抗凝固剤およびその使用
本発明は、対象への抗凝固剤の投与の際に第二の成分が第一の成分を活性化血小板へ向かわせる、凝固を阻害する能力のある第一の成分、および活性化血小板をターゲッティングする能力のある第二の成分を含む抗凝固剤を提供する。(a)活性化血小板をターゲッティングする能力がある結合成分および(b)標識を含む、血管異常を検出するためのプローブもまた提供される。出願者は、活性化血小板を指向する薬剤およびプローブは、凝固障害の診断および治療に有用であることを示している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液学の分野および特に止血の下位分野に関する.より具体的には、本発明は、1)哺乳類血液中の凝固を阻害する物質、および脳卒中、心筋梗塞、および深部静脈血栓症といった疾患の治療および予防におけるこれらの物質の用途、および2)血栓症、血栓性塞栓および不安定プラークといった臨床環境における診断および活性化血小板の特定を可能にするプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
血管傷害後の血流を調節する身体の能力は生存継続に決定的である。血液凝固 および 次いで傷害された組織の修復に続くその後の凝固の溶解の過程を止血という。止血は血管の完全性の喪失後に集合として起こるいくつかの現象から成る。
【0003】
その過程の最初の段階は血管収縮である。これは傷害の範囲への血液の流れを制限する。次に、血小板がトロンビンによって活性化され、および傷害の部位で凝集して、一時的な緩い血小板栓を形成する。タンパク質フィブリノーゲンが、血小板凝集を刺激する主な原因である。血小板は血管の内皮裏打ちの破壊後に露出されるコラーゲンへの結合によって凝集する。活性化に際して、血小板は、アデノシン−5'−二リン酸、ADPおよびTXA2(他の血小板を活性化する)、セロトニン、リン脂質、リポタンパク質、および凝固カスケードに重要なその他のタンパク質を放出する。誘導された分泌に加えて、活性化血小板は栓の形成に対応するため形を変化させる。
【0004】
最初は緩い 血小板栓の安定性を確実にするため、フィブリン網 (凝固ともいう) が形成されおよび栓を捕捉する。最後に、凝固 は組織修復後に正常な血流のために溶解されなければならない。凝固の溶解はプラスミンの作用を通じて起こる。
【0005】
二つの経路すなわち内因性および外因性経路が、フィブリン血餅の形成に繋がる。それらは異なる機構によって開始されるが、その二つは、凝固形成に繋がる共通の経路に集束する。組織傷害の非存在下での異常血管壁に応答した赤色血栓または凝固の形成は、内因性経路の結果である。組織傷害に応答したフィブリン血餅形成は、外因性経路の結果である。両方の経路は複雑でありおよび凝固因子と呼ばれる多数の異なるタンパク質が関与する。
【0006】
血小板活性化およびフォンウィルブランド因子(vWF)。
止血が起こるためには、血小板は、露出されたコラーゲンに接着し、顆粒の内容を放出し、および凝集しなければならない。内皮細胞表面上に露出されたコラーゲンへの血小板の接着は、フォンウィルブランド因子(vWF)によって媒介される。vWFの機能は、血小板の表面上の特定の糖タンパク質(GPIb/IX)およびコラーゲン原線維の間の架橋として作用することである。血小板および内皮表面上の露出したコラーゲンの間の架橋としての役割に加えて、vWFは凝固第VIII因子に結合しおよびそれを安定化する。第VIII因子のvWFによる結合は、循環中の第VIII因子の正常な残存に必要である。
【0007】
フォンウィルブランド因子は、血小板によって産生されおよび血小板内に貯蔵される複雑な多量体糖タンパク質である。それはまた巨核球によっても合成され、および内皮下結合組織に結合しても見出される。血小板の最初の活性化は、血小板の表面上の特異的受容体へのトロンビン結合によって誘導され、それによってシグナル伝達カスケードを開始する。トロンビン受容体はGタンパク質と結合し、Gタンパク質は今度はホスホリパーゼC−γ(PLC−γ)を活性化する。PLC−γはホスファチジルイノシトール−4,5−ビスホスフェート(PIP2)を加水分解し、イノシトール三リン酸(IP3)およびジア知るグリセロール(DAG)の形成に繋がる。IP3は細胞内貯蔵Ca2+の放出を誘導し、およびDAGはプロテインキナーゼC(PKC)を活性化する。
【0008】
血小板が接着するコラーゲンおよび細胞内Ca2+の放出は、ホスホリパーゼA2(PLA2)の活性化に繋がり、PLA2は次いで膜リン脂質を加水分解し、アラキドン酸の遊離に繋がる。アラキドン酸放出は、トロンボキサンA2(TXA2)の産生および続いての放出の増大に繋がる。これはPLC−γ経路を通じて機能するもう一つの血小板活性化因子である。放出された細胞内貯蔵Ca2+によって活性化されるもう一つの酵素が、ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)である。活性化MLCKはミオシンの軽鎖をリン酸化し、それは次いでアクチンと相互作用し、結果として血小板の形態および運動性を変化させる。
【0009】
PKCの多数の作用のうちの一つが、特異的な47,000ダルトン血小板タンパク質のリン酸化および活性化である。この活性化されたタンパク質は、血小板顆粒内容物の放出を誘導し、内容物の一つがADPである。ADPはさらに血小板を刺激し、活性化カスケード全体を増大させ、また血小板表面にフィブリノーゲンが接着するように血小板膜を変化させ、その結果として、フィブリノーゲンに誘導される血小板凝集が起こる。
【0010】
血小板の活性化は、その結果としての血小板の血小板栓への凝集に必要である。しかし、等しく重要なのは、活性化された血小板表面リン脂質の、凝固カスケードの活性化における役割である。
【0011】
内因性凝固カスケードは、血液および露出された内皮細胞表面の間に接触が行われる際に開始される。外因性および内因性経路は、第X因子が活性化されて第Xa因子になる点で集束する。第Xa因子は、第VII因子の第VIIa因子へのさらなる活性化に関与する。活性な第Xa因子はまた、プロトロンビンをトロンビンへ加水分解および活性化する。トロンビンは次いで、第XI、第VIIIおよび第V因子を活性化でき、カスケードを進行させる。最終的にトロンビンの役割は、フィブリノーゲンをフィブリンへ変換すること、および第XIII因子を第XIIIa因子へ活性化することである。第XIIIa因子(トランスグルタミナーゼともいう)は、フィブリンポリマーを架橋して、凝固を固化する。
【0012】
内因性経路は、凝固第VIII、IX、X、XI、およびXII因子を必要とする。タンパク質のプレカリクレインおよび高分子量キニノーゲン、および血小板から分泌されるカルシウムイオンおよびリン脂質もまた必要である。これらの経路成分それぞれが、第X因子(不活性)から第Xa因子(活性)への変換に繋がる。内因性経路の開始は、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、第XI因子および第XII因子が負に荷電した表面に曝露される際に起こる。これは接触期と呼ばれる。血管表面へのコラーゲンの露出は、接触期の一次刺激である。
【0013】
接触期成分の集合は、プレカリクレインからカリクレインへの変換を結果として生じ、それは今度は第XII因子を第XIIa因子へ活性化する。第XIIa因子は次いで、より多くのプレカリクレインをカリクレインへ変換でき、相互活性化カスケードを樹立する。第XIIa因子はまた、第XI因子を第XIa因子へ活性化し、および強力な血管拡張剤であるブラジキニンの、高分子量キニノーゲンからの放出に繋がる。
【0014】
Ca2+の存在下で、第Xia因子は第IX因子を第IXa因子へ活性化する。第IX因子はビタミンK依存性γ−カルボキシグルタミン酸(gla)残基を含む酵素前駆体であり、そのセリンプロテアーゼ活性はこれらのgla残基へのCa2+結合後に活性化される。カスケードのいくつかのセリンプロテアーゼ(II、VII、IX、およびX)はglaを含む酵素前駆体である。活性第IXa因子は第X因子を内部arg−ile結合で切断し、その第Xa因子への活性化に繋がる。
【0015】
第Xa因子の活性化は、テナーゼ複合体(Ca2+および第VIIIa、第IXaおよび第X因子)の、活性化血小板の表面上での集合を必要とする。活性化に対する血小板の応答の一つが、表面上のホスファチジルセリンおよびホスファチジルイノシトールの提示である。これらのリン脂質の露出は、テナーゼ複合体の形成を可能にする。この過程における第VIII因子の役割は、第VIIIa因子の形で、第IXa因子および第X因子に対する受容体として作用することである。第VIIIa因子は凝固カスケードにおける補助因子と呼ばれる。第VIII因子の第VIIIa因子(実際の受容体)への活性化は、微量のトロンビンの存在下で起こる。トロンビンの濃度が上昇するにつれ、第VIIIa因子は最終的にトロンビンによって切断されおよび不活性化される。トロンビンの第VIII因子に対するこの二重作用は、テナーゼ複合体形成の程度およびそれによって凝固カスケードの程度を制限するように働く。
【0016】
上記で考察される通り、活性化第Xa因子は内因性および外因性凝固カスケードが集束する位置である。外因性経路は傷害の部位にて、組織因子(第III因子)の放出に反応して開始される。組織因子は、第VIIa因子に触媒される第X因子の活性化における補助因子である。第VIIa因子は、gla残基を含むセリンプロテアーゼであり、内因性経路の第IXa因子と同一の方法で、第X因子を切断して第Xa因子にする。第VII因子の活性化は、トロンビンまたは第Xa因子の活性化を通じて起こる。第Xa因子が第VII因子を活性化する能力は、内因性経路および外因性経路の間の連結を生じる。二つの経路間の別の連結は、組織因子および第VIIa因子が第IX因子を活性化する能力によって存在する。いくらかの不明瞭が存在する一方、第VIIa因子および組織因子の間の複合体の形成は、凝固カスケード全体における主要な段階と考えられているように見える。外因性経路の阻害のための主な機構は、組織因子−−第VIIa因子−−Ca2+−−Xa複合体に存在する。タンパク質、リポタンパク質が随伴する凝固阻害剤であるLACIは、この複合体に特異的に結合する。LACIはまた外因性経路阻害剤、EPIまたは組織因子経路阻害剤、TFPIとも呼ばれ、および以前はアンチコンバーチンといった。LACIは3つのタンデムプロテアーゼ阻害剤ドメインから構成される。ドメイン1は第Xa因子に結合し、およびドメイン2は第Xa因子の存在下に限って第VIIa因子に結合する。
【0017】
プロトロンビンのトロンビンへの活性化
外因性経路および内因性経路の両方における共通点は、第X因子の第Xa因子への活性化である。第Xa因子はプロトロンビン(第II因子)をトロンビン(第IIa因子)へ活性化する。トロンビンは今度は、フィブリノーゲンをフィブリンへ変換する。トロンビンの活性化は、活性化血小板の表面上で起こり、およびプロトロンビナーゼ複合体の形成を必要とする。この複合体は、血小板リン脂質、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルセリン、Ca2+、第Va因子および第Xa因子、およびプロトロンビンから構成される。第V因子は、プロトロンビナーゼ複合体の形成における補助因子であり、テナーゼ複合体形成における第VIII因子の役割と同様である。第VIII因子活性化のように、第V因子は微量のトロンビンによって活性化されて第Va因子となり、およびトロンビンのレベル上昇によって不活性化される。第Va因子は、活性化血小板上の特異的受容体と結合し、およびプロトロンビンおよび第Xa因子と複合体を形成する。
【0018】
プロトロンビンは、N末端領域に10個のgla残基を含む、72,000ダルトンの一本鎖タンパク質である。プロトロンビナーゼ複合体内で、プロトロンビンは第Xa因子によって2ヶ所で切断される。この切断は、一つのジスルフィド結合によって結び合わされているA鎖およびB鎖を含む、2鎖の活性トロンビン分子を生じる。
【0019】
フィブリン血餅形成の活性化における役割に加えて、トロンビンは凝固において重要な調節機能を果たす。トロンビンは内皮細胞表面に存在するトロンボモジュリンと結合して、Cタンパク質をCaタンパク質へ変換する複合体を形成する。補助因子Sタンパク質およびCaタンパク質は、第Va因子および第VIIIa因子を分解し、それによって凝固カスケードにおけるこれら二つの因子の活性を制限する。
【0020】
トロンビンはまた、Gタンパク質結合プロテアーゼ活性化受容体(PAR)、具体的にはPAR−1、−3および−4に結合しおよびその放出に繋がる。これらのタンパク質の放出は、多数のシグナル伝達カスケードの活性化に繋がり、カスケードは今度はインターロイキンIL、IL−1およびIL−6の放出を増大させ、細胞間接着分子1(ICAM−1)および血管細胞接着分子1(VCAM−1)の分泌を増大させる。トロンビンに誘導されるシグナル伝達はまた、血小板活性化および白血球接着の増大に繋がる。トロンビンはまた、トロンビン活性化線溶阻害剤(TAFI)を活性化し、それによって線溶(フィブリン血餅の分解)を調節する。TAFIはまた、カルボキシペプチダーゼU(CPU)としても知られ、その活性は、部分分解されたフィブリンからのC末端リジンの除去に繋がる。これは、プラスミノーゲン活性化の障害に繋がり、それによってフィブリン血餅溶解(すなわち線溶)の速度を低下させる。
【0021】
トロンビンレベルの調節
活性トロンビンの循環レベルを身体が調節できないことは、深刻な結果に繋がりうる。トロンビン活性が調節される二つの主な機構が存在する。循環中のトロンビンの主な形は、不活性プロトロンビンであり、その活性化は、凝固カスケードについて上述の、酵素前駆体活性化の経路を必要とする。カスケード中の各段階にて、フィードバック機構が活性酵素および不活性酵素の間のバランスを調節する。
【0022】
トロンビンの活性化はまた、四種類の特異的トロンビン阻害剤によっても調節される。アンチトロンビンIIIは、第IXa、第Xa、第XIaおよび第XIIa因子の活性も阻害できるため、最も重要である。アンチトロンビンIIIの活性は、ヘパリンの存在下で下記の手段によって増強されうる:ヘパリンはアンチトロンビンIII上の特異的部位に結合し、当該タンパク質の立体構造変化を生じ、および新しい立体構造はトロンビンおよびその他の基質に対してより高い親和性を有する。ヘパリンのこの作用は、抗凝固剤としてのその臨床用途の原理である。アンチトロンビンIIIの天然に存在するヘパリン活性化因子は、血管内皮細胞の表面上に、ヘパリンおよびヘパリン硫酸として存在する。内因性凝固カスケードの活性化を調節するのがこの性質である。
【0023】
しかし、トロンビン活性はまた、α2−マクログロブリン、ヘパリン補助因子IIおよびα1−アンチトリプシンによっても阻害される。トロンビン調節における役割は小さいが、α1−アンチトリプシンはヒト血清の主なセリンプロテアーゼ阻害剤である。その生理学的意義は、このタンパク質の欠如が肺気腫の発症において原因的役割を果たすという事実によって実証される。
【0024】
フィブリノーゲンのフィブリンへの活性化
フィブリノーゲン(第I因子)は、3対のポリペプチド([A−α][B−β][γ])2から成る。6つの鎖はN末端付近でジスルフィド結合によって共有結合している。A−αおよびB−β鎖のAおよびB部分は、それぞれフィブリノペプチドAおよびBを構成する。フィブリノーゲンのフィブリノペプチド領域は、いくつかのグルタミン酸およびアスパラギン酸残基を含み、この領域に高い陰電荷を与えおよび血漿中のフィブリノーゲンの溶解性に補助を与える。活性トロンビンは、フィブリノーゲンをフィブリノペプチドと当該タンパク質のaおよびb部分との間の四つのarg−gly結合で加水分解するセリンプロテアーゼである。
【0025】
フィブリノペプチドの、トロンビンに媒介される放出は、サブユニット構造(α−β−γ)2.を有するフィブリンモノマーを生じる。これらのモノマーは規則的配列へ自発的に凝集し、いくらか弱いフィブリン血餅を形成する。フィブリン活性化に加えて、トロンビンは第XIII因子を、フィブリンモノマー中のグルタミンのアミド窒素とリジンのe−アミノ基との間の共有結合から成る架橋を導入する高度に特異的なトランスグルタミナーゼである第XIIIa因子へ変換する。
【0026】
フィブリン血餅の溶解
フィブリン血餅の分解はプラスミンの機能であり、プラスミンは不活性酵素前駆体であるプラスミノーゲンとして循環するセリンプロテアーゼである。遊離の循環プラスミンがあれば、α2−アンチプラスミンによって迅速に阻害される。プラスミノーゲンはフィブリノーゲンおよびフィブリンの両方と結合し、それによって、凝固が形成される際に凝固に組み込まれる。組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)および、より小さい程度で、ウロキナーゼは、プラスミノーゲンをプラスミンへ変換するセリンプロテアーゼである。不活性tPAは傷害後に血管内皮細胞から放出され、フィブリンと結合しおよび結果として活性化される。ウロキナーゼは、排出管を裏打ちする上皮細胞によって、前駆体であるプロウロキナーゼとして産生される。ウロキナーゼの役割は、これらの管内に沈着しうるフィブリン血餅の溶解を活性化することである。
【0027】
活性tPAはプラスミノーゲンを切断してプラスミンにし、プラスミンは次いでフィブリンを消化し、結果はプラスミンもプラスミノーゲンも結合できない可溶性分解産物である。プラスミノーゲンおよびプラスミンの放出後、それらはそれぞれの阻害剤によって迅速に不活性化される。tPA活性の阻害は、特異的阻害タンパク質への結合の結果として生じる。少なくとも四種類の異なる阻害剤が同定されており、そのうち2−プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1型(PAI−1)および2型(PAI−2)は生理的意義が非常に大きい。
【0028】
このように、上記から凝固に関与する生理的機構は非常に複雑であることが判り、および、凝固における多数の相互に関係する経路を安全に調節できる物質を設計または同定するには大きな困難があることがわかる。血液凝固系の多層カスケードは、その開始シグナルの非常に大きな増幅を可能にする。外因性経路を下ると、たとえば、プロコンバーチン(VII)、スチュアート因子(X)、プロトロンビン、およびフィブリノーゲンはそれぞれ血漿中に<1、8、150、および~4000mg.mL−1の濃度で存在する。このように、小さなシグナルが非常に速やかに増幅され、効果的な止血調節を実現する。
【0029】
一つの不適切な凝固さえ致命的な結果を生じうるため、凝固は非常に厳密に調節されなければならない。実際に、血液凝固は、ヒトの死の二つの主因である脳卒中および心臓発作の主要な原因である。このように、凝固の調節は主要な医学的関心である。抗凝固作用の異なる機構を用いていくつかの阻害剤が開発されている。これらは、ヘパリン、クマリン、および1,3−インダンジオンを含む。
【0030】
ヘパリンは6,000ないし40,000Daの範囲の分子量を有するムコ多糖である。大部分の市販のヘパリン調製物の平均分子量は12,000〜15,000の範囲にある。そのポリマー鎖は相互グリコシド結合によって結合したD−グルコサミンおよびウロン酸の反復二糖単位から成る。ウロン酸残基はD−グルクロン酸またはL−イズロン酸のどちらかでありうる。これらの各単糖残基上の少数の水酸基が、硫酸化される可能性があり、高度に負に荷電したポリマーを生じる。各糖残基の平均負電荷は約2.3である。
【0031】
ヘパリンの重要な構造単位は、独特の五糖配列である。この配列は、三個のD−グルコサミンおよび二個のウロン酸残基から成る。中央のD−グルコサミン残基は、この配列の他では稀である、独特な3−O−硫酸部分を含む。
【0032】
ヘパリンは、アンチトロンビンと後進和製複合体を形成する。アンチトロンビン−ヘパリン複合体の形成は、二つの主な凝血促進プロテアーゼである第Xa因子およびトロンビンの阻害率を大幅に高める。これら両方の酵素のアンチトロンビン単独による阻害の通常は低い速度(〜103−104M−1s−1)は、ヘパリンによって約1,000倍上昇する。プロテアーゼの両方の活性形の活性化における加速は、凝固形成に決定的である、以降のフィブリノーゲンのフィブリンへの変換を妨げる。
【0033】
ヘパリンは相対的に無毒性であるが、しかしヘパリンの過剰投与または過敏性は、過剰な出血を結果として生じうる。プロタミンは、過剰出血合併症の解毒剤として使用される。
【0034】
クマリンおよびその誘導体は、主な経口抗凝固剤である。ワーファリンは、RおよびS異性体のラセミ混合物として市販されているクマリン誘導体である。
【0035】
クマリンは作用が遅く、in vivo で12 から4時間の潜伏期後に初めて作用を発揮し、およびその作用は1.5から5日間続く。観察された遅い開始は、投薬前プロトロンビン血中レベルを低下させるのに必要な時間が原因である可能性があり、一方でワーファリンについて観察された作用の長い持続時間は、肝臓がプロトロンビンを投薬前血中レベルへ再合成するのに必要な遅延時間が原因である可能性がある。
【0036】
クマリンおよび1,3−インダンジオン(下記参照)は、ある種の薬物と相互作用するというさらなる短所を有する。たとえば、経口抗凝固剤の作用は、フェニルブタゾンおよびサリチル酸といった薬物によって促進されうる一方バルビツール酸およびビタミンKによって拮抗されうる。クマリンは、プロトロンビンの生合成においてビタミンKの競合阻害剤である。
【0037】
凝固カスケードは、非常に重要な段階におけるプロトロンビンのトロンビンへの変換に依存する。しかし、この変換は、プロトロンビンのN末端の10個のg−カルボキシグルタミン酸(GLA)残基の存在に依存する。複数のGla残基はCa2+のための結合部位を形成する。通常の環境下では、プロトロンビンの10個のグルタミン酸(Glu)残基は、翻訳後修飾によってGla残基へ変換される。
【0038】
この翻訳後修飾は、酵素ビタミンKレダクターゼおよびビタミンKエポキシドレダクターゼによって触媒される。ビタミンKはこの変換反応における補助因子である。このように、ビタミンKは還元形およびエポキシド形の間を循環する。ビタミンKとの構造的類似性のため、クマリンは酵素ビタミンKレダクターゼおよびビタミンKエポキシドレダクターゼと、プロトロンビンのGlu残基のGlaへの変換を促進することなく結合すると考えられる。このように、プロトロンビンは第Xa因子によって作用を受けることができない。
【0039】
1,3−インダンジオンは、1940年代から抗凝固剤であることが本分野で知られている。アニシンジオンの作用の開始および持続時間は、クマリンのものと同様である。インダンジオンの主な短所は、その副作用である。一部の患者はインダンジオンに過敏性であり、および発疹、発熱、および白血球減少症を発症する。
【0040】
達成された全体的利益にもかかわらず、現在使用されている治療用抗凝固剤はまた、効力の限界によっておよびさらに多くは出血合併症によって引き起こされる死亡および罹患の大きな原因でもある。これらの問題を克服するための努力において、いくつかの新規の薬剤が開発されている。しかし、治療用抗凝固剤は不可避的に、効力の増大は出血合併症の増加によってのみ達成されるという内在的な問題を伴うように見える。抗凝固剤の凝固へのターゲッティングは、この致命的な繋がりを断つ手段に相当しうる。凝固特異的エピトープに向けられた抗体との抗凝固剤の融合は、凝固での抗凝固剤の濃縮を可能にし、一方で循環血中の抗凝固剤の濃度は低レベルに維持されうる。
【0041】
凝固 ターゲッティングの成功は、ターゲットとして選択されたエピトープの量および 特異性に依存する。フィブリンが凝固 ターゲッティングに使用されうることは以前に示されている。しかし フィブリン または フィブリン 分解産物は血液中に循環する可能性があり、循環中の抗凝固剤の間違ったターゲッティングに繋がりうる。
【0042】
本分野の別の問題は、凝固障害の診断に関連する。多数の凝固障害は、防がれうるかまたは少なくともより重度の問題へ進行することが防がれうることが定説である。したがって、早期の凝固障害の指標があることが臨床医にとって望ましい。
【0043】
本発明の一態様は、有効であり、なお凝固時間の延長を結果として生じない抗凝固剤を提供することによって先行技術の問題を克服または緩和することである。本発明はさらに、凝固関連障害を診断するための方法および試薬を提供する。
【0044】
文書、作用、材料、用具、物品などは、本発明の背景を提供する目的でのみ本明細書に含まれる。本出願の各請求項の優先日以前に存在したためにこれらの事物のいずれかまたはすべてが先行技術の基礎の一部を成したかまたは本発明に関連する分野の共通一般知識であったことは示唆または意味されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
一態様では、本発明は、対象への抗凝固剤の投与の際に第二の成分が第一の成分を活性化血小板へ向かわせる、凝固を阻害する能力のある第一の成分、および活性化血小板をターゲッティングする能力のある第二の成分を含む抗凝固剤を提供する。出願者らは、抗凝固剤の活性化血小板へのターゲッティングは、過剰な出血の危険無しに、凝固を阻害する手段を提供することを実証している。本発明の一形態では、第二の成分は、凝固上で大量におよび特異的に発現される凝固特異的ターゲットに相当する活性化フィブリノーゲン/フィブリン結合GPIIb/IIIa上のリガンド誘導性結合部位(LIBS)に対してターゲッティングされる。凝固ターゲッティングのために、抗LIBS一本鎖抗体(scFvanti-LIBS)が作成された。第一の成分として、非常に強力な直接的な第Xa因子(fXa)阻害剤であるダニ抗凝固ペプチド(TAP)が用いられた。融合分子scFvanti-LIBS−TAPの特異的抗体結合はフローサイトメトリーで証明され、および抗fXa活性は発色検定で実証された。In vivo抗凝固効率は、マウスでの頸動脈の塩化第二鉄誘導性血栓症モデルにおいてドップラーフロー測定によって閉塞時間(OT)として測定された。scFvanti-LIBS−TAPはOTをエノキサパリンと同等に延長し、および、組み換えTAPおよび標的でない変異scFv−TAPの等モル用量は、後者が調節する低用量でさえ、抗血栓作用を示さなかった。試験したその他の抗凝固剤とは対照的に、尾切断によって測定された出血時間は、scFvanti-LIBS−TAPによって延長されなかった。
【0046】
本発明はまた、凝固障害を治療または予防するための医薬組成物および方法を提供し、前記方法は必要とする哺乳類に有効量のここに記載の組成物を投与する段階を含む。抗凝固剤として有用な化合物をスクリーニングするための診断方法、および血栓症、血栓性塞栓、不安定プラークなどの存在を、活性化血小板を指向するプローブを用いて同定するための方法もまた含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
第一の態様では、 本発明は、対象への抗凝固剤の投与の際に第二の成分が第一の成分を活性化血小板へ向かわせる、凝固を阻害する能力のある第一の成分、および活性化血小板をターゲッティングする能力のある第二の成分を含む抗凝固剤を提供する。出願者らは、抗凝固剤を活性化血小板へターゲッティングすることによって、抗凝固効力の増大と出血合併症との間の連結が断たれ、それによって本分野における重大な問題を克服することを見出している。出願者らは、活性化された血小板は効率的な凝固ターゲッティングのための有効な標的として使用されうることを見出している。心筋梗塞におけるアテローム性動脈硬化に誘導される血栓でのように、血小板は動脈系内の血栓に特に豊富である。活性化血小板は凝固に高度に特異的であり、および典型的には循環中に見出されない。このように、効率的な凝固ターゲッティング、豊富さおよび特異性についての両方の必要条件が満たされる。これらの好ましい性質の他に、凝固ターゲッティングのためのエピトープとしての活性化血小板の使用は、血小板活性化はフィブリン形成に先行しうるため、フィブリンと比較してさらに有利でありうる。
【0048】
抗凝固剤は、二つの成分が上記の必要な機能を実行する能力を有する限り、任意の形を取りうる。
【0049】
抗凝固成分は、本剤が凝固の部位に有効に局在化できる限り、任意のサイズでありうる。しかし、抗凝固成分は好ましくは低分子であり、なぜならこれは血栓接近可能性および透過を改善しうるためである。本発明の一つの好ましい形では、第一の成分は約7,000Da以下の分子量を有する。先行技術はいくつかの低分子抗凝固剤を開示する一方、抗凝固剤は中心的なおよび重要な凝固因子を強力に阻害することが好ましい。本発明の一形態では、第一の成分は、宿主からの吸血を円滑にする抗第Xa因子阻害剤を用いるヒメダニ(オルニソドロス・モウバタ(Ornithodoros moubata))に由来するペプチド抗凝固剤である。この抗凝固剤は、1990年(ワクスマン(Waxman)他 Science 1990; 248: 2473)に最初に記載され、およびTAP(ダニ抗凝固ペプチド)と命名された。組み換えTAPは、凝固カスケードにおける第Xa因子の中心的な上流のおよび速度決定位置のために、効果的な抗凝固を可能にする選択的第Xa因子阻害剤として記載されている(ネーパー(Neeper)他.J Biol Chem 1990; 265: 17746)。 TAPは自然界で発見された最も強力な抗凝固剤の一つであり、およびアミノ酸60個だけの低分子である。適当なTAPの配列は、Genbankデータベースから登録番号M60480として入手可能である。
【0050】
第一の成分は、外因性または内因性凝固経路のどちらかの任意の成分に作用しうる。本発明の好ましい一形態では、第一の成分は酵素第Xa因子に作用する。第Xa因子の直接阻害は、たとえばヘパリンに媒介される間接的なアンチトロンビン−III媒介阻害と比較して有利であることが提案されており、何故なら凝固に結合した第Xa因子およびプロトロンビナーゼ随伴第Xa因子は、直接的な第Xa因子阻害剤によって顕著によりよく阻害されるように見えるからである。抗血栓効力および再閉塞の予防を調べる比較試験において、TAPは、間接的第Xa因子阻害剤よりも、およびトロンビン阻害剤よりも有利であることが示されている。これらの長所にかかわらず、ヒトでの治療用途についてはヒルジンと同様に高い出血速度が予測され、およびヒト薬剤の開発は先行していない。理論によって限定されることは望まず、発生中の凝固へのTAPのターゲッティングは、全身の抗凝固剤を、およびそれによって出血合併症を低減でき、および凝固における抗第Xa因子活性の安定な固定による長期間続く抗凝固作用が達成可能でありうる。このように、TAPは低分子であり、補助因子の必要無しの直接阻害を実証し、および凝固経路の初期の中心をターゲッティングすることがターゲッティングの好ましい候補である。
【0051】
TAPが本発明の一実施形態で用いられる一方、ヒルジンのような凝固因子の他の阻害剤を含む、多数の他の抗凝固剤が適当となる。また、線溶剤のターゲッティングは、出血合併症がより少ない高度に効率的な血栓溶解の見込みがある。
【0052】
ここでは、「凝固を阻害する」の語は、完全な阻害だけでなく、凝固形成の部分的な阻害も意味することが意図される。理論によって限定されることを望まず、完全阻害は調節されない出血に繋がりうるために部分的阻害が好ましいと考えられる。
【0053】
第二の成分の機能は、第一の成分を活性化血小板の物理的近傍へ運ぶことである。これは、活性化血小板に結合するかまたは活性化血小板に随伴する分子に結合する能力を有する第二の成分によって達成されうる。典型的には、これは、活性化血小板上のマーカーと結合できる第二の成分によって達成される。可能な最高の特異性を本剤に与えるために、マーカーは活性化血小板の表面上だけで発現されるものであるべきである。しかしそのような絶対的要件は厳密には必要でなく、および第二の成分が活性化血小板を主にターゲッティングする能力がある限り、本発明はここに開示される長所を提供すると理解される。
【0054】
活性化GPIIb/IIIaを含め、活性化血小板上に主に存在するいくつかのマーカーがある。マーカーは、凝固系の他の成分と比較して、一方の形が活性化血小板上で優勢であることが見出されるような、不活性形および活性形を取るものでありうる。血小板表面上で最も豊富に発現される分子のうちの一つが、糖タンパク質受容体(GP)IIb/IIIa(CD41/CD61)である。この受容体はインテグリン接着分子ファミリーに属し、およびαIIbβ3ともいう。インテグリンは、GPIIb/IIIaリガンドであるフィブリノーゲンの結合に関して低親和性から高親和性受容体へ立体構造変化を受ける、二個の非共有的に結合したサブユニットから成る。リガンド結合ポケットの露出の他に、この立体構造変化はまた、GPIIb/IIIa上のいわゆるリガンド誘導性結合部位(LIBS)の露出を誘導する。これらの結合部位は、活性化および/またはリガンド結合GPIIb/IIIa受容体に特異的である。GPIIb/IIIaは非常に豊富であり、各血小板の表面上に約60000個から80000個の分子がある。
【0055】
この受容体は、血小板活性化に際して不活性状態から活性状態へ変化し、その機構は新しいエピトープが露出されるような受容体の立体構造変化である。このように、本発明の一形態では、第二の成分は、GPIIb/IIIa受容体の活性化に際して形成される新しいエピトープと結合する能力がある。
【0056】
当業者は、第一の成分および第二の成分が物理的に結合していることは厳密には必要でないことを理解する。たとえば第一の成分および第二の成分は、物理的分離していて、第一の成分が第二の成分との結合の手段を含んでいることが可能である。この案では、第一の成分を最初に対象へ投与でき、および新しい凝固へ移動して活性化血小板へ結合しうる。第二の成分はその後に投与でき、および第一の成分へ結合しうる。このように、二つの成分は、活性化血小板の部位で機能性抗凝固剤が完成するまで物理的に分離している。
【0057】
本発明の好ましい一形態では、抗凝固剤は単一分子、および典型的には単一タンパク質分子の形である。二つの成分を単一分子中で実現するための便利な手段は、一本鎖抗体分子の骨格に両方の成分を含めることによる。これらの分子は、可変領域を含めるならば、エピトープを特異的にターゲッティングするのに特に適している。可変領域は、標的エピトープへの親和性を有するように設計される。一本鎖抗体は、組み換え治療剤の設計に有望な形式である。一本鎖抗体は、単一ペプチド鎖上の短いリンカー分子を介して互いに融合された抗体の重鎖および軽鎖の可変領域のみから成る。このように、一本鎖抗体(scFv)は、完全な抗体結合部位を含む最小の断片を構成する。サイズは免疫原性の決定因子であるため、scFvはもし免疫原性であるとしても最小限であると予測される。
【0058】
一本鎖抗体の別の長所は、 第一および第二の 成分の結合が、成分の生物学的機能の損失がほとんど無いことに繋がる点である。しかし化学結合は 典型的には抗体 結合機能の、および結合されたエフェクター分子の活性の相当な損失を結果として生じることが認識されるが、 scFv は分子生物学的方法を用いて機能的損失無しに結合されうる。最後に、 scFvは細菌において大量に、短時間で、低コストで産生でき、および それらはアフィニティクロマトグラフィーによって高度に精製されうる。一本鎖 抗体を産生するための手段は当業者によく知られており、その主題についての総説は『組み換え抗体』(Recombinant Antibodies)(ブライトリング(Breitling)およびデューベル(Duebel),1999,出版社:ワイリー・アンド・サンズ社(Wiley & sons),ISBN 0471178470)に見ることができ、その内容は参照により本開示に含まれる。
【0059】
好ましくは、抗LIBS一本鎖抗体(scFv)のクローニングはIgG抗LIBS145を発現するハイブリドーマ細胞株に基づく。LIBS(リガンド誘導性結合部位)エピトープに対する抗体が、ターゲッティングof抗凝固剤の凝固へのターゲッティング用に選択された。以前に示された通り、mAb抗LIBS145(IgGanti-LIBS)はRGD−ペプチド、アブシキマブ、チロフィバンおよびエプチフィバチドとの血小板のインキュベート後のGPIIb/IIIaへのリガンド誘導性結合を示す(シュワルツ(Schwarz)他.JPET 2004,308: 1002)。さらに、IgGanti-LIBSは、ADP活性化血小板への強い結合をフィブリノーゲンの存在下で示す(図2)。このように、この抗体は、非常に豊富でおよび特異的なターゲッティング性質を提供する。
【0060】
mAb抗LIBS145を発現するハイブリドーマ細胞株が、抗LIBS一本鎖抗体(scFv)のクローニングのための基礎として使用された。このハイブリドーマ細胞株のmRNAが調製され、およびオリゴdTプライマーを用いて逆転写された。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域が、可変領域の5'および3'末端の保存領域とアニーリングするプライマーを用いたPCRによって増幅された(詳細については本文書に別に記載する方法を参照)。PCR産物は、細菌において高レベル発現を可能にするpHOG21発現ベクターへクローニングされた。TG1大腸菌(E.coli)の形質転換後、各クローンはLIBSに典型的なGPIIb/IIIaへの結合について評価された。元のIgG抗LIBS145mAbとフローサイトメトリーで比較してより強い結合を示した一つのクローン(図2)が以降の使用のために選択された。このクローンは配列決定され、およびそれは一本鎖抗体のすべての典型的な性質を示した(図1)。さらに、ウェスタンブロット分析は、正確なサイズの約32kDaを明らかにした(図3)。
【0061】
好ましくは、一本鎖抗体はscFv融合タンパク質として発現される。TAPは機能的な損失無しに融合されうることを示す以前の結果に基づき(TH)、この非常に強力な直接的な第Xa因子阻害剤が、そのクローニングされた一本鎖抗体と結合させるために選択された。TAPは公表された配列情報(Genbankデータベース登録番号M60480として)にしたがって最初に合成され、およびpHOG21発現ベクターへ、軽鎖の可変領域のC末端に直接クローニングされた(図1A、B参照)。pHOG21は、封入体によって精製を円滑にするpelBリーダー配列、およびNi2+精製および検出のためのHis(6)タグを含む(図1A、B)。精製scFvanti-LIBS−TAPの収量は細菌培養1Lから約0.4〜0.8mgであった。発現および精製後、一本鎖抗体構造のサイズがウェスタンブロット分析によって評価された(図3)。scFvanti-LIBS単独の分子量は~32kDaであり、未変化の融合タンパク質scFvanti-LIBS−TAPの分子量は~39kDaであり、および非標的mut−scFv−TAPの分子量は~42kDaであった(図3)。
【0062】
本発明の非常に好ましい一つの形では、一本鎖抗体は本質的に図1に示す通りである。当業者は、遺伝コードの縮重、およびアミノ酸を他の類似のアミノ酸と置換する能力は図1によって特定される分子の誘導体および同等物が容易に作製されうることを意味することを理解する。これらの誘導体および同等物は、本発明の出願の範囲に含まれる。
【0063】
別の一態様では、本発明は、ここに記載の抗凝固剤を含む医薬組成物を提供する。当業者は、通常の方法によってここに記載の抗凝固剤を与えるのに適した組成物を作製できるようになる。抗凝固剤がタンパク質である場合、組成物は単にNaClを等張濃度で含みうる。キャリヤータンパク質、安定剤、緩衝剤、非水系溶媒、塩類、保存料などを加えることが必要でありうる。
【0064】
別の一態様では、本発明は、ここに記載の組成物の有効量を必要とする哺乳類に投与する段階を含む、凝固障害を治療または予防する方法を提供する。典型的には、組成物は経静脈または動脈内注射または輸液によって全身的に投与される。用量に関して、抗凝固剤がタンパク質である場合、用量は約30mg/kgないし約300mg/kgである。任意の所与の対象、または任意の所与の凝固障害について目的の臨床効果を達成するために用量を漸増または漸減することは十分に臨床医の能力内である。
【0065】
凝固障害は、凝固の阻害を必要とする任意の障害でありうる。そのような障害は、冠動脈疾患、心筋梗塞を含む急性冠動脈症候群、脳卒中、頸動脈または大動脈のアテローム性動脈硬化、深部静脈血栓症、肺塞栓症、および臓器のアテローム性動脈硬化または血栓症といった、血栓症を伴うすべての臨床状況を含む。
【0066】
好ましい二機能性融合分子scFvanti-LIBS−TAPは出願者によって評価されている。融合分子scFvanti-LIBS−TAPの一本鎖抗体部分の機能は、フローサイトメトリーによって評価された。ScFvanti-LIBS−TAPおよびscFvanti-LIBSは、フィブリノーゲン結合した活性化血小板と同様の結合特性を示した(図2)。このように、遺伝子融合はその一本鎖抗体の結合特性を顕著に変化させなかった。当該融合構造の第Xa因子阻害活性は、発色検定によって評価された。第Xa因子は、scFvanti-LIBS−TAP、非標的mut−scFv−TAP、scFvanti-LIBSおよび組み換えTAPの存在下で特異的発色基質とインキュベートされた(図4)。rTAPと比較して、TAP活性は融合構造においてわずかに低下したが、しかし明らかに存在した(図4)。このように、抗体結合および第Xa因子阻害の両方の機能が保持された。
【0067】
活性化血小板上のGPIIb/IIIaのLIBSエピトープへの抗凝固剤のターゲッティングの、抗凝固剤の従来の非ターゲッティング使用と比較した有意性を示すために、よく確立されたマウス血栓症モデルが選択された(ファレイ(Farrehi)他.1998; 97:1002)。しかし、抗LIBS抗体はフィブリノーゲンと結合した活性化マウス血小板へのターゲッティングに使用されうることが最初に示された。出願者らはマウス血液を入手し、および元のIgGanti-LIBS、scFvanti-LIBS、および融合構造scFvanti-LIBS−TAPの、マウス血小板への結合をフローサイトメトリー.によって評価した。ヒト血小板での結果と同様に、IgGanti-LIBSの特異的結合が見られたが、しかしscFvanti-LIBS抗体単独についてより強い特異的結合が見られ、およびその融合タンパク質scFvanti-LIBS−TAPの、フィブリノーゲン結合した活性化マウス血小板との結合が見られた(図5)。このようにマウス血小板のターゲッティングが、作製された抗LIBS 融合 構造を用いてうまくいくことが示された。
【0068】
血栓がマウスの頸動脈において塩化第二鉄を用いて誘導された。ナノフロープローブによって測定された血流の停止が、血管内の閉塞性血栓の指標として用いられた。塩化ナトリウム溶液および一本鎖抗体抗LIBSが陰性対照として用いられ、およびエノキサパリンが現行の臨床標準に相当する陽性対照として用いられた。エノキサパリンは閉塞時間をほぼ倍増させた(図8)。等モル量の組み換えTAP、非標的mut−scFv−TAPおよびscFvanti-LIBS−TAPは、エノキサパリンの作用に近い、閉塞時間の顕著な延長を引き起こした。元の投与された用量の1/10への減量(0.03μg/g体重)は、scFvanti-LIBS−TAPについて閉塞時間の有意な延長をまだ生じた(p=0.002)一方で、同一用量で非標的mut−scFv−TAPは閉塞時間の有意な延長を生じなかった。このように、scFvanti-LIBS−TAPは、直接対照の非標的mut−scFv−TAPが有意な抗凝固を生じない用量でさえ、強い抗凝固作用を与える。
【0069】
活性化血小板をターゲッティングする抗凝固剤の主な長所は、出血合併症の低減である。出血時間は、マウスにおける標準化された外科的尾切断によって測定された。予想通り、生理食塩水およびscFvanti-LIBSは出血時間延長を生じなかったが、一方でエノキサパリン、および特に組み換えTAPは相当な延長を生じた。非標的mut−scFv−TAPおよびscFvanti-LIBS−TAPの両方が強い抗凝固作用を示す用量0.3μg/g体重にて(図6)、非標的mutscFv−TAPだけが出血時間において高度に有意な延長を生じた(p<0.001、図7)。凝固にターゲッティングされたscFvanti-LIBS−TAPは出血時間の延長を全く生じなかった。また、より低用量のscFvanti-LIBS−TAPは、マウスの頸動脈で明らかな抗凝固作用をまだ示したが、出血時間延長を示さなかった。このように、抗LIBS一本鎖抗体へのTAPの新しく作製された融合によって、出血時間の延長無しに、非常に効果的な抗凝固作用が達成できた。
【0070】
出血時間の延長の回避は本発明の長所である一方、ここに記載の抗凝固剤は一部の実施形態では出血時間を延長しうることが理解される。
【0071】
別の一態様では、本発明は、ここに記載の抗凝固剤の、凝固障害の予防または治療のための薬剤の調製における使用を提供する。
【0072】
別の一態様では、本発明は、候補化合物を提供、化合物を活性化血小板および凝固の少なくとも一つの他の成分に曝露、化合物が活性化血小板と結合するかどうか評価、および化合物が凝固の少なくとも一つの他の成分と結合するかどうか評価する段階を含み、少なくとも凝固の他の成分と比較して活性化血小板に対してより高い親和性結合の能力を有するならばその化合物は有用である、抗凝固剤を凝固へターゲッティングするのに有用な化合物をスクリーニングするための方法を提供する。
【0073】
このように、活性化血小板は抗凝固治療のための有利な標的であるという出願者の知見に基づき本発明に関連する第二の成分として有用である化合物を同定することが可能になる。当業者は、免疫吸着法、クロマトグラフィー法、表面プラズモン共鳴法などを含む、ある分子の別の分子との結合を測定するのに有用ないくつかの方法に詳しくなる。
【0074】
別の一態様では、本発明はここに記載のスクリーニング法によって同定される化合物を提供する。
【0075】
本発明の別の一態様は、対象の血管における活性化血小板の検出を含む、対象における凝固障害の診断または予測の方法を提供する。
【0076】
出願者の知る限り、先行技術は活性化血小板の診断または予測のための使用を開示しない。活性化血小板の検出は、いくつかの医療用途に有用な関連するマーカーを臨床医に提供する。一つの用途は、破裂冠動脈プラークまたは破裂する傾向にあるプラークに見出される活性化血小板を画像化することである。これは、可能性のある関連病変へのステントの予防的埋め込み後の心筋梗塞症候群といったものの早期非侵襲的診断を可能にする。これは、冠動脈血管造影(先行技術で記載される通り)は血管腔についての情報を提供するだけであり、血管壁自体の形態についての情報を与えないため、特に医療上興味深い。このように、おそらく破裂したかまたは破裂傾向にあるプラークは冠動脈血管造影では検出されない。
【0077】
診断マーカーとしての活性化血書板の有用性を考慮して、本発明はまた、(a)活性化血小板をターゲッティングする能力がある結合成分および(b)標識を含む、血管異常を検出するためのプローブを提供する。当業者は、本発明に関連して有用であるプローブは、典型的には水系組成物として提供され、および診断法の前または途中に、動脈または静脈に注射されることを理解する。プローブは次いで身体の目的部位へ血液によって輸送され、および活性化血小板があれば結合する。結合したプローブは次いでMRIといった適当な手段によって検出される。
【0078】
結合成分は、活性化血小板の表面上のマーカーと結合する能力を有しうる。適当なマーカーの非限定的な一例は、活性化GPIIb/IIIa受容体分子である。PAC−1およびCD62−Pといった他のマーカーもまた考慮される。本発明の一つの形では、結合成分および標識は、一本鎖抗体分子の骨格中にある。
【0079】
ここに記載のプローブおよび当該プローブを用いる方法は、活性化血小板の、たとえば肺塞栓症または末梢塞栓症、または末梢動脈または中心動脈における破裂アテローム硬化性プラークでの、何らかの蓄積を検出するのに使用されうる。これらの病変は、疾患過程の早期に検出および選択的に治療されうる。
【0080】
当業者は、ここに記載のプローブ および 方法 が、凝固障害の臨床的に認識可能な徴候または症状を必ずしも実証することなく、 凝固 障害の素因を有する個人を特定するのに有用でありうることを理解する。
【0081】
本方法の好ましい一つの形では、活性化血小板を検出する段階に用いられるプローブは、ここに記載の一本鎖抗体である。好ましくは、一本鎖抗体はここに記載の抗LIBS抗体と同一かまたは類似である。診断目的には、一本鎖抗体は抗凝固成分を含む必要が無いことが理解される。実際、当業者は、断片が活性化血小板への結合を担う部位を含む限り、一本鎖抗体の断片を使用することが可能であることを理解する。理論によって限定されることを望まず、一本鎖抗体の小型のサイズは、この用途において特に有利であると考えられる。抗体は、血栓の表面を越えて、より多数の活性化血小板が存在する部位へ透過する能力があることが提案されている。これは、結合した抗体のより効果的な検出、およびしたがってより高感度の造影を可能にする。抗体プローブはまた、活性化血小板が沈着している血管の表面へも接着しうる。
【0082】
本方法は、血栓(たとえば深部静脈血栓症)、血栓性塞栓(たとえば肺塞栓症)および活性化血小板の沈着(たとえば不安定アテローム硬化性プラークの部位での)を診断および同定するために使用されうる。早期検出は、凝固溶解剤および/または抗凝固療法の投与および/または介入手順を可能にし非常に有利である。
【0083】
当業者は、診断法および予測法に用いられるプローブは本分野で公知である任意の方法によって標識されうることを理解する。粒子の官能化に応じて、この目的のためにさまざまな戦略が使用されうる。一つの方法は、カルボキシ官能化SPIOおよび一本鎖抗体の遊離アミノ基の間にペプチド結合を作ることである。当業者は、この化学的架橋手法に使用されうるさまざまな市販のカップリング剤およびキットに詳しい。別の方法は、市販のコバルト官能化1μmSPIO−ビーズとの複合体化のために抗体のヒスチジンタグを使用し、それによって一本鎖抗体/ビーズ複合体がコバルトへのヒスチジンの結合により維持されることとなる。要約すると、この方法では一本鎖抗体およびSPIOビーズは室温にて10分間インキュベートされ、その後、その懸濁液は磁石によって分離され、および数回洗浄される。適当な対照が、同一手順を用いて無関係な一本鎖抗体をSPIOと複合体化することによって作製される。
【0084】
当業者は、X線造影法に有用である任意の標識が、プローブに組み込まれうることを理解する。本方法の非限定的な一例として、活性化血小板にターゲッティングされるプローブと常磁性標識がカップリングされうる。プローブの投与に際して、常磁性標識は凝固、塞栓または不安定アテローム硬化性プラークの部位に局在化し、それは次いで磁気共鳴造影法によって視覚化されうる。
【0085】
代替的に、プローブは放射性標識化(たとえばテクネチウム−99m、ルビジウム−82、タリウム201、F−18、ガリウム−67、またはインジウム−111を用いて)でき、活性化血小板はガンマカメラを用いて視覚化される。また、コンピューター断層撮影法および超音波法(たとえばマイクロバブルのターゲッティング)を用いる活性化血小板の標識化が、記載の抗体について有用であると考えられる。
【0086】
出願者は、活性化血小板をターゲッティングしおよびin vivo環境においてMRIを用いるコントラスト結合の定量を可能にするプローブの使用をここで開示する。本発明の一つの形では、GpIIb/IIIaの活性立体構造だけを認識する一本鎖抗体が用いられ、その抗体はマイクロメートルサイズの常磁性酸化鉄粒子とカップリングされている。血管内構造は、本分野で典型的に用いられる酸化鉄ナノ粒子よりも数桁大きいミクロンサイズの粒子が接近可能である。出願者の知る限り、一本鎖抗体を用いる活性化血小板の機能的造影はここで初めて記載される。
【0087】
活性化血小板にターゲッティングされる標識化プローブのin vivo環境での使用を実証するため、マウスにおける大腿ワイヤ傷害モデルが使用され(ロケ(Roque),M.,他.,管腔表面上の接着分子の迅速な蓄積および好中球の動員を伴う大腿動脈裸出傷害のマウスモデル(Mouse model of femoral artery denudation injury associated with the rapid accumulation of adhesion molecules on the luminal surface and recruitment of neutrophils.) Arterioscler Thromb Vasc Biol,2000.20(2): p.335−42)、それは傷害の24時間後の血小板の単層に繋がる。マウスにおける大腿ワイヤ傷害後の細胞現象の時間的経過はよく記載されており、および図15Cに示される通り、24時間後裸出した内皮上の集密な血小板沈着を一貫して示す。これは活性化GPIIb/IIIa受容体上のリガンド誘導性結合部位に対する一本鎖抗体を用いた活性化血小板をターゲッティングするための基礎として用いられた。この抗体の結合はフィブリノーゲンまたはそのアナログの存在に依存するため、この抗体は機能的特異性を与える。これらの性質は、血小板血栓の造影を媒介するための、MPIOに対するリガンドとしてこの抗体を魅力的にする。11.7 T MRIおよびT2*強調MRIを用いて、強いビーズ結合の範囲にシグナル空白が検出された。血管壁に結合したMPIOの組織学的に確認された量は、T2*強調MRIでMPIOによって生じたシグナル消失の程度と有意に相関した。このMRI法は、直径わずか200μmの小血管を造影するのに十分な分解能を有する。MPIO誘導性シグナル空白は、シグナル空白を検出するのに十分な感度であり、T2*強調MRIにおいて動脈壁によって生じる内因性ネガティブコントラストを拡大さえした。
【0088】
以前のコントラスト剤ターゲッティング法は、インテグリンと複合体化されたガドリニウムに富むペルフルオロカーボンナノ粒子、ペプチド複合体化された酸化鉄ナノ粒子、およびガドリニウムで標識化されたフィブリン特異的環状ペプチド標識を含んでいる。しかし、送ることのできるコントラスト剤の量、およびしたがって達成されるコントラスト作用の強度は、特に量の少ない標的については相対的に限定されている。
【0089】
出願者らは、MPIOが、容易に分散せずおよびMRI上で目立つ、高ペイロードのコントラストを有することを見出しており、および分子造影のためのMPIOの使用を提案する。この手法の多用途性は、異なる受容体立体構造についてさえ、血管受容体の一般的な血管内造影を可能にする。低密度のエピトープを、ここで示される通りMPIOによって、リガンド自身と比較したそのサイズにもかかわらず、効率的にターゲッティングでき、同時に高い鉄ペイロードは、MPIOサイズに応じて、各ビーズおよびしたがって各受容体の検出さえ可能にする。さらに、ここに記載のファージディスプレイ法は、低密度なまたは機能性のエピトープに対する選択的リガンドを構築する可能性を提供し、したがってさまざまな疾患における病態生理的過程への深い洞察を可能にする。他の重要な問題は、一本鎖抗体が可変領域だけから成るための最小の免疫原性、および内密なエピトープへの接近を円滑にするサイズである。
【0090】
ここに記載のプローブは、血管での活性化血小板の検出によって対象における血管異常を造影するための方法に使用されうることが理解される。本方法の一つの形では、検出は、ここに記載のプローブの使用を含む。プローブは標準的な心臓カテーテル法検査室で見られるX線およびCT装置に有用であると考えられる。64スライスCTまたは128スライスCTがここに記載の造影法に適していると提案されている。プローブはまた、プローブを導入するためにカテーテルを用いることによって、近赤外スペクトル造影(サーモグラフィー)に関して有用であると提案されている。
【0091】
検出されうる異常は、破裂したアテローム硬化性プラークまたは破裂傾向にあるアテローム硬化性プラーク、血栓、塞栓、および活性化血小板の蓄積を含む。
【0092】
本発明はここで下記の非限定的な実施例を参照することによってさらに説明される。
【実施例】
【0093】
実施例1:一本鎖抗体scFvanti-LIBSおよび融合構造scFvanti-LIBS−TAPの作製
GPIIb/IIIa上のLIBSエピトープに対するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞株の作製、およびその機能的特徴づけは、以前に記載されている(シュワルツ(Schwarz)他.JPET 2004; 308: 1002)。要約すると、RGDペプチドを用いて精製および溶出されたGPIIb/IIIaが、ハイブリドーマ作製のための免疫原として用いられた。クローンは、活性化血小板を用いて、およびRGDペプチドで飽和した固定化GPIIb/IIIaを用いてスクリーニングされた。これらのクローンのうちの一つであるモノクローナル抗体(mAb)クローン145は、ADP活性化血小板に対して、およびRGDペプチド(GRGDSP,バイオモル・リサーチ・ラボラトリーズ社(BIOMOL Research Laboratories),ペンシルバニア州プリマスミーティング(Plymouth Meeting))、エプチフィバチド(インテグリリン(Integrilin)(登録商標),エセックスファーマ社(Essex Pharma),ドイツ、ミュンヘン)、チロフィバン(アグラスタット(Aggrastat)(登録商標),MSD,ニュージャージー州ホワイトハウスステーション(Whitehouse Station))、および アブシキマブ(レオプロ(ReoPro)(登録商標),イーライリリー社(Eli Lilly & Co),インディアナ州インディアナポリス)と予めインキュベートした血小板に対して結合の増加を示した。ハイブリドーマはRPMI、10%ウシ胎仔血清、1mMピルビン酸ナトリウム、10μMメルカプトエタノール、ペニシリン100単位/ml、ストレプトマイシン100g/ml(すべてギブコ社(Gibco))、および1xHATサプリメント(H0262、シグマ社(Sigma))中で維持された。IgGanti-LIBSmAbは、イムノピュア(ImmunoPure)(登録商標)IgGプロテインG精製(ピアース社(Pierce),米国イリノイ州ロックフォード(Rockford))を用いたハイブリドーマ上清のアフィニティ精製によって調製された。
【0094】
一本鎖抗体クローニングのために、ハイブリドーマのcDNAが、mRNA精製カラム(オリゴdT)およびM−MuLV(共にアマシャム・ファルマシア社(Amersham−Pharmacia),ドイツ、フライブルク(Freiburg))を用いて調製された。抗体可変領域の増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってPfu(登録商標)ポリメラーゼ(ストラトジーン社(Strategene),米国カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla))を用いて達成された。重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の保存領域(ウェルショフ(Welschof)他.J Immunol Methods 1995; 179: 203) に由来する配列に基づいた下記のプライマーが用いられた: VH センス: 5'− CCG GCC ATG GCG CAG GTG CAG CTG CAG CAG −3',VH アンチセンス: 5'− CC AGG GGC CAG TGG ATA GAC AAG CTT GGG TGT CGT TTT −3',VL センス: 5'− AA TTT TCA GAA GCA CGC GTA GAT ATC G/TTG A/CTG/C ACC CAA T/ACT CC,VL アンチセンス: 5'− GAA GAT GGA TCC AGC GGC CGC AGC ATC AGC −3'。PCR構造はpHOG21ベクター系(キプリヤノフ(Kipriyanov)他.J Immunol Methods.1997; 200: 69,シュワルツ(Schwarz)他.FASEB J 2004: 18: 1704)へ、VHについて制限部位 Nco I および Hind IIIを、およびVLについて制限部位 Mlu I および Not Iを用いてクローニングされた。結果として生じた一本鎖抗体をscFvanti-LIBSと称した。TAPは以前にクローニングされており(ハーゲマイヤー(Hagemeyer)他.Thromb Haemost.2004; 92: 47)、およびscFvanti-LIBSを既に含むpHOG21へ、制限部位 Not I および Xba Iを用いて導入し、それによってscFvanti-LIBS−TAP(図1A)を作製した。scFv部分の結合機能を持たない対照として、一本鎖抗体を含む非標的mut−scFv−TAPが作製され、その一本鎖抗体は元はGPIIb/IIIaへ結合したが、しかしその重鎖CDR3(相補性決定領域)が変異され(RNDからANDへ)およびそれによってその結合性質が失われた。すべての構造は配列決定された(図1B)。
【0095】
実施例2:大腸菌(E.coli)におけるscFv構造の発現および精製
大腸菌(E.coli)(TG1)細胞が上記のpHOG21プラスミドを用いて形質転換され、および新しく画線された寒天プレートからの各コロニーを、アンピシリン100μg/mLおよび100mMグルコースを含むLB培地中で37℃にて500mLフラスコで培養した。培養は200rpmにて約4〜6時間、OD(600nm)~0.8に達するまで振とうした。細菌は5000rpmにて10分間4℃での遠心分離によって沈澱され、およびアンピシリン100μg/mlおよび0.4Mショ糖を含むLB培地に再懸濁された。scFv産生の誘導のためにIPTGが終濃度0.25mMとなるように添加され、および室温にて(22〜24℃)200rpmで16〜20時間インキュベートされた。全細胞抽出物からの可溶性タンパク質の精製のために、細菌を5000rpmにて10分間4℃での遠心分離によって採集した。沈澱した細菌は1Xバグバスター(BugBuster)(登録商標)(ノバジェン社(Novagen),米国マジソン(Madison))5mL溶液/沈澱gに再懸濁し、および15分間室温にて緩やかに振とうしてインキュベートした。15000rpmにて20分間4℃での追加の遠心分離段階後、可溶性タンパク質を含む上清は氷上に保持され、および1:50希釈されたプロテアーゼ阻害剤(コンプリート(complete)(登録商標)ロシュ社(Roche),スイス、バーゼル)が添加された。可溶性タンパク質抽出物を含む上清は、500 μLのNi2+−アガロース (キアゲン社(QIAGEN),ドイツ、ヒルデン(Hilden))と混合され、および1時間4℃にて、150rpmで一定に振とうしながらインキュベートされた。Ni2+−アガロースは、ここでHis(6)タグ化タンパク質を結合しているが、緩衝液(50 mM NaH2PO4、300 mM NaCl、20 mM イミダゾール、pH 8)で洗浄する前に30分間静置された。このバッチ洗浄手順を二回反復した。最後に、scFv融合タンパク質は高イミダゾール濃度(250mM)にて溶出され、および続いて還元条件下でグラジエントSDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングによって分析された。タンパク質はイムノブロッティングのためにイモビロン(Immobilon)P膜(ミリポア社(Millipore Corporation),米国ベドフォード(Bedford))に転写された。0.2%ツイーン(Tween)20および1%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS−ツイーン)で膜を一夜ブロッキング後、HRP標識化抗His(6)抗体 (ロシュ社(Roche),ドイツ、マンハイム(Mannheim))が添加され(1:500希釈)および2時間室温にてインキュベートされた。膜はPBS−ツイーン(Tween)緩衝液で数回洗浄され、その後スーパーシグナル(SuperSignal)(登録商標)化学発光基質(ピアース社(Pierce)、米国ロックフォード(Rockford))の添加によりケミドック(ChemiDoc)XRS(登録商標) (バイオラッド社(BioRad),オーストラリア、ニューサウスウェールズ州リージェンツパーク(Regents Park)でペルオキシダーゼ活性が視覚化された。サイズマーカーおよびHis(6)タグ陽性対照として、6xHisプロテインラダー(登録商標)(キアゲン社)が用いられた。
【0096】
実施例3:scFv抗LIBS−TAPのIn Vitro機能特徴づけ
血液調製
ヒト血液は21ゲージバラフライ針を用いて静脈穿刺によって健常者から採取され、 およびクエン酸で抗凝固処理された。濃厚血小板血漿が100 x gでの遠心分離(GS−6R遠心分離機、ベックマン・コールター社(Beckmann Coulter)、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州グレイズビル(Gladesville))によってプラスチック試験管で室温にて遠心分離機内に10分間で得られた。
【0097】
マウス血液は27ゲージ針を用いた心臓内穿刺によってC57BL/6マウスから採取され、および未分画ヘパリン(20U/mL)を用いて抗凝固処理された。50μl量が1mLの改変タイロード(Tyrode)緩衝液(150 mM NaCl、2.5 mM KCl、1.2 mM NaHCO3、2 mM MgCl2、2 mM CaCl2、0.1 % BSA、0.1 %グルコース)に再懸濁され、および1300xgにて5分間遠心分離された。上清は廃棄され、および沈澱は1mLの改変タイロード緩衝液に再懸濁された。
【0098】
フローサイトメトリー
ヒトクエン酸加全血は改変タイロード緩衝液で1/50希釈され、20μMADPの添加によって活性化されたか、または活性化されずに、および次いで10分間、10μg/mLのIgGanti-LIBS、scFvanti-LIBS、およびscFvanti-LIBS−TAPと予備インキュベートされた。ScFvsは、scFvのヒスチジン(6)タグに対する二次抗体(ペンタHisアレクサフロー(Penta His Alexa Fluor)488コンジュゲート (登録商標)、キアゲン社(QIAGEN))によって検出された。IgGanti-LIBSはDTAF複合体化ヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)(ジャクソン・イムノリサーチ社(Jackson Immuno Research)、米国ペンシルバニア州ウエストグローブ(West Grove))によって検出された。
【0099】
マウス血小板は、0.1U/mLトロンビン(エンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(Enzyme Research Laboratories),米国インディアナ州サウスベンド(South Bend)) の添加によって活性化されたかまたは活性化されずに、 および 次いで10 分間、 10 μg/mLのIgGanti-LIBS,scFvanti-LIBS,および scFvanti-LIBS−TAPとインキュベートされた。蛍光検出は上記の通り実施された。試料は FACSCalibur(登録商標)フローサイトメーター(ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson),米国カリフォルニア州サンホセ(San Jose))で、CellFIX(登録商標)(ベクトン・ディッキンソン社)を用いた固定後に測定された。
【0100】
実施例4:抗第Xa因子 活性 検定
第Xa因子の阻害は、発色基質スペクトロザイムfXa#222(アメリカン・ダイアグノスティカ社(American Diagnostica Inc.),米国コネチカット州グリニッチ(Greenwich))の分解によって測定された。プローブは改変タイロード緩衝液(150 mM NaCl、2.5 mM KCl、12 mM NaHCO3、2 mM MgCl2、2 mM CaCl2、pH 7.4)に対して透析され、および100nMのscFvanti-LIBS、scFvanti-LIBS−TAPおよび非標的mut−scFv−TAP、または遊離組み換えTAPを終容量165μl中に得るように調整された。10μlの0.1%ヒトアルブミンを添加後、プローブは10μLの500pM第Xa因子(ヘモクロム(Haemochrom)、エンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(Enzyme Research Laboratories))と混合され、および陽性対照としての第Xa因子単独と比較された。室温にて10分間インキュベート後、15μLの発色基質溶液(5mM)が添加され、およびプレートは15分間室温にてインキュベートされた。最後に、反応は停止溶液50μlを添加することによって停止され、および吸収は405nmにてELISAリーダー(Victor3(登録商標)、パーキンエルマー社(PerkinElmer)、オーストラリア、メルボルン)で測定された。
【0101】
実施例5: マウスモデルにおける抗血栓効力および出血からの保護のIn Vivo機能評価
体重22〜38gのC57BL/6マウス(チャールズ・リバー・ラボラトリーズ社(Charles River Laboratories),米国マサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington))が本試験に用いられた。実験動物の飼育および使用は国のガイドラインに従い、およびフライブルク大学(University of Freiburg)およびベーカー心臓研究所(Baker Heart Research Institute)の施設内動物飼育および倫理委員会に承認された。マウスはエクシケーターを用いてイソフルランで数秒間、およびケタミン(ケタネスト(Ketanest)(登録商標)100mg/kg体重)およびキシラジン(ロンプン(Rompun)(登録商標)5mg/kg体重)の皮下注射で麻酔し、および解剖顕微鏡下に置いた。反射の消失後、右 総頸動脈 領域の直接上に皮膚切開を行った。筋膜は平滑に切開され、および右総頸動脈の一部が露出された。次いでナノドップラーフロープローブ(モデル0.5VB、トランソニック・システムズ社(Transonic Systems)、米国ニューヨーク州イサカ(Ithaca))が動脈上に配置され、および頸動脈血流がフローメーター(モデルT106、トランソニック・システムズ社、米国ニューヨーク州イサカ)によって測定された。血栓症は、塩化第二鉄(10%溶液)(シグマ社(Sigma)、米国ミズーリ州セントルイス)で飽和したろ紙(ゲルブロット紙、GB003、シュライヒャー・アンド・シュール社(Schleicher and Schuell),米国ニューハンプシャー州キーン(Keene))の一片(1x2 mm)を右頸動脈下に付けおよび3 分後に除去することによって誘導された。血栓性閉塞は、製造元の規格による本システムの精度に相当する範囲である、0.0±0.2mL/分間に低下した際に生じると考えられた。
【0102】
塩化第二鉄処理の1分前に,マウスは尾 静脈を通じて、 生理食塩水 (陰性対照) (0.9% 塩化ナトリウム) 100 μl,1 mg/kg体重を生理食塩水で容量100 μlに希釈したエノキサパリン(陽性対照)(クレキサン(Clexane)(登録商標)サノフィ・アベンティス社(SanofiAventis)、フランス、パリ)、およびさまざまな用量の精製組み換えscFvanti-LIBS−TAP、scFvanti-LIBS、非標的mut−scFv−TAP、およびrTAPを輸液した。使用したscFvsおよびrTAPのすべての用量は、溶解して容量100μlとされた。すべての薬剤がマウスに輸液されたことを確実にするため、口を生理食塩水100μlで洗浄した。
【0103】
マウス出血時間は、シンカン(Xinkang)によって以前に記載された通り測定された。麻酔されたマウスを解剖顕微鏡下に置いた。マウス尾の先端から約1〜2mm(直径約1mm)に、使い捨て外科用ナイフを用いて切断を行った。尾が最初に30秒より長く出血が止まった時間を秒で記録した。
【0104】
統計分析
データは表示数(N)マウスのマウスについて平均値±標準偏差として示す。統計的比較は分散分析(ニューマン・クールズ検定後にANOVA)によって行われ、および差はp<0.05で有意と考えられた。
【0105】
実施例6: 診断用造影のための標識化一本鎖抗体の使用
実施例1に記載の一本鎖抗体抗LIBSを、Hisタグを含むタンパク質と相互作用するように官能化された超常磁性酸化鉄粒子(SPIO)と混合した(ダイナビーズ(Dynabeads)(登録商標)タロン(TALON)(商標);ダイナル・バイオテク社(Dynal Biotech))。抗体を常磁性ビーズへカップリングするための他の方法(たとえば化学カップリング)もまた使用されうる。活性化血小板(血栓および塞栓の主要なおよび必須な成分である)へのコントラスト剤の結合は、接着検定によって実証された。検定に使用される血小板の活性化は蛍光顕微鏡によって観察され、血小板表面上のP−セレクチン発現のアップレギュレーション、および蛍光検出によって細胞内Ca2+レベルの上昇を示した。検定は、血小板を30分間37℃にてインキュベートすることによる、フィブリノーゲン被覆カバーグラス上への活性化血小板の固定を含んだ。カバーグラスを洗浄後、フィブリノーゲン−血小板マトリクスはコントラスト剤に30分間曝露された。非特異的結合を除外 およびコントラスト剤の血小板だけとの結合を実証するため、血小板の同時染色が、P−セレクチン抗体およびフルオレセイン−アビジンでの二次染色を用いて実施された(図9)。共焦点顕微鏡法を用いて、赤色に見える自己蛍光コントラスト剤の血小板への結合が、P−セレクチン染色血小板の同時の緑色蛍光によって実証された。共焦点顕微鏡法からのZスタックを用いた3D−再構成を図10に示す。
【0106】
さらに、in vitroでの本造影法の適切性を評価するため、血栓表面上の活性化血小板への一本鎖抗体の結合を示すための磁気共鳴実験が実施された。これらの実験のために、アクチン、アデノシン二リン酸および塩化カルシウムをヒト濃厚血小板血漿に添加し、および混合物を15〜30分間37℃でインキュベートすることによってヒト血栓が人工的に作製された。血栓はさまざまな濃度のコントラスト剤に曝露され、およびさらに30分間37℃にてインキュベートされた。最後に、血栓はPBS緩衝液で2回洗浄され、および4%パラホルムアルデヒドで固定された。4時間の固定後、血栓は24ウェル細胞培養プレートのウェルに、ガドリニウム添加2%アガロースに囲まれて包埋された。磁気共鳴造影(MRI)は3テスラ医療用スキャナーで標準のリストコイルを用いて実施された。TE/TR 9.3ms/700msの3DFLASH配列が分解能130x130x200μmで実施され、および画像は一夜の分析で凝固の縦軸に垂直に再構成された。SPIOinT2*強調MRIによって生じるネガティブコントラストは、LIBSターゲッティング抗体とインキュベートされた血栓の周りに黒色の輪として用量依存性に観察された(図11)。さらに、ビーズ結合は、パラフィン包埋切片において抗P−セレクチン抗体を用いた免疫組織化学、およびノヴァレッドでの染色を用いて確認された:図4は、血小板の範囲へのビーズ(黄色)の結合を伴う血小板(茶色)の集塊を示す。これらの結果は、設計されたコントラスト剤の活性化血小板への in vitroでの結合成功を示し、MRIによって臨床使用フィールド強度を用いて検出されうる。
【0107】
実施例7:マウスモデルにおける診断用造影のための標識化一本鎖抗体の使用.
一本鎖抗体作製および1μm酸化鉄微粒子への複合体化
GPIIb/IIIa上のLIBSエピトープは、活性化血小板についての豊富なおよび高度に特異的な標的に相当する。mAb抗LIBS145は、活性立体構造でのみGPIIb/IIIaと結合し、およびそれはフィブリノーゲンの存在下でADP活性化血小板への強い結合を示す(シュワルツ(Schwarz)JPET 2004)。mAb抗LIBS145を発現するハイブリドーマ細胞株が、抗LIBS一本鎖抗体(scFv)のクローニングのための基礎として使用された。このハイブリドーマ細胞株のmRNAが調製され、オリゴdTプライマーを用いて逆転写された。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域が、可変領域の5'および3'末端にある保存領域とアニーリングするプライマーを用いてPCRによって増幅された。PCR産物はpHOG21ベクターにクローニングされ、TG1大腸菌(E.coli )が形質転換され、およびLIBSに典型的なGPIIb/IIIaへの結合について評価され、活性化血小板を用いてフローサイトメトリーで試験された。最後に、最も良く結合するscFvLIBSが、アンピシリン100μg/mLおよび100mMグルコースを含むLB培地中で、37℃にて500mLフラスコで産生された。培養は200rpmにて約4〜6時間、OD(600nm)~0.8に達するまで振とうされた。細菌は5000rpmにて10分間4℃での遠心分離によって沈澱され、およびアンピシリン100μg/mlおよび0.4Mショ糖を含むLB培地に再懸濁された。scFv産生の誘導のためにIPTGが終濃度0.25mMとなるように添加され、および室温にて(22〜24℃)200rpmで16〜20時間インキュベートされた。細菌を5000rpmにて10分間4℃での遠心分離によって採集し,沈澱した細菌は1Xバグバスター(BugBuster)(登録商標)(ノバジェン社(Novagen)) 5mL溶液/沈澱gに再懸濁し、および15分間室温にて緩やかに振とうしてインキュベートした。15000rpmにて20分間4℃での追加の遠心分離段階後、可溶性タンパク質を含む上清は氷上に保持され、および1:50希釈されたプロテアーゼ阻害剤(コンプリート(complete)(登録商標)ロシュ社(Roche))が添加された。上清は was mixed with 500 μLのNi2+−アガロース (キアゲン社(QIAGEN)) と混合され、および1時間4℃にて、150rpmで一定に振とうしながらインキュベートされた。Ni2+−アガロースは、ここでHis(6)タグ化タンパク質を結合しているが、緩衝液(50 mM NaH2PO4、300 mM NaCl、20 mM イミダゾール、pH 8)で洗浄する前に30分間静置された。このバッチ洗浄手順を二回反復した。最後に、scFvは高イミダゾール濃度(250mM)にて溶出されおよび透析された。scFv調製物の機能性はフローサイトメトリーで評価された。
【0108】
自己蛍光 コバルト官能化MPIO (1μm)が、取扱説明書に従って(ダイナル・バイオテク社(Dynal Biotech),ノルウェー、オスロ)、LIBS一本鎖抗体のヒスチジンタグと複合体化された。要約すると、洗浄後1mg のビーズ がLIBS 抗体と10 分間 室温にて (RT) インキュベートされ、約10μg の ヒスチジンタグ化抗体を結合した。懸濁液を入れた試験管を次いで、ビーズが試験管の側面に移動してしまうまで磁石の上に置き、および上清を廃棄した。この洗浄を、50mM NaP (pH 8)、300mM NaCl および0.01%ツイーン(Tween)−20.を含む結合および洗浄緩衝液を用いて4回反復した。
【0109】
活性化血小板へのLIBS−MPIO結合
活性化血小板へのLIBS−MPIOの結合を実証するために、接着検定が実施された。 薬剤を摂取していない健常者由来の血液をクエン酸で抗凝固処理し、および1000 rpm にて 10 分間遠心分離した。結果として得られる濃厚血小板血漿をPBSで希釈し (1:10)、 および 100 μlを、20μg/ml フィブリノーゲンと1 時間38℃予備インキュベートされおよび1% BSAで 1 時間 室温にてブロッキングされているフィブリノーゲン被覆カバーグラス上に加えた。38℃にて30分間インキュベート後、カバーグラスをPBSで洗浄し、および連続回転下で0.5μgのLIBS−MPIO(LIBS−MPIO)または等価の複合体化された無関係の一本鎖抗体対照(対照MPIO)のどちらかと、さらに30分間38℃にてインキュベートした。カバーグラスを次いで5分間PBSで2回洗浄し、および10%ヤギ血清(ベクター社(Vector)、米国カリフォルニア州バーリンガム(Burlingame))で1時間室温にてブロッキングした。コントラスト剤の特異的結合を実証するため、血小板を、P−セレクチンについてモノクローナルマウス抗ヒトCD62抗体(1:100、R&Dシステムズ社(R&D Systems)、英国アビンドン(Abingdon))を用いて、二次抗体として作用するビオチン化ヤギ抗マウスIgG(ベクター社、米国カリフォルニア州バーリンガム) と同時染色した。最後に、1:200希釈フルオレセインアビジン D (ベクター社、米国カリフォルニア州バーリンガム)を添加し、1時間および室温にてインキュベートした。カバーグラスはセルフィックス(CellFix)(BDバイオサイエンス社(BDBiosciences)、ドイツ、ハイデルベルク)を用いて固定し、および共焦点顕微鏡法によって評価した。
【0110】
マウス
ワイヤ傷害は平均10±0.8週齢の雄C57BL/6マウス(ジャクソン・ラボラトリーズ社(Jackson Laboratories),英国)で実施した。マウスは水および標準飼料を自由摂取した。すべての手順は英国内務省動物(科学的処置)法1986に準拠して実施された。
【0111】
大腿ワイヤ傷害、ビーズ灌流および試料調製
片側大腿ワイヤ傷害は全身麻酔下で、同時投与されたヒプノルム(Hypnorm)(25mg/kg、バイエル社(Bayer)、ドイツ)およびヒプノバル(Hypnoval)(25mg/kg、バイエル社、ドイツ)の組み合わせを用いて、以前に記載された通り実施した(ロケ(Roque),M.,他.,管腔表面上の接着分子の迅速な蓄積および好中球の動員を伴う大腿動脈裸出傷害のマウスモデル(Mouse model of femoral artery denudation injury associated with the rapid accumulation of adhesion molecules on the luminal surface and recruitment of neutrophils.)Arterioscler Thromb Vasc Biol,2000.20(2): p.335−42)。外科用顕微鏡下で、鼠径部切開を行った。大腿動脈が露出され、および動脈切開が腹壁分岐の遠位側で30G注射カニューレ(BD社,ベルギー、エーレムボードヘム(Erembodegem))を用いて行われた。0.010インチガイドワイヤ(ボストン・サイエンティフィク社(Boston Scientific)、米国ナティック(Natick))が挿入され、大動脈分岐へ進められ、および引き戻された。ワイヤの除去後、動脈切開部位は結合され、および皮膚は絹縫合糸を用いて閉じた。24時間後、マウスはイソフルランの吸入によって薬殺された。開胸術によって胸部を開き、心臓を露出しおよび右心房を切断した。30G針を左心室の尖部を通じて挿入し、および動物をPBS10mlで灌流して血液を排出した。灌流を、LIBS−MPIOまたは対照MPIO(それぞれ1.5x108ビーズ/ml)のどちらかを含むPBS5mLを用いて続けた。30分後、マウスを再び生理圧下でPBS10mLで、次いで2mMガドテリドール(プロハンス(Prohance)、ブラッコ社(Bracco)、英国)を含む4%パラホルムアルデヒド(PFA)5mLで灌流した。皮膚を除去し、傷害部のある肢を切断し、4%PFA/2mMガドテリドール中に24時間保持し、および次いで2%高グレード低融点アガロース(キャンブレックス社(Cambrex)、米国メイン州ロックランド(Rockland))の入ったガラスMR管に包埋した。
【0112】
Ex vivo MRI
Ex vivo MRIを11.7 Tにて13 mm 1Hバードケージラジオ波コイル (ラピッドバイオメディカル社(RAPID Biomedical),ドイツ、ヴュルツブルク(Wurzburg))を用いて実施した。3Dグラジエントエコーシーケンス (TE = 4 ms / TR= 90 ms、視野13(13(19.5mm、マトリクスサイズ256(256(384、2平均、造影時間~7h/配列)を無人一夜運転に使用した。データ再構成はオフラインで最終等方性分解能25μm3を用いて実施した。
【0113】
傷害大腿動脈におけるMPIO 結合の組織学 および 定量
MRI後、標本を10%ギ酸中で一夜脱灰し、段階的エタノール溶液およびネオクリア(Neo−clear)(VMR社、英国)を経て脱水し、パラフィン包埋しおよび連続切片を作製した(8μm厚)。標本は鉄について(アキュスティン(Accustain)、シグマ社(Sigma)、ドイツ)取扱説明書に従って染色した。傷害された管腔血管壁へ結合した複合体化MPIOの数を、光学顕微鏡を用いて傷害血管部位から動物当たり20〜25切片で定量しおよび平均した。
【0114】
免疫組織化学を用いた血小板可視化については、脱パラフィンおよび再水和した切片を1%H2O2中で20分間飽和し、沸騰用クエン酸緩衝液に加え、および4分間圧力鍋で抗原回収のために沸騰させた。標本をPBSツイーン(Tween)で洗浄し、タンパク質ブロック溶液(ダコ・サイトメーション社(DakoCytomation)、ドイツ、ハンブルク)と4時間インキュベートし、および4℃にてラット抗マウスCD61抗体(1:8000、インターセル・テクノロジーズ社(InterCell Technologies),米国Fl)と一夜インキュベートした。PBSで洗浄後、ビオチン化ヤギ抗ハムスターIgG(1:200、ベクター社(Vector)、米国カリフォルニア州バーリンガム(Burlingame))二次抗体。スライドをPBSで洗浄し、およびペルオキシダーゼ反応を、ベクタステインRTUエリート(Vectastain RTU Elite)ABC試薬 および ベクター・ノヴァレッド(NovaRed)(共に ベクター社、米国カリフォルニア州バーリンガム)を用いて実施した。最後に、切片を脱水し、パーマウント(Permount)(バイオメダ社(Biomeda)、米国カリフォルニア州フォスターシティ(Foster City)を用いてマウントし、および血小板へ結合したビーズを光学顕微鏡で評価した。
【0115】
ex vivo MRIによる大腿動脈におけるMPIO結合
MPIO結合の定量を盲検で実施した。抗体複合体化MPIO結合は、2以上の連続した切片での大腿動脈の管腔表面上の明瞭な円形シグナル空白として定義された。複数の切片に現れるMPIOは、1回だけ計数された。断片化された画像は、大腿動脈全体にわたるMPIO結合の分布を可視化するため、3Dコンストラクターまたはイメージプロ・プラス(ImagePro Plus)用プラグインを用いて三次元で再構成された
【0116】
統計的手法
データは平均値±標準偏差として表される。パラメトリックデータはt検定を用いて比較された。統計的有意性はP <0.05に与えられた。
【0117】
結果
LIBS−MPIOは血小板上の活性化糖タンパク質IIb/IIIa受容体を検出する
図13で、抗P−セレクチン抗体で標識されたヒト血小板血栓は鮮緑色の蛍光を発する。血小板血栓に重なっているのは、自己蛍光LIBS−MPIOに対応する赤色領域である(図A)。MPIOは非特異的バックグラウンド保持無しに、血小板血栓に限定される。対照的に、図Bでは、無関係な一本鎖抗体と複合体化された対照MPIOの結合が全く存在しない。共焦点顕微鏡法での3次元zスタック再構成は、P−セレクチン染色血小板(緑)へのLIBS−MPIO結合(赤)を示し、それらの相対サイズおよび空間的関係を強調している。
【0118】
ex vivo MRIによって検出された壁接着血小板と結合したLIBS−MPIO
片側性大腿動脈ワイヤ傷害がマウス13個体で合併症無しに実施された。マウス7個体がLIBS−MPIOで、および6個体が対照MPIOで、左心室経由で灌流された。観察者2名間でMPIOの定量に顕著な変動があった対照動物1個体が定量分析から除外された。
【0119】
傷害動脈断片のEx vivo T2*強調MRIはしばしば、動脈壁内に内因性低シグナル部分を示した(図14B)。これとは異なったのは、血管腔内であるが血管壁と隣接した、円形シグナル空白の出現であった。この性質は、LIBS−MPIOを注射されたすべてのマウスのワイヤ傷害動脈で観察された(図14A)。定量分析では、MPIO蓄積を示唆する低シグナルの管腔部分は、LIBS−MPIOを注射された動物において、対照MPIO灌流動物よりも有意に高かった(23.72対6.2;P<0.01、図14C)。
【0120】
MPIO結合は組織学において確認され(図15)、LIBS−MPIOを注射された動物でMPIO結合が有意に高かった(切片当たり9.98対0.5ビーズ、P<0.01;図15D)。MPIOおよび動脈壁への血小板接着の同時局在化は、免疫組織化学によって確認された。図15Cでは、MPIOは血小板マーカーCD61についての免疫染色陽性に随伴して存在することが実証される。
【0121】
組織学におけるビーズ定量の分析は、ex vivo MRIによる定量と比較して、強い相関を示した(R2=0.7219、P<0.001;図17)。したがって、MRIによって測定されたMPIOシグナル量は、傷害血管壁へ結合するMPIOの量を直接に反映した。
【0122】
最後に、ここに概要を示した通りの本発明の精神を離れることなく、さまざまな他の改変および/または変化を行いうることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1はScFv−抗LIBS−TAPを示す。細菌ペクチン酸リアーゼ(pelB)の細菌シグナルペプチド配列は40位から105位までのヌクレオチドを含み、重鎖の可変領域は106位から483位までのヌクレオチドを含み、リンカー(YOLエピトープ)は484位から510位までのヌクレオチドを含み;軽鎖の可変領域は511位から861位までのヌクレオチドを含み;TAP領域は862位から1041位までのヌクレオチドを含み、およびHis6−タグは1069位で開始しおよび1086位で終了する。
【図2】図2はpHOG21−scFv抗LIBS−TAPのマップを示す。RAMP:アンピシリン耐性遺伝子;ColE1ORI:大腸菌(E.coli)の複製開始点;f1IG、線維状遺伝子間領域;pelB:ペクチン酸リアーゼpelBのリーダーペプチド配列;VH/VL:重鎖/軽鎖;TAP:ダニ抗凝固ペプチド;His6:ヒスチジン6個の反復。
【図3】図3は、IgG抗LIBS、scFv抗LIBS、およびscFv抗LIBS−TAPの、非活性化でなく活性化ヒト血小板に対する特異的結合のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。ADP活性化血小板の結合は白ヒストグラムで示される;非活性化血小板への結合は網掛けヒストグラムで示される。IgG抗体の結合はDTAF複合体化ヤギ抗マウス抗体によって検出され、scFvsの結合はアレクサフロー(Alexa Fluor)488複合体化抗Hisタグ抗体によって検出される。
【図4】図4は、Ni2+−生成scFv抗LIBS、scFv抗LIBS−TAP、および非標的mut−scFv−TAPのウェスタンブロット分析を示す。MW:分子量マーカー(6xHisタンパク質ラダー)、1:scFv抗LIBS、2:scFv抗LIBS−TAP、3:非標的scFv−TAP。
【図5】図5は、第Xa因子活性の、rTAP、scFv抗LIBS−TAP、および非標的mut−scFv−TAPによるが、scFv抗LIBSによらない阻害を示す。発色基質(スペクトロザイムFXa#222)の第Xa因子(500pM)による切断が、405nmにて測定された。棒グラフは光学密度(OD)を、 代表的な実験の三連測定の平均値および標準偏差として示す。
【図6】図6は、IgG抗LIBS、scFv抗LIBS、およびscFv抗LIBS−TAPの、非活性化でなく活性化マウス血小板への特異的結合のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。トロンビン活性化血小板の結合は白ヒストグラムで示される;非活性化血小板への結合は網掛けヒストグラムで示される。IgG抗体の結合はDTAF複合体化ヤギ抗マウス抗体によって検出され、scFvsの結合はアレクサフロー(Alexa Fluor)488複合体化抗Hisタグ抗体によって検出される。
【図7】図7は、塩化第二鉄誘導性血栓症を有するマウスモデルでの頸動脈における、高用量および低用量でのscFv抗LIBS−TAPの抗血栓作用を示す。血栓発生は頸動脈でのナノドップラーフロープローブを用いたフロー測定によって測定された、閉塞時間測定によって評価された。生理食塩水(0.9%NaCl)および一本鎖抗体scFv抗LIBSが陰性対照として用いられる。臨床に使用される薬剤としてエノキサパリンが陽性対照として用いられる。rTAP、scFv抗LIBS−TAP、および非標的mut−scFv−TAPが高い等モル用量で用いられ、およびscFv抗LIBS−TAPおよび非標的scFv−TAPが低い等モル用量で用いられた。各群4個体のマウスの平均値および標準偏差(SD)が示される。
【図8】図8は、凝固標的化抗凝固scFv抗LIBS−TAPが、コントラストtoエノキサパリン、rTAP、および非標的mut−scFv−TAPとは対照的に出血時間延長を引き起こさないことを示す。マウスにおける出血時間は、尾切断によって測定した。生理食塩水(0.9%NaCl)および一本鎖抗体scFv抗LIBSが陰性対照として用いられた。rTAPおよび非標的mut−scFv−TAPは、scFv抗LIBS−TAPとは対照的に出血時間の相当な延長を示した。各群4個体のマウスの平均値および標準偏差(SD)が示される。
【図9】図9は、血栓接着検定の概要を示す。フィブリノーゲン上に固定化された血小板が、抗LIBSビーズコントラスト剤を用いて活性化GPIIb/IIIa受容体を介してターゲッティングされた。血小板の同時染色が、コントラスト剤の血小板だけとの選択的結合を実証するため、P−セレクチン抗体およびフルオレセイン−アビジンを用いて実施された。
【図10】図10左図:接着検定の共焦点顕微鏡像。P−セレクチンおよびフルオレセインアビジン染色血小板は緑色の集塊として現れ、抗LIBSビーズコントラスト剤の赤色の蛍光ビーズで囲まれている。右図:共焦点顕微鏡像60枚からのZスタックの3D再構成。
【図11】図11は、縦軸に垂直に再構成されたヒト血栓のMRIの3D FLASH像を示す。異なる濃度の抗LIBSビーズコントラスト剤に曝露された血栓は、SPIOビーズによって生じたT2*(血栓周囲の黒い輪)のネガティブコントラストを示す。ビーズ上の無関係の抗体に曝露された血栓は、このネガティブコントラストを示さない。
【図12】図12は、マウス 抗ヒト P−セレクチン および ノヴァレッド (茶色)を用いた血小板の免疫組織化学を示す。 抗LIBS ビーズ コントラスト 剤は黄色に見え、 および血栓表面上の血小板凝集の範囲だけに存在する。
【図13】図13は、アビジン−フルオレセインについてCD62P抗体を用いて染色された、フィブリノーゲンで固定されたヒト血小板の免疫蛍光を示す。(A)赤色自己蛍光LIBS−MPIOコントラスト剤とインキュベートされた血小板は、緑色のアビジン−フルオレセイン誘導シグナルで表される血小板との特異的結合を示し、一方、対照MPIOコントラスト剤との血小板のインキュベートは結合を示さない(B)。(C)はLIBS−MPIOとインキュベートされおよびP−セレクチンについて染色された血小板からのZスタックの3D再構成を表し、活性化GPIIb/IIIa受容体に対するLIBSのターゲッティングの原理を示す。
【図14】図14は、3Dグラジエントエコーシーケンス(TE=4ms/TR=90ms、視野13(13(19.5mm、マトリクスサイズ256(256(384)、等方性分解能25μm3の11.7T ex vivo MRIを示す。(A)はLIBS−MPIO灌流マウスにおける傷害大腿動脈を示す。黒色の内因性血管壁シグナルが、LIBS−MPIOマウスおよび対照MPIOマウスで観察でき(B)、しかし大腿動脈の管腔側に接してシグナル空白がLIBS−MPIOマウスにおけるMPIO結合の指標として観察されうる(A、矢印)。MPIOに誘導されるMRIシグナル空白の定量は、LIBS−MPIOおよび対照MPIO灌流マウスの間の有意差を明らかにする(p<0.05)。
【図15】図15は、代表的な傷害大腿動脈断片の組織学を示す。(A)はLIBS−MPIOを用いた灌流後の傷害壁への複数のビーズ結合を示し(矢印)、一方、対照MPIO灌流後には結合は観察できない(B)。(A)および(B)の組織は鉄染色されたが、ビーズのポリスチレンコーティングは鉄コアの典型的な青色染色を可能にする。しかし、鉄コアの青色の内因性シグナルは、顕微鏡の焦点に依存して観察できた。(C)LIBS−MPIOコントラスト剤の血小板への結合は、CD61についての免疫組織化学およびノヴァレッド染色を用いて確認された。(a)は壁に接着した血小板を表し、および(b)MPIOは血小板へ直接結合した。(D)LIBS−MPIOおよび対照MPIO灌流マウスにおいて代表的な組織切片ごとに結合したMPIOの定量、LIBSを標的とするコントラスト剤の高度に特異的な結合を示す(p<0.01)。
【図16】図16は、MRIでの傷害肢についてのMPIOシグナルおよび組織学での切片についての結合したMPIOの間の相関分析を示し、有意な相関を示す(R2=0.72)
【図17】図17は、イメージプロ・プラス(ImagePro Plus)用3Dコンストラクター・プラグインを用いるLIBS−MPIO動物の大腿動脈の三次元再構成を示す。(A)は緑色の管として現れる大腿動脈管腔を示す。(B)は赤色のMPIOシグナル単独を示し、および(C)では解剖学的像についての融合した情報が示される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液学の分野および特に止血の下位分野に関する.より具体的には、本発明は、1)哺乳類血液中の凝固を阻害する物質、および脳卒中、心筋梗塞、および深部静脈血栓症といった疾患の治療および予防におけるこれらの物質の用途、および2)血栓症、血栓性塞栓および不安定プラークといった臨床環境における診断および活性化血小板の特定を可能にするプローブに関する。
【背景技術】
【0002】
血管傷害後の血流を調節する身体の能力は生存継続に決定的である。血液凝固 および 次いで傷害された組織の修復に続くその後の凝固の溶解の過程を止血という。止血は血管の完全性の喪失後に集合として起こるいくつかの現象から成る。
【0003】
その過程の最初の段階は血管収縮である。これは傷害の範囲への血液の流れを制限する。次に、血小板がトロンビンによって活性化され、および傷害の部位で凝集して、一時的な緩い血小板栓を形成する。タンパク質フィブリノーゲンが、血小板凝集を刺激する主な原因である。血小板は血管の内皮裏打ちの破壊後に露出されるコラーゲンへの結合によって凝集する。活性化に際して、血小板は、アデノシン−5'−二リン酸、ADPおよびTXA2(他の血小板を活性化する)、セロトニン、リン脂質、リポタンパク質、および凝固カスケードに重要なその他のタンパク質を放出する。誘導された分泌に加えて、活性化血小板は栓の形成に対応するため形を変化させる。
【0004】
最初は緩い 血小板栓の安定性を確実にするため、フィブリン網 (凝固ともいう) が形成されおよび栓を捕捉する。最後に、凝固 は組織修復後に正常な血流のために溶解されなければならない。凝固の溶解はプラスミンの作用を通じて起こる。
【0005】
二つの経路すなわち内因性および外因性経路が、フィブリン血餅の形成に繋がる。それらは異なる機構によって開始されるが、その二つは、凝固形成に繋がる共通の経路に集束する。組織傷害の非存在下での異常血管壁に応答した赤色血栓または凝固の形成は、内因性経路の結果である。組織傷害に応答したフィブリン血餅形成は、外因性経路の結果である。両方の経路は複雑でありおよび凝固因子と呼ばれる多数の異なるタンパク質が関与する。
【0006】
血小板活性化およびフォンウィルブランド因子(vWF)。
止血が起こるためには、血小板は、露出されたコラーゲンに接着し、顆粒の内容を放出し、および凝集しなければならない。内皮細胞表面上に露出されたコラーゲンへの血小板の接着は、フォンウィルブランド因子(vWF)によって媒介される。vWFの機能は、血小板の表面上の特定の糖タンパク質(GPIb/IX)およびコラーゲン原線維の間の架橋として作用することである。血小板および内皮表面上の露出したコラーゲンの間の架橋としての役割に加えて、vWFは凝固第VIII因子に結合しおよびそれを安定化する。第VIII因子のvWFによる結合は、循環中の第VIII因子の正常な残存に必要である。
【0007】
フォンウィルブランド因子は、血小板によって産生されおよび血小板内に貯蔵される複雑な多量体糖タンパク質である。それはまた巨核球によっても合成され、および内皮下結合組織に結合しても見出される。血小板の最初の活性化は、血小板の表面上の特異的受容体へのトロンビン結合によって誘導され、それによってシグナル伝達カスケードを開始する。トロンビン受容体はGタンパク質と結合し、Gタンパク質は今度はホスホリパーゼC−γ(PLC−γ)を活性化する。PLC−γはホスファチジルイノシトール−4,5−ビスホスフェート(PIP2)を加水分解し、イノシトール三リン酸(IP3)およびジア知るグリセロール(DAG)の形成に繋がる。IP3は細胞内貯蔵Ca2+の放出を誘導し、およびDAGはプロテインキナーゼC(PKC)を活性化する。
【0008】
血小板が接着するコラーゲンおよび細胞内Ca2+の放出は、ホスホリパーゼA2(PLA2)の活性化に繋がり、PLA2は次いで膜リン脂質を加水分解し、アラキドン酸の遊離に繋がる。アラキドン酸放出は、トロンボキサンA2(TXA2)の産生および続いての放出の増大に繋がる。これはPLC−γ経路を通じて機能するもう一つの血小板活性化因子である。放出された細胞内貯蔵Ca2+によって活性化されるもう一つの酵素が、ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)である。活性化MLCKはミオシンの軽鎖をリン酸化し、それは次いでアクチンと相互作用し、結果として血小板の形態および運動性を変化させる。
【0009】
PKCの多数の作用のうちの一つが、特異的な47,000ダルトン血小板タンパク質のリン酸化および活性化である。この活性化されたタンパク質は、血小板顆粒内容物の放出を誘導し、内容物の一つがADPである。ADPはさらに血小板を刺激し、活性化カスケード全体を増大させ、また血小板表面にフィブリノーゲンが接着するように血小板膜を変化させ、その結果として、フィブリノーゲンに誘導される血小板凝集が起こる。
【0010】
血小板の活性化は、その結果としての血小板の血小板栓への凝集に必要である。しかし、等しく重要なのは、活性化された血小板表面リン脂質の、凝固カスケードの活性化における役割である。
【0011】
内因性凝固カスケードは、血液および露出された内皮細胞表面の間に接触が行われる際に開始される。外因性および内因性経路は、第X因子が活性化されて第Xa因子になる点で集束する。第Xa因子は、第VII因子の第VIIa因子へのさらなる活性化に関与する。活性な第Xa因子はまた、プロトロンビンをトロンビンへ加水分解および活性化する。トロンビンは次いで、第XI、第VIIIおよび第V因子を活性化でき、カスケードを進行させる。最終的にトロンビンの役割は、フィブリノーゲンをフィブリンへ変換すること、および第XIII因子を第XIIIa因子へ活性化することである。第XIIIa因子(トランスグルタミナーゼともいう)は、フィブリンポリマーを架橋して、凝固を固化する。
【0012】
内因性経路は、凝固第VIII、IX、X、XI、およびXII因子を必要とする。タンパク質のプレカリクレインおよび高分子量キニノーゲン、および血小板から分泌されるカルシウムイオンおよびリン脂質もまた必要である。これらの経路成分それぞれが、第X因子(不活性)から第Xa因子(活性)への変換に繋がる。内因性経路の開始は、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、第XI因子および第XII因子が負に荷電した表面に曝露される際に起こる。これは接触期と呼ばれる。血管表面へのコラーゲンの露出は、接触期の一次刺激である。
【0013】
接触期成分の集合は、プレカリクレインからカリクレインへの変換を結果として生じ、それは今度は第XII因子を第XIIa因子へ活性化する。第XIIa因子は次いで、より多くのプレカリクレインをカリクレインへ変換でき、相互活性化カスケードを樹立する。第XIIa因子はまた、第XI因子を第XIa因子へ活性化し、および強力な血管拡張剤であるブラジキニンの、高分子量キニノーゲンからの放出に繋がる。
【0014】
Ca2+の存在下で、第Xia因子は第IX因子を第IXa因子へ活性化する。第IX因子はビタミンK依存性γ−カルボキシグルタミン酸(gla)残基を含む酵素前駆体であり、そのセリンプロテアーゼ活性はこれらのgla残基へのCa2+結合後に活性化される。カスケードのいくつかのセリンプロテアーゼ(II、VII、IX、およびX)はglaを含む酵素前駆体である。活性第IXa因子は第X因子を内部arg−ile結合で切断し、その第Xa因子への活性化に繋がる。
【0015】
第Xa因子の活性化は、テナーゼ複合体(Ca2+および第VIIIa、第IXaおよび第X因子)の、活性化血小板の表面上での集合を必要とする。活性化に対する血小板の応答の一つが、表面上のホスファチジルセリンおよびホスファチジルイノシトールの提示である。これらのリン脂質の露出は、テナーゼ複合体の形成を可能にする。この過程における第VIII因子の役割は、第VIIIa因子の形で、第IXa因子および第X因子に対する受容体として作用することである。第VIIIa因子は凝固カスケードにおける補助因子と呼ばれる。第VIII因子の第VIIIa因子(実際の受容体)への活性化は、微量のトロンビンの存在下で起こる。トロンビンの濃度が上昇するにつれ、第VIIIa因子は最終的にトロンビンによって切断されおよび不活性化される。トロンビンの第VIII因子に対するこの二重作用は、テナーゼ複合体形成の程度およびそれによって凝固カスケードの程度を制限するように働く。
【0016】
上記で考察される通り、活性化第Xa因子は内因性および外因性凝固カスケードが集束する位置である。外因性経路は傷害の部位にて、組織因子(第III因子)の放出に反応して開始される。組織因子は、第VIIa因子に触媒される第X因子の活性化における補助因子である。第VIIa因子は、gla残基を含むセリンプロテアーゼであり、内因性経路の第IXa因子と同一の方法で、第X因子を切断して第Xa因子にする。第VII因子の活性化は、トロンビンまたは第Xa因子の活性化を通じて起こる。第Xa因子が第VII因子を活性化する能力は、内因性経路および外因性経路の間の連結を生じる。二つの経路間の別の連結は、組織因子および第VIIa因子が第IX因子を活性化する能力によって存在する。いくらかの不明瞭が存在する一方、第VIIa因子および組織因子の間の複合体の形成は、凝固カスケード全体における主要な段階と考えられているように見える。外因性経路の阻害のための主な機構は、組織因子−−第VIIa因子−−Ca2+−−Xa複合体に存在する。タンパク質、リポタンパク質が随伴する凝固阻害剤であるLACIは、この複合体に特異的に結合する。LACIはまた外因性経路阻害剤、EPIまたは組織因子経路阻害剤、TFPIとも呼ばれ、および以前はアンチコンバーチンといった。LACIは3つのタンデムプロテアーゼ阻害剤ドメインから構成される。ドメイン1は第Xa因子に結合し、およびドメイン2は第Xa因子の存在下に限って第VIIa因子に結合する。
【0017】
プロトロンビンのトロンビンへの活性化
外因性経路および内因性経路の両方における共通点は、第X因子の第Xa因子への活性化である。第Xa因子はプロトロンビン(第II因子)をトロンビン(第IIa因子)へ活性化する。トロンビンは今度は、フィブリノーゲンをフィブリンへ変換する。トロンビンの活性化は、活性化血小板の表面上で起こり、およびプロトロンビナーゼ複合体の形成を必要とする。この複合体は、血小板リン脂質、ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルセリン、Ca2+、第Va因子および第Xa因子、およびプロトロンビンから構成される。第V因子は、プロトロンビナーゼ複合体の形成における補助因子であり、テナーゼ複合体形成における第VIII因子の役割と同様である。第VIII因子活性化のように、第V因子は微量のトロンビンによって活性化されて第Va因子となり、およびトロンビンのレベル上昇によって不活性化される。第Va因子は、活性化血小板上の特異的受容体と結合し、およびプロトロンビンおよび第Xa因子と複合体を形成する。
【0018】
プロトロンビンは、N末端領域に10個のgla残基を含む、72,000ダルトンの一本鎖タンパク質である。プロトロンビナーゼ複合体内で、プロトロンビンは第Xa因子によって2ヶ所で切断される。この切断は、一つのジスルフィド結合によって結び合わされているA鎖およびB鎖を含む、2鎖の活性トロンビン分子を生じる。
【0019】
フィブリン血餅形成の活性化における役割に加えて、トロンビンは凝固において重要な調節機能を果たす。トロンビンは内皮細胞表面に存在するトロンボモジュリンと結合して、Cタンパク質をCaタンパク質へ変換する複合体を形成する。補助因子Sタンパク質およびCaタンパク質は、第Va因子および第VIIIa因子を分解し、それによって凝固カスケードにおけるこれら二つの因子の活性を制限する。
【0020】
トロンビンはまた、Gタンパク質結合プロテアーゼ活性化受容体(PAR)、具体的にはPAR−1、−3および−4に結合しおよびその放出に繋がる。これらのタンパク質の放出は、多数のシグナル伝達カスケードの活性化に繋がり、カスケードは今度はインターロイキンIL、IL−1およびIL−6の放出を増大させ、細胞間接着分子1(ICAM−1)および血管細胞接着分子1(VCAM−1)の分泌を増大させる。トロンビンに誘導されるシグナル伝達はまた、血小板活性化および白血球接着の増大に繋がる。トロンビンはまた、トロンビン活性化線溶阻害剤(TAFI)を活性化し、それによって線溶(フィブリン血餅の分解)を調節する。TAFIはまた、カルボキシペプチダーゼU(CPU)としても知られ、その活性は、部分分解されたフィブリンからのC末端リジンの除去に繋がる。これは、プラスミノーゲン活性化の障害に繋がり、それによってフィブリン血餅溶解(すなわち線溶)の速度を低下させる。
【0021】
トロンビンレベルの調節
活性トロンビンの循環レベルを身体が調節できないことは、深刻な結果に繋がりうる。トロンビン活性が調節される二つの主な機構が存在する。循環中のトロンビンの主な形は、不活性プロトロンビンであり、その活性化は、凝固カスケードについて上述の、酵素前駆体活性化の経路を必要とする。カスケード中の各段階にて、フィードバック機構が活性酵素および不活性酵素の間のバランスを調節する。
【0022】
トロンビンの活性化はまた、四種類の特異的トロンビン阻害剤によっても調節される。アンチトロンビンIIIは、第IXa、第Xa、第XIaおよび第XIIa因子の活性も阻害できるため、最も重要である。アンチトロンビンIIIの活性は、ヘパリンの存在下で下記の手段によって増強されうる:ヘパリンはアンチトロンビンIII上の特異的部位に結合し、当該タンパク質の立体構造変化を生じ、および新しい立体構造はトロンビンおよびその他の基質に対してより高い親和性を有する。ヘパリンのこの作用は、抗凝固剤としてのその臨床用途の原理である。アンチトロンビンIIIの天然に存在するヘパリン活性化因子は、血管内皮細胞の表面上に、ヘパリンおよびヘパリン硫酸として存在する。内因性凝固カスケードの活性化を調節するのがこの性質である。
【0023】
しかし、トロンビン活性はまた、α2−マクログロブリン、ヘパリン補助因子IIおよびα1−アンチトリプシンによっても阻害される。トロンビン調節における役割は小さいが、α1−アンチトリプシンはヒト血清の主なセリンプロテアーゼ阻害剤である。その生理学的意義は、このタンパク質の欠如が肺気腫の発症において原因的役割を果たすという事実によって実証される。
【0024】
フィブリノーゲンのフィブリンへの活性化
フィブリノーゲン(第I因子)は、3対のポリペプチド([A−α][B−β][γ])2から成る。6つの鎖はN末端付近でジスルフィド結合によって共有結合している。A−αおよびB−β鎖のAおよびB部分は、それぞれフィブリノペプチドAおよびBを構成する。フィブリノーゲンのフィブリノペプチド領域は、いくつかのグルタミン酸およびアスパラギン酸残基を含み、この領域に高い陰電荷を与えおよび血漿中のフィブリノーゲンの溶解性に補助を与える。活性トロンビンは、フィブリノーゲンをフィブリノペプチドと当該タンパク質のaおよびb部分との間の四つのarg−gly結合で加水分解するセリンプロテアーゼである。
【0025】
フィブリノペプチドの、トロンビンに媒介される放出は、サブユニット構造(α−β−γ)2.を有するフィブリンモノマーを生じる。これらのモノマーは規則的配列へ自発的に凝集し、いくらか弱いフィブリン血餅を形成する。フィブリン活性化に加えて、トロンビンは第XIII因子を、フィブリンモノマー中のグルタミンのアミド窒素とリジンのe−アミノ基との間の共有結合から成る架橋を導入する高度に特異的なトランスグルタミナーゼである第XIIIa因子へ変換する。
【0026】
フィブリン血餅の溶解
フィブリン血餅の分解はプラスミンの機能であり、プラスミンは不活性酵素前駆体であるプラスミノーゲンとして循環するセリンプロテアーゼである。遊離の循環プラスミンがあれば、α2−アンチプラスミンによって迅速に阻害される。プラスミノーゲンはフィブリノーゲンおよびフィブリンの両方と結合し、それによって、凝固が形成される際に凝固に組み込まれる。組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)および、より小さい程度で、ウロキナーゼは、プラスミノーゲンをプラスミンへ変換するセリンプロテアーゼである。不活性tPAは傷害後に血管内皮細胞から放出され、フィブリンと結合しおよび結果として活性化される。ウロキナーゼは、排出管を裏打ちする上皮細胞によって、前駆体であるプロウロキナーゼとして産生される。ウロキナーゼの役割は、これらの管内に沈着しうるフィブリン血餅の溶解を活性化することである。
【0027】
活性tPAはプラスミノーゲンを切断してプラスミンにし、プラスミンは次いでフィブリンを消化し、結果はプラスミンもプラスミノーゲンも結合できない可溶性分解産物である。プラスミノーゲンおよびプラスミンの放出後、それらはそれぞれの阻害剤によって迅速に不活性化される。tPA活性の阻害は、特異的阻害タンパク質への結合の結果として生じる。少なくとも四種類の異なる阻害剤が同定されており、そのうち2−プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1型(PAI−1)および2型(PAI−2)は生理的意義が非常に大きい。
【0028】
このように、上記から凝固に関与する生理的機構は非常に複雑であることが判り、および、凝固における多数の相互に関係する経路を安全に調節できる物質を設計または同定するには大きな困難があることがわかる。血液凝固系の多層カスケードは、その開始シグナルの非常に大きな増幅を可能にする。外因性経路を下ると、たとえば、プロコンバーチン(VII)、スチュアート因子(X)、プロトロンビン、およびフィブリノーゲンはそれぞれ血漿中に<1、8、150、および~4000mg.mL−1の濃度で存在する。このように、小さなシグナルが非常に速やかに増幅され、効果的な止血調節を実現する。
【0029】
一つの不適切な凝固さえ致命的な結果を生じうるため、凝固は非常に厳密に調節されなければならない。実際に、血液凝固は、ヒトの死の二つの主因である脳卒中および心臓発作の主要な原因である。このように、凝固の調節は主要な医学的関心である。抗凝固作用の異なる機構を用いていくつかの阻害剤が開発されている。これらは、ヘパリン、クマリン、および1,3−インダンジオンを含む。
【0030】
ヘパリンは6,000ないし40,000Daの範囲の分子量を有するムコ多糖である。大部分の市販のヘパリン調製物の平均分子量は12,000〜15,000の範囲にある。そのポリマー鎖は相互グリコシド結合によって結合したD−グルコサミンおよびウロン酸の反復二糖単位から成る。ウロン酸残基はD−グルクロン酸またはL−イズロン酸のどちらかでありうる。これらの各単糖残基上の少数の水酸基が、硫酸化される可能性があり、高度に負に荷電したポリマーを生じる。各糖残基の平均負電荷は約2.3である。
【0031】
ヘパリンの重要な構造単位は、独特の五糖配列である。この配列は、三個のD−グルコサミンおよび二個のウロン酸残基から成る。中央のD−グルコサミン残基は、この配列の他では稀である、独特な3−O−硫酸部分を含む。
【0032】
ヘパリンは、アンチトロンビンと後進和製複合体を形成する。アンチトロンビン−ヘパリン複合体の形成は、二つの主な凝血促進プロテアーゼである第Xa因子およびトロンビンの阻害率を大幅に高める。これら両方の酵素のアンチトロンビン単独による阻害の通常は低い速度(〜103−104M−1s−1)は、ヘパリンによって約1,000倍上昇する。プロテアーゼの両方の活性形の活性化における加速は、凝固形成に決定的である、以降のフィブリノーゲンのフィブリンへの変換を妨げる。
【0033】
ヘパリンは相対的に無毒性であるが、しかしヘパリンの過剰投与または過敏性は、過剰な出血を結果として生じうる。プロタミンは、過剰出血合併症の解毒剤として使用される。
【0034】
クマリンおよびその誘導体は、主な経口抗凝固剤である。ワーファリンは、RおよびS異性体のラセミ混合物として市販されているクマリン誘導体である。
【0035】
クマリンは作用が遅く、in vivo で12 から4時間の潜伏期後に初めて作用を発揮し、およびその作用は1.5から5日間続く。観察された遅い開始は、投薬前プロトロンビン血中レベルを低下させるのに必要な時間が原因である可能性があり、一方でワーファリンについて観察された作用の長い持続時間は、肝臓がプロトロンビンを投薬前血中レベルへ再合成するのに必要な遅延時間が原因である可能性がある。
【0036】
クマリンおよび1,3−インダンジオン(下記参照)は、ある種の薬物と相互作用するというさらなる短所を有する。たとえば、経口抗凝固剤の作用は、フェニルブタゾンおよびサリチル酸といった薬物によって促進されうる一方バルビツール酸およびビタミンKによって拮抗されうる。クマリンは、プロトロンビンの生合成においてビタミンKの競合阻害剤である。
【0037】
凝固カスケードは、非常に重要な段階におけるプロトロンビンのトロンビンへの変換に依存する。しかし、この変換は、プロトロンビンのN末端の10個のg−カルボキシグルタミン酸(GLA)残基の存在に依存する。複数のGla残基はCa2+のための結合部位を形成する。通常の環境下では、プロトロンビンの10個のグルタミン酸(Glu)残基は、翻訳後修飾によってGla残基へ変換される。
【0038】
この翻訳後修飾は、酵素ビタミンKレダクターゼおよびビタミンKエポキシドレダクターゼによって触媒される。ビタミンKはこの変換反応における補助因子である。このように、ビタミンKは還元形およびエポキシド形の間を循環する。ビタミンKとの構造的類似性のため、クマリンは酵素ビタミンKレダクターゼおよびビタミンKエポキシドレダクターゼと、プロトロンビンのGlu残基のGlaへの変換を促進することなく結合すると考えられる。このように、プロトロンビンは第Xa因子によって作用を受けることができない。
【0039】
1,3−インダンジオンは、1940年代から抗凝固剤であることが本分野で知られている。アニシンジオンの作用の開始および持続時間は、クマリンのものと同様である。インダンジオンの主な短所は、その副作用である。一部の患者はインダンジオンに過敏性であり、および発疹、発熱、および白血球減少症を発症する。
【0040】
達成された全体的利益にもかかわらず、現在使用されている治療用抗凝固剤はまた、効力の限界によっておよびさらに多くは出血合併症によって引き起こされる死亡および罹患の大きな原因でもある。これらの問題を克服するための努力において、いくつかの新規の薬剤が開発されている。しかし、治療用抗凝固剤は不可避的に、効力の増大は出血合併症の増加によってのみ達成されるという内在的な問題を伴うように見える。抗凝固剤の凝固へのターゲッティングは、この致命的な繋がりを断つ手段に相当しうる。凝固特異的エピトープに向けられた抗体との抗凝固剤の融合は、凝固での抗凝固剤の濃縮を可能にし、一方で循環血中の抗凝固剤の濃度は低レベルに維持されうる。
【0041】
凝固 ターゲッティングの成功は、ターゲットとして選択されたエピトープの量および 特異性に依存する。フィブリンが凝固 ターゲッティングに使用されうることは以前に示されている。しかし フィブリン または フィブリン 分解産物は血液中に循環する可能性があり、循環中の抗凝固剤の間違ったターゲッティングに繋がりうる。
【0042】
本分野の別の問題は、凝固障害の診断に関連する。多数の凝固障害は、防がれうるかまたは少なくともより重度の問題へ進行することが防がれうることが定説である。したがって、早期の凝固障害の指標があることが臨床医にとって望ましい。
【0043】
本発明の一態様は、有効であり、なお凝固時間の延長を結果として生じない抗凝固剤を提供することによって先行技術の問題を克服または緩和することである。本発明はさらに、凝固関連障害を診断するための方法および試薬を提供する。
【0044】
文書、作用、材料、用具、物品などは、本発明の背景を提供する目的でのみ本明細書に含まれる。本出願の各請求項の優先日以前に存在したためにこれらの事物のいずれかまたはすべてが先行技術の基礎の一部を成したかまたは本発明に関連する分野の共通一般知識であったことは示唆または意味されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
一態様では、本発明は、対象への抗凝固剤の投与の際に第二の成分が第一の成分を活性化血小板へ向かわせる、凝固を阻害する能力のある第一の成分、および活性化血小板をターゲッティングする能力のある第二の成分を含む抗凝固剤を提供する。出願者らは、抗凝固剤の活性化血小板へのターゲッティングは、過剰な出血の危険無しに、凝固を阻害する手段を提供することを実証している。本発明の一形態では、第二の成分は、凝固上で大量におよび特異的に発現される凝固特異的ターゲットに相当する活性化フィブリノーゲン/フィブリン結合GPIIb/IIIa上のリガンド誘導性結合部位(LIBS)に対してターゲッティングされる。凝固ターゲッティングのために、抗LIBS一本鎖抗体(scFvanti-LIBS)が作成された。第一の成分として、非常に強力な直接的な第Xa因子(fXa)阻害剤であるダニ抗凝固ペプチド(TAP)が用いられた。融合分子scFvanti-LIBS−TAPの特異的抗体結合はフローサイトメトリーで証明され、および抗fXa活性は発色検定で実証された。In vivo抗凝固効率は、マウスでの頸動脈の塩化第二鉄誘導性血栓症モデルにおいてドップラーフロー測定によって閉塞時間(OT)として測定された。scFvanti-LIBS−TAPはOTをエノキサパリンと同等に延長し、および、組み換えTAPおよび標的でない変異scFv−TAPの等モル用量は、後者が調節する低用量でさえ、抗血栓作用を示さなかった。試験したその他の抗凝固剤とは対照的に、尾切断によって測定された出血時間は、scFvanti-LIBS−TAPによって延長されなかった。
【0046】
本発明はまた、凝固障害を治療または予防するための医薬組成物および方法を提供し、前記方法は必要とする哺乳類に有効量のここに記載の組成物を投与する段階を含む。抗凝固剤として有用な化合物をスクリーニングするための診断方法、および血栓症、血栓性塞栓、不安定プラークなどの存在を、活性化血小板を指向するプローブを用いて同定するための方法もまた含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
第一の態様では、 本発明は、対象への抗凝固剤の投与の際に第二の成分が第一の成分を活性化血小板へ向かわせる、凝固を阻害する能力のある第一の成分、および活性化血小板をターゲッティングする能力のある第二の成分を含む抗凝固剤を提供する。出願者らは、抗凝固剤を活性化血小板へターゲッティングすることによって、抗凝固効力の増大と出血合併症との間の連結が断たれ、それによって本分野における重大な問題を克服することを見出している。出願者らは、活性化された血小板は効率的な凝固ターゲッティングのための有効な標的として使用されうることを見出している。心筋梗塞におけるアテローム性動脈硬化に誘導される血栓でのように、血小板は動脈系内の血栓に特に豊富である。活性化血小板は凝固に高度に特異的であり、および典型的には循環中に見出されない。このように、効率的な凝固ターゲッティング、豊富さおよび特異性についての両方の必要条件が満たされる。これらの好ましい性質の他に、凝固ターゲッティングのためのエピトープとしての活性化血小板の使用は、血小板活性化はフィブリン形成に先行しうるため、フィブリンと比較してさらに有利でありうる。
【0048】
抗凝固剤は、二つの成分が上記の必要な機能を実行する能力を有する限り、任意の形を取りうる。
【0049】
抗凝固成分は、本剤が凝固の部位に有効に局在化できる限り、任意のサイズでありうる。しかし、抗凝固成分は好ましくは低分子であり、なぜならこれは血栓接近可能性および透過を改善しうるためである。本発明の一つの好ましい形では、第一の成分は約7,000Da以下の分子量を有する。先行技術はいくつかの低分子抗凝固剤を開示する一方、抗凝固剤は中心的なおよび重要な凝固因子を強力に阻害することが好ましい。本発明の一形態では、第一の成分は、宿主からの吸血を円滑にする抗第Xa因子阻害剤を用いるヒメダニ(オルニソドロス・モウバタ(Ornithodoros moubata))に由来するペプチド抗凝固剤である。この抗凝固剤は、1990年(ワクスマン(Waxman)他 Science 1990; 248: 2473)に最初に記載され、およびTAP(ダニ抗凝固ペプチド)と命名された。組み換えTAPは、凝固カスケードにおける第Xa因子の中心的な上流のおよび速度決定位置のために、効果的な抗凝固を可能にする選択的第Xa因子阻害剤として記載されている(ネーパー(Neeper)他.J Biol Chem 1990; 265: 17746)。 TAPは自然界で発見された最も強力な抗凝固剤の一つであり、およびアミノ酸60個だけの低分子である。適当なTAPの配列は、Genbankデータベースから登録番号M60480として入手可能である。
【0050】
第一の成分は、外因性または内因性凝固経路のどちらかの任意の成分に作用しうる。本発明の好ましい一形態では、第一の成分は酵素第Xa因子に作用する。第Xa因子の直接阻害は、たとえばヘパリンに媒介される間接的なアンチトロンビン−III媒介阻害と比較して有利であることが提案されており、何故なら凝固に結合した第Xa因子およびプロトロンビナーゼ随伴第Xa因子は、直接的な第Xa因子阻害剤によって顕著によりよく阻害されるように見えるからである。抗血栓効力および再閉塞の予防を調べる比較試験において、TAPは、間接的第Xa因子阻害剤よりも、およびトロンビン阻害剤よりも有利であることが示されている。これらの長所にかかわらず、ヒトでの治療用途についてはヒルジンと同様に高い出血速度が予測され、およびヒト薬剤の開発は先行していない。理論によって限定されることは望まず、発生中の凝固へのTAPのターゲッティングは、全身の抗凝固剤を、およびそれによって出血合併症を低減でき、および凝固における抗第Xa因子活性の安定な固定による長期間続く抗凝固作用が達成可能でありうる。このように、TAPは低分子であり、補助因子の必要無しの直接阻害を実証し、および凝固経路の初期の中心をターゲッティングすることがターゲッティングの好ましい候補である。
【0051】
TAPが本発明の一実施形態で用いられる一方、ヒルジンのような凝固因子の他の阻害剤を含む、多数の他の抗凝固剤が適当となる。また、線溶剤のターゲッティングは、出血合併症がより少ない高度に効率的な血栓溶解の見込みがある。
【0052】
ここでは、「凝固を阻害する」の語は、完全な阻害だけでなく、凝固形成の部分的な阻害も意味することが意図される。理論によって限定されることを望まず、完全阻害は調節されない出血に繋がりうるために部分的阻害が好ましいと考えられる。
【0053】
第二の成分の機能は、第一の成分を活性化血小板の物理的近傍へ運ぶことである。これは、活性化血小板に結合するかまたは活性化血小板に随伴する分子に結合する能力を有する第二の成分によって達成されうる。典型的には、これは、活性化血小板上のマーカーと結合できる第二の成分によって達成される。可能な最高の特異性を本剤に与えるために、マーカーは活性化血小板の表面上だけで発現されるものであるべきである。しかしそのような絶対的要件は厳密には必要でなく、および第二の成分が活性化血小板を主にターゲッティングする能力がある限り、本発明はここに開示される長所を提供すると理解される。
【0054】
活性化GPIIb/IIIaを含め、活性化血小板上に主に存在するいくつかのマーカーがある。マーカーは、凝固系の他の成分と比較して、一方の形が活性化血小板上で優勢であることが見出されるような、不活性形および活性形を取るものでありうる。血小板表面上で最も豊富に発現される分子のうちの一つが、糖タンパク質受容体(GP)IIb/IIIa(CD41/CD61)である。この受容体はインテグリン接着分子ファミリーに属し、およびαIIbβ3ともいう。インテグリンは、GPIIb/IIIaリガンドであるフィブリノーゲンの結合に関して低親和性から高親和性受容体へ立体構造変化を受ける、二個の非共有的に結合したサブユニットから成る。リガンド結合ポケットの露出の他に、この立体構造変化はまた、GPIIb/IIIa上のいわゆるリガンド誘導性結合部位(LIBS)の露出を誘導する。これらの結合部位は、活性化および/またはリガンド結合GPIIb/IIIa受容体に特異的である。GPIIb/IIIaは非常に豊富であり、各血小板の表面上に約60000個から80000個の分子がある。
【0055】
この受容体は、血小板活性化に際して不活性状態から活性状態へ変化し、その機構は新しいエピトープが露出されるような受容体の立体構造変化である。このように、本発明の一形態では、第二の成分は、GPIIb/IIIa受容体の活性化に際して形成される新しいエピトープと結合する能力がある。
【0056】
当業者は、第一の成分および第二の成分が物理的に結合していることは厳密には必要でないことを理解する。たとえば第一の成分および第二の成分は、物理的分離していて、第一の成分が第二の成分との結合の手段を含んでいることが可能である。この案では、第一の成分を最初に対象へ投与でき、および新しい凝固へ移動して活性化血小板へ結合しうる。第二の成分はその後に投与でき、および第一の成分へ結合しうる。このように、二つの成分は、活性化血小板の部位で機能性抗凝固剤が完成するまで物理的に分離している。
【0057】
本発明の好ましい一形態では、抗凝固剤は単一分子、および典型的には単一タンパク質分子の形である。二つの成分を単一分子中で実現するための便利な手段は、一本鎖抗体分子の骨格に両方の成分を含めることによる。これらの分子は、可変領域を含めるならば、エピトープを特異的にターゲッティングするのに特に適している。可変領域は、標的エピトープへの親和性を有するように設計される。一本鎖抗体は、組み換え治療剤の設計に有望な形式である。一本鎖抗体は、単一ペプチド鎖上の短いリンカー分子を介して互いに融合された抗体の重鎖および軽鎖の可変領域のみから成る。このように、一本鎖抗体(scFv)は、完全な抗体結合部位を含む最小の断片を構成する。サイズは免疫原性の決定因子であるため、scFvはもし免疫原性であるとしても最小限であると予測される。
【0058】
一本鎖抗体の別の長所は、 第一および第二の 成分の結合が、成分の生物学的機能の損失がほとんど無いことに繋がる点である。しかし化学結合は 典型的には抗体 結合機能の、および結合されたエフェクター分子の活性の相当な損失を結果として生じることが認識されるが、 scFv は分子生物学的方法を用いて機能的損失無しに結合されうる。最後に、 scFvは細菌において大量に、短時間で、低コストで産生でき、および それらはアフィニティクロマトグラフィーによって高度に精製されうる。一本鎖 抗体を産生するための手段は当業者によく知られており、その主題についての総説は『組み換え抗体』(Recombinant Antibodies)(ブライトリング(Breitling)およびデューベル(Duebel),1999,出版社:ワイリー・アンド・サンズ社(Wiley & sons),ISBN 0471178470)に見ることができ、その内容は参照により本開示に含まれる。
【0059】
好ましくは、抗LIBS一本鎖抗体(scFv)のクローニングはIgG抗LIBS145を発現するハイブリドーマ細胞株に基づく。LIBS(リガンド誘導性結合部位)エピトープに対する抗体が、ターゲッティングof抗凝固剤の凝固へのターゲッティング用に選択された。以前に示された通り、mAb抗LIBS145(IgGanti-LIBS)はRGD−ペプチド、アブシキマブ、チロフィバンおよびエプチフィバチドとの血小板のインキュベート後のGPIIb/IIIaへのリガンド誘導性結合を示す(シュワルツ(Schwarz)他.JPET 2004,308: 1002)。さらに、IgGanti-LIBSは、ADP活性化血小板への強い結合をフィブリノーゲンの存在下で示す(図2)。このように、この抗体は、非常に豊富でおよび特異的なターゲッティング性質を提供する。
【0060】
mAb抗LIBS145を発現するハイブリドーマ細胞株が、抗LIBS一本鎖抗体(scFv)のクローニングのための基礎として使用された。このハイブリドーマ細胞株のmRNAが調製され、およびオリゴdTプライマーを用いて逆転写された。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域が、可変領域の5'および3'末端の保存領域とアニーリングするプライマーを用いたPCRによって増幅された(詳細については本文書に別に記載する方法を参照)。PCR産物は、細菌において高レベル発現を可能にするpHOG21発現ベクターへクローニングされた。TG1大腸菌(E.coli)の形質転換後、各クローンはLIBSに典型的なGPIIb/IIIaへの結合について評価された。元のIgG抗LIBS145mAbとフローサイトメトリーで比較してより強い結合を示した一つのクローン(図2)が以降の使用のために選択された。このクローンは配列決定され、およびそれは一本鎖抗体のすべての典型的な性質を示した(図1)。さらに、ウェスタンブロット分析は、正確なサイズの約32kDaを明らかにした(図3)。
【0061】
好ましくは、一本鎖抗体はscFv融合タンパク質として発現される。TAPは機能的な損失無しに融合されうることを示す以前の結果に基づき(TH)、この非常に強力な直接的な第Xa因子阻害剤が、そのクローニングされた一本鎖抗体と結合させるために選択された。TAPは公表された配列情報(Genbankデータベース登録番号M60480として)にしたがって最初に合成され、およびpHOG21発現ベクターへ、軽鎖の可変領域のC末端に直接クローニングされた(図1A、B参照)。pHOG21は、封入体によって精製を円滑にするpelBリーダー配列、およびNi2+精製および検出のためのHis(6)タグを含む(図1A、B)。精製scFvanti-LIBS−TAPの収量は細菌培養1Lから約0.4〜0.8mgであった。発現および精製後、一本鎖抗体構造のサイズがウェスタンブロット分析によって評価された(図3)。scFvanti-LIBS単独の分子量は~32kDaであり、未変化の融合タンパク質scFvanti-LIBS−TAPの分子量は~39kDaであり、および非標的mut−scFv−TAPの分子量は~42kDaであった(図3)。
【0062】
本発明の非常に好ましい一つの形では、一本鎖抗体は本質的に図1に示す通りである。当業者は、遺伝コードの縮重、およびアミノ酸を他の類似のアミノ酸と置換する能力は図1によって特定される分子の誘導体および同等物が容易に作製されうることを意味することを理解する。これらの誘導体および同等物は、本発明の出願の範囲に含まれる。
【0063】
別の一態様では、本発明は、ここに記載の抗凝固剤を含む医薬組成物を提供する。当業者は、通常の方法によってここに記載の抗凝固剤を与えるのに適した組成物を作製できるようになる。抗凝固剤がタンパク質である場合、組成物は単にNaClを等張濃度で含みうる。キャリヤータンパク質、安定剤、緩衝剤、非水系溶媒、塩類、保存料などを加えることが必要でありうる。
【0064】
別の一態様では、本発明は、ここに記載の組成物の有効量を必要とする哺乳類に投与する段階を含む、凝固障害を治療または予防する方法を提供する。典型的には、組成物は経静脈または動脈内注射または輸液によって全身的に投与される。用量に関して、抗凝固剤がタンパク質である場合、用量は約30mg/kgないし約300mg/kgである。任意の所与の対象、または任意の所与の凝固障害について目的の臨床効果を達成するために用量を漸増または漸減することは十分に臨床医の能力内である。
【0065】
凝固障害は、凝固の阻害を必要とする任意の障害でありうる。そのような障害は、冠動脈疾患、心筋梗塞を含む急性冠動脈症候群、脳卒中、頸動脈または大動脈のアテローム性動脈硬化、深部静脈血栓症、肺塞栓症、および臓器のアテローム性動脈硬化または血栓症といった、血栓症を伴うすべての臨床状況を含む。
【0066】
好ましい二機能性融合分子scFvanti-LIBS−TAPは出願者によって評価されている。融合分子scFvanti-LIBS−TAPの一本鎖抗体部分の機能は、フローサイトメトリーによって評価された。ScFvanti-LIBS−TAPおよびscFvanti-LIBSは、フィブリノーゲン結合した活性化血小板と同様の結合特性を示した(図2)。このように、遺伝子融合はその一本鎖抗体の結合特性を顕著に変化させなかった。当該融合構造の第Xa因子阻害活性は、発色検定によって評価された。第Xa因子は、scFvanti-LIBS−TAP、非標的mut−scFv−TAP、scFvanti-LIBSおよび組み換えTAPの存在下で特異的発色基質とインキュベートされた(図4)。rTAPと比較して、TAP活性は融合構造においてわずかに低下したが、しかし明らかに存在した(図4)。このように、抗体結合および第Xa因子阻害の両方の機能が保持された。
【0067】
活性化血小板上のGPIIb/IIIaのLIBSエピトープへの抗凝固剤のターゲッティングの、抗凝固剤の従来の非ターゲッティング使用と比較した有意性を示すために、よく確立されたマウス血栓症モデルが選択された(ファレイ(Farrehi)他.1998; 97:1002)。しかし、抗LIBS抗体はフィブリノーゲンと結合した活性化マウス血小板へのターゲッティングに使用されうることが最初に示された。出願者らはマウス血液を入手し、および元のIgGanti-LIBS、scFvanti-LIBS、および融合構造scFvanti-LIBS−TAPの、マウス血小板への結合をフローサイトメトリー.によって評価した。ヒト血小板での結果と同様に、IgGanti-LIBSの特異的結合が見られたが、しかしscFvanti-LIBS抗体単独についてより強い特異的結合が見られ、およびその融合タンパク質scFvanti-LIBS−TAPの、フィブリノーゲン結合した活性化マウス血小板との結合が見られた(図5)。このようにマウス血小板のターゲッティングが、作製された抗LIBS 融合 構造を用いてうまくいくことが示された。
【0068】
血栓がマウスの頸動脈において塩化第二鉄を用いて誘導された。ナノフロープローブによって測定された血流の停止が、血管内の閉塞性血栓の指標として用いられた。塩化ナトリウム溶液および一本鎖抗体抗LIBSが陰性対照として用いられ、およびエノキサパリンが現行の臨床標準に相当する陽性対照として用いられた。エノキサパリンは閉塞時間をほぼ倍増させた(図8)。等モル量の組み換えTAP、非標的mut−scFv−TAPおよびscFvanti-LIBS−TAPは、エノキサパリンの作用に近い、閉塞時間の顕著な延長を引き起こした。元の投与された用量の1/10への減量(0.03μg/g体重)は、scFvanti-LIBS−TAPについて閉塞時間の有意な延長をまだ生じた(p=0.002)一方で、同一用量で非標的mut−scFv−TAPは閉塞時間の有意な延長を生じなかった。このように、scFvanti-LIBS−TAPは、直接対照の非標的mut−scFv−TAPが有意な抗凝固を生じない用量でさえ、強い抗凝固作用を与える。
【0069】
活性化血小板をターゲッティングする抗凝固剤の主な長所は、出血合併症の低減である。出血時間は、マウスにおける標準化された外科的尾切断によって測定された。予想通り、生理食塩水およびscFvanti-LIBSは出血時間延長を生じなかったが、一方でエノキサパリン、および特に組み換えTAPは相当な延長を生じた。非標的mut−scFv−TAPおよびscFvanti-LIBS−TAPの両方が強い抗凝固作用を示す用量0.3μg/g体重にて(図6)、非標的mutscFv−TAPだけが出血時間において高度に有意な延長を生じた(p<0.001、図7)。凝固にターゲッティングされたscFvanti-LIBS−TAPは出血時間の延長を全く生じなかった。また、より低用量のscFvanti-LIBS−TAPは、マウスの頸動脈で明らかな抗凝固作用をまだ示したが、出血時間延長を示さなかった。このように、抗LIBS一本鎖抗体へのTAPの新しく作製された融合によって、出血時間の延長無しに、非常に効果的な抗凝固作用が達成できた。
【0070】
出血時間の延長の回避は本発明の長所である一方、ここに記載の抗凝固剤は一部の実施形態では出血時間を延長しうることが理解される。
【0071】
別の一態様では、本発明は、ここに記載の抗凝固剤の、凝固障害の予防または治療のための薬剤の調製における使用を提供する。
【0072】
別の一態様では、本発明は、候補化合物を提供、化合物を活性化血小板および凝固の少なくとも一つの他の成分に曝露、化合物が活性化血小板と結合するかどうか評価、および化合物が凝固の少なくとも一つの他の成分と結合するかどうか評価する段階を含み、少なくとも凝固の他の成分と比較して活性化血小板に対してより高い親和性結合の能力を有するならばその化合物は有用である、抗凝固剤を凝固へターゲッティングするのに有用な化合物をスクリーニングするための方法を提供する。
【0073】
このように、活性化血小板は抗凝固治療のための有利な標的であるという出願者の知見に基づき本発明に関連する第二の成分として有用である化合物を同定することが可能になる。当業者は、免疫吸着法、クロマトグラフィー法、表面プラズモン共鳴法などを含む、ある分子の別の分子との結合を測定するのに有用ないくつかの方法に詳しくなる。
【0074】
別の一態様では、本発明はここに記載のスクリーニング法によって同定される化合物を提供する。
【0075】
本発明の別の一態様は、対象の血管における活性化血小板の検出を含む、対象における凝固障害の診断または予測の方法を提供する。
【0076】
出願者の知る限り、先行技術は活性化血小板の診断または予測のための使用を開示しない。活性化血小板の検出は、いくつかの医療用途に有用な関連するマーカーを臨床医に提供する。一つの用途は、破裂冠動脈プラークまたは破裂する傾向にあるプラークに見出される活性化血小板を画像化することである。これは、可能性のある関連病変へのステントの予防的埋め込み後の心筋梗塞症候群といったものの早期非侵襲的診断を可能にする。これは、冠動脈血管造影(先行技術で記載される通り)は血管腔についての情報を提供するだけであり、血管壁自体の形態についての情報を与えないため、特に医療上興味深い。このように、おそらく破裂したかまたは破裂傾向にあるプラークは冠動脈血管造影では検出されない。
【0077】
診断マーカーとしての活性化血書板の有用性を考慮して、本発明はまた、(a)活性化血小板をターゲッティングする能力がある結合成分および(b)標識を含む、血管異常を検出するためのプローブを提供する。当業者は、本発明に関連して有用であるプローブは、典型的には水系組成物として提供され、および診断法の前または途中に、動脈または静脈に注射されることを理解する。プローブは次いで身体の目的部位へ血液によって輸送され、および活性化血小板があれば結合する。結合したプローブは次いでMRIといった適当な手段によって検出される。
【0078】
結合成分は、活性化血小板の表面上のマーカーと結合する能力を有しうる。適当なマーカーの非限定的な一例は、活性化GPIIb/IIIa受容体分子である。PAC−1およびCD62−Pといった他のマーカーもまた考慮される。本発明の一つの形では、結合成分および標識は、一本鎖抗体分子の骨格中にある。
【0079】
ここに記載のプローブおよび当該プローブを用いる方法は、活性化血小板の、たとえば肺塞栓症または末梢塞栓症、または末梢動脈または中心動脈における破裂アテローム硬化性プラークでの、何らかの蓄積を検出するのに使用されうる。これらの病変は、疾患過程の早期に検出および選択的に治療されうる。
【0080】
当業者は、ここに記載のプローブ および 方法 が、凝固障害の臨床的に認識可能な徴候または症状を必ずしも実証することなく、 凝固 障害の素因を有する個人を特定するのに有用でありうることを理解する。
【0081】
本方法の好ましい一つの形では、活性化血小板を検出する段階に用いられるプローブは、ここに記載の一本鎖抗体である。好ましくは、一本鎖抗体はここに記載の抗LIBS抗体と同一かまたは類似である。診断目的には、一本鎖抗体は抗凝固成分を含む必要が無いことが理解される。実際、当業者は、断片が活性化血小板への結合を担う部位を含む限り、一本鎖抗体の断片を使用することが可能であることを理解する。理論によって限定されることを望まず、一本鎖抗体の小型のサイズは、この用途において特に有利であると考えられる。抗体は、血栓の表面を越えて、より多数の活性化血小板が存在する部位へ透過する能力があることが提案されている。これは、結合した抗体のより効果的な検出、およびしたがってより高感度の造影を可能にする。抗体プローブはまた、活性化血小板が沈着している血管の表面へも接着しうる。
【0082】
本方法は、血栓(たとえば深部静脈血栓症)、血栓性塞栓(たとえば肺塞栓症)および活性化血小板の沈着(たとえば不安定アテローム硬化性プラークの部位での)を診断および同定するために使用されうる。早期検出は、凝固溶解剤および/または抗凝固療法の投与および/または介入手順を可能にし非常に有利である。
【0083】
当業者は、診断法および予測法に用いられるプローブは本分野で公知である任意の方法によって標識されうることを理解する。粒子の官能化に応じて、この目的のためにさまざまな戦略が使用されうる。一つの方法は、カルボキシ官能化SPIOおよび一本鎖抗体の遊離アミノ基の間にペプチド結合を作ることである。当業者は、この化学的架橋手法に使用されうるさまざまな市販のカップリング剤およびキットに詳しい。別の方法は、市販のコバルト官能化1μmSPIO−ビーズとの複合体化のために抗体のヒスチジンタグを使用し、それによって一本鎖抗体/ビーズ複合体がコバルトへのヒスチジンの結合により維持されることとなる。要約すると、この方法では一本鎖抗体およびSPIOビーズは室温にて10分間インキュベートされ、その後、その懸濁液は磁石によって分離され、および数回洗浄される。適当な対照が、同一手順を用いて無関係な一本鎖抗体をSPIOと複合体化することによって作製される。
【0084】
当業者は、X線造影法に有用である任意の標識が、プローブに組み込まれうることを理解する。本方法の非限定的な一例として、活性化血小板にターゲッティングされるプローブと常磁性標識がカップリングされうる。プローブの投与に際して、常磁性標識は凝固、塞栓または不安定アテローム硬化性プラークの部位に局在化し、それは次いで磁気共鳴造影法によって視覚化されうる。
【0085】
代替的に、プローブは放射性標識化(たとえばテクネチウム−99m、ルビジウム−82、タリウム201、F−18、ガリウム−67、またはインジウム−111を用いて)でき、活性化血小板はガンマカメラを用いて視覚化される。また、コンピューター断層撮影法および超音波法(たとえばマイクロバブルのターゲッティング)を用いる活性化血小板の標識化が、記載の抗体について有用であると考えられる。
【0086】
出願者は、活性化血小板をターゲッティングしおよびin vivo環境においてMRIを用いるコントラスト結合の定量を可能にするプローブの使用をここで開示する。本発明の一つの形では、GpIIb/IIIaの活性立体構造だけを認識する一本鎖抗体が用いられ、その抗体はマイクロメートルサイズの常磁性酸化鉄粒子とカップリングされている。血管内構造は、本分野で典型的に用いられる酸化鉄ナノ粒子よりも数桁大きいミクロンサイズの粒子が接近可能である。出願者の知る限り、一本鎖抗体を用いる活性化血小板の機能的造影はここで初めて記載される。
【0087】
活性化血小板にターゲッティングされる標識化プローブのin vivo環境での使用を実証するため、マウスにおける大腿ワイヤ傷害モデルが使用され(ロケ(Roque),M.,他.,管腔表面上の接着分子の迅速な蓄積および好中球の動員を伴う大腿動脈裸出傷害のマウスモデル(Mouse model of femoral artery denudation injury associated with the rapid accumulation of adhesion molecules on the luminal surface and recruitment of neutrophils.) Arterioscler Thromb Vasc Biol,2000.20(2): p.335−42)、それは傷害の24時間後の血小板の単層に繋がる。マウスにおける大腿ワイヤ傷害後の細胞現象の時間的経過はよく記載されており、および図15Cに示される通り、24時間後裸出した内皮上の集密な血小板沈着を一貫して示す。これは活性化GPIIb/IIIa受容体上のリガンド誘導性結合部位に対する一本鎖抗体を用いた活性化血小板をターゲッティングするための基礎として用いられた。この抗体の結合はフィブリノーゲンまたはそのアナログの存在に依存するため、この抗体は機能的特異性を与える。これらの性質は、血小板血栓の造影を媒介するための、MPIOに対するリガンドとしてこの抗体を魅力的にする。11.7 T MRIおよびT2*強調MRIを用いて、強いビーズ結合の範囲にシグナル空白が検出された。血管壁に結合したMPIOの組織学的に確認された量は、T2*強調MRIでMPIOによって生じたシグナル消失の程度と有意に相関した。このMRI法は、直径わずか200μmの小血管を造影するのに十分な分解能を有する。MPIO誘導性シグナル空白は、シグナル空白を検出するのに十分な感度であり、T2*強調MRIにおいて動脈壁によって生じる内因性ネガティブコントラストを拡大さえした。
【0088】
以前のコントラスト剤ターゲッティング法は、インテグリンと複合体化されたガドリニウムに富むペルフルオロカーボンナノ粒子、ペプチド複合体化された酸化鉄ナノ粒子、およびガドリニウムで標識化されたフィブリン特異的環状ペプチド標識を含んでいる。しかし、送ることのできるコントラスト剤の量、およびしたがって達成されるコントラスト作用の強度は、特に量の少ない標的については相対的に限定されている。
【0089】
出願者らは、MPIOが、容易に分散せずおよびMRI上で目立つ、高ペイロードのコントラストを有することを見出しており、および分子造影のためのMPIOの使用を提案する。この手法の多用途性は、異なる受容体立体構造についてさえ、血管受容体の一般的な血管内造影を可能にする。低密度のエピトープを、ここで示される通りMPIOによって、リガンド自身と比較したそのサイズにもかかわらず、効率的にターゲッティングでき、同時に高い鉄ペイロードは、MPIOサイズに応じて、各ビーズおよびしたがって各受容体の検出さえ可能にする。さらに、ここに記載のファージディスプレイ法は、低密度なまたは機能性のエピトープに対する選択的リガンドを構築する可能性を提供し、したがってさまざまな疾患における病態生理的過程への深い洞察を可能にする。他の重要な問題は、一本鎖抗体が可変領域だけから成るための最小の免疫原性、および内密なエピトープへの接近を円滑にするサイズである。
【0090】
ここに記載のプローブは、血管での活性化血小板の検出によって対象における血管異常を造影するための方法に使用されうることが理解される。本方法の一つの形では、検出は、ここに記載のプローブの使用を含む。プローブは標準的な心臓カテーテル法検査室で見られるX線およびCT装置に有用であると考えられる。64スライスCTまたは128スライスCTがここに記載の造影法に適していると提案されている。プローブはまた、プローブを導入するためにカテーテルを用いることによって、近赤外スペクトル造影(サーモグラフィー)に関して有用であると提案されている。
【0091】
検出されうる異常は、破裂したアテローム硬化性プラークまたは破裂傾向にあるアテローム硬化性プラーク、血栓、塞栓、および活性化血小板の蓄積を含む。
【0092】
本発明はここで下記の非限定的な実施例を参照することによってさらに説明される。
【実施例】
【0093】
実施例1:一本鎖抗体scFvanti-LIBSおよび融合構造scFvanti-LIBS−TAPの作製
GPIIb/IIIa上のLIBSエピトープに対するモノクローナル抗体を発現するハイブリドーマ細胞株の作製、およびその機能的特徴づけは、以前に記載されている(シュワルツ(Schwarz)他.JPET 2004; 308: 1002)。要約すると、RGDペプチドを用いて精製および溶出されたGPIIb/IIIaが、ハイブリドーマ作製のための免疫原として用いられた。クローンは、活性化血小板を用いて、およびRGDペプチドで飽和した固定化GPIIb/IIIaを用いてスクリーニングされた。これらのクローンのうちの一つであるモノクローナル抗体(mAb)クローン145は、ADP活性化血小板に対して、およびRGDペプチド(GRGDSP,バイオモル・リサーチ・ラボラトリーズ社(BIOMOL Research Laboratories),ペンシルバニア州プリマスミーティング(Plymouth Meeting))、エプチフィバチド(インテグリリン(Integrilin)(登録商標),エセックスファーマ社(Essex Pharma),ドイツ、ミュンヘン)、チロフィバン(アグラスタット(Aggrastat)(登録商標),MSD,ニュージャージー州ホワイトハウスステーション(Whitehouse Station))、および アブシキマブ(レオプロ(ReoPro)(登録商標),イーライリリー社(Eli Lilly & Co),インディアナ州インディアナポリス)と予めインキュベートした血小板に対して結合の増加を示した。ハイブリドーマはRPMI、10%ウシ胎仔血清、1mMピルビン酸ナトリウム、10μMメルカプトエタノール、ペニシリン100単位/ml、ストレプトマイシン100g/ml(すべてギブコ社(Gibco))、および1xHATサプリメント(H0262、シグマ社(Sigma))中で維持された。IgGanti-LIBSmAbは、イムノピュア(ImmunoPure)(登録商標)IgGプロテインG精製(ピアース社(Pierce),米国イリノイ州ロックフォード(Rockford))を用いたハイブリドーマ上清のアフィニティ精製によって調製された。
【0094】
一本鎖抗体クローニングのために、ハイブリドーマのcDNAが、mRNA精製カラム(オリゴdT)およびM−MuLV(共にアマシャム・ファルマシア社(Amersham−Pharmacia),ドイツ、フライブルク(Freiburg))を用いて調製された。抗体可変領域の増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってPfu(登録商標)ポリメラーゼ(ストラトジーン社(Strategene),米国カリフォルニア州ラホーヤ(La Jolla))を用いて達成された。重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の保存領域(ウェルショフ(Welschof)他.J Immunol Methods 1995; 179: 203) に由来する配列に基づいた下記のプライマーが用いられた: VH センス: 5'− CCG GCC ATG GCG CAG GTG CAG CTG CAG CAG −3',VH アンチセンス: 5'− CC AGG GGC CAG TGG ATA GAC AAG CTT GGG TGT CGT TTT −3',VL センス: 5'− AA TTT TCA GAA GCA CGC GTA GAT ATC G/TTG A/CTG/C ACC CAA T/ACT CC,VL アンチセンス: 5'− GAA GAT GGA TCC AGC GGC CGC AGC ATC AGC −3'。PCR構造はpHOG21ベクター系(キプリヤノフ(Kipriyanov)他.J Immunol Methods.1997; 200: 69,シュワルツ(Schwarz)他.FASEB J 2004: 18: 1704)へ、VHについて制限部位 Nco I および Hind IIIを、およびVLについて制限部位 Mlu I および Not Iを用いてクローニングされた。結果として生じた一本鎖抗体をscFvanti-LIBSと称した。TAPは以前にクローニングされており(ハーゲマイヤー(Hagemeyer)他.Thromb Haemost.2004; 92: 47)、およびscFvanti-LIBSを既に含むpHOG21へ、制限部位 Not I および Xba Iを用いて導入し、それによってscFvanti-LIBS−TAP(図1A)を作製した。scFv部分の結合機能を持たない対照として、一本鎖抗体を含む非標的mut−scFv−TAPが作製され、その一本鎖抗体は元はGPIIb/IIIaへ結合したが、しかしその重鎖CDR3(相補性決定領域)が変異され(RNDからANDへ)およびそれによってその結合性質が失われた。すべての構造は配列決定された(図1B)。
【0095】
実施例2:大腸菌(E.coli)におけるscFv構造の発現および精製
大腸菌(E.coli)(TG1)細胞が上記のpHOG21プラスミドを用いて形質転換され、および新しく画線された寒天プレートからの各コロニーを、アンピシリン100μg/mLおよび100mMグルコースを含むLB培地中で37℃にて500mLフラスコで培養した。培養は200rpmにて約4〜6時間、OD(600nm)~0.8に達するまで振とうした。細菌は5000rpmにて10分間4℃での遠心分離によって沈澱され、およびアンピシリン100μg/mlおよび0.4Mショ糖を含むLB培地に再懸濁された。scFv産生の誘導のためにIPTGが終濃度0.25mMとなるように添加され、および室温にて(22〜24℃)200rpmで16〜20時間インキュベートされた。全細胞抽出物からの可溶性タンパク質の精製のために、細菌を5000rpmにて10分間4℃での遠心分離によって採集した。沈澱した細菌は1Xバグバスター(BugBuster)(登録商標)(ノバジェン社(Novagen),米国マジソン(Madison))5mL溶液/沈澱gに再懸濁し、および15分間室温にて緩やかに振とうしてインキュベートした。15000rpmにて20分間4℃での追加の遠心分離段階後、可溶性タンパク質を含む上清は氷上に保持され、および1:50希釈されたプロテアーゼ阻害剤(コンプリート(complete)(登録商標)ロシュ社(Roche),スイス、バーゼル)が添加された。可溶性タンパク質抽出物を含む上清は、500 μLのNi2+−アガロース (キアゲン社(QIAGEN),ドイツ、ヒルデン(Hilden))と混合され、および1時間4℃にて、150rpmで一定に振とうしながらインキュベートされた。Ni2+−アガロースは、ここでHis(6)タグ化タンパク質を結合しているが、緩衝液(50 mM NaH2PO4、300 mM NaCl、20 mM イミダゾール、pH 8)で洗浄する前に30分間静置された。このバッチ洗浄手順を二回反復した。最後に、scFv融合タンパク質は高イミダゾール濃度(250mM)にて溶出され、および続いて還元条件下でグラジエントSDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングによって分析された。タンパク質はイムノブロッティングのためにイモビロン(Immobilon)P膜(ミリポア社(Millipore Corporation),米国ベドフォード(Bedford))に転写された。0.2%ツイーン(Tween)20および1%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS−ツイーン)で膜を一夜ブロッキング後、HRP標識化抗His(6)抗体 (ロシュ社(Roche),ドイツ、マンハイム(Mannheim))が添加され(1:500希釈)および2時間室温にてインキュベートされた。膜はPBS−ツイーン(Tween)緩衝液で数回洗浄され、その後スーパーシグナル(SuperSignal)(登録商標)化学発光基質(ピアース社(Pierce)、米国ロックフォード(Rockford))の添加によりケミドック(ChemiDoc)XRS(登録商標) (バイオラッド社(BioRad),オーストラリア、ニューサウスウェールズ州リージェンツパーク(Regents Park)でペルオキシダーゼ活性が視覚化された。サイズマーカーおよびHis(6)タグ陽性対照として、6xHisプロテインラダー(登録商標)(キアゲン社)が用いられた。
【0096】
実施例3:scFv抗LIBS−TAPのIn Vitro機能特徴づけ
血液調製
ヒト血液は21ゲージバラフライ針を用いて静脈穿刺によって健常者から採取され、 およびクエン酸で抗凝固処理された。濃厚血小板血漿が100 x gでの遠心分離(GS−6R遠心分離機、ベックマン・コールター社(Beckmann Coulter)、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州グレイズビル(Gladesville))によってプラスチック試験管で室温にて遠心分離機内に10分間で得られた。
【0097】
マウス血液は27ゲージ針を用いた心臓内穿刺によってC57BL/6マウスから採取され、および未分画ヘパリン(20U/mL)を用いて抗凝固処理された。50μl量が1mLの改変タイロード(Tyrode)緩衝液(150 mM NaCl、2.5 mM KCl、1.2 mM NaHCO3、2 mM MgCl2、2 mM CaCl2、0.1 % BSA、0.1 %グルコース)に再懸濁され、および1300xgにて5分間遠心分離された。上清は廃棄され、および沈澱は1mLの改変タイロード緩衝液に再懸濁された。
【0098】
フローサイトメトリー
ヒトクエン酸加全血は改変タイロード緩衝液で1/50希釈され、20μMADPの添加によって活性化されたか、または活性化されずに、および次いで10分間、10μg/mLのIgGanti-LIBS、scFvanti-LIBS、およびscFvanti-LIBS−TAPと予備インキュベートされた。ScFvsは、scFvのヒスチジン(6)タグに対する二次抗体(ペンタHisアレクサフロー(Penta His Alexa Fluor)488コンジュゲート (登録商標)、キアゲン社(QIAGEN))によって検出された。IgGanti-LIBSはDTAF複合体化ヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)(ジャクソン・イムノリサーチ社(Jackson Immuno Research)、米国ペンシルバニア州ウエストグローブ(West Grove))によって検出された。
【0099】
マウス血小板は、0.1U/mLトロンビン(エンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(Enzyme Research Laboratories),米国インディアナ州サウスベンド(South Bend)) の添加によって活性化されたかまたは活性化されずに、 および 次いで10 分間、 10 μg/mLのIgGanti-LIBS,scFvanti-LIBS,および scFvanti-LIBS−TAPとインキュベートされた。蛍光検出は上記の通り実施された。試料は FACSCalibur(登録商標)フローサイトメーター(ベクトン・ディッキンソン社(Becton Dickinson),米国カリフォルニア州サンホセ(San Jose))で、CellFIX(登録商標)(ベクトン・ディッキンソン社)を用いた固定後に測定された。
【0100】
実施例4:抗第Xa因子 活性 検定
第Xa因子の阻害は、発色基質スペクトロザイムfXa#222(アメリカン・ダイアグノスティカ社(American Diagnostica Inc.),米国コネチカット州グリニッチ(Greenwich))の分解によって測定された。プローブは改変タイロード緩衝液(150 mM NaCl、2.5 mM KCl、12 mM NaHCO3、2 mM MgCl2、2 mM CaCl2、pH 7.4)に対して透析され、および100nMのscFvanti-LIBS、scFvanti-LIBS−TAPおよび非標的mut−scFv−TAP、または遊離組み換えTAPを終容量165μl中に得るように調整された。10μlの0.1%ヒトアルブミンを添加後、プローブは10μLの500pM第Xa因子(ヘモクロム(Haemochrom)、エンザイム・リサーチ・ラボラトリーズ社(Enzyme Research Laboratories))と混合され、および陽性対照としての第Xa因子単独と比較された。室温にて10分間インキュベート後、15μLの発色基質溶液(5mM)が添加され、およびプレートは15分間室温にてインキュベートされた。最後に、反応は停止溶液50μlを添加することによって停止され、および吸収は405nmにてELISAリーダー(Victor3(登録商標)、パーキンエルマー社(PerkinElmer)、オーストラリア、メルボルン)で測定された。
【0101】
実施例5: マウスモデルにおける抗血栓効力および出血からの保護のIn Vivo機能評価
体重22〜38gのC57BL/6マウス(チャールズ・リバー・ラボラトリーズ社(Charles River Laboratories),米国マサチューセッツ州ウィルミントン(Wilmington))が本試験に用いられた。実験動物の飼育および使用は国のガイドラインに従い、およびフライブルク大学(University of Freiburg)およびベーカー心臓研究所(Baker Heart Research Institute)の施設内動物飼育および倫理委員会に承認された。マウスはエクシケーターを用いてイソフルランで数秒間、およびケタミン(ケタネスト(Ketanest)(登録商標)100mg/kg体重)およびキシラジン(ロンプン(Rompun)(登録商標)5mg/kg体重)の皮下注射で麻酔し、および解剖顕微鏡下に置いた。反射の消失後、右 総頸動脈 領域の直接上に皮膚切開を行った。筋膜は平滑に切開され、および右総頸動脈の一部が露出された。次いでナノドップラーフロープローブ(モデル0.5VB、トランソニック・システムズ社(Transonic Systems)、米国ニューヨーク州イサカ(Ithaca))が動脈上に配置され、および頸動脈血流がフローメーター(モデルT106、トランソニック・システムズ社、米国ニューヨーク州イサカ)によって測定された。血栓症は、塩化第二鉄(10%溶液)(シグマ社(Sigma)、米国ミズーリ州セントルイス)で飽和したろ紙(ゲルブロット紙、GB003、シュライヒャー・アンド・シュール社(Schleicher and Schuell),米国ニューハンプシャー州キーン(Keene))の一片(1x2 mm)を右頸動脈下に付けおよび3 分後に除去することによって誘導された。血栓性閉塞は、製造元の規格による本システムの精度に相当する範囲である、0.0±0.2mL/分間に低下した際に生じると考えられた。
【0102】
塩化第二鉄処理の1分前に,マウスは尾 静脈を通じて、 生理食塩水 (陰性対照) (0.9% 塩化ナトリウム) 100 μl,1 mg/kg体重を生理食塩水で容量100 μlに希釈したエノキサパリン(陽性対照)(クレキサン(Clexane)(登録商標)サノフィ・アベンティス社(SanofiAventis)、フランス、パリ)、およびさまざまな用量の精製組み換えscFvanti-LIBS−TAP、scFvanti-LIBS、非標的mut−scFv−TAP、およびrTAPを輸液した。使用したscFvsおよびrTAPのすべての用量は、溶解して容量100μlとされた。すべての薬剤がマウスに輸液されたことを確実にするため、口を生理食塩水100μlで洗浄した。
【0103】
マウス出血時間は、シンカン(Xinkang)によって以前に記載された通り測定された。麻酔されたマウスを解剖顕微鏡下に置いた。マウス尾の先端から約1〜2mm(直径約1mm)に、使い捨て外科用ナイフを用いて切断を行った。尾が最初に30秒より長く出血が止まった時間を秒で記録した。
【0104】
統計分析
データは表示数(N)マウスのマウスについて平均値±標準偏差として示す。統計的比較は分散分析(ニューマン・クールズ検定後にANOVA)によって行われ、および差はp<0.05で有意と考えられた。
【0105】
実施例6: 診断用造影のための標識化一本鎖抗体の使用
実施例1に記載の一本鎖抗体抗LIBSを、Hisタグを含むタンパク質と相互作用するように官能化された超常磁性酸化鉄粒子(SPIO)と混合した(ダイナビーズ(Dynabeads)(登録商標)タロン(TALON)(商標);ダイナル・バイオテク社(Dynal Biotech))。抗体を常磁性ビーズへカップリングするための他の方法(たとえば化学カップリング)もまた使用されうる。活性化血小板(血栓および塞栓の主要なおよび必須な成分である)へのコントラスト剤の結合は、接着検定によって実証された。検定に使用される血小板の活性化は蛍光顕微鏡によって観察され、血小板表面上のP−セレクチン発現のアップレギュレーション、および蛍光検出によって細胞内Ca2+レベルの上昇を示した。検定は、血小板を30分間37℃にてインキュベートすることによる、フィブリノーゲン被覆カバーグラス上への活性化血小板の固定を含んだ。カバーグラスを洗浄後、フィブリノーゲン−血小板マトリクスはコントラスト剤に30分間曝露された。非特異的結合を除外 およびコントラスト剤の血小板だけとの結合を実証するため、血小板の同時染色が、P−セレクチン抗体およびフルオレセイン−アビジンでの二次染色を用いて実施された(図9)。共焦点顕微鏡法を用いて、赤色に見える自己蛍光コントラスト剤の血小板への結合が、P−セレクチン染色血小板の同時の緑色蛍光によって実証された。共焦点顕微鏡法からのZスタックを用いた3D−再構成を図10に示す。
【0106】
さらに、in vitroでの本造影法の適切性を評価するため、血栓表面上の活性化血小板への一本鎖抗体の結合を示すための磁気共鳴実験が実施された。これらの実験のために、アクチン、アデノシン二リン酸および塩化カルシウムをヒト濃厚血小板血漿に添加し、および混合物を15〜30分間37℃でインキュベートすることによってヒト血栓が人工的に作製された。血栓はさまざまな濃度のコントラスト剤に曝露され、およびさらに30分間37℃にてインキュベートされた。最後に、血栓はPBS緩衝液で2回洗浄され、および4%パラホルムアルデヒドで固定された。4時間の固定後、血栓は24ウェル細胞培養プレートのウェルに、ガドリニウム添加2%アガロースに囲まれて包埋された。磁気共鳴造影(MRI)は3テスラ医療用スキャナーで標準のリストコイルを用いて実施された。TE/TR 9.3ms/700msの3DFLASH配列が分解能130x130x200μmで実施され、および画像は一夜の分析で凝固の縦軸に垂直に再構成された。SPIOinT2*強調MRIによって生じるネガティブコントラストは、LIBSターゲッティング抗体とインキュベートされた血栓の周りに黒色の輪として用量依存性に観察された(図11)。さらに、ビーズ結合は、パラフィン包埋切片において抗P−セレクチン抗体を用いた免疫組織化学、およびノヴァレッドでの染色を用いて確認された:図4は、血小板の範囲へのビーズ(黄色)の結合を伴う血小板(茶色)の集塊を示す。これらの結果は、設計されたコントラスト剤の活性化血小板への in vitroでの結合成功を示し、MRIによって臨床使用フィールド強度を用いて検出されうる。
【0107】
実施例7:マウスモデルにおける診断用造影のための標識化一本鎖抗体の使用.
一本鎖抗体作製および1μm酸化鉄微粒子への複合体化
GPIIb/IIIa上のLIBSエピトープは、活性化血小板についての豊富なおよび高度に特異的な標的に相当する。mAb抗LIBS145は、活性立体構造でのみGPIIb/IIIaと結合し、およびそれはフィブリノーゲンの存在下でADP活性化血小板への強い結合を示す(シュワルツ(Schwarz)JPET 2004)。mAb抗LIBS145を発現するハイブリドーマ細胞株が、抗LIBS一本鎖抗体(scFv)のクローニングのための基礎として使用された。このハイブリドーマ細胞株のmRNAが調製され、オリゴdTプライマーを用いて逆転写された。抗体の重鎖および軽鎖の可変領域が、可変領域の5'および3'末端にある保存領域とアニーリングするプライマーを用いてPCRによって増幅された。PCR産物はpHOG21ベクターにクローニングされ、TG1大腸菌(E.coli )が形質転換され、およびLIBSに典型的なGPIIb/IIIaへの結合について評価され、活性化血小板を用いてフローサイトメトリーで試験された。最後に、最も良く結合するscFvLIBSが、アンピシリン100μg/mLおよび100mMグルコースを含むLB培地中で、37℃にて500mLフラスコで産生された。培養は200rpmにて約4〜6時間、OD(600nm)~0.8に達するまで振とうされた。細菌は5000rpmにて10分間4℃での遠心分離によって沈澱され、およびアンピシリン100μg/mlおよび0.4Mショ糖を含むLB培地に再懸濁された。scFv産生の誘導のためにIPTGが終濃度0.25mMとなるように添加され、および室温にて(22〜24℃)200rpmで16〜20時間インキュベートされた。細菌を5000rpmにて10分間4℃での遠心分離によって採集し,沈澱した細菌は1Xバグバスター(BugBuster)(登録商標)(ノバジェン社(Novagen)) 5mL溶液/沈澱gに再懸濁し、および15分間室温にて緩やかに振とうしてインキュベートした。15000rpmにて20分間4℃での追加の遠心分離段階後、可溶性タンパク質を含む上清は氷上に保持され、および1:50希釈されたプロテアーゼ阻害剤(コンプリート(complete)(登録商標)ロシュ社(Roche))が添加された。上清は was mixed with 500 μLのNi2+−アガロース (キアゲン社(QIAGEN)) と混合され、および1時間4℃にて、150rpmで一定に振とうしながらインキュベートされた。Ni2+−アガロースは、ここでHis(6)タグ化タンパク質を結合しているが、緩衝液(50 mM NaH2PO4、300 mM NaCl、20 mM イミダゾール、pH 8)で洗浄する前に30分間静置された。このバッチ洗浄手順を二回反復した。最後に、scFvは高イミダゾール濃度(250mM)にて溶出されおよび透析された。scFv調製物の機能性はフローサイトメトリーで評価された。
【0108】
自己蛍光 コバルト官能化MPIO (1μm)が、取扱説明書に従って(ダイナル・バイオテク社(Dynal Biotech),ノルウェー、オスロ)、LIBS一本鎖抗体のヒスチジンタグと複合体化された。要約すると、洗浄後1mg のビーズ がLIBS 抗体と10 分間 室温にて (RT) インキュベートされ、約10μg の ヒスチジンタグ化抗体を結合した。懸濁液を入れた試験管を次いで、ビーズが試験管の側面に移動してしまうまで磁石の上に置き、および上清を廃棄した。この洗浄を、50mM NaP (pH 8)、300mM NaCl および0.01%ツイーン(Tween)−20.を含む結合および洗浄緩衝液を用いて4回反復した。
【0109】
活性化血小板へのLIBS−MPIO結合
活性化血小板へのLIBS−MPIOの結合を実証するために、接着検定が実施された。 薬剤を摂取していない健常者由来の血液をクエン酸で抗凝固処理し、および1000 rpm にて 10 分間遠心分離した。結果として得られる濃厚血小板血漿をPBSで希釈し (1:10)、 および 100 μlを、20μg/ml フィブリノーゲンと1 時間38℃予備インキュベートされおよび1% BSAで 1 時間 室温にてブロッキングされているフィブリノーゲン被覆カバーグラス上に加えた。38℃にて30分間インキュベート後、カバーグラスをPBSで洗浄し、および連続回転下で0.5μgのLIBS−MPIO(LIBS−MPIO)または等価の複合体化された無関係の一本鎖抗体対照(対照MPIO)のどちらかと、さらに30分間38℃にてインキュベートした。カバーグラスを次いで5分間PBSで2回洗浄し、および10%ヤギ血清(ベクター社(Vector)、米国カリフォルニア州バーリンガム(Burlingame))で1時間室温にてブロッキングした。コントラスト剤の特異的結合を実証するため、血小板を、P−セレクチンについてモノクローナルマウス抗ヒトCD62抗体(1:100、R&Dシステムズ社(R&D Systems)、英国アビンドン(Abingdon))を用いて、二次抗体として作用するビオチン化ヤギ抗マウスIgG(ベクター社、米国カリフォルニア州バーリンガム) と同時染色した。最後に、1:200希釈フルオレセインアビジン D (ベクター社、米国カリフォルニア州バーリンガム)を添加し、1時間および室温にてインキュベートした。カバーグラスはセルフィックス(CellFix)(BDバイオサイエンス社(BDBiosciences)、ドイツ、ハイデルベルク)を用いて固定し、および共焦点顕微鏡法によって評価した。
【0110】
マウス
ワイヤ傷害は平均10±0.8週齢の雄C57BL/6マウス(ジャクソン・ラボラトリーズ社(Jackson Laboratories),英国)で実施した。マウスは水および標準飼料を自由摂取した。すべての手順は英国内務省動物(科学的処置)法1986に準拠して実施された。
【0111】
大腿ワイヤ傷害、ビーズ灌流および試料調製
片側大腿ワイヤ傷害は全身麻酔下で、同時投与されたヒプノルム(Hypnorm)(25mg/kg、バイエル社(Bayer)、ドイツ)およびヒプノバル(Hypnoval)(25mg/kg、バイエル社、ドイツ)の組み合わせを用いて、以前に記載された通り実施した(ロケ(Roque),M.,他.,管腔表面上の接着分子の迅速な蓄積および好中球の動員を伴う大腿動脈裸出傷害のマウスモデル(Mouse model of femoral artery denudation injury associated with the rapid accumulation of adhesion molecules on the luminal surface and recruitment of neutrophils.)Arterioscler Thromb Vasc Biol,2000.20(2): p.335−42)。外科用顕微鏡下で、鼠径部切開を行った。大腿動脈が露出され、および動脈切開が腹壁分岐の遠位側で30G注射カニューレ(BD社,ベルギー、エーレムボードヘム(Erembodegem))を用いて行われた。0.010インチガイドワイヤ(ボストン・サイエンティフィク社(Boston Scientific)、米国ナティック(Natick))が挿入され、大動脈分岐へ進められ、および引き戻された。ワイヤの除去後、動脈切開部位は結合され、および皮膚は絹縫合糸を用いて閉じた。24時間後、マウスはイソフルランの吸入によって薬殺された。開胸術によって胸部を開き、心臓を露出しおよび右心房を切断した。30G針を左心室の尖部を通じて挿入し、および動物をPBS10mlで灌流して血液を排出した。灌流を、LIBS−MPIOまたは対照MPIO(それぞれ1.5x108ビーズ/ml)のどちらかを含むPBS5mLを用いて続けた。30分後、マウスを再び生理圧下でPBS10mLで、次いで2mMガドテリドール(プロハンス(Prohance)、ブラッコ社(Bracco)、英国)を含む4%パラホルムアルデヒド(PFA)5mLで灌流した。皮膚を除去し、傷害部のある肢を切断し、4%PFA/2mMガドテリドール中に24時間保持し、および次いで2%高グレード低融点アガロース(キャンブレックス社(Cambrex)、米国メイン州ロックランド(Rockland))の入ったガラスMR管に包埋した。
【0112】
Ex vivo MRI
Ex vivo MRIを11.7 Tにて13 mm 1Hバードケージラジオ波コイル (ラピッドバイオメディカル社(RAPID Biomedical),ドイツ、ヴュルツブルク(Wurzburg))を用いて実施した。3Dグラジエントエコーシーケンス (TE = 4 ms / TR= 90 ms、視野13(13(19.5mm、マトリクスサイズ256(256(384、2平均、造影時間~7h/配列)を無人一夜運転に使用した。データ再構成はオフラインで最終等方性分解能25μm3を用いて実施した。
【0113】
傷害大腿動脈におけるMPIO 結合の組織学 および 定量
MRI後、標本を10%ギ酸中で一夜脱灰し、段階的エタノール溶液およびネオクリア(Neo−clear)(VMR社、英国)を経て脱水し、パラフィン包埋しおよび連続切片を作製した(8μm厚)。標本は鉄について(アキュスティン(Accustain)、シグマ社(Sigma)、ドイツ)取扱説明書に従って染色した。傷害された管腔血管壁へ結合した複合体化MPIOの数を、光学顕微鏡を用いて傷害血管部位から動物当たり20〜25切片で定量しおよび平均した。
【0114】
免疫組織化学を用いた血小板可視化については、脱パラフィンおよび再水和した切片を1%H2O2中で20分間飽和し、沸騰用クエン酸緩衝液に加え、および4分間圧力鍋で抗原回収のために沸騰させた。標本をPBSツイーン(Tween)で洗浄し、タンパク質ブロック溶液(ダコ・サイトメーション社(DakoCytomation)、ドイツ、ハンブルク)と4時間インキュベートし、および4℃にてラット抗マウスCD61抗体(1:8000、インターセル・テクノロジーズ社(InterCell Technologies),米国Fl)と一夜インキュベートした。PBSで洗浄後、ビオチン化ヤギ抗ハムスターIgG(1:200、ベクター社(Vector)、米国カリフォルニア州バーリンガム(Burlingame))二次抗体。スライドをPBSで洗浄し、およびペルオキシダーゼ反応を、ベクタステインRTUエリート(Vectastain RTU Elite)ABC試薬 および ベクター・ノヴァレッド(NovaRed)(共に ベクター社、米国カリフォルニア州バーリンガム)を用いて実施した。最後に、切片を脱水し、パーマウント(Permount)(バイオメダ社(Biomeda)、米国カリフォルニア州フォスターシティ(Foster City)を用いてマウントし、および血小板へ結合したビーズを光学顕微鏡で評価した。
【0115】
ex vivo MRIによる大腿動脈におけるMPIO結合
MPIO結合の定量を盲検で実施した。抗体複合体化MPIO結合は、2以上の連続した切片での大腿動脈の管腔表面上の明瞭な円形シグナル空白として定義された。複数の切片に現れるMPIOは、1回だけ計数された。断片化された画像は、大腿動脈全体にわたるMPIO結合の分布を可視化するため、3Dコンストラクターまたはイメージプロ・プラス(ImagePro Plus)用プラグインを用いて三次元で再構成された
【0116】
統計的手法
データは平均値±標準偏差として表される。パラメトリックデータはt検定を用いて比較された。統計的有意性はP <0.05に与えられた。
【0117】
結果
LIBS−MPIOは血小板上の活性化糖タンパク質IIb/IIIa受容体を検出する
図13で、抗P−セレクチン抗体で標識されたヒト血小板血栓は鮮緑色の蛍光を発する。血小板血栓に重なっているのは、自己蛍光LIBS−MPIOに対応する赤色領域である(図A)。MPIOは非特異的バックグラウンド保持無しに、血小板血栓に限定される。対照的に、図Bでは、無関係な一本鎖抗体と複合体化された対照MPIOの結合が全く存在しない。共焦点顕微鏡法での3次元zスタック再構成は、P−セレクチン染色血小板(緑)へのLIBS−MPIO結合(赤)を示し、それらの相対サイズおよび空間的関係を強調している。
【0118】
ex vivo MRIによって検出された壁接着血小板と結合したLIBS−MPIO
片側性大腿動脈ワイヤ傷害がマウス13個体で合併症無しに実施された。マウス7個体がLIBS−MPIOで、および6個体が対照MPIOで、左心室経由で灌流された。観察者2名間でMPIOの定量に顕著な変動があった対照動物1個体が定量分析から除外された。
【0119】
傷害動脈断片のEx vivo T2*強調MRIはしばしば、動脈壁内に内因性低シグナル部分を示した(図14B)。これとは異なったのは、血管腔内であるが血管壁と隣接した、円形シグナル空白の出現であった。この性質は、LIBS−MPIOを注射されたすべてのマウスのワイヤ傷害動脈で観察された(図14A)。定量分析では、MPIO蓄積を示唆する低シグナルの管腔部分は、LIBS−MPIOを注射された動物において、対照MPIO灌流動物よりも有意に高かった(23.72対6.2;P<0.01、図14C)。
【0120】
MPIO結合は組織学において確認され(図15)、LIBS−MPIOを注射された動物でMPIO結合が有意に高かった(切片当たり9.98対0.5ビーズ、P<0.01;図15D)。MPIOおよび動脈壁への血小板接着の同時局在化は、免疫組織化学によって確認された。図15Cでは、MPIOは血小板マーカーCD61についての免疫染色陽性に随伴して存在することが実証される。
【0121】
組織学におけるビーズ定量の分析は、ex vivo MRIによる定量と比較して、強い相関を示した(R2=0.7219、P<0.001;図17)。したがって、MRIによって測定されたMPIOシグナル量は、傷害血管壁へ結合するMPIOの量を直接に反映した。
【0122】
最後に、ここに概要を示した通りの本発明の精神を離れることなく、さまざまな他の改変および/または変化を行いうることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1はScFv−抗LIBS−TAPを示す。細菌ペクチン酸リアーゼ(pelB)の細菌シグナルペプチド配列は40位から105位までのヌクレオチドを含み、重鎖の可変領域は106位から483位までのヌクレオチドを含み、リンカー(YOLエピトープ)は484位から510位までのヌクレオチドを含み;軽鎖の可変領域は511位から861位までのヌクレオチドを含み;TAP領域は862位から1041位までのヌクレオチドを含み、およびHis6−タグは1069位で開始しおよび1086位で終了する。
【図2】図2はpHOG21−scFv抗LIBS−TAPのマップを示す。RAMP:アンピシリン耐性遺伝子;ColE1ORI:大腸菌(E.coli)の複製開始点;f1IG、線維状遺伝子間領域;pelB:ペクチン酸リアーゼpelBのリーダーペプチド配列;VH/VL:重鎖/軽鎖;TAP:ダニ抗凝固ペプチド;His6:ヒスチジン6個の反復。
【図3】図3は、IgG抗LIBS、scFv抗LIBS、およびscFv抗LIBS−TAPの、非活性化でなく活性化ヒト血小板に対する特異的結合のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。ADP活性化血小板の結合は白ヒストグラムで示される;非活性化血小板への結合は網掛けヒストグラムで示される。IgG抗体の結合はDTAF複合体化ヤギ抗マウス抗体によって検出され、scFvsの結合はアレクサフロー(Alexa Fluor)488複合体化抗Hisタグ抗体によって検出される。
【図4】図4は、Ni2+−生成scFv抗LIBS、scFv抗LIBS−TAP、および非標的mut−scFv−TAPのウェスタンブロット分析を示す。MW:分子量マーカー(6xHisタンパク質ラダー)、1:scFv抗LIBS、2:scFv抗LIBS−TAP、3:非標的scFv−TAP。
【図5】図5は、第Xa因子活性の、rTAP、scFv抗LIBS−TAP、および非標的mut−scFv−TAPによるが、scFv抗LIBSによらない阻害を示す。発色基質(スペクトロザイムFXa#222)の第Xa因子(500pM)による切断が、405nmにて測定された。棒グラフは光学密度(OD)を、 代表的な実験の三連測定の平均値および標準偏差として示す。
【図6】図6は、IgG抗LIBS、scFv抗LIBS、およびscFv抗LIBS−TAPの、非活性化でなく活性化マウス血小板への特異的結合のフローサイトメトリーヒストグラムを示す。トロンビン活性化血小板の結合は白ヒストグラムで示される;非活性化血小板への結合は網掛けヒストグラムで示される。IgG抗体の結合はDTAF複合体化ヤギ抗マウス抗体によって検出され、scFvsの結合はアレクサフロー(Alexa Fluor)488複合体化抗Hisタグ抗体によって検出される。
【図7】図7は、塩化第二鉄誘導性血栓症を有するマウスモデルでの頸動脈における、高用量および低用量でのscFv抗LIBS−TAPの抗血栓作用を示す。血栓発生は頸動脈でのナノドップラーフロープローブを用いたフロー測定によって測定された、閉塞時間測定によって評価された。生理食塩水(0.9%NaCl)および一本鎖抗体scFv抗LIBSが陰性対照として用いられる。臨床に使用される薬剤としてエノキサパリンが陽性対照として用いられる。rTAP、scFv抗LIBS−TAP、および非標的mut−scFv−TAPが高い等モル用量で用いられ、およびscFv抗LIBS−TAPおよび非標的scFv−TAPが低い等モル用量で用いられた。各群4個体のマウスの平均値および標準偏差(SD)が示される。
【図8】図8は、凝固標的化抗凝固scFv抗LIBS−TAPが、コントラストtoエノキサパリン、rTAP、および非標的mut−scFv−TAPとは対照的に出血時間延長を引き起こさないことを示す。マウスにおける出血時間は、尾切断によって測定した。生理食塩水(0.9%NaCl)および一本鎖抗体scFv抗LIBSが陰性対照として用いられた。rTAPおよび非標的mut−scFv−TAPは、scFv抗LIBS−TAPとは対照的に出血時間の相当な延長を示した。各群4個体のマウスの平均値および標準偏差(SD)が示される。
【図9】図9は、血栓接着検定の概要を示す。フィブリノーゲン上に固定化された血小板が、抗LIBSビーズコントラスト剤を用いて活性化GPIIb/IIIa受容体を介してターゲッティングされた。血小板の同時染色が、コントラスト剤の血小板だけとの選択的結合を実証するため、P−セレクチン抗体およびフルオレセイン−アビジンを用いて実施された。
【図10】図10左図:接着検定の共焦点顕微鏡像。P−セレクチンおよびフルオレセインアビジン染色血小板は緑色の集塊として現れ、抗LIBSビーズコントラスト剤の赤色の蛍光ビーズで囲まれている。右図:共焦点顕微鏡像60枚からのZスタックの3D再構成。
【図11】図11は、縦軸に垂直に再構成されたヒト血栓のMRIの3D FLASH像を示す。異なる濃度の抗LIBSビーズコントラスト剤に曝露された血栓は、SPIOビーズによって生じたT2*(血栓周囲の黒い輪)のネガティブコントラストを示す。ビーズ上の無関係の抗体に曝露された血栓は、このネガティブコントラストを示さない。
【図12】図12は、マウス 抗ヒト P−セレクチン および ノヴァレッド (茶色)を用いた血小板の免疫組織化学を示す。 抗LIBS ビーズ コントラスト 剤は黄色に見え、 および血栓表面上の血小板凝集の範囲だけに存在する。
【図13】図13は、アビジン−フルオレセインについてCD62P抗体を用いて染色された、フィブリノーゲンで固定されたヒト血小板の免疫蛍光を示す。(A)赤色自己蛍光LIBS−MPIOコントラスト剤とインキュベートされた血小板は、緑色のアビジン−フルオレセイン誘導シグナルで表される血小板との特異的結合を示し、一方、対照MPIOコントラスト剤との血小板のインキュベートは結合を示さない(B)。(C)はLIBS−MPIOとインキュベートされおよびP−セレクチンについて染色された血小板からのZスタックの3D再構成を表し、活性化GPIIb/IIIa受容体に対するLIBSのターゲッティングの原理を示す。
【図14】図14は、3Dグラジエントエコーシーケンス(TE=4ms/TR=90ms、視野13(13(19.5mm、マトリクスサイズ256(256(384)、等方性分解能25μm3の11.7T ex vivo MRIを示す。(A)はLIBS−MPIO灌流マウスにおける傷害大腿動脈を示す。黒色の内因性血管壁シグナルが、LIBS−MPIOマウスおよび対照MPIOマウスで観察でき(B)、しかし大腿動脈の管腔側に接してシグナル空白がLIBS−MPIOマウスにおけるMPIO結合の指標として観察されうる(A、矢印)。MPIOに誘導されるMRIシグナル空白の定量は、LIBS−MPIOおよび対照MPIO灌流マウスの間の有意差を明らかにする(p<0.05)。
【図15】図15は、代表的な傷害大腿動脈断片の組織学を示す。(A)はLIBS−MPIOを用いた灌流後の傷害壁への複数のビーズ結合を示し(矢印)、一方、対照MPIO灌流後には結合は観察できない(B)。(A)および(B)の組織は鉄染色されたが、ビーズのポリスチレンコーティングは鉄コアの典型的な青色染色を可能にする。しかし、鉄コアの青色の内因性シグナルは、顕微鏡の焦点に依存して観察できた。(C)LIBS−MPIOコントラスト剤の血小板への結合は、CD61についての免疫組織化学およびノヴァレッド染色を用いて確認された。(a)は壁に接着した血小板を表し、および(b)MPIOは血小板へ直接結合した。(D)LIBS−MPIOおよび対照MPIO灌流マウスにおいて代表的な組織切片ごとに結合したMPIOの定量、LIBSを標的とするコントラスト剤の高度に特異的な結合を示す(p<0.01)。
【図16】図16は、MRIでの傷害肢についてのMPIOシグナルおよび組織学での切片についての結合したMPIOの間の相関分析を示し、有意な相関を示す(R2=0.72)
【図17】図17は、イメージプロ・プラス(ImagePro Plus)用3Dコンストラクター・プラグインを用いるLIBS−MPIO動物の大腿動脈の三次元再構成を示す。(A)は緑色の管として現れる大腿動脈管腔を示す。(B)は赤色のMPIOシグナル単独を示し、および(C)では解剖学的像についての融合した情報が示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象への抗凝固剤の投与の際に第二の成分が第一の成分を活性化血小板へ向かわせる、凝固を阻害する能力を有する第一の成分および活性化血小板をターゲッティングする能力を有する第二の成分を含む抗凝固剤。
【請求項2】
第二の成分が、活性化血小板の表面上のマーカーに結合する能力を有する、請求項1に記載の抗凝固剤。
【請求項3】
マーカーが活性化血小板の表面上のみで発現されているかまたは主に活性化血小板の表面上で発現されている、請求項2に記載の抗凝固剤。
【請求項4】
マーカーがリガンド誘導性結合部位(LIBS)である、請求項2または請求項3に記載の抗凝固剤。
【請求項5】
マーカーがGPIIb/IIIaである、請求項2から4のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項6】
マーカーがGPIIb/IIIaの活性化形である、請求項2から5のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項7】
約60000から80000個のマーカー分子が各血小板の表面上に見出される、請求項2から6のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項8】
第二の 成分 が、 GP IIb/IIIa 受容体の活性化に際して形成された新しいエピトープと結合する能力がある、請求項1から7のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項9】
対象に投与される際に出血時間を顕著に増大させないか、または対象において出血合併症を結果として生じる、請求項1から8のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項10】
出血時間がマウスにおける外科的尾切断によって測定される、請求項9に記載の抗凝固剤。
【請求項11】
対象に投与される際に対象において閉塞時間を延長する、請求項1から10のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項12】
閉塞時間がマウス血栓症モデルを用いて測定される、請求項11に記載の抗凝固剤。
【請求項13】
対象に投与される際に閉塞時間が陰性対照の投与と比較して少なくとも約2倍になる、請求項11または請求項12に記載の抗凝固剤。
【請求項14】
閉塞時間の延長が、エノキサパリンについての閉塞時間と同様かまたはそれを上回る、請求項11から13のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項15】
第一の成分が活性化血小板の部位へ効果的に局在化する能力を有するように第一の成分が低分子量である、請求項1から11のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項16】
第一の成分が約7,000ダルトン以下の分子量を有する、請求項15に記載の抗凝固剤。
【請求項17】
第一の成分がペプチド抗凝固剤である、請求項1から16のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項18】
ペプチド抗凝固剤が約60アミノ酸残基以下から成る、請求項17に記載の抗凝固剤。
【請求項19】
ペプチド抗凝固剤がダニ由来である、請求項17または請求項18に記載の抗凝固剤。
【請求項20】
ダニがオルニソドロス・モウバタ(Ornithodoros moubata)である、請求項19に記載の抗凝固剤。
【請求項21】
第一の成分が酵素第Xa因子に作用する、請求項1から20のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項22】
第一の成分が補助因子の非存在下で直接に第Xa因子を阻害する、請求項21に記載の抗凝固剤。
【請求項23】
第一および第二の成分が物理的に連結して単一分子の形である、請求項1から22のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項24】
単一分子がタンパク質分子である、請求項23に記載の抗凝固剤。
【請求項25】
第一および第二の成分が一本鎖抗体分子の骨格中にある、請求項1から24のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項26】
一本鎖抗体が本質的に本明細書の図1に示す通りまたはその誘導体または同等物である、請求項25に記載の抗凝固剤。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか一つに記載の抗凝固剤、および医薬として許容されるその塩を含む医薬組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の組成物の有効量を必要とする哺乳類へ投与する段階を含む、凝固障害を治療または予防するための方法。
【請求項29】
組成物が経静脈経路または動脈内ボーラスまたは輸液によって投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
抗凝固剤がタンパク質である場合、約30mg/kgないし約300mg/kgの用量が投与される、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
凝固障害が、冠動脈疾患、心筋梗塞を含む急性冠動脈症候群、脳卒中、頸動脈または大動脈のアテローム性動脈硬化、深部静脈血栓症、肺塞栓症、および臓器のアテローム性動脈硬化または血栓症から成る群から選択される、請求項28から30のいずれか一つに記載の方法。
【請求項32】
凝固障害の予防または治療のための薬剤の調製における、請求項1から26のいずれか一つに記載の抗凝固剤の使用。
【請求項33】
凝固障害が、冠動脈疾患、心筋梗塞を含む急性冠動脈症候群、脳卒中、頸動脈または大動脈のアテローム性動脈硬化、深部静脈血栓症、肺塞栓症、および臓器のアテローム性動脈硬化または血栓症から成る群から選択される、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
(a)活性化血小板をターゲッティングする能力がある結合成分および(b)標識を含む、血管異常を検出するためのプローブ。
【請求項35】
結合成分が活性化血小板の表面上のマーカーへ結合する能力を有する、請求項34に記載のプローブ。
【請求項36】
マーカーが活性化血小板の表面上だけに、または主に活性化血小板の表面上に発現される、請求項35に記載のプローブ。
【請求項37】
約60000から80000個のマーカー分子が各血小板の表面上に見出される、請求項35から36のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項38】
結合成分が血小板上のリガンド誘導性結合部位(LIBS)を指向する、請求項34から37のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項39】
マーカーがGPIIb/IIIaである、請求項35または請求項36に記載のプローブ。
【請求項40】
マーカーがGPIIb/IIIaの活性化形である、請求項37から40のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項41】
結合成分が、GPIIb/IIIa受容体の活性化に際して形成される新しいエピトープと結合する能力を有する、請求項34から40のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項42】
結合成分および標識が一本鎖抗体分子の骨格内にある、請求項34から41のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項43】
標識が常磁性、放射性、またはX線造影法で検出可能である、請求項34から42のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項44】
標識がテクネチウム−99m、ルビジウム−82、タリウム201、F−18、ガリウム−67、またはインジウム−111を含む、請求項43または請求項44に記載のプローブ。
【請求項45】
標識が超常磁性酸化鉄またはガドリニウムを含む、請求項34から44のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項46】
標識がミクロンサイズの常磁性酸化鉄を含む、請求項34から45のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項47】
プローブが血管異常の表面を越えて透過および/または血管の表面に接着する能力を有する、請求項34から46のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項48】
対象の血管における 活性化 血小板の検出を含む、対象において血管異常を造影する方法。
【請求項49】
対象の血管を、請求項34から47のいずれか一つに記載のプローブに曝露する段階を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
異常が破裂アテローム硬化性プラークまたは破裂する傾向にあるアテローム硬化性プラーク、血栓、塞栓、および活性化血小板の蓄積から成る群から選択される、請求項48または請求項49に記載の方法。
【請求項1】
対象への抗凝固剤の投与の際に第二の成分が第一の成分を活性化血小板へ向かわせる、凝固を阻害する能力を有する第一の成分および活性化血小板をターゲッティングする能力を有する第二の成分を含む抗凝固剤。
【請求項2】
第二の成分が、活性化血小板の表面上のマーカーに結合する能力を有する、請求項1に記載の抗凝固剤。
【請求項3】
マーカーが活性化血小板の表面上のみで発現されているかまたは主に活性化血小板の表面上で発現されている、請求項2に記載の抗凝固剤。
【請求項4】
マーカーがリガンド誘導性結合部位(LIBS)である、請求項2または請求項3に記載の抗凝固剤。
【請求項5】
マーカーがGPIIb/IIIaである、請求項2から4のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項6】
マーカーがGPIIb/IIIaの活性化形である、請求項2から5のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項7】
約60000から80000個のマーカー分子が各血小板の表面上に見出される、請求項2から6のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項8】
第二の 成分 が、 GP IIb/IIIa 受容体の活性化に際して形成された新しいエピトープと結合する能力がある、請求項1から7のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項9】
対象に投与される際に出血時間を顕著に増大させないか、または対象において出血合併症を結果として生じる、請求項1から8のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項10】
出血時間がマウスにおける外科的尾切断によって測定される、請求項9に記載の抗凝固剤。
【請求項11】
対象に投与される際に対象において閉塞時間を延長する、請求項1から10のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項12】
閉塞時間がマウス血栓症モデルを用いて測定される、請求項11に記載の抗凝固剤。
【請求項13】
対象に投与される際に閉塞時間が陰性対照の投与と比較して少なくとも約2倍になる、請求項11または請求項12に記載の抗凝固剤。
【請求項14】
閉塞時間の延長が、エノキサパリンについての閉塞時間と同様かまたはそれを上回る、請求項11から13のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項15】
第一の成分が活性化血小板の部位へ効果的に局在化する能力を有するように第一の成分が低分子量である、請求項1から11のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項16】
第一の成分が約7,000ダルトン以下の分子量を有する、請求項15に記載の抗凝固剤。
【請求項17】
第一の成分がペプチド抗凝固剤である、請求項1から16のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項18】
ペプチド抗凝固剤が約60アミノ酸残基以下から成る、請求項17に記載の抗凝固剤。
【請求項19】
ペプチド抗凝固剤がダニ由来である、請求項17または請求項18に記載の抗凝固剤。
【請求項20】
ダニがオルニソドロス・モウバタ(Ornithodoros moubata)である、請求項19に記載の抗凝固剤。
【請求項21】
第一の成分が酵素第Xa因子に作用する、請求項1から20のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項22】
第一の成分が補助因子の非存在下で直接に第Xa因子を阻害する、請求項21に記載の抗凝固剤。
【請求項23】
第一および第二の成分が物理的に連結して単一分子の形である、請求項1から22のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項24】
単一分子がタンパク質分子である、請求項23に記載の抗凝固剤。
【請求項25】
第一および第二の成分が一本鎖抗体分子の骨格中にある、請求項1から24のいずれか一つに記載の抗凝固剤。
【請求項26】
一本鎖抗体が本質的に本明細書の図1に示す通りまたはその誘導体または同等物である、請求項25に記載の抗凝固剤。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか一つに記載の抗凝固剤、および医薬として許容されるその塩を含む医薬組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の組成物の有効量を必要とする哺乳類へ投与する段階を含む、凝固障害を治療または予防するための方法。
【請求項29】
組成物が経静脈経路または動脈内ボーラスまたは輸液によって投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
抗凝固剤がタンパク質である場合、約30mg/kgないし約300mg/kgの用量が投与される、請求項28または請求項29に記載の方法。
【請求項31】
凝固障害が、冠動脈疾患、心筋梗塞を含む急性冠動脈症候群、脳卒中、頸動脈または大動脈のアテローム性動脈硬化、深部静脈血栓症、肺塞栓症、および臓器のアテローム性動脈硬化または血栓症から成る群から選択される、請求項28から30のいずれか一つに記載の方法。
【請求項32】
凝固障害の予防または治療のための薬剤の調製における、請求項1から26のいずれか一つに記載の抗凝固剤の使用。
【請求項33】
凝固障害が、冠動脈疾患、心筋梗塞を含む急性冠動脈症候群、脳卒中、頸動脈または大動脈のアテローム性動脈硬化、深部静脈血栓症、肺塞栓症、および臓器のアテローム性動脈硬化または血栓症から成る群から選択される、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
(a)活性化血小板をターゲッティングする能力がある結合成分および(b)標識を含む、血管異常を検出するためのプローブ。
【請求項35】
結合成分が活性化血小板の表面上のマーカーへ結合する能力を有する、請求項34に記載のプローブ。
【請求項36】
マーカーが活性化血小板の表面上だけに、または主に活性化血小板の表面上に発現される、請求項35に記載のプローブ。
【請求項37】
約60000から80000個のマーカー分子が各血小板の表面上に見出される、請求項35から36のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項38】
結合成分が血小板上のリガンド誘導性結合部位(LIBS)を指向する、請求項34から37のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項39】
マーカーがGPIIb/IIIaである、請求項35または請求項36に記載のプローブ。
【請求項40】
マーカーがGPIIb/IIIaの活性化形である、請求項37から40のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項41】
結合成分が、GPIIb/IIIa受容体の活性化に際して形成される新しいエピトープと結合する能力を有する、請求項34から40のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項42】
結合成分および標識が一本鎖抗体分子の骨格内にある、請求項34から41のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項43】
標識が常磁性、放射性、またはX線造影法で検出可能である、請求項34から42のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項44】
標識がテクネチウム−99m、ルビジウム−82、タリウム201、F−18、ガリウム−67、またはインジウム−111を含む、請求項43または請求項44に記載のプローブ。
【請求項45】
標識が超常磁性酸化鉄またはガドリニウムを含む、請求項34から44のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項46】
標識がミクロンサイズの常磁性酸化鉄を含む、請求項34から45のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項47】
プローブが血管異常の表面を越えて透過および/または血管の表面に接着する能力を有する、請求項34から46のいずれか一つに記載のプローブ。
【請求項48】
対象の血管における 活性化 血小板の検出を含む、対象において血管異常を造影する方法。
【請求項49】
対象の血管を、請求項34から47のいずれか一つに記載のプローブに曝露する段階を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
異常が破裂アテローム硬化性プラークまたは破裂する傾向にあるアテローム硬化性プラーク、血栓、塞栓、および活性化血小板の蓄積から成る群から選択される、請求項48または請求項49に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2009−500299(P2009−500299A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518572(P2008−518572)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000943
【国際公開番号】WO2007/003010
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508003734)ベイカー メディカル リサーチ インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000943
【国際公開番号】WO2007/003010
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508003734)ベイカー メディカル リサーチ インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】
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