説明

投写型映像表示装置

【課題】冷却効率を向上することができる投写型映像表示装置を提供する。
【解決手段】投写型映像表示装置であるプロジェクタ1は、複数の冷却対象部が内部に設けられた筐体10と、筐体10内に吸入された空気を冷却対象部に導くダクトとを備えている。ダクトから冷却風が送出されることにより冷却風が冷却対象部を冷却する。プロジェクタ1は、所定の冷却対象部である偏光変換素子34を冷却した冷却風が他の冷却対象部であるランプ31a,31bに向けて流れるように冷却風の風向を調整する風向調整部材81を備えている。そして、風向調整部材81が吸音材により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、複数の冷却対象部が内部に設けられた筐体と、筐体内に吸入された空気を冷却対象部に導くダクトとを備える投写型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記投写型映像表示装置として、吸気ファンによって筐体の外部から内部に空気を吸入するとともに、吸入した空気をダクトに通して、このダクトから送出される冷却風により液晶パネルや偏光板等を冷却させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−78688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、冷却対象部を冷却した冷却風が、筐体の内面に当たり、筐体内において発生する負圧部位に自然に流れるだけの構成が採用された場合には、冷却効率が悪いという問題があった。即ち、従来、冷却対象部を冷却した冷却風(即ち、冷却対象部を通過した冷却風)を用いて冷却効率を向上することについては考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、冷却効率を向上することができる投写型映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、複数の冷却対象部が内部に設けられた筐体と、筐体内に吸入された空気を冷却対象部に導くダクトとを備え、ダクトから冷却風が送出されることにより冷却風が冷却対象部を冷却する投写型映像表示装置において、所定の冷却対象部を冷却した冷却風が他の冷却対象部に向けて流れるように冷却風の風向を調整する風向調整部材を備え、この風向調整部材が吸音材により形成されていることを特徴とする投写型映像表示装置。
【0007】
上記構成によれば、投写型映像表示装置は、所定の冷却対象部を冷却した冷却風が他の冷却対象部に向けて流れるように冷却風の風向を調整する風向調整部材を備え、風向調整部材が吸音材により形成されている。このため、風向調整部材が設けられていない場合に比べて、所定の冷却対象部から他の冷却対象部に向けて冷却風が流れ易くなり、冷却効率を向上することができる。また、風向調整部材が吸音材により形成されているため、風向調整部材が吸音材以外の材料により形成されている場合に比べて、冷却風が風向調整部材に当たることに起因する騒音の発生が低減される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の投写型映像表示装置であって、ダクトは、所定の冷却対象部に向けて開口するとともに、冷却風が送出される送出口を有し、風向調整部材は、所定の冷却対象部を介して送出口と対向する位置に設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ダクトは、所定の冷却対象部に向けて開口する送出口を有し、風向調整部材は、所定の冷却対象部を介して送出口と対向する位置に設けられている。このため、ダクトの送出口から冷却風が送出されることにより、所定の冷却対象部を通過した冷却風の風向を、簡単な構成で調整することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の投写型映像表示装置であって、風向調整部材は、筐体に比べて高い吸音性を有していることを特徴とする。
上記構成によれば、風向調整部材は、筐体に比べて高い吸音性を有している。従って、冷却風が筐体に直接当たることに起因する騒音の発生が低減される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の投写型映像表示装置であって、他の冷却対象部として映像表示用のランプを含むことを特徴とする。
上記構成によれば、他の冷却対象部として映像表示用のランプが含まれるため、発熱し易いランプの冷却効率を向上することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の投写型映像表示装置であって、他の冷却対象部として電気部品を含むことを特徴とする。
上記構成によれば、他の冷却対象部として電気部品が含まれるため、電気部品の冷却効率を向上することができる。特に、他の冷却対象部として、電気部品だけでなく、請求項4に記載されるように映像表示用のランプも含まれれば、筐体内の各部の冷却効率を効果的に向上させることができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の投写型映像表示装置であって、吸音材は発泡性樹脂材料からなることを特徴とする。
上記構成によれば、吸音材は発泡性樹脂材料からなるため、風向調整部材の軽量化を図ることができる。また、発泡性樹脂材料が電気的絶縁性を有することにより、筐体内における電気回路に風向調整部材が接触して発生する電気回路の短絡を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、他の冷却対象部に向けて冷却風が流れ易くなり、冷却効率を向上することができる。また、騒音の発生が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る投写型映像表示装置を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図。
【図2】同実施形態に係る投写型映像表示装置の概略構成を示す構成図。
【図3】同実施形態に係る投写型映像表示装置の概略構成を示す構成図。
【図4】同実施形態に係る投写型映像表示装置の概略構成を示す構成図。
【図5】同実施形態に係る投写型映像表示装置において、冷却風の流れを模式的に示す模式図。
【図6】同実施形態に係る投写型映像表示装置において、冷却風の流れを模式的に示す模式図。
【図7】同実施形態に係る投写型映像表示装置において、冷却風の流れを模式的に示す模式図。
【図8】同実施形態に係る投写型映像表示装置において、冷却風の流れを模式的に示す模式図。
【図9】同実施形態に係る投写型映像表示装置において、冷却風の流れを模式的に示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1(a)及び(b)に示すように、プロジェクタ1は、スクリーンや壁等の面上に映像を投写して表示する投写型映像表示装置であって、電子部品や光学部品等を内蔵する筐体10を備えている。以下、プロジェクタ1が映像の光を投射する方向を前後方向における前方とする。また、以下の説明において上下方向は、前後方向に直交する方向であって、図中の矢印を用いて示す方向である。
【0017】
筐体10の内部には、筐体10の外部から内部に空気を吸入する吸気ユニット20と、複数の冷却対象部を含む光学系30と、筐体10の内部から外部に空気を排出するファン50(図1(b)参照)とが設けられている。
【0018】
図2に示すように、プロジェクタ1は、吸気ユニット20を構成する構成部品として、筐体10の外部から内部に空気を吸入するとともに冷却対象部へ空気を送風するファン21と、筐体10内に吸入された空気を冷却対象部に導くダクト22とを備えている。
【0019】
ファン21は、例えばシロッコファンにより構成された吸気ファンである。ファン21にはダクト22が接続され、ファン21は、筐体10内に吸入した空気を冷却風としてダクト22内に送風する。本実施形態においては、筐体10内に設けられる複数の冷却対象部に応じて、冷却対象部に冷却風を送風するファン21として、複数のファン21a〜21fが設けられている。そして、ファン21a〜21cには、それぞれ、筐体10内に吸入された空気を冷却対象部に導くダクト22として、別体として形成されたダクト22a〜22cが接続されている。また、ファン21d〜21fには、筐体10内に吸入された空気を冷却対象部に導くダクト22として、一体として形成されたダクト22dが接続されている。
【0020】
ダクト22は、ファン21によって送風された空気が冷却風として送出される送出口23を有している。本実施形態においては、ダクト22a,22bは、それぞれ、冷却風が送出される送出口23として、冷却対象部の近傍に位置する送出口23a,23bを有している。また、ダクト22cは、冷却風が送出される送出口23として、冷却対象部の下方に位置する送出口23cを有するとともに、ダクト22dは、冷却風が送出される送出口23として、冷却対象部の下方に位置する複数の送出口23d〜23fを有している。
【0021】
以上のようにして構成された吸気ユニット20においては、ダクト22から送出口23を通して冷却風が上方に送出されることにより、冷却風が冷却対象部を冷却する。本実施形態においては、冷却対象部の下方に位置する送出口23c〜23fは、上方(即ち、冷却対象部)に向けて開口しているため、ダクト22c,22dから冷却風が直線状に送出されて所定の冷却対象部が冷却される。
【0022】
次に、複数の冷却対象部を含む光学系30について説明する。
図3に示すように、プロジェクタ1は、光学系30を構成する光学部品として、映像表示用の光源であるランプ31a,31bと、白色光を赤・緑・青の三原色の光に分離するダイクロイックミラー36r,36bと、三原色の光に対応した液晶ライトバルブ40r,40g,40bとを備えている。
【0023】
超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電ランプにより構成されるランプ31a,31bの各々は、白色光を発する。ランプ31a,31bの各々が発する光は、ミラー32により液晶ライトバルブ40r,40g,40bに導かれる。
【0024】
本実施形態においては、ハーフミラー32aを用いることにより、ランプ31a,31bの各々が発した光を混ぜる構成となっている。また、光が液晶ライトバルブ40r,40g,40bに入射するまでに、一対のフライアイレンズにより構成されるインテグレータレンズ33によって照度分布の均一化が図られるとともに、偏光変換素子34によって偏光方向が所定方向に揃えられる。また、集光レンズ35によって光束が収束されて液晶ライトバルブ40r,40g,40bに光が入射するように構成されている。
【0025】
ランプ31a,31bが発する白色光は、赤色の波長の光が透過するダイクロイックミラー36rと、青色の波長の光が透過するダイクロイックミラー36bとにより、赤色の波長の光(以下、「赤色光」)と緑色の波長の光(以下、「緑色光」)と青色の波長の光(以下、「青色光」)とに分離される。
【0026】
白色光から分離された赤色光は液晶ライトバルブ40rに入射する。また、白色光から分離された緑色光は液晶ライトバルブ40gに入射する。また、白色光から分離された青色光は液晶ライトバルブ40bに入射する。液晶ライトバルブ40r,40g,40bは、画像を構成する画素毎に光の透過率が変更可能なライトバルブである。液晶ライトバルブ40r,40g,40bの各々は、液晶パネル41と、液晶パネル41に対して光が入射する側に設けられた入射側光学部品42と、液晶パネル41から光が出射する側に設けられた出射側光学部品43とにより構成されている。液晶パネル41は、液晶分子を挟む透明基板を少なくとも含んでいる。また、入射側光学部品42及び出射側光学部品43は、偏光板を少なくとも含んでいる。
【0027】
液晶ライトバルブ40rに入射した赤色光が、液晶ライトバルブ40rを透過することによって赤色の映像が生成される。同様に、液晶ライトバルブ40gに入射した緑色光が、液晶ライトバルブ40gを透過することによって緑色の映像が生成され、液晶ライトバルブ40bに入射した青色光が、液晶ライトバルブ40bを透過することによって青色の映像が生成される。
【0028】
さらに、プロジェクタ1は、光学系30を構成する光学部品として、三原色の映像の光を合成するクロスダイクロイックプリズム37と、映像の光を投射するレンズ群を備えた投射レンズ38とを備えている。
【0029】
液晶ライトバルブ40r,40g,40bにおいて生成された赤・緑・青の映像の光は、クロスダイクロイックプリズム37に入射して、クロスダイクロイックプリズム37において合成されることにより、3色以上のフルカラーの映像が生成される。生成されたフルカラーの映像の光は、クロスダイクロイックプリズム37から出射されて投射レンズ38に入射する。
【0030】
投射レンズ38は、プロジェクタ1の前方に設けられるスクリーンや壁等の平面に向けて3色以上のフルカラーの映像の光を投射する。このようにしてプロジェクタ1は平面上に映像を表示する。以上のように、本実施形態に係るプロジェクタ1は、3板式の液晶プロジェクタであって、一画像を2つの光源により映し出す2灯式の投写型映像表示装置である。
【0031】
本実施形態においては、プロジェクタ1は、冷却対象部として、映像表示用のランプ31a,31bと、偏光変換素子34と、液晶ライトバルブ40r,40g,40bとを備えている。偏光変換素子34及び液晶ライトバルブ40r,40g,40bの各々の下方に、上方に向けて開口する送出口23c〜23fが設けられている。
【0032】
また、図4に示すように、プロジェクタ1は、冷却対象部として、回路基板60上に設けられた電気部品61と、電気部品61に電力を供給する電源部71と、ランプ31a,31bに電力を供給するランプ電源部72とを備えている。
【0033】
電気部品61は、電気光学装置である液晶ライトバルブ40r,40g,40bを駆動するための回路や、映像信号に対して信号処理を施す回路等を構成している。本実施形態においては、電気部品61が設けられた回路基板60は、光学系30の上方に設けられるとともに、送出口23の上方を覆わないように設けられている。
【0034】
電源部71及びランプ電源部72は電源回路を備えた電気部品である。電源部71及びランプ電源部72は、上下方向において光学系30と被らない位置に設けられている。本実施形態においては、プロジェクタ1は、ランプ電源部72として、ランプ31aに電力を供給するランプ電源部72aと、ランプ31aに電力を供給するランプ電源部72aとを備えている。
【0035】
冷却対象部を冷却した冷却風、即ち、冷却対象部を通過した冷却風は、ファン50によって筐体10の内部から外部に送風される。本実施形態においては、ファン50は筐体10内に複数設けられている。
【0036】
ここで、本実施形態においては、プロジェクタ1が冷却風の風向を調整する風向調整部材81〜84(図5等参照)を備え、風向調整部材81〜84が吸音材により形成されていることに特徴がある。
【0037】
図5〜図9は、ダクト22(図2参照)から送出された冷却風の流れを示す模式図である。図中において、破線の矢印は冷却風の流れを示している。
図5及び図6に示すように、風向調整部材81は、所定の冷却対象部としての偏光変換素子34を冷却した冷却風が、他の冷却対象部であるランプ31a,31bに向けて流れるように冷却風の風向を調整する風向板である。
【0038】
風向調整部材81は、偏光変換素子34を介して送出口23cと対向する位置に設けられている。風向調整部材81は、送出口23cから送出されて偏光変換素子34を通過した冷却風の風向を、送出口23a,23bの近傍に向ける。即ち、風向調整部材81により、下方から上方に向けて流れる冷却風の風向が上下方向に略垂直な方向となるように調整される。
【0039】
風向調整部材81により風向が調整された冷却風は、送出口23aから送出された冷却風とともにランプ31aを冷却するとともに、送出口23bから送出された冷却風とともにランプ31bを冷却する。そして、ランプ31a,31bを冷却した冷却風は、ファン50により筐体10の内部から外部へ排出される。以上のように、送出口23cから送出された冷却風の流れにおいて、冷却風の流れの上流側に偏光変換素子34が設けられ、偏光変換素子34よりも下流側にランプ31a,31bが設けられる構成となっている。
【0040】
また、図5及び図7に示すように、風向調整部材82は、所定の冷却対象部としての液晶ライトバルブ40rを冷却した冷却風が、他の冷却対象部であるランプ電源部72a及びランプ31aに向けて流れるように冷却風の風向を調整する風向板である。
【0041】
風向調整部材82は、液晶ライトバルブ40rを介して送出口23dと対向する位置に設けられている。風向調整部材82は、送出口23dから送出されて液晶ライトバルブ40rを通過した冷却風の風向を、ランプ電源部72aに送風するファン50の負圧側近傍に向ける。即ち、風向調整部材82により、下方から上方に向けて流れる冷却風の風向が上下方向に略垂直な方向となるように調整される。
【0042】
また、風向調整部材82と回路基板60との間において、回路基板60上には電気部品61が設けられている。このため、風向調整部材82によって風向が調整される冷却風は、風向調整部材82と回路基板60との間の電気部品61を冷却する。
【0043】
そして、風向調整部材82により風向が調整された冷却風は、ファン50により送風されてランプ電源部72aを冷却するとともに、送出口23aから送出された冷却風とともにランプ31aを冷却する。そして、ランプ31aを冷却した冷却風は、上述のごとく、ファン50により筐体10の内部から外部へ排出される。以上のように、送出口23dから送出された冷却風の流れにおいて、冷却風の流れの上流側に液晶ライトバルブ40rが設けられ、液晶ライトバルブ40rよりも下流側に電気部品61及びランプ電源部72a及びランプ31aが設けられる構成となっている。
【0044】
また、図5及び図8に示すように、風向調整部材83は、所定の冷却対象部としての液晶ライトバルブ40gを冷却した冷却風が、他の冷却対象部であるランプ31bに向けて流れるように冷却風の風向を調整する風向板である。
【0045】
風向調整部材83は、液晶ライトバルブ40gを介して送出口23eと対向する位置に設けられている。風向調整部材83は、送出口23eから送出されて液晶ライトバルブ40gを通過した冷却風の風向を、送出口23bの近傍に向ける。即ち、風向調整部材83により、下方から上方に向けて流れる冷却風の風向が上下方向に略垂直な方向となるように調整される。
【0046】
また、風向調整部材83と回路基板60との間において、回路基板60上には電気部品61が設けられているため、風向調整部材83によって風向が調整される冷却風は、風向調整部材83と回路基板60との間の電気部品を冷却する。
【0047】
風向調整部材83により風向が調整された冷却風は、送出口23bから送出された冷却風とともにランプ31bを冷却する。そして、ランプ31bを冷却した冷却風は、上述のごとく、ファン50により筐体10の内部から外部へ排出される。以上のように、送出口23eから送出された冷却風の流れにおいて、冷却風の流れの上流側に液晶ライトバルブ40gが設けられ、液晶ライトバルブ40gよりも下流側に電気部品61及びランプ31bが設けられる構成となっている。
【0048】
また、図5及び図9に示すように、風向調整部材84は、所定の冷却対象部としての液晶ライトバルブ40bを冷却した冷却風が、他の冷却対象部である電源部71及びランプ電源部72bに向けて流れるように冷却風の風向を調整する風向板である。
【0049】
風向調整部材84は、液晶ライトバルブ40bを介して送出口23fと対向する位置に設けられている。風向調整部材84は、送出口23fから送出されて液晶ライトバルブ40bを通過した冷却風の風向を、ランプ電源部72aに送風するファン50の負圧側近傍に向ける。即ち、風向調整部材84により、下方から上方に向けて流れる冷却風の風向が上下方向に略垂直な方向となるように調整される。
【0050】
また、風向調整部材84と回路基板60との間において、回路基板60上には電気部品61が設けられているため、風向調整部材84によって風向が調整される冷却風は、風向調整部材84と回路基板60との間の電気部品を冷却する。
【0051】
風向調整部材84により風向が調整された冷却風は、電源部71を冷却するとともに、ファン50により送風されてランプ電源部72bを冷却する。そして、ランプ電源部72bを冷却した冷却風は、筐体10の内部から外部へ排出される。以上のように、送出口23fから送出された冷却風の流れにおいて、冷却風の流れの上流側に液晶ライトバルブ40bが設けられ、液晶ライトバルブ40bよりも下流側に電気部品61及び電源部71及びランプ電源部72bが設けられる構成となっている。
【0052】
以上のように本実施形態においては、風向調整部材81〜84によりランプ31a,31b及び電気部品61及び電源部71及びランプ電源部72a,72bの冷却効率を向上する構成となっている。
【0053】
風向調整部材81〜84は、発泡性樹脂材料からなる吸音材により形成されている。具体的には、例えば、風向調整部材81〜84は、電気的絶縁性を有するウレタンフォームにより形成され、風向調整部材81〜84は、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)等の合成樹脂により形成された筐体10に比べて高い吸音性を有している。本実施形態においては、風向調整部材81〜84は、接着テープ(不図示)により筐体10に設けられている。
【0054】
また、本実施形態に係る風向調整部材81〜84は、上方に窪んだ曲面を有している。このような曲面により、風向調整部材81〜84は、下方から上方に向けて流れる冷却風が、若干下方に向けて流れるように風向を調整している。
【0055】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)プロジェクタ1は、所定の冷却対象部を冷却した冷却風が他の冷却対象部に向けて流れるように冷却風の風向を調整する風向調整部材81〜84を備え、風向調整部材81〜84が吸音材により形成されている。このため、風向調整部材81〜84が設けられていない場合に比べて、所定の冷却対象部から他の冷却対象部に向けて冷却風が流れ易くなり、冷却効率を向上することができる。また、風向調整部材81〜84が吸音材により形成されているため、風向調整部材81〜84が吸音材以外の材料により形成されている場合に比べて、冷却風が風向調整部材81〜84に当たることに起因する騒音の発生が低減される。
【0056】
(2)風向調整部材81〜84は、所定の冷却対象部を介して送出口23c〜23fと対向する位置に設けられている。このため、ダクト22c,22dの送出口23c〜23fから冷却風が送出されることにより、所定の冷却対象部を通過した冷却風の風向を、簡単な構成で調整することができる。
【0057】
(3)風向調整部材81〜84は、筐体10に比べて高い吸音性を有している。従って、冷却風が筐体10に直接当たることに起因する騒音の発生が低減される。
(4)所定の冷却対象部よりも冷却風の流れの下流側に設けられる他の冷却対象部として、映像表示用のランプ31a,31bが含まれる。このため、発熱し易いランプ31a,31bの冷却効率を向上することができる。
【0058】
(5)所定の冷却対象部よりも冷却風の流れの下流側に設けられる他の冷却対象部として、電気部品(即ち、電気回路60上の電気部品61、電源部71、及びランプ電源部72)が含まれる。このため、電気部品の冷却効率を向上することができる。特に、本実施形態においては、冷却風の流れの下流側に設けられる他の冷却対象部として、電気部品だけでなく、映像表示用のランプ31a,31bも含まれるため、筐体10内の各部の冷却効率を効果的に向上させることができる。
【0059】
(6)風向調整部材81〜84を形成する吸音材は、発泡性樹脂材料からなるため、風向調整部材81〜84の軽量化を図ることができる。また、発泡性樹脂材料が電気的絶縁性を有することにより、筐体10内における電気回路に風向調整部材81〜84が接触して発生する電気回路の短絡を防止することができる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。例えば、上記実施形態を以下のように変更してもよく、以下の変更を組み合わせて実施してもよい。
【0061】
・ファン21の個数や配置等を適宜変更してもよい。また、ダクト22の個数、形状、及び配置等を適宜変更してもよい。また、送出口23の個数、形状、配置等を適宜変更してもよく、ファン21の個数と送出口23の個数は同じでなくてもよい。
【0062】
・上記実施形態においては、風向調整部材81〜84は、接着テープを用いて筐体10に設けられていたが、筐体10以外の構成要素に風向調整部材81〜84が設けられていてもよい。また、風向調整部材81〜84の固定手段は接着テープに限られない。
【0063】
・風向調整部材81〜84を形成する吸音材を適宜変更してもよい。例えば、ウレタン以外の発泡素材や、繊維を編み込んだ素材に空気が含まれるものであってもよい。即ち、吸音性を有しているのであれば、風向調整部材81〜84を形成する材料は上記実施形態に限定されない。
【0064】
・風向調整部材81〜84の個数、配置、形状等を適宜変更してもよい。即ち、上記実施形態においては、プロジェクタ1は4つの風向調整部材81〜84を備えていたが、プロジェクタ1が備える風向調整部材の個数は上記実施形態に限定されず、また、上述のごとく風向を調整できるのであれば風向調整部材の形状は上記実施形態に限定されない。
【0065】
・冷却対象部は、上記実施形態に記載した液晶ライトバルブ40r,40g,40b、ランプ31a,31b、偏光変換素子34、電気部品61、電源部71、ランプ電源部72bに限定されない。これら以外の冷却対象部を冷却する場合にも、本発明を適用することができる。
【0066】
・本発明は、3板式液晶プロジェクタに限定されるものではなく、また、2灯式の投写型映像表示装置に限定されるものではない。例えば、電気光学装置としてDMD(Digital Micromirror Device)を備えたプロジェクタに本発明を適用することもでき、また、1つのランプまたは3つ以上のランプを備えた投写型映像表示装置に本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1…プロジェクタ(投写型映像表示装置)、10…筐体、20…吸気ユニット、21,21a〜21f…ファン、22,22a〜22d…ダクト、23,23a〜23f…送出口、30…光学系、31a,31b…ランプ(冷却対象部)、34…偏光変換素子(冷却対象部)、40r,40g,40b…液晶ライトバルブ(冷却対象部)、41…液晶パネル、42…入射側光学部品、43…出射側光学部品、50…ファン、60…回路基板、61…電気部品(冷却対象部)、71…電源部(冷却対象部)、72…ランプ電源部(冷却対象部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の冷却対象部が内部に設けられた筐体と、前記筐体内に吸入された空気を前記冷却対象部に導くダクトとを備え、前記ダクトから冷却風が送出されることにより前記冷却風が前記冷却対象部を冷却する投写型映像表示装置において、
所定の冷却対象部を冷却した前記冷却風が他の冷却対象部に向けて流れるように前記冷却風の風向を調整する風向調整部材を備え、この風向調整部材が吸音材により形成されている
ことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項2】
前記ダクトは、前記所定の冷却対象部に向けて開口するとともに、前記冷却風が送出される送出口を有し、
前記風向調整部材は、前記所定の冷却対象部を介して前記送出口と対向する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の投写型映像表示装置。
【請求項3】
前記風向調整部材は、前記筐体に比べて高い吸音性を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の投写型映像表示装置。
【請求項4】
前記他の冷却対象部として映像表示用のランプを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の投写型映像表示装置。
【請求項5】
前記他の冷却対象部として電気部品を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の投写型映像表示装置。
【請求項6】
前記吸音材は発泡性樹脂材料からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の投写型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48050(P2012−48050A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191195(P2010−191195)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】