説明

手動利器の柄

【解決手段】把持部の外側で露出する指当部26の内側には、指当部26を把持部の外側から押さえた際に指当部26が指当部26の内側に変形し得るように変形許容室27を設けている。把持部の内側で開放された開口13を塞ぐ蓋6を設けている。変形許容室27は指当部26の内面と蓋6の内面との間で形成されている。変形許容室27の内面には指当部26の内面に対向する突部19を設けている。指当部26の外面は把持部の外側へ膨らんで突出している。
【効果】指が柄に馴染み易くなり、フィット感を向上させて使い勝手を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカッターなどの手動利器における柄に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示されたカッターにおいて、柄部本体の前側には軟質樹脂からなる指当部が一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4171682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、柄を把持して指当部に指を当てがった際に指が柄に馴染んで使い勝手を良くするフィット感をある程度得ることができる。しかし、指当部の内面の全体が柄部本体の外面に直接接触した状態で成形されるため、厚みの薄い指当部となって指当部を押さえた際にほとんど変形せず、しかも指当部の材質によって決定される指当部の表面状態だけが指への感触を左右し、そのフィット感の良し悪しは指当部の材質に影響されていた。
【0005】
この発明は、柄を把持した際にフィット感をより一層向上させて使い勝手を良くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜4)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる手動利器の柄1において、把持部2の外側で露出する指当部26の内側には、指当部26を把持部2の外側から押さえた際に、指当部26の状態を変化し得るように変態許容室27、例えば、指当部26が指当部26の内側に変形し得るように変形許容室27を設けている。請求項1の発明では、柄1を把持して指当部26に指を当てがった際に、指当部26の状態が変態許容室27により変化、例えば、指当部26が変形許容室27により変形するので、指が柄1に馴染んでフィット感を良くすることができる。また、指当部26を弾性体により成形した場合には指当部26がその弾性により非押圧状態に復帰するので、頻繁に使用しても同じ状態の感触を得てより一層フィット感を良くすることもできる。通常、変形許容室27内には空気が充満しているが、指当部26の変形を許容することができれば、充填材として、空気以外の気体や気体以外の液体または固体を変形許容室27内に充填させてもよい。その変形許容室27内で生じる充填材の圧力により指当部26が非押圧状態に復帰するので、頻繁に使用しても同じ状態の感触を得てより一層フィット感を良くすることもできる。
【0007】
請求項2の発明にかかる手動利器の柄1において、把持部2の外側で露出する指当部26の内側には、指当部26を把持部2の外側から押さえた際に、指当部26の状態を変化し得るように変態許容室27、例えば、指当部26が指当部26の内側に変形し得るように変形許容室27を設けるとともに、把持部2の内側で開放された開口13のうち少なくとも一部を塞ぐ蓋6を設け、この変態許容室27例えば変形許容室27は指当部26の内面と蓋6の内面との間で形成されている。請求項2の発明では、柄1を把持して指当部26に指を当てがった際に、指当部26の状態が変態許容室27により変化、例えば、指当部26が変形許容室27により変形するので、指が柄1に馴染んでフィット感を良くすることができるばかりでなく、把持部2の内側で開放された開口13を塞ぐ蓋6を設けたので、指当部26の内側に変態許容室27例えば変形許容室27を容易に成形することができるとともに、指当部26の内面が蓋6の内面に当接して指当部26の状態変化例えば変形を適度に抑制し、より一層フィット感を良くすることもできる。また、開口13と蓋6との間に隙間を生じさせた場合には変態許容室27例えば変形許容室27の空気抜けとなり、より一層フィット感を良くすることもできる。
【0008】
請求項3の発明にかかる手動利器の柄1において、把持部2の外側で露出する指当部26の内側には、指当部26を把持部2の外側から押さえた際に、指当部26の状態を変化し得るように変態許容室27、例えば、指当部26が指当部26の内側に変形し得るように変形許容室27を設け、この変態許容室27例えば変形許容室27の内面には指当部26の内面に対向する突部19を設けている。請求項3の発明では、柄1を把持して指当部26に指を当てがった際に、指当部26の状態が変態許容室27により変化、例えば、指当部26が変形許容室27により変形するので、指が柄1に馴染んでフィット感を良くすることができるばかりでなく、指当部26に当てがった指が変態許容室27例えば変形許容室27内の突部19に引掛かったり、指当部26が状態変化例えば変形した際に指当部26の内面が突部19に当接してその突部19の感触を指当部26を介して確かめることもでき、より一層フィット感を良くすることもできる。
【0009】
請求項4の発明にかかる手動利器の柄1において、把持部2の外側で露出する指当部26の内側には、指当部26を把持部2の外側から押さえた際に、指当部26の状態を変化し得るように変態許容室27、例えば、指当部26が指当部26の内側に変形し得るように変形許容室27を設け、この指当部26の外面は把持部2の外側へ膨らんで突出している。請求項4の発明では、柄1を把持して指当部26に指を当てがった際に、指当部26の状態が変態許容室27により変化、例えば、指当部26が変形許容室27により変形するので、指が柄1に馴染んでフィット感を良くすることができるばかりでなく、把持部2の外側へ膨らんで突出する指当部26の外面に指を当てがった際に指が柄1に馴染み易くなり、より一層フィット感を良くすることもできる。また、変態許容室27例えば変形許容室27をより一層確保することができるため、指当部26の変態量例えば変形量を多くすることができ、種々の指の大きさや形状に対しフィットさせ易い。さらに、指当部26の位置を視覚的に確認し易い。
【0010】
請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項5の発明において、前記把持部2には刃体36を支持する刃体支持部3を取着している。請求項5の発明では、請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項の発明の効果をカッターで発揮させることができる。
【0011】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項2の発明を前提とする第6の発明において、前記変態許容室27例えば変形許容室27の内面には指当部26の内面に対向する突部19を設けている。第6の発明では、請求項2の発明の効果に加えて、請求項3の発明の効果も奏する。
【0012】
請求項2の発明を前提とする第7の発明において、前記指当部26の外面は把持部2の外側へ膨らんで突出している。第7の発明では、請求項2の発明の効果に加えて、請求項4の発明の効果も奏する。
【0013】
請求項2の発明を前提とする第8の発明において、前記変態許容室27例えば変形許容室27の内面には指当部26の内面に対向する突部19を設けているとともに、前記指当部26の外面は把持部2の外側へ膨らんで突出している。第8の発明では、請求項2の発明の効果に加えて、請求項3及び請求項4の発明の効果も奏する。
【0014】
請求項2の発明、または第6〜8の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第9の発明において、前記蓋6は開口13に対し着脱可能に支持されている。第9の発明では、より一層フィット感を良くするために蓋6の形態などを異にした各種の蓋6を利用することができる。
【0015】
請求項2の発明、または第6〜9の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第10の発明において、前記開口13は指当部26の内面に対向するように開放されている。第10の発明では、指当部26の内側に変態許容室27例えば変形許容室27をより一層容易に成形することができる。
【0016】
請求項2の発明、または第6〜10の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第11の発明において、前記把持部2は本体部4とその本体部4より柔軟な外壁部8とを有し、前記指当部26はこの外壁部8に形成され、前記開口13及び蓋6はこの本体部4に設けられている。第11の発明では、指当部26を柔軟な外壁部8に設けたので、より一層フィット感を良くすることができるばかりでなく、その外壁部8より硬い本体部4で把持部2の剛性を保つことができるとともに、その本体部4で開口13及び蓋6をより一層容易に成形することができる。
【0017】
請求項2の発明、または第6〜11の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第12の発明において、前記指当部26の内側に設けた変態許容室27例えば変形許容室27の内周縁部27aは、前記開口13の内周縁部13a,13b,13c,13dで囲まれた内側領域に配置されている。第12の発明では、開口13を利用して変態許容室27例えば変形許容室27をより一層容易に成形することができる。
【0018】
請求項1〜5の発明、または第6〜12の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第13の発明において、前記指当部26の外面は凹凸部26aを有している。第13の発明では、その凹凸部26aが指当部26の滑り止め機能を果たすことができる。
【0019】
請求項1〜5の発明、または第6〜13の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第14の発明において、前記把持部2は本体部4とその本体部4より柔軟な外壁部8とを有し、前記指当部26はこの外壁部8に形成されている。第14の発明では、指当部26を柔軟な外壁部8に設けたので、より一層フィット感を良くすることができるばかりでなく、その外壁部8より硬い本体部4で把持部2の剛性を保つことができる。
【0020】
第14の発明を前提とする第15の発明において、前記外壁部8は、指当部26の外面と、指当部26の外面に連続する把持面8aとを有している。第15の発明では、より一層フィット感を良くすることができるばかりでなく、外壁部8で指当部26を一体成形することができる。
【0021】
請求項2の発明、または第6〜15の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第16の発明において、前記把持部2には刃体36を支持する刃体支持部3を取着している。第16の発明では、請求項2の発明及び第6〜15の発明の効果をカッターで発揮させることができる。
【0022】
第16の発明を前提とする第17の発明において、前記刃体36は、刃体支持部3内に収容される状態と刃体支持部3から突出する状態とを取り得る。第17の発明では、刃体36を刃体支持部3に対し出没させることができるカッターで請求項2の発明及び第6〜15の発明の効果を発揮させることができる。
【0023】
第16の発明または第17の発明を前提とする第18の発明において、前記蓋6は、開口13の内周縁部13a,13b,13c,13dに沿って嵌め込まれて開口13のうち少なくとも一部を塞ぐ閉塞部17と、開口13の内周縁部13a,13bに支持される外縁部18とを有し、この外縁部18は前記刃体支持部3と開口13の内周縁部13a,13bとの間で挟持されて位置決めされる。第18の発明では、カッターにおいて、開口13の内周縁部13a,13bに支持された蓋6の外縁部18を刃体支持部3で挟持して蓋6を位置決めすることができるので、刃体支持部3を蓋6の位置決め手段として兼用することができる。
【0024】
第16〜18の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第19の発明において、前記蓋6は刃体支持部3と変態許容室27例えば変形許容室27との間に配置されている。第19の発明では、柄1の把持部2と刃体支持部3との間で変態許容室27例えば変形許容室27及び蓋6をコンパクトに配置することができる。
【0025】
第16〜18の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第20の発明において、前記把持部2と刃体支持部3との間には替え刃体35を収容する保管室33を設け、前記蓋6はこの保管室33に露出している。第20の発明では、柄1の把持部2と刃体支持部3との間で変態許容室27例えば変形許容室27と蓋6と保管室33とをコンパクトに配置することができる。
【0026】
第20の発明を前提とする第21の発明において、前記把持部2と変態許容室27例えば変形許容室27と蓋6と保管室33と刃体支持部3とが順に並設されている。第21の発明では、柄1の把持部2と刃体支持部3との間で変態許容室27例えば変形許容室27と蓋6と保管室33とをコンパクトに配置することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、カッターなどの手動利器において、柄1を把持した際にフィット感をより一層向上させて使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)は手動利器であるカッターを示す正面図であり、(b)は同じく背面図である。
【図2】(a)は上記カッターの柄のみを示す正面図であり、(b)はこの柄において把持部から刃体支持部を分解した状態を示す正面図である。
【図3】(a)はこの柄の把持部において蓋を離脱させた状態を示す正面図であり、(b)はこの蓋の内側を示す背面図であり、(c)は図1(a)のA−A線断面図である。
【図4】(a)は図3(c)の部分拡大図であり、(b)は図1(a)のB−B線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態にかかる手動利器について図面を参照して説明する。
図1(a)(b)に示すようにこの手動利器はカッターである。このカッターにおいて、図2(a)に示す柄1は、図2(b)に示すように、把持部2と刃体支持部3とを有している。この把持部2は、図3(a)(b)に示すように、ABS樹脂などの硬質樹脂により互いに分離されて成形された主体部5と蓋6と尻栓7とからなる本体部4と、硬度ショアA30〜ショアD50の柔軟材(例えば柔軟樹脂やエラストマー樹脂やシリコーン樹脂)によりこの主体部5と一体的に成形された外壁部8とからなる。それらの成形の際には、マイナスドライバー16をインサート成形した主体部5を金型にセットした後、外壁部8を成形する材料をその金型に射出してインサート成形する。
【0030】
前記主体部5は、裏壁部9と、この裏壁部9の上下両側で前後方向へ延びるように形成されて上下方向で相対向する上壁部10及び下壁部11とを有している。この主体部5の表側へ開放された嵌着溝12は、裏壁部9と上壁部10と下壁部11との間で前後方向へ延びて頭端部12aと尻端部12bとでそれぞれ開放されている。この裏壁部9の前側には上下方向で相対向する上端縁部13a及び下端縁部13bと前後方向で相対向する前端縁部13c及び後端縁部13dとで囲まれた開口13が裏壁部9の表裏両側へ貫通するように形成されている。この上壁部10の内側と下壁部11の内側とにはそれぞれ前後方向へ延びる載置段部14が頭端部12aと尻端部12bとにわたり形成されている。この上下両載置段部14には開口13の上端縁部13a及び下端縁部13bに隣接して切欠部14aが形成されている。この開口13の前端縁部13cの前側に隣接して止めねじ孔15が裏壁部9に形成されている。なお、尻端部12b側で下壁部11には金属からなるマイナスドライバー16が突出している。
【0031】
前記蓋6は、上下方向の両側で対辺関係にある上端縁部17a及び下端縁部17bと前後方向の両側で対辺関係にある前端縁部17c及び後端縁部17dとで囲まれた閉塞部17と、上端縁部17a及び下端縁部17bから表側へ立ち上がる突壁部18(外縁部)とを有している。この蓋6の内側には前端縁部17cと後端縁部17dとの間の中央部より後方で突部19が形成されている。この突部19の外周縁は楕円に近い形状をなし、この突部19の表面は曲面であり、その表面において頂部から外周縁との間の外周面は頂部から外周縁に向かうに従い頂部から下るように傾斜し、その頂部を通る楕円の長軸は下側から上側に向かうに従い尻端部12b側へ傾斜している。この蓋6の閉塞部17は前記主体部5の開口13に嵌め込まれるとともに、この蓋6の上下両突壁部18が上下両載置段部14の切欠部14aに嵌め込まれる。その際には、この蓋6の突部19が開口13内に収容されるとともに、蓋6の上端縁部17aと下端縁部17bと前端縁部17cと後端縁部17dとがそれぞれ開口13の上端縁部13aと下端縁部13bと前端縁部13cと後端縁部13dとに沿って略合致する。この蓋6は開口13に対し着脱し得る。
【0032】
前記尻栓7において、後側には刃体折り溝20が形成されているとともに、上側には係止突起21が形成されている。前記主体部5の上壁部10には尻端部12b側で係止凹部22が形成されている。この尻栓7は前記主体部5の嵌着溝12の尻端部12b側に着脱可能に挿着され、その挿着の際に尻栓7の係止突起21が上壁部10の係止凹部22に係入される。
【0033】
この主体部5と一体的に成形された前記外壁部8は、主体部5の裏壁部9の外側に取着された裏壁部23と、主体部5の上壁部10の外側に取着された上壁部24と、主体部5の下壁部11の外側に取着された下壁部25とを有している。この上壁部24の頭端部12a側には指当部24aが形成され、この下壁部25の尻端部12b側には指当部25aが形成されている。この外壁部8の裏壁部23と上壁部24と下壁部25との外側に形成された把持面8aのうち、裏壁部23の外側には前記主体部5の開口13に面して指当部26が形成されている。前記蓋6の突部19はこの指当部26の内面に対向している。この指当部26の外面は、外側へ膨らむように突出して露出し、指当部26の外周で把持面8aに対し滑らかに連続している。この指当部26の外面には多数の凹凸部26aが形成されている。この指当部26の外周縁26bは楕円に近い形状をなし、この指当部26の外面は曲面であり、その外面において頂部から外周縁との間の外周面は頂部から外周縁に向かうに従い頂部から下るように傾斜している。その頂部を通る楕円の長軸は前後方向に沿って延びている。この指当部26の内側には変態許容室としての変形許容室27が指当部26の内面や前記蓋6の内面に対し並んで形成されている。この変形許容室27の内周縁部27aは、ほぼ楕円形状をなし、前記開口13において上端縁部13aと下端縁部13bと前端縁部13cと後端縁部13dとによりほぼ長方形状をなす内周縁部に内接してその内周縁部で囲まれた内側領域に配置されている。なお、図1(b)に示すように、この指当部26に対しその後方で隣接して主体部5の裏壁部9の一部9aが外壁部8の裏壁部23から把持面8a側へ露出している。
【0034】
前記刃体支持部3は、金属により成形され、裏壁部28と、この裏壁部28の上下両側で前後方向へ延びるように形成されて上下方向で相対向する上壁部29及び下壁部30とを有している。この刃体支持部3の表側へ開放された嵌着溝31は、裏壁部28と上壁部29と下壁部30との間で前後方向へ延びて頭端部31aと尻端部31bとでそれぞれ開放されている。この刃体支持部3は、前記把持部2の主体部5の嵌着溝12に嵌め込まれ、その頭端部31a側で嵌着溝12の頭端部12a側から突出している。その際、図3(c)及び図4(a)(b)に示すように、裏壁部28の上下両側が前記主体部5の上下両載置段部14に載置されて前記蓋6の上下両突壁部18を挟持し、上壁部29が前記主体部5の上壁部10に当てがわれるとともに、下壁部30が前記主体部5の下壁部11に当てがわれる。この刃体支持部3の嵌着状態では、裏壁部28の尻端部31b側で前記尻栓7に当てがわれた状態で、裏壁部9の止めねじ孔15に対し止めねじ32により螺着されているとともに、刃体支持部3の上壁部29及び下壁部30の尻端部29a,30aが前記主体部5の上壁部10及び下壁部11の尻端部10a,11aの内側に係止されている。なお、図2(a)に示すように、柄1の最大長さLは約185mm、柄1の最大幅Wは約40mmに設定されている。
【0035】
この刃体支持部3の裏壁部28と前記主体部5の裏壁部9との間には保管室33が形成され、この保管室33の頭端部側は主体部5の裏壁部9の頭端部12a側で閉塞されているが、この保管室33の尻端部側は挿脱口部34で開放されている。この挿脱口部34は前記尻栓7により閉塞される。この保管室33内には受台35aに載置されて保持された一枚または二枚以上の替え刃体35bを収容することができ、その受台35a及び替え刃体35bを保管室33に対し挿脱口部34を通して挿脱することができる。
【0036】
図3(c)及び図4(a)(b)に示すように、把持部2の外壁部8の指当部26と、その指当部26の内側の変形許容室27と、把持部2の主体部5の裏壁部9に形成された開口13に嵌め込まれて保管室33に露出する蓋6と、保管室33及びその保管室33内の替え刃体35と、刃体支持部3の裏壁部28とが順次並設されている。
【0037】
刃体支持部3の嵌着溝31には刃体36がスライダ37に支持されて収容され、その刃体36は刃体支持部3内に収容される状態と刃体支持部3内から突出する状態とを取り得る。
【0038】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 柄1を把持して把持部2の指当部26に指の腹面や側面を当てがった際に指当部26を把持部2の外側から押さえると、把持部2を押さえる力に応じて指当部26が変形許容室27により指当部26の内側に変形する。従って、指が柄1に馴染み易くなり、フィット感を向上させて使い勝手を良くすることができる。
【0039】
(2) 把持部2の内側で開放された開口13を設けたので、指当部26の内側に変形許容室27を容易に成形することができる。また、その開口13を蓋6により塞いだので、指当部26に当てがった指により指当部26を把持部2の外側から押さえた際に、指当部26の内面が蓋6の内面に当接して指当部26の変形を適度に抑制し、フィット感を向上させて使い勝手を良くすることができる。
【0040】
(3) 指当部26に当てがった指により指当部26を把持部2の外側から押さえると、指が指当部26の内面を介して変形許容室27内の突部19に引掛かる場合があるので、フィット感を向上させて使い勝手を良くすることができる。また、指当部26の内面と突部19の頂部との間に空間があるため、指当部26が変形した際に、指当部26の内面が突部19の頂部に当接し、指当部26を介して押した指でその突部19の感触を確かめることもでき、より一層フィット感を良くすることもできる。
【0041】
(4) 指当部26の外面が把持部2の外側へ膨らんで突出しているので、指当部26の外面に指を当てがった際に指が柄1に馴染み易くなり、フィット感を向上させて使い勝手を良くすることができる。また、指当部26の膨らみにより、変形許容室27をより一層確保することができるため、指当部26の変形量を多くすることができ、種々の指の大きさや形状に対しフィットさせ易い。さらに、指当部26の位置を視覚的に確認し易い。
【0042】
(5) 開口13の内周縁部(上端縁部13a及び下端縁部13b)に支持された蓋6の外縁部18を刃体支持部3で挟持して蓋6を位置決めすることができるので、刃体支持部3を蓋6の位置決め手段として兼用することができる。
【0043】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 変態許容室としては、前述した変形許容室ばかりでなく、例えば、硬質材からなる指当部を支持するばねや磁石などを収容してその指当部の変位を許容する変位許容室であってもよい。また、そのばねや磁石により指当部を非押圧状態に復帰させるようにしてもよい。
【0044】
・ 指当部26を把持部2の外側に複数設けてもよい。例えば、把持部2の前側ばかりでなく、把持部2の後側にも設けたり、把持部2の前側と後側とそれらの中間部とにそれぞれ設けたりすることができる。
【0045】
・ 開口13と蓋6との間に生じる隙間を調節して指当部26の変形抵抗を変更可能にし、使用用途や使用者の好みに応じた把持具合になるようにしてもよい。
・ 指当部26を一様な厚みにせず、指当部26の外周部の厚みより頂部の厚みを薄くして、指当部26を変形し易い形態にしてもよい。
【0046】
・ 蓋6の内面に複数の凸部を形成するとともに、指当部26にはそれらの凸部に対向して複数の貫通孔を形成し、指当部26を押さえた際に各凸部を各貫通孔から指当部26の外側へ突出させて指に触れることができるようにしてもよい。
【0047】
・ 蓋6を省略してもよい。
・ 蓋6の内面に複数の突部19を設けてもよい。
・ 指当部26を把持部2の外壁部8の外側へ膨らませて突出させることなく外壁部8の把持面8aとほぼ面一になるように平坦に設けてもよい。
【0048】
・ カッターの柄1以外に、鋏の柄や剃刀の柄や包丁の柄やメス等の医療用ナイフの柄や彫刻刀の柄など、他の手動利器の柄に本発明を応用することができる。
・ 把持部2において、外壁部8及びその指当部26をそれぞれ主体部5に対し予め分離して成形した後に取着してもよい。また、主体部5としては樹脂以外に金属や木などであってもよく、外壁部8及びその指当部26としては皮革や金属製薄板などであってもよい。
【0049】
・ 前記外壁部8の上壁部24及び下壁部25において指当部24a,25aの内側には前記指当部26と同様に変形許容室を設けてもよい。
・ 硬さや形状などの特性が異なる複数の指当部を用意し、用途や使用者の好みに応じて指当部のみを交換可能にしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…柄、2…把持部、3…刃体支持部、6…蓋、13…開口、19…突部、26…指当部、27…変態許容室としての変形許容室、36…刃体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持部の外側で露出する指当部の内側には、指当部を把持部の外側から押さえた際に指当部の状態を変化し得るように変態許容室を設けたことを特徴とする手動利器の柄。
【請求項2】
把持部の外側で露出する指当部の内側には、指当部を把持部の外側から押さえた際に指当部の状態を変化し得るように変態許容室を設けるとともに、把持部の内側で開放された開口のうち少なくとも一部を塞ぐ蓋を設け、この変態許容室は指当部の内面と蓋の内面との間で形成されていることを特徴とする手動利器の柄。
【請求項3】
把持部の外側で露出する指当部の内側には、指当部を把持部の外側から押さえた際に指当部の状態を変化し得るように変態許容室を設け、この変態許容室の内面には指当部の内面に対向する突部を設けていることを特徴とする手動利器の柄。
【請求項4】
把持部の外側で露出する指当部の内側には、指当部を把持部の外側から押さえた際に指当部の状態を変化し得るように変態許容室を設け、この指当部の外面は把持部の外側へ膨らんで突出していることを特徴とする手動利器の柄。
【請求項5】
前記把持部には刃体を支持する刃体支持部を取着したことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一つの請求項に記載の手動利器の柄。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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