説明

投写型映像表示装置

【課題】高精度にフォーカス調整を行なうことが可能な投写型映像表示装置を提供する。
【解決手段】投写型映像表示装置は、フォーカス調整用パターンをスクリーンSC上に投写するための投写部と、フォーカス調整用パターンを撮像して撮像画像として取得する撮像部60と、撮像画像のフォーカスの合焦具合を示す評価値であるコントラストデータを算出するための合焦算出手段と、算出されたコントラストデータに基づき、投写画像光の焦点が投写面に合うように投写部のフォーカス調整を行なうためのフォーカス調整手段とを備える。フォーカス調整用パターンは、互いに明度が異なる第1の領域および第2の領域を有する。投写型映像表示装置は、撮像画像内で明度の分解能およびコントラストの少なくとも一方が均一となるように、フォーカス調整用パターンにおける第1の領域および第2の領域の形態を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、投写型映像表示装置に関し、より特定的には、投写画像のフォーカス状態を自動的に調整する自動フォーカス調整機能を備えた投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動フォーカス調整機能を備えた投写型映像表示装置(以下、プロジェクタという)として、特開2006−10791号公報(特許文献1)には、投写面上に投写されたテストパターンを撮像して撮像画像を生成し、画像光の焦点の移動に伴ない変動する撮像画像のフォーカス状態を示す指標値を用いてフォーカス調整を行なう技術が開示されている。
【0003】
この特許文献1に記載のプロジェクタでは、テストパターンは、白色領域と黒色領域とが横方向に交互に配置された構成されている。そして、撮像部がスクリーンに投写されたテストパターンを撮像して撮像画像を生成すると、撮像画像のフォーカス状態を示す指標値として、撮像画像のテストパターンの幅方向に沿った明度の変化の程度を表わす値を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−10791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、撮像部とスクリーンとの位置関係(たとえば、撮像部およびスクリーン間の距離やスクリーンに対する撮像部の傾斜角度など)や撮像部の解像度に起因して撮像画像内でコントラストや分解能に差が生じてしまうという問題があった。
【0006】
このように撮像画像内でコントラストおよび分解能の差が発生すると、撮像画像からフォーカス状態を示す指標値を正確に算出することが困難となるため、高精度にフォーカス調整を行なうことができないという問題が生じる。
【0007】
それゆえ、この発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高精度にフォーカス調整を行なうことが可能な投写型映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のある局面に従えば、画像を投写して表示する投写型映像表示装置は、キャリブレーション用画像を投写面に投写するための投写部と、キャリブレーション用画像を撮像して撮像画像として取得する撮像部と、撮像画像のフォーカスの合焦具合を算出するための合焦算出手段と、算出された合焦具合に基づき、投写画像光の焦点が投写面に合うように投写部のフォーカス調整を行なうためのフォーカス調整手段とを備える。キャリブレーション用画像は、互いに明度が異なる第1の領域および第2の領域を有する。投写型映像表示装置は、撮像画像内で明度の分解能およびコントラストの少なくとも一方が均一となるように、第1の領域および第2の領域の形態を調整するためのキャリブレーション用画像調整手段をさらに備える。
【0009】
好ましくは、キャリブレーション用画像は、第1の領域および第2の領域を交互に配列して構成される。キャリブレーション用画像調整手段は、第1の領域および第2の領域の各々の配列方向の幅を、撮像画像内での明度の分解能が均一となるように、撮像部と投写面との位置関係および撮像部の解像度に応じて調整する。
【0010】
好ましくは、キャリブレーション用画像調整手段は、第1の領域および第2の領域の各々の配列方向の幅を、撮像画像内で各領域が一定幅となるように調整する。
【0011】
好ましくは、キャリブレーション用画像調整手段は、第1の領域および第2の領域の少なくとも一方の明度を、撮像画像内でコントラストが均一となるように、撮像部と投写面との位置関係および撮像部の解像度に応じて調整する。
【0012】
好ましくは、キャリブレーション用画像調整手段は、撮像画像内で各領域が一定の明度を示すように、第1および第2の領域の少なくとも一方に、明度が連続して変化するグラデーションを設ける。
【0013】
好ましくは、投写部は、各々が所定幅を有する第1および第2の領域を交互に配して構成されたテスト用画像を投写面に投写する。撮像部は、投写部によって投写されたテスト用画像を撮像して撮像画像を生成する。投写型映像表示装置は、撮像画像に基づき、撮像画像内でのコントラストおよび分解能の差を検出するための検出手段とをさらに備える。キャリブレーション用画像調整手段は、検出手段の検出結果に基づいて第1の領域および第2の領域の形態を調整する。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、投写画像のフォーカスの合焦具合を精度よく算出することができるため、高精度にフォーカス調整を行なうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置の概略構成図である。
【図2】図1における光学エンジンの概略構成図である。
【図3】図1におけるプロジェクタの主要部の制御ブロック図である。
【図4】本実施の形態においてキャリブレーション用画像として用いられるフォーカス調整用パターンを示す図である。
【図5】自動フォーカス調整処理の処理手順を説明するフローチャートである。
【図6】図4に示すフォーカス調整用パターンが投写された場合に、撮像部60により生成された撮像画像の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る調整処理によって調整されたフォーカス調整用パターンの一例を示す図である。
【図8】図7に示すフォーカス調整用パターンが投写された場合に、撮像部60により生成された撮像画像の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係るフォーカス調整用パターンの調整処理の処理手順を説明するフローチャートである。
【図10】本実施の形態においてテスト用画像として用いられるコントラスト差比較用パターンを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る調整処理によって調整されたフォーカス調整用パターンの一例を示す図である。
【図12】図11に示すフォーカス調整用パターンが投写された場合に、撮像部60により生成された撮像画像の一例を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係るフォーカス調整用パターンの調整処理の処理手順を説明するフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態3に係る調整処理によって調整されたフォーカス調整用パターンの一例を示す図である。
【図15】図14に示すフォーカス調整用パターンが投写された場合に、撮像部60により生成された撮像画像の一例を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係るフォーカス調整用パターンの調整処理の処理手順を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0017】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態に係る投写型映像表示装置の概略構成図である。
【0018】
図1を参照して、投写型映像表示装置(以下、プロジェクタという)100は、光学エンジン200と、投写レンズユニット300と、反射ミラー400と、カバー500と、撮像部60とを備える。なお、プロジェクタ100は、スピーカ等の音声を出力するための構成要素や、光学エンジン200の構成要素および音声出力部を電気的に制御するための回路基板なども搭載するが、図1では、これらを含む一部の構成要素の図示は省略されている。
【0019】
光学エンジン200は、光源(図示せず)を含む。光学エンジン200は、入力される映像信号に応じて光源から出射された光を変調することにより、画像光を生成する。光学エンジン200には、投写レンズユニット300が装着されている。光学エンジン200から出射された画像光は、投写レンズユニット300に入射される。
【0020】
投写レンズユニット300は、外筒301と、外筒301内に配された内筒302とを含む。内筒302内には、可動レンズ群305が配されている。内筒302は、図のY−Z平面の面内方向に回動可能に構成されている。内筒302が回動すると、カム機構などの連動機構によって可動レンズ群305の位置が光軸L1の方向に変位される。これによって、投写画像のフォーカス状態が調整される。ここで、フォーカス状態とは、どこに画像光の焦点の位置が合っているかの状態を意味している。フォーカス状態の変化は、内筒302を回動することにより可動レンズ群305を光軸L1に沿って前後に変位させることにより、焦点の位置を変化させることにより行なう。
【0021】
投写レンズユニット300の後方には、反射ミラー400が配されている。反射ミラー400は、非球面形状または自由曲面形状の凹面状反射面を有し、投写レンズユニット300の光軸L1に対して下方(投写口502と反対側)に有効反射領域を有している。投写レンズユニット300から出射された画像光は、反射ミラー400によって反射される。
【0022】
投写レンズユニット300および反射ミラー400は、カバー500によって覆われている。カバー500には、反射ミラー400にて反射された画像光が通過する投写口502が形成されている。
【0023】
このプロジェクタ100では、スクリーンSCとプロジェクタ本体との距離が変更されることにより、スクリーンSCとの間の画像光の投写距離が変更されると、投写サイズが拡大あるいは縮小される。具体的には、投写サイズを小さくするときにはプロジェクタ本体をスクリーンSCに近づければよく、投写サイズを大きくするときにはプロジェクタ本体をスクリーンSCから遠ざければよい。
【0024】
撮像部60は、カバー500上の投写口502近傍に設置されている。画像光が通過する投写口502に可能な限り近づけて撮像部60を配置することで、撮像部60により生成された撮像画像に基づき、投写口502からスクリーンSCまでの距離(投写距離に相当)を正確に検出することを可能としている。
【0025】
撮像部60は、投写画像を含む領域を、撮像面を介して撮像して撮像画像を生成する。撮像部60は、撮像素子と、当該撮像素子の各画素からの出力信号の取得など撮像素子を制御する撮像素子制御部と、撮像光学系とを含む。撮像素子としては、たとえばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)などを用いることができる。なお、撮像部60の撮像範囲は、投写画像が十分収まる範囲とする。
【0026】
図2は、図1における光学エンジン200の概略構成図である。
図2を参照して、光学エンジン200は、光源201と、導光光学系202と、3つの透過型の液晶パネル203,204,205と、ダイクロイックプリズム206とを含む。なお、液晶パネル203,204,205の各々の入射側および反射側には、図示しない偏光板が配されている。
【0027】
光源201から出射された白色光は、導光光学系202によって、赤色波長域の光(以下、「R光」という)と、緑色波長域の光(以下、「G光」という)と、青色波長域の光(以下、「B光」という)とに分離され、液晶パネル203,204,205にそれぞれ照射される。これらの液晶パネル203,204,205によって変調されたR光、G光、B光は、ダイクロイックプリズム206によって色合成され、画像光として出射される。
【0028】
なお、光学エンジン200内に配される光変調素子としては、上記の透過型の液晶パネル203,204,205の他、反射型の液晶パネルや、MEMSデバイスを用いることもできる。また、液晶パネルを用いた場合、上記のように3板式ではなく、たとえばカラーホイールを用いた単板式の光学系とすることもできる。
【0029】
図3は、図1におけるプロジェクタ100の主要部の制御ブロック図である。
図3を参照して、プロジェクタ100は、入力部10と、画像供給部12と、画像処理部14と、液晶表示駆動部16と、画像投写部18と、レンズ駆動部22と、制御部30と、操作受付部32と、記憶部34とを備える。
【0030】
入力部10は、外部の信号供給装置(図示せず)から供給される画像信号を受け付けるための入力ポートを含む。信号供給装置には、DVD(Digital Versatile Disc)再生装置、Blu−Rayディスク再生装置などのデジタル信号を出力するデジタル信号供給装置および、コンピュータなどのアナログ信号を出力するアナログ信号供給装置などが含まれる。
【0031】
画像供給部12は、画像データを画像処理部14に供給する。具体的には、画像供給部12は、入力部10に接続されており、入力部10から入力された画像信号を、画像処理部14で処理可能な形式の画像データに変換し、画像処理部14に出力する。
【0032】
画像処理部14は、制御部30からの指示に基づいて、画像供給部12から供給された画像データに対し、解像度を液晶パネル203,204,205(図2)の解像度(画素数)に合わせる解像度変換や、輝度調整、コントラスト調整、シャープネス調整などの各種画質調整を施し、画像信号を液晶表示駆動部16に出力する。なお、画像処理部14から出力される画像信号は、液晶パネル203,204,205のすべての画素に対応する複数の画素値によって構成されている。画素値とは、対応する画素の光透過率を定めるものである。
【0033】
液晶表示駆動部16は、画像処理部14から出力された画像信号に従い、画像投写部18による画像の表示動作を制御するための駆動信号を生成して画像投写部18に出力する。具体的には、液晶表示駆動部16は、画像処理部14から出力される画像信号に応じた駆動電圧を液晶パネル203,204,205の各画素に印加することにより、各画素を画像信号に応じた光透過率に設定する。これにより、光源201(図2)から出射された光は、液晶パネル203,204,205を通過することによって変調され、画像信号に応じた画像光が色光ごとに形成される。形成された各色の画像光は、色合成光学系によって画素ごとに合成されてカラー画像を示す画像光となった後、投写レンズユニット300によってスクリーンSCに投写される。
【0034】
画像投写部18は、図2に示した光学エンジン200と、投写レンズユニット300とを含んで構成される。なお、投写レンズユニット300は、上記のように、プロジェクタ100の光軸L1に沿って変位可能に構成された可動レンズ群305(図1)を含んでいる。
【0035】
レンズ駆動部22は、制御部30の指示に基づいて、投写レンズユニット300に設けられる可動レンズ群305を光軸L1の方向に変位させるためのアクチュエータ(カム機構などの連動機構を含む)を駆動する。
【0036】
なお、可動レンズ群305は、光軸L1の方向に沿って一定範囲、変位可能に構成されるとともに、光軸L1を中心として一定範囲、光軸L1に垂直な方向にも変位可能に構成されている。これにより、スクリーンSCなどの投写面への投写画像の投写位置を画面の垂直方向および水平方向に調整することができる。このような可動レンズ群305の変位動作は、上記のレンズ駆動部22がアクチュエータを駆動することにより行なうことができる。
【0037】
制御部30は、CPU(Central Processing Unit)、フラッシュメモリ等からなるROM(Read Only Memory)、各種データ等の一時記憶に用いられるRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を備え、コンピュータとして機能するものである。制御部30は、CPUが記憶部34に記憶されている制御プログラムに従って動作することにより、プロジェクタ100の動作を統括制御する。なお、この制御プログラムには、後述する、投写画像のフォーカス状態を自動的に調整するプログラムとしての「自動フォーカス調整プログラム」が含まれている。
【0038】
操作受付部32は、ユーザが操作するリモコン(リモートコントローラの略)から送信される赤外線変調されるリモコン信号を受信する。リモコン信号には、プロジェクタ100を遠隔制御するためのコマンド信号が含まれる。
【0039】
なお、操作受付部32は、リモコン信号を受信するだけでなく、プロジェクタ100の本体に設けられ、プロジェクタ100を操作するための複数の操作用ボタンを有する操作部(図示せず)からの信号を受付けることができる。操作受付部32は、リモコンあるいは操作部への操作がなされると、当該操作を受付け、制御部30への各種動作のトリガとなるコマンド信号を送る。
【0040】
図3に示す構成において、プロジェクタ100は、撮像部60と、撮像画像記憶部26と、撮像画像解析部28とをさらに備える。
【0041】
撮像部60は、制御部30からの指示に基づいて、投写画像を撮像し、撮像画像データを生成する。撮像部60により生成された撮像画像データは、撮像画像記憶部26に記憶される。
【0042】
撮像画像解析部28は、撮像画像記憶部26に記憶される撮像画像データに基づいて、投写画像の状態を検出する。本実施の形態に係るプロジェクタ100は、撮像画像解析部28による解析結果に基づいて投写画像を自動調整する自動調整機能を有している。なお、投写画像の状態には、以下に述べるフォーカス状態の他、画像の歪み状態、表示サイズおよび表示位置などが含まれる。これらの投写画像の状態は、スクリーンSCに投写された所定のキャリブレーション用画像に基づく投写画像に基づいて検出することができる。
【0043】
(自動フォーカス調整)
次に、本発明の実施の形態によるプロジェクタ100が実行するスクリーンSCなどの投写面上に画像光の焦点を合わせるためのフォーカス調整を自動的に行なう処理(以下、自動フォーカス調整処理という)について、図面を参照して説明する。
【0044】
自動フォーカス調整処理は、キャリブレーション用画像をスクリーンSC上に投写することにより行なわれる。図4は、本発明の実施の形態においてキャリブレーション用画像として用いられるフォーカス調整用パターンを示す図である。
【0045】
図4を参照して、フォーカス調整用パターンは、互いに明度が異なる2つの領域を横方向に交互に配列して構成される。図4では、フォーカス調整用パターンは、所定幅の複数の黒色領域と所定幅の複数の白色領域とを含んでいる。なお、同図では、複数の黒色領域および白色領域の各々を一定幅としているが、各色領域の幅を異ならせてもよい。
【0046】
図4に示すフォーカス調整用パターンは、予め記憶部34に格納されている。制御部30は、フォーカス自動調整が指示されると、記憶部34からフォーカス調整用パターンを読み出して画像処理部14に送出する。画像処理部14は、フォーカス調整用パターンを表示のための信号(表示画像信号)に変換して出力する。液晶表示駆動部16は、表示画像信号に応じて、画像投写部18内部の液晶パネル203,204,205を駆動制御する。これにより、フォーカス調整用パターンが投写レンズユニット300から投写される。
【0047】
図5は、自動フォーカス調整処理の処理手順を説明するフローチャートである。図5に示す各ステップの処理は、フォーカス調整指示に応答して制御部30を構成するCPUが予め格納された自動フォーカス調整プログラムを実行することによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0048】
なお、フォーカス調整指示は、ユーザがリモコンまたは操作部に対して自動フォーカス調整を指示するための操作を行なった場合に、操作受付部32(図3)により発行されるコマンド信号である。あるいは、プロジェクタ100の電源投入時や映像信号の入力時において、フォーカス調整指示を発行する構成としてもよい。
【0049】
図5を参照して、制御部30は、ステップS091により、画像処理部14を指示して、図4に示すフォーカス調整用パターンをスクリーンSC上に投写させる。
【0050】
次に、制御部30は、ステップS092により、レンズ駆動部22を制御して、投写レンズユニット300内部の可動レンズ群305の移動を開始させる。具体的には、レンズ駆動部22は、投写レンズユニット300内部のアクチュエータに駆動信号を供給する。アクチュエータは、レンズ駆動部22からの駆動信号に従って可動レンズ群305を光軸L1の方向にその可動範囲で移動させる。なお、レンズ駆動部22から繰り出し方向駆動信号がアクチュエータに与えられると、可動レンズ群305が繰り出し方向(前方向)に移動し、引き込み方向駆動信号がアクチュエータに与えられると、可動レンズ群305が引き込み方向(後ろ方向)に移動する。たとえば、レンズ駆動部22は、アクチュエータに対して繰り出し方向駆動信号を与えるものとする。
【0051】
制御部30は、ステップS093により、投写されているフォーカス調整用パターンを撮像部60に撮像させる。撮像部60により生成された撮像画像データは、撮像画像記憶部26に記憶される。
【0052】
そして、制御部30は、ステップS094により、撮像画像解析部28を指示して、撮像画像を分析し、フォーカスの合焦具合を示す評価値としてのコントラストデータを算出する。制御部30は、上記可動レンズ群305の移動を開始するときに、タイマをスタートさせるとともに、一定時間間隔でコントラストデータを生成して、記憶部34に格納する。
【0053】
ここで、コントラストデータは、撮像部60内部の撮像素子が出力する信号上の高周波成分の程度を示す信号であり、出力信号上で高周波成分が得られているほど、画像光の焦点の位置がスクリーンSC上により近いようなフォーカス状態であると判定される。すなわち、画像光の焦点の位置がスクリーンSC上に合っている状態(以下、合焦状態という)のときには、スクリーンSC上に投写されたフォーカス調整用パターンにおいて、白色領域と黒色領域との境界が鮮明に表現される。そのため、すべての白色領域および黒色領域の明度が一定となり、コントラストの値は最大となる。これに対して、画像光の焦点がスクリーンSC上から離れるに従って、スクリーンSC上に投写されたフォーカス調整用パターンでは、白色領域と黒色領域との境界において白色と黒色とが混合されたように表現される。そのため、当該境界近傍では、黒色領域の明度が大きくなる一方で白色領域の明度が小さくなることにより、コントラストの値が小さくなる。
【0054】
したがって、制御部30がタイマをスタートさせてからの時間経過(可動レンズ群305の位置)とコントラストとの間には、可動レンズ群305がフォーカス状態が合焦状態となる位置に近づいていく方向に移動すると、コントラストの値は可動レンズ群305の変位に伴なって増加し、可動レンズ群305がフォーカス状態が合焦状態となる位置のときにコントラストの値が最大となり、可動レンズ群305がフォーカス状態が合焦状態となる位置を通り過ぎるとコントラストの値が小さくなるという山なりの関係が得られる。なお、以下では、フォーカス状態が合焦状態となるときの可動レンズ群305の位置を、合焦位置とも称する。
【0055】
制御部30は、ステップS095により、可動レンズ群305の位置が所定の可動範囲の限界値に到達することにより、可動レンズ群305の移動が終了したか否かを判定する。可動レンズ群305の位置が可動範囲の限界値に到達していないとき(ステップS095のNO判定時)には、制御部30は、処理をステップS092に戻し、引き続き可動レンズ群305を移動させる。
【0056】
一方、可動レンズ群305の位置が可動範囲の限界値に到達したとき(ステップS095のYES判定時)には、制御部30は、ステップS096により、記憶部34に格納されているコントラストデータのうち、最も良好なコントラストデータ(コントラストが最大値となる)を判定し、このコントラストデータが得られたときの時間情報(可動レンズ群305の合焦位置情報)を取得する。
【0057】
最後に、制御部30は、ステップS097により、可動レンズ群305を合焦位置まで移動させる。このとき、制御部30は、レンズ駆動部22を指示して、アクチュエータに繰り出し方向駆動信号を与えた全時間から時間情報を減算した時間だけ、アクチュエータに引き込み駆動信号を与える。これにより、可動レンズ群305は、アクチュエータにより合焦位置まで移動する。
【0058】
以上の処理を行なうことにより、本実施の形態に係るプロジェクタ100は、自動的にフォーカス調整を行なうことができる。なお、上述した自動フォーカス調整においては、可動レンズ群305を所定範囲で移動させたときに得られたコントラストデータおよび時間情報を全て記憶部34に格納してから、最も良好なコントラストデータを判定する構成としているが、一定時間間隔でコントラストデータが得られるごとに以前のコントラストデータとの比較処理を行ない、コントラストの値が大きい方のコントラストデータおよび時間情報のみを更新記録していくようにしてもよい。
【0059】
一方、上記の自動フォーカス調整は、スクリーンSC上に投写されたフォーカス調整用パターンを撮像して撮像画像を生成し、撮像画像のフォーカスの合焦具合に関する評価値(コントラストデータ)を算出する構成を採用するところ、撮像部60とスクリーンSCとの位置関係や撮像部60の解像度に起因して、撮像画像内でコントラストや分解能に差が生じる虞がある。
【0060】
たとえば、本実施の形態に係るプロジェクタ100は、投写距離を短くするために、反射ミラー400(図1)によって、画像光を広角かつ斜め方向に投写させる構成を採用している。本構成において、撮像部60は、画像光を透過する投写口502の近傍に配置されており、フォーカス調整用パターン(図4)を斜め方向に撮像する。そのため、撮像部60により生成される撮像画像には、撮像部60とスクリーンSCとの位置関係(撮像部60およびスクリーンSC間の距離やスクリーンSCに対する撮像部60の傾斜角度)に起因して、撮像画像内でコントラストや分解能に差が発生する場合がある。このように撮像画像内でコントラストおよび分解能の差が発生すると、撮像画像からフォーカスの合焦具合を示す評価値としてのコントラストデータを精度良く生成することが困難となる。
【0061】
図6は、図4に示すフォーカス調整用パターンが投写された場合に、撮像部60により生成された撮像画像の一例を示す図である。
【0062】
図6を参照して、撮像画像は、上辺に比べて下辺の方が長い台形形状を有している。そして、この台形形状の撮像画像において、フォーカス調整用パターン(図4)を反映して、白色領域と黒色領域とが横方向に交互に配列されているが、各色領域の幅は、縦方向に沿って上に行くに従って狭くなっている。これは、本実施の形態によるプロジェクタ100では、撮像部60が投写口502の近傍に配置されるため、斜め方向からスクリーンSC上に投写された画像を撮像していることによる。
【0063】
さらに、図6に示す撮像画像において、複数の白色領域の各々には、縦方向に沿って明度差が生じている。詳細には、縦方向に沿って上に行くに従い明度が徐々に小さくなっている。同様に、複数の黒色領域の各々においても、縦方向に沿って明度差が生じている。詳細には、縦方向に沿って上に行くに従い明度が徐々に大きくなっている。各色領域における明度の変化はいずれも、縦方向に沿って上に行くに従い、撮像素子およびスクリーンSC間の距離が長くなることによる。これにより、撮像画像内の下辺側の領域(図6の領域RGN2)では、白色領域と黒色領域との境界が鮮明に表現される一方で、撮像画像内の上辺側の領域(図6の領域RGN1)では、白色領域と黒色領域との境界において白色と黒色との混合が発生している。その結果、撮像画像内では、下辺側の領域RGN2のコントラストの値が大きくなり、上辺側の領域RGN1のコントラストの値が小さくなるというコントラスト差が生じている。
【0064】
そして、このように撮像画像内にコントラスト差が生じると、画像光の焦点がスクリーンSC上にほとんど合っているときであっても、撮像画像から得られるコントラストデータにおいてはコントラストの値が小さくなる。そのため、撮像画像内のコントラスト差が可動レンズ群305の合焦位置とコントラストデータとの相関に影響を及ぼすことにより、精度良くフォーカス調整を行なうことが困難となる。
【0065】
また、図6の撮像画像では、下辺側の領域RGN2と比べて上辺側の領域RGN1の方が白色領域および黒色領域の幅が狭くなっている。そのため、撮像部60の撮像素子(CCDやCMOSなど)の持つ解像度によっては、下辺側の領域RGN2と上辺側の領域RGN1との間で輝度の分解能に差が発生する虞がある。図6の場合では、上辺側の領域RGN1に含まれる全ての白色領域および黒色領域を解像することができない虞がある。このように撮像画像内において分解能の差が生じると、正確なコントラストデータを生成することができず、高精度のフォーカス調整を行なうことが困難となる。
【0066】
本発明に係るプロジェクタは、このような撮像部とスクリーンとの位置関係や撮像部の解像度などに起因して生じる撮像画像内でのコントラストおよび分解能の差を補償するように、フォーカス調整用パターンを調整する。フォーカス調整用パターンの調整処理は、交互に配された白色領域および黒色領域の各々の形態(形状および明度)を調整することにより行なう。本発明の実施の形態1では、フォーカス調整用パターンの調整処理の一態様として、撮像画像内のコントラスト差を補償するようにフォーカス調整用パターンを調整する。以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態1に係るフォーカス調整用パターンの調整処理について説明する。
【0067】
図7は、本発明の実施の形態1に係る調整処理によって調整されたフォーカス調整用パターンの一例を示す図である。
【0068】
図7を参照して、調整後のフォーカス調整用パターンは、図4に示すフォーカス調整用パターンと同様に、黒色領域と白色領域とを横方向に交互に配列して構成される。一方、調整後のフォーカス調整用パターンでは、各色領域には、縦方向に沿って明度が連続的に変化するグラデーションが設けられている。具体的には、各白色領域は、縦方向に沿って上に行くに従い明度が徐々に大きくなっている。同様に、各黒色領域は、縦方向に沿って上に行くに従い明度が徐々に大きくなっている。これにより、撮像画像内の下辺側の領域(図7の領域RGN4)では、白色領域と黒色領域との境界において白色と黒色との混合が発生している一方で、撮像画像内の上辺側の領域(図7の領域RGN3)では、白色領域と黒色領域との境界が鮮明に表現される。
【0069】
ここで、各色領域のグラデーションは、図6に示した撮像画像内でのコントラストの分布とは逆の分布がフォーカス調整用パターンに形成されるように設けられる。すなわち、図6の撮像画像は、縦方向に沿って上に行くに従いコントラストが低くなるという分布を有することから、図7のフォーカス調整用パターンには、縦方向に沿って下に行くに従いコントラストが低くなるという分布を形成する。なお、図7では、黒色領域および白色領域の各々にグラデーションを設ける構成としているが、いずれか一方の領域にグラデーションを設ける構成としてもよい。
【0070】
図8は、図7に示すフォーカス調整用パターンが投写された場合に、撮像部60により生成された撮像画像の一例を示す図である。
【0071】
図8を参照して、撮像画像は、上辺に比べて下辺の方が長い台形形状を有している。そして、この台形形状の撮像画像において、フォーカス調整用パターン(図7)を反映して、白色領域と黒色領域とが横方向に交互に配列されている。
【0072】
この撮像画像において、各白色領域は一定の明度を示している。同様に、各黒色領域は一定の明度を示している。これにより、撮像画像内でコントラストが均一となっている。すなわち、上記のように、撮像画像内のコントラストの分布とは逆の分布をフォーカス調整用パターンに形成したことによって、撮像画像内のコントラスト差がフォーカス調整用パターンのコントラスト差によって相殺されている。この結果、撮像画像内のコントラストを均一化できる。これにより、撮像画像からは、可動レンズ群305の合焦位置との相関が反映されたコントラストデータを生成することができるため、高精度のフォーカス調整を行なうことが可能となる。
【0073】
以下、フォーカス調整用パターンの調整処理を、図9のフローチャートに従って説明する。なお、図9に示す各ステップの処理は、フォーカス調整指示に応答して制御部30を構成するCPUが予め格納されたパターン調整処理プログラムを実行することによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
【0074】
図9を参照して、ステップS01により、フォーカス調整指示が入力されると、制御部30は、記憶部34が撮像画像内でのコントラスト差に関する情報(以下、コントラスト差情報という)を有しているか否かを判定する。コントラスト差情報とは、撮像部60とスクリーンSCとの位置関係や撮像部60の解像度などに起因して生じる撮像画像内でのコントラスト差を示す情報である。たとえば、プロジェクタ100の投写距離および撮像部60の解像度と撮像画像内に生じるコントラスト差との対応関係を示すマップを予め取得しておき、プロジェクタ100の投写距離および撮像部60の解像度が既知である場合には、上記マップを参照することにより、コントラスト差情報を取得することができる。あるいは、前回フォーカス調整パターンの補正処理を行なった時点以降にプロジェクタ本体を移動させていない場合には、前回の補正処理で取得したコントラスト差情報を利用することができる。
【0075】
コントラスト差情報を有している場合(ステップS02のYES判定時)には、制御部30は、ステップS08により、画像処理部14を指示して、この既知のコントラスト差情報に応じたフォーカス調整用パターンをスクリーンSC上に投写させる。なお、フォーカス調整用パターンには、既知のコントラスト差情報に基づいて、撮像画像内でのコントラストの分布とは逆の分布がフォーカス調整用パターンに形成されるように、各色領域にグラデーションが設けられている。
【0076】
一方、コントラスト差情報を有していない場合(ステップS02のNO判定時)には、制御部30は、ステップS03〜S05により、撮像画像内に生じるコントラスト差を検出するための処理を実行してコントラスト差情報を取得する。具体的には、制御部30は、ステップS03により、画像処理部14を指示して、コントラスト差比較用パターンをスクリーンSC上に投写させる。コントラスト差比較用パターンは、撮像画像内に生じるコントラスト差を検出するためのテスト用画像であり、たとえば図10に示すように、フォーカス調整用パターンよりも幅広の白色領域および黒色領域を交互に配列して構成される。
【0077】
制御部30は、ステップS04により、投写されているコントラスト差比較用パターンを撮像部60に撮像させる。撮像部60により生成された撮像画像データは、撮像画像記憶部26に記憶される。
【0078】
次に、制御部30は、ステップS05により、撮像画像解析部28を指示して、撮像画像を分析し、撮像画像内に生じているコントラスト差を検出する。撮像画像解析部28は、撮像画像を複数の領域に分割し、該領域ごとにコントラストを算出する。そして、撮像画像解析部28は、算出された領域ごとのコントラストを、複数の領域間で比較することにより、撮像画像内のコントラスト差を検出する。検出された撮像画像内のコントラスト差は、コントラスト差情報として記憶部34に格納される。
【0079】
コントラスト差情報を取得すると、制御部30は、ステップS06により、コントラスト差情報に応じて図4のフォーカス調整用パターンを補正する。具体的には、制御部30は、画像処理部14を指示して、撮像画像内でのコントラストの分布とは逆の分布が形成されるように、図4のフォーカス調整用パターンの各色領域にグラデーションを設ける。
【0080】
そして、制御部30は、ステップS07により、画像処理部14を指示して、補正後のフォーカス調整用パターンをスクリーンSC上に投写させる。これにより、ステップS09では、撮像画像内でのコントラスト差が補償されたフォーカス調整用パターンを用いて、自動フォーカス調整処理(図5)が実行される。
【0081】
以上のように、この発明の実施の形態1に係るプロジェクタによれば、自動フォーカス調整処理の実行時には、撮像画像内でのコントラストが均一となるように白色領域および黒色領域の明度が調整されたフォーカス調整用パターンがスクリーン上に投写される。したがって、フォーカス調整用パターンの撮像画像に基づいて、可動レンズ群の合焦位置との相関が反映されたコントラストデータを生成することができる。この結果、高精度のフォーカス調整を行なうことが可能となる。
【0082】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2では、本発明に係るフォーカス調整用パターンの調整処理の他の態様として、撮像画像内の分解能差を補償するようにフォーカス調整用パターンを調整する。以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態2に係るフォーカス調整用パターンの調整処理について説明する。
【0083】
図11は、本発明の実施の形態2に係る調整処理によって調整されたフォーカス調整用パターンの一例を示す図である。
【0084】
図11を参照して、調整後のフォーカス調整用パターンは、図4に示すフォーカス調整用パターンと同様に、黒色領域と白色領域とを横方向に交互に配列して構成される。一方、調整後のフォーカス調整用パターンでは、各色領域の横方向の幅が縦方向に沿って連続的に変化している。具体的には、各白色領域は、縦方向に沿って上に行くに従い幅が徐々に大きくなっている。同様に、各黒色領域は、縦方向に沿って上に行くに従い幅が徐々に大きくなっている。これにより、撮像画像内の上辺側の領域(図11の領域RGN5)は、下辺側の領域(図11の領域RGN6)と比較して、白色領域および黒色領域の本数が少なくなっている。
【0085】
ここで、各色領域の幅は、撮像画像内での分解能が均一となるように、撮像部60とスクリーンSCとの位置関係および撮像部60の解像度に応じて設定される。たとえば、図6の撮像画像では、縦方向に沿って上に行くに従い分解能が低くなることから、図11のフォーカス調整用パターンでは、縦方向に沿って上に行くに従い白色領域および黒色領域の幅を広くするように形成する。すなわち、図6の撮像画像は、縦方向に沿って上に行くに従い分解能が低くなるという分布を有することから、図11のフォーカス調整用パターンには、縦方向に沿って下に行くに従い分解能が低くなるという分布を形成する。
【0086】
図12は、図11に示すフォーカス調整用パターンが投写された場合に、撮像部60により生成された撮像画像の一例を示す図である。
【0087】
図12を参照して、撮像画像は、上辺に比べて下辺の方が長い台形形状を有している。そして、この台形形状の撮像画像において、フォーカス調整用パターン(図11)を反映して、白色領域と黒色領域とが横方向に交互に配列されている。
【0088】
この撮像画像において、白色領域および黒色領域はそれぞれ一定の幅を示している。上記のように、撮像画像内の分解能の分布とは逆の分布をフォーカス調整用パターンに形成したことによって、撮像画像内の分解能の差がフォーカス調整用パターンの分解能の差によって相殺されている。この結果、撮像画像内の分解能を均一化できる。これにより、撮像画像からは、可動レンズ群305の合焦位置との相関が反映されたコントラストデータを生成することができるため、高精度のフォーカス調整を行なうことが可能となる。
【0089】
以下、フォーカス調整用パターンの調整処理を、図13のフローチャートに従って説明する。
【0090】
図13を参照して、ステップS11により、フォーカス調整指示が入力されると、制御部30は、記憶部34が撮像画像内での分解能の差に関する情報(以下、分解能差情報という)を有しているか否かを判定する。分解能差情報とは、撮像部60とスクリーンSCとの位置関係や撮像部60の解像度などに起因して生じる撮像画像内での分解能の差を示す情報である。たとえば、プロジェクタ100の投写距離および撮像部60の解像度と撮像画像内に生じる分解能の差との対応関係を示すマップを予め取得しておき、プロジェクタ100の投写距離および撮像部60の解像度が既知である場合には、上記マップを参照することにより、分解能差情報を取得することができる。また、前回フォーカス調整パターンの補正処理を行なった時点以降にプロジェクタ本体を移動させていない場合には、前回の補正処理で取得した分解能差情報を利用することができる。
【0091】
分解能差情報を有している場合(ステップS12のYES判定時)には、制御部30は、ステップS18により、画像処理部14を指示して、この既知の分解能差情報に応じたフォーカス調整用パターンをスクリーンSC上に投写させる。なお、フォーカス調整用パターンには、既知の分解能差情報に基づいて、撮像画像内での分解能の分布とは逆の分布がフォーカス調整用パターンに形成されるように、各色領域の幅が調整されている。
【0092】
一方、分解能差情報を有していない場合(ステップS12のNO判定時)には、制御部30は、ステップS13〜S15により、撮像画像内に生じる分解能差を検出するための処理を実行して分解能差情報を取得する。具体的には、制御部30は、ステップS13により、画像処理部14を指示して、コントラスト差比較用パターン(図10)をスクリーンSC上に投写させる。
【0093】
制御部30は、ステップS14により、投写されているコントラスト差比較用パターンを撮像部60に撮像させる。撮像部60により生成された撮像画像データは、撮像画像記憶部26に記憶される。
【0094】
次に、制御部30は、ステップS15により、撮像画像解析部28を指示して、撮像画像を分析し、撮像画像内に生じている分解能の差を検出する。撮像画像解析部28は、撮像画像を複数の領域に分割し、該領域ごとに分解能を算出する。そして、撮像画像解析部28は、算出された領域ごとの分解能を、複数の領域間で比較することにより、撮像画像内の分解能の差を検出する。検出された撮像画像内の分解能の差は、分解能差情報として記憶部34に格納される。
【0095】
分解能差情報を取得すると、制御部30は、ステップS16により、分解能差情報に応じて図4のフォーカス調整用パターンを補正する。具体的には、制御部30は、画像処理部14を指示して、撮像画像内での分解能の分布とは逆の分布が形成されるように、図4のフォーカス調整用パターンの各色領域の幅を調整する。
【0096】
そして、制御部30は、ステップS17により、画像処理部14を指示して、補正後のフォーカス調整用パターンをスクリーンSC上に投写させる。これにより、ステップS09では、撮像画像内でのコントラスト差が補償されたフォーカス調整用パターンを用いて、自動フォーカス調整処理(図5)が実行される。
【0097】
以上のように、この発明の実施の形態2に係るプロジェクタによれば、自動フォーカス調整処理の実行時には、撮像画像内での分解能が均一となるように白色領域および黒色領域の形状が調整されたフォーカス調整用パターンがスクリーン上に投写される。したがって、撮像部により生成されるフォーカス調整用パターンの撮像画像から、可動レンズ群の合焦位置との相関が反映されたコントラストデータを生成することができる。この結果、高精度のフォーカス調整を行なうことが可能となる。
【0098】
[実施の形態3]
本発明の実施の形態3では、本発明に係るフォーカス調整用パターンの調整処理の他の態様として、撮像画像内のコントラスト差および分解能差を補償するようにフォーカス調整用パターンを調整する。以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態3に係るフォーカス調整用パターンの調整処理について説明する。
【0099】
図14は、本発明の実施の形態3に係る調整処理によって調整されたフォーカス調整用パターンの一例を示す図である。
【0100】
図14を参照して、調整後のフォーカス調整用パターンは、図4に示すフォーカス調整用パターンと同様に、黒色領域と白色領域とを横方向に交互に配列して構成される。一方、調整後のフォーカス調整用パターンでは、各色領域には、縦方向に沿って明度が連続的に変化するグラデーションが設けられている。具体的には、白色領域は、縦方向に沿って上に行くに従い明度が徐々に大きくなっている。同様に、黒色領域は、縦方向に沿って上に行くに従い明度が徐々に大きくなっている。なお、図14では黒色領域および白色領域の各々にグラデーションを設けているが、黒色領域および白色領域のいずれか一方にのみグラデーションを設ける構成としてもよい。
【0101】
さらに、調整後のフォーカス調整用パターンにおいて、色領域の横方向の幅は縦方向に沿って連続的に変化する。具体的には、各白色領域は、縦方向に沿って上に行くに従い幅が徐々に大きくなっている。同様に、各黒色領域は、縦方向に沿って上に行くに従い幅が徐々に大きくなっている。
【0102】
これにより、撮像画像内の下辺側の領域(図14の領域RGN8)では、白色領域と黒色領域との境界において白色と黒色との混合が発生している一方で、撮像画像内の上辺側の領域(図14の領域RGN7)では、白色領域と黒色領域との境界が鮮明に表現される。また、撮像画像内の上辺側の領域RGN7は、下辺側の領域RGN8と比較して、白色領域および黒色領域の本数が少なくなっている。
【0103】
ここで、各色領域のグラデーションは、図6に示した撮像画像内でのコントラストの分布とは逆の分布がフォーカス調整用パターンに形成されるように設けられる。すなわち、図6の撮像画像は、縦方向に沿って上に行くに従いコントラストが低くなるという分布を有することから、図14のフォーカス調整用パターンには、縦方向に沿って下に行くに従いコントラストが低くなるという分布を形成する。
【0104】
また、各色領域の幅は、撮像画像内での分解能が均一となるように、撮像部60とスクリーンSCとの位置関係および撮像部60の解像度に応じて設定される。すなわち、図6の撮像画像では、縦方向に沿って上に行くに従い分解能が低くなることから、図14のフォーカス調整用パターンでは、縦方向に沿って上に行くに従い白色領域および黒色領域の幅が広くなるように形成される。
【0105】
図15は、図14に示すフォーカス調整用パターンが投写された場合に、撮像部60により生成された撮像画像の一例を示す図である。
【0106】
図15を参照して、撮像画像は、上辺に比べて下辺の方が長い台形形状を有している。そして、この台形形状の撮像画像において、フォーカス調整用パターン(図14)を反映して、白色領域と黒色領域とが横方向に交互に配列されている。
【0107】
この撮像画像において、各白色領域は一定の明度を示している。同様に、各黒色領域は一定の明度を示している。撮像画像内のコントラストの分布とは逆の分布をフォーカス調整用パターンに形成したことによって、撮像画像内のコントラスト差がフォーカス調整用パターンのコントラスト差によって相殺されていることによる。この結果、撮像画像内のコントラストを均一化できる。また、撮像画像において、白色領域および黒色領域はそれぞれ一定の幅を示している。上記のように、撮像画像内の分解能の分布とは逆の分布をフォーカス調整用パターンに形成したことによって、撮像画像内の分解能の差がフォーカス調整用パターンの分解能の差によって相殺されていることによる。この結果、撮像画像内の分解能を均一化できる。この結果、撮像画像からは、可動レンズ群305の合焦位置との相関が反映されたコントラストデータを生成することができるため、高精度のフォーカス調整を行なうことが可能となる。
【0108】
以下、フォーカス調整用パターンの調整処理を、図16のフローチャートに従って説明する。
【0109】
図16を参照して、ステップS21によりフォーカス調整指示が入力されると、制御部30は、ステップS22により、記憶部34がコントラスト差情報および分解能差情報を有しているか否かを判定する。
【0110】
コントラスト差情報および分解能差情報を有している場合(ステップS22のYES判定時)には、制御部30は、ステップS28により、画像処理部14を指示して、この既知のコントラスト差情報および分解能差情報に応じたフォーカス調整用パターンをスクリーンSC上に投写させる。なお、フォーカス調整用パターンには、既知のコントラスト差情報および分解能差情報に基づいて、撮像画像内でのコントラストおよび分解能の分布とは逆の分布がフォーカス調整用パターンに形成されるように、各色領域の明度および幅が調整されている。
【0111】
一方、コントラスト差情報および分解能差情報を有していない場合(ステップS22のNO判定時)には、制御部30は、ステップS23〜S25により、撮像画像内に生じるコントラスト差および分解能差を検出するための処理を実行してコントラスト差情報および分解能差情報を取得する。具体的には、制御部30は、ステップS23により、画像処理部14を指示して、コントラスト差比較用パターン(図10)をスクリーンSC上に投写させる。
【0112】
制御部30は、ステップS24により、投写されているコントラスト差比較用パターンを撮像部60に撮像させる。撮像部60により生成された撮像画像データは、撮像画像記憶部26に記憶される。
【0113】
次に、制御部30は、ステップS25により、撮像画像解析部28を指示して、撮像画像を分析し、撮像画像内に生じているコントラスト差および分解能差を検出する。撮像画像解析部28は、撮像画像を複数の領域に分割し、該領域ごとにコントラストおよび分解能を算出する。そして、撮像画像解析部28は、算出された領域ごとのコントラストおよび分解能を、複数の領域間で比較することにより、撮像画像内のコントラスト差および分解能差を検出する。検出された撮像画像内のコントラスト差は、コントラスト差情報として記憶部34に格納される。また、検出された撮像画像内の分解能差は、分解能差情報として記憶部34に格納される。
【0114】
コントラスト差情報および分解能差情報を取得すると、制御部30は、ステップS26により、コントラスト差情報および分解能差情報に応じて図4のフォーカス調整用パターンを補正する。具体的には、制御部30は、画像処理部14を指示して、撮像画像内でのコントラストおよび分解能の分布とは逆の分布が形成されるように、図4のフォーカス調整用パターンの各色領域の明度および幅を調整する。
【0115】
そして、制御部30は、ステップS27により、画像処理部14を指示して、調整後のフォーカス調整用パターンをスクリーンSC上に投写させる。これにより、ステップS09では、撮像画像内でのコントラスト差および分解能差が補償されたフォーカス調整用パターンを用いて、自動フォーカス調整処理(図5)が実行される。
【0116】
以上のように、この発明の実施の形態3に係るプロジェクタによれば、自動フォーカス調整処理の実行時には、撮像画像内でのコントラストおよび分解能が均一となるように白色領域および黒色領域の形状が調整されたフォーカス調整用パターンがスクリーン上に投写される。したがって、撮像部により生成されるフォーカス調整用パターンの撮像画像から、可動レンズ群の合焦位置との相関が反映されたコントラストデータを生成することができる。この結果、高精度のフォーカス調整を行なうことが可能となる。
【0117】
なお、上述した実施の形態1〜3では、プロジェクタの構成例として、投写距離を短くするために、反射ミラー400(図1)によって、画像光を広角かつ斜め方向に投写させる構成を示したが、本発明の適用はこのようなプロジェクタに限定されるものではない。具体的には、スクリーン上に投写されたフォーカス調整用パターンを撮像して撮像画像を生成し、撮像画像のフォーカスの合焦具合に関する評価値に基づいてフォーカス調整を行なう機能を備えていれば、本発明を適用することが可能である。
【0118】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0119】
10 入力部、12 画像供給部、14 画像処理部、16 液晶表示駆動部、18 画像投写部、22 レンズ駆動部、26 撮像画像記憶部、28 撮像画像解析部、30 制御部、32 操作受付部、34 記憶部、60 撮像部、100 プロジェクタ、200 光学エンジン、201 光源、202 導光光学系、203,204,205 液晶パネル、206 ダイクロイックプリズム、300 投写レンズユニット、301 外筒、302 内筒、305 可動レンズ群、400 反射ミラー、500 カバー、502 投写口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を投写して表示する投写型映像表示装置であって、
キャリブレーション用画像を投写面に投写するための投写部と、
前記キャリブレーション用画像を撮像して撮像画像として取得する撮像部と、
前記撮像画像のフォーカスの合焦具合を算出するための合焦算出手段と、
前記算出された合焦具合に基づき、投写画像光の焦点が前記投写面に合うように前記投写部のフォーカス調整を行なうためのフォーカス調整手段とを備え、
前記キャリブレーション用画像は、互いに明度が異なる第1の領域および第2の領域を有し、
前記撮像画像内で明度の分解能およびコントラストの少なくとも一方が均一となるように、前記第1の領域および前記第2の領域の形態を調整するためのキャリブレーション用画像調整手段をさらに備える、投写型映像表示装置。
【請求項2】
前記キャリブレーション用画像は、前記第1の領域および前記第2の領域を交互に配列して構成され、
前記キャリブレーション用画像調整手段は、前記第1の領域および前記第2の領域の各々の配列方向の幅を、前記撮像画像内での明度の分解能が均一となるように、前記撮像部と前記投写面との位置関係および前記撮像部の解像度に応じて調整する、請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項3】
前記キャリブレーション用画像調整手段は、前記第1の領域および前記第2の領域の各々の配列方向の幅を、前記撮像画像内で各領域が一定幅となるように調整する、請求項2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
前記キャリブレーション用画像調整手段は、前記第1の領域および前記第2の領域の少なくとも一方の明度を、前記撮像画像内でコントラストが均一となるように、前記撮像部と前記投写面との位置関係および前記撮像部の解像度に応じて調整する、請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項5】
前記キャリブレーション用画像調整手段は、前記撮像画像内で各領域が一定の明度を示すように、前記第1および前記第2の領域の少なくとも一方に、明度が連続して変化するグラデーションを設ける、請求項4に記載の投写型映像表示装置。
【請求項6】
前記投写部は、各々が所定幅を有する前記第1および第2の領域を交互に配して構成されたテスト用画像を前記投写面に投写し、
前記撮像部は、前記投写部によって投写された前記テスト用画像を撮像して撮像画像として取得し、
前記撮像画像に基づき、前記撮像画像内でのコントラストおよび分解能の差を検出するための検出手段とをさらに備え、
前記キャリブレーション用画像調整手段は、前記検出手段の検出結果に基づいて前記第1の領域および前記第2の領域の形態を調整する、請求項1から5のいずれか1項に記載の投写型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−178674(P2012−178674A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39946(P2011−39946)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】