説明

成長ホルモン融合タンパク質

インビボでの安定性および活性を増加させた成長ホルモン融合タンパク質、前記タンパク質をコードする核酸分子ならびに前記タンパク質を使用する成長ホルモン欠損症の治療法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長ホルモン融合タンパク質、前記タンパク質をコードする核酸分子および前記タンパク質を使用する治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
受容体と相互作用して生化学的応答を引き起こすリガンドは、アゴニストとして知られており、生化学的応答を妨げるまたは邪魔をするリガンドはアンタゴニストとして知られている。例えば、細胞特異的成長因子は、アゴニストとして働き細胞表面に位置する受容体に結合するリガンドである。リガンド特異的結合により受容体が活性化されると、とりわけ、細胞周期特異的遺伝子の発現および静止細胞の活性化による増殖をもたらす細胞内シグナル伝達カスケードの活性化を介して細胞増殖が促進される。
サイトカインと呼ばれる一群の成長因子は、いくつかの多様な細胞機能に関与している。これらの機能には、免疫系の調節、エネルギー代謝の調節ならびに成長および発生の制御が挙げられる。サイトカインは、標的細胞上の細胞表面で発現される受容体を介してその効果を媒介する。サイトカイン受容体は、3つの別々の下位グループに分類することができる。1型(成長ホルモンファミリー)受容体は、その細胞外ドメインのアミノ末端部分にある4つの保存されたシステイン残基およびC末端部分における保存されたTrp−Ser−Xaa−Trp−Serモチーフの存在によって特徴づけられる。繰り返しCysモチーフは、2型(インターフェロンファミリー)およびIII型(腫瘍壊死因子ファミリー)にも存在している。
【0003】
成長ホルモン(GH)は、小児期の直線的な成長および成人の正常な身体組成にとり重要なタンパク同化サイトカインホルモンである。GH交換のための最新の治療計画では、不便で高価な1日1回の皮下注射が必要である。ペグ化および徐放製剤3〜5を含む長時間作用性調製物を作製するためいくつかのアプローチが取られてきた。ペグ化には、受容体に対するホルモンの親和性を減少させるという不利な点があり、それに続く精製での化学修飾は高価である。徐放製剤は有効性を証明してはいる4〜7が、そのようなGH調製物は優勢な早期放出プロファイルに特徴づけられており、超生理学的GHレベルを引き起こし、製造は高価であり、注射は有痛性であることがある。製造コストを最小限に抑え、優れた薬物動態学的プロファイルを有し、投与が簡単で、患者にとり許容可能であるサイトカイン製剤に対する必要性が存在する。
【0004】
GHは、細胞表面1型サイトカイン受容体(GHR)を通じて働く。他のサイトカイン受容体と共通して、GHRの細胞外ドメインはタンパク質分解的に切断されて、結合タンパク質(GHBP)として循環する。生理的条件下では、GHには一部、循環中に1対1のモル比でGHBPが結合しており、この複合体は生物学的に不活性であり、クリアランスおよび分解から保護されている9、10。GHとGHBPとの架橋複合体は、クリアランスを遅らせるが生物活性はない11。別々に精製されたGHBPとGHとの1対1比での同時投与は、GHのタンパク同化作用を増強することができる12。したがって、多くのホルモン系のように、循環中の結合は、活性な遊離ホルモンと平衡状態にある不活性循環貯蔵場所を提供する13
成長ホルモンのようなサイトカインホルモンは、血漿半減期が短く、頻繁な投与が必要である。例えば、成長ホルモン(GH)交換は連日注射を含む。他のサイトカインと共通して、細胞外ドメインGH受容体は、結合タンパク質として循環し、GHの生物学的半減期を自然に延長する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、GHとその細胞外ドメイン受容体のリガンド−受容体融合体(LR融合体)の生物学的作用に関する。そのような遺伝子操作されたLR融合タンパク質は、哺乳動物細胞培養から精製された。ラットでは、LR融合体は天然GHと比べてクリアランスが300分の1に減少し、単回投与では天然GHで見られる成長よりもはるかに優れていて10日間成長を促進した。クリアランスが減少したことは、霊長類モデルで再現性がある。LR融合体は、GHおよびその結合タンパク質とともに天然に存在する不活性ホルモンの貯蔵場所を提供する相互ヘッドトゥーテール二量体を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
i)配列番号1に示される核酸配列、
ii)配列番号2に示される核酸配列、
iii)配列番号3に示される核酸配列、
iv)配列番号4に示される核酸配列、または
v)厳密なハイブリダイゼーション条件下で配列番号1、配列番号2、配列番号3もしくは配列番号4にハイブリダイズする核酸配列を含む核酸分子から選択され、成長ホルモン受容体アゴニスト活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。
【0007】
核酸分子のハイブリダイゼーションは、2つの相補的核酸分子が互いへの一定量の水素結合を受けるときに起こる。ハイブリダイゼーションの厳密性は、核酸を取り囲む環境条件、ハイブリダイゼーション方法の性質、および使用される核酸分子の組成と長さにより変化することがある。特定度の厳密性を達成するために必要なハイブリダイゼーション条件の関する計算は、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、2001)およびTijssen、「Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes」、Part1、Chapter2(Elsevier、ニューヨーク、1993)で論じられている。Tmは、核酸分子の所与の鎖の50%がその相補鎖にハイブリダイズする温度である。下記はハイブリダイゼーション条件の例となるセットであり限定的なものではない:
超高厳密性(少なくとも90%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:65℃で16時間、5×SSC
2度洗浄:それぞれ室温(RT)で15分間、2×SSC
2度洗浄:それぞれ65℃で20分間、0.5×SSC
高厳密性(少なくとも80%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:65℃〜70℃で16〜20時間、5×〜6×SSC
2度洗浄:それぞれRTで5〜20分間、2×SSC
2度洗浄:それぞれ55℃〜70℃で30分間、1×SSC
低厳密性(少なくとも50%の同一性を共有する配列がハイブリダイズすることを可能にする)
ハイブリダイゼーション:RT〜55℃で16〜20時間、6×SSC
少なくとも2度洗浄:それぞれRT〜55℃で20〜30分間、2×〜3×SSC
【0008】
本発明の好ましい実施形態では、前記核酸分子は配列番号1に示される核酸配列を含むまたはそれからなる。
本発明の好ましい実施形態では、前記核酸分子は配列番号2に示される核酸配列を含むまたはそれからなる。
本発明の好ましい実施形態では、前記核酸分子は配列番号3に示される核酸配列を含むまたはそれからなる。
本発明の好ましい実施形態では、前記核酸分子は配列番号4に示される核酸配列を含むまたはそれからなる。
本発明の態様によれば、本発明に従った核酸によってコードされるポリペプチドが提供される。
本発明の追加の態様によれば、
i)配列番号5に示されるアミノ酸配列、
ii)配列番号6に示されるアミノ酸配列、
iii)配列番号7に示されるアミノ酸配列、
iv)配列番号8に示されるアミノ酸配列、
v)配列番号9に示されるアミノ酸配列、
vi)配列番号10に示されるアミノ酸配列、
vii)配列番号11に示されるアミノ酸配列、
viii)配列番号12に示されるアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチドが成長ホルモン受容体アゴニスト活性を有するポリペプチドが提供される。
本発明の好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0009】
本発明の好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
本発明の好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
本発明の好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
本発明の好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
本発明の好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号11に示されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
本発明の好ましい実施形態では、前記ポリペプチドは、配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
本発明の追加の態様によれば、配列番号5を含むまたはそれからなる2つのポリペプチドを含むホモ二量体が提供される。
本発明の追加の態様によれば、配列番号6を含むまたはそれからなる2つのポリペプチドを含むホモ二量体が提供される。
本発明の追加の態様によれば、配列番号7を含むまたはそれからなる2つのポリペプチドを含むホモ二量体が提供される。
本発明の追加の態様によれば、配列番号8を含むまたはそれからなる2つのポリペプチドを含むホモ二量体が提供される。
【0011】
本発明の追加の態様によれば、配列番号9を含むまたはそれからなる2つのポリペプチドを含むホモ二量体が提供される。
本発明の追加の態様によれば、配列番号10を含むまたはそれからなる2つのポリペプチドを含むホモ二量体が提供される。
本発明の追加の態様によれば、配列番号11を含むまたはそれからなる2つのポリペプチドを含むホモ二量体が提供される。
本発明の追加の態様によれば、配列番号12を含むまたはそれからなる2つのポリペプチドを含むホモ二量体が提供される。
【0012】
本発明の追加の態様によれば、本発明に従った核酸分子を含むベクターが提供される。
本発明の好ましい実施形態では、前記ベクターは、本発明に従った核酸分子を発現するように適合させた発現ベクターである。
本発明に従った核酸(複数可)を含むベクターは、特に前記ベクターを使用して、核酸を細胞に導入してゲノム中に組み換え、安定なトランスフェクションを行う場合には、プロモーターまたは他の調節配列を含む必要はない。好ましくは、ベクター中の核酸は、宿主細胞における転写のために適切なプロモーターまたは他の調節エレメントに作動可能に連結されている。ベクターは、複数の宿主で機能する二機能性発現ベクターでもよい。「プロモーター」とは、転写開始部位の上流にあって転写に必要な調節領域すべてを含有するヌクレオチド配列を意味する。適切なプロモーターには、真核または原核細胞における発現のための構成的、組織特異的、誘導性、発生的または他のプロモーターが挙げられる。「作動可能に連結された」とは、転写がプロモーターから開始されるように適切に位置づけられ方向づけられた同一核酸分子の一部として結合されていることを意味する。プロモーターに作動可能に連結されたDNAは、プロモーターの「転写開始調節下」にある。
好ましい実施形態では、プロモーターは構成的、誘導性のまたは調節可能なプロモーターである。
【0013】
本発明の追加の態様に従えば、本発明に従った核酸分子またはベクターでトランスフェクトまたは形質転換された細胞が提供される。
好ましくは、前記細胞は真核細胞である。あるいは、前記細胞は原核細胞である。
本発明の好ましい実施形態では、前記細胞は、真菌細胞(例えば、ピキア(Pichia)菌種、酵母(Saccharomyces)菌種、パンカビ(Neurospora)菌種)、昆虫細胞(例えば、スポドプテラ(Spodoptera)菌種)、哺乳動物細胞(例えば、COS細胞、CHO細胞)、植物細胞からなるグループから選択される。
【0014】
本発明の追加の態様に従って、賦形剤または担体を含む、本発明に従ったポリペプチドを含む医薬品組成物が提供される。
本発明の好ましい実施形態では、前記医薬品組成物は、追加の治療薬と組み合わされる。
本発明の医薬品組成物は、投与される際には、薬学的に許容可能な調製物で投与される。そのような調製物は、薬学的に許容可能な濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合性担体、および任意選択で他の治療薬を常に含有していてもよい。
【0015】
本発明の医薬品組成物は、注射を含む従来のどんな経路によっても投与することができる。投与および適用は、例えば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、関節内、皮下、局所的(眼)、皮膚(例えば、皮膚もしくは粘膜内へのクリーム脂質可溶性インサート)、経皮的、または鼻腔内でもよい。
本発明の医薬品組成物は、有効量で投与される。「有効量」とは、単独で、または追加の用量もしくは相乗薬と一緒に、目的の応答を生み出す量の医薬品/組成物である。これには、疾病の進行を一時的に遅くすることだけを含んでいてもよいが、さらに好ましくは、これは疾病の進行を永久に停止することを含む。これは、常法によりモニターすることができる、または診断法に従ってモニターすることができる。
【0016】
対象に投与される医薬品組成物の用量は、異なったパラメータに従って、特に使用される投与方法および対象の状態(例えば、年齢、性別)に従って選択することができる。本発明の医薬品組成物は、投与される際に、薬学的に許容可能な量で、および薬学的に許容可能な組成物で適用される。塩は、薬物中に使用される場合、薬学的に許容可能であるほうがよいが、非薬学的に許容可能な塩を都合よく使用して、その薬学的に許容可能な塩を調製してもよく、本発明の範囲から除外されることはない。そのような薬理学および薬学的に許容可能な塩には、以下の酸、すなわち、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、等から調製された塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。その上、薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属として調製することができる。
【0017】
医薬品組成物は、必要であれば、薬学的に許容可能な担体と組み合わせてもよい。本明細書で使用する用語「薬学的に許容可能な担体」とは、ヒトへの投与に適した1つまたは複数の適合性固体もしくは液体充填剤、希釈剤または封入物質を意味する。用語「担体」は、天然であれ合成であれ、適用を促進するために活性成分が組み合わされる有機または無機成分を示す。医薬品組成物の成分は、目的の薬剤効果を実質的に損なうと考えられる相互作用がないような形で、本発明の分子とおよび互いに混合することもできる。
医薬品組成物は、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸、および塩中のリン酸を含む適切な緩衝剤を含有していてもよい。
医薬品組成物は、任意選択で、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールなどの適切な保存剤を含有していてもよい。
【0018】
医薬品組成物は、都合よく単位用量形で提示してもよく、薬学の技術分野で公知の方法のうちいずれによって調製してもよい。すべての方法が、活性薬剤を1つまたは複数の付属成分を構成する担体と会合させる段階を含む。一般に、組成物は、均一に密接に活性化合物を液体担体、微粉化固体担体、または両方と会合させ、次に必要であれば、製品を成形することにより、調製される。
経口投与に適した組成物は、それぞれが所定量の活性化合物を含有する、カプセル、錠剤、トローチ剤などの個別の単位として提示してもよい。他の組成物には、シロップ、エリキシル剤または乳剤などの水性液体または非水性液体中の懸濁剤が挙げられる。
【0019】
非経口投与に適した組成物は、好ましくはレシピエントの血液と等張性の無菌水性または非水性調製物を都合よく含む。この調製物は、適切な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用した公知の方法に従って製剤してもよい。無菌注射用調製物は、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液として、無毒性非経口的に許容可能な希釈液または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液でもよい。用いてもよい許容可能な溶媒には、水、リンゲル液、および等張食塩水がある。さらに、無菌固定油は、溶媒または懸濁化剤として都合よく用いられる。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含むどんな無菌固定油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を、注射剤の調製に使用してもよい。経口、皮下、静脈内、筋肉内等の投与に適した担体の製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、PAに見ることができる。
【0020】
本発明の追加の態様に従って、本発明に従った有効量の少なくとも1つのポリペプチドを投与することを含む、成長ホルモン欠損症を患ったヒト対象を治療する方法が提供される。
本発明の好ましい方法では、前記ポリペプチドは静脈内に投与される。
本発明の別の好ましい方法では、前記ポリペプチドは皮下に投与される。
本発明の追加の好ましい方法では、前記ポリペプチドは2日間隔を置いて投与され、好ましくは、前記ポリペプチドは1週間間隔で、2週間間隔でまたは1月間隔で投与される。
【0021】
本発明の好ましい方法では、前記成長ホルモン欠損症は小児期成長ホルモン欠損症である。
本発明の好ましい方法では、前記成長ホルモン欠損症は成人成長ホルモン欠損症である。
成長ホルモン欠損症の治療には、例えば、ターナー症候群、プラダーウィリー症候群、子宮内発育遅延、突発性低身長、腎不全、例えば、化学療法治療中およびエイズの治療における異化状態の治療が挙げられる。
【0022】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、単語「含む(comprise)」および「含有する(contain)」および前記単語の変形、例えば、「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むが、限定されない」ことを意味し、他の部分、添加物、成分、整数または段階を除外することを意図してはいない(および除外しない)。
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、単数形は、文脈が他の方法で要求しなければ、複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用されているところでは、本明細書は、文脈が他の方法で要求しなければ、単一性だけではなく複数存在することも企図していると理解されるべきである。
【0023】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例と併せて記載されている特色、整数、特徴、化合物、化学的部分もしくは基は、それと不適合でなければ、本明細書に記載する他のどんな態様、実施形態または実施例にも適用できると理解されるべきである。
本発明の実施形態は、これから、実施例のみにより、以下の図を参照して本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】公表されている構造27(pdb3HHR)に基づいて、GH、GH結合タンパク質(GHBP)、LR融合およびGHR間の関係の概略図である。(a)1対1複合体においてGHがGHBPに結合している天然の立体構造。(b)GHは、GHBP複合体から放出されて、細胞表面GH受容体に結合する。(c)GHがexGHRに連結されて、単量体の形のLR融合分子が形成される。(d)1分子中のGHがもう1つの分子中のexGHRに結合している相互ヘッドトゥーテール二量体を形成するLR融合体のモデル。最後に、(e)では、単量体の形のLR融合体は、GH受容体に結合し活性化することができる。
【図2】LR融合体の特徴づけおよび生物活性を示す図である。(a)は、LR融合体のSDS−PAGEによる分離に続くクーマシー染色(CS)およびGH特異的抗体を使用したウェスタンブロッティング(WB)を示している。LR融合体はほぼ75kDaで、分離して別々にほぼ5kDaの2つのバンドとなる。(b)は、LR融合体が未変性PAGEにより分離されて、2つのタンパク質型、すなわちファースト(F)とスロー(S)があることを示している。(C)未変性PAGEから個々のバンド(FおよびS)を切り出し、還元性条件下でSDS−PAGEによりさらに分離し、続いてGH特異的抗体を使用したウェスタンブロッティングにかけた。両方のバンド(FおよびS)はほぼ75kDaに移動し、以前示されたダブレットとして分離する。これにより、未変性PAGEにより観察された2つの別々のバンドは両方とも75kDa LR融合体で構成されており、自然条件下では単量体と二量体として平衡状態で存在している可能性があることが示唆される。(d)は、ゲルろ過に続くLR融合体の溶出プロファイルを示している。2つの別々のピークに分かれているのは、LR融合体が溶液中では単量体と二量体として存在していることを再び示している。(e)GHとLR融合体に対する細胞に基づいたGHRシグナル伝達バイオアッセイ。y軸は、Stat5ルシフェラーゼレポーターアッセイから補正されたルシフェラーゼの誘導倍率を示している。GHの標準曲線は、0、0.25、0.5、1.0、2.0および5nMの範囲であり、LR融合体標準曲線は、0.1、2、5、10、25、50、100および250nMの範囲である。GHの最大応答は5nMで達成され、LR融合体の最大応答は50〜250nMを必要とする。
【図3】皮下(sc)および静脈内(iv)投与後に測定されたGHおよびLR融合体のプロファイルを示す図である。(a)はsc投与後の初期段階(5時間)を示しており、(b)はiv後の後期段階(8日間)を示しており、(c)はsc投与後の後期段階を示している。
【図4】GHおよびLR融合体を使用した皮下治療後の体重変化を示す図である。(a)は連日GH対プラセボ(媒体のみ)後、(b)は隔日注射、(c)は1日目と5日目の2回注射、(d)は1日目の単回注射、(e)は異なった治療計画後の体重変化の概要を示している。***=p<0.0001GH対LR融合体
【図5】1B7v0、1B7v1、1B7v2、および1B7v3のインビボ活性を示す図である。
【図6】ラット投与1B7v0、1B7v1、1B7v2、および1B7v3における体重増加を示す経時変化を示す図である。
【図7】皮下投与後の1B7v0、1B7v1、1B7v2、および1B7v3の薬物動態を示す図である。
【図8】静脈内投与後の1B7v0、1B7v1、1B7v2、および1B7v3の薬物動態を示す図である。
【図9】アカゲザルにおける1mg/kgの連続s/c投薬に続く1B7v2および1B7v3に対する薬物動態プロファイルを示す図である。赤色点線は、ヒト成長ホルモンの最小有効濃度を示している。
【図10】表1は、下垂体摘出ラットにおけるGHまたはLR融合体を使用した10日間治療後の結果(平均±標準誤差)を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
材料および方法
動物およびヒト試料の使用。ヒト試料の使用は、地元の倫理委員会により承認され、患者がインフォームドコンセントを与えた。実験はすべて、実験または他の科学的目的のために使用される動物保護に関するフランスの法律(1986年11月24日の議会指令N°86/609/EEC)に従って行われた。
材料。材料は、他の方法で述べられていなければ、すべてSigma(Poole、UK)から購入した。組換えGHはPfizerから購入し、結合アッセイにおいて使用される組換え大腸菌(E.coli)由来ヒトGH結合タンパク質はDSL(DSL Research Reagents、Oxfordshire、UK)より贈与され、ヨウ素化GHはNovoNordisk(NovoNordisk Park、Denmark)より贈与された。精製および特徴づけに使用されたGHおよびGHR mAbは、Skriver博士(NovoNordisk Park、Denmark)から贈与されたmAbs B07bおよびB24aならびにmAb263(AbD Serotec、Kidlington、Oxford、UK)以外は自家材料(CS)であった。
【0026】
GH−exGHR LR融合体の精製。ヒトGHおよびGH受容体は、それぞれヒト下垂体および肝臓からRT−PCRにより増幅され、ヒトGH分泌シグナル配列下のベクター、pSec Tag−V5/FRT/Hist−TOPO(Invitrogen、Paisley、UK)にクローン化された。GlySerリンカーの4つのリピートを使用して、ヒトGHの天然のC末端をヒトGHRの天然のN末端に連結した。CHO Flp−In細胞(Invitrogen、Paisley、UK)中に安定なクローンが作製され、タンパク質無添加培地に適応され、懸濁培養で増殖された。LR融合体発現は、自家ELISAにより確認された。親和性精製はGH mAbカラムを使用して実施された。
転写バイオアッセイ。これらは、ヒトGHRを安定的に発現しているヒト293細胞において前述の通りに実施された16
【0027】
ELISA。自家GHおよびLR融合体ELISAは、サンドイッチELISAフォーマットに基づいて確立されている。アッセイでは、標準物質(GHまたはLR融合体)、対照および未知物質が、ヒトGH抗体(mAb 10A7)に対するマウス抗体でプレコートされたウェル中でヒトGH(mAb 7F8)に対するビオチン標識マウス抗体と一緒にインキュベートされる。アッセイの検出限界は2.5pgであり、イントラおよびインターアッセイCVは<10%である。IGF−I ELISAはDSL(DSL−10−2900 ACTIVEマウス/ラット IGF−Iキット、DSL Research Reagents、Oxfordshie、UK)から購入した。
【0028】
薬物動態研究。Janvier(Le Genest Saint Isle、France)製の生後7週間の正常スプラーグドーリーラットを薬物動態研究のために使用した。Scまたはiv投与(陰茎静脈)および血液回収(眼窩洞)を、イソフルラン麻酔下で行った。ラット(n=4〜6/グループ)には、0.1mg/kgのrhGHまたはLR融合体をivまたはscに注射した。血液試料は後眼窩神経叢から採取した。血清を回収し、アッセイまで−70℃で貯蔵した。薬物動態パラメータは、非線形最小二乗回帰分析を使用して、ホルモン濃度対時間の値をコンパートメントモデルにフィットさせることにより評価した。クリアランス値は、動物体重に規準化した。動物体重あたりのクリアランス速度および終末期半減期(t1/2)は、ivボーラスモデルフィットから得られる係数および指数を使用して計算した。
【0029】
霊長類薬物動態研究
被検物質1B7v2および1B7v3は、11.9mMリン酸ナトリウムとカリウム、137mM塩化ナトリウム、2.7mM塩化カリウム、0.01%ポリソルベート80を含有する溶液中で製剤し、溶液のpHは7.4に調整した。
研究デザイン
動物は4つの治療グループ(1媒体、1つの1B7v2試験グループ、1つの1B7v3試験グループ)に割り当て、媒体グループには3匹のオス、2つの治療グループにはグループあたり4匹のオスを含む。服用レベルおよび投与される容量は、下の表に概要を述べた通りであった。

【0030】
血液試料は、血清中の適切な検査物質の濃度を決定するために、研究中ずっとすべての動物から入手した。これらの試料は研究中のいくつかの時点で採取した。
臨床評価項目および測定
1B7v2および1B7v3の血清濃度は有効なELISA法を使用して決定された。それぞれのタンパク質の薬物動態プロファイルは、WinNonlin Pro(v4.0.1)ソフトウェアを使用して、血清中のそれぞれのタンパク質濃度対時間をプロットすることにより決定した。
【0031】
成長研究。成長研究は下垂体摘出ラットを使用し、Charles River Laboratories(Larbresle、France)製のスプラーグドーリーラットで実施された。ラットは生後4週間目にイソフルラン麻酔下で育種者により下垂体摘出され、手術が成功したことを判断する体重基準に基づく選別の1週間後に配送された。動物は個別に檻に入れられ、実験段階に入る前にもう1週間休息を与えられた。賦形剤、rhGHおよびLR融合体の注射液は2ml/kgを超えることは決してなかった。ラットは毎日体重を量り、投与プロトコルにより、10日間検査物質の注射を受けた。
【0032】
LR融合体の特徴づけ。LR融合体の立体構造は、16の立体構造的感受性hGH受容体mAbのパネルを使用して調べた。変性、未変性ゲルおよびウェスタンブロッティングを使用して、LR融合体を分析し、ウェスタンブロッティングはGHに非立体構造的感受性を利用して実施した。溶液中のLR融合タンパク質の形は、Superose G200分析カラムと分析超遠心分離を使用して、ゲルろ過により規定した。分析超遠心分離(AUC)は、沈降速度により実施した(解析サービス、Dr Andy Barry、Astbury、Leeds University、Leeds、UK)。
統計。2つのグループは、その分散が正常に分布している場合は、スチューデント検定と比較し、正常に分布していない場合は、スチューデントサタースウェイト検定により比較した。分布はF検定で試験した。一元配置分散分析(One−way ANOVA)を使用して、3つ以上のグループの平均値を比較し、有意性のレベルがp<0.05の場合には、個々の比較はダネット検定(Dunnett’s test)で実施した。統計検定はすべて、5%レベルの有意性で両側性であり、欠測値のためのインピュテーションは行わなかった。
【実施例】
【0033】
LR融合体の設計および特徴づけ
可動性(GlySer)リンカーを介してGHR細胞外ドメイン(exGHR1〜238)のA&Bドメインに連結されたヒトGHをコードする組換え遺伝子を作製した(図1c)。このLR融合体はCHO細胞で発現され、GHアフィニティーメディアに対するmAbを使用して、>95%純度まで精製された(図2a)。LR融合体は16の立体構造的感受性mAbを使用してELISAによりスクリーニングされた。これらのmAbはすべて、ヒト血清由来GHBPに対する親和性に匹敵する親和性でLR融合体に結合した。クーマシー染色およびSDS−PAGEゲルのウェスタンブロッティングにより、LR融合タンパク質が、2つのバンド間でほぼ5kDa差のあるほぼ75kDaのダブレットとして分離することが明らかになった。未変性PAGEゲル分析(図2b)は、凝集の証拠を何も示さなかった。LR融合体は、2つの別々の形として現れた。これらの別々のタンパク質形、すなわちファースト(F)とスロー(S)を未変性PAGEゲルから切り出し、次に還元状態下でSDS−PAGEにより再分析した。未変性PAGEからのF形とS形の両方が75kDaダブレットからなっていた(図2c)。溶液中に2種類の形のLR融合体が存在する証拠は、分析ゲルろ過により裏付けられた(図2d)。これらの結果は、溶液中に二量体として存在するLR融合体と一致している。これは、単量体の大きさが75kDaで確認された分析超遠心分離により確認された。
【0034】
インビトロバイオアッセイおよび薬物動態
LR融合体のインビトロ生物活性は、GH特異的ルシフェラーゼレポーターアッセイ16を使用して試験した。LR融合体は、この静的アッセイ法ではGHと比べた生物活性のほぼ10%を有していたが、LR融合体は、GHよりも高濃度ではあるが最大応答を刺激することができた(図2e)。LR融合体の薬物動態プロファイルは、単回皮下(sc)または静脈内(iv)注射後、正常ラットで調べた(図3)。実証されたLR融合体は、投与経路に関係なくクリアランスを遅らせ、sc投与後の吸収を遅らせた。ivボーラス後、LR融合体の終末期半減期は21±2時間であり、クリアランスは3.3±0.9ml・時間−1・kg−1であった。LR融合体のクリアランスはGHの300分の1の速さであった2、12。単回sc投与後、LR融合体は、GHと比べてピークが遅れていた(30対1時間)。LR融合体は、それでも8日目に検出可能であり、GHは6時間目に検出不可能であった。LR融合体の並はずれた薬物動態が大きさと関係しているのかどうかを調べた。同一リンカーを有する2つの変異LR融合分子、すなわち、1つはBドメインexGHRのみへのGHのLR融合体(55kDa)およびもう1つはexGHRに連結した直列(GHに連結したGH)(100kDa)を試験した。55kDaと100kDaタンパク質の両方が、最初の75kDaLR融合体と比べると、バイオアッセイにおいて増加したアゴニスト活性を示したが、両方で循環半減期はiv投与後は<4時間であった(使用された試料採取プロトコルがもっと長い半減期を予想していたために、正確な半減期決定は可能ではなかった)。結果によれば、最初の75kDaLR融合体の並はずれた薬物動態は分子量と関係しているだけではなかったことが確認されている。
【0035】
t−0およびt−336時間(14日)目における1mg/kgの2回順次s/c用量に続く1B7v2および1B7v3に対する霊長類研究の薬物動態プロファイルは図9に示されている。<1時間の半減期を有する天然ヒト成長ホルモンと比べて、前記レベルは急速に最大値に到達し、かなり長時間かけて減少することに注目することができる。順次投薬の持続期間にわたり点線により明示されるように、前記レベルは最小有効濃度を優に上回って維持されてもいる。
【0036】
GHに対するLR融合体成長促進の優位性
生物活性を試験するために、LR融合体とGHを下垂体摘出(GH欠損)ラットに投与した。GHの連日投与により、10日にわたる連続成長が誘導された。次に、LR融合体を、隔日sc注射、または10日にわたる2回注射、または単回注射のいずれかでGHと比較した。すべての実験で、等モル用量のGHとLR融合体を使用し、同一総量を10日の期間にわたり与え、220μg/kg/日で、最大成長応答を得るために以前使用された用量に類似する10日にわたりほぼ10nモルであった12。LR融合体は、同一注射プロトコル下でGHよりも大きく、連日GH注射後に見られる増加に類似する体重増加を促進した(図4および表)。GHは、注射後24時間で体重増加を促進するだけと思われた。これとは対照的に、LR融合体は、単回注射として与えられるときでも、10日にわたり連続体重増加をもたらした。類似の成長パターンは、大腿骨、脛骨、胸腺、肝臓および腎臓で見られた(表)。すべての動物からの10日終末期出血は、GH依存バイオマーカー、インスリン様成長因子−1(IGF−1)、ならびにGHおよびLR融合体レベルについて分析された(表)。IGF−1レベルは、単回注射後でもLR融合体投与後有意に上昇し、GHの連日注射後に見られるレベルよりも有意に大きかった。GHのレベルは全注射計画後に終末期出血では検出不可能であり、LR融合体レベルは単回注射の10日後検出可能であった。
【0037】
GHのLR融合体はタンパク質アゴニストを産生することを実証した。前記分子がヘッドトゥーテール相互二量体(図1d)を形成する能力は、その増強されたインビボ生物活性の原因であることを提唱する。
LR融合体の設計は、GHRの既知の結晶構造に基づいていた17。4繰り返しを有する可動性GlySerリンカー(80Åの予想される長さ)を使用した。この長いリンカーは、GH部分がそれでも細胞表面GHRと相互作用することができるように、GHとGHR間の比較的可動性のテザーとして選んだ(図1e)。類似のGlySerリンカーは、安定性と免疫原性の欠如のせいで、組換え単鎖Fv抗体産生において使用されたことがあった18
【0038】
LR融合体は適切に折り畳まれ、2つの別々の種、すなわち、潜在的に単量体と二量体として、未変性PAGEゲル上にもゲルろ過中にも現れた。二量体の存在は、分析超遠心分離により確認された。LR融合体は、それぞれのLR融合分子中のGH部分がもう一方の受容体部分に分子間結合することを通じて相互ヘッドトゥーテール二量体を形成することを提唱する(図1d)。LR融合体は、おそらくグリコシル化のせいで5kDaの分子量差があって、SDS−PAGE上に2つのバンドとして現れた19、20
LR融合体はGHと比べるとインビボではより強力であったが、インビトロでは生物活性が10分の1であった。この矛盾は、LR融合体の二量体化のせいだと考えられる。静的インビトロバイオアッセイでは、ダイマーは、天然GH/GHBP複合体に見られるように生物学的に不活性だと考えられる21、21。しかし、インビボでは、二量体は、生物学的に活性な単量体と平衡状態で不活性ホルモンの貯蔵場所を提供する。
【0039】
ラットへのiv投与後、本発明者らのLR融合体は、GHと比べるとクリアランスは300分の1に減少し、GH/GHBP複合体またはコンジュゲートについて以前報告されたクリアランスと比べると10〜30分の1に減少していた11、12。他の2つのLR融合変異体、1つは55kDa、もう1つは100kDaを試験した。どちらのタンパク質も同一の遅延クリアランスを示さなかった。したがって、LR融合体の遅延クリアランスの原因となるのは単量体のサイズだけではないと結論づけられる。GHクリアランスに対する腎臓寄与は、ヒトで25〜53%23、ラットで67%24であると推定されている。したがって、腎クリアランスを減らすだけでは、GHクリアランスをほぼ半分にするとしか予想することはできない。GHクリアランスはGH受容体機序とは比較的無関係なので25、タンパク質分解が主要な一因であると推定される。本発明者らのLR融合体の大きく減少するクリアランスは、腎クリアランスの減少とタンパク質分解を妨げる立体構造の両方に起因しうることを提唱する。
【0040】
下垂体摘出ラットでは、10日間に1度だけ与えられた本発明者らのLR融合体は、GHの連日注射に関して見られた体重増加に類似する体重増加をもたらした。GHとの1対1モルの複合体として同時投与されたGHBPは成長を増強することはすでに明らかにされている12。同一プロトコルを使用して、本発明者らのLR融合タンパク質は単回注射後10日にわたり成長を促進し、GH/GHBP複合体は連日注射を必要とし、本発明者らのLR融合体は、GH/GHBP同時投与後に見られるレベルよりも高いIGF−Iレベルを生み出した。GHは、GHBPにコンジュゲートされると生物学的に不活性であり、非共有結合された複合体はLR融合体の安定性を欠いている11、12。LR融合体の生物学的作用がより大きいのは、その増加した安定性およびGHRを単量体の形で活性化する能力と関係がある可能性がある。
【0041】
ヒトでは、IGF−Iレベルは通常、GH活性の優れたバイオマーカーである。しかし、下垂体摘出ラットでは、IGF−Iレベルは必ずしもGHに対する成長応答を反映していない2、12。LR融合体投与により、GH注射と比べてIGF−Iレベルは明らかに上昇した。成長のGHとIGF−Iの用量反応は下垂体摘出ラットでは異なることを示唆する。したがって、本研究で使用されたLR融合体の用量は、最大成長応答を促進するのに必要な用量を上回っていたが、それでもIGF−I産生を刺激することができた。ラットは、ヒトよりも迅速な腎クリアランスを示しており、ヒトにおいて必要とされる投与計画を予想するのが困難になっている。LR融合体はGHよりも低い用量で、はるかに少ない頻度で使用することができると期待してもよいであろう。
【0042】
これまでは、サイトカインホルモンと血清アルブミンの融合物とペグ化を使用して、循環半減期を延長してきた2、26。本発明者らのLR融合分子は、これらの2つのアプローチよりも大きな利点を有している。ペグ化は、タンパク質のクリアランスを遅延するのに高度に効果的であるが、化学修飾を必要とし、その受容体に対するリガンドの親和性を減少させる。したがって、ペグ化ではより大きな用量が必要とされるが、本発明者らのLR融合体では、類似の用量で天然GHよりも大きな効果がある。卵白とのGH融合体、Albutropinに関しては、これは臨床研究から引き揚げられたと理解されているので、比較的わずかなことしか知られていない。1つのPK研究では26、Albutropinは、GHと比べると、s.c.に与えられた場合、終末期半減期の長さが6倍になっていたが、本発明者らのLR融合タンパク質は、GHについて公表された値と比べて、i.vに与えると終末期半減期の長さが100倍になる12(天然ヒトGHでは、18.6ml/分、kgのクリアランス値=1116ml/時間、kgおよびVd=336ml/kgであり、したがって、T1/2=0.693×336/1116=0.21時間)。GHは循環exGHRに自然に結合し、したがって、本発明者らのLR融合体は、他のタンパク質との融合体と比べると、免疫原性である可能性はなく、広範囲なインシリコT細胞エピトープスクリーニングでは、LR融合分子中に部位は明らかにならなかった(データは示していない)。
【0043】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)配列番号1に示される核酸配列、
ii)配列番号2に示される核酸配列、
iii)配列番号3に示される核酸配列、
iv)配列番号4に示される核酸配列、または
v)厳密なハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1、配列番号2、配列番号3もしくは配列番号4にハイブリダイズする核酸配列を含む核酸分子
から選択され、成長ホルモン受容体アゴニスト活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸分子。
【請求項2】
配列番号1に示される核酸配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
配列番号2に示される核酸配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
配列番号3に示される核酸配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項5】
配列番号4に示される核酸配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項6】
請求項1に記載の核酸分子によりコードされるポリペプチド。
【請求項7】
i)配列番号5に示されるアミノ酸配列、
ii)配列番号6に示されるアミノ酸配列、
iii)配列番号7に示されるアミノ酸配列、
iv)配列番号8に示されるアミノ酸配列、
v)配列番号9に示されるアミノ酸配列、
vi)配列番号10に示されるアミノ酸配列、
vii)配列番号11に示されるアミノ酸配列、
viii)配列番号12に示されるアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、成長ホルモン受容体アゴニスト活性を有するポリペプチド。
【請求項8】
配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項10】
配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項11】
配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項12】
配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項13】
配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号11に示されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列番号12に示されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項16】
配列番号5を含む2つのポリペプチドを含むホモ二量体。
【請求項17】
配列番号6を含む2つのポリペプチドを含むホモ二量体。
【請求項18】
配列番号7を含む2つのポリペプチドを含むホモ二量体。
【請求項19】
配列番号8を含む2つのポリペプチドを含むホモ二量体。
【請求項20】
配列番号9を含む2つのポリペプチドを含むホモ二量体。
【請求項21】
配列番号10を含む2つのポリペプチドを含むホモ二量体。
【請求項22】
配列番号11を含む2つのポリペプチドを含むホモ二量体。
【請求項23】
配列番号12を含む2つのポリペプチドを含むホモ二量体。
【請求項24】
請求項1に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項25】
発現ベクターである、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
請求項25に記載のベクターでトランスフェクトまたは形質転換された細胞。
【請求項27】
真核細胞である、請求項26に記載の細胞。
【請求項28】
原核細胞である、請求項26に記載の細胞。
【請求項29】
賦形剤または担体を含む、請求項7に記載のポリペプチドを含む医薬品組成物。
【請求項30】
請求項7に記載の有効量の少なくとも1つのポリペプチドを投与することを含む、成長ホルモン欠損症を患っているヒト対象を治療する方法。
【請求項31】
前記ポリペプチドが静脈内に投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリペプチドが皮下に投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリペプチドが2日の間隔で投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリペプチドが1週間間隔で投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリペプチドが2週間間隔で投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリペプチドが1カ月間隔で投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記成長ホルモン欠損症が小児期成長ホルモン欠損症である、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記成長ホルモン欠損症が成人成長ホルモン欠損症である、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−534060(P2010−534060A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516562(P2010−516562)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002406
【国際公開番号】WO2009/013461
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(502452978)アステリオン・リミテッド (13)
【Fターム(参考)】