の開示された領域中の2つのアミノ酸の間に導入され得る。本発明は、これらタンパク質中のN結合型およびO結合型グルコシル化部位が、この部位を構成するアミノ酸の置換によるか、またはN結合型部位の場合、その中へのシステインの導入によるかのいずれかで、システイン置換を導入するための好適な部位であることを教示する。このグリコシル化部位は、Oグリコシル化されるセリンもしくはスレオニン残基、またはNグリコシル化されるアスパラギン残基であり得る。N結合型グリコシル化部位は、一般構造であるアスパラギン−X−セリンまたはスレオニン(N−X−S/T)を有し、ここでXは任意のアミノ酸であり得る。X位置
にあるアミノ酸であるアスパラギン残基およびN結合型グリコシル化部位のセリン/スレ
オニン残基は、これらのタンパク質の生物学的に活性なシステインが付加された改変体を作成するための好適な部位である。O結合型およびN結合型グリコシル化部位のすぐ周辺または隣接するアミノ酸(グリコシル化部位のいずれかの側の約10残基以内)は、システイン置換を導入するための好適な部位である。
【0036】
より一般的には、生物学的に活性なシステインが付加されたタンパク質改変体を作成するために好適な部位を同定するための特定の「規則」は、まさにGHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであることのない任意のタンパク質に適用され得る。より詳細には、これらタンパク質(IL−2以外)の生物学的に活性なシステイン改変体を作成するための好適な部位は、O結合型グリコシル化部位である。O結合型グリコシル化部位のすぐ周辺のアミノ酸(グリコシル化部位のいずれかの側の約10残基以内)もまた好適な部位である。N結合型グリコシル化部位、およびグリコシル化部位のいずれかの側にすぐ隣接するアミノ酸残基(NX−S/T部位の約10残基以内)もまたシステインが付加されたタンパク質
改変体を作成するための好適な部位である。生物学的活性の顕著な損失なくしてシステインで置換され得るアミノ酸はまた、システインが付加されたタンパク質改変体を作成するための好適な部位である。このような非必須アミノ酸は、標的タンパク質に対してシステインスキャニング変異誘発を行い、そして生物学的活性に対する影響を測定することにより同定され得る。システインスキャニング変異誘発は、ポリペプチド鎖中の個々のアミノ酸にシステイン残基を付加することまたは置換すること、および生物学的活性に対するシステイン置換の影響を測定することをともなう。システインスキャニング変異誘発は、標的アミノ酸が個々にアラニン残基よりもむしろシステイン残基で置換されることを除いては、アラニンスキャニング変異誘発(Cunninghamら、1992)と同様である。
【0037】
システインが付加された改変体およびタンパク質アンタゴニストの同族体を作成するための「規則」の適用がまた意図される。サイトカインおよび成長因子の過剰産生は、慢性関節リウマチ、喘息、アレルギーおよび創傷はん痕のような多くの炎症性症状の病理に関連している。GHの過剰産生は、先端巨大症の原因として関係している。特定の成長因子およびサイトカイン、例えば、GHおよびIL−6は、特定の癌の増殖に関係している。炎症および癌に関係する多くの成長因子およびサイトカインは、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーである。これらの疾患を処置するためにこれら分子のタンパク質アンタゴニストを開発することにおいて重要な興味がある。1つの戦略は、サイトカインおよび成長因子を、それらがレセプターに結合し得るがオリゴマー化しないように操作することを含む。これは、分子上の第2のレセプター結合部位(部位II)を変異誘発することにより達成される。得られるムテインは、レセプター部位に結合しかつ占有し得るが、細胞内シグナリング経路を活性化し得ない。この戦略は、GHに首尾良く適用され、GHアンタゴニストを作成してきた(Cunninghamら、1992)。IL−2(Zuraws
kiら、1990;ZurawskiおよびZurawski、1992)、IL−4(Kruseら、1992)、IL−5(Tavernierら、1995)、GM−CSF(Hercusら、1994)およびEPO(Matthewsら、1996)のようなGHス
ーパー遺伝子ファミリーのその他のメンバーのアンタゴニストを開発するために類似の戦略が追求されている。本明細書に記載のGHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーにシス
テイン残基を付加する好適な部位は、これらのタンパク質中のレセプター結合部位の外側に存在し、そしてそれ故、タンパク質アンタゴニストを作成するために用いられる任意の部位から除去されるので、本明細書に記載のシステインが付加された改変体は、長期間作用するタイプのタンパク質アンタゴニストを生成するために用いられ得る。例として、Cunninghamら(1992)は、グリシン残基(アミノ酸120)をアルギニンに変異させることによりインビトロのGHアンタゴニストを開発した。このグリシン残基は、それがアルギニンで置換される場合;GHにおいて第2のレセプター結合部位の重要な成分である。GHはレセプターを二量体化し得ない。位置120におけるグリシンからアルギニンへの変異は、本明細書で意図されるGHのシステイン付加改変体をコードするDNA配列中に導入され得、システイン反応性のPEGまたはその他のタイプのシステイン反応性成分と結合し得るシステインが付加されたGHアンタゴニストを作成する。同様に、その他のタンパク質における、これらタンパク質をアゴニストからアンタゴニストに変えるアミノ酸の変化が、本明細書に記載のシステインが付加されたタンパク質改変体をコードするDNA配列中に取り込まれ得る。タンパク質アゴニストをアンタゴニストに変換するアミノ酸変化を同定するために相当な努力が費やされている。Hercusら(1994)は、成熟GM−CSFタンパク質中の位置21におけるグルタミン酸をアルギニンまたはリジンで置換すると、GM−CSFがアゴニストからアンタゴニストに転換することを報告した。Tavernierら(1995)は、成熟IL−5の位置13におけるグルタミン酸をグルタミンに置換することはIL−5アンタゴニストを作成することを報告した。
【0038】
上記に記載の戦略と類似の実験的戦略を用いて、種々の動物由来のGHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーのシステインが付加された改変体(アゴニストおよびアンタゴスト
の両者)を作成し得る。これは、サイトカインおよび成長因子の一次アミノ酸配列および
構造がヒトおよび動物種の間で大部分が保存されているので可能である。この理由により、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーの生物学的に活性なシステインが付加された改変体を作成するための本明細書に開示された「規則」は、身近な動物種(例えば、イヌ
、ネコ、ウマ)および商業用動物種(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ)のGHスーパー遺伝子
ファミリーのメンバーの生物学的に活性なシステインが付加された改変体を作成するために有用である。これらのシステインが付加された改変体の、システイン反応性PEGとの結合は、身近な動物および商業的な家畜の市場に利益を与えるこれらタンパク質の長く作用する型を作成する。
【0039】
GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであるタンパク質(造血サイトカイン)は、SilvennoimemおよびIhle(1996)で提供される。SilvennoimemおよびIhle(1996)はまた、これらタンパク質の構造および発現に関する情報を提供する。本明細書に記載のタンパク質のためのDNA配列、コードされるアミノ酸ならびにインビトロおよびインビボバイオアッセイは、AggarwalおよびGutterman(1992;1996)、Aggarwal(1998)、およびSilvennoimemおよびIhle(1996)に記載される。これらタンパク質に対するバイオアッセイもまた、これらタンパク質の種々の市販の供給者(例えば、R&D Systems
,Inc.、Endogen,Inc.)のカタログ中に提供されている。
【0040】
以下の実施例は、GH、エリスロポイエチン、α−インターフェロン、β−インターフェロン、G−CSF、GM−CSFおよびGHスーパー遺伝子ファミリーのその他のメンバーのシステインが付加された改変体を作成するためにこれらの「規則」がどのように用いられ得るかを示すために提供される。これらの実施例は、制限されるべきであることは意図されず、本発明の特定の実施態様の例示を示すに過ぎない。
【0041】
(実施例1)
GHのシステイン付加改変体この実施例は、GHにおいて、生物学的活性には必須では
なく、そしてそれがシステイン残基に変異する場合に分子のジスルフィド結合パターンおよび全体のコンホメーションを変えない特定のアミノ酸を開示する。これらのアミノ酸は、A−BループのN末端(成熟タンパク質配列のアミノ酸34−52;配列番号1;Ma
rtialら 1979;Goeddelら 1979)、B−Cループ(成熟タンパク質配列中のアミノ酸97−105)、およびC−Dループ(成熟タンパク質配列中のアミノ酸130−153)に位置する。システイン残基を導入するために好適な部位としてもまた
同定されるのは、A、B、CおよびDヘリックス中の最初の3つまたは最後の3つのアミノ酸、およびヘリックスAの近位方向およびヘリックスDの遠位方向にあるアミノ酸である。
【0042】
野生型GHをコードするDNA配列は、ヒト下垂体から調製された市販の一本鎖cDNA(ClonTech、San Diego、CA)からポリメラーゼ連鎖反応技術を用いて増幅し得るか、または重複するオリゴヌクレオチドを用いて構策され得る。特定の変異は、ファージ技術(Kunkelら、1987)、PCR変異誘発技術(Innisら 1
990;White 1993)、Stratagene(「Quick−Change Mutagenesis」キット、San Diego、CA)またはPromega(Gene Editor Kit、Madison WI)により販売されるような変異誘
発キットのような種々の手順を用いてGH配列中に導入され得る。
【0043】
システイン置換は、B−Cループ、C−DループおよびA−BループのN末端を構成する任意のアミノ酸中に、またはこれらの領域に隣接するα−ヘリックス領域の最初の3つのアミノ酸中に、あるいはヘリックスAの近位方向にあるかまたはヘリックスDの遠位方向にある領域中に導入され得る。システイン残基の導入に好適な部位は:F1、T3、P5、E33、A34、K38、E39、Q40、S43、Q46、N47、P48、Q49、T50、S51、S55、T60、A98、N99、S100、G104、A105、S106、E129、D130、G131、S132、P133、T135、G136、Q137、K140、Q141、T142、S144、K145、D147、T148、N149、S150、H151、N152、D153、S184、E186、G187、S188、およびG190である。システイン残基はまた、成熟タンパク質の始めに、すなわちF1アミノ酸の近位方向に、または成熟タンパク質の最後のアミノ酸の後に、すなわちF191の後に導入され得る。所望であれば、2つ以上のこのような変異は、クローン化された変異体遺伝子のインビトロDNA組換えおよび/または個々の所望の変異の
逐次的構築のいずれかにより同一タンパク質中に容易に組み合わせられ得る。
【0044】
1.ヒト成長ホルモン(GH)遺伝子のクローニング
ヒトGH遺伝子を、ヒト下垂体一本鎖cDNA(CLONTECH,Inc.,Pal
o Alto,CAから入手可能)から、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術およびプラ
イマーBB1およびBB2を用いて増幅した。BB1の配列は、5’-GGGGGTCG
ACCATATGTTCCCAACCATTCCCTTATCCAG−3’(配列番号2
4)である。BB2の配列は、5’−GGGGGATCCTCACTAGAAGCCAC
AGCTGCCCTC−3’(配列番号25)である。プライマーBB1は、成熟GHの最初のアミノ酸であるフェニルアラニンに先行する開始メチオニン、およびクローニング目的のためのSalIおよびNdeI部位をコードするように設計された。逆プライマーBB2は、クローニング目的にBamHI部位を含む。PCRの100マイクロリットル反応は、20ピコモルの各オリゴヌクレオチドプライマー、1XPCR緩衝液(MgCl2
を含むPerkin−Elmerの緩衝液)、200マイクロモル濃度の各4つのヌクレ
オチドdA、dC、dGおよびdT、2ngの一本鎖cDNA、2.5単位のTaqポリメラーゼ(Perkin−Elmer)ならびに2.5単位のPfuポリメラーゼ(Str
atagene,Inc)を含んだ。PCR反応条件は、96℃3分間、35サイクル(95℃、1分間;63℃、30秒間;72℃、1分間)、次いで72℃で10分間であった
。用いたサーモサイクラーは、AmplitronII Thermal Cycler(Thermolyne)であった。約600bpのPCR産物を、SalIおよびBamHIで消化し、ゲル精製し、そして同様に消化したプラスミドpUC19(New En
gland BioLabs,Beverly,MAから入手可能)中にクローン化した
。結合型混合物をE.coli株DH5α中に形質転換し、そして形質転換体をアンピシリンを含むLB平板上で選択した。いくつかのコロニーをLB培地中で一晩増殖させ、そしてプラスミドDNAをQiagen,Inc(Valencia,CA)から購入したミニプラスミドDNA単離キットを用いて単離した。クローンLB6が正確なDNA配列を有することを決定した。
【0045】
E.coliにおける発現には、クローンLB6をNdeIおよびEcoRIで消化し、約600bpのフラグメントをゲル精製し、そして同じ酵素で消化し、そしてホスファターゼ処理したプラスミドpCYB1(New EnglandBioLabs,Bev
erly,MA)中にクローン化した。結合型混合物をE.coliDHα中に形質転換
し、そしてLBアンピシリンプレート上で形質転換体を選択した。プラスミドDNAをいくつかの形質転換体から単離し、そしてNdeIおよびEcoRIを用いた消化によりスクリーニングした。正確なクローンを同定し、そしてpCYB1:wtGH(pBBT1
20)と命名した。このプラスミドを、E.coli株JM109またはW3110(New England BioLabsおよびAmerican Type Culture Collectionから入手可能)中に形質転換した。
【0046】
2.STII−GHの構築
野生型GHクローンLB6(pUC19:野生型GH)をテンプレートとして用いE.coli STIIシグナル配列(Pickenら、1983)を含むGHクローンを構築した。その長さのために、STII配列を2つの逐次的PCR反応に添加した。最初の反応は、前方向プライマーBB12と逆方向プライマーBB10を用いた。BB10は、配列:5’CGCGGATCCGATTAGAATCCACAGCTCCCCTC3’(配列
番号28)を有する。BB12は、配列:5’ATCTATGTTCGTTTTCTCT
ATCGCTACCAACGCTTACGCATTCCCAACCATTCCCTTATCCAG−3’(配列番号30)を有する。
【0047】
PCR反応は、一本鎖cDNAよりもむしろ約4ngのプラスミドLB6をテンプレートとして用い、そしてPCR条件が、96℃3分間、30サイクル(95℃1分間;63
℃30秒間;72℃1分間)、次いで72℃10分間であったことを除いては、野生型G
Hを増幅するために記載と同じあった。約630bpのPCR産物を、QiaexII Gel Extraction Kit(Qiagen,Inc)を用いてゲル精製し、水で50倍に希釈し、そして2マイクロリットルを第2のPCR反応のテンプレートとして用いた。第2のPCR反応は、逆方向プライマーBB10および前方向プライマーBB11を用いた。BB11は配列:5’CCCCCTCTAGACATATGAAGAAGAACATCGCATTCCTGCTGGCATCTATGTTCGTTTTCTCTATCG-3’(配列番号29)を有する。
【0048】
プライマーBB11は、クローニング目的にXbaIおよびNdeI部位を含む。PCR条件は、第1の反応について記載と同じであった。約660bpのPCR産物を、XbaIおよびBamHIで消化し、ゲル精製し、そして同様に切断したプラスミドであるpCDNA3.1(+)(Invitrogen,Inc.Carlsbad,CA)中にクローン化した。クローンpCDNA3.1(+)::stII-GH(5C)または「5C」は
正確なDNA配列を有すると決定した。
【0049】
クローン「5C」を、NdeIおよびBamHIで切断し、そして同様に切断したpB
BT108(PstI部位を欠くpUC19の誘導体、このプラスミドは以下に記載され
る)中にクローン化した。正確な挿入片を持つクローンを、これらの酵素で消化した後に
同定した。pBBT111と称したこのクローンを、NdeIおよびSalIで消化し、stII-GH融合遺伝子を含む660bpのフラグメントをゲル精製し、そして同じ酵
素で消化しそしてホスファターゼ処理したプラスミド発現ベクターpCYB1(New
England BioLabs)中にクローン化した。stII-GH挿入片を含む組換えプラスミドを制限エンドヌクレアーゼ消化により同定した。1つのこのような単離体をさらなる研究のために選択し、そしてpBBT114と称した。このプラスミドを、E.coli株JM109またはW3110(New England BioLabsおよ
びAmerican Type Cuture Collectionから入手可能)中
に形質転換した。
【0050】
3.ompA-GHの構築
野生型GHクローンであるLB6(pUC19:野生型GH)をテンプレートとして用い、E.coliのompAシグナル配列(Movvaら 1980)を含むGHクローンを構築した。その長さのため、ompA配列を2つの逐次的PCR反応物中に添加した。最初の反応は、前方向プライマーであるBB7:5’GCAGTGGCACTGGCTGGTTTCGCTACCGTAGCGCAGGCCTTCCCAACCATTCCCTTATCCAG3’(配列番号31)、および逆方向プライマーであるBB10:5’CGCGGATCCGATTAGAATCCACAGCTCCCCTC3’(配列番号28)を用いた。
【0051】
PCR反応は、一本鎖cDNAよりもむしろ約4ngのプラスミドLB6をテンプレートとして用い、そしてPCR条件が、96℃3分間、30サイクル(95℃1分間;63
℃30秒間;72℃1分間)次いで72℃10分間であったことを除いては、野生型GH
を増幅するために記載と同じであった。約630bpのPCR産物を、QiaexII Gel Exatraction Kit(Qiagen,Inc)を用いてゲル精製し、水で50倍希釈し、そして2マイクロリットルを第2のPCR反応のテンプレートとして用いた。第2のPCR反応は、逆方向プライマーBB10および前方向プライマーBB6:5’CCCCGTCGACACATATGAAGAAGACAGCTATCGCGATTGCAGTGGCACTGGCTGGTTTC3’(配列番号32)を用いた。
【0052】
PCR条件は、第1の反応についての記載と同じであった。約660bpのPCR産物をゲル精製し、SalIおよびBamHIで消化し、そしてSalIおよびBamHIで切断したpUC19(New England BioLabs)またはXhoIおよびBamHIで切断したpCDNA3.1(+)(Invitrogen)(SalIおよびXh
oI産物は、一致する一本鎖突出部分を生成する)中にクローン化した。いくつかのクロ
ーンを配列決定したとき、すべてのpUC19クローン(8/8)がompA配列の領域中に誤りを含んでいたことが発見された。唯一のpCNA3.1(+)クローンを配列決定し、そしてそれは、ompA領域中に配列アンビギュイティーを含んでいた。正確なompA-GH融合遺伝子を生成するために、都合の良い制限部位により分離された異なる誤り
を含んでいた2つの配列決定したクローンのセグメントを組換え、そしてPstI部位を欠くpUC19誘導体(以下に記載のpBBT108を参照のこと)中にクローン化した。pBBT112と呼ぶ得られたプラスミドは、pBBT108中のこれらと同一の部位中にNdeI−BamHIフラグメントとしてクローン化されたompA−GH融合遺伝子を保持する。このプラスミドを、pBBT112と称し、そして以下に記載のように、PCRを基礎にした部位特異的変異誘発に用いた。
【0053】
4.Pst−pUC19の構築
選択されたシステイン置換および挿入変異の構築のための、クローニングされたGH遺
伝子の変異誘発を促進するために、PstI部位を欠くプラスミドpUC19(New England BioLabs)の誘導体を以下の通りに構築した。pUC19プラスミドDNAを、PstIを用いて消化し、続いて75℃で、販売者が供給し、200μM
dNTPを補充した反応緩衝液を用いてPFU DNA Polymerase(Stratagene)で処理した。これらの条件下で、このポリメラーゼは、PstI消化により生じた3’単鎖突出部を消化するが、二本鎖領域へは消化しない。正味の結果は、PstI認識部位の真中の4つの塩基を含む4つの一本鎖塩基の欠失である。得られる分子は、二本鎖末端、すなわち「平滑」末端を有する。これらの酵素反応に続いて、直鎖状モノマーを、Qiaex II Gel Extraction Kit(Qiagen,Inc.)を用いてゲル精製した。この精製したDNAを、T4 DNA Ligase(New England BioLabs)を用いて、販売者のプロトコルに従って処理し、PstIで消化し、そしてE.coli DH5αを形質転換するために用いた。形質転換体を拾い、そしてPstIおよびBamH1を用いる制限消化により分析した。PstIによって切断されないが付近のBamH1部位で切断される形質転換体の1つを拾い、そしてpBBT108と称した。
【0054】
5.GHムテインの構築
GHムテインを、一般に、部位特異的PCRベース変異誘発を、PCR Protocols:Current Methods and Applications,B.A.White編,1993 Humana Press,Inc.,Totowa,NJおよびPCR Protocols:A Guideto Methods and Applications,Innis,M.A.ら編,1990 Academic Press Inc,San Diego,CAに記載される通りに用いて構築した。代表的には、PCRプライマーオリゴヌクレオチドを、タンパク質内の特異的位置のアミノ酸についてのシステイン残基での置換となるヌクレオチドの変化をGHのコード配列に取りこませるように設計する。このような変異誘発性オリゴヌクレオチドプライマーをまた、さらなるシステイン残基を、GHのコード配列のカルボキシ末端またはアミノ末端に取込むように設計し得る。この後者の場合には、所望の場合には、1以上のさらなるアミノ酸残基をまた、この付加されたシステイン残基のアミノ末端側および/またはカルボキシ末端側で取込ませ得る。さらに、所望の場合には、オリゴヌクレオチドを、システイン残基を挿入変異としてGHコード配列内の特定の位置に取込むように設計し得る。さらに、1以上のさらなるアミノ酸を、システイン残基とともに挿入し得、そしてこれらのアミノ酸をシステイン残基に対してアミノ末端側および/またはカルボキシ末端側に配置し得る。
【0055】
システイン置換変異T135Cを、以下の通りに構築した。変異誘発性の逆方向オリゴヌクレオチドBB28:
5’CTGCTTGAAGATCTGCCCACACCGGGGGCTGCCATC3’(配列番号33)
を、アミノ酸残基135のトレオニンについてのコドンACTを、システインをコードするTGTコドンに変化させ、付近のBglII部位までまたがるように設計した。このオリゴヌクレオチドを正方向オリゴヌクレオチドBB34(ompA−GH融合遺伝子の連結領域にアニーリングし、そして変異誘発性でない、5’GTAGCGCAGGCCTTCCCAACCATT3’(配列番号34))とともにPCRにおいて用いた。PCRを、1×PCR緩衝液(1.5mMMgCl2 を含有するPerkin−Elmer緩衝
液)、各200マイクロモル濃度の4つのヌクレオチドdA、dC、dG、およびdT、0.5μMで存在する各々のオリゴヌクレオチドプライマー、テンプレートとしての5pgのpBBT112(上記)、ならびに1.25単位のAmplitac DNA Polymerase(Perkin−Elmer)および0.125単位のPFUDNA Polymerase(Stratagene)中の50μl反応物において行なった。反応を、Robocycler Gradient 96サーマルサイクラー(Stra
tagene)において行なった。用いたプログラムは、以下を必要とした:95℃にて3分間、続いて95℃にて60秒間、45℃または50℃または55℃にて75秒間、72℃にて60秒間の25サイクル、続いて6℃での保持。このPCR反応物を、アガロースゲル電気泳動により分析して、予測されたサイズである約430bpの顕著な産物を与えるアニーリング温度を同定した。45℃の反応物を、QIAquick PCR Purification Kit(Qiagen)を用いて「浄化」し、BglIIおよびPstIを用いて消化した。得られる278bpのBglII−PstIフラグメント(推定のT135C変異を含む)をゲル精製し、そしてBglIIおよびPstIで消化され、ゲル精製されたpBBT111(stII−GH融合遺伝子(上記)を保有するpUC19誘導体)に連結した。この連結物からの形質転換体を最初に、BglIIおよびPstIでの消化によりスクリーニングし、続いて1つのクローンを配列決定して、T135C変異が存在すること、およびPCR反応または合成オリゴヌクレオチドによって潜在的に導入され得る任意のさらなる変異が存在しないことを確認した。配列決定したクローンは、正確な配列を有することが見出された。
【0056】
置換変異S132Cを、T135Cについて上記に記載されたものと以下が異なるプロトコルを用いて構築した:変異誘発性逆方向オリゴヌクレオチドBB29(5’CTGCTTGAAGATCTGCCCAGTCCGGGGGCAGCCATCTTC3’(配列番号35))をBB28の代わりに用い、そして50℃のアニーリング温度でのPCR反応をクローニングのために用いた。配列決定した2つのクローンのうちの1つが、適切な配列を有することが見出された。
【0057】
置換変異T148Cを、類似するが異なるクローニングストラテジーを用いるプロトコルを用いて構築した。変異誘発性正方向オリゴヌクレオチドBB30(5’GGGCAGATCTTCAAGCAGACCTACAGCAAGTTCGACTGCAACTCACACAAC3’(配列番号36))を、GHコード配列の最も3’末端にアニーリングし、そしてすぐ下流のBamH1部位にまたがる非変異誘発性逆方向プライマーBB33(5’CGCGGTACCCGGGATCCGATTAGAATCCACAGCT3’(配列番号37))とともにPCRにおいて用いた。PCRを、上記の通りに行なった。ただし、用いたアニーリング温度は46、51、および56℃であった。上記の通りのPCRおよびゲル分析の後、46および51℃の反応物をクローニングのためにプールした。これらを、BamH1およびBglIIで消化し、ゲル精製し、そしてpBBT111(これは、BamH1およびBglIIで消化し、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(Promega)で販売者のプロトコルに従って処理し、そしてゲル精製した)中にクローニングした。この連結物からの形質転換体を、BamH1およびBglIIを用いる消化により分析し、188bpのBamH1−BglII変異誘発性PCRフラグメントが適切な方向でクローニングされたクローンを同定した。BamH1およびBglIIは、適合性の末端を生じるので、このクローニング工程は、方向特異的ではない。試験した6つのうち5つのクローンが正確に方向付けされたことが示された。これらのうちの1つを配列決定し、そして所望のT148C変異を含むことが示された。このクローンにおける188bpのBamH1−BglII変異誘発性PCRフラグメントの残りの配列は、正確であることが確認された。
【0058】
置換変異S144Cの構築は、以下を除いてT148Cの構築と同一であった。変異誘発性正方向オリゴヌクレオチドBB31(5’GGGCAGATCTTCAAGCAGACCTACTGCAAGTTCGAC3’(配列番号38))をBB30の代わりに用いた。試験した6つのうち2つのクローンが適切に方向付けられたことが示された。これらのうちの1つを配列決定し、そして所望のS144C変異を含むことが示された。このクローンにおける188bpのBamH1−BglII変異誘発性PCRフラグメントの残りの配列は、正確であることが確認された。
【0059】
GHの天然のカルボキシ末端にシステイン残基を付加する変異をまた構築した。この変異(stp192Cと称する)の構築は、T148Cの構築と類似するが、異なるオリゴヌクレオチドプライマーを用いた。GHのカルボキシ末端phe残基についてのコドンとTAA翻訳停止コドンとの間にシステインについてのTGCコドンを挿入し、そして付近のBamH1部位にまたがる逆方向変異誘発性オリゴヌクレオチドBB32(5’CGCGGTACCGGATCCTTAGCAGAAGCCACAGCTGCCCTCCAC3’(配列番号39))を、上記のBB34(5’GTAGCGCAGGCCTTCCCAACCATT3’(配列番号40))とともに用いた。上記の通りのPCRおよびゲル分析の後、46℃での反応物をクローニングのために用いた。試験した6つのうち3つのクローンが正確に方向付けられたことが示された。これらのうちの1つを配列決定し、そして所望のstp192C変異を含むことが示された。このクローンにおける188bpのBamH1−BglII変異誘発性PCRフラグメントの残りの配列は、正確であることが確認された。
【0060】
類似のPCR変異誘発手順を用いて、他のシステイン変異を生成し得る。変異誘発性オリゴヌクレオチドについての配列の選択は、所望のシステイン残基を配置する位置、および有用な制限エンドヌクレアーゼ部位の近さによって指図される。一般的には、変異、すなわち、ミスマッチなセグメントをオリゴヌクレオチドの真中の近くに配置してテンプレートへのオリゴヌクレオチドのアニーリングを増強することが所望される。任意のオリゴヌクレオチドについての適切なアニーリング温度は、経験的に決定され得る。変異誘発性オリゴヌクレオチドが、独特な制限部位にまたがり、その結果、PCR産物を切断して、適切なベクター(例えば、ムテインを発現するために用いられ得るベクター)に容易にクローニングされ得るか、または変異遺伝子を切り出し、そしてこれをこのような発現ベクターに容易にクローニングするのに便利な制限部位を提供する、フラグメントを生成し得ることもまた、望ましい。時々、変異部位および制限部位は、合成オリゴヌクレオチドの合成に望ましい距離よりも大きな距離により隔てられている:一般に、このようなオリゴヌクレオチドを80塩基未満の長さに保つことが望ましく、そして30〜40塩基の長さがより好ましい。
【0061】
これが可能ではない場合には、変異誘発が標的化される遺伝子は、再操作または再合成されて制限部位を適切な位置に取込み得る。あるいは、上記で用いたPCR変異誘発プロトコルのバリエーション(例えば、いわゆる「Megaprimer Method」(Barik,S.,277〜286頁,Methods in Molecular Biology,第15巻:PCR Protocols:Current Methods and Applications,B.A.White編,1993. Humana Press,Inc.,Totowa,NJ)または「Gene Splicing by Overlap Extension」(Horton,R.M.,251〜261頁,Methods in Molecular Biology,第15巻:PCR Protocols:Current Methods and Applications,B.A.White編,1993,Humana Press,Inc.,Totowa,NJ))もまた、このような変異を構築するために用いられ得る。
【0062】
6.pCYB1におけるGHの発現
E.coliにおけるGHの発現のために、pBBT120(tac発現ベクターpCYB1にクローニングした、リーダー配列を有さないGH遺伝子)およびpBBT114(tac発現ベクターpCYB1にクローニングされた、stIIリーダー配列を有するGH遺伝子)を、E.coli株JM109およびW3110に形質転換した。親のベクターpCYB1もまた、JM109およびW3110に形質転換した。これらの株に、以下の名称をつけた:
BOB119: JM109(pCYB1)
BOB130: W3110(pCYB1)
BOB129: JM109(pBBT120)
BOB133: W3110(pBBT120)
BOB121: JM109(pBBT114)
BOB132: W3110(pBBT114)。
【0063】
発現のために、株を、100μg/mlアンピシリンを含有するLuriaブロス(LB)(Smbrookら,1989)中で37℃にて一晩増殖させた。これらの飽和した一晩培養物を、100μg/mlアンピシリンを含有するLB中でA6 00 にて約0.03 ODまで希釈し、そして旋回シェーカーにおいて、代表的には250〜300rpmで振盪フラスコ中で37℃にてインキュベートした。ODをモニターし、そして培養物のODが約0.25〜0.5、代表的には0.3と0.4との間に到達したときにIPTGを0.5mMの最終濃度になるように添加した。培養物を、代表的には誘導後1、3、5、および約16時間にサンプリングした。「約16時間」の時点は、培養物の一晩のインキュベーションを表し、そして正確な時間は、約15〜20時間で変化する。誘導した培養物および誘導していない培養物のサンプルを、遠心分離によりペレット化し、1×サンプル緩衝液(50mM Tris−HCl(pH6.8)、2%ラウリル硫酸ナトリウム、10%グリセロール、0.1%ブロモフェノールブルー)中に所望の場合にはさらに1%のβ−メルカプトエタノールを添加して再懸濁した。サンプルを約10分間煮沸するかまたは90℃まで約10分間加熱した。サンプルを室温まで冷却した後、SDSポリアクリルアミドゲルにロードしたかまたはすぐに泳動しない場合は−20℃で保存した。サンプルを、成形済みの15%ポリアクリルアミド「Ready Gels」(Bio−Rad,Hercules CA)に、Ready Gel Cell電気泳動装置(Bio−Rad)を用いて販売者のプロトコルに従って泳動した。代表的には、ゲルを、200ボルトで約35〜45分間泳動した。ゲルを、クーマシーブルーで染色するか、または電気ブロッティング後のウェスタンブロットにより分析した。株BOB129、BOB133、BOB121、およびBOB132からの全細胞溶解産物のクーマシー染色は、Research Diagnostics Inc(Flanders,NJ)から購入した精製組換えヒトGH標準と同時に移動する約22kDのバンドを示した。このバンドは、一晩の誘導後に誘導した培養物において最も顕著であった。しかし、これらの同じ株の誘導していない培養物においてこの分子量のバンドもまた観察され、そしてGH遺伝子を欠く発現ベクターpCYB1を保有するBOB119およびBOB130コントロール株において誘導ありおよび誘導なしでも観察され得た。この観察を明確にするために、ウェスタンブロット分析を、株BOB119、BOB130、BOB129、BOB133、BOB121、およびBOB132の誘導した培養物の全細胞溶解産物について行なった。ウェスタンブロットを、United States Biological(Swampscott,MA)から購入したポリクローナルウサギ抗ヒトGH抗血清(カタログ番号G9000−11)を用いて行なった。この一次抗体を、1:5000希釈で用い、そしてその結合を、Pierce(Rockford,IL)から購入したアルカリホスファターゼに結合体化したヤギ抗ウサギIgG Fc(製品番号31341)を用いて検出した。この二次抗体を、1:10,0000希釈で用いた。アルカリホスファターゼ活性を、ImmunoPure(登録商標)Fast Red TR/AS−MX Substrate Kit(Pierce,Rockford IL)を販売者のプロトコルに従って用いて検出した。ウェスタンブロットは、誘導後3時間および16時間の両方で、BOB129、BOB133、BOB121、およびBOB132の誘導された培養物の溶解産物におけるGHの存在を明らかに示した。コントロールの株であるBOB119およびBOB130の誘導した培養物においては、誘導後3時間の時点でも16時間の時点でもウェスタンブロットによりGHは検出されなかった。
【0064】
これらの予備的な実験では、最大の収量のGHは、GH遺伝子が、stII分泌シグナル配列の下流に融合されたBOB132 W3110(pBBT114)から得られた。この株をさらに試験して、GHタンパク質が予測されるようにペリプラズムに分泌されるか否かを決定した。BOB132の誘導した培養物を、上記の通りに調製し、そしてKoshlandおよびBotstein(Cell 20 (1980)749〜760頁)の手順に従って浸透圧性ショックに供した。この手順により、外膜が破壊され、そしてペリプラズムの内容物が周辺の培地中へ放出される。続いての遠心分離により、上清中に存在するペリプラズム内容物が、残りの細胞関連成分から分離される。この実験では、BOB132により合成されたGHの大部分がペリプラズム中に局在することが見出された。この結果は、総GHの大部分がまた、精製されたGH標準とサイズが区別できないという知見と一致し、このことは、stIIシグナル配列が除去されていることを示す。これは、分泌を示す。BOB132のより大規模な(500ml)培養物もまた、Hsiungら,1986(Bio/Technology 4,991〜995頁)により記載される手順に従って誘導し、一晩培養し、そして浸透圧性ショックに供した。ゲル分析はさらに、生成されたGHの大部分が、可溶性で、ペリプラズム性で、そしてGH標準とサイズが区別できないことを示した。この物質をまた、BeckerおよびHsiung,1986(FEBSLett 204 145〜150頁)により組換えヒトGHについて記載された条件と非常に類似した条件を用いてQ−Sepharoseカラムに定量的に結合させ、そしてこのカラムから溶出させ得た。
【0065】
7.ヒトGHレセプターのクローニング
ヒトGHレセプターを、正方向プライマーBB3および逆方向プライマーBB4を用いてPCRによりクローニングした。BB3は、配列:
5’−CCCCGGATCCGCCACCATGGATCTCTGGCAGCTGCTGTT−3’(配列番号26)
を有する。BB4は、配列:
5’CCCCGTCGACTCTAGAGCTATTAAATACGTAGCTCTTGGG−3’(配列番号27)
を有する。テンプレートは、ヒト肝臓から調製した一本鎖cDNA(CLONTECH Laboratoriesから市販される)であった。プライマーBB3およびBB4は、それぞれ、クローニングの目的でBamHIおよびSalI制限部位を含む。100μlのPCR反応物は、2.5ngの一本鎖cDNAおよび20ピコモルの各プライマーを1×PCR緩衝液(MgCl2 を含有するPerkin−Elmer緩衝液)、各20
0マイクロモル濃度の4つのヌクレオチドdA、dC、dG、およびdT、2.5単位のTaqポリメラーゼ(Perkin−Elmer)、ならびに2.5単位のPfuポリメラーゼ(Stratagene,Inc)中に含んでいた。PCR反応条件は、以下の通りであった:96℃にて3分間、(95℃にて1分間;58℃にて30秒間;72℃にて2分間)の35サイクル、続いて72℃にて10分間。用いたサーモサイクラーは、Amplitron II Thermal Cycler(Thermolyne)であった。約1.9kbのPCR産物を、BamHIおよびSalIを用いて消化し、そして同様に切断したプラスミドpUC19(New England BioLabs)と連結した。しかし、この連結反応物から得られた形質転換体はいずれも、1.9kbのPCRフラグメントを含んでいなかった。Leungら(Nature 1987 330 537〜543頁)もまた、pUC19においてヒトGHレセプターの全長cDNAクローンを得ることができなかった。続いて、PCRフラグメントを、低コピー数ベクターであるpACYC184(New England BioLabs)にこのベクターのBamHIおよびSalI部位にてクローニングした。このようなクローンを、妥当な頻度で得たが、クローニングされたPCRフラグメントを保有するE.coli株は、pACYC184の維持のための選択に用いたクロラムフェニコールの存在下では不十分にしか増殖せず、小さくかつ不均質な外観のコロニーしか形成しなかった。
【0066】
PCRフラグメントを、pCDNA3.1(+)(Invitrogen)中に同時にクローニングした。約1.9kbのPCR産物をBamHIおよびSalIで消化し、そしてpCDNA3.1(+)のBamHIおよびXhoIクローニング部位に連結した。この連結からの稀な形質転換体のみが、クローニングされたGHレセプターcDNAを含んでおり、そしてこれらはいずれもレセプターコード配列のセグメントの欠失を含んでいることが見出された。これらのうちの1つのクローンを配列決定し、そして135bpの欠失をGHレセプターコード配列内に含むことが見出された:この遺伝子の残りの配列は、Leungら(1987)により報告された配列と一致した。
【0067】
8.ウサギGHレセプターのクローニング
ウサギGHレセプターを、正方向プライマーBB3(上記)および逆方向プライマーBB36を用いてPCRによりクローニングした。BB36は、配列:
5’CCCCGTCGACTCTAGAGCCATTAGATACAAAGCTCTTGGG3’(配列番号41)
を有し、そしてクローニングの目的でXbaIおよびSalI制限部位を含む。ウサギ肝臓ポリ(A)+mRNAを、CLONTECH,Inc.から購入し、そして一本鎖cD
NAの第1鎖合成において基質として用いてPCR増幅のためのテンプレートを生成した。一本鎖cDNAの第1鎖合成を、Boehringer Mannheim Corp(Indianapolis,IN)からの1st Strand cDNA Synthesis Kit for RT−PCR(AMV)キットを販売者のプロトコルに従って用いて達成した。平行な第1鎖cDNA合成を、ランダムヘキサマーまたはBB36をプライマーとして用いて行なった。第1鎖合成の産物をテンプレートとして用いる、続いてのPCR反応を、プライマーBB3およびBB36を1st Strand cDNA Synthesis Kit for RT−PCR(AMV)キットのプロトコルに従って、2.5単位のAmplitac DNA Polymerase(Perkin−Elmer)および0.625単位のPfu DNA Polymerase(Stratagene)を用いて実施した。PCR反応条件は、96℃にて3分間、(95℃にて1分間;58℃にて30秒間;72℃にて2分間)の35サイクル、続いて72℃にて10分間であった。用いたサーモサイクラーは、Amplitron II Thermal Cycler(Thermolyne)であった。予測された約1.9kbのPCR産物は、ランダムヘキサマープライムcDNAまたはBB36プライムcDNAをテンプレートとして用いたPCR反応物中に観察された。ランダムヘキサマープライムcDNAを、次のクローニング実験に用いた。これを、BamH1およびXbaIで消化し、そして1.2%アガロースゲルで泳動した。この消化により、2つのフラグメント(約365bpおよび約1600bp)を生じる。なぜなら、ウサギGHレセプター遺伝子は、内部にBamH1部位を含むからである。両方のフラグメントをゲル精製した。最初に、約1600bpのBamH1−XbaIフラグメントを、これらの同じ2つの酵素で消化したpCDNA3.1(+)中にクローニングした。これらのクローンは、妥当な頻度で容易に得られ、そして制限消化および続いての配列決定により決定した場合、欠失の証拠を示さなかった。全長クローンを生じるために、1600bpのBamH1−XbaIフラグメントを含有するプラスミドの1つ(pCDNA3.1(+)::rab−ghr−2A)をBamH1で消化し、仔ウシ腸アルカリホスファターゼ(Promega)で販売者のプロトコルに従って処理し、ゲル精製し、そしてゲル精製した約365bpのBamH1フラグメント(ウサギGHレセプター遺伝子の5’部分を含む)に連結した。この連結物からの形質転換体を拾い、そして制限消化およびPCRにより分析して、約365bpのフラグメントの存在を確認し、そしてこのウサギGHレセプター遺伝子の遠位セグメントに対する方向を決定した。分析した4つのうちの3つのクローンが、ウサギGHレセプター遺伝子の再構築について正確な方向にクローニングされた約365bpのフラグメントを含むことが見出された。ヒト遺伝子とは対照的に、このウサギ遺伝子のE.co
liにおけるクローニングにおいて複雑化の要因がないことは、Leungら(1987)の結果と一致する。Leungら(1987)はまた、ウサギGHレセプター遺伝子についての全長cDNAクローンを容易に入手したが、E.coliにおいてヒトの遺伝子の全長cDNAをクローニングすることができなかった。ウサギGHレセプターを、ヒトGHを用いるアッセイにおいてリガンドとして用い得る。これは、ヒトGHがウサギレセプターと高親和性で結合することが示されている(Leungら,1987)からである。クローニングされたウサギGHレセプターを含むプラスミドを配列決定して、使用の前に、正確な配列を有するウサギGHレセプターcDNAを同定するべきである。
【0068】
9.ヒト/ウサギキメラGHレセプター遺伝子の構築
ウサギレセプターの代替物として、ヒトレセプターの細胞外ドメインをウサギレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインと合わせるキメラレセプターを構築し得る。このようなキメラレセプターを、ヒトの遺伝子とウサギの遺伝子とを、各々において存在する独特なNcoI部位(Leungら,1987)にて組換えることにより構築し得る。NcoI部位の5’側、すなわち上流に位置するヒトの遺伝子セグメント、およびNcoI部位の3’側,すなわち下流にウサギ遺伝子セグメントを含むこのような組換え体は、ヒトレセプターの細胞外ドメインを、ウサギレセプターの膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインとともに有する、正確に所望のタイプのキメラレセプターをコードする。これは、GH、GHムテイン、およびPEG化(PEGylated)GHムテインと、天然のレセプター結合部位との相互作用の分析を可能にするが、E.coli中に全長ヒトGHレセプターをクローニングする必要性を回避し得る。
【0069】
GHムテインは、種々の発現系(例えば、細菌、酵母、または昆虫細胞)において発現され得る。これらの系においてGHムテインを発現するためのベクターは、多数の供給業者(例えば、Novagen,Inc.(E.coliにおける発現のためのpET15b)、New England Biolabs(E.coliにおける発現のためのpC4B1)、Invitrogen(バキュロウイルスベクターを用いる昆虫細胞における発現のためのpVL1392、pVL1393、およびpMELBAC、酵母細胞における発現のためのPichiaベクター、ならびに哺乳動物細胞における発現のためのpCDNA3))から市販されている。GHは、細胞周辺腔へのこのタンパク質の分泌を促進するためにE.coli OmpAまたはSTIIシグナル配列を用いてE.coliにおいて細胞質タンパク質として、および分泌型、ペリプラズム性タンパク質として首尾良く生成された(Changら,1987;Hsiungら,1986)。GHムテインが、分泌タンパク質として発現され、その結果、これらが、天然のヒトタンパク質に存在しないN末端メチオニン残基を含まないことが好ましい。E.coliでの発現のために、GHまたはGHムテインをコードするDNA配列を、E.coli発現ベクター(例えば、強力なT7プロモーターを用いるpE15b、またはTACプロモーターを用いるpCYB1)中にクローニングし得る。増殖培地にIPTG(Sigma Chemical Companyから入手可能なイソプロピルチオガラクトピラノシド)を添加することにより、タンパク質の発現を誘導し得る。組換えGHは、細胞周辺腔に分泌され、その後の浸透圧性ショック(BeckerおよびHsiung,1986)により、細胞周辺腔から放出、続いて精製され得る。このタンパク質は、他のクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換、疎水性相互作用、サイズ排除、および逆相クロマトグラフィー(これらはすべて当業者に周知である(例えば、BeckerおよびHsiung,1986を参照のこと)))を用いてさらに精製され得る。タンパク質濃度を、市販のタンパク質アッセイキット(例えば、BioRadLaboratories(Richmond,CA)により販売されるもの)を用いて決定し得る。E.coliにおいて発現したときにGHタンパク質が不溶性である場合、これらは、当業者に周知の手順を用いて再折り畳みされ得る(Coxら,1994、ならびに国際特許出願WO9422466およびWO9412219を参照のこと)。
【0070】
あるいは、このタンパク質は、分泌タンパク質として昆虫細胞中で発現され得る。発現プラスミドは、培地中へのこのタンパク質の分泌を促進するためにGHシグナル配列を含むように改変され得る。cDNAは、市販のベクター(例えば、Invitrogen,Inc.からのpVL1392)にクローニングされ、そして昆虫細胞を感染させるために用いられ得る。GHおよびGHムテインは、従来のクロマトグラフィー手順を用いて馴化培地から精製され得る。rhGHに対する抗体をウェスタンブロットに関連して用いてクロマトグラフィーの間にGHタンパク質を含有する画分を位置決めし得る。あるいは、GHを含有する画分を、ELISAアッセイを用いて同定し得る。
【0071】
システイン付加GH改変体もまた、真核生物細胞(例えば、酵母、昆虫細胞、または哺乳動物細胞)において細胞内タンパク質または分泌タンパク質として発現され得る。タンパク質を発現するためのベクターおよびこのような実験を行うための方法は、種々の市販会社(例えば、Invitrogen,Inc.、Stratagene,Inc.およびClonTech,Inc.)からのカタログにおいて記載されている。GHおよびGHムテインは、従来のクロマトグラフィー手順を用いて精製され得る。
【0072】
GHムテインの生物学的活性は、GHに応答して増殖する細胞株を用いて測定され得る。Fuhら(1992)は、骨髄性白血病細胞株FDC−P1を、マウスG−CSFレセプターに融合されたウサギGHレセプターの細胞外ドメインを含むキメラレセプターで安定に形質転換することにより、GH応答性細胞株を作製した。この細胞株は、GHに応答して増殖し、最大有効濃度の半値(EC50)は、20ピコモル濃度である。類似の細胞株は、これらのレセプターの公開された配列および標準的な分子生物学技術を用いて構築され得る(Fuhら、1992)。あるいは、ヒトGHレセプターの細胞外ドメインが、マウスG−CSFレセプターに、これらのレセプターの公開された配列および標準的な分子生物学技術を用いて融合され得る。キメラレセプターを発現する形質転換細胞は、標識化GHを用いるフローサイトメトリーによって、放射性標識GHに結合する形質転換細胞の能力によって、または添加されたGHに応答して増殖する形質転換細胞の能力によって、同定され得る。精製されたGHおよびGHムテインは、キメラレセプターを発現する細胞を用いる細胞増殖アッセイにおいて、これらのタンパク質の比活性を測定するために試験され得る。細胞は、種々の濃度のGHまたはGHムテインを有する96ウェル皿においてプレートされ得る。18時間後、細胞を、4時間、3Hチミジンで処理し、取り込まれた
放射能の決定のために回収した。EC50は、各ムテインについて決定され得る。アッセイは、各データ点について3連のウェルを用いて各ムテインについて少なくとも3回実施すべきである。類似の至適刺激レベルおよび野生型GHに匹敵するまたはこれより大きいEC50値を示すGHムテインは、好ましい。
【0073】
インビトロ活性を保持するGHムテインは、Shearwater,Inc.から市販されているシステイン反応性の8kDa PEG−マレイミド(またはPEG−ビニルスルホン)を用いてPEG化され得る。一般に、これらの試薬でタンパク質をPEG化するための方法は、わずかに変更があるが、国際特許出願WO9412219およびWO9422466およびPCT出願US95/06540に記載の方法と類似である。組換えタンパク質は、遊離システインの至適なPEG化を達成するために、ジチオトレイトール(DTT)で部分的に還元されなければならない。遊離システインはジスルフィド結合に関与しないが、この部分的な還元工程が行われなければ、システイン反応性PEGに対して相対的に反応性でない。各ムテインを部分的に還元させるのに必要なDTTの量は、ある範囲のDTT濃度を使用して、経験的に決定され得る。代表的には、30分間室温での5〜10倍モル過剰のDTTが、十分である。部分的な還元は、逆相カラムからのタンパク質の溶出プロフィールにおいて、わずかなシフトによって検出され得る。タンパク質を過剰に還元したり、さらなるシステイン残基を露出させないように、注意を払わなければな
らない。過剰還元は、逆相HPLC(タンパク質は、十分に還元され、そして変性されたタンパク質と類似の保持時間を有する)、および2つのPEGを含むGH分子の出現(SDS−PAGE上の分子量変化によって検出可能)によって検出され得る。野生型GHは、コントロールとして供され得る。なぜなら、これは、類似の条件下でPEG化しないからである。過剰なDTTは、スピンカラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィーによって除去され得る。部分的に還元されたタンパク質を種々の濃度のPEG−マレイミドと反応させて(PEG:タンパク質モル比は、1:1、5:1、10:1、および50:1)、2つの試薬の至適比を決定し得る。タンパク質のPEG化は、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を用いる分子量シフトによってモニタリングされ得る。二PEG化産物を生じることなく有意な量の単PEG化産物を生じる最も低い量のPEGを、至適であるとみなす(単PEG化産物への80%変換が良好であるとみなされる)。一般に、単PEG化タンパク質は、非PEG化タンパク質および未反応PEGから、サイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーによって精製され得る。精製されたPEG化タンパク質は、上記の細胞増殖アッセイにおいて、その比活性を決定するために試験され得る。
【0074】
上記実験は、システイン残基に変更され、PEG化され、そしてインビトロで生物学的活性を保持し得る、GH中のB−Cループ、C−Dループ、またはABループのN末端におけるアミノ酸の同定を可能にする。これらのムテインは、当該分野で周知の動物疾患モデルにおいて試験され得る。
【0075】
実験は、PEG分子が適切な部位でタンパク質に付着され得ることを確認するために行い得る。これは、タンパク質のタンパク質分解性消化、サイズ排除、イオン交換、または逆相クロマトグラフィーによるPEGペプチド(大きな分子量を有する)の精製、次いでアミノ酸配列決定または質量分析を行うことによって達成され得る。PEGカップリングアミノ酸は、アミノ酸配列決定泳動においてブランクとして出現する。
【0076】
PEG−GHタンパク質の薬物速度論的特性は、以下のように、または国際特許出願WO9422466において記載のように、決定され得る。ラットまたはマウスの対は、試験タンパク質の静脈内ボーラス注射を受容し得る。タンパク質の循環レベルを、所望の時点で少量の血液サンプルを動物から採取することによって、24時間の経過にわたって測定する。試験タンパク質の循環レベルは、ELISAアッセイを用いて定量され得る。さらなる実験は、タンパク質を投与するために、皮下経路を用いて実施され得る。類似の実験が、コントロールとして供するために、非PEG化タンパク質を用いて実施されるべきである。これらの実験は、PEG試薬のタンパク質への付着がその薬物速度論的特性を変化させるか否かを明らかにする。タンパク質のPEGとの共有結合修飾が、非PEG化タンパク質に対してタンパク質の循環半減期を増大させるはずである。より大きなPEG分子および/または複数のPEG分子の付着は、循環半減期を延長し、より小さなPEG分子より長くするはずである。
【0077】
PEG−GHタンパク質は、成長ホルモン欠損(Coxら、1994)および悪液質(Tomasら、1992;Readら、1992)のげっ歯類モデルにおいて、至適投与スケジュールを決定し、そして効力を示すために試験され得る。これらの研究は、至適なPEGサイズおよび投与スケジュールを決定するために、異なるサイズのPEG分子(例えば、8kDaおよび20kDa)および投与スケジュールを探索し得る。より大きなPEG分子は、循環半減期を、より小さなPEG分子よりも長く増大させ、そしてより少ない頻度の投与を必要とすることが期待される。しかし、大きなタンパク質は、潜在的に、インビボにおいては減少された分布容量を有し得、従って、GHに付着された20kDa
PEGは、バイオアベイラビリティーを制限し、その効力を減少させることが可能である。げっ歯類モデルは、これがその場合であるか否かの決定を可能にする。一旦、至適な
投与スケジュールおよびPEGサイズが決定されると、GHに対するPEG−GHの効力が、動物モデルにおいて比較され得る。GH活性を有する全てのPEG−GHタンパク質が本発明に含まれるが、好ましいPEG−GHタンパク質は、GHに等しいまたはこれより優れた成長を増強するが、より少ない頻度で与えられ得るタンパク質である。PEG−GHは、PEG−GHおよびGHのいずれもが、より頻度の低い投与スケジュールを用いて投与されたとき、GHよりも有効であるはずである。
【0078】
使用され得る1つのGH欠損モデルは、下垂体切除ラットである。GHは、このモデルにおいて、体重増加および骨成長および軟骨成長を刺激する(Coxら、1994)。下垂体切除ラットは、Charles Riverから購入され得る。ラットにGH、PEG−GHまたはプラシーボを注射し得、そして体重増加を10〜14日間にわたって毎日測定し得る。屠殺時点で、脛骨骨端幅を、骨成長の測定値として決定し得る。これらの研究を行うための実験方法は、Coxら(1994)に記載される。
【0079】
げっ歯類悪液質モデルにおけるPEG−GHの効力は、類似の様式で試験され得る。浸透圧ポンプまたは皮下注射によるデキサメタゾンの毎日投与は、体重減少を誘導するために使用され得る(Tomasら、1992;Readら、1992;PCT特許出願US95/06540)。
【0080】
(実施例2)
(エリスロポエチンのシステイン付加改変体)
本実施例は、エリスロポエチン(EPO)のシステイン付加改変体に関する。EPOは、赤血球生成または赤血球形成の刺激の主に原因となるホルモンである。EPOは、未熟赤血球前駆体上で作用し、それらのさらなる増殖および成熟赤血球への分化を刺激する。市販の薬学的等級物は、Amgen,Inc.から入手可能である。ヒトEPOは、成人腎臓によって分泌される35〜39kDa糖タンパク質である。成熟ヒトタンパク質は、166アミノ酸を含み、そして高度にグリコシル化されている。ヒトEPOの配列(配列番号2)は、Linら、1985およびJacobsら1985に示されている(これらは共に、本明細書中に参考として援用される)。EPOの一次配列は、種間で高度に保存されている(80%同一性より高い;Wenら、1994)。糖基は、タンパク質の質量の40%を超えて占める。ヒトEPOは、3つのN結合型グリコシル化部位および1つのO結合型グリコシル化部位を含む。N結合型グリコシル化部位は、異なる種において保存されているが、O結合型グリコシル化部位は保存されていない。EPOの多数のグリコシル化がタンパク質の結晶化を妨害し、従って、このタンパク質のX線構造は知られていない。ヒトEPOは、4つのシステイン残基を含む。ジスルフィドの配置は、Cys7−Cys161およびCys29−Cys33である。Cys33は、マウスEPOにおいて保存されておらず、このことは、Cys29−Cys33ジスルフィド結合がマウスEPOの構造または機能に必須ではないことを示唆する。この結論はまた、ヒトEPOについても支持されているようである(Boisselら、1993)。
【0081】
EPOのアミノ酸配列は、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであるタンパク質と一致し、そして変異研究は、EPO構造についてのこの見解を支持する(Boisselら、1993;Wenら、1994)。EPOの三次元構造のモデルは、GH構造が提唱された(Boisselら、1993;Wenら、1994)後に、モデリングされた。レセプター結合について重要なEPO中のアミノ酸は、変異誘発実験によって同定され、そして主に推定へリックスAのN末端側半分および推定へリックスDのC末端側半分に存在する(Boisselら、1993;Wenら、1994;Matthewsら、1996)。EPOについて単一の細胞表面レセプターのみが同定されている(D’Andrcaら、1989)。EPOは、GHがそのレセプターを二量体化するのとほぼ同様に、そのレセプターを二量体化すると考えられる(Matthew’sら、1996)。
【0082】
ヒトEPOは、N結合型グリコシル化の3つの部位(アスパラギン−24、−38、および−83)およびO結合型グリコシル化の1つの部位(セリン−126)を含む。N結合型グリコシル化部位は、A−BループおよびB−Cループに位置し、そしてOグリコシル化部位は、C−Dループに位置する。N結合型グリコシル化部位は種間で保存されるが、O結合型グリコシル化部位はげっ歯類EPOには存在しない(Wenら、1993)。126位にメチオニンを含有する非O結合型グリコシル化ヒト改変体が、記載されている(米国特許第4,703,008号)。N結合型糖基は、密に分枝化されており、そして末端シアル酸残基を含む(Sasakiら、1987;Takeuchiら、1988)。N−38およびN−83は、最も高度に分枝化されたオリゴ糖を含む(Sasakiら、1988)。
【0083】
EPOにおける末端シアル酸残基は、タンパク質のインビボでの機能に重要である。なぜなら、消化によるこれらの残基の除去が、インビボでの活性を除去するからである(Fukadaら、1989;SpivakおよびHogans、1989)。活性の損失は、身体からのシアル酸除去(asialated)タンパク質のより早いクリアランスと相関する。ラットにおけるシアル酸除去タンパク質の循環半減期は、10分未満である。これに対して、シアル化(sialated)タンパク質の循環半減期は、約2時間である(Fukadaら、1989;SpivakおよびHogans、1989)。従って、EPOのインビボ活性は、直接的にその循環半減期と相関する。
【0084】
EPO生物学的活性におけるN結合型糖の役割は、N結合型グリコシル化部位を含む3つのアスパラギン残基を個々におよび組み合わせて変異させることにより、より良好に定義されている。たった1つのN結合型グリコシル化部位が変異されているEPOムテイン(すなわち、N24Q、N38Q、およびN83Q)は、野生型EPOと同じぐらい効率的に、哺乳動物から分泌された。このことは、3つの部位全てにおけるN結合型グリコシル化が、タンパク質分泌に必要とされるわけではないことを示している(N24Qは、24位のアスパラギンがグルタミンに変異されることを示している)。逆に、2つ以上のN結合型グリコシル化部位が変異されているEPOムテインは、哺乳動物細胞から、野生型EPOほど効率的には分泌されなかった(Yamaguchiら、1991;Delormeら、1992)。変異誘発研究は、単一のN結合型グリコシル化部位ムテインのそれぞれが、野生型EPOと等しいまたはそれより大きいインビトロでの生物学的活性を有したことを見出した。従って、N結合型グリコシル化部位のいずれもが、EPOの分泌またはインビトロでの生物学的活性に必須でないと結論された。実際、グリコシル化部位の1つの除去は、生物学的活性を改善するようであった(Yamaguchiら、1991)。
【0085】
N結合型グリコシル化ムテインのインビボでの生物学的活性は、2つのグループによって研究された。Yamaguchiら(1991)は、N24QおよびN83Qムテインが、野生型EPOよりも大きなインビボ活性を有したと結論した。インビボ活性は、それらの増大されたインビトロでの活性と相関した。これらの著者らは、N38Qムテインが、インビボでの活性を、野生型EPOの約60%に減少させたことを見出した。N38は、3つのN結合型グリコシル化部位のうち最も密に分枝化されている(Sasakiら、1988)。Delormeら(1992)は、N結合型グリコシル化部位のいずれかを変異させることが、インビボでの生物学的活性を約50%減少させたことを報告した。両研究において、2つ以上のグリコシル化部位を変異させたムテインは、減少したインビボでの活性を有した。
【0086】
上記研究は、いくつかのN結合型グリコシル化が、EPOのインビトロおよびインビボでの活性に必要であることを示している。しかし、個々に、3つのグリコシル化部位のい
ずれもが、活性について絶対的に必須ではない。N結合型糖は、EPOの見かけの分子量を増大させ、そして循環半減期を延長する。循環半減期は生物活性と相関する。天然EPOおよび哺乳動物細胞で製造されたEPOは、ガラクトースおよび末端シアル酸残基を含む複合型N結合型糖を有する。ガラクトース残基は、肝細胞上の特異的レセプターによって認識され、そしてガラクトース残基が末端シアル酸残基によってマスキングされなければ、身体からのEPOの迅速なクリアランスを促進する。
【0087】
変異誘発研究は、O結合型グリコシル化は、EPOのインビトロまたはインビボでの機能に必要とはされないと結論した(Delormeら、1992)。これは、げっ歯類EPOがOグリコシル化されていないという所見、およびセリン−126がメチオニンによって置換されている、天然に存在しているヒトEPO改変体(これは、対応するO結合型グリコシル化を有さない)の存在と一致する。セリン−126の変異誘発は、この部位での特定のアミノ酸変化(バリン、ヒスチジン、またはグルタミン酸への)が、野生型EPOと類似の生物学的活性を有するEPOムテインを生じ、一方、他のアミノ酸変化(アラニンまたはグリシンへの)は、重度に減少した活性を有するEPO分子を生じた(Delormeら、1992)ことを明らかにした。セリン−126をシステインに変更する影響は研究されていなかった。S126V EPOのインビボでの生物活性は、野生型EPOに対して類似であることが見出された(Delormeら、1992)。
【0088】
EPOがインビボで活性であるために、末端シアル酸残基を含む複合型N結合型炭水化物を必要とすることは、哺乳動物細胞に対するこのタンパク質の商業的製造を制限してきた。シアル化N結合型糖の重要な機能は、タンパク質の凝集を防止し、タンパク質安定性を増大し、そしてタンパク質の循環半減期を延長することである。末端シアル酸残基は、基本的なガラクトース残基をマスキングすることによって、EPOの循環半減期を延長する。ガラクトース残基は、肝細胞上の特異的レセプターによって認識され、そしてシアル酸除去タンパク質のクリアランスを促進する。EPOは、昆虫細胞で産生され得、そしてN−グリコシル化され、インビトロで十分に活性である;そのインビボでの活性は、報告されていない(Wojchowskiら、1987)。
【0089】
本実施例は、システイン付加EPO改変体の設計、ならびにシステイン反応性PEGおよび他のシステイン反応性部分を使用する結合体の調製におけるそれらの使用を提供する。EPOにおける特定のアミノ酸が生物学的活性に必須であるわけではなく、これは、分子の通常のジスルフィド結合パターンおよび全体的なコンフォメーションを変化させることなく、システイン残基に変異され得る。これらのアミノ酸はA−Bループ(成熟タンパク質配列のアミノ酸23−58)、B−Cループ(成熟タンパク質配列のアミノ酸77−89)、C−Dループ(成熟タンパク質配列のアミノ酸108−131)に、ヘリックスA(アミノ酸1−8)の近位、およびヘリックスD(成熟タンパク質配列のアミノ酸153−166)の遠位に位置する。タンパク質配列のN末端またはC末端もまた、システイン残基を付加するための好ましい部位として意図される。システイン置換のための好ましい部位は、O結合型グリコシル化部位(セリン−126)、および3つのN結合型グリコシル化部位を含むアミノ酸(N24、I25、T26、N38、I39、T40、N83、S84、S85)である。グリコシル化部位は、システイン置換を導入し、そしてPEG分子をEPOに付着させるのに魅力的な部位である。なぜなら、(1)これらの部位は、表面曝露されている;(2)天然タンパク質は、これらの位置で嵩高い糖基に寛容であり得る;(3)グリコシル化部位は推定ループ領域に位置し、レセプター結合部位から離れている(Wenら、1994);および(4)変異誘発研究は、これらの部位が、(少なくとも個々に)インビトロまたはインビボでの活性に必須ではないことを示している(Yamaguchiら、1991;Delormeら、1992)。上記で議論したように、Oグリコシル化部位領域を包含する領域の局所的なコンフォメーションが生物学的活性に重要であるようである。126位でのシステイン置換が生物学的活性に影響するか否
かは、研究されていない。システイン−29からシステイン−33へのジスルフィド結合は、EPOの生物学的活性に必要ではない。なぜなら、両残基のチロシンへの変更が、同時に、生物学的に活性なEPOタンパク質を生じたからである(Boisselら、1993;Wenら、1994)。「遊離」システインは、システイン−29またはシステイン−33のいずれかを別のアミノ酸へ変更することによって作製され得る。好ましいアミノ酸変更は、セリンまたはアラニンへのものである。残存する「遊離」システイン(システイン−29またはシステイン−33)は、システイン反応性部分でタンパク質を共有結合修飾することについて、好ましい部位である。
【0090】
Billら(1995)は、N24、N38、およびN83をシステインに個々に置換し、そしてこのムテインがインビトロでの生物学的活性を大きく減少させたことを報告した(野生型活性の20%未満)。Billら(1995)は、細菌において(グルタチオン(glutathionine)−S−トランスフェラーゼに融合された)融合タンパク質として、EPO改変体を発現させた。本発明の1つの局面は、N24C、N38C、およびN83C EPO改変体が、野生型EPOにより類似した、インビトロでの生物学的活性を有する発現系を提供することである。
【0091】
米国特許第4,703,008号は、EPOの天然に存在する改変体、ならびに哺乳動物のEPOタンパク質に存在するアミノ酸置換を意図する。ヒツジEPOは、ポリペプチド鎖の88位にシステイン残基を含む。その発明者らは、システイン残基が、システイン付加EPO改変体の生成のために有用であるとして本明細書中に開示されたポリペプチド領域に存在する、EPOのいかなる他の天然に存在するヒトまたは動物システイン改変体にも気づいていない。特許第4,703,008号は特に、EPOの発現が、システイン残基を欠失させることによるか、または天然に存在するシステイン残基をセリンまたはヒスチジン残基と置換することによって改善され得ることを示唆することにより、システイン付加EPO改変体を教示していない。
【0092】
EPOの成熟タンパク質形態は、C末端アルギニンの翻訳後除去のために、165または166アミノ酸を含み得る。Asp−165は、165アミノ酸形態のC末端であり、Agr−166は、166アミノ酸形態のC末端アミノ酸である。本明細書中に記載のシステイン置換および挿入変異は、成熟EPOの165アミノ酸形態または166アミノ酸形態のいずれかを含み得る。
【0093】
EPOをコードするcDNAは、ヒトHepG2またはHep3B細胞株から、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用してクローン化され得る。これら細胞株はともに、低酸素または塩化コバルトで処理したとき、EPOを発現するとして知られ(Wenら、1993)、そしてアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手可能である。システイン変異は、GHについて記載されたような、標準的なファージ、プラスミド、またはPCR変異誘発手順によって、cDNAに導入され得る。上記のように、システイン置換変異の導入のための好ましい部位は、A−Bループ、B−Cループ、C−Dループ、およびヘリックスAの近位かつヘリックスDの遠位の領域にある。これらの領域における最も好ましい部位は、NおよびO結合型グリコシル化部位である:S126C;N24C;I25C、T26C;N38C;I39C、T40C;N83C;S84CおよびN85C。システイン置換変異誘発のための他の好ましい部位は、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループ、グリコシル化部位周囲のアミノ酸、およびヘリックスAの近位かつヘリックスDの遠位のタンパク質の領域にある(Boisselら、1993;Wenら、1994)。これらの領域におけるシステイン置換のための他の好ましい部位は、以下のとおりである:A1、P2、P3、R4、D8、S9、T27、G28、A30、E31、H32、S34、N36、D43、T44、K45、N47、A50、K52、E55、G57、Q58、G77、Q78、A79、Q86、W88、E89、
T107、R110、A111、G113、A114、Q115、K116、E117、A118、S120、P121、P122、D123、A124、A125、A127、A128、T132、K154、T157、G158、E159、A160、T163、G164、D165、およびR166。システイン残基はまた、成熟タンパク質の最初のアミノ酸に近位(すなわち、A1の近位)または成熟タンパク質の最後のアミノ酸の遠位(すなわち、D165またはR166の遠位)に導入され得る。cys−29またはcys−33が他のアミノ酸(好ましくは、セリンまたはアラニン)に置換されている他の改変体もまた、提供される。
【0094】
野生型EPOおよびEPOムテインは、システイン付加ムテインが生物学的に活性か否かを決定するために、昆虫細胞を使用して発現され得る。EPO/EPOムテインをコードするDNAは、バキュロウイルス発現ベクターpVL1392(Invitrogen,Inc.およびSigma Corporation(St.Louis,MO)から入手可能である)にクローン化され得、そして昆虫細胞を感染させるために使用され得る。組換えバキュロウイルス産生EPOは、ポリクローナル抗ヒトEPO抗血清(R&D Systemsから入手可能である)を使用して、感染昆虫細胞馴化培地のウェスタンブロットによって同定され得る。分泌EPOムテインタンパク質は、当業者に周知の従来のクロマトグラフィー手順によって精製され得る。タンパク質濃度は、市販のタンパク質アッセイキットまたはELISAアッセイキット(R&D SystemsおよびBio−Rad Laboratoriesから入手可能である)を使用して決定され得る。
【0095】
精製EPOおよびEPOムテインは、EPO応答性細胞株(例えば、UT7−epo(Wenら、1994)またはTF1(ATCCから入手可能である))を使用する細胞増殖アッセイにおいて、このタンパク質の比活性を測定するために試験され得る。細胞は、種々の濃度のEPOを有する96ウェルマイクロタイタープレートにおいてプレートされ得る。アッセイは3連で実施すべきである。培養1〜3日後、細胞増殖を、GHについて上述されるように、3Hチミジン取り込みによって測定し得る。最大刺激の半値(EC50
)を生じるタンパク質の濃度を、各ムテインについて決定し得る。アッセイは、各データ点について3つ組のウェルを用いて各ムテインについて少なくとも3回実施すべきである。EC50値は、ムテインの相対的な効力を比較するために使用され得る。あるいは、添加されたEPOムテインに応答した細胞増殖を、MTT色素排除アッセイ(Komatsuら、1991)を使用して分析し得る。類似の至適刺激レベルおよび野生型EPOに匹敵するまたはこれより大きいEC50値を示すタンパク質は、好ましい。
【0096】
上記の研究は、システイン残基に変更され、そして生物学的活性を保持し得る、EPOにおけるアミノ酸残基の同定を確認する。活性を保持するムテインは、GHムテインについて上述したように、システイン反応性の8kDa PEG−マレイミドを用いてPEG化され得る。野生型EPOは、コントロールとして供されるべきである。なぜなら、これは、同一の部分的還元条件下でシステイン反応性PEGと反応しないはずであるからである。二PEG化産物を生じることなく有意な量の単PEG化産物を生じる最も低い量のPEGが、至適であるとみなされるべきである。単PEG化タンパク質は、非PEG化タンパク質および未反応PEGから、サイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーによって精製され得る。精製されたPEG化タンパク質は、上記の細胞増殖アッセイにおいて、その生物活性を決定するために試験されるべきである。
【0097】
インビトロ生物活性を保持するPEG化EPOムテインの1つ以上が、動物疾患モデルにおいて試験するための候補である。適切なアミノ酸でのタンパク質のPEG化は、GHについて記載のように決定され得る。
【0098】
昆虫細胞を使用して発現されたPEG化EPOムテインのインビボ試験は、それらが、
適切なグリコシル化を確実にするために、哺乳動物細胞における発現のために再操作されることを必要とし得る。昆虫細胞を用いて産生されたPEGEPO候補は、以下に記載の動物モデルにおいて、それらがインビボで活性であるかどうか、およびそれらが哺乳動物細胞発現系を使用して産生されたPEGEPOと同程度に活性であるか否かを決定するために試験され得る。哺乳動物細胞における発現のために、EPOムテインは、市販の真核生物発現ベクターにサブクローン化され得、そしてチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ATCCから入手可能である)を安定に形質転換するために使用され得る。亜株は、ELISAアッセイを使用してEPO発現についてスクリーニングされ得る。充分量の昆虫細胞産生EPOムテインおよび哺乳動物細胞産生EPOムテインが、動物貧血モデルにおいて生物学的活性を比較するために調製され得る。
【0099】
EPOムテインのインビボ生物活性は、人工赤血球増加モデルまたは飢餓げっ歯類モデルを使用して試験され得る(CotesおよびBangham、1961;GoldwasserおよびGross、1975)。飢餓げっ歯類モデルでは、1日目に、ラットに食餌を与えず、2日目および3日目に、ラットを試験サンプルで処置する。4日目に、ラットは、放射性鉄−59の注射を受容する。約18時間後、ラットを麻酔し、血液サンプルを採取する。次いで、標識化鉄の赤血球への変換パーセントを決定する。人工赤血球増加モデルでは、マウスを密閉タンク中に維持し、数日間、低圧空気に曝す。次いで、動物を通常気圧に戻す。赤血球形成は、数日間抑制される。通常気圧に戻した後4または6日目に、マウスに、エリスロポエチンまたは生理食塩水を注射する。マウスは、1〜2日間、1日あたり1回の注射を受容する。1日後、動物は、標識化鉄−59の静脈内注射を受容する。20時間後にマウスを麻酔し(cuthanized)、そして赤血球に取り込まれた標識化鉄の量を決定する。EPOは、赤血球に取り込まれた標識化鉄における用量依存性増加によって測定されるように、両モデルにおいて、赤血球形成を刺激する。両モデルにおいて、異なる投与レジメおよび異なる注射時間は、PEG−EPOが生物学的に活性であるか、かつ/または天然EPOよりも強力であるか、そして天然EPOよりも長い作用効果を生じるかを決定するために研究され得る。
【0100】
(実施例3)
(αインターフェロン)
αインターフェロンは、白血球で産生され、そして、抗ウイルス、抗腫瘍および免疫調節効果を有する。70%以上のアミノ酸同一性を共有するタンパク質をコードする、少なくとも20の異なるαインターフェロン遺伝子が存在する。公知のαインターフェロン種のアミノ酸配列は、Blattら(1996)において提供される。最も共通のアミノ酸を単一のポリペプチド鎖に取り込む「コンセンサス」インターフェロンが、記載されている(Blattら、1996)。ハイブリッドαインターフェロンタンパク質は、αインターフェロンタンパク質の種々の部分を単一のタンパク質にスプライシングすることにより、産生され得る(HorisbergerおよびDi Marco、1995)。いくつかのαインターフェロンは、N結合型グリコシル化部位をAへリックスの近位であり、そしてB−Cループに近い領域において含む(Blattら、1996)。α2インターフェロンタンパク質(配列番号3)は、2つのジスルフィド結合を形成する4つのシステイン残基を含有する。cys1−cys98ジスルフィド結合(α1(配列番号4)のようないくつかのαインターフェロン種においてはcys1−cys99)は、活性に必須ではない。α2インターフェロンタンパク質は、N結合型グリコシル化部位を、全く含有しない。αインターフェロンの結晶構造は、決定されている(Radhakrishnanら、1996)。
【0101】
この実施例は、Aへリックスの近位、Eへリックスの遠位、A−Bループ内、B−Cループ内、C−Dループ内およびD−Eループ内の領域におけるシステイン付加改変体を提供する。αインターフェロン−2種のこれらの領域においてシステイン残基の導入に好ま
しい部位は:D2、L3、P4、Q5、T6、S8、Q20、R22、K23、S25、F27、S28、K31、D32、R33、D35、G37、F38、Q40、E41、E42、F43、G44、N45、Q46、F47、Q48、K49、A50、N65、S68、T69、K70、D71、S72、S73、A74、A75、D77、E78、T79、Y89、Q90、Q91、N93、D94、E96、A97、Q101、G102、G104、T106、E107、T108、P109、K112、E113、D114、S115、K131、E132、K133、K134、Y135、S136、A139、S152、S154、T155、N156、L157、Q158、E159、S160、L161、R162、S163、K164、E165である。システイン残基が成熟タンパク質の最初のアミノ酸の近位(すなわち、C1の近位)、または、成熟タンパク質中の最後のアミノ酸の遠位(すなわち、E165の遠位)に導入された改変体が、提供される。cys−1またはcys−98(いくつかのαインターフェロン種においてはcys−99)が他のアミノ酸(好ましくは、セリンまたはアラニン)に置換された他の改変体もまた、提供される。Cys−1が欠失した他の改変体(des Cys−1)もまた、提供される。システイン改変体は、任意の天然に存在するか、または非天然のαインターフェロン配列(例えば、コンセンサスインターフェロンまたはインターフェロンタンパク質ハイブリッド)の状況において存在し得る。いくつかの天然に存在するαインターフェロン種(例えば、αインターフェロン−1)は、天然に生じる「遊離」のシステインを含有する。そのようなインターフェロン種において、天然に生じる遊離のシステインは、別のアミノ酸(好ましくは、セリンまたはアラニン)に、変更され得る。
【0102】
この実施例はまた、他のαインターフェロン種(コンセンサスインターフェロンを含む)のこれらのタンパク質の等価な部位におけるシステイン改変体を提供する。αインターフェロン−2種と、他の公知のαインターフェロン種およびコンセンサスインターフェロンとのアラインメントは、Blattら(1996)において提供される。αインターフェロン−2の結晶構造は、Rhadhakrishnanら(1996)によって決定されている。Lydonら(1985)は、αインターフェロンのN末端からの最初の4アミノ酸の欠失が生物学的活性に影響を与えなかったことを見出した。Valenzuelaら(1985)は、αインターフェロン−2におけるPhe−47の、Cys、TyrまたはSerへの置換がタンパク質の生物学的活性を変化させないことを、見出した。Cys−1およびCys−98は、タンパク質の生物学的活性を変化させることなく、それぞれ、グリシンおよびセリンに、個別に変更されている(DeChiaraら、1986)。
【0103】
αインターフェロン−2をコードするDNA配列は、ヒトゲノムDNAから増幅され得る。なぜなら、αインターフェロン遺伝子は、イントロンを含まないからである(Pestkaら、1987)。αインターフェロン−2のDNA配列は、Goeddelら(1980)において提供される。あるいは、αインターフェロン−2のcDNAは、自発的にまたはウイルスへの暴露後にαインターフェロンを発現することが知られているヒトリンパ芽球腫細胞株から単離され得る(Goeddellら、1980;Pickeringら、1980)。これらの細胞株の多くは、American Type Culture Collection(Rockville、MD)から入手可能である。特定の変異は、プラスミドに基づく部位特異的変異誘発キット(例えば、Quick−Change Mutagenesis Kit、Stratagene、Inc.)を使用してか、ファージ変異誘発ストラテジーによってか、またはGHについて記載されるようにPCR変異誘発を使用してαインターフェロン配列に、導入され得る。
【0104】
αインターフェロンは、細胞内タンパク質としてE.coliにおいて首尾よく産生されている(Tarnowskiら、1986;ThatcherおよびPanayotatos、1986)。同様の手順は、αインターフェロンムテインを発現するために使用
され得る。αインターフェロンまたはαインターフェロンムテインをコードするプラスミドは、強力なT7プロモーターを使用するpET15b(Novagene、Inc.)、またはTACプロモーターを使用するpCYB1(New England BioLabs、Beverly、(MA)のようなE.coli発現ベクター中にクローン化さ
れ得る。そのタンパク質の発現は、培養培地にIPTGを添加することにより、誘導され得る。
【0105】
E.coliにおいて発現される組換えαインターフェロンは、時として可溶性であり、そして時として不溶性である(Tarnowskiら、1986;ThatcherおよびPanayotatos、1986)。不溶性は、タンパク質の過剰発現の程度に関連するようである。不溶性αインターフェロンタンパク質は、封入体として回収され得、そして標準的な酸化的再折り畳みプロトコールに従い十分に活性なコンフォメーションに再生され得る(ThatcherおよびPanayotatos、1986;Coxら、1994)。αインターフェロンタンパク質は、イオン交換、疎水的相互作用、サイズ排除および逆相樹脂のような他のクロマトグラフィー方法を使用してさらに精製され得る(ThatcherおよびPanayotatos、1986)。タンパク質濃度は、市販のタンパク質アッセイキットを使用して測定され得る(Bio−Rad Laboratories)。
【0106】
E.coliにおいて発現される組換えαインターフェロンは、時として可溶性であり、そして時として不溶性である(Tarnowskiら、1986;ThatcherおよびPanayotatos、1986)。不溶性は、タンパク質の過剰発現の程度に関連するようである。不溶性αインターフェロンタンパク質は、封入体として回収され得、そして標準的な酸化的再折り畳みプロトコールに従い十分に活性なコンフォメーションに再生され得る(ThatcherおよびPanayotatos、1986;Coxら、1994)。αインターフェロンタンパク質は、イオン交換、疎水的相互作用、サイズ排除および逆相樹脂のような他のクロマトグラフィー方法を使用してさらに精製され得る(ThatcherおよびPanayotatos、1986)。タンパク質濃度は、市販のタンパク質アッセイキットを使用して測定され得る(Bio−Rad Laboratories)。
【0107】
αインターフェロンムテインのE.coli発現が、成功しない場合、GHについて記載されるように分泌タンパク質として昆虫細胞においてタンパク質を発現し得る。そのタンパク質は、天然のαインターフェロンシグナル配列(Goeddellら、1980)またはミツバチメリチンシグナル配列(Invitrogen、Inc.)を含むように改変され得、そのタンパク質の分泌を促進し得る。αインターフェロンおよびαインターフェロンムテインは、従来のクロマトグラフィー手順を使用して馴化培地から精製され得る。αインターフェロンに対する抗体は、ウエスタンブロットと共に使用され得、クロマトグラフィーの間にαインターフェロンタンパク質を含む画分を位置付けし得る。あるいは、αインターフェロンタンパク質を含む画分は、ELISAを使用して同定され得る。
【0108】
αインターフェロンおよびαインターフェロンムテインの生物学的活性は、インビトロウイルスプラーク減少アッセイを使用して測定され得る(Ozesら、1992;Lewis,1995)。ヒトHeLa細胞は、96ウェルプレートにプレートされ得、そして37℃で、ほとんどコンフルエントまで増殖され得る。次に細胞は、洗浄され、そして種々の濃度の各αインターフェロン調製物を用いて24時間処理される。コントロールは、αインターフェロンを全く含まないべきであり、そしてコントロールは、野生型αインターフェロン(Endogen、Inc.Woburn、MAより市販される)を含むべきである。水疱性口内炎ウイルス(VSV)のまたは脳心筋炎ウイルス(EMCV)のようなウイルスは、プレートに添加され、そしてプレートを37℃で、さらに24〜48時間
、インキュベートする。さらなるコントロールは、ウイルスを含まないサンプルを含むべきである。ウイルス処理された、αインターフェロンを含まないコントロールウェルにおいて90%以上の細胞が死滅している場合(ウェルの視覚的な検査により決定される)、細胞の単層をクリスタルバイオレットを用いて染色し、そしてウェルの吸光度をマイクロプレートリーダーを使用して読み取る。あるいは、細胞単層は、MTT染料を用いて染色され得る(Lewis、1995)。サンプルは、2連または3連で、分析されるべきである。EC50の値(ウイルスの細胞障害性効果を50%まで阻害するために必要なタンパク質の量)は、そのタンパク質の相対的な効力を比較するために、使用され得る。野生型αインターフェロン−2は、細胞をVSVおよびEMCVの細胞障害性効果から保護し、8そしてこのアッセイにおいて約2×108単位/mgの比活性を有する(Ozesら、1992)。野生型αインターフェロンに匹敵するEC50値を示すαインターフェロンムテインが、好ましい。
【0109】
活性を保持するαインターフェロンムテインは、GHについて記載された手順と同様の手順を使用して、PEG化され得る。野生型αインターフェロン−2は、同様の条件下でPEG化されないはずであるから、コントロールとして使用され得る。ジ−PEG化産物を生じることなく、モノ−PEG化産物の顕著な量を生じるPEGの最低量が、最適であると考慮されるはずである。モノ−PEG化タンパク質は、非PEG化タンパク質および未反応のPEGから、サイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーによって、精製され得る。精製されたPEG化タンパク質は、それらの生物学的活性を測定するために、上記のウイルスプラーク減少バイオアッセイにおいて、試験され得る。野生型αインターフェロンに匹敵する生物学的活性を有するPEG化αインターフェロンタンパク質が、好ましい。PEG化タンパク質についてのPEG結合部位のマッピング、および薬物動態学的データの測定は、GHについて記載されるように行われ得る。
【0110】
PEG−αインターフェロンムテインのインビボ生物学的活性は、ヌードマウスにおける腫瘍異種移植モデル、およびウイルス感染モデルを用いて、試験され得る(Balkwill、1986;Fishら、1986)。PEG−αインターフェロンの生物学的活性は、種特異的であり得るので、上記のアッセイと同様の、インビトロウイルスプラーク減少アッセイにおいて適切な動物細胞株を使用してPEG化タンパク質の活性を確認すべきである。次に、種々の用量レジメおよび種々の注射時間の効果を調べて、PEG−αインターフェロンが、非PEG化αインターフェロンに比べて、より強力か否か、およびより長時間持続する効果を生成するか否かを決定するであろう。
【0111】
本実施例のαインターフェロンから誘導された新規の分子は、本質的に実施例1および2において示されるように(しかし、この実施例の特定のタンパク質に関連する適切なアッセイ、および当該分野で公知の他の考察に代えて)処方され得、そして活性について試験され得る。
【0112】
(実施例4)
(βインターフェロン)
βインターフェロンは、線維芽細胞によって産生され、そして抗ウイルス、抗腫瘍および免疫調節効果を示す。単一コピーのβインターフェロン遺伝子は、切断されて166アミノ酸の成熟タンパク質を生じるプレタンパク質をコードする(Taniguchiら、1980;配列番号5)。そのタンパク質は、3つのシステインを含み、これらの1つのシステイン−17は、「遊離」のものであり、すなわちジスルフィド結合に関与しない。そのタンパク質は、1つのN結合型グリコシル化部位を、含有する。そのタンパク質の結晶構造は、決定されている(Karpusasら、1997)。
【0113】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位を含む3つのアミノ酸のいずれかにおけるシ
ステイン付加改変体(すなわち、N80C、E81CまたはT82C)を提供する。この実施例はまた、Aへリックスの近位、Eへリックスの遠位、A−Bループ内、B−Cループ内、C−Dループ内およびD−Eループ内の領域におけるシステイン付加改変体を提供する。これらの領域においてシステイン残基の導入に好ましい部位は:M1、S2、Y3、N4、L5、Q23、N25、G26、R27、E29、Y30、K33、D34、R35、N37、D39、E42、E43、K45、Q46、L47、Q48、Q49、Q51、K52、E53、A68、F70、R71、Q72、D73、S74、S75、S76、T77、G78、E107、K108、E109、D110、F111、T112、R113、G114、K115、L116、A135、K136、E137、K138、S139、I157、N158、R159、L160、T161、G162、Y163、L164、R165およびN166である。システイン残基が成熟タンパク質の最初のアミノ酸の近位(すなわち、M1の近位)、または、成熟タンパク質中の最後のアミノ酸の遠位(すなわち、N166の遠位)に導入された改変体がまた、提供される。
【0114】
これらの改変体は、天然に生じる「遊離」のシステイン残基(システイン−17)が別のアミノ酸(好ましくはセリンまたはアラニン)に変更されている、天然のタンパク質配列または改変体タンパク質の状況において、生成される。
【0115】
本実施例のβインターフェロンから誘導された新規の分子は、本質的に実施例1および2において示されるように(しかし、この実施例の特定のタンパク質に関連する適切なアッセイ、および当該分野で公知の他の考察に代えて)処方され得、そして活性について試験され得る。
【0116】
(実施例5)
(顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF))
G−CSFは、顆粒球の増殖、分化および機能を刺激する多機能性サイトカインである。そのタンパク質は、活性化単球およびマクロファージによって産生される。G−CSFのアミノ酸配列(配列番号6)は、Souzaら(1986)、Nagataら(1986a、b)および米国特許4,810,643号において提供され、これら全ては、本明細書において参考として援用される。そのヒトタンパク質は、204または207アミノ酸のプレタンパク質として合成され、このプレタンパク質は、切断されて、174または177アミノ酸の成熟タンパク質を生じる。より大きな形態は、より小さな形態よりも、低い比活性を有する。そのタンパク質は、5つのシステインを含有し、その4つは、ジスルフィド結合に関与する。システイン−17は、ジスルフィド結合に関与しない。システイン−17のセリンへの置換は、十分に活性な変異型G−CSFタンパク質を生じる(米国特許第4,810,643号)。そのタンパク質は、その成熟タンパク質のスレオニン−133において、Oグリコシル化されている。
【0117】
この実施例は、スレオニン−133におけるシステイン付加改変体を提供する。この実施例は、Aへリックスの近位、Dへリックスの遠位、A−Bループ内、B−Cループ内およびC−Dループ内の領域における他のシステイン付加改変体を提供する。これらの領域においてシステイン置換の導入に好ましい部位は:T1、P2、L3、G4、P5、A6、S7、S8、L9、P10、Q11、S12、T38、K40、S53、G55、W58、A59、P60、S62、S63、P65、S66、Q67、A68、Q70、A72、Q90、A91、E93、G94、S96、E98、G100、G125、M126、A127、A129、Q131、T133、Q134、G135、A136、A139、A141、S142、A143、Q145、Q173およびP174である。システイン残基が成熟タンパク質の最初のアミノ酸の近位(すなわち、T1の近位)、または、成熟タンパク質中の最後のアミノ酸の遠位(すなわち、P174の遠位)に導入された改変体が、提供される。これらの改変体は、天然のタンパク質配列または、天然に生じる「遊
離」のシステイン残基(システイン−17)が別のアミノ酸(好ましくはセリンまたはアラニン)に変更されている、改変体タンパク質の状況において、提供される。
【0118】
ヒトG−CSFをコードするcDNAは、R&DSystems(Minneapolis、MN)から購入され得るか、またはG−CSFを構成的に発現することが既知である5637およびU87−MGのようなヒトのガン細胞株から単離されたmRNAよりPCRを使用して増幅され得る(Parkら、1989;Nagata、1994)。これらの細胞株は、American Type Culture Collection(Rockville、MD)から入手可能である。特定の変異は、プラスミドに基づく部位特異的変異誘発キット(例えば、Quick−Change Mutagenesis
Kit、Stratagene、Inc.)を使用してか、ファージ変異誘発方法によってか、またはGHについて記載されるようにPCR変異誘発を使用してG−CSF配列に、導入され得る。
【0119】
G−CSFは、細胞内タンパク質としてE.coliにおいて首尾よく産生されている(Souzaら、1986)。同様の手順は、G−CSFおよびG−CSFムテインを発現するために使用され得る。G−CSFまたはG−CSFムテインをコードするプラスミドは、強力なT7プロモーターを使用するpET15b(Novagen、Inc.Madison、WIから入手可能)、または強力なTACプロモーターを使用するpCYB1(New England BioLabs、Beverly、MAから入手可能)のようなE.coli発現ベクター中にクローン化され得る。そのタンパク質の発現は、培養培地にIPTGを添加することにより、誘導され得る。E.coliにおいて発現される組換えG−CSFは、不溶性であり、そして封入体として回収され得る。そのタンパク質は、標準的な酸化的再折り畳みプロトコールに従い十分に活性なコンフォメーションに再生され得る(Souzaら、1986;Luら、1992;Coxら、1994)。同様の手順は、システインムテインを再折り畳みするために使用され得る。そのタンパク質は、イオン交換、疎水的相互作用、サイズ排除および逆相樹脂のような他のクロマトグラフィー方法をさらに使用して精製され得る(Souzaら、1986;Kugaら、1989;Luら、1992)。タンパク質濃度は、市販のタンパク質アッセイキット(Bio−Rad Laboratories)を使用して測定され得る。
【0120】
G−CSFまたはG−CSFムテインのE.coli発現が、成功しない場合、GHについて記載されるように分泌タンパク質として昆虫細胞においてG−CSFおよびG−CSFムテインを発現し得る。そのタンパク質は、天然のG−CSFシグナル配列(Souzaら、1986;Nagataら、1986a;Nagataら、1986b)またはミツバチメリチンシグナル配列(Invitrogen、Inc.、Carlsbad、CA)を含むように改変され得、そのタンパク質の分泌を促進し得る。G−CSFおよびG−CSFムテインは、従来のクロマトグラフィー手順を使用して馴化培地から精製され得る。G−CSFに対する抗体は、ウエスタンブロットと共に使用され得、クロマトグラフィーの間にG−CSFタンパク質を含む画分を位置付けし得る。あるいは、G−CSFタンパク質を含む画分は、ELISAを使用して同定され得る。
【0121】
G−CSFムテインはまた、実施例2においてエリスロポエチンについて記載されるように、哺乳動物細胞において発現され得る。
G−CSFおよびG−CSFムテインの生物学的活性は、インビトロ細胞増殖アッセイを使用して測定され得る。マウスNFS−60細胞株およびヒトAML−193細胞株は、G−CSFの生物学的活性を測定するために使用され得る(Tsuchiyaら、1986;Langeら、1987;Shirafujiら、1989)。両方の細胞株は、ヒトG−CSFに応答して増殖する。AML−193細胞株は、ヒト起源であるので(このことは、種の相違より生じる誤った結論の可能性を除外する)好ましい。NFS−60
細胞株は、10〜20ピコモル濃度の最大半値有効濃度(EC50)で、G−CSFに応答して増殖する。精製G−CSFおよびG−CSFムテインは、これらの細胞株を使用して細胞増殖アッセイにおいて試験され得、公開された方法を用いてそのタンパク質の比活性を決定し得る(Tsuchiyaら、1986;Langeら、1987;Shirafujiら、1989)。細胞は、G−CSFまたはG−CSFムテインの種々の濃度を用いて、96ウェル組織培養ディッシュにプレートされ得る。加湿した組織培養インキュベータ中で、37℃で1〜3日間後、増殖は、GHについて記載されるように、3H−チミ
ジン取り込みにより測定され得る。アッセイは、各データ点について3連のウェルを用いて、各ムテインについて少なくとも3回行われるべきである。EC50値は、ムテインの相対的な効力を比較するために使用され得る。野生型G−CSFに匹敵する刺激の同様の最適なレベルおよびEC5 0値を示すG−CSFムテインが、好ましい。
【0122】
活性を保持するG−CSFムテインは、GHについて記載された手順と同様の手順を使用して、PEG化され得る。野生型G−CSFおよびser−17 G−CSFは、同様の条件下でPEG化されないはずであるから、コントロールとして使用され得る。ジPEG化産物を生じることなく、モノPEG化産物の顕著な量を生じるPEGの最低量が、最適であると考慮されるはずである。モノ−PEG化タンパク質は、非PEG化タンパク質および未反応のPEGから、サイズ排除またはイオン交換クロマトグラフィーによって、精製され得る。その精製されたPEG化タンパク質は、その生物学的活性を測定するために、上記の細胞増殖アッセイにおいて、試験され得る。
【0123】
そのタンパク質におけるPEG部位は、GHについて記載される手順と同様の手順を使用してマッピングされ得る。そのPEG化タンパク質についての薬物動態学的データは、GHについて記載される手順と同様の手順を使用して、得られ得る。
【0124】
PEG−G−CSFのインビボでの有効性を実証するための最初の研究は、通常のSprague−Dawleyラット(Charles Riverより購入され得る)において行われ得る。ラットの群は、種々の用量のG−CSF、PEG−G−CSFまたはプラシーボの、単回の皮下または静脈注射を受けるべきである。動物を、末梢血における好中球および全白血球計数の決定のために、1週間まで、毎日の周期で、屠殺するべきである。他の血球細胞型(血小板および赤血球)は、測定され得、そして細胞特異性を実証し得る。
【0125】
PEG−G−CSFの効力は、ラットの好中球減少モデルにおいて、試験され得る。好中球減少は、シクロホスファミド(骨髄抑制性である一般に使用される化学治療剤)を用いた処理によって誘導され得る。G−CSFは、シクロホスファミド処理された動物において、正常な好中球レベルの回復を促進する(Kubotaら、1990)。ラットに、0日目にシクロホスファミド注射を与え、好中球減少を誘導する。次に動物を、異なる群に分け、G−CSF、PEG−GCSFまたはプラシーボの皮下注射を与える。末梢血の好中球および全白血球の計数は、それらが正常レベルに戻るまで、毎日測定されるべきである。最初に、毎日の注射の場合に、G−CSFが好中球減少からの回復を促進することを確認するべきである。次に、種々の用量のレジメおよび種々の回数の注射の効果を調べて、PEG−G−CSFが、非PEG化G−CSFよりも、より強力であるか否か、およびより長時間持続する効果を生成するか否かを決定するべきである。
【0126】
本実施例のG−CSFから誘導された新規の分子は、本質的に実施例1および2において示されるように(しかし、この実施例の特定のタンパク質に関連する適切なアッセイ、および当該分野で公知の他の考察に代えて)処方され得、そして活性について試験され得る。
【0127】
(実施例6)
(トロンボポエチン(TPO))
トロンボポエチンは、血小板の巨核球前駆体の発生を刺激する。TPOのアミノ酸配列(配列番号7)は、Bartleyら(1994)、Fosterら(1994)、de
Sauvageら(1994)において提供され、これらの各々は、本明細書において参考として援用される。
【0128】
このタンパク質は、353アミノ酸前駆体タンパク質として合成され、これは切断されて、332アミノ酸の成熟タンパク質を生じる。N末端の154アミノ酸は、EPOおよびGHスーパー遺伝子ファミリーの他のメンバーとの相同性を有する。C末端の199アミノ酸は、他の公知のタンパク質のいずれとも相同性を共有しない。C末端領域は、6つのN結合型グリコシル化部位および複数のO結合型グリコシル化部位を含む(Hoffmanら、1996)。O結合型グリコシル化部位はまた、Aへリックスの近位、A−Bループ内、およびへリックスCのC末端において見出される(Hoffmanら、1996)。成熟タンパク質の1〜195残基のみを含有する短縮型TPOタンパク質は、インビトロにおいて十分に活性である(Bartley、1994)。
【0129】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位およびO結合型グリコシル化部位を含有する任意のアミノ酸での、システイン付加改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスの近位、Dへリックスの遠位、A−Bループ内、B−Cループ内およびC−Dループ内の領域における他のシステイン付加改変体を提供する。
【0130】
システイン残基の導入に好ましい部位は:S1、P2、A3、P4、P5、A6、T37、A43、D45、S47、G49、E50、K52、T53、Q54、E56、E57、T58、A76、A77、R78、G79、Q80、G82、T84、S87、S88、G109、T110、Q111、P113、P114、Q115、G116、R117、T118、T119、A120、H121、K122、G146、G147、S148、T149、A155、T158、T159、A160、S163、T165、S166、T170、N176、R177、T178、S179、G180、E183、T184、N185、F186、T187、A188、S189、A190、T192、T193、G194、S195、N213、Q214、T215、S216、S218、N234、G235、T236、S244、T247、S254、S255、T257、S258、T260、S262、S272、S274、T276、T280、T291、T294、S307、T310、T312、T314、S315、N319、T320、S321、T323、S325、Q326、N327、L328、S329、Q330、E331およびG332である。システイン残基が成熟タンパク質の最初のアミノ酸の近位(すなわち、S1の近位)、または、成熟タンパク質中の最後のアミノ酸の遠位(すなわち、G332の遠位)に導入された改変体が、提供される。システイン付加改変体は、天然のヒトタンパク質または、アミノ酸147と天然タンパク質のC末端(G332)との間が短縮された改変体タンパク質の状況において提供される。アミノ酸147と332との間が短縮されたTPOタンパク質の最後のアミノ酸から遠位にシステイン残基が付加された改変体がまた、提供される。
【0131】
本実施例のTPOから誘導された新規の分子は、本質的に実施例1および2において示されるように(しかし、この実施例の特定のタンパク質に関連する適切なアッセイ、および当該分野で公知の他の考察に代えて)処方され得、そして活性について試験され得る。
【0132】
(実施例7)
(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))
GM−CSFは、種々の造血性細胞(好中球、単球、好酸球、赤血球、および巨核球細胞
系統を含む)の増殖および分化を刺激する。ヒトGM−CSFのアミノ酸配列(配列番号8)は、Cantrellら(1985)およびLeeら(1985)において提供され、これらの両方は、本明細書において参考として援用される。
【0133】
GM−CSFは、144アミノ酸のプレタンパク質として生成され、このプレタンパク質は、切断されて、127アミノ酸の成熟タンパク質を生じる。その成熟タンパク質は、2つのN結合型グリコシル化部位を有する。1つの部位は、へリックスAのC末端に位置し;第2の部位は、A−Bループ内に存在する。
【0134】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位を含有する任意のアミノ酸におけるシステイン付加改変体(すなわち、N27C、L28C、S29C、N37C、E38CおよびT39C)を提供する。この実施例はまた、Aへリックスの近位、Dへリックスの遠位、A−Bループ内、B−Cループ内およびC−Dループ内の領域におけるシステイン付加改変体を提供する。これらの領域においてシステイン置換の導入に好ましい部位は:A1、P2、A3、R4、S5、P6、S7、P8、S9、T10、Q11、R30、D31、T32、A33、A34、E35、E41、S44、E45、D48、Q50、E51、T53、Q64、G65、R67、G68、S69、L70、T71、K72、K74、G75、T91、E93、T94、S95、A97、T98、T102、I117、D120、E123、V125、Q126およびE127である。システイン残基が成熟タンパク質の最初のアミノ酸の近位(すなわち、A1の近位)、または、成熟タンパク質中の最後のアミノ酸の遠位(すなわち、E127の遠位)に導入された改変体が、提供される。
【0135】
本実施例のGM−CSFから誘導された新規の分子は、本質的に実施例1および2において示されるように(しかし、この実施例の特定のタンパク質に関連する適切なアッセイ、および当該分野で公知の他の考察に代えて)処方され得、そして活性について試験され得る。
【0136】
(実施例8)
(IL−2)
IL−2は、活性化T細胞により合成されるT細胞増殖因子である。このタンパク質は、活性化T細胞のクローン増殖を刺激する。ヒトIL−2は、切断されて133アミノ酸の成熟タンパク質を産生する153アミノ酸の前駆体として合成される(Tadatsuguら、1983;Devosら、1983;配列番号9)。
【0137】
IL−2のアミノ酸配列は、(Tadatsuguら、1983;Devosら、1983)に示される。成熟タンパク質は3つのシステイン残基を含み、そのうち2つがジスルフィド結合を形成する。成熟タンパク質のシステイン125は、ジスルフィド結合には関与しない。システイン125のセリンへの置換は、完全な生物学的活性を有するIL−2ムテインを産生する(Wangら、1984)。このタンパク質は、成熟タンパク質鎖のスレオニン3においてO−グリコシル化される。
【0138】
この実施例は、Dへリックスの最後の4つの位置、Dへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループにおいて、システインが付加された改変体を提供する。これらの改変体は、天然のタンパク質配列、あるいは天然に生じる「遊離の」システイン残基(システイン125)が別のアミノ酸、好ましくはセリンまたはアラニンに変化している改変体タンパク質の状況において、提供される。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基(すなわちA1)に対して近位に、または最後のアミノ酸残基(すなわちT133)に対して遠位に導入される改変体もまた、提供される。
【0139】
本実施例のIL−2に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0140】
(実施例9)
(IL−3)
IL−3は、活性化T細胞により産生され、そして多能性(pleuripotent)造血幹細胞の増殖および分化を刺激する。ヒトIL−3のアミノ酸配列(配列番号10)は、Yangら、(1986);Dorssersら(1987)およびOtsukaら、(1988)に示され、これらの文献は、すべて本明細書中に参考として援用される。このタンパク質は、2つのシステイン残基および2つのN結合型グリコシル化部位を含む。8位のアミノ酸にセリンもしくはプロリンを有するアイソフォーム、または成熟タンパク質を生じる2つの対立遺伝子が記載されている。
【0141】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位を含むアミノ酸のいずれかにシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位の領域、Dへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループにおいてシステインを付加された改変体を提供する。システイン残基が、成熟タンパク質における最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に導入される改変体もまた、提供される。
【0142】
本実施例のIL−3に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0143】
(実施例10)
(IL−4)
IL−4は、単球およびT細胞およびB細胞の増殖および分化を刺激する、多面的なサイトカインである。IL−4は、喘息およびアトピーにおいて役割を演ずると考えられているIgEをB細胞が分泌するように導くプロセスに関係する。IL−4の生物活性は種特異的である。IL−4は、切断されて129アミノ酸の成熟タンパク質を産生する、153アミノ酸の前駆体タンパク質として合成される。ヒトIL−4のアミノ酸配列(配列番号11)は、Yokotaら(1986)において示され、これは本明細書中に参考として援用される。このタンパク質は、6つのシステイン残基および2つのN結合型グリコシル化部位を含む。グリコシル化部位はA−BおよびC−Dループに位置する。

この実施例は、N結合型グリコシル化部位を含むアミノ酸のいずれかにシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位の領域、Dへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループにおいてシステインを付加された改変体を提供する。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基(H1)に対して近位に、または最後のアミノ酸残基(S129)に対して遠位に導入されている改変体が提供される。
【0144】
本実施例のIL−4に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0145】
(実施例11)
(IL−5)
IL−5は、好酸球の分化および活性化の因子である。ヒトIL−5のアミノ酸配列(
配列番号12)は、Yokotaら(1987)において示され、この文献は、本明細書中に参考として援用される。この成熟タンパク質は、115アミノ酸を含み、そしてジスルフィド連結されたモノダイマーとして溶液中に存在する。このタンパク質は、O結合型およびN結合型グリコシル化部位を含む。
【0146】
この実施例は、Aへリックスに対して近位の領域、Dへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループにおいて、システインが付加された改変体を提供する。システイン残基が、成熟タンパク質における最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に付加されている改変体もまた、提供される。
【0147】
本実施例のIL−5に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0148】
(実施例12)
(IL−6) IL−6は、多くの細胞型の増殖および分化を刺激する。ヒトIL−6のアミノ酸配列(配列番号13)は、Hiranoら(1986)において示され、この文献は、本明細書中に参考として援用される。ヒトIL−6は、切断されて184アミノ酸の成熟タンパク質を生成する212アミノ酸のプレタンパク質として合成される。この成熟タンパク質は、T137、T138、T142、またはT143において2つのN結合型グリコシル化部位および1つのO結合型グリコシル化部位を含む。
【0149】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位およびO結合型グリコシル化部位を含むアミノ酸のいずれかにシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位の領域、Dへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループにおいてシステインを付加された改変体を提供する。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に付加されている改変体もまた、提供される。
【0150】
本実施例のIL−6に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0151】
(実施例13)
(IL−7)
IL−7は、未熟B細胞の増殖を刺激し、そして成熟T細胞に作用する。ヒトIL−7のアミノ酸配列(配列番号14)は、Goodwinら(1989)において示され、この文献は、本明細書中に参考として援用される。このタンパク質は、切断されて152アミノ酸の成熟タンパク質(3つのN結合型グリコシル化部位を含む)を産生する177アミノ酸のプレタンパク質として合成される。
【0152】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位を含むアミノ酸のいずれかにシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位の領域、Dへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループにおいてシステインを付加された改変体を提供する。
【0153】
本実施例の新規なIL−7に由来する分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。システ
イン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に付加される改変体もまた、提供される。
【0154】
(実施例14)
(IL−9)
IL−9は、リンパ球、骨髄細胞、およびマスト細胞の系統における多くの細胞型に作用する多面的なサイトカインである。IL−9は、活性化T細胞および細胞傷害性Tリンパ球の増殖を刺激し、マスト細胞前駆体の増殖を刺激し、そして未熟な赤血球前駆体を刺激するにおいてエリスロポエチンと共働作用する。ヒトIL−9のアミノ酸配列(配列番号15)は、Yangら(1989)において示され、この文献は、本明細書中に参考として援用される。IL−9は、切断されて126アミノ酸の成熟タンパク質を産生する144アミノ酸の前駆体タンパク質として合成される。このタンパク質は、4つの潜在的なN結合型グリコシル化部位を含む。
【0155】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位を含む3つのアミノ酸のいずれかにシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位の領域、Dへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループにおいてシステインを付加された改変体を提供する。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に付加されている改変体もまた、提供される。
【0156】
本実施例のIL−9に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0157】
(実施例15)
(IL−10)
ヒトIL−10のアミノ酸配列(配列番号16)は、Vieiraら(1991)において示され、この文献は、本明細書中に参考として援用される。IL10は、切断されて160アミノ酸の成熟タンパク質を産生する178アミノ酸の前駆体タンパク質として合成される。IL−10は、免疫系を活性化または抑制するように機能し得る。このタンパク質は、インターフェロンと構造的な相同性を共有する(すなわち、5つの両親媒性ヘリックスを含む)。このタンパク質は、1つのN結合型グリコシル化部位を含む。
【0158】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位を含む3つのアミノ酸のいずれかにシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位の領域、Eへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、C−DループおよびD−Eループにおいてシステインを付加された改変体を提供する。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に導入される改変体もまた、提供される。
【0159】
本実施例のIL−10に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0160】
(実施例16)
(IL−11)
IL−11は、造血、リンパ球産生、および急性期応答を刺激する多面的なサイトカインである。IL−11は、多くの生物学的効果をIL−6と共有している。ヒトIL−11のアミノ酸配列(配列番号17)は、Kawashimaら(1991)およびPau
lら(1990)において示され、その両方が本明細書中に参考として援用される。IL−11は、切断されて178アミノ酸の成熟タンパク質を産生する199アミノ酸の前駆体タンパク質として合成される。このタンパク質には、N結合型グリコシル化部位は存在しない。
【0161】
この実施例は、Aへリックスに対して近位の領域、Dへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループにおいてシステインを付加された改変体を提供する。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に付加されている改変体もまた、提供される。
【0162】
本実施例のIL−11に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0163】
(実施例17)
(IL−12p35)
IL−12は、NK細胞および細胞傷害性Tリンパ球の増殖および分化を刺激する。IL−12は、p35サブユニットおよびp40サブユニットのヘテロダイマーとして存在する。p35は、GHスーパー遺伝子ファミリーのメンバーである。p35サブユニットのアミノ酸配列(配列番号18)は、Gublerら(1991)およびWolfら(1991)において示され、両方が本明細書中に参考として援用される。p35は、切断されて175アミノ酸の成熟タンパク質を産生する197アミノ酸の前駆体タンパク質として合成される。このタンパク質は、7つのシステイン残基および3つの潜在的なN結合型グリコシル化部位を含む。
【0164】
この実施例は、3つのN結合型グリコシル化部位を含む3つのアミノ酸のいずれかにシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位の領域、Dへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループにおいてシステインを付加された改変体を提供する。これらの改変体は、天然のタンパク質配列、あるいは天然に生じる「遊離の」システイン残基が別のアミノ酸、好ましくはセリンまたはアラニンに変化している改変体タンパク質の状況において、提供される。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に導入されている改変体もまた、提供される。
【0165】
本実施例のIL−12p35に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0166】
(実施例18) (IL−13) IL−13は多くの生物学的特性をIL−4と共有する。IL−13のアミノ酸配列(配列番号19)は、Mckenzieら(1993)およびMintyら(1993)において示され、両方が本明細書中に参考として援用される。このタンパク質は、切断されて112アミノ酸の成熟タンパク質を産生する132アミノ酸の前駆体タンパク質として合成される。この成熟タンパク質は、5つのシステイン残基および複数のN結合型グリコシル化部位を含む。78位のグルタミンがmRNAの選択的スプライシングによって欠失している改変体が記載されている(Mckenzieら、1993)。
【0167】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位を含む3つのアミノ酸のいずれかにシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位の領域
、Dへリックスに対して遠位の領域、A−Bループ、B−Cループ、およびC−Dループにおいてシステインを付加された改変体を提供する。これらの改変体は、天然のタンパク質配列、あるいはすでに存在する「遊離の」システインが別のアミノ酸、好ましくはアラニンまたはセリンに変化している改変体配列の状況において、提供される。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に導入される改変体もまた、提供される。
【0168】
本実施例のIL−13に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0169】
(実施例19)(IL−15) IL−15は、T細胞、NK細胞、LAK細胞、および腫瘍浸潤リンパ球の増殖および分化を刺激する。IL−15は、ガンおよびウイルス感染を処置するにおいて有用であり得る。IL−15のアミノ酸配列(配列番号20)は、Andersonら(1995)において示され、この文献は、本明細書中に参考として援用される。IL−15は、2つのN結合型グリコシル化部位を含み、これらはC−Dループ内およびDヘリックスのC末端に位置する。IL−15は、切断されて114アミノ酸の成熟タンパク質を生成する162アミノ酸のプレタンパク質をコードする。
【0170】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位(C−DループまたはDヘリックスのC末端中)を含む3つのアミノ酸のいずれかにシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位の領域、A−Bループ、B−Cループ、C−Dループ、またはDへリックスに対して遠位の領域においてシステインを付加された改変体を提供する。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に導入されている改変体もまた、提供される。
【0171】
本実施例のIL−15に由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0172】
(実施例20)(マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF))M−CSFは、単球の増殖、分化および機能を調節する。このタンパク質は、ジスルフィド連結したホモダイマーである。異なるmRNAスプライシングより生じるM−CSFの複数の分子量種が記載されている。ヒトM−CSFのアミノ酸配列およびその種々のプロセッシング型は、Kawasakiら(1985)、Wongら(1985)、およびCerrettiら(1988)において示され、これらは本明細書中に参考として援用される。システイン付加改変体は、本願の一般的教示に従って、および本明細書に示される実施例に従って産生され得る。
【0173】
本実施例のMCSFに由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0174】
(実施例21)
(オンコスタチンM)
オンコスタチンMは、多くの細胞型の増殖および分化に影響を与える多機能なサイトカインである。オンコスタチンMのアミノ酸配列(配列番号21)は、Malikら(1989)において示され、この文献は、本明細書中に参考として援用される。オンコスタチンMは、活性化単球およびTリンパ球によって産生される。オンコスタチンMは、順番に切断されて、227アミノ酸タンパク質、次いで196アミノ酸タンパク質を産生する2
52アミノ酸のプレタンパク質として合成される(Linsleyら、1990)。成熟タンパク質は、O結合型グリコシル化部位および2つのN結合型グリコシル化部位を含む。このタンパク質は、T160、T162、およびS165でO−グリコシル化される。成熟タンパク質は5つのシステイン残基を含む。
【0175】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位を含む3つのアミノ酸のいずれかにまたはO結合型グリコシル化部位を含むアミノ酸にシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位の領域、A−Bループ、B−Cループ、C−Dループ、またはDへリックスに対して遠位の領域においてシステインを付加された改変体を提供する。これらの改変体は、天然のタンパク質配列、あるいはすでに存在する「遊離の」システインが別のアミノ酸、好ましくはアラニンまたはセリンに変化している改変体配列の状況において、提供される。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に導入されている改変体もまた、提供される。
【0176】
本実施例のオンコスタチンMに由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0177】
(実施例22)
(毛様体神経栄養因子(CNTF))
ヒトCNTFのアミノ酸配列(配列番号22)は、Lamら(1991)において示され、この文献は、本明細書中に参考として援用される。CNTFは、グリコシル化部位または分泌のためのシグナル配列を含まない、200アミノ酸のタンパク質である。このタンパク質は、1つのシステイン残基を含む。CNTFは、神経細胞の生存因子として機能する。
【0178】
この実施例は、Aへリックスに対して近位において、A−Bループ、B−Cループ、C−Dループにおいて、またはDへリックスに対して遠位においてシステインを付加された改変体を提供する。これらの改変体は、天然のタンパク質配列、あるいはすでに存在する「遊離の」システインが別のアミノ酸、好ましくはアラニンまたはセリンに変化している改変体配列の状況において、提供される。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に導入されている改変体もまた、提供される。
【0179】
本実施例のCNTFに由来する新規な分子は、実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、処方され得、そして活性について試験され得る。
【0180】
(実施例23)
(白血病阻害因子(LIF))
LIFのアミノ酸配列(配列番号23)は、Moreauら(1988)およびGoughら(1988)において示され、両方は、本明細書中に参考として援用される。そのヒト遺伝子は、切断されて180アミノ酸の成熟タンパク質を産生する202アミノ酸前駆体をコードする。このタンパク質は6つのシステイン残基を含み、それらのすべてがジスルフィド結合に関与する。このタンパク質は、多数のO結合型グリコシル化部位およびN結合型グリコシル化部位を含む。このタンパク質の結晶構造は、Robinsonら(1994)によって決定された。このタンパク質は、多くの細胞型の増殖および分化に影響を与える。
【0181】
この実施例は、N結合型グリコシル化部位またはO結合型グリコシル化部位を含む3つのアミノ酸のいずれかにシステインを付加された改変体を提供する。この実施例はまた、Aへリックスに対して近位において、A−Bループ、B−Cループ、C−Dループにおいて、またはDへリックスに対して遠位においてシステインを付加された改変体を提供する。システイン残基が、成熟タンパク質の最初のアミノ酸残基に対して近位に、または最後のアミノ酸残基に対して遠位に付加されている改変体もまた、提供される。
【0182】
本実施例のLIFに由来する新規な分子は、処方され得、そして実施例1および2に本質的に示されるが、しかし、本実施例の特定のタンパク質に関連する当該分野で公知の適切なアッセイおよび他の考慮に置換されるように、活性について試験され得る。
【0183】
本明細書中で引用されたすべての文書は、本明細書中で参考として援用される。
本明細書中で開示されたタンパク質アナログは、すべて当該分野で周知の本質的に同じ形態および用量で、ネイティブタンパク質の公知の治療的使用のために使用され得る。
【0184】
本発明の例示的な好ましい実施態様が本明細書中で詳細に記載されるが、当業者は、特に本明細書中で記載された以外の変更、改変、付加、および適用を認識し、そして本発明の精神から逸脱することなく、好ましい実施態様および方法を応用し得る。
【0185】
(参考文献)
【0186】
【表1】

【0187】
【表2】

【0188】
【表3】

【0189】
【表4】

【0190】
【表5】

【0191】
【表6】

【0192】
【表7】

【0193】
【表8】

【0194】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号5のβインターフェロンのシステイン改変体であって、
Q23、N25、G26、N80、E109、D110、F111、T112、R113、G114、K115およびN166から選択された少なくとも1つのアミノ酸がシステイン残基に置換され、
前記システイン改変体はβインターフェロンに応答して増殖が阻害される細胞系統の増殖の阻害により測定されるインビトロ生物活性を有するシステイン改変体。
【請求項2】
Q23がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項3】
N25がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項4】
G26がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項5】
N80がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項6】
E109がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項7】
D110がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項8】
F111がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項9】
T112がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項10】
R113がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項11】
G114がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項12】
K115がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項13】
N166がシステイン残基に置換されている請求項1に記載のシステイン改変体。
【請求項14】
配列番号5のβインターフェロンのシステイン改変体であって、
βインターフェロンの最後のアミノ酸の後にシステイン残基が挿入されており、
前記システイン改変体はβインターフェロンに応答して増殖が阻害される細胞系統の増殖の阻害により測定されるインビトロ生物活性を有するシステイン改変体。
【請求項15】
非システインアミノ酸がβインターフェロンのC17に置換されている請求項1〜14のいずれかに記載のシステイン残基。
【請求項16】
βインターフェロンのC17に置換される前記非システインアミノ酸がセリンおよびアラニンから選択される請求項15に記載のシステイン改変体。
【請求項17】
前記置換または挿入されたシステイン残基がシステイン反応性部分により修飾される請求項1〜16のいずれかに記載のシステイン改変体。
【請求項18】
前記置換または挿入されたシステイン残基がポリエチレングリコールにより修飾される請求項1〜17のいずれかに記載のシステイン改変体。
【請求項19】
ポリエチレングリコールで修飾されている請求項1〜18のいずれかに記載のシステイン改変体。

【公開番号】特開2009−96810(P2009−96810A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302460(P2008−302460)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【分割の表示】特願2000−503109(P2000−503109)の分割
【原出願日】平成10年7月13日(1998.7.13)
【出願人】(500024872)ボルダー バイオテクノロジー, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】