説明

投射型映像表示装置

【課題】デジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micro Mirror Device)を
用いた投射型映像表示装置において、コヒーレント光を光源に用いた場合に発生するスペックルノイズの効果的抑制を図る。
【解決手段】本発明に係る投射型映像表示装置は、コヒーレント光を出射する光源と、光源からのコヒーレント光を走査する光走査部と、像が形成される像形成領域を有するデジタルマイクロミラーデバイスと、デジタルマイクロミラーデバイスに形成される像をスクリーンに投影する投射光学系と、デジタルマイクロミラーデバイスと前記投射光学系の間に配置されており、前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が前記像形成領域を重ねて照明するホログラムと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光などのコヒーレント光を用いて光変調素子を照明し、スクリーン上に映像を投射する投射型映像表示装置に関するものであって、特に光変調素子としてデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を使用する投射型映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源からの照明光を、液晶やMEMSなどの光変調素子(マイクロディスプレイ)を用いて映像化し、スクリーンに投影するプロジェクタ(投射型映像表示装置)が知られている。このようなプロジェクタでは、その光源に高圧水銀ランプなどの白色光源を用いたものが知られており、液晶などの2次元光変調素子を照明し得られた画像を投射光学系で拡大してスクリーン上に映像を投射している。
【0003】
しかしながら、高圧水銀ランプなどの高輝度放電ランプは、寿命が比較的短くプロジェクタなどに利用した場合、頻繁にランプを交換する必要がある。また、装置自体が大型化してしまうという欠点もある。さらには、環境負荷の観点から水銀を使用する高圧水銀ランプの仕様は好ましいものとはいえない。このような欠点を解消するため、レーザー光を光源として使用するプロジェクタも提案されている。半導体レーザーは、高圧水銀ランプなどと比較して高寿命であり、また、装置全体の小型化を図ることも可能である。
【0004】
このように、プロジェクタの次世代光源として期待されているレーザー光は直進性に優れるため、LEDなどと比較しても光入射効率の向上を図ることができると考えられる。しかしながら、レーザー光を光源として用いた場合、コヒーレンスの高さに起因するスペックルノイズが発生し、映像を見難くしてしまう欠点がある。
【0005】
スペックルノイズは、コヒーレントなレーザー光を光源とした場合、照射対象表面の微少凹凸からの散乱光が干渉することで生ずる斑点状のノイズであって、プロジェクタで発生した場合には画質劣化の原因となるのみならず、観察者に対して生理的不快感をもたらすこともある。このスペックルノイズを低減するため、レーザー光が通過する拡散板を振動させる、レーザースペクトルの波長スペクトルを拡大する、レーザー光の照射対象となるスクリーン自体を振動させるなど、各種試みが行われている。このようなスペックルノイズ低減の試みとして、特許文献1には、コヒーレント光が通過する拡散素子を回転運動させることで、スペックルノイズの低減を図る無スペックル・ディスプレイ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−208089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるスペックルノイズ低減方法では、拡散素子到達前に生じていたスペックルノイズ(干渉パターン)は平均化できるものの、拡散中心からスクリーンへの入射光線角度はスクリーン上のいずれの点においても不変であるため、スクリーン各点の光散乱特性も一定となり、結果としてスクリーン上で発生するスペックルノイズの除去効果は殆ど得られないという問題があった。
【0008】
このような、コヒーレント光を原因として生ずるスペックルは、コヒーレント光を光源
として使用するプロジェクタ(投射型映像表示装置)のみならず、コヒーレント光を使用する様々な照明装置において問題となっている。
【0009】
近年、投射型映像表示装置としてのプロジェクタにおいて、光変調素子としてデジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micro Mirror Device)が開発されている。
このデジタルマイクロミラーデバイスでは、画素に相当する微少な反射面を角度制御することで映像が形成される。このようなデジタルマイクロミラーデバイスにおいてもレーザー光のようなコヒーレント光を光源に用いることが考えられるが、前述したようなスペックルによる様々な問題が考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る投射型映像表示装置は、
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源からのコヒーレント光を走査する光走査部と、
像が形成される像形成領域を有するデジタルマイクロミラーデバイスと、
前記デジタルマイクロミラーデバイスに形成される像をスクリーンに投影する投射光学系と、
前記デジタルマイクロミラーデバイスと前記投射光学系の間に配置されており、前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が前記像形成領域を重ねて照明するホログラムと、を備えることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明の投射型映像表示装置において、前記ホログラムは、要素ホログラムが複数並列配置され、
前記要素ホログラムは、それぞれ異なる波長の光を回折することを特徴とする。
【0012】
さらに本発明の投射型映像表示装置において、前記ホログラムは、要素ホログラムが複数積層され、
前記要素ホログラムは、それぞれ異なる波長の光を回折することを特徴とする。
【0013】
さらに本発明の投射型映像表示装置において、前記ホログラムは、前記デジタルマイクロミラーデバイスと前記投射光学系に面する入出射面が前記デジタルマイクロミラーデバイスから前記投射光学系に向かう方向の光軸に対して垂直であるプリズムに挟持されることを特徴とする。
【0014】
また本発明の投射型映像表示装置は、
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源からのコヒーレント光を走査する光走査部と、
像が形成される像形成領域を有するデジタルマイクロミラーデバイスと、
前記デジタルマイクロミラーデバイスに形成される像をスクリーンに投影する投射光学系と、
前記光走査部で走査された走査光を拡散させる第1のホログラムと、
前記第1のホログラムからの拡散光を回折する第2のホログラムと、を備え、
前記第1のホログラムの各点から出射される拡散光は、前記第2のホログラムで回折されて前記像形成領域を重ねて照明することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の投射型映像表示装置によれば、光走査部でコヒーレント光を走査することで、ホログラムの各点からの拡散光は、被照明領域としての像形成領域を時間的に異なる角度で照射することとなり、被照明領域で発生するスペックルを時間的に変化させ、観察者に不可視の状態とさせることが可能となる。さらに、本発明の投射型映像表示装置では、ス
クリーンに対しても時間的に異なる角度で照射することで、スクリーン上で発生するスペックルを効果的に抑制することができる。
【0016】
また、従来のDMDにおいて、全反射プリズムを用いていた部分をホログラムとすることで、全反射条件の制約を回避できるため、光の利用効率の向上を図るとともに光学系の小型化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る投射型映像表示装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施形態に係る照明部の構成を示す図
【図3】本発明の実施形態に係る照明部で使用するホログラム作成の様子を示す図
【図4】本発明の実施形態に係る光走査の様子を示す図
【図5】本発明の他の実施形態に係る照明部の構成を示す図
【図6】本発明の他の実施形態に係る照明部の構成を示す図
【図7】本発明の実施形態に係るRGB各色入射光とホログラムの配置関係を示す図
【図8】本発明の実施形態に係るRGB各色入射光とホログラムの配置関係を示す図
【図9】本発明の他の実施形態に係る照明部の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
では、本発明の実施形態に係る投射型映像表示装置について図面を参照しつつ説明を行う。図1は、本発明の実施形態に係る投射型映像表示装置の構成を示す図である。なお、以下に説明する図面は、模式的に示した図であって、実際の形状、寸法、配置とは異なっている。
【0019】
本実施形態の投射型映像表示装置10は、照明部と、映像を形成するためのデジタルマイクロミラーデバイス31(以下、「DMD」という)、DMD31の像形成領域に形成された映像をスクリーン41に投射する投射光学系32を備えている。なお、図では、映像が投影されるスクリーン41面をX−Y平面、それに直交する軸をZ軸としている。スクリーン41には、スクリーン41で反射された映像を観察する反射型スクリーン、あるいは、スクリーン41を透過した映像を観察する透過型スクリーンどちらを使用することもできる。
【0020】
本実施形態の照明部20は、光源11、光走査部15、ホログラム21、プリズム25a、25bを有して構成されている。
【0021】
光源11は、コヒーレント光としてのレーザー光を出射する半導体レーザー装置など各種レーザー装置が使用される。光走査部15は、回動中心Raを中心として反射面を回動させることのできるミラーデバイスであって、ポリゴンミラー、ガルバノスキャナ、MEMSスキャナのような可動ミラーを機械的に回動させるミラーデバイスが用いられる。この他、音響光学効果スキャナのような屈折率を変調させるものなど各種形態を採用することができる。
【0022】
光走査部15にてコヒーレント光L1を時間的に走査された走査光Laは、2つのプリズム25a、25bに挟持されたホログラム21で回折され、光変調素子としてのDMD31を照明する照明光Lbとなる。ここで、一方のプリズム25aは、DMD31から投射光学系32に向かうZ方向の光軸に対して垂直な入射面を、また、他方のプリズム25bは、同光軸に対して垂直な出射面を有している。このように、プリズム25a、25bにおける入出射面を光軸に対して垂直にすることで、投射光学系32で行う収差補正を容易にすることができる。特に、非点収差補正の点においては効果的となる。
【0023】
DMD31(デジタルマクロミラーデバイス)は、画素を構成する微細な反射板の集合が像形成領域中に配置された反射型の光変調素子の一種である。各反射板は、形成する映像に基づいて反射方向を変更し、オンとされた画素の反射板は入射光を投射光学系32に入射するように反射し、オフとされた画素の反射板は投射光学系32に入射しない方向に入射光を反射することで、映像に対応する変調光Lcを出射する。その際、オフとする画素の反射光は外部への漏れ光とならないように、装置内部に配置された吸収板(図示せず)にて吸収される。
【0024】
光源11から出射されたコヒーレント光L1は、光走査部15の反射面に入射されることとなるが、このとき、コヒーレント光は、光走査部15が回動運動する場合において位置変動が少ない反射面上の1点(以下、「基準点」と呼ぶ)に入射させることが好ましい。このような基準点にコヒーレント光を入射させることで、ホログラム21の作成時に使用した参照光の集光位置を、光走査部15の基準点に設定することとなり、ホログラム21に記録されている像を確実に得ることが可能となる。
【0025】
図2は、図1の投射型映像表示装置における照明部20を部分的に取り出した図である。ここでは、光拡散部15による走査光Laにて走査されるホログラム21の機能について説明する。ホログラム21は、走査光Laが入射されることで被照明領域、本実施態様においては、DMD31の像形成領域全体を照明する光学素子であって本実施形態では反射型のホログラム21が用いられている。ホログラム21を採用したことで、走査光Laの入射位置に因らず、常に同一の再生像を得ることが可能となり、被照明領域となるDMD31の像形成領域全体をムラ無く照明することができる。また、ホログラム21に入射させる走査光Laのビーム断面形状、あるいは、その入射角度などに自由度を持たせることができ、装置のレイアウトなどを自在なものとすることができる。
【0026】
本実施形態で使用するホログラム21は、記録された再生像として拡散板像22iを再生する。光源11から出射されたコヒーレント光は、回動する光走査部15で反射されることで走査光Laとなりホログラム21の入射面上を往復して走査する。図にはある時刻t1、t2についての走査光La(t1)、La(t2)の様子が示されている。本実施形態のホログラム21は、所定の入射角を有する光(再生照明光)に対して再生像としての拡散板像22iを形成する。光走査部15にて走査された走査光Laは、何れの走査位置においても、このホログラム21に対する再生照明光となるように設定されている。なお、本実施形態で使用するホログラム21の作成については後で説明する。
【0027】
図2に示されるように、時刻t1のときの走査光La(t1)は、ホログラム21にて再生光としての照明光Lb(t1)を回折し拡散板像22iを形成する。また、時刻t2のときの走査光La(t2)は、ホログラム21にて照明光Lb(t2)を回折し拡散板像22iを形成する。このように走査光Laが走査されることで、ホログラム21の何れの入射位置を照射するときにも同一形状の拡散板像22iが同じ位置に重なるように形成される。この拡散板像22iが被照明領域全体を含むように位置させることで、何れの走査位置においても被照明領域全体を均一に照明することが可能となる。
【0028】
図3は、本発明の実施形態に係る照明部で使用される反射型ホログラム21を記録(作成)する際の構成(干渉露光)を示す図である。拡散板22の背面側からレーザー光を照射し、前方に拡散した物体光Obをホログラム記録材料24の一方の面から入射させる。その際、拡散板22の各点からの拡散光(物体光Ob)は、ホログラム記録材料24の少なくとも再生時に使用する回折領域全面を照明するよう拡散させる。
【0029】
そして、ホログラム記録材料24の他の面から、集光光学系23にて集光した参照光Rが照射される。集光光学系23の焦点位置Aは、使用時の光走査部15による基準点と一
致するように配置されている。物体光Obと参照光Rを同時に入射させ、ホログラム記録材料24中で干渉させる。なお、物体光Obと参照光とは干渉性を有する必要がある。そのため、同一の光源から発振されたレーザー光を分割して一方を物体光Ob、他方を参照光Rとして使用することなどが考えられる。
【0030】
ホログラム記録材料24は加熱、紫外線照射等の後処理を経て面上の各点において、同じ位置に拡散板像を再生する反射型のホログラム21が作成される。ここで、記録時に用いられる物体光Obの照射には、オパールガラスやすりガラスといった通常の拡散板22のみならず、レンズアレイなど、各点からの拡散光が使用領域全面を照明できる光拡散素子を用いることとしてもよい。なお、本実施形態では、物体光Obと参照光Rとを干渉させることで干渉縞の記録(干渉露光)を行うこととしたが、計算機にて計算された干渉縞を直接、ホログラム記録材料24に記録する、いわゆる計算機合成ホログラムを採用するものであってもよい。
【0031】
図1に戻り、DMD31で変調された変調光Lcは、投射光学系32で拡大され映像再生光Ldとしてスクリーン41上に投射され、反射、あるいは、透過される映像を観察者に観察させる。この投射光学系32は、変調光Lcが時間的に変化した場合においても、スクリーン41上に像を結ぶように設定されている光学系である。実際には、レンズなど複数の光学素子で形成される。
【0032】
通常、スクリーン41の面上に投射されたコヒーレント光は互いに干渉することでスペックルを生じさせる。しかしながら、本実施形態では、光走査部15によってコヒーレント光が走査されるため、結果としてスクリーン41に投射する映像再生光Ldを経時的に変化させ、このスペックルを極めて効果的に目立たなくしている。
【0033】
例えば、図1に示されるスクリーン上の点P1においては、時刻t1における映像再生光Ld(t1)と、時刻t2における映像再生光Ld(t2)が異なる入射角度で照射されることとなる。図に示す他の点P2や図示しない他の点においても同様であって、映像再生光Ldは、入射角度を時間的に変化させつつスクリーン41上に映像を投射する。したがって、ごく短い時間ではスクリーン上に形成されるスペックルも、映像再生光Ldが時間によって異なる入射角度で照射されることで平均化され、スクリーン41に投射される像を観察する観察者には十分に目立たない状態となる。
【0034】
観察者によって観察されるスペックルには、このようにスクリーン41上でのコヒーレント光の散乱を原因として発生するスペックルだけではなく、投射型映像表示装置10の各種光学素子上で発生するものもある。このスペックルは、投射光学系32を介してスクリーン41に投影されることで観察者に観察される。本実施形態では、走査光Laがホログラム21を走査することで、被照明領域としてのDMD31の像形成領域を照明する。すなわち被照明領域を、ホログラム21の各点からの拡散光が時間的に分離されるように照明することで、ホログラム21より前の位相情報をキャンセルするとともにホログラム21の各点からの拡散光同士が干渉することも防ぐことができ、投射型映像表示装置10の各種光学素子で発生するスペックルを十分に目立たない状態とすることが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態に係る投射型映像表示装置について説明したが、この投射型映像表示装置にて使用する各種構成の実施形態について説明する。前述の実施形態では、光走査部15の走査形態については詳細を説明しなかったが、光走査部15によるコヒーレント光L1の走査は、ホログラム21を1次元的、2次元的に走査してもよい。何れの場合においてもホログラム21上の各点からの拡散光が被照明領域全体を十分に照明できることが必要とされる。
【0036】
図4には、1次元的に走査を行う光走査部15の実施形態が示されている。この形態では、光源部11から出射されたコヒーレント光L1は、1軸方向に共振振動する光走査部15の反射面上で反射し、ホログラム21上をライン上に往復して走査する。このとき光走査部15において回動量の少ない基準点を、ホログラム21の記録時に使用した集光光学系23の焦点位置Aにあわせておくことで、ホログラム21に記録されている拡散板像22iを確実に再生することが可能となる。
【0037】
光走査部15から出射された走査光、ホログラム21上を走査して記録している拡散板像22iを出射する。前述したようにホログラム21は、何れの走査位置においても拡散板像22iを形成するように設計されている。走査光Lbにより、図に示す×印間をライン状に往復して走査されるホログラム21は、常に同一の拡散板像22iを形成する。このようにホログラム21を利用することで、走査領域(回折領域)をライン状とすることも可能であって小型のホログラム21を用いることが可能となる。さらに、光走査部15についても一軸に関する回動であるため駆動系、制御系を簡略化することも可能となる。なお、走査の形態はこのように1次元的な走査に限らず、例えば、光走査部15を2軸回動可能とすることで、ホログラム21を2次元的に走査することとしてもよい。
【0038】
図5は、本発明の他の実施形態に係る照明部20の構成を示す図である。前述の実施形態では、ホログラム21を2つのプリズム25a、25bで挟持する構成を取ったが、本実施形態ではホログラム21のみで構成した形態となっている。この場合においてもホログラム21は、光走査部15から出射される走査光Laにて時間的に位置を変えて走査され、同じ拡散板像22iを形成する。なお、本実施形態では、ホログラム21の入出射面がDMD31から投射光学系32に向かう光軸に対して垂直となるように配置することが好ましい。プリズム25を配置した場合と同様、投射光学系32における収差補正の負担を軽減することが可能となる。
【0039】
図6は、本発明の他の実施形態に係る照明部の構成を示す図であって、前述の投射型映像表示装置では、単色の光源11にて映像を再生していたのに対し、本実施形態では、RGB各色について単位色光源11R、11G、11Bを備え、フルカラーの映像を再生できる形態となっている。
【0040】
各単位色光源11R、11G、11Bは時分割で何れかのコヒーレント光L1R、L1G、L1Bを出射する。このとき、DMD31は出射されるコヒーレント光L1R、L1G、L1Bに応じた像を形成するように同期制御されている。各単位色光源11から出射された各色のコヒーレント光L1は、集光光学系12にて集光され光走査部15に入射される。このとき、前実施形態と同様、各コヒーレント光L1を光走査部15の基準点に入射させることが好ましい。光走査部15にて走査された走査光Laは、ホログラム21の回折領域で回折され、全ての色について同じ拡散板像22iを形成する。このとき拡散板像22iは、DMD31の像形成領域全体を照明するように配置されており、DMD31からは各色毎の変調光Lcが出射される。
【0041】
では、このような複数色に対応したホログラム21の詳細について、図を用いて説明する。図7、図8は、何れもRGB各色入射光とホログラム21の配置関係を示す図であって、光走査部15からホログラム21へ走査光が入射する様子が示されている。
【0042】
図7の実施形態では、ホログラム21を要素ホログラム211R、211G、211Bを複数並列配置した場合の実施形態であって、各要素ホログラム211R、211G、211Bは、同一の記録材料中にその形成領域を異ならせて配置されている。各要素ホログラム211は、各色に応じた波長選択性を有しており、入射される光の波長に応じて拡散板像22iを形成するように記録されている。光走査部15は、要素ホログラム211を
211R→211G→211B→211R→…と行った具合に順次走査し、DMD31において各走査位置の色に応じた像を形成することで、フルカラーの映像を再生することが可能となる。なお、要素ホログラム211は、同一の記録材料中に形成することのみならず、各色毎に異なる記録材料で形成し並列配置することとしても構わない。
【0043】
図8の実施形態では、各色に応じた波長選択性を有する要素ホログラムを211R、211G、211Bを積層した場合の実施形態となっている。光走査部15から出射される走査光L1は、ホログラム21を走査することとなるが、このとき走査光L1の波長に応じた要素ホログラム212で回折され、波長毎に記録している拡散板像22iを再生する。本実施形態では、光走査部15への入射角度が波長毎に異なるため、各色要素ホログラム212への入射位置もずれることとなるが、各色要素ホログラム212では、このような入射位置によらず同じ像を再生するように設定されている。
【0044】
以上、これら2つのホログラム21の実施形態では、RGB3色のコヒーレント光を用いてフルカラー像を再生するものであるが、本実施形態のようにホログラム21を用いたことで、従来、波長毎に設けられていた光学系をまとめ、装置の小型化を図ることが可能となる。なお、図2で説明した照明部20とDMD31を波長毎に用意し、各色のDMD31で形成される変調光を光学素子で合成し、投射する構成を採用することも可能である。
【0045】
ホログラム21はその機能を分割し、複数のホログラム21として構成することとしてもよい。図9は、本発明の他の実施形態に係る照明部の構成を示す図であって、本実施形態では、従前のホログラム21の機能を、第1のホログラム21aと第2のホログラム21bで担うものとなっている。
【0046】
第1のホログラム21aは、前述の実施形態と同様、拡散板像22iが記録されたものである。一方、第2のホログラム21bは、第1のホログラム21aにて再生された拡散板像22iがDMD31の像形成領域全体を照明するように反射するミラーホログラムである。この場合、第1のホログラム21aには、その回折角度の範囲が第2のホログラム21bが回折できる角度範囲に制約される。なお、第2のホログラム21bの参照光と第1のホログラム21aの回折光が同じ角度プロファイルを有している場合には、第1のホログラム21aの回折角度に制約を設ける必要はない。
【0047】
本実施形態においても、光源11から出射されたコヒーレント光L1は、光走査部15の走査位置によらず、同じ拡散板像22iを形成する。前述の実施形態と同様、拡散板像22iはそれを形成する光の入射角度が時間的に変化するため、結果的にスペックルを平均化し不可視化することが可能となる。
【0048】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0049】
10…投射型映像表示装置
11…光源
12…集光光学系
15…光走査部
20…照明部
21…ホログラム
21a…第1のホログラム
21b…第2のホログラム
211R、211G、211B…要素ホログラム
22…拡散板
22i…拡散板像
23…集光光学系
24…ホログラム記録材料
25a、25b…プリズム
31…DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)
32…投射光学系
41…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源からのコヒーレント光を走査する光走査部と、
像が形成される像形成領域を有するデジタルマイクロミラーデバイスと、
前記デジタルマイクロミラーデバイスに形成される像をスクリーンに投影する投射光学系と、
前記デジタルマイクロミラーデバイスと前記投射光学系の間に配置されており、前記光走査部で走査された走査光を拡散させ、各点から出射される拡散光が前記像形成領域を重ねて照明するホログラムと、を備えることを特徴とする
投射型映像表示装置。
【請求項2】
前記ホログラムは、要素ホログラムが複数並列配置され、
前記要素ホログラムは、それぞれ異なる波長の光を回折することを特徴とする
請求項1に記載の投射型映像表示装置。
【請求項3】
前記ホログラムは、要素ホログラムが複数積層され、
前記要素ホログラムは、それぞれ異なる波長の光を回折することを特徴とする
請求項1に記載の投射型映像表示装置。
【請求項4】
前記ホログラムは、前記デジタルマイクロミラーデバイスと前記投射光学系に面する入出射面が前記デジタルマイクロミラーデバイスから前記投射光学系に向かう方向の光軸に対して垂直であるプリズムに挟持されることを特徴とする
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の投射型映像表示装置。
【請求項5】
コヒーレント光を出射する光源と、
前記光源からのコヒーレント光を走査する光走査部と、
像が形成される像形成領域を有するデジタルマイクロミラーデバイスと、
前記デジタルマイクロミラーデバイスに形成される像をスクリーンに投影する投射光学系と、
前記光走査部で走査された走査光を拡散させる第1のホログラムと、
前記第1のホログラムからの拡散光を回折する第2のホログラムと、を備え、
前記第1のホログラムの各点から出射される拡散光は、前記第2のホログラムで回折されて前記像形成領域を重ねて照明することを特徴とする
投射型映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−226273(P2012−226273A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96309(P2011−96309)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】