説明

手摺支柱用ブラケット及び手摺

【課題】 支柱の取付部の意匠性や耐久性を向上できると共に施工性も良好な手摺支柱用ブラケットの提供。
【解決手段】 L型金具2とカバー3とを備え、L型金具2は、支柱11と躯体12に当接し固着具17,20,22,26で固定してあり、カバー3は、L型金具2の上下端部及び屈曲部6内周側を覆い、固着具17,20,22,26を隠している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺の支柱を躯体に固定するための手摺支柱用ブラケットと、この手摺支柱用ブラケットを用いた手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベランダ等の手摺として特許文献1には、支柱の下端部側面に断面L形のブラケットをボルト・ナットで取付け、ブラケットの後面をベランダの立上がり壁の屋外側面に当接してアンカーボルトで固定したものが記載されている。この手摺では、ブラケットやブラケットを固定しているボルト・ナット等が露出しているため体裁が悪く、またブラケットやボルト・ナット等が風雨にさらされていることで腐食したりしやすい。
特許文献2の図4〜7には、支柱の下端部に断面L字状のブラケット(取付部22)が一体に設けられ、ブラケットには屋外側が開放した箱状のフランジ部28を有し、フランジ部を建物の外壁に当接してネジ23で固定した後、フランジ部の前面開放部と上面及び下面を覆うカバー部材25を取付けたものが記載されている。この手摺では、支柱にブラケットが一体に形成してあるため、支柱の屋内外方向の傾きを調整ないし修正するのに苦労する上、外壁に固定するためのフランジ部が箱状になっていることで、フランジ部を固定するネジの締め付け作業がしづらい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−152705号公報
【特許文献2】特開平11−315625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、支柱の取付部の意匠性や耐久性を向上できると共に施工性も良好な手摺支柱用ブラケットと、当該ブラケットを備えた手摺の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による手摺支柱用ブラケットは、L型金具とカバーとを備え、L型金具は、支柱と躯体に当接し固着具で固定してあり、カバーは、L型金具の上下端部及び屈曲部内周側を覆い、固着具を隠していることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明による手摺支柱用ブラケットは、請求項1記載の発明の構成に加え、L型金具は、支柱への当接片と躯体への当接片の端部に嵌合部をそれぞれ有し、且つ屈曲部の内周側面に沿ってタッピングホールを有し、カバーは、L型金具の嵌合部に嵌合する被嵌合部を有し、被嵌合部を嵌合部に嵌合すると共にタッピングホールにビスで固定してあることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明による手摺支柱用ブラケットは、請求項2記載の発明の構成に加え、カバーは、側壁部と上下蓋部とからなり、側壁部は、両側縁に被嵌合部を有すると共に、被嵌合部よりも内周側にタッピングホールを有し、上下蓋部は、少なくとも一方が側壁部と別体であり、L型金具及び側壁部のタッピングホールにビスで固定してあることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明による手摺は、請求項1〜3の何れかに記載の手摺支柱用ブラケットを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明による手摺支柱用ブラケットは、L型金具と、L型金具の上下端部及び屈曲部内周側を覆うカバーとで構成してあり、L型金具及び固着具がカバーによって隠れるため意匠性が良いとともに、L型金具及び固着具の腐食や破損を防止できる。また、カバーを取付ける前の状態では、L型金具の上方と下方及び内周側が開放しているため、固着具の締め付け時に邪魔になるものがなく、施工性がよい。
【0010】
請求項2記載の発明による手摺支柱用ブラケットは、L型金具の嵌合部にカバーの被嵌合部を嵌合させることでカバーの取付けが簡単に行え、またL型金具の屈曲部の内周側面に沿ってタッピングホールを有しており、タッピングホールを利用してカバーをL型金具にビス固定することで、カバーが外れるのを防止できる。嵌合部が支柱と躯体への当接片の端部に設けてあることで、両当接片の端部もカバーによりカバーできる。L型金具にタッピングホールが屈曲部の内周側面に沿って設けてあり、固着具から一定の距離があるため、タッピングホールに向かってビスが打ちやすい。
【0011】
請求項3記載の発明による手摺支柱用ブラケットは、カバーが側壁部と上下蓋部とからなり、上下蓋部の少なくとも一方が側壁部と別体であることで、カバーの取付けが一層容易になると共にカバーの製作コストを抑えられる。カバーの側壁部は、被嵌合部よりも内周側にタッピングホールを有しており、上下蓋部をL型金具と側壁部のタッピングホールにビスで固定することで、L型金具とカバーの側壁部及び上下蓋部とが一体化され、カバーの分離・脱落を確実に防止できる。
【0012】
請求項4記載の発明による手摺は、請求項1〜3の何れかに記載の手摺支柱用ブラケットを備えていることで、L型金具や固着具が露出しないので意匠性と耐久性を向上でき、尚且つL型金具の支柱への取付けや躯体への固定、カバーの取付け作業を容易に行うことができ、施工性も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図4のA−A断面図である。
【図2】支柱の周辺を拡大して示す屋外側正面図である。
【図3】図4のB−B断面図である。
【図4】本発明の手摺の一実施形態を示す屋外側正面図である。
【図5】支柱を躯体に取付けるときの状態を示す分解斜視図である。
【図6】手摺支柱用ブラケットにカバーを取付けるときの状態を示す分解斜視図である。
【図7】本発明の手摺の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】手摺支柱用ブラケットのカバーの他の例を示す横断面図である。
【図9】手摺支柱用ブラケットのカバーの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜4は、本発明の手摺の一実施形態を示している。本手摺は、集合住宅のベランダ12に設けられる落下防止用の手摺であり、図4に示すように、支柱11を左右方向に一定の間隔で有し、支柱11の上端部に笠木13が架設してあり、支柱11間の下部に下弦材14が架設してあり、笠木13と下弦材14間に縦桟15が左右方向に一定の間隔をおいて多数架設してある。本手摺は、図2,3に示すように、支柱11の下端部の左右側面に手摺支柱用ブラケット1を設け、このブラケット1を介してベランダ12の屋外側面に取付けている。支柱11は、正方形断面のパイプ状で、内部に補強材16を挿入して補強してある。
【0015】
手摺支柱用ブラケット1は、図1,2,6に示すように、L型金具2とカバー3とから成り、カバー3は側壁部3aと上下蓋部3b,3cの三つのパーツに分割して形成してある。
L型金具2は、アルミニウム合金の押出形材で形成したものであり、支柱11の側面に当接する支柱当接片4と、ベランダ12の屋外側面に当接する躯体当接片5を直角に有し、両片4,5を繋ぐ屈曲部6は45°のテーパー状に設けてあり、屈曲部6とベランダ12屋外側面との間に空間が形成されている。支柱当接片4は、図3に示すように、上下2箇所にボルト17の挿通孔18が屋内外方向の長孔状に設けてあり、図1に示すように、座金19を挟んでボルト17とナット20により支柱11の側面に固定されている。支柱当接片4の支柱11と反対側の面と座金19の裏面には、上下方向のギザギザ21が互いに噛合うように設けてある。ボルト17の挿通孔18が屋内外方向の長孔になっていることで、支柱11の屋内外方向の傾きを調整ないし修正することができ、支柱当接片4と座金19の当接面にギザギザ21が設けてあることで、ナット20を締め付けると座金19の滑りを防止して支柱11を傾かないように強固に固定できる。支柱当接片4の先端部の屋外側面には、カバー3の嵌合溝7aが上下方向に設けてある。
躯体当接片5は、上下2箇所にアンカーボルト22の挿通孔23が左右方向の長孔状に設けてあり、ベランダ12の屋外側面に埋め込んで固定したアンカーボルト22を挿通孔23に挿通し、目板24及び座金25を挟んでナット26で固定してある。躯体当接片5の先端部の側面には、カバー3の嵌合溝7bが上下方向に設けてあり、屋外側の角部は45°の傾斜面27で面取りしてある。
屈曲部6には、内周側面に沿ってタッピングホール9aが上下方向に設けてある。
【0016】
L型金具2は、躯体当接片5の厚みを厚く、支柱当接片4の厚みをそれより薄くしてあり、このように厚みを違わせることで合理化を図っている。屈曲部6をテーパーにすることで、タッピングホール9aを設けるスペースを確保するのが容易となり、またタッピングホール9aの位置がベランダ12の屋外側面から離れるので、タッピングホール9aにビス10aを打ちやすい。
【0017】
カバー3の側壁部3aは、アルミ合金の押出形材で形成したものであり、図1に示すように、左右方向にのびる見付壁28と、前後方向にのびる見込壁29と、見付壁28と見込壁29の間に位置する斜め壁30とを有し、斜め壁30は内側に少し凹むように湾曲している。見付壁28と見込壁29の側縁部裏面側には突条8a,8bが上下方向に設けてあり、各突条8a,8bはL型金具2の支柱当接片4と躯体当接片5の先端部に設けた嵌合溝7a,7bにそれぞれ嵌合している。見付壁28と見込壁29の裏面の、突条8a,8bよりも内側に入った位置には、タッピングホール9b,9cが上下方向に設けてある。側壁部3aの上下寸法は、L型金具2の上下寸法と同じになっている。
上下の蓋部3b,3cは、アルミの薄い板をL型金具2とカバー側壁部3aを合わせたものの輪郭に沿う形状に切断して形成されており、L型金具2とカバー側壁部3aの上下端面に当接し、上方と下方からL型金具2とカバー側壁部3aに設けた3箇所のタッピングホール9a,9b,9cにビス10a,10b,10cをそれぞれ打ち込んで固定している。
【0018】
次に本手摺の施工手順を説明する。手摺は、支柱11と笠木13と下弦材14と縦桟15とを連結して組み立て、各支柱11の下端部の左右側面にL型金具2をボルト17とナット20を使用して取付ける。また、ベランダ12の屋外側面の所定の位置にアンカーボルト22を埋め込んで固定する。その後、図5に示すように、L型金具2のアンカーボルト挿通孔23にアンカーボルト22を挿通させて躯体当接片5をベランダ12の屋外側面に当接し、ナット26を締め込んでL型金具2をベランダ12に固定する。このとき、アンカーボルト挿通孔23が左右方向の長孔になっているため、支柱11の左右方向の位置を調整できる。また、ベランダ12の屋外側面の傾斜や凹凸等により支柱11が屋内外方向に傾く場合は、L型金具2を支柱11に取付けているナット20を緩めて支柱11の傾きを修正する。支柱11の傾きが大きく、支柱当接片4の長孔で吸収できない場合は、L型金具2の躯体当接片5とベランダ12の屋外側面の間にスペーサー(図示省略)を挟むことで対応できる。その後、図6に示すように、カバー3の側壁部3aをL型金具2に対して屋外側から押付けると、カバー側壁部3bの両側縁部に形成した突条8a,8bがL型金具2の支柱当接片4と躯体当接片5の先端部に設けた嵌合溝7a,7bにパチンと嵌合し、これにより側壁部3aがL型金具2に対して確実に取付けできる。その後、上下の蓋部3b,3cをL型金具2とカバー側壁部3aの上下端面に当てがい、上下からビス10a,10b,10cをL型金具2と側壁部3aに形成されたタッピングホール9a,9b,9cに打ち込んで固定する。
【0019】
以上に述べたように本手摺は、支柱11下部をベランダ12に固定するL型金具2にカバー3を取付け、L型金具2とこれを支柱11とベランダ12に取付けているボルト等固着具17,20,22,26を隠したので、支柱11の固定部がすっきりした外観となり意匠性が向上するとともに、支柱11の固定部の腐食を防止して耐久性を向上することができる。カバー3を取付ける前の状態では、L型金具2の上方と下方及び内周側が開放しているため、ボルト17やナット20,26の締め付け時に邪魔になるものがなく、施工性がよい。
さらに、L型金具2の支柱当接片4と躯体当接片5の先端部にカバー3の嵌合溝7a,7bを設け、カバーの側壁部3aの両側縁に設けた突条8a,8bを嵌合溝7a,7bに弾発的に嵌合させることで、カバー3の取付けが簡単に行えるとともに、両当接片4,5の先端部まで確実にカバーできる。L型金具2の屈曲部6内周側面に沿ってタッピングホール9aが設けてあり、カバー3をこのタッピングホール9aを利用してビス10aで固定したことで、カバー3が外れるのを防ぐことができ、またタッピングホール9aがボルト等固着具17,20,22,26から離れた位置にあるため、タッピングホール9aに向かってビス10aが打ちやすい。特に本実施形態のように、L型金具2の屈曲部6をテーパー状に設けることで、タッピングホール9aがベランダ12と支柱11から一定の距離をおけるので、ビス10aを打つ作業が一層容易になる。
カバー3を側壁部3aと上下の蓋部3b,3cとに分割して形成したので、カバー3の取付けが一層容易になると共にカバー3の製作コストを抑えられる。カバー3の側壁部3aは、突条8a,8bよりも内周側にタッピングホール9b,9cを有しており、上下蓋部3b,3cをL型金具2とカバー側壁部3aのタッピングホール9a,9b,9cにビス10a,10b,10cで固定することで、L型金具2とカバー3の側壁部3a及び上下蓋部3b,3cとが一体化され、カバー3の分離・脱落を確実に防止できる。
【0020】
図7は、本発明の手摺の他の実施形態を示している。この実施形態では、支柱11の上部と下部にブラケット31a,31bを屋内側に向けて設け、手摺構成材(笠木13、下弦材14、縦桟15)を支柱11の屋内側に持ち出して取付けており、手摺構成材13,14,15がベランダ12の屋外側端部に設けた立ち上がり壁32の上方に位置している。このように、手摺構成材13,14,15をベランダ12の立ち上がり壁32の上方に位置させることで、ベランダ12を使用する人がより安心感を得られ、また手摺構成材13,14,15を支柱11と分離して組立てて屋内側から設置できるので、施工も容易になる。
【0021】
図8,9は、カバー3の形態のバリエーションを示している。L型金具2は同一のものを使用している。このように本手摺支柱用ブラケット1は、カバー3の形態を変えるだけで、簡単に角柱型(a)、アール型(b)、三角型(c),(d)、段付型(e)といった多種類のバリエーションを持たせられる。
【0022】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。カバー3は、上下の蓋部3b,3cの何れか一方を側壁部3aと一体化したもの、上下の蓋部3b,3cを両方とも側壁部3aと一体化したものであってもよい。手摺の形態は任意であり、縦桟15を架設して格子状にしたものに限らず、開口部に樹脂等のパネルを取付けたものでもよい。手摺は、ベランダに設けるものに限らず、窓の屋外側に外壁に当接して設けるもの等であってもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 手摺支柱用ブラケット
2 L型金具
3 カバー
3a 側壁部
3b 上蓋部
3c 下蓋部
4 支柱当接片
5 躯体当接片
6 屈曲部
7a,7b 嵌合溝(嵌合部)
8a,8b 突条(被嵌合部)
9a,9b,9c タッピングホール
10a,10b,10c ビス
11 支柱
12 ベランダ(躯体)
17 ボルト(固着具)
20 ナット(固着具)
22 アンカーボルト(固着具)
26 ナット(固着具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L型金具とカバーとを備え、L型金具は、支柱と躯体に当接し固着具で固定してあり、カバーは、L型金具の上下端部及び屈曲部内周側を覆い、固着具を隠していることを特徴とする手摺支柱用ブラケット。
【請求項2】
L型金具は、支柱への当接片と躯体への当接片の端部に嵌合部をそれぞれ有し、且つ屈曲部の内周側面に沿ってタッピングホールを有し、カバーは、L型金具の嵌合部に嵌合する被嵌合部を有し、被嵌合部を嵌合部に嵌合すると共にタッピングホールにビスで固定してあることを特徴とする請求項1記載の手摺支柱用ブラケット。
【請求項3】
カバーは、側壁部と上下蓋部とからなり、側壁部は、両側縁に被嵌合部を有すると共に、被嵌合部よりも内周側にタッピングホールを有し、上下蓋部は、少なくとも一方が側壁部と別体であり、L型金具及び側壁部のタッピングホールにビスで固定してあることを特徴とする請求項2記載の手摺支柱用ブラケット。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の手摺支柱用ブラケットを備えることを特徴とする手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−149197(P2011−149197A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11228(P2010−11228)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000175560)三協立山アルミ株式会社 (529)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】