投影装置
【課題】曲面鏡を用いた投影装置であって、温度変化によって投影画像に歪みが生じないようなものを提供すること。
【解決手段】投影装置は、スクリーンの厚み方向をX方向、スクリーンの短辺方向をY方向、スクリーンの長辺方向をZ方向と定義し、曲面鏡は、投影光学系からの光束が入射する範囲におけるX−Z平面による断面形状が負のパワーを有し、かつ所定の固定箇所で投影装置内に固定されており、固定箇所に基づき定義される変形基準点を通るX−Y平面による曲面鏡の断面形状は、該X−Y断面内において変形基準点近傍で最も強い負のパワーを持ち、X−Y平面内において、変形基準点を原点とし、曲面鏡のX−Y断面形状における変形基準点での接線をy、法線をxとするx−y座標上を、サグ量x=f(y)が、ymax/2≦y≦ymaxを満たすyについて所定の式を満たすように構成した。
【解決手段】投影装置は、スクリーンの厚み方向をX方向、スクリーンの短辺方向をY方向、スクリーンの長辺方向をZ方向と定義し、曲面鏡は、投影光学系からの光束が入射する範囲におけるX−Z平面による断面形状が負のパワーを有し、かつ所定の固定箇所で投影装置内に固定されており、固定箇所に基づき定義される変形基準点を通るX−Y平面による曲面鏡の断面形状は、該X−Y断面内において変形基準点近傍で最も強い負のパワーを持ち、X−Y平面内において、変形基準点を原点とし、曲面鏡のX−Y断面形状における変形基準点での接線をy、法線をxとするx−y座標上を、サグ量x=f(y)が、ymax/2≦y≦ymaxを満たすyについて所定の式を満たすように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面鏡と投影光学系を使用した投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面且つ薄型のモニタとして、液晶パネルモニタ、PDP(Plasma Display Panel)モニタ等と共に、リアプロジェクションモニタが注目されている。リアプロジェクションモニタとは、透過型または反射型の画像形成手段(透過型の小型液晶パネルや反射型のマイクロミラーデバイス等)によって得られた画像を、投影光学系を介して、スクリーン背面に拡大投影する装置である。リアプロジェクションモニタは、他のタイプのモニタと比べて軽量化、薄型化が容易であり、例えば大画面の壁掛けテレビジョンとしての実施が期待されている。
【0003】
このリアプロジェクションモニタにおいて、特許文献1のような、投影光学系とスクリーンとの光路中に曲面鏡を配置した構成が提案されている。
【特許文献1】特開平6−11767号公報
【0004】
一般に、投影装置内で使用される反射ミラーとしては、ポリカーボネートや塩化ビニル、アクリル樹脂、メタクリル系樹脂などのプラスチック板の表面にアルミニウムなどの金属粒子を蒸着させたものが利用されている。プラスチック製の反射ミラーは、所望の光学特性を有するように容易且つ低コストで製造できるという長所を有する反面、ガラス製のミラーと比べると線膨張係数が数百倍(7×10−5/℃程度)と高い、という短所を有する。投影装置はハロゲンランプなどの高発熱の光源を使用する必要があり、この光源からの熱によって、装置内の温度は短時間のうちに数10℃程度上昇する可能性がある。前述のようにプラスチックは線膨張係数が高いため、この温度上昇によって反射ミラーに看過できない変形が生じる可能性がある。特許文献1のように曲面鏡を内部に有する投影装置の場合、曲面鏡の変形によってスクリーンに投影される画像に歪みが生じる可能性があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、曲面鏡を用いた投影装置であって、温度変化によって投影画像に歪みが生じないような投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明にかかる投影装置は、曲面鏡と、曲面鏡に光束を入射させる投影光学系と、横長矩形のスクリーンと、曲面鏡で反射した光束をスクリーンに導く導光部と、を備える投影装置であって、投影装置において、スクリーンの厚み方向をX方向、スクリーンの短辺方向をY方向、スクリーンの長辺方向をZ方向と定義し、曲面鏡は、投影光学系からの光束が入射する範囲におけるX−Z平面による断面形状が負のパワーを有し、かつ所定の固定箇所で投影装置内に固定されており、固定箇所に基づき定義される変形基準点を通るX−Y平面による曲面鏡の断面形状は、該X−Y断面内において変形基準点近傍で最も強い負のパワーを持ち、X−Y平面内において、変形基準点を原点とし、曲面鏡のX−Y断面形状における変形基準点での接線をy、法線をxとするx−y座標上を、サグ量x=f(y)が、ymax/2≦y≦ymaxを満たすyについて以下の式を満たすことを特徴とする。
|f”(ymax)|≦|f”(y)|≦|2f”(ymax)|
ただし、f”(y)は、f(y)をyで二階微分した値、
ymaxは、曲面鏡の使用範囲において、曲面鏡の変形基準点から最も遠い位置におけるyの値、を表す。
【0007】
このような構成とすると、特に、変形基準点から離れた部分においても曲面鏡の曲率の熱膨張による変化を抑えることができ、投影画像に歪みが生じにくい投影装置が実現される。
【0008】
請求項2に記載の投影装置によれば、上記曲面鏡の断面形状は、特に、サグ量が、ymax/2≦y≦ymaxを満たす領域について以下の式をさらに満たすことが望ましい。
|f”(y)|≦|2f”(ymax)|−|(y/ymax)f”(ymax)|
【0009】
請求項3に記載の投影装置によれば、投影光学系は、曲面鏡との関係において、投影光学系からの光束の曲面鏡への入射角は、変形基準点の近傍において最も小さくなるように配置、構成される。これにより、0≦y≦ymax/2の範囲内において、温度変化による曲率変化が起きたとしても、入射(反射)光束は該曲率変化の影響を最小限に抑えることができる。
【0010】
請求項4に記載の投影装置によれば、曲面鏡は回転対称形状であり、その回転軸は、変形基準点を通過する。
【0011】
請求項5に記載の投影装置によれば、変形基準点は、スクリーンの中心を通るX−Y平面内に位置することが望ましい。そのために、固定箇所は、例えば、スクリーンの中心を通るX−Y平面と曲面鏡の交線からZ方向に互いに等距離だけ離れた二カ所に設定することができる。または、固定箇所は、曲面鏡の装置底面側端部全域であってもよい。
【0012】
請求項8に記載の投影装置によれば、投影光学系と曲面鏡とが直方体状のケースに収められ、スクリーンがケースの一面に形成され、導光部が該ケースの天板部に設けられているように構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、曲面鏡を使用する構成であっても温度変化によって投影画像に歪みが生じないような投影装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を用いて詳細に説明する。図1は、通常使用状態における実施形態のリアプロジェクションモニタ100の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、リアプロジェクションモニタ100は、直方体状のケース50の正面にスクリーン5が設けられている。ここで、通常使用状態とは、スクリーン5が鉛直方向とほぼ平行に位置している状態を言う。
【0015】
なお、図1に示すように、以下の説明では、通常使用状態におけるリアプロジェクションモニタ100において、略長方形状のスクリーン5の厚み方向をX方向、スクリーン5の鉛直方向(つまりスクリーン5の短辺方向)をY方向、スクリーン5の水平方向(つまりスクリーン5の長辺方向)をZ方向という。また、X方向の長さを(モニタ100あるいは各部材の)奥行、Y方向の長さを(モニタ100あるいは各部材の)高さ、Z方向の長さを(モニタ100あるいは各部材の)幅という。
【0016】
図2は、リアプロジェクションモニタ100の断面図である。詳しくは図2は、図1に示すスクリーン5の中心5cを通るX−Y平面での断面図である。以下、説明の便宜上、スクリーン5の中心5cを通るX−Y平面を参照平面という。図2に示すように、リアプロジェクションモニタ100は、直方体状のケース50内に、投影手段1、第1反射鏡2、第2反射鏡3、第3反射鏡4、スクリーン5を有する。第1反射鏡2、第3反射鏡4は平面ミラーである。第2反射鏡3は、非球面形状を持つ曲面ミラーである。第2反射鏡3の具体的形状については後に詳述する。なお、図2および以降に示す各図において、投影手段1から照射された光のうち、最終的にスクリーン5最下部に入射することになる光線(最下部入射光線という)を一点鎖線で示す。該光のうち、最終的にスクリーン5最上部に入射することになる光線(最上部入射光線という)を破線で示す。
【0017】
また、説明の便宜上、スクリーン5をリアプロジェクションモニタ100の前面と定義し、スクリーン5に対向するケース50の面を装置背面と定義する。同様に、リアプロジェクションモニタ100が通常使用状態で設置されたときの、ケース50の接地面を装置底面、底面に対向するケース50の面を天板面、と定義する。
【0018】
本実施形態の投影手段1は、小型の透過型液晶パネルなどの画像生成手段12と、画像生成手段12に照度の高い光束を照射するキセノンランプ等の光源11と、画像生成手段12により生成された像をスクリーン5に投影するための投影レンズ系13を有する。投影手段1は、モニタ100のケース50内部の下部後方に設けられている。
【0019】
投影手段1から射出された光は、スクリーン5に向かって、より正確には投影手段1の斜め上前方に配置された第1反射鏡2に入射し、該第1反射鏡2によってモニタ100背面側に反射される。第1反射鏡2で反射した光は、第2反射鏡3に入射する。第2反射鏡3に入射した光は、該第2反射鏡3によって反射し、モニタ100のケース50の天板面50Tに設けられた第3反射鏡4に向かう。第3反射鏡4で反射した光は、該反射鏡4の斜め下前方に位置するスクリーン5に入射する。
【0020】
ここで、スクリーン5の表面はフレネルレンズ状となっており、斜め上後方から入射した光は、スクリーン5の面におおよそ垂直な方向に屈折される。
【0021】
本実施形態は、以上のような構成によって、スクリーン5に画像が投影され、スクリーン5の前方から該画像を観ることが出来る。本実施形態のリアプロジェクションモニタ100は、上記のように各光学部材を配設することにより、拡大投影に必要な光路長を確保しつつもケース50の薄型化を達成している。
【0022】
このように、本実施形態では、スクリーン後方に投影光学系を配置したリアプロジェクションモニタ100を想定している。しかし、以下詳述する本発明に係る投影装置の具体的構成は、スクリーンに対して前方より像を投影するフロントプロジェクターに対しても有効に利用することができる。
【0023】
次に非球面ミラーである第2反射鏡3について詳述する。図3(a)は、第2反射鏡3の一例を示す概略図である。図3(b)は、図3(a)に示す第2反射鏡3近傍の側面図である。なお、図3(a)では、説明の便宜上、Z方向のサイズを縮小して示している。後述の図3(c)も同様である。図3(a)に示すように、第2反射鏡3は、自身の下方両端3L、3Rを基台51上に設けられた一対の固定部材52L、52Rで夫々固定されている。また、図3(b)に示すように、第2反射鏡3は、ケース50の側面からの凸部等を利用して配設されたねじ等の支持部材53上に載置されている。固定部材52L、52Rと支持部材53によって、第2反射鏡3は、自重による撓みや熱膨張による破損を有効に防止された状態で固定されている。
【0024】
第2反射鏡3は少なくともX−Z断面において負のパワーを有する。より具体的には、第2反射鏡3は、少なくともX−Z断面形状(例えば、図3(a)中点線P1で示す形状)の曲率中心が、第2反射鏡3よりも背面側に位置するような形状を有している。つまり、第2反射鏡3を含む任意のX−Z断面では、スクリーン5側から、第2反射鏡3で反射する光の光路、第2反射鏡3、第2反射鏡3の曲率中心の順に位置している。このように全体として負のパワーを持つ第2反射鏡3を用いることにより、第2反射鏡3を用いない場合と比べてより大画面の画像をスクリーン5に表示させることが可能となる。換言すれば、所定サイズの画像を表示する際に要求される光路長を小さくすることができる。
【0025】
また、図2に示すように、第2反射鏡3は、参照平面での断面形状において、モニタ100底面側に位置する部位付近(つまり最上部入射光線が入射する部位)では曲率が大きく、モニタ100の天板側に位置する部位付近(つまり最下部入射光線が入射する部位)では曲率が小さくなる。このような第3反射鏡3の具体的面形状に関しては追って詳述する。
【0026】
本実施形態の第2反射鏡3は、複雑な面形状を持つため、製造の容易性や装置全体の軽量化等を考慮して、プラスチック製である。より詳細には、第2反射鏡3は、アクリル樹脂、塩化ビニル、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート等の表面平滑性を得やすいプラスチック材料を射出成形等によって非球面状に形成した表面にアルミニウムなどの金属粒子を蒸着させることによって作られる。
【0027】
リアプロジェクションモニタ100をある程度の時間使用していると、光源11の発熱によってケース50の内部の温度が数10℃上昇する。ガラス等と比べると、プラスチックは線膨張係数αが7×10−5[/℃]程度と高いため、ケース50内の温度上昇によって、第2反射鏡3には変形が生じうる。そこで本実施形態の第2反射鏡3は、変形が発生してもスクリーン5上の画像に重大な歪みが発生しない以下に詳述する形状を有する。
【0028】
なお、以下、第2反射鏡3の具体的形状を説明するに先立ち、該形状を定義する基準となる本文独自の用語である変形基準点について説明する。変形基準点とは、ケース50内に載置、固定された第2反射鏡3において、温度変化があっても位置および形状が変化しない、つまり熱膨張しないとみなせる点をいう。
【0029】
つまり、変形基準点は、固定部材による固定箇所の数に応じて以下のように規定される。すなわち、固定部材による固定箇所が一つである場合には、該固定部材によって固定されている領域(以下、便宜上、固定領域という)の幾何学的重心を変形基準点とする。また、固定部材による固定箇所が二つである場合には、各固定箇所における固定領域の幾何学的重心を該曲面内で結んだ仮想線の中点を変形基準点とする。固定部材による固定箇所が三つ以上である場合には、各固定領域の幾何学的重心を該曲面内で結んだ仮想の多角形の幾何学的重心を変形基準点とする。
【0030】
図3(a)に示すように任意の2カ所で第2反射鏡3を固定(挟持)している場合、各固定領域の幾何学的重心を結ぶ仮想線P2の中点3aを変形基準点と規定する。図3(c)は、第2反射鏡3の下方全域を単一の長尺状固定部材521で固定する他の態様を示す。図3(c)に示すように、第2反射鏡3の下方全域(底面側端部全域)、つまり一カ所で第2反射鏡3を固定(挟持)する場合、該固定領域の幾何学的重心3bを変形基準点と規定する。
【0031】
一般に、スクリーン5の中心と第2反射鏡3の中心とは、同一X−Y平面上に位置するように設計される。従って、図3(a)に示すように、第2反射鏡3の両端3L、3Rを固定領域とすると、変形基準点3aは、参照平面内に位置する。このような位置に変形基準点3aを設定すれば、第2反射鏡3の該変形基準点3aを基準とした水平方向(Z方向)の対称性が保たれる。よって、第2反射鏡3の設計が容易になるという利点が得られる。同様のことは、図3(c)でも言える。
【0032】
なお、本実施形態の第2反射鏡3は、回転軸が上記変形基準点を通過する回転対称形状を有する。このように構成することにより、面形状の加工が容易になる。
【0033】
なお、上記固定部材による固定とは、固定されたことにより熱膨張による影響を回避できるような機械的結合状態を意味する。従って、例えば、板バネ等で付勢することにより保持されてはいるが機械的結合状態にはない状態は、ここでの固定には該当しない。つまり、付勢されている領域は変形基準点を規定する指標にはならない。例えば、上述した図3(b)に示す支持部材53は変形基準点を規定する指標ではない。
【0034】
以上定義した変形基準点を用いて、第2反射鏡3の形状および配置について以下具体的に説明する。なお以下では、第2反射鏡3の形状等を、第2反射鏡3の変形基準点を通り、スクリーンに垂直で該スクリーンの短辺方向に沿った平面(第2反射鏡3の変形基準点を通りX−Y平面に平行な平面)で第2反射鏡3を切断した切断面における曲率を用いて説明する。上記の通り、本実施形態の変形基準点は、参照平面内にある。従って、上記切断面は本実施形態の場合、参照平面内にある。
【0035】
(第2反射鏡3に関する概説)
プラスチック製の曲面鏡では一般的に、温度変化による変形が避けられない。その変形によって曲率変化が大きくなればなるほど、スクリーン5上に投影される像の歪みも大きくなる。そこで、本出願人は、温度上昇によって変形が生じたとしても、変形基準点からより離れた領域(以下、第1領域という)での曲率変化を小さく抑える(曲率が変化しないように変形する)ような第2反射鏡3の形状を提示する。但し、変形基準点近傍の領域(以下、第2領域という)では、後述の理由により平面で構成されていない限り必ず曲率変化が起きてしまう。そのため、形状の工夫によって曲率変化を抑制可能な領域と、不可能な領域とに分け、抑制可能な領域にのみ適切な形状を与えることで、効率的な曲率変化抑制効果を得ている。
【0036】
図4は、図2に示す第2反射鏡3近傍を拡大して示す図である。図4に示すように、変形基準点を原点とし、変形基準点における切断面の接線をy軸、法線をx軸とした座標系を想定する。該x−y座標系において、切断面の形状はyを引数とする関数として定義される。該関数により求まるx値は一般に「サグ量」と呼ばれる。
【0037】
図4に示すように、以下の説明では、第2反射鏡3における、第1領域をA1、第2領域をA2とする。なお、変形基準点3aから最も離れた部位である最下部入射光線が入射する部位近傍でのy値ymaxを想定すると、第1領域A1はymax/2≦y≦ymaxとして定義され、第2領域A2は0≦y≦ymax/2として定義される。
【0038】
(概説内容の具体的検証)
本出願人が見出した、曲率変化特性について、より具体的に説明する。曲面である切断面の曲率変化に関する特性は、yを引数とする上記関数をyで二階微分することによって表現される。すなわち、室温(常温)での第2反射鏡3のサグ量xを関数f(y)で示すと、曲率はf(y)の二階微分であるf”(y)を用いて示されることになる。同様に、室温から温度がT上昇した時の第2反射鏡3のサグ量xを関数g(y)で示した場合は、その曲率はg(y)の二階微分であるg”(y)を用いて示されることになる。
【0039】
ここで、f(y)とg(y)との間には数1の関係が成立する。
【0040】
【数1】
【0041】
上記数1の両辺をyで二階微分して整理すると、g(y)の二階微分(すなわち、ケース内の温度がT上昇した時の曲率)g”(y)は、f(y)の二階微分(すなわち、ケース内の温度が室温である時の曲率)f”(y)を用いて、数2のように示される。
【0042】
【数2】
【0043】
(第1領域A1に関する特徴)
以上の具体的検証に基づき第1領域A1に関する課題解決手段について詳述する。第2反射鏡3の第1領域A1において、最適な状態であるf”(y)=g”(y)を想定すると、数2に示す条件は数3のように書き換えられる。
【0044】
【数3】
【0045】
第1領域A1で反射された光により生成される像が当該領域A1での熱膨張の影響を受けない形状とは、f”(y)≒g”(y)を満足する形状である。この形状は、数3よりy値が上昇すると曲率が減少し、近似的に一次関数で表されるような形状であることが見いだせる。具体的には、曲率特性が以下の数5に表される一次関数で表されるように面形状を設定することで温度変化による影響を低減することができる。そのためにはyの基準となる変形基準点を、曲率特性が以下の数5に表される一次関数で表されるような位置に設定する。
【0046】
詳しくは、数6右辺のように、数5に従った形状及びそれよりも曲率を緩くした形状に設定すればよい。また数6左辺の満たすことで、面周辺部のダレ・ハネといったイレギュラーな形状変化を抑制できる。
【0047】
【数5】
【数6】
【0048】
上記の条件を満たす第2反射鏡3の形状について、以下の数7の条件を満たすものでもよい。数6の条件を満たす構成では、第1領域A1において、温度変化時の曲率が同符号に変化する。このことは、曲率変化に伴うデフォーカス量も画面全域で同符号に変化する。よって、デフォーカス調整が容易に行えると言う利点がある。これに対し、数7の条件では、面形状を通常の球面に比較的近く設計することができるため、加工上は有利である。
【0049】
【数7】
【0050】
無数の描画光束の全てまたは大部分が、温度保証がなされている第一領域A1に入射するように構成することにより、温度変化による描画性能の劣化をより抑制することができる。
【0051】
(第2領域A2に関する特徴)
ただし上記数3において、y=0の時は、
【数4】
となる。これは、変形基準点近傍では、形状の工夫による温度変化抑制効果が全く得られない事を示す。つまり、上記形状の設定は、変更基準点より遠いところ(つまり第1領域A1)でのみ有効である。ここで、ミラーのサイズを小さくするため等の理由から、第2領域A2にも多くの光束を入射させる場合でも、以下に記述する方法で温度による描画性能の劣化を抑制することができる。図4に示すように、所定の幅を持つ平行光束を第1反射鏡2側から入射させると仮定する。すると、入射角が小さい光束により第2反射鏡3で形成されるスポットの幅L1よりも、入射角が大きい光束により第2反射鏡3で形成されるスポットの幅L2のほうが大きいことが分かる。このことは、第2反射鏡3全域にわたって曲率の変化が発生していた場合、第2反射鏡3での入射角が小さい光束は該曲率の変化の影響を受けにくいことを意味する。
【0052】
第1領域A1に関する上記説明のように第2反射鏡3の参照平面での断面形状は、リアプロジェクションモニタ100の底面側から天板面側に向かって曲率が小となる。このことを踏まえ、変形基準点3a付近に入射する光束の入射角が小さくなるように投影手段1と第1反射鏡2、第2反射鏡3、第3反射鏡4の位置を設定する。これにより、第2領域A2においては、上記数3の関係を満足できなくとも、スクリーン5に投影される画像は温度変化の影響を受けにくくなる。つまり、変形基準点3a近傍では、上記数3に示す条件を厳格に適用するに及ばない。むしろ、変形基準点3aから離れるほど、上記数3に示す条件を厳格に適用する必要性が出てくる。
【0053】
(第2反射鏡3に関するまとめ)
以上のように、本実施形態では、第2反射鏡3を二つの領域A1、A2に等分割する。そして、第1領域A1に関しては、上記条件を満たす形状が得られるように変形基準点を設計することにより、熱膨張によるf”(y)の変化を最小限に抑えて、該変化の影響を受けにくくした。
また、各光学部材との配置関係(入射角)を適切に設計することにより熱膨張によるf”(y)の変化がある第2領域A2が存在するにも拘わらず該変化の影響を受けにくくする事が可能である。
【0054】
以上説明した第2反射鏡3の形状およびその特性の温度変化につき、上記の数5や数6に示す条件を満たしたものを実施例として、また、各条件を満たさないものを比較例として、以下説明する。なお、以下に示す各実施例、比較例ともに、第2反射鏡3の線膨張係数は7×10−5である。また実施例1、3、比較例では、参照平面での断面形状におけるy軸方向の最大値つまりymax=170mm、ymax/2=85mmである。実施例2では、ymax=153mm、ymax/2=76.5mmである。また、常温とは20℃を想定する。
【実施例1】
【0055】
表1は、本発明の実施例1における第2反射鏡3の参照平面での断面形状に関する常温時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示す表である。つまり、表1のx’は実施例1におけるf’(y)であり、x”は実施例1におけるf”(y)である。なお、第1領域A1と第2領域A2を明確にすべく、各領域の境界となるymax/2の項に閾線を引いてある。以下に示す各表においても同様とする。表1に基づく第2反射鏡3の断面形状は図5に示される。
【0056】
【表1】
【0057】
表2は、実施例1において、第2反射鏡3の周囲の温度が常温から30℃上昇(=50℃)したことにより熱膨張を起こした時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示したものである。つまり、表2のx’は実施例1におけるg’(y)であり、x”は実施例1におけるg”(y)である。図6は、本実施例の第2反射鏡3において、常温時の曲率x”と周囲温度が30℃上昇した時の曲率x”との差、つまり曲率誤差を示すグラフである。
【0058】
【表2】
【0059】
表1に示す値より、|f”(ymax)|=0.002252、|2f”(ymax)|=0.004504である。そして、ymax/2≦y≦ymaxの範囲では、f”(y)は、|f”(ymax)|以上|2f”(ymax)|以下の範囲にあることが分かる。つまり、実施例1では、数5に示す条件を満たす。これにより、実施例1では、図6に示されているように、第2反射鏡3の周囲の温度が上昇したとしても、曲率誤差は第2領域A2(ymax/2≦y≦ymaxの範囲)では5.0×10−6未満と非常に小さく抑えられていることがわかる。また、第1領域A1(0≦y≦ymax/2の範囲)でも1.0×10−5未満と小さく抑えられていることがわかる。つまり、実施例1の第2反射鏡3を有するリアプロジェクションモニタ100は、温度変化が生じても歪み等がない高画質な画像を提供することができる。
【実施例2】
【0060】
表3は、本発明の実施例2における第2反射鏡3の参照平面での断面形状に関する常温時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示す表である。つまり、表3のx’は実施例2におけるf’(y)であり、x”は実施例2におけるf”(y)である。表3に基づく第2反射鏡3の断面形状は図7に示される。
【0061】
【表3】
【0062】
表4は、実施例2において、第2反射鏡3の周囲の温度が常温から30℃上昇(=50℃)したことにより熱膨張を起こした時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示したものである。つまり、表4のx’は実施例2におけるg’(y)であり、x”は実施例2におけるg”(y)である。図8は、本実施例の第2反射鏡3において、常温時の曲率x”と周囲温度が30℃上昇した時の曲率x”との差、つまり曲率誤差を示すグラフである。
【0063】
【表4】
【0064】
表3に示す値より、|f”(ymax)|=0.002755、|2f”(ymax)|=0.005510である。そして、ymax/2≦y≦ymaxの範囲では、f”(y)は、|f”(ymax)|以上|2f”(ymax)|以下の範囲にあることが分かる。つまり、実施例2では、数5に示す条件を満たす。これにより、実施例2では、図8に示されているように、第2反射鏡3の周囲の温度が上昇したとしても、曲率誤差は第2領域A2(ymax/2≦y≦ymaxの範囲)では6.0×10−6未満と非常に小さく抑えられていることがわかる。また、第1領域A1(0≦y≦ymax/2の範囲)でも8.0×10−6未満と小さく抑えられていることがわかる。つまり、実施例2の第2反射鏡3を有するリアプロジェクションモニタ100は、温度変化が生じても歪み等がない高画質な画像を提供することができる。
【0065】
さらに、実施例2では、表3に示す値より、上記数6に示す条件も満たしていることが分かる。従って、第2反射鏡3に起因して発生するデフォーカスの補正が非常に容易になる。
【実施例3】
【0066】
表5は、本発明の実施例3における第2反射鏡3の参照平面での断面形状に関する常温時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示す表である。つまり、表5のx’は第6実施例におけるf’(y)であり、x”は第6実施例におけるf”(y)である。表5に基づく第2反射鏡3の断面形状は図9に示される。図9に示すように実施例3は、他の実施例とは異なる形状の第2反射鏡3を使用している。詳しくは、実施例3の第2反射鏡3は、図3に示す点線P3での断面形状は、図9に示すように概ね凹面形状であるが、点線P1や点線P2での断面形状は、凸面である。本発明に係る投影装置は、このような断面形状によって凹面と凸面が混在するような第2反射鏡3を使用しても上記他の実施例と同様の効果を奏することができる。
【0067】
【表5】
【0068】
表6は、実施例3において、第2反射鏡3の周囲の温度が常温から30℃上昇し、熱膨張を起こした時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一回微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示したものである。つまり、表6のx’は実施例3におけるg’(y)であり、x”は実施例3におけるg”(y)である。図10は、本実施例の第2反射鏡3において、常温時と周囲温度が30℃上昇した時との曲率誤差を示すグラフである。
【0069】
【表6】
【0070】
表5に示す値より、|f”(ymax)|=0.001164、|2f”(ymax)|=0.002328である。そして、ymax/2≦y≦ymaxの範囲では、f”(y)は、|f”(ymax)|以上|2f”(ymax)|以下の範囲にあることが分かる。つまり、実施例3では、数5に示す条件を満たす。これにより、実施例3では、図10に示されているように、第2反射鏡3の周囲の温度が上昇したとしても、曲率誤差は第2領域A2(ymax/2≦y≦ymaxの範囲)では5.0×10−6未満と非常に小さく抑えられていることがわかる。
【0071】
実施例3の第2反射鏡3の第1領域A1(0≦y≦ymax/2の範囲)では、曲率誤差が4.0×10−4程度である。しかしながら、上述したように、第2反射鏡3は、第1領域A1での曲率変化の影響が小さくなるように該曲率に応じて、適切な位置に配置される。このように実施例3のリアプロジェクションモニタ100は、領域ごとに異なる特徴を持たせることにより、温度変化が生じても歪み等がない高画質な画像を提供している。
【0072】
さらに、実施例3では、表5に示す値より、上記数6に示す条件も満たしていることが分かる。従って、第2反射鏡3に起因して発生するデフォーカスの補正が非常に容易になる。
【比較例】
【0073】
表7は、上記数5を満たさない比較例の第2反射鏡の参照平面での断面形状に関する常温時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示す表である。また、表7に基づく比較例の第2反射鏡の断面形状は図11に示される。
【0074】
【表7】
【0075】
表8は、比較例において、第2反射鏡の周囲の温度が常温から30℃上昇し、熱膨張を起こした時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示したものである。また、図12は、本比較例の第2反射鏡3において、常温時の曲率x”と周囲温度が30℃上昇した時の曲率x”との差(曲率誤差)をとったものである。図12に示されているように、比較例び第2反射鏡3は、周囲の温度が上昇した場合、第1領域A1では曲率x”の変化量は6.0×10−6未満と低く抑えられるように構成されている。しかし、第2領域では変化量が大きくなり、y=ymaxの位置では3.0×10−5以上と大きい値になる。このため、比較例の第2反射鏡3を使用すると、本発明の上記各実施例の構成とは異なり、温度変化することによってスクリーン5上の画像に歪みが発生してしまう。
【0076】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態によるリアプロジェクションモニタを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態によるリアプロジェクションモニタをモニタの幅方向に略垂直な面で切断した断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における、第2反射鏡の固定状態を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の第2反射鏡の形状を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例1による第2反射鏡の形状を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例1において、温度が常温から30℃上昇した時の第2反射鏡の曲率の変化量を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2による第2反射鏡の形状を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例2において、温度が常温から30℃上昇した時の第2反射鏡の曲率の変化量を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例3による第2反射鏡の形状を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例3において、温度が常温から30℃上昇した時の第2反射鏡の曲率の変化量を示すグラフである。
【図11】本発明の比較例による第2反射鏡の形状を示すグラフである。
【図12】本発明の比較例において、温度が常温から30℃上昇した時の第2反射鏡の曲率の変化量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
1 投影手段
2 第1反射鏡
3 第2反射鏡
4 第3反射鏡
5 スクリーン
11 光源
12 画像生成手段
13 結像レンズ系
50 ケース
50T ケース天板
52L,52R L字ガイド
A1、A2 第2反射鏡の領域
100 リアプロジェクションモニタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面鏡と投影光学系を使用した投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大画面且つ薄型のモニタとして、液晶パネルモニタ、PDP(Plasma Display Panel)モニタ等と共に、リアプロジェクションモニタが注目されている。リアプロジェクションモニタとは、透過型または反射型の画像形成手段(透過型の小型液晶パネルや反射型のマイクロミラーデバイス等)によって得られた画像を、投影光学系を介して、スクリーン背面に拡大投影する装置である。リアプロジェクションモニタは、他のタイプのモニタと比べて軽量化、薄型化が容易であり、例えば大画面の壁掛けテレビジョンとしての実施が期待されている。
【0003】
このリアプロジェクションモニタにおいて、特許文献1のような、投影光学系とスクリーンとの光路中に曲面鏡を配置した構成が提案されている。
【特許文献1】特開平6−11767号公報
【0004】
一般に、投影装置内で使用される反射ミラーとしては、ポリカーボネートや塩化ビニル、アクリル樹脂、メタクリル系樹脂などのプラスチック板の表面にアルミニウムなどの金属粒子を蒸着させたものが利用されている。プラスチック製の反射ミラーは、所望の光学特性を有するように容易且つ低コストで製造できるという長所を有する反面、ガラス製のミラーと比べると線膨張係数が数百倍(7×10−5/℃程度)と高い、という短所を有する。投影装置はハロゲンランプなどの高発熱の光源を使用する必要があり、この光源からの熱によって、装置内の温度は短時間のうちに数10℃程度上昇する可能性がある。前述のようにプラスチックは線膨張係数が高いため、この温度上昇によって反射ミラーに看過できない変形が生じる可能性がある。特許文献1のように曲面鏡を内部に有する投影装置の場合、曲面鏡の変形によってスクリーンに投影される画像に歪みが生じる可能性があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、曲面鏡を用いた投影装置であって、温度変化によって投影画像に歪みが生じないような投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明にかかる投影装置は、曲面鏡と、曲面鏡に光束を入射させる投影光学系と、横長矩形のスクリーンと、曲面鏡で反射した光束をスクリーンに導く導光部と、を備える投影装置であって、投影装置において、スクリーンの厚み方向をX方向、スクリーンの短辺方向をY方向、スクリーンの長辺方向をZ方向と定義し、曲面鏡は、投影光学系からの光束が入射する範囲におけるX−Z平面による断面形状が負のパワーを有し、かつ所定の固定箇所で投影装置内に固定されており、固定箇所に基づき定義される変形基準点を通るX−Y平面による曲面鏡の断面形状は、該X−Y断面内において変形基準点近傍で最も強い負のパワーを持ち、X−Y平面内において、変形基準点を原点とし、曲面鏡のX−Y断面形状における変形基準点での接線をy、法線をxとするx−y座標上を、サグ量x=f(y)が、ymax/2≦y≦ymaxを満たすyについて以下の式を満たすことを特徴とする。
|f”(ymax)|≦|f”(y)|≦|2f”(ymax)|
ただし、f”(y)は、f(y)をyで二階微分した値、
ymaxは、曲面鏡の使用範囲において、曲面鏡の変形基準点から最も遠い位置におけるyの値、を表す。
【0007】
このような構成とすると、特に、変形基準点から離れた部分においても曲面鏡の曲率の熱膨張による変化を抑えることができ、投影画像に歪みが生じにくい投影装置が実現される。
【0008】
請求項2に記載の投影装置によれば、上記曲面鏡の断面形状は、特に、サグ量が、ymax/2≦y≦ymaxを満たす領域について以下の式をさらに満たすことが望ましい。
|f”(y)|≦|2f”(ymax)|−|(y/ymax)f”(ymax)|
【0009】
請求項3に記載の投影装置によれば、投影光学系は、曲面鏡との関係において、投影光学系からの光束の曲面鏡への入射角は、変形基準点の近傍において最も小さくなるように配置、構成される。これにより、0≦y≦ymax/2の範囲内において、温度変化による曲率変化が起きたとしても、入射(反射)光束は該曲率変化の影響を最小限に抑えることができる。
【0010】
請求項4に記載の投影装置によれば、曲面鏡は回転対称形状であり、その回転軸は、変形基準点を通過する。
【0011】
請求項5に記載の投影装置によれば、変形基準点は、スクリーンの中心を通るX−Y平面内に位置することが望ましい。そのために、固定箇所は、例えば、スクリーンの中心を通るX−Y平面と曲面鏡の交線からZ方向に互いに等距離だけ離れた二カ所に設定することができる。または、固定箇所は、曲面鏡の装置底面側端部全域であってもよい。
【0012】
請求項8に記載の投影装置によれば、投影光学系と曲面鏡とが直方体状のケースに収められ、スクリーンがケースの一面に形成され、導光部が該ケースの天板部に設けられているように構成することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、曲面鏡を使用する構成であっても温度変化によって投影画像に歪みが生じないような投影装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を用いて詳細に説明する。図1は、通常使用状態における実施形態のリアプロジェクションモニタ100の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、リアプロジェクションモニタ100は、直方体状のケース50の正面にスクリーン5が設けられている。ここで、通常使用状態とは、スクリーン5が鉛直方向とほぼ平行に位置している状態を言う。
【0015】
なお、図1に示すように、以下の説明では、通常使用状態におけるリアプロジェクションモニタ100において、略長方形状のスクリーン5の厚み方向をX方向、スクリーン5の鉛直方向(つまりスクリーン5の短辺方向)をY方向、スクリーン5の水平方向(つまりスクリーン5の長辺方向)をZ方向という。また、X方向の長さを(モニタ100あるいは各部材の)奥行、Y方向の長さを(モニタ100あるいは各部材の)高さ、Z方向の長さを(モニタ100あるいは各部材の)幅という。
【0016】
図2は、リアプロジェクションモニタ100の断面図である。詳しくは図2は、図1に示すスクリーン5の中心5cを通るX−Y平面での断面図である。以下、説明の便宜上、スクリーン5の中心5cを通るX−Y平面を参照平面という。図2に示すように、リアプロジェクションモニタ100は、直方体状のケース50内に、投影手段1、第1反射鏡2、第2反射鏡3、第3反射鏡4、スクリーン5を有する。第1反射鏡2、第3反射鏡4は平面ミラーである。第2反射鏡3は、非球面形状を持つ曲面ミラーである。第2反射鏡3の具体的形状については後に詳述する。なお、図2および以降に示す各図において、投影手段1から照射された光のうち、最終的にスクリーン5最下部に入射することになる光線(最下部入射光線という)を一点鎖線で示す。該光のうち、最終的にスクリーン5最上部に入射することになる光線(最上部入射光線という)を破線で示す。
【0017】
また、説明の便宜上、スクリーン5をリアプロジェクションモニタ100の前面と定義し、スクリーン5に対向するケース50の面を装置背面と定義する。同様に、リアプロジェクションモニタ100が通常使用状態で設置されたときの、ケース50の接地面を装置底面、底面に対向するケース50の面を天板面、と定義する。
【0018】
本実施形態の投影手段1は、小型の透過型液晶パネルなどの画像生成手段12と、画像生成手段12に照度の高い光束を照射するキセノンランプ等の光源11と、画像生成手段12により生成された像をスクリーン5に投影するための投影レンズ系13を有する。投影手段1は、モニタ100のケース50内部の下部後方に設けられている。
【0019】
投影手段1から射出された光は、スクリーン5に向かって、より正確には投影手段1の斜め上前方に配置された第1反射鏡2に入射し、該第1反射鏡2によってモニタ100背面側に反射される。第1反射鏡2で反射した光は、第2反射鏡3に入射する。第2反射鏡3に入射した光は、該第2反射鏡3によって反射し、モニタ100のケース50の天板面50Tに設けられた第3反射鏡4に向かう。第3反射鏡4で反射した光は、該反射鏡4の斜め下前方に位置するスクリーン5に入射する。
【0020】
ここで、スクリーン5の表面はフレネルレンズ状となっており、斜め上後方から入射した光は、スクリーン5の面におおよそ垂直な方向に屈折される。
【0021】
本実施形態は、以上のような構成によって、スクリーン5に画像が投影され、スクリーン5の前方から該画像を観ることが出来る。本実施形態のリアプロジェクションモニタ100は、上記のように各光学部材を配設することにより、拡大投影に必要な光路長を確保しつつもケース50の薄型化を達成している。
【0022】
このように、本実施形態では、スクリーン後方に投影光学系を配置したリアプロジェクションモニタ100を想定している。しかし、以下詳述する本発明に係る投影装置の具体的構成は、スクリーンに対して前方より像を投影するフロントプロジェクターに対しても有効に利用することができる。
【0023】
次に非球面ミラーである第2反射鏡3について詳述する。図3(a)は、第2反射鏡3の一例を示す概略図である。図3(b)は、図3(a)に示す第2反射鏡3近傍の側面図である。なお、図3(a)では、説明の便宜上、Z方向のサイズを縮小して示している。後述の図3(c)も同様である。図3(a)に示すように、第2反射鏡3は、自身の下方両端3L、3Rを基台51上に設けられた一対の固定部材52L、52Rで夫々固定されている。また、図3(b)に示すように、第2反射鏡3は、ケース50の側面からの凸部等を利用して配設されたねじ等の支持部材53上に載置されている。固定部材52L、52Rと支持部材53によって、第2反射鏡3は、自重による撓みや熱膨張による破損を有効に防止された状態で固定されている。
【0024】
第2反射鏡3は少なくともX−Z断面において負のパワーを有する。より具体的には、第2反射鏡3は、少なくともX−Z断面形状(例えば、図3(a)中点線P1で示す形状)の曲率中心が、第2反射鏡3よりも背面側に位置するような形状を有している。つまり、第2反射鏡3を含む任意のX−Z断面では、スクリーン5側から、第2反射鏡3で反射する光の光路、第2反射鏡3、第2反射鏡3の曲率中心の順に位置している。このように全体として負のパワーを持つ第2反射鏡3を用いることにより、第2反射鏡3を用いない場合と比べてより大画面の画像をスクリーン5に表示させることが可能となる。換言すれば、所定サイズの画像を表示する際に要求される光路長を小さくすることができる。
【0025】
また、図2に示すように、第2反射鏡3は、参照平面での断面形状において、モニタ100底面側に位置する部位付近(つまり最上部入射光線が入射する部位)では曲率が大きく、モニタ100の天板側に位置する部位付近(つまり最下部入射光線が入射する部位)では曲率が小さくなる。このような第3反射鏡3の具体的面形状に関しては追って詳述する。
【0026】
本実施形態の第2反射鏡3は、複雑な面形状を持つため、製造の容易性や装置全体の軽量化等を考慮して、プラスチック製である。より詳細には、第2反射鏡3は、アクリル樹脂、塩化ビニル、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート等の表面平滑性を得やすいプラスチック材料を射出成形等によって非球面状に形成した表面にアルミニウムなどの金属粒子を蒸着させることによって作られる。
【0027】
リアプロジェクションモニタ100をある程度の時間使用していると、光源11の発熱によってケース50の内部の温度が数10℃上昇する。ガラス等と比べると、プラスチックは線膨張係数αが7×10−5[/℃]程度と高いため、ケース50内の温度上昇によって、第2反射鏡3には変形が生じうる。そこで本実施形態の第2反射鏡3は、変形が発生してもスクリーン5上の画像に重大な歪みが発生しない以下に詳述する形状を有する。
【0028】
なお、以下、第2反射鏡3の具体的形状を説明するに先立ち、該形状を定義する基準となる本文独自の用語である変形基準点について説明する。変形基準点とは、ケース50内に載置、固定された第2反射鏡3において、温度変化があっても位置および形状が変化しない、つまり熱膨張しないとみなせる点をいう。
【0029】
つまり、変形基準点は、固定部材による固定箇所の数に応じて以下のように規定される。すなわち、固定部材による固定箇所が一つである場合には、該固定部材によって固定されている領域(以下、便宜上、固定領域という)の幾何学的重心を変形基準点とする。また、固定部材による固定箇所が二つである場合には、各固定箇所における固定領域の幾何学的重心を該曲面内で結んだ仮想線の中点を変形基準点とする。固定部材による固定箇所が三つ以上である場合には、各固定領域の幾何学的重心を該曲面内で結んだ仮想の多角形の幾何学的重心を変形基準点とする。
【0030】
図3(a)に示すように任意の2カ所で第2反射鏡3を固定(挟持)している場合、各固定領域の幾何学的重心を結ぶ仮想線P2の中点3aを変形基準点と規定する。図3(c)は、第2反射鏡3の下方全域を単一の長尺状固定部材521で固定する他の態様を示す。図3(c)に示すように、第2反射鏡3の下方全域(底面側端部全域)、つまり一カ所で第2反射鏡3を固定(挟持)する場合、該固定領域の幾何学的重心3bを変形基準点と規定する。
【0031】
一般に、スクリーン5の中心と第2反射鏡3の中心とは、同一X−Y平面上に位置するように設計される。従って、図3(a)に示すように、第2反射鏡3の両端3L、3Rを固定領域とすると、変形基準点3aは、参照平面内に位置する。このような位置に変形基準点3aを設定すれば、第2反射鏡3の該変形基準点3aを基準とした水平方向(Z方向)の対称性が保たれる。よって、第2反射鏡3の設計が容易になるという利点が得られる。同様のことは、図3(c)でも言える。
【0032】
なお、本実施形態の第2反射鏡3は、回転軸が上記変形基準点を通過する回転対称形状を有する。このように構成することにより、面形状の加工が容易になる。
【0033】
なお、上記固定部材による固定とは、固定されたことにより熱膨張による影響を回避できるような機械的結合状態を意味する。従って、例えば、板バネ等で付勢することにより保持されてはいるが機械的結合状態にはない状態は、ここでの固定には該当しない。つまり、付勢されている領域は変形基準点を規定する指標にはならない。例えば、上述した図3(b)に示す支持部材53は変形基準点を規定する指標ではない。
【0034】
以上定義した変形基準点を用いて、第2反射鏡3の形状および配置について以下具体的に説明する。なお以下では、第2反射鏡3の形状等を、第2反射鏡3の変形基準点を通り、スクリーンに垂直で該スクリーンの短辺方向に沿った平面(第2反射鏡3の変形基準点を通りX−Y平面に平行な平面)で第2反射鏡3を切断した切断面における曲率を用いて説明する。上記の通り、本実施形態の変形基準点は、参照平面内にある。従って、上記切断面は本実施形態の場合、参照平面内にある。
【0035】
(第2反射鏡3に関する概説)
プラスチック製の曲面鏡では一般的に、温度変化による変形が避けられない。その変形によって曲率変化が大きくなればなるほど、スクリーン5上に投影される像の歪みも大きくなる。そこで、本出願人は、温度上昇によって変形が生じたとしても、変形基準点からより離れた領域(以下、第1領域という)での曲率変化を小さく抑える(曲率が変化しないように変形する)ような第2反射鏡3の形状を提示する。但し、変形基準点近傍の領域(以下、第2領域という)では、後述の理由により平面で構成されていない限り必ず曲率変化が起きてしまう。そのため、形状の工夫によって曲率変化を抑制可能な領域と、不可能な領域とに分け、抑制可能な領域にのみ適切な形状を与えることで、効率的な曲率変化抑制効果を得ている。
【0036】
図4は、図2に示す第2反射鏡3近傍を拡大して示す図である。図4に示すように、変形基準点を原点とし、変形基準点における切断面の接線をy軸、法線をx軸とした座標系を想定する。該x−y座標系において、切断面の形状はyを引数とする関数として定義される。該関数により求まるx値は一般に「サグ量」と呼ばれる。
【0037】
図4に示すように、以下の説明では、第2反射鏡3における、第1領域をA1、第2領域をA2とする。なお、変形基準点3aから最も離れた部位である最下部入射光線が入射する部位近傍でのy値ymaxを想定すると、第1領域A1はymax/2≦y≦ymaxとして定義され、第2領域A2は0≦y≦ymax/2として定義される。
【0038】
(概説内容の具体的検証)
本出願人が見出した、曲率変化特性について、より具体的に説明する。曲面である切断面の曲率変化に関する特性は、yを引数とする上記関数をyで二階微分することによって表現される。すなわち、室温(常温)での第2反射鏡3のサグ量xを関数f(y)で示すと、曲率はf(y)の二階微分であるf”(y)を用いて示されることになる。同様に、室温から温度がT上昇した時の第2反射鏡3のサグ量xを関数g(y)で示した場合は、その曲率はg(y)の二階微分であるg”(y)を用いて示されることになる。
【0039】
ここで、f(y)とg(y)との間には数1の関係が成立する。
【0040】
【数1】
【0041】
上記数1の両辺をyで二階微分して整理すると、g(y)の二階微分(すなわち、ケース内の温度がT上昇した時の曲率)g”(y)は、f(y)の二階微分(すなわち、ケース内の温度が室温である時の曲率)f”(y)を用いて、数2のように示される。
【0042】
【数2】
【0043】
(第1領域A1に関する特徴)
以上の具体的検証に基づき第1領域A1に関する課題解決手段について詳述する。第2反射鏡3の第1領域A1において、最適な状態であるf”(y)=g”(y)を想定すると、数2に示す条件は数3のように書き換えられる。
【0044】
【数3】
【0045】
第1領域A1で反射された光により生成される像が当該領域A1での熱膨張の影響を受けない形状とは、f”(y)≒g”(y)を満足する形状である。この形状は、数3よりy値が上昇すると曲率が減少し、近似的に一次関数で表されるような形状であることが見いだせる。具体的には、曲率特性が以下の数5に表される一次関数で表されるように面形状を設定することで温度変化による影響を低減することができる。そのためにはyの基準となる変形基準点を、曲率特性が以下の数5に表される一次関数で表されるような位置に設定する。
【0046】
詳しくは、数6右辺のように、数5に従った形状及びそれよりも曲率を緩くした形状に設定すればよい。また数6左辺の満たすことで、面周辺部のダレ・ハネといったイレギュラーな形状変化を抑制できる。
【0047】
【数5】
【数6】
【0048】
上記の条件を満たす第2反射鏡3の形状について、以下の数7の条件を満たすものでもよい。数6の条件を満たす構成では、第1領域A1において、温度変化時の曲率が同符号に変化する。このことは、曲率変化に伴うデフォーカス量も画面全域で同符号に変化する。よって、デフォーカス調整が容易に行えると言う利点がある。これに対し、数7の条件では、面形状を通常の球面に比較的近く設計することができるため、加工上は有利である。
【0049】
【数7】
【0050】
無数の描画光束の全てまたは大部分が、温度保証がなされている第一領域A1に入射するように構成することにより、温度変化による描画性能の劣化をより抑制することができる。
【0051】
(第2領域A2に関する特徴)
ただし上記数3において、y=0の時は、
【数4】
となる。これは、変形基準点近傍では、形状の工夫による温度変化抑制効果が全く得られない事を示す。つまり、上記形状の設定は、変更基準点より遠いところ(つまり第1領域A1)でのみ有効である。ここで、ミラーのサイズを小さくするため等の理由から、第2領域A2にも多くの光束を入射させる場合でも、以下に記述する方法で温度による描画性能の劣化を抑制することができる。図4に示すように、所定の幅を持つ平行光束を第1反射鏡2側から入射させると仮定する。すると、入射角が小さい光束により第2反射鏡3で形成されるスポットの幅L1よりも、入射角が大きい光束により第2反射鏡3で形成されるスポットの幅L2のほうが大きいことが分かる。このことは、第2反射鏡3全域にわたって曲率の変化が発生していた場合、第2反射鏡3での入射角が小さい光束は該曲率の変化の影響を受けにくいことを意味する。
【0052】
第1領域A1に関する上記説明のように第2反射鏡3の参照平面での断面形状は、リアプロジェクションモニタ100の底面側から天板面側に向かって曲率が小となる。このことを踏まえ、変形基準点3a付近に入射する光束の入射角が小さくなるように投影手段1と第1反射鏡2、第2反射鏡3、第3反射鏡4の位置を設定する。これにより、第2領域A2においては、上記数3の関係を満足できなくとも、スクリーン5に投影される画像は温度変化の影響を受けにくくなる。つまり、変形基準点3a近傍では、上記数3に示す条件を厳格に適用するに及ばない。むしろ、変形基準点3aから離れるほど、上記数3に示す条件を厳格に適用する必要性が出てくる。
【0053】
(第2反射鏡3に関するまとめ)
以上のように、本実施形態では、第2反射鏡3を二つの領域A1、A2に等分割する。そして、第1領域A1に関しては、上記条件を満たす形状が得られるように変形基準点を設計することにより、熱膨張によるf”(y)の変化を最小限に抑えて、該変化の影響を受けにくくした。
また、各光学部材との配置関係(入射角)を適切に設計することにより熱膨張によるf”(y)の変化がある第2領域A2が存在するにも拘わらず該変化の影響を受けにくくする事が可能である。
【0054】
以上説明した第2反射鏡3の形状およびその特性の温度変化につき、上記の数5や数6に示す条件を満たしたものを実施例として、また、各条件を満たさないものを比較例として、以下説明する。なお、以下に示す各実施例、比較例ともに、第2反射鏡3の線膨張係数は7×10−5である。また実施例1、3、比較例では、参照平面での断面形状におけるy軸方向の最大値つまりymax=170mm、ymax/2=85mmである。実施例2では、ymax=153mm、ymax/2=76.5mmである。また、常温とは20℃を想定する。
【実施例1】
【0055】
表1は、本発明の実施例1における第2反射鏡3の参照平面での断面形状に関する常温時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示す表である。つまり、表1のx’は実施例1におけるf’(y)であり、x”は実施例1におけるf”(y)である。なお、第1領域A1と第2領域A2を明確にすべく、各領域の境界となるymax/2の項に閾線を引いてある。以下に示す各表においても同様とする。表1に基づく第2反射鏡3の断面形状は図5に示される。
【0056】
【表1】
【0057】
表2は、実施例1において、第2反射鏡3の周囲の温度が常温から30℃上昇(=50℃)したことにより熱膨張を起こした時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示したものである。つまり、表2のx’は実施例1におけるg’(y)であり、x”は実施例1におけるg”(y)である。図6は、本実施例の第2反射鏡3において、常温時の曲率x”と周囲温度が30℃上昇した時の曲率x”との差、つまり曲率誤差を示すグラフである。
【0058】
【表2】
【0059】
表1に示す値より、|f”(ymax)|=0.002252、|2f”(ymax)|=0.004504である。そして、ymax/2≦y≦ymaxの範囲では、f”(y)は、|f”(ymax)|以上|2f”(ymax)|以下の範囲にあることが分かる。つまり、実施例1では、数5に示す条件を満たす。これにより、実施例1では、図6に示されているように、第2反射鏡3の周囲の温度が上昇したとしても、曲率誤差は第2領域A2(ymax/2≦y≦ymaxの範囲)では5.0×10−6未満と非常に小さく抑えられていることがわかる。また、第1領域A1(0≦y≦ymax/2の範囲)でも1.0×10−5未満と小さく抑えられていることがわかる。つまり、実施例1の第2反射鏡3を有するリアプロジェクションモニタ100は、温度変化が生じても歪み等がない高画質な画像を提供することができる。
【実施例2】
【0060】
表3は、本発明の実施例2における第2反射鏡3の参照平面での断面形状に関する常温時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示す表である。つまり、表3のx’は実施例2におけるf’(y)であり、x”は実施例2におけるf”(y)である。表3に基づく第2反射鏡3の断面形状は図7に示される。
【0061】
【表3】
【0062】
表4は、実施例2において、第2反射鏡3の周囲の温度が常温から30℃上昇(=50℃)したことにより熱膨張を起こした時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示したものである。つまり、表4のx’は実施例2におけるg’(y)であり、x”は実施例2におけるg”(y)である。図8は、本実施例の第2反射鏡3において、常温時の曲率x”と周囲温度が30℃上昇した時の曲率x”との差、つまり曲率誤差を示すグラフである。
【0063】
【表4】
【0064】
表3に示す値より、|f”(ymax)|=0.002755、|2f”(ymax)|=0.005510である。そして、ymax/2≦y≦ymaxの範囲では、f”(y)は、|f”(ymax)|以上|2f”(ymax)|以下の範囲にあることが分かる。つまり、実施例2では、数5に示す条件を満たす。これにより、実施例2では、図8に示されているように、第2反射鏡3の周囲の温度が上昇したとしても、曲率誤差は第2領域A2(ymax/2≦y≦ymaxの範囲)では6.0×10−6未満と非常に小さく抑えられていることがわかる。また、第1領域A1(0≦y≦ymax/2の範囲)でも8.0×10−6未満と小さく抑えられていることがわかる。つまり、実施例2の第2反射鏡3を有するリアプロジェクションモニタ100は、温度変化が生じても歪み等がない高画質な画像を提供することができる。
【0065】
さらに、実施例2では、表3に示す値より、上記数6に示す条件も満たしていることが分かる。従って、第2反射鏡3に起因して発生するデフォーカスの補正が非常に容易になる。
【実施例3】
【0066】
表5は、本発明の実施例3における第2反射鏡3の参照平面での断面形状に関する常温時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示す表である。つまり、表5のx’は第6実施例におけるf’(y)であり、x”は第6実施例におけるf”(y)である。表5に基づく第2反射鏡3の断面形状は図9に示される。図9に示すように実施例3は、他の実施例とは異なる形状の第2反射鏡3を使用している。詳しくは、実施例3の第2反射鏡3は、図3に示す点線P3での断面形状は、図9に示すように概ね凹面形状であるが、点線P1や点線P2での断面形状は、凸面である。本発明に係る投影装置は、このような断面形状によって凹面と凸面が混在するような第2反射鏡3を使用しても上記他の実施例と同様の効果を奏することができる。
【0067】
【表5】
【0068】
表6は、実施例3において、第2反射鏡3の周囲の温度が常温から30℃上昇し、熱膨張を起こした時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一回微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示したものである。つまり、表6のx’は実施例3におけるg’(y)であり、x”は実施例3におけるg”(y)である。図10は、本実施例の第2反射鏡3において、常温時と周囲温度が30℃上昇した時との曲率誤差を示すグラフである。
【0069】
【表6】
【0070】
表5に示す値より、|f”(ymax)|=0.001164、|2f”(ymax)|=0.002328である。そして、ymax/2≦y≦ymaxの範囲では、f”(y)は、|f”(ymax)|以上|2f”(ymax)|以下の範囲にあることが分かる。つまり、実施例3では、数5に示す条件を満たす。これにより、実施例3では、図10に示されているように、第2反射鏡3の周囲の温度が上昇したとしても、曲率誤差は第2領域A2(ymax/2≦y≦ymaxの範囲)では5.0×10−6未満と非常に小さく抑えられていることがわかる。
【0071】
実施例3の第2反射鏡3の第1領域A1(0≦y≦ymax/2の範囲)では、曲率誤差が4.0×10−4程度である。しかしながら、上述したように、第2反射鏡3は、第1領域A1での曲率変化の影響が小さくなるように該曲率に応じて、適切な位置に配置される。このように実施例3のリアプロジェクションモニタ100は、領域ごとに異なる特徴を持たせることにより、温度変化が生じても歪み等がない高画質な画像を提供している。
【0072】
さらに、実施例3では、表5に示す値より、上記数6に示す条件も満たしていることが分かる。従って、第2反射鏡3に起因して発生するデフォーカスの補正が非常に容易になる。
【比較例】
【0073】
表7は、上記数5を満たさない比較例の第2反射鏡の参照平面での断面形状に関する常温時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示す表である。また、表7に基づく比較例の第2反射鏡の断面形状は図11に示される。
【0074】
【表7】
【0075】
表8は、比較例において、第2反射鏡の周囲の温度が常温から30℃上昇し、熱膨張を起こした時のサグ量x、その傾きx’(xをyで一階微分したもの)および曲率x”(xをyで二階微分したもの)を示したものである。また、図12は、本比較例の第2反射鏡3において、常温時の曲率x”と周囲温度が30℃上昇した時の曲率x”との差(曲率誤差)をとったものである。図12に示されているように、比較例び第2反射鏡3は、周囲の温度が上昇した場合、第1領域A1では曲率x”の変化量は6.0×10−6未満と低く抑えられるように構成されている。しかし、第2領域では変化量が大きくなり、y=ymaxの位置では3.0×10−5以上と大きい値になる。このため、比較例の第2反射鏡3を使用すると、本発明の上記各実施例の構成とは異なり、温度変化することによってスクリーン5上の画像に歪みが発生してしまう。
【0076】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態によるリアプロジェクションモニタを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態によるリアプロジェクションモニタをモニタの幅方向に略垂直な面で切断した断面図である。
【図3】本発明の実施の形態における、第2反射鏡の固定状態を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の第2反射鏡の形状を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例1による第2反射鏡の形状を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例1において、温度が常温から30℃上昇した時の第2反射鏡の曲率の変化量を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2による第2反射鏡の形状を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例2において、温度が常温から30℃上昇した時の第2反射鏡の曲率の変化量を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例3による第2反射鏡の形状を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例3において、温度が常温から30℃上昇した時の第2反射鏡の曲率の変化量を示すグラフである。
【図11】本発明の比較例による第2反射鏡の形状を示すグラフである。
【図12】本発明の比較例において、温度が常温から30℃上昇した時の第2反射鏡の曲率の変化量を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
1 投影手段
2 第1反射鏡
3 第2反射鏡
4 第3反射鏡
5 スクリーン
11 光源
12 画像生成手段
13 結像レンズ系
50 ケース
50T ケース天板
52L,52R L字ガイド
A1、A2 第2反射鏡の領域
100 リアプロジェクションモニタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面鏡と、前記曲面鏡に光束を入射させる投影光学系と、横長矩形のスクリーンと、前記曲面鏡で反射した光束を前記スクリーンに導く導光部と、を備える投影装置であって、
前記投影装置において、前記スクリーンの厚み方向をX方向、前記スクリーンの短辺方向をY方向、前記スクリーンの長辺方向をZ方向と定義し、
前記曲面鏡は、前記投影光学系からの光束が入射する範囲におけるX−Z平面による断面形状が負のパワーを有し、かつ所定の固定箇所で前記投影装置内に固定されており、
前記固定箇所に基づき定義される変形基準点を通るX−Y平面による前記曲面鏡の断面形状は、該X−Y断面内において前記変形基準点近傍で最も強い負のパワーを持ち、
前記X−Y平面内において、前記変形基準点を原点とし、前記曲面鏡のX−Y断面形状における前記変形基準点での接線をy、法線をxとするx−y座標上を、サグ量x=f(y)が、ymax/2≦y≦ymaxを満たすyについて以下の式、
|f”(ymax)|≦|f”(y)|≦|2f”(ymax)|
ただし、f”(y)は、f(y)をyで二階微分した値、
ymaxは、前記曲面鏡の使用範囲において、前記曲面鏡の変形基準点から最も遠い位置におけるyの値、を表す、
を満たすことを特徴とする投影装置。
【請求項2】
前記曲面鏡のX−Y断面形状は、前記サグ量が、ymax/2≦y≦ymaxを満たすyについて以下の式、
|f”(y)|≦|2f”(ymax)|−|(y/ymax)f”(ymax)|
をさらに満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の投影装置。
【請求項3】
前記投影光学系は、前記曲面鏡との関係において、前記投影光学系からの光束の前記曲面鏡への入射角が、前記変形基準点の近傍において最も小さくなるように配置、構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投影装置。
【請求項4】
前記曲面鏡は回転対称形状であり、その回転軸は前記変形基準点を通過する、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の投影装置。
【請求項5】
前記変形基準点は、前記スクリーンの中心を通るX−Y平面内に位置することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の投影装置。
【請求項6】
前記固定箇所は、前記スクリーンの中心を通るX−Y平面と前記曲面鏡との交線からZ方向に互いに等距離だけ離れた二カ所にあることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の投影装置。
【請求項7】
前記固定箇所は、前記曲面鏡の装置底面側端部全域であることを特徴とする請求項1から5に記載の投影装置。
【請求項8】
前記投影光学系と前記曲面鏡とが直方体状のケースに収められ、
前記スクリーンは、前記ケースの一面に形成され、
前記導光部は、前記ケースの天板部に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の投影装置。
【請求項1】
曲面鏡と、前記曲面鏡に光束を入射させる投影光学系と、横長矩形のスクリーンと、前記曲面鏡で反射した光束を前記スクリーンに導く導光部と、を備える投影装置であって、
前記投影装置において、前記スクリーンの厚み方向をX方向、前記スクリーンの短辺方向をY方向、前記スクリーンの長辺方向をZ方向と定義し、
前記曲面鏡は、前記投影光学系からの光束が入射する範囲におけるX−Z平面による断面形状が負のパワーを有し、かつ所定の固定箇所で前記投影装置内に固定されており、
前記固定箇所に基づき定義される変形基準点を通るX−Y平面による前記曲面鏡の断面形状は、該X−Y断面内において前記変形基準点近傍で最も強い負のパワーを持ち、
前記X−Y平面内において、前記変形基準点を原点とし、前記曲面鏡のX−Y断面形状における前記変形基準点での接線をy、法線をxとするx−y座標上を、サグ量x=f(y)が、ymax/2≦y≦ymaxを満たすyについて以下の式、
|f”(ymax)|≦|f”(y)|≦|2f”(ymax)|
ただし、f”(y)は、f(y)をyで二階微分した値、
ymaxは、前記曲面鏡の使用範囲において、前記曲面鏡の変形基準点から最も遠い位置におけるyの値、を表す、
を満たすことを特徴とする投影装置。
【請求項2】
前記曲面鏡のX−Y断面形状は、前記サグ量が、ymax/2≦y≦ymaxを満たすyについて以下の式、
|f”(y)|≦|2f”(ymax)|−|(y/ymax)f”(ymax)|
をさらに満たす、
ことを特徴とする請求項1に記載の投影装置。
【請求項3】
前記投影光学系は、前記曲面鏡との関係において、前記投影光学系からの光束の前記曲面鏡への入射角が、前記変形基準点の近傍において最も小さくなるように配置、構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の投影装置。
【請求項4】
前記曲面鏡は回転対称形状であり、その回転軸は前記変形基準点を通過する、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の投影装置。
【請求項5】
前記変形基準点は、前記スクリーンの中心を通るX−Y平面内に位置することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の投影装置。
【請求項6】
前記固定箇所は、前記スクリーンの中心を通るX−Y平面と前記曲面鏡との交線からZ方向に互いに等距離だけ離れた二カ所にあることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の投影装置。
【請求項7】
前記固定箇所は、前記曲面鏡の装置底面側端部全域であることを特徴とする請求項1から5に記載の投影装置。
【請求項8】
前記投影光学系と前記曲面鏡とが直方体状のケースに収められ、
前記スクリーンは、前記ケースの一面に形成され、
前記導光部は、前記ケースの天板部に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の投影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−33290(P2008−33290A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170217(P2007−170217)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】
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