説明

投写型表示装置

【課題】光源からの光の利用効率の低減を抑制しつつ、効率よくシンチレーションを低減し、高画質な画像を表示することができる投写型表示装置を提供する。
【解決手段】投写型表示装置は、光源からの光を出射する集光光学系1と、入射された光を変調して画像光を出射する画像形成領域2aを持つライトバルブ2と、集光光学系1からの光を画像形成領域2aに導く照明光学系4と、画像形成領域2aから出射された画像光を拡大投写する投写光学系3と、照明光学系4における画像形成領域2aとの共役位置近傍に配置され、照明光学系4から入射する光に垂直な基準面に複数の微細光学素子が規則的に配列された構造を持つ拡散素子5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン上に画像を投写する投写型表示装置に関し、より詳細には、ディジタル・マイクロミラー・デバイス(以下「DMD」と言う。)や反射型液晶表示素子等のようなライトバルブを用いた投写型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、投写型表示装置の光源としては、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等が用いられてきた。しかし、これらのランプは、寿命が短く、ランプ交換等のメンテナンス作業が発生するという問題があった。また、ランプの白色光から赤、緑、及び青の各色の光を生成するための光学系が必要であり、装置が複雑になるとともに光利用効率が低下するという問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するために、半導体レーザ等のレーザ光源を採用する試みがなされている。レーザ光源は、ランプ光源に比べて寿命が長く、メンテナンス作業が不要となる。また、表示画像に応じてレーザ光源を直接変調することが可能であるため、装置の構成が簡単になり、また、光利用効率も向上する。さらに、レーザ光源を採用することにより、色再現範囲を広くすることができる。
【0004】
しかし、レーザ光源は高いコヒーレンス(可干渉性)を有しているため、投写型表示装置の光源に用いた場合、投影画像上にシンチレーション又はスペックルノイズ(「スペックル」とも言う)が発生する。シンチレーションはスクリーン上で、入射された光が不規則な位相関係で干渉し、発生した干渉パターンが、観測者においてぎらついて見えてしまうという問題である。レーザ光源を採用する場合、このシンチレーションやスペックルノイズを低減することが重要であり、その方法として光学系内ですりガラスを回転する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−208089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、すりガラスはガラス中に散乱部材として微粒子をランダムに混入させた構成であり、光学系に適した散乱特性を得ることが困難である。また、特許文献1には、シンチレーションを低減するためにすりガラスが持つべき最適な散乱特性の具体的な提案がなされていないため、光利用効率の低下を招いてしまう恐れがあるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、光源からの光の利用効率の低減を抑制しつつ、効率よくシンチレーションを低減して高画質の画像を表示することができる投写型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る投写型表示装置は、少なくとも1つの光源と、前記光源からの光を変調して画像光を出射する画像形成領域を持つライトバルブと、前記光源からの光を前記画像形成領域に導く照明光学系と、前記画像形成領域から出射された前記画像光を拡大投写する投写光学系と、前記照明光学系における前記画像形成領域との光学的共役位置近傍に配置され、前記光源からの光の進行方向に垂直な基準面に複数の微細光学素子が規則的に配列された構造を持つ拡散素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構成を追加するだけで、光源からの光の利用効率の低減を抑制しつつ、効率よくシンチレーションを低減して、高画質の画像を表示することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る投写型表示装置の光学系の構成を概略的に示す図である。
【図2】実施の形態1に係る投写型表示装置における照明光学系の作用を概念的に示す模式図である。
【図3】実施の形態1に係るDMD素子の被照明面より出射される光の理想的な角度分布を表す図である。
【図4】実施の形態1に係る投写型表示装置における拡散素子の形状を概略的に示す図である。
【図5】(a)及び(b)は、実施の形態1に係る投写型表示装置における拡散素子による効果を示す図である。
【図6】光の屈折を説明するための図である。
【図7】実施の形態1に係る投写型表示装置における拡散素子内の屈折状態を概略的に示す図である。
【図8】実施の形態1に係る投写型表示装置における拡散素子よる作用を概略的に示す図である。
【図9】実施の形態1に係る投写型表示装置における拡散素子よる作用を概略的に示す図である。
【図10】実施の形態1に係る投写型表示装置における拡散素子による効果を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る投写型表示装置における拡散素子の形状を概略的に示す図である。
【図12】(a)及び(b)は、実施の形態2の投写型表示装置における拡散素子による効果を説明するための図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る投写型表示装置における拡散素子の形状を概略的に示す図である。
【図14】本発明の実施の形態4に係る投写型表示装置における拡散素子の形状を概略的に示す図である。
【図15】本発明の実施の形態5に係る投写型表示装置における拡散素子の形状を概略的に示す図である。
【図16】本発明の実施の形態6に係る投写型表示装置における拡散素子の形状を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る投写型表示装置の光学系の構成を概略的に示す図である。図1に示されるように、実施の形態1に係る投写型表示装置は、集光光学系1と、照明光学系4と、反射型のライトバルブとしてのDMD素子2と、照明光学系4により照射された光束を変調するDMD素子2の被照明領域(画像形成領域)2aと、被照明領域2aで生成された画像光をスクリーン(図示せず)に拡大投写する投写光学系3とを有している。集光光学系1は、複数色(例えば、RGBの3色)の光を出射する複数のレーザ光源11と、レーザ光源11から出射された光束を集光するための、1枚又は複数枚(図1においては、3枚)のレンズ又はミラーで構成される複数の集光光学素子12と、集光光学素子12から出射された光束を照明光学系4に導く複数(図1においては、3本)の光ファイバー13とから構成される。なお、ライトバルブは、入力画像信号に応じて入射光を変調して変調光(画像光)を出射できる素子であれば、DMD素子以外の素子(例えば、液晶素子など)であってもよい。
【0012】
照明光学系4は、集光光学系1から出射された光束の強度分布を均一化する光強度均一化素子41と、レンズ42a,42bから構成されるリレーレンズ群42と、第1ミラー43a及び第2ミラー43bから構成されるミラー群43とを有している。図1において、リレーレンズ群42は、レンズ42a,42bの2枚のレンズで構成されているが、レンズの枚数は2枚に限定されるものではない。同様に、ミラー群43を構成するミラーの枚数も、2枚に限定されるものではない。リレーレンズ群42とミラー群43により、光強度均一化素子41から出射した光束を、DMD素子2に導いている。
【0013】
光強度均一化素子41は、集光光学系1が出射した光束の光強度を均一化する(すなわち、照度ムラを低減する)機能を持つ。光強度均一化素子41としては、一般的に、ガラス又は樹脂等の透明材料で作られ、側壁内側が全反射面となるように構成された多角形柱状のロッド(すなわち、断面形状が多角形の柱状部材)、又は、光反射面を内側にして筒状に組み合わされ、断面形状が多角形のパイプ(管状部材)がある。光強度均一化素子41が多角柱状のロッドである場合には、透明材料と空気界面との全反射作用を利用して光を複数回反射させた後に出射面(出射端)から出射させる。光強度均一化素子41が多角形のパイプである場合には、内側を向く平面鏡の反射作用を利用して光を複数回反射させた後に出射面から出射させる。光強度均一化素子41は、光束の進行方向に適当な長さを確保すれば、内部で複数回反射した光が光強度均一化素子41の出射面41bの近傍に重畳照射され、光強度均一化素子41の出射面41b近傍においては、略均一な強度分布が得られる。この略均一な強度分布を有する出射光を、リレーレンズ群42及びミラー群43によって、DMD素子2へと導き、DMD素子2の被照明面2aを照明する。
【0014】
図2は、照明光学系4の作用を概念的に示す模式図である。図2において、リレーレンズ群42及びミラー群43を模式的に示すため、各々1つのレンズ素子(破線)で示している。実施の形態1においては、照明光学系4においては、光強度均一化素子41の出射面41bとDMD素子2の被照明面2aとが光学的に共役な関係になるように構成されている。図2に示されるように、出射面41bから出射された光束は、光軸Laに沿って進行し、リレーレンズ群42及びミラー群43により被照射面2aで収束される。DMD素子の被照射面2aで変調された光は、投写光学系3の投写レンズ群31a、瞳32及び投写レンズ群31bによりスクリーン33で結像されることとなる。
【0015】
DMD素子2は、各画素に対応する可動式のマイクロミラーを多数(例えば、数十万個)2次元に配列したものであり、画素情報に応じてマイクロミラーの傾角(チルト)を個別に変化させるように構成されている。マイクロミラーの配列された面(すなわち、マイクロミラーが形成された基板の表面)を基準面とすると、DMD素子2は、画素情報に応じて、マイクロミラーを基準面に対して一定の方向に角度α(例えば、12度)だけ傾けることにより、当該マイクロミラーは入射光束を投写光学系3に向けて反射し、投写光学系3に入射した光束はスクリーン(図示せず)上の画像投写に利用される。また、DMD素子2は、画素情報に応じて、マイクロミラーを基準面に対して角度αとは異なる角度β(例えば、−12度)だけ傾けることにより、当該マイクロミラーは入射光束を光吸収板(図示せず)に向けて反射し、光吸収板に入射した光束はスクリーン上の画像投写に利用されない。このようにDMD素子2は、入射光束の投写光学系3への反射を画素単位で制御することができる。
【0016】
次に、レーザ光源のようなコヒーレントな光を出射する光源を使用した場合に発生するシンチレーションを、拡散素子5の拡散効果により低減させる方法について検討する。
【0017】
スクリーン33に様々な波面を入射させると、スクリーン33上でこれら波面が干渉パターンを形成するので、観測者の目には、これら干渉パターンが重ね合わせされ平均化されて視覚される。これにより、シンチレーションを低減することができる。様々な波面をスクリーン33に入射させるためには、スクリーン33への入射光の角度分布を広くし、かつ均一化することが有効である。拡散素子5は、拡散効果により、スクリーン33への光の入射角度を制御し、角度分布を広くかつ均一化するものである。
【0018】
そこで、シンチレーションの低減のために配置される拡散素子5の位置について検討する。図2を参照すると、スクリーン33への光の入射角度を制御するための拡散素子5の設置位置として、スクリーン33と光学的に共役な関係にあるDMD素子2の被照明面2aの近傍、あるいは、光強度均一化素子41の出射面41b及びその近傍が考えられる。被照射面2aとスクリーン33との間の空間(投写光学系)に設置すると画像のぼけが大きくなりすぎる。そこで、実施の形態1では、拡散素子5は光強度均一化素子41の出射面41bに配置される。
【0019】
拡散素子5の設置位置の妥当性を検証するために、照明光学系4内の3箇所、すなわち、投写光学系3の入射側開口部31と共役な関係となる光強度均一化素子41の入射面41a位置、照明光学系4の絞り位置45、及びDMD素子2の被照明面2aと共役な関係となる光強度均一化素子41の出射面41b位置(共役位置)、のそれぞれに拡散素子5を配置して、シンチレーションの発生状態を検証する実験を行った。この実験の結果を、表1に示す。なお、出射面41b位置(共役位置)とは、実用上共役位置とみなすことができる範囲を含む。すなわち、出射面41b位置は、出射面41bに隣接する位置を含む。また、入射面41a位置は、入射面41aに隣接する位置を含む。この実験に使用した拡散素子5は、一般的にはホログラフィック拡散素子と呼ばれるもので、基板上に施したホログラムパターンにより、光の拡散角度を設定できる構成となっているものである。
【0020】
【表1】

【0021】
表1に示されるように、照明光学系4に拡散素子5を配置しない場合、この実験系においては、シンチレーションが強く発生した(表1のシンチレーション欄で「×」と表記)。拡散素子5を光強度均一化素子41の入射面41a近傍に配置した場合、この実験系においては、シンチレーションがある程度低減した(表1のシンチレーション欄で「△」と表記)。また、拡散素子5を照明光学系4の絞り位置45近傍に配置した場合、この実験系においては、シンチレーションがある程度低減した(表1のシンチレーション欄で「△」と表記)。拡散素子5を光強度均一化素子41の出射面41b近傍に配置した場合、この実験系においては、シンチレーションが最も低減した(表1のシンチレーション欄で「○」と表記)。
【0022】
表1の実験結果からわかるように、同じ拡散素子5を上記3箇所に配置した場合、DMD素子2の被照明面2aと共役関係にある光強度均一化素子41の出射面41b近傍に配置した場合が、最もシンチレーション低減効果が高いことがわかる。このことから、実施の形態1では、拡散素子5は光強度均一化素子41の出射面41bに配置される。
【0023】
図3は、DMD素子2の被照明面2aより出射される光の理想的な角度分布Idを表す図である。図3中、横軸が出射角度を示し、縦軸が光強度を示している。出射角度が0°のときの光強度は、投写光学系3の中心軸(光軸)に平行な光束の光強度を表している。なお、図3中のθは、図2に示されるように、被照明面2aの中心からの出射光が投写光学系3の瞳32に入るときの角度の最大値(最大角度)である。この最大角度θよりも大きい角度で入射する光束は、投写光学系3内で損失する。よって、DMD素子2の被照明面2aより出射する光の角度分布が−θ〜θの角度範囲Δθ内で均一となることが、光の利用効率の低減を防止し、シンチレーションの低減効果に有効である。
【0024】
図4(a)〜(c)は、実施の形態1に係る投写型表示装置における拡散素子5の形状を概略的に示す図である。図4(a)に示されるように、拡散素子5は、入射光束の進行方向に直交するX方向に長いプリズム形状の微細光学素子51が、X方向及び入射光束の進行方向の両方に直交するY方向に多数配列された光入射面と、Y方向に長いプリズム形状の微細光学素子52がX方向に多数配列された光出射面とを有する拡散板である。レーザ光源11からの伝搬光は、図2の光強度均一化素子41により一方向に指向されて面状の拡散素子5に略垂直に入射する。図4(a)に示されるように、X方向に伸長する微細光学素子51は、拡散素子5の基準面(レーザ光源11からの伝搬光の進行方向に垂直な面)においてY方向(第1の方向)に繰り返し配列されている。拡散素子5の基準面は、X方向及びY方向の双方を含む面(X方向及びY方向の双方と平行な面)である。図4(b)は、Y方向を含み基準面BPに垂直な面(第1の垂直面)と微細光学素子51との交線を概略的に示す図である。図4(b)に示されるように、各微細光学素子51は、拡散素子5の基準面BPから鋭角γ11(反時計回りの角度)で傾斜する第1の側面51aと、基準面BPから鈍角γ12(反時計回りの角度)で傾斜(又は、時計回りの角度γ13=108°−γ12で傾斜)する第2の側面51bとを有している。すなわち、第1の側面51aと第1の垂直面との交線はY方向(Yが増加する+Y方向)に対して鋭角γ11をなし、第2の側面51bと第1の垂直面との交線はY方向に対して鈍角γ12をなす。レーザ光源11から伝搬した入射光は、これら第1及び第2の側面51a,51bの各々で屈折する。一方、Y方向に伸長する微細光学素子52は、拡散素子5の基準面においてX方向(第2の方向)に繰り返し配列されている。図4(c)は、X方向を含み基準面BPに垂直な面(第2の垂直面)と微細光学素子52との交線を概略的に示す図である。図4(c)に示されるように、各微細光学素子52は、基準面BPから鋭角γ14(時計回りの角度)で傾斜する第1の側面52aと、基準面BPから鈍角γ15(時計回りの角度)で傾斜(又は、反時計回りの角度γ16=180°−γ15で傾斜)する第2の側面52bとを有している。すなわち、第1の側面52aと第2の垂直面との交線はX方向(Xが増加する+X方向)に対して鋭角γ14をなし、第2の側面52bと第2の垂直面との交線はX方向に対して鈍角γ15をなす。拡散素子5内部からの出射光は、これら第1及び第2の側面52a,52bの各々で屈折する。なお、本明細書において、全ての実施の形態でX方向とY方向は互いに直交しているが、これに限定されるものでなく、X方向とY方向は互いに異なる方向であればよい。
【0025】
後述するように、微細光学素子51,52の法線方向の異なるこれら4つの側面51a,51b,52a,52bで入射光を屈折させることにより、DMD素子2の被照明面2aから出射する光の角度分布の広域化と均一化が実現される。一方の面の微細光学素子51,…,51は、Y方向の角度分布の広域化と均一化を実現するものであり、他方の面の微細光学素子52,…,52は、X方向の角度分布の広域化と均一化を実現するものである。なお、図4に示した拡散素子5は、表面(入射面)と裏面(出射面)との両方に微細光学素子51,52を有するが、これに限定されるものではない。表面と裏面とのいずれか一方のみに微細光学素子51あるいは微細光学素子52を有する拡散素子を使用しても、角度分布の広域化と均一化を実現することができる。
【0026】
図5(a)及び(b)は、投写型表示装置における拡散素子5による効果を示す図である。図5(a)及び(b)は、DMD素子2の被照明面2aより出射する光束の角度分布を概略的に示す図であり、横軸が出射角度を示し、縦軸が光強度を示す。なお、図5(a)及び(b)中のθは、被照明面2aの中心からの出射光が投写光学系3の瞳32に入るときの角度の最大値(最大角度)を示している。図5(a)の角度分布は、拡散素子5を備えていない場合の分布であり、図5(b)の角度分布は、拡散素子5のX方向及びY方向のうちのいずれか一方への出射角に関する分布である。四角形の線は、透過光の角度分布が平坦化された理想的な角度分布Idを概略的に示したものである。拡散素子5を備えない場合には、角度分布は、図5(a)に示されるように、1つのピークを持つ分布になるが、プリズム状微細光学素子51,…,51又はプリズム状微細光学素子52,…,52を透過することによって、図5(b)に示されるように、2つの側面51a,51b(又は52a,52b)に対応する2つのピークを持つ分布となり、理想の角度分布Idに近づく。このように、図5(b)に示される特性を有するプリズム状微細光学素子を持つ拡散素子5を用いることによって、光線が広がり、シンチレーション低減作用をより効率的に行うことができる。ただし、拡散素子5においては、入射光線がプリズム内で全反射し、入射方向に戻る光束が存在し、光の損失が発生することがある。そこで、このような損失が発生する入射角に対するプリズム状微細光学素子(以下「プリズム」ともいう。)の頂角の条件について検討する。
【0027】
図6は、光の屈折を説明するための図である。光は、空気中から屈折率nの物質に入射角θinで入射すると、以下の式で表される角度(屈折角)θの方向に屈折する。
θ=sin−1((sinθin)/n) …(1)
【0028】
この屈折光が物質から空気中に出ると、再び角度θinと同じ屈折角に屈折して空気中に出射する。式(1)を満たさないときの角度を臨界角といい、入射された光は全反射される。
【0029】
図7は、実施の形態1に係る投写型表示装置における拡散素子5内の1個のプリズムの屈折状態を概略的に示す図である。また、図8は、実施の形態1に係る投写型表示装置における拡散素子5内の1個のプリズムによる作用を概略的に示す図である。なお、図7及び図8においては、簡単化のため、拡散素子5の一方の面の入射光、出射光の挙動について検討する。実施の形態1の拡散素子5における屈折状態は、図7に示す屈折状態1と、図8に示す屈折状態2があげられる。
【0030】
まず、図7においては、入射角θinで入射した光は、式(1)で示した関係により角度(屈折角)θの屈折光になる。プリズムの頂角をαとすると、角度θは次式(2)で表される。
θ=90−α/2−θ …(2)
【0031】
次に、式(1)の関係式から、角度θは次式(3)で表される。
θ=sin−1(nsinθ) …(3)
また、角度θとプリズムから出射される光の出射角θoutの関係式は次式(4)となる。
θout=90−α/2−θ …(4)
【0032】
結局、出射角θoutは次式(5)で表される。
θout=90−α/2−sin−1(nsinθ
=90−α/2−sin−1{nsin(90−α/2−θ)} …(5)
【0033】
次に、図7においては、プリズムに入射した光が入射面の反対側に出射されずに、全反射されるときの頂角αの条件式を求める。図7において、角度θを90°としたときの頂角α(このときのαを、αlimitとする。)を算出すると、以下の関係式(6)が与えられる。
αlimit
=180−2{sin−1(1/n)+sin−1(1/n sinθin)}
…(6)
【0034】
式(6)は、入射光束が全反射されて、入射面の反対側(図7における上側)に出力されなくなるときの、プリズムの頂角である。なお、αlimitを、プリズムの臨界頂角と呼ぶ。このことから、プリズムの頂角αが臨界頂角αlimitより小さくならないように、屈折率及びプリズム頂角αを設計する必要がある。
【0035】
屈折状態2を示す図8においては、一部の光はプリズム内で一度反射し、出射される。入射角θinで入射した光は式(1)で示した関係により角度(屈折角)θ11の屈折光になる。プリズムの頂角をαとすると、この屈折光は次式(7)で表される角度θ12でプリズム界面にあたる。
θ12=α/2−θ11 …(7)
ここでθ12は式(1)で述べた臨界頂角αlimitより小さいと界面で全反射する。全反射した光は次式(8)に示す角度θ13で再びプリズム界面にあたる。
θ13=−90+α/2+θ12 …(8)
【0036】
そして、式(1)の関係式から角度θ14でプリズムから出射される。
θ14=sin−1(nsinθ13) …(9)
結局、角度θ14は以下の式(10)で表される。
θ14=sin−1{nsin(−90+α−θ11)} …(10)
【0037】
プリズムから出射されずに、全反射されるときのθinの条件式を求める。臨界角はθ14を90°として、頂角α(このときのαを、αlimit2とする。)を算出すると、以下の関係式(11)が与えられる。
αlimit2
=2/3{sin−1(1/n)+sin−1(1/n sinθin)+90}
…(11)
プリズムの臨界頂角αlimit2では、図9のような光線をたどり全反射されて損失となる。
【0038】
図10は、実施の形態1に係る投写型表示装置における拡散素子5による効果を示す図である。図10は、拡散素子5の構成材料の屈折率を1.5とし、入射角θinを26°及び35°としたときの拡散素子5の透過率分布を示している。なお、図10には、図7及び図8で示した屈折状態1及び屈折状態2において、式(6)及び式(11)より算出したプリズムの臨界頂角αlimit及び臨界頂角αlimit2を図中に示している。図10に示されるように、プリズムの頂角は屈折状態2(図8)のプリズムの臨界頂角αlimit2を境に、透過率が急速に減衰している。このためにプリズムの頂角αは、屈折状態2におけるプリズムの臨界頂角αlimit2よりも大きい角度である必要がある。これらの結果から、プリズムの頂角αの設定は、光の利用効率を高める上で非常に重要であることが理解できる。
【0039】
以上に説明したように、実施の形態1においては、プリズムの頂角αと入射角θinの関係を満たすことにより、プリズムにおける入射の全反射による光の損失を低減することができる。
【0040】
実施の形態1においては、拡散素子5の表面にあるプリズム形状の配列方向は、入射面と出射面で、互いに垂直になるように異なる方向であるため、各面のプリズムの頂角を変えることにより、拡散素子5を透過する光束に対し異なる拡散特性を得ることができる。
【0041】
また、実施の形態1において、拡散素子5を光強度均一化素子41の出射面41b(近傍)に配置しているために照明光学系内の各光学素子を小型化することができる。
【0042】
さらに、実施の形態1において、光源をレーザ光源11で構成したので、寿命が長く色再現性がよい明るい光学系を構成することができる。
【0043】
さらにまた、実施の形態1において、光源から出射された光束を光ファイバー13を用いて導く構成としたので、光学系の配置に柔軟性を待たせるとともに、光束の取り込み効率が高い光学系が構成できる。また、光ファイバー13内で光束が多重反射されるため、シンチレーションを低減し、均一性の高い画像を得ることができる。
【0044】
また、実施の形態1において、光強度均一化素子41の管状部材でその内面の光束を反射させるように構成した場合には、照明光束により素子自身の加熱が生じにくくなり、光強度均一化素子41の冷却及び保持が簡単になる。
【0045】
実施の形態2.
図11(a)及び(b)は、本発明の実施の形態2に係る投写型表示装置における拡散素子6の形状を概略的に示す図である。図11(a)に示されるように、実施の形態2に係る投写型表示装置においては、拡散素子6の形状が、実施の形態1に係る投写型表示装置の拡散素子6(図3)の形状と相違する。図11(a)に示されるように、実施の形態2における拡散素子6は、断面が台形状である四角柱状の微細光学素子をプリズム形状ではなく断面台形形状の構造を有している。配置場所に関しては実施の形態1と同様に、拡散素子6を光強度均一化素子41の出射面41bに配置するものとしたが、両面に異なる方向に配列してもよい。
【0046】
X方向に伸長する微細光学素子61は、拡散素子6の基準面(レーザ光源11からの伝搬光の進行方向に垂直な面)においてY方向(第1の方向)に繰り返し配列されている。図11(b)は、Y方向を含み基準面BPに垂直な面(垂直面)と微細光学素子61との交線を概略的に示す図である。図11(b)に示されるように、各微細光学素子61は、拡散素子6の基準面BPから鋭角γ21(反時計回りの角度)で傾斜する第1の側面61aと、基準面BPから鈍角γ22(反時計回りの角度)で傾斜(又は、時計回りの角度γ23=180°−γ22で傾斜)する第2の側面61bとを有している。すなわち、第1の側面61aと垂直面との交線はY方向(Yが増加する+Y方向)に対して鋭角γ21をなし、第2の側面61bと第1の垂直面との交線はY方向に対して鈍角γ22をなす。図11(b)に示されるように、各微細光学素子61はさらに基準面BPに並行な上面61tを有する。レーザ光源11からの伝搬光は、これら第1及び第2の側面61a,61b及び上面61tという3つの面の各々で屈折する。法線方向の異なるこれら3つの面で入射光を屈折させることにより、DMD素子2の被照明面2aから出射する光の角度分布の広域化と均一化をY方向について実現することができる。
【0047】
図12(a)及び(b)は、実施の形態2の投写型表示装置における拡散素子6による効果を説明するための図である。図12(a)及び(b)は、DMD素子2の被照明面2aより出射する光束の角度分布図であり、横軸が出射角度、縦軸が光強度である。なお、図12(a)及び(b)中のθは、被照明面2aの中心からの出射光が投写光学系3の瞳32に入るときの角度の最大値(最大角度)を示している。図12(a)の角度分布は、拡散素子6を備えていない場合の分布であり、図12(b)の角度分布は、拡散素子6を透過した光束に関する分布である。四角形の線は、透過光の角度分布が平坦化された理想的な角度分布Idを示す。拡散素子6を備えない場合には、角度分布図は、図12(a)に示されるように、1つのピークを持つ分布になるが、プリズム状微細光学素子61,…,61を光束が透過することによって、図12(b)に示されるように、微細光学素子61の2つの側面61a,61b及び上面61tに対応する3つのピークを持つ分布となり、理想の角度分布Idに近づく。このように、図12(b)に示される特性を有する微細光学素子61を持つ拡散素子6を用いることによって、光線が広がり、シンチレーション低減作用をより効率的に行うことができる。
【0048】
なお、実施の形態2に係る投写型表示装置において、上記拡散素子6以外の構成は、上記実施の形態1の構成と同じである。
【0049】
実施の形態3.
図13は、本発明の実施の形態3に係る投写型表示装置における拡散素子7の形状を概略的に示す図である。図13に示されるように、実施の形態3に係る投写型表示装置においては、拡散素子7の形状が、実施の形態1及び2に係る投写型表示装置の拡散素子5(図4)及び拡散素子6(図11)の形状と相違する。図13に示されるように、実施の形態3における拡散素子7は、拡散素子7の表面に微細光学素子71としてのマイクロレンズを規則正しく2次元的に配列したものである。実施の形態3においては、マイクロレンズの曲率や入射光に対するマイクロレンズの屈折率等の物理的特性を適切に設定することにより所望の散乱特性を得ることができる。図13の斜視図に示されるように、各微細光学素子71は、+X方向及び−X方向にそれぞれ傾斜する曲面と、+Y方向及び−Y方向にそれぞれ傾斜する曲面とを有するだけでなく、X方向及びY方向以外の方向へも傾斜する曲面を有している。このため、DMD素子2の被照明面2aより出射する光束の角度分布を、X方向及びY方向だけでなく、X方向及びY方向以外の方向についても制御することができる。
【0050】
また、レンズ形状であっても臨界角を超えるような角度で入射する光束は全反射され損失となってしまう。そのため、レンズの曲率と入射角を実施の形態1と同様に選定する必要がある。実施の形態3においては、拡散素子7を追加するだけで、レーザ光源からの光の利用効率の低減を抑制しつつ、効率よくシンチレーションを低減して、高画質の画像を表示することができる。
【0051】
なお、実施の形態3に係る投写型表示装置において、上記拡散素子7以外の構成は、上記実施の形態1の構成と同じである。
【0052】
実施の形態4.
図14(a)〜(c)は、本発明の実施の形態4に係る投写型表示装置における拡散素子8の形状を概略的に示す斜視図である。この拡散素子8の形状は、図14(a)に示されるように、実施の形態1、2及び3に係る拡散素子5(図4)、拡散素子6(図11)及び拡散素子7(図13)の形状と相違する。図14(a)に示されるように、実施の形態4に係る拡散素子8は、当該拡散素子8の表面(入射面又は出射面)に四角錘構造を有する微細光学構造81を規則正しく2次元的に(マトリクス状に)配列したものである。また、各微細光学素子81は、拡散素子8の基準面(レーザ光源11からの伝搬光の進行方向に垂直な面)から傾斜する4つの側面(第1乃至第4の側面)を有している。これら第1乃至第4の側面は互いに異なる法線を有する。図14(b)は、Y方向を含み拡散素子8の基準面BPに垂直な面(第1の垂直面)と微細光学素子81との交線を概略的に示す図である。図14(b)に示されるように、各微細光学素子81は、基準面BPから鋭角γ41(反時計回りの角度)で傾斜する第1の側面81aと、基準面BPから鈍角γ42(反時計回りの角度)で傾斜(又は、時計回りの角度γ43=180°−γ42で傾斜)する第2の側面81bとを有している。すなわち、第1の側面81aと第1の垂直面との交線はY方向(Yが増加する+Y方向)に対して鋭角γ41をなし、第2の側面81bと第1の垂直面との交線はY方向に対して鈍角γ42をなす。図14(c)は、X方向を含み基準面BPに垂直な面(第2の垂直面)と微細光学素子81との交線を概略的に示す図である。図14(c)に示されるように、各微細光学素子81は、基準面BPから鋭角γ44(反時計回りの角度)で傾斜する第3の側面81cと、基準面BPから鈍角γ45(反時計回りの角度)で傾斜(又は、時計回りの角度γ46=180°−γ45で傾斜)する第4の側面81dとを有している。すなわち、第3の側面81cと第2の垂直面との交線はX方向(Xが増加する+X方向)に対して鋭角γ44をなし、第4の側面81dと第2の垂直面との交線はX方向に対して鈍角γ45をなす。法線方向の異なるこれら4つの側面81a,81b,81c,81dで入射光を屈折させることにより、DMD素子2の被照明面2aから出射する光の角度分布の広域化と均一化をX方向及びY方向について実現することができる。また、微細光学構造81の四角錘構造の高さ、及び底面の大きさを調整することにより、角度分布を制御することができる。
【0053】
したがって、実施の形態4においては、拡散素子8を追加するだけで、レーザ光源からの光の利用効率の低減を抑制しつつ、効率よくシンチレーションを低減して、高画質の画像を表示することができる。
【0054】
なお、実施の形態4に係る投写型表示装置において、上記拡散素子8以外の構成は、上記実施の形態1の構成と同じである。
【0055】
実施の形態5.
図15は、本発明の実施の形態5に係る投写型表示装置における拡散素子9の形状を概略的に示す斜視図である。図15に示されるように、実施の形態5に係る投写型表示装置においては、拡散素子9の形状が、実施の形態1、2、3及び4に係る投写型表示装置の拡散素子5(図4)、拡散素子6(図11)、拡散素子7(図13)及び拡散素子8(図14)の形状と相違する。図15に示されるように、実施の形態5に係る拡散素子9は、プリズム形状ではなく、断面が半円形状であるシリンドリカル形状の微細光学素子91,…,91を表面に有し、裏面にもシリンドリカル形状の微細光学素子92,…,92を有している。表面に形成された微細光学素子91はY方向に伸長し、裏面に形成された微細光学素子92はY方向と直交するX方向に伸長している。図15の斜視図に示されるように、表面においては、各微細光学素子91は、拡散素子9の基準面(レーザ光源11からの伝搬光の進行方向に垂直な面)に対してX方向にそれぞれ傾斜する曲面を有する。裏面においては、各微細光学素子92は、当該基準面に対してY方向にそれぞれ傾斜する曲面を有している。法線方向の異なるこれら4つの曲面で入射光を屈折させることにより、DMD素子2の被照明面2aから出射する光の角度分布の広域化と均一化をX方向及びY方向について実現することができる。また、シリンドリカル形状の曲率半径及びピッチ間隔を調整することにより、角度分布を制御することができる。
【0056】
したがって、実施の形態5においては、拡散素子9を追加するだけで、レーザ光源からの光の利用効率の低減を抑制しつつ、効率よくシンチレーションを低減して、高画質の画像を表示することができる。
【0057】
なお、実施の形態5に係る投写型表示装置において、上記拡散素子9以外の構成は、上記実施の形態1の構成と同じである。
【0058】
実施の形態6.
図16(a)〜(c)は、本発明の実施の形態6に係る投写型表示装置における拡散素子10の形状を概略的に示す斜視図である。図16(a)に示されるように、実施の形態6に係る投写型表示装置においては、拡散素子10の形状が、実施の形態1、2、3、4及び5に係る投写型表示装置の拡散素子5(図4)、拡散素子6(図11)、拡散素子7(図13)、拡散素子8(図14)及び拡散素子9(図15)の形状と相違する。また、実施の形態6に係る拡散素子10は、四角錘構造の頂角側を切り欠いた、断面形状が台形形状である微細光学素子101,…,101を当該拡散素子10の表面に規則正しく2次元的(マトリクス状)に配列したものである。図16(a)の斜視図に示されるように、表面において、各微細光学素子101は、拡散素子10の基準面(レーザ光源11からの伝搬光の進行方向に垂直な面)から傾斜する4つの側面(第1乃至第4の側面)を有している。これら第1乃至第4の側面は互いに異なる法線を有する。図16(b)は、Y方向を含み拡散素子10の基準面BPに垂直な面(垂直面)と微細光学素子101との交線を概略的に示す図である。図16(b)に示されるように、微細光学素子101は、基準面BPから鋭角γ61(反時計回りの角度)で傾斜する第1の側面101aと、基準面BPから鈍角γ62(反時計回りの角度)で傾斜(又は、時計回りの角度γ63=180°−γ62)で傾斜する第2の側面101bとを有している。すなわち、第1の側面101aと第1の垂直面との交線はY方向(Yが増加する+Y方向)に対して鋭角γ61をなし、第2の側面101bと第1の垂直面との交線はY方向に対して鈍角γ62をなす。一方、図16(c)は、X方向を含み基準面BPに垂直な面(第2の垂直面)と微細光学素子101との交線を概略的に示す図である。図16(c)に示されるように、微細光学素子101は、基準面BPから鋭角γ64(反時計回りの角度)で傾斜する第3の側面101cと、基準面BPから鈍角γ65(反時計回りの角度)で傾斜(又は、時計回りの角度γ66=180°−γ65で傾斜)する第4の側面101dとを有している。すなわち、第3の側面101cと第2の垂直面との交線はX方向(Xが増加する+X方向)に対して鋭角γ64をなし、第2の側面101dと第2の垂直面との交線はX方向に対して鈍角γ65をなす。各微細光学素子101はさらに基準面に並行な上面101tを有する。これら側面101a,101b,101c,101dと上面101tとで入射光を屈折させることにより、DMD素子2の被照明面2aから出射する光の角度分布の広域化と均一化をX方向及びY方向について実現することができる。また、微細光学素子101の底面の大きさや断面の台形形状を適切に調整することにより、角度分布を制御することができる。
【0059】
したがって、実施の形態6においては、拡散素子10を追加するだけで、レーザ光源からの光の利用効率の低減を抑制しつつ、効率よくシンチレーションを低減して、高画質の画像を表示することができる。
【0060】
なお、実施の形態6に係る投写型表示装置において、上記拡散素子10以外の構成は、上記実施の形態1の構成と同じである。
【0061】
上記したように、実施の形態1〜6に係る投写型表示装置では、いずれも、ライトバルブであるDMD素子2が照明光学系4から照射された光束を変調して画像光を生成し、投写光学系3がこの画像光をスクリーン33に拡大投写する。このとき、照明光学系4内の拡散素子5,6,7,8,9,10のいずれも、DMD素子2から出射される画像光の角度分布を制御して、この角度分布を大きく、かつ均一化することができる。これにより、スクリーン33へ入射する波面が増加し、スクリーン33上でこれら波面が干渉パターンを形成する。観測者の目には、これら干渉パターンが足し合わせられ平均化されて視覚されるので、シンチレーションを低減することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 集光光学系、 11 レーザ光源、 12 集光光学素子、 13 光ファイバー、 2 DMD素子(ライトバルブ)、 2a 被照明面(画像形成領域)、 3 投写光学系、 31a,31b 投写レンズ群、 32 投写レンズの瞳、 33 スクリーン、 4 照明光学系、 41 光強度均一化素子、 41a 光強度均一化素子の入射面、 41b 光強度均一化素子の出射面、 42 リレーレンズ群、 43 ミラー群、 45 照明光学系の絞り位置、 5,6,7,8,9,10 拡散素子、 51,52 プリズム形状の微細光学素子、 61 断面台形状の微細光学素子、 71 微細レンズ状の微細光学素子、 81 四角錘形状の微細光学素子、 91 シリンドリカル形状の微細光学素子、 101 四角錘構造の頂角側を切り欠いた構造を持つ微細光学素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレントな光を出射する少なくとも1つの光源と、
前記光源からの光を変調して画像光を出射する画像形成領域を持つライトバルブと、
前記光源からの光を前記画像形成領域に導く照明光学系と、
前記画像形成領域から出射された前記画像光を拡大投写する投写光学系と、
前記照明光学系における前記画像形成領域との光学的共役位置近傍に配置され、前記光源からの光の進行方向に垂直な基準面に複数の微細光学素子が規則的に配列された構造を持つ拡散素子と
を備えたことを特徴とする投写型表示装置。
【請求項2】
前記拡散素子は、前記複数の微細光学素子を該拡散素子の入射面及び出射面の少なくとも一方の面に配列した構造を有することを特徴とする請求項1に記載の投写型表示装置。
【請求項3】
前記拡散素子は、前記複数の微細光学素子を該拡散素子の入射面及び出射面の両方の面に配列した構造を有し、前記入射面側の微細光学素子と前記出射面側の微細光学素子は異なる形状であることを特徴とする請求項1に記載の投写型表示装置。
【請求項4】
前記微細光学素子は、前記基準面において第1の方向に繰り返し配列されており、
前記各微細光学素子は第1の側面と第2の側面とを有し、前記第1の方向を含み前記基準面に垂直な面である第1の垂直面と前記第1の側面との交線は前記第1の方向に対して鋭角をなし、前記第1の垂直面と前記第2の側面との交線は前記第1の方向に対して鈍角をなす
ことを特徴とする請求項2に記載の投写型表示装置。
【請求項5】
前記複数の微細光学素子のうち前記入射面及び出射面の一方の面における当該微細光学素子は、前記基準面において第1の方向に繰り返し配列され、
前記一方の面に配列された各微細光学素子が第1の側面と第2の側面とを有し、前記第1の方向を含み前記基準面に垂直な面である第1の垂直面と前記第1の側面との交線が前記第1の方向に対して鋭角をなし、前記第1の垂直面と前記第2の側面との交線が前記第1の方向に対して鈍角をなしており、
前記複数の微細光学素子のうち前記入射面及び出射面の他方の面における当該微細光学素子は、前記基準面において前記第1の方向とは異なる第2の方向に繰り返し配列され、
前記他方の面に配列された各微細光学素子が第3の側面と第4の側面とを有し、前記第2の方向を含み前記基準面に垂直な面である第2の垂直面と前記第3の側面との交線は前記第2の方向に対して鋭角をなし、前記第2の垂直面と前記第4の側面との交線は前記第2の方向に対して鈍角をなしている
ことを特徴とする請求項3に記載の投写型表示装置。
【請求項6】
前記複数の微細光学素子の各々はプリズム形状の微細光学素子であることを特徴とする請求項4又は5に記載の投写型表示装置。
【請求項7】
前記複数の微細光学素子の各々は、プリズム形状の微細光学素子の頂角側を切り欠いた形状に相当する断面が台形形状の微細光学素子であることを特徴とする請求項4又は5に記載の投写型表示装置。
【請求項8】
前記複数の微細光学素子の各々は、前記第1及び第2の側面に加えて、さらに、第3の側面と第4の側面とを有し、前記第1の方向とは異なる第2の方向を含み前記基準面に垂直な面である第2の垂直面と前記第3の側面との交線が前記第2の方向に対して鋭角をなし、前記第2の垂直面と前記第4の側面との交線が前記第2の方向に対して鈍角をなすことを特徴とする請求項4に記載の投写型表示装置。
【請求項9】
前記複数の微細光学素子の各々は、四角錘構造を持つ微細光学素子であることを特徴とする請求項8に記載の投写型表示装置。
【請求項10】
前記複数の微細光学素子の各々は、四角錘構造を持つ微細光学素子の頂角側を切り欠いた構造に相当する断面が台形形状の微細光学素子であること特徴とする請求項8に記載の投写型表示装置。
【請求項11】
前記拡散素子は、前記複数の微細光学素子としての複数のレンズ素子を2次元的に配列したレンズアレイであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投写型表示装置。
【請求項12】
前記複数の微細光学素子の各々は、シリンドリカル形状の微細光学素子であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の投写型表示装置。
【請求項13】
前記光源は、レーザ光源であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の投写型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−231184(P2010−231184A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262087(P2009−262087)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】