説明

抗ウイルス性化合物ならびにそれを含む医薬組成物

抗ウイルス活性、具体的には、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性を示す化合物、ならびに、その作製方法および使用方法が本明細書中に記載される。1つの実施態様において、該化合物は、ピペラジン環およびイソオキサゾール環を含有し、かつ、場合によって、1つまたは複数の置換基により置換される複素環式アミドである。該化合物は、経腸投与または腸管外投与のために好適な組成物を形成するために、1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤と一緒に配合することができる。該化合物は、好ましくは、A型インフルエンザ感染(例えば、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3およびH10N7など)を処置または防止するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス活性、具体的にはインフルエンザに対する抗ウイルス活性を有する小分子、ならびに、その作製方法および使用方法の分野におけるものである。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、オルトミクソウイルス科のRNAウイルスによって引き起こされる。3つのタイプのインフルエンザウイルスが、存在する(A型、B型およびC型)。A型インフルエンザウイルスは、哺乳動物(例えば、ヒト、ブタ、フェレット、ウマ)および鳥類に感染する。A型インフルエンザウイルスは、世界的な健康上の関心事であり、1900年以降において世界中で5千万人以上を死亡させている3回の主な大流行の原因であった。例えば、1918年の壊滅的「スペイン風邪」(H1N1のA型インフルエンザウイルス)は、世界中で2千万人以上を死亡させた。1957年のアジア風邪の大流行(H2N2)、1968年の香港風邪の大流行(H3N2)、1970年のH1N1の再出現(ロシア風邪)、ならびに、1997年および2003年の鳥インフルエンザウイルスH5N1を含めて、その後の大流行は、流行性インフルエンザ、または、インフルエンザウイルスを用いた起こり得るバイオテロ攻撃が依然として、世界的規模の健康および安全に対する大きな脅威であることを示唆する。歴史を通した公衆衛生に対するインフルエンザウイルスの計り知れない影響にもかかわらず、インフルエンザ感染症のための標準的な処置は依然として不十分なままである。
【0003】
小分子に基づく治療剤がインフルエンザの毒性と闘うための最も一般的な標的には、プロトン選択的なM2イオンチャネルと、タンパク質のノイラミダーゼ(NA)とが含まれる。M2イオンチャネルは、A型インフルエンザウイルスのウイルスエンベロープの維持に不可欠であり、一方、NAは、宿主細胞からの新生ウイルス粒子の出芽を促進させる。抵抗性が、両方の標的に向けられる阻害剤にはよく見られ、臨床単離体では広範囲に広がっている。2008年のインフルエンザH1N1ウイルス(ブタインフルエンザ)サンプルのほぼ100%が、ノイラミダーゼ阻害剤のオセルタミビル(タミフル)に対して抵抗性であり、一方、H3N2ウイルスの90%超が、M2チャネルブロッカーのアダマンタン系薬剤に対して抵抗性であった。
【0004】
抵抗性のほかに、投与様式および環境上の影響を含む様々な要因が、効果的なインフルエンザ処置の開発に影響を及ぼしている。例えば、ザナミビル(リレンザ)は、吸入によって投与され得るだけであり、通気性が乏しい感染した肺組織には達しないことがある。さらに、広範囲に使用され、また、備蓄されている薬物のオセルタミビルは、通常の下水処理の過程では分解されず、したがって、環境問題を引き起こす。
【0005】
インフルエンザの複製を阻害し、インフルエンザ感染の毒性を軽減し、かつ/または、インフルエンザ感染を防止する抗ウイルス性化合物が求められている。
【0006】
したがって、ウイルス感染症、具体的には、インフルエンザ感染症を効果的に処置または防止する抗ウイルス性化合物、該化合物を作製する方法、および、該化合物を使用する方法を提供することが、本発明の目的の1つである。
【発明の概要】
【0007】
抗ウイルス活性を有する化合物、具体的には、インフルエンザに対する抗ウイルス活性を有する化合物、ならびに、該化合物を作製する方法および使用する方法が、本明細書中に記載される。1つの実施態様において、本発明の化合物は、式I〜VIまたはその医薬的に許容される塩を有する。
【0008】
好ましい実施態様として、NT抑制剤は、下記の式Iの構造を有する:
【化1】

(式I)
式中、Ar、ArおよびArは、それぞれが独立して、置換され、あるいは非置換のアリール基またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在(すなわち、直接の結合)であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R)−、−C(R)=C(R)−および−C(R−から選択され、
ただし、nは0〜6であり、かつ、R〜Rは、それぞれが独立して、水素、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシから選択される;かつ、
Wは、直鎖状の基、または5〜7員の、置換され、あるいは非置換の環状または複素環式の基である(Cy)。
【0009】
いくつかの実施態様において、Arが、水素、水酸基、ニトロ、アミノまたはアジドからなる群から選択される1つまたは複数の置換基により置換され、Arが、メチル基により置換され、XがC=Oであり、Yおよび/またはZが非存在であり、かつ/あるいは、Arが、ハロゲン、ニトロまたはそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の置換基により置換される。
【0010】
いくつかの実施態様において、Cyが、2個の窒素原子を含有する置換された5〜7員の不飽和環であり、ただし、一方の窒素原子がXに結合し、かつ、別の窒素原子がZに結合する。
【0011】
好ましい実施態様として、Cyが、置換ピペラジンであり、ただし、N1(1位にあるN)がXに結合し、かつ、N4(4位にあるN)がZに結合する。
【0012】
いくつかの実施態様において、NT抑制剤は、下記の式IIの構造を有する:
【化2】

(式II)
式中、ArおよびArは、それぞれが独立して、置換され、あるいは非置換のアリール基、またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C=O、−S=O、−SO、−N(R10)=O、−C=Cおよび−C(R1112からなる群から選択され、
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
T、QおよびRは、独立して、C(R)、窒素、酸素、リン、ケイ素、イオウおよびヒ素から選択される;
AおよびDは、それぞれが独立して、CR1516またはNR17である;
およびR〜R17は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択されるか、そうでなければ、−CR1516−、−NR17−またはそれらの組合せが、必要に応じた随意的な架橋メチレン基と一緒になったとき、5〜8員の環状構造を形成する。
【0013】
いくつかの実施態様において、Arが、水素、水酸基、ニトロ、アミノまたはアジドにより置換され、Xが、C=Oであり、YおよびZが、非存在であり、かつ/あるいは、Arが、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せにより置換される。
【0014】
いくつかの実施態様において、Rが、メチルである。
【0015】
いくつかの実施態様において、Qが、炭素であり、Tが、酸素であり、かつ/または、Rが、窒素である。
【0016】
いくつかの実施態様において、gおよびmが、1であり、A−Dが、ピペラジンを規定するように、AおよびDが、NR17である。
【0017】
いくつかの実施態様において、NT抑制剤は、下記の式IIIの構造を有する:
【化3】

(式III)
式中、ArおよびArは、それぞれが独立して、置換され、あるいは非置換のアリール基またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R10)−、−C(R11)=C(R12)−および−C(R1415−からなる群から選択され、
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
A、D、T、QおよびRは、独立して、C(R)、窒素、酸素、リン、ケイ素、イオウおよびヒ素から選択される;
およびR〜R15は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【0018】
いくつかの実施態様において、Arが、水素、水酸基、ニトロ、アミノまたはアジドにより置換され、Xが、C=Oであり、YおよびZが、非存在であり、かつ/あるいは、Arが、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せにより置換される。
【0019】
好ましい実施態様として、Qが、炭素であり、Tが、酸素であり、かつ/または、Rが、窒素である。
【0020】
いくつかの実施態様において、AおよびDが、窒素である。いくつかの実施態様において、RおよびR13が、独立して、水素またはメチルである。いくつかの実施態様において、Rが、メチルであり、R13が、水素である。
【0021】
いくつかの実施態様において、NT抑制剤は、下記の式IVの構造を有する:
【化4】

(式IV)
式中、X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R10)−、−C(R11)=C(R12)−および−C(R1314−からなる群から選択される;
ただし、nは、0〜6である;
T、QおよびRは、独立して、C(R)、窒素、酸素、リン、ケイ素、イオウおよびヒ素から選択される;かつ
Cyは、4〜7員の、置換され、あるいは非置換の環状または複素環式の基である;
〜R14は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【0022】
いくつかの実施態様において、Cyが、2個の窒素原子を含有する置換された5〜7員の不飽和環であり、ただし、一方の窒素原子が、Xに結合され、かつ、別の窒素原子が、Zに結合される。
【0023】
いくつかの実施態様において、Cyが、置換ピペラジンであり、N1が、Xに結合され、かつ、N4が、Zに結合され、YおよびZが、非存在であり、Xが、C=Oであり、Tが、酸素であり、Qが、炭素であり、かつ/または、Rが、窒素である。
【0024】
いくつかの実施態様において、R〜RおよびR〜Rが、独立して、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せから選択される。
【0025】
いくつかの実施態様において、Rが、メチル基である。
【0026】
いくつかの実施態様において、NT抑制剤は、下記の式Vの構造を有する:
【化5】

(式V)
式中、Ar、ArおよびArは、それぞれが独立して、置換され、あるいは非置換のアリール基、またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R)−、−C(R)=C(R)−および−C(R−からなる群から選択される;
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
QおよびTは、独立して、窒素またはCRから選択される;かつ
〜R、R10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【0027】
いくつかの実施態様において、QおよびTが、ともに窒素である。
【0028】
いくつかの実施態様において、R10が、メチル基であり、かつ/または、R11が、水素である。いくつかの実施態様において、R10およびR11が、ともに水素である。
【0029】
いくつかの実施態様において、YおよびZが、非存在であり、Xが、C=Oである。
【0030】
いくつかの実施態様において、gおよびmが、1である。
【0031】
好ましい実施態様として、ArおよびArが、置換フェニルであり、かつ/または、Arが、置換イソオキサゾールである。
【0032】
いくつかの実施態様において、NT抑制剤は、下記の式VIの構造を有する:
【化6】

(式VI)
式中、X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R12)−、−C(R13)=C(R14)−および−C(R1516−からなる群から選択され、
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
QおよびTは、独立して、窒素またはCR17から選択される;かつ
〜R17は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【0033】
いくつかの実施態様において、QおよびTが、ともに窒素である。
【0034】
いくつかの実施態様において、YおよびZが、非存在であり、かつ/または、Xが、C=Oである。
【0035】
いくつかの実施態様において、R10が、メチル基であり、かつ/または、R11が、水素である。
【0036】
いくつかの実施態様において、gおよびmが、1である。
【0037】
いくつかの実施態様において、R〜RおよびR〜Rが、独立して、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基とニトロ基の組合せから選択される。
【0038】
本明細書中に記載されるいくつかの実施態様において、Arは、炭素と、例えば窒素のような前記ヘテロ原子との間の二重結合を含む、1,2位または1,3位に2つのヘテロ原子を有する、5員のヘテロアリール基である。
【0039】
本明細書中に記載されるいくつかの実施態様において、Arは、1,2位または1,3位に窒素原子と酸素原子を有し、炭素と、前記窒素の間の二重結合を有する、5員のヘテロアリール基である。
【0040】
本明細書中に記載されるいくつかの実施態様において、ArとArは、1、2,3,4、または5の置換基を有するフェニル置換され、好ましくは、2,4位または2,6位において2つの置換基に置換され、かつ/または、好ましくは、2位において1つの置換基に置換される。
【0041】
これらの化合物は、例えばインフルエンザのような、ウイルス感染を防止、かつ/または、処理するために投与される。これらの化合物は、例えば溶液あるいは懸濁液の形態で腸管外投与され、または、例えば錠剤あるいはカプセルの形態で経腸投与される。
【0042】
医薬組成物は、本明細書中に記載される化合物の1つまたは複数の効果的な量を含有する。効果的な量的範囲は、個体毎に異なり得る;しかし、最適な用量は、例えば処方医のような、当業者によって容易に決定される。用量は、(例えば、服用あたり、または、1日あたり)与えられる総量によって、または、濃度によって見積もられ得る。0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、250、500および1000mg/kg/日の用量が、処置のために適切であり得る。もう1つの実施態様において、1日の投薬量が、0.2〜250mg/kgである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1a】化合物1の化学構造である。
【図1b】化合物1の濃度の関数として、プラーク形成単位(PFU)におけるパーセント低下を示すグラフである。
【図2a】化合物2の化学構造である。
【図2b】化合物2の濃度の関数として、プラーク形成単位(PFU)におけるパーセント低下を示すグラフである。
【図3a】化合物3の化学構造である。
【図3b】化合物3の濃度の関数として、プラーク形成単位(PFU)におけるパーセント低下を示すグラフである。
【図4a】化合物4の化学構造である。
【図4b】化合物4の濃度の関数として、プラーク形成単位(PFU)におけるパーセント低下を示すグラフである。
【図5a】化合物5の化学構造である。
【図5b】化合物5の濃度の関数として、プラーク形成単位(PFU)におけるパーセント低下を示すグラフである。
【図6a】化合物6の化学構造である。
【図6b】化合物6の濃度の関数として、プラーク形成単位(PFU)におけるパーセント低下を示すグラフである。
【図7a】化合物7の化学構造である。
【図7b】化合物7の濃度の関数として、プラーク形成単位(PFU)におけるパーセント低下を示すグラフである。
【図8a】化合物8の化学構造である。
【図8b】化合物8の濃度の関数として、プラーク形成単位(PFU)におけるパーセント低下を示すグラフである。
【図9a】化合物9の化学構造である。
【図9b】化合物9の濃度の関数として、プラーク形成単位(PFU)におけるパーセント低下を示すグラフである。
【図10a】化合物10の化学構造である。
【図10b】化合物10の濃度の関数として、プラーク形成単位(PFU)におけるパーセント低下を示すグラフである。
【発明の詳細な説明】
【0044】
I.定義
本明細書中で一般に使用されるような「アルキル」またはその一部分には、直鎖アルキル、分枝鎖アルキル、シクロアルキル、アルキル置換シクロアルキルおよびシクロアルキル置換アルキルが含まれる。別途示される場合を除き、アルキルは一般には、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜5個の炭素原子、好ましくは、メチル、エチルまたはプロピルを有する。直鎖アルキルまたは分枝鎖アルキルは、一般には、その骨格において30個以下の炭素原子(例えば、直鎖についてはC〜C30、分枝鎖についてはC〜C30)を有し、好ましくは20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは6個以下、最も好ましくは5個以下を有する。同様に、シクロアルキルは、3〜20個の炭素原子をその環構造において有し、好ましくは3〜10個の炭素原子をその環構造において有し、最も好ましくは5、6または7個の炭素を環構造において有する。アルキルの例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、ならびに、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルの同族体および異性体が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
用語「アルキル」は、1つまたは複数の置換基を炭化水素基の1つまたは複数の炭素原子において含み、同様にまた、ヘテロアルキルを含む。好適な置換基には、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など;水酸基;−NR、式中、RおよびRは独立して、水素、アルキルまたはアリールであり、かつ、窒素原子は場合により四級化される;−SR、式中、Rは、水素、アルキルまたはアリールである;−CN;−NO;−COOH;カルボキシラート;−COR、−COORまたは−CONR、式中、Rは、水素、アルキルまたはアリールである;アジド、アラルキル、アルコキシル、イミノ、ホスホナート、ホスフィナート、シリル、エーテル、スルホニル、スルホンアミド、ヘテロシクリル、芳香族成分またはヘテロ芳香族成分、−CF;−NCOCOCHCH;−NCOCOCHCH;−NCS;およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書中で一般に使用されるような「アルケニル」またはその一部分には、直鎖アルケニルまたは分枝鎖アルケニル、シクロアルケニル、アルキル置換シクロアルケニルが含まれ、また、本明細書中で一般に使用されるような「アルキニル」またはその一部分には、直鎖アルキニル基または分枝鎖アルキニル基あるいはシクロアルキニル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルケニル、シクロアルキニル基またはシクロアルキル置換アルキニル基が含まれる。別途示される場合を除き、アルケニルおよびアルキニルは、一般には、2〜30個の炭素原子、2〜20個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、2〜6個の炭素原子、2〜5個の炭素原子を有する。直鎖または分枝鎖のアルケニルまたはアルキニルは、一般には、その骨格において30個以下の炭素原子(例えば、直鎖についてはC〜C30、分枝鎖についてはC〜C30)を有し、好ましくは20個以下、好ましくは10個以下、より好ましくは6個以下、最も好ましくは5個以下を有する。アルケニルまたはアルキニルは、一般には、2〜30個の炭素を鎖において有し、好ましくは2〜20個の炭素を鎖において有し、好ましくは2〜10個の炭素を鎖において有し、より好ましくは2〜6個の炭素を有し、最も好ましくは2〜5個の炭素を有する。同様に、シクロアルケニルまたはシクロアルキニルは、3〜20個の炭素原子をその環構造において有し、好ましくは3〜10個の炭素原子をその環構造において有し、最も好ましくは5、6または7個の炭素を環構造において有する。シクロアルケニル基またはシクロアルキニル基の例には、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−プロピニルおよび3−プロピニル、ならびに、3−ブチニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
用語「アルケニル」および用語「アルキニル」は、1つまたは複数の置換基を炭化水素基の1つまたは複数の炭素原子において含む。好適な置換基には、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など;水酸基;−NR、式中、RおよびRは独立して、水素、アルキルまたはアリールであり、かつ、窒素原子は、場合により四級化される;−SR、式中、Rは、水素、アルキルまたはアリールである;−CN;−NO;−COOH;カルボキシラート;−COR、−COORまたは−CONR、式中、Rは、水素、アルキルまたはアリールである;アジド、アラルキル、アルコキシル、イミノ、ホスホナート、ホスフィナート、シリル、エーテル、スルホニル、スルホンアミド、ヘテロシクリル、芳香族成分またはヘテロ芳香族成分、−CF;−NCOCOCHCH;−NCOCOCHCH;−NCS;およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
本明細書中で一般に使用されるような「アリール」またはその一部分は、6〜30個の炭素原子を有し、好ましくは6〜18個の炭素原子を有する炭素系芳香族環を示し、1つの芳香族環または複数の縮合した芳香族環から構成され、この場合、そのような芳香族環には、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アセナフテニル、アセナフチレニル、アントラセニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニルが含まれ得る。アリール基は、場合により、当業者には知られているように、例えば、Greene他による「Protective Groups in Organic Synthesis」(John Wiley and Sons、第3版、2002年)において教示されるように、非保護であるか、または、必要に応じて保護されるかのどちらであっても、アルキル、−NR(式中、RおよびRは、独立して、水素、アルキルまたはアリールであり、かつ、窒素原子は、場合により四級化される)、アジド、水酸基、アシル、アミノ、ハロゲン、アルキルアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、スルファート、ホスホン酸、ホスファートまたはホスホナートからなる群から選択される1つまたは複数の成分により置換され得る。いくつかの実施態様において、前記アルキルには、C〜C10アルキル、C〜Cアルキル、C〜Cアルキル、メチル、エチルおよび/またはプロピルなどが含まれる。用語「アリール」は、1つまたは複数の置換基を炭化水素基の1つまたは複数の炭素原子において含む。好適な置換基には、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など;水酸基;−NR、式中、RおよびRは、独立して、水素、アルキルまたはアリールであり、かつ、窒素原子は、場合により四級化される;−SR、式中、Rは、水素、アルキルまたはアリールである;−CN;−NO;−COOH;カルボキシラート;−COR、−COORまたは−CONR、式中、Rは、水素、アルキルまたはアリールである;アジド、アラルキル、アルコキシル、イミノ、ホスホナート、ホスフィナート、シリル、エーテル、スルホニル、スルホンアミド、ヘテロシクリル、芳香族成分またはヘテロ芳香族成分、−CF;−NCOCOCHCH;−NCOCOCHCH;−NCS;およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書中で一般に使用されるような「結合ポケット」または「結合部位」は、その立体配置の結果として、同じ分子もしくは分子複合体の一部分もしくは領域、または、異なる分子、分子複合体および/もしくは化学化合物の一部分もしくは領域と都合よく会合するか、あるいは、同じ分子もしくは分子複合体の一部分もしくは領域、または、異なる分子、分子複合体および/もしくは化学化合物の一部分もしくは領域によって占められる分子もしくは分子複合体の領域を示す。当業者によって理解されるであろうが、結合ポケット内の空洞の性質は、分子毎に異なる。
【0050】
本明細書中で一般に使用されるような「ヌクレオジン結合部位」は、A型インフルエンザのNPの裏側の本体ドメインに位置するインフルエンザ核タンパク質(NP)Aにおける部位を示す。この立体配座において、ヌクレオジンは、グルーブ(溝)において残基280〜残基311の間に位置する。当業者は、ヌクレオジン結合部位が、その部位において結合する化合物に依存してわずかに異なっており、また、本明細書中に開示される化合物の代わりに、および/または、本明細書中に開示される化合物に加えて、他の接触を取り込み得ることを理解するであろう。
【0051】
本明細書中で一般に使用されるような「複素環」またはその一部分あるいは「複素環式」は、不飽和または芳香族性の有無にかかわりなく、炭素ではない少なくとも1つの環原子を有する5〜12個の原子、好ましくは5〜7個の原子の、1つまたは複数の環を示す。好ましいヘテロ原子には、イオウ、酸素および窒素が含まれる。多数の環が、キノリンまたはベンゾフランでのように縮合していてもよい。特に好ましい複素環基が、O、S、P、Si、AsおよびNから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜10員の環である。複素環には、アゾリジン、ピロール、オキソラン、フラン、チオラン、チオフェン、ホスホラン、ホスホール、シラン、シロール、アルソラン、アルソール、イミダゾリン、ピラゾリジン、イミダゾール、イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、オキサゾール、オキサゾリン、イソオキサゾール、イソオキサゾリン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、チアゾール、チアゾリン、イソチアゾール、イソチアゾリン、ジオキソラン、オキサチオラン、ジチオラン、チアゾール、ジチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、ピペリジン、ピリジン、ピラン、テトラヒドロピラン、チアン、チオピラン、ピペラジン、ジアジン、モルホリン、オキサジン、チアジン、ジチアン、ジオキサン、ジオキシン、トリアジン、トリオキサン、テトラジン、アザパン、アゼピン、オキセパン、オキセピン、チエパン、チエピン、アゾカン、アゾシン、オキセカンおよびチオカンが含まれるが、これらに限定されない。複素環または複素環式は、また、「アリール」または「アルキル」において定義されるように、置換された環を示す。いくつかの実施態様において、「複素環」または「複素環式」は、二重結合を、炭素と、例えば窒素のような前記ヘテロ原子との間に含む。
【0052】
用語「複素環」は、1つまたは複数の炭素またはヘテロ原子において、1つまたは複数の置換基を含む。好適な置換基には、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など;水酸基;−NR、式中、RおよびRは独立して、水素、アルキルまたはアリールであり、かつ、窒素原子は場合により四級化される;−SR、式中、Rは、水素、アルキルまたはアリールである;−CN;−NO;−COOH;カルボキシラート;−COR、−COORまたは−CONR、式中、Rは、水素、アルキルまたはアリールである;アジド、アラルキル、アルコキシル、イミノ、ホスホナート、ホスフィナート、シリル、エーテル、スルホニル、スルホンアミド、ヘテロシクリル、芳香族成分またはヘテロ芳香族成分、−CF;−NCOCOCHCH;−NCOCOCHCH;−NCS;およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書中で一般に使用されるような「ヘテロアリール」またはその一部分は、N、O、P、Si、AsもしくはS原子またはそれらの組合せから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する芳香族基を示し、ただし、そのようなヘテロアリール基は、炭素原子または窒素原子において、必要に応じて置換される。ヘテロアリール環は、また、1つまたは複数の環状炭化水素、複素環式環、アリール環またはヘテロアリール環と縮合していてもよい。ヘテロアリールには、1個のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール(例えば、チオフェン系、ピロール系、フラン系);2個のヘテロ原子を1,2位または1,3位に有する5員ヘテロアリール(例えば、オキサゾール系、ピラゾール系、イミダゾール系、チアゾール系、プリン系);3個のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール(例えば、トリアゾール系、チアジアゾール系);3個のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール;1個のヘテロ原子を有する6員ヘテロアリール(例えば、ピリジン、キノリン、イソキノリン、フェナントリン、5,6−シクロヘプテノピリジン);2個のヘテロ原子を有する6員ヘテロアリール(例えば、ピリダジン系、シンノリン系、フタラジン系、ピラジン系、ピリミジン系、キナゾリン系);3個のヘテロ原子を有する6員ヘテロアリール(例えば、1,3,5−トリアジン);および4個のヘテロ原子を有する6員ヘテロアリールが含まれるが、これらに限定されない。特に好ましいヘテロアリール基が、O、SおよびNから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜10員の環である。いくつかの実施態様において、「ヘテロアリール」は、二重結合を、炭素と、例えば、窒素のような前記ヘテロ原子との間に含む。
【0054】
用語「ヘテロアリール」は、1つまたは複数の炭素またはヘテロ原子において、1つまたは複数の置換基を含む。好適な置換基には、ハロゲン、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など;水酸基;−NR、式中、RおよびRは、独立して、水素、アルキルまたはアリールであり、かつ、窒素原子は、場合により四級化される;−SR、式中、Rは、水素、アルキルまたはアリールである;−CN;−NO;−COOH;カルボキシラート;−COR、−COORまたは−CONR、式中、Rは、水素、アルキルまたはアリールである;アジド、アラルキル、アルコキシル、イミノ、ホスホナート、ホスフィナート、シリル、エーテル、スルホニル、スルホンアミド、ヘテロシクリル、芳香族成分またはヘテロ芳香族成分、−CF;−NCOCOCHCH;−NCOCOCHCH;−NCS;およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書中で一般に使用されるような「A型インフルエンザ」は、哺乳動物のA型インフルエンザウイルス、例えば、H3N2、H1N1、H2N2、H7N7およびH5N1(鳥インフルエンザウイルス)株およびそれらの変化体を示す。
【0056】
本明細書中で一般に使用されるような「低エネルギーの安定な複合体」は、薬物が、共有結合、水素結合、ジスルフィド結合、塩架橋、イオン結合、金属配位、疎水性力、ファンデルワールス相互作用、カチオン−π相互作用、π積み重なりおよびそれらの組合せを含めて、弱い分子間力から強い分子間力によって核タンパク質の結合部位において結合する複合体を示すが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書中で一般に使用されるような「核タンパク質」または「NP」は、核酸と構造的に会合するどのようなタンパク質をも示す。例示的な核タンパク質が、インフルエンザウイルスのいくつかの株で特定および配列決定される。多くの核タンパク質の配列が、NCBIデータベースにおいて見出され得る。インフルエンザA型に由来するいくつかの例示的なNP配列のGenBankのアクセション番号が、サブタイプH1N1についてはNP040982(AAA43467)であり、サブタイプH3N2についてはAAZ38620(YP308843)であり、サブタイプH5N1についてはAY856864およびAAF02400である。
【0058】
NP040982(AAA43467)[配列番号5]:
MASQGTKRSYEQMETDGERQNATEIRASVGKMIGGIGRFYIQMCTELKLSDYEGRLIQNSLTIERMVLSAFDERRNKYLEEHPSAGKDPKKTGGPIYRRVNGKWMRELILYDKEEIRRIWRQANNGDDATAGLTHMMIWHSNLNDATYQRTRALVRTGMDPRMCSLMQGSTLPRRSGAAGAAVKGVGTMVMELVRMIKRGINDRNFWRGENGRKTRIAYERMCNILKGKFQTAAQKAMMDQVRESRDPGNAEFEDLTFLARSALILRGSVAHKSCLPACVYGPAVASGYDFEREGYSLVGIDPFRLLQNSQVYSLIRPNENPAHKSQLVWMACHSAAFEDLRVLSFIKGTKVVPRGKLSTRGVQIASNENMETMESSTLELRSRYWAIRTRSGGNTNQQRASAGQISIQPTFSVQRNLPFDRTTVMAAFTGNTEGRTSDMRTEIIRMMESARPEDVSFQGRGVFELSDEKAASPIVPSFDMSNEGSYFFGDNAEEYDN
【0059】
AAZ38620(YP308843)[配列番号6]:
MASQGTKRSYEQMETDGDRQNATEIRASVGKMIDGIGRFYIQMCTELKLSDHEGRLIQNSLTIEKMVLSAFDERRNKYLEEHPSAGKDPKKTGGPIYRRVDGKWMRELVLYDKEEIRRIWRQANNGEDATAGLTHIMIWHSNLNDATYQRTRALVRTGMDPRMCSLMQGSTLPRRSGAAGAAVKGIGTMVMELIRMVKRGINDRNFWRGENGRKTRSAYERMCNILKGKFQTAAQRAMVDQVRESRNPGNAEIEDLIFLARSALILRGSVAHKSCLPACAYGPAVSSGYDFEKEGYSLVGIDPFKLLQNSQIYSLIRPNENPAHKSQLVWMACHSAAFEDLRLLSFIRGTKVSPRGKLSTRGVQIASNENMDNMGSSTLELRSGYWAIRTRSGGNTNQQRASAGQTSVQPTFSVQRNLPFEKSTIMAAFTGNTEGRTSDMRAEIIRMMEGAKPEEVSFRGRGVFELSDEKATNPIVPSFDMSNEGSYFFGDNAEEYDN
【0060】
AY856864[配列番号7]:
MASQGTKRSYEQMETGGERQNATEIRASVGRMVSGIGRFYIQMCTELKLSDYEGRLIQNSITIERMVLSAFDERRNRYLEEHPSAGKDPKKTGGPIYRRRDGKWVRELILYDKEEIRRIWRQANNGEDATAGLTHLMIWHSNLNDATYQRTRALVRTGMDPRMCSLMQGSTLPRRSGAAGAAVKGVGTMVMELIRMIKRGINDRNFWRGENGRRTRIAYERMCNILKGKFQTAAQRAMMDQVRESRNPGNAEIEDLIFLARSALILRGSVAHKSCLPACVYGLAVASGYDFEREGYSLVGIDPFRLLQNSQVFSLIRPNENPAHKSQLVWMACHSAAFEDLRVSSFIRGTRVVPRGQLSTRGVQIASNENMEAMDSNTLELRSRYWAIRTRSGGNTNQRRASAGQISVQPTFSVQRNLPFERATIMAAFTGNTEGRTSDMRTEIIGMMESARPEDVSFQGRGVFELSDEKATNPIVPSFDMNNEGSYFFGDNAEEYDN
【0061】
AAF02400[配列番号8]:
MASQGTKRSYEQMETGGERQNATEIRASVGRMVGGIGRFYIQMCTELKLSDQEGRLIQNSITVERMVLSAFDERRNRYLEEHPSAGKDPKKTGGPIYRRRNGKWVRELILYDKEEIRRIWRQANNGEDATAGLTHMMIWHSNLNDATYQRTRALVRTGMDPRMCSLMQGSTLPRRSGAAGAAIKGVGTMVMELIRMIKRGINDRNFWRGENGRRTRIAYERMCNILKGKFQTAAQKAMMDQVRESRNPGNAEIEDLIFLARSALILRGSVAHKSCLPACVYGLAVASGYDFEREGYSLVGIDPFRLLQNSQVFSLIRPKENPAHKSQLVWMACHSAAFEDLRVSSFIRGTRVIPRGQLSTRGVQIASNENVEAMDSSTLELRSRYWAIRTRSGGNTNQQRASAGQISVQPTFSVQRNLPFERVTIMAAFKGNTEGRTSDMRTEIIRMMESARPEDVSFQGRGVFELSDEKATNPIVPSFDMSNEGSYFFGDNAEEYDN
【0062】
本明細書中で一般に示されるような「ヌクレオジン」は、下記のような化学構造を有する:
【化7】

【0063】
本明細書中で一般に使用されるような「医薬的に許容される」とは、根拠のある医学的判断の範囲内において、妥当な利益/リスクの比に比例した、過度な毒性、刺激、アレルギー応答または他の問題、もしくは合併症を伴うことなく、ヒトおよび動物の組織と接触した使用のために好適であるような、化合物、物質、組成物および/または投薬形態物を示す。
【0064】
本明細書中で一般に使用されるような「医薬的に許容される塩」は、親化合物が、その酸塩または塩基塩を作製することによって改変される開示された化合物の誘導体を示す。医薬的に許容される塩の例には、例えばアミンなどの塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩;例えばカルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩が含まれるが、これらに限定されない。医薬的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、そのような従来の非毒性塩には、無機酸に由来する塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸および硝酸などに由来する塩、ならびに、有機酸から調製される塩、例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸およびイセチオン酸などから調製される塩が含まれる。
【0065】
本明細書中で一般に使用されるような「置換された」とは、アルキル、アルケニル、アルキニル、C〜Cシクロアルキル、ハロゲン、例えばフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード;シアノ;アルコキシ;ヒドロキシ、フェニル;および置換されたフェニルを含むが、これらに限定されない、1つまたは複数の置換基により置換される成分(例えば、アルキル基)を示す。
【0066】
本明細書中で一般に使用されるような「置換されたアリール」は、1つまたは複数の非妨害性の基を置換基として有するアリール基を示す。フェニル環における置換については、置換基はどのような配向であってもよい(すなわち、オルト、メタおよび/またはパラ)。いくつかの実施態様において、前記置換アリールには、2,6−二置換フェニルが含まれ、ただし、2つの置換基は定義される通りであり、好ましくは、それらの1つがハロゲン、とりわけClであり、かつ、もう一方がニトロ(NO)であり、または、それらの両方がハロゲン、とりわけClである。
【0067】
II.化合物
抗ウイルス活性を有する化合物、具体的には、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性を有する化合物が、本明細書中に記載される。
【0068】
いくつかの実施態様において、上記化合物は、下記の式I〜式VIまたはそれらの医薬的に許容される塩を有する。
【0069】
好ましい実施態様において、NP阻害剤は、下記の式Iの構造を有する:
【化8】

(式I)
式中、Ar、ArおよびArは、それぞれが独立して置換され、あるいは非置換のアリール基またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは独立して、非存在(すなわち、直接の結合)であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R)−、−C(R)=C(R)−および−C(R−から選択され、
ただし、nは0〜6であり、かつ、R〜Rはそれぞれが独立して、水素、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシから選択される;かつ
Wは、直鎖状の基であるか、あるいは、5〜7員の、置換され、あるいは非置換の環状または複素環式の基(Cy)である。
【0070】
いくつかの実施態様において、Arが、水素、水酸基、ニトロ、アミノまたはアジドより置換され、Arが、メチル基により置換され、Xが、C=Oであり、YおよびZが、非存在であり、Cyが、ピペラジンであり、かつ、Arが、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せにより置換される。
【0071】
いくつかの実施態様において、Cyが、2個の窒素原子を含有する置換された5〜7員の不飽和環であり、ただし、一方の窒素原子が、Xに結合し、かつ、別の窒素原子が、Zに結合する。
【0072】
好ましい実施態様において、Cyが、置換ピペラジンであり、ただし、N1が、Xに結合し、かつ、N4が、Zに結合する。
【0073】
いくつかの実施態様において、NP阻害剤は下記の式IIの構造を有する:
【化9】

(式II)
式中、ArおよびArは、それぞれが独立して、置換され、あるいは非置換のアリール基またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R10)−、−C(R11)=C(R12)−および−C(R1314−からなる群から選択される;
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
T、QおよびRは、独立して、C(R)、窒素、酸素、リン、ケイ素、イオウおよびヒ素から選択される;
AおよびDは、それぞれが独立して、CR1516またはNR17である;
およびR〜R17は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択されるか、そうでなければ、−CR1516−、−NR17−またはそれらの組合せが、必要に応じた随意的な架橋メチレン基と一緒になったとき、5〜8員の環状構造を形成する。
【0074】
いくつかの実施態様において、Arが、水素、水酸基、ニトロ、アミノまたはアジドにより置換され、Xが、−C=Oであり、YおよびZが、非存在であり、かつ、Arが、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せにより置換される。
【0075】
好ましい実施態様において、Rが、メチルである。
【0076】
いくつかの実施態様において、Qが、炭素であり、Tが、酸素であり、かつ、Rが、窒素である。
【0077】
いくつかの実施態様において、gおよびmが、1であり、かつ、AおよびDが、NR17であり、ただし、A−Dにより、ピペラジン系が、規定される。
【0078】
いくつかの実施態様において、NP阻害剤は、下記の式IIIの構造を有する:
【化10】

(式III)
式中、ArおよびArは、それぞれが独立して、置換され、あるいは非置換のアリール基またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R10)−、−C(R11)=C(R12)−および−C(R1415−からなる群から選択される;
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
A、D、T、QおよびRは、独立して、C(R)、窒素、酸素、リン、イオウ、ケイ素およびヒ素から選択される;
およびR〜R15は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【0079】
いくつかの実施態様において、Arが、水素、水酸基、ニトロ、アミノまたはアジドにより置換され、Xが、C=Oであり、YおよびZが、非存在であり、かつ、Arが、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せにより置換される。
【0080】
好ましい実施態様において、Qが、炭素であり、Tが、酸素であり、かつ、Rが、窒素である。
【0081】
いくつかの実施態様において、AおよびDが、窒素である。
【0082】
いくつかの実施態様において、RおよびR13が、独立して、水素またはメチルである。好ましい実施態様において、Rが、メチルであり、かつ、R13が、水素である。
【0083】
いくつかの実施態様において、組成物NP阻害剤は、下記の式IVの構造を有する:
【化11】

(式IV)
式中、X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R10)−、−C(R11)=C(R12)−および−C(R1314−からなる群から選択される;
ただし、nは、0〜6である;
T、QおよびRは、独立して、C(R)、窒素、酸素、リン、ケイ素、イオウおよびヒ素から選択される;かつ、
Cyは、4〜7員の置換または非置換の環状または複素環式の基である;かつ
〜R14は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【0084】
いくつかの実施態様において、Cyが、2個の窒素原子を含有する置換された5〜7員の不飽和環であり、ただし、一方の窒素原子が、Xに結合し、かつ、別の窒素原子が、Zに結合する。
【0085】
好ましい実施態様において、Cyが、置換ピペラジンであり、N1が、Xに結合し、かつ、N4が、Zに結合し、YおよびZが、非存在であり、Xが、C=Oであり、Tが、酸素であり、Qが、炭素であり、かつ、Rが、窒素である。
【0086】
いくつかの実施態様において、R〜RおよびR〜Rが、独立して、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せから選択される。
【0087】
好ましい実施態様において、Rが、メチル基である。
【0088】
いくつかの実施態様において、NP阻害剤は、下記の式Vの構造を有する:
【化12】

(式V)
式中、Ar、ArおよびArは、それぞれが独立して、置換され、あるいは非置換のアリール基、またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C=O、−S=O、−SO、−N(R)=O、−C=Cおよび−C(Rからなる群から選択され、
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
QおよびTは、独立して、窒素またはCRから選択される;かつ
〜R、R10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【0089】
いくつかの実施態様において、QおよびTが、ともに窒素である。
【0090】
いくつかの実施態様において、R10が、メチル基であり、かつ、R11が、水素である。別の実施態様において、R10およびR11が、ともに水素である。
【0091】
いくつかの実施態様において、YおよびZが、非存在であり、かつ、Xが、C=Oである。
【0092】
いくつかの実施態様において、gおよびmが、1である。
【0093】
好ましい実施態様において、ArおよびArが、置換フェニルであり、Arが、置換イソオキサゾールであり、YおよびZが、非存在であり、Xが、C=Oであり、QおよびTが、窒素であり、gおよびmが、1であり、R10が、メチルであり、かつ、R11が、水素である。
【0094】
いくつかの実施態様において、NP阻害剤は、下記の式VIの構造を有する:
【化13】

(式VI)
式中、X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R12)−、−C(R13)=C(R14)−および−C(R1516−からなる群から選択され、
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
QおよびTは、独立して、窒素またはCR17から選択される;かつ
〜R17は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【0095】
いくつかの実施態様において、QおよびTが、ともに窒素である。
【0096】
いくつかの実施態様において、R10が、メチル基であり、かつ、R11が、水素である。他の実施態様において、R10およびR11の両方が、水素である。
【0097】
いくつかの実施態様において、YおよびZが、非存在であり、かつ、Xが、C=Oである。
【0098】
いくつかの実施態様において、gおよびmが、1である。
【0099】
いくつかの実施態様において、R〜RおよびR〜Rが、独立して、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せから選択される。
【0100】
好ましい実施態様において、Rが、メチル基である。
【0101】
本明細書中に記載される例示的に示された化合物が、下記の化合物である:
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン(化合物1、図1aに示される構造式);
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−フェニル−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン(化合物2、図2aに示される構造式);
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(4−アミノ−フェニル)−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン(化合物3、図3aに示される構造式);
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(4−アジド−フェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン(化合物4、図4aに示される構造式);
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(2−クロロ−フェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン(化合物5、図5aに示される構造式);
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−2−メチル−ピペラジン−1−イル]−[3−(2−クロロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イル]−メタノン(化合物6、図6aに示される構造式);
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−2−メチル−ピペラジン−1−イル]−[3−フェニル−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン(化合物7、図7aに示される構造式);
[4−(4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(2−クロロ−フェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン(化合物8、図8aに示される構造式);
および[4−(4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(2,6−ジクロロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イル]−メタノン(化合物9、図9aに示される構造式)。
[4−(2−ニトロ−6−クロロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(2−クロロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イル]−メタノン(化合物10、図10aに示される構造式)。
【0102】
本明細書中に記載される化合物は、遊離酸または遊離塩基として、あるいは、医薬的に許容される塩として投与することができる。これらの化合物の医薬的に許容される塩は、従来の化学的方法によって、塩基性成分または酸性成分を含有する親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸形態または塩基形態を、水において、または、有機溶媒において、または、これら2つの混合物において、化学量論的量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製することができる;一般には、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。好適な塩の列挙が、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(第20版、Lippincott Williams&Wilkins、Baltimore、MD、2000年、704頁)に見出される。
【0103】
B.医薬組成物
本明細書中に記載される化合物、および/または、それらの医薬的に許容される塩は、この技術分野において知られている技術を使用して、経腸投与および腸管外投与のために好適な投薬形態物に配合することができる。
【0104】
医薬組成物は、本明細書中に記載される化合物の1つまたは複数の効果的な量を含有する。本明細書中で一般に使用されるような「効果的な量」は、抗ウイルス効果を、例えば、インビトロまたはインビボで明らかにするために普通に与えられるか、または処方される範囲に含まれる量または用量を示す。効果的な量の範囲は、個体毎に異なり得る;しかしながら、最適な用量は、例えば処方医のような、当業者によって容易に決定される。そのような範囲は、日常的な臨床診療では十分に確立されており、したがって、当業者には容易に決定可能である。用量は、(例えば、服用あたり、または、1日あたり)与えられる総量によって、または、濃度によって見積もられ得る。0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、100、250、500および1000mg/kg/日の用量が、処置のために適切であり得る。1つの実施態様において、1日の投薬量が、0.2〜250mg/kgである。
【0105】
本明細書中に記載される化合物は、安全かつ効果的であると見なされる1つまたは複数の医薬的に許容されるキャリアおよび/または賦形剤と組み合わせることができ、望ましくない生物学的副作用または望まれない相互作用を引き起こすことなく個体に投与され得る。キャリアは、有効成分以外の、医薬配合物に存在するすべての成分である。
【0106】
1.腸管外配合物
本明細書中に記載される化合物は、腸管外投与のために配合することができる。「腸管外投与」は、本明細書中で使用される場合、消化管あるいは非浸襲的な局所的経路または限局的経路を介すること以外のいずれかの方法による投与を意味する。例えば、腸管外投与には、患者への静脈内投与、皮内投与、腹腔内投与、胸膜内投与、気管内投与、筋肉内投与、皮下投与、注射による投与、および注入による投与が含まれ得る。
【0107】
腸管外配合物は、この技術分野において知られている技術を使用して水性組成物として調製することができる。典型的には、そのような組成物は、注射可能な配合物、例えば、溶液または懸濁物として、また、注射前に再構成媒体を加えることで溶液または懸濁物を調製するための使用について好適な固体形態物、例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子などとして、また、エマルジョン、例えば、油中水型(w/o)エマルジョン、水中油型(o/w)エマルジョンおよびそれらのマイクロエマルジョン、リポソームまたはエマルゾムなどとして調製することができる。
【0108】
キャリアは、例えば、水、エタノール、1つまたは複数のポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコール)、オイル、例えば、植物油(例えば、ピーナッツ油、トウモロコシ油、ゴマ油など)、およびそれらの組合せを含有する溶媒または分散媒体が可能である。適正な流動性を、例えば、被覆(例えば、レシチンなど)の使用によって、および/または、分散物の場合には要求される粒子サイズを維持することによって、および/または、界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合において、等張剤、例えば、糖または塩、例えば塩化ナトリウムなどを含むことが好ましいであろう。
【0109】
遊離酸または塩基あるいはその薬理学的に許容される塩としての活性な化合物の溶液および分散物を、界面活性剤、分散剤、乳化剤、pH改変剤およびそれらの組合せ、ただしこれらに限定されない、を含めて、1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤と好適に混合される水または別の溶媒あるいは分散媒体において調製することができる。
【0110】
好適な界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性の界面活性剤がなり得る。好適なアニオン性界面活性剤には、カルボキシラートイオン、スルホナートイオンおよびスルファートイオンを含有する界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。アニオン性界面活性剤の例には、長鎖アルキルスルホナートおよび長鎖アルキルアリールスルホナートのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど;ジアルキルナトリウムスルホスクシナート、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなど;ジアルキルナトリウムスルホスクシナート、例えば、ビス(2−エチルチオキシル)スルホコハク酸ナトリウムなど;および、アルキルスルファート、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなどが含まれる。カチオン性界面活性剤には、第四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、ポリオキシエチレンおよびココナツアミンが含まれるが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤の例には、エチレングリコールモノステアラート、プロピレングリコールミリスタート、グリセリルモノステアラート、グリセリルステアラート、ポリグリセリル−4−オレアート、ソルビタンアシラート、スクロースアシラート、PEG−150ラウラート、PEG−400モノラウラート、ポリオキシエチレンモノラウラート、ポリソルバート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG−1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、Poloxamer(登録商標)401、ステアロイルモノイソプロパノールアミドおよびポリオキシエチレン水素化タローアミドが含まれる。両性界面活性剤の例には、N−ドデシル−アラニンナトリウム、N−ラウリル−イミノジプロピオナートナトリウム、ミリストアンホアセタート、ラウリルベタインおよびラウリルスルホベタインが含まれる。
【0111】
配合物は、微生物の成長を防止するために保存剤を含有することができる。好適な保存剤には、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸およびチメロサールが含まれるが、これらに限定されない。また、配合物は、活性剤の分解を防止するために酸化防止剤を含有する場合がある。
【0112】
配合物は、典型的には、再構成されたとき、腸管外投与のために3〜8のpHに緩衝化される。好適な緩衝剤には、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤およびクエン酸塩緩衝剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
水溶性ポリマーは、多くの場合、腸管外投与のための配合物において使用される。好適な水溶性ポリマーには、ポリビニルピロリドン、デキストラン、カルボキシメチルセルロースおよびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。
【0114】
無菌の注射可能な溶液は、要求される量での活性な化合物を、上記で列挙された賦形剤の1つまたは複数とともに適切な溶媒または分散媒体に取り込み、要求される場合には、その後ろ過滅菌することによって調製することができる。一般には、分散物が、様々な滅菌された有効成分を、基本的分散媒体と、上記で列挙された成分からの要求される他の成分とを含有する無菌のビヒクルに取り込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、事前に滅菌ろ過されたその溶液に由来する有効成分および何らかのさらなる所望される成分の粉末をもたらす真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。このような粉末は、粒子が本質的には多孔性であるような様式で調製することができ、このことは粒子の溶解を増大させることができる。多孔性粒子を作製するための様々な方法が、この技術分野では広く知られている。
【0115】
本明細書中に記載される腸管外配合物は、即時放出、遅延放出、長期放出、パルス的放出およびそれらの組合せを含む制御された放出のために配合することができる。
【0116】
腸管外投与のために、1つまたは複数のNP阻害剤と、必要に応じた随意的な1つまたは複数のさらなる活性剤とを、制御された放出を提供するマイクロ粒子、ナノ粒子またはそれらの組合せに取り込むことができる。配合物が2つ以上の薬物を含有する実施態様において、これらの薬物は、同じタイプの制御された放出(例えば、遅延型、長期型、即時型またはパルス型)のために配合することができ、または、これらの薬物は、独立して、異なるタイプの放出(例えば、即時型および遅延型、即時型および長期型、遅延型および長期型、遅延型およびパルス型など)のために配合することができる。
【0117】
例えば、本発明の化合物および/あるいは1つまたは複数のさらなる活性剤を、薬物の制御された放出を提供するポリマーマイクロ粒子に取り込むことができる。薬物の放出が、マイクロ粒子からの薬物の拡散、ならびに/もしくは、加水分解および/または酵素分解によるポリマー粒子の分解によって制御される。好適なポリマーには、エチルセルロースおよび他の天然セルロース誘導体または合成セルロース誘導体が含まれる。
【0118】
水性環境において、徐水溶性を有し、かつゲルを形成するポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリエチレンオキシドなどは、また、薬物含有マイクロ粒子のための材料として好適であり得る。他のポリマーには、ポリ無水物、ポリ(エステル無水物)、ポリヒドロキシ酸、例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ−3−ヒドロキシブチラート(PHB)およびそのコポリマー、ポリ−4−ヒドロキシブチラート(P4HB)およびそのコポリマーなど、ポリカプロラクトンおよびそのコポリマー、ならびに、それらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0119】
代えて、薬物は、水溶液において不溶性であるか、または、水溶液において徐水溶性を有するが、酵素分解、胆汁酸の界面活性作用および/または機械的な侵食を含む手段によって、GI管内で分解し得る材料から調製されるマイクロ粒子に取り込むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「水において徐溶解性(である)」は、30分の期間内に水に溶解しない材料を示す。好ましい例には、脂肪、脂肪質物質、ワックス、ワックス様物質およびそれらの混合物が含まれる。好適な脂肪および脂肪質物質には、脂肪アルコール(例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコールまたはセトステアリルアルコールなど)、脂肪酸および脂肪誘導体が含まれ、これには、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド(モノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリド)、および水素化脂肪が含まれるが、これらに限定されない。具体的な例には、水素化植物油、水素化綿実油、水素化ひまし油、Sterotex(登録商標)の商品名で入手可能な水素化油、ステアリン酸、カカオ脂およびステアリルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。好適なワックスおよびワックス様物質には、天然または合成のワックス、炭化水素およびノーマルワックスが含まれる。ワックスの具体的な例には、蜜ろう、グリコワックス、カスターワックス、カルナウバワックス、パラフィンおよびカンデリラろうが含まれる。本明細書中で使用される場合、ワックス様材料は、どのようなものであれ、通常、室温において固体であり、かつ、約30〜300℃の融点を有するものとして定義される。
【0120】
場合により、マイクロ粒子内に水が浸透する速度を変えることが望ましい場合がある。この目的のために、速度制御剤(吸上剤)を、上記で列挙された脂肪またはワックスと一緒に配合することができる。速度制御物質の例には、ある種のデンプン誘導体(例えば、ろう質マルトデキストリンおよびドラム乾燥トウモロコシデンプン)、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース)、アルギン酸、ラクトースおよびタルクが含まれる。加えて、医薬的に許容される界面活性剤(例えば、レシチン)を、そのようなマイクロ粒子の分解を促進させるために加えることができる。
【0121】
水不溶性であるタンパク質、例えばゼインなども、また、薬物含有マイクロ粒子を形成するための材料として使用することができる。加えて、水溶性である、タンパク質、多糖およびそれらの組合せを、薬物と一緒にマイクロ粒子に配合し、その後、不溶性の網状組織物を形成するために架橋することができる。例えば、シクロデキストリンを個々の薬物分子と複合体化し、その後、架橋することができる。
【0122】
薬物含有マイクロ粒子を製造するためのキャリア材料内への薬物のカプセル化または取り込みは、知られている医薬品配合技術により達成することができる。脂肪、ワックスまたはワックス様物質において配合される場合、キャリア材料に懸濁される薬物粒子、キャリア材料に溶解される薬物、または、それらの混合物を含有する混合物を形成するために、キャリア材料が典型的にはその融解温度よりも高く加熱され、薬物が加えられる。その後、マイクロ粒子は、いくつかの方法により配合することができ、凝固、押出し、噴霧冷却または水性分散のプロセスを含むが、これらに限定されない。好ましいプロセスにおいて、ワックスが、その融解温度よりも高く加熱され、薬物が加えられ、その後、混合物が冷える際、溶融ワックス−薬物の混合物が一定の撹拌のもとで凝固させられる。代えて、ペレットまたはビーズを形成するために、溶融ワックス−薬物の混合物を押出し、球状化することができる。これらのプロセスの詳細な記載が、“Remington−The science and practice of pharmacy”、第20版、Jennaro他(Phila、Lippencott,Williams,and Wilkens、2000年)に見出され得る。
【0123】
いくつかのキャリア材料については、薬物含有マイクロ粒子を製造するために溶媒蒸発技術を使用することが望ましい場合がある。この場合、薬物およびキャリア材料が相互溶媒に共溶解され、その後、マイクロ粒子を、水または他の適切な媒体においてエマルジョンを形成すること、噴霧乾燥すること、または、溶媒をバルク溶液から蒸発させて除くこと、および、得られたものを粉砕することを含むいくつかの技術によって製造することができるが、これらに限定されない。
【0124】
いくつかの実施態様において、粒子状形態における薬物が、水不溶性材料または徐水溶性材料に均一に分散される。組成物内における薬物粒子のサイズを最小限にするために、薬物粉末そのものが、配合前に微細な粒子を得るために粉砕され得る。製薬分野では知られているが、ジェットミリングのプロセスを、この目的のために使用することができる。いくつかの実施態様において、粒子状形態における薬物が、ワックスまたはワックス様物質をその融点よりも高く加熱し、混合物を撹拌しながら薬物粒子を加えることによってワックスまたはワックス様物質に均一に分散される。この場合、医薬的に許容される界面活性剤を、薬物粒子の分散を容易にするために混合物に加えることができる。
【0125】
粒子は、また、1つまたは複数の改変放出被覆によりコーティングすることができる。脂肪酸の固体エステルは、リパーゼによって加水分解されるので、マイクロ粒子または薬物粒子に噴霧コーティングすることができる。ゼインは、自然界で水に不溶なタンパク質の一例である。ゼインを、噴霧コーティングによって、または、湿式造粒技術によって、薬物含有マイクロ粒子または薬物粒子にコーティングすることができる。自然界で水に不溶な材料に加えて、消化酵素のいくつかの基質を架橋手順により処理し、これにより、不溶性網状組織物の形成を生じさせることができる。化学的手段および物理的手段の両方によって開始される、タンパク質を架橋する多くの方法が報告されている。架橋を得るための最も一般的な方法の1つが、化学的架橋剤の使用である。化学的架橋剤の例には、アルデヒド(グルタルアルデヒドおよびホルムアルデヒド)、エポキシ化合物、カルボジイミドおよびゲニピンが含まれる。これらの架橋剤に加えて、酸化された糖および天然の糖が、ゼラチンを架橋するために使用されている(Cortesi、R.他、Biomaterials、19(1998)、1641〜1649)。架橋は、また、酵素的手段を使用して達成することができる;例えば、トランスグルタミナーゼが、海産製造物を架橋するためにGRAS物質として承認されている。最後に、架橋を、物理的手段によって、例えば、熱処理、UV照射およびガンマ線照射などによって、開始することができる。
【0126】
薬物含有マイクロ粒子または薬物粒子を取り囲む架橋タンパク質のコーティング層を作製するために、水溶性タンパク質を、マイクロ粒子に噴霧コーティングし、その後、上記で記載される方法の1つによって架橋することができる。代えて、薬物含有マイクロ粒子は、コアセルベーション相分離によって(例えば、塩の添加によって)、タンパク質内にマイクロカプセル化し、その後、架橋することができる。この目的のためのいくつかの好適なタンパク質には、ゼラチン、アルブミン、カゼインおよびグルテンが含まれる。
【0127】
多糖も、また、水不溶性の網状組織物を形成するために架橋することができる。多くの多糖について、このしたことは、中心となるポリマー鎖を架橋するカルシウム塩または多価カチオンとの反応によって達成することができる。ペクチン、アルギナート、デキストラン、アミロースおよびグアーガムは、多価カチオンの存在下での架橋を受けやすい。逆荷電の多糖の間における複合体も、また、形成させることができる;例えば、ペクチンおよびキトサンを、静電的相互作用により複合体化することができる。
【0128】
2.経腸用配合物
好適な経口投薬形態物には、錠剤、カプセル、溶液、懸濁物、シロップおよびトローチ剤が含まれる。錠剤は、この技術分野では広く知られている圧縮技術または成形技術を使用して作製することができる。ゼラチンカプセルまたは非ゼラチンカプセルは、この技術分野では広く知られている技術を使用して、液状、固体状および半固体状の充填物をカプセル化することができる、硬質または軟質のカプセル外皮として調製することができる。
【0129】
配合物は、医薬的に許容されるキャリアを使用して調製することができる。本明細書中で一般に使用されるように、「キャリア」には、希釈剤、保存剤、結合剤、滑剤、崩壊剤、膨張剤、フィラー、安定剤およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
キャリアには、また、可塑剤、顔料、着色剤、安定化剤および流動促進剤を含み得るコーティング組成物のすべての成分が含まれる。遅延放出用の投薬配合物を、標準的な参考書に記載されるように、例えば、“Pharmaceutical dosage form tablets”(Liberman他編、New York、Marcel Dekker,Inc.、1989年)、“Remington−The science and practice of pharmacy”(第20版、Lippincott Williams&Wilkins、Baltimore、MD、2000年)および“Pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems”(第6版、Ansel他、Media、PA:Williams and Wilkins、1995年)などに記載されるように調製することができる。これらの参考書は、錠剤およびカプセル、ならびに、錠剤、カプセルおよび顆粒の遅延放出型投薬形態物を調製するためのキャリア、材料、機器およびプロセスに関する情報を提供する。
【0131】
好適なコーティング用材料の例には、セルロースポリマー、例えば、セルロースアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナートなど;ポリビニルアセタートフタラート、アクリル酸ポリマーおよびアクリル酸コポリマー、ならびに、EUDRAGIT(登録商標)(Roth Pharma、Westerstadt、ドイツ)の商品名で市販されているメタクリル樹脂、ゼイン、セラック、ならびに、多糖が含まれるが、これらに限定されない。
【0132】
加えて、コーティング用材料は、従来のキャリア、例えば、可塑剤、顔料、着色剤、流動促進剤、安定化剤、細孔形成剤および界面活性剤などを含有することができる。
【0133】
必要に応じた随意的な医薬的に許容される賦形剤には、希釈剤、結合剤、滑剤、崩壊剤、着色剤、安定剤および界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。希釈剤は、「フィラー」とも呼ばれるが、典型的には、実用的なサイズが、錠剤の圧縮あるいはビーズおよび顆粒の形成のために提供されるように、固体の投薬形態物の嵩を増大させることが必要である。好適な希釈剤には、リン酸二カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、アルファ化デンプン、二酸化ケイ素、酸化チタン、ケイ酸アルミニウムマグネシウムおよび粉糖が含まれるが、これらに限定されない。
【0134】
結合剤が、凝集性を固体の投薬配合物に与えるために使用され、従って、結合剤は、投薬形態物が形成された後も、錠剤またはビーズまたは顆粒が壊れずにその形を保っていることを保証する。好適な結合剤材料には、デンプン、アルファ化デンプン、ゼラチン、糖(これには、スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースおよびソルビトールが含まれる)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然ゴムおよび合成ゴム(例えば、アラビアゴム、トラガカントゴムなど)、アルギン酸ナトリウム、セルロース(これには、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースが含まれる)およびビーガム(veegum)、ならびに、合成ポリマー、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸ならびにポリビニルピロリドンなど、が含まれるが、これらに限定されない。
【0135】
滑剤が、錠剤の製造を容易にするために使用される。好適な滑剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、グリセロールベヘナート、ポリエチレングリコール、タルクおよび鉱油が含まれるが、これらに限定されない。
【0136】
崩壊剤が、投与後の投薬形態物の崩壊または「解体」を容易にするために使用される。一般に、崩壊剤には、デンプン、ナトリウムデンプングリコラート、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルファ化デンプン、粘土、セルロース、アルギニン、ゴムまたは架橋ポリマー、例えば、架橋PVP(GAF Chemical Corpから得られるPolyplasdone(登録商標)XL)など、が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
安定剤が、例として酸化反応を含む薬物分解反応を阻害するために、または遅らせるために使用される。好適な安定剤には、酸化防止剤、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);アスコルビン酸、その塩およびエステル;ビタミンE、トコフェロールおよびその塩;亜硫酸塩、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムなど;システインおよびその誘導体;クエン酸;没食子酸プロピルおよびブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0138】
経口投薬形態物、例えば、カプセル、錠剤、溶液および懸濁物などは、制御された放出のために配合することができる。例えば、1つまたは複数の化合物と、必要に応じた随意的な1つまたは複数のさらなる活性剤とを、ナノ粒子、マイクロ粒子およびそれらの組合せに配合することができ、また、ソフトゼラチンカプセルもしくはハードゼラチンカプセルまたは非ゼラチンカプセルにおいてカプセル封入することができ、あるいは、経口用の懸濁物またはシロップを形成するために分散媒体に分散させることができる。粒子は、薬物および制御放出ポリマーまたは制御放出マトリックスから形成することができる。代替では、薬物粒子は、完成した投薬形態物に取り込まれる前に1つまたは複数の制御放出被覆によりコーティングすることができる。
【0139】
別の実施態様において、本発明の1つまたは複数の化合物と、必要に応じた随意的な1つまたは複数のさらなる活性剤とが、水性媒体、例えば、生理学的流体など、と接触したときにゲル化または乳化するマトリックス材料に分散される。ゲルの場合、マトリックスが膨潤し、これにより、活性剤を閉じ込め、この場合、この活性剤は、マトリックス材料の拡散および/または分解によって時間をかけてゆっくり放出される。そのようなマトリックスは、錠剤として、または、硬質カプセルおよび軟質カプセルための増量材として配合することができる。
【0140】
さらに別の実施態様において、本発明の1つまたは複数の化合物と、必要に応じた随意的な1つまたは複数のさらなる活性剤とが、固体の経口投薬形態物(例えば、錠剤またはカプセルなど)に配合され、そして、この固体の経口投薬形態物は、1つまたは複数の制御放出被覆(例えば、遅延放出被覆または長期放出被覆など)によりコーティングされる。そのような被覆または複数の被覆も、また、本発明の化合物、および/または、加えられた活性剤を含有することができる。
【0141】
長期放出配合物は、一般に、例えば、“Remington−The science and practice of pharmacy”(第20版、Lippincott Williams&Wilkins、Baltimore、MD、2000年)に記載されるような、拡散システムまたは浸透性システムとして調製される。拡散システムは、典型的には、2つのタイプのデバイス、すなわち、リザーバーおよびマトリックスからなり、この技術分野では広く知られており、また、十分に開示されている。マトリックスデバイスは、一般には、薬物を、徐溶解性ポリマーキャリアとともに錠剤形態に圧縮することによって調製される。マトリックスデバイスの調製において使用される材料の3つの主要なタイプが、不溶性プラスチック、親水性ポリマーおよび脂肪性化合物である。プラスチックマトリックスには、アクリル酸メチル−メタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニルおよびポリエチレンが含まれるが、これらに限定されない。親水性ポリマーには、セルロース系ポリマー、例えば、メチルセルロースおよびエチルセルロースなど、ヒドロキシアルキルセルロース、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなど、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および、Carbopol(登録商標)934、ポリエチレンオキシド、ならびに、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。脂肪性化合物には、様々なワックス、例えば、カルナウバワックスおよびグリセリルトリステアラートなど、および、水素化ひまし油または水素化植物油を含むワックスタイプの物質、または、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
いくつかの好ましい実施態様において、プラスチック材料は、医薬的に許容されるアクリルポリマーであり、これには、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、メチルメタクリラート、メチルメタクリラートコポリマー、エトキシエチルメタクリラート類、シアノエチルメタクリラート、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミンコポリマー、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、ポリメタクリラート、ポリアクリルアミド、ポリ(無水メタクリル酸)ならびにグリシジルメタクリラートコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
いくつかの好ましい実施態様において、アクリルポリマーが、1つまたは複数のアンモニオメタクリラートコポリマーから構成される。アンモニオメタクリラートコポリマーは、この技術分野では広く知られており、第四級アンモニウム基の含有量が低いアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの完全重合コポリマーとして、NF XVIIに記載される。
【0144】
1つの好ましい実施態様において、アクリルポリマーは、アクリル樹脂ラッカーであり、例えば、Rohm PharmaからEudragit(登録商標)の商品名で市販されているものなどである。さらなる好ましい実施態様において、アクリルポリマーは、Eudragit(登録商標)RL30DおよびEudragit(登録商標)RS30Dの商品名でそれぞれ、Rohm Pharmaから市販されている2つのアクリル樹脂ラッカーの混合物を含む。Eudragit(登録商標)RL30DおよびEudragit(登録商標)RS30Dは、第四級アンモニウム基の含有量が低いアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのコポリマーであり、アンモニウム基の、残留する中性アクリル酸(メタクリル酸)エステルに対するモル比が、Eudragit(登録商標)RL30Dでは、1:20であり、Eudragit(登録商標)RS30Dでは、1:40である)。平均分子量が、約150,000である。Edragit(登録商標)S−100およびEudragit(登録商標)L−100も、また、好ましい。コード表示のRL(高透過性)およびRS(低透過性)は、これらの薬剤の透過性特性を示す。Eudragit(登録商標)RL/RSの混合物は、水および消化液において不溶性である。しかしながら、この混合物を含むように形成される多粒子系は、水溶液および消化液において膨潤性であり、かつ、浸透性である。
【0145】
上記で記載されるポリマー(例えば、Eudragit(登録商標)RL/RSなど)は、望ましい溶解プロフィルを有する持続放出配合物を最終的には得るために、任意の所望される比率で一緒に混合することができる。望ましい持続放出多粒子系を、例えば、100%のEudragit(登録商標)RL、50%のEudragit(登録商標)RLおよび50%のEudragit(登録商標)RS、ならびに、10%のEudragit(登録商標)RLおよび90%のEudragit(登録商標)RSから得ることができる。当業者は、他のアクリルポリマーも、例えば、Eudragit(登録商標)Lなど、また、使用され得ることを認識するであろう。
【0146】
代替では、長期放出配合物を、浸透性システムを使用して、または、半透過性被覆を投薬形態物に適用することによって調製することができる。後者の場合、所望される薬物放出プロフィルを、低透過性の被覆材料および高透過性の被覆材料を好適な割合で組み合わせることによって達成することができる。
【0147】
上記で記載される異なる薬物放出機構を有するデバイスを、ただ1単位だけまたは多単位を含む最終的な投薬形態物において組み合わせることができる。多単位の例には、多層錠剤、および、錠剤、ビーズまたは顆粒を含有するカプセルが含まれるが、これらに限定されない。即時放出部分は、即時放出層を、コーティングプロセスまたは圧縮プロセスを使用して長期放出コアの上部に適用することによるか、あるいは、多単位システム、例えば、長期放出ビーズおよび即時放出ビーズを含有するカプセルなどにおいてでのどちらかで、長期放出システムに加えることができる。
【0148】
親水性ポリマーを含有する長期放出錠剤が、この技術分野では一般に知られている技術によって、例えば、直接的圧縮、湿式造粒または乾式造粒などによって調製される。それらの配合では、通常、活性な医薬成分と同様に、ポリマー、希釈剤、結合剤および滑剤が取り込まれる。有用な希釈剤には、不活性な粉末化物質、例えば、デンプン、粉末化セルロース、とりわけ、結晶性セルロースおよび微結晶セルロース、糖、例えば、フルクトース、マンニトールおよびスクロースなど、穀物粉および類似する食用粉末などが含まれる。典型的な希釈剤には、例えば、様々なタイプのデンプン、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸カルシウムまたは硫酸カルシウム、無機塩、例えば、塩化ナトリウムなど、および粉糖が含まれる。粉末化されたセルロース誘導体も、また、有用である。典型的な錠剤用結合剤には、デンプン、ゼラチンおよび糖、例えば、ラクトース、フルクトースおよびグルコースなど、などの物質が含まれる。アラビアゴム、アルギン酸塩、メチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを含めて、天然ゴムおよび合成ゴムも、また、使用することができる。ポリエチレングリコール、親水性ポリマー、エチルセルロースおよびワックスも、また、結合剤として役立ち得る。滑剤は、錠剤および型押し器が金型において固着することを防止するために、錠剤配合において必要となる。滑剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ならびに水素化植物油のような滑りやすい固体から選定される。
【0149】
ワックス系材料を含有する長期放出錠剤は、一般には、この技術分野において知られている方法を使用して、例えば、直接のブレンド法、凝固法および水性分散法などを使用して調製される。凝固法では、薬物が、ワックス系材料と混合され、噴霧凝固または凝固のどちらかに供され、ふるい分けされ、加工される。
【0150】
遅延放出配合物は、胃の酸性環境では不溶性であり、小腸の中性環境では可溶性であるポリマー薄膜とともに、固体の投薬形態物をコーティングすることによって作製することができる。
【0151】
遅延放出型の投薬単位物は、例えば、薬物または薬物含有組成物を選択されたコーティング用材料によりコーティングすることによって、調製することができる。薬物含有組成物は、例えば、カプセルに取り込まれるための錠剤、「被覆コア」投薬形態物における内側コアとして使用されるための錠剤、あるいは、錠剤またはカプセルのどちらにも取り込まれるための複数の薬物含有ビーズ、薬物含有粒子または薬物含有顆粒であり得る。好ましいコーティング用材料には、生体内分解性ポリマー、徐々に加水分解可能なポリマー、徐々に水に溶解し得るポリマー、および/または、酵素分解可能なポリマーが含まれ、また、従来の「腸溶性」ポリマーを挙げることができる。腸溶性ポリマーは、当業者によって理解されるであろうが、下部胃腸管のより高いpHの環境で可溶性になるか、または、投薬形態物が胃腸管を通過する際にゆっくり侵食され、一方、酵素分解可能なポリマーが、下部胃腸管(具体的には結腸)に存在する細菌酵素によって分解される。遅延放出を達成するための好適なコーティング用材料には、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:セルロース系ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセタート、セルロースアセタートフタラート、セルロースアセタートトリメリタートおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなど;アクリル酸ポリマーおよびアクリル酸コポリマー、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸エチルから形成されるポリマーおよびコポリマー、また、Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma;Westerstadt、ドイツ)の商品名で市販されている他のメタクリル樹脂、これには、Eudragit(登録商標)L30D−55および同L100−55(pH5.5以上で、可溶性である)、Eudragit(登録商標)L−100(pH6.0以上で、可溶性である)、Eudragit(登録商標)S(より大きなエステル化度の結果として、pH7.0以上で、可溶性である)、ならびに、Eudragit(登録商標)NE、同RLおよび同RS(異なる程度の透過性および膨張性を有する水不溶性ポリマー)が含まれる;ビニルポリマーおよびビニルコポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル、ビニルアセタートフタラート、ビニルアセタートクロトン酸コポリマーおよびエチレン−酢酸ビニルコポリマーなど;酵素分解可能なポリマー、例えば、アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロースおよびグアーガムなど;ゼインおよびセラック。異なるコーティング用材料の組合せも、また、使用することができる。異なるポリマーを使用する多層被覆も、また、適用することができる。
【0152】
特定のコーティング用材料についての好ましい被覆重量を、当業者は、異なる量の様々なコーティング用材料を用いて調製される錠剤、ビーズおよび顆粒についての個々の放出プロフィルを評価することによって、容易に決定することができる。所望される放出特性は、単に臨床研究から決定され得るだけであるが、所望される放出特性がもたらされるのは、適用材料、適用方法および適用形態の組合せによってである。
【0153】
コーティング組成物は、従来の添加物、例えば、可塑剤、顔料、着色剤、安定化剤、流動促進剤などを含むことができる。可塑剤は、通常、被覆の脆さを低下させるために存在し、一般に、ポリマーの乾燥重量に対して約10wt.%〜50wt.%である。典型的な可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、トリエチルアセチルシトラート、ひまし油およびアセチル化モノグリセリドが含まれる。安定化剤は、好ましくは、分散物における粒子を安定化するために使用される。典型的な安定化剤は、非イオン性乳化剤であり、例えば、ソルビタンエステル、ポリソルバートおよびポリビニルピロリドンなどである。流動促進剤が、薄膜形成および乾燥の期間中における粘着影響を軽減するために勧められ、一般に、コーティング溶液においてポリマー重量のおよそ25wt.%〜100wt.%である。1つの効果的な流動促進剤が、タルクである。他の流動促進剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよびグリセロールモノステアラートなども、また、使用することができる。顔料、例えば、二酸化チタンなども、また、使用することができる。少量の消泡剤、例えば、シリコーン(例えば、シメチコン)なども、また、コーティング組成物に加えることができる。
【0154】
III.化合物の作製方法
本明細書中に記載される化合物を合成の例が、添付されたスキーム1〜3において示される。それぞれの場合において、出発物質が、1,2−ジクロロ−4−ニトロベンゼンおよびピペラジンであり、これらは、反応して、本明細書中に記載される化合物を調製するために適切な1−(4−ニトロ−1−クロロフェニル)ピペラジンを形成する。
【0155】
ベンゼン試薬における置換基は、調製されるべき最終生成物に従って適切に変更することができる。そのようにして形成される置換ピペラジンは、形成されるべき最終生成物に従って適切に置換されている3−フェニル−4−カルボキシ−イソオキサゾール化合物と反応させられる。そのような3−フェニル−4−カルボキシ−イソオキサゾール化合物は、保護された1,4−ジヒドロキシベンゼンから、ヒドロキシルアミン塩酸塩との反応、その後、スキーム1〜3における例示された化学反応工程によって、調製することができる。化合物1〜10を調製するための手順が、実施例に記載される。
【0156】
スキーム1.化合物1(YD−04)の合成
【化14】

【0157】
スキーム2.化合物2(YD−01)の合成;
【化15】

【0158】
スキーム3.化合物3(YD−03)および化合物4(YD−07)の合成
【化16】

【0159】
IV.使用方法
本明細書中に記載される抗ウイルス剤は、ウイルスの成長、感染性、負荷量、排出、抗ウイルス剤抵抗性の発達を低下させるために、および/または、従来の抗ウイルス治療の効力を高めるために、使用することができる。
【0160】
ネガティブセンスRNAゲノムを有するすべてのウイルスが、一本鎖RNAに結合する核タンパク質(NP)をコードする。核タンパク質は、核酸(DNAまたはRNAのどちらでも)と構造的に会合するタンパク質である。インフルエンザの核タンパク質は、核と、細胞質との間の往復、ならびに、RNAの転写、複製およびパッケージングのためのウイルスゲノムのキャプシド形成を含めて、多数の機能を有する感染経過期間中の最も多く発現されるタンパク質である。NPは、自身、RNA、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼおよびウイルスのマトリックスタンパク質を含めて、広範囲の様々なウイルス高分子および宿主細胞高分子の両方と相互作用する。NPは、また、宿主ポリペプチド(例えば、アクチン)、核の輸出入装置の成分および核のRNAヘリカーゼと相互作用する。A型インフルエンザのNPにおける3つの可能性のある結合性の新規な結合部位には、小さい溝、RNA結合ポケット溝およびテールループ溝が含まれる。
【0161】
何らかの特定の理論によってとらわれることはないが、本明細書中に記載される化合物の作用機構は、ウイルスの複製をインビボで妨害するためにウイルス、例えば、インフルエンザウイルスなど、の核タンパク質(NP)への結合を必要とすることが仮定される。
【0162】
1つの実施態様において、本明細書中に記載される抗ウイルス剤は、A型インフルエンザの核タンパク質の本体の裏側における小さい溝(ヌクレオジン結合溝と呼ばれる)に結合し、残基280〜311(VYGSAVASGYDFEREGYSLVGIDPFRLLQNSQ)(配列番号1)を取り込む。これらの残基の二次構造は、らせん間の残基によって形成されるループによってつながれる3つの短いらせん(280〜287、291〜294および301〜309)を含む。
【0163】
NP阻害剤は、本体の裏側の小さい溝に位置することができ、水素結合することによって残基N309と、また、疎水性相互作用によって残基Y289と相互作用することができる。後者の場合、化合物のフェニル環がY289のフェニル環と平行になっているかもしれず、これら2つの環の間の距離が約3.2〜4.3Åの間である。
【0164】
1つの特定の実施態様において、NP阻害剤は、小さい溝において結合し、化合物は、残基S287との水素結合を形成する。いくつかの実施態様において、抗ウイルス剤は、単独で、または、上記で示された接触との組合せで、結合性接触をすることができる。具体的には、抗ウイルス性化合物は、残基465〜470(配列:ELSDEK)(配列番号2)、残基22〜26(配列:ATEIR)(配列番号3)、残基A22〜47L(配列:ATEIRASVGKMIDGIGRFYIQMCTEL)(配列番号4)、R55、またはそれらの組合せと接触することができる。
【0165】
別の実施態様において、NP阻害剤は、A型インフルエンザの核タンパク質のRNA結合溝に結合する。この実施態様において、NP阻害剤は、RNA結合ドメインに位置し、これは、核タンパク質の本体と頭部との間で内部溝を広げ、RNAがアルギニンリッチ溝に進入することを妨げる残基Q364およびV363との水素結合を形成する。Y148が、RNAの最初の塩基を固定するとして機能すると見なされた。
【0166】
別の実施態様において、例示的なNP阻害剤が、インフルエンザのテールループ溝に結合する。この実施態様において、NP阻害剤は、残基E339に近いテールループ結合ドメインに位置し、残基V186、R267およびG268との水素結合を形成する。この結合ポケットにおけるNP阻害剤は、別のモノマーからの、E339およびR416の間で形成される塩架橋を壊す。
【0167】
B.処置の対象となる障害
エンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスの両方、これらには、動物、脊椎動物、哺乳動物およびヒト患者に感染するそのようなウイルスが含まれる、によって引き起こされるウイルス感染症は、本明細書中に記載される化合物または組成物により、防止または処置することができる。本明細書中に記載される化合物は、脊椎動物、具体的にはヒト、に感染するすべてのウイルス、具体的には、動物およびヒトにおいて病原性であるウイルスを処置するために好適である。処置することができるウイルス感染症および関連する生じた疾患には、CMV感染症、RSV感染症、アレナウイルス感染症およびHIV感染症、ならびに、肝炎、インフルエンザ、肺炎、ラッサ熱およびAIDSの各疾患が含まれるが、これらに限定されない。国際ウイルス分類委員会は、この技術分野で知られているウイルス株の完全なリストを持っており、その全体において参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0168】
いくつかの実施態様において、防止または処置する疾患には、ウイルス感染症が含まれる。好ましい実施態様において、化合物および配合物は、A型インフルエンザウイルスの感染症を処置または防止するために使用される。本発明の方法の配合物により防止または処置することができるA型インフルエンザウイルスには、H1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3およびH10N7が含まれる。好ましい実施態様において、本発明の配合物は、H1N1またはH3N2によって引き起こされるインフルエンザ感染A株を処置するために有用である。
【0169】
C.投薬量
ウイルスの成長および増殖を防止するために必要な抗ウイルス配合物の投薬量は、存在するかもしれないウイルスのタイプ、配合物が導入され続ける環境、および、配合物が所与の領域に留まると想定される時間を含めて、いくつかの要因に依存する。
【0170】
好ましい化合物が、実際のスクリーンによって特定される化合物である。例示的な化合物が、式I〜式VIに属する。ウイルス感染症を処置するための典型的な用量が、約0.1mg〜250mg/kg/日であり、好ましくは0.2〜250mg/kg/日である。
【0171】
化合物は、経口経路または腸管外経路のどちらによってでもウイルス感染症を処置するためにヒトに投与することができ、約0.1〜約500mg/kgの投薬量レベルで、好ましくは、1日に1回または2回与えられる約0.5〜250mg/kg/日の投薬量レベルで経口投与することができる。
【0172】
投薬量および配合における様々な変化が、当業者には知られているであろうが、処置されている対象の体重および状態、ならびに、選ばれた具体的な投与経路に基づいて生じる。
【実施例】
【0173】
〔材料および方法〕
ウイルス
インフルエンザA\WSN\33ウイルスは、Madin−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞において増殖された。完全な細胞変性効果が、感染MDCK細胞培養物において現れた後、ウイルス粒子が集められ、−70℃の冷凍庫で使用まで貯蔵された。A型インフルエンザウイルス株A/Vietnam/1194/04は、孵化卵において成長させられ、回収されたウイルス含有尿膜腔液は、小分けして−70℃で使用まで貯蔵された。
【0174】
プラーク減少アッセイ
化合物の保護効果は、プラーク減少アッセイを使用してA型インフルエンザH1N1\WSN\33に対してMDCK細胞で求められた。
【0175】
PRAアッセイは、24ウエル組織培養プレートにおいて、3連で行われた。MDCK細胞は、ウイルス添加の1日前に、10%ウシ胎児血清(FBS)を含むイーグル最小必須培地(EMEM)を使用して、1×10細胞/ウエルで播種された。16〜24時間の後、100〜200プラーク形成単位(PFU)のインフルエンザA/WSN/33ウイルスは、化合物とともに、または、化合物を伴うことなく、細胞単層に加えられた。化合物1〜10のそれぞれの濃度は、種々の実験において変化させられた。ウイルスは、5%COとともに、37℃で1.5〜2時間、細胞に感染させ、その後、非結合のウイルス粒子が、吸引によって除かれた。細胞単層は、EMEMにより1回洗浄され、1%のFBSおよび1μg/mlのTPCKトリプシンを含有するEMEMにおける1%の低融点アガロースにより重層された。化合物は、また、必要なときにはアガロース重層物にも存在した。
【0176】
プレートは、5%COとともに、37℃で72時間インキュベーションされた。感染後72時間で、細胞は、10%ホルムアルデヒドにより3時間固定され、プレートは、1%Virkon消毒剤に5分間浸けられた。その後、アガロースプラグが取り出され、細胞単層は、0.7%クリスタルバイオレットにより染色された。ウイルス感染によって形成されるプラークが、計数された。コントロール(化合物の添加なしに)に対するプラーク阻害の百分率が、それぞれの化合物濃度について求められた。それぞれの化合物について、阻害剤非存在下のコントロールに対するプラーク形成単位(PFU)の、試験化合物の濃度の関数としてのプロット(PFUにおける%減少)が、作製された。ウイルスPFUを50%減少させるために要求される薬物の濃度を表すメジアン有効濃度EC50が、プロットされたグラフから計算された。その結果は、化合物非存在下のコントロールの百分率として表され、図に示される。その平均値は、標準偏差とともに示される。
【0177】
細胞毒性アッセイ
化合物1〜10の細胞毒性が、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT、Sigma−Aldrich、米国)アッセイによって測定された。アッセイは、平底96ウエル・マイクロタイター・プレートにおいて、10%のFBSを含む100μlのEMEMの総体積で、Vero細胞またはMDCK細胞を20,000細胞/ウエルで播種することによって行われた。24時間のインキュベーションの後、細胞は、PBSにより2回洗浄され、その後、化合物が加えられる前に、細胞に新鮮なEMEMが与えられた。化合物が、加えられた後、細胞は、さらに、5%COとともに、37℃で24時間インキュベーションされた。MTTが、それぞれのウエルに加えられ、0.5mg/mlの最終濃度にした。プレートは、さらに、5%COとともに、37℃で4時間インキュベーションされた。インキュベーション期間が、終了したとき、0.01Mの塩酸(HCl)中の10%のラウリル硫酸塩(SDS)の100μlが、それぞれのウエルに加えられ、細胞を可溶化した。一晩のインキュベーションの後、プレートは、640nmを参照波長として570nmで読み取られた。MTT読み取りを50%低下させるために要求される化合物の濃度を表すメジアン毒性濃度TC50が、MTTデータから推定された。
【0178】
実施例1.化合物1(YD−04)の合成
化合物1が、スキーム1に示される合成スキームに従って合成された。化合物2、3および4を合成するために、この合成スキームを変更する例が、化合物1の他の類似物の合成におけるわずかな変更を例示するためのスキーム2および3に示される。
【0179】
YD−041の合成
無水ジクロロメタン(50mL)中のp−ヒドロキシベンズアルデヒド(3.7g、30.0mmol)およびトリエチルアミン(6.3mL、45.0mmol)の溶液に、無水ジクロロメタン(50mL)中のt−ブチルジメチルシリルクロリド(6.8g、45.0mmol)の溶液が、滴下して加えられた。得られた混合物は、室温で2時間撹拌され、その後、水(100mL)が、加えられた。有機層が、分離され、水層が、ジクロロメタンにより抽出された。一緒にされた有機層は、水および飽和ブラインにより洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥された。ろ過および濃縮の後、得られた残渣は、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=9:1)によってさらに精製され、これにより、粗生成物YD−041の黄色オイルが、得られた(7.29g)。
【0180】
化合物YD−042の合成
YD−041(1.18g、5mmol)およびヒドロキシルアミン塩酸塩(1.15g、16.5mmol)は、室温で無水エタノール(10mL)に溶解され、その後、撹拌を行いながら、ピリジン(20mL)が、滴下して加えられた。得られた混合物は、室温で30分間撹拌され、その後、40分間、加熱還流された。完了したとき、反応混合物は、室温に冷却され、37%塩酸塩溶液(2mL)および水(7.5ml)の混合物が、加えられた。得られた混合物は、総体積の1/3が残留するまで濃縮された。ジクロロメタンによる抽出の後、有機層は、飽和ブラインにより洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥された。溶媒の除去後、残留する残渣は、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=11:1)によって精製され、これにより、YD−042の黄色オイルが、得られた(0.862g、78%)。
H NMR(400MHz,CDCl),δ8.48(br s,1H,−OH),8.10(s,1H,N=CH),7.45(d,J=8.6Hz,2H,Ar−H),6.84(d,J=8.6Hz,2H,Ar−H),0.98(s,9H,−C(CH),0.21(s,6H,2SiCH).
【0181】
化合物YD−043の合成
YD−042(810mg、3.2mmol)が、無水ジメチルホルムアミド(4mL)に溶解され、その後、0℃に冷却された。N−クロロスクシンイミド(NCS、452mg、3.2mmol)が、撹拌しながら、少量ずつ加えられた。冷却浴が、除かれ、反応混合物が、室温で1時間撹拌された。完了したとき、反応混合物の体積の4倍量の水が、加えられ、得られた混合物が、ジエチルエーテルにより抽出された。有機層が、水により3回洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥された。ろ過および濃縮の後、粗YD−043の黄色オイル(884mg、96%)が、得られた。
【0182】
化合物YD−044の合成
アセトニトリル(40mL)中のYD−06(737mg、3.8mmol)の溶液に、アセトニトリル(8mL)中の粗YD−043(884mg、3.1mmol)の溶液が、0℃で滴下して加えられた。得られた混合物は、0℃で2時間撹拌された。完了したとき、氷水(4mL)が加えられ、溶媒のほとんどが、減圧下で除かれた。水が加えられ、得られた混合物が、ジエチルエーテルにより抽出された。有機層が、水により3回洗浄され、次いで、飽和ブラインにより1回洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥された。ろ過および減圧下での濃縮の後、残渣が、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=15:1)によって精製され、これにより、YD−044の黄色オイルが、得られた(627mg、52%)。
H NMR(400MHz,CDCl),δ7.48(d,J=8.6Hz,2H,Ar−H),6.89(d,J=8.6Hz,2H,Ar−H),2.69(s,3H,−CH),1.44(s,9H,O−C(CH),0.99(s,9H,Si−C(CH),0.21(s,6H,2SiCH).
【0183】
化合物YD−045の合成
YD−044(3.23g、8.3mmol)が、トリフルオロ酢酸(10mL)に溶解され、得られた溶液が、室温で30分間撹拌された。その後、トリフルオロ酢酸が、減圧下で除かれ、残渣が、ジエチルエーテルに溶解された。石油エーテルが加えられ、生成物が結晶化された。ろ過および真空乾燥の後、YD−045の白色のフレーク状結晶(1.327g、48%)が、得られた。
m.p.=146〜148℃;
H NMR(400MHz,CDCl),δ7.54(d,J=8.6Hz,2H,Ar−H),6.89(d,J=8.6Hz,2H,Ar−H),2.75(s,3H,−CH),1.00(s,9H,Si−C(CH),0.23(s,6H,2SiCH).
【0184】
化合物YD−046の合成
無水ジクロロメタン(8mL)中のYD−045(177mg、0.53mmol)の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、103mg、0.80mmol)、YD−05(128mg、0.53mmol)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI、406mg、2.13mmol)が、順次加えられた。得られた混合物は、室温で3時間撹拌され、その後、ジクロロメタンにより希釈された。有機層が、分離され、2M水酸化ナトリウム溶液、水および飽和ブラインにより洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥され、ろ過され、濃縮された。得られた残渣は、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:1)によってさらに精製され、これにより、YD−046の明黄色の針状結晶が、得られた(141mg、48%)。
H NMR(400MHz,CDCOCD),δ8.19(d,J=2.7Hz,1H,Ar−H),8.12(dd,J=9,2.7Hz,1H,Ar−H),7.61(d,J=8.7Hz,2H,Ar−H),7.19(d,J=9Hz,1H,Ar−H),7.02(d,J=8.7Hz,2H,Ar−H),3.91(br s,2H,CH),3.44(br s,2H,CH),3.27(br s,2H,CH),2.86(br s,2H,CH),2.50(s,3H,−CH),0.97(s,9H,Si−C(CH),0.23(s,6H,2SiCH).
【0185】
化合物1(YD−04)の合成
YD−046(67mg、0.12mmol)が、無水テトラヒドロフラン(4mL)に溶解され、テトラ−n−ブチルアンモニウムフッ化物(TBAF、63mg、0.24mmol)が加えられた。得られた混合物は、室温で30分間撹拌された。濃縮後、残渣が、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1)によって精製され、これにより、YD−04の明黄色の粉末が、得られた(31mg、58%)。235℃〜240℃で分解された。
H NMR(400MHz,DMSO−d6),δ9.96(br s,1H,−OH),8.23(d,J=2.6Hz,1H,1’−H),8.14(dd,J=9,2.6Hz,1H,2’−H),7.44(d,J=8.7Hz,2H,2−H,3−H),7.21(d,J=9Hz,1H,3’−H),6.89(d,J=8.3Hz,2H,1−H,4−H),3.82(br s,2H,CH),3.36(br s,2H,CH),3.21(br s,2H,CH),2.89(br s,2H,CH),2.46(s,3H,−CH).
13C NMR(100MHz,DMSO−d6)δ168.3,161.5,159.3,159.2,154.0,141.8,128.7,126.3,125.9,123.6,120.6,118.5,115.8,110.4,50.1,49.7,46.2,41.2,11.3;LRMS(API−ES):443(M+H).
【0186】
実施例2.化合物2(YD−01)の合成
化合物2(YD−01)の合成が、スキーム2において構造式により示される。
【0187】
化合物YD−011の合成
ベンズアルデヒド(10.60g、0.10mol)およびヒドロキシルアミン塩酸塩(22.94g、0.33mol)が、90%エタノール(330mL)に溶解された。この溶液のpHは、水酸化ナトリウムの粉末を加えることによって、5に調節された。得られた溶液は、室温で30分間撹拌され、さらに30分間、加熱還流された。反応混合物は、周囲温度に冷却され、濃塩酸(40mL)および水(150mL)の混合物が加えられ、元の体積の1/3にまで濃縮された。濃縮された混合物は、ジクロロメタンにより抽出され、有機層は、飽和ブラインにより洗浄され、無水硫酸マグネシウムで乾燥され、真空下でエバポレーションされて、黄色の粗オイルが、得られた。この粗オイルは、真空蒸留(40mmHg、150〜155℃)によって精製され、明黄色のオイルYD−011が、得られ(9.87g、82%の収率)、冷凍したとき、灰白色の結晶が、形成される。シス異性体およびトランス異性体の両方が、TLCによって検出された。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ9.01(br s,1H,−OH),8.17(s,1H,=CH),7.59−7.56(m,2H,Ar−H),7.40−7.35(m,3H,Ar−H).
【0188】
化合物YD−012の合成
無水ジクロロメタン中のYD−011(2g、16.53mmol)の溶液に、撹拌を行いながら、0℃でN−クロロスクシンイミド(NCS、8.79g、66mmol)が少量ずつ加えられた。混合物は、周囲温度に加温され、2時間撹拌された。水(50mL)が、反応混合物に加えられ、層が、分離された。水層が、ジクロロメタンにより抽出され(20mLで3回)、一緒にされた有機層が、飽和ブラインにより洗浄され、無水硫酸マグネシウムで乾燥され、ろ過、真空下で濃縮された。粗生成物は、カラムクロマトグラフィーに供され、酢酸エチル中の減少する石油エーテルのグラジエント(100:150:1)により溶出されて、YD−012が、得られた(1.02g、40%の収率)。シス異性体およびトランス異性体が、TLCによって検出された。YD−012の不安定性のために、それは、さらなる精製が行われることなく、次の工程においてそのまま使用された。
【0189】
化合物YD−06の合成
エーテル(100mL)中のアセト酢酸t−ブチル(5.2mL)の溶液に、テトラヒドロフラン(THF)中のカリウムヘキサメチルジシラジドの溶液(1M、28.64mL)が、滴下して加えられた。反応混合物は、濃縮され、n−ヘキサンを加えることによって沈殿された。沈殿物は、ろ過され、乾燥されて、粗生成物YD−06が、得られた。
【0190】
化合物YD−013の合成
粗YD−06(1.0g、5.1mmol)が、アセトニトリル(50mL)に溶解され、混合物が、0℃に冷却された。アセトニトリル(10mL)中の化合物YD−012(0.65g、4.2mmol)の溶液が、撹拌しながら、YD−06の溶液に、滴下して加えられた。反応混合物は、0℃で2時間撹拌され、氷水(4mL)が、加えられた。混合物は、真空下でエバポレーションされた。残渣は、水に再溶解され、ジクロロメタンにより抽出された。有機層は、飽和ブラインにより洗浄され、無水硫酸マグネシウムで乾燥され、ろ過され、真空下で濃縮されて、粗残渣が、得られた。粗残渣は、石油エーテル(60℃〜90℃)を溶離液とするカラムクロマトグラフィーによって精製されて、YD−013(510mg、47%の収率)が、灰白色の固体として得られた。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.59−7.56(m,2H,Ar−H),7.47−7.40(m,3H,Ar−H),2.71(s,3H,−CH),1.41(s,9H,−C(CH).
【0191】
化合物YD−014の合成
化合物YD−013(186mg、0.718mmol)が、トリフルオロ酢酸(5mL)に溶解され、溶液が、室温で4時間撹拌された。得られた溶液は、真空下でエバポレーションされて、トリフルオロ酢酸が除かれた。ジクロロメタンが加えられ、溶液は、2回、再蒸留された。残渣は、エーテルに溶解され、再結晶化が、石油エーテルを加えることによって行われた。白色の結晶性化合物YD−014が、ろ過によって得られ、真空下で乾燥された。母液は、濃縮され、石油エーテル−酢酸エチル(3:1)中の1%体積の氷酢酸により溶出するカラムクロマトグラフィーによる精製により、YD−014が、白色の固体として得られた。これらの結晶性化合物の総合重量が、115mgであった(79%の収率)。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ7.65−7.62(m,2H,Ar−H),7.51−7.42(m,3H,Ar−H),2.77(s,3H,−CH).
【0192】
化合物YD−05の合成
N,N−ジメチルホルムアミド(11mL)中のピペラジン(3.73g、43.4mmol)の溶液に、3,4−ジクロロニトロベンゼン(1.64g、8.6mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(15mL)溶液が、室温での撹拌とともに、滴下して加えられた。得られた混合物は、100℃に加熱され、その温度で5時間維持された。反応混合物は、室温に冷却され、真空下で濃縮されて、N,N−ジメチルホルムアミドが除かれた。得られた残渣は、ジクロロメタン(25mL)により希釈された。有機層は、飽和重炭酸ナトリウム水溶液により洗浄され、無水硫酸ナトリウムで乾燥され、ろ過され、濃縮された。残渣をクロロホルムおよびメタノール(3:1)から再結晶することにより、黄色の結晶性化合物YD−05が、得られた(1.77g、85%の収率)。
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.24(d,J=2.6Hz,1H,Ar−H),8.09(dd,J=9,2.6Hz,1H,Ar−H),7.04(d,J=9Hz,1H,Ar−H),
3.20−3.18(m,4H,2CH2),3.08−3.06(m,4H,2CH),1.93(br s,1H,NH).
【0193】
化合物2(YD−01)の合成
無水ジクロロメタン(10mL)中のYD−014(320mg、1.58mmol)の溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、305mg、2.36mmol)、YD−05(380mg、1.58mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(EDCI、1.2g、6.30mmol)が、順次加えられた。得られた混合物は、室温で2時間撹拌された。反応混合物は、ジクロロメタンにより希釈され、水酸化ナトリウム水溶液(2M)、水および飽和ブラインにより順次、洗浄された。有機層は、無水硫酸ナトリウムで乾燥され、ろ過され、濃縮された。残渣は、石油エーテル/酢酸エチル(3:1)により溶出するカラムクロマトグラフィーによって精製されて、YD−01(290mg、43%の収率)が、明黄色の固体として得られた。
H−NMR(400MHz,DMS0−d6)δ8.23(d,1H,J=2.6Hz,1’−H),8.15(dd,1H,J=9,2.6Hz,2’−H),7.63−7.60(m,2H,1−H,5−H),7.55−7.52(m,3H,2−H,3−H,4−H),7.20(d,1H,J=9Hz,3’−H),3.81(br s,2H,CH),3.39(br s,2H,CH),3.20(br s,2H,CH),2.85(br s,2H,CH),2.50(s,3H,−CH);
13C−NMR(100MHz,DMSO−d6)δ168.8,161.2,159.6,153.9,141.9,130.2,129.1,127.9,127.3,126.3,125.9,123.7,120.6,110.7,50.1,49.7,46.3,41.3,11.4;LRMS(API−ES):427(M+H).
【0194】
実施例3.化合物3(YD−07)の合成
化合物3(YD−07)の合成が、スキーム3において構造式により示される。
【0195】
化合物YD−031の合成
p−ニトロベンズアルデヒド(4.53g、0.03mol)およびヒドロキシルアミン塩酸塩(6.87g、0.099mol)が、室温で90%エタノール(100mL)に溶解された。反応混合物のpHが、水酸化ナトリウムの粉末を加えることによって5に調節され、得られた溶液は、室温で30分間撹拌され、その後、4時間、加熱還流された。完了したとき、反応混合物は、室温に冷却され、エタノールが、減圧下で除かれた。水が加えられ、得られた混合物は、ジクロロメタンにより抽出された。一緒にされた有機層は、飽和ブラインにより洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥された。溶媒を除いた後、分光学的に純粋なYD−031の黄色の非晶質粉末(4.831g、97%)が、得られた。
m.p.127℃〜129℃;
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.26(d,J=8.8Hz,2H,Ar−H),8.21(s,1H,N=CH),7.98(s,1H,−OH),7.75(d,J=8.8Hz,2H,Ar−H).
【0196】
化合物YD−032の合成
YD−031(887mg、5.3mmol)が、無水ジメチルホルムアミド(4.6mL)に溶解され、該溶液が、0℃に冷却された。N−クロロスクシンイミド(800mg、6.0mmol)が、撹拌しながら少量ずつ加えられた。冷却浴が、除かれ、得られた混合物は、室温で4時間撹拌された。完了したとき、氷水(20mL)が加えられ、得られた混合物は、ジエチルエーテルにより抽出された。有機層は、水により3回洗浄され、次いで、飽和ブラインにより1回洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥された。溶媒をろ過後に除くことにより、YD−032の白色固体が、得られた(1.064g、100%)。
H NMR(400MHz,CDCl),δ8.37(s,1H,−OH),8.27(d,J=8.8Hz,2H,Ar−H),8.04(d,J=8.8Hz,2H,Ar−H).
【0197】
化合物YD−033の合成
アセトニトリル(60mL)中の粗YD−06(1.213g、6.2mmol)の溶液に、アセトニトリル(25mL)中の粗YD−032(1g、5.0mmol)の溶液が、撹拌しながら0℃で加えられた。得られた溶液は、0℃で2時間撹拌された。完了したとき、氷水(4mL)が加えられた。溶媒のほとんどが、減圧下で除かれた。残留する液体は、水により希釈され、ジクロロメタンにより抽出された。有機層は、飽和ブラインにより洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥された。ろ過し、溶媒を除いた後、残渣は、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=10:1)によって精製され、これにより、YD−033の明黄色の立方体状結晶が、得られた(1.239g、78%)。
m.p.86℃〜87℃。
H NMR(400MHz,CDCl)δ8.31(d,J=8.8Hz,2H,Ar−H),7.81(d,J=8.8Hz,2H,Ar−H),2.75(s,3H,−CH),1.46(s,9H,O−C(CH).
【0198】
化合物YD−034の合成
YD−033(100mg、0.33mmol)および塩化スズ(II)二水和物(371mg、1.64mmol)が、無水エタノール(7mL)に溶解され、得られた溶液は、1.5時間、加熱還流された。反応混合物は、室温に冷却され、適量の氷水が加えられた。得られた混合物のpHは、20%炭酸ナトリウム水溶液を加えることによって、8に調節された。酢酸エチルによる抽出の後、有機層は、ブラインにより洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥された。ろ過および濃縮の後で得られた残渣は、シリカゲルカラムを使用して精製され(石油エーテル:酢酸エチル=5:1)、これにより、白色の針状結晶YD−034が、得られた(72mg、80%)。
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.42(d,J=8.6Hz,2H,Ar−H),6.69(d,J=8.6Hz,2H,Ar−H),3.78(br s,2H,NH),2.66(s,3H,−CH),1.47(s,9H,O−C(CH).
【0199】
化合物YD−038の合成
YD−034(1.0g、3.65mmol)が、トリフルオロ酢酸(5mL)に溶解され、室温で1時間撹拌された。トリフルオロ酢酸が、減圧下で除かれ、残渣が、ジクロロメタンによる共沸除去に2回供され、これにより、粗YD−038の白色固体が、得られた(810mg)。
【0200】
化合物3(YD−03)の合成
無水ジクロロメタン(8mL)中の粗YD−038(157mg、0.72mmol)の溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、138mg、1.08mmol)、YD−05(207mg、0.86mmol)およびEDCI(550mg、2.88mmol)が、順次加えられた。得られた混合物は、室温で4時間撹拌され、その後、ジクロロメタンにより希釈された。この混合物は、2M水酸化ナトリウム溶液、水および飽和ブラインにより洗浄された。有機層は、硫酸ナトリウムで乾燥され、ろ過され、濃縮された。得られた残渣は、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=2:1)によって精製され、これにより、YD−03の明黄色の粉末が、得られた(173mg、49%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d6),δ8.24(d,J=2.7Hz,1H,1’−H),8.15(dd,J=9,2.7Hz,1H,2’−H),7.28(d,J=8.6Hz,2H,2−H,3−H),7.19(d,J=9Hz,1H,3’−H),6.63(d,J=8.6Hz,2H,1−H,4−H),5.60(br s,2H,NH),3.81(br s,2H,CH),3.34(br s,2H,CH),3.20(br s,2H,CH),2.86(br s,2H,CH),2.42(s,3H,−CH);
13C NMR(100MHz,DMSO−d6),δ167.9,161.8,159.5,154.0,150.7,141.9,128.2,126.4,125.9,123.7,120.6,114.5,113.7,110.2,50.0,49.8,46.3,41.2,11.4;LRMS(API−ES):442(M++H).
【0201】
実施例4.化合物4(YD−07)の合成
化合物YD−03(50mg、0.1134mmol)が、6M硫酸(1mL)に溶解され、得られた溶液が、0℃に冷却された。水(0.5mL)中の亜硝酸ナトリウム(7.2mg、0.136mmol)の溶液が、撹拌しながら滴下して加えられた。得られた混合物は、温度を5℃未満に維持しながら、さらに30分間撹拌された。水(1mL)中のアジ化ナトリウム(125mg、1.923mmol)の溶液が、加えられ、温度が、室温にまで上げられた。混合物は、さらに2時間撹拌され、その後、水により希釈された。酢酸エチルによる抽出の後、一緒にされた有機層は、飽和ブラインにより洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥された。濃縮後、得られた残渣は、カラムクロマトグラフィー(石油:酢酸エチル=4:1)によって精製され、これにより、YD−07の明黄色の粉末が、得られた(38mg、72%)。
H NMR(400MHz,DMSO−d6),δ8.24(d,J=2.7Hz,1H,1’−H),8.16(dd,J=9,2.7Hz,1H,2’−H),7.66(d,J=8.6Hz,2H,2−H,3−H),7.28(d,J=8.6Hz,2H,1−H,4−H),7.24(d,J=9Hz,1H,3’−H),3.83(br s,2H,CH),3.44(br s,2H,CH),3.24(br s,2H,CH),2.95(br s,2H,CH),2.49(s,3H,−CH);
13C NMR(100MHz,DMSO−d6)δ168.7,161.1,158.9,154.0,141.8,141.4,128.9,126.3,125.9,124.5,123.7,120.7,119.9,110.5,50.3,49.7,46.3,41.3,11.4;LRMS(API−ES):468(M+H).
【0202】
実施例5.化合物5〜化合物10の合成
化合物5は、o−クロロベンズアルデヒドをベンズアルデヒドの代わりに用いて出発することを除いて、スキーム2に従って調製された。
【0203】
化合物6は、ピペラジンの代わりに2−メチルピペラジンから調製されるYD−05の2−メチル誘導体を使用することを除いて、化合物5の場合と同様にスキーム2に従って調製された。
【0204】
化合物7は、o−クロロベンズアルデヒドの代わりにベンズアルデヒドから出発することを除いて、スキーム2を使用する化合物6の場合と同様にスキーム2に従って調製された。
【0205】
化合物8は、4−クロロニトロベンゼンを3,4−ジクロロニトロベンゼンの代わりに使用することを除いて、化合物2の場合と同様にスキーム2に従って調製された。
【0206】
化合物9は、2,6−ジクロロベンズアルデヒドをベンズアルデヒドの代わりに出発物質として使用することを除いて、化合物2の場合と同様にスキーム2に従って調製された。
【0207】
化合物10は、2,3−ジクロロニトロベンゼンを出発物質として3,4−ジクロロニトロベンゼンの代わりに使用することを除いて、化合物8の場合と同様にスキーム2に従って調製された。
【0208】
実施例6.化合物1〜10の抗ウイルス活性
化合物1〜10によってもたらされる保護を定量的に測定するために、プラーク減少アッセイが行われた。これらの化合物は、A型インフルエンザウイルスのプラーク形成をMDCK細胞において阻害され、EC50が、化合物1〜化合物10についてそれぞれ、0.05、0.06、0.56、0.25、0.04、0.21、0.8、5.1、12および25μMであった(図1b、2b、3b、4b、5b、6b、7b、8b、9bおよび10bを参照のこと)。
【0209】
化合物1〜10は、MDCK細胞およびVero細胞に対する細胞毒性についてアッセイされた。試験された化合物濃度が、0から250μMにまで及び、その結果は、表1に示される。結果は、化合物1〜10のTC50がMDCK細胞およびVero細胞の両方において、250μMを超えていることを示す。化合物1〜10についてMDCK細胞におけるTC50/EC50の比によって定義された選択性指数(SI)が、表1に示される。その結果は、このファミリーのアミドが、哺乳動物細胞に対して一般に非毒性であることを示す。
【0210】
【表1】

【0211】
別途定義される場合を除き、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、開示された発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中で引用される刊行物、および、それらがそのために引用される事項は、参照によって特に組み込まれる。
【0212】
当業者は、本明細書中に記載される発明の具体的実施態様に対する多くの均等物を、日常的にすぎない実験を使用して認識するか、または、確認することができる。そのような均等物は、下記の請求項によって包含されることが意図される。
【0213】
本出願は、米国特許出願第61/231,431号(発明の名称:「抗ウイルス性化合物」、2009年8月5日出願)、同第61/349,525号(発明の名称:「ウイルス感染症を処置するための化合物および方法」、2010年5月28日出願)および同第61/349,565号(発明の名称:「増殖性疾患を処置するための化合物および方法」、2010年5月28日出願)の優先権を主張する(これらのすべてがそれらの全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式Iの抗ウイルス性化合物:
【化1】

(式I)
式中、Ar、ArおよびArは、場合により炭素と窒素との間に二重結合を含む、それぞれが独立して置換され、あるいは非置換のアリール基、またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在(すなわち、直接の結合)であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R)−、−C(R)=C(R)−および−C(R−から選択され、
ただし、nは0〜6であり、かつ、R〜Rは、それぞれが独立して、水素、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシから選択される;かつ、
Wは、直鎖状または環状または複素環式の基である。
【請求項2】
Arが、水素、水酸基、ニトロ、アミノまたはアジドからなる群から選択される1つまたは複数の置換基により置換され、Arが、メチル基により置換され、XがC=Oであり、Yおよび/またはZが、非存在であり、かつ/あるいは、Arが、ハロゲン、ニトロまたはそれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の置換基により置換される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Wが、2個の窒素原子を含有する置換された5〜7員の不飽和環であり、ただし、一方の窒素原子が、Xに結合し、かつ、別の窒素原子が、Zに結合する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Wが、置換ピペラジンであり、ただし、N1が、Xに結合され、かつ、N4が、Zに結合される、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
下記の式を有する、請求項1に記載の化合物:
【化2】

(式II)
式中、ArおよびArは、それぞれが独立して、置換され、あるいは非置換のアリール基、またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C=O、−S=O、−SO、−N(R10)=O、−C=Cおよび−C(R1112からなる群から選択され、
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
T、QおよびRは、独立して、C(R)、窒素、酸素、リン、ケイ素、イオウおよびヒ素から選択される;
AおよびDは、それぞれが独立して、CR1516またはNR17である;
およびR〜R17は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択されるか、そうでなければ、−CR1516−、−NR17−またはそれらの組合せが、必要に応じた随意的な架橋メチレン基と一緒になったとき、5〜8員の環状構造を形成する。
【請求項6】
Arが、水素、水酸基、ニトロ、アミノまたはアジドにより置換され、Xが、C=Oであり、YおよびZが、非存在であり、かつ/あるいは、Arが、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せにより置換される、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、メチルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
Qが、炭素であり、Tが、酸素であり、かつ/または、Rが、窒素である、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
gおよびmが、1である、請求項5に記載の化合物。
【請求項10】
A−Dがピペラジンを規定するように、AおよびDが、NR15であり、かつ、R15−R15が、−CH−CH−リンカーを表す、請求項5に記載の化合物。
【請求項11】
下記の式を有する、請求項1に記載の化合物:
【化3】

(式III)
式中、ArおよびArは、それぞれが独立して、置換され、あるいは非置換のアリール基またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R10)−、−C(R11)=C(R12)−および−C(R1415−からなる群から選択され、
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
A、D、T、QおよびRは、独立して、C(R)、窒素、酸素、リン、ケイ素、イオウおよびヒ素から選択される;
およびR〜R15は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【請求項12】
Arが、水素、水酸基、ニトロ、アミノまたはアジドにより置換され、Xが、C=Oであり、YおよびZが、非存在であり、かつ/あるいは、Arが、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せにより置換される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Qが、炭素であり、Tが、酸素であり、かつ/または、Rが、窒素である、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
AおよびDが、窒素である、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
およびR13が、独立して、水素またはメチルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項16】
が、メチルであり、かつ/または、R13が、水素である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
下記の式を有する、請求項1に記載の化合物:
【化4】

(式IV)
式中、X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R10)−、−C(R11)=C(R12)−および−C(R1314−からなる群から選択される;
ただし、nは、0〜6である;
T、QおよびRは、独立して、C(R)、窒素、酸素、リン、ケイ素、イオウおよびヒ素から選択される;かつ
Cyは、4〜7員の、置換され、あるいは非置換の環状または複素環式の基である;
〜R14は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【請求項18】
Cyが、2個の窒素原子を含有する置換された5〜7員の不飽和環であり、ただし、一方の窒素原子が、Xに結合され、かつ、別の窒素原子が、Zに結合される、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
Cyが、置換ピペラジンであり、N1が、Xに結合し、かつ、N4が、Zに結合し、YおよびZが、非存在であり、Xが、C=Oであり、Tが、酸素であり、Qが、炭素であり、かつ/または、Rが、窒素である、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
〜RおよびR〜Rが、独立して、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基およびニトロ基の組合せから選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項21】
が、メチル基である、請求項17に記載の化合物。
【請求項22】
下記の式を有する、請求項1に記載の化合物:
【化5】

(式V)
式中、Ar、ArおよびArは、それぞれが独立して、置換され、あるいは非置換のアリール基、またはヘテロアリール基である;
X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R)−、−C(R)=C(R)−および−C(R−からなる群から選択される;
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
QおよびTは、独立して、窒素またはCRから選択される;かつ
〜R、R10およびR11は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【請求項23】
QおよびTが、ともに窒素である、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
10が、メチル基であり、かつ/または、R11が、水素である、請求項22に記載の化合物。
【請求項25】
10およびR11が、ともに水素である、請求項22に記載の化合物。
【請求項26】
YおよびZが、非存在であり、gおよびmが、1であり、かつ/または、Xが、C=Oである、請求項22に記載の化合物。
【請求項27】
ArおよびArが、置換フェニルであり、かつ/または、Arが、置換イソオキサゾールである、請求項22に記載の化合物。
【請求項28】
下記の式を有する、請求項1に記載の化合物:
【化6】

(式VI)
式中、X、YおよびZは、独立して、非存在であるか、または、−C(=O)−、−S(=O)−、−SO−、−N(R12)−、−C(R13)=C(R14)−および−C(R1516−からなる群から選択され、
n、gおよびmは、独立して、0〜6である;
QおよびTは、独立して、窒素またはCR17から選択される;かつ
〜R17は、独立して、水素、ハロゲン、水酸基、直鎖状または分枝状C〜Cアルキル、直鎖状または分枝状C〜Cアルケニル、直鎖状または分枝状C〜Cアルキニル、あるいは、直鎖状および分枝状C〜Cアルコキシ、アミノ、アジド、シアノ、ニトロ、ニトリル、イソニトリル、アミド、カルボキシラート、ウレア、グアニジン、イソシアナート、イソチオシアナートおよびチオエーテルから選択される。
【請求項29】
QおよびTが、ともに窒素である、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
YおよびZが、非存在であり、かつ/または、Xが、C=Oである、請求項28に記載の化合物。
【請求項31】
10が、メチル基であり、かつ/または、R11が、水素である、請求項28に記載の化合物。
【請求項32】
gおよびmが、1である、請求項36に記載の化合物。
【請求項33】
〜RおよびR〜Rが、独立して、ハロゲン基、ニトロ基、または、ハロゲン基とニトロ基の組合せから選択される、請求項28に記載の化合物。
【請求項34】
下記の化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物:
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン1−イル]−[3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン;
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−フェニル−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン;
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(4−アミノ−フェニル)−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン;
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(4−アジド−フェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン;
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(2−クロロ−フェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン;
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−2−メチル−ピペライン−1−イル]−[3−(2−クロロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イル]−メタノン;
[4−(2−クロロ−4−ニトロ−フェニル)−2−メチル−ピペライン−1−イル]−[3−フェニル−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン;
[4−(4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(2−クロロ−フェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−イル]−メタノン;および
[4−(4−ニトロ−フェニル)−ピペラジン−1−イル]−[3−(2,6−ジクロロ−フェニル)−5−メチル−イソオキサゾール−4−イル]−メタノン。
【請求項35】
請求項1、5、11、17、23、28または34のいずれか一項に記載される化合物と、1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物であって、前記化合物が、ウイルス感染症を処置または防止するために効果的な量で存在する、医薬組成物。
【請求項36】
ウイルスの核タンパク質の核蓄積を阻害する化合物の効果的な量を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
ウイルス感染症を、その必要性のある患者において処置または防止するための方法であって、請求項35に記載される組成物の効果的な量を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項38】
インフルエンザが、H1N1、H3N2およびH5N1からなる群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が、成人について1日につき体重1キログラムあたり0.1mg〜250mgの投薬量を提供する、請求項37に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【公表番号】特表2013−501008(P2013−501008A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523184(P2012−523184)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/CN2010/001187
【国際公開番号】WO2011/015037
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(511167870)バーシテック リミテッド (5)
【Fターム(参考)】