説明

扁平ワークの起立装置および起立方法

【課題】扁平なワークを搬送方向の軸線回りに回転させて起立させることができる扁平ワークの起立装置を提供する。
【解決手段】本発明の起立装置は、ワーク6が搬入されワーク搬入部23と、ワーク搬入部23かる一側方に向けて設けられ、かつ一側方に向かって下側に傾斜する横滑り傾斜面22と、横滑り傾斜面22の下端縁に対応して搬送方向に連続して設けられる内側ガイド壁25と、内側ガイド壁25に対向する外側ガイド壁35と、両側ガイド壁25,35間に設けられた壁狭間通路4と、を備える。そしてワーク搬入部23に配置された平伏状態のワーク6が、その一側縁部61を先行させつつ、自重により横滑り傾斜面22に沿って一側方に滑走して、壁狭間通路4に滑り落ちることにより、ワーク6が一側縁部61を下側に向け他側縁部62を上側に向けて配置した状態に起立される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、扁平なワークを起立させるようにした扁平ワークの起立装置および起立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平なワークを起立させる装置として、下記特許文献1に示すものが周知である。この扁平ワークの起立装置は、平伏状態で搬送される扁平なワークを、搬送方向に対し後端側を前方へ持ち上げるように起立させるものである。
【特許文献1】特許第3204554号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に示す扁平ワークの起立装置は、搬送されるワークを前方に起立させるものであるため、例えばワークを搬送方向の軸線回りに90°回転させることにより、ワークをその一側縁を下側に向けて配置するとともに、他側縁を上側に向けて配置するようにして起立させることはできなかった。
【0004】
この発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、平伏状態の扁平なワークを搬送方向の軸線回りに回転させて起立させることができる扁平ワークの起立装置および起立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
【0006】
[1]扁平なワークが搬入されて配置されるワーク搬入部と、
前記ワーク搬入部から搬送方向に対し直交する一側方に向けて設けられ、かつ一側方に向かうに従って低くなるように傾斜する横滑り傾斜面と、
前記横滑り傾斜面の下端縁に対応して搬送方向に沿って連続して設けられ内側ガイド壁と、
前記内側ガイド壁に対し一側方に間隔をおいて並列に設けられる外側ガイド壁と、
前記両側ガイド壁間に設けられた壁狭間通路と、を備え、
前記ワーク搬入部に配置された平伏状態のワークが、その一側縁部を先行させつつ、自重により前記横滑り傾斜面に沿って一側方に滑走して、前記壁狭間通路に滑り落ちることにより、ワークが一側縁部を下側に向け他側縁部を上側に向けて配置した状態に起立されるように構成されたことを特徴とする扁平ワークの起立装置。
【0007】
[2]前記壁狭間通路の底面が、ワーク搬送機の搬送面によって構成され、
前記壁狭間通路に滑り落ちたワークの一側縁部が前記ワーク搬送機の搬送面に当接支持されて他側縁部が前記両側ガイド壁のうちいずれかに当接支持されることにより、ワークが起立状態に保持されて、
その起立状態のまま、ワークが前記壁狭間通路に沿って前記ワーク搬送機によって搬送されるように構成される前項1に記載の扁平ワークの起立装置。
【0008】
[3]前記横滑り傾斜面が、断面円弧状の円弧面によって構成される前項1または2に記載の扁平ワークの起立装置。
【0009】
[4]前記横滑り傾斜面と、前記内側ガイド壁とが連続して形成される前項1〜3のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0010】
[5]上面が断面円弧状に形成されるとともに、一側面が垂直壁面に形成された起立シャフトを備え、
前記起立シャフトの上面によって前記横滑り傾斜面が構成されるとともに、前記起立シャフトの一側面によって前記内側ガイド壁が構成される前項1〜4のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0011】
[6]ワークの幅を「w」、前記横滑り傾斜面の曲率半径を「r」としたとき、
w≦r≦1.5w
の関係が成立するように構成される前項3〜5のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0012】
[7]ワークの幅を「w」、前記横滑り傾斜面における一側方向の水平方向長さを「A」としたとき、
w≦A
の関係が成立するように構成される前項3〜6のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0013】
[8]ワークの幅を「w」、前記内側ガイド壁の壁面高さを「B1」としたとき、
w≦B1
の関係が成立するように構成される前項3〜7のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0014】
[9]ワークの幅を「w」、前記外側ガイド壁の壁面高さを「B2」としたとき、
1.9w≦B2
の関係が成立するように構成される前項3〜8いのいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0015】
[10]ワークの幅を「w」、ワークの厚さを「t」、前記壁狭間通路の幅を「x」としたとき、
2.0t≦x≦0.4w
の関係が成立するように構成される前項3〜9のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0016】
[11]前記横滑り傾斜面の下端縁における水平面との傾斜角度を「θ」としたとき、
50°≦θ
の関係が成立するように構成される前項3〜10のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0017】
[12]前記外側ガイド壁の上端位置が、前記内側ガイド壁の上端位置よりも高い位置に配置される前項1〜11のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0018】
[13]ワークは長尺な形状を有し、ワークがその長さ方向が搬入方向に沿うように配置される前項1〜12のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0019】
[14]ワークが、長さ方向に延びる複数の流通孔が並列に設けられたアルミニウムまたはアルミニウム合金製の扁平チューブによって構成される前項1〜13のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【0020】
[15]平伏状態で搬送される扁平なワークを搬送方向の軸線回りに90°回転させて起立させるようにした扁平ワークの起立方法であって、
扁平なワークが搬入されて配置されるワーク搬入部と、
前記ワーク搬入部から搬送方向に対し直交する一側方に向けて設けられ、かつ一側方に向かうに従って低くなるように傾斜する横滑り傾斜面と、
前記横滑り傾斜面の下端縁に対応して搬送方向に沿って連続して設けられ内側ガイド壁と、
前記内側ガイド壁に対し一側方に間隔をおいて並列に設けられる外側ガイド壁と、
前記両側ガイド壁間に設けられた壁狭間通路と、を予め設けておき、
前記ワーク搬入部に配置された平伏状態のワークを、その一側縁部を先行させつつ、自重により前記横滑り傾斜面に沿って一側方に滑走させて、前記壁狭間通路に落下させることにより、ワークを一側縁部が下側に向き他側縁部が上側に向いて配置した状態に起立させるようにしたことを特徴とする扁平ワークの起立方法。
【発明の効果】
【0021】
発明[1]の扁平ワークの起立装置によれば、扁平なワークを一側縁部を先行させながら横滑り傾斜面に横滑りさせて、壁狭間通路内に落下させるものであるため、ワークを搬送方向の軸線回りに回転させて確実に起立させることができる。
【0022】
発明[2]の扁平ワークの起立装置によれば、ワークを起立させたままの状態で、搬送させることができる。
【0023】
発明[3]〜[12]の扁平ワークの起立装置によれば、ワークをより一層確実に起立させることができる。
【0024】
発明[13]の扁平ワークの起立装置によれば、長尺なワークを起立させることができる。
【0025】
発明[14]の扁平ワークの反転装置によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の扁平チューブを起立させることができる。
【0026】
発明[15]の扁平ワークの起立方法によれば、扁平なワークを一側縁部を先行させながら横滑り傾斜面に横滑りさせて、壁狭間通路内に落下させるものであるため、ワークを搬送方向の軸線回りに回転させて確実に起立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1はこの発明の実施形態である起立装置が適用された扁平ワークの搬送起立装置を示す斜視図、図2は正面図である。両図に示すように、この搬送起立装置は、ワークとしての扁平チューブ(6)を長さ方向に沿って搬送する一方、その搬送される扁平チューブ(6)を搬送方向の軸線回りに90°回転させて起立させた後、起立状態のままで扁平チューブ(6)を搬出するものである。この搬送起立装置は、例えば扁平チューブ(6)の外観検査装置と、扁平チューブ(6)の整列装置との間に設置され、外観検査装置により検査された検査済の扁平チューブ(6)を起立させて整列装置に送り込み、整列装置において、多数の扁平チューブ(6)を起立状態で重ねて整列させるようにしている。
【0028】
検査対象物としての扁平チューブ(6)は例えば、カーエアコン、ルームエアコン用の熱交換器に採用されるアルミニウムまたはアルミニウム合金製の長尺形状(帯板形状)のチューブによって構成されている。この扁平チューブ(6)は、チューブ長さ方向に連続状に延びる複数の連通孔(冷媒流通孔)が幅方向に沿って並列に設けられた多孔チューブによって構成されている。
【0029】
さらに本実施形態において、扁平チューブ(6)は、断面積が小さく、長さが長いものが用いられている。具体的には扁平チューブ(6)の厚さ(チューブ高さ)が1.0〜2.0mm、幅が12〜20mm、長さが190〜700mmに調整されている。
【0030】
なお言うまでもなく、扁平チューブ(6)は、柔軟性や弾性を保有するものではなく、硬質性のものである。
【0031】
本実施形態の搬送起立装置は、扁平チューブ(6)が搬送される方向に沿って上流側から順に、上流側コンベア(5)および起立装置(1)が配置されている。
【0032】
上流側コンベア(5)は、扁平チューブ(6)をその一面側(表面側)を上向きにして、他面側(裏面側)を設置させた平伏状態で、搬送方向に沿って搬送できるようになっている。なお本実施形態においては、搬送される扁平チューブ(6)の長さ方向が、搬送方向に一致するようになっている。
【0033】
図1〜3に示すように起立装置(1)は、上流側コンベア(5)に対応して配置される起立機構(11)と、その起立機構(11)の下側に配置されるコンベア(10)とを備え、起立機構(11)によって扁平チューブ(6)を起立させて、その扁平チューブ(6)を起立させたままの状態でコンベア(10)によって下流側に搬送するようになっている。
【0034】
起立機構(11)は、上流側コンベア(5)に対応して設けられる起立シャフト(2)と、その起立シャフト(2)の一側方(図3の右側方)に並列に配置される外側ガイド部材(3)とを備えている。
【0035】
起立シャフト(2)の上面(21)は、円柱外周面の一部によって構成される断面円弧状に形成されており、この凸円弧状の上面(21)のうち、一方側半部領域(図3の右側半部領域)が、横滑り傾斜面(22)として構成されている。この横滑り傾斜面(22)は、一側方に向うに従って次第に低くなるように傾斜しているため、この横滑り傾斜面(22)上に配置される扁平チューブ(6)は自重により、傾斜面(22)に沿って一側方に横滑りするようになっている。
【0036】
また起立シャフト(2)の両側面は、垂直にカットされた垂直壁面によって構成されており、その両側面のうち、一側方向(図3右側方向)に向いた面が内側ガイド壁(25)として構成されている。
【0037】
さらに起立シャフト(2)の下面は、水平にカットされた水平面によって構成されており、この下面がコンベア(10)の搬送面から上方に僅かに間隔をおいた状態で、起立シャフト(2)が支持固定されている。
【0038】
この起立シャフト(2)は、その円弧状の上面(21)の曲率中心軸(c)が、起立シャフト(2)の幅方向の中間位置に設定されている。
【0039】
さらに起立シャフト(2)は、上記の曲率中心軸(c)が、上流側コンベア(5)の搬送ライン(搬送軸)に対し、他側方(図3左側方)に少し位置をずらせた位置に配置されている。従って、上流側コンベア(5)から起立シャフト(2)の上面(21)に搬入された扁平チューブ(6)は、上面(21)の上端位置から少し一側方(図3右側方)に変位した位置、つまり横滑り傾斜面(22)の上側位置に配置される。なお本実施形態においては、扁平チューブ(6)が搬入される横滑り傾斜面(22)の上側位置が、ワーク搬入部(23)として構成されている。
【0040】
従って上流側コンベア(5)からワーク搬入部(23)に搬入された扁平チューブ(6)は自動的に、横滑り傾斜面(22)に沿って一側方へ滑走するようになっている。
【0041】
起立シャフト(2)の一側方(図3右側方)に配置される外側ガイド部材(3)は、上記起立シャフト(2)と同様、下端がコンベア(10)の搬送面から上方に僅かに間隔をおいた状態に支持固定されている。この外側ガイド部材(3)は、起立シャフト(2)の内側ガイド壁(25)に対し、一側方に間隔をおいて並列に設けられ、かつ内側ガイド壁(25)と同様に、搬送方向に沿って連続して延びる外側ガイド壁(35)を有している。
【0042】
この外側ガイド壁(35)は、起立シャフト(2)の内側ガイド壁(25)に対し、平行に配置されており、両側ガイド壁(25)(35)間には、搬送方向に沿って延びる壁狭間通路(4)が形成されている。
【0043】
この壁狭間通路(4)は、上端が上方に開放されており、その上端開放部を介して、後述するように扁平チューブ(6)が壁狭間通路(4)内に落下するようになっている。
【0044】
さらに壁狭間通路(4)は、下端が開放されており、その下端開放部を介してコンベア(10)の搬送面に連通されている。換言すれば、壁狭間通路(4)の底面が、コンベア(10)の搬送面によって構成されている。なお、本実施形態において、コンベア(10)は、ワーク搬送機を構成している。
【0045】
また本実施形態において、外側ガイド壁(35)の上端位置は、内側ガイド壁(25)の上端位置よりも高い位置に配置されている。
【0046】
本実施形態において、起立シャフト(2)の横滑り傾斜面(22)に沿って一側方に滑走した扁平チューブ(6)は、横滑り傾斜面(22)の下端縁(24)から壁狭間通路(4)内滑り落ちる際に、扁平チューブ(6)の一側縁部(61)が外側ガイド壁(35)にガイドされて、図3の時計方向回り(右回り)に少量回転することにより、一側縁部(61)を先行させて、壁狭間通路(4)内に落下する。こうして壁狭間通路(4)内に落下する扁平チューブ(6)は、一側縁部(61)を下側に向け他側縁部(62)を上側に向けた状態に起立される。さらに起立した扁平チューブ(6)は、一側縁部(61)がコンベア(10)の搬送面に設置されて支持されるとともに、他側縁部(62)が内側ガイド壁(25)および外側ガイド壁(35)のいずれかに当接支持されることにより、起立姿勢に保持される。そして扁平チューブ(6)は起立姿勢を保持したままの状態で、壁狭間通路(4)に沿ってコンベア(10)により下流側に搬送されるようになっている。
【0047】
次に本実施形態において、起立装置(1)の各構成部材の位置関係について詳細に説明する。図4に示すように、扁平チューブ(6)の幅を「w」、起立シャフト(2)における横滑り傾斜面(22)の曲率半径を「r」としたとき、以下の関係式(1)を成立させるのが好ましい。
【0048】
w≦r≦1.5w…(1)
【0049】
すなわちこの関係式(1)が成立する場合、横滑り傾斜面(22)を、扁平チューブ(6)の横滑りに適切な曲率に形成することができ、横滑り傾斜面(22)に配置された扁平チューブ(6)を安定状態に滑走させることができる。
【0050】
また横滑り傾斜面(22)における一側方向の水平方向長さ(幅)を「A」としたとき、以下の関係式(2)を成立させるのが好ましい。
【0051】
w≦A…(2)
【0052】
すなわちこの関係式(2)が成立する場合には、横滑り傾斜面(22)を適度な長さ(幅)に設定できて、横滑り傾斜面(22)に沿って扁平チューブ(6)を安定状態に走行させることができる。
【0053】
なお横滑り傾斜面(22)の幅(A)は、起立シャフト(2)の幅の1/2であるため、起立シャフト(2)の幅を「D」としたとき、上記の関係式(2)は、2w≦Dと書き換えることができる。
【0054】
また起立シャフト(2)における内側ガイド壁(25)の壁面高さ(ガイド面高さ)を「B1」としたとき、以下の関係式(3)を成立させるのが好ましい。
【0055】
w≦B1…(3)
【0056】
すなわちこの関係式(3)が成立する場合、内側ガイド壁(25)によるガイド領域(支持領域)を十分に確保でき、ひいては壁狭間通路(4)の深さを十分に確保ができるため、壁狭間通路(4)内に滑り落ちた扁平チューブ(6)を所望の起立姿勢に確実に保持することができる。
【0057】
なお起立シャフト(2)の下端と、コンベア(10)の搬送面との間の隙間(s1)、つまり内側ガイド壁(25)の下端と、コンベア(10)の搬送面との隙間(s1)は、0.05w〜0.15w程度に設定するのが好ましい。すなわちこの隙間(s1)が大き過ぎる場合、その隙間(s1)から扁平チューブ(6)が脱外して横転してしまうおそれがあり、逆に隙間(s1)が小さ過ぎる場合、起立シャフト(2)の下端がコンベア(10)の搬送面に干渉するおそれがある。
【0058】
さらに本実施形態では、内側ガイド壁(25)の上端位置におけるコンベア(10)の搬送面からの高さを「H1(=s1+B1)」としたとき、1.65w≦H1の関係を成立させるのが好ましい。
【0059】
また壁狭間通路(4)の幅を「x」、扁平チューブ(6)の厚さを「t」としたとき、以下の関係式(4)を成立させるのが好ましい。
【0060】
2.0t≦x≦0.4w…(4)
【0061】
すなわちこの関係式(4)が成立する場合には、壁狭間通路(4)内に滑り落ちた扁平チューブ(6)をより一層安定した起立姿勢に保持することができる。
【0062】
また横滑り傾斜面(22)の下端縁(24)における水平面との傾斜角度を「θ」としたとき、以下の関係式(5)を成立させるのが好ましい。
【0063】
50°≦θ…(5)
【0064】
すなわちこの関係式(5)が成立する場合には、横滑り傾斜面(22)から滑り落ちる扁平チューブ(6)を、その一側縁部(61)を先行させて確実に、壁狭間通路(4)内に落とし込むことができ、扁平チューブ(6)をより一層確実に起立させることができる。
【0065】
また外側ガイド壁(35)の壁面高さ(ガイド面高さ)を「B2」としたとき、以下の関係式(6)を成立させるのが好ましい。
【0066】
1.9w≦B2…(6)
【0067】
すなわちこの関係式(6)が成立する場合には、横滑り傾斜面(22)から滑り落ちる扁平チューブ(6)を外側ガイド壁(35)によってスムーズにガイドすることができて、扁平チューブ(6)を確実に起立させることができるとともに、所望の起立姿勢に確実に保持することができる。
【0068】
なお外側ガイド壁(35)の下端と、コンベア(10)の搬送面との間の隙間(s2)は、0.05w〜0.15w程度に設定するのが好ましい。すなわちこの隙間(s2)が大き過ぎる場合、その隙間(s2)から扁平チューブ(6)が脱外して横転してしまうおそれがあり、逆に隙間(s2)が小さ過ぎる場合、外側ガイド部材(3)の下端がコンベア(10)の搬送面に干渉するおそれがある。
【0069】
さらに本実施形態では、外側ガイド壁(35)の上端位置におけるコンベア(10)の搬送面からの高さを「H2(=s2+B2)」とすると、1.95w≦H2の関係を成立させるのが好ましい。
【0070】
また外側ガイド壁(35)の上端位置は、内側ガイド壁(25)の上端位置よりも高く設定するのが好ましい。すなわちこの構成を採用する場合、横滑り傾斜面(22)から滑り落ちる扁平チューブ(6)を外側ガイド壁(35)によってスムーズにガイドすることができる。従って本実施形態では、外側ガイド壁(35)の上端位置と内側ガイド壁(25)の上端位置との高位差(h)を、0.2w〜0.4w程度に設定するのが好ましい。
【0071】
なお参考までに、本実施形態において、起立シャフト(2)は、丸棒部材を切削して製作するようにしている。例えば図5に示すように、丸棒材(20)の周面部のうち、製作しようとする起立シャフト(2)の両側面および下面に対応する部分(同図の斜線群で示す部分)を切削して平坦面に仕上げることにより、上面(21)が円弧状の断面に形成され、両側面および下面が平坦面に形成された起立シャフト(2)を製作するようにしている。
【0072】
以上の構成における扁平チューブの搬送起立装置において、上流側コンベア(5)によって搬送された扁平チューブ(6)は、起立装置(1)の起立シャフト(2)における横滑り傾斜面(22)のワーク搬入部(23)に搬入される。横滑り傾斜面(22)のワーク搬入部(23)に配置された扁平チューブ(6)は、自重により横滑り傾斜面(22)に沿って横滑りで一側方に滑走していき、横滑り傾斜面(22)の下端縁(24)から壁狭間通路(4)内に滑り落ちる。壁狭間通路(4)内に落下した扁平チューブ(6)は、一側縁部(61)を下側にしてコンベア(10)の搬送面に設置されて、他側縁部(62)を上側にした起立状態となる。さらに扁平チューブ(6)は、その他側縁部(62)が両側ガイド壁(25)(35)のいずれかに当接して支持されて、起立状態を保持し、その状態でコンベア(10)によって下流側へと搬送されていく。
【0073】
このように起立装置(1)は、上流側コンベア(5)から順次搬送される扁平チューブ(6)を搬送方向の軸線回りに90°回転させて起立させて、下流側の整列装置(図示省略)に順次送り込む。さらに整列装置は、順次送り込まれる起立状態の扁平チューブ(6)を、搬送方向に対し直交する水平方向(厚さ方向)に順次重ね合わせるように整列させるものである。
【0074】
以上のように、本実施形態の扁平チューブの起立装置(1)によれば、扁平チューブ(6)を一側縁部(61)を先行させながら横滑り傾斜面(22)に横滑りさせて、壁狭間通路(4)内に落下させるものであるため、扁平チューブ(6)を搬送方向の軸線回りに90°回転させるように横回りで確実に起立させることができる。
【0075】
しかも本実施形態においては、構成部材の各寸法を上記したように好適範囲に特定することによって、アルミニウムまたはアルミニウム合金製の熱交換チューブとしての扁平チューブ(6)を確実に起立させることができるとともに、起立させたままの状態で搬送することができる。
【0076】
さらにワークとしての扁平チューブ(6)を横回りで起立させるものであるため、本実施形態のように長尺な扁平チューブ(6)をワークとして用いる場合であっても、不具合なく起立させることができ、扁平チューブ(6)の生産性を向上させることができる。
【0077】
また本実施形態では、扁平チューブ(6)を自重により滑り落として起立させるものであるため、扁平チューブ(6)を起立させるためのシリンダやモータ等の駆動手段や、その駆動手段の駆動力を伝達するための動力伝達手段を必要とせず、その分、構造の簡素化およびコストの削減を図ることができる。
【0078】
さらに本実施形態では、チューブ起立用の駆動手段や動力伝達手段を必要としないため、それらの動力系に伴う不用意なトラブルも防止でき、動作信頼性をより一層向上させることができる。
【0079】
特に本実施形態において、起立装置(1)は、一部に円筒外周面を有する起立シャフト(2)と、外側ガイド部材(3)と、汎用のコンベア(10)とを組み合わせるだけで形成することができるため、より一層構造の簡素化を図ることができる。
【0080】
また本実施形態の起立装置(1)においては、起立前の平伏状態の扁平チューブ(6)が搬入される方向と、起立後の扁平チューブ(6)が搬出される方向とが同方向に設定されているため、起立装置(1)を、扁平チューブ(6)の検査ライン等の生産ラインに不具合なく設置することができる。
【0081】
なお上記実施形態においては、扁平チューブ(6)を起立させるようにしているが、それだけに限られず、本発明の起立装置において起立されるワークは、扁平チューブに限られず、扁平形状のワークであれば、どのようなワークでも起立させることができる。
【0082】
また上記実施形態においては、起立シャフト(2)を丸棒材を切削して製作するようにしているが、本発明において起立シャフト(2)の製作方法は特に限定されるものではない。例えば図6に示すように、平板材を曲げ加工して起立シャフト(2)を製作するようにしても良い。
【0083】
また上記実施形態においては、横滑り傾斜面用の部材と、内側ガイド壁用の部材とを一体に形成するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、横滑り傾斜面用の部材と、内側ガイド壁用の部材とを別体で形成するようにしても良い。
【0084】
さらに上記実施形態においては、横滑り傾斜面と内側ガイド壁とを連続して形成しているが、それだけに限られず、本発明においては、横滑り傾斜面と、内側ガイド壁とを離間して配置するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0085】
この発明の扁平ワークの起立装置は、平伏状態の扁平なワークを起立させる装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】この発明の実施形態である扁平チューブの起立装置が適用された搬送起立装置を示す斜視図である。
【図2】実施形態の搬送起立装置を示す正面図である。
【図3】実施形態の搬送起立装置を示す側面図である。
【図4】実施形態の起立装置における反転機構部周辺を拡大して示す側面図である。
【図5】実施形態の起立装置に採用された起立シャフト製作用の丸棒材を示す端面図である。
【図6】この発明の起立装置に適用可能な起立シャフトの変形例を示す端面図である。
【符号の説明】
【0087】
1…起立装置
10…コンベア(ワーク搬送機)
2…起立シャフト
21…上面
22…横滑り傾斜面
23…ワーク搬入部
24…下端縁
25…内側ガイド壁
35…外側ガイド壁
4…壁狭間通路
6…扁平チューブ(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平なワークが搬入されて配置されるワーク搬入部と、
前記ワーク搬入部から搬送方向に対し直交する一側方に向けて設けられ、かつ一側方に向かうに従って低くなるように傾斜する横滑り傾斜面と、
前記横滑り傾斜面の下端縁に対応して搬送方向に沿って連続して設けられ内側ガイド壁と、
前記内側ガイド壁に対し一側方に間隔をおいて並列に設けられる外側ガイド壁と、
前記両側ガイド壁間に設けられた壁狭間通路と、を備え、
前記ワーク搬入部に配置された平伏状態のワークが、その一側縁部を先行させつつ、自重により前記横滑り傾斜面に沿って一側方に滑走して、前記壁狭間通路に滑り落ちることにより、ワークが一側縁部を下側に向け他側縁部を上側に向けて配置した状態に起立されるように構成されたことを特徴とする扁平ワークの起立装置。
【請求項2】
前記壁狭間通路の底面が、ワーク搬送機の搬送面によって構成され、
前記壁狭間通路に滑り落ちたワークの一側縁部が前記ワーク搬送機の搬送面に当接支持されて他側縁部が前記両側ガイド壁のうちいずれかに当接支持されることにより、ワークが起立状態に保持されて、
その起立状態のまま、ワークが前記壁狭間通路に沿って前記ワーク搬送機によって搬送されるように構成される請求項1に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項3】
前記横滑り傾斜面が、断面円弧状の円弧面によって構成される請求項1または2に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項4】
前記横滑り傾斜面と、前記内側ガイド壁とが連続して形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項5】
上面が断面円弧状に形成されるとともに、一側面が垂直壁面に形成された起立シャフトを備え、
前記起立シャフトの上面によって前記横滑り傾斜面が構成されるとともに、前記起立シャフトの一側面によって前記内側ガイド壁が構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項6】
ワークの幅を「w」、前記横滑り傾斜面の曲率半径を「r」としたとき、
w≦r≦1.5w
の関係が成立するように構成される請求項3〜5のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項7】
ワークの幅を「w」、前記横滑り傾斜面における一側方向の水平方向長さを「A」としたとき、
w≦A
の関係が成立するように構成される請求項3〜6のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項8】
ワークの幅を「w」、前記内側ガイド壁の壁面高さを「B1」としたとき、
w≦B1
の関係が成立するように構成される請求項3〜7のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項9】
ワークの幅を「w」、前記外側ガイド壁の壁面高さを「B2」としたとき、
1.9w≦B2
の関係が成立するように構成される請求項3〜8いのいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項10】
ワークの幅を「w」、ワークの厚さを「t」、前記壁狭間通路の幅を「x」としたとき、
2.0t≦x≦0.4w
の関係が成立するように構成される請求項3〜9のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項11】
前記横滑り傾斜面の下端縁における水平面との傾斜角度を「θ」としたとき、
50°≦θ
の関係が成立するように構成される請求項3〜10のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項12】
前記外側ガイド壁の上端位置が、前記内側ガイド壁の上端位置よりも高い位置に配置される請求項1〜11のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項13】
ワークは長尺な形状を有し、ワークがその長さ方向が搬入方向に沿うように配置される請求項1〜12のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項14】
ワークが、長さ方向に延びる複数の流通孔が並列に設けられたアルミニウムまたはアルミニウム合金製の扁平チューブによって構成される請求項1〜13のいずれか1項に記載の扁平ワークの起立装置。
【請求項15】
平伏状態で搬送される扁平なワークを搬送方向の軸線回りに90°回転させて起立させるようにした扁平ワークの起立方法であって、
扁平なワークが搬入されて配置されるワーク搬入部と、
前記ワーク搬入部から搬送方向に対し直交する一側方に向けて設けられ、かつ一側方に向かうに従って低くなるように傾斜する横滑り傾斜面と、
前記横滑り傾斜面の下端縁に対応して搬送方向に沿って連続して設けられ内側ガイド壁と、
前記内側ガイド壁に対し一側方に間隔をおいて並列に設けられる外側ガイド壁と、
前記両側ガイド壁間に設けられた壁狭間通路と、を予め設けておき、
前記ワーク搬入部に配置された平伏状態のワークを、その一側縁部を先行させつつ、自重により前記横滑り傾斜面に沿って一側方に滑走させて、前記壁狭間通路に落下させることにより、ワークを一側縁部が下側に向き他側縁部が上側に向いて配置した状態に起立させるようにしたことを特徴とする扁平ワークの起立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120707(P2010−120707A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293214(P2008−293214)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】