説明

抗不眠症組成物および方法

ゾルピデムの組成物、およびそれらの製造のための方法および不眠症を処置するための使用である。組成物は、経口噴霧として、ゾルピデムの経粘膜吸収のために調剤される。若干の場合において処置の方法は、20分またはそれよりも短い時間内に治療上のゾルピデムの血中レベルを達成するために夜間投薬の施し、投薬後、五時間よりも短い時間、若干の場合において四時間よりも短い時間内に20ng/mL未満への漸減が包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)本発明は、ゾルピデムの組成物、およびそれらの製造のための方法および不眠症を処置するための使用に関する。
(本発明の背景)本発明は2007年5月10日付け出願の米国仮出願番号第60/917,243号に対する優先権を主張する。この暫定的な出願および米国特許出願公開第2006/0216240A1の開示は、参照することによりそれらの全体を本明細書中に組み込む。
【背景技術】
【0002】
ゾルピデム、N,N,6-トリメチル-2-p-トリル-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-アセトアミドは、非ベンゾジアゼピン型の鎮静催眠剤である。ゾルピデムは、5および12.5mgの間の用量で不眠症を処置するために経口タブレット(錠剤)として入手可能である。典型的に、ゾルピデムは、酒石酸塩の塩、すなわち、N,N,6-トリメチル-2-p-トリル-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-アセトアミドL-(+)-酒石酸塩(2:1))として施される(投与される)。耐性および身体的な依存はゾルピデムではまれにしか観察されない。(例では、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics(グッドマンおよびギルマンの治療学の薬理学的基礎)、第9版、第471-472頁参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th ed., pp. 471-472
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ゾルピデムの副作用には、日中の眠気が含まれる。Hindmarch(ヒンドマーチ)らによって報告されるように〔Residual effects of zaleplon and zolpidem following middle of the night administration five hours to one hour before awakening(ザレプロンおよびゾルピデムの残留する効果は、真夜中の投与が目ざめ(覚醒、awakening)前五時間から一時間まで続く)、Hum. Psychopharcol.(ヒューマン・サイコファーマコロジー−クリニカル・アンド・イクスペリメンタル)、2001年3月、16(2): 159-167〕、その全体を参照により本明細書に組み込むが、ゾルピデムの錠剤の形態での夜間投薬投与は、起きる(waking)前に5時間から1時間までに投与されたとき、残留する傾眠(drowsiness)および眠気(sleepiness)を招く。したがって、Ambien(R)〔アンビエン(商標)〕、商業上のゾルピデムの製品の使用のための指示書は、“あなたが再び活動的でなければならない前にもしあなたが十分な夜の睡眠をとることができない場合以外は、Ambienまたは任意の他の睡眠薬(sleep medicine)を摂取してはならない”と記述される。(医師用卓上参考書、2932での1/3/97)。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】以降に記載するように、研究1のための投薬後、最初の30分の間のゾルピデムの濃度レベルの平均および標準誤差の図解である。
【図2】研究1のために投薬後、一定の時間間隔でゾルピデムのおよそ4.7ng/mLより高いレベルを達成する試験対象体の数の図解である。
【図3】研究1のために投薬後、傾眠/眠気スコア15分の図解である。
【図4】研究2のために投薬後、最初の60分間のゾルピデム濃度レベルの図解である。
【図5】研究2のために投薬後、最初の30分間のゾルピデム濃度レベルの図解である。
【図6】研究2のために投薬後、30分までのAUCの図解である。
【図7】絶食状態下に経口噴霧(スプレー)(“LS”)によってその後に5mgのゾルピデムの投与が続いたゾルピデムの血しょうプロファイルの図解である。
【図8】絶食状態下にその後5mgのゾルピデムのLSの投与が続いたゾルピデムの血しょうプロファイルの別の図解である。
【図9】絶食状態下にその後5mgのゾルピデムのLSの投与が続いたゾルピデムの血しょうプロファイルの別の図解である。
【図10】絶食状態下にその後5mgのゾルピデムのLSの投与が続いたゾルピデムの血しょう濃度の図解である。
【図11】4時間の間隔で、その後2.5mgおよび5.0mgのゾルピデムのLSの投与が続いたゾルピデムのシミュレーションされた(模擬)血しょう濃度の図解である。
【図12】4時間の間隔で、その後2.5mgおよび5.0mgのゾルピデムのLSの投与が続いたゾルピデムの模擬血しょう濃度の別の図解である。
【0006】
本発明は、不眠症を患う受動体に対し経口噴霧組成物の用量を施すことによって睡眠を誘導するための組成物および方法に関する。組成物は、鎮静剤またはその製薬上(薬学的に)許容可能な塩および製薬上許容可能な溶媒を含有する。噴霧は、若干の場合、受動体が目覚めおよび眠らない活動(wakeful activities)の再開を要する前約五時間よりも短い時間内に投与される。
【0007】
若干の場合には、用量は、約2.0から約3.0mgまでのゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩を備え、そして用量は、約50から約400mcLまでの範囲における容量を持つ。他の場合において、用量は約2.5mgであり、そして単位用量噴霧の容量は約50mcLである。
【0008】
溶媒は、極性溶媒または無極性溶媒を包含しうる。組成物は、随意に、テイスト(風味)マスクまたは香料(flavoring agent)、推進剤(propellant)、および他の賦形剤を含みうる。
【0009】
1種の具体例において、方法は、不眠症を患う受動体(患者)に対して、約50から約400mcLの組成物を、患者の全身的循環系に対する経粘膜吸収のための経口噴霧によって施す(投与する)ことを含む。組成物は、ゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩の用量、および製薬上許容可能な溶媒で、患者の全身的循環系に対する口腔粘膜を通したゾルピデムの経粘膜吸収のために適応したものを含む。用量は、若干の場合、約0.5mgおよび約5.0mgの間のゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩でよく、そして患者が睡眠からの目覚めを要する前約四または約五時間未満内に投与しうる。若干の場合において、経口噴霧による投与は、12、13、22、または23分以内にゾルピデムの治療上の血中レベルを招き、そして投薬後五時間より短い時間のうちに20ng/ml未満に漸減する。
【0010】
若干の場合、用量は、約0.5から2.5mgまでの間のゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩を備え、そして患者が眠らない活動の再開を要する前約四時間よりも短い時間内に経口噴霧によって投与される。
【0011】
若干の場合に、組成物は約1.0から約10.0重量パーセントまでのゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩、約40から約60パーセントまでの水、および約20から50パーセントまでの溶媒を備える。他の場合、組成物は約3.0から約7.0パーセントのゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩、約45から約50パーセントまでの水、約30から40パーセントまでの溶媒を備える。
【0012】
若干の場合、ゾルピデムの治療上の血中レベルは、約20分未満内に達成され、そして投薬後四時間未満のうちに20ng/ml未満まで徐々に減る(漸減する)。
【0013】
若干の場合、組成物はゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩、および製薬上許容可能な溶媒を備え、そこでは、組成物は、単位用量噴霧ポンプ容器中に含まれる。そのような容器の単一回の作動(actuation)は、組成物の約50から約400mcLの単位用量容量を配送し、それには、約0.5から5mgまでのゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩の用量が含まれる。他の場合、単位用量容量は約50から約200mcLまでであり、および/またはゾルピデムの用量は約2から3mgまでである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の具体例は噴霧組成物を提供し、それは、ヒトの患者の口腔粘膜を通して生物学的に活性な睡眠誘導性の化合物を迅速な吸収のために提供し、効果の迅速な発現が招かれる。本発明の具体例は、患者において不眠症を処置するために、夜間に投薬することに関し、それは、患者の口腔粘膜に、ゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩が備わる経口噴霧の治療上効果的な量を噴霧することによるものである。本発明はまた、夜間の投薬の間または他の時間で、患者が再び活発になるのに先立って十分な夜の睡眠を得ることができないときに、そのような組成物を用いて不眠症を処置する方法を提供する。
【0015】
“夜間投薬”または“真夜中の投薬”により、本明細書において、本発明者らは、そのような用量が投与された後、および患者が再び活発にならなければならない前に患者が十分な夜の睡眠を得ることができないときに、不眠症が治療されるように製薬上効果的な用量を提供することを意味する。夜間投薬は、例えば、午前2時00分、午前3時00分、午前4時00分までの真夜中、またはその他での投薬を含むことができ、そしてまた患者が、彼または彼女の仕事、旅行、または他の活動のために、夜の間に活発な必要があり、および典型的に日中の間に睡眠を得るとき、昼間に投薬量を提供することまで拡がる。したがって、本明細書で用いるように夜間投薬または真夜中投薬には、患者が、約四時間内に、または約五から六時間までよりも短い時間内に、再び活動的でなければならないときの任意の時間に用量、そのような用量を投与することが含まれる。
【0016】
若干の具体例に従うゾルピデムの用量は、約0.5mgから約10.0mgまで(例では、0.5mg、1.0mg、2.0mg、2.5mg、3.0mg、4.0mg、5.0mg、または10.0mg)のゾルピデムまたは製薬上許容可能な塩で、例えば、0.5から2.5mgまで、またはそれよりも多い酒石酸ゾルピデムのようなものであることができる。
【0017】
ゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩が活性化合物である場合、噴霧は約0.01から20重量/重量(w/w)パーセントまでのゾルピデム、0.1から15w/wパーセントまでのゾルピデム、または0.5から5w/wパーセントまでのゾルピデムを含みうる。用語“製薬上許容可能な塩”は、有機および無機の酸または塩基を含む製薬上許容可能な毒性がない(非毒性の)酸または塩基から調製される塩類に言及する。
【0018】
経口噴霧組成物はさらに、薬理学的に許容可能な極性または非極性の溶媒、またはその混合物を含みうる。溶媒は、例えば、合計組成物の約10-99の重量%の間で、極性溶媒を含みうる。随意に、組成物はさらに、推進剤を、例えば、合計組成物の約2-90重量%の間で含むことができる。また随意に、テイストマスクおよび/または香料を、例えば、合計組成物の約0.01-10重量%の間で含みうる。保存剤(群)はまた、例えば、合計組成物の約0.001-1重量%の間で随意に含まれうる。
【0019】
1種の具体例に従い、ゾルピデムの経粘膜投与のための経口噴霧組成物は、合計組成物の重量%において、0.05-10%のゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩、88-99.05%の極性または非極性の溶媒またはその混合物、0-1%のテイストマスクおよび/または香料、および0-1%の保存剤が備わる。
【0020】
さらなる具体例は、エアロゾル弁付(valved)容器を提供し、それには、推進剤、溶媒組成、および活性薬剤が含有される。推進剤は、エアロゾル弁の起動後に蒸発して、液滴のミスト(霧)が形成され、それは溶媒および活性化合物を含む。
【0021】
調剤物は、エアロゾル噴霧として配送するためのオプションの(随意的な)推進剤を含有しえ、または推進剤を含めないで、そして定量(メーターで測られる)弁噴霧ポンプによって配送することができる。適切な推進剤には、制限されないが、炭化水素類(ブタン、プロパン、その他)、クロロフルオロカーボン類(CFC-11、CFC-12、その他)、ヒドロフルオロカーボン類(HFA-134a、HFA-227ea、その他)、およびエーテル類(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、その他)を含む。推進剤は実質上非水系でありうる。弁が起動するときに容器から溶媒を放出するのに十分な圧力であって、過度な圧力の、容器または弁シールに損害を与えるようなものでないものを、通常の使用の下で生成するように、推進剤は、エアロゾル容器において圧力を生成させる。
【0022】
非極性溶媒は、若干の場合において、非極性炭化水素で、線状または分枝状の立体配置のC7-18炭化水素、脂肪酸エステル、およびMIGL YOL(R)(ミグルヨル(商標))のようなトリグリセリドである。適切な非極性溶媒には、例えば、(C2-C24)脂肪酸、(C2-C6)エステル類、C7-C18炭化水素、C2-C6アルカノイルエステル類、および対応する酸のトリグリセリドが含まれうる。溶媒は好ましくは、活性化合物を溶解し、推進剤と混和性でなければならず、すなわち、溶媒および推進剤は好ましくは、0-40℃の温度で、1-10気圧の間の圧力範囲で、単一の相を形成しなければならない。
【0023】
極性の噴霧のための溶媒には、例えば、300-1000Mw(好ましくは400-600)の低分子量のポリエチレングリコール(PEG)、低分子量の(C2-C8)モノおよび多価アルコール、およびC7-C18の線状または枝状の鎖の炭化水素のアルコール類、および/またはグリセリンおよび水が含まれる。多くの他の適切な極性および非極性溶媒を利用しえ、酸性化した水(acidified water)および/または水性緩衝剤のようなものである。
【0024】
本発明に従う極性および非極性エアロゾル噴霧組成物は、密封し、加圧した容器から投与されうる。容器の内容物は、定量弁の起動によって解放され、それは各々の起動に伴い雰囲気気体の侵入を許さない。
【0025】
さらなる具体例は、ポンプ噴霧調剤物の組成物を含むポンプ噴霧容器、および前記組成物の予め定められた量を容器から解放するのに適切な定量弁を提供する。容器中に貯蔵される組成物は、大気圧で、またはそれよりも低い圧力でよい。
【0026】
さらに別の具体例は、噴霧によって、口腔粘膜(すなわち、ブッカル(頬側)で、舌で、および/または舌下で、その他の粘膜)に投与されるゾルピデムの夜間投薬を用いる不眠症の処置方法を提供する。好ましい具体例は、口腔粘膜に対して、約25-400mcL、約50-200mcL、または約100mcLの噴霧容量を投与する。別の具体例において、噴霧容量は約50mcLである。噴霧の容量は、例えば、約0.5mgから約10.0mgまでの範囲でのゾルピデムの用量を含みうる。用量は、患者が再び活発になるのに先立って、約2、3、4、または約5または6時間未満で投与されうる。
【0027】
活性化合物は、ゾルピデムに基づくもの、およびその誘導体で、酒石酸ゾルピデム、および/またはその他の製薬上許容可能な塩類または他の形態を含みうる。好ましい具体例において、活性化合物は酒石酸ゾルピデムである。
【0028】
活性化合物は、イオン化され、塩の形態において、またはその製薬上許容可能な塩類の遊離塩基としてであってよい(ただし、エアロゾルまたはポンプ噴霧組成物のため、それらは噴霧溶媒において溶解性である)。これらの化合物は、有用な濃度にて極性および非極性の溶媒に溶解する。これらの濃度はゾルピデムのための標準的な受入れ可能な用量と重なるか、またはそれより十分に少ないかもしれない。口腔粘膜を通した化合物の高められた吸収、行動および睡眠の迅速な発現、代謝の迅速な発現、および他の要因は、組成物の製薬上の有効性および夜間投薬のための方法に関与する。
【0029】
極性および非極性の噴霧のための推進剤として、プロパン、N-ブタン、イソブタン、N-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、テトラフルオロエタン、ヘプタフルオロプロパン、テトラフルオロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテルおよびその混合物を用いうる。単一の気体としてのN-ブタン、イソブタン、HFA-134、およびHFA-227は、好ましい推進剤である。推進剤は、活性化合物にとって有害である場合がある汚染物質の存在を最小にするために、合成によって生産されうる。そのような汚染物質には、酸化剤、還元剤、ルイス酸または塩基が含まれうる。これらの各々の濃度は、0.1%未満でなければならない。
【0030】
随意の香料には、例えば、合成または自然のミント、ペパーミント、スペアミント、ウインターグリーン、柑橘油、果物フレーバー、甘味料(アセサルフェーム、アスパルテーム、ネオテーム、サッカリン、スクラロース、糖類、その他)、およびその組合せが含まれる。
【0031】
組成物はさらに、苦味またはすっぱい味のような望ましくない味を隠し、または最小にすることができるテイストマスクの薬剤を含みうる。代表的なテイストマスクは、バニリン、エチルバニリン、マルトール、イソアミルアセテート、エチルオキシ水和物、アニスアルデヒド、およびプロピレングリコールの組合せである(商業上、N. J.(ニュージャージー州)(米国)、Camden(カムデン)のPharmaceutical Flavor Clinic(ファーマシューティカル・フレーバー・クリニック社)から“PFC 9885 Bitter Mask(ビター・マスク)”として入手可能である)。
【0032】
活性物質には、鎮静剤が含まれる。本発明に従う経口噴霧において用いるための適切な鎮静剤には、制限されないが、デクスメデトミジン、エスゾピクロン、インジプロン、ゾルピデム、およびザレプロンが含まれる。ゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩が活性化合物であるとき、経口噴霧は、約0.01から20重量/重量(w/w)パーセントまでのゾルピデム、約0.1から15w/wパーセントまでのゾルピデム、または約0.5から5w/wパーセントまでのゾルピデムを含む。
【0033】
活性化合物が酸性のとき、塩類は製薬上許容可能な非毒性の塩基から調製されうる。無機塩基から導き出される塩類には、例えば、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛、その他が含まれる。特に、好ましくは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、およびナトリウムの塩類である。製薬上許容可能な有機の非毒性塩基から導き出される塩類には、一級、二級、および三級のアミン、置換したアミンで、自然に発生する置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂を含むもので、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,Nジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルフォリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルコサミン、モルフォリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、およびトリプロピルアミン、その他のようなものが含まれる。
【0034】
活性化合物が塩基性であるとき、塩類は製薬上許容可能な非毒性の酸から調製されうる。そのような酸には、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩化水素酸(塩酸)、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン(粘液)酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、およびp-トルエンスルホン酸、その他が含まれる。特に、好ましくは、クエン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、および酒石酸である。
【0035】
本明細書での処置の方法の議論において、鎮静剤または活性化合物への言及はまた、その製薬上許容可能な塩類を含むことを意図される。一定の用量および調剤物を本明細書において述べるが、それが必要な哺乳類または人間に施される実際の量は、患者、取り扱う医師、および/またはFood and Drug Administration(食品医薬品局)の要件によって定められうる。
【実施例】
【0036】
以下の例は、実例となるもので、そして制限されないことを意図する。すべての値は、特に明記しない限り、重量パーセントでのものである。
(例1)
【0037】
【表1】

【0038】
(例2)
【0039】
(臨床研究1)
コントロールされた、クロスオーバーの、非盲検で(open-label)、用量決定試験(dose-ranging)の、マルチ処理薬物動態学的治験を、ゾルピデムのスプレー調剤物を用いて行った。研究1には、18〜40齢の10体の健康な断食の雄性ボランティア(被検体)が含まれた。
【0040】
各対象体は、異なる投薬訪問(dosing visits)で一回の2.5mg、5mg、および10mgの用量のゾルピデムのスプレー調剤物を受けた。各々の対象体はまた、異なる投薬訪問で別に10mgの酒石酸ゾルピデム(Ambien(R))タブレットを受けた。投薬訪問当たり合計19回の採血を、1)投薬に先立つ10分で、2) 投薬に次いですぐに、および3)投薬後3、6、9、12、15、20、30、45、60、90、120、180、240、360、480、600、および720分に実行した。
【0041】
研究1の結果は、図1-3に図示される。具体的には、図1は、投薬後、最初の30分間の薬物の濃度レベルの平均および標準誤差を表示する。30分の間隔は特に重要であると考えられ、それは、それが、睡眠潜時によって測定されるような治療上の作用の発現に対するAmbien's(R)の時間を表わすからである。用量-調整なしでも、投薬後15分で、平均濃度レベルは、それぞれ、経口タブレットと比較して、2.5mg、5mg、および10mgの経口スプレーのためにおよそ3、8、および9倍より一層大きかった。投薬後12、15、および20分で、10mgのスプレーおよび経口タブレットの間の違いは、統計的に有意であった。投薬後12および15分では、5mgの経口スプレーは、10mgの経口タブレットよりも統計学的に著しく高い濃度レベルを生成した。
【0042】
有意に、経口スプレー投与が、タブレットと比較して、血流においてゾルピデムのより一層速い外観(faster appearance)を提供する。
(例3)
【0043】
(臨床研究2および3)
45体の健康な雄性および雌性のボランティアを使用して最初の、単一施設の研究(single-center study)は、ランダム化され、四方向のクロスオーバーの、非盲検で、用量決定試験(研究2)であった。この研究は、5mgおよび10mgの用量のゾルピデムの経口スプレーを、同じ用量のAMBIEN(R)タブレットと比較した。24体の年配の健康な雄性および雌性のボランティアを使用する第2の、単一施設の研究は、ランダム化され、二方向のクロスオーバーの、非盲検での、5mgのゾルピデム経口スプレーの、そして5mgのAMBIEN(R)タブレットの薬物動態学的な(PK)/薬力学的な(PD)研究であった(研究3)。研究のゾルピデムスプレー調剤物は、以下の通りであった。
【0044】
【表2】

【0045】
双方の薬物動態学的/薬力学的な研究を、Cmax(最高血中濃度)およびAUCs(曲線下面積)によって決定されるように、ゾルピデムの経口スプレーおよびAMBIEN(R)タブレットの薬物動態学的プロファイルの全体的な比較を評価するために設計した。研究の目的にはまた、ゾルピデムの経口スプレーの薬物吸収の速度および薬力学的特性の測定基準、ならびにその安全性および耐性のプロファイルの評価が含まれた。
【0046】
双方の研究からのデータは、AMBIEN(R)タブレットと比較するとき、ゾルピデムの経口スプレーの薬物動態学的プロファイルの全体的な比較を指し示す。このアセスメント(査定)は、Cmaxおよび薬物濃度曲線下の面積、最後の測定可能な観察に対するAUCsの評価に基づき、そして無限に外挿される。
【0047】
45体の健康なボランティアにおける四方向クロスオーバー研究において、5mgのゾルピデムの経口スプレーを受ける患者の64%および10mgのゾルピデムの経口スプレーを受ける対象体の78%は、投薬後15分までに治療上の薬物レベル(≧20ng/ML)に達した。ゾルピデムの経口スプレーについての結果は、対象体の18%および24%のそれぞれだけを伴い、5mgおよび10mgの経口タブレットと比較し、それが同じ15分の投薬期間の間の治療上の薬物レベルに達するとき、統計学的に著しく高かった。血しょうゾルピデム濃度は、連続的な検出を伴うLC/MS/MS分離によって定められた。四方向のクロスオーバー研究の結果は、以下のテーブルIおよびIIおよび図4-6において示される。
【0048】
24体の老齢の被検体での2方向クロスオーバー研究(65齢よりも上の対象体)において、結果はまた、5mgのゾルピデムの経口スプレー群において統計学的に十分高く、それは、対象体の79%による5mgの経口タブレットと比較して、投薬後15分により治療上の薬物レベルが達成され、それに対し、経口タブレットを用いる同じ時間枠について29%の治療上の結果が達成されるときである。2方向クロスオーバー研究の結果は、テーブルIIIおよびテーブルIVにおいて示される。
【0049】
一次薬力学的エンドポイント(終点)の評価は、Digit Symbol Substitution Test(数字記号置換試験)(DSST)スコア(得点)における投薬前ベースライン(基線)から投薬後13分までの変化として規定され、双方において、研究はまた、経口タブレットと比較するとき、経口スプレーの統計学的に有意な優位性を明らかにした。顕著に、5mgのゾルピデムの経口スプレーは、10mgのAMBIEN(R)タブレットと比較されるとき、より一層迅速な初期の吸収およびより一層強い初期の薬力学的効果を例示した。重要なことに、薬物吸収の薬物動態学的な、および薬力学的な測定基準における観察された違いは、研究薬物への全体の曝露における増加と関係しなかった。すなわち、最大濃度レベル(Cmax)および曲線下面積(areas-under-the-curve、AUCs)は、ゾルピデムの経口スプレーおよびAMBIEN(R)タブレットの間で匹敵するものであった。
【0050】
経口スプレー群は、投薬後早期の時間点で、より一層高い濃度レベルおよびAUCsによって証拠立てられ(evidenced)、一貫してタブレットの群よりも迅速な薬物の吸収を例示した。例えば、AMBIEN(R)タブレットの同じ用量と比較するとき、投薬後15分までに達成されるAUCsは、10mg経口スプレーについておよそ9倍より一層高く、そして5mgの経口スプレーについておよそ5倍より一層高かった。薬物吸収の速度の一次的な測定基準(投薬後15分までに少なくとも20ng/mlでの治療上の薬物レベルに達する対象体のパーセント)は、経口タブレットの同じ用量と比較するとき、経口スプレー群の統計的に有意な優位性を明らかにした(p<0.001)。顕著に、最初の研究において、対象体の64%は、5mgの経口スプレーを受けた後にこの薬物レベルを達成し、それに対し24%の対象体は10mgのAMBIEN(R)タブレットを服用したものである。この処置の違いはまた、著しく有意であった(p= 0.0005)。このようにして、経口スプレーは、タブレットと比較して治療上の作用の発現までの時間を短くする。
【0051】
双方の研究において、研究者は、すべての参加者にDigit Symbol Substitution Test、DSST(投薬前二回および投薬後13および23分で)および12-アイテムの視覚的アナログスケール(Visual Analog Scale)(投薬前二回および投薬後12および22分で)を施す。DSSTは複雑な試験であり、そしてDSSTスコアにおける減少は、眠気および鎮静の指標と考えられる。投薬前のベースラインから投薬後13分までのDSSTにおける変化は、双方の研究において一次薬力学的エンドポイントとしてプレ指定された。統計的に有意な処置の違いは、このエンドポイントについて観察された。重要なことに、最初の研究において、10mg AMBIEN(R)タブレットと比較するとき、5mgの経口スプレーは統計学的に著しく優れていた。
【0052】
重要なことに、安全性の見地から、平均最大血しょう濃度(Cmax)および生物学的利用能は、曲線下面積によって測定されるように、10mgの経口スプレーのための全ての12時間の観察の期間中に達成され、経口タブレットのそれを上回らなかった。
【0053】
図4-6は、研究2の間に種々の時間点で、対象体の血しょう薬物濃度レベルを描くグラフである。
【0054】
なんらの安全性または耐性の問題の証拠はなかった。不都合な事象は、経口スプレー用量の投与後に報告されなかった。対象体のいずれも研究を中断させなかった。
【0055】
【表3】

AUC(0-T)は線形台形法によって算出した。
AUC(0-∞)はAUC(0-T)+(0.693/Ke)である。
【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

AUC(0-T)は線形台形法によって算出した。
AUC(0-∞)はAUC(0-T)+(0.693/Ke)である。
【0058】
【表6】

【0059】
(例4)
【0060】
不眠症を患う患者は、上記研究における調剤物の1種またはそれよりも多くのものに従う酒石酸ゾルピデムの夜間用量を投与される。調剤物は、ゾルピデムを含むことができ、それは、例えば、約2.5mgでの用量で、約50mcLの単位用量容量をもつ経口スプレー組成物におけるものである。
【0061】
ほぼ午前2時00分頃では、患者の不眠症は、患者がほぼ午後11時00分までに床について、そしてほとんど、またはまったく困難を伴わず眠れるが、彼または彼女はまだ夜中、例えば、午前2時00分に再び目がさめ、そしてもう一度寝入ることができないようなものである。あるいはまた、患者は、ほぼ午前2時00分頃に床につくが、早くに眠ろうとしてなく、患者は、抗不眠症薬物療法を、寝入るのにか、または約4から5時間までで再び目がさめる前に安らかな睡眠のなんらかの意味がある程度のものを達成するのに必要であると信じることがある。いずれにしても、上記のゾルピデムの調剤物の夜間用量は、患者が、いわば(say)午前6時00分に、抗不眠症を、夜中に、経口スプレーによって治療上の用量を受けた後およそ4から5時間までで起き、そして眠らない活動を再開しなければならないとしても、経口スプレーによって投与される。
【0062】
そのような眠らない活動には、例えば、働くか、または運動することが含まれる。これらの眠らない活動は、経口スプレーによって配送される抗不眠症薬物療法および組成物からのなんらかの過度の後遺症なく、実行される。午前6時00分で目がさめることでの血漿レベルは、治療上のレベル、すなわち、約20ng/mlより低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不眠症を処置するために方法であって、
不眠症を患う受動体に経口噴霧を介して約50から約40mcLまでの製薬上の経口噴霧組成物の単位用量容量を施す工程
を具え、
前記単位用量容量は、約0.5mgおよび約5.0mgの間のゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩および受動体の全身的な循環系への口腔粘膜を通したゾルピデムの治療上有効な量の経粘膜吸収のための製薬上許容可能な溶媒を含有し、
前記施しは、受動体が覚醒活動の再開を要する前約五時間より短い時間において行われ、および23分内にゾルピデムの血中レベルが達成され、そして前記受動体への経口噴霧組成物の施し後五時間より短い時間において20ng/mL未満に徐々に減らされる、方法。
【請求項2】
単位用量容量は約2.0から3.0mgまでの間のゾリピデムまたはその製薬上許容可能な塩を備える、請求項1記載の方法。
【請求項3】
単位用量容量は約2.5mgのゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩を備える、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記施しは、受動体が覚醒活動の再開を要する前約四時間よりも短い時間において行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
組成物は、
約1.0から約10.0重量パーセントまでのゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩、
約40から約60パーセントまでの水、および
約20から50パーセントまでの溶媒
を備える、請求項1記載の方法。
【請求項6】
組成物は、
約3.0から約7.0重量パーセントまでのゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩、
約45から約50パーセントまでの水、
約30から40パーセントまでの溶媒
を備える、請求項1記載の方法。
【請求項7】
投薬後、治療上のゾルピデムの血中レベルは、20分よりも短い時間において達成され、そして四時間よりも短い時間において約20ng/mL未満に漸減される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
睡眠を誘導するための方法であって、
不眠症を患う受動体に対して経口噴霧組成物の用量を施す工程
を具え、
前記組成物は鎮静剤またはその製薬上許容可能な塩および製薬上許容可能な溶媒を含有し、
前記施しは受動体が目覚めを要する前約五時間より短い時間内に行われる、方法。
【請求項9】
鎮静剤は酒石酸ゾルピデムである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
用量は約0.5から約5.0mgまでのゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩を備える、請求項8記載の方法。
【請求項11】
用量は約50から約400mcLまでの範囲における容量を持つ、請求項8記載の方法。
【請求項12】
用量は約50から約200mcLまでの範囲における容量を持つ、請求項8記載の方法。
【請求項13】
治療上のゾルピデムのレベルは、投薬後、30分よりも短い時間内に達成される、請求項8記載の方法。
【請求項14】
治療上のゾルピデムのレベルは、投薬後、23分内に達成される、請求項8記載の方法。
【請求項15】
治療上のゾルピデムのレベルは、投薬後、22分内に達成される、請求項8記載の方法。
【請求項16】
治療上のゾルピデムのレベルは、投薬後、13分内に達成される、請求項8記載の方法。
【請求項17】
治療上のゾルピデムのレベルは、投薬後、12分内に達成される、請求項8記載の方法。
【請求項18】
ゾルピデムの血中レベルは投薬後五時間よりも短い時間において20ng/mL未満にまで漸減される、請求項11記載の方法。
【請求項19】
ゾルピデムの血中レベルは投薬後四時間よりも短い時間において20ng/mL未満にまで漸減される、請求項11記載の方法。
【請求項20】
溶媒には、水、酸性化水、および水性緩衝剤からなる群より選ばれる極性溶媒が包含される、請求項8に従う方法。
【請求項21】
溶媒には、プロピレングリコールおよびエタノールからなる群より選ばれる無極性溶媒が包含される、請求項8に従う方法。
【請求項22】
組成物はさらにテイストマスクまたは香料を含む、請求項8に従う方法。
【請求項23】
組成物はさらに推進剤を含む、請求項8に従う方法。
【請求項24】
製薬上の抗不眠症組成物であって、
ゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩、および
製薬上許容可能な溶媒
を備え、
前記組成物は、単位用量噴霧ポンプ容器において含まれ、および前記容器の単一回の作動は、約0.5から5mgまでのゾルピデムまたはその製薬上許容可能な塩の用量を含有する前記組成物の約50から約400mcLまでの単位用量容量を配送する、組成物。
【請求項25】
単位用量容量は約50から約200mcLである、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
ゾルピデムの用量は約2から3mgまでである、請求項24記載の組成物。
【請求項27】
ヒト患者に対する経口噴霧によっての単位用量の配送により、治療上のゾルピデムのレベルが投薬後30分よりも短い時間内に達成される、請求項24記載の組成物。
【請求項28】
ヒト患者に対する経口噴霧によっての単位用量の配送により、治療上のゾルピデムのレベルが投薬後23分内に達成される、請求項24記載の組成物。
【請求項29】
ヒト患者に対する経口噴霧によっての単位用量の配送により、治療上のゾルピデムのレベルが投薬後22分内に達成される、請求項24記載の組成物。
【請求項30】
ヒト患者に対する経口噴霧によっての単位用量の配送により、治療上のゾルピデムのレベルが投薬後13分内に達成される、請求項24記載の組成物。
【請求項31】
ヒト患者に対する経口噴霧によっての単位用量の配送により、治療上のゾルピデムのレベルが投薬後12分内に達成される、請求項24記載の組成物。
【請求項32】
ヒト患者に対する経口噴霧によっての単位用量の配送により、ゾルピデムの血中レベルが投薬後五時間よりも短い時間において20ng/mL未満に漸減する、請求項24記載の組成物。
【請求項33】
ヒト患者に対する経口噴霧によっての単位用量の配送により、ゾルピデムの血中レベルが投薬後四時間よりも短い時間において20ng/mL未満に漸減する、請求項24記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−526837(P2010−526837A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507719(P2010−507719)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/063379
【国際公開番号】WO2008/141264
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(506105928)ノヴァデル ファーマ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】