説明

手動ステージ

【課題】
使い勝手が良く汎用性の高い手動ステージを提供する。
【解決手段】
手動ステージ1は、摺動部品4及び固定部品5が透明な樹脂であり、着色されることも可能であり、摺動部品4に設けられるバーニア目盛10a、及び固定部品5に設けられるバーニア目盛10bは、摺動部品4及び固定部品5のそれぞれの樹脂部品の側面に直接印字され、摺動部品4と固定部品5との側面に印字されるバーニア目盛10a,10bの数字は、裏面から読み取れるように裏返しに印字され、操作者は、透明な摺動部品4及び固定部品5を通してバーニア目盛10a,10bの数字を読取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動ステージに係り、特に、精密機器が取付けられる摺動部品と、土台に接続される固定部品とが摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、固定部品と摺動部品とにそれぞれ取付けられた表示板に印字された目盛により示される摺動部品の固定部品に対する相対的な移動量を目視により読み取り、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
CCDカメラやセンサなどの電機・電子機器、レンズや顕微鏡等の光学機器、LEDなどの照明機器といった精密機器は、取り付けに際し、位置決めやピント合わせのために位置調整しなければならない。また、取り付け後において、さらにその位置を微調整する場合も発生する。
【0003】
これらの精密機器は、一般的に「ステージ」と称される機械要素上に設置されて位置調整される。手動ステージとは、これらのステージのうち、ハンドル操作により部品を手動で摺動させるステージをいう。この手動ステージは、機器が取付けられる摺動部品と、土台に接続される固定部品とが摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を固定部品に対して手動で摺動させるのが一般的である。この手動ステージには、その摺動機構により、例えば、アリ溝式ステージ、送りネジ式ステージ、リニアボール式ステージ、クロスローラ式ステージ、簡易ボール式ステージ、アリ溝スライドレール式ステージなどが含まれる。また、それぞれのステージには、使用目的に応じて多様な形式があり、例えば、アリ溝式ステージの場合には、1方向に摺動するX軸アリ溝式ステージ、略直交する2方向に摺動するXY軸アリ溝式ステージ、上下方向に摺動するZ軸アリ溝ステージ、回転して摺動する回転ステージなどがある。
【0004】
図20に、従来の一般的なX軸アリ溝式ステージを示す。X軸アリ溝式ステージ100は、台形状に窪んだアリ溝102を有する固定部品105に対し、台形状に突出したアリ101を有する摺動部品104が移動可能に嵌合される。この固定部品105は、締結具(図示せず)が挿入される土台固定用締結孔106を有するベース108を介して土台(図示せず)に固定される。また、摺動部品104は、精密機器取付け用孔107に挿入される締付具(図示せず)を介して精密機器(図示せず)に接続される。摺動部品104は、ハンドル109を回転させることにより図中の矢印の方向に移動する。そして、この移動量は、対となるバーニア目盛110a,110bにより測定される。これは、X軸アリ溝式ステージ100の内部に、ラック及びピニオンギア(図示せず)、或いは送りねじ(図示せず)などの駆動機構が組み込まれていることによる。これらの駆動機構により、ハンドル109の回転が、摺動部品104の水平方向への移動に変換される。
【0005】
図21に、従来の一般的なXY軸アリ溝式ステージを示す。このXY軸アリ溝式ステージ200は、図中の左右方向である矢印の方向に摺動する上部ユニット202と,上部ユニット202と略直交する方向に摺動する下部ユニット203とが、締結具201及び接着剤により接着面206で接合されている。なお、図21では、上部ユニット202の摺動ユニット204を図の左側にスライドさせた状態を示す。上部ユニット202の固定ユニット205には、締結具201用の接続用孔207aが設けられ、下部ユニット203の摺動ユニット204には、締結具201用の接続用孔207bが設けられている。そして、略直交する2つのハンドル209a及び209bによりXY方向に摺動させる。
【0006】
図22に、従来の一般的な送りネジ式ステージを示す。図22(a)は、送りネジ式ステージ300の側面図であり、図22(b)は、図22(a)のD−D方向からみた平面図であり、図22(c)は、図22(a)のE−E方向からみた平面図である。送りネジ式ステージ300は、アリ301を有する摺動部品304、アリ溝302を有する固定部品305、摺動機構である雄ネジ棒307及び雌ネジ筒306、ハンドル309、及びストッパ316から構成される。そして、摺動部品304側には目盛310bが取り付き、固定部品305側には、目盛310aが取り付く。この雄ネジ棒307を雌ネジ筒306に係合させ、ハンドル309を回転させることで摺動部品304が固定部品305に対して摺動する。ストッパ316は、任意の位置で摺動部品304を固定部品305に対して固定する。
【0007】
図23に、従来の一般的な簡易ボール式ステージを示す。図23(a)は、簡易ボール式ステージ400の摺動部品404を固定部品405側からみた斜視図であり、図23(b)は、簡易ボール式ステージ400の固定部品405を摺動部品404側からみた斜視図である。簡易ボール式ステージ400は、溝部401を有する摺動部品404、溝部402を有する固定部品405、ハンドル409、及びワイヤ406、スプリング407などから構成される送り手段408から構成される。そして、摺動部品404側には目盛410bが取り付き、固定部品405側には、目盛410aが取り付く。摺動部品404の溝部401及び固定部品405側の溝部402は、互いに対向する略半円筒状の溝であり、組み合わされると略円筒状となる。この略円筒状の溝内に複数のボール403が嵌め込まれて配置される。このボール403の回転により摺動部品404と固定部品405が滑らかにスライドする。この摺動部品404を固定部品405に対して摺動させるために、スプリング407が組み込まれたワイヤ406がリング状に張られている。そして、ワイヤ406の一部がハンドル409に巻き取られ、ハンドル409を回転させることでワイヤ406が移動し、ワイヤ406が接続された摺動部品404が固定部品405に対して摺動する。
【0008】
図24に、従来の一般的なアリ溝スライドレール式ステージを示す。図24(a)は、アリ溝スライドレール式ステージ500の平面図であり、図24(b)は、図24(a)のF−F断面を示す。アリ溝スライドレール式ステージ500は、アリ溝502を有する摺動部品504、アリ501を有する固定部品505、ハンドル509、及び摺動部品504に取付けられた脚部508から構成される。そして、摺動部品504側には目盛510bが取り付き、固定部品505側には、目盛510aが取り付く。また、固定部品505には土台固定用締結孔506が設けられ、摺動部品504には精密機器取付け用孔507が設けられる。この摺動部品504と固定部品505とは、摺動部品504に取付けられた複数の脚部508により接触する。すなわち、この脚部508が固定部品505のレール状のアリ501に接触しながらスライドする。ハンドル509は先端にネジが切られ、このネジを緩めると摺動部品504を固定部品505に対して摺動させることができ、締め込むと摺動部品504を固定部品505に対して固定できる。
【0009】
リニアボール式ステージは、固定部品と摺動部品とが擬円筒の摺動面であるゴシックアーク溝を形成し、ボールがそのゴシックアーク溝に挟まれるように配置されることで固定部品に対して摺動部品を摺動させる機構である。
【0010】
クロスローラ式ステージは、固定部品と摺動部品とにV字型の溝であるローラレースが形成され、円筒コロがこの2本のローラレースに挟まれた空間に互い違いに配置されることで固定部品に対して摺動部品を摺動させる機構である。
【0011】
従来の手動ステージのうち、アリ溝式ステージでは、摺動部品及び固定部品はアルミニウム製であり、そのアルミニウムの表面に酸化皮膜を形成させる黒色のアルマイト処理が施される。また、手動ステージに取付けられるハンドルは真鍮製であり、メッキ処理が施されている。また、摺動機構のうちラックは真鍮に防錆処理としてメッキが施されたものが用いられ、ピニオンギアは快削鋼(SUM)に防錆処理としてメッキが施されたものが用いられている。
【0012】
従来の手動ステージのうち、リニアボール式ステージやクロスローラ式ステージでも、摺動部品及び固定部品には、例えば、アルミニウムにアルマイト処理したもの、真鍮に黒フッ素樹脂塗装したもの、ステンレスに無電解ニッケルメッキしたものなどが用いられている。このように、従来の手動ステージには、アルミニウム、真鍮、鋼、ステンレスなどの素材が選択されて用いられている。
【0013】
一方、特許文献1には、XY軸アリ溝式ステージである汎用アリ溝摺動ユニットが開示されている。ここでは、複数のアリ溝摺動ユニットを、締結具により着脱自在である連結部品により組合せることで、精密機器を平面状の2軸方向に位置調整でき、また、複数のアリ溝摺動ユニットが着脱自在であることで、例えば、ハンドルの方向などを容易に変更できるアリ溝摺動ユニットが記載されている。
【0014】
また、特許文献2には、XY軸アリ溝式ステージである複合アリ溝摺動ユニットが開示されている。ここでは、更に複数のアリ溝摺動ユニットを、連結部品を用いずに連結させる技術が記載されている。また、複数のアリ溝摺動ユニットのそれぞれのハンドルの回転軸を共有させ、2つのハンドル操作を1箇所で行うことができるアリ溝摺動ユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3923997号
【特許文献2】特開2008−8446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
機器を取付け土台に固定した手動ステージを精密機器の位置決めやピント合わせのために位置調整する際には、操作者は、手動ステージのハンドルが取り付けられた側から操作する。すなわち、ハンドルを回転させながらハンドル側の固定部品と摺動部品とにそれぞれ取付けられた表示板に印字された目盛を読みながら位置決めやピント合わせを行う。しかし、手動ステージの設置の仕方によっては、操作者は、手動ステージのハンドルが取り付けられた側と反対側から操作をしなければならない場合があり、目盛を読み込みながら位置決めやピント合わせを行えず、使い勝手が悪く汎用性が低いという問題があった。
【0017】
また、従来の手動ステージは、例えば、ラック及びピニオンギア、或いは雄ネジ棒及び雌ネジ筒などの内部の摺動機構が手動ステージの外部から目視で確認できなかった。このため、作業中に塵埃などが摺動機構に混入すると部品の表面に粘着するいわゆる「かじり」などが発生しても、分解しなければその原因が分からず使い勝手が悪かった。
【0018】
また、従来の手動ステージは、表面の色が例えば、黒色などの単一の色で統一されていたため、複数の手動ステージを使用する際に、個々の手動ステージを識別することが難しく使い勝手が悪かった。
【0019】
本願の目的は、かかる課題を解決し、使い勝手が良く汎用性の高い手動ステージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明に係る手動ステージは、精密機器が取付けられる摺動部品と、土台に固定される固定部品とが摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、摺動部品と固定部品とにそれぞれ取付けられた表示板に印字された目盛により示される固定部品に対する摺動部品の移動量を目視で読み取り、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージであって、摺動部品及び固定部品は透明な樹脂からなり、目盛は摺動部品及び固定部品のそれぞれの側面に直接印字されることを特徴とする。
【0021】
上記構成により、手動ステージは、摺動部品及び固定部品が透明な樹脂からなることで、目盛をハンドルが取り付いた側と反対の裏側からも目視できる。これにより、手動ステージの設置の仕方によっては、操作者が手動ステージのハンドルが取り付けられた側と反対側から操作をしなければならない場合であっても、ハンドル操作をしながら容易に目盛を読み込み、機器の位置決めやピント合わせのための位置調整ができる。これにより、使い勝手を改善して汎用性の高い手動ステージとすることができる。また、手動ステージは、摺動部品及び固定部品が透明な樹脂からなることで、内部の摺動機構などが手動ステージの外部から目視でき、ラック及びピニオンギア、或いは雄ネジ棒及び雌ネジ筒などの摺動の動作状態を目視で確認することができる。また、従来の手動ステージでは、摺動部品及び固定部品に表示板をピンで固定して目盛を表示していたが、これらの表示板及びピンを削減することができる。さらに、固定部品及び摺動部品を樹脂製とすることで軽量化できる。
【0022】
また、手動ステージは、摺動部品と固定部品との側面に印字される目盛の数字が、裏面から読み取れるように裏返しに印字されることが好ましい。これにより、操作者が手動ステージのハンドルが取り付けられた側と反対側から操作をしなければならない場合であっても、ハンドル操作をしながら容易に目盛の数字を読み込んで、機器の位置決めやピント合わせのための位置調整をすることができる。
【0023】
また、手動ステージは、摺動部品と固定部品とに用いられる透明な樹脂が、黒色を含む色に着色された樹脂であることが好ましい。これにより、手動ステージの使用箇所の重要度、危険度、或いは使用目的などの用途により、透明な樹脂に加えられた赤色、黄色、緑色、或いは、従来の手動ステージの黒色といった色により識別することができ、使い勝手を改善することができる。
【0024】
また、手動ステージは、摺動機構が、黒色を含む色に着色された樹脂からなり、手動ステージの外部から目視可能なことが好ましい。これにより、着色された摺動機構が透明な摺動部品及び固定部品から透けて見ることができ、摺動機構の動作状態を目視で確認することができる。また、手動ステージのほぼ大部分が透明な樹脂により構成されることでさらに軽量化できる。
【0025】
また、手動ステージは、摺動機構が透明な樹脂からなることが好ましい。これにより、摺動部品や固定部品に加えて摺動機構も透明な樹脂からなり、摺動部品及び固定部品に印字された目盛がさらに見易くなる。また、手動ステージのほぼ大部分が透明な樹脂により構成されることでさらに軽量化できる。
【0026】
また、手動ステージは,摺動機構が、摺動部品のアリに設けられたラックと、固定部品に設けられ、その一端がハンドルに連結されたピニオンギアから構成されるアリ溝式の摺動機構であり、ハンドルが、固定部品の両側の2箇所に設けられ、いずれのハンドルもピニオンギアに連結されることが好ましい。これにより、手動ステージがアリ溝式の摺動機構を採用している場合に、手動ステージの両側からハンドル操作をすることができ、使い勝手を改善することができる。
【0027】
また、手動ステージは,ハンドルが、透明な樹脂からなることが好ましい。これにより、手動ステージがアリ溝式の摺動機構を採用している場合に、手動ステージをさらに軽量化し操作性を向上させることができる。
【0028】
また、手動ステージは、摺動機構が、固定部品に設けられてハンドルと連結された雄ネジ棒と、摺動部品に設けられた雌ネジ筒から構成される送りネジ式の摺動機構であり、ハンドルが、透明な樹脂からなることが好ましい。これにより、手動ステージが送りネジ式の摺動機構を採用している場合に、手動ステージをさらに軽量化し操作性を向上させることができる。
【0029】
また、手動ステージは、摺動機構が、固定部品に設けられた溝部と摺動部品に設けられた溝部との間に挟まれて配置された複数のボールと、ハンドルを回転させることで固定部品に対して摺動部品をワイヤにより摺動させる送り手段と、から構成される簡易ボール式の摺動機構であり、ハンドルが、透明な樹脂からなることが好ましい。これにより、手動ステージが簡易ボール式の摺動機構を採用している場合に、手動ステージをさらに軽量化し操作性を向上させることができる。
【0030】
また、手動ステージは、摺動機構が、摺動部品のアリ溝内に設けられ、固定部品のアリ面をレールとしてスライドする複数の脚から構成されるアリ溝スライドレール式の摺動機構であり、固定部品に対して摺動部品を摺動させて任意の位置で固定するハンドルが、透明な樹脂からなることが好ましい。これにより、手動ステージがアリ溝スライドレール式の摺動機構を採用している場合に、手動ステージをさらに軽量化し操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明に係る手動ステージによれば、使い勝手が良く汎用性の高い手動ステージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る手動ステージの1つの実施形態の概略構成を示す斜視図である。
【図2】アリ溝式の手動ステージの側面図、及び分解した手動ステージの平面図である。
【図3】摺動部品及び固定部品のハンドル側の側面に直接印字されたバーニア目盛を示す側面図である。
【図4】固定部品の両側にハンドルを設けた実施例を示す平面図である。
【図5】本発明の対象となるX軸ステージの平面図及び側面図である。
【図6】本発明の対象となるX軸ステージ(ハンドル延長タイプ)の平面図及び側面図である。
【図7】本発明の対象となるXY軸ステージの平面図及び側面図である。
【図8】本発明の対象となるZ軸ステージの平面図及び側面図である。
【図9】本発明の対象となるX軸ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図10】本発明の対象となるZ軸ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図11】本発明の対象となるX軸ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図12】本発明の対象となるXステージ(アリ溝送りネジタイプ)の平面図、底面図、及び側面図である。
【図13】本発明の対象となるX軸ステージ(アリ溝スリム送りネジタイプ)の平面図、底面図、及び側面図である。
【図14】本発明の対象となるX軸ステージ(アリ溝スリム送りネジタイプ)の平面図、底面図、及び側面図である。
【図15】本発明の対象となる回転ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図16】本発明の対象となるX軸ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図17】本発明の対象となるX軸粗微動ステージの平面図、底面図、及び側面図である。
【図18】本発明の対象となるZ軸支柱取付けステージの平面図及び側面図である。
【図19】本発明の対象となるZ軸支柱取付けステージの平面図及び側面図である。
【図20】従来の一般的なX軸アリ溝式ステージを示す斜視図である。
【図21】従来の一般的なXY軸アリ溝式ステージを示す斜視図である。
【図22】従来の一般的な送りネジ式ステージを示す平面図及び側面図である。
【図23】従来の一般的な簡易ボール式ステージを示す斜視図である。
【図24】従来の一般的なアリ溝スライドレール式ステージを示す平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、図面を用いて本発明に係る手動ステージの実施形態につき、詳細に説明する。本実施形態では、手動ステージの一例としてX軸アリ溝式ステージについて説明するが、それに限らずXY軸アリ溝式ステージ、Z軸アリ溝式ステージ、回転ステージなどにも適用される。また、図22に示す送りネジ式ステージ、図23に示す簡易ボール式ステージ、或いは図24に示すアリ溝スライドレール式ステージにも適用される。さらに、その他の手動ステージ、例えば、リニアボール式ステージ、クロスローラ式ステージなどにも適用可能である。
【0034】
図1に、アリ溝式の手動ステージの1つの実施形態の構成を斜視図で示す。アリ溝式の手動ステージ1は、台形状に窪んだアリ溝3を含む固定部品5に対して台形状に突出したアリ2を含む摺動部品4が摺動可能に嵌合される。この固定部品5は、土台固定用締結孔6を有するベース8を介して土台(図示せず)に固定される。また、摺動部品4は、精密機器取付け用孔7に挿入されるボルト(図示せず)を介して精密機器(図示せず)に接続される。摺動部品4は、ハンドル9を回転させることにより固定部品5に対して図中の矢印の方向に相対的に移動する。
【0035】
図2に、アリ溝式の手動ステージ1の側面図、及び分解した手動ステージ1の平面図を示す。図2(a)は、図1のA方向からみたアリ溝式の手動ステージ1の側面図であり、図2(b)は、図2(a)のB−B方向からみた平面図であり、図2(c)は、図2(a)のC−C方向からみた平面図である。本アリ溝式ステージの摺動機構は、摺動部品4のアリ3にラック取付けピン15により固定されたラック13、及び固定部品5内に挿入されたピニオンギア14から構成される。すなわち、ハンドル9を回転させることでハンドル9に連結されたピニオンギア14を回転させ、ピニオンギア14に係合するラック13を並進移動させる。
【0036】
摺動部品4の側面にはストッパ16が取付けられる。ストッパ16は、固定部品5に取付けられたストッパ押さえ板17の開口部内を摺動部品4の移動と共に移動する。このストッパ16のネジを締め込むことで、摺動部品4はその位置に固定される。また、固定部品5内に挿入されたピニオンギア14は、一端がハンドル9に連結されるが、他端は、与圧調整ネジ12に接触する。この与圧調整ネジ12は、ピニオンギア14を押さえつけることで、ラック13及びピニオンギア14による摺動を接触摩擦により微調整する。すなわち、与圧調整ネジ12を締め込むとハンドル9による回転操作が重くなり、与圧調整ネジ12を緩めるとハンドル9による回転操作が軽くなる。
【0037】
図1及び図2に示すように、摺動部品4及び固定部品5のハンドル9側には、バーニア目盛10が取付けられる。摺動部品4には、バーニア目盛10aが、固定部品5には、バーニア目盛10bが、それぞれ取付けられる。ここで、従来の手動ステージでは、ストッパ16及びストッパ押さえ板17があるために、バーニア目盛10a,10bを摺動部品4及び固定部品5の両側面に取付けることができない。また、従来の手動ステージでは、与圧調整ネジ12があるために、ハンドル9を両側面に取付けることができない。
【0038】
図20に示す従来の一般的なX軸アリ溝式ステージ100によると、図2に示す固定部品5及び摺動部品4は表面をアルマイト処理したアルミニウムからなる。また、図2に示すハンドル9は真鍮製であり、メッキ処理が施されている。また、図2に示す摺動機構のうちラック15は真鍮に防錆処理としてメッキが施されたものが用いられ、ピニオンギア14は快削鋼(SUM)に防錆処理としてメッキが施されたものが用いられている。
【0039】
本実施形態の手動ステージ1は、固定部品5及び摺動部品4は透明な樹脂からなる。ここで、樹脂とは、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂などである。また、「透明な」とは、部品の素材を通じてその部品の裏側にあるものが透けて見える程度の透明度をいい、その素材には透明な素材だけではなく半透明の素材も含まれる。
【0040】
上述した樹脂は、透明であるとともに必要に応じて着色される。例えば、赤色、黄色、緑色に着色した手動ステージ1を用意し、手動ステージ1の取り付け個所の危険度や重要度により使い分けをする。また、特定の手動ステージ1について注意を喚起すべき場合に黄色に着色された手動ステージ1を用いる。また、手動ステージ1の使用目的や使用個所による分類に従ってそれぞれの着色を使い分けることもできる。さらに、従来の手動ステージに用いられる黒色に着色しても良い。
【0041】
本実施形態では、固定部品5に対する摺動部品4の移動量は、固定部品5のハンドル9側の側面に直接印字されるバーニア目盛10bに対し、摺動部品4のハンドル9側の側面に直接印字されるバーニア目盛10aを読取ることにより測定される。図20及び図21に示すように、従来の手動ステージ1では、摺動部品4及び固定部品5に表示板をピンで固定して目盛を表示していたが、本発明では、摺動部品4及び固定部品5樹脂製とすることでそれらの表面に直接印字できる。これにより、これらの表示板及びピンを削減することが可能となる。そして、手動ステージ1の操作者は、ハンドル9の操作をしながら固定部品5に印字されたバーニア目盛10bに対する摺動部品4のバーニア目盛10bの移動量を目視により読み取る。
【0042】
移動量の読み取りは、まず、バーニア目盛10bの「0」の位置をバーニア目盛10aの値を1mm単位で読み、それを1mm位の数値Aとする。次に、バーニア目盛10bをみて、バーニア目盛10aと同一位置にあるバーニア目盛10bの値を読み、それを0.1mm位の数値Bとする。AにBを加えた数値が読み取り数値となる。
【0043】
図3に、摺動部品4及び固定部品5のハンドル9側の側面に直接印字されたバーニア目盛10a及び10bを示す。これらのバーニア目盛10a及び10bは、摺動部品4及び固定部品5が透明な樹脂製であることから、裏面からも目視することが可能である。従って、手動ステージ1の設置の仕方によっては、操作者が手動ステージ1のハンドル9が取り付けられた側と反対側から操作をしなければならない場合であっても、ハンドル操作をしながら容易にバーニア目盛10a及び10bを読み込んで、精密機器の位置決めやピント合わせのための位置調整をすることができる。
【0044】
さらに、摺動部品4及び固定部品5の側面に印字されるバーニア目盛10a,10bの数字は、裏面から読み取れるように裏返しに印字されている。これにより、操作者が手動ステージ1のハンドル9が取り付けられた側と反対側から操作をしなければならない場合であっても、ハンドル操作をしながら容易にバーニア目盛10a及び10bの数字を読み込んで、機器の位置決めやピント合わせのための位置調整をすることができる。
【0045】
図4に、固定部品の両側にハンドルを設けた実施例を示す。この図4は、図2(a)のC−C切断線からみた図2(c)に対応する平面図である。ハンドル9a,9bは、固定部品5の両側の2箇所に設けられる。すなわち、従来の手動ステージに設けられていた与圧調整ネジ12の代わりにハンドル9bとし、ハンドル9aに連結されたピニオンギア14をさらにハンドル9bに連結させる。この構成により、いずれのハンドル9a,9bも摺動機構のピニオンギア14に連結され、主動ステージ1のいずれの側からも摺動部品4に対して固定部品5をハンドル操作により摺動させることが可能となる。
【0046】
他の実施例では、摺動機構であるピニオンギア14及びラック15は、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの樹脂からなり着色されることで、手動ステージ1の外部から目視可能となる。すなわち、主動ステージ1が、内部の機構が目視可能な、いわゆるスケルトンとなる。これにより、摺動機構であるピニオンギア14及びラック15の動作状態を目視で確認することができる。また、手動ステージ1のほぼ大部分が透明な樹脂により構成されて軽量化が達成される。
【0047】
また、他の実施例では、摺動機構であるピニオンギア14及びラック15は、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂などの透明な樹脂からなる。これにより、摺動部品や固定部品に加えて摺動機構も透明な樹脂からなり、摺動部品及び固定部品に印字された目盛がさらに見易くなる。また、手動ステージのほぼ大部分が透明な樹脂により構成されることで更に軽量化できる。
【0048】
また、他の実施例では、摺動部品4を手動で摺動させるハンドル9は、透明な樹脂からなる。真鍮製のハンドル9を軽量な樹脂製とすることで、手動ステージ1を更に軽量化し操作性を向上させることができる。
【0049】
図5〜図19には、本発明の対象となるアリ溝式の手動ステージの一部を例示する。これらの図は、平面図、底面図、側面図などにより記載されるが、各図面の表示は省略する。これらの従来の手動ステージは、本発明の請求項1〜7の特徴事項を備えることで、本発明に係る手動ステージ1とすることができるが、これらの例に限らす、従来の全てのアリ溝式の手動ステージである、例えば、X軸アリ溝式ステージ、XY軸アリ溝式ステージ、Z軸アリ溝式ステージ、回転ステージなどに適用される。
【0050】
また、本発明に係る手動ステージ1は、上述したアリ溝式の手動ステージ1に限らず、図22に示す送りネジ式ステージ300についても同様に適用可能である。例えば、送りネジ式ステージ300の摺動機構は、雌ネジ筒306及び雄ネジ棒307により構成されるが、その他の摺動部品304、固定部品305、ハンドル309、目盛310a,310bなどについては、上述したX軸アリ溝式ステージ100と同様である。
【0051】
図23に示す簡易ボール式ステージ400についても同様に適用可能である。例えば、簡易ボール式ステージ400の摺動機構は、ボール403、及びワイヤ406、スプリング407などの送り手段408により構成されるが、その他の摺動部品404、固定部品405、ハンドル409、目盛410a,410bなどについては、上述したX軸アリ溝式ステージ100と同様である。
【0052】
図24に示すアリ溝スライドレール式ステージ500についても同様に適用可能である。例えば、アリ溝スライドレール式ステージ500の摺動機構は、脚部508から構成されるが、その他の摺動部品504、固定部品505、ハンドル509、目盛510a,510bなどについては、上述したX軸アリ溝式ステージ100と同様である。
【0053】
さらに、他の摺動機構を備えた、例えば、リニアボール式ステージ、クロスローラ式ステージなどでも、本発明の請求項1〜7の特徴事項を備えることで、本発明に係る手動ステージ1とすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 手動ステージ、2,101,301,501 アリ、3,102、302,502 アリ溝、4,104,304,404,504 摺動部品、5,105,205,305,405,505 固定部品、6,106,506 土台固定用締結孔、7,107、507 精密機器取付け用孔、8,108 ベース、9a,9b,109,209a,209b,309,409,509 ハンドル、10a,10b,110a,110b,310a,310b,410a,410b,510a,510b (バーニア)目盛、12 与圧調整ネジ、13 ラック、14 ピニオンギア、15 ラック取付けピン、16,316 ストッパ、17 ストッパ押さえ板、100 X軸アリ溝式ステージ、200 XY軸アリ溝式ステージ、201 締結具、202 上部ユニット、203 下部ユニット、204 摺動ユニット、206 接着面、207a,207b 接続用孔、300 送りネジ式ステージ、306 雌ネジ筒、307 雄ネジ棒、400 簡易ボール式ステージ、401 摺動部品側溝部、402 固定部品側溝部、403 ボール、406 ワイヤ、407 スプリング、408 送り手段、500 アリ溝スライドレール式ステージ、508 脚部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精密機器が取付けられる摺動部品と、土台に接続される固定部品とが摺動機構を介して連結され、ハンドル操作により摺動部品を摺動させ、摺動部品と固定部品とにそれぞれ取付けられた表示板に印字された目盛により示される固定部品に対する摺動部品の移動量を目視で読み取り、取り付けられた精密機器の位置調整を行う手動ステージであって、
摺動部品及び固定部品は透明な樹脂からなり、目盛は摺動部品及び固定部品のそれぞれの側面に直接印字されることを特徴とする手動ステージ。
【請求項2】
請求項1に記載の手動ステージであって、摺動部品と固定部品との側面に印字される目盛の数字は、裏面から読み取れるように裏返しに印字されることを特徴とする手動ステージ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の手動ステージであって、摺動部品と固定部品とに用いられる透明な樹脂は、黒色を含む色に着色された樹脂であることを特徴とする手動ステージ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の手動ステージであって、摺動機構は、黒色を含む色に着色された樹脂からなり、手動ステージの外部から目視可能なことを特徴とする手動ステージ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1に記載の手動ステージであって、摺動機構は、透明な樹脂からなることを特徴とする手動ステージ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の手動ステージであって、摺動機構は、摺動部品のアリに設けられたラックと、固定部品に設けられ、その一端がハンドルに連結されたピニオンギアから構成されるアリ溝式の摺動機構であり、ハンドルは、固定部品の両側の2箇所に設けられ、いずれのハンドルもピニオンギアに連結されることを特徴とする手動ステージ。
【請求項7】
請求項6に記載の手動ステージであって、ハンドルは、透明な樹脂からなることを特徴とする手動ステージ。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の手動ステージであって、摺動機構は、固定部品に設けられてハンドルと連結された雄ネジ棒と、摺動部品に設けられた雌ネジ筒から構成される送りネジ式の摺動機構であり、ハンドルは、透明な樹脂からなることを特徴とする手動ステージ。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の手動ステージであって、摺動機構は、固定部品に設けられた溝部と摺動部品に設けられた溝部との間に挟まれて配置された複数のボールと、ハンドルを回転させることで固定部品に対して摺動部品をワイヤにより摺動させる送り手段と、から構成される簡易ボール式の摺動機構であり、ハンドルは、透明な樹脂からなることを特徴とする手動ステージ。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか1に記載の手動ステージであって、摺動機構は、摺動部品のアリ溝内に設けられ、固定部品のアリ面をレールとしてスライドする複数の脚から構成されるアリ溝スライドレール式の摺動機構であり、固定部品に対して摺動部品を摺動させて任意の位置で固定するハンドルは、透明な樹脂からなることを特徴とする手動ステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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