説明

抗ストレス作用と嗜好性向上効果を備えたペプチド性ペットフード素材

【課題】抗ストレス作用と嗜好性向上効果を備えた安全なペットフード素材、それを含有するペットフード、および愛玩動物用サプリメント、並びに愛玩動物のストレス軽減方法を提供する。
【解決手段】畜肉や魚肉タンパク質を含む原料をパパイン等のプロテアーゼで処理して、アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドを主たる有効成分とする熱安定性に優れたペットフード素材を得る。この素材の配合により、抗ストレス作用を示すと共に嗜好性の高いペットフードが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ストレス作用と嗜好性向上効果を備え、熱安定性に優れたペットフード素材、それを含有するペットフード、および愛玩動物用サプリメント、並びに愛玩動物のストレス軽減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、犬や猫といった愛玩動物の社会的な存在意義が高まるにつれて飼育環境が著しく変化しつつある。愛玩動物は家族同様に大切に扱われるようになる一方で、様々な新たなストレスにも曝されるようにもなってきている。たとえば、元来屋外で飼育されてきた動物にとって室内で飼育されることは、それだけで非常に大きなストレスを受けることになる場合が多い。特に都会におけるマンションやアパートといった限られた室内空間は、多くの動物にとっては厳しい生活環境である。散歩等で接する室外の環境も、都会では騒音や大気汚染など多くのストレス要因が溢れている。さらに単身世帯の増加等により、愛玩動物が飼い主と接する時間は限られ、散歩等の機会も少なくなりがちである。このようなストレスの負荷は、犬や猫の食欲不振や自虐行為など健康を損ねる状態につながりやすく、様々な疾病の誘因ともなっている。また、ストレスの蓄積により、無駄吠え、乱暴な行動、不適切な排便など飼い主や周囲の人間を困らせる行動を起こす犬や猫も多く、飼い主のストレス性疾患の発症などの健康問題や近隣住民との深刻なトラブルに発展する場合もある。
【0003】
愛玩動物のストレスに係る問題に対処する方法の一つに、ストレスを軽減させる効果をもつペットフードの給餌があげられる。たとえば、カゼイン(牛乳タンパク質)のトリプシン分解物にペットのストレスを改善する効果があることが示され、ペットのストレス軽減用剤として提案されている〔特許文献1〕。しかし、この分解物には強い苦味や収斂味があることから、ペットフードの素材として利用する場合には嗜好性を改善するために各種エキス類や香料等を添加するなどの工夫が必須であるという欠点がある。その他、ペットフードへのタンパク質分解物の添加では、大豆ペプチド分解物が知られているが、苦味など嗜好性に問題がある〔特許文献2〕。
【0004】
また、ギャバ(γ−アミノ酪酸)、ポリフェノール、カテキンなど人間の食品へ添加するために開発された抗ストレス食品素材がペットフードにも流用されているが、このような素材の多くは犬や猫といった愛玩動物における抗ストレス作用のデータが欠如したままに利用されていたり、ペットフードに用いる素材としては嗜好性に問題があるものが多いのが実情である。犬や猫は肉食動物を起源としており、マウス、ラット、ヒトといった雑食性動物とは栄養生理特性や餌に対する嗜好が大きく異なる部分がある。特に猫は、現在でも肉食動物としての特徴を明確に備えており、多量のタンパク質摂取に適した特有の消化吸収機構を有している。また、犬や猫が曝されているストレス要因やストレス応答は、他の動物(ヒト等)とは異質なものでもある。このようなことから、ペットフードに利用する抗ストレス素材は、犬や猫の栄養生理特性や嗜好などを考慮して開発する必要がある。特に嗜好性の低い素材をペットフード原料として配合した場合には、犬や猫の摂食量が著しく少なくなってしまい、保健的機能の発現が期待できない以前に、ペットフードとしての市場価値が著しく損なわれてしまう。
【0005】
ところで、畜肉あるいは畜肉タンパク質をプロテアーゼ処理(分解)することにより、生理活性ペプチドが生成することが、これまでに本発明者らにより報告されている〔非特許文献1, 2,特許文献3、4〕。このようなペプチドとして、血圧降下ペプチド、抗酸化ペプチド、抗疲労ペプチドなどがある。畜肉や魚肉中には非常に多くの種類のタンパク質が存在するため、プロテアーゼ処理により様々なペプチドが生成することが期待されるが、抗ストレス作用を有するペプチドについての報告はない。
【0006】
一方、本発明者らにより、豚肉ホモジネイトの乳酸菌発酵物やプロテアーゼ処理物のラットへの経口投与が、ストレス性胃潰瘍の発症予防に有効であることが示され、ヒトの機能性食品素材として利用する可能性が示唆されている〔特許文献5〕。しかし、愛玩動物を対象とした抗ストレス作用の検討がこれまでに全く行われていないことや、肉食動物を起源とする犬や猫に特有な栄養生理的な特性を鑑みた場合、その作用をマウスやラット等の雑食性の実験動物を用いて得たデータからだけで予想することは非常に難しい。しかも、上述のように犬や猫などのペットフードに利用する素材の開発には、犬や猫の嗜好を考慮することが必要となる。また、魚肉タンパク質の分解物を検討対象とした報告例は見当たらない。
【0007】
さらに、ほとんどのペットフードの製造において実施されている高温加熱処理(110〜140℃程度)は、ペットフードに利用する素材に高い熱安定性をも求めており、この点からもヒトを対象とした食品素材とは異なるハードルが存在する。本発明者らによる検討では、現在、食品やペットフードに利用されることが多いコラーゲンペプチドは、120℃の加熱により著しく生理活性(スーパーオキシドイオン消去能など)が失われた(未発表データ)。したがって、高温加熱処理を経て調製されるペットフードにペプチド性素材を用いる場合、熱安定性に優れたものを選択する必要もある。
【0008】
【非特許文献1】Arihara, K. 2006. Functional properties of bioactive peptides derived from meat proteins. In Advanced Technologies for Meat Processing (Eds. Nollet, L. M. L. and Toldra, F.) 245-273. Boca Raton, FL, CRC Press.
【非特許文献2】有原圭三. 2007. 食肉の保健的機能と機能性食肉製品の開発. 食肉の科学, 48 : 1-16.
【特許文献1】特開2004-357504 号
【特許文献2】特開2006-180815 号
【特許文献3】特許第3651878 号
【特許文献4】特開2007-45794号
【特許文献5】特開2003-102427 号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる状況に鑑み、本発明の目的は、多くの犬や猫が苦しまされているストレスおよびストレスを原因とする疾病に係る諸問題の解決に有効であり、かつペットフードの価値を決定する重要要因である嗜好性を損なわず(あるいは向上させ)、しかも高温加熱加工に耐えうる熱安定性を備えたペットフード素材やペットフードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決すべく、本発明者らは、鋭意研究を進め、食肉や魚肉(タンパク質)をプロテアーゼ(パパイン等)で処理(分解)して調製したペプチド含有物に、愛玩動物における抗ストレス作用があることを見出した。さらに、このペプチド含有物はペットフードの嗜好性を向上させる効果があると共に優れた熱安定性を有するため、ペットフード素材として好適な特性を有することも見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、畜肉または魚肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理することにより得られ、アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドを主たる有効成分として含有する、抗ストレス作用を示し、あわせて嗜好性向上効果をも備えた熱安定性に優れたペットフード素材である。
【0012】
このペットフード素材においては、上記アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドが疎水性樹脂に吸着するものであるのが好ましい。また、使用するプロテアーゼとしてはパパインが好ましく、畜肉または魚肉が鶏肉または鰹肉であるのが好ましい。
【0013】
上記ペットフード素材は、ドッグフードまたはキャットフードに好適に使用できる。
また、本発明は、上記ペットフード素材を用いて製造したペットフードにも関する。このペットフードとしてはドッグフードまたはキャットフードであるのが好ましい。これらのペットフードは通常高温加熱処理を伴って製造される。
【0014】
さらに、本発明は、畜肉または魚肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理することにより得られ、アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドを主たる有効成分として含有する、抗ストレス作用を示し、かつ嗜好性も向上した愛玩動物用サプリメントも提供する。愛玩動物としてはイヌまたはネコであるのが好ましい。
【0015】
また、本発明は、畜肉または魚肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理することにより得られ、アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドを主たる有効成分として含有する組成物を投与することを特徴とする、愛玩動物のストレス軽減方法にも関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、犬や猫といった愛玩動物が曝されているストレスからの負担を軽減し、ストレスに起因する疾病を予防あるいは治療する効果が大きく、かつペットフードの原料として利用した場合に嗜好性を損なわず(あるいは向上させ)、高温加熱処理にも耐えうる熱安定性を備えた安全なペットフード素材を提供することができる。この素材を用いて製造したペットフードは、製造の際の高温加熱処理によっても、その抗ストレス性および良好な嗜好性が損なわれることなく維持され、嗜好性についてはさらに向上する場合もあるので、犬や猫といった愛玩動物に摂取させて抗ストレス作用を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のペットフード素材は、畜肉または魚肉を含む原料をプロテアーゼで処理して得られるものであり、アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドを主たる有効成分とする熱安定性に優れた素材である。
【0018】
上記畜肉や魚肉は、動物の筋肉を主要な構成成分とするもので、筋肉あるいは筋肉タンパク質を含むものを調製用原料として用いることができる。用いる畜肉や魚肉は、入手のしやすさなどから、鶏、豚、牛、鰹、鮪、鯵、鰯、鮭等が適しており、中でも安定した品質の素材製品を調製しやすい鶏肉や鰹肉が好ましいが、これらの畜種や魚種に限定されるものではない。さらに、本発明における畜肉は、鶏、鶉、鴨等の家禽類も含み、魚肉は、筋肉を有する貝類等も含み、広く魚介類を指している。また、筋肉の部位や状態は、特に限定されるものではなく、畜肉や魚肉の調製方法も、十分に筋肉タンパク質を含む材料が得られるのであれば、任意の方法が使用できる。
【0019】
畜肉や魚肉の分解に用いるプロテアーゼは、特定のものに限定されるものではなく、筋肉タンパク質を適度に分解するものであれば、種類は問わない。畜肉や魚肉のプロテアーゼ処理は、畜肉や魚肉を含む原料、例えば畜肉や魚肉を粉砕または磨砕したものにそのまま、あるいは加水して粉砕または磨砕により水懸濁液としたものに、プロテアーゼを添加して行うことができる。プロテアーゼとしては、パパイン、ブロメライン、フィシン、α‐キモトリプシン、サーモリシン、プロテイネースK、プロナーゼEなどを好適に例示することができるが、中でも、高い抗ストレス作用と嗜好性向上効果を兼ね備えた分解物を得ることができる酵素としてパパインを用いることが特に好ましい。
【0020】
プロテアーゼを作用させる場合、温度、pH等を、それぞれのプロテアーゼの至適条件に設定すると、速やかに分解物を得ることができるが、プロテアーゼの添加量や反応時間によっても制御可能であるため、特定の条件に限定されるものではない。プロテアーゼにより畜肉や魚肉を分解した後に、溶液を85〜100℃程度に加熱して、プロテアーゼ活性を消失させることが好ましい。
【0021】
プロテアーゼ活性消失後、懸濁液を、冷蔵・凍結など適切な保存方法を経た後にそのまま利用してもよいし、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥などの適当な方法により乾燥させ、パウダー状に加工してもよい。乾燥・パウダー化させた素材は、長期間の貯蔵に適すると共に、運搬・加工等においても扱いやすい形状である。
【0022】
上記のようにして畜肉または魚肉をプロテアーゼで処理して得られる組成物(ペプチド性素材)には、アミノ酸残基2〜10個、好ましくはアミノ酸残基2〜5個からなるペプチドが主成分として含まれる。これらのペプチドは、オクタデシルシリルシリカゲルなどの疎水性樹脂に吸着しうる、比較的疎水性の強いペプチドであるのが好ましい。
【0023】
このペプチド性素材より調製したペットフードは、犬および猫に対する抗ストレス作用を示すことが実施例5において実証されている。具体的には、動物をストレス負荷環境におき、生体内のストレス指標を測定して、本発明ペットフード素材の抗ストレス性を確認している。さらに、実施例7は本発明ペットフード素材の嗜好性向上効果を示している。従って、この素材の抗ストレス作用および嗜好性は、高温加熱処理を経ても損なわれないことが明らかである。
【0024】
畜肉や魚肉をプロテアーゼで処理して調製される、アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドを主成分とする組成物は、ペットフード素材としてペットフード(ドッグフード、キャットフード)に添加し犬や猫などの愛玩動物に与えることができる。抗ストレス作用や嗜好性向上効果を示すのに必要な添加量は、通常のペットフードの場合は0.1〜10重量%程度である。ただし、1回の摂取量が少ない特殊なペットフード、サプリメント、医薬品の場合は、10重量%以上の添加を行ってもよい。本発明の素材をペットフードに添加する場合、本発明の効果が損なわれない範囲で、添加剤(ビタミン類、ミネラル類等の栄養添加剤、甘味料、香料、色素等の呈味・矯臭剤・外観改善剤等)などを利用することができる。
【0025】
本発明のペプチド性ペットフード素材は、熱安定性に優れているため、適当なペットフード等に添加・加工(混合、加熱等)する際に、生理活性や嗜好性に関して何ら問題を生じない。この素材を利用してペットフードを製造する方法としては、ペットフード原料に配合(添加あるいは混合)しても、また、製造されたペットフード表面に被覆してもよく、特定の方法に限定されない。ペットフードを製造する場合に行われる加熱処理は、通常高温で行われ、例えば、ドライフードの場合、エクスクルーダーでの加熱温度は110〜135℃程度、その後の乾燥は140℃程度で行われる場合が多いが、このような処理によって本発明のペプチド性素材の生理作用を著しく損ねることはない。嗜好性向上効果の観点からは、むしろ120℃前後の加熱処理を経ることにより、犬や猫にとって好ましい香気がメイラード反応により形成される。このため、本発明の素材に嗜好性向上効果をより多く期待する場合には、他の原料と混合した後の加熱時間を延長する等によりメイラード反応を促進させる条件を設定することも推奨される。
【0026】
本発明のペットフード素材を利用するペットフードの種類としては特に制限されず、例えば、現在市販のペットフードとして主流であるドライタイプやウェットタイプのドッグフードやキャットフード、ペット用各種飲料、ソーセージやペースト等のペット用練り製品、ペット用スナック類などを挙げることができる。本発明におけるペットフードあるいはペットフード素材は、各種ストレスによる問題の発生頻度や深刻さから、犬と猫に対して特に好適に使用できるが、犬猫以外のペット動物あるいは家畜や家禽に対して給餌することもできる。
【0027】
さらに、畜肉や魚肉をプロテアーゼで処理して調製される、アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドを主成分とする組成物は、犬や猫などの愛玩動物のストレス軽減のためのサプリメントとして用いるのにも適している。サプリメントの場合でも、嗜好性が低いと動物が十分に摂取せず効果が発揮できないため、嗜好性の向上が重要な要件となる。また、この組成物は愛玩動物のストレス軽減のために医薬として使用することも期待できる。
【0028】
なお、本発明におけるストレスとは、特定のものに限定されるものではないが、具体的な例として、運動不足、室内飼育、飼い主との接触不足、無理な躾、騒音、大気汚染、悪臭、治療行為などのペットにとって不快な環境要因があげられる。また、このような環境要因からのストレスは、生体内において活性酸素(あるいはフリーラジカル)の生成に伴い酸化ストレスを生じさせる。酸化ストレスは細胞膜等の損傷をはじめとする生体防御システムの攪乱をもたらすことにより、精神的乱れや異常行動などを生じさせる。さらには、数多くの疾病(たとえば、循環器疾患、消化器疾患、腎疾患、皮膚疾患、脳神経疾患、糖尿病、呼吸器疾患、血液疾患、眼疾患)の誘因ともなる。従って、本発明におけるストレスとは、「酸化ストレス(フリーラジカル生成)の係る生体システムの攪乱を招くもの」と言い換えることもできる。
【0029】
以下、本発明を実施例で説明する。なお、以下の実施例は、本発明を説明するためにあげた例であり、これにより本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0030】
(畜肉あるいは魚肉を原料とするペプチド性素材の調製方法)
畜肉あるいは魚肉を原料として本発明のペプチド性素材を調製する際の過程の概略を図1に示した。この実施例では、畜肉として鶏肉を、魚肉として鰹肉を利用した。鶏肉(ブロイラーのささみ肉)は脂肪や結合組織をできるだけ取り除いた後に細切し、ミンチを行いやすいように加水した。ミンチによりほぼ均一になった肉懸濁液にプロテアーゼとしてパパイン(精製パパインFL−3、アサヒフードアンドヘルスケア株式会社)を添加した(0.25〜1.50重量%)。50℃で1時間酵素反応を行った後、85℃で1時間加熱してパパインを失活させた。このときの加熱により生成した凝固塊を粉砕して、ある程度均一な懸濁液とした後に、金属製メッシュで濾過することにより大きな粒子を除去した。採取した濾液は、凍結乾燥(フリーズドライ)させた後に粉砕し、得られた粉末をペプチド性素材とした。なお、乾燥工程はエアードライ法やドラムドライ法のような加熱乾燥法によっても問題なく、特に大量に調製する場合には、コスト面において凍結乾燥法よりも優れている。鰹肉を原料とした場合は、鰹節原料として利用される頭部や内臓等を除去した主として骨格筋よりなる部分(鰹節製造に利用される培燻前のもの、凍結貯蔵品)を用いた。解凍後は、前述の鶏肉の場合と同様に処理を行った。
【0031】
鶏肉および鰹肉を原料としてペプチド素材を前述の工程で調製する際に、プロテアーゼとして用いたパパインの添加量とペプチド含量(生成量)の関係を検討した結果を表1に示した。鶏肉の場合、パパイン添加量が0.50〜1.00重量%程度でペプチド含量が高く、鰹肉の場合、パパイン添加量が1.00〜1.25%でペプチド含量が高かった。この結果から、以下の検討(実施例)で用いるペプチド性素材の調製工程では、鶏肉原料の場合はパパイン添加量を0.50重量%とし、鰹肉原料の場合は1.00重量%とした。なお、85℃における1時間の加熱(パパイン失活条件)は、この素材の活性(スーパーオキシドイオン消去能を指標とした抗酸化活性、測定方法は後述の実施例6に記載)にほとんど影響を及ぼさなかった。
【0032】
【表1】

【実施例2】
【0033】
(ペプチド性素材の経口投与によるラットのストレス性胃潰瘍の予防効果)
まず、ペプチド性素材の抗ストレス作用を実験動物レベルで検証するために、ラットを用いたストレス性胃潰瘍発症試験を行った。供試動物にはSD系7週齢雄ラット(日本クレア株式会社)を用いた。試験区のラットにはペプチド性素材(鶏肉あるいは鰹肉原料から調製したもの、実施例1に記載した方法により調製)を経口投与し、対照区のラットには水あるいは未分解素材(パパイン無添加により調製した肉素材)を経口投与した。ストレス性胃潰瘍発症試験は、1日1回、7日間、体重100gあたり1ml(素材重量として5mg)の試料をステンレス製胃ゾンデで強制的に経口投与し、最終投与後、24時間の絶食処理を行った。絶食後、それぞれのラットを水浸拘束ストレス試験用ケージに入れ、ラットの首から上の部分が水面から出るように20℃の水に浸した。この状態で24時間の水浸拘束ストレス負荷を行った後、それぞれのラットより胃を摘出・洗浄後、ホルマリンで固定した。水浸拘束ストレスを負荷することにより、ラットの胃にはストレス性胃潰瘍が形成されるが、水浸拘束ストレスを負荷させていない健康なラットの胃には胃潰瘍が観察されない。また、抗ストレス作用を有する試料を経口投与した場合には、ストレス性胃潰瘍の形成が抑制される。
【0034】
今回の試験で得られたホルマリン固定した胃壁に生じた潰瘍の総面積を測定した結果(面積の相対比率)を図2(鶏肉を原料とするペプチド性素材)と図3(鰹肉を原料とするペプチド性素材)に示した。鶏肉あるいは鰹肉を原料として調製したペプチド性素材をラットに経口投与することにより、ストレス性胃潰瘍形成の顕著な抑制が認められた。このことより、本発明で提案するペプチド性素材は、少なくともラットのような雑食性動物においては抗ストレス作用を有するものと判断した。
【実施例3】
【0035】
(ペプチド性素材の経口投与がマウスの強制走行ストレス負荷に対して示す効果)
強制走行ストレス負荷に対して鶏肉を原料とするペプチド性素材の経口投与が示す効果を検討した。ペプチド性素材を経口投与したマウスを強制走行させたときの走行時間の変化(延長)により効果を判定した。マウスは5〜6週齢のICR系雄(日本チャールズ・リバー株式会社)を用いた。マウスの強制走行にはトレッドミルMK−680S(室町機械株式会社)を用い、走行面の傾斜を15度とし、ベルト速度を20m/minとした。ペプチド性素材等の試料を経口投与する前のマウスをトレッドミルで4時間強制走行させ、ある程度の疲労状態にした後、ステンレス製胃ゾンデで試料溶液を経口投与した。経口投与試料の容量は、マウス1匹あたり0.2ml(体重100gあたり素材重量として5mg)とした。試験区のマウスには鶏肉を原料とするペプチド性素材(実施例1に記載した方法により調製)を経口投与し、対照区のマウスには生理食塩水あるいは未分解素材(パパイン無添加により調製した鶏肉素材)を経口投与した。経口投与の15分後に強制走行を再開し、マウスの走行時間を測定した。マウスが強制走行により疲労の限界に達して走行を止め、5秒間以上トレッドミル走行面後部の電極に接触し続けた時点を走行終了とみなした。なお、電極は電圧100Vに設定し、マウスが疲労の限界まで走行し続けるようにした。マウスは電極への接触(感電)を嫌うため、疲労程度が限界に達するまで走行を続ける。
【0036】
図4に示したように、鶏肉を原料とするペプチド性素材の経口投与は、マウスの走行時間を顕著に延長させた。ペプチド性素材を経口投与されたマウスは、水を投与した対照群の約2倍の時間を走行した。また、未分解素材には効果がなかったことから、ペプチド性素材に含まれるペプチドによる効果であると考えられた。この実施例により、本発明のペプチド性素材は、少なくともマウスのような雑食性動物では強制走行ストレス負荷による疲労発現を軽減する作用が、あるものと判断した。
【実施例4】
【0037】
(ペプチド性素材の経口投与がラットに対して示す血圧調節作用)
ストレスの負荷により動物の血圧が上昇することが知られており、高血圧症の発症にはストレスが密接な係りをもっている。そこで、自然発症高血圧ラットを用いて、本発明のペプチド性素材の経口投与が血圧調節作用を示すかを検討した。
【0038】
鶏肉を原料とするペプチド性素材(実施例1に記載した方法により調製)を、自然発症高血圧ラット(日本チャールズ・リバー株式会社、1群10匹、15〜20週齢雄)にステンレス製胃ゾンデを用いて経口投与した。試料(ペプチド性素材および未分解素材)の投与量は、ラット体重100gあたり5mgとし、投与容量は1匹あたり1mlとした。なお、同量(1ml)の水を経口投与したものを対照群とした。胃ゾンデによる経口投与を行った後の尾動脈の血圧(収縮期圧)値を測定し、投与直前の最高血圧値を減じた値を算出して、血圧変動値とした。血圧の測定は、非観血式血圧測定装置BP−98A(株式会社ソフトロン)を用い、テイル・カフ(tail cuff )法により行った。
【0039】
鶏肉を原料とするペプチド性素材を自然発症高血圧ラットに経口投与した後の、経時的な血圧(収縮期圧)の変化を見た結果を図5に示した。ペプチド性素材を投与した群では、2〜8時間後にかけての血圧降下が認められた。このような血圧変化は水投与群や未分解素材投与群では認められなかったことから、ペプチド性素材に含まれるペプチドには、少なくともラットのような雑食性動物においては血圧調節(降下)作用があるものと判断した。なお、鰹肉を原料とするペプチド性素材にも同様の血圧降下作用が認められた。
【実施例5】
【0040】
(ペプチド性素材を配合したペットフードの給餌の犬や猫に対する抗ストレス作用)
鶏肉を原料としたペプチド性素材あるいは未分解の鶏肉素材(それぞれ、実施例1に記載した方法により調製)をペットフード基本原料に10%配合した。なお、ドッグフードの基本原料組成は、穀類(とうもろこし、小麦粉)60.80%、糟糠類(グルテンフィード、ふすま、ビートパルプ)4.50%、魚介類(フィッシュミール)5.00%、肉類(チキンミール)10.00%、豆類(脱脂大豆)5.50%、植物性タンパク質(グルテンミール)5.50%、ビタミン類0.30%、ミネラル類1.40%、エキス類1.50%、油脂類(牛脂)5.50%とした。また、キャットフードの基本原料組成は、穀類(とうもろこし、小麦粉、米粉)52.85%、魚介類(フィッシュミール)12.40%、肉類(チキンミール)10.00%、植物性タンパク質(グルテンミール)14.00%、ビタミン類0.50%、ミネラル類1.90%、エキス類2.50%、油脂類(牛脂)5.00%、その他(ビール酵母、オリゴ糖、タウリン、メチオニン)0.85%とした。それぞれの素材(鶏肉を原料とするペプチド性素材あるいは未分解の鶏肉素材)を基本原料に配合した後、粉砕・混合し、加水したものをエクスクルーダー(加熱加圧押出機)により押出成形(110℃、30秒間)し、乾燥(140℃、15分間)してペレット(ドライタイプのペットフード)を調製した。
【0041】
ペプチド性素材を配合したドッグフード(配合群)あるいは未分解の鶏肉素材を配合したドッグフード(無配合群)をケージ飼い(ストレス負荷環境)のビーグル犬に5日間給餌(1日1頭あたり280g)した。給餌期間終了後に血液を採取し、生体内におけるストレス指標として血清ヒドロペルオキシド値と血清乳酸値を測定した。ヒドロペルオキシド値の測定にはフリーラジカル評価システムFREE(株式会社ウイスマー研究所)を用い、乳酸値の測定には血中乳酸測定器ラクテートプロLT−1710(アークレイ株式会社)を用いた。その結果を図6と図7に示した。鶏肉を原料とするペプチド性素材を配合したドッグフードを摂取した犬は、いずれのストレス指標も低下していた。このことから、本発明の素材はラット(実施例2、4)やマウス(実施例3)とは異なる栄養生理特性を有する肉食動物を起源とする犬に対しても抗ストレス作用を示すことが確認された。また、押出成形と乾燥時の高温加熱処理(110℃、30秒間 + 140℃、15分間)を経て調製したドッグフードを用いた結果であることから、本発明によるペプチド性素材はドッグフード原料として配合した場合、熱安定性に優れていることも判明した。
【0042】
同様に、ペプチド性素材を配合したキャットフード(配合群)あるいは未分解の鶏肉素材を配合したキャットフード(無配合群)をケージ飼い(ストレス負荷環境)の雑種猫に5日間給餌(1日1頭あたり80g)した。給餌期間終了後に血液を採取し、血清ヒドロペルオキシド値を測定した。その結果を図8に示した。鶏肉を原料とするペプチド性素材を配合したキャットフードを摂取した猫は、ストレス指標が低下していた。このことから、本発明の素材は肉食動物としての特性を強く示す猫に対しても抗ストレス作用を示すことが確認された。また、ドッグフードと同様に、押出成形と乾燥時の高温加熱処理(110℃、30秒間 + 140℃、15分間)を経て調製したキャットフードを用いた結果であることから、本発明によるペプチド性素材はキャットフード原料として配合した場合、熱安定性に優れていることも判明した。
【実施例6】
【0043】
(ペプチド性素材に含まれる有効成分の性質)
本発明のペプチド性素材に含まれる抗ストレス作用を示すペプチドには多様なものがあると考えられるが、重要なものとして抗酸化ペプチドと血圧調節ペプチドがあげられる。そこで、抗ストレス作用のin vitroの指標として抗酸化活性(スーパーオキシドイオン消去能)と血圧降下作用(アンジオテンシンI変換酵素阻害活性、以下ACE阻害活性とする)を採用して、検討を行った。
【0044】
抗酸化活性の測定には、スーパーオキシドイオンを化学発光法によって定量する方法を用いた。ペプチド等の測定試料の存在下でヒポキサンチンにキサンチンオキシダーゼを反応させ、スーパーオキシドイオンを生成させ、これに発光試薬である2−メチル−6−p−メトキシフェニルエチニルイミダゾピラノジン(MPEC、アトー株式会社)を反応させ、発光量をルミネッセンサーAB−2200(アトー株式会社)で測定した。以下の式により、抗酸化活性を算出した。抗酸化活性(%)=(対照の測定値−試料の測定値)÷対照の測定値×100
ACE阻害活性の測定は、合成基質である馬尿酸−L−ヒスチジル−L−ロイシン(シグマ社)を用いてACEが基質の末端を選択的に切断することを利用し、遊離する馬尿酸を比色定量して行った。以下の式により、ACE阻害活性を算出した。ACE阻害活性(%)=(対照の吸光度−試料の吸光度)÷(対照の吸光度−反応前の吸光度)×100
ペプチド性素材を疎水性樹脂(ワコーシル40C18、和光純薬株式会社製)を用いて分画(バッチ法)を行った。すなわち、ペプチド性素材を蒸留水に溶かし、不溶性部分を遠心分離により除去したものを疎水性樹脂と激しく攪拌し、疎水性樹脂に吸着する画分と吸着しない画分に分けた。両者のスーパーオキシドイオン消去能とACE阻害活性を測定したところ、樹脂に吸着した疎水性の比較的強いペプチドを含む画分に大部分の活性が回収された。この画分を凍結乾燥し、5〜6週齢のICR系雄マウス(日本チャールズ・リバー株式会社)にステンレス製胃ゾンデを用いて経口投与したところ、血清ヒドロペルオキシド(ストレスマーカー)値が低下したことから、この疎水性の比較的強いペプチドが含まれる画分に抗ストレス作用を示すペプチドが回収されていることが確認された。
【0045】
前述の疎水性樹脂により粗精製したペプチド画分を、さらにゲル濾過クロマトグラフィー(Poly HYDROXYETHYL A 200 x 9.4mm カラム、Poly LC Inc 社)やエタノール沈殿法による分画に供したところ、アミノ酸残基2〜10個程度からなるペプチドを主要成分とする画分に大部分の抗酸化活性とACE阻害活性が回収された。この画分をマウスに経口投与したところ、血清ヒドロペルオキシド値が低下した。
【0046】
前述の疎水性樹脂を用いて粗精製したペプチドを含む画分から、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、活性ペプチドの精製を試みた。装置には島津製作所社製LC−VPシステムを用い、逆相カラムにはXBridge C18 (4.6 x 150mm 、Waters社)およびAtlantis C18(4.6 x 150mm 、Waters社)を利用した。逆相HPLCを組み合わせた精製により、多くの抗酸化ペプチドおよびACE阻害ペプチドの存在が示唆されたが、表2に例示するようなアミノ酸残基2〜5個から成るペプチドが同定された。ペプチドの同定には、プロテインシークエンサーPPSQ−31A(株式会社島津製作所)および質量分析装置QP8000α(株式会社島津製作所)を用いた。なお、ペプチド素材中には、抗酸化ペプチドやACE阻害ペプチドおよびその他の生理活性ペプチドが非常に多く存在することが示唆されており、ペプチド性素材の有する抗ストレス作用は、表2にあげたものによってのみ発現するものではない。
【0047】
【表2】

【実施例7】
【0048】
(ペプチド性素材の配合によるペットフードの嗜好性向上効果)
ペットフードの品質を評価する因子として嗜好性はきわめて重要である。ペットが摂取を拒めば、優れた保健的作用を備えたペットフードであっても、市場性はきわめて低くなる。また、ペットが喜んでペットフードを摂取する姿に飼い主も強い満足感を示し、購入行動に結びつく。代表的な愛玩動物である犬や猫のうち、特に猫は嗜好性にうるさい動物であることが知られている。そこで、ここでは猫を用いて、ペプチド性素材を配合したペットフードの嗜好性を検討した。
【0049】
鶏肉あるいは鰹肉を原料としたペプチド性素材あるいは未分解の鶏肉あるいは鰹肉素材(それぞれ、実施例1に記載した方法により調製)をキャットフード基本原料(実施例5に記載したもの)に10%配合した。素材を基本原料に配合した後、粉砕・混合し、加水したものをエクスクルーダー(加熱加圧押出機)により押出成形(110℃、30秒間)し、乾燥(140℃、15分間)してペレット(ドライタイプのキャットフード)を調製した。
【0050】
嗜好性試験は2点比較法(採食量比較試験)により実施した。すなわち、2種類の試験フードを100gずつ別の給餌用容器に入れてケージ内に設置した後に猫に給餌を開始させ、24時間後のフード重量(食べ残し量)を計量することにより、採食量を求めた。図9にその結果を示した。鶏肉あるいは鰹肉を原料とするペプチド性素材の配合は、いずれもキャットフードの嗜好性を損ねることはなかった。
【0051】
また、ペットフードを与えた場合、「食い付き」の良さは飼い主に喜ばれる重要な特性である。前述の採食量比較試験の実施と同様にして、2種類の試験フードを並べて猫に給餌を開始した場合に、どちらのフードを最初に食べ始めるか(食い付きの良さ)を見た。図10にその結果を示した。ペプチド性素材を配合したキャットフードは、鶏肉原料と鰹肉原料のいずれも対照フード(未分解素材配合フード)と比較して顕著に食い付きが良く、大部分の猫はペプチド性素材を配合したフードから採食を開始した。この結果から、本発明のペットフード素材は、嗜好性の面からも優れたペットフード素材となることが示された。また、押出成形と乾燥時の高温加熱処理(110℃、30秒間 + 140℃、15分間)を経て調製したキャットフードを用いた結果であることから、本発明によるペプチド性素材はキャットフードに配合した場合、嗜好性向上効果を示すうえにおいても熱安定性に優れていることが判明した。
【0052】
飼い主が新たなペットフードを購入し、それまでに給餌していたペットフードから切り替える場合に、ペットが新しいフードをすぐに受け入れない場合がある。そこで、フードを切り替えた場合の採食量の変化を観察し、フード切り替え時におけるペプチド性素材を配合したフードが問題なく受け入れられるかを検討した。
【0053】
鶏肉を原料とするペプチド性素材を配合したキャットフードは、前述の嗜好性試験に用いたものを利用した。実施例5に記載した基本原料のみからなるキャットフードを給餌して飼育を続けた猫10匹のフードをペプチド性素材を10%配合したフードに切り替え、食べ残し量の変化を見た。給餌量は、1日1匹あたり80gとした。切り替え前後それぞれ4日間の食べ残したフード量を測定した結果を表3に示した。切り替え前4日間の食べ残し量の平均(1日あたり)は12.6gであったのに対し、ペプチド性素材を配合したフードに切り替えた後4日間の平均は3.0gとなった。すなわち、食べ残し量は、フード切り替え後に減少しており、猫が切り替え後の新しいフードを問題なく受け入れたものと判断した。
【0054】
【表3】

【0055】
なお、同様のフード切り替えによる影響を見る試験を犬においても実施したが、ドッグフード切り替え前後のいずれの時点においても、ほとんどの犬が給餌したフード(1日1頭あたり280g)を完食したため、食べ残し量に差を認めることはできなかった。しかし、これにより、本発明のペプチド性素材をドッグフードに配合しても嗜好性が損なわれることはないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】鶏肉や鰹肉を原料として製造されるペプチド性素材の製造過程の概略を示す図である。
【図2】鶏肉を原料とするペプチド性素材をラットに経口投与した場合の抗ストレス作用(水浸拘束ストレス負荷によるストレス性胃潰瘍の予防作用)を示す図である。
【図3】鰹肉を原料とするペプチド性素材をラットに経口投与した場合の抗ストレス作用(水浸拘束ストレス負荷によるストレス性胃潰瘍の予防作用)を示す図である。
【図4】鶏肉を原料とするペプチド性素材をマウスに経口投与した場合の抗ストレス作用(強制走行ストレス負荷時における走行時間の変化)を示す図である。
【図5】鶏肉を原料とするペプチド性素材を自然発症高血圧ラットに経口投与した場合の血圧調節作用を示す図である。
【図6】鶏肉を原料とするペプチド性素材を配合したドッグフードを犬に給餌した場合の生体内酸化ストレス度(ストレスマーカーとして血清ヒドロペルオキシド値を利用)への影響を示す図である。
【図7】鶏肉を原料とするペプチド性素材を配合したドッグフードを犬に給餌した場合の血清乳酸値(ストレスマーカーとして血清乳酸値を利用)への影響を示す図である。
【図8】鶏肉を原料とするペプチド性素材を配合したキャットフードを猫に給餌した場合の生体内酸化ストレス度(ストレスマーカーとして血清ヒドロペルオキシド値を利用)への影響を示す図である。
【図9】鶏肉あるいは鰹肉を原料とするペプチド性素材を配合したキャットフードを猫に給餌した嗜好性試験(採食量比較試験)の結果を示す図である。
【図10】鶏肉あるいは鰹肉を原料とするペプチド性素材を配合したキャットフードを猫に給餌した嗜好性試験(食い付き試験)の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜肉または魚肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理することにより得られ、アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドを主たる有効成分として含有する、抗ストレス作用を示し、あわせて嗜好性向上効果をも備えた熱安定性に優れたペットフード素材。
【請求項2】
前記ペプチドが疎水性樹脂に吸着するものである、請求項1記載のペットフード素材。
【請求項3】
プロテアーゼがパパインであることを特徴とする請求項1または2記載のペットフード素材。
【請求項4】
畜肉または魚肉が鶏肉または鰹肉であることを特徴とする請求項1〜3のいずれの項記載のペットフード素材。
【請求項5】
ドッグフードまたはキャットフードに用いるための、請求項1記載のペットフード素材。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの項記載のペットフード素材を用いて製造した、抗ストレス作用および嗜好性を備えたペットフード。
【請求項7】
高温加熱処理を伴って製造することを特徴とする、請求項6記載のペットフード。
【請求項8】
請求項5記載のペットフード素材を用いて製造したドッグフードまたはキャットフード。
【請求項9】
高温加熱処理を伴って製造することを特徴とする、請求項8記載のドッグフードまたはキャットフード。
【請求項10】
畜肉または魚肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理することにより得られ、アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドを主たる有効成分として含有する、抗ストレス作用を示し、かつ嗜好性が向上した愛玩動物用サプリメント。
【請求項11】
愛玩動物がイヌまたはネコである、請求項10記載のサプリメント。
【請求項12】
畜肉または魚肉タンパク質を含む原料をプロテアーゼで処理することにより得られ、アミノ酸残基2〜10個からなるペプチドを主たる有効成分として含有する組成物を投与することを特徴とする、愛玩動物のストレス軽減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−22206(P2009−22206A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−188378(P2007−188378)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業(起業化促進型)」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(598041566)学校法人北里研究所 (180)
【Fターム(参考)】