説明

打ち抜き装置

【課題】打ち抜き加工において打ち抜き箇所の白化を抑制しつつ高い生産性を維持すること。
【解決手段】打ち抜かれる材料が載置されるダイと、前記材料を前記ダイとで挟み込むストリッパーと、前記材料を前記ダイとの間に生ずる剪断力で打ち抜くパンチと、前記ストリッパーの移動を行わせる第1駆動モーターと、前記パンチの移動を行わせる第2駆動モーターと、を備える打ち抜き装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打ち抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の材料について打ち抜き加工が行われている。その中でも、プリント配線基盤の打ち抜き加工などでは、打ち抜き箇所の白化の防止及び打ち抜き箇所のバリを除去するために、打ち抜き後にルーター加工等が行われる。
【0003】
特許文献1には、プリント配線板について打ち抜き加工を行うことが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−171954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の手法であると、打ち抜き後に種々の加工を行うことから、作業工程を増加させることとなり、結果的にコスト高になる。よって、打ち抜き箇所の白化を抑制しつつ高い生産性を維持することが望まれる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、打ち抜き加工において打ち抜き箇所の白化を抑制しつつ高い生産性を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために本発明に係る打ち抜き装置は、
打ち抜かれる材料が載置されるダイと、
前記材料を前記ダイとで挟み込むストリッパーと、
前記材料を前記ダイとの間に生ずる剪断力で打ち抜くパンチと、
前記ストリッパーの移動を行わせる第1駆動モーターと、
前記パンチの移動を行わせる第2駆動モーターと、
を備える。
このように、材料を打ち抜くパンチを移動させるモーターと、材料を押さえ込むストリッパーを移動させるモーターをそれぞれ別のモーターとすることで、パンチで材料を打ち抜く際の駆動力がストリッパーの押圧力に用いられることなく打ち抜く剪断力のみに用いられることになる。これにより、適切な打ち抜き速度及び打ち抜き力を制御して材料を打ち抜くことができる。
特に、ガラスエポキシ等の積層材料を打ち抜く際には、所定の打ち抜き速度及び打ち抜き力が必要になるところ、このような構成であれば、所定の打ち抜き速度及び打ち抜き力を確保して材料を適切に打ち抜くことができる。そして、打ち抜き箇所の白化を抑制しつつ高い生産性を維持することができる。
【0008】
また、本発明に係る打ち抜き装置において、前記材料の打ち抜きにおいて、前記第1駆動モーターで前記ストリッパーを移動させ前記材料を挟み込む動作が完了した後に、前記第2駆動モーターで前記パンチを移動させ前記材料を打ち抜くことを特徴とする。
このようにすることで、第1駆動モーターの動作によりストリッパーが確実に材料を挟み込み固定した後に、第2駆動モーターの動作によりパンチが移動させられ材料を打ち抜くことができる。
【0009】
また、本発明に係る打ち抜き装置において、前記パンチが前記材料を打ち抜く際に、前記パンチに対向する方向に前記材料を付勢するバッキング部材を備えることを特徴とする。
このような構成とすることで、パンチがダイとともに材料を打ち抜く際に、打ち抜かれる材料をバッキング部材が適切な反力をもって受けることにより、剪断箇所の応力を適切に制御することができる。
【0010】
また、本発明に係る打ち抜き装置において、前記第1駆動モーターと前記第2駆動モーターは、それぞれサーボモーターであることを特徴とする。
このように第1駆動モーターと第2駆動モーターをそれぞれサーボモーターとすることで、パンチとストリッパーの移動を精度良く制御することができる。
【発明の効果】
【0011】
このように、材料を打ち抜くパンチを移動させるモーターと、材料を押さえ込むストリッパーを移動させるモーターをそれぞれ別のモーターとすることで、パンチで材料を打ち抜く際の駆動力がストリッパーの押圧力に用いられることなく打ち抜く剪断力のみに用いられることになる。これにより、適切な打ち抜き速度及び打ち抜き力を制御して材料を打ち抜くことができる。
特に、ガラスエポキシ等の積層材料を打ち抜く際には、所定の打ち抜き速度及び打ち抜き力が必要になるところ、このような構成であれば、所定の打ち抜き速度及び打ち抜き力を確保して材料を適切に打ち抜くことができる。そして、打ち抜き箇所の白化を抑制しつつ高い生産性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態における打ち抜き装置1の第1の正面図である。
【図2】本実施形態における打ち抜き装置1の側面図である。
【図3】本実施形態における打ち抜き装置1の第2の正面図である。
【図4】本実施形態における打ち抜き装置1の第3の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態における打ち抜き装置1について説明を行う。説明に用いられる図には、それぞれX軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向が示されており、これらの図示により各部位の取り付け位置、及び、移動方向が理解できるようになっている。なお、打ち抜き装置1であるためパンチ等の上下移動の説明が頻繁になされるが、特に断りのない限り、Z軸のプラス方向が上昇方向であり、マイナス方向が下降方向である。
【0014】
図1は、本実施形態における打ち抜き装置1の第1の正面図である。図2は、本実施形態における打ち抜き装置1の側面図である。以下、図1及び図2を参照しつつ、本実施形態における打ち抜き装置1の概要について説明を行う。
【0015】
打ち抜き装置1は、概して、パンチ31と共に上昇及び下降を行う上型10の移動を担う部分、打ち抜く際に材料を押さえるストリッパー32の移動を担う部分、及び、ダイ33を含み打ち抜き後の製品を受ける下型の部分からなる。
【0016】
まず、ストリッパー32を移動させる機構について説明を行う。ストリッパー32を移動させる機構は、主として、ストリッパー駆動用サーボモーター51、昇降ガイド機構52、ボールねじユニット53、連結部54、及び、連結部材56を備える。
【0017】
ストリッパー駆動用サーボモーター51は、架台72に固定されている。そして、操作パネル71からの指令に応じてストリッパー駆動用サーボモーター51はその出力軸に回転駆動力を生じさせる。ストリッパー駆動用サーボモーター51の出力軸は、連結部材56を介してボールねじユニット53のねじ軸531に同一軸上で接続し、ねじ軸53を回転させる。
【0018】
ねじ軸53の回転力はボールねじユニット53において外筒(ナット)532を上下方向(Z軸方向)に移動させる。外筒532は連結部54を介して昇降ガイド機構52の昇降シャフト521を軸の長手方向(Z軸方向)に移動させる。昇降シャフト521は、ベアリング522によりX軸方向及びY軸方向の移動が規制されZ軸方向のみに移動させられる。昇降シャフト521の端部には、ストリッパープレート20とロードセル551とブッシュプレート552が固定されている。
【0019】
ストリッパープレート20は、ベアリング522によりX軸方向及びY軸方向の移動が規制される他、インナーガイドポスト64(図2において、他部分の視認性向上のため破線で示される)によってもその移動方向がZ軸方向のみに規制され、精密にZ軸方向の移動が可能となっている。
【0020】
これにより、ストリッパー駆動用サーボモーター51が回転させられると、その回転力がボールねじユニット53により上下方向(Z軸方向)の駆動力に変換され、連結部54を介して昇降ガイド機構に取り付けられたストリッパープレート20を上下方向に移動させる。ストリッパープレート20には、ストリッパー32が取り付けられており、打ち抜き動作時において材料をダイ33と共に挟み込む。
【0021】
次に、上型10を移動させる機構について説明を行う。上型10を移動させる機構でもボールねじユニットを用いた前述のストリッパーの移動機構とほぼ同様の機構となっている。上型10を移動させる機構は、上型駆動用サーボモーター61、ギヤボックス62、ボールねじユニット66、連結部67、昇降シャフト68、及び、連結部材69を備える。
【0022】
上型駆動用サーボモーター61は、本実施形態における打ち抜き装置1の上部に固定されている。そして、操作パネル71からの指令に応じて上型駆動用サーボモーター61はその出力軸に回転駆動力を生じさせる。上型駆動用サーボモーター61の出力軸は、ギヤボックス62を介してボールねじユニット66のねじ軸661に接続された連結部材69を回転させる。連結部材69は、ねじ軸661と同一軸上で回転可能であり、連結部材69が回転させられると、ねじ軸661も回転させられる。
【0023】
ねじ軸661の回転力は、ボールねじユニット66において外筒(ナット)662を上下方向(Z軸方向)に移動させる。外筒662は、連結部67を介して昇降ガイド機構68の昇降シャフト681を軸の長手方向(Z軸方向)に移動させる。昇降シャフト681はベアリング682によりX軸方向及びY軸方向の移動が規制されZ軸方向のみに移動させられる。昇降シャフト68の端部には、プレスラム65が固定され、プレスラム65の先には、上型10を構成する上型ダイセット14及びパンチプレート13が取り付けられている。パンチプレート13にはパンチ31が固定される。
【0024】
これにより、上型駆動用サーボモーター61が回転させられると、その回転力がギヤボックス62内のギヤ及びボールねじユニット66により上下方向(Z軸方向)の駆動力に変換され、プレスラム65を介して上型10を上下方向に移動させる。
【0025】
次に、下型40の構造について説明する。下型40は、ダイプレート43、下バッキングプレート44、下型ダイセット45、及び、ベース46を含む。下型40には、エアーシリンダー81、ロッカーアーム82、ノックアウト84、及び、ノックアウトホルダー85が組み込まれている。
【0026】
ノックアウト84は、打ち抜かれる材料を受ける機能を有する。ノックアウト84の下部に設けられた係合部は、ノックアウトホルダー85の上部に設けられた係合部と係合し、ノックアウトホルダー85の動作に追従するようにノックアウト84が上下方向(Z軸方向)に移動する。なお、ノックアウト84とノックアウトホルダー85は、上下方向に若干の遊びを有して係合している。
【0027】
ノックアウトホルダー85は、その内部にバネを備え、これによりノックアウトホルダー85の上部に所定の反力を生じさせる。これにより、パンチ31が材料を打ち抜く際、ノックアウトホルダー85の上部のノックアウト84も所定の反力をもって打ち抜き中の材料を受ける。
【0028】
ノックアウトホルダー85は、ロッカーアーム82及びエアーシリンダー81のロッド811の動作により上下方向に移動可能となっている。ノックアウトホルダー85が最下点に移動すると、ノックアウト84もその最下点にまで移動する。下型40は、ノックアウト84の最下点において、打ち抜き後の製品を回収するための回収口88を有する。このような構成とすることで、打ち抜き後の製品を下型40の下方向に逃がした後、回収口88から製品を回収できる。
【0029】
また、打ち抜き装置11は、これらを操作するための操作パネル71と、これらの動作を非常停止させるための非常停止ボタン73を含む。また、ストリッパープレート20の上下方向の移動限界を検知するための近接センサー74を備える。
【0030】
図3は、本実施形態における打ち抜き装置1の第2の正面図である。図4は、本実施形態における打ち抜き装置1の第3の正面図である。これらの図と、前述の図1を参照しつつ、本実施形態における打ち抜き装置1の動作を説明する。
【0031】
まず、図1のように、パンチ31を含む上型10が打ち抜き動作時の上死点に移動され、かつ、ストリッパー32を含むストリッパープレート20もその打ち抜き動作時の上死点に移動されている状態において、打ち抜かれる材料がダイ33の上に載置される。
【0032】
次に、ストリッパー駆動用サーボモーター51が動作させられ、ストリッパープレート20が下降(Z軸マイナス方向)させられる。ストリッパープレート20は、ダイプレート43に接触する寸前まで移動させられ、ストリッパー32とダイ33とで材料が挟み込まれる(図3)。
【0033】
ストリッパー32とダイ33とで材料が挟み込まれ、確実に材料が固定されると、次に、上型駆動用サーボモーター61が動作させられ、上型10が下降(Z軸マイナス方向)させられる。上型10に固定されているダイ31も同時に下降し、そのままストリッパー32の中空部分を通過し、材料をダイ33との剪断力によって打ち抜く。打ち抜かれた材料は、ノックアウト84により受けられる。(図4)
【0034】
一般的な打ち抜き装置であれば、ストリッパーとパンチを駆動する動力源は単一のものが用いられる。すなわち、一般的な打ち抜き装置であれば、ストリッパーとパンチは同じ動力源により同時に下降させられる。ストリッパーと駆動源との間にはバネのような弾性部材が介在する。ストリッパーがダイプレートに接触すると、ストリッパーが材料を押圧するが、弾性部材によりその駆動力が吸収されるため、ストリッパーはこれ以上下降しない。その後、後続してパンチが下降し、ダイとパンチとの剪断力により材料を打ち抜く。このような従来の構成であると、本来、打ち抜くことに用いられるべきエネルギーからストリッパーが材料を押さえるためのエネルギーが差し引かれてしまう。
【0035】
これに対し、本実施形態における打ち抜き装置1は、ストリッパー20の上昇及び下降を駆動する駆動源と、パンチ31の上昇及び下降を駆動する駆動源とがそれぞれ異なる。すなわち、ストリッパー20についてはストリッパー駆動用サーボモーター51が用いられ、パンチ31については上型駆動用サーボモーター61が用いられる。このようにすることによって、パンチ31で材料を打ち抜く際の駆動力がストリッパー32の材料に対する押圧力に用いられることなく、材料を打ち抜く剪断力にのみ用いられることになる。これにより、適切な打ち抜き速度及び打ち抜き力を制御して材料を打ち抜くことができる。
【0036】
特に、ガラスエポキシ等の積層材料を打ち抜く際には、所定の打ち抜き速度及び打ち抜き力が必要になるところ、このような構成であれば、所定の打ち抜き速度及び打ち抜き力を確保して材料を適切に打ち抜くことができる。そして、打ち抜き箇所の白化を抑制しつつ高い生産性を維持することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 打ち抜き装置、
10 上型、13 パンチプレート、14 上型ダイセット、
20 ストリッパープレート、
31 パンチ、32 ストリッパー、33 ダイ、
40 下型、43 ダイプレート、44 下バッキングプレート、
45 下型ダイセット、46 ベース、
51 ストリッパー駆動用サーボモーター、
52 昇降ガイド機構、521 昇降シャフト、522 ベアリング、
53 ボールねじユニット、531 ねじ軸、532 外筒(ナット)、
54 連結部、541 連結部材、542 メインアーム、
551 ロードセル、552 ブッシュプレート、56 連結部材、
61 上型駆動用サーボモーター、62 ギヤボックス、
63 インナーガイドブッシュ、64 インナーガイドポスト、65 プレスラム、
66 ボールねじユニット、661 ねじ軸、662 外筒(ナット)、
67 連結部、671 連結部材、672 メインアーム、
68 昇降ガイド機構、681 昇降シャフト、682 ベアリング、
69 連結部材、
71 操作パネル、72 架台、73 非常停止ボタン、74 近接センサー
81 エアーシリンダー、811 ロッド、
82 ロッカーアーム、84 ノックアウト、85 ノックアウトホルダー、
88 回収口、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打ち抜かれる材料が載置されるダイと、
前記材料を前記ダイとで挟み込むストリッパーと、
前記材料を前記ダイとの間に生ずる剪断力で打ち抜くパンチと、
前記ストリッパーの移動を行わせる第1駆動モーターと、
前記パンチの移動を行わせる第2駆動モーターと、
を備える打ち抜き装置。
【請求項2】
前記材料の打ち抜きにおいて、前記第1駆動モーターで前記ストリッパーを移動させ前記材料を挟み込む動作が完了した後に、前記第2駆動モーターで前記パンチを移動させ前記材料を打ち抜く、請求項1に記載の打ち抜き装置。
【請求項3】
前記パンチが前記材料を打ち抜く際に、前記パンチに対向する方向に前記材料を付勢するバッキング部材を備える、請求項1又は2に記載の打ち抜き装置。
【請求項4】
前記第1駆動モーターと前記第2駆動モーターは、それぞれサーボモーターである、請求項1〜3のいずれかに記載の打ち抜き装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46942(P2013−46942A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185911(P2011−185911)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(394020815)株式会社野上技研 (4)
【Fターム(参考)】