投射型表示装置
【課題】 スクリーンに斜めから光画像を投射してもスクリーンの面内において光強度の最も高い部分を中央に位置させて、鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置を得ることを目的とする。
【解決手段】 光源系3から出射された光で反射型ライトバルブ2を照射し、反射型ライトバルブ2上に形成される光画像を反射型ライトバルブ2の光軸C2に対して移動して設けられた投射レンズ系7によってスクリーン8に対して斜めから投射する投射型表示装置1において、光源系3から出射される光を集光する集光レンズ4と、前記集光された光を所定の強度分布をつけた光に変換して反射型ライトバルブ2へ導く柱状光学素子5とを備え、前記スクリーン8の入射面内において光強度の最も高い位置が中央に位置するように、前記集光レンズ4を前記柱状光学素子8の中心軸C1に対して偏芯して配置した。
【解決手段】 光源系3から出射された光で反射型ライトバルブ2を照射し、反射型ライトバルブ2上に形成される光画像を反射型ライトバルブ2の光軸C2に対して移動して設けられた投射レンズ系7によってスクリーン8に対して斜めから投射する投射型表示装置1において、光源系3から出射される光を集光する集光レンズ4と、前記集光された光を所定の強度分布をつけた光に変換して反射型ライトバルブ2へ導く柱状光学素子5とを備え、前記スクリーン8の入射面内において光強度の最も高い位置が中央に位置するように、前記集光レンズ4を前記柱状光学素子8の中心軸C1に対して偏芯して配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンに光画像を投射して映像を表示させる投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の投射型表示装置では、狭いスペースでの設置性や装置の小型化を目的として、スクリーンに斜めから光画像を投射する方法が取られている。しかし、透過型スクリーンの背面から光画像を投射する場合、光画像の主光線の入射角が斜めになるため、スクリーンの正面位置から見た場合に輝度が低下するという問題があった。
【0003】
そこで、スクリーンを構成するフレネルレンズの中心位置をスクリーンの中心より上方に移動させることにより、スクリーンの斜め上方から光画像を投射したときに、主光線をスクリーンの中心軸上に集光させるようにした投射型表示装置が提案されている。(例えば特許文献1参照。)
【0004】
【特許文献1】特開平5−88264号公報(段落0012、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように主光線をスクリーンの中心軸上に集光させるようにしても、スクリーンの斜めから光画像を投射すると、スクリーンの入射面内において、光強度の高い部分がスクリーンの中心から大きく外れた端部付近に位置する場合、視覚的に鮮明な映像表示を行うために、最も光強度の高い位置をスクリーン入射面内の中心とすることが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、スクリーンに斜めから光画像を投射してもスクリーンの入射面内において光強度の最も高い部分を中央に位置させて、鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる投射型表示装置は、光源系から出射された光で反射型ライトバルブを照射し、前記反射型ライトバルブ上に形成される光画像を前記反射型ライトバルブの光軸に対して移動して設けられた投射レンズ系によってスクリーンに対して斜めから投射する投射型表示装置において、前記光源系から出射される光を集光する集光レンズと、前記集光レンズによって集光された光を所定の光強度分布をつけた光に変換して前記反射型ライトバルブへ導く柱状光学素子とを備え、前記スクリーンの入射面内において光強度の最も高い部分が中央に位置するように、前記集光レンズを前記柱状光学素子の中心軸に対して偏芯して配置した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スクリーンの入射面内において光強度の最も高い部分が中央に位置するように、集光レンズを柱状光学素子の中心軸に対して偏芯して配置したことにより、スクリーンに斜めから光画像を投射しても鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜図7は、本発明の実施の形態1に係る投射型表示装置に関するもので、図1はその全体構成を示す図、図2は投射型表示装置内の光学機器の部分構成を示すものであって、図2(a)は集光レンズおよび柱状光学素子の側面を示す図、図2(b)は柱状光学素子の出射端を示す図、図3〜図5は投射型表示装置内の各光学機器における柱状光学素子の出射端、反射型ライトバルブの入射面及びスクリーンの入射面内の光強度分布をシミュレーションした結果をそれぞれ示す図、図6は投射型表示装置内の各光学機器における柱状光学素子の出射端や反射型ライトバルブの入射面及びスクリーンの入射面における4隅の位置関係を示す図、図7は投射型表示装置内で、柱状光学素子の出射端中心からスクリーンまでの光の軌跡を示す図である。
【0010】
図において、投射型表示装置1は、光源系3から出射された光で反射型ライトバルブ2を照射し、反射型ライトバルブ2の光軸C2に対して移動して設けられた投射レンズ系7によって、反射型ライトバルブ2上に形成される光画像をスクリーン8に対して斜めから投射するものであって、光源系3から出射される光を集光する集光レンズ4と、集光された光を所定の光強度分布をつけた光に変換して反射型ライトバルブ2へ導く柱状光学素子5とを備えている。集光レンズ4は、スクリーン8の入射面内において光強度の最も高い位置が中央に位置するように、光源系3の光軸C1上にある柱状光学素子5の中心軸に対して偏芯して配置されている。そのため、柱状光学素子5から出射される光の光強度分布は、柱状光学素子5の出射端5bにおいて、スクリーン8の投射レンズ系7からの距離が遠い部分に対応する部分の光強度が高くなるように分布させている。
【0011】
次に、投射型表示装置の各構成機器の詳細について説明する。
光源系3は、光源3aと光源3aの光を反射型ライトバルブ2側に反射させる反射鏡3bとから構成している。反射鏡3bの反射面は放物面を形成し、光源3aから光を反射型ライトバルブ2に向かって光軸C1と略並行に出射する。ここで、光軸C1は光源系3から反射型ライトバルブ2までの照明光学系(光源系3、集光レンズ4、柱状光学素子5、リレーレンズ6)の光軸であり、照明光学系と反射型ライトバルブ2からスクリーン8までの投射光学系(反射型ライトバルブ2、投射レンズ系7、スクリーン8)とを区別して考えることとする。また、投射光学系の光軸はC2とする。
【0012】
集光レンズ4は、光源系3から出射された光を柱状光学素子5の入射端5aの1点に集光させるものである。本実施の形態においては、図2(a)に示すように、屈折率1.517、アッベ数64.167、有効径54.0mm、凸面70の曲率半径51.5mm、凸面71の曲率半径97.0mm、厚み(d1)16.16mmとした。そして、集光レンズ4と柱状光学素子5の距離(d2)は49.41mmとし、光軸C1より柱状光学素子5の短軸方向(図2(b)のd5の方向)、つまり、柱状光学素子5の全反射面のうち、光軸C1と光軸C2に規定される平面に平行な方向で、かつ光軸C1と垂直な方向の偏芯量ryを0.4mmとして設置している。
【0013】
柱状光学素子5は、通常、集光レンズ4を通過した光の、前記光断面内(すなわち、光軸C1上を進む中心光に直交する平面内)における光強度分布を均一化する(すなわち、照度むらを低減する)機能を有する。しかし、本実施の形態における柱状光学素子5は、上述した入射端5aでの集光位置を柱状光学素子5の中心軸(光軸C1と一致)からずらし、柱状光学素子5の図2(a),(b)に示すように光軸C1方向の寸法(d3)12.5mm、光軸C1に垂直な面での長軸方向の寸法(d4)6.1mm、短軸方向の寸法(d5)3.8mmに調整している。このため、出射端5bから出射される光は図3に示すように、図6(a)における辺5B3−5B4部分で光強度が最も高く、辺5B3−5B4から辺5B1−5B2にかけて順次光強度が低くなるように光強度分布に偏りがついた状態で出射される。
【0014】
柱状光学素子5としては、全反射面を内側にして筒状に組み合わされ、断面が4角となる方形筒状形状をなし、内側を向く表面鏡の反射作用を利用して光を複数回反射させた後に、出射端5bから出射させる。従来の投射型表示装置では、光の進行方向に適当な寸法を確保し、内側で複数回反射した光が柱状光学素子5の出射端5bの近傍に重畳照射され、柱状光学素子5の出射端5b近傍においては、略均一な光強度分布が得られるようにしている。しかし、本実施の形態においては、集光レンズ4を偏芯させることにより光軸C1から偏芯した位置に集光されて入射端5aに入射し、柱状光学素子5の全反射面における、光軸C1方向の寸法(d3)と、柱状光学素子5において、光軸C1に垂直な面での短軸方向(図2(b)のy方向)の集光レンズ4の偏芯量ryを調整することにより、出射端5bにおける光強度分布が、スクリーン8の入射面内の投射レンズ系7から遠い部分に対応する部分の光強度が高くなるように光強度分布を調整している。
【0015】
柱状光学素子5から出射され、辺5B3−5B4での光強度が高くなるように光強度分布に偏りをつけた光は、リレーレンズ6によって反射型ライトバルブ2へ導かれる。
【0016】
リレーレンズ6の後段には説明の簡略化のため図示していない2枚のリレーレンズと2枚の反射ミラーが備えられ、柱状光学素子5から出射された光は図6(b)に示すように上下左右が反転し、図4に示すように、下端となる辺2A4−2A3が概ね光強度が高い状態で反射型ライトバルブ2に入射する。
【0017】
反射型ライトバルブ2は、投射する光画像の各画素に対応する可動式のマイクロミラーを多数(例えば、数十万個)平面的に配列したものであり、画素情報に応じて各マイクロミラーの傾斜を変化させるように構成され、入射された光を基に光画像を出射する。マイクロミラーの配列された面(すなわち、マイクロミラーが形成された基板の表面)を基準面とすると、反射型ライトバルブ2は、各マイクロミラーを基準面に対して一定の方向に角度α(例えば、12度)だけ傾けることにより、入射光を投射レンズ系7にむけて反射する。また、反射型ライトバルブ2は、マイクロミラーを基準面に対して反対方向に角度αだけ傾けることにより、入射光を投射レンズ系7から離れた位置に設けられた光吸収板(図示せず)に向けて反射することにより、スクリーン8上の画像投射に利用させないようにすることができる。
【0018】
投射レンズ系7は、複数のレンズを組み合わせたものであり、図1の場合、その中心を反射型ライトバルブ2の光軸C2に対して、垂直上側に6.2mm移動させた位置に配置させている。これにより、図7に示すように、反射型ライトバルブ2から出射された光画像をスクリーン8の下方から斜め方向に投射することができる。
【0019】
このとき、柱状光学素子5の出射端5bの中心から出射した光50は、反射型ライトバルブ2の中心とスクリーン8の中心に結像することとなる。この場合、スクリーン8の面内での光画像の中心位置(8AC)は、反射型ライトバルブ2の光軸C2に対する投射レンズ系7の垂直方向移動量(6.2mm)に、投射レンズ系7の倍率を乗算した位置となる。また、反射型ライトバルブ2から出射された光画像は、投射レンズ系7を経由することにより、図6(c)に示すように上下左右反転してスクリーン8に投射される。従って、柱状光学素子5の出射端5bでの光線の光強度は、スクリーン8の面内では上下方向では同一、左右方向では反転した位置に対して反映されることになる。ここで、図6(b)と図6(c)は、+x方向が逆のため、上下方向のみ反転した図となる。
【0020】
また、スクリーン8の下方に投射型表示装置1を配置し、スクリーン8の下方から斜めに光画像を投射する場合、スクリーン8の面内では下端側が投射レンズ系7から最も近く、上端に向かうにつれ、投射レンズ系7から遠ざかることになる。スクリーンに投射される光強度は、投射される光の強度が同じ場合、投射レンズからの距離の2乗に反比例して小さくなる。従って、従来のように投射レンズ系7から光強度分布が均一な光が照射されると、スクリーン8の下端部8A2−8A1(図6(c))が最も明るくなってしまう。しかし、本実施の形態では、集光レンズ4を偏芯させることにより、スクリーン8の上端側8A4−8A3に対応する柱状光学素子5の出射端5bの上端部5B3−5B4(図6(a))での光強度が高くなるように、光強度分布を調整したので、投射レンズ系7からの距離による光強度の低下と、投射光での光強度の分布が相殺され、図5に示すようにスクリーン8の入射面の概ね中央が最も明るい状態となる。
【0021】
ただし、上記柱状光学素子5の出射端5bの面とスクリーン8の面との位置関係は、柱状光学素子5から反射型ライトバルブ2までの光学系の構成により異なる。その場合、スクリーン8の上端に対応する柱状光学素子5の出射端5bでの位置の光強度が強くなるように柱状光学素子5の寸法構成や集光レンズ4の位置を調整すればよい。また、スクリーン8への投射方向が変わる場合には、その投射方向によって最も投射レンズ系7から遠くなるスクリーン8の位置に対応する柱状光学素子5の出射端5bでの位置の光強度が強くなるように調整すればよい。
【0022】
このように調整した光学機器を搭載して投射型表示装置1を製作した。この投射型表示装置1をスクリーン8の入射面に対して斜めの位置(上下左右)に設置することにより、光源系3からの光を受けて反射型ライトバルブ2から出力された光画像が投射レンズ系7を経由してスクリーン8に斜め(上下左右)から拡大投射される。
【0023】
なお、柱状光学素子5としては、上記以外にガラス又は樹脂等の透明材料で作られ、側壁内側が全反射面となるように構成された例えば、四角柱状のロッド(すなわち、断面形状が四辺形の柱状部材)でもよい。この場合、透明材料と空気界面との全反射作用を利用して光を複数回反射させた後に出射端5b(出射口)から出射させる。
【0024】
また、投射レンズ系7については、必ずしも固定する必要は無く、光軸C2に対して垂直な方向に移動する機構を設けることにより、画像投射位置を上下左右に移動させ、スクリーン8に対する投射角度を変更できるようにしてもよい。
【0025】
また、光源3aとしては、高圧水銀ランプを用いているが、ハロゲンランプ、キセノンランプでもよく、発光デバイスであればどのようなものでもかまわない。例えば、LED(Light Emitting Diode)、レーザ、EL(Electro-Luminescence)、無電極放電ランプでもかまわない。また、反射鏡3bの反射面の形状および構造は放物面に限定されず、例えば、楕円面でも良い。その場合、光源系3の後段に凹レンズを配置する等工夫すれば集光レンズ4に入射する光を光軸C1と略並行とすることができる。
【0026】
さらに、反射型ライトバルブ2は、本実施の形態では上記のようなDMD(Digital Micro-Mirror Device)素子が用いられるが、どのような反射型ライトバルブ2を用いてもよく、例えば、反射型の液晶表示素子でも良い。
【0027】
次に、図8を用いて、柱状光学素子5の中心軸方向の寸法d3を変化させたときのスクリーン8上での光強度分布の変化について説明する。なお、図8は図3〜図5と同様にシミュレーション結果に基づくものであり、以降の図9〜図14に関してもシミュレーション結果に基づくものである。
図8において、縦軸はスクリーン8の図5のライン40上での相対光強度を示し、横軸は図5のライン40におけるスクリーン上のy方向の位置を示す。ただし、x方向(水平方向)においては左右対称とし、水平方向の中心部分のみについて検討したので、0.5Lyがスクリーン8の中心位置となる。ここで、曲線80はd3を10mm、曲線81は15mm、曲線82は25mmとした場合を表している。
【0028】
従来の光学機器では、出射端5bでの光強度を均一にするため、d3を長く取っていた。そのため、スクリーン8に斜めに光を投射した場合、曲線82のように投射レンズ系7から最短距離となるスクリーン8下端(0)が最も光強度が強く、上端(Ly)に向かって光強度が低下するという結果となる。一方、柱状光学素子5の寸法d3を短くすることにより、出射端5bの光強度に分布が生じ、スクリーン8上の光強度分布が変化することが曲線80、81から確認できる。さらに、光強度の最も高い位置が変化していることも確認できる。従って、スクリーン8上での光強度分布を変化させるためには、柱状光学素子5の寸法d3を調整することにより、出射端5bの光強度に適度な分布をつける必要があることがわかる。ただし、d3を10mmまで短くした曲線80では、スクリーン上端部(Ly)での相対光強度が60%以下となりスクリーン8内での光強度の変化が大きすぎるので好ましくない。
【0029】
次に、図9を用いて集光レンズ4の偏芯量(ry)を0.3mmに設定したときに、図8と同様にd3を変えたときのスクリーン8上での相対光強度分布の変化について説明する。図9において、縦軸はスクリーン8の図5のライン40上での相対光強度を示し、横軸は図5のライン40におけるスクリーン上のy方向の位置を示す。ここで、曲線90はd3を10mm、曲線91は15mm、曲線92は25mmとした場合を表している。
【0030】
図9より、柱状光学素子5の寸法d3を変化させ、かつ、集光レンズ4を柱状光学素子5の全反射面の短軸方向であるy方向に偏芯させることにより、スクリーン8上の光強度分布をさらに変化させることが可能であることがわかる。また、図8と比較して図9では、スクリーン上端(Ly)位置における相対光強度が高く、スクリーン8上の光強度分布の均一性が高くなることがわかる。図9の場合、曲線91の最大光強度位置が概ね0.4Lyであり、スクリーン上端(Ly)位置の相対光強度が約80%と高いことから、柱状光学素子5の寸法d3を15mmとし、集光レンズ4をy方向に0.3mm偏芯させた場合、スクリーン8中心付近(0.5Ly)が概ね最大光強度位置となり、かつ光強度分布が均一となると考えられる。
【0031】
以上より、柱状光学素子5の寸法d3と集光レンズ4の偏芯量ryを変化させることにより、スクリーン8上の最大光強度の位置を変化させ、かつ、スクリーン8上の光強度分布の均一性を高くすることが可能となる。
【0032】
次に、図10を用いて偏芯量ryを変化させたときの寸法d3とスクリーン8のy方向での最大光強度位置との関係について説明する。図10において、縦軸は図5におけるライン40において、光強度が最大となるスクリーン8上のy方向の位置(Ly単位)、横軸は柱状光学素子5の寸法d3を示す。ここで、曲線100は集光レンズ4を偏芯させない場合(ry=0)、101はryを0.2mm、102はryを0.4mm、103はryを0.6mmとした場合を示す。図10より、集光レンズ4を偏芯させない場合(100)が、最もスクリーン8上の最大光強度位置の変化量が小さいことが確認できる。さらに、柱状光学素子5の寸法d3が17.5mm以上の場合、偏芯量ryに関わらずスクリーン8上の最大光強度位置を変化させることが不可能なことがわかる。これは、柱状光学素子5の寸法d3が長くなると出射端5bでの光強度分布が均一となるために、出射端5bに光強度分布をつけることが困難となるからである。
【0033】
寸法d3による光強度の分布への影響は、内部の壁面で光の反射が繰り返される柱状光学素子5の原理上、d5との相対関係で規定できる。従って、d5を3.8mmに規定したときに図10の関係(d3が17.5未満)、つまりd3がd5の4.6倍未満の場合に、光強度分布を変化させることができるといえる。つまり、スクリーン8上の光強度分布を変化させるためには、d3とd5が以下の式1の条件を満足する必要があることになる。
d3<4.6×d5 ・・・式1
【0034】
図11は、スクリーン8のライン40上で最も光強度が小さな位置での光強度をスクリーン8のライン40上で最も光強度が強い位置の光強度に対する相対光強度で表した場合、つまり、最小相対光強度として表したとき、寸法d3を変化させたときの偏芯量ryとスクリーン8のライン40上での最小相対光強度との関係を示す図である。図において、縦軸はスクリーン8のライン40上での最小光強度を最大光強度に対する相対値で示した最小相対光強度、横軸は集光レンズ4の偏芯量ryを示す。ここで、曲線110はd3を7.5mm、曲線111は10mm、曲線112は12.5mm、曲線113は15mmとした場合を表している。図8の曲線82のようにd3が十分長い場合(d3=25)、最小相対光強度(位置:Ly)は約70%以上となるので、最小相対光強度が70%以上の場合にスクリーン8上の光強度分布は問題ないとする。図11より集光レンズ4の偏芯量が0.2mm〜0.6mmの間において、柱状光学素子5の寸法d3が本実施の形態1におけるd3の値である12.5mm(曲線112)の場合が、最もスクリーン8のライン40上での最小相対光強度が高い。つまり、スクリーン8の面内において、最大光強度と最小光強度との差が小さく、図5のようにスクリーン8の入射面内での光強度の均一性が高くなっていることがわかる。ここで、x方向に集光レンズを偏芯していないため、x方向の光強度の均一性は概ね変化しない。
【0035】
図12は、柱状光学素子5の寸法d3を変化させたときの集光レンズ4の偏芯量ryとスクリーン8上でのy方向の最大光強度位置との関係を示す図である。図において、縦軸はスクリーン8上でのy方向(図5のライン40上であって、x方向でのスクリーン中心)の最大光強度位置、横軸は集光レンズ4のy方向偏芯量ryを示す。ここで、曲線120はd3を7.5mm、曲線121は10mm、曲線122は12.5mm、曲線123は15mmとした場合を表している。図12より、スクリーン8上のy方向光強度分布の均一性が高い柱状光学素子5の寸法d3が12.5mmの場合(曲線122)、集光レンズ4のy方向偏芯量ryが0.4mmのときに、最大光強度位置が概ねスクリーン8の中心(0.5Ly)となることがわかる。
【0036】
図11よりスクリーン8上のy方向光強度分布を均一とするための寸法d3の最適条件は式1と同様に寸法d5との相対関係、つまりd3がd5の3.3倍のときに最適な光強度分布を得られることができるといえ、その条件は以下の式2で表される。また、集光レンズ4の偏芯量ryと最大光強度位置との関係も、柱状光学素子5の原理上、d5との相対関係で規定できる。従って、d5を3.8mmに規定したときに図12の関係が得られたのであるから、ryがd5の0.1倍の場合に、光強度の高い位置をスクリーン8の中心に位置させることができ、その条件は以下の式3で表される。ただし、偏芯方向は、光源系3から反射型ライトバルブ2までの光学系の設計により、+y方向とは限らないため、集光レンズ4の偏芯量ryは絶対値とする。
d3=3.3×d5 ・・・式2
ry=0.1×d5 ・・・式3
【0037】
つまり、本実施の形態では、上述した式2および式3に基づいて柱状光学素子5の寸法および集光レンズ4の偏芯量を最適化し、柱状光学素子5の出射端5bでの光強度分布を調整したので、図5に示すように、最大光強度位置がスクリーン8の中央部となり、しかも光強度分布の偏りが少ない映像を表示することができる。
【0038】
上記最適化は、投射レンズ系7の光軸C2からの移動量を6.2mmに固定した場合についてのものであるが、投射レンズ系7のy方向の移動量と、スクリーン8中心を最大光強度位置とする集光レンズ4の偏芯量ryについても検討した。
【0039】
図13は、投射レンズ系7の光軸C2からの移動量、つまり投射レンズ系7の光軸C2に対するy方向の移動量を変化させたときの集光レンズ4の偏芯量ryとスクリーン8上のy方向の最大光強度位置との関係を示す図である。図において、縦軸は図5におけるライン40において、相対光強度が最大となるスクリーン8上のy方向の位置(Ly単位)、横軸は集光レンズ4の偏芯量ryを示す。ここで、曲線140は投射レンズ系7の光軸C2からのy方向の移動量が1.5mm、曲線141は3mm、曲線142は4.5mm、曲線143は6.2mmとした場合を表している。なお、柱状光学素子5の寸法d3は12.5mmである。図13より、投射レンズ系7の光軸C2からy方向への移動量が変化すると、最大光強度位置をスクリーン8の中央(0.5Ly)に一致させるための集光レンズ4の偏芯量ryが変化することがわかる。従って、投射レンズ系7のy方向への移動に追従して集光レンズ4の偏芯量ryを変化させることにより、常時スクリーン8の中心が最大光強度となるようにすることが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態においては、スクリーン8の下方から光画像を投射するために、投射レンズ系7をy方向、つまり、光軸C1と光軸C2に規定される平面に平行な方向で、かつ光軸C2と垂直な方向に移動させた例について説明したが、側方から光画像を投射する場合、つまり、光軸C1と光軸C2に規定される平面に垂直な方向に移動させた例についても、以下のように光学機器を構成すればよい。
【0041】
図14は、投射レンズ系7の光軸C2からのx方向の移動量を変化させたときの集光レンズ4の柱状光学素子5における全反射面の長軸方向(図2(b)のx方向)であるx方向偏芯量rx、つまり、柱状光学素子5の全反射面における光軸C1に垂直な面であって、光軸C1と光軸C2で規定される平面に垂直な辺の方向の偏芯量とスクリーン8上のx方向の最大光強度位置との関係を示す図である。図において、縦軸は図5におけるライン41において、相対光強度が最大となるスクリーン8上のx方向の位置(Lx単位)、横軸は集光レンズ4の偏芯量rxを示す。ここで、曲線150は投射レンズ系7の光軸C2からのx方向の移動量が1.5mm、曲線151は3mm、曲線152は4.5mmとした場合を表している。図14より、投射レンズ系7を光軸C2からx方向に移動させた場合においても、集光レンズ4をx方向に偏芯させることにより、常時スクリーン8の入射面内の中心が最大光強度となるようにすることが可能となる。ここで、スクリーン8のx方向中心は0.5Lxである。
【0042】
また、図13および図14から、最大光強度位置をスクリーン8の中央に一致させるためには、集光レンズ4の偏芯量は、x方向、y方向ともに0.6mmまでとすることが好ましいと考えられる。
【0043】
また、x方向の偏芯量rxは、内部の壁面で光の反射が繰り返される柱状光学素子5の原理上、全反射面における光軸C1に垂直な面であって、光軸C1と光軸C2で規定される平面に垂直な辺の寸法d4(6.1mm)との相対関係で規定できる。従って、投射レンズ系7を光軸C2からx方向に移動させる場合に、偏芯量rxが柱状光学素子5の全反射面における長軸方向の寸法d4に対して0.10倍未満である場合に、スクリーン8の中心を最大光強度となるように、光強度分布を変化させることができ、その条件は、以下の式4で表される。
【0044】
また、投射レンズ系7を光軸C2からy方向に移動させる場合に、偏芯量ryが柱状光学素子5の全反射面における短軸方向の寸法d5に対して0.16倍未満である場合に、スクリーン8の中心を最大光強度となるように、光強度分布を変化させることができ、以下の式5で表される。ただし、偏芯方向は、光源系3から反射型ライトバルブ2までの光学系の設計により、本実施の形態のような+y方向および−x方向(図6(a))とは限らないため、集光レンズ4の偏芯量rxおよび偏芯量ryは絶対値とする。
rx<0.10×d4 ・・・式4
ry<0.16×d5 ・・・式5
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、光源系3から出射された光で反射型ライトバルブ2を照射し、反射型ライトバルブ2の光軸C2に対して移動して設けられた投射レンズ系7によって、反射型ライトバルブ2上に形成される光画像をスクリーン8に対して斜めから投射する投射型表示装置1において、光源系3から出射される光を集光する集光レンズ4と、前記集光された光を所定の光強度分布をつけた光に変換して反射型ライトバルブ2へ導く柱状光学素子5とを備え、集光レンズ4は、スクリーン8の入射面内において光強度の最も高い部分が中央に位置するように、柱状光学素子8の中心軸C1に対して偏芯して配置したので、スクリーン8に斜めから光画像を投射しても光強度の高い部分がスクリーン8の入射面の中心(8AC)に概ね一致し、鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置1を得ることができる。
【0046】
特に、柱状光学素子5の出射端5bにおける光強度分布を、スクリーン8の入射面内の投射レンズ系7から遠い部分(辺8A4−8A3)に対応する部分(辺5B3−5B4)の光強度が高くなるように分布させたので、光強度の高い部分がスクリーンの中心(8AC)に概ね一致し、好適な光強度分布によって鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置1を得ることができる。
【0047】
さらに、寸法d3と寸法d5との関係が式1または2を満足するように、偏芯量ryと寸法d5との関係が式3または5を満足するように、または偏芯量rxと寸法d4との関係が式4を満足するように調整したので、スクリーン8の入射面内での光強度分布を最適化し、鮮明な映像を表示することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態1において、投射レンズ系7の移動量を調整可能とした場合、集光レンズ4の偏芯量を、投射レンズ系7の反射型ライトバルブ2の光軸C2に対する移動量に応じて調整する集光レンズ調整機構(図示せず)を設けるようにしてもよい。その場合、設置位置に応じてスクリーン8に対する投射角度を変更するために投射レンズ系7の移動量を調整したときに、投射レンズ系7の移動量が変化しても、それに対応して集光レンズ4の偏芯量が調整される。従って、どのような投射角度で光画像を投射しても、光強度の高い部分がスクリーン8の入射面の中心(8AC)に概ね一致し、鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置1を得ることができる。
【0049】
なお、実施の形態1において、図3、図9〜図13での集光レンズ4の偏芯方向は、図6(a)における+y方向、図14での集光レンズ4の偏芯方向は、図6(a)における−x方向である。
【0050】
集光レンズ4の偏芯するy方向を、柱状光学素子5の全反射面の短軸あるいは光軸C1と光軸C2に規定される平面に平行な方向で、かつ光軸C1と垂直な方向であると説明しているが、柱状光学素子5の矩形断面の短軸方向(図2(b)あるいは、図6(a)のy方向)をも意味している。また、集光レンズ4の偏芯するx方向についても、柱状光学素子5の全反射面の長軸あるいは光軸C1と光軸C2に規定される平面に垂直な方向であると説明しているが、柱状光学素子5の矩形断面の長軸方向(図2(b)あるいは、図6(a)のx方向)をも意味している。
【0051】
実施の形態2.
図15は、本実施の形態2における投射型表示装置を示すものである。図において、投射型表示装置200は、筐体210内部に実施の形態1における光学機器系を備えた映像投射部201を備え、映像投射部201から斜め上方に投射した光画像を背面ミラー202で反射させ、反射させた光画像を正面に設置した透過型のスクリーン208の背面から投射し、スクリーン208の前面から映像を観ることができるものである。
【0052】
本実施の形態2における投射型表示装置200は、上記実施の形態1で説明した光学機器系を備えた映像投射部201を備え、透過型スクリーン208の斜め下方から光画像を投射することにより、筐体210を小さくすることができる。しかも、スクリーン208の入射面内での光強度がスクリーン208の入射面内の中心で最も強く、しかも、入射面内での光強度の偏りが少ないので鮮明な映像を表示することができる。
【0053】
なお、上記実施の形態1、2では、集光レンズ4を光源系3と柱状光学素子5の間に1枚有しているが、集光レンズ4の光源系3側あるいは柱状光学素子5側にさらにレンズを1枚設けてもかまわない。また、本実施の形態1では、集光レンズ4を一枚のレンズとしているが、複数のレンズを接合したレンズアレイでもかまわない。レンズアレイの各レンズの偏芯量を変化させることにより、柱状光学素子5の出射端5bの光強度分布を変化させることが可能となる。
【0054】
また、柱状光学素子5から反射型ライトバルブ2までの光学系の構成についても上記実施の形態1、2に制限されることはなく、例えば柱状光学素子5の後段に3枚のリレーレンズと反射ミラーを1枚備え、反射型ライトバルブ2に光を照射するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1における投射型表示装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1における投射型表示装置の部分構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における投射型表示装置の柱状光学素子の出射端での光強度分布をシミュレーションした結果を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1における投射型表示装置の反射型ライトバルブの入射面での光強度分布をシミュレーションした結果を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における投射型表示装置を用いたときにスクリーンの入射面内での光強度分布をシミュレーションした結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における投射型表示装置の各部及びスクリーンでの4隅の位置関係を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1における投射型表示装置内の光の軌跡を示す図である。
【図8】柱状光学素子の寸法d3を変化させたときのシミュレーション結果に基づくスクリーン上での光強度分布を示す図である。
【図9】柱状光学素子の寸法d3を変化させたときのシミュレーション結果に基づくスクリーン上での光強度分布を示す図である。
【図10】シミュレーション結果に基づく柱状光学素子の寸法d3とスクリーン上のy方向での最大光強度位置との関係を示す図である。
【図11】シミュレーション結果に基づく集光レンズの偏芯量ryとスクリーンのライン上での最小相対光強度との関係を示す図である。
【図12】シミュレーション結果に基づく集光レンズの偏芯量ryとスクリーン上のy方向での最大光強度位置との関係を示す図である。
【図13】シミュレーション結果に基づく集光レンズの偏芯量ryとスクリーン上のy方向での最大光強度位置との関係を示す図である。
【図14】シミュレーション結果に基づく集光レンズの偏芯量rxとスクリーン上のx方向での最大光強度位置との関係を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態2における投射型表示装置を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 投射型表示装置、 2 反射型ライトバルブ、 3 光源系、 3a 光源、 3b 反射鏡、 4 集光レンズ、 5 柱状光学素子、 5a 入射端、 5b 出射端、 7 投射レンズ系、 8 スクリーン、
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンに光画像を投射して映像を表示させる投射型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の投射型表示装置では、狭いスペースでの設置性や装置の小型化を目的として、スクリーンに斜めから光画像を投射する方法が取られている。しかし、透過型スクリーンの背面から光画像を投射する場合、光画像の主光線の入射角が斜めになるため、スクリーンの正面位置から見た場合に輝度が低下するという問題があった。
【0003】
そこで、スクリーンを構成するフレネルレンズの中心位置をスクリーンの中心より上方に移動させることにより、スクリーンの斜め上方から光画像を投射したときに、主光線をスクリーンの中心軸上に集光させるようにした投射型表示装置が提案されている。(例えば特許文献1参照。)
【0004】
【特許文献1】特開平5−88264号公報(段落0012、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように主光線をスクリーンの中心軸上に集光させるようにしても、スクリーンの斜めから光画像を投射すると、スクリーンの入射面内において、光強度の高い部分がスクリーンの中心から大きく外れた端部付近に位置する場合、視覚的に鮮明な映像表示を行うために、最も光強度の高い位置をスクリーン入射面内の中心とすることが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、スクリーンに斜めから光画像を投射してもスクリーンの入射面内において光強度の最も高い部分を中央に位置させて、鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる投射型表示装置は、光源系から出射された光で反射型ライトバルブを照射し、前記反射型ライトバルブ上に形成される光画像を前記反射型ライトバルブの光軸に対して移動して設けられた投射レンズ系によってスクリーンに対して斜めから投射する投射型表示装置において、前記光源系から出射される光を集光する集光レンズと、前記集光レンズによって集光された光を所定の光強度分布をつけた光に変換して前記反射型ライトバルブへ導く柱状光学素子とを備え、前記スクリーンの入射面内において光強度の最も高い部分が中央に位置するように、前記集光レンズを前記柱状光学素子の中心軸に対して偏芯して配置した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スクリーンの入射面内において光強度の最も高い部分が中央に位置するように、集光レンズを柱状光学素子の中心軸に対して偏芯して配置したことにより、スクリーンに斜めから光画像を投射しても鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1〜図7は、本発明の実施の形態1に係る投射型表示装置に関するもので、図1はその全体構成を示す図、図2は投射型表示装置内の光学機器の部分構成を示すものであって、図2(a)は集光レンズおよび柱状光学素子の側面を示す図、図2(b)は柱状光学素子の出射端を示す図、図3〜図5は投射型表示装置内の各光学機器における柱状光学素子の出射端、反射型ライトバルブの入射面及びスクリーンの入射面内の光強度分布をシミュレーションした結果をそれぞれ示す図、図6は投射型表示装置内の各光学機器における柱状光学素子の出射端や反射型ライトバルブの入射面及びスクリーンの入射面における4隅の位置関係を示す図、図7は投射型表示装置内で、柱状光学素子の出射端中心からスクリーンまでの光の軌跡を示す図である。
【0010】
図において、投射型表示装置1は、光源系3から出射された光で反射型ライトバルブ2を照射し、反射型ライトバルブ2の光軸C2に対して移動して設けられた投射レンズ系7によって、反射型ライトバルブ2上に形成される光画像をスクリーン8に対して斜めから投射するものであって、光源系3から出射される光を集光する集光レンズ4と、集光された光を所定の光強度分布をつけた光に変換して反射型ライトバルブ2へ導く柱状光学素子5とを備えている。集光レンズ4は、スクリーン8の入射面内において光強度の最も高い位置が中央に位置するように、光源系3の光軸C1上にある柱状光学素子5の中心軸に対して偏芯して配置されている。そのため、柱状光学素子5から出射される光の光強度分布は、柱状光学素子5の出射端5bにおいて、スクリーン8の投射レンズ系7からの距離が遠い部分に対応する部分の光強度が高くなるように分布させている。
【0011】
次に、投射型表示装置の各構成機器の詳細について説明する。
光源系3は、光源3aと光源3aの光を反射型ライトバルブ2側に反射させる反射鏡3bとから構成している。反射鏡3bの反射面は放物面を形成し、光源3aから光を反射型ライトバルブ2に向かって光軸C1と略並行に出射する。ここで、光軸C1は光源系3から反射型ライトバルブ2までの照明光学系(光源系3、集光レンズ4、柱状光学素子5、リレーレンズ6)の光軸であり、照明光学系と反射型ライトバルブ2からスクリーン8までの投射光学系(反射型ライトバルブ2、投射レンズ系7、スクリーン8)とを区別して考えることとする。また、投射光学系の光軸はC2とする。
【0012】
集光レンズ4は、光源系3から出射された光を柱状光学素子5の入射端5aの1点に集光させるものである。本実施の形態においては、図2(a)に示すように、屈折率1.517、アッベ数64.167、有効径54.0mm、凸面70の曲率半径51.5mm、凸面71の曲率半径97.0mm、厚み(d1)16.16mmとした。そして、集光レンズ4と柱状光学素子5の距離(d2)は49.41mmとし、光軸C1より柱状光学素子5の短軸方向(図2(b)のd5の方向)、つまり、柱状光学素子5の全反射面のうち、光軸C1と光軸C2に規定される平面に平行な方向で、かつ光軸C1と垂直な方向の偏芯量ryを0.4mmとして設置している。
【0013】
柱状光学素子5は、通常、集光レンズ4を通過した光の、前記光断面内(すなわち、光軸C1上を進む中心光に直交する平面内)における光強度分布を均一化する(すなわち、照度むらを低減する)機能を有する。しかし、本実施の形態における柱状光学素子5は、上述した入射端5aでの集光位置を柱状光学素子5の中心軸(光軸C1と一致)からずらし、柱状光学素子5の図2(a),(b)に示すように光軸C1方向の寸法(d3)12.5mm、光軸C1に垂直な面での長軸方向の寸法(d4)6.1mm、短軸方向の寸法(d5)3.8mmに調整している。このため、出射端5bから出射される光は図3に示すように、図6(a)における辺5B3−5B4部分で光強度が最も高く、辺5B3−5B4から辺5B1−5B2にかけて順次光強度が低くなるように光強度分布に偏りがついた状態で出射される。
【0014】
柱状光学素子5としては、全反射面を内側にして筒状に組み合わされ、断面が4角となる方形筒状形状をなし、内側を向く表面鏡の反射作用を利用して光を複数回反射させた後に、出射端5bから出射させる。従来の投射型表示装置では、光の進行方向に適当な寸法を確保し、内側で複数回反射した光が柱状光学素子5の出射端5bの近傍に重畳照射され、柱状光学素子5の出射端5b近傍においては、略均一な光強度分布が得られるようにしている。しかし、本実施の形態においては、集光レンズ4を偏芯させることにより光軸C1から偏芯した位置に集光されて入射端5aに入射し、柱状光学素子5の全反射面における、光軸C1方向の寸法(d3)と、柱状光学素子5において、光軸C1に垂直な面での短軸方向(図2(b)のy方向)の集光レンズ4の偏芯量ryを調整することにより、出射端5bにおける光強度分布が、スクリーン8の入射面内の投射レンズ系7から遠い部分に対応する部分の光強度が高くなるように光強度分布を調整している。
【0015】
柱状光学素子5から出射され、辺5B3−5B4での光強度が高くなるように光強度分布に偏りをつけた光は、リレーレンズ6によって反射型ライトバルブ2へ導かれる。
【0016】
リレーレンズ6の後段には説明の簡略化のため図示していない2枚のリレーレンズと2枚の反射ミラーが備えられ、柱状光学素子5から出射された光は図6(b)に示すように上下左右が反転し、図4に示すように、下端となる辺2A4−2A3が概ね光強度が高い状態で反射型ライトバルブ2に入射する。
【0017】
反射型ライトバルブ2は、投射する光画像の各画素に対応する可動式のマイクロミラーを多数(例えば、数十万個)平面的に配列したものであり、画素情報に応じて各マイクロミラーの傾斜を変化させるように構成され、入射された光を基に光画像を出射する。マイクロミラーの配列された面(すなわち、マイクロミラーが形成された基板の表面)を基準面とすると、反射型ライトバルブ2は、各マイクロミラーを基準面に対して一定の方向に角度α(例えば、12度)だけ傾けることにより、入射光を投射レンズ系7にむけて反射する。また、反射型ライトバルブ2は、マイクロミラーを基準面に対して反対方向に角度αだけ傾けることにより、入射光を投射レンズ系7から離れた位置に設けられた光吸収板(図示せず)に向けて反射することにより、スクリーン8上の画像投射に利用させないようにすることができる。
【0018】
投射レンズ系7は、複数のレンズを組み合わせたものであり、図1の場合、その中心を反射型ライトバルブ2の光軸C2に対して、垂直上側に6.2mm移動させた位置に配置させている。これにより、図7に示すように、反射型ライトバルブ2から出射された光画像をスクリーン8の下方から斜め方向に投射することができる。
【0019】
このとき、柱状光学素子5の出射端5bの中心から出射した光50は、反射型ライトバルブ2の中心とスクリーン8の中心に結像することとなる。この場合、スクリーン8の面内での光画像の中心位置(8AC)は、反射型ライトバルブ2の光軸C2に対する投射レンズ系7の垂直方向移動量(6.2mm)に、投射レンズ系7の倍率を乗算した位置となる。また、反射型ライトバルブ2から出射された光画像は、投射レンズ系7を経由することにより、図6(c)に示すように上下左右反転してスクリーン8に投射される。従って、柱状光学素子5の出射端5bでの光線の光強度は、スクリーン8の面内では上下方向では同一、左右方向では反転した位置に対して反映されることになる。ここで、図6(b)と図6(c)は、+x方向が逆のため、上下方向のみ反転した図となる。
【0020】
また、スクリーン8の下方に投射型表示装置1を配置し、スクリーン8の下方から斜めに光画像を投射する場合、スクリーン8の面内では下端側が投射レンズ系7から最も近く、上端に向かうにつれ、投射レンズ系7から遠ざかることになる。スクリーンに投射される光強度は、投射される光の強度が同じ場合、投射レンズからの距離の2乗に反比例して小さくなる。従って、従来のように投射レンズ系7から光強度分布が均一な光が照射されると、スクリーン8の下端部8A2−8A1(図6(c))が最も明るくなってしまう。しかし、本実施の形態では、集光レンズ4を偏芯させることにより、スクリーン8の上端側8A4−8A3に対応する柱状光学素子5の出射端5bの上端部5B3−5B4(図6(a))での光強度が高くなるように、光強度分布を調整したので、投射レンズ系7からの距離による光強度の低下と、投射光での光強度の分布が相殺され、図5に示すようにスクリーン8の入射面の概ね中央が最も明るい状態となる。
【0021】
ただし、上記柱状光学素子5の出射端5bの面とスクリーン8の面との位置関係は、柱状光学素子5から反射型ライトバルブ2までの光学系の構成により異なる。その場合、スクリーン8の上端に対応する柱状光学素子5の出射端5bでの位置の光強度が強くなるように柱状光学素子5の寸法構成や集光レンズ4の位置を調整すればよい。また、スクリーン8への投射方向が変わる場合には、その投射方向によって最も投射レンズ系7から遠くなるスクリーン8の位置に対応する柱状光学素子5の出射端5bでの位置の光強度が強くなるように調整すればよい。
【0022】
このように調整した光学機器を搭載して投射型表示装置1を製作した。この投射型表示装置1をスクリーン8の入射面に対して斜めの位置(上下左右)に設置することにより、光源系3からの光を受けて反射型ライトバルブ2から出力された光画像が投射レンズ系7を経由してスクリーン8に斜め(上下左右)から拡大投射される。
【0023】
なお、柱状光学素子5としては、上記以外にガラス又は樹脂等の透明材料で作られ、側壁内側が全反射面となるように構成された例えば、四角柱状のロッド(すなわち、断面形状が四辺形の柱状部材)でもよい。この場合、透明材料と空気界面との全反射作用を利用して光を複数回反射させた後に出射端5b(出射口)から出射させる。
【0024】
また、投射レンズ系7については、必ずしも固定する必要は無く、光軸C2に対して垂直な方向に移動する機構を設けることにより、画像投射位置を上下左右に移動させ、スクリーン8に対する投射角度を変更できるようにしてもよい。
【0025】
また、光源3aとしては、高圧水銀ランプを用いているが、ハロゲンランプ、キセノンランプでもよく、発光デバイスであればどのようなものでもかまわない。例えば、LED(Light Emitting Diode)、レーザ、EL(Electro-Luminescence)、無電極放電ランプでもかまわない。また、反射鏡3bの反射面の形状および構造は放物面に限定されず、例えば、楕円面でも良い。その場合、光源系3の後段に凹レンズを配置する等工夫すれば集光レンズ4に入射する光を光軸C1と略並行とすることができる。
【0026】
さらに、反射型ライトバルブ2は、本実施の形態では上記のようなDMD(Digital Micro-Mirror Device)素子が用いられるが、どのような反射型ライトバルブ2を用いてもよく、例えば、反射型の液晶表示素子でも良い。
【0027】
次に、図8を用いて、柱状光学素子5の中心軸方向の寸法d3を変化させたときのスクリーン8上での光強度分布の変化について説明する。なお、図8は図3〜図5と同様にシミュレーション結果に基づくものであり、以降の図9〜図14に関してもシミュレーション結果に基づくものである。
図8において、縦軸はスクリーン8の図5のライン40上での相対光強度を示し、横軸は図5のライン40におけるスクリーン上のy方向の位置を示す。ただし、x方向(水平方向)においては左右対称とし、水平方向の中心部分のみについて検討したので、0.5Lyがスクリーン8の中心位置となる。ここで、曲線80はd3を10mm、曲線81は15mm、曲線82は25mmとした場合を表している。
【0028】
従来の光学機器では、出射端5bでの光強度を均一にするため、d3を長く取っていた。そのため、スクリーン8に斜めに光を投射した場合、曲線82のように投射レンズ系7から最短距離となるスクリーン8下端(0)が最も光強度が強く、上端(Ly)に向かって光強度が低下するという結果となる。一方、柱状光学素子5の寸法d3を短くすることにより、出射端5bの光強度に分布が生じ、スクリーン8上の光強度分布が変化することが曲線80、81から確認できる。さらに、光強度の最も高い位置が変化していることも確認できる。従って、スクリーン8上での光強度分布を変化させるためには、柱状光学素子5の寸法d3を調整することにより、出射端5bの光強度に適度な分布をつける必要があることがわかる。ただし、d3を10mmまで短くした曲線80では、スクリーン上端部(Ly)での相対光強度が60%以下となりスクリーン8内での光強度の変化が大きすぎるので好ましくない。
【0029】
次に、図9を用いて集光レンズ4の偏芯量(ry)を0.3mmに設定したときに、図8と同様にd3を変えたときのスクリーン8上での相対光強度分布の変化について説明する。図9において、縦軸はスクリーン8の図5のライン40上での相対光強度を示し、横軸は図5のライン40におけるスクリーン上のy方向の位置を示す。ここで、曲線90はd3を10mm、曲線91は15mm、曲線92は25mmとした場合を表している。
【0030】
図9より、柱状光学素子5の寸法d3を変化させ、かつ、集光レンズ4を柱状光学素子5の全反射面の短軸方向であるy方向に偏芯させることにより、スクリーン8上の光強度分布をさらに変化させることが可能であることがわかる。また、図8と比較して図9では、スクリーン上端(Ly)位置における相対光強度が高く、スクリーン8上の光強度分布の均一性が高くなることがわかる。図9の場合、曲線91の最大光強度位置が概ね0.4Lyであり、スクリーン上端(Ly)位置の相対光強度が約80%と高いことから、柱状光学素子5の寸法d3を15mmとし、集光レンズ4をy方向に0.3mm偏芯させた場合、スクリーン8中心付近(0.5Ly)が概ね最大光強度位置となり、かつ光強度分布が均一となると考えられる。
【0031】
以上より、柱状光学素子5の寸法d3と集光レンズ4の偏芯量ryを変化させることにより、スクリーン8上の最大光強度の位置を変化させ、かつ、スクリーン8上の光強度分布の均一性を高くすることが可能となる。
【0032】
次に、図10を用いて偏芯量ryを変化させたときの寸法d3とスクリーン8のy方向での最大光強度位置との関係について説明する。図10において、縦軸は図5におけるライン40において、光強度が最大となるスクリーン8上のy方向の位置(Ly単位)、横軸は柱状光学素子5の寸法d3を示す。ここで、曲線100は集光レンズ4を偏芯させない場合(ry=0)、101はryを0.2mm、102はryを0.4mm、103はryを0.6mmとした場合を示す。図10より、集光レンズ4を偏芯させない場合(100)が、最もスクリーン8上の最大光強度位置の変化量が小さいことが確認できる。さらに、柱状光学素子5の寸法d3が17.5mm以上の場合、偏芯量ryに関わらずスクリーン8上の最大光強度位置を変化させることが不可能なことがわかる。これは、柱状光学素子5の寸法d3が長くなると出射端5bでの光強度分布が均一となるために、出射端5bに光強度分布をつけることが困難となるからである。
【0033】
寸法d3による光強度の分布への影響は、内部の壁面で光の反射が繰り返される柱状光学素子5の原理上、d5との相対関係で規定できる。従って、d5を3.8mmに規定したときに図10の関係(d3が17.5未満)、つまりd3がd5の4.6倍未満の場合に、光強度分布を変化させることができるといえる。つまり、スクリーン8上の光強度分布を変化させるためには、d3とd5が以下の式1の条件を満足する必要があることになる。
d3<4.6×d5 ・・・式1
【0034】
図11は、スクリーン8のライン40上で最も光強度が小さな位置での光強度をスクリーン8のライン40上で最も光強度が強い位置の光強度に対する相対光強度で表した場合、つまり、最小相対光強度として表したとき、寸法d3を変化させたときの偏芯量ryとスクリーン8のライン40上での最小相対光強度との関係を示す図である。図において、縦軸はスクリーン8のライン40上での最小光強度を最大光強度に対する相対値で示した最小相対光強度、横軸は集光レンズ4の偏芯量ryを示す。ここで、曲線110はd3を7.5mm、曲線111は10mm、曲線112は12.5mm、曲線113は15mmとした場合を表している。図8の曲線82のようにd3が十分長い場合(d3=25)、最小相対光強度(位置:Ly)は約70%以上となるので、最小相対光強度が70%以上の場合にスクリーン8上の光強度分布は問題ないとする。図11より集光レンズ4の偏芯量が0.2mm〜0.6mmの間において、柱状光学素子5の寸法d3が本実施の形態1におけるd3の値である12.5mm(曲線112)の場合が、最もスクリーン8のライン40上での最小相対光強度が高い。つまり、スクリーン8の面内において、最大光強度と最小光強度との差が小さく、図5のようにスクリーン8の入射面内での光強度の均一性が高くなっていることがわかる。ここで、x方向に集光レンズを偏芯していないため、x方向の光強度の均一性は概ね変化しない。
【0035】
図12は、柱状光学素子5の寸法d3を変化させたときの集光レンズ4の偏芯量ryとスクリーン8上でのy方向の最大光強度位置との関係を示す図である。図において、縦軸はスクリーン8上でのy方向(図5のライン40上であって、x方向でのスクリーン中心)の最大光強度位置、横軸は集光レンズ4のy方向偏芯量ryを示す。ここで、曲線120はd3を7.5mm、曲線121は10mm、曲線122は12.5mm、曲線123は15mmとした場合を表している。図12より、スクリーン8上のy方向光強度分布の均一性が高い柱状光学素子5の寸法d3が12.5mmの場合(曲線122)、集光レンズ4のy方向偏芯量ryが0.4mmのときに、最大光強度位置が概ねスクリーン8の中心(0.5Ly)となることがわかる。
【0036】
図11よりスクリーン8上のy方向光強度分布を均一とするための寸法d3の最適条件は式1と同様に寸法d5との相対関係、つまりd3がd5の3.3倍のときに最適な光強度分布を得られることができるといえ、その条件は以下の式2で表される。また、集光レンズ4の偏芯量ryと最大光強度位置との関係も、柱状光学素子5の原理上、d5との相対関係で規定できる。従って、d5を3.8mmに規定したときに図12の関係が得られたのであるから、ryがd5の0.1倍の場合に、光強度の高い位置をスクリーン8の中心に位置させることができ、その条件は以下の式3で表される。ただし、偏芯方向は、光源系3から反射型ライトバルブ2までの光学系の設計により、+y方向とは限らないため、集光レンズ4の偏芯量ryは絶対値とする。
d3=3.3×d5 ・・・式2
ry=0.1×d5 ・・・式3
【0037】
つまり、本実施の形態では、上述した式2および式3に基づいて柱状光学素子5の寸法および集光レンズ4の偏芯量を最適化し、柱状光学素子5の出射端5bでの光強度分布を調整したので、図5に示すように、最大光強度位置がスクリーン8の中央部となり、しかも光強度分布の偏りが少ない映像を表示することができる。
【0038】
上記最適化は、投射レンズ系7の光軸C2からの移動量を6.2mmに固定した場合についてのものであるが、投射レンズ系7のy方向の移動量と、スクリーン8中心を最大光強度位置とする集光レンズ4の偏芯量ryについても検討した。
【0039】
図13は、投射レンズ系7の光軸C2からの移動量、つまり投射レンズ系7の光軸C2に対するy方向の移動量を変化させたときの集光レンズ4の偏芯量ryとスクリーン8上のy方向の最大光強度位置との関係を示す図である。図において、縦軸は図5におけるライン40において、相対光強度が最大となるスクリーン8上のy方向の位置(Ly単位)、横軸は集光レンズ4の偏芯量ryを示す。ここで、曲線140は投射レンズ系7の光軸C2からのy方向の移動量が1.5mm、曲線141は3mm、曲線142は4.5mm、曲線143は6.2mmとした場合を表している。なお、柱状光学素子5の寸法d3は12.5mmである。図13より、投射レンズ系7の光軸C2からy方向への移動量が変化すると、最大光強度位置をスクリーン8の中央(0.5Ly)に一致させるための集光レンズ4の偏芯量ryが変化することがわかる。従って、投射レンズ系7のy方向への移動に追従して集光レンズ4の偏芯量ryを変化させることにより、常時スクリーン8の中心が最大光強度となるようにすることが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態においては、スクリーン8の下方から光画像を投射するために、投射レンズ系7をy方向、つまり、光軸C1と光軸C2に規定される平面に平行な方向で、かつ光軸C2と垂直な方向に移動させた例について説明したが、側方から光画像を投射する場合、つまり、光軸C1と光軸C2に規定される平面に垂直な方向に移動させた例についても、以下のように光学機器を構成すればよい。
【0041】
図14は、投射レンズ系7の光軸C2からのx方向の移動量を変化させたときの集光レンズ4の柱状光学素子5における全反射面の長軸方向(図2(b)のx方向)であるx方向偏芯量rx、つまり、柱状光学素子5の全反射面における光軸C1に垂直な面であって、光軸C1と光軸C2で規定される平面に垂直な辺の方向の偏芯量とスクリーン8上のx方向の最大光強度位置との関係を示す図である。図において、縦軸は図5におけるライン41において、相対光強度が最大となるスクリーン8上のx方向の位置(Lx単位)、横軸は集光レンズ4の偏芯量rxを示す。ここで、曲線150は投射レンズ系7の光軸C2からのx方向の移動量が1.5mm、曲線151は3mm、曲線152は4.5mmとした場合を表している。図14より、投射レンズ系7を光軸C2からx方向に移動させた場合においても、集光レンズ4をx方向に偏芯させることにより、常時スクリーン8の入射面内の中心が最大光強度となるようにすることが可能となる。ここで、スクリーン8のx方向中心は0.5Lxである。
【0042】
また、図13および図14から、最大光強度位置をスクリーン8の中央に一致させるためには、集光レンズ4の偏芯量は、x方向、y方向ともに0.6mmまでとすることが好ましいと考えられる。
【0043】
また、x方向の偏芯量rxは、内部の壁面で光の反射が繰り返される柱状光学素子5の原理上、全反射面における光軸C1に垂直な面であって、光軸C1と光軸C2で規定される平面に垂直な辺の寸法d4(6.1mm)との相対関係で規定できる。従って、投射レンズ系7を光軸C2からx方向に移動させる場合に、偏芯量rxが柱状光学素子5の全反射面における長軸方向の寸法d4に対して0.10倍未満である場合に、スクリーン8の中心を最大光強度となるように、光強度分布を変化させることができ、その条件は、以下の式4で表される。
【0044】
また、投射レンズ系7を光軸C2からy方向に移動させる場合に、偏芯量ryが柱状光学素子5の全反射面における短軸方向の寸法d5に対して0.16倍未満である場合に、スクリーン8の中心を最大光強度となるように、光強度分布を変化させることができ、以下の式5で表される。ただし、偏芯方向は、光源系3から反射型ライトバルブ2までの光学系の設計により、本実施の形態のような+y方向および−x方向(図6(a))とは限らないため、集光レンズ4の偏芯量rxおよび偏芯量ryは絶対値とする。
rx<0.10×d4 ・・・式4
ry<0.16×d5 ・・・式5
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、光源系3から出射された光で反射型ライトバルブ2を照射し、反射型ライトバルブ2の光軸C2に対して移動して設けられた投射レンズ系7によって、反射型ライトバルブ2上に形成される光画像をスクリーン8に対して斜めから投射する投射型表示装置1において、光源系3から出射される光を集光する集光レンズ4と、前記集光された光を所定の光強度分布をつけた光に変換して反射型ライトバルブ2へ導く柱状光学素子5とを備え、集光レンズ4は、スクリーン8の入射面内において光強度の最も高い部分が中央に位置するように、柱状光学素子8の中心軸C1に対して偏芯して配置したので、スクリーン8に斜めから光画像を投射しても光強度の高い部分がスクリーン8の入射面の中心(8AC)に概ね一致し、鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置1を得ることができる。
【0046】
特に、柱状光学素子5の出射端5bにおける光強度分布を、スクリーン8の入射面内の投射レンズ系7から遠い部分(辺8A4−8A3)に対応する部分(辺5B3−5B4)の光強度が高くなるように分布させたので、光強度の高い部分がスクリーンの中心(8AC)に概ね一致し、好適な光強度分布によって鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置1を得ることができる。
【0047】
さらに、寸法d3と寸法d5との関係が式1または2を満足するように、偏芯量ryと寸法d5との関係が式3または5を満足するように、または偏芯量rxと寸法d4との関係が式4を満足するように調整したので、スクリーン8の入射面内での光強度分布を最適化し、鮮明な映像を表示することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態1において、投射レンズ系7の移動量を調整可能とした場合、集光レンズ4の偏芯量を、投射レンズ系7の反射型ライトバルブ2の光軸C2に対する移動量に応じて調整する集光レンズ調整機構(図示せず)を設けるようにしてもよい。その場合、設置位置に応じてスクリーン8に対する投射角度を変更するために投射レンズ系7の移動量を調整したときに、投射レンズ系7の移動量が変化しても、それに対応して集光レンズ4の偏芯量が調整される。従って、どのような投射角度で光画像を投射しても、光強度の高い部分がスクリーン8の入射面の中心(8AC)に概ね一致し、鮮明な映像表示が可能な投射型表示装置1を得ることができる。
【0049】
なお、実施の形態1において、図3、図9〜図13での集光レンズ4の偏芯方向は、図6(a)における+y方向、図14での集光レンズ4の偏芯方向は、図6(a)における−x方向である。
【0050】
集光レンズ4の偏芯するy方向を、柱状光学素子5の全反射面の短軸あるいは光軸C1と光軸C2に規定される平面に平行な方向で、かつ光軸C1と垂直な方向であると説明しているが、柱状光学素子5の矩形断面の短軸方向(図2(b)あるいは、図6(a)のy方向)をも意味している。また、集光レンズ4の偏芯するx方向についても、柱状光学素子5の全反射面の長軸あるいは光軸C1と光軸C2に規定される平面に垂直な方向であると説明しているが、柱状光学素子5の矩形断面の長軸方向(図2(b)あるいは、図6(a)のx方向)をも意味している。
【0051】
実施の形態2.
図15は、本実施の形態2における投射型表示装置を示すものである。図において、投射型表示装置200は、筐体210内部に実施の形態1における光学機器系を備えた映像投射部201を備え、映像投射部201から斜め上方に投射した光画像を背面ミラー202で反射させ、反射させた光画像を正面に設置した透過型のスクリーン208の背面から投射し、スクリーン208の前面から映像を観ることができるものである。
【0052】
本実施の形態2における投射型表示装置200は、上記実施の形態1で説明した光学機器系を備えた映像投射部201を備え、透過型スクリーン208の斜め下方から光画像を投射することにより、筐体210を小さくすることができる。しかも、スクリーン208の入射面内での光強度がスクリーン208の入射面内の中心で最も強く、しかも、入射面内での光強度の偏りが少ないので鮮明な映像を表示することができる。
【0053】
なお、上記実施の形態1、2では、集光レンズ4を光源系3と柱状光学素子5の間に1枚有しているが、集光レンズ4の光源系3側あるいは柱状光学素子5側にさらにレンズを1枚設けてもかまわない。また、本実施の形態1では、集光レンズ4を一枚のレンズとしているが、複数のレンズを接合したレンズアレイでもかまわない。レンズアレイの各レンズの偏芯量を変化させることにより、柱状光学素子5の出射端5bの光強度分布を変化させることが可能となる。
【0054】
また、柱状光学素子5から反射型ライトバルブ2までの光学系の構成についても上記実施の形態1、2に制限されることはなく、例えば柱状光学素子5の後段に3枚のリレーレンズと反射ミラーを1枚備え、反射型ライトバルブ2に光を照射するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1における投射型表示装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1における投射型表示装置の部分構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1における投射型表示装置の柱状光学素子の出射端での光強度分布をシミュレーションした結果を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態1における投射型表示装置の反射型ライトバルブの入射面での光強度分布をシミュレーションした結果を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における投射型表示装置を用いたときにスクリーンの入射面内での光強度分布をシミュレーションした結果を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における投射型表示装置の各部及びスクリーンでの4隅の位置関係を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態1における投射型表示装置内の光の軌跡を示す図である。
【図8】柱状光学素子の寸法d3を変化させたときのシミュレーション結果に基づくスクリーン上での光強度分布を示す図である。
【図9】柱状光学素子の寸法d3を変化させたときのシミュレーション結果に基づくスクリーン上での光強度分布を示す図である。
【図10】シミュレーション結果に基づく柱状光学素子の寸法d3とスクリーン上のy方向での最大光強度位置との関係を示す図である。
【図11】シミュレーション結果に基づく集光レンズの偏芯量ryとスクリーンのライン上での最小相対光強度との関係を示す図である。
【図12】シミュレーション結果に基づく集光レンズの偏芯量ryとスクリーン上のy方向での最大光強度位置との関係を示す図である。
【図13】シミュレーション結果に基づく集光レンズの偏芯量ryとスクリーン上のy方向での最大光強度位置との関係を示す図である。
【図14】シミュレーション結果に基づく集光レンズの偏芯量rxとスクリーン上のx方向での最大光強度位置との関係を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態2における投射型表示装置を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1 投射型表示装置、 2 反射型ライトバルブ、 3 光源系、 3a 光源、 3b 反射鏡、 4 集光レンズ、 5 柱状光学素子、 5a 入射端、 5b 出射端、 7 投射レンズ系、 8 スクリーン、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源系から出射された光で反射型ライトバルブを照射し、前記反射型ライトバルブ上に形成される光画像を前記反射型ライトバルブの光軸に対して移動して設けられた投射レンズ系によって、スクリーンに対して斜めから投射する投射型表示装置において、
前記光源系から出射される光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズによって集光された光を所定の光強度分布をつけた光に変換して前記反射型ライトバルブへ導く柱状光学素子とを備え、
前記スクリーンの入射面内において光強度の最も高い部分が中央に位置するように、前記集光レンズを前記柱状光学素子の中心軸に対して偏芯して配置したことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記柱状光学素子の出射端における前記スクリーンの前記投射レンズ系から遠い部分に対応する部分の光強度を高くしたことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記集光レンズは、前記柱状光学素子の全反射面における短軸方向に偏芯していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記柱状光学素子は、前記全反射面における前記柱状光学素子の中心軸方向の寸法をd3、前記全反射面における前記短軸方向の寸法をd5とするとき、
下記の条件、
d3<4.6×d5
を満たすことを特徴とする請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記柱状光学素子は、前記全反射面における前記柱状光学素子の中心軸方向の寸法をd3、前記全反射面における前記短軸方向の寸法をd5とするとき、
下記の条件、
d3=3.3×d5
を満たすことを特徴とする請求項4に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記集光レンズの前記柱状光学素子の中心軸に対する前記柱状光学素子の短軸方向の偏芯量をryとするとき、下記の条件、
ry<0.16×d5
を満たすことを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記集光レンズの前記柱状光学素子の中心軸に対する前記柱状光学素子の短軸方向の偏芯量をryとするとき、
下記の条件、
ry=0.10×d5
を満たすことを特徴とする請求項6に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記集光レンズは、前記柱状光学素子の全反射面における長軸方向に偏芯していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記全反射面における長軸方向の寸法をd4とし、
前記集光レンズの前記柱状光学素子の中心軸に対する前記柱状光学素子の長軸方向の偏芯量をrxとするとき、下記の条件、
rx<0.10×d4
を満たすことを特徴とする請求項8に記載の投射型表示装置。
【請求項10】
前記集光レンズの偏芯量を前記投射レンズ系の前記反射型ライトバルブの光軸に対する移動量に応じて調整する集光レンズ調整機構を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の投射型表示装置。
【請求項1】
光源系から出射された光で反射型ライトバルブを照射し、前記反射型ライトバルブ上に形成される光画像を前記反射型ライトバルブの光軸に対して移動して設けられた投射レンズ系によって、スクリーンに対して斜めから投射する投射型表示装置において、
前記光源系から出射される光を集光する集光レンズと、
前記集光レンズによって集光された光を所定の光強度分布をつけた光に変換して前記反射型ライトバルブへ導く柱状光学素子とを備え、
前記スクリーンの入射面内において光強度の最も高い部分が中央に位置するように、前記集光レンズを前記柱状光学素子の中心軸に対して偏芯して配置したことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記柱状光学素子の出射端における前記スクリーンの前記投射レンズ系から遠い部分に対応する部分の光強度を高くしたことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記集光レンズは、前記柱状光学素子の全反射面における短軸方向に偏芯していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記柱状光学素子は、前記全反射面における前記柱状光学素子の中心軸方向の寸法をd3、前記全反射面における前記短軸方向の寸法をd5とするとき、
下記の条件、
d3<4.6×d5
を満たすことを特徴とする請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記柱状光学素子は、前記全反射面における前記柱状光学素子の中心軸方向の寸法をd3、前記全反射面における前記短軸方向の寸法をd5とするとき、
下記の条件、
d3=3.3×d5
を満たすことを特徴とする請求項4に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記集光レンズの前記柱状光学素子の中心軸に対する前記柱状光学素子の短軸方向の偏芯量をryとするとき、下記の条件、
ry<0.16×d5
を満たすことを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記集光レンズの前記柱状光学素子の中心軸に対する前記柱状光学素子の短軸方向の偏芯量をryとするとき、
下記の条件、
ry=0.10×d5
を満たすことを特徴とする請求項6に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記集光レンズは、前記柱状光学素子の全反射面における長軸方向に偏芯していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投射型表示装置。
【請求項9】
前記全反射面における長軸方向の寸法をd4とし、
前記集光レンズの前記柱状光学素子の中心軸に対する前記柱状光学素子の長軸方向の偏芯量をrxとするとき、下記の条件、
rx<0.10×d4
を満たすことを特徴とする請求項8に記載の投射型表示装置。
【請求項10】
前記集光レンズの偏芯量を前記投射レンズ系の前記反射型ライトバルブの光軸に対する移動量に応じて調整する集光レンズ調整機構を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の投射型表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−261912(P2008−261912A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102628(P2007−102628)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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