説明

抗−組織因子抗体を用いる腫瘍成長を抑制する方法

新脈管形成により特徴づけられる増殖性疾患、例えば癌、慢性関節リウマチ、乾癬、もしくは増殖性網膜症、または黄斑変性を処置するための組織因子拮抗物質の使用方法。外因性経路を介する血餅の急速防止が可能な組織因子拮抗物質は哺乳動物における腫瘍成長も抑制しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍細胞の成長を特異的に防止または抑制することにより癌を処置するための組織因子(TF)拮抗物質の使用方法に関する。本発明は、より特に、腫瘍の成長を抑制するのに充分な量での、例えば少なくとも1種のTF蛋白質もしくはその断片に特異的な特異化された部分または変種を包含するTFに指向された抗体のようなTF拮抗物質の使用によるそのような疾患の処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織因子(TF)
凝血はフィブリンの生成をもたらす段階的な順次反応である。凝固段階は2つの重複する経路よりなり、それらの両者とも止血に必要である。内因性経路は循環する血液中に存在する蛋白質因子を含んでなるが、外因性経路は組織因子(TF)を必要とし、それは脈管損傷に応答して種々の組織の細胞表面上で発生する(非特許文献1)。血液への露呈時に、TFは不溶性フィブリン塊を生成する活性化段階の潜在的に爆発性である段階を作動させる。TFは抗凝固剤療法の標的として研究されてきた。
【0003】
TFは因子VIIおよびVIIa用の受容体として機能しそしてそれにより脈管損傷に応答する凝固段階の外因性経路を始動させる単鎖の263アミノ酸膜糖蛋白質である。TFは因子VIIa用の受容体並びに共因子として作用するトランスメンブラン細胞表面受容体であり、細胞表面上に蛋白質分解活性TF:VIIa複合体を生成する(非特許文献2)。止血の維持におけるその役割の他に、過剰のTFは病原性症状に関係していた。具体的には、TFの合成および細胞表面発現は脈管疾患(非特許文献3)およびグラム−陰性敗血症ショック(非特許文献4)に関係していた。
TF拮抗物質
種々の抗−TF抗体が既知である。例えば、Carson et al(非特許文献5)は不動化された因子VII上の親和クロマトグラフィーにより精製されたTFを用いるマウスの免疫処理により製造されたハイブリドーマ生成性モノクローナル抗体を開示している。Ruf et al(非特許文献6)はヒトTFに対するネズミモノクローナル抗体の抗凝固能力を同定した。RF上のFVII結合部位を標的とするモノクローナル抗体の能力はTFとの結合に関するFVIIと競合するそれらの能力およびTFが血漿と接触した時に急速に生成するTF/VIIa複合体の生成に依存する。そのような抗体はそれ故、血漿中のTFの比較的ゆっくりした抑制剤であった。1種のモノクローナル抗体であるTF8−5G9はTF/VIIa複合体を抑制可能であり、血漿中で即時の抗凝固効果を与える。この抗体は特許文献1、特許文献2、および特許文献3に開示されている。Ruf et al(上記非特許文献2)は、TF/VIIa複合体を不活性化する機構は、その生成を防止するよりむしろ、インビボでの凝固の妨害のための戦略を与えうることを示唆した。TFと結合する因子VIIを抑制する他の抗体とは対照的に、TF8−5G9は受容体と結合する因子VIIまたは因子VIIaに対するかすかなそして間接的な効果だけを示す。TF8−5G9はナノモル結合定数を有するTFの細胞外領域と結合してTF:F.VIIa:F.X三元開始複合体の生成を遮断する(非特許文献7)。
【0004】
抗−TFモノクローナル抗体は様々な種においてTF活性を抑制することが示されており(非特許文献8)そして抗−TF抗体の中和が敗血症のヒヒモデルにおける死亡を防止し(非特許文献9)そしてウサギにおけるエンドキシン誘発性DICを緩和する(非特許文献10)ことが示された。
【0005】
特許文献4はTF8−5G9抗体から誘導されたCDR−移植された抗−TF抗体を開
示している。他のヒトに適応されたまたはヒト抗−TF抗体は非特許文献11、特許文献5、特許文献6および特許文献7に開示されている。
癌におけるTFの役割
組織因子は種々の悪性腫瘍および単離されたヒト腫瘍細胞系統上でも過剰発現され、腫瘍成長および生存におけるある役割を示唆する。TFは正常な血管を内張りする健康な内皮細胞により製造されないが、腫瘍脈管中のこれらの細胞上で発現される。それは、2つの脈管形成、すなわち成長する動物および脈管形成における新血管の生成、正常および悪性腫瘍成体組織における現存動脈からの新毛細血管の発生、においてある役割を演ずるようである。TFの抑制または標的化は従って、直接的にTF介在細胞信号化または他の活性を抑制することによるTF過剰発現性腫瘍細胞の生存に影響しうる有用な抗−腫瘍戦略でありうる。さらに、この方式は間接的に腫瘍内の内皮細胞を発現するTFの成長または機能を抑制することによる抗脈管形成機構により腫瘍成長を防止しうる。
TFおよび脈管形成
脈管形成は新しい毛細血管を発生する工程であり、そして内皮細胞の活性化された増殖から生ずる。新脈管形成は厳しく調整され、そして胚成長、組織再構成、外傷治癒および黄体成長の周期的循環中にのみ起きる(非特許文献12)。
【0006】
腫瘍組織に栄養分および酸素を供給し、廃棄生成物を送り出しそして離れた部位への腫瘍細胞の転移のための導管として作用するためには、腫瘍成長および癌進行が脈管形成および新脈管形成、血管成長および伸長を必要とするというかなりの証拠が現在ある(非特許文献13および非特許文献14)。それにもかかわらず、組織および腫瘍脈管形成並びに新脈管形成はTNFアルファ、VEGF、および組織因子を包含する細胞的に製造される因子の相互作用が介在する複雑な工程である。研究は、新血管形成の開始における2種の主な作用物質であるVEGFおよびTF重複の上方調整(upregulation)をもたらす経路を示している(非特許文献15)。
【0007】
内皮細胞は通常は体内の他のタイプの細胞よりはるかにゆっくり増殖する。しかしながら、これらの細胞の増殖速度が上方調整される場合には、病理学的な脈管形成が生じうる。病理学的な脈管形成は多くの疾患に関係する。例えば、心臓血管疾患、例えば血管腫、血管線維腫、脈管変形、アテローム硬化症、癒着および浮腫硬化症;並びに眼科疾患、例えば虹彩移植後の新脈管形成、新脈管性緑内障、糖尿病性網膜症、脈管形成性角膜疾患、黄斑変性、翼状片、網膜変性、水晶体後方線維増殖症、および顆粒性結膜炎が脈管形成に関連する。慢性炎症性疾患、例えば関節炎;皮膚疾患、例えば乾癬、毛細血管拡張症、化膿性肉芽腫、脂漏性皮膚炎、静脈潰瘍、ざ瘡、しゅさ(ざ瘡しゅさもしくは紅斑しゅさ)、いぼ(ゆうぜい)、湿疹、血管腫、リンパ管腫も脈管形成−依存性である。
【0008】
硝子体液が毛細血液により浸潤される種々の眼科疾患のために、視力は損失または喪失されうる。糖尿病性網膜症は2つの形態、すなわち非増殖性または増殖性、の1つをとりうる。増殖性網膜症は異常な新しい脈管生成(新脈管形成)により特徴づけられ、それは硝子体表面上で成長するかまたは硝子体腔内に伸びる。進行した疾患では、新脈管膜が生じて、牽引網膜剥離をもたらしうる。硝子体出血が新脈管形成から生じうる。視力症状は変動する。硝子体内出血がある場合に突然の重篤な視力喪失が起きうる。増殖性網膜症を伴う視力の予後が重篤な網膜虚血、過度の新脈管形成、または過度の線維組織生成と関連する場合には、より多く監視される。黄斑変性も同様に2つの形態、すなわち乾燥および湿潤、をとる。それほど普遍的でない滲出性黄斑変性(湿潤形態)では、しばしば網膜内出血、網膜下流体、色素上皮剥離、および色素増加を伴う脈絡膜新脈管形成の網膜下網目構造の生成がある。実際に、この複雑さは後極における顕著な上昇した瘢痕を収縮させそして残す。両方の形態の年令−関連性黄斑変性はしばしば両側性でありそして黄斑領域内で結晶腔により進行する。脈管形成病因に関連する視力喪失の別の原因は虹彩の損傷である。虹彩を角に引っ張り上げる2つの最も普遍的な症状は、例えば糖尿病患者における新
脈管性緑内障におけるような膜の収縮または虹彩が角に引っ張り上げられるブドウ膜炎に伴われる中央網膜静脈閉塞もしくは炎症性沈殿である(非特許文献16)。
【0009】
炎症性疾患である慢性関節リウマチも不適切な脈管形成をもたらす。滑液腔内の脈管内皮細胞の成長は炎症性サイトカインにより活性化され、そして軟骨破壊および関節内のパンヌスによる置換をもたらす(非特許文献17、非特許文献18、非特許文献19)。
【0010】
乾癬は皮膚細胞の未調節増殖により引き起こされる。急速に成長する細胞は充分な血液供給を必要とし、そして異常な脈管形成が乾癬内で誘発される(非特許文献20)。
【0011】
特許文献8は、微小脈管内の転移細胞の長期付着を排してそれにより転移を抑制することによる転移の開始および進行を抑制するための抗−TF抗体の使用を開示しているが、定着した腫瘍細胞の成長に対する効果は開示していない。腫瘍脈管形成を調整する因子における複雑さ並びに腫瘍成長および外傷治癒の両者における受容体介在細胞成長としての組織因子の役割の不完全な理解を前提とすると、癌の発症または不適切な脈管形成活性により特徴づけられる他の疾患においてTFの遮断が重要なまたは追加の役割のいずれかを演じうることが可能である。
【特許文献1】米国特許第6,001,978号明細書
【特許文献2】米国特許第5,223,427号明細書
【特許文献3】米国特許第5,110,730号明細書
【特許文献4】国際公開第96/40921号パンフレット
【特許文献5】欧州特許第1069185号明細書
【特許文献6】国際公開第01/70984号パンフレット
【特許文献7】国際公開第03/029295号パンフレット
【特許文献8】国際公開第94/05328号パンフレット
【非特許文献1】Davie et al.著、1991、Biochemistry 30:10363
【非特許文献2】Ruf et al著、(1992)J.Biol.Chem 267:6375−6381
【非特許文献3】Wilcox et al.著、1989、Proc.Natl.Acad.Sci、86:2839
【非特許文献4】Warr et al.著、1990、Blood 75:1481
【非特許文献5】Carson et al著、1987、Blood 70:490−493
【非特許文献6】Ruf et al著、1991、Thrombosis and Haemostasis 66:529
【非特許文献7】Huang et al著、J.Mol.Biol.275:873−894 1998
【非特許文献8】Morissey et al.著、1988、Thromb.Res.52:247−260
【非特許文献9】Taylor et al著、Circ.Shock、33:127(1991)
【非特許文献10】Warr et al著、(1990)Blood 75:1481
【非特許文献11】Presta et al著、Thromb Haemost 85:379−389(2001)
【非特許文献12】Folkman and Cotran著、Relation of vascular proliferation to tumor growth,Int.Rev.Exp.Pathol.’16,207−248(1976)
【非特許文献13】Folkman et al.著、N Engl J Med 285:1181−1186、1971
【非特許文献14】Folkman et al.著、N Engl J Med 333:1757−1763、1995
【非特許文献15】Chen J.et al.著、(2001)Thromb.Haemost.86−334−5
【非特許文献16】Ch.99.The Merck Manual 17th Ed.1999
【非特許文献17】Koch AK,Polverini PJ and Leibovich SJ.著、Arthritis Rheum.29,471−479(1986)
【非特許文献18】Stupack DG,Storgard CM and Cheresh DA著、Braz.J.Med.Biol.Res.,32,578−581(1999)
【非特許文献19】Koch AK著、Arthritis Rheum,41,951962(1998)
【非特許文献20】Folkman J.著、J.Invest.Derrnatol.,59,40−48(1972)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、ヒトの癌または新脈管形成(neovascularization)および脈管形成機構(angiogenic mechanisms)に伴われる他の増殖性疾患の処置における主要または補助療法としてTFに対する抗体を使用しうるかどうかを理解することは有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の要旨
本発明は、哺乳動物のおける腫瘍の成長を抑制するための、TFに対して指向された抗体、並びに少なくとも1種のTF蛋白質もしくはその断片に関して特異的な特異化されたその部分または変種を包含するTFの拮抗物質を使用する方法に関する。そのようなTF拮抗物質、例えば抗体はそれらがTFと結合する能力により組織、特に充実性腫瘍の成長に伴われる事象を防止する方法で作用しうる。
【0014】
別の面では、本発明は組織因子拮抗物質を脈管形成された組織の増加を抑制するのに充分な量で投与することを含んでなる該組織における増加により特徴づけられる疾患を処置する方法を提供する。
図面の簡単な記述
図1は、ヌードマウスの側腹部内に皮下移植されそしてhIgに無関係にCNTO859またはHBSSを1週1回0日目から始まって投与されたヒト乳癌細胞の腫瘍成長速度(容量変化)を示すグラフである。
【0015】
図2は、CNTO859またはhIgが1週1回14日目から始まって投与されたマウス群に関する図1と同じ実験からのデータを示すグラフである。
【0016】
図3は、対照動物、PBSまたは対照ヒトIgのいずれかで処置された動物、およびCNTO859で処置された動物のいずれかからの腫瘍容量における変化を示すグラフである。
【0017】
図4は、対照動物、PBSまたは対照ヒトIgのいずれかで処置された動物、およびCNTO859で処置された動物のいずれかからの最終腫瘍容量の平均および標準偏差を表
わす棒グラフである。
【0018】
図5は、腫瘍が移植された日と同じ日から始まるPBS、対照IgまたはCNTO859のいずれかで処置された動物における腫瘍出現率を示す。
【0019】
図6は、PBS、対照ヒトIgまたは種々の薬用量のCNTO859のいずれかで処置された動物における容量により測定されたMDAMB231異種移植片の腫瘍進行を示す。CNTO859は全ての濃度において腫瘍成長を抑制することができた。腫瘍抑制は0.1mg/kgにおける90%(それぞれ、p=0.0012および0.0106、t−分布を用いるウィルコキソン(Wilcoxon)2−試料試験)からそれより高いいずれかの濃度における95%までの範囲にわたった。
【0020】
図7は、PBS、対照ヒトIgまたは種々の薬用量のCNTO859(0.1、1、5、10および20mg/kg)のいずれかで処置された動物からの最終腫瘍容量の分布を示す分布プロットである。
【0021】
図8は、マウスに(乳房組織に)正常位移植されたヒト乳癌細胞MDAMB231異種移植片を用いそしてマウスがPBS、対照ヒトIg、CNTO859Ala/Alaまたは種々の薬用量(0.01、0.1および1mg/kg)のCNTO859およびCNTO860のいずれかで処置された実験に関する時間につれての腫瘍容量のグラフである。
【0022】
図9は、0.1mg/kgにおける対照並びにCNTO859およびCNTO860だけを示す、図8に示されたものと同じ実験からの群の4種の平均および標準偏差を示す。
【0023】
図10は、図8と同じ実験における各群からの個々の最終腫瘍容量および平均の各々のグラフ表示である。
【0024】
図11は、図8と同じ実験からの腫瘍出現データを示す。
【0025】
図12は、翌日から始まるCNTO859で処置されたマウスに移植されたBxPC−3ヒト膵臓腫瘍細胞の腫瘍成長速度(容量変化)を示すグラフである。腫瘍成長は46.9%(p<0.0012)抑制される。
【0026】
図13は、定着した腫瘍をCNTO859で処置した場合のマウスに移植されたBxPC−3ヒト膵臓腫瘍細胞の腫瘍成長速度(容量変化)を示すグラフである。腫瘍成長は35%(p<0.0001)抑制される。
【0027】
図14は、マウスにおいてマトリゲル(MATRIGEL)内の管長さにより測定されたPANC−1ヒト膵臓腫瘍細胞誘発性脈管形成がヒト抗−ネズミTF抗体(PHD127)により88%(p<0.05)減じられることを示す棒グラフである。
発明の詳細な記述
本発明のTF拮抗物質は腫瘍成長の抑制および防止において有用である。種々の形態の充実性原発性腫瘍を包含する多くの病状が本発明の方法におけるTF拮抗物質を用いる処理により改善される。
腫瘍
種々の癌、例えば、頸癌、肛門癌および口腔癌、胃癌、結腸癌、膀胱癌、直腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、乳癌、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌、前立腺癌、睾丸癌、腎臓癌、脳/脳頭蓋癌(例えば、神経膠腫)、頭頸部癌、眼または眼球癌、咽門癌、皮膚黒色腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、カポジ肉腫、基底細胞カリノーマ(carinoma)および鱗状細胞カリノーマ、小細胞肺癌、繊毛癌、横紋筋肉腫、
血管肉腫、血管内皮腫、ヴィルムス腫瘍、神経芽腫、口/咽頭癌、食道癌、咽頭癌、腎臓癌およびリンパ腫をとりわけ包含する良性および悪性腫瘍の両者は本発明の抗−TF抗体を用いて処理することができる。
【0028】
それ故、本発明は、乳癌、結直腸癌、腎細胞癌、膵臓癌、前立腺癌、鼻咽頭癌、悪性組織球増殖症、悪性のパラ新生物症候群/高カルシウム血症、充実性腫瘍、腺癌、肉腫、悪性黒色腫、血管腫、転移疾患などを包含するがそれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物または患者における少なくとも1種の悪性疾患を緩和または処置する方法を提供する。そのような方法は、場合により、放射線療法剤、抗−脈管形成剤、化学療法剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、プロテソーム阻害剤などと、そのようなTF拮抗物質の投与前の、同時のまたは後の投与により、組み合わせて使用することができる。
TF拮抗物質
ここで使用される用語「TF拮抗物質」は、TFの活性を抑制または中和する物質をさす。そのような拮抗物質はこの効果を種々の方法で達成する。TF拮抗物質の1種は、TFの効果を中和するのに充分な親和力および特異性を有するTF蛋白質に結合するであろう。抗体および抗体断片(例えば、F(ab)またはF(ab’)分子)はこの種類の分子に包含される。それ故、ここで使用される「抗体」は免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分をさす。TF拮抗物質の別の種類は、TF蛋白質、ムテイン、または有機分子、すなわち擬ペプチドであり、それらはTF配位子と結合し、それによりTFの活性またはそれが分子内信号化を引き起こす能力を抑制するであろう。TF拮抗物質は、TF抗−腫瘍活性または抗−脈管形成活性を抑制する物質である限り、これらの種類のいずれであってもよい。TF拮抗物質は、TF抗体、改質されたTF、アンチセンスTFおよびTFの部分ペプチドを包含する。
【0029】
特に好ましい態様では、TF拮抗物質はネズミ、キメラ、ヒトに適応されたまたはヒトモノクローナル抗体もしくは以下の性質:TFに対する因子VIIaを防止し、それにより凝固の進行を防止し、TF:FVIIa:FX複合体の生成を防止し、またはTF信号化をその細胞内領域を介して防止する性質、の1つを有するその断片である。そのような抗体は当該技術で既知でありそして本発明の方法で使用することができる。TFに対するネズミモノクローナル抗体は例えば米国特許第6,001,978号明細書、米国特許第5,223,427号明細書、および第5,110,730号明細書中のように既知である。国際公開第96/40921号パンフレットは、マウス抗体TF8−5G9の可変領域からの相補決定領域(CDR)がヒト抗体の可変領域中に移植されそしてヒト抗体の一定領域に結合されるTF8−5G9抗体から誘導されるCDR−移植された抗−TF抗体を開示している。TF抗凝血剤および受容体介在活性を防止しうる他のヒトに適応された抗−TF抗体はPresta et al,Thromb Haemost 85:379−389(2001)および欧州特許第1069185号明細書に開示されている。前記の参考文献の各々は引用することにより本出願の内容となる。
組成物およびそれらの使用
本発明に従えば腫瘍成長を抑制するために中和用の抗−TFモノクローナル抗体を使用することができる。処置しようとする個体はいずれの哺乳動物であってもよく、そして好ましくはそのような処置を必要とするヒト患者である。モノクローナル抗体の投与量はその使用目的および投与方法に応じて変動するであろう。
【0030】
本発明のTF抗体は、成長が防止または停止されることが望まれる腫瘍組織内で効果をもたらす方法のいずれかの構成員により投与することができる。さらに、本発明の抗TF抗体は抗腫瘍効果を与えるために局部的に存在する必要はなく、従って、それらはTFを含有する身体部分または流体への到達が達成されるいずれの場所にでも投与することができる。悪性腫瘍組織の場合には、これらの方法は抗体を含有する調合物の直接適用を包含しうる。そのような方法は、液体組成物の静脈内投与、液体もしくは固体調合物の皮下も
しくは経皮投与、経口投与、局部投与、または間隙性もしくは相互作用性投与を包含する。
【0031】
投与は経口的であってもまたは腫瘍もしくは組織内への局部注射によってでもよいが、一般的には、モノクローナル抗体は静脈内投与される。一般的には、投与量範囲は約0.01mg/kg〜約12.0mg/kgである。これは巨丸剤であってもよく、またはマイクロプロセッサーで調節され且つプログラム可能なポンプ装置により調節できる遅延もしくは連続的注入でありうる。
【0032】
或いは、好ましくは該モノクローナル抗体の断片をコードするDNAをハイブリドーマ細胞から単離されそして哺乳動物に投与することができる。DNAはそのままの形態で投与するかまたは組み換えべクタ−、例えば、バクシニアウイルス内に挿入して、患者の細胞内のDNAの発現および抗体の分配を生ずる方法で投与することができる。
【0033】
本発明の方法で使用されるモノクローナル抗体は、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,1985に記載されているように、製薬学的組成物の確立された調合方法のいずれかにより調合することができる。投与の容易さのために、モノクローナル抗体は典型的には製薬学的に許容可能な担体と組み合わされるであろう。そのような担体は水、生理的食塩水、または油を包含する。
【0034】
非経口的投与に適する調合物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および調合物を意図する受容器の血液と等張性にさせる溶質を含有しうる水性および非水性殺菌性注射溶液、並びに懸濁化剤および濃稠化剤を含有しうる水性および非水性殺菌性注射懸濁液を包含する。従来の培地が活性成分およびその意図する使用と非相容性である場合を除いて、いずれの組成物中のその使用でも意図される。
【0035】
調合物は単位服用量または複数回服用量容器、例えば、密封されたアンプルおよび瓶の中に存在することができ、そして使用直前に殺菌性液体、例えば、注射用の水の添加だけを必要とする凍結乾燥された状態で貯蔵することができる。
TF拮抗物質との組み合わせ
この方法は、本発明のTF拮抗物質を抗−腫瘍効果またはインビボ脈管形成を抑制する化学療法剤を包含するがそれに限定されない別の機構を有する1種もしくはそれ以上の他の剤と組み合わせることができる。
【0036】
さらに、TF抗体を1種もしくはそれ以上の抗−脈管形成剤と組み合わせることもできる。脈管形成は、円滑筋および内皮細胞の侵襲、泳動および増殖により特徴づけられる。αvβ3インテグリン(ビトロネクチン受容体としても知られる)が腫瘍転移、充実性腫瘍成長(新形成)、オステオポローシス、パジェット病、悪性の体液高カルシウム血症、腫瘍脈管形成を包含する脈管形成、黄斑変性を包含する網膜症、慢性関節リウマチを包含する関節炎、歯周病、乾癬および円滑筋細胞泳動(例えば、再狭窄)を包含する種々の症状または疾患状態においてある役割を演ずることが知られている。
【0037】
付着受容体αvβ3インテグリンは、ビトロネクチン、フィブリノーゲン、フォン・ウィルブランド因子、ラミニン、スロンボスポンディン、および他の同様な配位子を結合する。それはヒヨコおよびヒトにおいて脈管形成性血管のマーカーとして同定され、そして脈管形成または新脈管形成において重要な役割を演ずる。αvβ3の拮抗物質は、新脈管形成における細胞のアポプトシスを選択的に促進させることにより、この工程を抑制する。従って、αvβ3拮抗物質は新脈管形成に付随するそのような症状を処置するための有用な治療標的であろう(Brooks et al.,Science,Vol.264,(1994),569−571)。さらに、腫瘍細胞侵襲は三段階方法:1)細胞外マ
トリックスに対する腫瘍細胞接触、2)マトリックスの蛋白質分解溶解、および3)溶解したバリアー内の細胞の移動により起きる。この方法は繰り返し行うことができ、そして元の腫瘍から離れた部位における転移をもたらしうる。αvβ3インテグリンは腫瘍細胞侵襲並びに脈管形成においてある役割を演ずることが示された。
【0038】
αvβ3の拮抗物質および中和用の抗−TF抗体は両者とも腫瘍を標的にするが異なる機構により作用するため、抗−インテグリン抗体と抗−TF抗体との組み合わせは正常組織毒性がほとんどない特に有効な組み合わせを生ずるはずである。それ故、本発明の1つの態様では、インテグリン拮抗物質および抗−TF抗体の組み合わせをそのような処置を必要とする患者に投与することを含んでなる腫瘍の成長を抑制する方法が提供される。インテグリンまたはインテグリン副単位を選択的に結合する他の抗体、特にアルファV副単位を結合するもの、は米国特許第5,985,278号明細書および第6,160,099号明細書に開示されている。アルファVベータ3とトリペプチドであるアルギニル−グリシル−アスパルテート(RGD)を含有するその天然配位子との結合を抑制するMab類は米国特許第5,766,591号明細書および国際公開第0078815号パンフレットに開示されている。アルファV−副単位を含有するインテグリンがビトロネクチン、フィブロネクチン、または他の配位子に結合するのを防止する他の抗体も脈管形成の防止において同様な有用性を有する。そのような抗体はGEN095またはCNTO95において知られておりそして国際公開第02012501号パンフレットとして公開された出願継続中の出願に記載されている抗体を包含する。
【0039】
本発明によると、例えばタリドミド(thalidomide)の如き他の既知の抗−脈管形成剤を抗−TF抗体と組み合わせて使用することもできる。
略語
ATCC−アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)
CO−二酸化炭素
DMEM−ダルベッコ改質イーグル培地
EDTA−エチレンジアミン四酢酸
FBS−胎牛血清
FVIIa−因子VIIa(活性化されたFVII)
FX−因子X(不活性)
FXa−因子Xa(活性化されたFX)
hIg−ヒトIg
LNN−2mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、1mM 非必須AAs
PBS−燐酸塩緩衝食塩水
SQ−皮下
IV−静脈内
IP−腹腔内
TF−組織因子
本発明を一般的に記載してきたが、本発明の態様は以下の実施例でさらに開示される。
【実施例】
【0040】
実施例1
乳癌異種移植片における腫瘍成長の抑制
この実施例は、抗−組織因子IgG抗体がヌードマウスに移植されたMDA−MB−231乳癌異種移植片の腫瘍成長を抑制する能力を示す。
材料および方法 (50匹の)チャールス・リバー・ラボラトリーズ(Charles River Laboratories)からの生後4−6週間の雌ヌードマウス(Cr
l:NU/NU−CD1)を入手しそして実験前10−14日間にわたり気候順化させた。マウスをセントコル・インコーポレーテッド(Centocor,Inc.)における動物施設内に研究動物の管理および使用に関する国立衛生機関指針に従い維持した。
【0041】
ヒト乳癌細胞系統MDAA−MB−231はATCC(メリーランド州、ロックビル、カタログ#HTB−26)から得られた。細胞を25mM HEPES、10%FBSおよび1%LNNが補充されたDMEM培地中で37℃、5%COにおいて培養した。細胞をトリプシン−EDTAを用いて対数期成長において回収しそして殺菌性HBSS中で5×10個の細胞/mLで再懸濁させた。
【0042】
抗体:CNTO859、国際公開第96/40921号パンフレットに開示されたCDR移植されたTF8−5G9抗体、株濃度3.75mg/mL;hIg、ZLB・バイオプラズマ(Bioplasma)・AG、スイス、ベルン。殺菌性USP水中の株濃度30mg/mL)。全ての試験製品は殺菌性HBSS中の2mg/mLの操作濃度に設定された。全ての試験製品および対照は<1.0EU/mgのLAL値を有するであろう。
【0043】
0日目に、マウスを5群のそれぞれに1群当たり10匹のマウスで無作為に指定した。細胞をヌードマウスの側腹部内に5×10個のMDA−MB−231腫瘍細胞の濃度(0.2mLの容量(0.1mLのマトリゲル(R))と混合されたHBSS中0.1mLの細胞)で皮下移植した。マウスの群に表1に処方されている通りにして1週1回投与した。
【0044】
【表1】

【0045】
試験の0日目に、50匹の試験マウスを5群にする(10匹のマウス/群、表1に従う)。全ての動物に5×10個の細胞を含有する0.2mLのMDA−MB−231細胞懸濁液(HBSS中細胞懸濁液とマトリゲル(R)との1:1混合物)を肋骨郭(rib
cage)領域の右側に皮下移植した。0日目に、群1、2、および3内の全ての動物は10mL/kgの試験製品またはHBSS(表1)の腹腔内注射を受けた。群4および5内の動物は14日目または100mmの平均腫瘍寸法において10mL/kgの試験製品の腹腔内注射を受けた。最初の腹腔内注射後に、全ての動物は80日目まで腹腔内服用量(5mL/kg)の試験製品または対照を毎週受ける。
【0046】
最初の服用に関する20mg/kgおよびその後の服用に関する10mg/kgの服用量は最も近い以前の体重値を基準として計算された。動物は80日目までまたは腫瘍が2,000mmの容量に達するまで毎週月曜日にIP投与された。
【0047】
動物体重および腫瘍容量は試験終了まで1週1回測定された。動物は0日目から始まって体重測定されたが、腫瘍容量は触診可能時にのみ記録された。腫瘍はカリパスを用いて三次元で測定されそして腫瘍容量は式V=(L×W×T)/2[式中、L=長さであり、W=幅でありそしてT=厚さである]に基づき計算された。
【0048】
腫瘍が〜2000mmの平均容量に達した時に試験終了が予定され、動物の安寧性が危うくならなかった状態では試験を延長する選択肢もあった。終了時に、動物をCO窒息により安楽死させそして腫瘍を切除しそして重量測定した。個々の腫瘍を次に二分し、一方の半分はOCT中で急速冷凍しそして他方の半分は10%ホルマリン中で固定した。血清試料を各動物から終了時に心臓穿刺により採取した。
【0049】
結果 各処理群の成長速度を腫瘍容量(mm)対時間(移植後日数)の関数としてプロットした(図1および2)。全ての群において100%の取得率(take rate)があった。0日目(図1)または14日目(図2)におけるhIg対照を用いる動物の処置はHBSS負対照と比べて腫瘍成長を有意に与えなかった(それぞれ、P=0.779、P=0.979)。
【0050】
0日目にCNTO859で処置した動物における腫瘍成長は62%(P<0.0001)抑制された(図1)。CNTO869を用いる処置が14日目に開始された場合には、平均腫瘍寸法が100mmであった時に、腫瘍成長率は47%(P<0.0001)抑制された(図2)。
【0051】
CNTO859の合計組み合わせ処置効果もhIg対照の合計処置効果と比べて有意であった(P<0.0001)。P<0.005として定義される日毎の有意性は一般的に17日の処置後に得られた。
【0052】
結果は、CNTO859が腫瘍成長速度を62%まで抑制したことを示す。抗−ヒト組織因子IgG抗体がヒト誘発腫瘍成長をインビボで抑制する能力を有することが初めて示された。CNTO859を用いる早期(0日目)および後期(14日目)処置の両者とも腫瘍成長速度を有意に抑制した。
実施例2
正常位異種移植片モデルにおけるヒト乳癌に対する抗−TF抗体の効果
この実施例では、SCID/ベージュマウスの乳房脂肪パッド内に注射されたヒト乳癌細胞系統MDAMB231を用いる正常位腫瘍成長モデルを使用してCNTO859の抗−腫瘍効果を試験した。さらに、抗−組織因子抗体の構造に対する変数:ヒト種同定CNTO859(IgG4)およびCNTO860(IgG1);並びにCNTO859ala/alaと表示されるFcR結合領域CNTO859の変更、の影響を比較した。
【0053】
材料および方法 生後4週間の雌SCID/ベージュマウス(C.B.−17/IcrCrl−scid−bgBR)をチャールス・リバー・ラボラトリーズから入手しそして実験前10−14週間にわたり気候順化させた。マウスをフィルター・トップ・ケージ内で7−8匹/ケージで飼育されそしてオートクレーブにかけられた食料および細菌(0.13mg/mLのトリメトプリム(trimethoprim)/0.66mg/mLのスルファメトキセート(sulfamethoxate))を含有する酸性化された水を随時供給された。試験開始前5日間入れられた個別に番号がつけられた耳札により動物は同定された。入手先、性別、動物数、動物ID番号、群番号、処置、試験番号およびIA
CUC処方番号の標識が付けられたケージカードがケージに固定された。全ての動物試験はペンシルバニア州、ラドノルのセントコル・インコーポレーテッドにおいて動物試験場で研究室動物の管理および使用に関する国立衛生機関指針に従い行われた。
【0054】
ヒト乳癌細胞系統MDAMB231はセントコルの細胞貯蔵所から得られそして殺菌性であり且つマイコプラズマを含まないと推定された。細胞を10%FBSおよび1%LNNが補充されたDMEM培地中で37℃、5%COにおいて培養した。細胞をトリプシン−EDTAを用いて対数期成長において回収しそして血清を含まないHBSS中で5×10個の細胞/mLで再懸濁させ、そして(Rt鼠径#2/3)乳房脂肪パッド内に50μLの容量で移植された。
【0055】
試験および対照抗体は以下の通りである:CNTO859、3.75mg/mLの株濃度;CNTO859、10.29mg/mLの株;CNTO860、2.4mg/mLの株;CNTO859Ala/Ala、C1081、1mg/mLの株;ヒトIg、ZLB・バイオプラズマ・AG、スイス、ベルン、30mg/mLの株濃度。
【0056】
抗体を適当な濃度でPBS中に供給した。全ての対照および試験製品は<1EU/mgとなるまでエンドキシン試験しそして静脈内投与されるであろう。
【0057】
動物を7−8匹のマウス/群に無作為分類した。0日目に2.5×10個のMDAMB231細胞を動物の乳房脂肪パッド内に50μLの容量で30g針を用いて注射した。静脈内抗体療法は3日目に開始された。3回の試験の各々に関する投与処方および濃度は、それぞれ、表2、3および4に詳細に記述される。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
1週1回8〜9週間にわたりマウスを体重測定しそして腫瘍容量を記録した。腫瘍容量は(L×W)/2として計算された。試験は腫瘍細胞接種から約8〜9週間後に終了した。動物が終了点より前に急速な体重喪失、呼吸困難を経験するかまたは瀕死になった場合には、動物を試験コーディネーターにより安楽死させた。動物はCO窒息により安楽死されそして次に体重測定された。肺および腋窩リンパ節が外科的に除去され、冷たいPBS中ですすがれ、瓶詰めされ、重量測定されそして直ちにボワン溶液(Bouin’s
solution)中で固定された。原発性腫瘍が病歴分析用に切除され、重量測定されそして次にBZT溶液中で固定された。
【0062】
主要な抗−腫瘍効果 腫瘍容量を試験中に1週1回監視しそして記録した。終了時に、原発性腫瘍がCO安楽死させたSCID/ベージュマウスから外科的に切除されそして重量測定された。腫瘍容量および最終質量が時間につれてプロットされた(図3および4)。動物がCNTO859で処置された場合には、PBSまたは対照ヒトIgG処置動物と比べて腫瘍成長は95%抑制された。(p=0.0039およびp=0.0126、両側パラメーターt試験、n=8)。
【0063】
第二の試験では、服用量の影響を試験した。CNTO859は1週1回与えられる0.1mg/kg程度の低い服用量で腫瘍成長を抑制した。これは、0.1、1、5、10または20mg/kgのいずれかのCNTO859で処置された動物においてはPBSおよびヒトIg対照群と比べて腫瘍容量変化(図6)および個々の最終腫瘍重量(図7)として腫瘍進行における有意な減少があった。
【0064】
3種の濃度におけるCNTO859およびCNTO860の間の比較試験では、我々の抗−組織因子抗体のIgG1変種が腫瘍成長だけでなく腫瘍出現の防止においても優れていたことが示された(図8−11)。各群のそれぞれからの腫瘍容量は(図8に)時間につれての群内の平均腫瘍重量としてそして個々の最終重量として並びに平均(図10)とした等々で示される。
【0065】
腫瘍出現に対する効果 CNTO859療法は処置された動物の腫瘍出現における顕著な差も示した。第一の試験では、細胞は注射部位における小節の触診により観察されるように乳房脂肪パッド内に付着されそして接種されうるが、腫瘍が測定可能な寸法になる約38日目までは測定するには小さすぎた。対照的に、PBSまたは対照ヒトIg処置された動物においては測定可能な腫瘍が17日目でから出現した。図5は、PBS、対照IgまたはCNTO859のいずれかで処置された動物における腫瘍出現率を示す。この正常位MDAMB231腫瘍成長モデルからの結果は、CNTO859が腫瘍出現、成長およ
び進行の非常に有効な抑制剤であることを示す。賦形剤対照またはIg対照と比べて、CNTO859は腫瘍成長を95%(p=0.0039およびp=0.0126、両側パラメーターt試験、n=8)そして腫瘍出現を87.5%(PBSに対してp=0.0017および対照ヒトIgに対してp=0.0086、両側パラメーターt試験、n=8)減少させた。
【0066】
CNTO859およびCNTO860の間の比較試験では、0.1mg/kgの薬用量を用いる場合には、CNTO860はPBSおよびヒトIg対照群と比べて最初の腫瘍出現を44および37日間遅らせることができた。同様に、CNTO859も最初の腫瘍出現を23および16日間遅らせることができた。さらに、試験の終了により、CNTO860群では動物の70%以上がCNTO859群における15%と比べて腫瘍を含まなかった。PBS、ヒトIgおよびCNTO859ala/ala群における全ての動物は44日目に腫瘍を有していた(図11)。
【0067】
まとめ CNTOおよび2種の変種をこの異種移植片モデルを用いる順次実験において腫瘍成長および進行の防止における効果に関して比較した。第一の試験では、CNTO859は腫瘍移植後3日目から始めて1週1回20mg/kgの濃度で与えられた場合には腫瘍成長の防止において非常に効果的であり、PBSまたは対照Ig処置群(それぞれ、p=0.0039およびp=0.0126)のいずれかと比べて95%成長抑制率を生じた。我々はCNTO859で処置された動物における腫瘍出現においてPBSまたは対照Ig処置群(それぞれ、p=0.0017およびp=0.0086)のいずれかと比べて87.5%の減少を観察した。
【0068】
第二の試験では、CNTO859を0.1mg/kg〜20mg/kgの範囲にわたる順次薬用量で1週1回投与した。結果は、CNTO859を用いる抗−TFモノクローナル抗体療法は、0.1mg/kgの非常に低い服用量でも、腫瘍進行を遅らせる際に非常に有効であり、PBSまたは対照Ig処置群(それぞれ、p=0.0012およびp=0.0106、t−分布を用いるウィルコキソン(Wilcoxon)二試料試験)のいずれかと比べて90%を越える腫瘍抑制を生じた。1、5、10および20mg/kgの薬用量は腫瘍成長を95%以上有意に抑制した。
【0069】
最後に、別の試験で、CNTO859の効果をCNTO860、CNTO859のIgG1変種、およびADCC最小化変種であるCNTO859ala/alaに対して評価した。0.01mg/kgのIgG4またはIgG1治療抗体のいずれかの服用量はPBS、ヒトIg対照またはCNTO859Ala/Alaと差はなかった。対照的に、1mg/kgのCNTO859またはCNTO860のいずれかの服用量でも腫瘍成長を95%以上抑制することができた。興味深いことに、0.1mg/kgの服用量水準では、CNTO860がこの低服用量でも腫瘍成長を95%以上抑制したがCNTO859処置された腫瘍は療法からの除外の兆候を示し〜85%だけの抑制を生じたことにより、CNTO860対CNTO859の効果は区別される。さらに、CNTO860は0.1mg/kgで使用される場合には腫瘍進行の遅延において、多分追加のADCC活性のために、CNTO859より有効であった。
実施例3
膵臓腺癌異種移植片における腫瘍成長の抑制
この実施例では、我々はSCIDマウスの側腹部で成長した膵臓腺癌細胞系統BxPC−3の成長抑制に対する抗−組織因子抗体の効果を示す。CNTO859を、20mg/kgの最初の充填服用量後に1週1回10mg/kgで投与した。CNTO859を用いる療法が腫瘍移植から1日後に開始された群では、BxPC−3腫瘍の成長は46.9%抑制された(p<0.001)。処置が50−100mmの平均腫瘍容量で開始された群では、腫瘍は穏やかに抑制されたが統計学的有意性は得られなかった(p=0.628
0)。
【0070】
材料および方法 チャールス・リバー・ラボラトリーズ(ウィルミントン)からの生後6〜8週間の雌SCIDマウスを入手しそして実験前10−14日間にわたり気候順化させた。マウスをフィルター・トップ・ケージ内で7−8匹/ケージで飼育されそしてオートクレーブにかけられた食料および細菌(0.13mg/mLのトリメトプリム/0.66mg/mLのスルファメトキセート)を含有する酸性化された水を随時供給された。試験開始前7日間入れられた個別に番号がつけられた耳札が動物を同定した。入手先、性別、動物数、動物ID番号、群番号、処置、試験番号およびIACUC処方番号の標識が付けられたケージカードがケージに固定された。全ての動物試験はペンシルバニア州、ラドノルのセントコル・インコーポレーテッドにおいて動物試験場で研究室動物の管理および使用に関する国立衛生機関指針に従い行われた。
【0071】
ヒトBxPC−3膵臓腺癌細胞系統はATCC(メリーランド州、ロックビル、カタログ#CRL−1687)から得られた。それらはウイルスまたはマイコプラズマ汚染がないことが試験され、そしてセントコルズ・セル・バイオロジー・サービセス(Centocor’s Cell Biology Services)により貯蔵された。細胞を10%FBSおよび1%LNNが補充されたDMEM培地中で37℃、5%COにおいて培養した。細胞をトリプシン−EDTAを用いて対数期成長において回収しそして殺菌性HBSS中で1.5×10個の細胞/mLで再懸濁させた。
【0072】
セントコル,インコーポレーテッドで製造されたCNTO859は3.75mg/mLの株濃度で使用され;hIg、ZLB・バイオプラズマ・AG、スイス、ベルンは殺菌性USP水およびPBS,pH7.1、ギブコBRL中30mg/mLの株濃度で使用された試験品はすべて殺菌性HBSS中2mg/mLの作業濃度に希釈された。
【0073】
0日目に、マウスを5群のそれぞれに1群当たり10匹のマウスで無作為に指定した。細胞をヌードマウスの側腹部内に3×10個のBXPC−3腫瘍細胞の濃度で0.2mLの容量でまたはPBS単独で(群1)皮下接種した。治療処方は表5に詳細に示されている。
【0074】
1日目に、群1の動物は0.2mLのPBS(腹腔内)を受容し、群2は20mg/kgのhIg対照抗体を受容し、そして群3は20mg/kgのCNTO859抗体を受容した。抗体は引き続き7日毎に1回10mg/kgで投与された。PBSは7日毎に1回0.2mLで与えられた。群4の動物は腫瘍が約50mm〜100mmに達した時に腹腔内投与される20mg/kgでそしてその後は7日毎に1回10mg/kgで投与されるCNTO859を用いる処置を受けた。群5の動物は腫瘍寸法が約50mm〜100mmに達した時に腹腔内投与される20mg/kgでそしてその後は7日毎に1回10mg/kgで投与されるヒトIgを用いる処置を受けた。
【0075】
【表5】

【0076】
試験の終了時まで動物体重および腫瘍容量を1週1回監視した。動物は0日目から始まって体重測定されたが、腫瘍容量は触診可能になってからのみ記録された。腫瘍はカリパスを用いて三次元で測定されそして腫瘍容量は式V=(L×W×T)/2[式中、L=長さであり、W=幅でありそしてT=厚さである]に基づき計算された。
【0077】
腫瘍が〜2000mmの平均容量に達した時に試験終了が予定され、動物の安寧性が危うくならなかった状態では試験を延長する選択肢もあった。終了時に、動物をCO窒息により安楽死させそして腫瘍を切除しそして重量測定した。個々の腫瘍を次に二分し、一方の半分はOCT中で急速冷凍しそして他方の半分は10%ホルマリン中で固定した。血清試料を各動物から終了時に心臓穿刺により採取した。
【0078】
結果 腫瘍容量(mm)対時間(移植後日数)の関数としてプロットした各処理群の成長速度が示される(図12)。1日目にhIgで処置されたマウスに関しては29日目に40mmの平均腫瘍容量に達した。しかしながら、CNTO859で処置されたマウスでは、平均腫瘍容量は36日目まで〜40mmに達しなかった。
【0079】
1日目におけるCNTO859を用いる動物の処置は腫瘍成長の46.9%抑制を生じた(P<0.0001)(図12参照)。約50−100mmにおける腫瘍の処置は28%の穏やかであるが有意でない抑制を生じた(P<0.6280)(図13参照)。
【0080】
14日CNTO859−処置群では7匹のマウスのなかの2匹は腫瘍移植後18日で死亡させなければならなかった。これらの動物の最終腫瘍容量は、それぞれ、129.97mmおよび461.10mmであった。14日hIg処置群では、8匹の動物が18日目に7匹に減少した。これらの理由のために、試験の最後の処置工程は25日目に終了した。
【0081】
まとめ CNTO859は腫瘍成長率を46.9%まで抑制した。我々の知識の限りでは、抗−ヒト組織因子抗体が膵臓腺癌の腫瘍成長を抑制する能力を有することが初めて示された。CNTO859を用いる早期処置はhIg対照抗体と比べて腫瘍成長率の有意な抑制(P<0.0001)を生じた。CNTO859を用いる後期処置は腫瘍成長率を28%抑制したが統計学的に有意でなかった(P=0.6280)。
実施例4
マトリゲル脈管形成モデルにおけるPANC−1膵臓腺癌により誘発される脈管形成の抑

この実施例では、我々はマトリゲル脈管形成モデルにおけるPANC−1膵臓腺癌により誘発される脈管形成の抑制における抗−ネズミ組織因子抗体の効果を示す。ネズミ組織因子に対する抗体は全長mIgG2a抗体に転化されたヒト抗体配列のファージライブラリーの指定された選択を用いて得られた。PHD126およびPHD127と表示されるヒト抗−マウスTF抗体は両者ともマウス組織因子の活性をCNTO859およびその同族体のものと同じ機構により抑制する。具体的には、PHD126およびPHD127はFXの競合抑制剤であり、そしてTF、因子VIIaおよび酵素的に活性な因子Xaにより形成される三元複合体の生成を抑制する。両方の抗体はネズミTFにより促進される凝固を抑制しそしてネズミTFに関してヒトTFより選択的である。
【0082】
材料および方法 チャールス・リバー・ラボラトリーズ(ウィルミントン)からの生後4〜6週間の雌ヌード(Nu/NuCD1)マウスが得られそして実験前10−14日間にわたり気候順化された。マウスはフィルター・トップ・プラスチック・ケージ内で(7匹/ケージ)飼育されそしてオートクレーブにかけられた食料および水を随時供給された。試験開始前少なくとも7日間入れられた番号がつけられた耳札または刺青が動物を個別に同定した。入手先、性別、動物数、動物ID番号、群番号、処置、試験番号およびIACUC処方番号の標識が付けられたケージカードがケージに固定された。全ての動物試験はペンシルバニア州、ラドノルのセントコル・インコーポレーテッドにおいて動物試験場で行われた。
【0083】
ヒト膵臓腺癌細胞系統PANC−1はATCC(メリーランド州、ロックビル、カタログ#CRL−1687)から得られた。それらはウイルスまたはマイコプラズマ汚染がないと試験され、そしてセントコルズ・セル・バイオロジー・サービセスにより貯蔵された。
【0084】
抗体の競合IgG変種はセントコルで処理されそしてクローン化された:PHD126株溶液は1.7mg/mlであり、PHD株溶液は0.62mg/mLであり、そして無関係な対照抗体cVaMは10.09mg/MLであった。全ての抗体が試験されそしてLAL<4EU/mgを有していた。
【0085】
PANC−1細胞を対数期においてトリプシン処理により回収し、次に完全培地中で1回そしてHBSS中で1回洗浄した。PANC−1細胞(3.2×10個の細胞)を8.0mLの氷冷殺菌性HBSS中に再懸濁させ、そして24mLの氷冷マトリゲル(ベクトン・ディクソン(Becton Dickson))と混合した(最終濃度は1×10個の細胞であった)。マトリゲルの最終濃度は10mg/mLであった。
【0086】
マウスを5群(7匹のマウス/群)に無作為分類した。マウスをケタミン(Ketamine)/キシラジン(xylazine)(90/01mg/kg、腹腔内)で麻酔をかけそして体重測定した。マウスに2つの部位のそれぞれに0.5mlのマトリゲルを腫瘍細胞懸濁液と共に注射した(群1〜4)。群5の動物にはマトリゲルだけを注射した。
【0087】
注射部位は、各側面上で最終肋骨の後方約0.5インチ且つ背骨からの0.5インチの背側であった。注射部位における指押しがマトリゲル重合を促進しそしていずれかの起きうる漏出を防止する。麻酔薬の使用および冷たい物質の注射により、動物が意識を取り戻すまで体温は維持された。これらの条件下で、脈管形成因子はゆっくり放出され脈管形成の進行および新脈管形成を刺激する。血管によるゲル栓の侵襲は12−48時間内に起き、そして新脈管形成はマトリゲルの注射後7−10日間まで続く。
【0088】
動物に0.2cc(10mg/kg)の各試験製品または10mL/kgの対照を腫瘍
/マトリゲル移植後1および5日目に注射した。
【0089】
【表6】

【0090】
全ての動物を1、5、および9日目(試験の終了時)に体重測定した。終了時にマトリゲル栓を切除しそして重量測定した。9日目に、全てのマウスをCO窒息により安楽死させた。動物を閉鎖容器(空の微小隔離ケージまたは密封プラスチックバッグ)内で腫瘍学研究所に移した。動物飼育場の外側では、動物は生物安全フード内で取り扱われた。作業が完了した時に、体は密封プラスチックバッグ内で動物飼育場冷凍機に戻された。栓を外科的に除去しそして盲検方式で重量測定した。栓を写真撮影しそして次にヘモグロビン含有量および管長さに関して処理した。
【0091】
試験中のいずれかの時点で動物が瀕死状態(>15%の体重喪失、呼吸困難、運動失調,震顫など)になった場合には、PIが通知されそして動物は安楽死されるであろう。体の処理はPIの自由裁量であった。
【0092】
まとめ 管密度分析後に、PHD126がPANC−1誘発性脈管形成を約60%(統計学的に有意でない)抑制したがPHD127は脈管形成を対照抗体と比べて約88%(p<0.05)抑制したことを我々は見出した。
【0093】
PHD127は脈管形成を66%までの率で(p<0.05、一方向ANOVA)抑制し、抗−組織因子抗体が脈管形成を抑制する能力を有することを示した。PHD126を用いる処置も脈管形成を同じモデルにおいて約45%抑制したが、結果は統計学的に有意でなかった(図14)。
【0094】
これらのデータは、増殖する細胞は宿主TFが介在する宿主応答を生じて脈管形成をもたらし、従って腫瘍成長を許す条件を作成することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、ヌードマウスの側腹部内に皮下移植されそしてhIgに無関係にCNTO859またはHBSSを1週1回0日目から始まって投与されたヒト乳癌細胞の腫瘍成長速度(容量変化)を示すグラフである。
【図2】図2は、CNTO859またはhIgが1週1回14日目から始まって投与されたマウス群に関する図1と同じ実験からのデータを示すグラフである。
【図3】図3は、対照動物、PBSまたは対照ヒトIgのいずれかで処置された動物、およびCNTO859で処置された動物のいずれかからの腫瘍容量における変化を示すグラフである。
【図4】図4は、対照動物、PBSまたは対照ヒトIgのいずれかで処置された動物、およびCNTO859で処置された動物のいずれかからの最終腫瘍容量の平均および標準偏差を表わす棒グラフである。
【図5】図5は、腫瘍が移植された日と同じ日から始まるPBS、対照IgまたはCNTO859のいずれかで処置された動物における腫瘍出現率を示す。
【図6】図6は、PBS、対照ヒトIgまたは種々の薬用量のCNTO859のいずれかで処置された動物における容量により測定されたMDAMB231異種移植片の腫瘍進行を示す。
【図7】図7は、PBS、対照ヒトIgまたは種々の薬用量のCNTO859(0.1、1、5、10および20mg/kg)のいずれかで処置された動物からの最終腫瘍容量の分布を示す分布プロットである。
【図8】図8は、マウスに(乳房組織に)正常位移植されたヒト乳癌細胞MDAMB231異種移植片を用いそしてマウスがPBS、対照ヒトIg、CNTO859Ala/Alaまたは種々の薬用量(0.01、0.1および1mg/kg)のCNTO859およびCNTO860のいずれかで処置された実験に関する時間につれての腫瘍容量のグラフである。
【図9】図9は、0.1mg/kgにおける対照並びにCNTO859およびCNTO860だけを示す、図8に示されたものと同じ実験からの群の4種の平均および標準偏差を示す。
【図10】図10は、図8と同じ実験における各群からの個々の最終腫瘍容量および平均の各々のグラフ表示である。
【図11】図11は、図8と同じ実験からの腫瘍出現データを示す。
【図12】図12は、翌日から始まるCNTO859で処置されたマウスに移植されたBxPC−3ヒト膵臓腫瘍細胞の腫瘍成長速度(容量変化)を示すグラフである。
【図13】図13は、定着した腫瘍をCNTO859で処置した場合のマウスに移植されたBxPC−3ヒト膵臓腫瘍細胞の腫瘍成長速度(容量変化)を示すグラフである。
【図14】図14は、マウスにおいてマトリゲル(MATRIGEL)内の管長さにより測定されたPANC−1ヒト膵臓腫瘍細胞誘発性脈管形成がヒト抗−ネズミTF抗体(PHD127)により88%(p<0.05)減じられることを示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする哺乳動物に組織因子拮抗物質を該哺乳動物における脈管化された組織の増加を抑制するのに有効な量で投与することを含んでなる、脈管化された組織における増加により特徴づけられる哺乳動物における疾患の処置方法。
【請求項2】
疾患が癌、網膜症、黄斑変性、慢性関節リウマチおよび乾癬よりなる群から選択される請求項1の方法。
【請求項3】
処置を必要とする哺乳動物に組織因子拮抗物質を該哺乳動物における腫瘍の成長を抑制するのに有効な量で投与することを含んでなる、処置を必要とする哺乳動物における腫瘍の成長の抑制方法。
【請求項4】
組織因子拮抗物質が組織因子モノクローナル抗体またはその断片である請求項3の方法。
【請求項5】
抗体断片がFab、Fab’もしくはF(ab’)2断片またはその誘導体である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抗体またはその断片が血漿中の組織因子である因子VIIa:因子X複合体の生成を防止する請求項4に記載の方法。
【請求項7】
モノクローナル抗体または断片がヒト組織因子と結合するためのモノクローナル抗体TF8−5G9と競合する請求項4に記載の方法。
【請求項8】
モノクローナル抗体が静脈内投与される請求項4に記載の方法。
【請求項9】
モノクローナル抗体が0.05mg/kg〜12.0mg/kgの体重の量で投与される請求項4に記載の方法。
【請求項10】
モノクローナル抗体が巨丸剤服用量で投与され、引き続き該抗体の注入が行われる請求項4に記載の方法。
【請求項11】
哺乳動物がヒト患者である請求項1または3に記載の方法。
【請求項12】
腫瘍が乳癌または膵臓癌である請求項3の方法。
【請求項13】
抗体が第二の抗脈管形成剤と組み合わせて投与される請求項1〜12のいずれかの方法。
【請求項14】
第二の抗脈管形成剤がアルファVを含有する付着分子と特異的に結合しうるMabである請求項13の方法。
【請求項15】
第二の抗脈管形成剤が脈管形成をもたらす細胞信号化経路に関係する他の標的に結合しうるかまたはそれを機能的に遮断しうるMabである請求項13の方法。
【請求項16】
抗体が抗体療法、放射線療法、化学療法剤、プロテオソーム阻害剤、またはファルネシルトランスフェラーゼ剤と組み合わせて投与される請求項3〜12のいずれかの方法。
【請求項17】
癌、網膜症、黄斑変性、慢性関節リウマチまたは乾癬の処置のための脈管形成−抑制量の組織因子拮抗物質を含んでなる薬品の製造における組織因子拮抗物質の使用。
【請求項18】
腫瘍の処置のための腫瘍成長を抑制するのに有効な量の組織因子拮抗物質を含んでなる薬品の製造における組織因子拮抗物質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−526641(P2006−526641A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514980(P2006−514980)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/016663
【国際公開番号】WO2004/110363
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】