抗体、および、SOD1異常と関連した疾患の治療、予防、および、診断における前記抗体の使用
本発明は、異常なスーパーオキサイドジスムターゼ1(SOD1)に特異的に結合し、そして、ヒトのような動物に投与された際に、その病的な効果を中和する抗体に関する。本発明に係る抗体は、カナダの国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託番号ADI−290806−01、02、および、03として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生された単クローン抗体である。本発明はまた、ヒトのような動物における筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病のような神経変性疾患の治療、予防、および、診断のよいて本発明に係る抗体を使用することにも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋萎縮性側索硬化(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)のようなSOD1異常と関連した神経変性疾患の分野に関する。より具体的に、本発明は、単クローン抗体、ならびに、前記神経変性疾患の治療、予防、および/または、診断方法、および、組成物における前記単クローン抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患とは、特定の神経細胞が変性していく病気をいう。これらの細胞に変化が起こると、前記細胞は正常に機能することができなくなり、結果的に、細胞壊死に至る。
【0003】
典型的な神経変性疾患として、家族性および散発性筋萎縮性側索硬化(それぞれ、FALSおよびALS)、家族性および散発性パーキンソン病、ハンチントン病、家族性および散発性アルツハイマー病、オリーブ橋小脳萎縮(olivopontocerebellar atrophy)、複合神経系萎縮(multiple system atrophy)、進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy)、拡散性レヴィー小体症(diffuse lewy body)、皮質歯状核黒質変性症(corticodentatonigral degeneration)、進行性家族性間代性筋痙攣性癲癇(progressive familial myoclonic epilepsy)、線条体黒質変性(strionigral degeneration)、回転失調(torsion dystonia)、家族性振せん(familiar tremor)、ジル・ド・ラ・ツレット症候群(Gilles de la Tourette's syndrome)、および、ハレルフォルデン症候群(Hallervorden syndrome)などが挙げられる。これらの疾患の殆どは、中年の成人に発病して、神経系における特定のサブセットの神経が急速に変性していき、早期に死亡に至るという共通する特徴を有している。前述の疾患の進行を遅らせるに有効な療法は未だ知られていない。
【0004】
筋萎縮性側索硬化(ALS)は大人における進行性筋衰弱を特徴とする。病理所見は、運動皮質、脳幹、脊髄における星状細胞増加(astrocytosis)、および、小膠細胞症(microgliosis)と共に、運動ニューロンの大量損失である。一般的に、発病は30代から60代の間で、通常60代のほうが多い。ALSは均一に致命的で、通常5年以内に死亡する。ALSは、患者が非対称の四肢無力および疲労、上肢に限られた線維束性収縮、および/または、足における痙攣を感じ始めた時点で、診断される。
【0005】
ALSにおいて、脊髄の前角および大脳皮質のニューロンと共に、脳幹の運動核の一部におけるそれらの相同体が影響を受ける。影響を受ける部類のニューロンはかなり特定のものに限られる。眼球の運動に必要な運動ニューロンおよび脊髄の括約筋における運動ニューロンは、前記症候性疾患が発病してからかなり進んだ時点においても、殆ど影響を受けることなく存在する。時折前記症候性疾患が発病してから直ぐに死亡に至るケースも見られるが、概して、横隔膜の衰弱が原因となった2次的な呼吸不全で死亡する。
【0006】
ALS症例のうち約10%が家族性で、その他のALSの症例(即ち、約90%)は散発性であると知られている。このような知見は、10年前にロセン(Rosen)らがSOD1媒介疾患の機序を明かすために行なったALS研究に関連して、家族性症例のサブセットにおけるCu/Znスーパーオキサイドジスムターゼ(superoxide dismutase)1をコードする遺伝子におけるミスセンス突然変異の研究から得られたものである。現在に至るまで、SOD1遺伝子の中から114個の異なる突然変異が観察されているが、それが家族性ALS症例の0〜20%の原因と思われる。
【0007】
酵素であるスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)はスーパーオキサイドが酸素と過酸化水素とに不均化反応(dismutation)を触媒する。したがって、SODは酸素に露出された殆どの細胞において重要な抗酸化防御機構である。SODは動物、植物、又は、微生物のような生命体に広く分布されている。より詳細に、SOD1は発現されたたんぱく質中に大量に偏在している。スーパーオキサイド負イオンから過酸化水素への転換を触媒するその機能に基づいて、異なるSOD1の突然変異体の毒性はフリーラジカル除去能力の低下に起因すると考えられる。しかしながら、異なるSOD1突然変異体は酵素活性における驚くほどの多様性を示す。突然変異SOD1 G93A(位置93でグリシンがアラニンに置き換えられている)、または、SOD1 G37Rを発現するマウスは、SOD1活性レベルが高められたにもかかわらず、運動ニューロン疾患を発病させる。(Cleveland at al., 2001, Nat Rev Neurosc, 2, 806−819)。さらに、SOD1ノックアウトマウス(knockout mouse)は運動ニューロ疾患は発病させない。(Reaume et al., 1996, Nat Genet, 13, 43-47)銅をSOD1触媒部位に送達するSOD1の銅シャペロン(CCS)における遺伝子破壊(gene disruption)は突然変異SOD1トランスジェニックマウスにおいて疾患の進行に対して何ら影響も及ぼさなかった。(Subramanian et al., 2002, Nat Neurosci, 5, 301-307)。最後に、触媒部位でCuと配位結合する4個のヒスチジン残基のうち2個を欠けている突然変異SOD1を過剰発現するトランスジェニックマウスの場合、SOD1活性に顕著な減少があったのにもかかわらず、運動神経変性が現れた。(Wang et al., 2002, Neurobiol Dis, 10, 128-138)。総合すると、概して変異されたマウスを用いて行なわれたこれらの研究は、銅触媒部位を含めて、酵素活性と独立した新たな毒性特性を得るということで運動ニューロンの疾患を誘発することがわかった。
【0008】
最も一般的な考え方は、突然変異SOD1の毒性が、有毒なミスフォールドしたたんぱく質種またはその凝集体を形成する突然変異SOD1の性向にかかわっているということである。さらに、野生型(WT)SOD1とは違って、細胞突然変異SOD1たんぱく質は、培養において小グリア細胞(microglia)を活性化させ、運動ニューロンの壊死をもたらし(Urushitani et al., 2006, Nat Neurosci, 9, 108-118)、そして、発病経路は、突然変異SOD1と関連したALSにおける運動神経の壊死が必ずしも細胞自立的ではないという概念と一致する。(Boilee et al., 2006, Science, 312, 1389-1392)。興味深いのは、WT SOD1の酸化は、その凝集体形成を促がし得る現状であることである。(Furukawa, et al., 2006, PNAS USA, 103, 7148-7153)散発性ALS患者における酸化的損傷(Ihara et al., 2005, Neurol Res, 27, 105-108)、および、細胞内に豊富に存在するSOD1たんぱく質に照らして、SOD1分子が散発性ALSにおける酸化的損傷の標的を構成し得るということを推論できる。
【0009】
ALSと関連したSOD1突然変異体の過剰発現に基づいた優れたマウスモデルの発展、および、家族性ALS患者の20%におけるスーパーオキサイドジスムターゼ1(SOD1)の遺伝子突然変異の発見のお陰で、たんぱく質のミスフォールド現状および凝集体形成、プロテアソームの機能障害、炎症、反応性酸素種、興分毒性(excitotoxicity)、および、ミトコンドリアの機能障害を含めて、運動ニューロン壊死に至る様々な発病経路が明らかになった。これらの仮定に基づいて、ウイルス媒介分子送達および薬理学的なアプローチを含めて、ALSマウスにおいて治療のための種々のアプローチが試みられた。
【0010】
米国特許第5,762,929号は経口または非経口投与により筋萎縮性側索硬化のような運動ニューロン疾患の症状を和らげることができる薬剤について報告している。米国特許第5,680,489号はグルタチオン誘導体または非−システイングルタチオン前駆体の有効量を患者に投与することで筋萎縮性側索硬化の症状を治療し、または、和らげる方法について報告している。米国特許第6,420,429号は筋萎縮性側索硬化のような疾患の治療に抗酸化剤を用いることについて報告している。米国特許第5,843,641号、5,849,290号、および、第6,723,893号は神経変性疾患、より具体的に、筋萎縮性側索硬化(ALS)を治療するためにSODたんぱく質をコードするDNAまたはSODたんぱく質の有効量を使用することについて報告している。これらの特許文献はまた、PCR反応においてSODたんぱく質をコードするDNAまたはその断片を用いて筋萎縮性側索硬化を診断する方法について開示している。
【0011】
SOD1が特定の転座配列を有していないサイトソルたんぱく質であることが知られているが、正常なSOD1および突然変異SOD1両方が分泌経路を通じて分泌され得るという有力な証拠がある。(Urushitani, et al., 2006, Nature Neurosci, 9, 108-118)さらに、ウルシタニら(2006)は、細胞外のSOD1突然変異体が、培養した運動ニューロンの壊死および小膠細胞症を引き起こすことができるということを明らかにしたが、それは分泌されたSOD1突然変異たんぱく質の毒性に基づいた発病機構を示唆するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、SOD1異常と関連した疾患の治療、予防、および/または、診断に有効な単クローン抗体のような新物質に対する強い必要性が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、SOD1と関連した疾患の治療および/または診断用ツールを提供して、上記ニーズを満足させることにある。
【0014】
本発明の目的は、動物に投与された際に、異常なスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD1)の病理効果を中和する活性を保有することを特徴とする異常なSOD1に特異的に結合する抗体を提供することにより達成される。
【0015】
詳細には、本発明の単クローン抗体は、カナダの国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託番号ADI−290806−01,02、およびお03として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生されたものであるのが好ましい。
【0016】
また、本発明は、本発明に係る1つ以上の抗体、および、医薬的に許容可能な担体を含有する動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療および/または予防用の組成物にも関する。
【0017】
さらに、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防するに本発明に係る抗体を1つ以上使用することや、動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療および/または予防用の組成物を製造するに本発明に係る抗体を使用することに関する。
【0018】
さらに、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を診断するに本発明に係る抗体を1つ以上使用することや、動物におけるSOD1と関連した疾患診断用の組成物を製造するに本発明に係る抗体を1つ以上使用することに関する。
【0019】
さらに、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患診断用キットに関する。このキットは、本発明に係る抗体を1つ以上含む1つ以上の容器を有している。
【0020】
さらに、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療または予防用のキットに関する。このキットは、本発明に係る抗体を1つ以上含む1つ以上の容器を有している。
【0021】
さらに、本発明は、本発明に係る組成物の有効量を投与して、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防する方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる単クローン抗体は、SOD1異常と関連した疾患の治療、予防、および/または、診断において非常に有効である。本発明のその他の目的や有利な効果は、添付した図面を参照して後述の発明を実施するための最良の形態を読んだならば明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を説明するために、本明細書においては、下記のように定義される用語を用いる。
【0024】
本明細書に使用する場合に、“SOD1異常と関連した疾患(a disease associated with SOD1 abnormalities)”は、好適には、神経変性疾患を示す。神経変性疾患は神経組織の漸進損失を特徴とする中枢神経系における疾病の一種である。神経変性疾患の典型的な例としては、筋萎縮性側索硬化(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ハレルフォルデン・スパッツ病( HYPERLINK "javascript:goWordLink(%22Hallervorden-Spatz%22)" Hallervorden-Spatz HYPERLINK "javascript:goWordLink(%22disease%22)" disease)、オリーブ橋小脳萎縮(olivopontocerebellar atrophy)、複合神経系萎縮(multiple system atrophy)、進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy)、拡散性レヴィー小体症(diffuse lewy body)、皮質歯状核黒質変性症(corticodentatonigral degeneration)、進行性家族性間代性筋痙攣性癲癇(myoclonic epilepsy)、線条体黒質変性(strionigral degeneration)、回転失調(torsion dystonia)、家族性振せん(familiar tremor)、ジル・ド・ラ・ツレット症候群(Gilles de la Tourette's syndrome)、および、筋萎縮性側索硬化(ALS)などが挙げられる。
【0025】
非ヒト(例えば、マウスの)抗体の“ヒト化”型は非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含む特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または、その断片(例えば、Fv,Fab,F(ab')2、または、抗体の抗原決定配列)である。殆どの場合、ヒト化抗体は、受容者(recepient)の補体決定部位(CDR)の残基を、所定の特異性(specificity)、親和性(affinity)、および、容量(capacity)を有するマウス、ラット、又は、ラビットのような非ヒト種(供与者の抗体)のCDRの残基で置き換えたヒト免疫グロブリン(受容者の抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、それに相当する非ヒトの残基に置き換えたものである。さらに、ヒト化抗体は、移入性CDRまたはフレームワーク配列においても、受容者の抗体においてもない残基を含み得る。これらの改質は抗体の作用をよりよくし、又は、最大化するために行なわれる。一般的に、ヒト化抗体は、実質的に少なくとも一つ、典型的に2つの可変領域(variable domain)を含むが、ここで、ほぼ全てのCDR部位は非ヒト免疫グロブリンのCDR部位に相当し、ほぼ全てのFR部位はヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR部位に相当する。ヒト化抗体は選択的に免疫グロブリンの不変領域(Fc)、典型的にヒト免疫グロブリンの不変領域の少なくとも一部を含む。詳細は、文献[Jones et al., Nature 321:522 (1986); Reichmann et al., Nature 332:323 (1988); and Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593 (1992)]を参照すること。
【0026】
野生型とは遺伝子又はたんぱく質の突然変異しない正常な、天然のものをいう。
【0027】
異常、異常な:異常なSOD1たんぱく質とは、野生型SODたんぱく質と実質的に同一または類似したアミノ酸配列を有するが、野生型SOD1たんぱく質と異なるたんぱく質の構造を有し、かつ、病原性活性を有する異常なSOD1たんぱく質をいう。ここにいう“病原性活性”は前述の神経変異性疾患の発病に関与するものである。前記“異常/異常な”という用語は、突然変異、酸化型、または、凝集したSODたんぱく質をいう。
【0028】
本明細書に使用する場合における“免疫性を与える・免疫化する(immunizing)”または“免疫付与・免疫化(immunization)”は、疾患の兆候無傷の(intact)宿主免疫系に依存しない。
【0029】
本発明に使用する場合に、用語“動物”はヒト、家畜、酪農動物、動物園の動物、スポーツ用の動物、又は、ペット、例えば、イヌ、ウマ、および、ネコなどを含む任意の動物を含む。好適には、動物はヒトである。
【0030】
本明細書に使用する場合に、用語“診断”とは、その徴候、症状、および、様々な診断の結果により特定の疾患を同定するプロセスをいう。診断は、被験者、好ましくは、動物、より好ましくは、ヒトから採取した生体標本に対して行なわれ得る。そのような生体標本は,血清又は血漿、全血、尿、痰、結腸流出物(colonnic effluent)、能脊髄液、リンパ液、骨髄、組織標本(例えば、外科生検または経口の塗布標本からの組織標本)、又は、異常なSOD1を含むと疑われるそのほかの任意の標本を含むが、それらに限られるものではない。診断に用いられる標本は血漿又は血清であるのが好ましい。
【0031】
本明細書に使用される場合、用語“単クローン抗体”とは、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体(即ち、前記集団を成す個別の抗体は、少量に存在し得る自然発生突然変異を除いて同一である)をいう。単クローン抗体は単一の抗原部位に対する高度の特異性を有している。さらに、異なる数種の決定基(エピトープ)に対して特異性を有する異なる数種の抗体を有する従来の(多クローン性の)抗体製剤に比べると、各々の単クローン抗体は、抗原上の1つの決定基に対する特異性を有する。それらの特異性に加えて、単クローン抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、その他の免疫グロブリンに汚染されない、といった、メリットを有する。
【0032】
1.本発明に係る抗体および組成物
本発明者は、筋萎縮性側索硬化(ALS)のような神経変性疾患を引き起こす推定薬剤(putative agent)であるスーパーオキサイドジスムターゼポリペプチドの突然変異体で動物を免疫化した場合、その疾患の治療および/または予防効果が得られることを発見した。
【0033】
また、本発明者は、スーパーオキサイドジスムターゼポリペプチドの突然変異体に対する抗体で受動免疫を行なった場合、前記疾患の治療および/又は予防効果が得られることを初めて確認した。
【0034】
それにより、本発明は、異常なスーパーオキサイドジスムターゼ1(SOD1)に特異的に結合する抗体に関するものである。異常なスーパーオキサイドジムターゼ1とは、病原性活性を保有し、そして、突然変異した、酸化した、凝集体形成した、または、変形された構造を有し得るスーパーオキサイドジムターゼ1を意味する。
【0035】
本発明の抗体は、ヒトのような動物に投与されえる際に、異常なSOD1に特異的に結合し、その病理活性を中和するものである。本発明の抗体は後述の実施例2に記載されているように作製される。
【0036】
本発明の抗体に関連して、用語“に特異的に結合する”とは、SOD1ポリペプチドの1つ以上のエピトープに比較的高度な親和性を有して結合するが、本発明に定義されたSOD1ポリペプチド以外の分子を実質的に認識せず、かつ、それに結合しない抗体を意味する。本明細書に使用する場合、用語“比較的高度な親和性”とは、関心エピトープ(epitope of interest)と抗体間の結合親和性(binding affinity)が、少なくとも106M-1以上、好ましくは107M-1以上、より好ましくは、108M-1〜1010M-1を意味する。そのような親和性の測定は、当業者に良く知られている標準競合結合の免疫学的検定法の条件下で行なわれるのが好ましい。
【0037】
本発明の好ましい実施例においては、抗体は単クローン抗体である。本発明の単クローン抗体は後述の実施例1に記載したように作製することができる。
【0038】
本発明はまた、カナダの国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託した寄託番号ADI−290806−01,ADI−290806−02、およびADI−290806−03のハイブリドーマ細胞株に関する。最も好ましい実施例において、本発明の単クローン抗体は、それぞれB1G9,C4F6,および、D3H5と名付けられた前記寄託番号ADI−290806−01,ADI−290806−02、およびADI−290806−03のハイブリドーマ細胞株から産生された単クローン抗体である。図3および表3から明らかなように、(ELISA分析結果から)、単クローン抗体B1G9が突然変異SOD1に対しては特異的な親和性を有するが、正常なまたは野生型SOD1に対しては親和性を有さないし;D4F6が突然変異体SOD1に非常に高いレベルの親和性を有し;そして、D3H5がSOD1たんぱく質の両方のタイプに対して親和性を有することがわかる。特異的な免疫組織化学検定法において、C4F6は、突然変異SOD1を発現するトランスジェニックマウスG93Aから採取した組織(実施例AおよびBに示したような脊髄および血液標本)でSOD1種を特異的に検出することができた。したがって、本発明に係る単クローン抗体、より具体的には、C4F6,D3H5,および、B1G9は、異常なSOD1、最も具体的には、突然変異SOD1と強く結合して、受動免疫に有効であると評価することができる。
【0039】
前述のおとり、本発明に係る抗体は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/又は予防するための組成物を製造するに用いられる。したがって、本発明はまた、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防するために供される組成物に関する。この組成物は、抗‐異常SOD1抗体、および、医薬的に許容可能な担体を含む。本明細書に使用する場合、用語“医薬的に許容可能な担体”とは、宿主に副作用を起こすことなく宿主に投与され得る本発明に係る組成物を含有させるためのべジクル(vesicle)を意味する。適当な医薬的に許容可能な担体は当業者に良く知られているが、例えば、無菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース、又は、緩衝液などが挙げられる。担体(carrier)は賦形剤、安定剤(例えば、糖およびアミノ酸)、保存剤、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、粘度増強剤、色素などのような補助剤を含み得る。
【0040】
本発明に係る組成物に用いられる抗体は、好ましくは、異常なSOD1たんぱく質、より好ましくは、突然変異SOD1たんぱく質に結合する。本発明に係る組成物は、ヒトのような動物に投与された場合、該動物に、異常なSOD1たんぱく質、より好ましくは、突然変異SOD1たんぱく質に対する治療および/または予防効果を与える。本発明に係る好ましい具体例によれば、本発明に係る組成物に用いられる抗体は、後述の実施例2の記載内容にしたがって作製された多クローン抗体、または、後述の実施例1の記載内容にしたがって作製された単クローン抗体であり得る。最も好ましい具体例によれば、単クローン抗体はC4F6,D3H5,および、B1G9である。
【0041】
2.本発明に係る抗体および組成物の使用(用途)
別の具体例によれば、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療および/または予防に、1つ以上の抗‐異常SOD1抗体を使用することを提供する。更なる別の具体例によれば、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防するための組成物の製造において1つ以上の抗‐異常SOD1抗体を使用する方法を提供する。
【0042】
好ましい具体例によれば、1つ以上の抗‐異常SOD1抗体は多クローン抗体または単クローン抗体であり、より好ましくは、単クローン抗体である。本発明に係る最も好ましい具体例において、抗体は、単クローン抗体であり、さらに好ましくは、C4F6,D3H5,および/または、B1G9である。
【0043】
本発明に係る組成物に存在する抗‐SOD抗体の量は治療的に有効な量(therapeutically effective amount)であるのが好ましい。本発明に係る組成物に存在する抗‐SOD抗体の治療的に有効な量は、その組成物を投与した宿主に著しく否定的な効果を引き起こすこことなく、その生物学的な機能を発揮するに必要とされる量を意味する。使用又は投与されるべき本発明に係る組成物に存在する抗‐SOD1抗体の正確な量は、治療すべき病態、治療すべき動物の年齢およびサイズ、投与形態のようなファクタ、並びに、組成物に存在する他の成分などによって異なってくる。本発明に係る組成物は液体溶液又は懸濁液の形態で;錠剤又はカプセルのような経口投与形態で;散剤、点鼻液、または、エアロソールのような鼻腔内投与形態で製造され得る。
【0044】
本発明に係る抗体又は組成物は、ヒトのような動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療又は予防に使用され得る。
【0045】
本明細書に使用する場合、用語“予防する”、および、“予防用”とは、SOD1異常と関連した疾患を阻害又は遅延させるプロセスを意味する。
【0046】
本明細書に使用する場合、用語“治療する”、および、“治療用”とは、所定の薬理学的および/または生理学的な効果が得られることを意味する。このような効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防するという観点から予防的なものであってもよく、および/または、疾患および/または、前記疾患に起因した副作用に対する完全な又は部分的な治療という観点から治療的なものであっても良い。したがって、次のようなものを含めて動物における疾患に対する任意の治療に及ぶ:
(a)疾患にかかっていると診断されたものではないがその疾患にかかりやすい被験者に前記疾患が発病しないように予防すること;
(b)前記疾患を阻害すること(即ち、前記病気の発病を抑制すること);および
(c)前記疾患の症状を和らげること(即ち、前記病気の退行を促すこと)
【0047】
ここで、用語“治療”とは、本発明において、SOD1異常と関連した疾患の症状が減少され、または、完全に除去されることを意味する。
【0048】
治療が必要とされる個体には、既に前記疾患を患っている個体や、前記疾患にかかりやすい個体、または、前記疾患の予防が必要とされる個体が含まれる。
【0049】
更なる別の具体例によれば、本発明は、動物においてSOD1異常と関連した疾患の診断のために1つ以上の抗‐異常SOD1抗体を使用することや、動物におけるSOD1異常と関連した疾患の診断のために供される組成物の製造において1つ以上の抗−異常SOD1抗体を使用することを提供する。好ましい具体例において、前記診断のために用いられる抗体は、単クローン抗体であり、より好ましくは、C4F6,D3H5,および及び/または、B1G9である。
【0050】
3.本発明のキット
更なる別の具体例によれば、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患診断用キットを提供する。
【0051】
本発明に係るキットには、診断テストを遂行するに必要とされる1つ以上の様々な構成要素をそれぞれ含んでいるパッケージを含む。前記構成要素は、化合物、試薬、容器、および/又は、装置であってよい。一般的に、薬剤は濃縮された形態である。例えば、キット内部の容器は異常なSOD1に特異的に結合する単クローン抗体を含有し得る。本発明に係るキットは、生物標本(又はその他の種の標本)における異常なSOD1たんぱく質を検出および/または定量するに有用であると解される。1つ以上の別の容器は、テスト(検定法ともいう)に用いられるべき構成要素、例えば、試薬又は緩衝液を含んでも良い。そのようなキットはまた、抗体結合を直接又は間接的に検出することができるレポーター(reporter)グループを含む前述の検出試薬を含んでも良い。
【0052】
前述のとおり、抗‐異常SOD1抗体は単クローン抗体であるのが好ましい。より好ましくは、抗‐異常SOD1抗体はB1G9およびC4F6またはD3H5である。本発明の単クローン抗体は本発明に係るキットにコントロールとして用いられ得る。
【0053】
更なる別の具体例において、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患治療又は予防用のキットを提供する。
【0054】
抗‐異常SOD1抗体は、ヒトのような動物に投与された場合、異常なスーパーオキサイドジムターゼ1(SOD1)に特異的に結合して、異常なSOD1の病理効果を中和することのできる抗体と解される。本発明の好ましい具体例において、治療又は予防用キットの抗体は単クローン抗体である。最も好ましくは、抗体はS4F6,D3H5,および、B1G9である。
【0055】
4.治療方法
更なる具体例において、本発明は、ヒトのような動物におけるSOD1異常と関連した疾患の予防および/または治療方法を提供する。この方法は、治療的に有効な量の組成物を投与するステップを含む。
【0056】
本発明に係る組成物は様々な投与経路を通じて動物に投与され得る。たとえば、前記組成物は無菌注射剤(sterile injectable preparation)、例えば、無菌注射用水溶液又は無菌注射用油性懸濁液の形態で投与され得る。これらの懸濁液は適当な分散剤又は湿潤剤、および懸濁化剤を用いて当業者に知られている技法で製造され得る。無菌注射剤は非毒性経口用賦形剤無菌注射用眼窩内に(intraorbital)、眼内に、脳室内に、筋肉内に、脊髄内に、腹腔内に、鼻腔内に、エアロゾールで、注入などにより投与可能である。適当な容量は、組成物における各々構成成分の量、所期の効果(長期又は短期)、投与経路、治療すべき動物の体重および年齢のようなファクタなどに基づいて異なってくる。当業者に良く知られているその他の方法も本発明の組成物を投与するために用いられる。
【0057】
本発明は、次の実施例に基づいてよりわかりやすく説明される。これらの実施例は、本発明の適用範囲を例示したものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものと解されてはならない。本発明の範囲および本質を逸脱しない範囲でこれらに対する変更または改質も可能である。本明細書に記載されたものに類似しまたは同等と評価できる方法および材料は本発明をテストするために用いられるが、好ましい方法および材料は以下に示したものである。
【実施例1】
【0058】
突然変異体SOD1に対する本発明の好ましい具体例に係る単クローン抗体の作製
G93A SOD1に対するマウスの単クローン抗体を作製した。ヒトSOD1突然変異体に対する単クローン抗体を作製するために、BALB/cマウスをrec G93Aたんぱく質(即ち、組み換えG93Aたんぱく質ともいう)を用いて免疫を与えた(即ち、免疫化した)。その後、脾細胞(splenocyte)由来のハイブリドーマを作製した。作製された6個のクローンのうち2個は、ELISA検定法を行なった結果、G93A SOD1に対する特異的な免疫反応性を示した。C4F6と名付けられた1個のクローンは、G93A,G37R、および、G85Rを含んだ突然変異SOD1に対して選択的な反応性を奏したが、WT SOD1に対しては反応性が悪かった。
【実施例2】
【0059】
抗‐hSOD1抗体の脳室内注入(intraventricular infusion)により行なわれる受動免疫
8匹の3ヶ月齢のメスC57Bl/6マウスに対して、組み換えヒトG93A SOD1たんぱく質で免疫化し、その血清を親和性精製(affinity purification)し、生理食塩水に対すて透析を行なった。浸透圧ミニポンプ(モデル2004、アルゼット社製)と接続された脳注入カニューレ(cannula)を通じて前記抗体を脳室(ventricle)へ注入した。前記浸透圧ミニポンプの速度は0.25μl/時間で、マウスに対する処理を28日間続けた。(1.8μg/1日)受動免疫の効果は体重、後肢反射から得た反射点数(reflex score from hindlimb reflex)、および、寿命によって評価した。突然変異SOD1に対するマウス抗血清を得るために、8匹の3ヶ月齢のメスC57Bl/6マウスを組み換えヒトG93A SOD1たんぱく質で免疫化し、その血清を親和性精製し、そして、生理食塩水に対すて透析を行なった。3回目の免疫化が終わってから2週後、全血を採取し、室温で、12,000gで10分間遠心分離を行なって、血清を得た。この血清を、組み換えG93A SOD1たんぱく質と予め結合させたアフィニティカラム(アミノーリンクキット、ピアース、ロックフォード、IL)を用いて親和性精製を行なった。抗体を0.3mg/mlの濃度で生理食塩水に対して透析して、使用するまでに−80℃に保管した。抗血清の特異性および滴定(titration)がウエスタンブロット法により測定した。コントロールに対して、本発明者は、非処理のC57Bl/6マウスから得たマウス免疫グロブリン又は生理食塩水を注入した。浸透圧ミニポンプ(モデル2004、アルゼット社製)を200μlの精製した抗体、又は、コントロールとしての生理食塩水で満たして、長さ2.5cmの塩化ポリビニルカテーテルを用いて脳注入用カニューラ(30ゲージ、高さ3.0mm、CA,パルロアルトに所在するアルゼット社製)につないだ。85日齢のトランスジェニックマウスG93A SOD1をキシラジン‐ケタミン(10mg/ml)で麻酔した。無菌脳注入用カニューラを右側の脳室の定位に移植した。移植後、注入用カニューラを歯科用セメントで固定した。浸透圧ミニポンプを皮膚の下に移植した。ポンプの注入速度は0.25μl/時間で、マウスに対する処理を28日間続けた。(1.8μg/日)脳室内に注入された抗体が腰部の脊髄内に浸透したことを証明するために、浸透圧ミニポンプで注入する前に、市販のラビット多クローン性抗ヒトSOD1抗体(ストレスゲン社製)またはラビットコントロール免疫グロブリン(DAKO)にフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(ピアース社製)と共役させた。ポンプを導入してから16日後、免疫蛍光検定法およびウエスタンブロット法を行なうためにマウスを犠牲にして、ポンプ内に残存していた抗体の活性を検定・測定した。
【0060】
ロッタロッドテスト(Rotarod test)がポンプ損傷をもたらす卒倒(fall-down)の危険性を示していたため、臨床効果を評価するために体重および後肢反射の測定結果を用いた。マウスの尻尾を引っ張ったときの拡張性および後肢の反射を評価した。点数3は正常な後肢反射と完全な拡張を示す。点数2は正常な後肢反射と中等度の拡張を示す。点数1は貧弱した後肢反射と拡張性を示すが、点数0は後肢の動きがないことを示す。前記採点は、動物の試験者がその処理について何ら情報も得られない盲検試験により行なわれた。
【実施例3】
【0061】
ALSのマウスモデルにおける突然変異スーパーオキサイドジスムターゼで免疫化した場合の治療効果
ALSと関連したスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD1)突然変異体、および、細胞外の突然変異SOD1の神経毒性に対する従来の分泌経路の存在に関する有力な証拠がある。これにより、本発明者は、ALSのマウスモデルにおける神経組織で細胞外SOD1突然変異体の心配を減らすために、免疫源として細菌を精製した組み換えSOD1突然変異たんぱく質を用いて、免疫化プロトコールを検定するに至った。アジュバント−SOD1突然変異体を反復して注射し、6ヶ月齢において症状が現れる前に最後に追加免疫を実施したhSOD1G37Rマウスのワクチン接種は,疾患の発病を遅延させ、4週以上寿命を延ばせるに有効であった。精髄標本に対する顕微鏡検査の結果、生理食塩水‐アジュバントを注射したものに比べて、免疫化したhSOD1G37Rマウスにおいてより高いレベルの小グリア活性化が見られ、そして、疾患の末期において運動ニューロンの生存率が高かった。さらに、浸透圧ミニポンプを用いて行なった、精製した抗‐hSOD1抗体の脳室内注入を通じて行なわれた受動免疫により、疾患の症状を和らげ、そして、hSOD1G93Aマウスの寿命を延ばすことができた。このような免疫化は、SOD1突然変異化により誘発された家族性ALSの症例に対する治療にも適用可能なアプローチであると判断された。
【0062】
方法
トランスジェニックマウス
マウスの内因性SOD1に比べてヒトSOD1たんぱく質を5倍までに過剰発現するG37R突然変異SOD1(株29)を保有するトランスジェニックマウスを、ディ・クリブランド博士(サンディエゴ、カリフォルニア大学)からもらった。突然変異G38A SOD1を保有したトランスジェニックマウス(B6SJL−TgN[SOD1−G93A]dl Gur)はジャックソン研究所から購入した。マウスはC57Bl/6バックグラウンドマウスにおいてヘテロ接合性(heterozygous)を維持していた。
【0063】
免疫化プロトコールおよびマウスの分析
前述の通り、ヒトG93A SOD1組み換えたんぱく質を作製し、それを細菌から精製した。(Urushitani, et al., 2004 J. Neurochem, 90, 231-233)この研究は、G37R SOD1マウス(ワクチン接種したマウスおよびコントロールマウスに対してそれぞれN=8および7)、または、G93A SOD1マウス(ワクチン接種したマウスおよびコントロールマウスに対してそれぞれN=12および8)の同腹子(littermate)を用いて遂行した。G37R SOD1マウスを処理するために、8匹のG37R SOD1 トランスジェニックマウス(メス=5、オス=3)を組み換えG93A SOD1でワクチン接種した。一方で、7匹のG37R SOD1マウス(メス=4、オス=3)には生理食塩水‐アジュバントを注射した。4匹の非トランスジィニック同腹子を組み換えG93A SOD1たんぱく質で処理して副反応および血清適定を評価した。2ヶ月齢で免疫化を始め、3週ごとに2回注射し、6ヶ月齢になったら最後の追加免疫を実施した。12匹のG93A SOD1マウスを組み換えG93Aでワクチン接種し、そして、8匹のG93A SOD1マウスには生理食塩水‐アジュバントを注射した。Ribiアジュバント(シグマ社製)を用いて免疫化を実施した。1つのバイアルは、組み換えG93A SOD1たんぱく質を含むか、あるいは、含んでない2mlの無菌生理食塩水から再構成された。強力なボルテックスにより乳化した後、200μlのアジュバント‐抗体の溶液(2箇所に対してたんぱく質50μg)を皮下注射した。終末点は、マウスが側臥位(lateral position)から30秒以内にもとに戻れないときの時間として定義した。生存データはカプラン・マイヤースパン(span)テストおよびログ‐ランク(log-rank)テストにしたがって分析した。平均発病又は生存の統計的有意性はステューデントテストによって検定した。
【0064】
ELISA検定法
脊髄組織または抗血清のヒトSOD1に対する抗体の力価(titer)はELISAにより測定した。96ウェルプレートを1μg/mlの組み換えSOD1たんぱく質(WT,G85R、または、G93A)で被覆した。室温にて(PBS中の)BSAの5%溶液中で2時間遮断させ、1%BSAを含むTBS中で連続的に希釈させたマウス血清を前記各々のウェルに加え、前記プレートを室温で1時間インキュベートした。基材とし2,2'-アジノ−ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)、および、ペルオキシダーゼと共役した抗‐マウス免疫グロブリンを用いて検出を行なった。ELISA読み取り装置(カリフォルニア州、サニバルに所在するモレキュウラーディバイス社製)を用いて405nm波長で吸光度値を読み取った。
【0065】
ウエスタンブロット法
ウエスタンブロット検定を行なうために無傷の脊髄溶解物(lysate)を用意して、ワクチン接種したマウスの血清を滴定し、または、ワクチン接種後におけるG37R SOD1の量を測定した。G37R SOD1 トランスジェニックマウスおよび非トランスジェニック同腹子から得られた完全な組織の溶解物は、50mMのTris−HCl(pH7.4)、150mMのNaCl,10%グリセロール、1%トリトンX100を含む、5倍体積のTNG−T緩衝液中で均質化によって製造した。テフロン(登録商標)(Teflon)均質化装置で20ストロック(stroke)を行った後、組織懸濁液を4℃にて1000xgで10分間遠心分離し、得られた上清を、2−メルカプトエタノールおよびSDSを含むサンプリング緩衝液(sampling buffer)中で加熱しながら変性させた。
【0066】
ワクチン接種したマウスから得た抗血清を滴定するために、ワクチン接種したマウス、又は、生理食塩水を注射したコントロールマウスから得た抗血清の1000倍希釈液、25mgの溶解物を用いて、ウエスタンブロット検定法を行なった。コントロールとして、市販の抗‐ヒトSOD1(SOD−100、ストレスゲン社製)、および、抗−アクチン(actin)抗体(ケミコン社製)を用いて膜を再びブロットした。ワクチン接種したマウスから得た脊髄に含まれたG37R SOD1たんぱく質の量を分析するために、各々のマウスから得た2つの異なる量のたんぱく質(5および10μg/レーン)を、本発明者が作製した単クローンマウス抗‐SOD1抗体、抗‐アクチン抗体、または、SOD100抗体を用いて、ウエスタンブロット検定法により分析した。(実施例1を参照)化学蛍光法、および、ペルオキシダーぜと共役した免疫グロブリンを用いて、前記ブロットを検出した。ウエスタンバンド(Western band)をスキャンし、ソフトウェアシオンイメージ(マリーランド州、フレデリックに所在するシオン社製)を用いる密度測定法により分析した。
【0067】
組織化学的分析
マウスに、4%パラフォルムアルデヒド(PFA)でかん流させ、固定させ、そして、凍結防止剤中にインキュベートした。次のような標準プロトコールに基づいて組織化学的分析を実施した。25μmの脊髄分画(section)を一次抗体(抗‐Mac2抗体に対して1:800)で4℃にて一晩インキュベートした。免疫蛍光検定実験において、前記分画を、蛍光染料(アレクサ488、モレキュラープローブ社製)と共役した二次抗体で室温にて1時間インキュべーとした。脊髄組織における内因性免疫グロブリンGを検出するために、アレクサ594と共役した抗‐マウスIgGを、アレクサ488と共役した別の二次抗体と共にインキュベートした。この分画を、PMT,得る(Gain)、オフセット(offset)、C.A.、および、HeNe−Gを含めて、同一のソフトウェア設定の条件下で共焦点レーザ顕微鏡(東京所在のオリンプス社製)を用いて観察した。ベックタステインABCキット(USAのカルフォルニア、ブルリンカームに所在するベクターラボラトリーズ社製)、および、3,3'−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB;シグマ社製)を用いてアビジン-ビオチン複合体(ABC)法(avidin-biotinimmunoperosidase complex method)により一次抗体を可視化した。脊髄分画における運動ニューロンの数を数えて、トルイジンブルー(ニッスル染色法)を用いて染色した各々のマウス(各々のグループに対してn=4)の5枚のスライスから平均を求めた。
【0068】
結果
免疫化はG37R SOD1マウスにおいて疾患の発病および死亡を遅延させる
本発明者は突然変異SOD1G37R(株42)を中等度(内因性SOD1のレベルの4倍まで)で過剰発現すると報告されたマウスモデルにおけるワクチン接種アプローチを検定した(24)。免疫化に用いられる抗体として、本発明者はE.coliから精製された、金属を含んでない(metal-free)組み換えヒトSOD1突然変異体(apo−G93A)を用いたが、それは、出願人の研究室に利用可能であったことや、そのミスフォールド特性(misfolded nature)に起因したものである。アジュバント中に含まれた50μgの組み換えSOD1突然変異たんぱく質、または、生理食塩水を用いたSOD1G37Rマウスの免疫化を2ヶ月齢でスタートした後、3週ごとに2回の皮下注射を行なった。抗原‐アジュバント、または、生理食塩水‐アジュバントの最後の注射は6ヶ月齢で行なわれた。(図1a)
【0069】
SOD1G37Rマウスの運動性(motor performance)はロッタロッドテストによって評価された。図1Bに示したように、生理食塩水‐アジュバントを注射したALSマウスにおいて50週で運動性の急激な減少が見られたが、SOD1突然変異体でワクチン接種したALSマウスにおいては前記運動不全が最長3週間遅延された。(図1b)運動性の30%の損失として定義される疾患の発病は、生理食塩水‐アジュバントを注射したALSマウスにおいて平均50.2±0.4週(年齢)であるに対して、ワクチン接種したALSマウスにおいては平均53.1±0.2週(年齢)であった。(図1c、p=0.0011)ALSマウスの寿命に対するhSOD1免疫化の効果はまた、生理食塩水−アジュバントを注射したコントロールマウスの場合に平均56.12±0.74週であったのに対して、平均60.4±0.4週であり、その効果は驚くべきものであった。(図1d、p<0.0001)したがって、免疫化アプローチはALSマウスの寿命を最大4.3週までに延ばした。
【0070】
免疫化したALSマウスにおける運動ニューロンの損失および高度の小膠細胞症(microgliosis)における減衰
突然変異SOD1が神経保護効果を奏するか否かを調べるために、本発明者は、疾患の末期にあるG37R SOD1マウスの脊髄分画におけるニッスル染色された運動ニューロンの数を数えた。(図1e)生理食塩水−アジュバントで処理したALSマウスにおける残存する脊髄運動ニューロンの数は、非トランスジェニック同腹子における運動ニューロンの数の24.1±2.0パーセントに相当する。比較結果、突然変異SOD1でワクチン接種した末期のALSマウスの場合、より長く生存する運動ニューロンが見られ、残存した運動ニューロンの数は41.9±3.1パーセントに相当した。抗‐NeuN抗体を用いた免疫組織化学検定法を実施した結果、生理食塩水‐アジュバントで処理したコントロールに比べてワクチン接種したALSマウスの脊髄で、末期において、より多くの運動ニューロンが生存していることがわかった。(図1f)
【0071】
免疫化が高度な神経炎症反応を伴うかどうかを調べるために、脊髄分画を、Mac2(活性化された小グリアのマーカ)に対するラットの単クローン抗体を用いて免疫染色を行なった。顕微鏡観察結果、生理食塩水‐アジュバントを注射したALSマウスに比べてSOD1突然変異で免疫化したALSマウスにおいて高度の小グリア活性化が見られた。(図2a)アレクサ488と共役した抗−ラットIgG抗体が現れる前の抗−Mac2抗体の免疫蛍光信号は、生理食塩水−アジュバントを注射したマウスに比べてワクチン接種したALSマウスから得た脊髄標本においてより高く見られた。(図2b−e)本発明者はまた、赤色の蛍光(アレクサ594)と共役した抗‐マウスIgGを用いて、脊髄標本中の内因性免疫グロブリンG(IgG)の免疫蛍光信号を検査した。内因性IgGに対する免疫検出信号のレベルはワクチン接種したマウスから得た標本においてより高かった。(図2b−e、中間)
【0072】
G37R SODマウスの寿命と抗体力価との相関性
ALSマウスの血清における抗体の力価を、疾患の末期を迎えた4ヶ月齢のALSマウスに対して、抗原として組み換えG93A SOD1を用いてELISAにより測定した。(表1)初期に免疫化したグループの場合該動物が6ヶ月齢で最後の抗原注射を受けたにもかかわらず、組み換えG93A SOD1に対する抗体の力価は、疾患の末期にいたるまでに、ワクチン接種したマウスのほうが常に高かった。(図3a,表1)G93A突然変異SOD1に対してより低い力価を有する抗体は、組み換えG93Aを注射した非トランスジェニック同腹子マウスで観察された。(図3a、表1)さらに、図3bの散布図によれば、ALSマウスの寿命と4ヶ月齢の血清における抗体の力価との直接的な関連性が見られた。(スピアマンの順位相関係数)これは、SOD1突然変異体に対する抗体の治療効果と合致するものであった。
【0073】
免疫ブロット法は実施して、組み換えG93A SOD1たんぱく質突然変異体で免疫したマウスから得た抗血清がG37R SOD1突然変異たんぱく質を認識することができるかどうかを調べた。生理食塩水‐アジュバントを注射したマウスとは違って、免疫化したマウスは、ALSマウスの脊髄標本から得たG37R SOD1たんぱく質に対する免疫ブロット(immunoblot)上に強い信号(signal)を産出する抗血清を産生することができた。(図3c)さらに、本発明者は、組み換えG93Aでワクチン接種したALマウスから得た抗血清が、WT SOD1よりもG85R SOD1に対してより高い反応性を示すことを発見した。(図3d、表2)逆に、組み換えWT SOD1たんぱく質(rec WT)でワクチン接種したG37R SOD1マウスから得た抗血清はSOD1の突然変異型に対して低い力価を示した。(図3d、表2)これらのデータは、SOD1の突然変異型により産生された抗体がSOD1のミスフォルドした形態を優先的に認識するということを示している。
【0074】
抗‐SOD1抗体の存在に対して、ワクチン接種したマウスの脊髄溶解物を分析した。
組み換えG93A−アジュバントまたは生理食塩水‐アジュバントで免疫化したG37R SOD1を、その抗体力価が最も高い7週齢で犠牲にして、その後、脊髄溶解物をサイトゾル、重細胞膜、および軽細胞膜の分画にそれぞれ分けた。そのELISA分析結果、組み換えG93A−アジュバントでワクチン接種したマウスから得た脊髄の、1%トリトンX100に可溶性の細胞膜分画において、および、界面活性剤(detergent)を含まない緩衝液に可溶性の細胞膜分画において、組み換え‐G93A SOD1に対する抗体の力価が上昇したことがわかった。
【0075】
ワクチン接種したマウスの脊髄におけるSOD1種のクリアランスの証拠
G37R SOD1種のクリアランス(clearance)における免疫化の効果を検査するために、本発明者らにより作製された突然変異SOD1種に対して特異性を有する本発明における好ましい単クローン抗体(C4F6)、または、ラビットの多クローン抗‐ヒトSOD1抗体(SOD100)を用いるウエスタンブロット法を実施して、脊髄の全溶解物(total spinal cord lysate)を分析した。C4F6単クローン抗体は、組み換えG93Aたんぱく質でマウスを免疫化した後、前述の標準プロトコールに従って作製した。(実施例1参照)この多クローン抗体は、G93A SOD1を認識するが、G37A SOD1およびG85Rを含むその他の突然変異SOD1をより低いレベルで認識する。(図4a,b)しかしながら、C4F6はWT SOD1に対して非常に弱い反応性を示す。(図4a)C4F6単クローン抗体を用いて脊髄溶解物に対してウエスタンブロット検定法を実施した結果、アジュバント‐生理食塩水のコントロールマウスに比べて、ワクチン接種したマウスにおいてより低量の突然変異SOD1種が見られた。(図4c、d)他方で、多クローン性の抗‐ヒトSOD1(SOD100)抗体を用いた場合、ワクチン接種したグループとコントロールグルップとの間に、SOD1のレベルにおける差は見られなかった。(図4c)これらの結果は、免疫化が、突然変異SOD1のサブセット(推定するには、C4F6単クローンで検出可能なミスフォールドした種)の含量(burden)を減少させることで、G37Rマウスの疾患を改善するということを示唆する。
【0076】
突然変異SOD1を過度な(extreme)レベルで発現するALSマウスにおけるワクチン接種の限定された効果
前述の結果は、ALSの発病が遅延されるモデル、即ち、突然変異SOD1を5倍までに中等度で過剰発現するG37R SOD1マウス株を利用した能動免疫の有利な効果を示している。突然変異SOD1 mRNAを40倍までに過剰発現し、たんぱく質を17倍までに過剰発現する、広く使われているG93A SOD1マウス(B6SJL−TgN[SOD1−G93A1]1Gur)でワクチン接種した場合の効果についてもテストを行なった。その結果、これらのマウスにおいて、早くも90日でALSの症状が現れ、その後、疾患が進んで、130日で死亡に至った。
【0077】
抗原として組み換えG93A SOD1を用いて前述のプロトコールに従い能動免疫を実施した。しかしながら、このワクチン接種というアプローチによっては、G93A SOD1マウスにおける疾患の臨床的な発病およびその寿命を有意に変化させることができなかった。(図5a,b)ALSマウスモデルにおけるワクチン接種というアプローチの失敗に対して最も妥当と考えられる原因は、血液脳関門を通った抗‐SOD1抗体の量が、神経組織における突然変異SOD1たんぱく質の前記極端的なレベルを中和するに不十分であるとのことである。
【0078】
その代案として、浸透圧ミニポンプ(アルゼットポンプ、デュレット)を用いて抗体を直接脳室内に注入そて、G93A SOD1マウスにおける受動免疫化法についてテストした。受動免疫用の抗血清は、前述の通り、組み換えヒトSOD1突然変異体でワクチン接種したC57Bl/6マウスから得た。生理食塩水に対する親和性精製および透析を行ない(図5c)、その後、抗体の溶液またはコントロール生理食塩水を、発症前の(presymptomatic)G93A SOD1マウス(83日齢、抗‐SOD1抗体に対してN=5、および、コントロールに対してN=5)の脳室内の空間へ注入した。疾患の進行状況は、体重の一時的なプロファイルおよび後肢の反射により監視した。(方法の欄を参照)腰部の脊髄内への抗体の近接(approach)および貫通(penetrance)を立証するために、本発明者は先ず、FITCと共役したラビット多クローン性抗‐ヒトSOD1抗体の脳室内への注入を行なった。ポンプを設置してから16日が経った後、免疫組織検査により脊髄を検査するためにマウスを犠牲にした。免疫蛍光法を実施した結果、FITCで標識した抗‐ヒトSOD1抗体は、小嚢状の分布(vesicular distribution)を有しながら、主に脊髄のニューロンで検出されたが(図6a、矢の根)、時折活性小グリアで検出された。(図6a、矢印)これはコントロールIgG−FITC注入においてはそれほどはっきりしていなかった。(図6a,右側)ミニポンプに残存した抗体を集めて、ウエスタンブロット法で分析した。この結果、ミニポンプを皮下に移植してから16日後にも抗体は活性を維持していることがわかった。(図6b)この受動免疫法は体重の減少および後肢反射の損傷の両方を有意に遅らせた。(図5d、e.P<0.05,2ウェイANOVA)さらに、免疫化したマウスの平均(median)寿命は143日であったのに対して、コントロールマウスの場合135日であった。(P=0.0256,カプランーメイヤー寿命スパンテストおよびログ‐ランクテスト)ワクチン接種したマウスの平均寿命は141±1.4日であったのに対して、コントロールマウスの場合135±1.5日であった。(平均値±標準偏差、ステューデントt−検定によるP<0.05)したがって、1週間に至る有意な寿命の延長が見られた。
【実施例4】
【0079】
本発明の好ましい具体例に係るSOD1単クローン抗体の反応性
SOD1に対する単クローン抗体に関するELISA分析
ウェルプレートを1μg/mlの組み換えSOD1たんぱく質(WTまたはG93A)で被覆した。室温にて(PBS中の)BSAの5%溶液中で2時間遮断させた後、1%BSAを含むTBS中に連続的に希釈したマウス血清(1/2、1/10、1/20、および、1/40)を前記各々のウェルに加え、前記プレートを室温で1時間インキュベートした。基材として2,2'-アジノ−ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸) ジアンモニウム塩(ABTS)、および、ペルオキシダーゼと共役した抗‐マウス免疫グロブリンを用いて検出を行なった。450nmの波長で吸光度値を読み取った。
【0080】
図6および表3から明らかなように、単クローン抗体のクローンB1G9およびC4F6は突然変異体SOD1に対して特異的な反応性を示したが、その一方、その他のクローンは正常なSOD1または突然変異SOD1のいずれかに対して反応性を示した。クローンD3H5は正常なSOD1種および突然変異SOD1種に対して高度の親和性を有する。
【実施例5】
【0081】
本発明の好ましい単クローン抗体による、マウスの脊髄標本における突然変異SOD1種の特異的な免疫組織化学検出法
ヒトWT SOD1(J2429)または突然変異SOD1(G93AまたはG37R)を発現する正常なマウスまたはトランスジェニックマウスに、4%パラフォルムアルデヒド(PFA)でかん流させ、固定させ、そして、凍結防止剤中にインキュベートした。発症前の突然変異体SOD1トランスジェニックマウス(G37RおよびG93A)またはンヒトWTトランスジェニックマウスから得た25μmの脊髄分画を、マウス単クローン抗体‐ヒトSOD1抗体(C4F6クローン)を用いて染色した。前記脊髄分画を一次抗体(C4F6抗体に対して1:500)で4℃にて一晩インキュベートし、その後、ビオチン化抗‐IgG抗体でインキュベートした。ベックタステインABCキット(USAのカルフォルニア、ブルリンカームに所在するベクターラボラトリーズ社製)、および、3,3'−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB;シグマ社製)を用いてアビジン-ビオチン複合体(ABC)法により一次抗体を可視化した。
【0082】
標本において、ヒトWT SOD1(J2429)を発現するマウスからではなく、突然変異SOD種を発現するトランスジェニックマウスからの標本において免疫染色を検出した。
【実施例6】
【0083】
突然変異型SOD1に対する本発明の好ましい単クローン抗体(C4F6)の特異性
図16を参照すると、SOD1突然変異体でワクチン接種した場合、C4F6抗体に反応する突然変異SOD1種のCNS量を減らすことで保護作用を奏することがわかる。
【0084】
図16aはウエスタンブロット分析の結果を示しているが、ここで、C4F6マウスの単クローン抗体は突然変異型SOD1(G37RおよびG93A)を認識するが、トランスジェニックマウスの脊髄抽出物から得たWT SOD1を認識しない。図16bはELISA分析の結果を示しているが、ここで、C4F6単クローン抗体はG85R金属化(metallated)SOD1たんぱく質を検出するが、WT金属化SOD1組み変えたんぱく質を検出しない。さらに、最後の図16cは、脊髄抽出物のウエスタンブロット分析結果、C4F6抗体により検出された突然変異体SOD1種の量は、アジュバント−生理食塩水コントロールマウスに比べて、ワクチン接種したマウスのほうがもっと少ないことがわかった。各々のマウスから5ないし10mgのたんぱく質を各々のウェルに負荷し、ウエスタンブロット法を行なった。ワクチン接種したマウス、および、生理食塩水を注入したマウスの両方から選んだ3匹のマウスに対する分析を行なった。
【実施例7】
【0085】
本発明の好ましい単クローン抗体を用いる血液標本のウエスタンブロットによる突然変異SOD1のスクリーニング
突然変異SOD1 G93Aを発現するトランスジェニックマウス、ヒトWT SOD1を発現するトランスジェニックマウス、または、正常なマウスから得た血液標本(100μL)を1000xgで4℃にて15分間遠心分離した。そのペレットを10mM Tris−HCl(pH7.4)中で、アイス上に1時間インキュベートした。標本を20,000xgで4℃にて20分間遠心分離し、上清を集め、SOD−試料標本緩衝液中に5分間加熱した。この標本をSDS−PAGE上で分画化し、標準プロトコールにしたがってブロットした。バンドを検出するために、ブロットを、ペルオキシダーぜと共役したIgGで処理して、化学発光法による分析を実施した。
【0086】
図17において、上部のパネルは、正常なマウス(1〜5)、突然変異体SOD1 G93Aを発現するマウス(レーン6〜10)、および、ヒトWT SOD1を発現するマウス(レーン11〜14)から得たC4F6単クローン抗体を用いて血液標本の免疫ブロット法を実施した結果を示している。また、下部のパネルは、正常なマウス(1〜5)、突然変異SOD1 G93Aを発現するマウス(レーン6〜10)、および、ヒトWT SOD1を発現するマウス(レーン11〜14)から得たラビット多クローン抗−ヒトSOD1(BC,ヴィクトリアに所在するストレスゲン社製)を用いて血液標本の免疫ブロット法を実施した結果を示している。
【0087】
図17には、単クローン抗体C4F6が、ヒトSOD1遺伝子を発現するトランスジェニックマウスから得た血液標本で、正常なWT SOD1種を除いて、突然変異SOD1(G93A)を検出することが示されている。この結果より、この抗体が、簡単な血液テストを通じて突然変異SOD1種の診断スクリーンに用いられることがわかった。
【実施例8】
【0088】
本発明に係る好ましい単クローン抗体(D3H5)による、マウスの脊髄標本中のWTまたは突然変異SOD1種の免疫組織化学的検出法
正常なマウス、ヒトWT SOD1を発現するトランスジェニックマウス(J2429)、または、突然変異SOD1を発現するトランスジェニックマウス(G93AまたはG37R)を、4%パラフォルムアルデヒド(PFA)でかん流させ、固定させ、そして、凍結防止剤中にインキュベートした。発症前の突然変異SOD1トランスジェニックマウス(G37RおよびG93A)、または、ヒトWTトランスジェニックマウスから得た25μmの脊髄分画を、本発明において好ましいとされている単クローン性の抗−ヒトSOD1抗体(D3H5)を用いて染色した。前記脊髄分画を一次抗体(D3H5抗体に対して1:500)で4℃にて一晩インキュベートし、その後、ビオチン化抗‐IgG抗体でインキュベートした。ベックタステインABCキット(USAのカルフォルニア、ブルリンカームに所在するベクターラボラトリーズ社製)、および、3,3'−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB;シグマ社製)を用いてアビジン-ビオチン複合体(ABC)法により一次抗体を可視化した。(図18を参照)
【実施例9】
【0089】
野生型SOD1は酸化を通じてALSに関連した突然変異型の毒性および結合性を獲得した。
材料および方法
プラスミドおよび抗体
HAで標識したマウスのクロモグラニンB(pcDNA−3−CgB−HA)、または、FLAGで標識したヒトSOD1(pcDNA3−FLAG−SOD1)を保有する(carrying)哺乳動物の発現プラスミドを参考文献[Urushitani et al., 2006, Nature Neurosc, 9, 108-118]の記載内容に従って作製した。ラビット単クローン性抗−ヒトSOD1(SOD−100)、および、マウスの単クローン抗体Hsp/Hsc70をストレスゲン社から購入した。ラットの単クローン性抗‐HA(3F10),マウスの単クローン性の、リン酸化されていない神経フィラメントH(SM132),マウスの単クローン性抗‐アクチン(C4)抗体をそれぞれローシュ社(スイスのバゼルに所在する)、ステインベルガーモノクロナル社(MAのバルチモアーに所在する)、および、ケミコン社(CAのテメクラに所在する)から購入した。抗‐クロモグラニンB(26102)およびCOX−IV(A−6431)抗体はQEDバイオサイエンス社(CAのサンディエゴに所在する)、および、モレキュラープローブ社(ORのユージンに所在する)から購入した。マウスの単クローン性抗‐シンタクシン(syntaxin)−1(HPC1)およびAkt1(B−1)はサンタクルーズ社(CAのサンタクルーズに所在する)から購入した。マウス/ラットTGN−38に対するラビットの多クローン抗体は参考文献[Urushitani et al., 2006, Nature Neurosc, 9, 108-118]の記載内容に従って作製した。
【0090】
培養、トランスフェクション、および、薬物治療
マウスの神経芽腫細胞株であるNeuro2a細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するダルベッコの改質必須培地(DMEM)の中で維持させた。トランスフェクション(transfection)は、製造者のプロットコールにしたがってリポペックタミンPLUS(Caのカルスバドに所在するインヴィトロゲン社製)を用いて行なわれた。トランスフェクション後3時間が経過した時点で、前記培地を2mMジブチリルサイクリック‐AMP(db−cAMP)を含有する栄養培地に置き換えた。トランスフェクション後24時間が経過した時点で、更なる分析を行なうために、細胞を1.5mM過酸化水素(H2O2)または無菌水(コントロール)に45分間露出させた。マウスの小グリア細胞株BV2の細胞を10%FBS含有DMEM/F12ハム培地(DF)中で維持させた。最初のプレーティングを除き、培養培地は抗生物質を含んでいなかった。
【0091】
免疫ブロットおよび免疫沈降
前記培養された細胞をPBSで2回洗浄し、そして、50mM Tris−HCl(pH7.4),10%グリセロール、1%トリトンX−100、および、プロテアーゼ阻害剤カクテルからなるTNG−T緩衝液(ドイツのマンハイムに所在するローシュ社製)中で採取した。アイス上に1時間インキュベートしてから、細胞懸濁液を遠心分離して(15000rpmで20分間)、上清を集めた。細胞を過酸化水素で処理した場合に得られる効果を評価するために、細胞溶解物を抗‐FLAG親和性ゲル(MOのセイントルイスに所在するシグマ社製のM2)を用いて4℃で1時間インキュベートした。免疫沈降物を、4%SDS試料標本緩衝液中で溶離させ、SOS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、そして、二フッ化ポリ二塩化ビニリデン(PVDF)膜(MAのボストンに所在するパーキンエルマー社製)に転写した。ウエスタン電光化学発光試薬(パーキンエルマー社製)を用いてウエスタンブロット映像を得た。
【0092】
インビボユビキチン化
ポリ‐ユビキチン鎖によるヒトSOD1の改質はインビボユビキチン化実験により行なわれた。参考文献(Urshitani et al., 2002, J. Neurochem 83, 1030-1042)Neur2a細胞に対し、FLAGで標識したhSOD1(WTまたはG93A突然変異体)およびHAで標識したユビキチンで共トランスフェクション(cotransfection)を行なった。過酸化水素に露出させてから、前述したプロトコールに従い、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するTNG−T緩衝液中で細胞を採取した。この溶解物を抗−FLAG親和性ゲル(シグマ社製のM2)を用いて免疫沈降を行い、そして、免疫ビードからの溶出物(elute)を、抗−HA(ローシュ社製)および抗−ヒトSOD1(ストレスゲン社製)抗体を用いてウエスタンブロット法により分析した。
【0093】
組み換えたんぱく質の精製
組み換えグルタチオンS−トランスフェラーぜと融合したhSOD1(GST−hSOD1)を、参考文献[Urushitani et al., 2002, J. Neurochem 83, 1030-104]の記載内容に従って作製した。hSOD1の金属化(metallation)は20mMのZnCl2で一晩インキュベートし、20mMのCuCl2と3時間インキュべートとし、そして、PBSに対する透析を一晩行なうことによって行なわれた。さらに、組み換えholo−hSOD1の酸化は0.1mMの過酸化水素で室温にて1時間インキュベートした後、PBSに対して一晩透析を行なうことによって行われた。組み換えたんぱく質は使用するまでに―80℃の温度にて保管した。
【0094】
細胞内分画化(subcellular fractionation)
Nuero2a細胞に対し、6ウェル細胞プレートにてFLAGで標識したSOD1(WTおよびG93A)で一時的にトランスフェクションを行なった。トランスフェクション後24時間が経過した時点で、細胞をDMEM中の1.5mMの過酸化水素溶液で30分間処理した後、過酸化水素を除去した栄養培地内で30分間さらにインキュベートした。収穫した細胞を均一化緩衝液(250mMスクロース、10mMのTris−HCl(pH7.4),1mMのMgCl2、および、プロテアーゼ阻害剤カクテル)中で均一化し、1000gで15分間遠心分離を実施して、細胞破片を除去した。その上清を8000gで15分間さらに遠心分離して、ペレット(重分画)および上清を分離した。この上清は105,000gで60分間超遠心分離を行い、細胞質分画(上清)、および、軽い細胞膜の分画(ペレット)を得た。超音波処理して、1%Triton−X100を含有する均一化緩衝液中に前記各々のペレットを再び懸濁させた。ブラッドフォード検定法(CAのヘルクレスに所在するBioRad社製)でたんぱく質の濃度を測定した後、等量のたんぱく質をウエスタンブロット法により分析した。
【0095】
判定量RT−PCR
6ウェル培養プレートにおいて90%の密集度を示すマウスの小グリア細胞株であるBV2細胞を、PBS, LPS(10μg/ml)、WT SOD1(10μg/ml)、酸化型WT SOD1(10μg/ml),または、G93A SOD1(10μg/ml)で24時間処理した。全てのSOD1組み変えたんぱく質は予め金属化した。製造者の指示に従ってトリゾル試薬(インビトロゲン社製)を用いて、全細胞溶解物から全RNAを抽出した。逆転写酵素およびオリゴ−dTプライマー(インビトロゲン社製)を用いて、全RNAから第1のストランドcDNAを合成した。腫瘍壊死因子(TNF−α)、誘導可能な酸化窒素合成酵素(iNOS)、および、GAPDHの発現レベルをPCRにより評価した。この実験において用いられた1対のプライマーは、TNF−αに対しては5' TCAGTGAGACCACTGCAATG 3'(配列番号1)、および、5'GTGGAGTGAGACTTTGGATG 3'(配列番号2) であり;iNOSに対しては、5' CCTTGTGTCAGCCCTCAGA 3'(配列番号3)、および、5'CACTCTCTTGCGGACCATCTC 3' (配列番号4)であり;そして、GAPDHに対しては、5'GGCATTGTGGAAGGGCTCA 3'(配列番号5)、および、5'TCCACCACCCTGTTGCTGT 3'(配列番号6)であった。
【0096】
マウス胚の脊髄の1次培養物
胚児マウスの脊髄から得た1次解離培養物を参考文献[Urushitani et al., 2002, J. Neurochem 83, 1030-104]に記載された方法にしたがって作製した。プレーチィングを行なってから12日経過後、培養物を組み換えたんぱく質(ヒトWT SOD1、ヒト酸化型WT SOD1、および、ヒトG93A SOD1)で24時間処理し、4%パラフォルムアルデヒド(PFA)の中で固定した。抗−リン酸化されいない神経フィラメントH(SM132;1:500)を用いる免疫組織化学検定法によって運動ニューロンの生存率を測定した。運動ニューロンは、単一の伸張型軸索を有するSMI32−免疫反応性(20Umを超える大きさの)ニューロンとして同定された。アレクサ488と共役した項−マウスIgGを二次抗体として用いた。培養物を蛍光顕微鏡下で観察し、3つの姉妹培養物から任意に選んだ領域からの4つの映像を得た。前記各々の領域から運動ニューロンの数を得て、そして、細胞の密度(細胞数/cm2)を計算した。
【0097】
結果
酸化ストレスによるWT SOD1のミスフォールド現状
SOD1が神経変性における酸化的なストレスの標的たんぱく質であるとの仮定を検証するために、本発明者は、細菌を精製した組み換えSOD1たんぱく質を1mM過酸化水素で37℃にて30分間処理し、その後、その移動パターンおよび溶解度を分析した。過酸化水素で処理した組み換えSOD1の全分画に対してウエスタンブロット法を実施した結果、移動パターン、分画化、および、高分子凝集体の形成において著しい変化が見られた。(図10A,レーン2,4、および、6)さらに、過酸化水素で処理した後、組み換えたんぱく質に対して超遠心分離を行なった結果、そのような酸化に関連した種が上清ではなく、もっぱらペレット分画において検出された。(図10B)単量体および二量体のSOD1種だけが上清において検出された。WT SOD1が突然変異SOD1に比べてより酸化的ストレスに影響されにくいにもかかわらず、ウエスタンブロット分析から得られた分子における変化は突然変異と類似していることは明らかであった。インビトロにおけるこれらの実験結果により、酸化が突然変異SOD1だけでなくWT SOD1のミスフォールド現状、および、凝集体形成に影響を及ぼすということがわかった。本発明に基づいたこの結果は、WT SOD1の酸化が、光散乱分析法によりインビトロで行なわれた凝集体形成を促すという以前の報告と一致するものであった。さらに進んで、インビボでのWT SOD1の酸化を検証するために、N末端においてFLAGペプチドで標識したWTおよびG93A SOD1でNeuro2a細胞に対するトランスフェクションを行い、そのトランスフェクションが終わってから24時間が経過した時、1.5mM過酸化水素に45分間露出させた。その後、抗−FLAG親和性ゲルを用いて、トランスフェクトされた細胞の溶解物のプルダウン分析(pull-down assay)を行なった。その結果、Hsp/Hsc70は突然変異G93A、酸化型WT SOD1と共免疫沈降されたが、非酸化型WT SOD1とは共免疫沈降されなかった。(図11A)過酸化水素による酸化は、WT SOD1のミスフォールド現状を引き起こすと共に、Hsp/Hsc70との相互作用を保証するということがわかった。
【0098】
酸化型WT SOD1は多−ユビキチンと共役し得る
ALSと関連したSOD1突然変異たんぱく質のうち殆どのタイプは、ユビキチン−プロテアソーム経路により分解される。この概念に基づいて、本発明者は、酸化がWT SOD1たんぱく質を形質変換させ(transform)、多−ユビキチン化(ubiquitination)に適した種をミスフォールドするかどうかを調べるために、インビボユビキチン化実験を行なった。Neuro2a細胞に対し、HAで標識したユビキチンと共に、FLAGで標識したWTまたはG93A SOD1でトランスフェクションを行い、その後、採取する前に1.5mM過酸化水素に45分間露出させた。全細胞溶解物および抗−FLAG免疫沈降物に対するウエスタンブロット分析を行なった結果、過酸化水素で処理した細胞中のWT SOD1が、未処理細胞から得たWT SOD1とは違って多−ユビキチン鎖と共役していることがわかった。同様の現状はG93A突然変異SOD1においても観察された。(図11B)
【0099】
酸化型WT−SOD1はクロモグラニンBと相互作用する。
本発明者は、突然変異SOD1の結合パートナーとしてのクロモグラニンB(CgB)を予め同定した。クロモグラニンは突然変異SOD1種と相互作用して、その分泌を促すことがわかった。酸化型WT SOD1種がクロモグラニンと相互作用するかどうかを調べるためにNeuro2a細胞を、マウスのHAで標識したCgBと共に、FLAGで標識したWTまたはG93A SOD1を用いて、トランスフェクションを行った。トランスフェクション後24時間が経過した時点で、細胞を採取する前に、1.5mM過酸化水素に45分間露出させた。分画化されたNeuro2a細胞溶解物に対するウエスタンブロット検定を行った結果、WTおよび突然変異SOD1両方が、CgBが豊富に発現されるミクロソーム分画に分布されていることがわかった。(図12A)過酸化水素で処理することは、細胞内の分画におけるWTおよび突然変異SOD1のたんぱく質のレベルに影響を及ぼすことはなかった。全細胞溶解物を、抗−FLAG親和性ゲルで免疫沈降を行い、ウエスタンブロット法によって分析した。図12Bに示すように、CgBは、G93A SOD1または酸化型WT SOD1のいずれかと共免疫沈降されたが、完全なWT SOD1とは共免疫沈降することはなかった。この結果は、ER−Golgi区画(compartment)に分布されているWT SOD1の酸化がクロモグラニンに対する結合を誘発するということを意味する。
【0100】
酸化型WT SOD1は運動ニューロンの壊死および小グリア活性化を引き起こす
WTおよび突然変異SOD1種の両方が分泌される証拠がある。しかしながら、WT SOD1とは違って、分泌された突然変異SOD1はTNF−α、iNOS,および、COX2のような炎症反応を促進する分子を生じさせる。小グリアを活性化するに酸化型WT SOD1が突然変異SOD1と類似した作用をするかどうかを調べるために、マウスの小グリアのBV2細胞を、過酸化水素で処理したか又は処理していない、細菌精製した組み換えholo−SOD1に露出させた。半定量RT−PCR実験により、G93A SOD1または酸化型WT SOD1のいずれかにBV2細胞を露出させると、TNF−αおよびiNOSの発現が誘発されることがわかった。(図13)
【0101】
WT SOD1とは違って、細胞外の突然変異SOD1は、小グリアがない場合にも、培養された運動ニューロンの壊死を誘発することができる。ここで、胚児の脊髄培養物を、組み換えWT SOD1、酸化型WT SOD1、またはG93A SOD1(0.5および1.0μg/ml)に24時間露出させた。予想の通り、WT SOD1はこのような濃度範囲において毒性を示すことはなかった。しかしながら、酸化型WT SOD1は、G93A突然変異SOD1と同様、培養された運動ニューロンに対して容量依存的に毒性を示した。(図14)本発明者は、アメーバ様細胞の形態を特徴とする混合された培養物における小グリア活性化を観察した。(データは示さない)これらの結果は、酸化型WT SOD1が突然変異SOD1種の神経毒性を獲得したことを示している。
【0102】
考察
ここに示した結果から、本発明者は、WT SOD1が、ALSと関連した突然変異SOD1の毒性および結合特性の多くを、酸化を通じて獲得するという結論に至った。この結論は次の結果により裏付けられている。1)過酸化水素で処理した組み換えWT SOD1が突然変異SOD1種の凝集体に類似した凝集体を産出するということ;2)Hsp/Hsc70および多−ユビキチン化によって明らかになったように、酸化がWT SOD1のミスフォールド現状を引き起こすということ;3)酸化型WT SOD1が膜の分画に分布され、そして、トランスフェクトされた神経細胞における神経分泌たんぱく質であるCgBと相互作用するということ;4)細胞外の酸化型WT SOD1が小グリア活性化および培養された運動ニューロンの壊死を引き起こすということ。
【0103】
パーキンソン病、アルツハイマー病およびALSを含めて神経変性疾患の発病機序に酸化的ストレスが関与することについての証拠は数多くある。総たんぱく質の1%を構成する程度のSOD1の豊富さ、および、抗酸化剤としてその機能を考慮すると、SOD1は神経変性疾患における酸化的ストレスの標的であり得ると推定することができる。事実上、WT SOD1の酸化は既に確立されている現状である。過酸化水素はWT SOD1の活性部位と相互作用することができ、そして、ヒドロキシル基を生産することで酵素を活性化し得る。参考文献[Rakhit et al., 2004, J. Biol. Chem., 279. 15499-15504]によれば、WT SOD1は酸化しがちな4つのアミノ酸(His48,80,120、および、Phe20)を保有しており、これらの酸化はSOD1の凝集体形成を引き起こす。さらに、WT SOD1におけるシステイン残基の酸化はミスフォールド現状を引き起こし、また分子間ジスルフィド(disulfide)を介する凝集体形成を引き起こすことができる。
【0104】
本発明における結果は、酸化型WT SOD1が突然変異SOD1のような神経分泌たんぱく質CgBと相互作用するということを示している。環境(milieu)に分泌されてしまうと、細胞外の酸化型WT SOD1は小グリア細胞を活性化させ、そして、運動ニューロンの壊死を引き起こす(図14)。分泌された酸化型WT又は突然変異体SOD1に基づいた前記毒性モデルは、前記疾患が運動ニューロンと厳格に自立したものではないし、種々の細胞が運動ニューロン、介在ニューロン(interferone)、小グリア、および、星状膠細胞を含む疾患に寄与するという観点と競合する。また、突然変異SOD1を発現するキメラマウスの分析結果から明らかなように、損傷がどのようにして1つの細胞から別の細胞に広がることができるのかを説明する。
【0105】
ここに示された結果に照らして、他の神経変性疾患の発病機序におけるSOD1の役割ははやり除外することができない。最近の報告[Choi et al., 2005, J. Biol. Chem, 280, 11648-11655]によれば、アルツハイマー病およびパーキンソン病を患っている患者から得た脳の溶解物において酸化型SOD1が見られ、そして、老人斑レヴィー小体においても酸化型SOD1たんぱく質が存在する。
【0106】
以下に示す表1は、免疫化したマウスにおいて、G93A SOD1に対する抗体に対してELISA検定により血清滴定を行なった結果である。ワクチン接種したマウスから得た血清に対する抗体滴定はELISAにより行なわれた。表2は、WTおよび突然変異SOD1種で免疫化したマウスから得た抗血清の異なる反応性を示すELISAデータである。そして、表3は、ELISAにより測定された、組み換えヒトWT, G85R,またはG93A SOD1金属化たんぱく質に対する抗体の力価を示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1はワクチン接種したG37 SOD1マウスにおける寿命の延長、及び、遅延された発病を示す。図1aは、免疫化のスケジュールを示す。図1aは免疫化の初期。2ヶ月齢に始まり、マウスに4回注射した。末期(end-stage)の4ヶ月齢の時点で滴定分析のために血液を集めた。図1bは、初期の免疫化プロトコールにしたがってワクチン接種したマウスのロッタロッド分析結果を示す。ロッタロッド上の時間は、組み換え(rec)G93A−アジュバント(N=8)、または、生理食塩水−アジュバント(N=7)で注射したG37R SOD1マウスに対して決められた。ワクチン接種は運動性を有意に改善させた。(多重比較、P<0.0001)図1cは、組み換え(rec)G93A−アジュバント、または、生理食塩水−アジュバントで注射したG37R SOD1マウス発病の遅延に対する免疫化の効果を示す。(ログランク検定、P<0.0011)図1dは、免疫がG37R SOD1マウスの寿命を延長する。生存に関するカプランマイヤー曲線を示す。組み換えG93A−アジュバントに対してはN=8、そして、生理食塩水−アジュバントに対してはN=7。(ログランク検定、P<0001)図1eによれば、疾患の末期において、ワクチン接種したマウスの場合、残存する運動ニューロンの数が多かった。トルイジンブルーで該分画を染色した後、各グループごとに4匹のマウスから4つの分画における運動ニューロンの数を数えた。(スチューデント検定、*P<0.01)図1fは、NeuNに対する抗体を用いて、組み換えG93A SOD1たんぱく質(上部)または生理食塩水(下部)で免疫化した末期のG37R SOD1トランスジェニックマウスの脊髄に対する免疫組織化学検定法を実施した結果である。
【図2】図2aは、Mac2抗体を用いて免疫化したマウスから得た脊髄の免疫化学分析検定の結果を示す。組み換えG93A SOD1でワクチン接種したマウスの反応性小グリア細胞においてMac2染色が目立っている。(左側の2つのパネル)図2bは、ワクチン接種したALSマウスの脊髄においてIgGの染色および小膠細胞症が増加したことを示す。ワクチン接種し、または生理食塩水/アジュバントを注射したグループからのG37R SOD1トランスジェニックマウスの脊髄分画は、ラット単クローン性項−Mac2抗体で処理した後に、アレクサ488と共役した抗−ラットIgG(左カラム)と共にアレクサ294と共役した抗−マウスIgGと処理して、内因性IgGを検出する。(中間カラム)。各々の色素につき、固定された条件(fixed condition)下で写真を撮った。ワクチン接種したG37R SOD1マウスにおいてIgG信号が増加したことがわかる。スケールバー(scale bar)=50μm
【図3】抗体の力価がワクチン接種したマウスの寿命との関連性を示す。図3aは、ELISAを用いて、免疫化したマウスの血清の抗体を滴定した結果を示す。組み換えG93Aで処理したG37R SOD1マウスに対してN=7であり、生理食塩水を注射したマウスに対してはN=6である。4ヶ月齢の末期のマウスから得た血清をテストした。組み換えG93Aで処理した非−トランスジェニックマウスに対してはN=4(全て4ヶ月齢)であった。図3bは、免疫化したマウスにおける寿命と抗−ヒトSOD1力価との関連性を示すものである。4ヶ月齢における抗−ヒトSOD1の力価に対するELISA値および寿命(週)を散布図(scatter diagram)上にプロットした。組み換えヒトSOD1で処理したグループに対してN=7であり、生理食塩水を注射したグループに対してN=6である。P=0.0011(スピアマンのローテスト)図3cは、組み換えG93Aでワクチン接種したマウスから得た抗血清がヒトG38R SOD1突然変異体を検出するというウエスタンブロット検定結果を示す。各々のグループから選んだ2匹の異なるマウス、即ち、組み換えG93A SOD1でワクチン接種したグループから選んだマウス752および754、ならびに、生理食塩水−アジュバントを注射したグループから選んだマウス758および759から得た血清を、G37R SOD1マウスから得た脊髄溶解物と反応させ、非トランスジェニック同腹子を形成した(WT坑血清)。矢印の根(arrowhead)はG37R SOD1を示し、星印はマウスの内因性SOD1を示す。膜を、ヒトSOD1(WTαhSOD1)およびアクチン(WB α actin)に対する市販の抗体を用いて再びブロットした。図3dは、WTまたは突然変異SOD1たんぱく質に対して免疫化したマウスから得た抗血清の異なる反応性を示す。金属化した組み換えヒトWT,G85RまたはG93A SOD1金属化たんぱく質に対する抗体の力価はELISAにより測定される。組み換えG93A SOD1または組み換えWT SOD1でワクチン接種したG37R SOD1マウスで構成されたグループ、および、組み換えG93A SOD1でワクチン接種したトランスジェニックマウスで構成されたグループに対してそれぞれN=3であった。そのデータは各々のマウスのグループにおける組み換えWT SOD1に対する力価に比した力価の百分率として示した。(平均±標準偏差)*P<0.05(ボンフェロニ法を利用した2ウェイANOVAにより求めた)図3eは、ワクチン接種したマウスから得た脊髄溶解物の抗体滴定を行うためのELISA検定を示している。7ヶ月齢で組み換えG93A SOD1を注射したマウス(N=3)、または、生理食塩水−アジュバントを注射したマウス(N=3)から得た脊髄溶解物を細胞より小さく分画化して、界面活性剤を含まない緩衝液に溶解性の(溶解性)、および、不溶性の(膜)分画を得た。*P<0.05(1ウェイANOVAにより求めた)
【図4】本発明の好ましい単クローン抗体でワクチン接種したことによる、脊髄における突然変異SOD1種のクリアランス(clearance)を示す。図4aは、本発明の好ましい1つの単クローン抗体、いわゆるC4F6単クローン抗体が突然変異SOD1(G37RおよびG93A)を認識するが、トランスジェニックマウスの脊髄抽出物からのWT SOD1を特異的に認識しないことを示すウエスタンブロット検定結果である。図4bは、C4F6単クローン抗体が、G85R金属化SOD1たんぱく質を検出するが、WT金属化SOD1組み換えたんぱく質を検出しないことを示す。図4cは、脊髄抽出物に対するウエスタンブロット検定を実施した結果、アジュバント−生理食塩水コントロールマウスに比べて、ワクチン接種したマウスにおいてC4F6抗体により検出された突然変異SOD1種の量がより少ないことを示す。各マウスから得た5および10μgのたんぱく質を、ウエスタンブロット検定を実施するために各々のウェルに負荷した。ワクチン接種したマウスおよび生理食塩水−アジュバントを注射したマウスの両方から選んだ各3匹のマウスに対して分析を行なった。図4dは、図4cにおけるウエスタンブロットのデータに対し密度測定分析を行った結果である。コントロールグループの平均値を1つに標準化した。データは平均±標準偏差を意味する。(N=各グループから3匹)
【図5】極端なレベルの突然変異SOD1たんぱく質を有するG93Aマウスにおける能動または受動免疫化の効果を示す。図5a,bはカプランマイヤー曲線により示したように、G93AGur SOD1マウスの疾患の発病(a)、および、生存の蓋然性(b)に対して能動免疫化の限られた効果を示す。マウスに対して、G37R SOD1マウスに用いられたプロトコールと同様のプロトコールにしたがってワクチン接種を行なった。組み換えG93Aで処理したマウスに対してN=12であり、生理食塩水−アジュバントで処理したマウスに対してN=8であった。データはログ−ランク検定法によって分析された。 図5c〜5eには、G93A SOD1マウスにおける受動免疫化の有意な効果が示されている。マウスに対して、85日齢で始まり、坑−SOD1抗体(N=5)、または、コントロール生理食塩水(N=5)の脳室内注入を行った。図5cにおいて、ウエスタンブロット検定の結果は、免疫化されたマウスの坑血清から得た親和性精製された坑−G93A SOD1抗体の存在が証明された。図5d〜fは、体重(図5d)および後肢反射点数(図5e)により監視したように、坑−ヒトG93A SOD1抗体を用いて行った受動免疫化が疾患の症状を和らげることができるということを示している。その結果は統計学的に有意義なものである。(p<0.05、2ウェイANOVA)。図5fは、受動免疫化が、生理食塩水を注射したマウスに比べてG93A SOD1マウスの寿命を延ばしたことを示す。(p<0.025、カプランマイヤー生存検定法、ログ−ランク検定法、および、スチューデントt−検定法による)
【図6】浸透圧ミニポンプを通じて注入した坑−ヒトSOD1抗体は腰部の脊髄内へ浸透し、前記ポンプを設置してから16日が経過した時点においてもその活性を保持していた。ラビット多クローン性坑−ヒトSOD1抗体またはコントロールIgGを、FITCと共役させ、G93A SOD1マウス(100日齢)を対象にして、浸透圧ミニ−ポンプを通じて脳室内へ注入させた。 図6aは、FITCと共役した坑−ヒトSOD1抗体(左カラム)またはコントロールIgG(右カラム)を脳室内へ注入して治療したG93A SOD1マウスの腰部の脊髄の免疫蛍光分析の結果を示す。グリーン色はFITCと共役した抗体またはコントロールIgGを示し;赤色は坑−NeuNを示し;青色は坑−Mac2抗体を示す。FITCと共役したSOD1抗体を脊髄のニューロン(矢印の根)、および、小グリア(矢印)の付近で検出した。図6bは、ポンプを設置してから16日が経過した時点で標本から得たFITCと共役した坑−ヒトSOD1抗体またはコントロールIgGを用いて、脊髄の抽出物に対してウエスタンブロットを行った結果を示している。
【図7】突然変異SOD1およびWT SOD1に対する、本発明の好ましい単クローン抗体の親和性のELISA分析の結果を示す。
【図8】配列番号7のスーパーオキサイドジスムターゼ1のアミノ酸の配列を示す。
【図9】配列番号8のスーパーオキサイドジスムターゼ1の核酸の配列を示す。
【図10】酸化が、インビトロでWT SOD1の凝集体形成を誘発することを示す。図10aは過酸化水素で処理してSOD1凝集体を形成したことについて示す。細菌を精製した組み換えSOD1たんぱく質(1mg/ml、G85RおよびG93A)を、1mMの過酸化水素を含む溶液で37℃にてインキュベートした。50U/mlのカタラーぜを加えて反応を中断させ、坑−ヒトSOD1抗体を用いるウエスタンブロット検定法によりたんぱく質の標本を分析した。過酸化水素処理を行った場合、WT SOD1は突然変異SOD1たんぱく質の標本において多く見られる凝集体の形成と同様、高分子凝集体を形成した。矢印はその配列が質量分析により確認されたSOD1の断片を示す。(そのデータは示さない)星印は過酸化水素を除去するために加えられたカタラーゼを示す。図5Bは、酸化により引き起こされた凝集体の形成およびSOD1の断片がPBS中で溶解度が変化されたことについて示す。過酸化水素で組み換えSOD1たんぱく質を処理した後、たんぱく質をPBSに対して透析し、その後、超遠心分離を行なった(105,000gx1時間)。上清およびペレットを、抗ヒトSOD1抗体を用いてウエスタンブロット検定により分析した。様々なパターンの分画化、および、SODF1断片を含む可能な複合体が矢印で示したように現れた。
【図11】インビボにおける酸化的なストレスによるWT SOD1のミスフォールド現状を示す。図11Aは、Hsp/Hsc70と、インビボにおける突然変異SOD1、または、WR SOD1との相互作用を示す。Neuro2a細胞は、培養プレートにおいてFLAGで標識されたhSOD1(WTおよびG93A;2μg/ウェル)で一時的にトランスフェクションさせた。トランスフェクション後24時間が経過した時点で、細胞を1.5mM過酸化水素を含有する緩衝液で45分間インキュベートした。溶解物を抗−FLAG親和性ゲルで免疫沈降し、ブロットを抗−SOD1または抗−Hsp/Hsc70抗体でプローブした。空っぽの矢印はIgGの重鎖を示す。それに対して、ブラックの矢印は酸化型WT SOD1または突然変異SOD1で共免疫沈降されたHsp/Hsc70たんぱく質を示す。図11Bは酸化型WT SOD1たんぱく質と多ユビキチン(multi-ubiquitin)の共役に関する。HA−ユビキチン(HA−Ub;1μg/ウェル)をFLAG−hSOD1で共トランスフェクションさせ、その後、Aに記載した実験を行なった。抗−FLAG親和性ゲルでの免疫沈降物(immunoprecipitate)を12.5%SOS−ポリアクリルアミドゲル上に溶解させた。免疫沈降物(左側のパネル)および10%投入(流入)溶解物(input lysate)(右側のパネル)を、SOD1または抗−HA抗体を用いるウエスタンブロット検定法で分析した。空っぽの矢印はIgGの軽鎖を示す。多−ユビキチンは酸化型WT SOD1種だけでなく、突然変異SOD1とも共役した。
【図12】酸化型WT SOD1または突然変異SOD1とクロモグラニンBとの相互作用を示す。図12Aは、トランスフェクションされたNeuro2aにおけるヒトSOD1の細胞内分布(subcellular distribution)脳エスタンブロット検定結果を示す。hSOD1−FLAG(WTおよびG93A突然変異)でトランスフェクションしてから24時間が経過した時点で、細胞を1.5mM過酸化水素で45分間処理し、その後、採取した。その後、細胞を細胞内分画化処理し、サイトゾルの分画(レーン1〜4)、重量膜(heavy membrane)の分画(レーン5〜8)、および、軽量膜(light membrane)の分画(レーン9〜12)を得た。ヒトSOD1およびCgBの分布を分析した。Akt−キナーゼ、COX−IV,TGN−38,および、シンタクシン−1は、それぞれサイトゾル、ミトコンドリア、ミクロソーム、および膜成分に対するマーカであった。図12Bにおいて、Neuro2a細胞はhSOD1−FLAG(WTおよびG93A、1μg/ウェル)で一時的なトランスフェクションを行なった。トランスフェクション後24時間が経過した時点で、細胞を1.5mM過酸化水素に45分間露出させた。その後、細胞の溶解物を抗−FLAG親和性ゲルで免疫沈降させた。免疫沈降物および10%投入溶解物を、抗−SOD1または抗−HA抗体を用いるウエスタンブロット検定により分析した。(12.5%SDS−アクリルアミドゲル)
【図13】酸化型WT SOD1により引き起こされた小グリアの活性化を示す。小グリアBV2細胞を、過酸化水素で処理し、または、無傷の(intact)WT SOD1(Ox−WT SOD1、または、WT SOD1,10μg/ml)、非酸化型G93A SOD1(10μg/ml)、LPS(10μg/ml)、または、コントロール用のPBSに37℃にて24時間露出させた。全RNAを、腫瘍壊死因子(TNF−α)、誘導可能な酸化窒素合成酵素(iNOS)、および、GAPDH(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)に対する1対のプライマーを用いて、半定量逆転写酵素PCR(RT−PCR)により分析した。図13AはRT−PCRの代表的なデータである。図13BはPBSコントロールとの比較により得られた発現比(expression ratio)およびGAPDHで標準化した濃度測定値を示す。(ボトム;平均±標準偏差)
【図14】酸化型WT SOD1および突然変異SOD1が培養された運動ニューロンに対して同様の毒性を有することを示す。E13胎児マウスの脊髄からインビトロで12日間培養させた培養物(解離したもの)を、過酸化水素で処理した組み換えWT SOD1(Ox.WT SOD1)、未処理の組み換えWT SOD1(WT SOD1)、または、G93A SOD1(0.5および1.0μg/ml)に37℃24時間露出させた。培養物を固定して、抗−非リン酸化神経フィラメントH(SM132)で標識した。図14AはコントロールPBS(最上、左側)WT SOD(最上、右側)、過酸化水素で処理したWT SOD1(最下、右側)、およびG93A SOD1(最下、左側)の顕微経写真である。図14Bは、処理後の運動ニューロンの生存について示している。SM132−ポジティブニューロンの数がコントロールに対して%で表されている。酸化型WT SOD1またはG93A SOD1に露出した運動ニューロンの生存率(viability)は無傷のWT SOD1で処理した培養物またはコントロール培養物に比べて少なかった。データは平均±標準偏差で示した。データは多様性分析(analysis of variance)により推定された。(ANOVA,P<0.05)
【図15】ヒトトランスジェニクマウスから得た脊髄分画を用いて行なった免疫組織化学検定の結果を示す。クローンC4F6で染色したとき、SOD1突然変異体を優先して認識した。発症前の突然変異SOD1トランスジェニックマウス(G37RおよびG93A)またはヒトWTトランスジェニックマウスから得た脊髄のスライス(厚さ25μm)を、本発明の好ましい単クローン抗体、いわゆるC4F6を用いて染色し、ビオチン化二次抗体、およびアビジン−ビオチン複合体システム(ベックタステイン社製)で処理した。ジアミノベンジジン(DAB)を色原体
【図16】本発明の好ましい単クローン抗体を用いて行なわれたウエスタンブロット検定の結果を示す。図16aは本発明の好ましい単クローン抗体、いわゆるC4F6が、ヒトSOD1トランスジェニックマウスからのWT ASOD1マウスよりG37R SOD1をよりよく認識することを示すウエスタンブロット検定結果である。コントロールとして、ラビット多クローン抗−ヒトSOD1抗体(S100,ストレスゲン社製)を用いた。図16bは、C4F6抗体が、WT金属化組み換えたんぱく質より、G85R金属化SOD1たんぱく質に対して反応することを示している。図16cは、本発明の好ましい別の単クローン抗体、いわゆるD3H5がWTおよび様々な突然変異SOD11たんぱく質を認識することを示すELISA分析結果である。マウスの神経芽細胞腫
【図17】本発明の好ましい単クローン抗体、いわゆるC4F6を用いてヒトSOD1 Tgマウスを検出した結果を示す。マウスから得た血液(50〜100μL/マウス)をEDTAで処理した試料チューブ(sampling tube)に移した。1000xgで4℃にて15分間遠心分離してから、ペレットをアイス上で10mMTris−HCl(pH7.4)で1時間インキュベートした。標本を20,000gで4℃にて20分間遠心分離して、上清を集めて、SDS標本緩衝液中で5分間加熱した。図17は、本発明の好ましい単クローン抗体、いわゆるC4F6マウス単クローン抗体(上部パネル)、および、ラビット多クローン抗−ヒトSOD1抗体(BC,ヴィクトリアに所在するストレスゲン社製)を用いてウエスタンブロット検定を行なった結果を示している。各レーンはたんぱく質を10μg含有する。
【図18】ヒトSOD1トランスジェニックマウスから得た脊髄分画を用いて実施した免疫組織化学検定の結果を示す。本発明に係る単クローン抗体、いわゆるD3H5で染色した場合、WTおよび突然変異SOD1の両方を認識した。発症前の突然変異SOD1トランスジェニックマウス(G37RおよびG93A)およびヒトWTトランスジェニックマウスから得た脊髄スライス(25μm)を、マウス単クローン抗−ヒトSOD1抗体(D3H5クローン)を用いて染色し、ビオチン化二次抗体、および、アビジン−ビオチン複合体システム(ヴェックタステイン社製)で処理した。ミノベンジジン(DAB)を色原体として用いた。ハイブリドーマ培養培地の上清から抗体を得た。(1:500)図18eおよびfは一次抗体なしの負のコントロールである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋萎縮性側索硬化(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)のようなSOD1異常と関連した神経変性疾患の分野に関する。より具体的に、本発明は、単クローン抗体、ならびに、前記神経変性疾患の治療、予防、および/または、診断方法、および、組成物における前記単クローン抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患とは、特定の神経細胞が変性していく病気をいう。これらの細胞に変化が起こると、前記細胞は正常に機能することができなくなり、結果的に、細胞壊死に至る。
【0003】
典型的な神経変性疾患として、家族性および散発性筋萎縮性側索硬化(それぞれ、FALSおよびALS)、家族性および散発性パーキンソン病、ハンチントン病、家族性および散発性アルツハイマー病、オリーブ橋小脳萎縮(olivopontocerebellar atrophy)、複合神経系萎縮(multiple system atrophy)、進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy)、拡散性レヴィー小体症(diffuse lewy body)、皮質歯状核黒質変性症(corticodentatonigral degeneration)、進行性家族性間代性筋痙攣性癲癇(progressive familial myoclonic epilepsy)、線条体黒質変性(strionigral degeneration)、回転失調(torsion dystonia)、家族性振せん(familiar tremor)、ジル・ド・ラ・ツレット症候群(Gilles de la Tourette's syndrome)、および、ハレルフォルデン症候群(Hallervorden syndrome)などが挙げられる。これらの疾患の殆どは、中年の成人に発病して、神経系における特定のサブセットの神経が急速に変性していき、早期に死亡に至るという共通する特徴を有している。前述の疾患の進行を遅らせるに有効な療法は未だ知られていない。
【0004】
筋萎縮性側索硬化(ALS)は大人における進行性筋衰弱を特徴とする。病理所見は、運動皮質、脳幹、脊髄における星状細胞増加(astrocytosis)、および、小膠細胞症(microgliosis)と共に、運動ニューロンの大量損失である。一般的に、発病は30代から60代の間で、通常60代のほうが多い。ALSは均一に致命的で、通常5年以内に死亡する。ALSは、患者が非対称の四肢無力および疲労、上肢に限られた線維束性収縮、および/または、足における痙攣を感じ始めた時点で、診断される。
【0005】
ALSにおいて、脊髄の前角および大脳皮質のニューロンと共に、脳幹の運動核の一部におけるそれらの相同体が影響を受ける。影響を受ける部類のニューロンはかなり特定のものに限られる。眼球の運動に必要な運動ニューロンおよび脊髄の括約筋における運動ニューロンは、前記症候性疾患が発病してからかなり進んだ時点においても、殆ど影響を受けることなく存在する。時折前記症候性疾患が発病してから直ぐに死亡に至るケースも見られるが、概して、横隔膜の衰弱が原因となった2次的な呼吸不全で死亡する。
【0006】
ALS症例のうち約10%が家族性で、その他のALSの症例(即ち、約90%)は散発性であると知られている。このような知見は、10年前にロセン(Rosen)らがSOD1媒介疾患の機序を明かすために行なったALS研究に関連して、家族性症例のサブセットにおけるCu/Znスーパーオキサイドジスムターゼ(superoxide dismutase)1をコードする遺伝子におけるミスセンス突然変異の研究から得られたものである。現在に至るまで、SOD1遺伝子の中から114個の異なる突然変異が観察されているが、それが家族性ALS症例の0〜20%の原因と思われる。
【0007】
酵素であるスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)はスーパーオキサイドが酸素と過酸化水素とに不均化反応(dismutation)を触媒する。したがって、SODは酸素に露出された殆どの細胞において重要な抗酸化防御機構である。SODは動物、植物、又は、微生物のような生命体に広く分布されている。より詳細に、SOD1は発現されたたんぱく質中に大量に偏在している。スーパーオキサイド負イオンから過酸化水素への転換を触媒するその機能に基づいて、異なるSOD1の突然変異体の毒性はフリーラジカル除去能力の低下に起因すると考えられる。しかしながら、異なるSOD1突然変異体は酵素活性における驚くほどの多様性を示す。突然変異SOD1 G93A(位置93でグリシンがアラニンに置き換えられている)、または、SOD1 G37Rを発現するマウスは、SOD1活性レベルが高められたにもかかわらず、運動ニューロン疾患を発病させる。(Cleveland at al., 2001, Nat Rev Neurosc, 2, 806−819)。さらに、SOD1ノックアウトマウス(knockout mouse)は運動ニューロ疾患は発病させない。(Reaume et al., 1996, Nat Genet, 13, 43-47)銅をSOD1触媒部位に送達するSOD1の銅シャペロン(CCS)における遺伝子破壊(gene disruption)は突然変異SOD1トランスジェニックマウスにおいて疾患の進行に対して何ら影響も及ぼさなかった。(Subramanian et al., 2002, Nat Neurosci, 5, 301-307)。最後に、触媒部位でCuと配位結合する4個のヒスチジン残基のうち2個を欠けている突然変異SOD1を過剰発現するトランスジェニックマウスの場合、SOD1活性に顕著な減少があったのにもかかわらず、運動神経変性が現れた。(Wang et al., 2002, Neurobiol Dis, 10, 128-138)。総合すると、概して変異されたマウスを用いて行なわれたこれらの研究は、銅触媒部位を含めて、酵素活性と独立した新たな毒性特性を得るということで運動ニューロンの疾患を誘発することがわかった。
【0008】
最も一般的な考え方は、突然変異SOD1の毒性が、有毒なミスフォールドしたたんぱく質種またはその凝集体を形成する突然変異SOD1の性向にかかわっているということである。さらに、野生型(WT)SOD1とは違って、細胞突然変異SOD1たんぱく質は、培養において小グリア細胞(microglia)を活性化させ、運動ニューロンの壊死をもたらし(Urushitani et al., 2006, Nat Neurosci, 9, 108-118)、そして、発病経路は、突然変異SOD1と関連したALSにおける運動神経の壊死が必ずしも細胞自立的ではないという概念と一致する。(Boilee et al., 2006, Science, 312, 1389-1392)。興味深いのは、WT SOD1の酸化は、その凝集体形成を促がし得る現状であることである。(Furukawa, et al., 2006, PNAS USA, 103, 7148-7153)散発性ALS患者における酸化的損傷(Ihara et al., 2005, Neurol Res, 27, 105-108)、および、細胞内に豊富に存在するSOD1たんぱく質に照らして、SOD1分子が散発性ALSにおける酸化的損傷の標的を構成し得るということを推論できる。
【0009】
ALSと関連したSOD1突然変異体の過剰発現に基づいた優れたマウスモデルの発展、および、家族性ALS患者の20%におけるスーパーオキサイドジスムターゼ1(SOD1)の遺伝子突然変異の発見のお陰で、たんぱく質のミスフォールド現状および凝集体形成、プロテアソームの機能障害、炎症、反応性酸素種、興分毒性(excitotoxicity)、および、ミトコンドリアの機能障害を含めて、運動ニューロン壊死に至る様々な発病経路が明らかになった。これらの仮定に基づいて、ウイルス媒介分子送達および薬理学的なアプローチを含めて、ALSマウスにおいて治療のための種々のアプローチが試みられた。
【0010】
米国特許第5,762,929号は経口または非経口投与により筋萎縮性側索硬化のような運動ニューロン疾患の症状を和らげることができる薬剤について報告している。米国特許第5,680,489号はグルタチオン誘導体または非−システイングルタチオン前駆体の有効量を患者に投与することで筋萎縮性側索硬化の症状を治療し、または、和らげる方法について報告している。米国特許第6,420,429号は筋萎縮性側索硬化のような疾患の治療に抗酸化剤を用いることについて報告している。米国特許第5,843,641号、5,849,290号、および、第6,723,893号は神経変性疾患、より具体的に、筋萎縮性側索硬化(ALS)を治療するためにSODたんぱく質をコードするDNAまたはSODたんぱく質の有効量を使用することについて報告している。これらの特許文献はまた、PCR反応においてSODたんぱく質をコードするDNAまたはその断片を用いて筋萎縮性側索硬化を診断する方法について開示している。
【0011】
SOD1が特定の転座配列を有していないサイトソルたんぱく質であることが知られているが、正常なSOD1および突然変異SOD1両方が分泌経路を通じて分泌され得るという有力な証拠がある。(Urushitani, et al., 2006, Nature Neurosci, 9, 108-118)さらに、ウルシタニら(2006)は、細胞外のSOD1突然変異体が、培養した運動ニューロンの壊死および小膠細胞症を引き起こすことができるということを明らかにしたが、それは分泌されたSOD1突然変異たんぱく質の毒性に基づいた発病機構を示唆するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、SOD1異常と関連した疾患の治療、予防、および/または、診断に有効な単クローン抗体のような新物質に対する強い必要性が存在していた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、SOD1と関連した疾患の治療および/または診断用ツールを提供して、上記ニーズを満足させることにある。
【0014】
本発明の目的は、動物に投与された際に、異常なスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD1)の病理効果を中和する活性を保有することを特徴とする異常なSOD1に特異的に結合する抗体を提供することにより達成される。
【0015】
詳細には、本発明の単クローン抗体は、カナダの国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託番号ADI−290806−01,02、およびお03として寄託されたハイブリドーマ細胞株により産生されたものであるのが好ましい。
【0016】
また、本発明は、本発明に係る1つ以上の抗体、および、医薬的に許容可能な担体を含有する動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療および/または予防用の組成物にも関する。
【0017】
さらに、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防するに本発明に係る抗体を1つ以上使用することや、動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療および/または予防用の組成物を製造するに本発明に係る抗体を使用することに関する。
【0018】
さらに、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を診断するに本発明に係る抗体を1つ以上使用することや、動物におけるSOD1と関連した疾患診断用の組成物を製造するに本発明に係る抗体を1つ以上使用することに関する。
【0019】
さらに、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患診断用キットに関する。このキットは、本発明に係る抗体を1つ以上含む1つ以上の容器を有している。
【0020】
さらに、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療または予防用のキットに関する。このキットは、本発明に係る抗体を1つ以上含む1つ以上の容器を有している。
【0021】
さらに、本発明は、本発明に係る組成物の有効量を投与して、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防する方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる単クローン抗体は、SOD1異常と関連した疾患の治療、予防、および/または、診断において非常に有効である。本発明のその他の目的や有利な効果は、添付した図面を参照して後述の発明を実施するための最良の形態を読んだならば明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を説明するために、本明細書においては、下記のように定義される用語を用いる。
【0024】
本明細書に使用する場合に、“SOD1異常と関連した疾患(a disease associated with SOD1 abnormalities)”は、好適には、神経変性疾患を示す。神経変性疾患は神経組織の漸進損失を特徴とする中枢神経系における疾病の一種である。神経変性疾患の典型的な例としては、筋萎縮性側索硬化(ALS)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、ハレルフォルデン・スパッツ病( HYPERLINK "javascript:goWordLink(%22Hallervorden-Spatz%22)" Hallervorden-Spatz HYPERLINK "javascript:goWordLink(%22disease%22)" disease)、オリーブ橋小脳萎縮(olivopontocerebellar atrophy)、複合神経系萎縮(multiple system atrophy)、進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy)、拡散性レヴィー小体症(diffuse lewy body)、皮質歯状核黒質変性症(corticodentatonigral degeneration)、進行性家族性間代性筋痙攣性癲癇(myoclonic epilepsy)、線条体黒質変性(strionigral degeneration)、回転失調(torsion dystonia)、家族性振せん(familiar tremor)、ジル・ド・ラ・ツレット症候群(Gilles de la Tourette's syndrome)、および、筋萎縮性側索硬化(ALS)などが挙げられる。
【0025】
非ヒト(例えば、マウスの)抗体の“ヒト化”型は非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含む特定のキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、または、その断片(例えば、Fv,Fab,F(ab')2、または、抗体の抗原決定配列)である。殆どの場合、ヒト化抗体は、受容者(recepient)の補体決定部位(CDR)の残基を、所定の特異性(specificity)、親和性(affinity)、および、容量(capacity)を有するマウス、ラット、又は、ラビットのような非ヒト種(供与者の抗体)のCDRの残基で置き換えたヒト免疫グロブリン(受容者の抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、それに相当する非ヒトの残基に置き換えたものである。さらに、ヒト化抗体は、移入性CDRまたはフレームワーク配列においても、受容者の抗体においてもない残基を含み得る。これらの改質は抗体の作用をよりよくし、又は、最大化するために行なわれる。一般的に、ヒト化抗体は、実質的に少なくとも一つ、典型的に2つの可変領域(variable domain)を含むが、ここで、ほぼ全てのCDR部位は非ヒト免疫グロブリンのCDR部位に相当し、ほぼ全てのFR部位はヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のFR部位に相当する。ヒト化抗体は選択的に免疫グロブリンの不変領域(Fc)、典型的にヒト免疫グロブリンの不変領域の少なくとも一部を含む。詳細は、文献[Jones et al., Nature 321:522 (1986); Reichmann et al., Nature 332:323 (1988); and Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593 (1992)]を参照すること。
【0026】
野生型とは遺伝子又はたんぱく質の突然変異しない正常な、天然のものをいう。
【0027】
異常、異常な:異常なSOD1たんぱく質とは、野生型SODたんぱく質と実質的に同一または類似したアミノ酸配列を有するが、野生型SOD1たんぱく質と異なるたんぱく質の構造を有し、かつ、病原性活性を有する異常なSOD1たんぱく質をいう。ここにいう“病原性活性”は前述の神経変異性疾患の発病に関与するものである。前記“異常/異常な”という用語は、突然変異、酸化型、または、凝集したSODたんぱく質をいう。
【0028】
本明細書に使用する場合における“免疫性を与える・免疫化する(immunizing)”または“免疫付与・免疫化(immunization)”は、疾患の兆候無傷の(intact)宿主免疫系に依存しない。
【0029】
本発明に使用する場合に、用語“動物”はヒト、家畜、酪農動物、動物園の動物、スポーツ用の動物、又は、ペット、例えば、イヌ、ウマ、および、ネコなどを含む任意の動物を含む。好適には、動物はヒトである。
【0030】
本明細書に使用する場合に、用語“診断”とは、その徴候、症状、および、様々な診断の結果により特定の疾患を同定するプロセスをいう。診断は、被験者、好ましくは、動物、より好ましくは、ヒトから採取した生体標本に対して行なわれ得る。そのような生体標本は,血清又は血漿、全血、尿、痰、結腸流出物(colonnic effluent)、能脊髄液、リンパ液、骨髄、組織標本(例えば、外科生検または経口の塗布標本からの組織標本)、又は、異常なSOD1を含むと疑われるそのほかの任意の標本を含むが、それらに限られるものではない。診断に用いられる標本は血漿又は血清であるのが好ましい。
【0031】
本明細書に使用される場合、用語“単クローン抗体”とは、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体(即ち、前記集団を成す個別の抗体は、少量に存在し得る自然発生突然変異を除いて同一である)をいう。単クローン抗体は単一の抗原部位に対する高度の特異性を有している。さらに、異なる数種の決定基(エピトープ)に対して特異性を有する異なる数種の抗体を有する従来の(多クローン性の)抗体製剤に比べると、各々の単クローン抗体は、抗原上の1つの決定基に対する特異性を有する。それらの特異性に加えて、単クローン抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、その他の免疫グロブリンに汚染されない、といった、メリットを有する。
【0032】
1.本発明に係る抗体および組成物
本発明者は、筋萎縮性側索硬化(ALS)のような神経変性疾患を引き起こす推定薬剤(putative agent)であるスーパーオキサイドジスムターゼポリペプチドの突然変異体で動物を免疫化した場合、その疾患の治療および/または予防効果が得られることを発見した。
【0033】
また、本発明者は、スーパーオキサイドジスムターゼポリペプチドの突然変異体に対する抗体で受動免疫を行なった場合、前記疾患の治療および/又は予防効果が得られることを初めて確認した。
【0034】
それにより、本発明は、異常なスーパーオキサイドジスムターゼ1(SOD1)に特異的に結合する抗体に関するものである。異常なスーパーオキサイドジムターゼ1とは、病原性活性を保有し、そして、突然変異した、酸化した、凝集体形成した、または、変形された構造を有し得るスーパーオキサイドジムターゼ1を意味する。
【0035】
本発明の抗体は、ヒトのような動物に投与されえる際に、異常なSOD1に特異的に結合し、その病理活性を中和するものである。本発明の抗体は後述の実施例2に記載されているように作製される。
【0036】
本発明の抗体に関連して、用語“に特異的に結合する”とは、SOD1ポリペプチドの1つ以上のエピトープに比較的高度な親和性を有して結合するが、本発明に定義されたSOD1ポリペプチド以外の分子を実質的に認識せず、かつ、それに結合しない抗体を意味する。本明細書に使用する場合、用語“比較的高度な親和性”とは、関心エピトープ(epitope of interest)と抗体間の結合親和性(binding affinity)が、少なくとも106M-1以上、好ましくは107M-1以上、より好ましくは、108M-1〜1010M-1を意味する。そのような親和性の測定は、当業者に良く知られている標準競合結合の免疫学的検定法の条件下で行なわれるのが好ましい。
【0037】
本発明の好ましい実施例においては、抗体は単クローン抗体である。本発明の単クローン抗体は後述の実施例1に記載したように作製することができる。
【0038】
本発明はまた、カナダの国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託した寄託番号ADI−290806−01,ADI−290806−02、およびADI−290806−03のハイブリドーマ細胞株に関する。最も好ましい実施例において、本発明の単クローン抗体は、それぞれB1G9,C4F6,および、D3H5と名付けられた前記寄託番号ADI−290806−01,ADI−290806−02、およびADI−290806−03のハイブリドーマ細胞株から産生された単クローン抗体である。図3および表3から明らかなように、(ELISA分析結果から)、単クローン抗体B1G9が突然変異SOD1に対しては特異的な親和性を有するが、正常なまたは野生型SOD1に対しては親和性を有さないし;D4F6が突然変異体SOD1に非常に高いレベルの親和性を有し;そして、D3H5がSOD1たんぱく質の両方のタイプに対して親和性を有することがわかる。特異的な免疫組織化学検定法において、C4F6は、突然変異SOD1を発現するトランスジェニックマウスG93Aから採取した組織(実施例AおよびBに示したような脊髄および血液標本)でSOD1種を特異的に検出することができた。したがって、本発明に係る単クローン抗体、より具体的には、C4F6,D3H5,および、B1G9は、異常なSOD1、最も具体的には、突然変異SOD1と強く結合して、受動免疫に有効であると評価することができる。
【0039】
前述のおとり、本発明に係る抗体は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/又は予防するための組成物を製造するに用いられる。したがって、本発明はまた、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防するために供される組成物に関する。この組成物は、抗‐異常SOD1抗体、および、医薬的に許容可能な担体を含む。本明細書に使用する場合、用語“医薬的に許容可能な担体”とは、宿主に副作用を起こすことなく宿主に投与され得る本発明に係る組成物を含有させるためのべジクル(vesicle)を意味する。適当な医薬的に許容可能な担体は当業者に良く知られているが、例えば、無菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース、又は、緩衝液などが挙げられる。担体(carrier)は賦形剤、安定剤(例えば、糖およびアミノ酸)、保存剤、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、粘度増強剤、色素などのような補助剤を含み得る。
【0040】
本発明に係る組成物に用いられる抗体は、好ましくは、異常なSOD1たんぱく質、より好ましくは、突然変異SOD1たんぱく質に結合する。本発明に係る組成物は、ヒトのような動物に投与された場合、該動物に、異常なSOD1たんぱく質、より好ましくは、突然変異SOD1たんぱく質に対する治療および/または予防効果を与える。本発明に係る好ましい具体例によれば、本発明に係る組成物に用いられる抗体は、後述の実施例2の記載内容にしたがって作製された多クローン抗体、または、後述の実施例1の記載内容にしたがって作製された単クローン抗体であり得る。最も好ましい具体例によれば、単クローン抗体はC4F6,D3H5,および、B1G9である。
【0041】
2.本発明に係る抗体および組成物の使用(用途)
別の具体例によれば、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療および/または予防に、1つ以上の抗‐異常SOD1抗体を使用することを提供する。更なる別の具体例によれば、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防するための組成物の製造において1つ以上の抗‐異常SOD1抗体を使用する方法を提供する。
【0042】
好ましい具体例によれば、1つ以上の抗‐異常SOD1抗体は多クローン抗体または単クローン抗体であり、より好ましくは、単クローン抗体である。本発明に係る最も好ましい具体例において、抗体は、単クローン抗体であり、さらに好ましくは、C4F6,D3H5,および/または、B1G9である。
【0043】
本発明に係る組成物に存在する抗‐SOD抗体の量は治療的に有効な量(therapeutically effective amount)であるのが好ましい。本発明に係る組成物に存在する抗‐SOD抗体の治療的に有効な量は、その組成物を投与した宿主に著しく否定的な効果を引き起こすこことなく、その生物学的な機能を発揮するに必要とされる量を意味する。使用又は投与されるべき本発明に係る組成物に存在する抗‐SOD1抗体の正確な量は、治療すべき病態、治療すべき動物の年齢およびサイズ、投与形態のようなファクタ、並びに、組成物に存在する他の成分などによって異なってくる。本発明に係る組成物は液体溶液又は懸濁液の形態で;錠剤又はカプセルのような経口投与形態で;散剤、点鼻液、または、エアロソールのような鼻腔内投与形態で製造され得る。
【0044】
本発明に係る抗体又は組成物は、ヒトのような動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療又は予防に使用され得る。
【0045】
本明細書に使用する場合、用語“予防する”、および、“予防用”とは、SOD1異常と関連した疾患を阻害又は遅延させるプロセスを意味する。
【0046】
本明細書に使用する場合、用語“治療する”、および、“治療用”とは、所定の薬理学的および/または生理学的な効果が得られることを意味する。このような効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に予防するという観点から予防的なものであってもよく、および/または、疾患および/または、前記疾患に起因した副作用に対する完全な又は部分的な治療という観点から治療的なものであっても良い。したがって、次のようなものを含めて動物における疾患に対する任意の治療に及ぶ:
(a)疾患にかかっていると診断されたものではないがその疾患にかかりやすい被験者に前記疾患が発病しないように予防すること;
(b)前記疾患を阻害すること(即ち、前記病気の発病を抑制すること);および
(c)前記疾患の症状を和らげること(即ち、前記病気の退行を促すこと)
【0047】
ここで、用語“治療”とは、本発明において、SOD1異常と関連した疾患の症状が減少され、または、完全に除去されることを意味する。
【0048】
治療が必要とされる個体には、既に前記疾患を患っている個体や、前記疾患にかかりやすい個体、または、前記疾患の予防が必要とされる個体が含まれる。
【0049】
更なる別の具体例によれば、本発明は、動物においてSOD1異常と関連した疾患の診断のために1つ以上の抗‐異常SOD1抗体を使用することや、動物におけるSOD1異常と関連した疾患の診断のために供される組成物の製造において1つ以上の抗−異常SOD1抗体を使用することを提供する。好ましい具体例において、前記診断のために用いられる抗体は、単クローン抗体であり、より好ましくは、C4F6,D3H5,および及び/または、B1G9である。
【0050】
3.本発明のキット
更なる別の具体例によれば、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患診断用キットを提供する。
【0051】
本発明に係るキットには、診断テストを遂行するに必要とされる1つ以上の様々な構成要素をそれぞれ含んでいるパッケージを含む。前記構成要素は、化合物、試薬、容器、および/又は、装置であってよい。一般的に、薬剤は濃縮された形態である。例えば、キット内部の容器は異常なSOD1に特異的に結合する単クローン抗体を含有し得る。本発明に係るキットは、生物標本(又はその他の種の標本)における異常なSOD1たんぱく質を検出および/または定量するに有用であると解される。1つ以上の別の容器は、テスト(検定法ともいう)に用いられるべき構成要素、例えば、試薬又は緩衝液を含んでも良い。そのようなキットはまた、抗体結合を直接又は間接的に検出することができるレポーター(reporter)グループを含む前述の検出試薬を含んでも良い。
【0052】
前述のとおり、抗‐異常SOD1抗体は単クローン抗体であるのが好ましい。より好ましくは、抗‐異常SOD1抗体はB1G9およびC4F6またはD3H5である。本発明の単クローン抗体は本発明に係るキットにコントロールとして用いられ得る。
【0053】
更なる別の具体例において、本発明は、動物におけるSOD1異常と関連した疾患治療又は予防用のキットを提供する。
【0054】
抗‐異常SOD1抗体は、ヒトのような動物に投与された場合、異常なスーパーオキサイドジムターゼ1(SOD1)に特異的に結合して、異常なSOD1の病理効果を中和することのできる抗体と解される。本発明の好ましい具体例において、治療又は予防用キットの抗体は単クローン抗体である。最も好ましくは、抗体はS4F6,D3H5,および、B1G9である。
【0055】
4.治療方法
更なる具体例において、本発明は、ヒトのような動物におけるSOD1異常と関連した疾患の予防および/または治療方法を提供する。この方法は、治療的に有効な量の組成物を投与するステップを含む。
【0056】
本発明に係る組成物は様々な投与経路を通じて動物に投与され得る。たとえば、前記組成物は無菌注射剤(sterile injectable preparation)、例えば、無菌注射用水溶液又は無菌注射用油性懸濁液の形態で投与され得る。これらの懸濁液は適当な分散剤又は湿潤剤、および懸濁化剤を用いて当業者に知られている技法で製造され得る。無菌注射剤は非毒性経口用賦形剤無菌注射用眼窩内に(intraorbital)、眼内に、脳室内に、筋肉内に、脊髄内に、腹腔内に、鼻腔内に、エアロゾールで、注入などにより投与可能である。適当な容量は、組成物における各々構成成分の量、所期の効果(長期又は短期)、投与経路、治療すべき動物の体重および年齢のようなファクタなどに基づいて異なってくる。当業者に良く知られているその他の方法も本発明の組成物を投与するために用いられる。
【0057】
本発明は、次の実施例に基づいてよりわかりやすく説明される。これらの実施例は、本発明の適用範囲を例示したものに過ぎず、本発明の範囲を制限するものと解されてはならない。本発明の範囲および本質を逸脱しない範囲でこれらに対する変更または改質も可能である。本明細書に記載されたものに類似しまたは同等と評価できる方法および材料は本発明をテストするために用いられるが、好ましい方法および材料は以下に示したものである。
【実施例1】
【0058】
突然変異体SOD1に対する本発明の好ましい具体例に係る単クローン抗体の作製
G93A SOD1に対するマウスの単クローン抗体を作製した。ヒトSOD1突然変異体に対する単クローン抗体を作製するために、BALB/cマウスをrec G93Aたんぱく質(即ち、組み換えG93Aたんぱく質ともいう)を用いて免疫を与えた(即ち、免疫化した)。その後、脾細胞(splenocyte)由来のハイブリドーマを作製した。作製された6個のクローンのうち2個は、ELISA検定法を行なった結果、G93A SOD1に対する特異的な免疫反応性を示した。C4F6と名付けられた1個のクローンは、G93A,G37R、および、G85Rを含んだ突然変異SOD1に対して選択的な反応性を奏したが、WT SOD1に対しては反応性が悪かった。
【実施例2】
【0059】
抗‐hSOD1抗体の脳室内注入(intraventricular infusion)により行なわれる受動免疫
8匹の3ヶ月齢のメスC57Bl/6マウスに対して、組み換えヒトG93A SOD1たんぱく質で免疫化し、その血清を親和性精製(affinity purification)し、生理食塩水に対すて透析を行なった。浸透圧ミニポンプ(モデル2004、アルゼット社製)と接続された脳注入カニューレ(cannula)を通じて前記抗体を脳室(ventricle)へ注入した。前記浸透圧ミニポンプの速度は0.25μl/時間で、マウスに対する処理を28日間続けた。(1.8μg/1日)受動免疫の効果は体重、後肢反射から得た反射点数(reflex score from hindlimb reflex)、および、寿命によって評価した。突然変異SOD1に対するマウス抗血清を得るために、8匹の3ヶ月齢のメスC57Bl/6マウスを組み換えヒトG93A SOD1たんぱく質で免疫化し、その血清を親和性精製し、そして、生理食塩水に対すて透析を行なった。3回目の免疫化が終わってから2週後、全血を採取し、室温で、12,000gで10分間遠心分離を行なって、血清を得た。この血清を、組み換えG93A SOD1たんぱく質と予め結合させたアフィニティカラム(アミノーリンクキット、ピアース、ロックフォード、IL)を用いて親和性精製を行なった。抗体を0.3mg/mlの濃度で生理食塩水に対して透析して、使用するまでに−80℃に保管した。抗血清の特異性および滴定(titration)がウエスタンブロット法により測定した。コントロールに対して、本発明者は、非処理のC57Bl/6マウスから得たマウス免疫グロブリン又は生理食塩水を注入した。浸透圧ミニポンプ(モデル2004、アルゼット社製)を200μlの精製した抗体、又は、コントロールとしての生理食塩水で満たして、長さ2.5cmの塩化ポリビニルカテーテルを用いて脳注入用カニューラ(30ゲージ、高さ3.0mm、CA,パルロアルトに所在するアルゼット社製)につないだ。85日齢のトランスジェニックマウスG93A SOD1をキシラジン‐ケタミン(10mg/ml)で麻酔した。無菌脳注入用カニューラを右側の脳室の定位に移植した。移植後、注入用カニューラを歯科用セメントで固定した。浸透圧ミニポンプを皮膚の下に移植した。ポンプの注入速度は0.25μl/時間で、マウスに対する処理を28日間続けた。(1.8μg/日)脳室内に注入された抗体が腰部の脊髄内に浸透したことを証明するために、浸透圧ミニポンプで注入する前に、市販のラビット多クローン性抗ヒトSOD1抗体(ストレスゲン社製)またはラビットコントロール免疫グロブリン(DAKO)にフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(ピアース社製)と共役させた。ポンプを導入してから16日後、免疫蛍光検定法およびウエスタンブロット法を行なうためにマウスを犠牲にして、ポンプ内に残存していた抗体の活性を検定・測定した。
【0060】
ロッタロッドテスト(Rotarod test)がポンプ損傷をもたらす卒倒(fall-down)の危険性を示していたため、臨床効果を評価するために体重および後肢反射の測定結果を用いた。マウスの尻尾を引っ張ったときの拡張性および後肢の反射を評価した。点数3は正常な後肢反射と完全な拡張を示す。点数2は正常な後肢反射と中等度の拡張を示す。点数1は貧弱した後肢反射と拡張性を示すが、点数0は後肢の動きがないことを示す。前記採点は、動物の試験者がその処理について何ら情報も得られない盲検試験により行なわれた。
【実施例3】
【0061】
ALSのマウスモデルにおける突然変異スーパーオキサイドジスムターゼで免疫化した場合の治療効果
ALSと関連したスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD1)突然変異体、および、細胞外の突然変異SOD1の神経毒性に対する従来の分泌経路の存在に関する有力な証拠がある。これにより、本発明者は、ALSのマウスモデルにおける神経組織で細胞外SOD1突然変異体の心配を減らすために、免疫源として細菌を精製した組み換えSOD1突然変異たんぱく質を用いて、免疫化プロトコールを検定するに至った。アジュバント−SOD1突然変異体を反復して注射し、6ヶ月齢において症状が現れる前に最後に追加免疫を実施したhSOD1G37Rマウスのワクチン接種は,疾患の発病を遅延させ、4週以上寿命を延ばせるに有効であった。精髄標本に対する顕微鏡検査の結果、生理食塩水‐アジュバントを注射したものに比べて、免疫化したhSOD1G37Rマウスにおいてより高いレベルの小グリア活性化が見られ、そして、疾患の末期において運動ニューロンの生存率が高かった。さらに、浸透圧ミニポンプを用いて行なった、精製した抗‐hSOD1抗体の脳室内注入を通じて行なわれた受動免疫により、疾患の症状を和らげ、そして、hSOD1G93Aマウスの寿命を延ばすことができた。このような免疫化は、SOD1突然変異化により誘発された家族性ALSの症例に対する治療にも適用可能なアプローチであると判断された。
【0062】
方法
トランスジェニックマウス
マウスの内因性SOD1に比べてヒトSOD1たんぱく質を5倍までに過剰発現するG37R突然変異SOD1(株29)を保有するトランスジェニックマウスを、ディ・クリブランド博士(サンディエゴ、カリフォルニア大学)からもらった。突然変異G38A SOD1を保有したトランスジェニックマウス(B6SJL−TgN[SOD1−G93A]dl Gur)はジャックソン研究所から購入した。マウスはC57Bl/6バックグラウンドマウスにおいてヘテロ接合性(heterozygous)を維持していた。
【0063】
免疫化プロトコールおよびマウスの分析
前述の通り、ヒトG93A SOD1組み換えたんぱく質を作製し、それを細菌から精製した。(Urushitani, et al., 2004 J. Neurochem, 90, 231-233)この研究は、G37R SOD1マウス(ワクチン接種したマウスおよびコントロールマウスに対してそれぞれN=8および7)、または、G93A SOD1マウス(ワクチン接種したマウスおよびコントロールマウスに対してそれぞれN=12および8)の同腹子(littermate)を用いて遂行した。G37R SOD1マウスを処理するために、8匹のG37R SOD1 トランスジェニックマウス(メス=5、オス=3)を組み換えG93A SOD1でワクチン接種した。一方で、7匹のG37R SOD1マウス(メス=4、オス=3)には生理食塩水‐アジュバントを注射した。4匹の非トランスジィニック同腹子を組み換えG93A SOD1たんぱく質で処理して副反応および血清適定を評価した。2ヶ月齢で免疫化を始め、3週ごとに2回注射し、6ヶ月齢になったら最後の追加免疫を実施した。12匹のG93A SOD1マウスを組み換えG93Aでワクチン接種し、そして、8匹のG93A SOD1マウスには生理食塩水‐アジュバントを注射した。Ribiアジュバント(シグマ社製)を用いて免疫化を実施した。1つのバイアルは、組み換えG93A SOD1たんぱく質を含むか、あるいは、含んでない2mlの無菌生理食塩水から再構成された。強力なボルテックスにより乳化した後、200μlのアジュバント‐抗体の溶液(2箇所に対してたんぱく質50μg)を皮下注射した。終末点は、マウスが側臥位(lateral position)から30秒以内にもとに戻れないときの時間として定義した。生存データはカプラン・マイヤースパン(span)テストおよびログ‐ランク(log-rank)テストにしたがって分析した。平均発病又は生存の統計的有意性はステューデントテストによって検定した。
【0064】
ELISA検定法
脊髄組織または抗血清のヒトSOD1に対する抗体の力価(titer)はELISAにより測定した。96ウェルプレートを1μg/mlの組み換えSOD1たんぱく質(WT,G85R、または、G93A)で被覆した。室温にて(PBS中の)BSAの5%溶液中で2時間遮断させ、1%BSAを含むTBS中で連続的に希釈させたマウス血清を前記各々のウェルに加え、前記プレートを室温で1時間インキュベートした。基材とし2,2'-アジノ−ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)、および、ペルオキシダーゼと共役した抗‐マウス免疫グロブリンを用いて検出を行なった。ELISA読み取り装置(カリフォルニア州、サニバルに所在するモレキュウラーディバイス社製)を用いて405nm波長で吸光度値を読み取った。
【0065】
ウエスタンブロット法
ウエスタンブロット検定を行なうために無傷の脊髄溶解物(lysate)を用意して、ワクチン接種したマウスの血清を滴定し、または、ワクチン接種後におけるG37R SOD1の量を測定した。G37R SOD1 トランスジェニックマウスおよび非トランスジェニック同腹子から得られた完全な組織の溶解物は、50mMのTris−HCl(pH7.4)、150mMのNaCl,10%グリセロール、1%トリトンX100を含む、5倍体積のTNG−T緩衝液中で均質化によって製造した。テフロン(登録商標)(Teflon)均質化装置で20ストロック(stroke)を行った後、組織懸濁液を4℃にて1000xgで10分間遠心分離し、得られた上清を、2−メルカプトエタノールおよびSDSを含むサンプリング緩衝液(sampling buffer)中で加熱しながら変性させた。
【0066】
ワクチン接種したマウスから得た抗血清を滴定するために、ワクチン接種したマウス、又は、生理食塩水を注射したコントロールマウスから得た抗血清の1000倍希釈液、25mgの溶解物を用いて、ウエスタンブロット検定法を行なった。コントロールとして、市販の抗‐ヒトSOD1(SOD−100、ストレスゲン社製)、および、抗−アクチン(actin)抗体(ケミコン社製)を用いて膜を再びブロットした。ワクチン接種したマウスから得た脊髄に含まれたG37R SOD1たんぱく質の量を分析するために、各々のマウスから得た2つの異なる量のたんぱく質(5および10μg/レーン)を、本発明者が作製した単クローンマウス抗‐SOD1抗体、抗‐アクチン抗体、または、SOD100抗体を用いて、ウエスタンブロット検定法により分析した。(実施例1を参照)化学蛍光法、および、ペルオキシダーぜと共役した免疫グロブリンを用いて、前記ブロットを検出した。ウエスタンバンド(Western band)をスキャンし、ソフトウェアシオンイメージ(マリーランド州、フレデリックに所在するシオン社製)を用いる密度測定法により分析した。
【0067】
組織化学的分析
マウスに、4%パラフォルムアルデヒド(PFA)でかん流させ、固定させ、そして、凍結防止剤中にインキュベートした。次のような標準プロトコールに基づいて組織化学的分析を実施した。25μmの脊髄分画(section)を一次抗体(抗‐Mac2抗体に対して1:800)で4℃にて一晩インキュベートした。免疫蛍光検定実験において、前記分画を、蛍光染料(アレクサ488、モレキュラープローブ社製)と共役した二次抗体で室温にて1時間インキュべーとした。脊髄組織における内因性免疫グロブリンGを検出するために、アレクサ594と共役した抗‐マウスIgGを、アレクサ488と共役した別の二次抗体と共にインキュベートした。この分画を、PMT,得る(Gain)、オフセット(offset)、C.A.、および、HeNe−Gを含めて、同一のソフトウェア設定の条件下で共焦点レーザ顕微鏡(東京所在のオリンプス社製)を用いて観察した。ベックタステインABCキット(USAのカルフォルニア、ブルリンカームに所在するベクターラボラトリーズ社製)、および、3,3'−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB;シグマ社製)を用いてアビジン-ビオチン複合体(ABC)法(avidin-biotinimmunoperosidase complex method)により一次抗体を可視化した。脊髄分画における運動ニューロンの数を数えて、トルイジンブルー(ニッスル染色法)を用いて染色した各々のマウス(各々のグループに対してn=4)の5枚のスライスから平均を求めた。
【0068】
結果
免疫化はG37R SOD1マウスにおいて疾患の発病および死亡を遅延させる
本発明者は突然変異SOD1G37R(株42)を中等度(内因性SOD1のレベルの4倍まで)で過剰発現すると報告されたマウスモデルにおけるワクチン接種アプローチを検定した(24)。免疫化に用いられる抗体として、本発明者はE.coliから精製された、金属を含んでない(metal-free)組み換えヒトSOD1突然変異体(apo−G93A)を用いたが、それは、出願人の研究室に利用可能であったことや、そのミスフォールド特性(misfolded nature)に起因したものである。アジュバント中に含まれた50μgの組み換えSOD1突然変異たんぱく質、または、生理食塩水を用いたSOD1G37Rマウスの免疫化を2ヶ月齢でスタートした後、3週ごとに2回の皮下注射を行なった。抗原‐アジュバント、または、生理食塩水‐アジュバントの最後の注射は6ヶ月齢で行なわれた。(図1a)
【0069】
SOD1G37Rマウスの運動性(motor performance)はロッタロッドテストによって評価された。図1Bに示したように、生理食塩水‐アジュバントを注射したALSマウスにおいて50週で運動性の急激な減少が見られたが、SOD1突然変異体でワクチン接種したALSマウスにおいては前記運動不全が最長3週間遅延された。(図1b)運動性の30%の損失として定義される疾患の発病は、生理食塩水‐アジュバントを注射したALSマウスにおいて平均50.2±0.4週(年齢)であるに対して、ワクチン接種したALSマウスにおいては平均53.1±0.2週(年齢)であった。(図1c、p=0.0011)ALSマウスの寿命に対するhSOD1免疫化の効果はまた、生理食塩水−アジュバントを注射したコントロールマウスの場合に平均56.12±0.74週であったのに対して、平均60.4±0.4週であり、その効果は驚くべきものであった。(図1d、p<0.0001)したがって、免疫化アプローチはALSマウスの寿命を最大4.3週までに延ばした。
【0070】
免疫化したALSマウスにおける運動ニューロンの損失および高度の小膠細胞症(microgliosis)における減衰
突然変異SOD1が神経保護効果を奏するか否かを調べるために、本発明者は、疾患の末期にあるG37R SOD1マウスの脊髄分画におけるニッスル染色された運動ニューロンの数を数えた。(図1e)生理食塩水−アジュバントで処理したALSマウスにおける残存する脊髄運動ニューロンの数は、非トランスジェニック同腹子における運動ニューロンの数の24.1±2.0パーセントに相当する。比較結果、突然変異SOD1でワクチン接種した末期のALSマウスの場合、より長く生存する運動ニューロンが見られ、残存した運動ニューロンの数は41.9±3.1パーセントに相当した。抗‐NeuN抗体を用いた免疫組織化学検定法を実施した結果、生理食塩水‐アジュバントで処理したコントロールに比べてワクチン接種したALSマウスの脊髄で、末期において、より多くの運動ニューロンが生存していることがわかった。(図1f)
【0071】
免疫化が高度な神経炎症反応を伴うかどうかを調べるために、脊髄分画を、Mac2(活性化された小グリアのマーカ)に対するラットの単クローン抗体を用いて免疫染色を行なった。顕微鏡観察結果、生理食塩水‐アジュバントを注射したALSマウスに比べてSOD1突然変異で免疫化したALSマウスにおいて高度の小グリア活性化が見られた。(図2a)アレクサ488と共役した抗−ラットIgG抗体が現れる前の抗−Mac2抗体の免疫蛍光信号は、生理食塩水−アジュバントを注射したマウスに比べてワクチン接種したALSマウスから得た脊髄標本においてより高く見られた。(図2b−e)本発明者はまた、赤色の蛍光(アレクサ594)と共役した抗‐マウスIgGを用いて、脊髄標本中の内因性免疫グロブリンG(IgG)の免疫蛍光信号を検査した。内因性IgGに対する免疫検出信号のレベルはワクチン接種したマウスから得た標本においてより高かった。(図2b−e、中間)
【0072】
G37R SODマウスの寿命と抗体力価との相関性
ALSマウスの血清における抗体の力価を、疾患の末期を迎えた4ヶ月齢のALSマウスに対して、抗原として組み換えG93A SOD1を用いてELISAにより測定した。(表1)初期に免疫化したグループの場合該動物が6ヶ月齢で最後の抗原注射を受けたにもかかわらず、組み換えG93A SOD1に対する抗体の力価は、疾患の末期にいたるまでに、ワクチン接種したマウスのほうが常に高かった。(図3a,表1)G93A突然変異SOD1に対してより低い力価を有する抗体は、組み換えG93Aを注射した非トランスジェニック同腹子マウスで観察された。(図3a、表1)さらに、図3bの散布図によれば、ALSマウスの寿命と4ヶ月齢の血清における抗体の力価との直接的な関連性が見られた。(スピアマンの順位相関係数)これは、SOD1突然変異体に対する抗体の治療効果と合致するものであった。
【0073】
免疫ブロット法は実施して、組み換えG93A SOD1たんぱく質突然変異体で免疫したマウスから得た抗血清がG37R SOD1突然変異たんぱく質を認識することができるかどうかを調べた。生理食塩水‐アジュバントを注射したマウスとは違って、免疫化したマウスは、ALSマウスの脊髄標本から得たG37R SOD1たんぱく質に対する免疫ブロット(immunoblot)上に強い信号(signal)を産出する抗血清を産生することができた。(図3c)さらに、本発明者は、組み換えG93Aでワクチン接種したALマウスから得た抗血清が、WT SOD1よりもG85R SOD1に対してより高い反応性を示すことを発見した。(図3d、表2)逆に、組み換えWT SOD1たんぱく質(rec WT)でワクチン接種したG37R SOD1マウスから得た抗血清はSOD1の突然変異型に対して低い力価を示した。(図3d、表2)これらのデータは、SOD1の突然変異型により産生された抗体がSOD1のミスフォルドした形態を優先的に認識するということを示している。
【0074】
抗‐SOD1抗体の存在に対して、ワクチン接種したマウスの脊髄溶解物を分析した。
組み換えG93A−アジュバントまたは生理食塩水‐アジュバントで免疫化したG37R SOD1を、その抗体力価が最も高い7週齢で犠牲にして、その後、脊髄溶解物をサイトゾル、重細胞膜、および軽細胞膜の分画にそれぞれ分けた。そのELISA分析結果、組み換えG93A−アジュバントでワクチン接種したマウスから得た脊髄の、1%トリトンX100に可溶性の細胞膜分画において、および、界面活性剤(detergent)を含まない緩衝液に可溶性の細胞膜分画において、組み換え‐G93A SOD1に対する抗体の力価が上昇したことがわかった。
【0075】
ワクチン接種したマウスの脊髄におけるSOD1種のクリアランスの証拠
G37R SOD1種のクリアランス(clearance)における免疫化の効果を検査するために、本発明者らにより作製された突然変異SOD1種に対して特異性を有する本発明における好ましい単クローン抗体(C4F6)、または、ラビットの多クローン抗‐ヒトSOD1抗体(SOD100)を用いるウエスタンブロット法を実施して、脊髄の全溶解物(total spinal cord lysate)を分析した。C4F6単クローン抗体は、組み換えG93Aたんぱく質でマウスを免疫化した後、前述の標準プロトコールに従って作製した。(実施例1参照)この多クローン抗体は、G93A SOD1を認識するが、G37A SOD1およびG85Rを含むその他の突然変異SOD1をより低いレベルで認識する。(図4a,b)しかしながら、C4F6はWT SOD1に対して非常に弱い反応性を示す。(図4a)C4F6単クローン抗体を用いて脊髄溶解物に対してウエスタンブロット検定法を実施した結果、アジュバント‐生理食塩水のコントロールマウスに比べて、ワクチン接種したマウスにおいてより低量の突然変異SOD1種が見られた。(図4c、d)他方で、多クローン性の抗‐ヒトSOD1(SOD100)抗体を用いた場合、ワクチン接種したグループとコントロールグルップとの間に、SOD1のレベルにおける差は見られなかった。(図4c)これらの結果は、免疫化が、突然変異SOD1のサブセット(推定するには、C4F6単クローンで検出可能なミスフォールドした種)の含量(burden)を減少させることで、G37Rマウスの疾患を改善するということを示唆する。
【0076】
突然変異SOD1を過度な(extreme)レベルで発現するALSマウスにおけるワクチン接種の限定された効果
前述の結果は、ALSの発病が遅延されるモデル、即ち、突然変異SOD1を5倍までに中等度で過剰発現するG37R SOD1マウス株を利用した能動免疫の有利な効果を示している。突然変異SOD1 mRNAを40倍までに過剰発現し、たんぱく質を17倍までに過剰発現する、広く使われているG93A SOD1マウス(B6SJL−TgN[SOD1−G93A1]1Gur)でワクチン接種した場合の効果についてもテストを行なった。その結果、これらのマウスにおいて、早くも90日でALSの症状が現れ、その後、疾患が進んで、130日で死亡に至った。
【0077】
抗原として組み換えG93A SOD1を用いて前述のプロトコールに従い能動免疫を実施した。しかしながら、このワクチン接種というアプローチによっては、G93A SOD1マウスにおける疾患の臨床的な発病およびその寿命を有意に変化させることができなかった。(図5a,b)ALSマウスモデルにおけるワクチン接種というアプローチの失敗に対して最も妥当と考えられる原因は、血液脳関門を通った抗‐SOD1抗体の量が、神経組織における突然変異SOD1たんぱく質の前記極端的なレベルを中和するに不十分であるとのことである。
【0078】
その代案として、浸透圧ミニポンプ(アルゼットポンプ、デュレット)を用いて抗体を直接脳室内に注入そて、G93A SOD1マウスにおける受動免疫化法についてテストした。受動免疫用の抗血清は、前述の通り、組み換えヒトSOD1突然変異体でワクチン接種したC57Bl/6マウスから得た。生理食塩水に対する親和性精製および透析を行ない(図5c)、その後、抗体の溶液またはコントロール生理食塩水を、発症前の(presymptomatic)G93A SOD1マウス(83日齢、抗‐SOD1抗体に対してN=5、および、コントロールに対してN=5)の脳室内の空間へ注入した。疾患の進行状況は、体重の一時的なプロファイルおよび後肢の反射により監視した。(方法の欄を参照)腰部の脊髄内への抗体の近接(approach)および貫通(penetrance)を立証するために、本発明者は先ず、FITCと共役したラビット多クローン性抗‐ヒトSOD1抗体の脳室内への注入を行なった。ポンプを設置してから16日が経った後、免疫組織検査により脊髄を検査するためにマウスを犠牲にした。免疫蛍光法を実施した結果、FITCで標識した抗‐ヒトSOD1抗体は、小嚢状の分布(vesicular distribution)を有しながら、主に脊髄のニューロンで検出されたが(図6a、矢の根)、時折活性小グリアで検出された。(図6a、矢印)これはコントロールIgG−FITC注入においてはそれほどはっきりしていなかった。(図6a,右側)ミニポンプに残存した抗体を集めて、ウエスタンブロット法で分析した。この結果、ミニポンプを皮下に移植してから16日後にも抗体は活性を維持していることがわかった。(図6b)この受動免疫法は体重の減少および後肢反射の損傷の両方を有意に遅らせた。(図5d、e.P<0.05,2ウェイANOVA)さらに、免疫化したマウスの平均(median)寿命は143日であったのに対して、コントロールマウスの場合135日であった。(P=0.0256,カプランーメイヤー寿命スパンテストおよびログ‐ランクテスト)ワクチン接種したマウスの平均寿命は141±1.4日であったのに対して、コントロールマウスの場合135±1.5日であった。(平均値±標準偏差、ステューデントt−検定によるP<0.05)したがって、1週間に至る有意な寿命の延長が見られた。
【実施例4】
【0079】
本発明の好ましい具体例に係るSOD1単クローン抗体の反応性
SOD1に対する単クローン抗体に関するELISA分析
ウェルプレートを1μg/mlの組み換えSOD1たんぱく質(WTまたはG93A)で被覆した。室温にて(PBS中の)BSAの5%溶液中で2時間遮断させた後、1%BSAを含むTBS中に連続的に希釈したマウス血清(1/2、1/10、1/20、および、1/40)を前記各々のウェルに加え、前記プレートを室温で1時間インキュベートした。基材として2,2'-アジノ−ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸) ジアンモニウム塩(ABTS)、および、ペルオキシダーゼと共役した抗‐マウス免疫グロブリンを用いて検出を行なった。450nmの波長で吸光度値を読み取った。
【0080】
図6および表3から明らかなように、単クローン抗体のクローンB1G9およびC4F6は突然変異体SOD1に対して特異的な反応性を示したが、その一方、その他のクローンは正常なSOD1または突然変異SOD1のいずれかに対して反応性を示した。クローンD3H5は正常なSOD1種および突然変異SOD1種に対して高度の親和性を有する。
【実施例5】
【0081】
本発明の好ましい単クローン抗体による、マウスの脊髄標本における突然変異SOD1種の特異的な免疫組織化学検出法
ヒトWT SOD1(J2429)または突然変異SOD1(G93AまたはG37R)を発現する正常なマウスまたはトランスジェニックマウスに、4%パラフォルムアルデヒド(PFA)でかん流させ、固定させ、そして、凍結防止剤中にインキュベートした。発症前の突然変異体SOD1トランスジェニックマウス(G37RおよびG93A)またはンヒトWTトランスジェニックマウスから得た25μmの脊髄分画を、マウス単クローン抗体‐ヒトSOD1抗体(C4F6クローン)を用いて染色した。前記脊髄分画を一次抗体(C4F6抗体に対して1:500)で4℃にて一晩インキュベートし、その後、ビオチン化抗‐IgG抗体でインキュベートした。ベックタステインABCキット(USAのカルフォルニア、ブルリンカームに所在するベクターラボラトリーズ社製)、および、3,3'−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB;シグマ社製)を用いてアビジン-ビオチン複合体(ABC)法により一次抗体を可視化した。
【0082】
標本において、ヒトWT SOD1(J2429)を発現するマウスからではなく、突然変異SOD種を発現するトランスジェニックマウスからの標本において免疫染色を検出した。
【実施例6】
【0083】
突然変異型SOD1に対する本発明の好ましい単クローン抗体(C4F6)の特異性
図16を参照すると、SOD1突然変異体でワクチン接種した場合、C4F6抗体に反応する突然変異SOD1種のCNS量を減らすことで保護作用を奏することがわかる。
【0084】
図16aはウエスタンブロット分析の結果を示しているが、ここで、C4F6マウスの単クローン抗体は突然変異型SOD1(G37RおよびG93A)を認識するが、トランスジェニックマウスの脊髄抽出物から得たWT SOD1を認識しない。図16bはELISA分析の結果を示しているが、ここで、C4F6単クローン抗体はG85R金属化(metallated)SOD1たんぱく質を検出するが、WT金属化SOD1組み変えたんぱく質を検出しない。さらに、最後の図16cは、脊髄抽出物のウエスタンブロット分析結果、C4F6抗体により検出された突然変異体SOD1種の量は、アジュバント−生理食塩水コントロールマウスに比べて、ワクチン接種したマウスのほうがもっと少ないことがわかった。各々のマウスから5ないし10mgのたんぱく質を各々のウェルに負荷し、ウエスタンブロット法を行なった。ワクチン接種したマウス、および、生理食塩水を注入したマウスの両方から選んだ3匹のマウスに対する分析を行なった。
【実施例7】
【0085】
本発明の好ましい単クローン抗体を用いる血液標本のウエスタンブロットによる突然変異SOD1のスクリーニング
突然変異SOD1 G93Aを発現するトランスジェニックマウス、ヒトWT SOD1を発現するトランスジェニックマウス、または、正常なマウスから得た血液標本(100μL)を1000xgで4℃にて15分間遠心分離した。そのペレットを10mM Tris−HCl(pH7.4)中で、アイス上に1時間インキュベートした。標本を20,000xgで4℃にて20分間遠心分離し、上清を集め、SOD−試料標本緩衝液中に5分間加熱した。この標本をSDS−PAGE上で分画化し、標準プロトコールにしたがってブロットした。バンドを検出するために、ブロットを、ペルオキシダーぜと共役したIgGで処理して、化学発光法による分析を実施した。
【0086】
図17において、上部のパネルは、正常なマウス(1〜5)、突然変異体SOD1 G93Aを発現するマウス(レーン6〜10)、および、ヒトWT SOD1を発現するマウス(レーン11〜14)から得たC4F6単クローン抗体を用いて血液標本の免疫ブロット法を実施した結果を示している。また、下部のパネルは、正常なマウス(1〜5)、突然変異SOD1 G93Aを発現するマウス(レーン6〜10)、および、ヒトWT SOD1を発現するマウス(レーン11〜14)から得たラビット多クローン抗−ヒトSOD1(BC,ヴィクトリアに所在するストレスゲン社製)を用いて血液標本の免疫ブロット法を実施した結果を示している。
【0087】
図17には、単クローン抗体C4F6が、ヒトSOD1遺伝子を発現するトランスジェニックマウスから得た血液標本で、正常なWT SOD1種を除いて、突然変異SOD1(G93A)を検出することが示されている。この結果より、この抗体が、簡単な血液テストを通じて突然変異SOD1種の診断スクリーンに用いられることがわかった。
【実施例8】
【0088】
本発明に係る好ましい単クローン抗体(D3H5)による、マウスの脊髄標本中のWTまたは突然変異SOD1種の免疫組織化学的検出法
正常なマウス、ヒトWT SOD1を発現するトランスジェニックマウス(J2429)、または、突然変異SOD1を発現するトランスジェニックマウス(G93AまたはG37R)を、4%パラフォルムアルデヒド(PFA)でかん流させ、固定させ、そして、凍結防止剤中にインキュベートした。発症前の突然変異SOD1トランスジェニックマウス(G37RおよびG93A)、または、ヒトWTトランスジェニックマウスから得た25μmの脊髄分画を、本発明において好ましいとされている単クローン性の抗−ヒトSOD1抗体(D3H5)を用いて染色した。前記脊髄分画を一次抗体(D3H5抗体に対して1:500)で4℃にて一晩インキュベートし、その後、ビオチン化抗‐IgG抗体でインキュベートした。ベックタステインABCキット(USAのカルフォルニア、ブルリンカームに所在するベクターラボラトリーズ社製)、および、3,3'−ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB;シグマ社製)を用いてアビジン-ビオチン複合体(ABC)法により一次抗体を可視化した。(図18を参照)
【実施例9】
【0089】
野生型SOD1は酸化を通じてALSに関連した突然変異型の毒性および結合性を獲得した。
材料および方法
プラスミドおよび抗体
HAで標識したマウスのクロモグラニンB(pcDNA−3−CgB−HA)、または、FLAGで標識したヒトSOD1(pcDNA3−FLAG−SOD1)を保有する(carrying)哺乳動物の発現プラスミドを参考文献[Urushitani et al., 2006, Nature Neurosc, 9, 108-118]の記載内容に従って作製した。ラビット単クローン性抗−ヒトSOD1(SOD−100)、および、マウスの単クローン抗体Hsp/Hsc70をストレスゲン社から購入した。ラットの単クローン性抗‐HA(3F10),マウスの単クローン性の、リン酸化されていない神経フィラメントH(SM132),マウスの単クローン性抗‐アクチン(C4)抗体をそれぞれローシュ社(スイスのバゼルに所在する)、ステインベルガーモノクロナル社(MAのバルチモアーに所在する)、および、ケミコン社(CAのテメクラに所在する)から購入した。抗‐クロモグラニンB(26102)およびCOX−IV(A−6431)抗体はQEDバイオサイエンス社(CAのサンディエゴに所在する)、および、モレキュラープローブ社(ORのユージンに所在する)から購入した。マウスの単クローン性抗‐シンタクシン(syntaxin)−1(HPC1)およびAkt1(B−1)はサンタクルーズ社(CAのサンタクルーズに所在する)から購入した。マウス/ラットTGN−38に対するラビットの多クローン抗体は参考文献[Urushitani et al., 2006, Nature Neurosc, 9, 108-118]の記載内容に従って作製した。
【0090】
培養、トランスフェクション、および、薬物治療
マウスの神経芽腫細胞株であるNeuro2a細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を含有するダルベッコの改質必須培地(DMEM)の中で維持させた。トランスフェクション(transfection)は、製造者のプロットコールにしたがってリポペックタミンPLUS(Caのカルスバドに所在するインヴィトロゲン社製)を用いて行なわれた。トランスフェクション後3時間が経過した時点で、前記培地を2mMジブチリルサイクリック‐AMP(db−cAMP)を含有する栄養培地に置き換えた。トランスフェクション後24時間が経過した時点で、更なる分析を行なうために、細胞を1.5mM過酸化水素(H2O2)または無菌水(コントロール)に45分間露出させた。マウスの小グリア細胞株BV2の細胞を10%FBS含有DMEM/F12ハム培地(DF)中で維持させた。最初のプレーティングを除き、培養培地は抗生物質を含んでいなかった。
【0091】
免疫ブロットおよび免疫沈降
前記培養された細胞をPBSで2回洗浄し、そして、50mM Tris−HCl(pH7.4),10%グリセロール、1%トリトンX−100、および、プロテアーゼ阻害剤カクテルからなるTNG−T緩衝液(ドイツのマンハイムに所在するローシュ社製)中で採取した。アイス上に1時間インキュベートしてから、細胞懸濁液を遠心分離して(15000rpmで20分間)、上清を集めた。細胞を過酸化水素で処理した場合に得られる効果を評価するために、細胞溶解物を抗‐FLAG親和性ゲル(MOのセイントルイスに所在するシグマ社製のM2)を用いて4℃で1時間インキュベートした。免疫沈降物を、4%SDS試料標本緩衝液中で溶離させ、SOS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、そして、二フッ化ポリ二塩化ビニリデン(PVDF)膜(MAのボストンに所在するパーキンエルマー社製)に転写した。ウエスタン電光化学発光試薬(パーキンエルマー社製)を用いてウエスタンブロット映像を得た。
【0092】
インビボユビキチン化
ポリ‐ユビキチン鎖によるヒトSOD1の改質はインビボユビキチン化実験により行なわれた。参考文献(Urshitani et al., 2002, J. Neurochem 83, 1030-1042)Neur2a細胞に対し、FLAGで標識したhSOD1(WTまたはG93A突然変異体)およびHAで標識したユビキチンで共トランスフェクション(cotransfection)を行なった。過酸化水素に露出させてから、前述したプロトコールに従い、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有するTNG−T緩衝液中で細胞を採取した。この溶解物を抗−FLAG親和性ゲル(シグマ社製のM2)を用いて免疫沈降を行い、そして、免疫ビードからの溶出物(elute)を、抗−HA(ローシュ社製)および抗−ヒトSOD1(ストレスゲン社製)抗体を用いてウエスタンブロット法により分析した。
【0093】
組み換えたんぱく質の精製
組み換えグルタチオンS−トランスフェラーぜと融合したhSOD1(GST−hSOD1)を、参考文献[Urushitani et al., 2002, J. Neurochem 83, 1030-104]の記載内容に従って作製した。hSOD1の金属化(metallation)は20mMのZnCl2で一晩インキュベートし、20mMのCuCl2と3時間インキュべートとし、そして、PBSに対する透析を一晩行なうことによって行なわれた。さらに、組み換えholo−hSOD1の酸化は0.1mMの過酸化水素で室温にて1時間インキュベートした後、PBSに対して一晩透析を行なうことによって行われた。組み換えたんぱく質は使用するまでに―80℃の温度にて保管した。
【0094】
細胞内分画化(subcellular fractionation)
Nuero2a細胞に対し、6ウェル細胞プレートにてFLAGで標識したSOD1(WTおよびG93A)で一時的にトランスフェクションを行なった。トランスフェクション後24時間が経過した時点で、細胞をDMEM中の1.5mMの過酸化水素溶液で30分間処理した後、過酸化水素を除去した栄養培地内で30分間さらにインキュベートした。収穫した細胞を均一化緩衝液(250mMスクロース、10mMのTris−HCl(pH7.4),1mMのMgCl2、および、プロテアーゼ阻害剤カクテル)中で均一化し、1000gで15分間遠心分離を実施して、細胞破片を除去した。その上清を8000gで15分間さらに遠心分離して、ペレット(重分画)および上清を分離した。この上清は105,000gで60分間超遠心分離を行い、細胞質分画(上清)、および、軽い細胞膜の分画(ペレット)を得た。超音波処理して、1%Triton−X100を含有する均一化緩衝液中に前記各々のペレットを再び懸濁させた。ブラッドフォード検定法(CAのヘルクレスに所在するBioRad社製)でたんぱく質の濃度を測定した後、等量のたんぱく質をウエスタンブロット法により分析した。
【0095】
判定量RT−PCR
6ウェル培養プレートにおいて90%の密集度を示すマウスの小グリア細胞株であるBV2細胞を、PBS, LPS(10μg/ml)、WT SOD1(10μg/ml)、酸化型WT SOD1(10μg/ml),または、G93A SOD1(10μg/ml)で24時間処理した。全てのSOD1組み変えたんぱく質は予め金属化した。製造者の指示に従ってトリゾル試薬(インビトロゲン社製)を用いて、全細胞溶解物から全RNAを抽出した。逆転写酵素およびオリゴ−dTプライマー(インビトロゲン社製)を用いて、全RNAから第1のストランドcDNAを合成した。腫瘍壊死因子(TNF−α)、誘導可能な酸化窒素合成酵素(iNOS)、および、GAPDHの発現レベルをPCRにより評価した。この実験において用いられた1対のプライマーは、TNF−αに対しては5' TCAGTGAGACCACTGCAATG 3'(配列番号1)、および、5'GTGGAGTGAGACTTTGGATG 3'(配列番号2) であり;iNOSに対しては、5' CCTTGTGTCAGCCCTCAGA 3'(配列番号3)、および、5'CACTCTCTTGCGGACCATCTC 3' (配列番号4)であり;そして、GAPDHに対しては、5'GGCATTGTGGAAGGGCTCA 3'(配列番号5)、および、5'TCCACCACCCTGTTGCTGT 3'(配列番号6)であった。
【0096】
マウス胚の脊髄の1次培養物
胚児マウスの脊髄から得た1次解離培養物を参考文献[Urushitani et al., 2002, J. Neurochem 83, 1030-104]に記載された方法にしたがって作製した。プレーチィングを行なってから12日経過後、培養物を組み換えたんぱく質(ヒトWT SOD1、ヒト酸化型WT SOD1、および、ヒトG93A SOD1)で24時間処理し、4%パラフォルムアルデヒド(PFA)の中で固定した。抗−リン酸化されいない神経フィラメントH(SM132;1:500)を用いる免疫組織化学検定法によって運動ニューロンの生存率を測定した。運動ニューロンは、単一の伸張型軸索を有するSMI32−免疫反応性(20Umを超える大きさの)ニューロンとして同定された。アレクサ488と共役した項−マウスIgGを二次抗体として用いた。培養物を蛍光顕微鏡下で観察し、3つの姉妹培養物から任意に選んだ領域からの4つの映像を得た。前記各々の領域から運動ニューロンの数を得て、そして、細胞の密度(細胞数/cm2)を計算した。
【0097】
結果
酸化ストレスによるWT SOD1のミスフォールド現状
SOD1が神経変性における酸化的なストレスの標的たんぱく質であるとの仮定を検証するために、本発明者は、細菌を精製した組み換えSOD1たんぱく質を1mM過酸化水素で37℃にて30分間処理し、その後、その移動パターンおよび溶解度を分析した。過酸化水素で処理した組み換えSOD1の全分画に対してウエスタンブロット法を実施した結果、移動パターン、分画化、および、高分子凝集体の形成において著しい変化が見られた。(図10A,レーン2,4、および、6)さらに、過酸化水素で処理した後、組み換えたんぱく質に対して超遠心分離を行なった結果、そのような酸化に関連した種が上清ではなく、もっぱらペレット分画において検出された。(図10B)単量体および二量体のSOD1種だけが上清において検出された。WT SOD1が突然変異SOD1に比べてより酸化的ストレスに影響されにくいにもかかわらず、ウエスタンブロット分析から得られた分子における変化は突然変異と類似していることは明らかであった。インビトロにおけるこれらの実験結果により、酸化が突然変異SOD1だけでなくWT SOD1のミスフォールド現状、および、凝集体形成に影響を及ぼすということがわかった。本発明に基づいたこの結果は、WT SOD1の酸化が、光散乱分析法によりインビトロで行なわれた凝集体形成を促すという以前の報告と一致するものであった。さらに進んで、インビボでのWT SOD1の酸化を検証するために、N末端においてFLAGペプチドで標識したWTおよびG93A SOD1でNeuro2a細胞に対するトランスフェクションを行い、そのトランスフェクションが終わってから24時間が経過した時、1.5mM過酸化水素に45分間露出させた。その後、抗−FLAG親和性ゲルを用いて、トランスフェクトされた細胞の溶解物のプルダウン分析(pull-down assay)を行なった。その結果、Hsp/Hsc70は突然変異G93A、酸化型WT SOD1と共免疫沈降されたが、非酸化型WT SOD1とは共免疫沈降されなかった。(図11A)過酸化水素による酸化は、WT SOD1のミスフォールド現状を引き起こすと共に、Hsp/Hsc70との相互作用を保証するということがわかった。
【0098】
酸化型WT SOD1は多−ユビキチンと共役し得る
ALSと関連したSOD1突然変異たんぱく質のうち殆どのタイプは、ユビキチン−プロテアソーム経路により分解される。この概念に基づいて、本発明者は、酸化がWT SOD1たんぱく質を形質変換させ(transform)、多−ユビキチン化(ubiquitination)に適した種をミスフォールドするかどうかを調べるために、インビボユビキチン化実験を行なった。Neuro2a細胞に対し、HAで標識したユビキチンと共に、FLAGで標識したWTまたはG93A SOD1でトランスフェクションを行い、その後、採取する前に1.5mM過酸化水素に45分間露出させた。全細胞溶解物および抗−FLAG免疫沈降物に対するウエスタンブロット分析を行なった結果、過酸化水素で処理した細胞中のWT SOD1が、未処理細胞から得たWT SOD1とは違って多−ユビキチン鎖と共役していることがわかった。同様の現状はG93A突然変異SOD1においても観察された。(図11B)
【0099】
酸化型WT−SOD1はクロモグラニンBと相互作用する。
本発明者は、突然変異SOD1の結合パートナーとしてのクロモグラニンB(CgB)を予め同定した。クロモグラニンは突然変異SOD1種と相互作用して、その分泌を促すことがわかった。酸化型WT SOD1種がクロモグラニンと相互作用するかどうかを調べるためにNeuro2a細胞を、マウスのHAで標識したCgBと共に、FLAGで標識したWTまたはG93A SOD1を用いて、トランスフェクションを行った。トランスフェクション後24時間が経過した時点で、細胞を採取する前に、1.5mM過酸化水素に45分間露出させた。分画化されたNeuro2a細胞溶解物に対するウエスタンブロット検定を行った結果、WTおよび突然変異SOD1両方が、CgBが豊富に発現されるミクロソーム分画に分布されていることがわかった。(図12A)過酸化水素で処理することは、細胞内の分画におけるWTおよび突然変異SOD1のたんぱく質のレベルに影響を及ぼすことはなかった。全細胞溶解物を、抗−FLAG親和性ゲルで免疫沈降を行い、ウエスタンブロット法によって分析した。図12Bに示すように、CgBは、G93A SOD1または酸化型WT SOD1のいずれかと共免疫沈降されたが、完全なWT SOD1とは共免疫沈降することはなかった。この結果は、ER−Golgi区画(compartment)に分布されているWT SOD1の酸化がクロモグラニンに対する結合を誘発するということを意味する。
【0100】
酸化型WT SOD1は運動ニューロンの壊死および小グリア活性化を引き起こす
WTおよび突然変異SOD1種の両方が分泌される証拠がある。しかしながら、WT SOD1とは違って、分泌された突然変異SOD1はTNF−α、iNOS,および、COX2のような炎症反応を促進する分子を生じさせる。小グリアを活性化するに酸化型WT SOD1が突然変異SOD1と類似した作用をするかどうかを調べるために、マウスの小グリアのBV2細胞を、過酸化水素で処理したか又は処理していない、細菌精製した組み換えholo−SOD1に露出させた。半定量RT−PCR実験により、G93A SOD1または酸化型WT SOD1のいずれかにBV2細胞を露出させると、TNF−αおよびiNOSの発現が誘発されることがわかった。(図13)
【0101】
WT SOD1とは違って、細胞外の突然変異SOD1は、小グリアがない場合にも、培養された運動ニューロンの壊死を誘発することができる。ここで、胚児の脊髄培養物を、組み換えWT SOD1、酸化型WT SOD1、またはG93A SOD1(0.5および1.0μg/ml)に24時間露出させた。予想の通り、WT SOD1はこのような濃度範囲において毒性を示すことはなかった。しかしながら、酸化型WT SOD1は、G93A突然変異SOD1と同様、培養された運動ニューロンに対して容量依存的に毒性を示した。(図14)本発明者は、アメーバ様細胞の形態を特徴とする混合された培養物における小グリア活性化を観察した。(データは示さない)これらの結果は、酸化型WT SOD1が突然変異SOD1種の神経毒性を獲得したことを示している。
【0102】
考察
ここに示した結果から、本発明者は、WT SOD1が、ALSと関連した突然変異SOD1の毒性および結合特性の多くを、酸化を通じて獲得するという結論に至った。この結論は次の結果により裏付けられている。1)過酸化水素で処理した組み換えWT SOD1が突然変異SOD1種の凝集体に類似した凝集体を産出するということ;2)Hsp/Hsc70および多−ユビキチン化によって明らかになったように、酸化がWT SOD1のミスフォールド現状を引き起こすということ;3)酸化型WT SOD1が膜の分画に分布され、そして、トランスフェクトされた神経細胞における神経分泌たんぱく質であるCgBと相互作用するということ;4)細胞外の酸化型WT SOD1が小グリア活性化および培養された運動ニューロンの壊死を引き起こすということ。
【0103】
パーキンソン病、アルツハイマー病およびALSを含めて神経変性疾患の発病機序に酸化的ストレスが関与することについての証拠は数多くある。総たんぱく質の1%を構成する程度のSOD1の豊富さ、および、抗酸化剤としてその機能を考慮すると、SOD1は神経変性疾患における酸化的ストレスの標的であり得ると推定することができる。事実上、WT SOD1の酸化は既に確立されている現状である。過酸化水素はWT SOD1の活性部位と相互作用することができ、そして、ヒドロキシル基を生産することで酵素を活性化し得る。参考文献[Rakhit et al., 2004, J. Biol. Chem., 279. 15499-15504]によれば、WT SOD1は酸化しがちな4つのアミノ酸(His48,80,120、および、Phe20)を保有しており、これらの酸化はSOD1の凝集体形成を引き起こす。さらに、WT SOD1におけるシステイン残基の酸化はミスフォールド現状を引き起こし、また分子間ジスルフィド(disulfide)を介する凝集体形成を引き起こすことができる。
【0104】
本発明における結果は、酸化型WT SOD1が突然変異SOD1のような神経分泌たんぱく質CgBと相互作用するということを示している。環境(milieu)に分泌されてしまうと、細胞外の酸化型WT SOD1は小グリア細胞を活性化させ、そして、運動ニューロンの壊死を引き起こす(図14)。分泌された酸化型WT又は突然変異体SOD1に基づいた前記毒性モデルは、前記疾患が運動ニューロンと厳格に自立したものではないし、種々の細胞が運動ニューロン、介在ニューロン(interferone)、小グリア、および、星状膠細胞を含む疾患に寄与するという観点と競合する。また、突然変異SOD1を発現するキメラマウスの分析結果から明らかなように、損傷がどのようにして1つの細胞から別の細胞に広がることができるのかを説明する。
【0105】
ここに示された結果に照らして、他の神経変性疾患の発病機序におけるSOD1の役割ははやり除外することができない。最近の報告[Choi et al., 2005, J. Biol. Chem, 280, 11648-11655]によれば、アルツハイマー病およびパーキンソン病を患っている患者から得た脳の溶解物において酸化型SOD1が見られ、そして、老人斑レヴィー小体においても酸化型SOD1たんぱく質が存在する。
【0106】
以下に示す表1は、免疫化したマウスにおいて、G93A SOD1に対する抗体に対してELISA検定により血清滴定を行なった結果である。ワクチン接種したマウスから得た血清に対する抗体滴定はELISAにより行なわれた。表2は、WTおよび突然変異SOD1種で免疫化したマウスから得た抗血清の異なる反応性を示すELISAデータである。そして、表3は、ELISAにより測定された、組み換えヒトWT, G85R,またはG93A SOD1金属化たんぱく質に対する抗体の力価を示す。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1はワクチン接種したG37 SOD1マウスにおける寿命の延長、及び、遅延された発病を示す。図1aは、免疫化のスケジュールを示す。図1aは免疫化の初期。2ヶ月齢に始まり、マウスに4回注射した。末期(end-stage)の4ヶ月齢の時点で滴定分析のために血液を集めた。図1bは、初期の免疫化プロトコールにしたがってワクチン接種したマウスのロッタロッド分析結果を示す。ロッタロッド上の時間は、組み換え(rec)G93A−アジュバント(N=8)、または、生理食塩水−アジュバント(N=7)で注射したG37R SOD1マウスに対して決められた。ワクチン接種は運動性を有意に改善させた。(多重比較、P<0.0001)図1cは、組み換え(rec)G93A−アジュバント、または、生理食塩水−アジュバントで注射したG37R SOD1マウス発病の遅延に対する免疫化の効果を示す。(ログランク検定、P<0.0011)図1dは、免疫がG37R SOD1マウスの寿命を延長する。生存に関するカプランマイヤー曲線を示す。組み換えG93A−アジュバントに対してはN=8、そして、生理食塩水−アジュバントに対してはN=7。(ログランク検定、P<0001)図1eによれば、疾患の末期において、ワクチン接種したマウスの場合、残存する運動ニューロンの数が多かった。トルイジンブルーで該分画を染色した後、各グループごとに4匹のマウスから4つの分画における運動ニューロンの数を数えた。(スチューデント検定、*P<0.01)図1fは、NeuNに対する抗体を用いて、組み換えG93A SOD1たんぱく質(上部)または生理食塩水(下部)で免疫化した末期のG37R SOD1トランスジェニックマウスの脊髄に対する免疫組織化学検定法を実施した結果である。
【図2】図2aは、Mac2抗体を用いて免疫化したマウスから得た脊髄の免疫化学分析検定の結果を示す。組み換えG93A SOD1でワクチン接種したマウスの反応性小グリア細胞においてMac2染色が目立っている。(左側の2つのパネル)図2bは、ワクチン接種したALSマウスの脊髄においてIgGの染色および小膠細胞症が増加したことを示す。ワクチン接種し、または生理食塩水/アジュバントを注射したグループからのG37R SOD1トランスジェニックマウスの脊髄分画は、ラット単クローン性項−Mac2抗体で処理した後に、アレクサ488と共役した抗−ラットIgG(左カラム)と共にアレクサ294と共役した抗−マウスIgGと処理して、内因性IgGを検出する。(中間カラム)。各々の色素につき、固定された条件(fixed condition)下で写真を撮った。ワクチン接種したG37R SOD1マウスにおいてIgG信号が増加したことがわかる。スケールバー(scale bar)=50μm
【図3】抗体の力価がワクチン接種したマウスの寿命との関連性を示す。図3aは、ELISAを用いて、免疫化したマウスの血清の抗体を滴定した結果を示す。組み換えG93Aで処理したG37R SOD1マウスに対してN=7であり、生理食塩水を注射したマウスに対してはN=6である。4ヶ月齢の末期のマウスから得た血清をテストした。組み換えG93Aで処理した非−トランスジェニックマウスに対してはN=4(全て4ヶ月齢)であった。図3bは、免疫化したマウスにおける寿命と抗−ヒトSOD1力価との関連性を示すものである。4ヶ月齢における抗−ヒトSOD1の力価に対するELISA値および寿命(週)を散布図(scatter diagram)上にプロットした。組み換えヒトSOD1で処理したグループに対してN=7であり、生理食塩水を注射したグループに対してN=6である。P=0.0011(スピアマンのローテスト)図3cは、組み換えG93Aでワクチン接種したマウスから得た抗血清がヒトG38R SOD1突然変異体を検出するというウエスタンブロット検定結果を示す。各々のグループから選んだ2匹の異なるマウス、即ち、組み換えG93A SOD1でワクチン接種したグループから選んだマウス752および754、ならびに、生理食塩水−アジュバントを注射したグループから選んだマウス758および759から得た血清を、G37R SOD1マウスから得た脊髄溶解物と反応させ、非トランスジェニック同腹子を形成した(WT坑血清)。矢印の根(arrowhead)はG37R SOD1を示し、星印はマウスの内因性SOD1を示す。膜を、ヒトSOD1(WTαhSOD1)およびアクチン(WB α actin)に対する市販の抗体を用いて再びブロットした。図3dは、WTまたは突然変異SOD1たんぱく質に対して免疫化したマウスから得た抗血清の異なる反応性を示す。金属化した組み換えヒトWT,G85RまたはG93A SOD1金属化たんぱく質に対する抗体の力価はELISAにより測定される。組み換えG93A SOD1または組み換えWT SOD1でワクチン接種したG37R SOD1マウスで構成されたグループ、および、組み換えG93A SOD1でワクチン接種したトランスジェニックマウスで構成されたグループに対してそれぞれN=3であった。そのデータは各々のマウスのグループにおける組み換えWT SOD1に対する力価に比した力価の百分率として示した。(平均±標準偏差)*P<0.05(ボンフェロニ法を利用した2ウェイANOVAにより求めた)図3eは、ワクチン接種したマウスから得た脊髄溶解物の抗体滴定を行うためのELISA検定を示している。7ヶ月齢で組み換えG93A SOD1を注射したマウス(N=3)、または、生理食塩水−アジュバントを注射したマウス(N=3)から得た脊髄溶解物を細胞より小さく分画化して、界面活性剤を含まない緩衝液に溶解性の(溶解性)、および、不溶性の(膜)分画を得た。*P<0.05(1ウェイANOVAにより求めた)
【図4】本発明の好ましい単クローン抗体でワクチン接種したことによる、脊髄における突然変異SOD1種のクリアランス(clearance)を示す。図4aは、本発明の好ましい1つの単クローン抗体、いわゆるC4F6単クローン抗体が突然変異SOD1(G37RおよびG93A)を認識するが、トランスジェニックマウスの脊髄抽出物からのWT SOD1を特異的に認識しないことを示すウエスタンブロット検定結果である。図4bは、C4F6単クローン抗体が、G85R金属化SOD1たんぱく質を検出するが、WT金属化SOD1組み換えたんぱく質を検出しないことを示す。図4cは、脊髄抽出物に対するウエスタンブロット検定を実施した結果、アジュバント−生理食塩水コントロールマウスに比べて、ワクチン接種したマウスにおいてC4F6抗体により検出された突然変異SOD1種の量がより少ないことを示す。各マウスから得た5および10μgのたんぱく質を、ウエスタンブロット検定を実施するために各々のウェルに負荷した。ワクチン接種したマウスおよび生理食塩水−アジュバントを注射したマウスの両方から選んだ各3匹のマウスに対して分析を行なった。図4dは、図4cにおけるウエスタンブロットのデータに対し密度測定分析を行った結果である。コントロールグループの平均値を1つに標準化した。データは平均±標準偏差を意味する。(N=各グループから3匹)
【図5】極端なレベルの突然変異SOD1たんぱく質を有するG93Aマウスにおける能動または受動免疫化の効果を示す。図5a,bはカプランマイヤー曲線により示したように、G93AGur SOD1マウスの疾患の発病(a)、および、生存の蓋然性(b)に対して能動免疫化の限られた効果を示す。マウスに対して、G37R SOD1マウスに用いられたプロトコールと同様のプロトコールにしたがってワクチン接種を行なった。組み換えG93Aで処理したマウスに対してN=12であり、生理食塩水−アジュバントで処理したマウスに対してN=8であった。データはログ−ランク検定法によって分析された。 図5c〜5eには、G93A SOD1マウスにおける受動免疫化の有意な効果が示されている。マウスに対して、85日齢で始まり、坑−SOD1抗体(N=5)、または、コントロール生理食塩水(N=5)の脳室内注入を行った。図5cにおいて、ウエスタンブロット検定の結果は、免疫化されたマウスの坑血清から得た親和性精製された坑−G93A SOD1抗体の存在が証明された。図5d〜fは、体重(図5d)および後肢反射点数(図5e)により監視したように、坑−ヒトG93A SOD1抗体を用いて行った受動免疫化が疾患の症状を和らげることができるということを示している。その結果は統計学的に有意義なものである。(p<0.05、2ウェイANOVA)。図5fは、受動免疫化が、生理食塩水を注射したマウスに比べてG93A SOD1マウスの寿命を延ばしたことを示す。(p<0.025、カプランマイヤー生存検定法、ログ−ランク検定法、および、スチューデントt−検定法による)
【図6】浸透圧ミニポンプを通じて注入した坑−ヒトSOD1抗体は腰部の脊髄内へ浸透し、前記ポンプを設置してから16日が経過した時点においてもその活性を保持していた。ラビット多クローン性坑−ヒトSOD1抗体またはコントロールIgGを、FITCと共役させ、G93A SOD1マウス(100日齢)を対象にして、浸透圧ミニ−ポンプを通じて脳室内へ注入させた。 図6aは、FITCと共役した坑−ヒトSOD1抗体(左カラム)またはコントロールIgG(右カラム)を脳室内へ注入して治療したG93A SOD1マウスの腰部の脊髄の免疫蛍光分析の結果を示す。グリーン色はFITCと共役した抗体またはコントロールIgGを示し;赤色は坑−NeuNを示し;青色は坑−Mac2抗体を示す。FITCと共役したSOD1抗体を脊髄のニューロン(矢印の根)、および、小グリア(矢印)の付近で検出した。図6bは、ポンプを設置してから16日が経過した時点で標本から得たFITCと共役した坑−ヒトSOD1抗体またはコントロールIgGを用いて、脊髄の抽出物に対してウエスタンブロットを行った結果を示している。
【図7】突然変異SOD1およびWT SOD1に対する、本発明の好ましい単クローン抗体の親和性のELISA分析の結果を示す。
【図8】配列番号7のスーパーオキサイドジスムターゼ1のアミノ酸の配列を示す。
【図9】配列番号8のスーパーオキサイドジスムターゼ1の核酸の配列を示す。
【図10】酸化が、インビトロでWT SOD1の凝集体形成を誘発することを示す。図10aは過酸化水素で処理してSOD1凝集体を形成したことについて示す。細菌を精製した組み換えSOD1たんぱく質(1mg/ml、G85RおよびG93A)を、1mMの過酸化水素を含む溶液で37℃にてインキュベートした。50U/mlのカタラーぜを加えて反応を中断させ、坑−ヒトSOD1抗体を用いるウエスタンブロット検定法によりたんぱく質の標本を分析した。過酸化水素処理を行った場合、WT SOD1は突然変異SOD1たんぱく質の標本において多く見られる凝集体の形成と同様、高分子凝集体を形成した。矢印はその配列が質量分析により確認されたSOD1の断片を示す。(そのデータは示さない)星印は過酸化水素を除去するために加えられたカタラーゼを示す。図5Bは、酸化により引き起こされた凝集体の形成およびSOD1の断片がPBS中で溶解度が変化されたことについて示す。過酸化水素で組み換えSOD1たんぱく質を処理した後、たんぱく質をPBSに対して透析し、その後、超遠心分離を行なった(105,000gx1時間)。上清およびペレットを、抗ヒトSOD1抗体を用いてウエスタンブロット検定により分析した。様々なパターンの分画化、および、SODF1断片を含む可能な複合体が矢印で示したように現れた。
【図11】インビボにおける酸化的なストレスによるWT SOD1のミスフォールド現状を示す。図11Aは、Hsp/Hsc70と、インビボにおける突然変異SOD1、または、WR SOD1との相互作用を示す。Neuro2a細胞は、培養プレートにおいてFLAGで標識されたhSOD1(WTおよびG93A;2μg/ウェル)で一時的にトランスフェクションさせた。トランスフェクション後24時間が経過した時点で、細胞を1.5mM過酸化水素を含有する緩衝液で45分間インキュベートした。溶解物を抗−FLAG親和性ゲルで免疫沈降し、ブロットを抗−SOD1または抗−Hsp/Hsc70抗体でプローブした。空っぽの矢印はIgGの重鎖を示す。それに対して、ブラックの矢印は酸化型WT SOD1または突然変異SOD1で共免疫沈降されたHsp/Hsc70たんぱく質を示す。図11Bは酸化型WT SOD1たんぱく質と多ユビキチン(multi-ubiquitin)の共役に関する。HA−ユビキチン(HA−Ub;1μg/ウェル)をFLAG−hSOD1で共トランスフェクションさせ、その後、Aに記載した実験を行なった。抗−FLAG親和性ゲルでの免疫沈降物(immunoprecipitate)を12.5%SOS−ポリアクリルアミドゲル上に溶解させた。免疫沈降物(左側のパネル)および10%投入(流入)溶解物(input lysate)(右側のパネル)を、SOD1または抗−HA抗体を用いるウエスタンブロット検定法で分析した。空っぽの矢印はIgGの軽鎖を示す。多−ユビキチンは酸化型WT SOD1種だけでなく、突然変異SOD1とも共役した。
【図12】酸化型WT SOD1または突然変異SOD1とクロモグラニンBとの相互作用を示す。図12Aは、トランスフェクションされたNeuro2aにおけるヒトSOD1の細胞内分布(subcellular distribution)脳エスタンブロット検定結果を示す。hSOD1−FLAG(WTおよびG93A突然変異)でトランスフェクションしてから24時間が経過した時点で、細胞を1.5mM過酸化水素で45分間処理し、その後、採取した。その後、細胞を細胞内分画化処理し、サイトゾルの分画(レーン1〜4)、重量膜(heavy membrane)の分画(レーン5〜8)、および、軽量膜(light membrane)の分画(レーン9〜12)を得た。ヒトSOD1およびCgBの分布を分析した。Akt−キナーゼ、COX−IV,TGN−38,および、シンタクシン−1は、それぞれサイトゾル、ミトコンドリア、ミクロソーム、および膜成分に対するマーカであった。図12Bにおいて、Neuro2a細胞はhSOD1−FLAG(WTおよびG93A、1μg/ウェル)で一時的なトランスフェクションを行なった。トランスフェクション後24時間が経過した時点で、細胞を1.5mM過酸化水素に45分間露出させた。その後、細胞の溶解物を抗−FLAG親和性ゲルで免疫沈降させた。免疫沈降物および10%投入溶解物を、抗−SOD1または抗−HA抗体を用いるウエスタンブロット検定により分析した。(12.5%SDS−アクリルアミドゲル)
【図13】酸化型WT SOD1により引き起こされた小グリアの活性化を示す。小グリアBV2細胞を、過酸化水素で処理し、または、無傷の(intact)WT SOD1(Ox−WT SOD1、または、WT SOD1,10μg/ml)、非酸化型G93A SOD1(10μg/ml)、LPS(10μg/ml)、または、コントロール用のPBSに37℃にて24時間露出させた。全RNAを、腫瘍壊死因子(TNF−α)、誘導可能な酸化窒素合成酵素(iNOS)、および、GAPDH(Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)に対する1対のプライマーを用いて、半定量逆転写酵素PCR(RT−PCR)により分析した。図13AはRT−PCRの代表的なデータである。図13BはPBSコントロールとの比較により得られた発現比(expression ratio)およびGAPDHで標準化した濃度測定値を示す。(ボトム;平均±標準偏差)
【図14】酸化型WT SOD1および突然変異SOD1が培養された運動ニューロンに対して同様の毒性を有することを示す。E13胎児マウスの脊髄からインビトロで12日間培養させた培養物(解離したもの)を、過酸化水素で処理した組み換えWT SOD1(Ox.WT SOD1)、未処理の組み換えWT SOD1(WT SOD1)、または、G93A SOD1(0.5および1.0μg/ml)に37℃24時間露出させた。培養物を固定して、抗−非リン酸化神経フィラメントH(SM132)で標識した。図14AはコントロールPBS(最上、左側)WT SOD(最上、右側)、過酸化水素で処理したWT SOD1(最下、右側)、およびG93A SOD1(最下、左側)の顕微経写真である。図14Bは、処理後の運動ニューロンの生存について示している。SM132−ポジティブニューロンの数がコントロールに対して%で表されている。酸化型WT SOD1またはG93A SOD1に露出した運動ニューロンの生存率(viability)は無傷のWT SOD1で処理した培養物またはコントロール培養物に比べて少なかった。データは平均±標準偏差で示した。データは多様性分析(analysis of variance)により推定された。(ANOVA,P<0.05)
【図15】ヒトトランスジェニクマウスから得た脊髄分画を用いて行なった免疫組織化学検定の結果を示す。クローンC4F6で染色したとき、SOD1突然変異体を優先して認識した。発症前の突然変異SOD1トランスジェニックマウス(G37RおよびG93A)またはヒトWTトランスジェニックマウスから得た脊髄のスライス(厚さ25μm)を、本発明の好ましい単クローン抗体、いわゆるC4F6を用いて染色し、ビオチン化二次抗体、およびアビジン−ビオチン複合体システム(ベックタステイン社製)で処理した。ジアミノベンジジン(DAB)を色原体
【図16】本発明の好ましい単クローン抗体を用いて行なわれたウエスタンブロット検定の結果を示す。図16aは本発明の好ましい単クローン抗体、いわゆるC4F6が、ヒトSOD1トランスジェニックマウスからのWT ASOD1マウスよりG37R SOD1をよりよく認識することを示すウエスタンブロット検定結果である。コントロールとして、ラビット多クローン抗−ヒトSOD1抗体(S100,ストレスゲン社製)を用いた。図16bは、C4F6抗体が、WT金属化組み換えたんぱく質より、G85R金属化SOD1たんぱく質に対して反応することを示している。図16cは、本発明の好ましい別の単クローン抗体、いわゆるD3H5がWTおよび様々な突然変異SOD11たんぱく質を認識することを示すELISA分析結果である。マウスの神経芽細胞腫
【図17】本発明の好ましい単クローン抗体、いわゆるC4F6を用いてヒトSOD1 Tgマウスを検出した結果を示す。マウスから得た血液(50〜100μL/マウス)をEDTAで処理した試料チューブ(sampling tube)に移した。1000xgで4℃にて15分間遠心分離してから、ペレットをアイス上で10mMTris−HCl(pH7.4)で1時間インキュベートした。標本を20,000gで4℃にて20分間遠心分離して、上清を集めて、SDS標本緩衝液中で5分間加熱した。図17は、本発明の好ましい単クローン抗体、いわゆるC4F6マウス単クローン抗体(上部パネル)、および、ラビット多クローン抗−ヒトSOD1抗体(BC,ヴィクトリアに所在するストレスゲン社製)を用いてウエスタンブロット検定を行なった結果を示している。各レーンはたんぱく質を10μg含有する。
【図18】ヒトSOD1トランスジェニックマウスから得た脊髄分画を用いて実施した免疫組織化学検定の結果を示す。本発明に係る単クローン抗体、いわゆるD3H5で染色した場合、WTおよび突然変異SOD1の両方を認識した。発症前の突然変異SOD1トランスジェニックマウス(G37RおよびG93A)およびヒトWTトランスジェニックマウスから得た脊髄スライス(25μm)を、マウス単クローン抗−ヒトSOD1抗体(D3H5クローン)を用いて染色し、ビオチン化二次抗体、および、アビジン−ビオチン複合体システム(ヴェックタステイン社製)で処理した。ミノベンジジン(DAB)を色原体として用いた。ハイブリドーマ培養培地の上清から抗体を得た。(1:500)図18eおよびfは一次抗体なしの負のコントロールである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カナダ国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託番号ADI−290806−01として寄託されたハイブリドーマ細胞株。
【請求項2】
カナダ国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託番号ADI−290806−02として寄託されたハイブリドーマ細胞株。
【請求項3】
カナダ国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託番号ADI−290806−03として寄託されたハイブリドーマ細胞株。
【請求項4】
請求項1に記載のハイブリドーマ細胞株から産生された単クローン抗体。
【請求項5】
請求項2に記載のハイブリドーマ細胞株から産生された単クローン抗体。
【請求項6】
請求項3に記載のハイブリドーマ細胞株から産生された単クローン抗体。
【請求項7】
動物に投与された際に、異常なスーパーオキサイドジスムターゼ(以下、「SOD1」という。)の病理効果を中和する活性を保有することを特徴とする異常なSOD1に特異的に結合する抗体。
【請求項8】
前記抗体が、単クローン抗体、または、多クローン抗体である請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、単クローン抗体である請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリドーマ細胞株によって産生された請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
請求項4から10のいずれか一項に記載の1つ以上の抗体と、医薬的に許容可能な担体と、を含有する動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療および/または予防に適用される組成物。
【請求項12】
前記動物におけるSOD1異常と関連した疾患が、神経変性疾患である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病からなる群から選ばれる疾患である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
1つ以上の抗−異常SOD1抗体を用いて、動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療および/または予防用組成物を製造する方法。
【請求項16】
1つ以上の抗−異常SOD1抗体を用いて、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防する方法。
【請求項17】
前記抗体が、多クローン抗体、または、単クローン抗体である請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、単クローン抗体である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上の抗−異常SOD1抗体を用いて、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を検査する方法。
【請求項20】
1つ以上の抗−異常SOD1単クローン抗体を用いて、動物におけるSOD1異常と関連した疾患検査用の組成物を製造する方法。
【請求項21】
前記抗体が、請求項4,5,6,9、および、10のいずれか一項に記載の1つ以上の単クローン抗体である請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
動物におけるSOD1異常と関連した疾患が、神経変性疾患である請求項15から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病からなる群から選ばれる疾患である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
1つ以上の抗−異常SOD1抗体を含む1つ以上の容器を有する動物におけるSOD1異常と関連した疾患検査用キット。
【請求項26】
抗−異常SOD1抗体が、単クローン抗体である請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記抗体が、請求項4,5,9、および、10のいずれか一項に記載の1つ以上の単クローン抗体である請求項26に記載のキット。
【請求項28】
請求項3に記載のハイブリドーマ細胞株により産生された抗体をコントロールとして含む請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記動物におけるSOD1異常と関連した疾患が、神経変性疾患である請求項25から28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病からなる群から選ばれる疾患である請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化である請求項30に記載のキット。
【請求項32】
請求項11から13のいずれか一項に記載の組成物の有効量を投与して、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防する方法。
【請求項33】
前記動物におけるSOD1異常と関連した疾患が、神経変性疾患である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病からなる群から選ばれる疾患である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
1つ以上の抗−異常SOD1抗体を含む1つ以上の容器を有する動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療または予防に適用されるキット。
【請求項37】
前記1つ以上の抗−異常SOD1抗体が、単クローン抗体である請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記抗体が、請求項4から10のいずれか一項に記載の1つ以上の単クローン抗体である請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記動物におけるSOD1異常と関連した疾患が、神経変性疾患である請求項36から38のいずれか一項に記載のキット。
【請求項40】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病からなる群から選ばれる疾患である請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化である請求項40に記載のキット。
【請求項1】
カナダ国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託番号ADI−290806−01として寄託されたハイブリドーマ細胞株。
【請求項2】
カナダ国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託番号ADI−290806−02として寄託されたハイブリドーマ細胞株。
【請求項3】
カナダ国際寄託機関に2006年8月29日付で寄託番号ADI−290806−03として寄託されたハイブリドーマ細胞株。
【請求項4】
請求項1に記載のハイブリドーマ細胞株から産生された単クローン抗体。
【請求項5】
請求項2に記載のハイブリドーマ細胞株から産生された単クローン抗体。
【請求項6】
請求項3に記載のハイブリドーマ細胞株から産生された単クローン抗体。
【請求項7】
動物に投与された際に、異常なスーパーオキサイドジスムターゼ(以下、「SOD1」という。)の病理効果を中和する活性を保有することを特徴とする異常なSOD1に特異的に結合する抗体。
【請求項8】
前記抗体が、単クローン抗体、または、多クローン抗体である請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、単クローン抗体である請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリドーマ細胞株によって産生された請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
請求項4から10のいずれか一項に記載の1つ以上の抗体と、医薬的に許容可能な担体と、を含有する動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療および/または予防に適用される組成物。
【請求項12】
前記動物におけるSOD1異常と関連した疾患が、神経変性疾患である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病からなる群から選ばれる疾患である請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
1つ以上の抗−異常SOD1抗体を用いて、動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療および/または予防用組成物を製造する方法。
【請求項16】
1つ以上の抗−異常SOD1抗体を用いて、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防する方法。
【請求項17】
前記抗体が、多クローン抗体、または、単クローン抗体である請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、単クローン抗体である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上の抗−異常SOD1抗体を用いて、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を検査する方法。
【請求項20】
1つ以上の抗−異常SOD1単クローン抗体を用いて、動物におけるSOD1異常と関連した疾患検査用の組成物を製造する方法。
【請求項21】
前記抗体が、請求項4,5,6,9、および、10のいずれか一項に記載の1つ以上の単クローン抗体である請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
動物におけるSOD1異常と関連した疾患が、神経変性疾患である請求項15から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病からなる群から選ばれる疾患である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
1つ以上の抗−異常SOD1抗体を含む1つ以上の容器を有する動物におけるSOD1異常と関連した疾患検査用キット。
【請求項26】
抗−異常SOD1抗体が、単クローン抗体である請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記抗体が、請求項4,5,9、および、10のいずれか一項に記載の1つ以上の単クローン抗体である請求項26に記載のキット。
【請求項28】
請求項3に記載のハイブリドーマ細胞株により産生された抗体をコントロールとして含む請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記動物におけるSOD1異常と関連した疾患が、神経変性疾患である請求項25から28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病からなる群から選ばれる疾患である請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化である請求項30に記載のキット。
【請求項32】
請求項11から13のいずれか一項に記載の組成物の有効量を投与して、動物におけるSOD1異常と関連した疾患を治療および/または予防する方法。
【請求項33】
前記動物におけるSOD1異常と関連した疾患が、神経変性疾患である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病からなる群から選ばれる疾患である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
1つ以上の抗−異常SOD1抗体を含む1つ以上の容器を有する動物におけるSOD1異常と関連した疾患の治療または予防に適用されるキット。
【請求項37】
前記1つ以上の抗−異常SOD1抗体が、単クローン抗体である請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記抗体が、請求項4から10のいずれか一項に記載の1つ以上の単クローン抗体である請求項37に記載のキット。
【請求項39】
前記動物におけるSOD1異常と関連した疾患が、神経変性疾患である請求項36から38のいずれか一項に記載のキット。
【請求項40】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化、アルツハイマー病、および、パーキンソン病からなる群から選ばれる疾患である請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記神経変性疾患が、筋萎縮性側索硬化である請求項40に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2009−507475(P2009−507475A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528307(P2008−528307)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001444
【国際公開番号】WO2007/025385
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(508063989)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/CA2006/001444
【国際公開番号】WO2007/025385
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(508063989)
【Fターム(参考)】
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