説明

【課題】発泡ウレタン樹脂の充填を行うことなく扉の構造の簡略化および軽量化を図る。
【解決手段】化粧パネル1に化粧パネルと異なる素材から形成された樹脂パネル2を裏打ちし、化粧パネルと樹脂パネルを、弾性を有する弾性接着剤で貼り合わせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、各種のキャビネットに用いられる扉に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチン用キャビネット、机用キャビネット、箪笥などの各種のキャビネットに設けられる回転扉、引き戸、引出しなどの扉には様々な構造を有するものがある。
【0003】
たとえば、透明なアクリル樹脂製の前板の裏面側にABS樹脂製の裏板を対向配置し、前板の裏面に接着剤を塗布して裏板を前板に貼り付けるとともに、前板と裏板の間に発泡ウレタン樹脂を充填して形成される扉がある。
【0004】
しかしながら、上記扉については、発泡ウレタン樹脂の充填工程が複雑であり、手間がかかり、コストもかかるという問題がある。
【0005】
一方、ドアパネルなどの積層材が知られている(特許文献1)。特許文献1には、2枚のドア板の裏面に湿気硬化性のホットメルト型接着剤を塗布し、フレームおよびハニカムを挟み込み、接着して一体化されたドアパネルが記載されている。
【特許文献1】特開6−115037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、構造を簡略化するとともに軽量化を図るためにフレームおよびハニカムを省略する場合、ドアパネルの強度が確保されない。この問題を解決しようとすると、ドア板の間に発泡ウレタン樹脂を充填することが考えられるが、発泡ウレタン樹脂の充填には上記の通りの問題がある。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発泡ウレタン樹脂の充填を行うことなく構造の簡略化および軽量化を図ることのできる扉を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、上記の課題を解決するために、第1に、化粧パネルに化粧パネルと異なる素材から形成された樹脂パネルを裏打ちした扉であって、化粧パネルと樹脂パネルを、弾性を有する弾性接着剤で貼り合わせたことを特徴としている。
【0009】
本願発明は、第2に、弾性接着剤が湿気硬化性接着剤であり、化粧パネルの裏面に重合する樹脂パネルの表面部分に複数の溝が樹脂パネルの横幅方向に形成されていることを特徴としている。
【0010】
本願発明は、第3に、弾性接着剤が湿気硬化性接着剤であり、樹脂パネルが発泡樹脂板であることを特徴としている。
【0011】
本願発明は、第4に、化粧パネルの裏面に重合する表面部分に複数の溝が横幅方向に形成された樹脂パネルが発泡樹脂板であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本願の第1の発明によれば、化粧パネルに裏打ちする樹脂パネルによって強度を高めることができ、樹脂パネルには硬質なものを選択することができるため、直接ネジ止めなどの加工を行って扉の取付けを行うことができる。化粧パネルと樹脂パネルは素材が異なり、このため、熱膨張率が異なるが、弾性接着剤を用いて両者を接着するため、熱膨張、熱歪みなどを弾性接着剤が吸収し、化粧パネルと樹脂パネルを安定して強固に接着することができる。
【0013】
本願の第2の発明によれば、弾性接着剤には通常湿気硬化性接着剤が用いられるが、樹脂パネルの、化粧パネルの裏面に重合する表面部分に複数の溝が樹脂パネルの横幅方向に形成されているため、化粧パネルと樹脂パネルの間に空気層を設けることができ、空気中の水分を安定して供給することができる。熱硬化性接着剤の硬化が促進される。
【0014】
本願の第3の発明によれば、発泡樹脂板の多孔質構造によって空気を取り込むことができ、湿気硬化性接着剤が、取り込んだ空気中の湿気に触れ、硬化しやすくなる。
【0015】
なお、発泡樹脂板が押出し材の場合、表面にスキン層が形成されるが、このスキン層を除去することにより湿気硬化性接着剤の硬化がさらに促進される。
【0016】
本願の第4の発明よれば、化粧パネルと樹脂パネルの間に空気層を設けることができ、空気中の水分を安定して供給することができるとともに、発泡樹脂板の多孔質構造によって空気を取り込むことができ、湿気硬化性接着剤が、より多くの空気中の湿気に触れるため、熱硬化性接着剤の硬化が一層促進される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本願発明の扉の一実施形態を示した断面図である。
【0018】
図1に示した実施形態では、表面化粧が施されたアクリル樹脂製などの化粧パネル1に、化粧パネル1と素材が異なる樹脂パネル2が裏打ちされて扉3が形成されている。扉3は、フレームおよびハニカムを有さないため、構造が簡略なものとなっており、また、軽量になっている。扉3の強度は、化粧パネル1に裏打ちされた樹脂パネル2によって保持される。樹脂パネル2にはたとえば硬質のものを選択することができ、この場合、直接ネジ止めなどの加工が可能となり、扉3のキャビネット本体への取付け、引出しの前板としての取付けなどが容易となる。
【0019】
また、図1に示した実施形態では、化粧パネル1への樹脂パネル2の裏打ちを、接着剤を用いた接着により行っている。したがって、化粧パネル1と樹脂パネル2の間に発泡ウレタン樹脂は充填されない。このため、扉3の製造工程が簡略化され、手間がかからず、コストもかからない。発泡ウレタン樹脂を充填する場合、一般にネジ止め用の強化板を挿入しておく必要があるが、扉3では、その強化板の挿入を省略することができる。
【0020】
接着に用いる接着剤は弾性を有する弾性接着剤である。化粧パネル1と樹脂パネル2は素材が異なり、熱膨張率が異なるが、接着時の熱膨張、熱歪みなどは弾性接着剤の弾性によって吸収することができ、化粧パネル1と樹脂パネル2を安定して強固に接着することができる。
【0021】
このような弾性接着剤は通常湿気硬化性接着剤である。湿気硬化性接着剤は空気中の湿気を吸収して硬化する接着剤である。たとえば、変成シリコーンポリマーをベースとした接着剤などが例示される。そこで、図1に示した実施形態では、化粧パネル1の裏面に重合する樹脂パネル2の表面部分に樹脂パネル2の横幅方向にのびる複数の溝4が形成されている。溝4の存在によって、化粧パネル1と樹脂パネル2を湿気硬化性接着剤を用いて接着する際に、溝4の中に空気を取り込むことができ、空気層を形成することができる。湿気硬化性接着剤は溝4の中に取り込まれた空気に含まれる水分を吸収して硬化する。溝4によって湿気硬化性接着剤の硬化が促進される。図1に示した実施形態では、樹脂パネル2の表面をギザギザに成形することで凹部を溝4としている。
【0022】
なお、化粧パネル1と樹脂パネル2を接着する際には、湿気硬化性接着剤が硬化するまでの仮固定のために、両面テープ5を化粧パネル1の裏面と樹脂パネル2の表面の間に介設している。両面テープ5によって、湿気硬化性接着剤が硬化するまでの間に化粧パネル1と樹脂パネル2がずれるのを解消し、安定に保持して、化粧パネル1に樹脂パネル2を正確に接着することができる。
【0023】
図2は、本願発明の扉の一実施形態を示した断面図である。
【0024】
図2に示した実施形態においても、図1に示した実施形態と同様に、表面化粧が施されたアクリル樹脂製などの化粧パネル1に、化粧パネル1と素材が異なる樹脂パネル2が裏打ちされて扉3が形成されている。化粧パネル1への樹脂パネル2の裏打ちは接着剤を用いた接着により行われている。接着剤には湿気硬化性接着剤が用いられ、湿気硬化性接着剤の硬化を促進させるための空気層を形成する溝6が、化粧パネル1の裏面と重合する樹脂パネル2の表面部分に樹脂パネル2の横幅方向に形成されている。
【0025】
したがって、図2に示した実施形態でも、図1に示した実施形態と同様に、扉3は、構造が簡略なものとなっており、また、軽量になっている。扉3の強度は、化粧パネル1に裏打ちされた樹脂パネル2によって保持され、樹脂パネル2には、たとえば硬質のものを選択することができ、この場合、直接ネジ止めなどの加工が可能となり、扉3のキャビネット本体への取付け、引出しの前板としての取付けなどが容易となる。また、化粧パネル1と樹脂パネル2の間に発泡ウレタン樹脂は充填されないので、扉3の製造工程が簡略化され、手間がかからず、コストもかからない。接着に用いる湿気硬化性接着剤は弾性を有しており、化粧パネル1と樹脂パネル2は素材が異なり、熱膨張率が異なるが、接着時の熱膨張、熱歪みなどは弾性接着剤の弾性によって吸収することができ、化粧パネル1と樹脂パネル2を安定して強固に接着することができる。
【0026】
一方、図2に示した実施形態では、溝6の形状が図1に示した実施形態における溝4の形状と相異している。溝6は、断面がきのこ雲状の形状を有している。樹脂パネル2の表面側に凹溝7が形成され、凹溝7から奥側に断面略円形状に広がった丸溝8が連通して形成されている。したがって、溝6は、樹脂パネル2の表面をギザギザに成形して形成した溝4よりも多くの空気を取り込むことができ、湿気硬化性接着剤の硬化をより促進させることができる。接着時間の短縮化が図れる。
【0027】
なお、図2に示した実施形態でも、化粧パネル1と樹脂パネル2を接着する際には、湿気硬化性接着剤が硬化するまでの仮固定のために、両面テープ5を化粧パネル1の裏面と樹脂パネル2の表面の間に介設している。両面テープ5によって、湿気硬化性接着剤が硬化するまでの間に化粧パネル1と樹脂パネル2がずれるのを解消し、安定に保持して、化粧パネル1に樹脂パネル2を正確に接着することができる。
【0028】
本願発明の扉では、溝4、6に替え、樹脂パネル2を発泡樹脂板とすることにより、湿気硬化性接着剤の硬化を促進させてもよい。発泡樹脂板は、たとえば押出成形などによって形成することができ、素材として、2倍発泡程度のABS樹脂やPS(ポリスチレン)樹脂などが例示される。発泡樹脂板は多孔質構造を有するものであり、この多孔質構造によって空気を取り込むことができ、湿気硬化性接着剤が、取り込んだ空気中の湿気に触れ、硬化しやすくなる。発泡樹脂板が押出し材の場合、表面にスキン層が形成されるが、このスキン層を除去することにより、湿気硬化性接着剤の硬化はさらに促進される。
【0029】
また、樹脂パネル2として用いる発泡樹脂板には、化粧パネル1の裏面に重合する表面部分に、図1および図2に示した溝4、6を樹脂パネル2の横幅方向に形成することもできる。この場合、溝4、6の中に空気を取り込んで空気層を形成することができるとともに、発泡樹脂板の多孔質構造により空気を発泡樹脂板に取り込むこともできる。このため、より多くの空気が取り込まれ、湿気硬化性接着剤により多くの空気を接触させることができる。空気中の水分をより多く湿気硬化性接着剤に吸収させることができ、湿気硬化性接着剤の硬化が一層促進される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本願発明の扉の一実施形態を示した断面図である。
【図2】本願発明の扉の一実施形態を示した断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 化粧パネル
2 樹脂パネル
3 扉
4 溝
5 両面テープ
6 溝
7 凹溝
8 丸溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧パネルに化粧パネルと異なる素材から形成された樹脂パネルを裏打ちした扉であって、化粧パネルと樹脂パネルを、弾性を有する弾性接着剤で貼り合わせたことを特徴とする扉。
【請求項2】
弾性接着剤が湿気硬化性接着剤であり、化粧パネルの裏面に重合する樹脂パネルの表面部分に複数の溝が樹脂パネルの横幅方向に形成されている請求項1記載の扉。
【請求項3】
弾性接着剤が湿気硬化性接着剤であり、樹脂パネルが発泡樹脂板である請求項1記載の扉。
【請求項4】
化粧パネルの裏面に重合する表面部分に複数の溝が横幅方向に形成された樹脂パネルが発泡樹脂板である請求項2記載の扉。

【図1】
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【図2】
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