説明

手すり支柱の補強構造

【課題】高い強度を発現する手すり支柱の補強構造を低コストで提供する。
【解決手段】断面矩形状の金属製角筒体からなる手すり支柱2と、手すり支柱2の対向する2つの内面に沿って配置された2枚の金属製補強芯材6からなり、金属製補強芯材6と手すり支柱2とが長手方向複数個所でねじなどの締結材7により固定されている。
金属製補強芯材6は、手すり支柱断面内で力の作用方向に直交する2辺の内側に配置することが最も効果的である。金属製補強芯材6としては単なる平板状の帯板であってもよいし、平板状の帯板の両側を折り曲げた溝形形状としたものでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建住宅や集合住宅のバルコニーや廊下などに設置される手すりに使用される手すり支柱の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅や集合住宅のバルコニーや廊下などには、図1に見られるように手すりが設けられている(特許文献1参照)。
図1は、手すりTを外側から見た正面図である。通常、手すりTは、バルコニーや廊下の外縁部に突設されたコンクリート製の手すり基台1に手すり支柱2を一定間隔おきに立設し、各手すり支柱2に上下横枠3,4を連結するとともに、上下横枠3,4間に手すり子5を一定間隔おきに設けられる形態となっている。
【0003】
そして、設置される手すりの支柱には、安全上、高い強度が必要とされる。特に、共用廊下の手すり支柱には高い強度が要求される。
そこで、手すり支柱の強度を高めるために、手すり支柱の内部に補強芯材を挿入することが行われていた。例えば、図2に示すように、補強芯材として、手すり支柱の内部に角型鋼管や丸型鋼管を挿入したり(図2(a))、手すり支柱の内部中央に厚い帯状の鋼板を配置したり(図2(b))している(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−321914号公報
【特許文献2】実開平6−8569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、汎用品として市場に流通している角型鋼管や丸型鋼管は、その外径寸法に応じて鋼管の肉厚が決まっており、通常、外径寸法が小さくなるほど肉厚も薄くなる。このため、手すり支柱の内部に挿入可能な比較的小径の角型鋼管や丸型鋼管を補強芯材として使用しても、鋼管の肉厚が薄いため十分な強度が得られないという問題があった。また、十分な強度が得られる肉厚の角型鋼管や丸型鋼管を用いると、外形寸法が大きくなるため手すり支柱に納まらないという問題もあった。
【0005】
また、手すり支柱の内部に挿入できる外径寸法で十分な強度が得られる厚肉の角型鋼管や丸型鋼管を新たに製造することは可能であるが、鋼管製造のために高額な設備投資が必要となり、コスト上問題であった。
さらに、図2(b)の横断面図に示したような手すり支柱の内部中央に配置される鋼板は、手すり支柱に必要な強度を付与するためには相当な厚さが必要である。このため、このような厚い鋼板を内部中央に配置した手すり支柱は重いため持ち運びが困難となり、施工上の問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために案出されたものであり、集合住宅の共用廊下の手すり支柱などに要求される高い強度を発現する手すり支柱の補強構造を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の手すり支柱の補強構造は、その目的を達成するため、断面矩形状の金属製角筒体からなる手すり支柱と、当該手すり支柱の対向する2つの内面に沿って配置された2枚の金属製補強芯材からなり、当該金属製補強芯材と前記手すり支柱とが長手方向複数個所で締結材により固定されていることを特徴とする。
なお、締結材としては、ねじの他に、リベットやワンサイドボルトなどが使用される。
前記金属製補強芯材は、手すり支柱断面内で力の作用方向に直交する2辺の内側に配置することが最も効果的である。
この金属製補強芯材としては、平板状の帯板であってもよいが、平板状の帯板の両側を折り曲げた溝形形状とすると強度がさらに向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の手すり支柱の補強構造によれば、2枚の金属製補強芯材を手すり支柱にねじなどの締結材により固定するという単純な構造により、手すり支柱に高い強度を付与することができる。特に、2枚の金属製補強芯材を、手すり支柱断面内で力の作用方向に直交する2辺の内側、すなわち手すりに作用する力により生ずる曲げ応力を最も効率的に負担できる位置に配置することで、補強芯材間の距離が最も長くなり、外力による曲げで発生する1対の偶力を効率的に負担することができる手すり支柱補強構造となる。
【0009】
金属製補強芯材として平板状の帯板を用いた場合でも必要な強度が得られるが、金属製補強芯材として溝形形状のものを用いることにより高い強度が得られる。金属製補強芯材として平板状の帯板を用いた場合は、その形状が単純なため金属製補強芯材の製造コストを大幅に削減することができる。金属製補強芯材として溝形形状のものを用いた場合でも、鋼管と比較すればその製造コストは低い。
したがって、本発明の手すり支柱の補強構造によれば、高い強度を発現する手すり支柱の補強構造を低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明者等は、戸建住宅や集合住宅のバルコニーや廊下などで用いられる断面矩形状の金属製角筒体からなる手すり支柱の補強構造について鋭意検討を重ねた。その過程で、断面矩形状の金属製角筒体からなる手すり支柱の対向する2つの内面に2枚の金属製補強芯材を配置し、この金属製補強芯材と手すり支柱とをずれないように複数個所でねじなどの締結材により固定して一体化することにより、手すり支柱に高い強度を付与することができることを見出した。
以下にその詳細を説明する。
【0011】
集合住宅の外廊下などに設置された手すりは、前記した通り、図1に見られるような形態となっている。そして、本発明では、各々の手すり支柱として図3〜5に見られるような補強構造を採用した。
図3は、本発明の補強構造を有する手すり支柱の横断面図を示すものである。本発明の補強構造は、図3(a)に示すように、手すり支柱を構成する金属製角筒体とその手すり支柱の対向する2つの内面に沿って配置された2枚の金属製平板状帯板からなる補強芯材で構成されている。また、図3(b)に示すように、手すり支柱を構成する金属製角筒体とその手すり支柱の対向する2つの内面に沿って配置された2枚の金属製平板状帯板の両側を折り曲げた溝形形状の補強芯材で構成されていてもよい。金属製補強芯材の形状を図3(b)に示すような溝形形状とすることにより、手すり支柱の強度はさらに向上する。
【0012】
2枚の金属製平板状帯板を配した補強構造について、図4,5に基づいて具体的に説明する。
図4,5は、本発明の補強構造を有する手すり支柱2の横断面図および縦部分断面図である。図4(a)は図4(b)のA−A’方向断面図、図4(b)は図4(a)のB−B’方向部分断面図、図5(a)は図5(b)のA−A’方向断面図、図5(b)は図5(a)のB−B’方向部分断面図である。手すり支柱2は、図4,5に示すように、断面矩形状の金属製角筒体で構成されているが、素材としては、意匠性や耐久性、成形自由度が高いなどの観点からアルミニウム合金の押出材とすることが好ましい。
本発明において、矩形状とは、図4,5に示すように、長方形や正方形のほか、それらの角部にRを設けたもの、さらには正方形や長方形のいずれかの辺が僅かに曲面を成しているものを含む。
【0013】
図4(a),(b)は、手すり支柱2を構成する金属製角筒体として断面長方形の角筒体を用いた例である。長方形の短辺である角筒体の対向する2つの内面に沿って2枚の金属製平板状帯板からなる補強芯材6を配置する。断面長方形状の角筒体からなる手すり支柱2は、デザイン上の観点から、図1に示すような手すりTにあって、その長辺が手すりTの長手方向に対して直交する方向に、即ち、短辺が手すりTの長手方向と平行に配置されるのが普通である。この場合、手すりTの両側に2枚の金属製平板状帯板からなる補強芯材6が配置されるように、長方形の短辺である角筒体の対向する2つの内面に沿って、2枚の金属製平板状帯板からなる補強芯材6を配置する。
【0014】
なお、上記短辺が手すりTの長手方向と平行に配置され、手すりTの長方形の短辺である角筒体の対向する2つの内面に沿って2枚の金属製平板状帯板からなる補強芯材6が配置される場合、2枚の金属製補強芯材6は、手すりTに作用する力により生ずる曲げ応力を最も効率的に負担できる位置に配置されることとなる。このように、手すり支柱断面内で力の作用方向に直交する2辺の内側に金属製補強芯材を設けることにより、補強芯材6間の距離が最も長くなり、外力による曲げで発生する1対の偶力を効率的に負担することができる構造となる。すなわち、補強芯材6を適切な位置に配置することにより、手すりTの側方からの力に対する補強効率の優れた補強構造となる。
もちろん、手すりTにおける手すり支柱2の配置方向によっては、長方形の長辺である角筒体の対向する2つの内面に沿って2枚の金属製平板状帯板からなる補強芯材6を配置することは本発明を逸脱するものではない。
【0015】
図5(a),(b)は、手すり支柱2を構成する金属製角筒体として断面正方形の角筒体を用いた例である。図5に示すように、手すりTの両側に2枚の金属製平板状帯板からなる補強芯材6が配置されるように、断面正方形の角筒体の対向する2つの内面に沿って、2枚の当該補強芯材6を配置している。
【0016】
図4,5では、金属製補強芯材6として平板状の帯板を用いている。平板状の帯板は形状が単純なため、金属製補強芯材6を簡単に低コストで製造することができる。
本発明に用いる金属製補強芯材6は、手すり支柱2の強度を高めるためのものであるから、それ自身高強度の材質からなるものである必要がある。通常は表面処理が施された構造用鋼材を用いることが好ましい。
また、金属製補強芯材6の材質として、ステンレスやZn−Al−Mg系溶融めっき鋼板、Zn−Al系溶融めっき鋼板を使用することにより、手すり支柱2の耐候性が増し、手すりTの耐久性を高めることができる。
【0017】
金属製補強芯材6の厚さは、手すり支柱2に要求される強度、手すり支柱2の材質、強度、金属製補強芯材6の材質、強度などに応じて決める。また、金属製補強芯材6の幅は、手すり支柱2を構成する断面矩形状の金属製角筒体への挿入が容易に行える範囲で、それらが沿って配置される断面矩形状の金属製角筒体の内面の幅に近いことが望ましい。通常、金属製補強芯材6の高さは、手すり支柱2の高さの1/2以上とする。好ましくは手すり支柱2の高さの3/4以上とする。
【0018】
本発明では、手すり支柱2を構成する断面矩形状の金属製角筒体の対向する2つの内面において、手すり支柱2と金属製補強芯材6とがずれることなく一体となることにより、高い強度が発現する。そのために、図3〜5に示すように、手すり支柱2と金属製補強芯材6とを、それらの長手方向に沿ってねじなどの締結材7を用いて固定する。
ねじなどの締結材による固定を容易にするために、金属製補強芯材6、あるいは金属製補強芯材6と手すり支柱2の両者にねじなどの締結材用の下孔8を予め窄設しておくとよい。ねじやリベット、ワンサイドボルトなどを用いることにより、手すり支柱2の外側から容易に固定することができる。
【0019】
図6は、本発明の補強構造を備えた手すり支柱を作製する方法を示す概念図である。まず、アンカーボルト装着用の孔10を設けたベースプレート9を用意し、このベースプレート9に所定の幅をもって金属製補強芯材6の下端を溶接する。次いで、ベースプレート9に立設された金属製補強芯材6の上から、断面矩形状の金属製角筒体からなる手すり支柱2を装着する。その後、手すり支柱2の外側からねじなどの締結材7を用いて金属製補強芯材6と断面矩形状の金属製角筒体を固定する。このようにして本発明の補強構造を有する手すり支柱2を作製することができる。
【0020】
これらの手すり支柱2に、図1に示すような従来の上下横枠3,4を連結するとともに、上下横枠3,4間に手すり子5を一定間隔おきに設けて所定の長さの手すりTを作製し、ベースプレート9をコンクリート製の手すり基台1にアンカーボルトなどで組み付けることにより戸建住宅や集合住宅のバルコニーや廊下などに手すりTを設置することができる。
もちろん、手すりTは、手すり子5の代わりにパネル構造体を用いたものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】集合住宅の外廊下などに設置された手すりTを外側から見た正面図
【図2】従来の補強芯材を用いた手すり支柱の補強構造を示す横断面図
【図3】本発明の補強芯材を用いた手すり支柱の補強構造を示す横断面図
【図4】本発明の補強芯材を用いた手すり支柱の補強構造の一例を示す断面図
【図5】本発明の補強芯材を用いた手すり支柱の補強構造の他の例を示す断面図
【図6】本発明の補強構造を有する手すり支柱の作製方法を示す概念図
【符号の説明】
【0022】
1・・・手すり基台 2・・・手すり支柱 3・・・上横枠
4・・・下横枠 5・・・手すり子 6・・・金属製補強芯材
7・・・締結材 8・・・締結材用下孔 9・・・ベースプレート
10・・・アンカーボルト用下孔 T・・・手すり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面矩形状の金属製角筒体からなる手すり支柱と、当該手すり支柱の対向する2つの内面に沿って配置された2枚の金属製補強芯材からなり、当該金属製補強芯材と前記手すり支柱とが長手方向複数個所で締結材により固定されていることを特徴とする手すり支柱の補強構造。
【請求項2】
前記金属製補強芯材が、手すり支柱断面内で力の作用方向に直交する2辺の内側に配置されている請求項1に記載の手すり支柱の補強構造。
【請求項3】
前記金属製補強芯材が、平板状の帯板である請求項1又は2に記載の手すり支柱の補強構造。
【請求項4】
前記金属製補強芯材が、平板状の帯板の両側を折り曲げた溝形形状である請求項1又は2に記載の手すり支柱の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−100998(P2010−100998A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270680(P2008−270680)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【出願人】(508315785)宇田川製作所株式会社 (1)
【Fターム(参考)】