説明

投影露光装置のアライメント方法

【課題】第1露光がD/D方式で、第2露光がGA方式の場合に、第1露光の誤差とプリント基板の歪みを補償して第2パターンを精度良くアライメントにて露光させる。
【解決手段】第1パターンを露光可能にプリント基板上をフィールド分割した第1露光フィールドの設計上の第1座標値情報と、第1露光フィールドよりも範囲が小さく且つ第2パターンを露光可能であるようにプリント基板上をフィールド分割した第2露光フィールドの設計上の第2座標値情報と、第1露光フィールドに対する第2露光フィールドの分割比情報とを記憶するステップS22と、ダイ・バイ・ダイ・アライメント方式により、複数の第1パターンを第1露光するステップS27と、グローバル・アライメント方式により計算した実際の第2座標値を用いて各第2露光フィールドをアライメントして第2パターンを第2露光するステップS32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マスク・パターンをワーク上の所定位置に合わせて投影露光させるアライメント方法に関し、特に、多層プリント基板(以下、多層基板とも称する)の上層パターンを下層パターン上の所定位置に合わせて露光させるアライメント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の基板に対する露光では、最初の露光から干渉計により計測した座標値を基準にしてグローバル・アライメント方式で露光位置を決めて、露光工程のスループットを向上させる場合があった(例えば、特許文献1の段落0024〜0025、特許文献2の段落0035〜0038参照)。半導体素子又は液晶表示素子等の製造におけるフォトリソグラフィ工程のアライメントは例えば、クリティカルレイヤとラフレイヤのミックス・アンド・マッチ方式(以下、M&M方式と記載)に関するもの(例えば特許文献2参照)及びステップ・アンド・リピート型露光におけるものとステップ・アンド・スキャン型露光におけるものが知られている。
【0003】
M&M方式では、露光毎に露光装置が異なることから所定のアライメント誤差が残るという問題がある。このアライメント誤差を解消するには、例えば、半導体分野では、下層の第1露光時にはチップ基板毎に各パターンフィールドに対するアライメントマークとは別に、アライメント精度の計測用に、チップフィールド内にバーニアマークも露光させておき、上層の第2露光時のバーニアマークをサンプルフィールドにテスト露光して計測することでアライメント誤差を計測して補正する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
又、上記特許文献1及び2は露光される基板がウェハの場合であるが、プリント基板(以下、単に基板とも称する)をM&M方式で複数層を露光させる場合の従来のアライメント方法は、プリント基板を製造する際のフォトリソグラフィ工程に用いられる装置を安価に抑える必要があることから、露光装置のステージ駆動系に高いアライメント精度を得られる干渉計等の測長系が搭載されていない露光装置を用いるダイ・バイ・ダイ・アライメント方式(以下、D/D方式と記載)による露光のアライメント方法が主流であった。
【0005】
ところが近年になり、上層パターンを露光する際の露光工程のスループットを向上させるために、露光フィールド毎に計測と露光を繰り返して時間がかかるD/D方式に代えて、全ての露光フィールドを計測する必要がなく、ばらつきを抑制できる平均化効果が高いグローバル・アライメント方式(以下、GA方式と記載)を用いるアライメント方法が期待されている。具体的には、例えば、プリント基板をM&M方式で複数層を露光させる場合で、先の露光はD/D方式で各パターンの露光位置をアライメントしておき、後の露光ではGA方式で最小二乗法による近似計算により求めたパラメータをそのまま使用して複数層を露光させることが要望されている。
しかし、プリント基板はウェハと異なり、非線形歪が大きく、通常のGA方式のアライメントでは十分な精度を出せない場合がある。そこでプリント基板の非線形歪に対応するために、線形誤差以外の誤差も補正するインテリジェントグローバルアライメント方式(以下、IGA方式と記載)が提案されている。
【0006】
IGA方式では、そのようなプリント基板上の生産工程で発生する非線形の歪を補正するために、アライメントマークの座標値誤差を、露光基板の変形に基づくような3次式により最小二乗法で近似可能な誤差(3次式近似誤差)と、アライメントマークのD/D方式の個別露光等の形成方法に基づく4次式以上の高次式により最小二乗法で近似可能な誤差(ランダム誤差)に分離して求めておく。次に、各誤差の大きさの割合により、誤差全体中から3次式近似誤差が支配的か、ランダム誤差が支配的かを判定する。そして、その判定結果から、重み付け係数を算出し、アライメントマークの座標値と誤差のパラメータ値と重み付け係数から目標座標値を算出する(例えば、特許文献3)。また、特許文献3には、ランダム誤差に対してGA方式のアライメントとD/D方式のアライメントとに重み付けして露光位置を補正するIGA方式が記載されている。特許文献3の投影露光装置では、3次式と4次以上の高次式とで最小二乗法により近似可能な誤差を求め、各誤差に重み付けするので、プリント基板のような非線形のランダム誤差の補正が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10―229039号公報
【特許文献2】特開平8−330204号公報
【特許文献3】特開2008−209949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
基板に配線層を形成する場合、各層毎に各種の露光装置が使用され、大きさが異なる露光パターンをアライメントして露光する場合がある。例えば、高価なスキャナーによる高いアライメント精度を必要とするクリティカルな層の露光フィールドと、安価なステッパーによる低いアライメント精度でよいラフな層の露光フィールドとをアライメントして露光する。そのアライメント方法としては、半導体分野又は液晶表示素子等の製造(例えばフォトリソグラフィ工程)で用いられているM&M方式が用いられている。
【0009】
M&M方式では、例えば、予め下層のパターンを形成する際に、基板上にパターンでアライメントに用いられるアライメントマーク(以下、マスク上のマークと分別する便宜上からパターンマークと記載)を形成しておくと共に、その下層パターン露光時のパターン配置の座標値情報等を記憶させておく。次に、上層パターンをアライメントする前に、下層パターン中からパターンマークを検出し、その検出座標値と読み出した座標値情報等に基づいて、上層パターンの露光位置をアライメントする。
【0010】
D/D方式によるアライメント方法は、概略的にはフォトマスク上のアライメントマーク(以下、基板上のマークと分別する便宜上からマスクマークと記載)の座標値と基板上のパターンマークの座標値を個別に直接計測して露光位置を合わせる方法であり、露光に先立ち、露光フィールド毎に形成されたパターンマークを露光フィールド毎に個別に計測し、その計測された座標値の情報に基づき、露光フィールド毎に露光位置をアライメントして露光する。この場合、個別フィールド毎に計測とアライメントを実施することから高いアライメント精度を得ることができるが、工数と時間が多く必要であり、スループットが低い。
【0011】
それに対してGA方式によるアライメント方法は、基板におけるスループット向上を目的として、サンプルの露光位置におけるパターンマークを予め全て計測し、その計測結果から、最小二乗近似計算により線形誤差のみを算出し、そこから予めオフセットさせる平均的な補正量を計算し、その補正量で全ての各露光位置のアライメントを行い連続して露光を行う。このように半導体のウェハ上にパターンを露光する場合は、プリント基板と比較して伸縮やパターンの歪み等が少なく、線形の変動範囲に収まる傾向にあるため、GA方式による露光のアライメントを実施しやすい。従って、個別の計測とそれに基づく個別の計算と調整が不要になり工数と時間が少なくてすむので、スループットを高めることができる。
【0012】
上記した特許文献1及び2の投影露光装置は、露光される基材が伸縮や歪みは比較的少ないウェハやガラス基板である半導体のウェハ上の露光位置を補正する場合であるので、線形の誤差のみ考慮すればよく、誤差成分が最小になるようにGA方式のパラメータの値を決定し、第1露光の露光装置も第2露光の露光装置もGA方式でM&M方式のアライメントを行ない、第2露光の露光装置では、最初に誤差を算出してその後の工程で補正してもアライメント精度の極端な低下を避けることができる。
【0013】
また、例えば、特許文献2の方法では、まず第2露光時のバーニアマークを露光させるために、サンプルフィールドのパターンマークと中心座標の実測の計測値(試料座標系)と、パターンマークの設計上(ステージ座標系)の配列座標値との誤差を、アライメント誤差として、全てのサンプルフィールドについて求める。そして、それらの全てのサンプルフィールドのアライメント誤差の二乗和の最小値である残留誤差成分が最小になるようにGA方式のパラメータの値を決定する。この残留誤差成分を用いて座標値の位置ずれ量を補正している。
【0014】
また、特許文献1及び2の投影露光装置では、第1露光時は露光装置にステージを高精度でアライメントする干渉計等の測長系に基づいた露光か、もしくは、GA方式で各パターンの露光位置をアライメントする。つまり、D/D方式で第1露光をしていない。投影露光する対象がプリント基板の場合は、線形の誤差ばかりではなく非線形の誤差があり、また、その誤差のレベルも大きいため、GA方式で露光した各パターンマークの誤差も大きくなる。第1露光がこのような誤差の大きい状態の場合、露光位置の近辺にパターンマークを検出できず、その結果、ズレを検出できない場合がある。又、そのような第1露光の上に第2露光のサンプルフィールドにテスト露光して計測した第2レーザマークの座標値から誤差成分を求めても、位置ずれ量の計算に利用可能なレベルのアライメント精度で誤差成分は求められない。その結果、アライメント誤差も大きいにもかかわらず、誤差成分による座標の位置ずれ量を補正できないので、正確な配置を得ることもできない。
【0015】
しかし、露光される基材が激しい伸縮が発生して歪の大きいプリント基板上の露光位置を補正する場合は、フォトリソグラフ工程等で非線形の歪が発生するので、GA方式のパラメータの値を決定することは容易ではないことから、前述したようにD/D方式による露光が主流であった。GA方式では補正量が平均値であることからプリント基板のように個別の露光位置のばらつきが大きい場合には、各露光位置の補正値が適切ではなくなりアライメント精度を高めることが困難である。つまり、プリント基板の場合は、半導体のウェハに比べて熱膨張率、化学変化、給水性及び膨潤性等が高い材料であり、多層のプリント基板を露光させる場合は、フォトリソグラフ工程等による基板の伸縮や形成されたパターンの歪みという問題があるので、アライメント精度を高めることが難しかった。
【0016】
プリント基板の場合、各パターンの露光位置をアライメントする方法としては、GA方式では適切な補正値が得られないので、各層及び露光位置毎にD/D方式のアライメントを採用していた。そして、全ての露光においてD/D方式により、例えば、コンタクト露光装置やプロキシミティ露光装置、干渉計等を備えない安価な投影露光装置(以下これらの露光装置を総じて分割型の平行露光装置と記載)等を用いてアライメントしてプリント基板上の露光フィールド毎に個別にアライメントして分割露光させていた。
【0017】
ここでプリント基板上を分割してD/D方式で第1露光させる場合の各アライメントの一例を以下に記載する。例えば、(1)まずプリント基板の矩形の4辺の内、対向する2辺の中点内側と、残りの少なくとも1辺の所定位置にドリルによって次工程のレーザ加工機用にアライメントマーク(以下、ドリルマークと記載)を形成する。次に、(2)レーザ加工機を用いて、ドリルマークに基づいて各第1露光フィールドの四隅位置に精度5μm程度で第1のアライメントマーク(以下、第1レーザマークと記載)をアライメントして形成する。さらに次に、(3)分割型の平行露光装置(第1露光装置)を用いて、第1レーザマークに基づいて第1パターンと共に、その四隅に、次の工程用にパターンによる第2のアライメントマークを、D/D方式で各第1露光フィールドにアライメントして露光する。この各第1露光フィールドにパターンで形成された第2のアライメントマークを、他の方法により形成されたマークと判別するため、以下ではパターンマークと称する。
【0018】
従って、各第1露光フィールドに形成されたパターンマークは、(2)のレーザ加工機によりドリルマークに基づくアライメントで第1レーザマークを形成する際の座標値誤差、(3)のD/D方式により第1レーザマークに基づくアライメントで第1露光する際の座標値誤差を含んで形成される。パターンマークが形成されたプリント基板は、次に、その上に第2の配線層を形成するために絶縁層と金属層等が形成されることで、プリント基板には非線形歪みが発生する。それと共に、パターンマーク上に上層の配線パターン用に金属層等が形成された基板が貼り付けられることによりパターンマークが不可視となる。従って、その後の工程では、レーザ加工機のX線アライメント機能を使用して可視光では不可視の埋もれているパターンマークを検出し、その検出結果を用いて第2露光装置用の第3のアライメントマークをレーザで形成する。これは2つ目のレーザーマークなので第2レーザマークとする。
【0019】
この第2レーザマークが形成された状態のプリント基板が分割型の投影露光装置(第2露光装置)にセットされる。第2露光装置では、第2レーザマークをアライメントして、第2パターンをGA方式で各第2露光フィールドに露光する。しかし、第2レーザマークは、上記のように第1レーザマークを形成する際の座標値誤差、D/D方式により第1レーザマークに基づき第1パターンを第1露光する際の座標値誤差に加えて、第1パターン上に絶縁層と金属層等を形成する処理により発生するパターンマークの非線形歪みによる座標値誤差、それらの座標値誤差を含んだパターンマークに基づき第2レーザマークを形成する際の複合された座標値誤差を含んでいる。
【0020】
従って、第2レーザマークは、第2パターンをGA方式で各第2露光フィールドに露光する場合にアライメントの基準に用いられるが、上記の複合された座標値誤差のために決して座標値の精度が高いとは言えなかった。このため、GA方式で、各第2露光フィールドの露光位置をアライメントする際の精度を高めることは困難だった。
【0021】
なお、露光位置を決めるためのアライメントマークとしては、上記のようにドリルにより形成される場合と、レーザにより形成される場合と、基板上の金属箔又はレジスト等のパターン、あるいはシルクスクリーン印刷等により形成される場合がある。以下の説明において、アライメントマーク又は単にマークと記載されている場合、露光位置を決定するために、上記したいずれかの方式により形成されたマークを意味する。
【0022】
また、特許文献3のIGA方式では、隣接する露光フィールドに形成されたアライメントマークの情報を利用していく方法であるので、前工程の第1露光が分割型の平行露光装置を用いたD/D方式のようにアライメントマークが離散的に配置されていて不連続である場合は、IGA方式の誤差成分に重み付けする際のランダム誤差の割合が非常に高くなる。そして上記した例におけるランダム誤差は、ドリルマークに基づく第1レーザマーク形成時の誤差、第1レーザマークに基づくパターンマーク形成時の誤差、パターンマークに基づく第2レーザマーク形成時の誤差を合わせた複合誤差となる。その場合、マークの形状及び誤差状況によっては一部のマークが検出できない場合が生じる。そのような不連続な複合誤差を隣接する露光フィールドに形成されたアライメントマークの情報を利用して高次式で近似することは困難であり、正確な露光位置を得ることが難しかった。
【0023】
更に、近年の露光装置のクライアントは、隣接する露光フィールドにおける対向する2辺の中点又は露光フィールドの四隅等のような露光フィールド毎の座標値情報とは無関係に、例えば、プリント基板外周や中心線近傍部分に配列されている場合のような、露光フィールド毎の座標値情報を有していないアライメントマークを用いてアライメント及び露光することを要望する傾向にある。そして、この座標値情報を有していないアライメントマークを用いる場合だけでなく、一部のアライメントマークが検出できない場合(例えば、マーク検出エラーが出力された場合)等の、アライメントマークの検出数が露光フィールド数よりも少ない場合等でも、露光位置の線形誤差及び非線形誤差を精度良く検出して、露光位置のアライメント精度が良くなるように補正できることが要望されている。
【0024】
そこで本発明の目的は、上記の課題を解決するために、分割型のコンタクト/プロキシミティ/干渉計不備の投影露光装置でD/D方式により第1露光を分割露光し、その後、分割型の投影露光装置でGA方式により第2露光を分割露光する場合に、第1露光の誤差とプリント基板の歪みを精度良く補償でき、第2パターンを精度良露光させることができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、基板上をフィールド分割した複数の第1露光フィールド毎に当該各第1露光フィールドを位置決めするために設けられた第1アライメントマークの計測を行い、該計測の結果に基づいて前記各第1露光フィールドに複数の第1パターンを第1露光した第1プリント基板の該第1パターン上に、次の配線層用の金属層を有する第2プリント基板を貼り合わせ、前記第1アライメントマークに基づき前記第2プリント基板上に可視光計測可能な第2アライメントマークを設け、該第2アライメントマークの座標値を計測することで、前記第1パターンを複数に分割する第2露光フィールド毎に第2パターンを第2露光する投影露光装置におけるアライメント方法であって、前記第1プリント基板上の前記各第1露光フィールドの範囲を示す設計上の第1座標値情報と、前記第2プリント基板上の前記各第2露光フィールドの範囲を示す設計上の第2座標値情報と、前記第1露光フィールドに対する前記第2露光フィールドの分割比情報とから少なくとも2つを記憶するステップと、前記第2プリント基板上からサンプルとして選択された前記第2アライメントマークの第3座標値を計測するステップと、前記記憶された各情報と、前記第2アライメントマークの第3座標値を計測した結果を用いて、前記第1露光フィールド毎にグローバル・アライメント方式により、前記各第2露光フィールドの範囲を示す実際の第2座標値を計算し、当該計算の結果を用いて各第2露光フィールド毎のアライメントを行い第2パターンを第2露光するステップと、を有することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記第2露光するステップには、前記記憶された第2露光フィールドの範囲の第2座標値情報と、前記選択された第2アライメントマークの第3座標値とから、前記第2露光フィールド毎に、前記第3座標値の誤差を計算するステップと、前記第3座標値の誤差から、前記第2露光フィールド毎に、当該誤差を補正するためのパラメータ値を計算するステップと、を含むようにしてもよい。
【0027】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記パラメータ値を計算するステップの後に、前記パラメータ値を記憶するステップを有し、前記第2露光フィールドの範囲を示す第2座標値を計算する際には、前記パラメータ値を用いて計算するようにしてもよい。
【0028】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記パラメータ値を計算するステップの後に、前記パラメータ値と、前記記憶された第1座標値情報とから、前記第1露光フィールドの範囲を補正した第1座標値を計算するステップと、前記第1露光フィールドの補正した第1座標値情報を記憶するステップと、を有し、前記第2露光フィールドの範囲を示す第2座標値を計算する際に、前記第1露光フィールドの第1座標値情報として、前記補正した第1座標値情報を用いるようにしてもよい。
【0029】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、第2露光前の第2露光フィールドをアライメントする際に、D/D方式による第1露光で第1露光フィールド毎に連続しない誤差を考慮して、第2露光フィールドを第1露光フィールドより小さくする。これによりサンプルとして選択された第2露光フィールドの誤差が線形誤差に近づけることができるので、各第2露光フィールドを精度良くアライメントでき座標値の精度を向上させることができる。
【0030】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記グローバル・アライメント方式の前記計算では、最小二乗法による近似を行う統計計算を用いるようにしてもよい。
本実施態様では、GA方式の計算に最小二乗法による近似を行う統計計算を用いるので、各々の露光フィールドにおける突出した誤差を平均化する効果が得られ、アライメント精度を向上させることができる。
【0031】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記グローバル・アライメント方式の前記計算では、前記第2アライメントマークの第3座標値の誤差を、基板の変形に基づく3次式により近似可能な3次式近似誤差と、第2アライメントマークの形成工程に起因する4次以上の高次式により近似可能なランダム誤差に分離して求め、各誤差の大きさの割合を各々求めて、何れの割合が大きいかを判断し、各誤差の割合に応じて重み付けを行い各第2座標値をアライメントするようにしてもよい。
本実施態様では、基板の変形に基づく誤差と、第2アライメントマークの形成工程に起因する誤差に分離し各々の誤差に重み付けするので、複合誤差を精度良く補正することができる。
【0032】
本発明においては、プリント基板外周や中心線近傍に配置されたマークでも露光位置での線形誤差、所定の非線形誤差を補正でき、更にはマーク検出エラー(検出不可)にも対応可能なアライメント方法が提案されている。更に、本発明に利用するマーク配列は、露光フィールド数と比べてもマーク点数が少なく安定したマークを設定できる為、更に早く精度の高いアライメントを提供できるという利点も有する。
【0033】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記矩形状の基板の1辺に平行に配置された複数の第2アライメントマーク情報を少なくとも1対の向かい合う辺に対応した2つのグループに分けるステップと、前記グループ内で各第2アライメントマークの設計上の座標値情報及び、各第2アライメントマーク座標値の検出情報に基づき、直線若しくは近似により求めた曲線情報を有する数式を決定するステップと、前記2つのグループで決定した前記各数式に前記設計上の各座標値情報を代入し、2つの座標値情報を算出するステップと、前記算出した座標軸と直交する軸方向の2つのグループの第2アライメントマーク座標に対する露光座標の内分情報を用いて露光位置を決定するステップと、を含むようにしてもよい。
【0034】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記矩形状の基板の1辺に平行に配置された複数の第2アライメントマーク情報を少なくとも1対の向かい合う辺に対応した2つのグループに分けるステップと、前記グループ内で各第2アライメントマークの設計上の座標値情報及び、各第2アライメントマーク座標値の検出情報に基づき、直線若しくは近似により求めた曲線情報を有する数式を決定するステップと、前記2つのグループで決定した前記各数式に露光を行うフィールド対角線方向少なくとも2端の前記設計上の各座標値情報を代入し、その差分より露光フィールドの倍率及び回転情報を算出するステップと、前記算出した座標軸と直交する軸方向の2つのグループの第2アライメントマーク座標に対する露光座標の内分情報を用いて露光位置を決定するステップと、を含むようにしてもよい。
【0035】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記2つのグループと直交する方向の辺に平行に配置された複数の第2アライメントマーク情報を少なくとも1対の向かい合う辺に対応した2つのグループに分け、同様の処理を行うようにしてもよい。
【0036】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、グループ内で決定される前記直線または近似により求めた曲線情報が第2アライメントマークの数で決定され、第2アライメントマークが2点の場合は一次式、第2アライメントマークが3点の場合は2次式、第2アライメントマークが4点以上の場合は3次式であるようにしてもよい。
【0037】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、アライメントを実行する前に前記第2アライメントマーク点数とは無関係に何次式までを計算するかを決定するステップを含み、該ステップでは、直線近似で求めた1対の向かい合う辺に対応した式の平均値とする1次式または直線近似による1次式、あるいは2次曲線近似による2次式を選択するようにしてもよい。
【0038】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、プリント基板の処理ロットの先頭では前記グループ毎に3点以上の第2アライメントマーク検出を行うステップを含み、該ステップでは、直線近似または曲線近似を行ったときの2次及び3次の近似係数の値に応じて2枚目以降の第2アライメントマーク検出点数を先頭の点数より減じるようにしてもよい。
【0039】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記パラメータ値は、少なくともx軸方向のオフセット値、y軸方向のオフセット値、x軸方向の倍率値、y軸方向の倍率値、x軸又はy軸を基準としたローテーション値θ、x軸とy軸の直交度ωの6パラメータを含むようにしてもよい。
本実施態様では、各軸方向オフセット、各軸方向倍率、ローテーション、直交度で誤差を補正できるので、精度良く線形誤差を補正することができる。
【0040】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記設計上の第1及び第2座標値情報と分割比情報を記憶するステップでは、更に、前記第1露光フィールドの各範囲がプリント基板上を分割する第1フィールド分割数、前記第2露光フィールドの各範囲がプリント基板上を分割する第2フィールド分割数、第1露光フィールドの範囲内を第1パターンが分割する第1パターン分割数、第2露光フィールドの範囲内を第2パターンが分割する第2パターン分割数のうちの、少なくとも1個以上を記憶するようにしてもよい。
本実施態様では、第1露光フィールドと第2露光フィールドの分割数、第1パターンと第2パターンの分割数を利用できるので、より詳細に誤差座標値を補正することができる。
【0041】
本発明に係る投影露光装置のアライメント方法においては、前記第2アライメントマークの第3座標値を計測する際には、プリント基板上で、1個の第2露光フィールドの第2アライメントマークを計測するための移動方向に対して、同一列に該当する各第2露光フィールドの第2アライメントマークについては、プリント基板の端部の第2露光フィールドに達するまで連続して計測し、当該端部で次の列に移動し、同様に他端まで第2露光フィールドの第2アライメントマークを計測する処理を繰り返すようにしてもよい。
本実施態様では、第2アライメントマーク計測の速度を向上させて、露光工程のスループットを向上させることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の投影露光方法によれば、分割型のコンタクト/プロキシミティ/干渉計不備の投影露光装置でD/D方式により第1露光を分割露光し、分割型の投影露光装置でGA方式により第2露光を分割露光する場合に、その露光用の第2アライメントマークの検出数が少なくても第1露光の誤差とプリント基板の歪みを精度良く補償でき、第2パターンを精度良くアライメントして露光させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る第1実施形態の投影露光装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の投影露光装置1を用いてプリント基板に回路パターンを形成する場合の一例を示すフローチャートである。
【図3】(a)〜(d)は、本発明に係る第1実施形態の投影露光装置1における全回路パターン領域(P)と最大露光領域(A)及び最小露光領域(B)との位置関係を示す図である。
【図4】プリント基板上に4分割露光する場合の設計上の理想的なフィールド範囲である設計上第1露光フィールドと4分割/16分割露光する場合の設計上の理想的な座標値である設計上第2アライメントマークを示した上面図である。
【図5】プリント基板上における実第2アライメントマークの設計上の理想的な座標値からの座標値誤差と、当該座標値誤差を含む各実第2アライメントマークにより規定される16分割されたフィールドと、露光用マーク選択円を示した上面図である。
【図6】図5の露光用マーク選択円で選択された実第2アライメントマークに基づき第1露光した実第1露光フィールドと、その16分割フィールド毎の各角の座標値誤差を示した上面図である。
【図7】プリント基板上に第1露光した各実第1露光フィールドにおける基板自体の伸縮により歪曲化したフィールドと、その16分割フィールド毎の各角の歪みを示した上面図である。
【図8】第1露光位置誤差に第1露光歪曲化誤差を組み合わせた合成誤差を特許文献1等に示した従来の方法により補正する場合を示した上面図であり、(a)が元の合成誤差、(b)が補正可能な合成誤差中の線形誤差成分、(c)が補正できない合成誤差中の非線形誤差成分を示す。
【図9】(a)は、図8(a)と同様な合成誤差を示しており、(b)は、16分割された実第2露光フィールド毎に最小二乗法による近似計算により求めたパラメータにより、実第2露光フィールド毎に計算により求められる線形補正成分を示す。
【図10】合成誤差を特許文献1等に示した従来の方法により補正する場合を示した上面図であり、(a)が元の合成誤差、(b)が補正可能な合成誤差中の線形誤差成分、(c)が補正できない合成誤差中の非線形誤差成分を示す。
【図11】合成誤差を本実施形態の方法により補正する場合を示した上面図であり、(a)は、図10(a)と同様な合成誤差を示しており、(b)は、64分割された実第2露光フィールド毎に最小二乗法による近似計算により求めたパラメータを用いて、実第2露光フィールド毎に計算により求められる線形誤差成分を示し、(c)は補正できない合成誤差中の非線形誤差成分を示す。
【図12】(a)〜(e)は、各露光実フィールドの中心座標を示し、(a)が4分割されたうちの1/4番目の実第1露光フィールドの中心座標、(b)が4分割されたうちの2/4番目の実第1露光フィールドの中心座標、(c)が4分割されたうちの3/4番目の実第1露光フィールドの中心座標、(d)が4分割されたうちの4/4番目の実第1露光フィールドの中心座標、(e)が16分割された実第2露光フィールドの全体の中心座標を示す。
【図13】(a)〜(c)は、D/D方式により計測したマークの座標値に基づいて第2露光を実施する場合を示す。
【図14】(a)〜(c)は、ベースライン計測法により計測したマークの座標値に基づいて第2露光を実施する場合を示す。
【図15】(a)〜(f)は、D/D方式により計測したマークの座標値に基づいて第2露光を実施する場合を示す。
【図16】(a)〜(f)は、ベースライン計測法により計測したマークの座標値に基づいて第2露光を実施する場合を示す。
【図17】第1実施形態の動作フローチャートである。
【図18】図17のフローチャートにおけるステップS31の第1実施形態の詳細な動作フローチャートである。
【図19】従来のアライメント光学系を示す概略図である。
【図20】露光フィールドのマーク座標値を示す概略図である。
【図21】露光フィールドのその他のマーク座標値の配置を示す概略図である。
【図22】露光フィールドにおける曲線近似計算を行う場所を示す概略図である。
【図23】露光フィールドにおける、向かい合う曲線グループ、それに直交した向かい合う曲線グループ、及び露光位置座標を示す概略図である。
【図24】補正を行なう露光フィールドの形状の一例を示す概略図である。
【図25】図17のフローチャートにおけるステップS31の第2実施形態の詳細な動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
ここで簡単に本明細書中に用いられている用語について説明する。フォトリソグラフィ法は、プリント基板のエッチング又は多層基板のビルドアップ等にはフォトリソグラフィ法が用いられている。フォトリソグラフィ法では、数10μm程度で微細加工したパターン形成が可能である。そのため、複数層の回路パターンをビルトアップする多層基板では、数10μm幅で配線を形成して配線本数を増やし、直径数10μmで各層の配線を接続するビア又はスルーホール等を形成することで回路を高密度化している。このため、フォトリソグラフィ法により高密度の多層基板を形成する場合には、各層のパターンの位置決め(アライメント)に高い精度が求められる。
【0045】
ところで、プリント基板をフォトリソグラフィ法により製造する場合には、基板が100μm以上伸び縮みすることが知られている。この基板の伸縮は、基板材質、加工パターン、プロセス条件等のいくつかの要因に依存して変動し、一般的に縦方向と横方向等で伸縮量は異なっている。そのような理由から基板が伸縮すると、塑性変形等により基板材質又はパターンが元に戻らず歪む場合がある。従って、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの多層基板を製造する場合、その接続ポイントをアライメント精度良く設計上の座標値に合わせることは容易ではない。つまり、アライメント精度良く多層基板の各層のパターンを製造することは難しい。
【0046】
一般的にプリント基板上に回路パターン等を露光するには、一度に比較的広いフィールド(例えば直径250mm等)を露光できる一括投影露光装置と、露光フィールドを何個かの比較的狭いフィールドに分割してステップ・アンド・リピート動作で露光させる分割露光装置が使用される。一括投影露光装置は、マスクとワークの移動回数が少なく移動手段等が簡素でよく、一度に多数の個別基板を露光できるので、装置が比較的安価であり、工数と時間も短くできるのでランニングコスト及び基板単価も比較的安くできる。しかし、一括投影露光装置では、広いフィールドを露光できる投影レンズに歪み等が発生しやすいので、多層基板のパターンのアライメント精度(及び解像力)を数μm程度等に精度良くアライメントすることは難しい。
【0047】
それに対して分割投影露光装置は、マスクとワークを同時に移動させる移動手段等が複雑な構成であり、ステップ・アンド・リピート動作に必要な制御手段も必要なことから比較的高価であり、露光フィールドの範囲が狭いことから工数と時間も多く必要であるので、ランニングコスト及び基板単価も比較的高くなる。しかし、分割投影露光装置は、露光フィールドの範囲が狭いので多層基板のパターンのアライメント精度(及び解像力)を1μm以下に精度良くアライメントすることが可能である。
【0048】
分割投影露光装置としては、半導体製造に用いられるような投影レンズにより縮小されたパターンを、ワーク上を移動(ステップ)させながら投影露光するステッパーが知られている。ステッパーは、ステップした先の露光フィールドではフォトマスクとワークを固定して露光するアライナー(以下、単にステッパーと称する場合はこちらを意味する)と、ステップした先の露光フィールドでフォトマスクとワークを同時に移動させてスリットを通して特性のよいレンズの中心部分だけを利用してスキャン露光するスキャナーとに分類できる。
【0049】
本明細書に記載されたスキャナーは、原理的に精密な焦点制御ができ、収差を平均化でき、分解能を維持できる。従って、微細化されたクリティカルなパターン層の露光に向いており、一般のステッパーより小さなレンズでより広い面積の露光が可能である。しかし、スキャナーは、露光にフォトマスクとワークを同時に同じ比率で移動させる精密な同期制御が必要であり、構造が複雑で高価である。従って、スキャナーは、一般にコストが高くなっても精度が必要な層の形成に利用され、一般のステッパーは、それほど精度を要求されないのでコストが廉価なものを使用できるラフな層を形成する場合に利用される。
【0050】
D/D方式は、例えばワーク(ウェハ)上における半導体のチップフィールド(単数又は複数)毎にアライメント・パターンの座標値を顕微鏡等により検出して位置決めを行う方法である。より具体的には、最初にウェハのアライメントを行ない、次に最初のチップフィールドの露光位置について個別(D/D方式)のアライメントを行ない、この最初の露光位置で1ショット分の最初の露光を行なう。その後、次以降の露光位置でも同ように個別のD/D方式と個別の露光を行なう処理を繰り返す。D/D方式の露光方法では、ウェハ上の全チップのアライメント・パターンを検出する必要があるため、露光精度を高めることはできるが、露光工程のスループットが低下する。
【0051】
GA方式は、基板上の数チップフィールドのパターンからアライメント・パターンの座標値を検出してウェハ全体について(GA方式)のアライメントの位置決めを行う方法である。より具体的には、GA方式は、例えば、半導体ウェハ上の周辺部から9箇所程度のアライメントマークを選択してその座標値を計測する。次に、この計測データに基づき、ウェハ全体として、ウェハ内の各露光位置の誤差がバランスし、且つ、それぞれの座標値での誤差が最小となるような平均的なオフセット補正量を算出する。この計算には、例えば最小二乗法等の手法を用いて算出する。そして、そのオフセット補正量を用いて、X・Yステージの座標値制御により上層のパターン露光用の座標値を補正する。
【0052】
GA方式によるパターン座標値合せ法では、計測値アライメント処理時間は、上記のようにウェハ全体の数カ所の計測値から計算により求めるので、露光単位のフィールド毎に個別に計測するD/D方式よりも短くなる。従って、露光工程のスループットは向上する。しかし、算出された補正量がウェハ全体の線形誤差に対する補正であるため、ウェハ上における局所的な歪みや伸び等に対応することはできない。そのため、露光位置間のオフセット量等のバラツキは補正できず、下層パターンに対するアライメント精度はD/D方式よりも低下する。つまり、GA方式では、D/D方式と比較して高精度なアライメントを行うことができない。
【0053】
以下、本発明の投影露光装置の実施の形態について、以下に図面を用いて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の投影露光装置の概略構成を示すブロック図である。
投影露光装置1は、光源部を含む照明光学系10からの出射光をフォトマスク20に形成された回路パターンに照射し、そのフォトマスク20を通過した回路パターンの像を含む光を、投影光学系50を介してプリント基板100上に投影して露光させる装置である。より詳しくは、露光前のプリント基板材料の上に均等に塗布された感光材料(フォトレジスト)に、回路パターンを露光させることで、プリント基板材料の上にプリント配線部を形成する装置である。露光装置には、使用される感光材料に対応してソルダレジスト用とパターンレジスト(ドライフィルムレジスト等)用がある。後工程ではんだを付着させる場合にはソルダレジストが用いられ、基板の銅箔層をエッチングする場合には、パターンレジストが用いられる。
【0054】
ソルダレジストは、例えば、はんだが付いてはいけない場所へのはんだの付着を防いだ状態ではんだ槽にディップすること等によって、配線または銅箔パターンの保護層を形成するものである。感光性のソルダレジストを用いた場合は、露光した部分のみか、露光した部分を除いて、はんだを付着させることができる。感光性のパターンレジストは、プリント基板材料(例えば表面に銅箔層を有する樹脂板:銅張積層板等)における銅箔等の上に均等に塗布され、その感光性パターンレジストに対して回路パターンを露光装置により感光させて焼き付けし、露光しなかった感光性パターンレジストを除去してから銅箔層をエッチングすることで露光した部分のみか、露光した部分を除いて、銅箔をエッチング等で除去することができる。
【0055】
照明光学系10は光源部を含み、その光源部は、例えば、レーザ光発生器、アークランプ、または、水銀灯等であり、照明光学系10により所定の均一性・照射面積を持つ光束に成形され、その光束を照射する事で、感光性のフォトレジストを感光させることができる。
フォトマスク側顕微鏡15は、露光させる波長の光を用いてフォトマスク20上のマスクマーク25と、ステージマーク75又はプリント基板100上のアライメントマーク105との座標値が合致するように調整する場合に使用する。フォトマスク側顕微鏡15は、2個又は4個等の複数の顕微鏡と各顕微鏡から得られた画像を撮像する撮像素子等のカメラを含む。複数のフォトマスク側顕微鏡15を用いることで、複数のマスクマーク25とステージマーク75の位置ずれ量を計測することができる。
【0056】
フォトマスク20は、レチクルとも称され、光源部から出射された光を、回路パターンの部分を除いて通過させるか、又は、回路パターンの部分だけ通過させ、残りの部分の光は遮る遮蔽板である。フォトマスク20の一方の表面上には、マスクマーク25が形成される。
【0057】
マスクマーク25は、フォトマスク20とステージ60上に設置されたステージマーク75とのアライメントを行う際に使用される。アライメント方法としては、例えば、フォトマスク側顕微鏡15をマスクマーク25の上に挿入し、フォトマスク側顕微鏡15によりマスクマーク25とステージマーク75の位置ずれ量を計測する。計測されたデータはマーク計測部70により処理され、フォトマスク20の投影像がステージ上のどの座標値に投影されるかの座標値関係が記憶される。
次に基板側顕微鏡65をステージマーク75の上に移動し、基板側顕微鏡65によりマスクマーク25の投影像とステージマーク75の位置ずれ量を計測する。計測されたデータはマーク計測部70により同じく処理され、基板側顕微鏡65の計測した座標値とフォトマスク20の投影像との座標値関係が記憶される。
ステージ60上にプリント基板100が搭載された際には、基板側顕微鏡65により計測されたプリント基板100上のアライメントマーク105の計測結果を、上記した各座標値関係の記憶を用いて補正することで、フォトマスク20の投影像をプリント基板100に正確にアライメントして露光する事が可能となる。
【0058】
XY独立倍率補正部30は、フォトマスク20と投影光学系50との間で特にフォトマスク20の直下、または、投影光学系50とプリント基板100との間で特にプリント基板100の直上に配置され、回路パターンにおけるX方向とY方向の倍率差(偏り)を減少させるように投影光を補正する。より詳しくは、XY独立倍率補正部30は、プリント基板上で直交するX方向とY方向のうちの何れか一方の方向の変倍率を補正する。XY独立倍率補正部30は投影倍率制御部90により駆動制御が行われる。この補正については、本特許出願の出願人による特願2008−204103号に詳細に説明されている。
【0059】
可動板40は、フォトマスク20の上方には、フォトマスク20に対して平行を保ちつつ移動可能であり、フォトマスク20に照射される露光光のうちのフィールド外の光を遮断するブラインドとして機能する。より詳しくは、可動板40は、光源を含む照明光学系10から射出された光束の一部(フィールド外の光)を遮断することで、光束の断面を所望する大きさに変更する。それにより可動板40は、例えば、図3に示すようにフォトマスク20上の最小単位面積の最小回路パターンフィールド(p)を少なくとも一個含んで一回の露光時に投影される最小面積の最小露光フィールド(B)を形成できる。さらに可動板40は、後述するように、前記最小単位面積の最小回路パターンフィールド(p)を少なくとも二個以上含んで一回の露光時に投影される最大面積の最大露光フィールド(A)と、最小露光フィールド(B)と最大露光フィールド(A)との中間面積で、最小単位面積の最小回路パターンフィールド(p)を複数個直列に縦方向又は横方向に配置させた中間の露光フィールド(C)、(D)を形成できる。以下、上記最大露光フィールド(A)、最小露光フィールド(B)、及び、中間の露光フィールド(C)、(D)を含めて実露光フィールドとも称する。露光フィールドの面積は、フォトマスク20上に設けられて遮光機能を有するブラインドとして機能する可動板40を駆動させることにより面積を変化させる。可動板40は可動板制御部85によりその開口面積が制御される。
【0060】
投影光学系50は、回路パターンを露光させる光を基板上に投影するレンズ等を含む光学系であり、入射した光は内部で一旦集光されてから拡散して、基板に対して出射される。投影光学系50には、等方的な基板の倍率誤差を、レンズを駆動する事で補正できる倍率補正機構55が内蔵されている。倍率補正機構55は、前述のXY独立倍率補正部30と同ように投影倍率制御部90により駆動制御が行われる。
【0061】
ステージ60は、例えば、プリント基板材料が設置される台であり、X方向とY方向に移動させて露光位置を微調整することができる。ステージ60は、より詳しくは、全回路パターンフィールド(P)内で露光フィールドが重ならず、且つ、フォトマスク20上のマスクマーク25がプリント基板100上に投影された像と、プリント基板100上のアライメントマーク105とが極力一致するようにプリント基板100を順次移動させることができる。又、ステージ60は、露光位置調整等の必要に応じてZ方向に移動することと、プリント基板材料の各部の水平度を得るためにZ方向の傾きを調整することができる。
【0062】
基板側顕微鏡65は、複数の顕微鏡と各顕微鏡から得られた画像を撮像する撮像素子等のカメラを含む。複数の基板側顕微鏡65の座標値は、フォトマスク側顕微鏡15側で複数の計測点においてマスクマーク25とステージマーク75の位置ずれ量を計測しているので、その結果より投影倍率の伸縮が0になるようにして決定する事ができる。そして、その複数の基板側顕微鏡65を用いて、各アライメントマーク105の計測を行う。
上記のように基板側顕微鏡65の計測座標値は、予め伸縮が無い条件で設定されているので、各アライメントマーク105を計測することで基板の伸縮量を計測することが可能になる。尚、本実施形態の基板側顕微鏡65は、処理時間を短縮する為に複数設けられているが、例えば単独の顕微鏡であっても、ステージ60を移動する事で、複数のアライメントマーク105を計測できるようにしてもよい。
【0063】
マーク計測部70は、上記した各マークを複数計測すること等により、プリント基板上で直交する2軸(X方向とY方向)の倍率を計測する。より詳しくは、マーク計測部70は、回路パターンが露光されるプリント基板100上に形成された回路パターンの平面上で直交する2軸を少なくとも含む方向で、少なくとも複数のアライメントマーク105間の寸法を計測することで、プリント基板100の各方向における伸縮量から倍率を算出する。
上述のプリント基板の伸縮量がマーク計測部70により計測されると、その結果に応じて伸縮したプリント基板とフォトマスク20の投影像が精度良く重なり合うように投影倍率制御により制御が行われる。
ステージマーク75は、ステージ60上に設けられ、基板側顕微鏡65によりマスクマーク25との位置ずれ量が計測される。
【0064】
制御部80は、例えば、マイクロプロセッサ等の計算素子と記憶素子と各周辺装置とのインターフェースを含み、マーク計測部70で計測された結果から、プリント基板100の倍率の基板伸縮誤差(BE)を計算し、基板伸縮誤差(BE)に基づいて投影倍率制御部90にて投影像の倍率を制御する。更に、アライメント許容値とアライメント誤差の比較結果より、露光範囲を可変する場合は、可動板40を用いて、最小露光フィールド(B)と最大露光フィールド(A)を含む複数の実露光フィールドを形成させ、その実露光フィールドを全回路パターンフィールド(P)内で順次移動させると共に、ステージ制御部95に指令して、ステージ60によりプリント基板100が適切な座標値で実露光フィールドの投影光を露光できるように座標値を制御する。
【0065】
又、制御部80は、マーク計測部70で計測された結果から得られた基板伸縮誤差(BE)に基づき、全回路パターンフィールド(P)内で前記最大露光フィールド(A)を、プリント基板100を順次移動させながら露光させる場合の各露光位置における第1のアライメント誤差(PE1)を計算する。そして制御部80は、第1のアライメント誤差(PE1)が予め入力された重なり許容値(AL)未満であれば、最大露光フィールド(A)を用いて露光させ、第1のアライメント誤差(PE1)が重なり許容値(AL)以上であれば、全回路パターンフィールド(P)内で最大露光フィールド(A)の次に面積が大きい実露光フィールドが全回路パターンフィールド(P)内で重ならないようにプリント基板100を順次移動させながら露光する場合の各露光位置における第2のアライメント誤差(PE2)を計算する。
【0066】
又、制御部80は、第2のアライメント誤差(PE2)が重なり許容値(AL)未満であれば、実露光フィールドを用いて露光させ、第2のアライメント誤差(PE2)が重なり許容値(AL)以上であれば、全回路パターンフィールド(P)内で実露光フィールドの次に面積が大きい第2の実露光フィールドが全回路パターンフィールド(P)内でプリント基板100を順次移動させながら露光する場合の各露光位置における第3のアライメント誤差(PE3)を計算し、それらのアライメント誤差(PEn:nは正の整数)を計算して露光させるか次のアライメント誤差(PE(n+1))を計算する処理を、第nの実露光フィールドが最小露光フィールド(B)と一致するまで繰り返す。(第1の実露光フィールドが最大露光フィールドの場合)
【0067】
又、制御部80は、例えば、倍率差を低減させるように生成した制御信号を投影倍率制御部90に出力する。言い換えれば、倍率補正機構55によりX方向及びY方向に共通した倍率誤差を補正し、XY独立に発生している倍率誤差については、XY独立倍率補正部30の対向する各曲面の間隔を可変させることでX方向とY方向の倍率差を減少させる。さらに詳しくは、制御部80は、マーク計測部70にて基板側顕微鏡65を用いた各アライメントマーク105の計測により求められた基板の伸縮量に基づき、前記伸縮に合わせた投影像を得るための制御信号を投影倍率制御部90に出力する。
投影倍率制御部90は、制御部80からの制御信号を受けて、例えば、モータと各種ギア等の駆動機構で倍率補正機構55のレンズ間隔及び、XY独立倍率補正部30内のシリンドリカルレンズを駆動する。
【0068】
プリント基板100は、ベースとなる絶縁樹脂の表面上に銅の薄板等を貼り付けたプリント基板材料であり、投影露光装置1に設置する場合には、さらに銅板上にパターンレジストが塗布される。このパターンレジストに対してフォトマスク20を通過した回路パターンの露光光が照射されることで、パターンレジストが露光される。基板の種類としては、例えば、芯材の紙に熱硬化性のフェノール樹脂を含浸させた紙フェノール基板、芯材の紙に熱硬化性のエポキシ樹脂を含浸させた紙エポキシ基板、芯材のガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ基板等がある。
【0069】
アライメントマーク105は、フォトマスク20上のマスクマーク25との座標値が合致するように、プリント基板100上に設けられ、例えば、レーザ光でプリント基板100の表面を溶融するか、ドリル等によって機械的に加工するか、レーザにより基板材料を溶融するか、基板上の金属箔又はレジストの層を設けて露光とエッチングを行うか、あるいはシルクスクリーン印刷する等により形成される。
【0070】
図2は、本実施形態の投影露光装置1を用いてプリント基板に回路パターンを形成する場合の一例を示すフローチャートである。
【0071】
投影露光装置1で露光させる回路パターンにマスクマーク25が設けられたフォトマスク20を作成する(S1)。次に、アライメントマーク105が設けられた銅張積層板等のプリント基板材料を露光させるサイズに切断し(S2)、その銅箔層の表面にフォトレジストを塗布し(S3)、そのプリント基板材料を投影露光装置1のステージ60上に設置する(S4)。投影露光装置1は、マーク計測部70等を用いてプリント基板材料の複数のアライメントマーク105を計測する(S5)。ここで投影露光装置1は、投影露光装置1に設置されたプリント基板材料100上に投影された回路パターンの平面上で直交する2軸(X方向とY方向)を計測している。
【0072】
投影露光装置1は、検出された2軸方向の倍率(プリント基板材料の伸縮状態)に基づいて、倍率補正機構55及び、XY独立倍率補正部30で実施する補正量を計算する(S6)。投影露光装置1は、計算された誤差と補正量に基づいて、露光フィールドの面積と露光順序を設定する(S7)と共に、倍率補正機構55及び、XY独立倍率補正部30で露光光の倍率を補正して、プリント基板材料に回路パターンを繰り返し露光させる(S8)。投影露光装置1は、プリント基板100上のアライメントマーク105の座標値を、記憶素子等に予め記憶されている設計上アライメントマーク座標値に一致させるようにステージ60を順次移動させる。設計上アライメントマーク座標値は、設計上から得られた座標値、又は、基準基板を用いて計測した座標値を用いる。この処理を繰り返すことで、フォトマスク20上の回路パターンをプリント基板100上の複数の露光フィールドに各々順次転写することができる。
【0073】
その際に投影露光装置1は、例えば、露光光のX方向とY方向の変倍率を補正するために、例えば、レンズの組31、32における凸型の曲面と凹型の曲面との間隔を変化させることで、シリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸(X方向)と直交し、且つ、プリント基板100に平行である方向(Y方向)における投影光の変倍率の、シリンドリカルレンズの円筒形状の中心軸方向(X方向)における投影光の変倍率に対する差を減少させるように投影光を補正する。
【0074】
露光後のプリント基板材料をエッチングすることにより、不要な配線部分を除去する(S9)。エッチングが終了したらフォトレジストを除去し(S10)、プリント基板材料にスルーホール加工等の後工程を実施し(S11)、最後にプリント基板の表面を保護するコーティングを実施する(S12)。
【0075】
プリント基板100上に投影されたマスクマーク25の座標値と、記憶されている基板側原アライメントマーク105の座標値との誤差を解消して一致させるアライメント方式については、例えば、本特許出願の出願人による特願2008−119636号に詳細に記載されているように、上記したようなD/D方式とGA方式とIGA方式を用いることが考えられる。上記では、半導体のチップを露光させる際にそれらの方式を用いた場合を示しているが、プリント基板の露光に各方式を用いた場合について、図1を参照した具体例を簡単に説明する。
【0076】
D/D方式でプリント基板の露光する場合は、複数の露光フィールドの各々について、計測されたアライメントマーク105の座標値と設計上アライメントマーク座標値との誤差を算出する。マーク計測部70は、各露光フィールドのアライメントマーク105の座標値を計測する際に、計測座標値と退避座標値との間で毎回移動される。制御部80は、計測されたアライメントマーク105の座標値と設計上から得られた設計上アライメントマーク座標値との誤差を算出し、アライメントマーク105の座標値を、その誤差が補正された座標値と一致するようにステージ60を制御した後、回路パターンをプリント基板100に転写する。
【0077】
GA方式でプリント基板の露光する場合は、D/D方式のように露光フィールド毎に毎回アライメントマーク105の座標値を計測して誤差を算出するのではなく、制御部80は、プリント基板100のフィールド全体のアライメントマーク105の座標値を計測し、予め記憶しておいた設計上アライメントマーク座標値との誤差からプリント基板100上の基板フィールド全体にわたる誤差の線形パラメータ値を最小二乗法による近似計算により求める。これにより、各座標値の誤差を算出することができる。
【0078】
GA方式では、さらに設計上アライメントマーク座標値を得るために基準基板を用いた場合、線形誤差から非線形誤差を算出して非線形誤差のマップデータを得ることができる。そして制御部80は、算出された誤差に基づき補正されたアライメントマーク105の座標値を記憶しておき、回路パターンの転写時に、アライメントマーク105の座標値が補正された座標値と一致するようにステージ60を制御し、順次回路パターンをプリント基板100上に転写する。
【0079】
このGA方式では、D/D方式のようにマーク計測部70等を、複数の露光フィールドの各々についての計測座標値と退避座標値との間で毎回移動させる動作の必要が無くなることから、回路パターンの転写処理時間を短縮することができる。又、プリント基板100の全体にわたるアライメントマーク105の座標値から誤差を補正するので、上述した補正された座標値と、それに対応させて検出するアライメントマーク105の座標値を減らすことができ、その結果、検出に要する時間も短縮することができる。
【0080】
D/D方式とGA方式との使い分けは、プリント基板100の誤差が大きい場合には、プリント基板100の全体的な誤差により補正するGA方式が適しており、誤差が小さい場合には、露光フィールド毎の誤差により補正するD/D方式が適している。又、例えば、重み付け係数Dを用いて、GA方式とD/D方式に重みづけを行い、重み付け係数D>1の場合にはGA方式を重視し、重み付け係数D<1の場合にはD/D方式を重視するように重みづけを実施してもよい。
【0081】
IGA方式では、GA方式のプリント基板100上の基板フィールド全体にわたる誤差の線形パラメータ値及び非線形誤差のマップデータを求めることに加えて、検出フィールド毎の誤差のパラメータ値を最小二乗法による近似計算により求め、その検出フィールド毎の誤差のパラメータ値の差分から、差分の線形成分を求める。そして、検出フィールド毎の誤差のパラメータ値、その線形成分、差分の線形成分の累積和から、検出フィールド毎の誤差のパラメータ値のばらつきを得る。さらに、そのばらつきから重み付け係数Wを求める。これにより、IGA方式の制御部80は、プリント基板100のフィールド全体のアライメントマーク105の座標値と、基板フィールド全体にわたる誤差の線形パラメータ値及び非線形誤差のマップデータと、重み付け係数Wとから目標となる座標値を算出し、アライメントマーク105の座標値を、目標となる座標値と一致するようにステージ60を制御し、順次回路パターンをプリント基板100上に転写する。
【0082】
又、IGA方式では、アライメントマーク105の座標値の誤差を、プリント基板100の変形に基づく誤差と、アライメントマーク105の形成工程に起因する誤差に分類する。プリント基板100の変形に基づく誤差は、3次式によって近似可能であり3次式近似誤差と称する。アライメントマーク105の形成工程に起因する誤差は、4次以上の高次の式によって近似可能であるのでランダム誤差である。
又、IGA方式では、アライメントマーク105の座標値の誤差を補正する場合、3次式近似誤差とランダム誤差のどちらが支配的な誤差であるかを判定し、補正方法を変更する。判定方法としては、例えば、上記した重み付け係数Wを用いて所定値以上か以下かで判定することができる。
【0083】
又、IGA方式では、プリント基板100の変形が2次式または3次式よって近似されるような座標値の誤差が生じた場合、非常に優れた誤差の補正結果を得ることができ、さらにアライメントマーク105の座標値のランダムな誤差に対しても誤差を補正した露光位置での露光が可能となる。又、一部のアライメントマーク105が何らかの理由により検出不可能な場合でも、その周辺の検出可能なアライメントマーク105の座標値とフィールド全体の誤差パラメータ値とに基づいて検出不可能なアライメントマーク105の座標値を近似的に補完することができ、それにより、その検出不可能だった露光フィールドについての目標座標値を算出して露光を行うことができる。
【0084】
以上から、IGA方式では、GA方式よりもさらに、上述した補正された座標値と、それに対応させて検出するアライメントマーク105の座標値を減らすことができ、その結果、検出に要する時間もさらに短縮することができる。つまり、スループットを高めることができる。また、GA方式よりも目標座標値の精度を高めることができるので、露光の際にステージ60上のプリント基板100を目標に対してより適切な座標値に配置することができ、より確実な露光処理が可能となる。
【0085】
又、IGA方式では、例えば、3次式で近似されるような基板平面に対する垂直方向に基板の座標値が変化する場合の誤差の補正が可能となる。さらに、3次式だけでなく、4次式や5次式など、3次式より高次の誤差によって近似できるような座標値の誤差とランダム誤差の大きさを判定基準として露光の際の露光位置の誤差を補正することもできる。さらに、IGA方式では、ステージの構造等に起因する誤差補正を、プリント基板100の誤差の補正と一緒に行うことができる。なお、ステージの構造等に起因する誤差は、ランダム誤差ではない場合が多い。従って、別途に実施していた基準基板を用いたステージの構造等に起因する誤差の補正を省略することができる。
【0086】
図3(a)〜(d)は、本発明に係る第1実施形態の投影露光装置1における全回路パターン領域(P)と最大露光領域(A)及び最小露光領域(B)との位置関係を示す図であり、その中で図3(a)、(b)は、比較用として従来の投影露光装置の最大露光領域(A)及び最小露光領域(B)を示す図である。
図3(a)に示された最大回路パターン領域(p)は、可動板40により領域が記載され、最小単位面積の最小回路パターン領域(p)を縦に4列、横に4行で16個有している。尚、図3(a)に示された外周の円は、投影露光可能な領域を示している。基板側基準マーク105は、各最小回路パターン領域(p)の角に形成されている。基板側基準マーク105は、基準マークとして計測される可能性がある部分に付与されるものであり、基準マークとして計測される可能性がない場所には形成する必要はない。尚、マーク計測部70は、基板側顕微鏡65により計測を行うが、露光時には、投影露光可能な領域の外に退避される。
図3(b)に示された最小回路パターン領域(B)は、可動板40により領域が記載され、最小単位面積の最小回路パターン領域(p)を縦に2列、横に2行で4個有している。
【0087】
図3(c)の中間の露光領域(C)は、最大露光領域(A)及び最小露光領域(B)との中間の面積を有する領域の一例であり、可動板40により領域が記載され、最小単位面積の最小回路パターン領域(p)を縦に4列、横に2行で8個有している。図3(d)の中間の露光領域(D)も、最大露光領域(A)及び最小露光領域(B)との中間の面積を有する領域の一例であり、可動板40により領域が記載され、最小単位面積の最小回路パターン領域(p)を縦に2列、横に4行で8個有している。
【0088】
図4は、プリント基板100上に4分割露光する場合の設計上の理想的なフィールド範囲である設計上第1露光フィールド111と4分割/16分割露光する場合の設計上の理想的な座標値である設計上第2アライメントマーク121を示した上面図である。
図5は、プリント基板100上における実第2アライメントマーク122の設計上の理想的な第3座標値からの座標値誤差131と、当該座標値誤差131を含む各実第2アライメントマーク122により規定される16分割されたフィールド112と、露光用マーク選択円151を示した上面図である。
図6は、図5の露光用マーク選択円151で選択された実第2アライメントマーク122に基づき第1露光した実第1露光フィールド113と、その16分割フィールド毎の各角の座標値誤差132を示した上面図である。
図7は、プリント基板100上に第1露光した各実第1露光フィールド113における基板100自体の伸縮により歪曲化したフィールド114と、その16分割フィールド毎の各角の歪みを示した上面図である。
【0089】
設計上第1露光フィールド111は、例えば、プリント基板100上を4分割するように露光される際の目標となる設計上の露光フィールドである。
【0090】
フィールド112は、実第2アライメントマーク122の設計上の理想的な第3座標値からの座標値誤差131を含む各実第2アライメントマーク122により4角が規定され、プリント基板100上を16分割するフィールド範囲である。
【0091】
実第1露光フィールド113は、分割型の平行露光装置により、露光用マーク選択円151で選択された実第2アライメントマーク122に基づいてD/D方式でアライメントされ、実際に第1露光されたフィールド範囲である。分割型平行露光装置により実第1露光フィールド113を露光させる場合は、例えば、露光させようとする各実第1露光フィールド113における対向する2片の中点に対応する2個の実第2アライメントマーク122を検出し、その検出した実第2アライメントマーク122に、実第1露光フィールド113の対応する2片の中点を合わせるようにして露光させる。各実第1露光フィールド113は、プリント基板100上で、各々別個にD/D方式でアライメントされるため、隣接する実第1露光フィールド113同士で誤差は連続せず、非線形の誤差を含んでの露光となる。
【0092】
第1露光歪曲化後フィールド114は、実第1露光フィールド113がプリント基板100の第1露光後の基板自体の伸縮、基板歪み等により、高次のうねり成分を含んで歪曲化した後のフィールド範囲である。基板歪み等の歪曲化の程度は部分毎に異なるため、プリント基板100上を16分割したフィールド範囲毎に歪曲化後の座標値が異なっている。
【0093】
設計上第2アライメントマーク121は、実第1露光フィールド113を露光前のプリント基板100上に、設計上第1露光フィールド111及び設計上第2露光フィールド125を基準として、実第1露光フィールド113の4分割座標値における各角、及び、実第2露光フィールド126の16分割座標値における各角のアライメント用として形成されたマークである。設計上第1アライメントマーク121は、設計上第1露光フィールド111の4角及び設計上第2露光フィールド125の4角を目標座標値として、各設計上第1露光フィールド111毎に各々9個が設定される。
【0094】
実第2アライメントマーク122は、設計上第1アライメントマーク121を目標座標値として、第1露光時に各設計上第1露光フィールド111毎に形成されるか、若しくは、形成されたマークをX線アライメントで検出し、プリント基板100上でマークとして検出できるようにパターン形態で形成される。実第2アライメントマーク122は、例えば、ドリルによるドリル穴、又は、レーザ装置等によるレーザパターンで、各設計上第1露光フィールド111毎に各々9個が形成される。本実施形態の実第2アライメントマーク122は、レーザパターンで形成される。
【0095】
設計上第2露光フィールド125は、例えば、プリント基板100上を16分割するように露光される際の目標となる設計上の露光フィールドであるが、本実施形態では、プリント基板100上を4分割する設計上第1露光フィールド111を、各々さらに4分割した露光フィールドである。
【0096】
実第2露光フィールド126は、投影露光装置により、実第2アライメントマーク122に基づき第1露光された第1パターン中の実第2アライメントマーク(不図示)に基づいてGA方式でアライメントされ、実際に第2露光されるフィールド範囲である。投影露光装置により実第2露光フィールド126を露光させる場合は、例えば、露光させようとする各実第2露光フィールド126における4角に対応する4個の実第2アライメントマークを検出し、その検出した実第2アライメントマークに、実第2露光フィールド126の対応する4角を合わせるようにして露光させる。
【0097】
マーク位置誤差131は、設計上の理想的な座標値にある設計上第1アライメントマーク121に対して、レーザー装置等により実際に実第2アライメントマーク122をプリント基板100上に形成する際の誤差である。
【0098】
第1露光位置誤差132は、設計上第1露光フィールド111に対する実第1露光フィールド113の誤差であり、設計上第1露光フィールド111の16分割フィールドの各角における座標値誤差である。
【0099】
第1露光歪曲化誤差133は、設計上第1露光フィールド111に対する第1露光歪曲化後フィールド114の誤差であり、第1露光後のプリント基板100の基板歪み等により発生する誤差である。これにも設計上第1露光フィールド111の16分割フィールド毎の各角の座標値誤差を示す。
【0100】
なお、実際には実第1露光フィールド113に対して第1露光後のプリント基板100の基板歪み等が発生するので、第1露光歪曲化誤差133が単独で発生することはなく、第1露光位置誤差132に第1露光歪曲化誤差133を組み合わせた合成誤差134(図8参照)が発生する。
【0101】
露光用マーク選択円151は、設計上第1露光フィールド111を露光させるための基準となる設計上第1アライメントマーク121を選択する円である。この円内の設計上第1アライメントマーク121が、設計上第1露光フィールド111の対向する2片の中点を示す。
【0102】
図8は、第1露光位置誤差132に第1露光歪曲化誤差133を組み合わせた合成誤差134を特許文献1等に示した従来の方法により補正する場合を示した上面図であり、(a)が元の合成誤差134、(b)が補正可能な合成誤差134中の線形誤差成分134a、(c)が補正できない合成誤差134中の非線形誤差成分134bを示す。
【0103】
図8(a)の合成誤差134のうち、図8(b)に示した線形誤差成分134aについては、特許文献1に示した従来の補正方法により、第1露光フィールド毎に補正することができる。その場合、先に4分割で露光した実第1露光フィールド113の形状は既知であり、実第1露光フィールド113内の実第2アライメントマーク122が検出できるので、x軸方向のオフセット値、y軸方向のオフセット値、x軸方向の倍率値、y軸方向の倍率値、x軸又はy軸を基準としたローテーション値θ、x軸とy軸の直交度ωの6パラメータを最小二乗法による近似計算により求めることができる。この6パラメータにより、まず、GA方式のアライメントによりプリント基板100全体の線形誤差を補正する。次に、実第1露光フィールド113内の実第2アライメントマークについて、最小二乗法による近似計算により求めた4パラメータ(直交度ω、ローテーション値θ、x軸方向の倍率値、y軸方向の倍率値)により補正し、第2パターンを第2露光する。これにより、第2露光座標を算出する際の、線形誤差成分134aを補正することができる。
【0104】
しかし、図8(c)に示した非線形誤差成分134bについては、非線形であるので、特許文献1に示した従来の6パラメータによる補正方法では、補正することができない。非線形誤差の補正方法としては、特許文献3に示した3次以上の高次曲線で示された誤差を補正する方法を用いることが可能である。しかし、本実施形態では第1露光をD/D方式でアライメントしているため、実第1露光フィールド113毎に周辺部分で合成誤差134が不連続になっており、特許文献3に示した高次曲線の誤差を補正する方法では合成誤差134を充分な精度で得ることができない。特に各実第1露光フィールド113の周辺部分では、中心部分と比べて非線形誤差成分134bが大きい値になっており、合成誤差134がほとんど補正できていないことがわかる。つまり、図8では非線形誤差が残っており、通常の全フィールドに対する線形誤差補正では、大きな非線形誤差が残ることになる。
【0105】
図9(a)は、図8(a)と同様な合成誤差135を示しており、図9(b)は、16分割された実第2露光フィールド126毎に最小二乗法による近似計算により求めたパラメータにより、計算により求められる線形補正成分136を示す。
上記した図8(b)では、パラメータを、4分割で露光した実第1露光フィールド113の形状の座標値から最小二乗法による近似計算により求めている。従って、線形誤差成分134aをパラメータにより補正しても、非線形誤差成分134bが大きな値として残っていた。しかし、プリント基板全体としては非線形に見えても、図9に示したように区画1〜4に分けて、各区画をさらに小さく4分割して最終的に16分割した実第2露光フィールド126毎に補正を行うことで、線形補正成分136として補正できる量が線形誤差成分134aを補正する場合よりも増加し、更に精度を向上させることができる。
【0106】
例えば、図9(b)では、16分割した実第2露光フィールド126毎にその形状の第2座標値から最小二乗法による近似計算によりパラメータを求めている。従って、線形補正成分136は、線形誤差成分135に近い値にすることができる。その結果、線形補正成分136で補正した後に残る非線形成分を少なくすることができる。なお、線形補正成分136による補正には、上記したx軸方向のオフセット値、y軸方向のオフセット値、x軸方向の倍率値、y軸方向の倍率値、x軸又はy軸を基準としたローテーション値θ、x軸とy軸の直交度ωの6パラメータを用いることができる。
【0107】
線形補正成分136を、線形誤差成分135に近い値にすることができる理由は、例えば、以下のように考えることができる。D/D方式のアライメントにより露光された実第1露光フィールド113の第1パターンは、その実第1露光フィールド113内に共通のx軸方向のオフセット値、y軸方向のオフセット値、及びローテーション値θを有している。一方、GA方式のアライメントにより露光されたサンプルの実第2露光フィールド126の第2座標値から最小二乗法による近似計算により求めた露光フィールド毎のパラメータにも、x軸方向のオフセット値、y軸方向のオフセット値、及びローテーション値θが含まれる。
【0108】
従って、その露光フィールド毎に求めたパラメータを用いて実第2露光フィールド126の露光座標を算出する場合、その実第2露光フィールド126内におけるx軸方向のオフセット値、y軸方向のオフセット値、及びローテーション値θを共通化することで、D/D方式により発生した誤差をx軸方向の倍率値とy軸方向の倍率値の差とすることができる。これにより、図9(b)のように線形誤差のみでほぼ全ての誤差を補正することができ、第2露光座標を算出する際の、最小二乗法による近似計算により求められたパラメータにより補正された結果残る非線形誤差成分を少なくすることができる。
【0109】
以上の本実施形態の処理を一般的な値で説明する。分割された実第2露光フィールド126をN個とする。まず、各実第2露光フィールド126毎の第2座標値から最小二乗法による近似計算により上記したパラメータ群をN個求めて記憶する。次に、第2露光に先立ち、当該実第2露光フィールド126の座標がプリント基板100上のどの座標範囲にあるかを確認し、その座標範囲の記憶されたパラメータ群を読み出して補正座標を算出し、その補正座標に基づいて第2露光を行う。
【0110】
上記の本実施形態は、例えば、図9(b)の線形補正成分136をIGA方式の3次以上の曲線で求めることで、連続した非線形誤差を補正するための非線形補正成分とすることができる。その場合、分割された露光フィールド毎に非線形誤差を算出する為のパラメータを最小二乗法による近似計算により追加して求めることになる。この第2露光座標の非線形誤差を補正できるようにすることにより、さらに非線形誤差成分を低減させることができる。
【0111】
本実施形態の第2露光座標の非線形誤差を低減させて精度を向上させるための他の方法として、分割数を多くする方法がある。以下に例えば4分割された上記の露光フィールドを更に4分割した場合について説明する。
【0112】
図10は、合成誤差137を特許文献1等に示した従来の方法により補正する場合を示した上面図であり、(a)が元の合成誤差137、(b)が補正可能な合成誤差137中の線形誤差成分137a、(c)が補正できない合成誤差137中の非線形誤差成分137bを示す。図10は、図8では16分割されていた各実第2露光フィールド126をさらに4分割して、64分割した場合を示す図である。また、図10では、図9に対する図8の場合と同ように、区画を分けておらず、さらに小さく64分割した実第2露光フィールド126毎に補正を行っていない。
【0113】
図10(a)の合成誤差137のうち、図10(b)に示した線形誤差成分137aについては、特許文献1に示した従来の補正方法により、第1露光フィールド毎に図8(a)の場合と同ように補正することができる。しかし、図10(c)に示した非線形誤差成分137bについては、非線形であるので、図8(b)の場合と同ように補正することができない。つまり、図8では非線形誤差が残っており、通常の全フィールドに対する線形誤差補正では、大きな非線形誤差が残ることになる。
【0114】
図11は、合成誤差138を本実施形態の方法により補正する場合を示した上面図であり、(a)は、図10(a)と同様な合成誤差138を示しており、図11(b)は、64分割された実第2露光フィールド126毎に最小二乗法による近似計算により求めたパラメータを用いて、実第2露光フィールド126毎に計算により求められる線形誤差成分138aを示し、図11(c)は補正できない合成誤差138中の非線形誤差成分138bを示す。
上記した図10(b)の場合は、パラメータを4分割で露光した実第1露光フィールド113の形状の座標値から最小二乗法による近似計算により求めている。従って、線形誤差成分138aをパラメータにより補正しても、非線形誤差成分138bが大きな値として残っていた。
【0115】
しかし、プリント基板全体としては非線形に見えても、図11に示したように区画を細分して、最終的に64分割した実第2露光フィールド126毎に補正を行うことで、線形誤差成分138aとして補正できる量が線形誤差成分137aよりも増加し、更に精度を向上させることができる。なお、本実施形態では、区画の細分として、まずプリント基板100上を区画1〜4に分け、その区画1〜4を各々さらに4分割した小区画1a〜1d、2a〜2d、3a〜3d、4a〜4dに分けている。そして、その各小区画1a〜1d、2a〜2d、3a〜3d、4a〜4dをさらに小さく4分割して64分割した実第2露光フィールド126としている。
【0116】
上記したように本実施形態では、パラメータを求めるために最小二乗法による近似計算を行うが、上記のように区画を分ける場合、最小二乗法による近似計算に用いる各座標値の座標系は以下のようになる。
図12(a)〜(e)は、各露光実フィールドの中心座標を示し、(a)が4分割されたうちの1/4番目の実第1露光フィールド113の中心座標、(b)が4分割されたうちの2/4番目の実第1露光フィールド113の中心座標、(c)が4分割されたうちの3/4番目の実第1露光フィールド113の中心座標、(d)が4分割されたうちの4/4番目の実第1露光フィールド113の中心座標、(e)が16分割された実第2露光フィールドの全体の中心座標を示す。
【0117】
図12(a)〜(d)に示したように、プリント基板100上の複数個所に分割してD/D方式により露光された各第1露光フィールド113の第1パターンの形状に関する情報、あるいは、第1露光フィールド113の第1パターンと共に形成された第2アライメントマーク123の第3座標値情報を取得する際に、その実第1露光フィールド113毎の中心座標を取得する。ここでの中心座標とは、第1パターンが形成されたフォトマスクにおける中心座標(X1,Y1)〜(X4,Y4)意味する。それと共に、図12(e)に示したように、第2パターンを露光する全ての第2露光フィールドの範囲の中心座標(X0,Y0)も取得する。
【0118】
そして、全第2パターンの中心座標(X0,Y0)を基準とした座標系を設定し、その中心座標(X0,Y0)から、前記各第1露光フィールド113毎の中心座標(X1,Y1)〜(X4,Y4)を減算する。これにより、各中心座標(X1,Y1)〜(X4,Y4)の座標系を、各中心座標を(0、0)とした座標系に変換することができる。最小二乗法による近似計算は、上記の座標変換を実施して行うことが望ましい。
【0119】
これは、例えば、実第2露光フィールド126を露光させるための全体中心座標(X0,Y0)において、D/D方式のx軸方向のオフセット値とy軸方向のオフセット値が除去されていない場合に、そのオフセット値を含む全体中心座標(X0,Y0)を用いて最小二乗法による近似計算を行うと、各オフセット値の誤差が倍率誤差やローテーション誤差、直交度誤差として検出される可能性がある為である。
【0120】
それに対して、各中心座標(X1,Y1)〜(X4,Y4)を(0、0)とした座標系に変換した場合、D/D方式にて発生するx軸方向のオフセット値の誤差とy軸方向のオフセット値の誤差、及び、ローテーション誤差θを、線形誤差の計測時に、x軸方向のオフセット値の誤差とy軸方向のオフセット値の誤差、及び、ローテーション誤差θとして管理することができる。これにより、正確な倍率誤差を算出する事ができる。
【0121】
また、倍率誤差については、本実施形態の第2露光で用いるGA方式の投影露光では、投影レンズの倍率制御機構を用いて補正することができるので、座標系を変換して得られた正確な倍率誤差をそのまま投影レンズの倍率制御機構などで補正することで、倍率誤差を正確に補正することができる。倍率誤差を正確に補正できると、露光精度を向上させることができる。
【0122】
ここで比較用として、第2露光の露光精度を向上させるための従来の方法について説明する。そのような方法としては、半導体製造時のように第2アライメントマーク123の第3座標値誤差が比較的少ない場合には、D/D方式又はベースライン計測法が用いられていた。
【0123】
図13(a)〜(c)は、D/D方式により計測した第2アライメントマーク123の第3座標値に基づいて第2露光を実施する場合を示し、図14(a)〜(c)は、ベースライン計測法により計測した第2アライメントマーク123の第3座標値に基づいて第2露光を実施する場合を示す。
【0124】
従来のD/D方式の場合は図13(a)に示されたように、実第1露光フィールド113内から第2露光される設計上第2露光フィールド125が決定されると、その設計上第2露光フィールド125の範囲の4角の座標値に各々アライメント用の4個の顕微鏡(以下、アライメント顕微鏡と記載)131が挿入される。次に、アライメント顕微鏡131は、露光される設計上第2露光フィールド125の4角に設けられている第2アライメントマーク123の第3座標値を計測し、その座標値情報を露光装置に記憶する。
【0125】
次に図13(b)に示されたように、計測が終了したアライメント顕微鏡131が、露光位置141の範囲外に退避する。それと共に4角の第2アライメントマーク123の第3座標値情報に基づいて露光位置141のアライメント座標値と座標値補正量が計算され、露光位置141が補正される。
その次に図13(c)に示されたように、補正された露光位置141で、第2露光が実施され、次の設計上第2露光フィールド125まで露光装置が移動する。
【0126】
上記した従来のD/D方式の計測では、各設計上第2露光フィールド125毎のアライメント顕微鏡131の出し入れ(挿入/退避)するので、アライメント顕微鏡131の移動時間が必要である。このアライメント顕微鏡131の移動時間は、設計上第2露光フィールド125毎に必要であり、比較的長い時間を必要とするので、製造時間が余分に必要になり、露光工程のスループットを低下させる。
【0127】
また、例えば図13の実施形態の場合には、設計上第2露光フィールド125毎にアライメント顕微鏡131の出し入れが16回必要である。換言すれば、露光装置と露光位置141の移動と座標値補正16回行われ、その間の各設計上第2露光フィールド125で顕微鏡131の出し入れが16回実施されている。しかし、顕微鏡131の出し入れ回数が多いと、顕微鏡131の座標値ドリフトが発生し易く、更に顕微鏡131は、投影光学系とプリント基板100の間に挿入されるので、塵埃をプリント基板上に落としやすいという問題がある。
【0128】
従来のベースライン計測法の場合は図14(a)に示されたように、予め露光位置141と顕微鏡131の距離D1が計測され、この計測をベースライン計測とし、この距離D1をベースライン距離とする。実第1露光フィールド113内から第2露光される設計上第2露光フィールド125が決定されると、プリント基板100を載置したステージを移動させることで、その設計上第2露光フィールド125の範囲の4角の下側2個の第2アライメントマーク123の第3座標値を、各々2個のアライメント顕微鏡131の座標値まで移動させる。次に、アライメント顕微鏡131は、露光される設計上第2露光フィールド125の下側2角に設けられている第2アライメントマーク123の第3座標値を計測し、その座標値情報を露光装置に記憶する。
【0129】
次に図14(b)に示されたように、下側2個の第2アライメントマーク123の第3座標値の計測が終了したアライメント顕微鏡131を、上側2個の第2アライメントマーク123の第3座標値に移動させて計測する。それと共に4角の第2アライメントマーク123の第3座標値情報に基づいて露光位置141のアライメント座標値と座標値補正量が計算され、露光位置141が補正される。
その次に図14(c)に示されたように、露光位置141をベースライン距離D1だけ下側のアライメント座標値に移動させる。さらに、計算されたアライメント座標値と座標値補正量により露光位置141を補正し、第2露光を実施し、次の露光位置141まで露光装置を移動させる。
【0130】
上記したベースライン計測法では、各設計上第2露光フィールド125毎にベースラインの距離D1だけ毎回ステージを移動させるので、ステージの移動時間が必要である。このベースラインの距離D1のステージの移動時間は、設計上第2露光フィールド125毎に必要であるので、製造時間が余分に必要になり、露光工程のスループットを低下させる。
【0131】
また、例えば図14の場合には、ベースラインの距離D1のステージの移動に加えて、設計上第2露光フィールド125毎にアライメント顕微鏡131を2本用いて計測しているので、1箇所の設計上第2露光フィールド125毎にステージを移動させて下側と上側で2回の計測が必要である。換言すれば、露光装置と露光位置141の移動と座標値補正16回行われ、その間の各設計上第2露光フィールド125で顕微鏡131による下側のアライメントマーク123の計測、顕微鏡131の上側アライメントマーク123への移動と計測、ベースラインの距離D1のステージの移動が16回実施されている。つまり、ベースライン距離D1のステージ移動だけでなく、2本のアライメント顕微鏡131を設計上第2露光フィールド125の下側第2アライメントマーク123の第3座標値から上側第2アライメントマーク123の第3座標値まで移動させるので、製造時間がさらに余分に必要になり、露光工程のスループットを一層低下させている。
【0132】
本実施形態では、上記した従来のアライメントマーク123の計測方法に対して、計測時間を短縮させている。図15(a)〜(f)は、D/D方式により計測した第2アライメントマーク123の第3座標値に基づいて第2露光を実施する場合を示し、図16(a)〜(f)は、ベースライン計測法により計測した第2アライメントマーク123の第3座標値に基づいて第2露光を実施する場合を示す。
【0133】
本実施形態のD/D方式の場合は図15(a)に示されたように、実第1露光フィールド113内から第2露光される設計上第2露光フィールド125が決定されると、その設計上第2露光フィールド125の範囲の4角の座標値に各々アライメント用の4個の顕微鏡(以下、アライメント顕微鏡と記載)131が挿入される。次に、アライメント顕微鏡131は、露光される設計上第2露光フィールド125の4角に設けられている第2アライメントマーク123の第3座標値を計測し、その座標値情報を露光装置に記憶する。それと共に4角の第2アライメントマーク123の第3座標値情報に基づいて露光位置141のアライメント座標値と座標値補正量が計算され、露光装置に記憶される。
【0134】
次に図15(b)に示されたように、最初のフィールドの計測が終了したアライメント顕微鏡131は、露光位置141の範囲外に退避せず、次の移動距離が最小であり隣接する設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の第3座標値まで移動し、第2アライメントマーク123の第3座標値の計測と記憶を実施する。さらに図15(c)に示されたように、このアライメント顕微鏡131による各設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の計測と記憶は、全設計上第2露光フィールド125に対して、第2露光処理前に移動距離が最小である隣接フィールドで連続するように繰り返され、最後の設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の計測と記憶が実施される。
【0135】
次に図15(d)に示されたように、最後の設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の計測が終了したアライメント顕微鏡131は、露光位置141の範囲外に退避され、それと共に4角の第2アライメントマーク123の第3座標値情報に基づいて露光位置141のアライメント座標値と座標値補正量が計算され、露光位置141が補正され、第2露光が実施される。
【0136】
次に図15(e)に示されたように、1個戻った座標値の設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の第3座標値まで移動し、その4角の第2アライメントマーク123の第3座標値情報の記憶を読み出して、当該座標値情報に基づいて露光位置141のアライメント座標値と座標値補正量が計算され、露光位置141が補正され、第2露光が実施される。
【0137】
さらに図15(f)に示されたように、全設計上第2露光フィールド125に対して、1個戻った座標値の設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の第3座標値までの移動と、読み出した第2アライメントマーク123の第3座標値情報に基づく露光位置141のアライメント座標値と座標値補正量の計算と補正、第2露光の実施が、第2露光処理前に移動距離が最小である隣接フィールドで連続するように繰り返され、最初まで戻った設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の計測と記憶が実施される。但し、移動距離が最小である隣接フィールドで連続するように繰り返す方向を、アライメントマーク123を計測する場合と、第2露光を実施する場合とで異ならせた場合、最初の設計上第2露光フィールド125とは異なるフィールドで全ての処理が終了する場合がある。
【0138】
図15(a)〜(f)に示したように本実施形態のD/D方式の場合は、アライメント顕微鏡131による各設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の計測を、各設計上第2露光フィールド125毎の第2露光と交互に実施するのではなく、全設計上第2露光フィールド125について、第2露光前に移動距離が最小である隣接フィールドで連続して実施する。従って、本実施形態では、従来は各設計上第2露光フィールド125毎に実施していたアライメント顕微鏡131の出し入れを、最初のフィールドでの挿入と、最後のフィールドでの退避の1回のみに減少させることができる。従って、従来の方法と比較して、製造時間を減少させることができ、露光工程のスループットを向上させ、顕微鏡131の座標値ドリフトを抑制し、塵埃をプリント基板上に落としにくくできる。
【0139】
本実施形態のベースライン計測法の場合は図16(a)に示されたように、実第1露光フィールド113内から第2露光される設計上第2露光フィールド125が決定されると、その設計上第2露光フィールド125の範囲の4角の上側2角の座標値に各々アライメント用の2個のアライメント顕微鏡131が配置されるようにステージが移動される。次に、アライメント顕微鏡131は、露光される設計上第2露光フィールド125の上側2角に設けられている第2アライメントマーク123の第3座標値を計測し、その座標値情報を露光装置に記憶する。それと共に上側2角の第2アライメントマーク123の第3座標値情報に基づいて露光位置141のアライメント座標値と座標値補正量が計算され、露光装置に記憶される。
【0140】
次に図16(b)に示されたように、最初のフィールドの上側2角の計測が終了したアライメント顕微鏡131は、そのフィールドの下側2角を計測する方向には移動せず、次の移動距離が最小であり隣接する設計上第2露光フィールド125の上側2角の第2アライメントマーク123の第3座標値まで移動し、第2アライメントマーク123の第3座標値の計測と記憶を実施する。さらに図16(c)に示されたように、このアライメント顕微鏡131による各設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の計測と記憶は、全設計上第2露光フィールド125に対して、第2露光処理前に移動距離が最小である隣接フィールドの上下が同じ側で連続するように繰り返され、最後の設計上第2露光フィールド125の下側2角のアライメントマーク123の計測と記憶が実施される。
【0141】
次に図16(d)に示されたように、アライメント顕微鏡131による最後の設計上第2露光フィールド125の下側2角のアライメントマーク123計測が終了すると、ベースラインの距離D1だけステージを移動させ、それと共に4角の第2アライメントマーク123の第3座標値情報に基づいて露光位置141のアライメント座標値と座標値補正量が計算され、露光位置141が補正され、第2露光が実施される。
【0142】
次に図16(e)に示されたように、1個戻った座標値の設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の第3座標値まで移動し、その4角の第2アライメントマーク123の第3座標値情報の記憶を読み出して、当該座標値情報に基づいて露光位置141のアライメント座標値と座標値補正量が計算され、露光位置141が補正され、第2露光が実施される。
【0143】
さらに図16(f)に示されたように、全設計上第2露光フィールド125に対して、1個戻った座標値の設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の第3座標値までの移動と、読み出した第2アライメントマーク123の第3座標値情報に基づく露光位置141のアライメント座標値と座標値補正量の計算と補正、第2露光の実施が、第2露光処理前に移動距離が最小である隣接フィールドで連続するように繰り返され、最初まで戻った設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の計測と記憶が実施される。但し、移動距離が最小である隣接フィールドで連続するように繰り返す方向を、アライメントマーク123を計測する場合と、第2露光を実施する場合とで異ならせた場合、最初の設計上第2露光フィールド125とは異なるフィールドで全ての処理が終了する場合がある。
【0144】
図16(a)〜(f)に示したように本実施形態のベースライン計測法の場合は、アライメント顕微鏡131による各設計上第2露光フィールド125の第2アライメントマーク123の計測を、各設計上第2露光フィールド125毎の第2露光と交互に実施するのではなく、全設計上第2露光フィールド125について、第2露光前に移動距離が最小である隣接フィールドで連続して実施する。従って、本実施形態では、従来は各設計上第2露光フィールド125毎に実施していたベースラインの距離D1だけのステージの移動を、最後のフィールドでの1回のみに減少させることができる。また、アライメント顕微鏡131が2個の場合には、従来は設計上第2露光フィールド125の範囲の4角の上側2角の座標値から下側2角の座標値までの縦移動が各設計上第2露光フィールド125毎に必要であったが、本実施形態では、計測するアライメントマーク123の横列が変わらない限りは縦移動する必要がない。又、本実施形態では、アライメントマーク123の計測については、各設計上第2露光フィールド125の配列順に制約されず、隣接するアライメントマーク123の中から最も移動距離の少ないものを選んで計測することや、トータルの移動距離が最短になるように全アライメントマーク123の計測ルートを設定することができる。従って、従来の方法と比較して、製造時間を減少させることができ、露光工程のスループットを向上させることができる。
【0145】
図17は、本実施形態の動作フローチャートである。
ステップ(S21)では、プリント基板100上に、実第2アライメントマーク122を形成する。
ステップ(S22)では、プリント基板100の範囲の座標値情報、設計上第1露光フィールド111の範囲の第1座標値情報、設計上第2露光フィールド125の範囲の第2座標値情報、プリント基板100に対する設計上第1露光フィールド111と設計上第2露光フィールド125の各分割比、及び、分割数、設計上第1露光フィールド111に対する設計上第2露光フィールド125の分割比、及び、分割数等を記憶する。
ステップ(S23)では、第1露光装置に第1パターンのフォトマスクとプリント基板100をセットする。
ステップ(S24)では、設計上第1露光フィールド111の範囲の第1座標値情報を読出す。
ステップ(S25)では、プリント基板100上の実第2アライメントマーク122を検出する。
ステップ(S26)では、実第2アライメントマークの検出結果と設計上第1露光フィールド111の第1座標値情報から、実第1露光フィールド113の範囲を検出する。
ステップ(S27)では、実第1露光フィールド113に第1パターンをD/D方式で露光する。
ステップ(S28)では、第2露光装置に第2パターンのフォトマスクとプリント基板100をセットする。
ステップ(S29)では、設計上第2露光フィールド125の範囲の第2座標値情報を読出す。
ステップ(S30)では、プリント基板100上の第1パターン中から実第2アライメントマーク122を検出する。
ステップ(S31)では、実第2アライメントマーク122の検出結果と設計上第2露光フィールド125の第2座標値情報から、実第2露光フィールド126の範囲を計算する。
ステップ(S32)では、実第2露光フィールド126に第2パターンをGA方式で露光する。
【0146】
図18は、図17のフローチャートにおけるステップS31の第1実施形態の詳細な動作フローチャートである。
ステップ(S41)では、設計上第2露光フィールド125の第2座標値情報とサンプル露光して選択した実第2露光フィールド126の第2座標値とから実第2露光フィールド126毎に第2座標値の誤差を計算する。
ステップ(S42)では、ステップS41で計算された誤差から実第2露光フィールド126毎に誤差補正用のパラメータ値を計算する。
ステップ(S43)では、ステップS42で計算されたパラメータ値を記憶する。
ステップ(S44)では、ステップS43で計算されたパラメータ値を用いて、実第2露光フィールド126毎の範囲の第3座標値を計算する。
【0147】
<具体的方法>
次に、インテリジェントアライメントの具体的な実現方法について説明する。上述においては、微分値を求めて誤差の2次成分、3次成分を求めていたが、途中でマークが検出できないエラーが発生した場合、または露光位置とマークの座標値が全く異なる場合等においては、マークの計測結果から露光位置を補間により求める必要がある。その具体的な説明を、下記に行う。
プリント基板の大きさは600mm×500mm程度であり、投影レンズを用いた場合の露光フィールドはレンズ径が200mm〜300mm程度なので、分割数が3×2〜4×4程度のステップアンドリピート露光となる。ここで、従来のアライメント光学系としては、図19に示す様な2つの方法が採用されている。
【0148】
図19(a)は露光フィールドに対しアライメントセンサーが2つある場合であり、露光フィールドの4隅にある黒丸印のマークを2つのアライメントセンサーで計測する為に、まず上側のマークを計測した後、ステージを移動させて下のマークを計測し、露光フィールドからアライメント光学系を退避させた後、計測結果に従い露光位置を補正して露光を行う。
一方、図19(b)は露光フィールドに対しアライメントセンサーが4つある場合であり、一度に4隅のマーク計測を行い、露光フィールドからアライメント光学系を退避させた後、計測結果に従い露光位置を補正して露光を行う。いずれの場合も、1ショット毎の露光に先立ち、アライメントセンサーの移動を行う必要がある。
【0149】
これまでの説明では、これらのアライメントセンサーの挿入、退避をアライメントの最初と最後のみとする方法であり、これらの従来型アライメントセンサーを利用したグローバルアライメント、インテリジェントアライメントであった。ここで、マークの座標値としては、図20(a)が4点グローバルアライメント、図20(b)がインテリジェントグローバルアライメントの配置である。
一方、クライアントからの要求が高いのが、図20(c)や図20(d)に示す配列であり、露光フィールド内またはそのフィールド間の狭いスペースではなく、外側や中心のやや広いスペースにマークを入れる事である。この場合、露光フィールド内にアライメントセンサーを挿入する必要が無く、図21(a)や図21(b)の様に、露光フィールドの外側にアライメントセンサーを設置できる。アライメントセンサーはマークの座標値に応じてその座標値まで駆動する必要はあるが、一度設定してしまえば、そのロット間は全く動かす必要は無く、早い駆動系も必要が無いので、安定性の高い構造とする事ができる。即ち、アライメントセンサー1つで、1個の信頼性の高いデータを取る事が可能となる(なお、センサーを常時駆動させる場合、経時変化等が無視できず、複数のセンサーの結果を平均する場合が多い)。
【0150】
図21(a)では、2本のアライメントセンサーを用いた場合であり、8箇所の移動で16点のデータ取りを行っている。また図21(b)では、3本のアライメントセンサーを用いた場合であり、5箇所の移動で15点のデータ取りを行っている。ステージによる移動ステップをそれぞれ図21(c)、図21(d)において矢印で示しているが、移動距離が少なく、短い処理時間でアライメント動作が終了する。
この様にして計測されたデータは、プリント基板周辺のマークの設計上の座標からの座標値ズレ誤差値である。プリント基板の歪は、ガラス材質を含む等の材質特性が原因であり、連続的な歪となる為、マークの計測値を線で結び、間の値を予測する事ができる。補間は、その連続性から曲線補間する事が望ましい。上述の様に3次式までを考える場合、4つの計測結果があればよい。そしてそれを通る曲線Y=AX+BX+CX+Dを決める事が可能となる。
【0151】
また、図21(a)、図21(b)の様な座標値にマークを設置すれば、露光位置に依存しないので、より多くのマークを設置し、計測する事も可能である。マーク点数が多ければ、近似計算により、マーク自体の描画誤差を平均化効果により軽減する事が可能となる。曲線近似を行う方法としては色々あるが、本実施形態では、平均化効果の高い最小二乗近似法で説明を行う。
曲線の方程式F(x)に対し、計測点をyとすると、
T= Σ (y − F(x))
となる。このTが最小となる関数の係数(A,B,C,D)を求めると、
F(x)= A*x + B*x + C*x +D
が求まる。これが最小二乗近似による3次方程式となる。Tを最小にする条件は連立方程式となる。Tは係数(A,B,C,D)の関数と見る事ができるので、
式T= Σ( Y − A*x−B*x−C*x−D )のTを最小にする条件を考える。
【0152】
Tを最小にする条件は、Tの微分=0の方程式となる。
δT/δD =0
δT/δC =0
δT/δB =0
δT/δA =0
これを解いて、整理すると、4元連立方程式(下式)となる。
【数1】


この行列式を解き、係数A、B、C、Dを算出する。そして数式F(x)= A*x + B*x + C*x +Dを記憶しておけば、マークを計測した座標の計測値だけでなく、曲線補間によりその間の補正値も予測する事が可能となる。
【0153】
図22では、この曲線近似計算を行う場所の説明を行う。図22(a)のマーク配置の場合、プリント基板の上側の6つのマークの設計上の座標値Pu1(x,y)〜Pu6(x,y)と、6つのマーク計測値Qu1(x,y)〜Qu6(x,y)(黒丸印)とが得られる。但し、これは2本のアライメントセンサーを用いているので、もしアライメントセンサーの安定性に不安がある場合は、2つのデータの平均を取り、3つのマークの設計上の座標値Pu12(x,y)〜Pu56(x,y)と、3つのマーク計測値Qu12(x,y)〜Qu56(X,Y)(十字印)としても良い。この黒丸印と十字印はこれ以降の説明でも同じ方法で算出したものであり、計測点数が異なるだけなので、以降は黒丸印を基本として説明していく。
この方法と同様にして、プリント基板の下側でも6つのマークの設計上の座標値Pd1(x,y)〜Pd6(x,y)と6つのマーク計測値Qd1(x,y)〜Qd6(x,y)(黒丸印)が得られる。一方、プリント基板の左側からは3つのマークの設計上の座標値Pl1(x,y)〜Pl3(x,y)と3つのマーク計測値Ql1(x,y)〜Ql3(x,y)(黒丸印)が得られ、左側からは3つのマークの設計上の座標値Pr1(x,y)〜Pr6(x,y)と3つのマーク計測値Qr1(x,y)〜Qr3(x,y)(黒丸印)が得られる。
【0154】
この様にして得られた(Pu,Qu)、(Pd,Qd)、(Pl,Ql)、(Pr,Qr)をそれぞれグループとし、グループ毎に上記方法にて方程式の係数を算出する。
上の行列式ではPu、Pdに関しては、y方向が一定値となるので、行列式の計算ではPu1〜Pu6=x1〜x6、Pd1〜Pd6=x1〜x6となる。Qu,Qdに関しては、X方向及びY方向共に変数となるので、それぞれの方向に対応した2つの近似曲線(Qux(x),Quy(x)),(Qdx(x),Qdy(x))となる。一方、Pl、Prに関しては、x方向が一定値となるので、行列式の計算ではPl1〜Pl6=y1〜y6、Pr1〜Pr6=y1〜y6となる。Qu,Qdに関しては、X方向及びY方向共に変数となるので、それぞれの方向に対応した2つの近似曲線(Qlx(y),Qly(y)),(Qrx(y),Qry(y))となる。
この様に上記行列式を解く事により、図22(c)及び図22(d)に示す様な歪曲線データが得られる。この曲線データは方程式なので、Pu、Pdに関しては、その座標軸上であれば、どこでも補間値を算出する事が可能となる。また、Pl、Prに関しても、その座標軸上であれば、どこでも補間値を算出する事が可能となる。
この様に、上記方程式は1つの列または1つの行固定の軸上の値を求める事ができる。しかし、露光座標は平面上の座標であり、露光座標を決定する為には次のステップが必要となる。
【0155】
まず、向かい合う曲線グループQuとQd、更に、それと直交した向かい合う曲線グループQlとQrに対し、露光位置座標(Ex、Ey)を図23(a)、図23(b)に示す様にそれぞれ代入する。
上側グループから得られた値(Qux(Ex)、Quy(Ex))
下側グループから得られた値(Qdx(Ex)、Qdy(Ex))
左側グループから得られた値(Qlx(Ey)、Qly(Ey))
右側グループから得られた値(Qrx(Ey)、Qry(Ey))
これらの値は、もし露光座標が各曲線上にあった場合に、露光座標値から露光位置をどの程度補正するかを示している値である。もし露光位置が上に近ければ、上側グループのデータに近い結果となり、露光位置が下に近ければ、下側グループのデータに近い結果にすればよい。即ち、上グループに近ければ、上グループのデータに重み付けを行う必要があり、下側グループに近ければ下側グループのデータに重み付けを行う必要がある。
【0156】
上述の様に、Pu、Pdに関しては、y方向が一定値なので、上側グループのY座標をPuy、下側グループのY座標をPdyとすると、
(Puy−Ey)/(Puy−Pdy):(Ey−Pdy)/(Puy−Pdy)が露光座標の内分比となる。内分点が近い程、重み付けは大きくなるので、露光座標値での補正値は次の計算式で算出できる。
補正値x1=(Qux(Ex)*(Ey−Pdy)+Qdx(Ex)*(Puy−Ey))/(Puy−Pdy)
補正値y1=(Quy(Ex)*(Ey−Pdy)+Qdy(Ex)*(Puy−Ey))/(Puy−Pdy)
【0157】
この方法では露光座標値(Ex、Ey)の補正値のみ求めているが、勿論、露光フィールドの大きさは予め分かっているので、露光フィールドの4隅の座標値も判っている。そこで、図23(c)、図23(d)に示す様に、この4つの座標を上記方法と同じ様に方程式に代入すれば、露光フィールド4隅での補正値が分かる。
露光フィールドは一括露光の為、高次の補正はできないが、投影光学系やステージを操作する事(レンズ駆動、平面板曲げ、マスクまたは基板回転等)でオフセットOx、Oyの補正だけでなく、ローテーションθ、倍率Rx、倍率Ryの補正も可能となる。オフセットOx、Oyの補正のみならば、露光座標値の1箇所を求めればよい。また、ローテーションθと平均倍率Rxyの補正ならば対角線上の2端の座標値の2箇所を求めればよい。更に、上記全てのパラメータの補正ならば3端の座標値の3箇所を求めればよく、平均化効果を見込む場合は4隅全ての座標値による補正値を求めればよい。上述のグローバルアライメントに適用した最小二乗近似計算により、ショット毎の線形誤差を算出する事が可能となる。
【0158】
ところで、これまでの方法では上側グループのデータと下側グループのデータしか使用していないが、図23(a)、図23(b)に示す様に、左側グループと右側グループの対を利用しても同様の補正値を算出する事ができる。
上述の様に、Pl、Prに関しては、x方向が一定値なので、右側グループのX座標をPlx、右側グループのX座標をPrxとすると、
(Plx−Ex)/(Plx−Prx):(Ex−Prx)/(Plx−Prx)が露光座標の内分比となる。
よって、露光座標値での補正値は次の計算式で算出できる。
補正値x1=(Qlx(Ey)*(Ex−Prx)+Qrx(Ey)*(Plx−Ex))/(Plx−Prx)
補正値y1=(Qly(Ey)*(Ex−Prx)+Qry(Ey)*(Plx−Ex))/(Plx−Prx)
【0159】
しかしながら、上下1対のデータのみ使用した場合、図24(a)の様なX方向の2次以上の誤差を補正できない。一方、左右1対のデータのみ使用した場合、図24(b)の様なY方向の2次以上の誤差を補正できない。
そこで本実施形態では、まず上下1対のデータを使用して補正値を決定し、次に左右1対のデータから上下1対のデータと共通項であるオフセットと1次成分の補正値を削除し、2次以上の補正値のみを加える方法を取っている。この方法で図24(a)、図24(b)いずれの形状も補正する事が可能となる。
但し、上下と左右データのアライメントマークが異なる場合や、計測点数が多い場合はオフセットと1次成分が共通でない可能性もある。この場合、両方のデータからオフセットと1次成分を取り出し、その平均値を利用してもよい。
この様な方法を取れば、外周に形成されたマークの計測結果よりその内部にある露光位置全ての補正値を算出する事が可能となる。
【0160】
ところで、上記において3次曲線の近似式を示したが、3次曲線の近似には、4点のデータが必要となる。上下データは6点あったが、左右データは3点しかない。そこで、本実施形態では、4点以上のデータがある場合は3次曲線近似計算を行うが、3点の場合は2次曲線近似計算を行い、2点の場合は1次方程式(1次式)を計算できる様になっている。即ち、もし6点のデータ検出の際、数点のマーク検出エラーがあった場合でも、それを取り除いたデータ数に最適な計算が行われる工夫がなされている。
全ショットに対応したマークを検出するインテリジェントグローバルアライメントでは、3次近似誤差とランダム誤差の差分より重み付けの処理を行った。外周にマークを配置した高速型のインテリジェントグローバルにおいても、
T= Σ( Y − A*x−B*x−C*x−D)
で求まるTの値が所定以上あれば、マークの描画誤差である可能性が高いと考えられる。
【0161】
この場合、曲線近似補正する事で精度を悪化させる可能性もある。また上述の上下と左右データのアライメントマークが同じにもかかわらず、オフセットと1次成分が共通でない場合も同様の事が言える。その様な場合は、計測点数に関わらず、2次近似曲線による補正または直線近似による補正方法に、Tの値やオフセットと1次成分の不一致量に応じて自動変更してもよい。また、予めプリント基板の歪傾向が2次曲線までで補正可能、または直線近似までで補正可能と分かっている場合は、パラメータ入力で近似方法を決定できる様にしておいてもよい。
【0162】
反対に、マーク描画については、ドリル加工やレーザ描画の場合精度が悪く、平均化効果を上げた方が精度は良くなるが、マーク形成に露光を用いる場合では、マーク描画誤差は殆ど発生しない。更に、プリント基板の歪も小さい場合は、T= Σ( Y − A*x−B*x−C*x−D)の値は非常に小さくなる。特に、3次成分が無い場合、係数Aは0に近づき、2次成分も無い場合は係数Bも0に近づく。もしC及びDで決定される線形誤差だけならば、プリント基板の4点のデータだけ取れば良い。マークの計測点数が少なく、アライメントの高速化が期待できる。そこで本実施形態では、A、Bの値に応じて、同一ロットの2枚目からのアライメントマークの計測点数を減じる設定も行っている。
以上のように、グループ内で算出する近似方法により補正できるプリント基板の誤差が決まる。上述の様に、上下のグループ説明を行えば、左右のグループも同様の説明ができるので、上下のグループについて要約すると、下記のようになる。
【0163】
<直線近似平均値>
1対のグループでそれぞれ直線近似により1次式Qu=Au*(x)+Bu、Qd=Ad*(x)+Bdを算出。それぞれの1次成分の平均値に修正
Qu=(Au+Ad)/2*(x)+Bu、Qd=(Au+Ad)/2*(x)+Bd
: オフセットX,オフセットY,回転,直交度,倍率X,倍率Y(グローバルアライメントと同じ成分)
【0164】
<直線近似>
1対のグループでそれぞれ直線近似により1次式Qu=Au*(x)+Bu、Qd=Ad*(x)+Bdを算出。
:オフセットX,オフセットY,回転,直交度,倍率X,倍率Y,台形X,台形Y
【0165】
<2次曲線近似>
1対のグループでそれぞれ2次曲線近似により2次式Qu=Au*(x)+Bu*(x)+Cu、Qd=Ad*(x)+Bd*(x)+Cdを算出。
:オフセットX,オフセットY,回転,直交度,倍率X,倍率Y,台形X,台形Y,U字型X,U字型Y,樽型X,樽型Y,糸巻き型X,糸巻き型Y
【0166】
<3次曲線近似>
1対のグループでそれぞれ2次曲線近似により2次式Qu=Au*(x)+Bu*(x)+Cu*(x)+Du、Qd=Ad*(x)+Bd*(x)+Cd*(x)+Ddを算出。
:オフセットX,オフセットY,回転,直交度,倍率X,倍率Y,台形X,台形Y,U字型X,U字型Y,樽型X,樽型Y,糸巻き型X,糸巻き型Y,3次曲線誤差X,3次曲線誤差Y,3次倍率誤差X,3次倍率誤差Y
【0167】
上記においては、グループ内の数式は最小二乗法による近似直線、2次の近似曲線、3次の近似曲線の方程式を求める方法を取ったが、この方法に限らず、スプライン関数や移動平均などで求めてもよい。更には各データを直線で結んだ折れ線グラフの様な空間の場合分けによる複数の式で扱い、直線や曲線による補間を行っても良い。更には、所定の数式を求め、予めマップにより露光位置データとして記憶しておいてもよい。ここでは、それらの類似する方法を全てまとめて、直線または近似により求めた曲線情報という言葉で説明している。
【0168】
また、図20(d)に示す様に、中間部分にも辺に平行なマークのグループが存在する場合、上側のマークのグループと中間のマークのグループで直線または近似により求めた曲線情報を求め、内分情報を用いて露光位置を決定する。更に、中間のマークのグループと下側のマークのグループで直線または近似により求めた曲線情報を求め、内分情報を用いて露光位置を決定する事も可能である。これは、基板を2分割して本実施形態を2回利用する事事に相当し、当然本発明の権利内に入るものである。
【0169】
このように本実施形態の投影露光方法によれば、第1露光がD/D方式で、第2露光がGA方式の場合に、第1露光の誤差とプリント基板の歪みを補償して第2パターンを精度良くアライメントして露光させることができる。
【0170】
また、本実施形態のように、第1露光フィールドを分割した範囲の第2露光フィールドでアライメントを行うことで、第1露光時のD/D方式により発生するランダム誤差(露光フィールド毎のx軸方向オフセット、y軸方向オフセット、ローテーションθ)を取り除き露光させることができる。従って、GA方式により得られる平均化効果から、更に精度を向上させる事ができる。
【0171】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態では、第1実施形態のようにパラメータを記憶するのではなく、実第2露光フィールド126毎にパラメータを計算し、そのパラメータに基づき実第2露光フィールド126毎の第3座標値を計算して記憶する。その他の動作及び構成は、第1実施形態と同様である。
図25は、図17のフローチャートにおけるステップS31の第2実施形態の詳細な動作フローチャートである。
ステップ(S51)では、設計上第2露光フィールド125の第2座標値情報とサンプル露光して選択した実第2露光フィールド126の第2座標値とから実第2露光フィールド126毎に第2座標値の誤差を計算する。
ステップ(S52)では、ステップS51で計算された誤差から実第2露光フィールド126毎に誤差補正用のパラメータ値を計算する。
ステップ(S53)では、ステップS52で計算されたパラメータ値と第1座標値情報から実第2露光フィールド126毎に補正した第2座標値を計算する。
ステップ(S54)では、ステップS53で計算された補正した実第2露光フィールド126毎の第2座標値を記憶する。
ステップ(S55)では、ステップS54で記憶された補正した第2座標値を用いて、実第2露光フィールド126毎の範囲の第3座標値を計算する。
【0172】
従って、本実施形態の投影露光方法によっても、第1露光がD/D方式で、第2露光がGA方式の場合に、第1露光の誤差とプリント基板の歪みを補償して第2パターンを精度良くアライメントにて露光させることができる。
【符号の説明】
【0173】
1 投影露光装置、
10 照明光学系、
15 フォトマスク側顕微鏡、
20 フォトマスク、
25 マスクマーク、
30 XY独立倍率補正部、
40 可動板、
50 投影光学系、
55 倍率補正機構、
60 ステージ、
65 基板側顕微鏡、
70 マーク計測部、
75 ステージアライメントマーク、
80 制御部、
85 可動板制御部、
90 投影倍率制御部、
95 ステージ制御部、
100 プリント基板、
105 アライメントマーク、
111 設計上第1露光フィールド、
112 フィールド、
113 実第1露光フィールド、
114 フィールド、
121 設計上第2アライメントマーク、
122 実第2アライメントマーク、
125 設計上第2露光フィールド、
126 実第2露光フィールド、
131 マーク位置誤差、
132 第1露光位置誤差、
133 第1露光歪曲化誤差、
134 合成誤差
134a 線形誤差成分、
134b 非線形誤差成分、
135 合成誤差、
136 線形補正成分、
137 合成誤差、
137a 線形誤差成分、
137b 非線形誤差成分、
138 合成誤差、
138a 線形誤差成分、
138b 非線形誤差成分、
141 露光位置、
151 露光用マーク選択円。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上をフィールド分割した複数の第1露光フィールド毎に当該各第1露光フィールドを位置決めするために設けられた第1アライメントマークの計測を行い、該計測の結果に基づいて前記各第1露光フィールドに複数の第1パターンを第1露光した第1プリント基板の該第1パターン上に、次の配線層用の金属層を有する第2プリント基板を貼り合わせ、前記第1アライメントマークに基づき前記第2プリント基板上に可視光計測可能な第2アライメントマークを設け、該第2アライメントマークの座標値を計測することで、前記第1パターンを複数に分割する第2露光フィールド毎に第2パターンを第2露光する投影露光装置におけるアライメント方法であって、
前記第1プリント基板上の前記各第1露光フィールドの範囲を示す設計上の第1座標値情報と、前記第2プリント基板上の前記各第2露光フィールドの範囲を示す設計上の第2座標値情報と、前記第1露光フィールドに対する前記第2露光フィールドの分割比情報とから少なくとも2つを記憶するステップと、
前記第2プリント基板上からサンプルとして選択された前記第2アライメントマークの第3座標値を計測するステップと、
前記記憶された各情報と、前記第2アライメントマークの第3座標値を計測した結果を用いて、前記第1露光フィールド毎にグローバル・アライメント方式により、前記各第2露光フィールドの範囲を示す実際の第2座標値を計算し、当該計算の結果を用いて各第2露光フィールド毎のアライメントを行い第2パターンを第2露光するステップと、
を有することを特徴とする投影露光装置のアライメント方法。
【請求項2】
前記第2露光するステップには、
前記記憶された第2露光フィールドの範囲の第2座標値情報と、前記選択された第2アライメントマークの第3座標値とから、前記第2露光フィールド毎に、前記第3座標値の誤差を計算するステップと、
前記第3座標値の誤差から、前記第2露光フィールド毎に、当該誤差を補正するためのパラメータ値を計算するステップと、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の投影露光装置のアライメント方法。
【請求項3】
前記パラメータ値を計算するステップの後に、
前記パラメータ値を記憶するステップ
を有し、
前記第2露光フィールドの範囲を示す第2座標値を計算する際には、
前記パラメータ値を用いて計算する
ことを特徴とする請求項2に記載の投影露光装置のアライメント方法。
【請求項4】
前記パラメータ値を計算するステップの後に、
前記パラメータ値と、前記記憶された第1座標値情報とから、前記第1露光フィールドの範囲を補正した第1座標値を計算するステップと、
前記第1露光フィールドの補正した第1座標値情報を記憶するステップと、
を有し、
前記第2露光フィールドの範囲を示す第2座標値を計算する際に、前記第1露光フィールドの第1座標値情報として、前記補正した第1座標値情報を用いる
ことを特徴とする請求項2に記載の投影露光装置のアライメント方法。
【請求項5】
前記グローバル・アライメント方式の前記計算では、
最小二乗法による近似を行う統計計算を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の投影露光装置のアライメント方法。
【請求項6】
前記グローバル・アライメント方式の前記計算では、
前記第2アライメントマークの第3座標値の誤差を、基板の変形に基づく3次式により近似可能な3次式近似誤差と、第2アライメントマークの形成工程に起因する4次以上の高次式により近似可能なランダム誤差に分離して求め、
各誤差の大きさの割合を各々求めて、何れの割合が大きいかを判断し、
各誤差の割合に応じて重み付けを行い各第2座標値をアライメントする
ことを特徴とする請求項5に記載の投影露光装置のアライメント方法。
【請求項7】
前記矩形状の基板の1辺に平行に配置された複数の第2アライメントマーク情報を少なくとも1対の向かい合う辺に対応した2つのグループに分けるステップと、
前記グループ内で各第2アライメントマークの設計上の座標値情報及び、各第2アライメントマーク座標値の検出情報に基づき、直線若しくは近似により求めた曲線情報を有する数式を決定するステップと、
前記2つのグループで決定した前記各数式に前記設計上の各座標値情報を代入し、2つの座標値情報を算出するステップと、
前記算出した座標軸と直交する軸方向の2つのグループの第2アライメントマーク座標に対する露光座標の内分情報を用いて露光位置を決定するステップと、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント方法。
【請求項8】
前記矩形状の基板の1辺に平行に配置された複数の第2アライメントマーク情報を少なくとも1対の向かい合う辺に対応した2つのグループに分けるステップと、
前記グループ内で各第2アライメントマークの設計上の座標値情報及び、各第2アライメントマーク座標値の検出情報に基づき、直線若しくは近似により求めた曲線情報を有する数式を決定するステップと、
前記2つのグループで決定した前記各数式に露光を行うフィールド対角線方向少なくとも2端の前記設計上の各座標値情報を代入し、その差分より露光フィールドの倍率及び回転情報を算出するステップと、
前記算出した座標軸と直交する軸方向の2つのグループの第2アライメントマーク座標に対する露光座標の内分情報を用いて露光位置を決定するステップと、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のアライメント方法。
【請求項9】
前記2つのグループと直交する方向の辺に平行に配置された複数の第2アライメントマーク情報を少なくとも1対の向かい合う辺に対応した2つのグループに分け、同様の処理を行う
ことを特徴とする請求項7または8記載のアライメント方法。
【請求項10】
グループ内で決定される前記直線または近似により求めた曲線情報が第2アライメントマークの数で決定され、第2アライメントマークが2点の場合は一次式、第2アライメントマークが3点の場合は2次式、第2アライメントマークが4点以上の場合は3次式である
ことを特徴とする請求項7または8記載のアライメント方法。
【請求項11】
アライメントを実行する前に前記第2アライメントマーク点数とは無関係に何次式までを計算するかを決定するステップを含み、該ステップでは、直線近似で求めた1対の向かい合う辺に対応した式の平均値とする1次式または直線近似による1次式、あるいは2次曲線近似による2次式を選択する
ことを特徴とする請求項7または8記載のアライメント方法。
【請求項12】
プリント基板の処理ロットの先頭では前記グループ毎に3点以上の第2アライメントマーク検出を行うステップを含み、該ステップでは、直線近似または曲線近似を行ったときの2次及び3次の近似係数の値に応じて2枚目以降の第2アライメントマーク検出点数を先頭の点数より減じる
ことを特徴とする請求項7または8記載のアライメント方法。
【請求項13】
前記パラメータ値は、
少なくともx軸方向のオフセット値、y軸方向のオフセット値、x軸方向の倍率値、y軸方向の倍率値、x軸又はy軸を基準としたローテーション値θ、x軸とy軸の直交度ωの6パラメータを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の投影露光装置のアライメント方法。
【請求項14】
前記設計上の第1及び第2座標値情報と分割比情報を記憶するステップでは、
更に、前記第1露光フィールドの各範囲がプリント基板上を分割する第1フィールド分割数、前記第2露光フィールドの各範囲がプリント基板上を分割する第2フィールド分割数、第1露光フィールドの範囲内を第1パターンが分割する第1パターン分割数、第2露光フィールドの範囲内を第2パターンが分割する第2パターン分割数のうちの、少なくとも1個以上を記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載の投影露光装置のアライメント方法。
【請求項15】
前記第2アライメントマークの第3座標値を計測する際には、プリント基板上で、1個の第2露光フィールドの第2アライメントマークを計測するための移動方向に対して、同一列に該当する各第2露光フィールドの第2アライメントマークについては、プリント基板の端部の第2露光フィールドに達するまで連続して計測し、当該端部で次の列に移動し、同様に他端まで第2露光フィールドの第2アライメントマークを計測する処理を繰り返す
ことを特徴とする請求項1に記載の投影露光装置のアライメント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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