説明

打放しコンクリート

【課題】外気と屋内との間の遮熱を効率よく図ることができるとともに、打放しコンクリート風の意匠を維持させることができる打放しコンクリートを提供する。
【解決手段】近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富むとともに当該着色顔料が打放しコンクリート外表面に似せた色彩とされた遮熱層3と、透明で親水性の高いセルフクリーニング層5とを外表面に形成して成ることを特徴とする打放しコンクリートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打放しコンクリートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
打放しコンクリートは、その素材のもつ自然の美しさと重厚な趣が意匠性を高めることから、建築物に広く適用されているが、経年劣化などにより意匠性が損なわれてしまうことが多い。その場合、例えば特許文献1で開示されているように、劣化した打放しコンクリート表面を修復して新たに打放しコンクリート風の意匠を新たに施すことが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−097894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の打放しコンクリートにおいては、以下の如き問題があった。即ち、近時の環境保護意識の高まりに伴い、外気と屋内との間の遮熱を行い、屋内の空調機器の稼動を下げて環境保護を図ることが求められているのであるが、通常の遮熱性に富んだ塗料は白或いはそれに近い色彩のものであったため、その塗料を打放しコンクリート外表面に塗布しても、打放しコンクリート風の意匠とならないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、外気と屋内との間の遮熱を効率よく図ることができるとともに、打放しコンクリート風の意匠を維持させることができる打放しコンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富むとともに当該着色顔料が打放しコンクリート外表面に似せた色彩とされた遮熱層を外表面に形成して成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の打放しコンクリートにおいて、前記遮熱層の上側に、透明で親水性の高いセルフクリーニング層が形成されて成ることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の打放しコンクリートにおいて、前記遮熱層の上側に、前記遮熱層とは異なった色彩とされつつ前記打放しコンクリートの型枠模様及び色彩に似せた擬似型枠模様が所定塗料にて造成されるとともに、当該所定塗料は、近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富んだものとされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富むとともに当該着色顔料が打放しコンクリート外表面に似せた色彩とされた遮熱層を外表面に形成して成るので、外気と屋内との間の遮熱を効率よく図ることができるとともに、打放しコンクリート風の意匠を維持させることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、遮熱層の上側に、透明で親水性の高いセルフクリーニング層を形成して成るので、汚れが付着しても雨水等によって除去することができ、遮熱層の機能をより有効に維持させることができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、遮熱層とは異なった色彩とされつつ打放しコンクリートの型枠模様及び色彩に似せた擬似型枠模様が所定塗料にて造成されるとともに、当該所定塗料は、近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富んだものとされたので、打放しコンクリートにより似せた意匠とすることができるとともに遮熱性を維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る打放しコンクリートの外表面を示す模式図
【図2】同打放しコンクリートの修復方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に適用される打放しコンクリートは、例えば建築物などの躯体における壁面を修復したもので、その外表面には、図1に示すように、含浸層2と、遮熱層3と、防水材層4と、セルフクリーニング層5とが形成されて成る。含浸層2は、同図に示すように、打放しコンクリート1の外表面1aに浸透して形成されたもので、浸透性の表面強化剤を当該外表面1aに塗布することにより得られるものである。
【0014】
遮熱層3は、含浸層2上に形成された層から成り、太陽光における近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富むとともに当該着色顔料が打放しコンクリート外表面に似せた色彩とされたものである。即ち、遮熱層3は、熱作用の高い近赤外線を効率よく反射・散乱させることにより太陽熱の吸収を抑制し得る特殊な顔料を含有することにより遮熱性が向上されるとともに、その顔料が打放しコンクリート色と近似した色彩とされているのである。
【0015】
より具体的には、本実施形態に係る遮熱層3は、顔料としてのシリカ(SiO)を5〜10(重量%)含む他、酸化チタン(TiO)を25〜30(重量%)含むものとされたものである。ここで、打放しコンクリート外表面に似せた色彩とは、主にセメントの色(ねずみ色)をいい、コンクリートの通常の色彩を指すものである。尚、例えば上記顔料と共に、熱放射率に優れたセラミックを含有させ、吸収してしまった熱を放射し得るよう構成するのが好ましく、この場合、顔料の近赤外線の反射・散乱作用との複合作用により、より効率的且つ確実に遮熱効果を発揮させることができる。
【0016】
この遮熱層3の上面3aには、擬似型枠模様が形成されている。かかる擬似型枠模様は、遮熱層3とは異なる色彩(濃い色彩であっても薄い色彩であってもよい)とされつつ打放しコンクリートの実際の型枠模様及び色彩に似せた模様を所定塗料にて造成したものから成り、その造成のための所定塗料は、遮熱層3のものと同様、近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富んだものとされている。具体的には、かかる擬似型枠模様を造成するための塗料は、顔料としてのシリカ(SiO)を5〜10(重量%)含む他、酸化チタン(TiO)を25〜30(重量%)含むものとされたものである。
【0017】
防水材層4は、遮熱層3の上面側に形成された透明な層から成るもので、高耐久性防水材・フッ素樹脂又はアクリルシリコン樹脂のうち何れかを選択して塗布することにより得られる。かかる防水材層4が形成されることにより、その下面側の遮熱層3及び擬似型枠模様を外部環境から保護することができ、耐久性に優れたものとすることができる。尚、防水材層4は、透明とされることにより、その下面側の遮熱層3の色彩及び擬似型枠模様を外部から見えるようにすることができ、意匠性を向上させることができる。
【0018】
セルフクリーニング層5は、防水材層4の上面側(最上層)に形成された透明な層から成るもので、例えばメチルシリケートを所定の条件で加水分解した無機コーティング液を塗布して造膜させた層から成る。かかる塗膜層は、親水性が極めて高く、その表面に付着した汚れを雨水などと一緒に流し落とすことができる。即ち、セルフクリーニング層5の表面に付着した汚れは、降雨時において、その下に雨水が入り込み、当該汚れを浮き上がらせた後、雨水と一緒に下方へ流れ落ちるのである。これは、セルフクリーニング層5が極めて高い親水性を有するが故奏される作用効果である。かかるセルフクリーニング層5として、例えばニチエー吉田(株)製の商品名「NY−セラクリーン」を使用するのが好ましい。
【0019】
尚、セルフクリーニング層5は、上記の如き成分のものに限定されず、親水性が高い層から成るものであれば、例えばアナターゼ型酸化チタン或いは過酸化チタン(TiO)を主成分とし、無色透明の親水性の薄膜を形成するものであってもよい。かかる場合においても、降雨時などには、その表面に付着した汚れ等を雨水などと一緒に流すことができ、セルフクリーニング性を発揮することができる。具体的には、雨水などが付着した汚れとセルフクリーニング層5の表面との間に入り込んで剥離し、一緒に流れ落ちるので、防汚効果が向上されるのである。
【0020】
上記の如き打放しコンクリートの外表面を得るには、図2のフローチャートに示す如き工程を経ることとなる。
まず、打放しコンクリート1の外表面1aを目視し、ひび割れ、露出鉄筋、浮き、欠損、モルタル補修跡、コールジョイント、漏水、木屑、木コン跡の有無等を調査して現状調査を行う(S1)。かかる現状調査は、上記の如き外観目視法の他に、コンクリートコア採取による中性化深度測定、或いはシュミットハンマ法による圧縮強度測定等によるものであってもよい。
【0021】
次に、打放しコンクリートの外表面1aに付着した汚れを高圧水洗浄機などで除去して素地調整を行い(S2)、洗浄乾燥確認後、浸透性の表面強化剤(例えばニチエー吉田社製の「NY−606」を塗布して、図1で示す含浸層2を形成する(S3)。その後、打放しコンクリートの外表面1a全域に散在する劣化箇所に対し、調合樹脂モルタルをしごき塗りして平滑化することにより処理する(S4)。
【0022】
次に、近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富むとともに当該着色顔料が打放しコンクリート1の外表面1aに似せた色彩とされた塗材を塗布し、遮熱層3を形成する(S5)。その後、遮熱層3の上面3aにおいて、当該遮熱層3aとは異なる色彩(濃い色彩或いは薄い色彩)とされつつ打放しコンクリート1の実際の型枠模様及び色彩に似せた擬似型枠模様を所定塗料にて造成する(S6)。このとき使用される当該所定塗料は、近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富んだものであって、その着色顔料が実際の打放しコンクリート1の外表面1aに形成された型枠模様と略同等の色彩とされている。
【0023】
その後、擬似型枠模様が形成された遮熱層3の上面3aに高耐久性防水材・フッ素樹脂又はアクリルシリコン樹脂を塗布して防水材層4を形成する(S7)。そして、最後に透明で親水性の高いセルフクリーニング層5を形成(S8)して一連の修復工程が終了する。而して、遮熱層3の上面側にセルフクリーニング層5が形成されることにより、打放しコンクリート1の外表面1aの防汚効果による美観の回復にとどまらず、外表面1a上の汚れを除去することによって遮熱層3の遮熱効果を十分に発揮させることができる。
【0024】
上記実施形態によれば、近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富むとともに当該着色顔料が打放しコンクリート1の外表面1aに似せた色彩とされた遮熱層3を形成するので、建築物の当該打放しコンクリート1の外表面1aを修復するに際し、外気と屋内との間の遮熱を効率よく図ることができるとともに、修復後においても打放しコンクリート風の意匠を維持させることができる。
【0025】
また、遮熱層3の上側に、透明で親水性の高いセルフクリーニング層5を形成するので、汚れが付着しても雨水等によって除去することができ、遮熱層3の機能をより有効に維持させることができる。更に、遮熱層3とは異なった色彩とされつつ打放しコンクリート1の型枠模様及び色彩に似せた擬似型枠模様を所定塗料にて造成するとともに、当該所定塗料は、近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富んだものとされたので、打放しコンクリート1により似せた意匠とすることができるとともに遮熱性を維持させることができる。
【0026】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば遮熱層3が形成されたものであれば、その表面3aに擬似型枠模様が形成されないもの、或いはセルフクリーニング層5が形成されないものであってもよい。また、本実施形態においては、遮熱層3を形成する前に、表面1aの洗浄及び補修工程を行っているが、これら工程を省いたり、或いは他の予工程としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富むとともに当該着色顔料が打放しコンクリート外表面に似せた色彩とされた遮熱層を外表面に形成して成る打放しコンクリートであれば、種々形態の打放しコンクリートに適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 打放しコンクリート
1a 外表面
2 含浸層
3 遮熱層
4 防水材層
5 セルフクリーニング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富むとともに当該着色顔料が打放しコンクリート外表面に似せた色彩とされた遮熱層を外表面に形成して成ることを特徴とする打放しコンクリート。
【請求項2】
前記遮熱層の上側に、透明で親水性の高いセルフクリーニング層が形成されて成ることを特徴とする請求項1記載の打放しコンクリート。
【請求項3】
前記遮熱層の上側に、前記遮熱層とは異なった色彩とされつつ前記打放しコンクリートの型枠模様及び色彩に似せた擬似型枠模様が所定塗料にて造成されるとともに、当該所定塗料は、近赤外線の反射率が高い着色顔料を含有することにより遮熱性に富んだものとされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の打放しコンクリート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−256704(P2011−256704A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169336(P2011−169336)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【分割の表示】特願2008−190725(P2008−190725)の分割
【原出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000110815)ニチエー吉田株式会社 (7)
【Fターム(参考)】