説明

投影装置

【課題】MTFを低下させることなく、明るい映像を表示することができる投影表示装置を提供する。
【解決手段】導光板3は、光源2から発せられた光が入射されて発光面32から光を射出する。プリズムシート5は、発光面32から射出した光の内、所定角度の光を反射して導光板3へと入射させ、他の角度の光を透過させる。1/4波長板12と反射型液晶表示素子1との間に、発光面32と平行に偏光制御素子8が設けられている。偏光制御素子8は、1/4波長板12から射出した光を、反射型液晶表示素子1に入射する照明光として透過させる第1の偏光と、導光板3へと入射するよう反射させる第2の偏光とに分離し、反射型液晶表示素子1で変調されて射出した光を結像レンズ10に向かうように反射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型液晶表示素子を用いた投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置を用いた電子ビューファインダを搭載したデジタル一眼レフカメラが販売されている。デジタル一眼レフカメラに採用されているマイクロフォーサーズシステム規格では、従来の光学ビューファインダを用いることができず、電子ビューファインダが用いられる。例えば、特許文献1には、電子ビューファインダとして用いられる反射型液晶表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3539904号公報(図1、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子ビューファインダに求められる性能の1つとして、光学ビューファインダと同等以上のMTF(Modulation Transfer Function)を持つことが挙げられる。電子ビューファインダでは、反射型液晶表示素子で反射した映像を眼の網膜へと結像させる必要がある。特許文献1に記載の反射型液晶表示装置(投影装置)においては、反射型液晶表示素子に対して45度の傾きで配置された半透過反射シートを用いている。45度の傾きで配置された半透過反射シートは非点収差を生じさせ、それが原因で結像系のMTFを低下させてしまう。また、半透過反射シートを用いると、偏光を半分しか使用することができないため、映像が暗くなってしまう。映像を明るくしようとすると、光源から発せられる光量を増大させる必要があるので、消費電力が増大してしまう。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑み、MTFを低下させることなく、明るい映像を表示することができる投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、光源(2)と、前記光源から発せられた光が入射され、発光面から光を射出する導光板(3)と、前記発光面から射出された光の内、所定角度の光を反射して前記導光板へ再び入射させ、他の角度の光を透過させるプリズムシート(5)と、前記プリズムシートを透過した光が入射される1/4波長板(12)と、前記発光面に対して傾きをもって設けられ、入射した照明光を変調して射出する反射型液晶表示素子(1)と、前記1/4波長板と前記反射型液晶表示素子との間に、前記発光面と平行となるように設けられ、前記1/4波長板から射出された光を第1の偏光と第2の偏光とに分離すると共に、前記反射型液晶表示素子で変調されて射出された光を結像レンズに向かうように反射させる偏光制御素子(8)とを備え、前記第1の偏光は前記1/4波長板から射出された光を前記反射型液晶表示素子に前記照明光として透過させた光であり、前記第2の偏光は前記1/4波長板から射出された光を前記1/4波長板へ再び入射するよう反射させた光である投影装置を提供する。
【0007】
上記の構成において、前記偏光制御素子は、前記反射型液晶表示素子に対して45度の傾きで設けられていることが好ましい。
【0008】
上記の構成において、前記偏光制御素子を、前記1/4波長板側に凸の曲面で形成してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の投影装置によれば、MTFを低下させることなく、明るい映像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の投影装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の投影装置の第2実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の投影装置の各実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1において、導光板3の端面31には、LED等の光源2が設けられている。光源2から発せられた光は端面31から導光板3の内部へと入射する。導光板3の一方の面には反射シート(反射体)15が設けられている。導光板3に突起を設けて反射体としてもよいし、印刷によって反射面を形成してもよい。導光板3の内部へと進行して反射シート15に入射した光は反射シート15で反射して、導光板3の他方の面である発光面32に向かう。発光面32に接触または近接させて、発光面32に近い側から拡散板4、プリズムシート5、拡散板16、1/4波長板12が設けられている。拡散板4に入射した光は拡散されて、プリズムシート5へと入射する。プリズムシート5は角度選択性を備えており、ある角度で入射した光を反射し、それ以外の角度で入射した光を透過させる。
【0013】
プリズムシート5で反射した光は拡散板4を通って再び導光板3へと入射し、反射シート15で反射する。反射シート15で反射した光は、拡散板4によって拡散されてプリズムシート5へと入射し、同様の動作を繰り返す。これにより、導光板3は、光の輝度むらを大まかに低減させ、照明光のビームを成形するよう作用している。プリズムシート5は、照明光を増やすよう作用している。
【0014】
プリズムシート5を透過した光は拡散板16に入射して拡散され、1/4波長板12を透過して偏光制御素子8へと入射する。拡散板16によって光が拡散されるので、さらに輝度むらを低減させることができる。なお、導光板3と拡散板4,16とプリズムシート5とを適宜構成することにより、1/4波長板12を射出する光は、発光面32と直交する方向に対して傾斜した方向に向かう指向性を有する光とすることができる。偏光制御素子8は、1/4波長板12と所定の距離離間させた状態で配置されている。偏光制御素子8は、導光板3の発光面32,拡散板4,プリズムシート5,拡散板16,1/4波長板12に対して平行に配置され、1/4波長板12と近接した状態で正対している。
【0015】
偏光制御素子8は、一例として、ワイヤグリッド型偏光ビームスプリッタである。導光板3と拡散板4とプリズムシート5と拡散板16を組み合わせた構成を用いることにより、光の輝度むらを低減させて、投影表示される映像の画質を向上させることができる。なお、ワイヤグリッド型偏光ビームスプリッタとは、ガラス基板上に金属材料を蒸着し、ナノメータレベルでの微細エッチングによりワイヤ状のグリッドを形成した偏光制御素子である。
【0016】
偏光制御素子8と所定の距離離間させた状態で、反射型液晶表示素子1が配置されている。反射型液晶表示素子1は、導光板3の発光面32,拡散板4,プリズムシート5,拡散板16,1/4波長板12,偏光制御素子8に対して45度の傾きとなるように配置されている。偏光制御素子8に入射する光は不定偏光であり、偏光制御素子8で偏光成分が分離される。偏光制御素子8を透過した直線偏光(第1の偏光)は、照明光として反射型液晶表示素子1へと入射する。一方、偏光制御素子8で反射した直線偏光(第2の偏光)は、偏光制御素子8を透過した偏光に対して偏光方向が直交している。偏光制御素子8で反射した直線偏光は再び1/4波長板12へと入射する。1/4波長板12は、入射した直線偏光を円偏光に変換する。
【0017】
1/4波長板12より射出した円偏光は、拡散板16、プリズムシート5、拡散板4を透過して導光板3の内部へと入射して、反射シート15で反射する。反射した円偏光は、再び導光板3の内部及び拡散板4を透過してプリズムシート5へと入射する。プリズムシート5は、前述と同様、ある角度で入射した光を反射し、それ以外の角度で入射した光を透過させる。プリズムシート5を透過した円偏光は、拡散板16を透過して1/4波長板12に入射して直線偏光に戻る。この直線偏光の偏光方向は、1/4波長板12を2度透過したため、偏光制御素子8で反射した偏光方向に対して90度回転している。そのため、1/4波長板12を射出した直線偏光は、偏光制御素子8で反射することなく、偏光制御素子8を透過して、照明光として反射型液晶表示素子1へと入射する。
【0018】
反射型液晶表示素子1へと入射した光は、反射型液晶表示素子1で投影する映像に応じて変調されて射出する。反射型液晶表示素子1から射出した光は偏光制御素子8で反射し、偏光板9を透過して接眼レンズ(結像レンズ)10へと入射する。接眼レンズ10より射出した光は、電子ビューファインダを覗く人の眼へと入射する。
【0019】
以上説明した第1実施形態の各光学要素は、図示していない回路基板や位置決め部材によって位置決めされている。
【0020】
第1実施形態の投影装置においては、反射型液晶表示素子1で反射した光は、従来の構成で有するような45度の傾きで配置された半透過反射シートを透過することがなく、偏光制御素子8で反射するため、MTFが低下することがない。偏光制御素子8で反射した光は偏光板9を透過するが、偏光板9は光軸に対して90度の角度で配置しているため、MTFへの影響はほとんどなく、あってもごくわずかである。
【0021】
また、第1実施形態の投影装置においては、ある偏光方向の光を透過し、その偏光方向とは90度の角度を持つ偏光方向の光を反射する偏光制御素子8と、1/4波長板12とを用いているので、光を無駄なく利用することができ、照明光量を増大させることができる。従って、光源2の消費電力を少なくすることができる。第1実施形態の投影装置をカメラの電子ビューファインダに使用した場合、より長時間のカメラを使用することが可能となる。従来と同じ使用時間であれば電池を小さくすることができ、カメラの重量を減らせることも可能となる。
【0022】
さらに、第1実施形態の投影装置においては、偏光制御素子8を、導光板3の発光面32,拡散板4,プリズムシート5,拡散板16,1/4波長板12に対して平行にして、1/4波長板12に近接させて対向させているので、偏光制御素子8を反射する光は、1/4波長板12,拡散板16,プリズムシート5,拡散板4を介して導光板3に直接取り込まれることになる。従って、偏光制御素子8を反射する光を導光板3に取り込むための反射ミラーを設ける必要はない。偏光制御素子8を反射する光を導光板3に取り込むための反射ミラーを設ける必要がないので、第1実施形態の投影装置は小型化が可能である。
【0023】
<第2実施形態>
図2に示す第2実施形態において、図1に示す第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図2に示す第2実施形態においては、偏光制御素子8の代わりに、1/4波長板12側に凸となった曲面で形成された偏光制御素子80を設けている。偏光制御素子80は、反射型液晶表示素子1で変調されて射出した光を反射する際に、光を収束させるレンズの役割を果たす。偏光制御素子80が光を収束させるレンズの役割を果たすので、偏光制御素子80と接眼レンズ10との双方で結像させることができる。
【0024】
本発明は以上説明した第1,第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。第1,第2実施形態では、拡散板4を導光板3とは別体で設けているが、導光板3に拡散板4の機能を含ませることも可能である。また、導光板3の端面31に光源2を設けているが、導光板3の背面に設けてもよく、光源2の設置場所や導光板3との接続構成は任意である。第1,第2実施形態では、投影装置を電子ビューファインダに用いる場合を例としたが、ヘッドマウントディスプレイ等の他の用途としてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 反射型液晶表示素子
2 光源
3 導光板
4,16 拡散板
5 プリズムシート
8,80 偏光制御素子
9 偏光板
10 接眼レンズ(結像レンズ)
12 1/4波長板
15 反射シート(反射体)
31 端面
32 発光面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から発せられた光が入射され、発光面から光を射出する導光板と、
前記発光面から射出された光の内、所定角度の光を反射して前記導光板へ再び入射させ、他の角度の光を透過させるプリズムシートと、
前記プリズムシートを透過した光が入射される1/4波長板と、
前記発光面に対して傾きをもって設けられ、入射した照明光を変調して射出する反射型液晶表示素子と、
前記1/4波長板と前記反射型液晶表示素子との間に、前記発光面と平行となるように設けられ、前記1/4波長板から射出された光を第1の偏光と第2の偏光とに分離すると共に、前記反射型液晶表示素子で変調されて射出された光を結像レンズに向かうように反射させる偏光制御素子と、
を備え、
前記第1の偏光は前記1/4波長板から射出された光を前記反射型液晶表示素子に前記照明光として透過させた光であり、
前記第2の偏光は前記1/4波長板から射出された光を前記1/4波長板へ再び入射するよう反射させた光である
投影装置。
【請求項2】
前記偏光制御素子は、前記反射型液晶表示素子に対して45度の傾きで設けられている請求項1記載の投影装置。
【請求項3】
前記偏光制御素子が、前記1/4波長板側に凸の曲面で形成されている請求項1または2に記載の投影装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−29697(P2013−29697A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166171(P2011−166171)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】