説明

扁平形アルカリ一次電池の製造方法及び扁平形アルカリ一次電池

【課題】安価で電池容量に優れた扁平形アルカリ一次電池の製造方法及び扁平形アルカリ一次電池を提供する。
【解決手段】正極活物質を含む正極合剤5と、負極活物質を含む負極合剤7と、正極合剤5及び負極合剤7を分離するセパレータ6とを備え、正極合剤5、負極合剤7及びセパレータ6にアルカリ電解液を含有する扁平形アルカリ一次電池1の製造方法において、オキシ水酸化ニッケルを正極活物質とし、亜鉛又は亜鉛合金粉末を負極活物質とするとともに、アルカリ電解液を、負極合剤7、セパレータ6、及び正極合剤5に対し、それぞれ48〜54質量%、9〜13質量%、34〜40質量%の配分率で配分する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平形アルカリ一次電池の製造方法及び扁平形アルカリ一次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電子腕時計、携帯用電子計算機等の小型電子機器に使用されるコイン形或いはボタン形等の扁平形アルカリ一次電池は、正極合剤を収容した正極缶と、負極合剤を収容した負極缶とを備えている。正極合剤と負極合剤は、セパレータを介して対向し、正極合剤、負極合剤及びセパレータには、電解液が充填されている。
【0003】
この扁平形アルカリ一次電池として、正極活物質に酸化銀を用いたいわゆる酸化銀電池が広く一般市場に出回っている。酸化銀は、体積エネルギー密度が高く、且つ負極活物質を亜鉛とした電池電圧が、1.56ボルト付近で平坦であるため、主に終止電圧が1.2ボルト以上の電子腕時計、携帯用電子計算機等の小型電子機器用の電源として用いられている。
【0004】
しかしながら、酸化銀は、性能的に良好であるももの、貴金属である銀が主成分でるため高価であり、銀相場により価格が変動し、製造原価の低減や安定を図る上で使用し難い物質である。これに対し、正極活物質を二酸化マンガンとした扁平形アルカリ一次電池は、質量当たりの価格が200分の1程度と圧倒的に安価であり、酸化銀電池同様、一般市場に数多く出回っている。
【0005】
しかし、二酸化マンガンを正極活物質とした上記電池は、酸化銀に比べ体積エネルギー密度が低く、放電に伴い電圧が大幅に降下する。このため、電子腕時計など終止電圧が酸化銀電池の電池電圧に合わせて高めに設定されている機器においては、二酸化マンガンの放電に伴う電圧降下から、機器の使用時間が極端に短くなってしまうという問題がある。また、電圧降下の防止について、種々の検討が行われているが、十分なものではなかった。
【0006】
その解決策として、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケルを含有する電池が考案されている(例えば特許文献1〜3参照)。正極活物質にオキシ水酸化ニッケルを用いた扁平形アルカリ一次電池は、電池電圧が比較的高い利点を有する。
【特許文献1】特開2003−234107号公報(第2頁〜第3頁、第1図)
【特許文献2】特開2004−6092号公報(第2頁〜第3頁、第1図)
【特許文献3】特開2005−19349号公報(第2頁〜第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、オキシ水酸化ニッケルを正極活物質に用いた電池の場合、オキシ水酸化ニッケルの単位質量当りの理論電気容量が、292mAh/gであり、二酸化マンガン308mAh/g(マンガン1価当り)よりも小さいため、二酸化マンガンを正極活物質とした上記電池よりも容量を向上させることは困難であった。また、オキシ水酸化ニッケルは、酸化銀や二酸化マンガンよりも放電反応に伴う体積膨張が大きいため、放電に必要な電解液もより多く必要となる。従って、その電解液分の容積を正極缶内に確保する必要があるため、電池容量を向上することが困難であった。また、オキシ水酸化ニッケルを正極活物質とする上記電池は、負極合剤と正極合剤とで、必要な電解液の量が異なる問題点も有していた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、安価で電池容量に優れた扁平形アルカリ一次電池の製造方法及び扁平形アルカリ一次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、正極活物質を含む正極合剤と、負極活物質を含む負極合剤と、前記正極合剤及び前記負極合剤を分離するセパレータとを備え、前記正極合剤、前記負極合剤及び前記セパレータにアルカリ電解液を含有する扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、オキシ水酸化ニッケルを前記正極活物質とし、亜鉛又は亜鉛合金粉末を前記負極活物質とするとともに、前記アルカリ電解液を、前記負極合剤、前記セパレータ、及び前記正極合剤に対し、それぞれ48〜54質量%、9〜13質量%、34〜40質量%の配分率で配分することを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、前記負極合剤及び前記セパレータに対し、前記アルカリ電解液を、「負極活物質の質量/負極合剤及びセパレータに配分するアルカリ電解液の質量」で示される比が、1.3以上1.7以下となるように配分することを要旨とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、前記正極合剤に対し、前記アルカリ電解液を、「正極活物質の質量/正極合剤に配分するアルカリ電解液の質量」で示される比が8以上10以下となるように配分することを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、前記負極合剤に含まれる前記アルカリ電解液は、25〜35%の水酸化ナトリウム水溶液、又は35〜50%の水酸化カリウム水溶液、又はそれらの濃度の各水溶液の混合液であることを要旨とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、前記負極合剤に含まれる亜鉛又は亜鉛合金粉末の90%以上が、40〜200メッシュの粒度範囲に含まれることを要旨とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、前記正極合剤に含まれるオキシ水酸化ニッケルの平均粒径が、5μm以上20μm以下であることを要旨とする。
【0015】
請求項7に記載の発明は、正極活物質を含む正極合剤と、負極活物質を含む負極合剤と、前記正極合剤及び前記負極合剤を分離するセパレータとを備え、前記正極合剤、前記負極合剤及び前記セパレータにアルカリ電解液を含有する扁平形アルカリ一次電池において、前記負極合剤、前記セパレータ、及び前記正極合剤に対し配分された前記アルカリ電解液の配分率が、それぞれ48〜54質量%、9〜13質量%、34〜40質量%であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、負極合剤、セパレータ及び正極合剤に対し、電解液を過不足なく、且つ効率的にそれぞれ供給することができるので、電池容量、容量保存性及び閉路電圧特性に優れた電池を作製することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、負極活物質量に対する電解液の比率の適正化が図られ、容量及び容量保存性に優れた電池を得ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、正極活物質に対する電解液の比率の適正化が図られ、容量及び容量保存性に優れた電池を得ることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、電解液が適当な粘度を有することで、負極合剤の粘弾性の適正化が図られ、ハンドリング性を向上することができる。また、高伝導性の電解液を用いることで、電池の内部抵抗を低減し、閉路電圧特性に優れた電池を得ることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、亜鉛又は亜鉛合金粉末の粒子を40メッシュ以上とすることで、負極合剤に含まれる負極活物質の量のばらつきを抑制することができる。このため、電池容量のばらつきを抑制することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、正極合剤の電解液吸収量、強度及び充填率の適正化が図られ、容量及び容量保存性に優れた正極ペレットを得ることができる。
請求項7に記載の発明によれば、負極合剤、セパレータ及び正極合剤に対し、電解液を過不足なく、且つ効率的にそれぞれ供給することができるので、電池容量、容量保存性及び閉路電圧特性に優れた電池を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1に従って説明する。
図1は、ボタン形(扁平形)のアルカリ一次電池の概略断面図である。図1において、扁平形アルカリ一次電池1は、開口部を有する正極缶2及び負極缶3を有している。正極缶2は、円形状の底部2aと、その底部2aに対してほぼ垂直に形成された壁部2bとを有している。正極缶2は、ステンレススチール(SUS)にニッケルメッキを施した金属板から形成され、正極端子を兼ねている。
【0022】
負極缶3は、円形状の底部3aと、屈曲形成された壁部3bとを有している。負極缶3は、ニッケルよりなる外表面層と、ステンレススチール(SUS)よりなる金属層と、銅よりなる集電体層とを有する3層構造のクラッド材を、カップ状にプレス加工することにより形成されている。又、負極缶3の開口部であって、その壁部3bの先端には、リング状のガスケット4が装着されている。このガスケット4は、例えばナイロンから形成されている。
【0023】
そして、正極缶2の円形の開口部に、負極缶3を、ガスケット4を装着した開口部側から嵌合させ、該正極缶2の壁部2bをガスケット4に向かってかしめて封口することによって、正極缶2及び負極缶3は互いに連結固定されている。これにより、ガスケット4、正極缶2及び負極缶3の間には、密閉空間Sが形成される。
【0024】
この密閉空間Sには、正極合剤5、セパレータ6及び負極合剤7が収容されている。正極合剤5は、正極缶2の底部2aに配置され、密閉空間Sをセパレータ6で区画した各空間のうち、正極缶2側の正極側空間S1に収容されている。負極合剤7は、負極缶3の底部3aに配置され、負極缶3側の負極側空間S2に収容されている。
【0025】
正極合剤5は、正極活物質としてオキシ水酸化ニッケル粉末を含み、さらに導電剤としてのグラファイト、結着剤としてのポリアクリル酸ソーダ、アルカリ電解液を含んでいる。正極合剤5は、これらの材料の混合物が打錠機等でプレス成型されることにより、ペレット状に成型されている。
【0026】
また、上記密閉空間Sにはアルカリ電解液が充填されている。負極合剤7、セパレータ6、及び正極合剤5に対するアルカリ電解液の配分率は、それぞれ48〜54質量%、9
〜13質量%、34〜40質量%とし、負極合剤7,セパレータ6及び正極合剤5の配分率合計が100%になるように電解液を配分することが好ましい。
【0027】
これらの配分率は、負極合剤7、セパレータ6及び正極合剤5で、必要な電解液量がそれぞれ異なるため、その必要な電解液量を最適化したものである。このように各材料に配分する電解液量を上記配分率に従って予め決定し、その電解液量を各材料に含浸させることで、正極活物質や負極活物質の利用率、及び閉路電圧特性を向上することができる。
【0028】
また、負極合剤7とセパレータ6とにそれぞれ配分する電解液は、「負極活物質の質量/負極合剤及びセパレータに配分する電解液の質量」の式で、1.3以上、1.7以下とすることが好ましい。
【0029】
アルカリ電解液を、「負極活物質の質量/負極合剤及びセパレータに配分する電解液の質量」の式で1.3未満となるように配分した場合、負極活物質に対するアルカリ電解液が適正値より多くなり、その分、正極活物質側で必要な電解液量が少なくなって、正極活物質の利用率が低下してしまう。また、アルカリ電解液を、「負極活物質の質量/負極合剤及びセパレータに配分する電解液の質量」の式で1.7を超えるように配分した場合、負極活物質に対する電解液が少なくなり、負極活物質の利用率が低下してしまう。
【0030】
また、正極合剤5に分配するアルカリ電解液は、「正極活物質の質量/正極合剤に配分する電解液の質量」の式で、8以上、10以下とすることが好ましい。
即ち、アルカリ電解液を、「正極活物質の質量/正極合剤に配分する電解液の質量」の式で8未満となるように配分した場合、正極活物質に対する電解液が適正値より多くなるため、その分、負極活物質側で電解液量が不足し、その結果、負極活物質の利用率が低下してしまう。一方、アルカリ電解液を「正極活物質の質量/正極合剤に配分する電解液の質量」の式で10を超えるように配分した場合、正極活物質に対する電解液が不足し、正極活物質の利用率、及び閉路電圧特性が低下してしまう。
【0031】
また、負極合剤7に含有させるアルカリ電解液としては、25〜35%の水酸化ナトリウム水溶液、又は35〜50%の水酸化カリウム水溶液、又はそれらの濃度の各水溶液の混合液であることが好ましい。
【0032】
水酸化ナトリウム水溶液の濃度が25%未満である場合、アルカリ電解液の粘度が低くなり、負極合剤7の粘弾性も著しく低くなり、負極合剤7の取り扱い(ハンドリング性)が難しくなる。また、水酸化ナトリウム水溶液の濃度が35%を超えると、電解液の伝導度が低いために負極合剤の伝導度も低下し、電池としての閉路電圧特性も低下してしまうためである。
【0033】
一方、水酸化カリウム水溶液の濃度が35%未満では、水酸化ナトリウム水溶液と同様に、電解液の粘度が低いため、負極合剤7の粘弾性も著しく低くなり、ハンドリング性が低くなる。また、水酸化カリウム水溶液の濃度が50%を超えると、電解液の伝導度が低いために負極合剤7の伝導度も低下し、電池としての閉路電圧特性が低下してしまう。
【0034】
また、亜鉛又は亜鉛合金粉末は、その90%以上が、40〜200メッシュの範囲に含まれることが好ましい。即ち、亜鉛又は亜鉛合金粉末の平均粒度が40メッシュ未満である場合、負極合剤7を電池内に充填する工程にて、亜鉛の粒が大きすぎるため数粒が充填されるか否かで容量が変動し、電池としての容量のばらつきが大きくなってしまう。また、亜鉛又は亜鉛合金粉末の平均粒度が200メッシュを超えると、電池特性上殆どメリットがないにも拘らず、コスト高になるため好ましくない。
【0035】
また、オキシ水酸化ニッケルは、平均粒径を、5μm以上、20μm以下にすることが好ましい。即ち、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径が5μm未満である場合、正極合剤5を打錠機等でプレス成型してペレット状にする際、オキシ水酸化ニッケルの微細な粒子が反発し易く、正極合剤5を圧縮する圧力が過大になってしまう。一方、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を20μm以下としたのは、平均粒径が20μmを超えるよう工業的に製造することは現在の技術では困難なことによる。
【0036】
次に、前述した電解液配合比、濃度、種類などの各種条件に従った実施例を行い当該発明の効果を検証した。
(実施例1)
扁平形アルカリ一次電池1の電池構造は、図1に示す構造とした。負極缶3は、ニッケル外表面層と、ステンレススチール(SUS)による金属層と、銅による集電体層の3層による厚さ0.15mmのクラッド材をプレス加工によって成型した。
【0037】
正極合剤5は、導電剤としてのグラファイト3mass%、平均粒径10μmであるオキシ水酸化ニッケルを92.8mass%、結着剤としてのポリアクリル酸ソーダ0.2mass%、電解液として濃度28%の水酸化ナトリウム水溶液2mass%、オキシ水酸化ニッケルの熱分解抑制剤として、水酸化アルミニウム粉末1mass%及び水酸化カルシウム粉末1mass%をブレンダーで混合した。さらに混合物を、打錠機にてペレット状に成型した。
【0038】
次に、正極合剤5を正極缶2内に挿入し、水酸化ナトリウムからなるアルカリ電解液を全体の37質量%注入して、正極合剤5にアルカリ電解液を吸収させた。
さらに、この正極合剤5上に、微多孔膜6a及び不織布6bの2層構造の円形状に打ち抜いたセパレータ6を装填した。また、装填したセパレータ6に、28%水酸化ナトリウム水溶液からなるアルカリ電解液を、全体の11質量%に相当する量だけ滴下して含浸させた。
【0039】
このセパレータ6上に、粒度100〜200メッシュの粒子が90%以上である亜鉛合金粉63mass%、酸化亜鉛2.55mass%、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース2.8mass%、及び28%水酸化ナトリウム水溶液と45%水酸化カリウム水溶液の混合アルカリ電解液31.65mass%からなるジェル状の負極合剤7を載置する。尚、負極合剤中のアルカリ電解液の比率は、全体に対して52質量%とした。
【0040】
そして、負極缶3と正極缶2とをかしめることで密封し、扁平形アルカリ一次電池1を作製した。このとき、正極缶2と負極缶3の間には、ガスケット4が挟持され密封性を高めている。尚、扁平形アルカリ一次電池1は、「亜鉛(負極活物質)の質量/負極合剤及びセパレータに配分する電解液の質量)」で示される比が1.64、「オキシ水酸化ニッケル(正極活物質)の質量/正極合剤に配分する電解液の質量」を9.5とした。
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤中に混合するアルカリ電解液の比率を、全体のアルカリ電解液に対して48質量%、セパレータ6に滴下するアルカリ電解液を全体に対して12質量%、正極合剤5に吸収させるアルカリ電解液を40質量%とした。
(実施例3)
実施例3は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤中に混合するアルカリ電解液を、全体のアルカリ電解液の体積に対して54質量%、セパレータ6に滴下するアルカリ電解液を9質量%、正極合剤5に吸収させるアルカリ電解液を37質量%とした。
(実施例4)
実施例4は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤中に混合するアルカリ電解液を、全体のアルカリ電解液に対して52質量%、セパレータ6に滴下するアルカリ電解
液を全体に対して13質量%、正極合剤5に吸収させるアルカリ電解液を35質量%とした。
(実施例5)
実施例5は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤中に混合するアルカリ電解液の比率を、全体のアルカリ電解液に対して53質量%、セパレータ6に滴下するアルカリ電解液を13質量%、正極合剤5に吸収させるアルカリ電解液を34質量%とした。
(実施例6)
実施例6は、実施例1と同様な構成にするものの、「亜鉛の質量/(負極合剤中の電解液質量+セパレータ滴下電解液質量)」で示される比を1.30とした。
(実施例7)
実施例7は、実施例1と同様な構成にするものの、「亜鉛の質量/(負極合剤中の電解液質量+セパレータ滴下電解液質量)」で示される比を1.70とした。
(実施例8)
実施例8は、実施例1と同様な構成にするものの、「オキシ水酸化ニッケルの質量/正極合剤に吸収させる電解液質量」で示されるを8とした。
(実施例9)
実施例9は、実施例1と同様な構成にするものの、「オキシ水酸化ニッケルの質量/正極合剤に吸収させる電解液質量」で示される比を10とした。
(実施例10)
実施例10は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤7に混合する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を25%とした。
(実施例11)
実施例11は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤に混合する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を35%とした。
(実施例12)
実施例12は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤に混合する水酸化カリウム水溶液の濃度を35%とした。
(実施例13)
実施例13は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤に混合する水酸化カリウム水溶液の濃度を50%とした。
(実施例14)
実施例14は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤に混合する亜鉛合金粉を粒度40〜200メッシュの範囲で90%以上のものとした。
(実施例15)
実施例15は、実施例1と同様な構成にするものの、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を5μmとした。
(実施例16)
実施例16は、実施例1と同様な構成にするものの、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を20μmとした。
(比較例1)
比較例1は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤中に混合するアルカリ電解液の比率を、全体のアルカリ電解液の体積に対して45質量%、セパレータ6に滴下するアルカリ電解液の比率を13質量%、正極合剤5に吸収させるアルカリ電解液の比率を42質量%とした。
(比較例2)
比較例2は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤中に混合するアルカリ電解液の比率を全体のアルカリ電解液の体積に対して57質量%、セパレータ6に滴下するアルカリ電解液の比率を11質量%、正極合剤5に吸収させるアルカリ電解液の比率を32質量%とした。
(比較例3)
比較例3は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤中に混合するアルカリ電解液の比率を全体のアルカリ電解液の体積に対して52質量%、セパレータ6に滴下するアルカリ電解液の比率を5質量%、正極合剤5に吸収させるアルカリ電解液の比率を43質量%とした。
(比較例4)
比較例4は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤中に混合するアルカリ電解液の比率を全体のアルカリ電解液の体積に対して52質量%、セパレータ6に滴下するアルカリ電解液の比率を15質量%、正極合剤5に吸収させるアルカリ電解液の比率を33質量%とした。
(比較例5)
比較例5は、実施例1と同様な構成にするものの、アルカリ電解液を、「亜鉛の質量(負極活物質)/負極合剤及びセパレータに配分するアルカリ電解液の質量」で示される比が、1.25となるように配分した。
(比較例6)
比較例6は、実施例1と同様な構成にするものの、「亜鉛の質量(負極活物質)/負極合剤及びセパレータに配分するアルカリ電解液の質量」で示される比が、1.75となるように配分した。
(比較例7)
比較例7は、実施例1と同様な構成にするものの、「オキシ水酸化ニッケル(正極活物質)の質量/正極合剤に吸収させるアルカリ電解液の質量」で示される比が、7となるように配分した。
(比較例8)
比較例8は、実施例1と同様な構成にするものの、「オキシ水酸化ニッケル(正極活物質)の質量/正極合剤に吸収させるアルカリ電解液の質量」で示される比が、11となるように配分した。
(比較例9)
比較例9は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤7に混合する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を23%とした。
(比較例10)
比較例10は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤7に混合する水酸化ナトリウム水溶液の濃度を37%とした。
(比較例11)
比較例11は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤7に混合する水酸化カリウム水溶液の濃度を33%とした。
(比較例12)
比較例12は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤7に混合する水酸化カリウム水溶液の濃度を52%とした。
(比較例13)
比較例13は、実施例1と同様な構成にするものの、負極合剤7に混合する亜鉛合金粉の90%以上が、30〜200メッシュの範囲に含まれるように調整した。
(比較例14)
比較例14は、実施例1と同様な構成にするものの、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を3μmとした。
【0041】
そして、上記した実施例1〜16及び比較例1〜14の電池をそれぞれ50個ずつ作製した。また、実施例1〜16及び比較例1〜14の正極ペレットを、それぞれ20個ずつ作製し、以下の検証を行った。
【0042】
具体的には、実施例1〜16及び比較例1〜14の電池を20個ずつ用い、各電池を30kΩで定抵抗放電させるとともに、1.2Vの終止電圧とした時の放電容量〔mAh〕
とその変動係数(標準偏差/平均値×100)を算出した結果を図2に示す。
【0043】
また、実施例1〜16及び比較例1〜14の電池を20個ずつ用い、各電池を温度60℃、湿度ドライの環境下で60日保存した後、30kΩで定抵抗放電させ、1.2Vの終止電圧とした時の放電容量〔mAh〕を図2に示す。
【0044】
さらに、実施例1〜16及び比較例1〜14の電池を10個ずつ用い、各電池を−10℃の環境下、DoD(放電深度80%)、負荷抵抗2kΩで、7.8m秒後の閉路電圧(放電特性)〔V〕を図2に示す。
【0045】
また、実施例1〜16及び比較例1〜14の電池をそれぞれ50個ずつ作製した際の負極合剤の充填不良の発生率を図2に示す。
さらに、実施例1〜16及び比較例1〜14の正極ペレットを20個ずつ用い、ハンドリング性の一つの指標として、200mmの高さから厚さ10mmの鋼板の上に落下させ、割れ及び欠けの発生率を調査した結果を図2に示す。
【0046】
はじめに、この図2より、実施例1〜5と比較例1〜4とを比較するに、アルカリ電解液を、負極合剤7、セパレータ6及び正極合剤5に各々48〜54質量%、9〜13質量%、34〜40質量%配分することで、容量、容量保存性及び閉路電圧特性に優れた電池を得ることができる。これは、正極活物質と負極活物質で放電反応に必要な電解液量が異なるため、適正な比率でアルカリ電解液を配分することで、正極活物質と負極活物質の利用率、及び閉路電圧特性を向上できるためと考えられる。
【0047】
次に、この図2により、実施例6〜7と比較例5〜6とを比較するに、負極合剤7とセパレータ6とに配分するアルカリ電解液を「負極活物質の質量/負極合剤及びセパレータに配分するアルカリ電解液の質量」で示される比で、1.3以上、1.7以下とすることで、容量及び容量保存性に優れた電池を得ることができる。これは、上記した式で示される比を1.3以上とすることで、アルカリ電解液を負極合剤7及びセパレータ6に配分することで、負極活物質に対する電解液が適正値より多くなりすぎず、正極活物質側で必要な電解液量を確保でき、電解液不足による正極活物質の利用率低下を阻止できるためである。また、上記式で示される比を1.7以下とすることで、負極活物質が放電反応に必要な電解液量を最低限確保できるため、電解液不足による負極活物質の利用率低下を阻止できるためである。
【0048】
次に、この図2により、実施例8〜9と比較例7〜8とを比較するに、正極合剤5に配分するアルカリ電解液を、「正極活物質の質量/正極合剤に配分するアルカリ電解液の質量」の式に示される比が、8以上10以下となるように配分することで、容量、容量保存性及び閉路電圧特性に優れた電池を得ることができる。これは、上記した式で示される比が8以上となるように配分することで、正極活物質に対する電解液が適正値より多くなりすぎず、且つ負極活物質側で必要な電解液量を確保できるため、電解液不足による負極活物質の利用率低下を阻止できるためである。また、上記した式で示される比が10以下となるように配分することで、正極活物質が放電反応に必要な電解液量を確保できるため、電解液不足による正極活物質の利用率、および、閉路電圧特性の低下を阻止できるためである。
【0049】
次に、この図2により、実施例10〜13と比較例9〜12とを比較するに、負極合剤7に混合するアルカリ電解液として25〜35%の水酸化ナトリウム水溶液又は35〜50%の水酸化カリウム水溶液を含ませることで、負極合剤7のハンドリング性を向上し、閉路電圧特性に優れた電池を得ることができる。これは、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を25%以上とすることで、電解液の粘度が低くなりすぎず、負極合剤7の粘弾性をハン
ドリングし易い状態に保持できるためである。また、水酸化ナトリウム水溶液の濃度を35%以下とすることで、電解液の伝導度が高い状態で使用できるため、負極合剤7の伝導度も向上し、電池としての閉路電圧特性も高くできるためである。
【0050】
一方、水酸化カリウム水溶液の濃度を35%以上とすることで、水酸化ナトリウム水溶液と同様に、電解液の粘度が低くなりすぎず、負極合剤の粘弾性をハンドリングし易い状態に保持できるためである。また、水酸化カリウム水溶液の濃度を50%以下とすることで、電解液の伝導度が高い状態で使用できるため、負極合剤の伝導度も向上し、電池としての閉路電圧特性も高くできるためである。
【0051】
また、この図2により、実施例14と比較例13とを比較するに、亜鉛又は亜鉛合金粉末の粒子の90%以上を40〜200メッシュの範囲に調整することで、容量のばらつきの小さい電池を得ることができる。これは、亜鉛又は亜鉛合金粉末の粒度を40メッシュ以上とすることで、負極合剤7を電池内に充填する工程にて、粒子の数粒が充填されないために容量バラツキが大きくなってしまうことを防止できるためである。
【0052】
また、この図2により、実施例15〜16と比較例14とを比較するに、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を5μm以上、20μm以下とすることで、正極ペレットのハンドリング性を向上し、高容量及び容量保存性に優れる電池を得ることができる。これは、オキシ水酸化ニッケルの平均粒径を5μm以上とすることで、正極合剤をプレス成型する際の微細粉末の反発を抑制し、プレス加工の圧力が過大となる問題を防止できるためである。
【0053】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、アルカリ電解液を、負極合剤7、セパレータ6及び正極合剤5に、各々48〜54質量%、9〜13質量%、34〜40質量%配分することによって、負極合剤7、セパレータ6及び正極合剤5のアルカリ電解液の比率を適正化することができ、高容量の電池を得ることができる。従って、扁平形アルカリ一次電池1は、終止電圧が酸化銀電池の電池電圧に合わせて高めに設定されている電子腕時計などの機器での使用に、長時間耐え得ることができる。
【0054】
(2)本実施形態によれば、負極活物質の質量に対して負極合剤7とセパレータ6とに対し、アルカリ電解液を、「負極活物質の質量/負極合剤及びセパレータに配分するアルカリ電解液の質量」の式で示される比が、1.3以上、1.7以下となるように配分した。このため、容量及び容量保存性に優れた電池を得ることができる。
(3)本実施形態によれば、正極合剤5に配分するアルカリ電解液を、「正極活物質の質量/正極合剤に配分する電解液の質量」の式で示される比が、8以上10以下となるように、容量、容量保存性及び閉路電圧特性に優れた電池を得ることができる。
【0055】
(4)本実施形態によれば、負極合剤7に混合するアルカリ電解液として25〜35%の水酸化ナトリウム水溶液及び35〜50%の水酸化カリウム水溶液の少なくとも一方を含ませることで、負極合剤7のハンドリング性を向上し、かつ、閉路電圧特性に優れた電池を得ることができる。
(5)本実施形態によれば、負極活物質である亜鉛又は亜鉛合金粉末の90%が、40〜200メッシュの範囲に含まれるように調整するので、容量バラツキの小さい電池を得ることができる。
【0056】
(6)本実施形態によれば、正極活物質であるオキシ水酸化ニッケルの平均粒径を5μm以上20μm以下とすることで、正極ペレットのハンドリング性を向上し、高容量及び容量保存性に優れる電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】扁平形アルカリ一次電池の断面図。
【図2】実施例及び比較例の表。
【符号の説明】
【0058】
1…扁平形アルカリ一次電池、2…正極缶、3…負極缶、4…ガスケット、5…正極合剤、6…セパレータ、7…負極合剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む正極合剤と、負極活物質を含む負極合剤と、前記正極合剤及び前記負極合剤を分離するセパレータとを備え、前記正極合剤、前記負極合剤及び前記セパレータにアルカリ電解液を含有する扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、
オキシ水酸化ニッケルを前記正極活物質とし、亜鉛又は亜鉛合金粉末を前記負極活物質とするとともに、
前記アルカリ電解液を、前記負極合剤、前記セパレータ、及び前記正極合剤に対し、それぞれ48〜54質量%、9〜13質量%、34〜40質量%の配分率で配分することを特徴とする扁平形アルカリ一次電池の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、
前記負極合剤及び前記セパレータに対し、前記アルカリ電解液を、「負極活物質の質量/負極合剤及びセパレータに配分するアルカリ電解液の質量」で示される比が、1.3以上1.7以下となるように配分することを特徴とする扁平形アルカリ一次電池の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、
前記正極合剤に対し、前記アルカリ電解液を、「正極活物質の質量/正極合剤に配分するアルカリ電解液の質量」で示される比が8以上10以下となるように配分することを特徴とする扁平形アルカリ一次電池の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、
前記負極合剤に含まれる前記アルカリ電解液は、25〜35%の水酸化ナトリウム水溶液、又は35〜50%の水酸化カリウム水溶液、又はそれらの濃度の各水溶液の混合液であることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、
前記負極合剤に含まれる亜鉛又は亜鉛合金粉末の90%以上が、40〜200メッシュの粒度範囲に含まれることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の扁平形アルカリ一次電池の製造方法において、
前記正極合剤に含まれるオキシ水酸化ニッケルの平均粒径が、5μm以上20μm以下であることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池の製造方法。
【請求項7】
正極活物質を含む正極合剤と、負極活物質を含む負極合剤と、前記正極合剤及び前記負極合剤を分離するセパレータとを備え、前記正極合剤、前記負極合剤及び前記セパレータにアルカリ電解液を含有する扁平形アルカリ一次電池において、
前記負極合剤、前記セパレータ、及び前記正極合剤に対し配分された前記アルカリ電解液の配分率が、それぞれ48〜54質量%、9〜13質量%、34〜40質量%であることを特徴とする扁平形アルカリ一次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−193707(P2009−193707A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30529(P2008−30529)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】