説明

把持装置

【課題】ワークの形状に柔軟に対応してワークの落下を防止し得る把持装置を提供する。
【解決手段】一対のアーム5でワーク9を把持する把持装置1であって、一対のアーム5と、一対のアーム5が設けられる鉛直方向の柱2aを有するベース2と、一対のアーム5の間隔を変化させるアクチュエータ3cと、ワーク9の把持装置1からの落下を防止する落下防止機構4を有する。落下防止機構4は、ワーク9の下方空間に突出可能に移動し、およびワーク9の下端に近接する落下防止部材4cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを把持する把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の把持装置は、ベースと、ベースに設けられる一対のアームと、一対のアームの間隔を変化させてアームによってワークを把持させるアクチュエータと、アームによって把持したワークを下側から支持する落下防止機構を有する(特許文献1,2参照)。特許文献1に記載の落下防止機構は、アームに傾動可能に取付けられてワークの下面に出没するストッパ部材を有する。特許文献2に記載の落下防止機構は、各アームに設けられて他のアームに向けて伸縮するパンタグラフ体を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭50−149052号公報
【特許文献2】実開昭56−47897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の落下防止機構のストッパ部材とパンタグラフ体は、一対のアームの間を移動するためにワークの形状、例えば高さまたは奥行きに対応することが容易でない。そのためワークの形状に柔軟に対応してワークの落下を防止し得る把持装置が従来必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの把持装置であることを特徴とする。一つの特徴によると把持装置は、ベースと、ベースに設けられる一対のアームと、一対のアームの間隔を変化させてアームによってワークを把持させるアクチュエータと、アームの間隔方向と異なる方向に移動してアームで把持したワークの下側に移動してワークの把持装置からの落下を防止する落下防止機構を有する。
【0006】
したがって落下防止機構は、ワークの形状に柔軟に対応し得る。例えば落下防止機構は、ワークの下方から上方に移動して、ワークの高さに柔軟に対応してワークの把持装置からの落下を防止し得る。あるいは落下防止機構は、ワークの奥行き方向に移動して、ワークの奥行きの大きさに柔軟に対応してワークの把持装置からの落下を防止し得る。
【発明の効果】
【0007】
したがって把持装置は、ワークの形状に柔軟に対応してワークの落下を防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】把持装置とワークの斜視図である。
【図2】収納状態における落下防止機構の上面図である。
【図3】張出し状態における落下防止機構の上面図である。
【図4】落下防止機構を張出し状態にした際の把持装置とワークの斜視図である。
【図5】落下防止部材を上昇させた際の把持装置とワークの斜視図である。
【図6】他の形態における把持装置の一部とワークの側面図である。
【図7】図6の把持装置とワークの正面図である。
【図8】アームを棚に挿入した際における図6の把持装置の一部側面図である。
【図9】アームを棚の外に移動した際における図6の把持装置の一部側面図である。
【図10】他の形態における把持装置とワークの斜視図である。
【図11】落下防止部材を上昇させた際の図10における把持装置とワークの斜視図である。
【図12】他の形態における把持装置の簡略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一つの実施の形態を図1〜図5にしたがって説明する。把持装置1は、図1に示すようにベース2とアーム機構3と落下防止機構4を有する。ベース2は、上下に延出する一対の柱2aと、柱2aの下部を連結する下梁2bと、柱2aの上部を連結する上梁2cと、各柱2aの下部から前方に延出する脚2dと、脚2dより高い位置において柱2aの後方に延出する台2fを有する。なお上下方向とは、図1における上下方向であり、重力の方向に対応する。前後方向は、把持装置1の走行方向に対応し、前方が図1右方向、後方が図1左方向である。左右方向は、把持装置1の走行方向に対して直交しかつ水平方向に対応する。
【0010】
脚2dの先端部下側には、図1に示すように車輪2eが回転可能に取付けられる。台2fの左右部下側には、車輪2gが回転可能に取付けられる。車輪2eと車輪2gは、把持装置1が載置される床面と接触する。台2fにはバッテリ7と制御装置2iが搭載される。台2fの後部にはハンドル2hが設けられ、ハンドル2hは、台2fから上方に延出する。ハンドル2hには、図示省略の操作盤が装着される。
【0011】
アーム機構3は、図1に示すようにアームブラケット3aと一対のアーム5を有する。アームブラケット3aの各端部は、各柱2aに上下方向に移動可能に取付けられる。アームブラケット3aは、ベース2に設けられたアームリフト6によって昇降される。
【0012】
アームリフト6は、図1に示すように雄ねじ部材6aと雌ねじ部材6bとモータ6dを有する。雄ねじ部材6aは、上下方向に延出し、各端部が上梁2cと下梁2bに軸回転可能に取付けられる。雌ねじ部材6bは、ブラケット6cによってアームブラケット3aに取付けられる。雌ねじ部材6bには、雄ねじ部材6aが螺合される。モータ6dは、下梁2bに取付けられて、バッテリ7から供給された電力によって雄ねじ部材6bを軸回転させる。雄ねじ部材6aが軸回転することで雌ねじ部材6bが雄ねじ部材6aに沿って昇降する。
【0013】
アーム5は、図1に示すように本体板5aと把持板5bを有する。本体板5aの基端部は、アームブラケット3aに設けられたガイド3bによって左右方向に移動可能に取付けられる。一対の本体板5aは、アームブラケット3aに設けられたアクチュエータ3cによって間隔が変えられ得る。
【0014】
アクチュエータ3cは、図1に示すように雄ねじ部材3dと一対の雌ねじ部材3eとモータ3fを有する。雄ねじ部材3dは、左右方向に延出し、アームブラケット3aに軸回転可能に取付けられる。雄ねじ部材3dの左側外周面に螺旋状の雄ねじが形成され、右側外周面には左側外周面に形成された雄ねじと逆方向に螺旋状に延出する雄ねじが形成される。
【0015】
各雌ねじ部材3eは、図1に示すようにアーム5の本体板5aに取付けられる。雌ねじ部材3eの一つが雄ねじ部材3dの左側外周面の雄ねじに螺合され、雌ねじ部材3eの他の一つが雄ねじ部材3dの右側外周面の雄ねじに螺合される。モータ3fは、アームブラケット3aに取付けられ、バッテリ7から供給された電力によって雄ねじ部材3dを軸回転させる。これにより一対のアーム5が近接、離間し、アーム5の間隔が変化する。
【0016】
本体板5aと把持板5bの間には、図1に示すように複数のリンク5cが設けられる。リンク5cは、本体板5aに回転可能に取付けられる第一端部と、把持板5bに回転可能に取付けられる第二端部を有する。アーム5には、リンク5cの第二端部を上方に付勢し、かつ第二端部を第一端部よりも上方に位置させる、図示省略のばねが設けられる。
【0017】
図5に示すように一対のアーム5を近接させると、各把持板5bがワーク9に当たり、各把持板5bとワーク9の間に摩擦力が生じる。各把持板5bは、リンク5cの回転によって本体板5aに対して上方に移動し、摩擦力によってワーク9を持上げる。一方、各把持板5bは、摩擦力によってワーク9から下方に力を受ける。各把持板5bは、リンク5cの回転によって下方に移動し、かつワーク9に向けて移動する。これにより一対の把持板5bがワーク9に向けて移動し、ワーク9をさらに強く把持する。
【0018】
落下防止機構4は、図5に示すように第一部材4aと第二部材4bと落下防止部材4cと昇降体4mとを有する。第一部材4aと第二部材4bは、図1,図5に示すように柱2aに対して上下方向に移動可能に取付けられる基部4a3,4b3を有する。第一部材4aは、箱形状であって、第一部材4aには収納部4a1と開口部4a2が形成される。収納部4a1には、折り畳まれた落下防止部材4cが収納される。開口部4a2は、第二部材4bに向いて開口し、落下防止部材4cの収納部4a1に対する出し入れを許容する。
【0019】
第二部材4bは、図2,図3に示すように箱形状であり、第二部材4bには、収納部4b1と開口部4b2が形成される。開口部4b2は、第一部材4aに向いて開口する。第一部材4aから移動して張出した落下防止部材4cの先端部4f2、4g2は、開口部4b2を通って、収納部4b1に到達し、第二部材4bによって支持される。
【0020】
落下防止部材4cは、図2,図3に示すようにパンタグラフ形式であって、四つの棒状のリンク4d〜4gを有する。第一リンク4dは、第一部材4aに回転可能に連結される基端部4d1を有する。第二リンク4eは、第一部材4aに前後方向に移動可能にかつ回転可能に連結される基端部4e1を有する。リンク4d,4eは、中央部4d3,4e3において交差しかつ回転可能に連結される。リンク4d,4eの第二端部4d2,4e2には、リンク4f,4gの第一端部4f1,4g1が回転可能に連結される。リンク4f,4gは、中央部4f3,4g3において交差しかつ回転可能に連結される。
【0021】
落下防止部材4cは、第一部材4aに設けられたアクチュエータ4nによって図2に示すように第一部材4aに収納されている収納状態と、図3,図5に示すように第一部材4aと第二部材4bの間のワーク9の下方空間に張出した張出し状態に変えられる。ワーク9の下方空間は、ワーク9の水平方向の断面形状と等しく、ワーク9の下端の高さから、ワーク9の下端を鉛直方向下向きに把持装置1の脚2dの上端面の高さを有する。
【0022】
アクチュエータ4nは、リンク4eの基端部4e1を前後方向に移動させる油圧シリンダ、またはモータとモータによって進出する雄ねじ部材を有する。落下防止部材4cは、収納状態において第一部材4aと第二部材4bの間を開放し、張出し状態において第一部材4aと第二部材4bの間に張出す。張出し状態においてリンク4f,4gの先端部4f2,4g2は、第二部材4bによって支持される。
【0023】
昇降体4mは、図5に示すように脚2dと第一部材4aと第二部材4bの間に設けられる。昇降体4mは、パンタグラフ形式であって、棒状の二つのリンク4i,4jとアクチュエータ4kを有する。第一リンク4iは、脚2dの先端部に回転可能に連結される第一端部4i1と、第一部材4aと第二部材4bの基端部に前後方向に移動可能にかつ回転可能に連結される第二端部4i2を有する。第二リンク4jは、脚2dの基端部に前後方向に移動可能にかつ回転可能に連結される第一端部4j1と、第一部材4aと第二部材4bの先端部に回転可能に連結される第二端部4j2を有する。リンク4i,4jは、中央部4i3,4j3において交差しかつ回転可能に連結される。
【0024】
アクチュエータ4kは、図5に示すように脚2dに設けられる。アクチュエータ4kは、第一端部4j1を前後方向に移動させる油圧シリンダまたはモータによって進出される雄ねじ部材を有する。アクチュエータ4kによって第一端部4j1を前後に移動させることで、昇降体4mが第一部材4aと第二部材4bを昇降させる。
【0025】
把持装置1によってワーク9を把持して搬送する場合は、先ず操作盤を操作して、操作盤から発信された信号に基づいて制御装置2iがアームリフト6によってアーム5の高さを調整する(図1参照)。次に、車輪2eと車輪2gによって把持装置1を移動させ、アーム5を棚に挿入する。操作盤を操作して、操作盤から発信された信号に基づいて制御装置2iがアクチュエータ3cを制御し、アーム5がワーク9を把持する。アーム5の把持板5bが本体板5aに対して上昇してワーク9を棚から持上げる。
【0026】
次に、車輪2eと車輪2gによって把持装置1を移動させてアーム5とワーク9を棚の外に移動させる。操作盤を操作し、操作盤から発信された信号に基づいて制御装置2iがアクチュエータ4nを制御し、落下防止部材4cが図1,図2の収納状態から図3,図4の張出し状態に変わる。制御装置2iが昇降体4mを制御し、第一部材4aと第二部材4bが同時に上昇して落下防止部材4cがワーク9の下面9aに当接または下面9aに近接する位置まで移動する。
【0027】
したがってワーク9がアーム5に対して下方に移動した場合には、ワーク9が落下防止部材4cによって支えられ得る。そのためワーク9の落下によってワーク9自身が破損すること、あるいは把持装置1の一部が破損することが落下防止機構4によって抑制され得る。
【0028】
次に、車輪2eと車輪2gによって把持装置1を移動させてワーク9を所定位置へ移動させる。次に、アーム5がワーク9を把持していることを確認する。前記確認は、ワーク9を検知するセンサからの信号に基づいて制御装置2iが判断、あるいは作業者が目視によって確認する。センサは、ベース2あるいはアーム機構3あるいは落下防止機構4に設けられる。上記手順と逆の手順によって落下防止部材4cを下降させ、次に落下防止部材4cを張出し状態から収納状態に変える。次に、上記手順と逆の手順によってアーム5を下降し、一対のアーム5を離間し、ワーク9を所望位置に設置する。
【0029】
以上のように把持装置1は、図5に示すようにベース2と、ベース2に設けられる一対のアーム5と、一対のアーム5の間隔を変化させてアーム5によってワーク9を把持させるアクチュエータ3cと、アーム5の間隔方向と異なる方向に移動してアーム5で把持したワーク9の下側に移動してワーク9の把持装置1からの落下を防止する落下防止機構4を有する。
【0030】
したがって落下防止機構4は、ワーク9の形状に柔軟に対応し得る。例えば落下防止機構4は、ワーク9の下方から上方に移動して、ワーク9の高さに柔軟に対応してワーク9の把持装置1からの落下を防止し得る。
【0031】
また把持装置1は、図5に示すように一対のアーム5と、一対のアーム5が設けられる鉛直方向の柱2aを有するベース2と、一対のアーム5の間隔を変化させるアクチュエータ3cと、ワーク9の把持装置1からの落下を防止する落下防止機構4を有する。落下防止機構4は、ワーク9の下方空間に突出可能に移動し、およびワーク9の下端に近接する落下防止部材4cを有する。
【0032】
したがって落下防止機構4は、アーム5と別個に移動するためにアーム5によって把持されたワーク9に対して柔軟に移動し得る。例えば落下防止機構がアーム5に設けられる場合に比べてワーク9に対して柔軟に移動し得る。かくして落下防止機構4は、ワーク9の形状に柔軟に対応してワーク9の落下を防止し得る。
【0033】
ベース2は、図5に示すように柱2aから水平方向に延出してアーム5の下方に位置する脚2dと、脚2dに回転可能かつ、把持装置1を載置する床面に対して接触可能に設けられる車輪2eとを有する。落下防止機構4は、脚2dに設けられ落下防止部材4cを脚2dに対して昇降させる昇降体4mを有する。したがって把持装置1は、車輪2eによって移動し得る。落下防止機構4は、脚2dを利用して設けられ、落下防止部材4cがアーム5に把持されたワーク9に向けて上昇する。
【0034】
落下防止機構4は、図5に示すように第一の脚2dに設けられる第一の昇降体4mによって昇降される第一部材4aと、第二の脚2dに設けられる第二の昇降体4mによって昇降される第二部材4bを有する。落下防止部材4cは、第一部材4a側と第二部材4b側の間の少なくとも一方に収納される収納状態と、収納状態から、第一部材4aと第二部材4bの間に張出した張出し状態とに変わる構造を有する。
【0035】
したがって落下防止部材4cは、張出し状態になることでワーク9を下側から支え得る。落下防止部材4cを収納状態にすることで、第一部材4aと第二部材4bの間および脚2dの間が開放される。これにより脚2dの間に障害物が位置することを許容し、ベース2の移動範囲が広くなる。
【0036】
落下防止部材4cは、図2,図3に示すように第一部材4aに設けられ、かつ第一部材4aから第二部材4bに張出して第二部材4bに支持される先端部4f2,4g2を有する。したがって落下防止部材4cは、収納状態になることで第一部材4aに位置する。そのため第一部材4aと第二部材4bが設けられる一対の脚2dの間を広く開放し得るる(図1参照)。例えば落下防止部材が第一部材4aと第二部材4bの基端部に収納される場合に比べて一対の脚2dの間を広く開放し得る。これによりベース2の移動範囲が広くなる。張出し状態において落下防止部材4cは、先端部4f2,4g2が第二部材4bによって支持される。そのため落下防止部材4cは、第一部材4aと第二部材4bに支持されるためにワーク9の落下を安定良く防止し得る。
【0037】
落下防止部材4cは、図3に示すように第一部材4aに回転可能に支持される少なくとも一つの基端部4e1,4d1と、第二部材4b側に移動可能な少なくとも一つの先端部4f2,4g2を有する。したがって落下防止部材4cの基端部4e1,4d1が第一部材4aに対して回転することで、落下防止部材4cの先端部4f2,4g2が第二部材4b側に向けて移動し得る。
【0038】
落下防止部材4cは、図2に示すように折り畳み可能な構造を有する。したがって落下防止部材4cは、折り畳まれることで第一部材4aに収納され得る。
【0039】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態であっても良い。例えば把持装置1は、図1に示す落下防止機構4に代えて図6に示す落下防止機構10を有していても良い。落下防止機構10は、図6,図7に示すように一対のガイド12と複数の連結部材13と複数の落下防止部材11を有する。
【0040】
ガイド12は、図6,図7に示すように棒状であって、アーム5の本体板5aの外側面に設けられる。ガイド12は、アーム5の延出方向(前後方向)に延出する。連結部材13は、ガイド12に移動可能に取付けられる。落下防止部材11は、ロープ、チェーン等であって長尺状である。落下防止部材11は、連結部材13に連結される一対の端部11cと、各端部11cから垂下する一対の垂下部11aと、一対の垂下部11aを連結する中央部11bを有する。
【0041】
ガイド12には、図6に示すように連結部材13をアーム5の先端部へ付勢する付勢部材14が設けられる。付勢部材14は、コイルばねであって、ガイド12の後端部と連結部材13の間および連結部材13間に設けられる。
【0042】
図6,図8に示すように棚15に設置されたワーク9を把持装置1によって搬送する場合には、把持装置1を移動させてアーム5を棚15に挿入する。落下防止部材11の垂下部11aが棚15の端部15aに当たり、落下防止部材11と連結部材13は、付勢部材14に抗してアーム5の基端部へ移動する。
【0043】
図8,図9に示すようにアーム5によってワーク9を把持しかつ持上げ、把持装置1を移動させてアーム5とワーク9を棚15の外へ移動させる。付勢部材14がばねの復元力によって連結部材13をアーム5の先端部に向けて移動させる。これにより落下防止部材11がアーム5の先端部へ移動して、落下防止部材11の中央部11bがワーク9の下面9aの下側に位置する。かくして落下防止部材11によってワーク9が把持装置1から落下することが防止される。図6に示す連結部材13には、巻取り機構が設けられる。巻取り機構は、落下防止部材11を排出可能に巻取る。したがって落下防止部材11の長さがワーク9の形状に合わせて調節され得る。
【0044】
以上のように把持装置1は、図6,図7に示すようにベース2と、ベース2に設けられる一対のアーム5と、一対のアーム5の間隔を変化させてアーム5によってワーク9を把持させるアクチュエータ3cと、アーム5の間隔方向と異なる方向に移動してアーム5で把持したワーク9の下側に移動してワーク9の把持装置1からの落下を防止する落下防止機構10を有する。
【0045】
したがって落下防止機構10は、ワーク9の形状に柔軟に対応し得る。例えば落下防止機構10は、ワーク9の奥行き方向に移動して、ワーク9の奥行きの大きさに柔軟に対応してワーク9の把持装置1からの落下を防止し得る。
【0046】
把持装置1は、図1に示すように一対のアーム5と、一対のアーム5が設けられる鉛直方向の柱2aを有するベース2と、一対のアーム5の間隔を変化させるアクチュエータ3cと、アーム5で把持したワーク9の下面に移動してワーク9の把持装置1からの落下を防止する落下防止機構10(図9参照)を有する。落下防止機構10は、図6,図7に示すように一対のアーム5の間に介在しかつ端部11cが各アーム5に移動可能に取付けられる落下防止部材11と、一対のアーム5によってワーク9を持上げた際にワーク9の下側に落下防止部材11が延出するようにアーム5に対して落下防止部材11の端部11cを付勢する付勢部材14を有する。したがってワーク9は、落下防止部材11によって落下することが防止され得る。落下防止部材11は、付勢部材14によってアーム5に対して移動するため、ワーク9の形状に柔軟に対応し得る。
【0047】
落下防止機構10は、図9に示すように落下防止部材11を複数有する。したがって落下防止機構10は、アーム5から落下したワーク9を安定良く受け止め得る。
【0048】
アーム5には、図6に示すようにベース2からアーム5が延出する方向に延出しかつ落下防止部材11の端部11cが移動可能に取付けられるガイド12が設けられる。ガイド12には、各落下防止部材11の各端部11cをアーム5の先端部に向けて付勢する付勢部材14が設けられる。したがって棚15に設置されたワーク9に向けてアーム5を移動させると、落下防止部材11が棚15等に引っ掛かり、落下防止部材11が付勢部材14に抗してアーム5の基端部に向けて移動する。アーム5によってワーク9を持上げると、付勢部材14の復元力によって落下防止部材11がワーク9の下側に延出する位置に移動する。
【0049】
他の形態において把持装置1は、図1に示す落下防止機構4に代えて図10,11に示す落下防止機構16を有していても良い。落下防止機構16は、落下防止部材16aと一対の昇降体16bを有する。落下防止部材16aは、板状であって一対の脚2dの間を延出する。落下防止部材16aの基端部は、柱2aに上下方向に移動可能に取付けられる。
【0050】
図11に示すように昇降体16bは、パンタグラフ形式であって、第一リンク16cと第二リンク16dとアクチュエータ16eを有する。第一リンク16cは、脚2dの先端部に回転可能に連結される第一端部16c1と、落下防止部材16aの基端部に前後方向に移動可能にかつ回転可能に連結される第二端部16c2を有する。第二リンク16dは、脚2dの基端部に前後方向に移動可能にかつ回転可能に連結される第一端部16d1と、落下防止部材16aの先端部に回転可能に連結される第二端部16d2を有する。第一リンク16cと第二リンク16dは、中央部16c3,16d3において交差しかつ回転可能に連結される。
【0051】
アクチュエータ16eは、図11に示すように脚2dに設けられる。アクチュエータ16eは、第一端部16d1を前後方向に移動させる油圧シリンダまたはモータとモータによって進出する雄ねじ部材を有する。アクチュエータ16eによって第一端部16d1を前後方向に移動させることで、昇降体16bによって落下防止部材16aが昇降する。
【0052】
以上のように落下防止機構16は、図10,図11に示すようにワーク9の下端に近接する落下防止部材16aを有する。したがって落下防止機構16は、アーム5と別個に移動するためにアーム5によって把持されたワーク9に対して柔軟に移動し得る。
【0053】
他の形態において把持装置1は、図1に示すアームリフト6と落下防止機構4に代えて図12に示すアームリフト17と落下防止機構18を有していても良い。アームリフト17は、雄ねじ部材17aと雌ねじ部材17bとモータ17dを有する。雄ねじ部材17aは、上下方向に延出し、上梁2cと下梁2bに軸回転可能に取付けられる。雌ねじ部材17bは、アームブラケット3aに取付けられかつ雄ねじ部材17aに螺合される。モータ17dは、第一ギヤ構体17cを介して雄ねじ部材17aに連結される。第一ギヤ構体17cは、モータ17dと雄ねじ部材17aを切断可能に連結する。
【0054】
図12に示すように落下防止機構18は、落下防止部材18aと昇降体18bを有する。落下防止部材18aは、板状で一対の脚2dの間を延出する。落下防止部材18aの基端部は、柱2aに上下方向に移動可能に取付けられる。昇降体18bは、雄ねじ部材18cと雌ねじ部材18dを有する。雄ねじ部材18cは、上下方向に延出し、上梁2cと下梁2bに軸回転可能に取付けられる。雌ねじ部材18dは、落下防止部材18aに取付けられかつ雄ねじ部材18cに螺合される。雄ねじ部材18cは、第二ギヤ構体18eを介してモータ17dに連結される。第二ギヤ構体18eは、モータ17dと雄ねじ部材18cを切断可能に連結する。
【0055】
以上のように把持装置1は、図12に示すようにアームブラケット3aをベース2に対して昇降させるアームリフト17を有する。アームリフト17は、第一雄ねじ部材17a、第一雌ねじ部材17b、モータ17d、モータ17dと第一雄ねじ部材17bを連結可能な第一ギヤ構体17cを有する。落下防止機構18は、落下防止部材18aと昇降体18bを有する。昇降体18bは、第二雄ねじ部材18c、第二雌ねじ部材18d、第二雄ねじ部材18dとモータ17dを連結可能としモータ17dによって第二雄ねじ部材18dを回転させ得る第二ギヤ構体18eを有する。
【0056】
したがってアーム5と落下防止部材18aを同じモータ17dによって昇降させることができる。これにより把持装置1の部品点数を少なくすることができる。しかもアーム5と落下防止部材18aは、第一ギヤ構体17cと第二ギヤ構体18eによって別個あるいは同時に昇降され得る。これにより把持装置1の自由度が高くなる。
【0057】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば落下防止機構4は、図1,図4に示すように左右方向に張出す落下防止部材4cを有していても良いし、前後方向に張出しおよび折り畳まれる落下防止部材を有していても良い。前後方向に張出す落下防止部材は、左右端部が第一部材4aと第二部材4bに前後方向に移動可能に取付けられ、収納されることで第一部材4aと第二部材4bの基部間あるいは先端部間に位置し、第一部材4aと第二部材4bの間を開放する。
【0058】
落下防止機構4の落下防止部材は、長方形状の板部材が折り畳まれて第一部材4aに設けられてもよい。この場合、折り畳み状態で収納状態になり、張出した状態で張出し状態になる。張出した状態でワーク下面に長方形状の板部材が近接するため、ワークの落下を防止することができる。
【0059】
落下防止機構10は、図6,図8に示すように複数の落下防止部材11の間隔を広くする付勢部材14を有していても良いし、落下防止部材の間隔を狭くする付勢部材を有していても良い。後者の場合、落下防止部材は、付勢部材によってアーム5の先端部に向けて付勢され、アーム5の基端部に位置する落下防止部材の長さがアーム5の先端部側に位置する落下防止部材の長さに比べて短い。アーム5を棚に挿入してワーク9をアーム5の間に位置させることで、アーム5の基端部側に位置する落下防止部材がワークに引っ掛かり、落下防止部材が付勢部材に抗して移動し、落下防止部材の間隔が広がり、ワーク9を棚15から引出した際には落下防止部材が重力によってワーク9の下側に移動する。
【0060】
落下防止機構4の昇降体4mは、図5に示すように脚2dに取付けられても良いし、脚2dと別個にベース2の柱2aから前方に突出する部材に取付けられても良い。
【0061】
アクチュエータ3cとアームリフト6は、図1に示すように雄ねじ部材3d,6aを雌ねじ部材3e,6bに対して軸回転させるモータ3f,6dを有していても良いし、雌ねじ部材3e,6bを雄ねじ部材3d,6aに対して回転させるモータを有していても良い。
【0062】
アクチュエータ3cとアームリフト6は、図1に示すように雄ねじ部材3d,6a等を有していても良いし、ガスによって膨らむ袋(エアバッグ等)と前記袋を巻き取る巻取り器を有していても良い。
【0063】
落下防止部材11は、図6に示すように撓みやすい垂下部11aと中央部11bを有していても良いし、中央部11bよりも剛性が高い垂下部11aを有し、垂下部11aが棚15に当たることで落下防止部材11がアーム5の基端部側へ確実に移動する構造であっても良い。
【0064】
落下防止機構10は、図6に示すように付勢部材14を有していても良いし、付勢部材14を有しておらずかつアーム5を棚15に挿入した際に各落下防止部材11が棚15の端部15aに当たり、ワーク9をアーム5によって持上げて棚15の外へ移動した際に各落下防止部材11が重力によってワーク9の下側に移動しても良い。
【0065】
把持装置1は、図1に示すように車輪2eと車輪2gを備える車両でも良いし、歩行する脚を備えるロボットでも良い。
【0066】
一対のアーム5は、図1に示すように両方がベース2に対して移動しても良いし、一方のみがベース2に対して移動しても良い。
【0067】
落下防止部材4cは、図2,図3に示すようにパンタグラフ式であっても良いし、巻取り機によって巻き取られる帯状であっても良い。この場合の落下防止部材は、巻取り機から排出されることで張出し状態になり、巻取り機に巻き取られることで収納状態になる。
【0068】
落下防止部材は、収納状態と張出し状態の両方の状態にならなくても良い。例えば、落下防止部材は常にはワーク下方空間に張出し、張出し状態のままワーク下端に近接可能な構成を有していても良い。
【0069】
落下防止機構10は、図6〜9に示すように複数の落下防止部材11を有していても良いし、板または布などの一つのみの落下防止部材を有していても良い。
【符号の説明】
【0070】
1…把持装置
2…ベース
2d…脚
2e,2g…車輪
3…アーム機構
3a…アームブラケット
3c,4n,4k,16e…アクチュエータ
3d,6a,17a,18c…雄ねじ部材
3e,6b,17b,18d…雌ねじ部材
4,10,16,18…落下防止機構
4a…第一部材
4b…第二部材
4c,11,16a,18a…落下防止部材
4f2,4g2…先端部
4m,16b,18b…昇降体
5…アーム
6,17…アームリフト
6c…ブラケット
9…ワーク
12…ガイド
13…連結部材
14…付勢部材
15…棚
17c…第一ギヤ構体
18e…第二ギヤ構体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のアームによりワークを把持する把持装置であって、
前記一対のアームと、前記一対のアームが設けられる鉛直方向の柱を有するベースと、前記一対のアームの間隔を変化させるアクチュエータと、前記ワークの前記把持装置からの落下を防止する落下防止機構を有し、
前記落下防止機構は、前記ワークの下方空間に突出可能に移動し、および/または前記ワークの下端に近接する落下防止部材を有する把持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の把持装置であって、
前記ベースは、前記柱から水平方向に延出して前記アームの下方に位置する脚と、前記脚に回転可能かつ、前記把持装置を載置する床面に対して接触可能に設けられる車輪とを有し、
前記落下防止機構は、前記脚に設けられ前記落下防止部材を前記脚に対して昇降させる昇降体を有する把持装置。
【請求項3】
請求項2に記載の把持装置であって、
前記落下防止機構は、第一の前記脚に設けられる第一の前記昇降体によって昇降される第一部材と、第二の前記脚に設けられる第二の前記昇降体によって昇降される第二部材を有し、
前記落下防止部材は、前記第一部材側と前記第二部材側の間の少なくとも一方に収納される収納状態と、前記収納状態から、前記第一部材と前記第二部材の間に張出した張出し状態とに変わる構造を有する把持装置。
【請求項4】
請求項3に記載の把持装置であって、
前記落下防止部材は、前記第一部材に設けられ、かつ前記第一部材から前記第二部材に張出して前記第二部材に支持される先端部を有する把持装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の把持装置であって、
前記落下防止部材は、前記第一部材に回転可能に支持される少なくとも一つの基端部と、前記第二部材側に移動可能な少なくとも一つの先端部を有する把持装置。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のいずれか一つに記載の把持装置であって、
前記落下防止部材は、折り畳み可能な構造を有する把持装置。
【請求項7】
請求項1に記載の把持装置であって、
前記一対のアームが設けられかつ前記ベースに昇降可能に取付けられるアームブラケットと、前記アームブラケットを前記ベースに対して昇降させるアームリフトを有し、
前記アームリフトは、上下方向に延出しかつ外周面に雄ねじが形成された第一雄ねじ部材と、前記アームブラケットに取付けられかつ前記第一雄ねじ部材に螺合される第一雌ねじ部材と、前記第一雄ねじ部材を前記第一雌ねじ部材に対して回転させるモータと、前記モータと前記第一雄ねじ部材を連結可能な第一ギヤ構体を有し、
前記落下防止機構は、前記ベースに昇降可能に取付けられる落下防止部材と、前記落下防止部材を前記ベースに対して昇降させる昇降体を有し、
前記昇降体は、上下方向に延出しかつ外周面に雄ねじが形成された第二雄ねじ部材と、前記落下防止部材に取付けられかつ前記第二雄ねじ部材が螺合される第二雌ねじ部材と、前記第二雄ねじ部材と前記モータを連結可能とし前記モータによって前記第二雄ねじ部材を回転させ得る第二ギヤ構体を有する把持装置。
【請求項8】
一対のアームによりワークを把持する把持装置であって、
前記一対のアームと、前記一対のアームが設けられる鉛直方向の柱を有するベースと、前記一対のアームの間隔を変化させるアクチュエータと、前記アームで把持した前記ワークの下面に移動して前記ワークの前記把持装置からの落下を防止する落下防止機構を有し、
前記落下防止機構は、前記一対のアームの間に介在しかつ端部が前記各アームに移動可能に取付けられる落下防止部材と、前記一対のアームによって前記ワークを持上げた際に前記ワークの下側に前記落下防止部材が延出するように前記アームに対して前記落下防止部材の前記端部を付勢する付勢部材を有する把持装置。
【請求項9】
請求項8に記載の把持装置であって、
前記落下防止機構は、前記落下防止部材を複数有する把持装置。
【請求項10】
請求項9に記載の把持装置であって、
前記アームには、前記ベースから前記アームが延出する方向に延出しかつ前記落下防止部材の前記端部が移動可能に取付けられるガイドが設けられ、
前記ガイドには、前記各落下防止部材の前記各端部を前記アームの先端部に向けて付勢する前記付勢部材が設けられる把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−201436(P2012−201436A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65630(P2011−65630)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】