説明

扉枠およびその施工方法

【課題】開口部の壁厚に誤差が生じても対応することができる対応性と、良好な施工性とを兼ね備えた扉枠および扉枠の施工方法を提供する。
【解決手段】扉枠1は、開口部Kの一方の壁面S1側の開口縁部に設けられる第1枠体111,121と、他方の壁面S2側の開口縁部に設けられる第2枠体112,122とで2分割されている。第1枠体111,121には、開口部K内側の先端に設けられた戸当たり部111a,121aと、戸当たり部111a,121aと重なり合う部分を挟み込む保持部111b,121bとが形成されている。この扉枠1は、先に、一方の壁面S1側から第1枠体111,121を取り付け、固定用空間R内で柱部材Kxおよび梁部材Kyと固定した後に、他方の壁面S2側から第2枠体112,122を、第1枠体111,121へ嵌め込むことで取り付けることで、壁面パネルPを貼った後でも扉枠1を取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面の開口に設けられる扉を開閉自在に保持する扉枠およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルやテナントビル、マンションなどにおいては、出入口として壁面の開口部に扉が設けられる。この扉は開口部に設置される扉枠により開閉自在に保持される。
このような扉枠について、開口部の一方の壁面側に設けられる前枠と、他方の壁面側と設けられる後枠との、二つの枠体から形成された特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の建具枠は、二分割された前枠と後枠の組合せから成り、前枠の内側面に戸当たりが一連にG形状に形成され、戸当たりのリップ部が後枠の内側面に接して見込み寸法の調整を自在とすることで、取り付け壁の厚みの大小または途中段階での変更でも適用させることができるものである。この特許文献1に記載の建具枠であれば、周辺壁の種別や厚みの決定時期によらず、壁厚の変更や不具合に柔軟に対応でき、予め前枠と後枠とを作製して準備しておくことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−316446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の建具枠では、前枠と後枠とを溶接またはボルトとナットとで結合した後に、壁の開口部に配置し、繋ぎ材を介して下地養生材(柱)と接合しているので、取り付ける順序としては、まず柱に結合した前枠と後枠とを、繋ぎ材を介して接合した後に、壁ボード材(壁面パネル)を建て付けることになる。
【0006】
しかし、柱を建てる作業者と、壁面パネルを貼る作業者とは、同じ作業者であることが多いため、まず、開口部を形成する柱を建て、この柱に扉枠を接合し、そして壁面パネルを建て付けるという手順では、柱を建てた作業者は、扉枠の施工が完了するまで待たなくてはならない。
【0007】
例えば、扉枠の設置工事が遅れたり、設置が必要な扉枠の数が多かったりすると、壁面パネルを貼るまでの手待ちの期間が長くなる。作業者は、手待ちの期間が長くなることで他の現場での作業に入ることがあるが、他の現場での作業が遅延してしまうと、扉枠の設置が完了して壁面パネルの建て付け待ちとなっても、今度は他の現場から抜けることができず、壁面パネルを貼る現場に戻れなくなってしまう。そうなると、工程の調整や管理が非常に厳しい状況になってしまう。従って、業種の異なるそれぞれの作業者が、出戻りすることなく順序よく施工現場で作業を行うことができる高い施工性を有する扉枠が望まれている。
【0008】
そこで本発明は、開口部の壁厚に誤差が生じても対応することができる対応性と、良好な施工性とを兼ね備えた扉枠および扉枠の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の扉枠は、壁面の開口部の一方の壁面側の開口縁部に設けられる第1枠体と、前記開口部の他方の壁面側の開口縁部に設けられる第2枠体とを備え、前記第1枠体には、開口部内側の先端に設けられた戸当たり部と、前記戸当たり部の裏側に設けられ、前記戸当たり部と重なり合う前記第2枠体の内側先端部分を裏側から前記戸当たり部と共に挟み込む保持部とが形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の扉枠の施工方法は、壁面の開口部の一方の壁面側の開口縁部に設けられる第1枠体と、前記開口部の他方の壁面側の開口縁部に設けられる第2枠体とを備えた扉枠を前記開口部へ取り付ける方法であって、前記開口部内側の先端に設けられた戸当たり部と、前記戸当たり部の裏側に設けられ、前記戸当たり部と重なり合う前記第2枠体の内側先端部分を裏側から前記戸当たり部と共に挟み込む保持部とが形成された第1枠体を、前記一方の壁面側から配置する工程と、前記第1枠体を前記開口部に固定する工程と、前記第2枠体を前記他方の壁面側から前記開口部へ配置して、前記第2枠体の内側先端部分を前記戸当たり部と前記保持部との間に挿入する工程と、前記第2枠体を前記開口部に固定する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の扉枠は、第1枠体と第2枠体との2つの枠体から形成されている。第1枠体は、壁面の開口部の一方の壁面側の開口縁部に設けられる。第2枠体は、開口部の他方の壁面側の開口縁部に設けられる。この2つの枠体を開口部に設置するときには、第1枠体を、一方の壁面側から配置した後に、第1枠体を開口部に固定する。次に、第2枠体を他方の壁面側から開口部へ配置して、第2枠体の内側先端部分を、開口部内側の先端に設けられた戸当たり部と保持部との間に挿入する。戸当たり部の裏側に設けられた保持部は、戸当たり部と重なり合う第2枠体の内側先端部分を裏側から戸当たり部と共に挟み込むので、扉枠を開口部に設置するより以前に、第1枠体と第2枠体とを連結する必要がない。従って、壁面ができた後に、扉枠の施工が可能である。また、戸当たり部と保持部とで第2枠体を挟み込んでいるだけなので、開口部の施工誤差が原因で、壁厚が厚くなったり、薄くなったりしても、戸当たり部と第2枠体の内側先端部分との重なり合い度合いが変わるだけである。従って、外観からは重なり度合いが変わったことが戸当たり部に隠れて判別できないので、開口部の壁厚に誤差が生じても対応することができる。
【0012】
前記第1枠体は、壁面パネルによる一方の壁面側から開口部内側へ延び、枠部材により形成された前記開口部の内側面と前記第1枠体の裏側面との間に固定用空間を確保する略L字状に形成され、前記第2枠体は、壁面パネルによる他方の壁面側から開口部内側へ延び、前記戸当たり部と前記保持部との間に挿入可能とした略L字状に形成されているのが望ましい。
第1枠体は、壁面パネルによる一方の壁面側から開口部内側へ延びた略L字状に形成されているが、開口部を形成する枠部材と第1枠体の裏側面との間には固定用空間が確保された形状なので、壁面を形成する壁面パネルが開口部を形成する枠部材に建て付けられた後でも、第1枠体を枠部材に固定することができる。そして、第2枠体は、他方の壁面側から開口部内側へ延びた略L字状に形成されているので、第1枠体を固定した後に、第2枠体を他方の壁面側から第1枠体の戸当たり部と前記保持部との間に挿入して固定することができる。
【0013】
前記第1枠体に裏側面に配置される第1連結部材と、該第1連結部材と連結可能な前記枠部材の位置に配置され、ねじ部材により前記枠部材と接続される第2連結部材とを備え、前記第1連結部材と前記第2連結部材とは前記固定空間内でねじ部材により連結されているのが望ましい。第1連結部材と第2連結部材とで第1枠体と枠部材とを連結することで、溶接を使うことなく固定することができる。
【0014】
前記第1枠体の裏側面と前記枠部材の取付面とに相互に接するS字状の連結部材が前記固定空間内に設けられ、前記S字状の連結部材は、前記第1枠体と前記枠部材とにねじ部材により連結することも可能である。S字状の連結部材により第1枠体と枠部材とを連結することで、溶接を使うことなく固定することができる。
【0015】
前記第2枠体を前記枠部材に固定するための固定治具が設けられ、前記固定治具は、前記第2枠体と前記枠部材との間に空間を確保する筒状のスペーサ部材と、前記第2枠体から前記スペーサ部材を挿通して、前記枠部材に螺着するねじ部材とを備えているのが望ましい。第1枠体には固定用空間が確保されているため、第2枠体を第1枠体と接続した状態では第2枠体と枠部材との間に空間ができる。従って、第2枠体を枠材に固定するときに、単に平ねじで固定すると第2枠体の表面が凹むおそれがある。そこで、第2枠体と枠部材との間に空間を確保するスペーサ部材をねじ部材が挿通して枠部材へ螺着する固定治具を用いることで、第2枠体と枠部材との間の空間を確保した状態で、第2枠体を枠部材に固定することができる。
【0016】
前記第1枠体および/または前記第2枠体は、縦枠部と横枠部との接続が、それぞれ分離可能に形成されていると、第1枠体および/または第2枠体のそれぞれの縦枠部と横枠部とを分離した状態で保管したり、施工現場へ搬入したりすることができるので、広い保管場所が不要であり、搬送も容易である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成によれば、戸当たり部と重なり合う第2枠体の内側先端部分を裏側から戸当たり部と共に挟み込むので、壁面ができた後に、扉枠の施工が可能である。また、本発明の構成によれば、壁厚に誤差が生じても、外観からは重なり度合いが変わったことが戸当たり部に隠れて判別できないので、開口部の壁厚に誤差が生じても対応することができる。従って、本発明は、開口部の壁厚に誤差が生じても対応することができる対応性と、良好な施工性とを兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る扉枠に扉を装着した状態を示す図であり、(A)は正面図、(B)は水平断面図である。
【図2】図1に示す扉枠および扉のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す扉枠および扉のB−B線断面図である。
【図4】フック板を示す平面図である。
【図5】蝶番部分の扉枠の取り付け構造を示す図であり、(A)は図1に示すはC−C線の一部断面図、(B)はコ字板を示す斜視図、(C)L字板を示す斜視図である。
【図6】第2枠体の固定状態を説明するための図である。
【図7】第1枠体の端部を示す図であり、(A)は長手方向に沿って見た図、(B)は(A)のD−D線矢視図である。
【図8】溶接により第1枠体を柱部材に固定する場合を示す図であり、(A)は垂直断面図、(B)は水平断面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る扉枠の変形例を示す水平断面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る扉枠の変形例を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る扉枠を図1から図8に基づいて説明する
図1(A)および同図(B)に示すように、本実施の形態に係る扉枠1は、鋼板を折り曲げて形成され、壁面S1,S2の開口部Kに設けられる開き戸2を、3ヵ所に取り付けられた蝶番Hにより開閉自在に保持するものである。この開き戸2は、高さが約2m,幅が0.9mの矩形状に形成されている。
【0020】
この開口部Kは、図2および図3に示すように、枠部材である断面C形の軽量鉄骨製(C型鋼)による2本の柱部材Kx,Kxと、柱部材Kx,Kxに架設されたC型鋼による梁部材Kyとで形成されている。床Fに対して立設されている柱部材Kxには、C型鋼による補強部材Kzが設けられている。柱部材Kx,Kxと梁部材Kyおよび補強部材Kzは、壁面S1,S2を形成する壁面パネルPにより外装されている。壁面パネルPは、設計により2枚重ね、3枚重ねとすることがあるが、本実施の形態では、両側を1枚の壁面パネルPで覆っている。
【0021】
扉枠1は、柱部材Kx,Kxに取り付けられる縦枠部11,11と梁部材Kyに取り付けられる横枠部12とで形成された三方枠である。縦枠部11は、第1枠体111と、第2枠体112とで2分割され、横枠部12は、第1枠体121と第2枠体122とで2分割されている。
【0022】
第1枠体111,121は、開口部Kの一方の壁面S1側の開口縁部に設けられる。第1枠体111,121は、断面が全体的に略L字状に形成されている。詳細には、第1枠体111,121は、壁面パネルPによる一方の壁面S1側から開口部K内側へ延びるように形成され、柱部材Kxと梁部材Kyとで形成されたコ字状の開口部の内側面と第1枠体111,121の裏側面との間に固定用空間Rが確保されている。
【0023】
第1枠体111,121には、開口部K内側の先端に戸当たり部111a,121aが設けられている。また、第1枠体111,121には、戸当たり部111a,121aの裏側に、保持部111b,121bが設けられている。この保持部111b,121bは、戸当たり部111a,121aの先端に、戸当たり部111a,121aの下端から上端までの長さの略U字状に屈曲させた板体を溶接することで形成されている。
【0024】
第1枠体111,121には、戸当たり部111a,121aの裏側面から固定用空間Rに向かって延びる係止部材131(第1連結部材)が溶接されている。この係止部材131は、柱部材Kxおよび梁部材Kyにねじ止めされたフック板132(第2連結部材)の先端に引っ掛けられている。ここで、フック板132について、図4に基づいて説明する。フック板132は、折り曲げられ、係止部材131と係止するフック部132aが設けられた一端部側とは反対側の他端側に、ねじ止め用の貫通孔が3ヵ所設けられている。このねじ止め用の貫通孔は、2つの長孔132bと2つの長孔132bの間に位置する丸孔132cとが形成されている。
【0025】
この係止部材131およびフック板132は、横枠部12の中央部に設けられている。また、係止部材131およびフック板132は、縦枠部11に4ヵ所設けられている。ここで係止部材131およびフック板132の取り付け位置について詳細に説明する。係止部材131およびフック板132は、図1(A)に示すように、蝶番Hが設けられている3ヵ所の間の2ヵ所と、上端および蝶番Hの間と、下端および蝶番の間との合計4ヵ所に設けられている。
【0026】
図5(A)〜同図(C)に示すように、蝶番Hが設けられる位置には、コ字板141(第1連結具)が、ねじ部材N1によりねじ止めすることで、第1枠体111に取り付けられている。コ字板141の両側端部には、補強用の矩形状のリブ板141a,141aが設けられている。
また、L字板142(第2連結具)が、柱部材Kxに設けられている。このL字板142の両側端部には、補強の三角形状のリブ板142a,142aが設けられている。L字板142は、柱部材Kxにねじ止めされている。
コ字板141とL字板142とは、柱部材Kxまたは第1枠体111の各面に対しての立設面同士が突き合わされた状態でねじ止めされている。そして、コ字板141とL字板142の対向面同士を突き合わせた状態で、L字板142側からねじ部材N2を挿通させてねじ止めすることで、柱部材Kxと第1枠体111とが固定されている。
【0027】
本実施の形態では、蝶番Hが設けられる位置に、コ字板141が、第1枠体111と柱部材Kxとの連結に用いられているが、強度が確保できるなら、全部を係止部材131とフック板132との連結としてもよい。
【0028】
図2および図3に示すように、第2枠体112,122は、開口部Kの他方の壁面S2側の開口縁部に設けられる。第2枠体112,122は、断面が全体的に略L字状に形成されている。詳細には、第2枠体112,122は、壁面パネルPによる他方の壁面S2側から開口部内側へ延び、戸当たり部111a,121aと保持部111b,121bとの間に挿入されている。
【0029】
ここで、第2枠体112,122を柱部材Kxと梁部材Kyに固定する固定治具について、図6に基づいて説明する。なお、図6においては、梁部材Kyに横枠部12が固定されている状態を示しており、柱部材Kxに縦枠部11が固定されている状態は、梁部材Kyが柱部材Kxに代わり、横枠部12の第2枠体122が縦枠部11の第2枠体112に代わるだけなので省略している。
【0030】
図6に示すように、第2枠体122は、梁部材Kyに固定治具15により固定されている。この固定治具15は、固定用空間Rと連通する第2枠体122と梁部材Kyとの隙間(空間)を確保するための筒状のスペーサ部材151と、第2枠体122からスペーサ部材151を挿通して、梁部材Kyへ螺着するねじ部材152とを備えている。このスペーサ部材151は、第2枠体122の裏側面に溶接されている。第2枠体122には、おもて面側からスペーサ部材151の位置が視認できるように、スペーサ部材151の孔と連通する貫通孔が設けられている。
【0031】
本実施の形態に係る扉枠1は、前後に2分割されているだけでなく、縦枠部11と横枠部12とが、それぞれ分離可能に形成されている。つまり扉枠1は、6つのパーツに分割されている。図7(A)および同図(B)に示すように、縦枠部11の第1枠体111を例に説明すると、第1枠体111の両端部には、貫通孔が形成されたL字金具161にナット162が孔位置を合わせて溶接された接続部材16が設けられている。この接続部材16に、図示しない横枠部12の第1枠体121の端部を直角に合わせてねじ止めすることで、2本の縦枠部11の第1枠体111,111と横枠部12の第1枠体121とを連結することができる。
【0032】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る扉枠1の施工方法について、図面に基づいて説明する。
扉枠1を取り付ける開口部Kには、既に、柱部材Kxが補強部材Kzと共に立設され、柱部材Kx同士の間を梁部材Kyが架設され、これらを覆うように壁面パネルPが貼られ、蝶番Hと共にコ字板141が取り付けられるものとする。
【0033】
まず、柱部材KxのL字板142を取り付けた間の3ヵ所に、フック板132を等間隔に取り付ける。また、梁部材Kyの中央部にもフック板132を取り付ける。このとき、フック板132を、長孔132bを通してねじを軽く締めて取り付けるだけで、丸孔132cにはねじを取り付けない。つまり、フック板132は仮固定された状態である。
【0034】
(第1枠体の取り付け)
次に、連結されて2分割された三方枠の状態の第1枠体111,121を、一方の壁面S1側から開口部Kに配置する。第1枠体111,121を配置する際には、係止部材131がフック板132より前となる位置まで、第1枠体111,121を前進させた後、柱部材Kxまたは梁部材Ky側に押し当てながら後退させる。そうすることで、係止部材131がフック板132のフック部132aに引っ掛かる。その状態でフック板132の位置を調整して丸孔132cにねじをねじ込むと共に、長孔132bに取り付けたねじをねじ込み、フック板132を本固定する。
【0035】
このとき、第1枠体111,121同士の間の開口を測り、開き戸2が取付可能な幅が確保されているかを確認する。幅が広すぎる場合には、第1枠体111,121を移動させて調整する。係止部材131とフック板132とは固定されていないため、係止部材131がフック板132に摺動しながら移動することで、第1枠体111,121を移動させて調整することができる。従って、設計値と実際の状態とが多少異なっていても、第1枠体111同士の間隔を調整することで合わせることができる。
【0036】
次に、第1枠体111に蝶番Hと共に取り付けられているコ字板141の位置に合わせて、柱部材KxにL字板142をねじ止めすると共にコ字板141とL字板142とをねじ部材N2によりねじ止めする。これで、第1枠体111が柱部材Kxに固定され,第1枠体121が梁部材Kyに固定される。
このように柱部材Kxおよび梁部材Kyに壁面パネルPが貼られて状態であっても、固定用空間Rを利用して、第1枠体111と柱部材Kx,および第1枠体121と梁部材Kyとを連結することができるので、第1枠体111,121を開口部Kに取り付けることができる。
【0037】
(第2枠体の取り付け)
連結された三方枠の状態の第2枠体112,122を、他方の壁面S2側から開口部Kに配置する。第2枠体112,122を配置する際には、第1枠体111,121の戸当たり部111a,121aと、保持部111b,121bとの間の隙間に、第2枠体112,122の内側先端部分を挿入しながら行う。
【0038】
次に、第2枠体112,122の裏側面に設けられたスペーサ部材151の位置に合わせて設けられた貫通孔にねじ部材152を、スペーサ部材151を挿通させて柱部材Kxと梁部材Kyとにねじ込む。第2枠体112,122と柱部材Kxおよび梁部材Kyとの間に、固定用空間Rと連通する空間が確保されていても、スペーサ部材151が隙間を支持するので、ねじ部材152を強くねじ込んでも、第2枠体112,122のおもて面に、ねじ部材152の頭部の押圧による凹みが生じることはない。
【0039】
このように、戸当たり部111a,121aの裏側に設けられた保持部111b,121bは、戸当たり部111a,121aと重なり合う第2枠体112,122の内側先端部分を裏側から戸当たり部111a,121aと共に挟み込むので、扉枠1を開口部に設置するより以前に、第1枠体111,121と第2枠体112,122とを連結しておく必要がない。従って、柱部材Kxと梁部材Kyとに壁面パネルPを貼り合わせた後に、扉枠1の施工が可能である。また、戸当たり部111a,121aと保持部111b,121bとで第2枠体112,122を挟み込んでいるだけなので、開口部Kを形成する柱部材Kxや梁部材Kyの施工誤差が原因で、壁厚が厚くなったり、薄くなったりしても、戸当たり部111a,121aと第2枠体112,122の内側先端部分との重なり合い度合いが変わるだけである。例え、重なり合い度合いが変わったとしても戸当たり部111a,121aにより隠れるので外観には変化がない。従って、本実施の形態に係る扉枠1は、開口部の壁厚に誤差が生じても対応することができる対応性と、良好な施工性とを兼ね備えている。
【0040】
また、戸当たり部111a,121aと保持部111b,121bとが形成されている第1枠体111,121とを予め作り置きしておけば、設計段階で壁厚が最終的に決定してから第2枠体112,122を作製しても、第2枠体112,122の形状は、第1枠体111,121より簡易な、単に鋼板をほぼL字状に折り曲げただけの構造であるため、短期間に作製することができる。従って、短納期でも対応することができるので、施工に対して迅速に準備することができる。
【0041】
本実施の形態では、第1枠体111,121と第2枠体112,122とを、縦枠部11および横枠部12ごとに分割した状態としているので、保管場所を省スペース化が図れ、施工現場への搬入を容易とすることができる。この分割は、縦枠部11または横枠部12のいずれか一方でもよい。
なお、本実施の形態に係る扉枠1を、防火扉が設けられる開口部に設置する場合には、縦枠部11および横枠部12をねじ止めによる連結ではなく、一体構造とすることで、必要な強度を確保することができる。
【0042】
また、本実施の形態では、第1枠体111および柱部材Kxと,第1枠体121および梁部材Kyとを、L字板142同士で連結したり、係止部材131とフック板132とで連結したりしているが、例えば、図8(A)および同図(B)に示すように、第1枠体111および柱部材Kxと,第1枠体121および梁部材Kyとを、固定用空間Rを溶接用空間として利用して、アンカー18(接続棒)を介在させて溶接にて固定することも可能である。しかし、第1枠体111,121を溶接で固定する際に、固定用空間Rの奥側方向に向かって、電気溶接の溶接棒の先端から飛び散る溶接炎が壁面パネルPの開口部K側の端部を焦がすおそれがある。従って、本実施の形態のように、溶接による連結ではなく、ねじ止め、または係止による連結を行う方がよい。そうすることで、壁面S1,S2として壁面パネルPを貼っただけの状態、壁面パネルPにクロスを貼った状態、壁面S1,S2に塗装した状態でも、扉枠1を安心して取り付けることができる。
【0043】
また、開き戸2の開閉時に最も負荷が掛かる蝶番Hの部分に、蝶番Hと共にコ字板141がねじ止めされていることで、コ字板141が第1枠体111を固定するための固定部材として機能するだけでなく、第1枠体111を補強する補強部材としての機能も備えている。また、コ字板141を蝶番Hと共にねじ止めすることで、溶接や他のねじによる固定を行わなくてもよい。
【0044】
更に、本実施の形態では、保持部111b,121bは、溶接により戸当たり部111a,121aに取り付けられているが、折り曲げにより一体的に形成してもよい。
【0045】
(変形例)
次に、本発明の実施の形態に係る扉枠1の変形例について、図9および図10に基づいて説明する。なお、図9および図10においては、図2および図3と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0046】
図9および図10に示す扉枠10は、開き戸2の重量が重い場合に好適なものとしている。扉枠10の第1枠体は111,121のそれぞれは、柱部材Kxと梁部材Kyとに、通し金具である固定部材17により固定されている。
【0047】
固定部材17は、断面が、J字状の枠体側ねじ止め部171と、L字状の枠部材側ねじ止め部172とが一体的に形成されたS字状の連結部材である。
J字状の枠体側ねじ止め部171は、第1枠体111,121の裏側の奥側に位置し、第1枠体111,121とおもて面側からねじ止めされる。
L字状の枠部材側ねじ止め部172は、戸当たり部121aから柱部材Kxまたは梁部材Kyの方向へ向かい、柱部材Kxまたは梁部材Kyに沿って折れ曲がりねじ止めされる。
固定部材17の柱部材Kxとのねじ止め位置は、蝶番H(図2参照)の位置の3ヵ所と、蝶番H同士の間の2ヵ所と、上端から蝶番Hまでの間の位置と、下端から蝶番Hまでの間の位置との7ヵ所としている。また、梁部材Kyとのねじ止め位置は、中央部の1ヵ所である。
【0048】
この固定部材17が第1枠体111,121の裏側面と、柱部材Kxおよび梁部材Kyの取付面とに相互に接した状態でねじ止めされていることで、第1枠体111を梁部材Kyに,第1枠体121を梁部材Kyに、強固に固定することができるので、重量の重い開き戸2であっても扉枠10は開き戸2を支持することができる。
また、この変形例においても、第1枠体111を柱部材Kxに,第1枠体121を梁部材Kyに、溶接により固定していないので、壁面パネルPにクロスを貼った状態でも、壁面S1,S2を塗装した状態でも、扉枠10の施工を行っても問題はない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、壁面の開口に設けられる扉枠に好適であり、三方枠だけでなく四方枠においても適用できる。また、本発明の扉枠に取り付けられる扉は、片開きの開き戸だけでなく量開き(観音開き)の扉や、折戸、引き戸でもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,10 扉枠
11 縦枠部
111 第1枠体
111a 戸当たり部
111b 保持部
112 第2枠体
12 横枠部
121 第1枠体
121a 戸当たり部
121b 保持部
121c 係止部材
122 第2枠体
131 係止部材
132 フック板
132a フック部
132b 長孔
132c 丸孔
141 コ字板
141a リブ板
142 L字板
142a リブ板
15 固定治具
151 スペーサ部材
152 ねじ部材
16 接続部材
161 L字金具
162 ナット
17 固定部材
18 アンカー
2 開き戸
K 開口部
Kx 柱部材
Ky 梁部材
Kz 補強部材
H 蝶番
P 壁面パネル
S1,S2 壁面
F 床
R 固定用空間
N1,N2 ねじ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面の開口部の一方の壁面側の開口縁部に設けられる第1枠体と、
前記開口部の他方の壁面側の開口縁部に設けられる第2枠体とを備え、
前記第1枠体には、開口部内側の先端に設けられた戸当たり部と、前記戸当たり部の裏側に設けられ、前記戸当たり部と重なり合う前記第2枠体の内側先端部分を裏側から前記戸当たり部と共に挟み込む保持部とが形成されていることを特徴とする扉枠。
【請求項2】
前記第1枠体は、壁面パネルによる一方の壁面側から開口部内側へ延び、枠部材により形成された前記開口部の内側面と前記第1枠体の裏側面との間に固定用空間を確保する略L字状に形成され、
前記第2枠体は、壁面パネルによる他方の壁面側から開口部内側へ延び、前記戸当たり部と前記保持部との間に挿入可能とした略L字状に形成されている請求項1記載の扉枠。
【請求項3】
前記第1枠体に裏側面に配置される第1連結部材と、
該第1連結部材と連結可能な前記枠部材の位置に配置され、ねじ部材により前記枠部材と接続される第2連結部材とを備え、
前記第1連結部材と前記第2連結部材とは、前記固定空間内でねじ部材により連結されている請求項2記載の扉枠。
【請求項4】
前記第1枠体の裏側面と前記枠部材の取付面とに、相互に接するS字状の連結部材が前記固定空間内に設けられ、
前記S字状の連結部材は、前記第1枠体と前記枠部材とにねじ部材により連結されている請求項2記載の扉枠。
【請求項5】
前記第2枠体を前記枠部材に固定するための固定治具が設けられ、
前記固定治具は、前記第2枠体と前記枠部材との間に空間を確保する筒状のスペーサ部材と、前記第2枠体から前記スペーサ部材を挿通して、前記枠部材に螺着するねじ部材とを備えている請求項2記載の扉枠。
【請求項6】
前記第1枠体および/または前記第2枠体は、縦枠部と横枠部との接続が、それぞれ分離可能に形成されている請求項1から3のいずれかの項に記載の扉枠。
【請求項7】
壁面の開口部の一方の壁面側の開口縁部に設けられる第1枠体と、前記開口部の他方の壁面側の開口縁部に設けられる第2枠体とを備えた扉枠を前記開口部へ取り付ける扉枠の施工方法であって、
前記開口部内側の先端に設けられた戸当たり部と、前記戸当たり部の裏側に設けられ、前記戸当たり部と重なり合う前記第2枠体の内側先端部分を裏側から前記戸当たり部と共に挟み込む保持部とが形成された第1枠体を、前記一方の壁面側から配置する工程と、
前記第1枠体を前記開口部に固定する工程と、
前記第2枠体を前記他方の壁面側から前記開口部へ配置して、前記第2枠体の内側先端部分を前記戸当たり部と前記保持部との間に挿入する工程と、
前記第2枠体を前記開口部に固定する工程とを含むことを特徴とする扉枠の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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