説明

抗マラリアワクチン

本発明は、流行地への渡航者の増殖性マラリア感染を予防する方法を提供し、該方法は、マラリア原虫(Plasmodium)抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体と、リポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含むアジュバントとを含んでなる製剤を適量投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マラリア感染およびマラリア疾患に対して免疫を賦与するための、マラリア抗原の新規な使用に関する。本発明は特に、流行地への渡航が予定されているマラリア未感染(naive)個体をマラリア感染に対して免疫するための、好適なアジュバントとの併用でのスポロゾイト抗原、特にスポロゾイト周囲(CS)タンパク質またはその免疫原性断片もしくは誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアは世界でも主要な健康上の問題のひとつである。20世紀の間、経済的・社会的発展は、抗マラリアキャンペーンとあいまって、世界の広域からのマラリアの撲滅をもたらし、マラリアの影響を受けている地域は地球の地表面の50%から27%へと減少した。それにもかかわらず、予測される人口増加を考慮に入れると、2010年までに世界の人口の半分である35億人ほどが、マラリアが伝播している地域に暮らすことになると予想されている(Hay, 2004)。現在の推計は、マラリアによって毎年100万人をはるかに上回る死者が出ること、そしてアフリカのみの経済的負担が驚異的になりつつあることを示唆している(Bremen, 2004)。
【0003】
これらの予想図は、世界的なマラリアの危機と、マラリアが国際的医療社会に課する挑戦とを浮き彫りにしている。この危機の理由は複数あり、利用可能で手頃でありかつ以前には非常に有効であった薬物に対する広範囲の耐性の発生から、医療システムの崩壊および不足、ならびに財源の欠如にわたる。この疾患を防御する方法が見出されない限り、健康および小児生存率を改善し、貧困を少なくし、安全保証を高め、最も弱い社会を強化するための世界的な努力は失敗に終わるであろう。
【0004】
マラリアはまた、通常はマラリアの存在しない国に暮らし、流行地へ渡航するかそこで働く人々に対してリスクをもたらす。このような渡航集団に対してリスクはより大きいものと思われる。なぜなら彼らは自然曝露によるマラリアに対するバックグラウンド免疫応答を何ら有しないからである。マラリア流行地への渡航者に降りかかるリスクの別の側面は、この疾患が風邪に似た症状のため初期段階では誤診される場合が多いことである。重症度が高まり、最終的にマラリアの診断がついたときには、遅すぎる場合がある。症状が悪化する数日間のうちに、例えば脳性マラリア、または時には臓器(例えば、肝臓もしくは腎臓)不全により、死に至ることもある。
【0005】
この疾患の最も急性の形態のひとつは、寄生生物である熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)により引き起こされ、これはマラリアに起因する致死の多くを占めている。この疾患の別の形態は三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)により引き起こされる。三日熱マラリア原虫は、すべてのマラリアのうちで最も広まっているものである。熱帯および亜熱帯地域に存在することに加えて、15℃の低温でも蚊の体内での生活環を完了させるというこの寄生生物の能力により、それは温帯気候でも広まることが可能となっている。しかしながら、三日熱マラリア原虫感染が致死であることは稀であるとの事実から、三日熱マラリアを(ワクチン開発により)防御しようとする努力は熱帯熱マラリアに対するそれに遅れている。
【0006】
30年前になされた観察により、有効なマラリアワクチンがいずれ開発されるであろうと確信するための強い裏づけがもたらされた。放射線により弱毒化された生マラリアスポロゾイトを用いた免疫処置により、マウスおよびヒトをマラリアから防御することができる。防御免疫を生じさせ、それを維持するためにはin vivo肝臓内期の持続が必要であるが、その根底にあるメカニズムはいまだ完全には明らかになっていない。抗体、CD8 T細胞およびCD4 T細胞(Hoffman, 1996)が、重要なエフェクターである免疫メディエーターとして関連付けられている。
【0007】
プラスモジウム属(Plasmodium)の種(例えば、熱帯熱マラリア原虫または三日熱マラリア原虫)の生活環は複雑で、その完成にはヒトと蚊という2種類の宿主が必要とされる。ヒトへの感染は、感染した蚊の唾液中のスポロゾイトの接種により始まる。スポロゾイトは肝臓まで移動して、そこで肝細胞に感染し(肝臓期)、そこで分化し、赤外型細胞内期を経てメロゾイト期に入る。メロゾイトは赤血球(RBC)に感染して、無性生殖血液期で周期的複製を開始する。この周期は、RBC中の多数のメロゾイトの、有性生殖期のガメトサイト(生殖母体)への分化により完了し、ガメトサイトは蚊によって摂取されて、中腸での一連の期を経て発達してスポロゾイトを生じ、これが唾液腺に移動する。
【0008】
プラスモジウム属の種(例えば、熱帯熱マラリア原虫または三日熱マラリア原虫)のスポロゾイト期はマラリアワクチンの1つの可能性のある標的として確認されている。スポロゾイトの主要な表面タンパク質はスポロゾイト周囲タンパク質(CSタンパク質)として知られる。このタンパク質は、種々の株(例えば、熱帯熱マラリア原虫NF54株、クローン3D7(Caspers, 1989))に関してクローニングされ、発現され、そして配列決定されている。3D7株由来のタンパク質は、中央部の免疫優勢リピート領域を有することを特徴とし、該リピート領域は40回繰り返されるテトラペプチドAsn-Ala-Asn-Proを含むが、4つのマイナーなテトラペプチドAsn-Val-Asp-Proのリピートが介在している。他の株では、主要なリピートとマイナーなリピートの数が異なるだけでなく、その相対的な位置も異なる。この中央部分の両端には、CSタンパク質のリピートレス(repeatless)部分と称される非反復アミノ酸配列からなるN末端部分とC末端部分が存在する。
【0009】
CSタンパク質に基づくGlaxoSmithKline Biologicals社のRTS,Sマラリアワクチンは、1987年から開発され、現在、研究中の最も進んだマラリアワクチン候補である(Ballou, 2004)。このワクチンは、前赤内期(pre-erythrocytic stage)の熱帯熱マラリア原虫を特異的に標的とする。
【0010】
RTS,S/AS02A(RTS,SとアジュバントAS02A(免疫刺激剤であるQS21、3D-MPLを含有する水中油型エマルジョン))は、ガンビア(The Gambia)で行われた連続フェーズI試験に用いられ、該試験には成人(Doherty, 1999)、6〜11歳および1〜5歳の小児(Bojang, 2005)が参加したが、このワクチンは安全であり、十分に許容され、かつ免疫原性のあることが確証された。続いて小児用ワクチン用量が選択され、1〜4歳のモザンビーク人小児が参加するフェーズI試験で試験されたが、このワクチンは安全で、十分に許容され、かつ免疫原性のあることが見出された(Macete)。
【0011】
RTS,S/AS02Aワクチンはまた、米国および西アフリカの地域での臨床試験でも有効性の証拠を示した。RTS,S/AS02Aは、熱帯熱マラリア原虫のスポロゾイト周囲タンパク質に対する顕著なIgG抗体応答を引き出し、十分なT細胞免疫を誘導する(Lalvani, 1999;Sun, 2003)。米国内のマラリア未感染(malaria-naive)ボランティアでの熱帯熱マラリア原虫の実験的チャレンジ(感染)に対する有効性は、平均で約30〜50%と見積もられている(Stoute, 1997;Stoute 1998;Kester, 2001)。これらの研究の最初の研究(Stoute, 1997)は小規模試験で86%有効であり、RTS,S/AS02Aで免疫した7人のうち6人が防御された。さらに、ガンビアでの半免疫(semi-immune)成人のフィールド研究(ガンビア人成人での安全性の研究(Doherty, 1999)が先行した)では、15週の1伝播シーズンの期間中、全体的な有効性が34%(初めの9週の追跡で71%の有効性、その後は0%の有効性)であることが示された(Bojang, 2001)。これらの研究(Stoute, 1997;Stoute, 1998;Bojang, 2001;Kester, 2001)は、感染に対する有効性を示している。
【0012】
最近、アフリカ人幼児でのRTS,S/AS02Aを用いた試験の結果が報告された。CSタンパク質をベースとしたRTS,Sワクチンは、自然曝露のもとでの感染に対する防御を賦与するばかりでなく、熱帯熱マラリア原虫により引き起こされる広範囲の臨床疾患に対する防御も賦与することが分かった。RTS,Sワクチンを投与された子供は、重篤な有害事象、入院、およびマラリアによる重篤な合併症(死亡を含む)を対照群と比較してほとんど経験しなかった(Alonso, 2004)。
【0013】
また、新たな感染と臨床症状の発現の両方に対して、RTS,Sワクチンの有効性は減衰しないか、または非常に緩やかに減衰するようである。試験での6ヶ月間の追跡の最後に、ワクチンは、感染率に顕著な差異が見られたので、有効性が保たれていた。これは、RTS,Sを用いたワクチン有効性が短命であることを示唆したマラリア未感染ボランティアまたはガンビア人成人での以前の試験と対照的である(Stoute, 1998;Bojang, 2001)。さらに、12ヵ月のさらなる追跡期間の後、臨床マラリアの症状発現に対するワクチンの有効性は、顕著には減弱していなかった(Alonso, 2005)。
【0014】
上記のワクチン製剤は臨床上の有効性を示しているが、防御される個体数を増加させ、また防御の持続期間を延長するために、さらなる改良がまだ必要である。リポソーム含有製剤中にQS21と3D-MPLを含有する製剤(以下、アジュバントBと称される)などの新しいアジュバント製剤は、種々の前臨床および臨床試験でT細胞免疫応答を増強(boost)する高い能力が実証されている。
【0015】
特に、マラリア流行地の出身ではないが、限られた期間、マラリアの流行する地域に渡航する人々のためのワクチンに必要とされるものは、「感染」からのよりよい防御である。マラリアの臨床症状は、肝臓への増殖性感染がメロゾイトの形成をもたらし、それらが肝臓期から放出される場合にのみ起こり得る。これらのメロゾイトは次にRBCに感染し、寄生生物の病原性血液期を開始させ、臨床上のマラリアの症状を呈する。曝露に続く増殖性感染がなければ(つまり、肝臓に感染せず、かつ/または肝臓のメロゾイトが放出されなければ)、これは無菌免疫(sterile immunity)として知られる。上で定義した、蚊に咬まれた後の肝臓への増殖性感染のリスクを著しく低減させると考えられるワクチンは、既存の免疫のない渡航集団にとって非常に望ましいであろう。なぜなら、該ワクチンは、肝臓への増殖性感染を予防することにより、その後に続くいかなる臨床症状をも予防するからである。このことは、流行地の小児または人々を対象としたワクチン開発の目的とは対照をなす。流行地のためのワクチン開発では、主要な目的は疾患の重症度を軽減すること、および/または疾患の症状発現数を低減させることであって、必ずしもそれらを完全に予防することではない。理論上、流行地の人々で無菌防御を無限に維持することは可能でないであろうし、したがってそれらの人々はマラリア感染への曝露により自分自身の免疫を形成する必要がある。また、長期間しかし限られた期間にわたって流行地に暮らす人々に無菌防御を賦与することは得策でない。
【発明の開示】
【0016】
本明細書には、マラリア未感染集団での、RTS,S/AS02Sと、異なるアジュバント(アジュバントB;コレステロール含有リポソームを用いた製剤中にQS21および3D-MPLを含む)を用いたRTS,Sとの直接的な比較からなる、チャレンジ(感染)臨床試験が記載される(実施例を参照されたい)。T細胞性免疫とB細胞性免疫の両方を検討した。
【0017】
これらの結果から、マラリア未感染成人集団では、アジュバントBと組み合わせたRTS,S抗原は、RTS,S/AS02Aと比較して、マラリアチャレンジ後の肝臓の増殖性感染に対する防御において、50%を超えて有効であることが示されている。つまり、アジュバントBと組み合わせたRTS,S抗原は、マラリアが流行している地域に渡航するマラリア未感染個体に必要とされる無菌防御の観点から、より有効である。アジュバントBによりもたらされたこの有効性の向上は、抗原特異的免疫応答(抗体およびCD4-Th1 T細胞)の増加と関連している。
【0018】
したがって、本発明は、流行地への渡航者を増殖性マラリア感染に対して免疫するための医薬の製造における、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体ならびにリポソーム製剤中のリピドA誘導体およびサポニンを含んでなるアジュバントの使用を提供する。
【0019】
一般的には、流行地への渡航者はマラリア未感染であろう。したがって、本発明はマラリア未感染個体に適用される。
【0020】
本発明は、特に、流行地への渡航者での増殖性マラリア感染の発生を減少させることに関し、該渡航者はいかなる年齢でもよいが、特には成人である。
【0021】
本発明の第2の態様は、流行地への渡航者を増殖性マラリア感染に対して免疫する際に使用するための、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体と、リポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含むアジュバントとを含んでなる製剤を提供する。
【0022】
本発明の第3の態様は、流行地への渡航者の増殖性マラリア感染を予防する方法であって、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体と、リポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含むアジュバントとを含んでなる製剤を適量投与するステップを含む方法を提供する。
【0023】
本発明の一実施形態では、マラリア原虫抗原は熱帯熱マラリア原虫抗原である。本発明の別の実施形態では、マラリア原虫抗原は三日熱マラリア原虫抗原である。
【0024】
好適には、該抗原は前赤内期(pre-erythrocytic)抗原である。
【0025】
前記抗原は、例えば、肝臓期のような該寄生生物のスポロゾイト期または他の前赤内期で発現されるいずれかの抗原から選択される。例えば、該抗原は以下から選択される:スポロゾイト周囲(CS)タンパク質、肝臓期抗原−1(LSA-1)(例えば、WO 2004/044167を参照のこと)、肝臓期抗原−3(LSA-3)(例えば、EP 0 570 489およびEP 0 833 917に記載される)、Pfs 16kD(WO 91/18922およびEP 597 843に記載される)、輸出抗原−1(Exp-1)(例えばMeraldiら 2002, Parasite Immunol vol 24(3):141に記載される)、スポロゾイト-スレオニン-アスパラギンリッチタンパク質(STARP)、スポロゾイトおよび肝臓期抗原(SALSA)、トロンボスポンジン関連不明タンパク質(TRAP)(WO 90/01496、WO 91/11516およびWO 92/11868に記載されている)、ならびに先端メロゾイト抗原−1(apical merezoite antigen-1:AMA-1)(EP 0 372 019に記載される;これは最近、赤血球期に加えて肝臓期でも存在することが示された)。これらの抗原はすべて、当該技術分野で周知である。該抗原はタンパク質全体であってもよいし、その免疫原性断片、またはそれらのいずれかの誘導体であってもよい。マラリア抗原の免疫原性断片はよく知られており、例えばAMA-1由来の細胞外ドメインである(WO 02/077195に記載される)。誘導体は、例えば他のタンパク質との融合体を含み、他のタンパク質とはマラリアタンパク質であってもよいし、非マラリアタンパク質(例えばHBsAg)であってもよい。本発明の誘導体は天然の抗原に対する免疫応答を惹起することが可能である。
【0026】
マラリア原虫抗原はB型肝炎ウイルス由来表面抗原(HBsAg)に融合させることができる。
【0027】
本発明で使用するための1つの具体的な抗原はスポロゾイト周囲(CS)タンパク質に由来し、HBsAgとのハイブリッドタンパク質の形態でありうる。該抗原はCSタンパク質全体であってもよいし、またはその一部分であってもよく、例えばCSタンパク質の1つの断片または複数の断片(互いに融合していてもよい)を含む。
【0028】
CSタンパク質をベースとした抗原は、マラリア原虫のCSタンパク質のC末端部分の実質的な全体、CSタンパク質の免疫優勢領域の4つ以上のタンデムリピート、およびB型肝炎ウイルス由来表面抗原(HBsAg)を含むハイブリッドタンパク質の形態であり得る。該ハイブリッドタンパク質は、CSタンパク質のC末端部分と実質的に相同な、少なくとも160アミノ酸を含む配列を含むことができる。特に、CSタンパク質のC末端部分の「実質的な全体」としては、疎水性アンカー配列を欠くC末端が挙げられる。さらに、熱帯熱マラリア原虫由来の抗原の場合には、それは4つ以上(例えば10個以上)のAsn-Ala-Asn-Proテトラペプチドリピートモチーフを含む。CSタンパク質はC末端から最後の12アミノ酸を欠いていてもよい。
【0029】
本発明で使用するためのハイブリッドタンパク質は、熱帯熱マラリア原虫NF54株(Caspers, 1989)由来の3D7クローンのアミノ酸207-395に実質的に対応する、熱帯熱マラリア原虫のCSタンパク質の一部分を、直鎖状リンカーを介してHBsAgのN末端にインフレームで融合して含むタンパク質であり得る。該リンカーはHBsAg由来のpreS2の一部分を含むことができる。
【0030】
本発明で使用するためのCS構築物は、WO 93/10152に概説されている。1つの具体的な構築物は、WO 93/10152(そこではRTS*と表記される)およびWO 98/05355に記載されているものなどの、RTSとして知られるハイブリッドタンパク質である。それらの両方の文献の内容全体が参照により本明細書中に組み入れられる。
【0031】
本発明で使用するための具体的なハイブリッドタンパク質は、以下のものからなるRTSとして知られるハイブリッドタンパク質である:
・酵母サッカロマイセス・セレビジエ(Sacchromyes cerevisiae)TDH3遺伝子配列由来のヌクレオチド1059-1061によりコードされるメチオニン残基(Musti, 1983)、
・ハイブリッド遺伝子の構築に用いるクローニング手順によりつくり出されたヌクレオチド配列(1062-1070)に由来する3つのアミノ酸Met Ala Pro、
・熱帯熱マラリア原虫3D7株のスポロゾイト周囲タンパク質(CSP)のアミノ酸207-396に相当するヌクレオチド1071-1637によりコードされる、189アミノ酸の領域(Caspers, 1989)、
・ハイブリッド遺伝子の構築に用いるクローニング手順によりつくり出されたヌクレオチド配列(1638-1640)によりコードされるアミノ酸(Gly)、
・ヌクレオチド1641-1652によりコードされ、かつB型肝炎ウイルス(adw血清型)preS2タンパク質の4つのカルボキシ末端残基に相当する、4つのアミノ酸Pro Val Thr Asn(Valenzuela, 1979)、
・ヌクレオチド1653-2330によりコードされ、かつB型肝炎ウイルス(adw血清型)のSタンパク質を特定する226アミノ酸の領域。
【0032】
RTSはRTS,S混合粒子の形態であってもよい。
【0033】
RTS,S粒子は、RTSとSの2種類のポリペプチドを含み、これらは同時に合成されて、自然に(例えば精製の間に)複合粒子構造(RTS,S)を形成することができる。
【0034】
RTSタンパク質は、酵母(例えばS. cerevisiae)で発現させることができる。そのような宿主では、RTSはリポタンパク質粒子として発現されるであろう。レシピエント酵母株は既にそのゲノム中に組み込まれたB型肝炎ウイルスS発現カセットを数コピー有する場合がある。したがって、得られる株はSとRTSの2種類のポリペプチドを合成し、それらは自然に組み立てられて混合(RTS,S)リポタンパク質粒子になる。これらの粒子はその表面にハイブリッドのCSP配列を提示しうる。これらの混合粒子中のRTSおよびSは、一定の比率、例えば1:4で存在する。
【0035】
本発明での別のマラリア抗原またはその断片もしくは誘導体の使用も、本発明に包含される。他の前赤内期抗原、例えばAMA-1、LSA-1、LSA-3(例えばEP 0 570 489およびEP 0 833 917に記載される)およびPfs 16kDを、RTS,Sと組み合わせて用いることができる。あるいは、RTS,Sを、メロゾイト表面タンパク質−1(MSP-1)(例えばUS 4,837,016に記載される)、赤血球結合抗原−175(EBA-175)またはMSP-3(例えばEP 0 666 916に記載される)のような血液期抗原と組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本明細書中に記載の抗原の免疫原性断片は、該抗原の少なくとも1つのエピトープを有して、マラリア抗原性を示すものであり、かつ、例えば他のマラリア抗原もしくは他の非マラリア抗原と融合されるなどして好適な構築物として提示される場合、または担体上に提示される場合、天然の抗原に対して免疫応答を惹起することができるものである。典型的には、該免疫原性断片は、マラリア抗原由来の少なくとも20個、または少なくとも50個、または少なくとも100個連続したアミノ酸を有する。
【0037】
本明細書中に記載の抗原または断片の誘導体は、同様に、該抗原の少なくとも1つのエピトープを有して、マラリア抗原性を示すものであり、かつ、天然の抗原に対して免疫応答を惹起することができるものである。誘導体には、例えば、マラリア抗原と別のタンパク質との融合体が含まれ、別のタンパク質は別のマラリアタンパク質であってもよいし、そうでなくてもよく、例えばHBsAgであり得る。
【0038】
本発明によれば、精製したハイブリッドタンパク質の水溶液を直接的に用いて、本発明により好適なアジュバントと組み合わせることができる。あるいは、該タンパク質をアジュバントとの混合に先立って凍結乾燥してもよい。アジュバントは液体とすることができ、したがって抗原を液体のワクチン剤形に再調製するのに用いられる。
【0039】
例えば、本発明はさらに、流行地への渡航者をマラリア感染に対して免疫するためのキットの製造における、本明細書中に記載した、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体、ならびにリポソーム製剤中のリピドA誘導体およびサポニンを含んでなるアジュバントの使用を提供し、ここで該抗原は凍結乾燥された形態で供給され、かつ該抗原と該アジュバントとは投与前に混合される。
【0040】
本発明によるワクチン用量は、1回量あたり1〜100μgのRTS,Sとすることができ、例えば25〜75μgのRTS,S、例えば50μgのRTS,Sタンパク質の1回量であり、これを500μL(最終液体製剤)中に含ませることができる。これは成人に使用するのに好適な用量である。小児に使用するのに好適な用量は、成人用量の半分、すなわち25μgのRTS,Sであり、これを250μL(最終液体製剤)中に含ませることができる。同様の用量は他の抗原にも用いることができる。
【0041】
本発明によれば、抗原は、リポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含んでなるアジュバントと組み合わされる。
【0042】
本発明の好適なアジュバントは、いずれかの供給源に由来する無毒化リピドAおよびリピドAの非毒性誘導体であり、これらはTh1細胞応答(本明細書中ではTh1型応答とも称される)の選択的刺激物質である。
【0043】
免疫応答は、2つの両極端なカテゴリーに大別することができ、体液性免疫応答または細胞性免疫応答である(従来、それぞれ抗体および細胞性エフェクターの防御メカニズムにより特徴付けられる)。これらの応答のカテゴリーは、Th1型応答(細胞性応答)およびTh2型免疫応答(体液性応答)と呼ばれている。
【0044】
端的なTh1型免疫応答は、抗原特異的なハプロタイプ限定細胞傷害性Tリンパ球の生成と、ナチュラルキラー細胞応答とを特徴とする。マウスでは、Th1型応答は、多くの場合IgG2aサブタイプの抗体の生成を特徴とするが、ヒトではこれはIgG1型抗体に対応する。Th2型免疫応答は、ある範囲の免疫グロブリンアイソタイプ(マウスではIgG1を含む)の生成を特徴とする。
【0045】
これら2つの型の免疫応答の発生を支える原動力はサイトカインであると考えられる。高レベルのTh1型サイトカインは、所与の抗原に対して細胞性免疫応答の誘導を支持する傾向があり、一方、高レベルのTh2型サイトカインは、抗原に対する体液性免疫応答の誘導を支持する傾向がある。
【0046】
Th1型免疫応答とTh2型免疫応答との区別は絶対的なものではなく、これら二極の間の連続の形態を採る場合もある。実際には、個体は、主にTh1であるか、主にTh2であると表現される免疫応答を維持するであろう。しかしながら、MosmannおよびCoffmanがマウスCD4陽性T細胞クローンにおいて記載したものの観点から、サイトカインのファミリーを検討することがしばしば便利である(Mosmann, 1989)。従来、Th1型応答はTリンパ球によるINF-γサイトカインの産生と関連付けられる。Th1型免疫応答の誘導と直接的に関連付けられることの多い他のサイトカインは、IL-12のように、T細胞によっては産生されない。一方、Th2型応答は、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10および腫瘍壊死因子β(TNF-β)の分泌と関連付けられる。
【0047】
ある種のワクチンアジュバントはTh1型またはTh2型のいずれかのサイトカイン応答の刺激に特に適していることが知られている。従来、ワクチン接種または感染後の免疫応答のTh1:Th2バランスの指標として、抗原で再刺激した後にin vitroでのTリンパ球によるTh1もしくはTh2サイトカインの産生を直接的に測定するか、かつ/または(少なくともマウスでは)抗原特異的抗体応答のIgG1:IgG2a比を測定することが含まれる。
【0048】
したがって、Th1型アジュバントとは、in vitroで抗原を用いて再刺激したときに高レベルのTh1型サイトカインを産生するように、単離されたT細胞集団を刺激し、かつTh1型アイソタイプと関連した抗原特異的免疫グロブリン応答を引き出すものである。
【0049】
Th1細胞応答を選択的に刺激し得るアジュバントには、WO 94/00153およびWO 95/17209に記載されているものがある。
【0050】
腸内細菌リポ多糖(LPS)が免疫系の強力な刺激物質であることは古くから知られている。だが、アジュバントとしてのその使用は、その毒性作用のために制限されてきた。LPSの非毒性誘導体であるモノホスホリルリピドA(MPL)(還元末端グルコサミンからのリン酸基とコア炭水化物基の除去により生成される)が記載され(Ribi, 1986)、これは以下の構造を有する:
【化1】

【0051】
MPLをさらに無毒化したものは、二糖骨格の3位からアシル鎖を除去することにより得られ、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)と呼ばれる。これはGB 2122204Bに教示される方法により精製および調製することが可能であり、該文献はジホスホリルリピドA、およびその3-O-脱アシル化型の調製も開示している。
【0052】
本発明で使用するための3D-MPLの特定の形態は、直径0.2μm未満の小さな粒径を有するエマルジョンの形態であり、その製造方法はWO 94/21292に開示されている。モノホスホリルリピドAおよび界面活性剤を含んでなる水性製剤が、WO 98/43670に記載されている。
【0053】
本発明で用いるための細菌リポ多糖由来のアジュバントは、細菌供給源から精製および処理してもよいし、あるいは合成してもよい。例えば、精製されたモノホスホリルリピドAがRibiらにより記載されており(Ribi, 1986)、またサルモネラ属の種(Salmonella sp.)に由来する3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドAまたはジホスホリルリピドAがGB 2220211およびUS 4912094に記載されている。他の精製リポ多糖および合成リポ多糖が記載されている(Hilgers, 1986;Hilgers, 1987;EP 0 549 074 B1)。本発明で使用するための1つの具体的な細菌性リポ多糖アジュバントは、3D-MPLである。
【0054】
したがって、本発明で用い得るLPS誘導体は、LPSまたはMPLもしくは3D-MPLと構造が類似する免疫刺激剤である。他の選択肢では、LPS誘導体は上記のMPLの構造の一部分であるアシル化単糖とすることもできる。
【0055】
サポニンもまたTh1免疫刺激剤である。サポニンはよく知られたアジュバントである(Lacaille-Dubois, 1996)。本発明で使用するのに好適なサポニンとしては、例えばQuil A(南米の樹木Quillaja Saponaria Molinaの樹皮に由来する)などの免疫学的に活性なサポニン、およびその免疫学的に活性な画分が挙げられ、US 5,057,540および“Saponins as vaccine adjuvants”(Kensil, 1996)およびEP 0 362 279 B1に記載されている。溶血性サポニンであるQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製画分)は強力な全身性アジュバントとして記載され、その製造方法が米国特許第5,057,540号およびEP 0 362 279 B1に開示されている。それらの引用文献には、QS7(Quil Aの非溶血性画分)の使用も記載され、これは全身性ワクチンのための強力なアジュバントである。QS21の使用はKensilらによっても記載されている(Kensil, 1991)。QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリンとの組み合わせも公知である(WO 99/10008)。QS21およびQS7などのQuil Aの画分を含んでなる粒子状アジュバント系がWO 96/33739およびWO 96/11711に記載されている。
【0056】
本発明で使用するための上記のリポ多糖およびサポニン免疫刺激剤は、リポソーム担体を用いて一緒に製剤化することができる。例えば、担体は、WO 96/33739に記載のようなコレステロール含有リポソームを含むことができる。
【0057】
モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組み合わせは、WO 94/00153;WO 95/17210;WO 96/33739;WO 98/56414;WO 99/12565;WO 99/11241に記載され、QS21と3D-MPLとの組み合わせはWO 94/00153に開示されている。
【0058】
これより、本発明で使用するために好適なアジュバント系は、例えば、モノホスホリルリピドA(例えば3D-MPL)とサポニン誘導体との組み合わせ、特にWO 94/00153に開示されるQS21と3D-MPLとの組み合わせである。アジュバント系は、組成物中にリポソーム担体、例えばコレステロール含有リポソームを含み、ここではWO 96/33739に開示されるようにQS21がコレステロール含有リポソーム(DQ)中でクエンチされている。
【0059】
例えば、QS21などのサポニンは、WO 96/33739に記載のように、リポソームの膜中に存在するか、または膜と結合していてもよい。3D-MPLまたは他のリピドA誘導体は、リポソーム膜中に封入されて存在するか、またはリポソームの外側に存在するかのいずれでもよく、あるいはその両方でもよい。本発明で使用するための1つの具体的なアジュバントは、2種類の免疫刺激剤であるQS21と3D-MPLとを、コレステロール含有リポソーム製剤中に含み、ここで3D-MPLはリポソーム中に封入されており、QS21はリポソームに結合している。
【0060】
各ワクチン用量中に存在する本発明のタンパク質の量は、典型的なワクチンで有害な副作用なしに免疫防御応答を誘発する量として選択される。そのような量は、どの具体的な免疫源を使用するか、およびどの具体的なアジュバントを使用するかに応じて変わるであろう。一般的には、各用量が1〜1000μgのタンパク質、例えば1〜200μg、例えば10〜100μgのタンパク質を含むことが予想される。特定のワクチンについての最適量は、抗体力価および被験体での他の応答の観察を含めて、標準的な試験により確認することができる。
【0061】
本発明と共に使用するのに好適なワクチン接種スケジュールは、マラリア流行地への渡航に先立つ初回コースであって、これは例えばそのような地域に到着する少なくとも2〜4週間前に完了させる。この初回コースには、1〜3回の投与、例えば2または3回の投与が含まれ、投与と投与の間に少なくとも7日間、または1〜4週間、または例えば1ヶ月の間隔をあける。初回ワクチン接種コースに続けて、感染のリスクが存在する限り、6ヶ月ごとに反復追加免疫を行ってもよい。その後、定期的な追加ワクチン接種を、流行地への再渡航前に行うのが適切である。1回量あたりのRTS,Sタンパク質の適量は、本明細書中で上記したとおりである。
【0062】
本発明のワクチンは、種々の経路のいずれにより投与してもよく、そのような経路としては、例えば経口、局所、皮下、粘膜(典型的には膣内)、静脈内、筋内、鼻内、舌下、皮内、および座剤によるものなどが挙げられる。
【0063】
本発明はさらに、異種(heterologous)初回免疫-追加免疫レジメンに用いることができる。
【0064】
RTS,Sまたは他のポリペプチドを含有する組成物の反復投与の代わりに、またはそのような投与に加えて、異なる形態のワクチンを異種「初回免疫-追加免疫」ワクチン接種レジメンで投与することができる。抗原が同一の形態である必要はないが、初回免疫用組成物と追加免疫用組成物とは、少なくとも1つの抗原を共通に有するであろう。該抗原は同じ抗原の異なる形態であってもよい。
【0065】
本発明の初回免疫-追加免疫は、タンパク質と、ポリヌクレオチド(特にDNAベースの製剤)の組み合わせを用いて行うことができる。そのようなストラテジーは、広範な免疫応答を誘導するのに有効であると考えられる。アジュバント化タンパク質ワクチンは、主に抗体およびTヘルパー細胞免疫応答を誘導し、一方、プラスミドまたは生ベクターとしてのDNAの送達は、強い細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を誘導する。したがって、タンパク質およびDNAワクチン接種の組み合わせは、多種多様な免疫応答をもたらすであろう。
【0066】
したがって、本発明はさらに、流行地への渡航者を増殖性マラリア感染に対して免疫するための医薬キットの製造における、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドと併せた、本明細書中に記載のとおりの、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体ならびにリポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含んでなるアジュバントの使用を提供する。
【0067】
本発明はまた、凍結乾燥形態で供給されるマラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体、リポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含むアジュバント、ならびに流行地への渡航者に投与する前に該抗原、アジュバント、および任意のさらなる担体を混合すべきであることを明記した使用説明書を含み、これにより該渡航者を増殖性マラリア感染に対して防御するキットを提供する。
【0068】
例えば、RTS,S、またはCSタンパク質に基づく別のポリペプチドを初回免疫-追加免疫レジメンのポリペプチド成分として用いる場合、ポリヌクレオチド成分はCSタンパク質またはその免疫原性断片もしくは誘導体をコードするであろう。
【0069】
DNAはプラスミドDNAなどの裸のDNAとして送達するか、または組換え生ベクターの形態で送達することができる。本発明で使用する生ベクターは複製欠損であり得る。用いることのできる生ベクターの例は、改変ポックスウイルスベクターをはじめとするポックスウイルスベクター(例えば改変ウイルス・アンカラ(Modified Virus Ankara)(MVA))、αウイルスベクター(例えばベネズエラウマ脳炎ウイルスベクター)、またはアデノウイルスベクター(例えばチンパンジーアデノウイルスベクターなどの非ヒトアデノウイルスベクター)、あるいはいずれかの他の好適な生ベクターである。
【0070】
本発明に従う初回免疫-追加免疫ワクチンで生ベクターとして使用するのに好適なアデノウイルスは、低い血清陽性率の(low sero-prevalent)ヒトアデノウイルス(例えばAd5またはAd35)または非ヒト由来アデノウイルス(例えばサルアデノウイルスなどの非ヒト霊長類アデノウイルス)である。該ベクターは複製欠損であり得る。典型的には、これらのウイルスはE1欠失を有し、E1遺伝子により形質転換された細胞株で増殖することができる。好適なサルアデノウイルスは、チンパンジーから単離されたウイルスである。特に、C68(Pan 9としても知られる)(米国特許第6083 716号を参照のこと)、ならびにPan 5、6およびPan 7(W0 03/046124)を本発明で用いることができる。これらのベクターは、本発明の異種ポリヌクレオチドを挿入して、本発明のポリヌクレオチドが発現し得るように操作することができる。そのような組み換えアデノウイルスベクターの使用、製剤化および製造は、WO 03/046142に詳細に記載されている。
【0071】
タンパク質抗原を1回または数回注入し、続いてDNAを1回以上投与するか、あるいは最初にDNAを1回以上の投与に用いて、続いてタンパク質による免疫を1回以上行ってもよい。DNAを最初に投与し、続いてタンパク質を投与するのが有益である場合がある。
【0072】
こうして、本発明に従う初回免疫-追加免疫の特定例は、上記のいずれかのような組み換え生ベクターの形態でポリヌクレオチドを1回投与することにより初回免疫を行い、続いて、本明細書に記載のアジュバントを含むRTS,Sのようなアジュバント化タンパク質を1回以上(例えば2回または3回)投与することにより追加免疫を行うことを含む。ポリヌクレオチドは、同じタンパク質(例えば、CSタンパク質)またはその免疫原性断片もしくは誘導体をコードする。
【0073】
したがって、本発明はさらに、以下のもの:
(a) マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体、ならびにリポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含むアジュバント、および
(b) マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチド、
を含んでなる医薬キットを提供し、ここで(a)および(b)はいずれかの順序で逐次的に使用されるが、特に(b)を初回免疫として用い、(a)を追加免疫として用いる。本発明はまた、(a)に関して、該抗原、アジュバント、および任意のさらなる担体を、流行地への渡航者への投与の前に混合することを明記した、該キットに関する使用説明書も提供する。
【0074】
組成物(a)は、本明細書中に記載の好適なアジュバント中の、本明細書中に記載したいずれのポリペプチド組成物であってもよい。例えば、(a)は、RTS,Sと、リポソーム製剤中にQS21および3D-MPLを含むアジュバントとを含んでなる組成物であり、(b)は、CSタンパク質またはその免疫原性断片もしくは誘導体をコードするアデノウイルスベクター(例えばチンパンジーアデノウイルスベクター)などの本明細書中に記載のような生ベクターである。
【0075】
初回免疫用組成物および追加免疫用組成物は両方とも、2回以上送達してもよい。さらに、最初の初回免疫および追加免疫投与に続けて、さらなる投与を行うことができ、これは例えば、DNA初回免疫/タンパク質追加免疫/さらなるDNA投与/さらなるタンパク質投与となるように、交互に行ってもよい。
【0076】
本発明で使用するのに適切な製薬上許容される希釈剤または賦形剤は当該技術分野で周知であり、例えば水およびバッファーが挙げられる。ワクチンの製造は全般的に記載されている(Powell, 1995;Voller, 1978)。リポソームへの封入は、例えばFullerton、米国特許第4,235,877号により記載されている。タンパク質と巨大分子とのコンジュゲーションは、例えば、Likhite、米国特許第4,372,945号およびArmorら、米国特許第4,474,757号により開示されている。
【0077】
別の態様では、本発明は、個体へのマラリア抗原組成物(特に前赤内期のマラリア抗原組成物)の投与後に、該個体がマラリアから防御されているかを確認する方法を提供し、該方法は、個体体内で生起された、マラリア抗原に特異的なCD4 T細胞のレベルを測定するステップを含む。また、個体へのマラリア抗原組成物(特に前赤内期のマラリア抗原組成物)の投与後に、該個体がマラリアから防御されているかを確認する方法であって、個体体内で生起された、マラリア抗原に特異的な抗体の濃度を測定するステップを含む方法も提供される。
【0078】
さらなる態様では、本発明は、マラリアの予防での候補ワクチン(特に前赤内期の候補ワクチン)の有効性を評価する方法を提供し、該方法は、候補ワクチンに対して個体体内で生起されたCD4細胞のレベルを測定するステップを含む。また、マラリアの予防での候補ワクチン(特に前赤内期の候補ワクチン)の有効性を評価する方法であって、個体体内で生起された、候補ワクチンに特異的な抗体の濃度を測定するステップを含む方法も提供される。より具体的な実施形態では、このワクチンはマラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体と、リポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含むアジュバントとを含んでなる。
【実施例】
【0079】
実施例1: RTS,SおよびアジュバントBを用いたワクチン接種ならびに実験的マラリアチャレンジ
ワクチン
RTS,S: RTSは、424アミノ酸(a.a.)からなる51kDaのハイブリッドポリペプチド鎖であり、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)NF54株のスポロゾイト表面抗原(CSタンパク質中央部タンデムリピートおよびカルボキシル末端領域、全体で189アミノ酸)に由来する189アミノ酸(CSP抗原、a.a.207-395)と、これに融合したB型肝炎ウイルスSタンパク質のアミノ末端からなる。Sは、B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)に相当する24kDaのポリペプチド(226アミノ酸長)であり、GSK Biologicals Engerix-B(登録商標)ワクチンで用いられている抗原である。
【0080】
2種類のタンパク質を酵母(S. cerevisiae)の細胞内に産生させ、それぞれが約100ポリペプチドを含むと推定される混合ポリマー粒子構造物へと自然に集合させる。
【0081】
RTS,Sの調製は、WO 93/10152に記載されている。
【0082】
RTS,S/AS02A(GlaxoSmithKline Biologicals, Rixensart, Belgium)の全用量は、500μLのAS02Aアジュバント(各50μgの免疫刺激剤3D-MPL(登録商標)(GlaxoSmithKline Biologicals, Montana, USA)およびQS21を含有する水中油型エマルジョン)中に再調製された50μgの凍結乾燥RTS,S抗原を含む。
【0083】
RTS,S/アジュバントB(GlaxoSmithKline Biologicals, Rixensart, Belgium)の全用量は、500μLのアジュバントB(コレステロール含有リポソームを用いた製剤中に、各50μgの免疫刺激剤3D-MPL(登録商標)およびQS21を含有する)中に再調製された50μgの凍結乾燥RTS,S抗原を含む。該リポソームは、有機溶媒中中のジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、コレステロールおよび3D-MPLの混合物から調製することができ、ここで該混合物は乾燥されている(dried down)。その後水性溶液を加えて脂質を懸濁する。リポソームサイズが小さくなり、0.2μmフィルターを介した滅菌ろ過が可能になるまで、該懸濁液をマイクロ流動化(microfluidised)する。典型的には、コレステロール:ホスファチジルコリン比は1:4(w/w)であり、水性溶液はコレステロール最終濃度が5〜50mg/mLとなるように加える。QS21を該コレステロール含有リポソームに加える。
【0084】
方法論
この臨床試験で、AS02AまたはアジュバントBのいずれかを用いてアジュバント化された抗原RTS,Sを含有するマラリアワクチンの安全性、反応原性(reactogenicity)、免疫原性および予備的な有効性を評価した。
【0085】
103名の被験者を集めて2つのグループに分け、0ヶ月、1ヶ月、2ヶ月のワクチン接種スケジュールに従い、いずれかのワクチンを3回無作為に投与した。多数の被験者が参加したため、グループを順に動員して、チャレンジを行った。
【0086】
各グループについて、ボランティアに、3回目の投与の2〜4週間後に、標準化された初回マラリアチャレンジを受けるよう依頼した(Chulay, 1986)。初回チャレンジでは、各チャレンジボランティアが熱帯熱マラリア原虫スポロゾイトに感染した5匹の蚊(Anophelese stevensi)に5分間、刺されるようにした。各グループにつき、12名の非ワクチン接種対照ボランティアもチャレンジを受けた。
【0087】
初回チャレンジから約6ヵ月後に、初回チャレンジの際に防御されたボランティアに、再チャレンジを行うよう依頼した。チャレンジとチャレンジの間には追加のワクチン投与を行わなかった。再チャレンジは初回チャレンジと同様に行った。各グループにつき、6名の非ワクチン接種対照ボランティアもチャレンジを受けた。
【0088】
各チャレンジの後、被験者を少なくとも30日間毎日追跡し、マラリアに感染したか否かを評価した。感染を検出する基本的な方法は、光学顕微鏡により無性生殖期の原虫を検出するための、ギムザ染色した末梢血塗抹標本の評価であった。これは、被験者が、肝臓から放出されて赤血球期に進んだ原虫を有して、増殖性感染を受けていることを示す。したがって、チャレンジに対する無菌防御は達成されていないことになる。感染の最初の徴候の際に、被験者はマラリアに陽性であることを告知され、治療量のクロロキンを投与された。初回有効性の結果は無菌防御であり、すなわち被験者が無性生殖期の寄生生物血症(parasitaemia)を決して発症しないことであった。さらに、完全には防御されなかった被験者でのチャレンジと寄生生物血症の出現の間の期間が記録された。
【0089】
また、末梢血単核細胞(PBMC)サンプルを、ワクチン接種前、第IIワクチン接種の2週間後、および第IIIワクチン接種の14〜28日後(チャレンジ日:DOC)に採取した。
【0090】
PBMCサンプルを用いて、CD4およびCD8 T細胞応答をサイトカインフローサイトメトリーにより評価した。後者の技術は、所与の抗原に特異的なT細胞の定量を可能にする。抗原特異的CD4およびCD8細胞を、細胞内サイトカイン産生および細胞表現型の従来の免疫蛍光ラベリングに続くフローサイトメトリーによって計数した。簡単に述べると、末梢血抗原特異的CD4およびCD8 T細胞は、対応する抗原とともにインキュベートされると、in vitroで再刺激され、IL-2、CD40L、TNF-αまたはIFN-γを産生することができる。HBs(B型肝炎ウイルス表面抗原)およびCSPの両方のペプチドプールを、抗原特異的T細胞を再刺激するための抗原として用いた。結果は、CD4またはCD8 T細胞の部分集団での、CD40L、IL-2、TNF-αまたはIFN-γのうち少なくとも2種類の異なるサイトカインを発現するCD4またはCD8 T細胞の出現頻度として表した。
【0091】
抗体レベルは、熱帯熱マラリア原虫CSリピート領域に対する抗体(IgG)応答を評価することにより決定されるが、これは捕捉抗原として組み換えタンパク質R32LRを用いる標準的なELISA法を用いて測定される。簡単に述べると、R32LRタンパク質(熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト周囲タンパク質(CSP)の繰り返し領域(NANP)に対応する)を96穴プレートにコーティングする。プレートの飽和後、血清サンプル連続希釈物をプレートに直接的に加える。血清サンプル中に存在するR32LRに対する抗体は、予めコーティングされたR32LRに結合するであろう。プレートを洗浄する。ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG(γ)抗体を添加し、これは抗CS IgG抗体に結合するであろう。再度の洗浄ステップの後、ペルオキシダーゼに特異的な発色原基質溶液を添加することにより、予めコーティングされた抗原に結合した抗CS IgGの検出手段がもたらされる。ペルオキシダーゼは呈色反応を触媒する。発色の強度は、血清中に含まれる抗CS IgG抗体の力価に比例する。抗リピート抗体レベルは、各プレート上での既知の血清標準実験との比較により決定され、μg/mLで表される。
【0092】
結果
グループ1:

グループ2:

初回チャレンジのためにグループ1および2を合体:

【0093】
これより、この試験では、アジュバントBはマラリア感染に対するナイーブ個体の防御においてより有効であることが見出された。アジュバントB群からは、チャレンジされた個体の50%が防御されたのに対して、AS02A群からはチャレンジされた個体の32%が防御された。このことは、2種類のアジュバント間で50%を超える防御の改善があったことを示す。
【0094】
さらに、グループ1では、RTS,S中に存在する抗原に対するCD4 T細胞応答を誘導するのに、アジュバントBはAS02Aよりも有意に強力であることが見出された(図1、p=0.01663)。グループ1およびグループ2の合体データでは、有意性がより低かった(図2、p=0.07)。
【0095】
ワクチン接種前には、HBsまたはCSPに対する検出可能なCD4/CD8 T細胞応答は認められなかった。それに比べて、第IIワクチン接種の2週間後、および第IIIワクチン接種の2週間後(チャレンジ日:DOC)では、HBsおよびCSP特異的CD4 T細胞が、いずれの製剤でワクチン接種された個体でも、ほとんどの個体に検出された。同じ時点で、検出可能なCD8 T細胞応答は観察されなかった。これらの知見は、T細胞免疫モニタリングに用いたアッセイが特異的かつ感度がよく、これは異なるワクチン製剤を投与された群間での正規の比較を行うための前提条件であることを示している。
【0096】
図1は、RTS,S/アジュバントBでワクチン接種されたグループ1からの個体が、第IIワクチン接種2週間後および第IIIワクチン接種2週間後(DOC)のいずれにおいても、RTS,S/AS02Aでワクチン接種された個体と比較して、より高頻度のCSP特異的CD4 T細胞を有していることを示す。IFN-γおよび別のサイトカイン(IL-2、CD40L、TNF-α)を産生するHBs特異的CD4 T細胞について、同様の結論を第IIワクチン接種2週間後に導き出すことができる(データは示していない)。
【0097】
図2は、両方のグループからのデータを含めたこと以外は、図1と同じ試験を示している。
【0098】
図1および2では、106個のCD4 T細胞での、CD40L、IL-2、TNF-αまたはIFN-γのうち少なくとも2種類の異なるサイトカインを発現するCD4 T細胞の出現頻度として結果を表している。
【0099】
同様の様相が抗CSP特異的抗体応答に関しても見られる。図5からは、RTS,S/アジュバントBに応答して生起された抗体濃度は、RTS,S/AS02Aに応答して生起された抗体濃度よりも有意に高いことが見て取れる(特に、DOC(第IIIワクチン接種2週間後(p=0.00793)を参照されたい。しかし、第IIワクチン接種2週間後には効果が見て取れる)。結果は幾何平均濃度(GMC)として表されている。「Pre」とは開始時点を表し、いずれの投与も行われる前である。
「M1」とは最初の投与の2週間後の時点を表す。
「M2」とは2回目の投与の2週間後の時点を表す。
「DOC」とは「チャレンジ日」、すなわち3回目の投与の2週間後を表す。
【0100】
マラリアチャレンジに対する防御は、CSPに対する顕著に高いCD4 T細胞応答および特異的抗体応答に関連する
RTS,S/AS02Aに比して、RTS,S/アジュバントBの増大した免疫原性は、それが生物学的に適切な効果につながることを必ずしも意味しない。しかしながら、この試験でRTS,S/アジュバントBを用いてワクチン接種された個体は、RTS,S/AS02Sでワクチン接種された個体(44個体のうち14個体:32%)と比較して、マラリアチャレンジに対して向上した防御レベルを示していた(36個体のうち18個体:50%)。したがって、CD4 T細胞応答の強さとマラリアに対する防御とがリンクしている可能性が見出された。
【0101】
上記の仮説が真実であるならば、防御されている個体は、RTS,S/AS02Aを用いてワクチン接種された個体よりも、またはRTS,S/アジュバントBを用いてワクチン接種された個体と比較してさえも、高いCD4 T細胞応答を示すはずである。図3および4は、それぞれ第1グループおよび合体グループについて(両方のアジュバント群がプールされている)、上記の仮説を明確に確認しており、かつCSP特異的CD4 T細胞が防御において重要な役割を果たすという考えを支持している。これに一致して、第IIワクチン接種2週間後および第IIIワクチン接種2週間後に採取されたサンプルについて行った統計解析は、防御個体と非防御個体との間の頻度の差が、統計学的に有意であることを示している。
【0102】
図3および4では、106個のCD4 T細胞での、CD40L、IL-2、TNF-αまたはIFN-γのうち少なくとも2種類の異なるサイトカインを発現するCD4 T細胞の出現頻度として結果を表している。免疫原性解析はまた、CSP特異的CD4 T細胞とは対照的に、HBs特異的CD4 T細胞が第IIワクチン接種2週間後および第IIIワクチン接種2週間後で、マラリアに対する防御と関連しないことも示している(それぞれ、p=0.14およびp=0.053)。このことはさらに、上記の結果の妥当性を確固たるものにしており、防御はCSPを認識し得るがHBsペプチドを認識しないCD4 T細胞の存在と特に関連していることを強く示唆する。
【0103】
最後に、検出可能なCD8 T細胞応答は見られなかったので、最もあり得ることとして、アジュバントBまたはAS02Aでアジュバント化されたRTS,Sにより賦与されるマラリア前赤内期防御は、ワクチン接種に続くCSP特異的CD8 T細胞の誘導によるものではなさそうである、と結論づけることもできる。
【0104】
同様の様相が抗CSP抗体応答のモニタリングからも観察される。図6は、防御個体および非防御個体での抗体濃度を示している(結果は、両方のアジュバント群をプールした両方のグループに関するものである)。
【0105】
防御されている個体が、防御されていない個体と比べて有意に高い抗体濃度を示していることが明らかである(P<0.0001)。
【0106】
考察
上記の結果は、マラリアチャレンジに対して、一方のCSP特異的なCD4 T細胞応答および抗体応答と、他方の防御状態との間に関連性が存在することを明らかに実証している。CSP特異的CD4 T細胞または抗体が抗寄生生物作用を発揮するメカニズムは不明である。しかしながら、解析により、強いCD4 T細胞応答または強い抗体応答を有する個体のうち少数が防御されていないことも明らかになった。このことは、CSPに対する強いCD4 T細胞応答または強い抗体応答が、単独ではマラリアチャレンジに対する防御を約束するものではないことを意味している。
【0107】
T細胞応答をモニタリングするための種々の技術が開発されており、そのようなものとは例えば、リンパ球増殖アッセイ、サイトカイン分泌、テトラマー染色、ELISPOTまたはサイトカインフローサイトメトリーなどである。最後に挙げたものは、近年、優秀な反復性/再現性データおよび適切なマーカー検出(CD4、CD8、CD40L、IL-2、TNF、IFN-γ)に基づいて、先導的技術として選択されている。サイトカインフローサイトメトリーのアプローチで頻繁に見られる高いバックグラウンドの問題を解決する特定の解析手法も明らかにされている。本稿では、ヒト臨床試験でのT細胞応答の確実なモニタリングのためにサイトカインフローサイトメトリーを用いることの実現可能性が実証されている。さらに、体液性免疫とは直接的に関連しない防御のマーカーを特定することが可能であることも示されている。
【0108】
アジュバントBは、CSP特異的なCD4 T細胞および抗体を誘導するのに、AS02A製剤よりも有意に強力であることが実証されたが、CD4 T細胞の出現頻度と抗体濃度についての差は比較的控えめであり、それは生物学的に意味がないと結論づけることができただろう。本臨床試験で得られたデータは、生物学的に適切なマーカーとしてマラリアに対する防御データを用いて、そのような差異の生物学的な有意義性を正式に評価することを可能にする。解析は、T細胞出現頻度および抗体濃度に関するアジュバント間の控えめであるが有意な差異が、結果的にマラリアチャレンジに対する有意に高い防御につながることを明らかに示している。
【0109】
引用文献



【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】第1グループでのCSPに対するCD4 T細胞応答を表す。
【図2】両方のグループでのCSPに対するCD4 T細胞応答を表す。
【図3】第1グループでのCSPに対するCD4 T細胞応答を表す。
【図4】両方のグループでのCSPに対するCD4 T細胞応答を表す。
【図5】両方のグループでの抗CSP抗体応答を表す。
【図6】両方のグループでの抗CSP抗体応答を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流行地への渡航者を増殖性マラリア感染に対して免疫するための医薬の製造における、マラリア原虫(Plasmodium)抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体、ならびにリポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含んでなるアジュバントの使用。
【請求項2】
前記マラリア原虫抗原が、マラリア原虫に対する免疫応答を惹起することが可能なスポロゾイト周囲(CS)タンパク質またはその免疫原性断片もしくは誘導体である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記CSタンパク質または断片がB型肝炎ウイルス由来表面抗原(HBsAg)に融合されている、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記CSタンパク質または断片が、マラリア原虫のCSタンパク質のC末端部分の実質的な全体、CSタンパク質の免疫優勢領域の4つ以上のタンデムリピート、およびB型肝炎ウイルス由来表面抗原(HBsAg)を含むハイブリッドタンパク質の形態である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記ハイブリッドタンパク質が、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)NF54株3D7クローンのCSタンパク質のアミノ酸207-395に実質的に対応する熱帯熱マラリア原虫のCSタンパク質の配列を、直鎖状リンカーを介してHBsAgのN末端とインフレームで融合して含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記ハイブリッドタンパク質がRTSである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記RTSが混合粒子RTS,Sの形態である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記RTS,Sの量が1回量あたり25μgまたは50μgである、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記アジュバントが3D-MPLおよびQS21を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
QS21がコレステロール含有リポソーム中でクエンチされている、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしく誘導体をコードするポリヌクレオチドと併用するにあたって、前記抗原/アジュバント混合物および該ポリヌクレオチドが任意の順序で逐次的に使用される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
前記ポリヌクレオチドを最初に使用する、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
流行地への渡航者の増殖性マラリア感染に対する免疫処置に使用するための、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体と、リポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含むアジュバントとを含んでなる製剤。
【請求項14】
前記マラリア原虫抗原が、マラリア原虫に対する免疫応答を惹起することが可能な、スポロゾイト周囲(CS)タンパク質またはその免疫原性断片もしくは誘導体である、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記CSタンパク質または断片が、B型肝炎ウイルス由来表面抗原(HBsAg)に融合されている、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記CSタンパク質または断片が、マラリア原虫のCSタンパク質のC末端部分の実質的な全体、CSタンパク質の免疫優勢領域の4つ以上のタンデムリピート、およびB型肝炎ウイルス由来表面抗原(HBsAg)を含むハイブリッドタンパク質の形態である、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記ハイブリッドタンパク質が、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)NF54株3D7クローンのCSタンパク質のアミノ酸207-395に実質的に対応する熱帯熱マラリア原虫のCSタンパク質の配列を、直鎖状リンカーを介してHBsAgのN末端とインフレームで融合して含む、請求項13〜16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項18】
前記ハイブリッドタンパク質がRTSである、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
前記RTSが混合粒子RTS,Sの形態である、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
前記RTS,Sの量が1回量あたり25μgまたは50μgである、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
前記アジュバントが3D-MPLおよびQS21を含む、請求項13〜20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
QS21がコレステロール含有リポソーム中でクエンチされている、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
前記製剤が初回免疫/追加免疫レジメンの一部分として使用され、追加の部分がマラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドを含み、前記抗原/アジュバント混合物および該ポリヌクレオチドが任意の順序で逐次的に使用される、請求項13〜22のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項24】
前記ポリヌクレオチドが最初に使用される、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
流行地への渡航者の増殖性マラリア感染を予防する方法であって、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体と、リポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含むアジュバントとを含んでなる製剤を適量投与することを含む、上記方法。
【請求項26】
前記マラリア原虫抗原が、マラリア原虫に対する免疫応答を惹起することが可能な、スポロゾイト周囲(CS)タンパク質またはその免疫原性断片もしくは誘導体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記CSタンパク質または断片が、B型肝炎ウイルス由来表面抗原(HBsAg)に融合されている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記CSタンパク質または断片が、マラリア原虫のCSタンパク質のC末端部分の実質的な全体、CSタンパク質の免疫優勢領域の4つ以上のタンデムリピート、およびB型肝炎ウイルス由来表面抗原(HBsAg)を含むハイブリッドタンパク質の形態である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ハイブリッドタンパク質が、熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)NF54株3D7クローンのCSタンパク質のアミノ酸207-395に実質的に対応する熱帯熱マラリア原虫のCSタンパク質の配列を、直鎖状リンカーを介してHBsAgのN末端とインフレームで融合して含む、請求項25〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ハイブリッドタンパク質がRTSである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記RTSが混合粒子RTS,Sの形態である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記RTS,Sの量が1回量あたり25μgまたは50μgである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記アジュバントが3D-MPLおよびQS21を含む、請求項25〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
QS21がコレステロール含有リポソーム中でクエンチされている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
初回免疫/追加免疫レジメンで使用するための、前記マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドの投与をさらに含む、請求項25〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリヌクレオチドを最初に使用する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
マラリア感染に対して流行地への渡航者を免疫するためのキットの製造における、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体、ならびにリポソーム製剤中のリピドA誘導体およびサポニンを含んでなるアジュバントの使用であって、該抗原は凍結乾燥された形態で供給され、かつ該抗原と該アジュバントとは投与前に混合される、上記キット。
【請求項38】
前記マラリア原虫抗原が、マラリア原虫に対する免疫応答を惹起することが可能なスポロゾイト周囲(CS)タンパク質またはその免疫原性断片もしくは誘導体である、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
以下のもの:
・凍結乾燥形態で供給される、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体、
・リポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含んでなるアジュバント、および
・前記抗原、アジュバント、および場合によってはさらなる担体を、流行地への渡航者に投与する前に混合すべきであることを明記した使用説明書、
を含み、これにより該渡航者を増殖性マラリア感染から防御するキット。
【請求項40】
前記マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、ここで前記抗原/アジュバント混合物および該ポリヌクレオチドは任意の順序で逐次的に使用されるが、特に該ポリヌクレオチドが初回免疫として使用され、該抗原/アジュバント混合物が追加免疫として使用される、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記マラリア原虫抗原が、マラリア原虫に対する免疫応答を惹起することが可能なスポロゾイト周囲(CS)タンパク質またはその免疫原性断片もしくは誘導体である、請求項39または40に記載のキット。
【請求項42】
候補ワクチン、特に前赤内期候補ワクチンの、マラリア予防における有効性を評価する方法であって、個体体内で該候補ワクチンに対して生起されたCD4細胞のレベルを測定するステップを含む、上記方法。
【請求項43】
候補ワクチン、特に前赤内期候補ワクチンの、マラリア予防における有効性を評価する方法であって、個体体内で該候補ワクチンに対して生起された特異的抗体の濃度を測定するステップを含む、上記方法。
【請求項44】
前記ワクチンが、マラリア原虫抗原またはその免疫原性断片もしくは誘導体と、リポソーム製剤中にリピドA誘導体およびサポニンを含むアジュバントとを含んでなる、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
マラリア抗原組成物、特に前赤内期マラリア抗原組成物を個体に投与した後に、該個体がマラリアから防御されているかを確認する方法であって、該個体体内で生起された該マラリア抗原に特異的なCD4 T細胞のレベルを測定するステップを含む、上記方法。
【請求項46】
マラリア抗原組成物、特に前赤内期マラリア抗原組成物を個体に投与した後に、該個体がマラリアから防御されているかを確認する方法であって、該個体体内で生起された該マラリア抗原に特異的な抗体の濃度を測定するステップを含む、上記方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−544969(P2008−544969A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518748(P2008−518748)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006407
【国際公開番号】WO2007/003384
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】