説明

抗原およびアジュバントの多量体複合体

本発明は、スキャフォールドである第1の成分;アジュバント、好ましくはCD21に対するリガンドあるいはB細胞、T細胞、瀘胞樹状または他の抗原提示細胞の細胞表面分子であるポリペプチドである第2の成分;および抗原である第3の成分を含む生成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原に対して抗原単独と比較して高い免疫応答を誘発する、アジュバントおよび抗原を含む、融合タンパク質などの高分子アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
アジュバントは抗原に対する免疫応答を高め、したがってワクチンにおいて有用である。しかし、限られた数のアジュバントしかヒトへの使用に認可されておらず、またより強力なアジュバントが動物の研究によって知られているため、人間への使用が安全なより強力な免疫アジュバントが明らかに必要である。最近の報告については、「Advances in vaccine adjuvants」(Nature Biotechnology、1999年、17巻、1075〜1081頁)を参照のこと。人間への広範にわたる使用に関する任意のアジュバントの重要な特徴は、特に非常に多数の健康な人々の通常の予防に使用する場合に非常に安全であるべきことである。
【0003】
補体系は、外来抗原に対する免疫系の応答に重要な1組の血清タンパク質からなる。補体系は、その主要な成分が切断されると活性化され、その生成物は、単独または他のタンパク質と一緒に、タンパク質分解カスケードをもたらす別の補体タンパク質を活性化する。補体系の活性化は、血管透過性の増大、食細胞の走化性、炎症細胞の活性化、異物のオプソニン作用、細胞の直接致死および組織の損傷を含む種々の応答をもたらす。
【0004】
補体系の活性化は、抗原−抗体複合体によって誘発され(従来経路)、または通常の緩徐な活性化は、細菌およびウイルスなどの侵入生物の細胞壁の存在下で増幅され得る(代替経路)。補体系は、古典的経路および選択的経路の両方の中心をなすタンパク質であるC3が関与する特定の経路を介して細胞免疫系と相互作用する。C3のタンパク質分解活性化により、大きなフラグメント(C3b)が生じ、侵入生物または異種細胞の細胞表面タンパク質などの外部求核原子と共有結合的に反応できる化学的反応性内部チオールエステル結合が露出される。その結果、潜在抗原はC3bによって「標識」され、iC3bおよびC3d,gに対してさらにタンパク質分解を受けるのでそのタンパク質と結合したままである。後者のフラグメントは、それぞれ、補体受容体CR3およびCR2(CR2はCD21とも称される)に対するリガンドである。したがって、C3bによる抗原の標識の結果、これらの受容体をもつ免疫系の細胞に対するターゲティング機構を得ることができる。
【0005】
このようなターゲティングは、免疫応答の増強に重要であり、それは、マウスから循環C3を奪い、次いで抗原(ヒツジ赤血球)で攻撃した実験によって最初に示されている。C3の除去により、この抗原への抗体応答が減少した(M. B. Pepys、J. Exp. Med.、140、126〜145頁、1975年)。C3の役割は、C3またはC3bを生成する補体カスケードの上流成分、すなわちC2およびC4を遺伝的に欠く動物の研究によって確認された(J. M. AhearnおよびD. T. Fearon、Adv. Immunol.、46、183〜219頁、1989年)。つい最近、ネズミC3dフラグメント配列の3個以上の複製を含むモデル抗原を線状に結合すると、未改変抗原対照と比較してマウスの抗体応答が極めて(1000〜10000倍)増大したことが示されている(P. W. Dempseyら、Science、271、348〜350頁、1996年;国際公開WO 96/17625、PCT/GB95/02851)。この増大は、ヒトに使用するには毒性が強すぎるフロイント完全アジュバントなどの従来のアジュバントを使用せずに達成することができる。この注目すべき効果の機構は、多価C3d構築体とB細胞上のCR2との高親和性結合と、それに続くB細胞核に対してシグナルを生成するためのCR2と別のB細胞膜タンパク質、CD19および膜結合免疫グロブリンとの共連結であることが実証された。
【0006】
しかし、C3dの3個の複製を含む大量の相同組換えタンパク質を生成するのは困難であることが証明されている。主要な問題は:
i)(3個の)反復配列を含む構築体の遺伝的不安定性および
ii)大腸菌(Escherichia coli)中で形成した封入体由来の組換えタンパク質のフォールディング(または可溶化およびリフォールディング)
である。
【0007】
C3d遺伝子の繰返し複製を含む構築体の遺伝的不安定性を最小化するための1つの手法が、国際公開WO 99/35260およびWO 01/77324に記載されている。これらの出願中に記載されている技術は、C3dの繰返しをコードするDNAの同一でない配列を使用することである。
【0008】
国際公開WO 00/69907およびWO 00/69886(これらの内容は参照により本明細書に組み込むものとする)、多量体形態にアセンブリ可能なポリペプチド単量体について記載されている。この単量体は、シャペロンタンパク質、特にGroESまたはCpn10ファミリーメンバー由来である。
【0009】
補体4結合タンパク質(C4bp)を用いた多量体化システムは、国際公開WO 91/11461に記載されている。ヒトC4b−結合タンパク質(C4BP)は、7個の同一のα鎖および単一のβ鎖からなるクモ様構造を有する高分子量(570kDa)の血漿糖タンパク質である。C4bpα鎖は、分子の多量体へのアセンブリを引き起こすC末端コア領域を有する。標準モデルによれば、1個のC4bp単量体の+498位置にあるシステインは、別の単量体の+510位置にあるシステインとジスルフィド結合を形成する。7個のα鎖しか含まない少数の形態もヒト血漿中で発見されている。この血漿糖タンパク質の自然機能は、補体活性化の従来経路を阻害することである。
【0010】
国際公開WO 91/11461は、C4bpタンパク質の多量体化する能力を使用して、C4bpおよび重要な生物学的タンパク質のすべてまたは一部を含む融合タンパク質を作製できることを提案している。この融合タンパク質は、前記タンパク質が高い血清半減期およびその標的に対する高い親和性またはアビディティを有する、重要なタンパク質のためのプラットフォームをもたらす多量体を形成することになる。C4bpの融合タンパク質は、国際公開WO 91/11461中に記載の治療薬の新規な送達および輸送システムの対象として標的となった。
【0011】
C4bpのα鎖のほとんどが、補体制御タンパク質(CCP)繰返しとして周知の長さの約60アミノ酸からなる8個の直列配列ドメインから構成されている。1種または複数のこれらのドメインの封入は、国際公開WO 91/11461に記載の融合タンパク質で好ましかったが、多量体化を防止せずにすべてのCCPを除去できる(C末端57アミノ酸だけ残して)ことが実証されている(Libyh M. T.ら、(1997年)Blood、90、3978〜3983頁)。C4bpのこのC末端領域は、C4bpコアと称される。
【0012】
Libyhら、(1997年)は、C4bpのα鎖のC末端部分に基づいたタンパク質多量体化システムについて記載している。C4bpのC末端部分は、補体活性化の従来経路を阻害する能力を欠くが、C4bpを生成するCHO細胞の細胞質中でのC4bpの重合を引き起こす。Libyhらは、関連する抗体フラグメントの自発的多量体化を誘発して、C4bpフラグメントを用いてscFvフラグメントのホモ多量体を得ることができた。使用したC4bpのC末端部分は、場合によってはMYCタグによって間隔を空けてscFv配列のC末端側に置いた。
【0013】
C4bpの使用は、Oudinら(2000年、Journal of Immunology、164巻:1505頁)およびChristiansenら(2000年、Journal of Virology、74巻:4672頁)にも記載されている。自己アセンブリ多量体可溶性CD4−C4bp融合タンパク質は、融合タンパク質がヒト293細胞系で発現されたShinyaら(1999年、Biomed & Pharmacother、53巻:471頁)でも実証されている。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、
スキャフォールドである第1の成分;
アジュバントである第2の成分、好ましくはCD21に対するリガンドあるいはB細胞、T細胞、瀘胞樹状または他の抗原提示細胞上の細胞表面分子であるポリペプチド;および
抗原である第3の成分
を含む生成物を提供する。
【0015】
第1の成分により、複数コピーの第2の成分が1コピー以上の抗原と結合しているような、多成分生成物中に複数コピーの第2の成分のアセンブリがもたらされる。
【0016】
好ましい態様では、本発明は、
ポリペプチドスキャフォールドである第1の成分;
CD21に対するリガンドあるいはB細胞、T細胞、瀘胞樹状または他の抗原提示細胞上の細胞表面分子であるポリペプチドである第2の成分;および
抗原である第3の成分
を提供する。
【0017】
第1および第2の成分は、融合タンパク質の形態であってよい。第3の成分もポリペプチドである場合、3つの成分は、融合タンパク質として存在する。あるいは、第3の成分は、最初の2つの成分が融合したものと共有結合している。
【0018】
場合によっては、第1の成分自体が抗原である場合、第1および第3の成分は、同じ分子であってよい。
【0019】
疑いを回避するために、「第1」、「第2」および「第3」の成分の呼称は、3つの成分の生成物における具体的な直線的順序を意味するものでも、示唆するものではない。この3つの成分は、任意の順序で連結していてよい。
【0020】
したがって、3つすべての成分がポリペプチドであり、その生成物を融合タンパク質として作製した場合、この3つの成分のNからC末端順序は、任意の順列であってよい。さらに、以下に示すように、場合によっては第1の成分は、1種または他の第2および第3の成分によって置換できるループ領域を含んでいてよい。
【0021】
本発明の生成物は、免疫促進性の第2の成分を多成分生成物に形成し、タンデム型反復配列を有するDNA配列を用いる必要なく組換えDNA技術を用いて発現させる。
【0022】
本発明はさらに、前記第1および第2の成分の融合タンパク質をコードする核酸、ならびに前記第3の成分がポリペプチドの場合、3つすべての成分をコードする核酸を提供する。本発明はまた、前記核酸を含むベクターおよび前記ベクターを保有する宿主細胞を提供する。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、
ポリペプチドスキャフォールドである第1の成分;
CD21に対するリガンドあるいはB細胞、T細胞、瀘胞樹状または他の抗原提示細胞上の細胞表面分子であるポリペプチドである第2の成分;および
ポリペプチド抗原である第3の成分
を含む生成物を作製する方法であって、
融合タンパク質の形態で3つの成分をコードする核酸を発現すること、および生成物を回収することを含む前記方法を提供する。
【0024】
別の実施形態では、本発明は、
ポリペプチドスキャフォールドである第1の成分;
CD21に対するリガンドあるいはB細胞、T細胞、瀘胞樹状または他の抗原提示細胞の細胞表面分子であるポリペプチドである第2の成分;および
非ポリペプチド抗原である第3の成分
を含む生成物を作製する方法であって、
第1および第2の成分をコードする核酸を融合タンパク質の形態で発現すること、前記融合タンパク質と第3の成分を連結すること、ならびに生成物を回収することを含む前記方法を提供する。
【0025】
生成物を作製する方法は、真核または原核細胞で行うことができる。
【0026】
本発明はまた、対象に有効量の本発明による生成物を投与することを含む、抗原に対して免疫応答を誘発する方法を提供する。
【0027】
本発明はまた、人体または動物体を治療する方法、特に免疫応答を誘発する方法のための本発明の生成物の使用を提供する。
【0028】
本発明はさらに、本発明の生成物を薬剤として許容される担体または希釈剤と結合させて含む薬剤組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
スキャフォールド
これは、第2および第3の成分が結合できるスキャフォールドになり得る任意の高分子アセンブリを意味する。これは、タンパク質または他の高分子(例えば糖から構成される)あるいは原核または真核細胞壁あるいはウイルスであってよい。細胞壁、またはウイルスまたはタンパク質は、不完全であってよく、すなわちそれが認められる生物中に通常存在する成分を欠いており、本発明の重要な特徴は、スキャフォールドが、2種以上のアジュバント分子および2種以上の抗原分子を単一アセンブリに一体化させ得ることである。
【0030】
本明細書により詳細に記載したように、2つの主なクラスのスキャフォールドが企図されている。第1は、その上に複数コピーの第2の成分、および該当する場合は第3の成分が、別々に、または第2および第3の成分の融合体として結合した、ウイルスまたは細胞を含む複合高分子生成物である。あるいは、スキャフォールドは、第2の成分に対して1:1の比で存在する。生成物が融合タンパク質の形の場合、第3の成分も第2および第1の成分に対して1:1:1の比で存在する。
【0031】
細胞壁またはウイルススキャフォールドは、他の目的で当技術分野で周知である。原核(Samuelsonら、2002年、J. Biotechnol 96、129〜154頁;Lang H.、2001年、Nat. Biotechnol.、19、75〜78頁)または真核細胞壁(Shusta E. V.ら、1999年、J. Mol. Biol. 292、949〜956頁)あるいはバクテリオファージなどのウイルス(Sidhu S. S.、2001年、Biomol. Eng.、18、57〜63頁)上のタンパク質の表面提示が記載されている。本発明のこの態様の特徴は、細胞壁に提示されているものが、抗原と同時に存在するアジュバント分子の2コピー以上を含むことである。この抗原は、アジュバント(C3dなど)と直接融合できるが、必ずしもその必要はない。
【0032】
したがって、一実施形態では、細菌などの細胞の表面が、スキャフォールドとなり得る。アジュバントを通常細菌の表面上に発現される第2の成分と遺伝的に融合すると、そのアジュバントの複数コピーが細菌の表面上に提示される。これは、細菌が宿主に感染した場合に、細菌に対して向上した免疫応答を誘発させる効果がある。抗原は、細菌の細胞壁であってよく、または細菌の表面上に別々に、ただし同時に発現されていてよい。感染は、改変した細菌を宿主へ投与することにより、計画的であってよい。細菌は、死滅させた後、または生きているが弱毒化した形態で投与することができる。
【0033】
同様に、真核細胞をスキャフォールドとして使用してもよい。このような場合には、2コピー以上のアジュバントを提示している細胞表面を使用して、他の(正常または異常な)細胞表面成分に対して免疫応答を誘発させることができる。
【0034】
国際公開WO96/17625、(PCT/GB95/02851)に記載されている融合タンパク質とは対照的に、抗原とアジュバントの間には共有結合の必要が全くないか、あるいは共有結合は間接的にスキャフォールドによって仲介されているに過ぎない。さらに、国際公開WO 96/17625では、C3dタンパク質の単一複製と抗原との融合により、その抗原に対する免疫応答が低減することが教示されている。本発明では、正反対に、アジュバントの複数の単一(単量体)コピーの提示、あるいはその後スキャフォールドと融合させる抗原の単一コピーとアジュバントの単一コピーを融合したものにより、抗原に対する免疫応答が増大する。
【0035】
抗原は、細胞壁自体または第2のタンパク質または糖タンパク質であってよい。肺炎球菌(pneumococci)の場合のように、防御抗原が莢膜である生物の場合、アジュバントの2種以上の複製の提示により、莢膜抗原に対する免疫応答が改善される。
【0036】
ウイルスの場合、抗原は、ウイルス自体であってよく、したがってそれは同時に抗原およびスキャフォールドとして作用する。B型肝炎ウイルス表面抗原の例が示されている。組換えHBsAgワクチンを調製する方法が米国特許第4769238号に記載されている。この組換えHBsAgは、極めて有効なワクチンであるが、「反応性の低い応答者(poor responder)」である相当な数のワクチンレシピエントが残っている。この既存のワクチンに新しいアジュバントを加えると、こうした反応性の低い応答者のワクチン接種、およびこのウイルスの慢性保因者の感染後のワクチン接種が可能になる。このワクチンにアジュバントを加えることを想定した一方法は、アジュバントタンパク質、例えばおよび好ましくはヒトC3dタンパク質をコードする配列と、B型肝炎ウイルスのSタンパク質である226アミノ酸残基タンパク質をコードする遺伝子のC末端との遺伝的融合である。前記の米国特許第4769238号に記載されているプラスミドに存在するSタンパク質コード配列を含み、好ましくは酵母中での高レベル発現に適したコドンを有する、アジュバントのコード配列を加えることができる。Sタンパク質の配列は、「逃避変異体(escape mutants)」として知られている変異体配列(Cooreman M. P.ら、2001年、J. Biomed. Sci. 8、237〜247頁)またはB型肝炎ワクチンで通常見られない抗原(Fomsgaard A.ら、1998年、Scand. J. Immunol.、47、289〜295頁)を含むように改変することができる。前記論文に記載されているように、C3dアジュバントを含む改変したワクチンは、免疫応答を得るためにDNAとして投与することができる。
【0037】
したがって別の実施形態では、ポリペプチドスキャフォールド自体が抗原であってよい。したがって、オリゴマー構造にアセンブリするB型肝炎ウイルスの表面抗原は、同時に本発明の第1および第3の成分であってよい。1956年(FHC Crick、JD Watson、Nature、177、473頁)に初めて述べられたように、ウイルスの核酸含有量は限られているので、ウイルスがコードできるアミノ酸の数が厳しく制限される。結果として、タンパク質膜は、極めて多数の異なるタンパク質分子から構築することはできない。その代わりに、規則的な状態に配列したいくつかの同一の小さなサブユニットから構築しなければならない。したがってほとんどのウイルスは、同時に本発明の第1および第3の成分の両方であり得る。
【0038】
ポリペプチドスキャフォールドは、その機能がタンパク質自体または関連するタンパク質もしくは他の分子のグループの構造を決定することであるタンパク質、またはその一部である。したがってポリペプチドスキャフォールドは、アセンブリした場合に定義した三次元構造を有し、前記構造中または構造上に分子またはポリペプチドを支持する容量を有する。有利には、スキャフォールドは、スキャフォールドの三次元構造および/またはポリペプチドの挿入部位に関して種々の有効な幾何学的配置を想定する能力を有する。
【0039】
別の実施形態では、スキャフォールドは、アジュバントとして働くことができ、すなわち第1および第2の成分が同一になる。アジュバントであるスキャフォールドは、本明細書でさらに詳細に記載したC4bpコアタンパク質またはC4bpα鎖のフラグメントであってよい。
【0040】
一実施形態では、スキャフォールドは、コシャペロニンCpn10/Hsp10スキャフォールドである。Cpn10は、Cpn60/Cpn10シャペロニン系の広範な成分である。Cpn10の例には、ヒトミトコンドリアCpn10、細菌GroESおよびバクテリオファージT4 Gp31がある。Cpn10ファミリーの他のメンバーは、当業者に周知である。
【0041】
本発明はさらに、天然に存在するスキャフォールドの誘導体の使用を含む。スキャフォールドの誘導体(Cpn10および60ファミリーのスキャフォールドを含む)は、本明細書に記載の「オリゴマー化」特性の維持の対象になる、アミノ酸欠失、付加または置換(特にGp31中のCys残基の置換)、Cpn10またはCpn60ファミリーの異なるメンバーおよび/または円順列タンパク質スキャフォールドの融合によって形成したハイブリッドを含んでいてもよいその変異体を含む。
【0042】
ポリペプチドスキャフォールドは、アセンブリして多量体生成物を形成する。本発明において、多量体生成物は任意の形状であってよく、任意の数の個別のスキャフォールドユニットを含んでいてよい。
【0043】
多量体生成物は、好ましくは2〜20スキャフォールドユニット、有利には5〜15ユニット、理想的には約10ユニットを含む。Cpn10ファミリーメンバーのスキャフォールドは、7員環または環形の形状の7タンパク質ユニットを含む。したがって、多量体生成物は、7員環であると有利である。
【0044】
Cpn10サブユニットは、それらの構造内に「可動ループ」をもつことが知られている。可動ループは、大腸菌GroESの配列のアミノ酸15〜34、好ましくはアミノ酸16〜33、およびCpn10ファミリーの他のメンバー上の同じ位置に配置されている。T4 Gp31の可動ループは、残基22〜45、有利には23〜44に配置されている。第2または第3の成分のポリペプチド配列は、Cpn10ファミリーポリペプチドの可動ループのすべてまたは一部を置換することによって挿入することができる。
【0045】
ポリペプチドスキャフォールドがCpn10ファミリーポリペプチドの場合、第2または第3の成分のポリペプチドはさらに、そのNまたはC末端(その末端は天然または改変NまたはC末端であってよい)で、あるいはCpn10ファミリーペプチドのルーフβヘアピンに相当する位置に取り込まれる。この位置は、バクテリオファージT4 Gp31の位置54〜67、有利には55〜66、好ましくは59〜61または大腸菌GroESの位置43〜63、好ましくは44〜62、有利には56〜57に配置されている。
【0046】
別の実施形態では、ポリペプチドスキャフォールドは、C4bpタンパク質またはC4bpコアタンパク質領域を保持するその一部であってよい。
【0047】
ヒトC4結合タンパク質(hC4bp)は、生理活性分子の送達担体として多くの魅力的な特徴をもつ分子である。ヒトC4bpは、ヒト補体系−その機能が侵入細胞の溶解、食細胞の活性化および系からの異物の除去の促進を含む免疫系タンパク質のグループに関与している。これは、この系のタンパク質、特にC4タンパク質の活性を調節する。構造的に、hC4bpは、長い血清半減期および標的であるリンパ節に生理活性分子を送達する能力を有することが予想される、フレキシブルなジスルフィド結合された分子である。血清形態のhC4bpの分子量は、約590kDである。還元SDSゲルでは、hC4bpは、ジスルフィド結合した多量体タンパク質を示唆する約70kDにおける強いバンドが生成する。
【0048】
C4bp単量体をコードするcDNAは、クローン化および特性決定されている[L. P. Chungら、(1985年)「Molecular Cloning and Characterization of the cDNA Coding for C4b-Binding Protein of the Classical Pathway of the Human Complement System」、Biochem. J.、230、133〜141頁]。Chungらは、hC4bpを549アミノ酸のポリペプチドと称している。DNA配列から予測したポリペプチドの分子量は、還元SDSゲルで実際に測定した70kDではなく、約61.5kDである。分子量の差は明らかに、血清形態のポリペプチドのグリコシル化によるものである。Chungらの配列のN末端から最初の491アミノ酸は、それぞれ約60アミノ酸の短いコンセンサス反復領域(SCR)と呼ばれる8個のドメインに分割することができる。これらの領域は、N末端からC末端まで、SCR8〜SCR1と名付けられている。SCRドメインは、以下のように定義される。SCR8−+1〜+61;SCR7−+62〜+123;SCR6−+124〜+187;SCR5−+188〜+247;SCR4−+248〜+313;SCR3−+314〜+374;SCR2−+375〜+432;SCR1−+433〜+491。顕著な配列相同性を共有するこれらのドメインは、それぞれ4個の同様の位置にあるシステイン残基を含む。これらのシステイン残基は、規則的なパターンでドメイン内ジスルフィド結合を形成する[J. Janatovaら、(1989年)「Disulfide Bonds Are Localized Within the Short Consensus Repeat Units of Complement Regulatory Proteins:C4b-Binding Protein」、Biochemistry、28、4754〜4761頁]。各SCRドメイン内では、第1のシステイン基は第3と結合し、第2のシステイン残基は第4と結合して、二重ループアミノ酸配列を形成する。したがって、SCRは、糸状のビーズのように結合している。このドメイン内ジスルフィド結合のパターンが、C4bp単量体の立体構造の柔軟性をもたらす。8個のSCRドメインの他に、hC4bpはまた、C末端における57アミノ酸配列、タンパク質のその他の領域に対して相同性がないC4bpコアを有する。この領域は、分子の多量体へのアセンブリをもたらす。
【0049】
したがってポリペプチドスキャフォールドは、C4bpコアおよび任意選択でコアと融合した1種または複数のSCRであってよい。
【0050】
特に好ましい実施形態では、ポリペプチドスキャフォールドは、C4bpα鎖のコアタンパク質である。
【0051】
ポリペプチドスキャフォールドは、(Gly−Ser)(式中、mおよびnは1〜4である)などフレキシブルなリンカーなどのNまたはC末端延長部をさらに含んでいてよい。これらは、タンパク質ドメイン(特に抗体Vドメイン)を互いに結合するために当技術分野で使用されている。したがって第1の成分は、このようなリンカーによって第2および/または第3の成分と結合させることができる。
【0052】
第1の成分は、C4bpα鎖のコアタンパク質がスキャフォールドの場合に生成物のC末端にあることが好ましい。
【0053】
C4bpα鎖のコアタンパク質
これは、本明細書で「C4bpコアタンパク質」または「コアタンパク質」、あるいは「C4bpスキャフォールド」と称される。これらの用語は、同義で用いている。このタンパク質は、哺乳動物C4bpコアタンパク質または多量体を形成できるそのフラグメント、あるいは多量体を形成できるその合成変異体であってよい。
【0054】
いくつかの哺乳動物C4bpタンパク質の配列は、利用可能である。これらには、ヒトC4bpコアタンパク質(配列番号1)がある。当技術分野で利用可能なヒトC4bpコアタンパク質のいくつかの相同体がある。2種類の相同体:オルトログ(orthologue)およびパラログ(paralogue)がある。オルトログは、異なる生物の相同遺伝子として定義されており、すなわち遺伝子がそれらを生成した種分化事象と同時に発生した共通の祖先を共有する。パラログは、遺伝子、染色体またはゲノム重複に由来する同じ生物の相同遺伝子として定義されており、すなわち遺伝子の共通の祖先が最後の種分化事象に続いて生じている。
【0055】
例えば、GenBankの調査から、ウサギ、ラット、マウスおよびウシ起源(それぞれ配列番号2〜5)を含む種の哺乳動物C4bpコア相同体タンパク質が示唆される。パラログは、ブタ(ApoR)、モルモット(AM67)およびマウス(ZP3)で確認されており;それぞれ配列番号6〜8として示す。
【0056】
配列番号1〜8の配列を図1に示す。8個すべての配列は高度の類似性を有しているが、C末端でより大きな程度の変異があることが見られる。他のC4bpコアタンパク質は、BLASTなどの一般に利用可能な調査プログラムを用いて、DNAまたはタンパク質配列のデータベースを調査することによって確認することができる。
【0057】
所望の哺乳動物供給源由来のC4bpタンパク質がデータベースで利用可能ではない場合、当技術分野でよく確立されている通常のクローニング方法を用いて得ることができる。基本的に、こうした技術は、重要な他の種由来のC4bpコアタンパク質の配列を回収および決定するためのプローブとして利用可能なC4bpコアタンパク質の1種をコードする核酸を用いることを含む。多種多様な技術、例えばmRNAの適当な供給源(例えば胚または活発に分裂している分化細胞または腫瘍細胞由来)を用いた、あるいは哺乳動物由来のcDNAライブラリ、例えば前述の供給源の1つからのcDNAライブラリを得ること、中〜高ストリンジェンシーの条件(例えば約50℃〜約60℃で0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)下での既知のC4bp核酸を用いた前記ライブラリのブロービング、およびその哺乳動物のC4bpタンパク質のすべてまたは一部をコードするcDNAを回収することを含む方法による、遺伝子のPCR増幅およびクローニングがこれに利用可能である。部分cDNAを得る場合、完全長コード配列は、プライマー延長技術によって決定することができる。
【0058】
多量体を形成できるC4bpコアタンパク質のフラグメントは、少なくとも47アミノ酸、好ましくは少なくとも50アミノ酸を含むことができる。多量体を形成するためのフラグメントの能力は、本発明による原核宿主細胞中でフラグメントを発現すること、および全57アミノ酸C4bpコアの多量体化をもたらす条件化でC4bpフラグメントを回収すること、および多量体も形成するかどうか決定することによって試験することができる。C4bpコアのフラグメントは、少なくとも配列番号1の残基6〜52またはその相同体の対応する残基を含むことが望ましい。
【0059】
配列番号1のヒトC4bpコアタンパク質は、完全長C4bpタンパク質配列のアミノ酸+493〜+549に対応する。多量体を形成するためのこの周知の当技術分野のフラグメントは、C4bpコアタンパク質のアミノ酸+498〜+549に対応する。
【0060】
(フラグメントについて上記に記載したように決定できる)多量体を形成する能力を同様に保持する、C4bpコアおよび多量体を形成できるフラグメントの変異体も使用することができる。変異体は、野生型哺乳動物C4bpコアまたはその多量体形成フラグメントに対して、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%または最も好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するはずである。一態様では、C4bpコアは、配列番号1〜3および5〜8の位置6および18に現れる2個のシステイン残基を含むコアであるはずである。変異体は、これら2個の残基の間に相対的なスペーシングを保持することが望ましい。
【0061】
上記で特定した同一性の程度は、配列番号1〜8またはその多量体形成フラグメントのいずれか1つに対してである。
【0062】
特定した同一性の程度が、配列番号1またはその多量体形成フラグメントに対してであることが最も好ましい。
【0063】
配列同一性の程度は、アルゴリズムGAP、当技術分野で広く使用されておりAccelrys(旧Genetics Computer Group、Madison、WI)から入手可能なアルゴリズムの「Wisconsin package」の一部によって決定することができる。GAPは、NeedlemanおよびWunschアルゴリズムを用いて、2つの完全配列を、適合数が最大になり、ギャップ数が最少になる方法で整列させる。GAPは、長さがよく似た短い密接に関係する配列の整列化に有用であり、したがって配列が上記の同一性レベルを満たす場合の決定に適している。GAPは、デフォルトパラメーターを用いて使用することができる。
【0064】
哺乳動物C4bpコアタンパク質の合成変異体には、CまたはN末端への1種または複数のアミノ酸置換、欠失または挿入または付加があるものが含まれる。置換が特に想定される。置換には、保存的置換が含まれる。保存的置換の例には、以下の表に示すものがあり、2列目の同じブロック、好ましくは3列目の同じ行のアミノ酸が互いに置換され得る。
【表1】

【0065】
作製でき、多量体を形成するそれらの能力について試験できるC4bpコアタンパク質のフラグメントおよび変異体の例には、このように以下の表1に示す配列番号9〜16がある。
【表2】

【0066】
NまたはC末端切断の他に配列の欠失ができる場合、これらは、隣接または非隣接し得る1以下、2または3つの欠失に制限されるはずである。
【0067】
挿入、またはコアタンパク質配列へのNもしくはC末端延長が行われる場合、これらも、コアタンパク質のサイズは、野生型配列の長さを20アミノ酸超、好ましくは15アミノ酸超、より好ましくは10アミノ酸超でないように、制限されることが望ましいだろう。したがって配列番号1の場合、コアタンパク質を挿入または伸長によって改変すると、長さが77アミノ酸以下になることが望ましい。
【0068】
第2の成分
本発明の生成物は、直接または間接的に第2の成分と、かつ第3の成分と結合した上記のスキャフォールドを含む。
【0069】
第2の成分は、その内容が参照によりここに取り込まれているUS-A-6238670、および国際公開WO 99/35260に記載のように、CD21またはCD19に対する任意のリガンドであってよい。第2の成分はまた、B細胞、T細胞、瀘胞樹状または他の抗原提示細胞の細胞表面分子であってもよい。
【0070】
第2の成分は、C3d、特にヒトC3dであることが好ましい。
【0071】
マウスC3dのヌクレオチド配列および予想アミノ酸配列は、Domdeyら(1982年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:7619〜7623頁およびFeyら(1983年)Ann. N.Y. Acad. Sci. 421:307〜312頁)に開示されている。ヒトC3dのヌクレオチド配列および予想アミノ酸配列は、de BruijnおよびFey(1985年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:708〜712頁に開示されている。他の種由来のC3dをコードする核酸は、ヒトまたはマウス配列情報を用いて単離して、標準ハイブリダイゼーション法で使用する1種または複数のプローブを調製することができる。C3dを本発明で使用し、対象に投与すべき場合、C3dを免疫感作させる種と適合させることができる(例えばマウスC3dをマウス、ヒトC3dをヒトに使用するなど)。さらに、選択したコドンも、例えば哺乳動物宿主で効率的に翻訳されるコドンを用いて、免疫感作させる種に対して最適化することができる。
【0072】
第2の成分が第1および/または第3の成分とペプチドリンカーによって結合している場合、リンカーは、上記の柔軟なリンカーであってよい。
【0073】
好ましい実施形態では、スキャフォールドがC4bpコアタンパク質の場合第2の成分は、第1の成分に対するN末端であり、抗原に対するC末端である(この場合抗原はポリペプチドである)。ポリペプチドが抗原でない場合、抗原は、第1または第2の成分のどちらかと共有結合していてよい。
【0074】
抗原
抗原は、予防有用性がある任意の生成物であってよく;それらはワクチン接種に有用な可能性がある。本発明は、ヌクレオチド配列から多価形態のアジュバントに結合した組換え抗原の生成への急速な進行を可能にする。
【0075】
細菌免疫原、寄生虫免疫原およびウイルス免疫原は、ワクチンとして有用な多量体または異種多量体C4bp融合タンパク質を作成するためのポリペプチド部分として有用である。
【0076】
これらの免疫原の細菌供給源には、細菌性肺炎、ニューモシスティス肺炎、髄膜炎、コレラ、破傷風、結核およびライ病を引き起こすものが含まれる。
寄生虫供給源には、プラスモディウム(Plasmodium)などのマラリア原虫が含まれる。
【0077】
ウイルス供給源には、ポックスウイルス、例えば、牛痘ウイルスおよびオルフウイルス;ヘルペスウイルス、例えば、単純疱疹ウイルス1型および2型、B−ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、およびエプスタイン−バーウイルス;アデノウイルス、例えば、マストアデノウイルス;パポバウイルス、例えば、HPV16などの乳頭腫ウイルス、およびBKおよびJCウイルスなどのポリオーマウイルス;パルボウイルス、例えば、アデノ随伴ウイルス;レオウイルス、例えば、レオウイルス1、2および3;オルビウイルス、例えば、コロラドダニ熱;ロタウイルス、例えば、ヒトロタウイルス;アルファウイルス、例えば、東部脳炎ウイルスおよびベネズエラ脳炎ウイルス;ルビウイルス、例えば、風疹;フラビウイルス、例えば、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、日本脳炎ウイルス、ダニ媒介性脳炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルス;コロナウイルス、例えば、ヒトコロナウイルス;パラミクソウイルス、例えば、パラインフルエンザ1、2、3および4ならびに流行性耳下腺炎;麻疹ウイルス、例えば、麻疹ウイルス;肺炎ウイルス、例えば、呼吸合包体ウイルス;ベシクロウイルス、例えば、水疱性口内炎ウイルス;リッサウイルス、例えば、狂犬病ウイルス;オルソミクソウイルス、例えば、インフルエンザA型およびB型;ブンヤウイルス、例えば、ラクロスウイルス;フレボウイルス、例えば、リフトバレー熱ウイルス;ナイロウイルス、例えば、コンゴ出血熱ウイルス;ヘパドナウイルス科、例えば、B型肝炎;アレナウイルス、例えば、1cmウイルス、ラッソウイルス、およびフニンウイルス;レトロウイルス、例えば、HTLV I、HTLV II、HIV−1及びHIV−2;エンテロウイルス、例えば、ポリオウイルス1、2および3、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ヒトエンテロウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、およびノーウォーク−ウイルス;ライノウイルス、例えば、ヒトライノウイルス;およびフィロウイルス科、例えば、マールブルグ(病)ウイルスおよびエボラウイルスが含まれる。
【0078】
これらの細菌、ウイルスおよび寄生虫供給源由来の抗原は、ワクチンとして有用な多量体タンパク質の生成に使用することができる。多量体は、異なる抗原を保有する単量体の混合物を含んでいてよい。
【0079】
研究または治療目的のヒトタンパク質に対する免疫原を作製することができる。これらは、ワクチン接種だけでなく研究に対しても多くの応用例がある。例えば、ヒトゲノム計画によるヒト遺伝子配列情報の生成により、新しいポリペプチドによく反応する抗血清の生成が緊急の要件となっている。同じ要件が、細菌などの原核、および真菌を含む他の真核遺伝子生成物に適用される。
【0080】
非ポリペプチド免疫原は、例えば、炭水化物または核酸であってよい。ナイセリア(Neisseria)種または肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)種の多糖類外皮は、本発明において使用できる炭水化物の例である。
【0081】
抗原は、ワクチンに関して当技術分野で通常の小さいポリペプチドからより大きいタンパク質の間の任意のサイズであってよい。本発明の性質により、100kDa以下、より好ましくは50kDa以下、例えば30kDa以下のサイズの抗原が好ましい。
【0082】
非ポリペプチド免疫原が本発明の生成物の一部である場合、免疫原は、通常の合成方法を用いて生成物の第1および第2の成分と共有結合させることができる。一般に、免疫原は、第1および第2の成分を含む融合タンパク質のNもしくはC末端のいずれか、またはアミノ酸側鎖基(例えばリジンのε−アミノ基)、またはその組合せと結合させることができる。融合タンパク質1個当り2種以上の免疫原を加えることができる。カップリングを容易にするために、例えばC末端としてシステイン残基を融合タンパク質に加えてもよい。
【0083】
本発明には、免疫応答の生成において多くの利点がある。例えば、多量体の使用により、いくつかの抗原の免疫系への提示が同時に可能になる。このことにより、単一生物またはいくつかの異なる生物で存在し得る2種以上のエピトープに対して免疫応答を生じ得る多価ワクチンの調製が可能になる。したがって、本発明によって形成したワクチンは、2種以上の疾患に対する同時ワクチン接種、または所与の病原体上の複数のエピトープを同時に標的にするために使用することができる。エピトープは、単一単量体ユニットで、または異種多量体をもたらすために合わせた異なる単量体ユニット上で存在することができる。
【0084】
ヒトC4bpコア融合タンパク質またはヒトCpn10融合タンパク質は特に、コアタンパク質およびヒトCpn10が免疫化のレシピエントの血清または血漿中に通常存在するだけでなく、さらにそれら自体が免疫応答を誘発しないため、免疫化において有用である。C4bpタンパク質は、いくつかの哺乳動物種で周知であり、哺乳動物種に適切な相同体は、標準的な遺伝子クローニング技術を用いて当業者によって発見され得る。
【0085】
核酸
本発明の生成物は、タンパク質をコードする核酸構築体を用いて、原核または真核宿主細胞中で少なくとも第1および第2の成分の融合タンパク質を発現させることによって生成することができる。第3の成分がポリペプチドの場合、核酸配列からの3つすべての成分の発現を利用して本発明の生成物を生成することができる。
【0086】
したがって本発明は、本発明の生成物をコードする核酸構築体、一般にDNAまたはRNAを提供する。
【0087】
一般に構築体は、タンパク質をコードする配列が、所望の宿主細胞におけるタンパク質の発現に適したプロモーターに機能しうる態様で連結した、複製可能なベクターの形態である。
【0088】
ベクターは、複製開始点および場合によってプロモーターの制御因子を含んでいてよい。ベクターは、1種または複数の選択マーカー遺伝子を含有していてよい。当技術分野でそのように知られている原核および真核発現ベクターが多種多様にあり、本発明は、当業者の個々の選択による任意のベクターを利用することができる。
【0089】
多種多様な原核宿主細胞を本発明の方法で使用することができる。これらの宿主には、エシェリヒア(Escherichia)、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、好熱性細菌(Thermophilus)、サルモネラ(Salmonella)、腸内細菌(Enterobacteriacae)またはストレプトマイセス(Streptomyces)の菌株が含まれる。例えば、エシェリヒア属の大腸菌(E. coli)を本発明の方法で使用する場合、使用するのに好ましいこの細菌の菌株には、国際公開WO 98/02559に記載されており、かつ利用可能である、BL21(DE3)およびC41(DE3)、C43(DE3)またはCO214(DE3)を含むそれらの誘導体が含まれる。
【0090】
さらにより好ましくは、プロモーターがT7プロモーターでない場合、プロファージDE3を欠くこれらの菌株の誘導体を使用することができる。
【0091】
原核ベクターには、ベクター細菌プラスミド、例えば、ColEI、pCR1、pBR322、pMB9を含む大腸菌由来のプラスミド、およびそれらの誘導体、より広い宿主域プラスミド、例えば、RP4;ファージDNA、例えば、ファージAの多数の誘導体、例えば、NM989、ならびに他のDNAファージ、例えば、M13および線状1本鎖DNAファージがある。これらおよび他のベクターは、プロモーターと動作可能に連結した本発明の核酸を導入するために標準的な組換えDNA法を用いて操作することができる。
【0092】
プロモーターは、誘発性プロモーターであってよい。適当なプロモーターには、T7プロモーター、tacプロモーター、trpプロモーター、λプロモーターPまたはPおよび当業者によく知られている他のプロモーターがある。
【0093】
例えば酵母、昆虫および哺乳動物細胞を含む多種多様な真核宿主細胞を使用することもできる。哺乳動物細胞には、CHOおよびマウス細胞、COS−1などのアフリカミドリザル細胞、およびヒト細胞が含まれる。
【0094】
タンパク質の発現に適した多くの真核ベクターが知られている。これらのベクターは、真核細胞ゲノム中に染色体が組み込まれるように、または染色体外に維持されるように、または真核細胞中で一過的にだけ維持されるように設計することができる。核酸は、CMVプロモーターを含む強力なウイルスプロモーター、およびSV40 T抗原プロモーターまたはレトロウイルスLTRなどの適当なプロモーターと動作可能に連結させることができる。
【0095】
本発明の生成物を得るために、本発明のベクターを保有する宿主細胞は、タンパク質の発現に適した条件下で培養し、タンパク質を培地中の細胞から回収することができる。
【0096】
組成物
本発明による生成物は、薬剤組成物の形態で調製することができる。生成物は、1種または複数の薬剤として許容される担体または希釈剤と一緒に存在することになる。組成物は、生成物の所定の使用および投与経路に基づいて調製することになる。したがって、本発明は、多量体形態の本発明の生成物を1種または複数の薬剤として許容される担体または希釈剤と一緒に含む組成物およびヒトまたは動物対象を治療または予防するための免疫療法におけるこのような組成物の使用を提供する。
【0097】
薬剤として許容される担体または希釈剤には、経口、直腸、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外を含む)投与に適した製剤で使用するものが含まれる。製剤は、好適には単位剤形で存在することができ、薬学の分野でよく知られている方法のいずれかによって調製することができる。
【0098】
薬剤として投与可能な液体組成物は、例えば、本発明の融合タンパク質および任意選択の薬剤アジュバントを、例えば、水、ブドウ糖添加生理食塩水、グリセリン、エタノールなどの担体中に溶解、分散などをさせて、液剤または懸濁剤とすることにより調製することができる。必要に応じて、投与すべき組成物に、pH緩衝剤などの物質を付加してもよい。こうした剤形を調製する実際の方法は、当業者に周知であるか、または明らかなはずである;例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pennsylvania、第19版、1995年を参照のこと。
【0099】
投与すべき組成物または製剤は、いずれにしても、ある量の活性化合物を、治療対象の症状を緩和するのに有効な量で含有することになる。無毒性担体から構成したバランスで有効成分を0.25〜95%の範囲で含有する剤形または組成物を調製することができる。
【0100】
非経口投与は、皮下、筋肉内または静脈内注射によって一般に特徴付けられる。注射剤は、液状の液剤または懸濁剤、注射前に液体に溶かす液剤または懸濁剤に適した固形形態、あるいは乳剤として、従来形態で調製することができる。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどである。つい最近考案された非経口投与の手法は、一定レベルの投与量が維持されるような、緩徐な放出または徐放システムの埋め込みを行う。例えば、米国特許第3710795号を参照のこと。
【0101】
生成物の投与量は、抗原の性質によって決まるはずであり、従来のワクチン製剤中の抗原を投与するための現在の方法によって決定することができる。
【0102】
DNAワクチン
別の態様では、本発明は、ヒトまたは動物の身体の治療に使用するための、本発明の三成分生成物を含む組換え融合タンパク質をコードする核酸配列を含む真核発現ベクターを提供する。
【0103】
こうした治療は、免疫応答を高める目的における抗原をコードする核酸配列の導入によって、その治療効果を得るはずである。核酸の送達は、プラスミドベクター(「裸」または調製形態の)または組換え発現ベクターを用いて実現することができる。プラスミドベクターを用いて本発明をどのようにして実施するのかを例示するためには、Green T.D、ら、2001年、in Vaccine 20、242〜248頁の刊行物が例となる。これらの著者らは、麻疹赤血球凝集素タンパク質と3コピーのC3dの融合体を発現するDNAワクチンを用いて、中和抗体の抗体価が増大したことを示した。本発明では、C3dの第2および第3のコピーは、C4bpα鎖コアをコードする配列と置換し、オリゴマー抗原−アジュバント融合タンパク質をもたらすことになる。このプラスミドは、サイズがより小さく(コアコード配列がC3dの2個の複製をコードするものよりもはるかに短いため)、反復配列がないためより安定である。
【0104】
遺伝子送達に利用できる様々なウイルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアまたはレトロウイルスなどのRNAウイルスがある。レトロウイルスベクターは、ネズミまたはトリレトロウイルスの誘導体であってよい。単一外来遺伝子を挿入できるレトロウイルスベクターの例には、それだけには限らないが:モロニーネズミ白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベーネズミ肉腫ウイルス(HaMuSV)、ネズミ乳腺癌ウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)がある。対象がヒトの場合、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)などのベクターを利用することができる。
【0105】
ベクターには、転写制御配列、特にRNA合成の開始を指示するに足るプロモーター領域が含まれるはずである。適当な真核生物プロモーターには、マウスメタロチオネインI遺伝子のプロモーター(Hamerら、1982年、J. Molec. Appl. Genet. 1:273頁);ヘルペスウイルスのTKプロモーター(McKnight、1982年、Cell 31:355頁);SV40初期プロモーター(Benoistら、1981年、Nature 290:304頁);ラウス肉腫ウイルスプロモーター(Gormanら、1982年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6777頁);およびサイトメガロウイルスプロモーター(Foeckingら、1980年、Gene 45:101頁)がある。
【0106】
プラスミドベクターまたはウイルスベクターの一部としての本発明のこの態様のベクターの対象への投与は、多くの異なる経路によって影響を与えることができる。プラスミドDNAは、「裸」または陽イオン性および中性脂質(リポソーム)を用いて調製でき、あるいは直接または間接送達のためにマイクロカプセル化することができる。DNA配列は、直接または間接送達に使用できるウイルス(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス)ベクター内に含めることもできる。送達経路には、それだけには限らないが、筋肉内、皮内(Sato、Y.ら、1996年、Science 273:352〜354頁)、静脈内、動脈内、髄腔内、肝臓内、吸入、膣内点滴注入(Bagarazziら、1997年、J Med. Primatol. 26:27頁)、直腸内、腫瘍内または腹膜内がある。
【0107】
したがって本発明は、治療用ポリペプチドが発現され、治療効果を有することになるように、すなわち抗原に対して免疫応答を誘発するために、本明細書に記載のベクターを、DNAベクターを用いたいくつかの細胞のトランスフェクションを可能にするのに有用な薬剤組成物として含む。本発明による薬剤組成物は、溶媒、担体、送達系、賦形剤、および添加剤または佐剤を用いて、本発明による構築体を対象への投与に適した形にすることによって調製する。しばしば使用される溶媒には、滅菌水および生理食塩水(緩衝したまたはしていない)がある。1種の担体は、微粒子銃(すなわち、ガス圧下)で送達する金粒子を含む。しばしば使用される他の担体または送達系には、送達カプセル内に封入、または食品中に取り込んだ、液剤として投与できる陽イオン性リポソーム、コキレート(cochleate)およびマイクロカプセルがある。
【0108】
遺伝子送達ベクターを投与するための代替製剤にはリポソームが必要である。リポソームカプセル化により、ポリヌクレオチドおよび発現ベクターを投与するための代替製剤が得られる。リポソームは、水性コンパートメントを包んでいる1種または複数の脂質二重層からなる微細な小胞である。一般に、Bakker-Woudenbergら、1993年、Eur. J. Clin. Microbiol. Infect. Dis. 12(増刊1):S61頁、およびKim、1993年、Drugs 46:618頁を参照のこと。リポソームは、組成が細胞性膜と類似しており、その結果、リポソームは、安全に投与でき、生分解性である。調製方法に応じて、リポソームは、単層または多重膜であってよく、リポソームは、直径0.02μM〜10μM超でサイズが異なっていてよい。例えば、Machyら、1987年、LIPOSOMES IN CELL BIOLOGY AND PHARMACOLOGY(John Libbey)、およびOstroら、1989年、American J. Hosp. Phann. 46:1576頁を参照のこと。
【0109】
発現ベクターは、標準的な方法を用いてリポソーム内にカプセル化することができる。合成するための種々の異なるリポソーム組成物および方法は、当業者に周知である。例えば、すべてが参照によりここに取り込まれるUS-A-4844904、US-A5000959、US-A-4863740、US-A-5589466、US-A-5580859、およびUS-A-4975282、を参照のこと。
【0110】
一般に、投与したリポソームカプセル化ベクターの投与量は、患者の年齢、体重、身長、性別、一般的な病状およびこれまでの病歴などの要因によってことなる。特定の製剤の用量範囲は、適当な動物モデルを用いることによって決定することができる。
【0111】
細胞培養
本発明による融合タンパク質をコードするプラスミドは、従来の形質転換技術を用いて宿主細胞中に導入でき、この細胞を融合タンパク質の生成を容易にするための条件下で培養することができる。誘発性プロモーターを使用する場合、細胞を最初に誘導物質の不在下で培養し、次いで細胞がより高密度で増殖した後、誘導物質を加えてタンパク質の回収を最大にすることができる。
【0112】
細胞培養条件は、当技術分野で広く知られており、そのように周知の手順によって使用することができる。
【0113】
特定の態様では、第1の成分がC4bpコアタンパク質の場合、少なくとも最初に2つの成分、および該当する場合、3つすべての成分の融合が原核生物発現系で発現され得る。これまで、C4bpコアタンパク質に基づく融合タンパク質は、真核細胞中で発現されてきた。真核細胞からの融合タンパク質の収量は、培養上清1ミリリットル当り2マイクログラムにめったに到達せず(Oudinら、前掲書)、何回もの遺伝子増幅後に初めて達成できる。このレベルは、治療用途のための大量の多くの融合タンパク質を経済的に生成させるためには低すぎる。
【0114】
国際公開WO 91/00567では、原核宿主細胞がC4bp系タンパク質の生成に使用できることが示唆されているが、任意のこうした生成の実験的実証はない。しかし、いくつかの考察から、原核生物系の使用が不利であることが示唆されている。特に、多くの真核生物タンパク質は、大腸菌などの細胞中で発現されると、それらの活性な折りたたみ構造の一部または全部を失う。他の真核生物タンパク質は、原核細胞で発現されると変性するか、または完全に不活性である。
【0115】
C4bpは、哺乳動物中の分泌タンパク質であり、これらは原核生物中で正確に折りたたまれた形態で生成するのが特に困難であることが当技術分野で周知である。ジスルフィド架橋を有するタンパク質は、オリゴマー化を必要とするものと同様に特に問題である。ジスルフィド結合は、細菌細胞質の還元環境では通常生成されず、それらが形成できる場合、それらはタンパク質の誤って折りたたまれたまたは凝集した形態を安定化させることができる。
【0116】
通常、原核生物中で発現される組換えタンパク質は、宿主原核細胞内の封入体の内部で凝集している。これらは、別々の粒子または通常凝集または不活性形態の発現タンパク質を含む残りの細胞から分離した小球である。封入体中に発現タンパク質が存在すると、必要なリフォールディング技術が非効率で高価なので、活性可溶性形態のタンパク質を回収するのが難しくなる。封入体から精製したタンパク質は、比較的不十分な収量で活性な機能性タンパク質を得るのに、苦労して操作し、変性し、かつリフォールドしなければならない。
【0117】
原核細胞中でC4bpコア融合タンパク質を発現させることについて、他の考察も考慮に入れなければならない。第1に、各コア単量体は、2個のシステイン残基を保持し、当技術分野で許容されるC4bp多量体のモデルに基づいて、これらのシステインは、多量体のアセンブリ中に分子間ジスルフィド結合を形成する必要がある。細菌細胞質ゾルなどの原核細胞質ゾルの還元環境は、これらのジスルフィド結合を還元することによってC4bpコア多量体の形成を抑制することが予想される。
【0118】
第2に、多量体は、原核生物中で利用できない方法(例えばタンパク質ジスルフィドイソメラーゼおよび特異的なシャペロンの存在)でタンパク質フォールディングを助けることが知られている真核生物分泌装置を通過中にアセンブリする。第3に、真核細胞で比較的少ない収量(1ミリリットル当り数マイクログラム)が得られた条件下でも、この分泌経路は、相同タンパク質を生成することができない。
【0119】
さらに、発明者らは、原核生物発現系で生成したC4bpコアと融合したタンパク質は、それらの機能活性を保持していることも見出した。したがって、本発明は、C4bpα鎖のC末端コアタンパク質のスキャフォールドおよび第2の成分、および任意選択で第3の成分を含む、原核宿主細胞の細胞質ゾル中で可溶性形態の多量体を形成できる組換え融合タンパク質を得る方法であって、前記組換え融合タンパク質は,、原核宿主細胞の細胞質ゾル中で多量体を可溶性形態で形成することができ、
(i)前記原核細胞中で機能的なプロモーターと動作可能に連結した前記組換えタンパク質をコードする核酸を保有する原核宿主細胞を得るステップ;
(ii)前記組換えタンパク質が発現される条件下で宿主細胞を培養するステップ;および
(iii)前記タンパク質が多量体形態で回収される組換えタンパク質を回収するステップ
を含む方法を提供する。
【0120】
本発明者らは、本発明の細胞培養物中のタンパク質の収量が、比較的高い、例えば培養物5mg/lを超えるなど培養物2mg/l超、好ましくは培養物20mg/lを超えるなど培養物10mg/l超、さらにより好ましくは培養物100mg/l超となりうることを見出した。
【0121】
本発明のC4bpコア融合タンパク質は、本発明のその他の成分の1つとNまたはC末端で融合したC4bpコアタンパク質配列を含む。好ましい配列では、融合タンパク質のNからC末端の成分の順序は、N−第3の成分−第2の成分−第1の成分−Cである。
【0122】
本発明者らは、上記定義に含まれるタンパク質は、スキャフォールドリフォールディングの必要なしに多量体形態の細菌発現系で発現され、かつそれらから回収できることを見出した。本発明者らは、C4bpコアを含み、抗原および単量体質量が約30kDa以下の第2の成分を保有できるタンパク質を発現させた。したがって、本発明は、このサイズ範囲のタンパク質、より一般には約100kDa以下、より好ましくは約50kDaのタンパク質を発現するのに使用することができる。
【0123】
この系によって大腸菌中での可溶性タンパク質の生成が可能になるという事実は、それを用いて、折りたたまれた可溶性タンパク質のように、それらのC末端および/またはN末端での束縛がないことによって単独で発現された場合に折りたたまれないタンパク質のドメインまたはフラグメントの生成を可能にする。特定の切断部位の操作により、所定の独立したドメインの生成が可能になる。同様に束縛する対象のペプチドのN末端および/またはC末端は、リフォールディングプロセス中は有益であり得る。さらに、オリゴマー化構造が変性および分解に対して極めて強いので、挿入タンパク質の変性中に安定であるはずである。したがって、リフォールディング中、等量の対象のタンパク質では、遊離タンパク質の実際の濃度は、オリゴマー化数と同じ数の逆数だけ減少するはずである。タンパク質技術における多くの方法がタンパク質、特に極めて低分子量のペプチドと働くように最適化されていないので、オリゴマー化はまた、精製の目的でも有益であり得る。
【0124】
培養物からのタンパク質の回収
細胞を増殖させてタンパク質の産生を可能にした後、タンパク質を細胞から回収することができる。驚くべきことに、本発明者らは、タンパク質が可溶性のままであることを見出したので、細胞は、通常、遠心され、例えば、タンパク質画分を可溶性なままにし、さらなるより高速(例えば1時間15,000rpm)の遠心分離の後にこの画分が上清中に留まるようにする超音波処理によって溶解させる。
【0125】
上清タンパク質画分中の融合タンパク質は、標準的なタンパク質クロマトグラフィー技術の任意の適当な組合せによってさらに精製することができる。本発明者らは、イオン交換クロマトグラフィー、続いてゲルろ過クロマトグラフィーを使用した。親和性クロマトグラフィーなどの他のクロマトグラフ技術も使用することができる。
【0126】
一実施形態では、本発明者らは、溶解物の遠心分離後またはその他の精製ステップのいずれかの後に上清試料を加熱すると、タンパク質の回収が助けられることを見出した。試料は、約70〜80℃まで約10〜30分間加熱することができるが、第2の成分がC3dの場合には、この実施形態は好ましくない。
【0127】
タンパク質の所定の使用に応じて、タンパク質をさらなる精製ステップ、例えば透析、または濃縮ステップ、例えば凍結乾燥にかけることができる。
【実施例】
【0128】
本発明を以下の実施例によって例示する。
【0129】
実施例1−エピトープ−C3d−C4bp融合タンパク質
この実施例は、エピトープ(ヒトCpn10のアミノ酸8〜22番目を含む)と、それ自体がヒトC4bpコアタンパク質のN末端に融合しているヒトC3dとの融合を例示する。この融合タンパク質は、細菌株C41(DE3)中で発現させ、それから精製した。このタンパク質は、ゲルろ過においてオリゴマーとして作用した。
【0130】
この実施例で例示した方法は、例えばCpn10エピトープを以下に記載した構築体の他の抗原コードDNAと置換することによって、本発明の3つの成分生成物を生成することにも適用できる。あるいは、回収したタンパク質は、他の手段によって得た抗原と共有結合させてもよい。
【0131】
クローニング
pAVD95(以下の実施例2のC3d7(1)用の発現構築体)由来の975bpのXbaI−BamHIフラグメント(T7リボソーム結合部位、ヒトCpn10の残基8〜22(エピトープ)およびヒトC3dの残基995〜1287をコードしている)を、XbaIおよびBamHIであらかじめ消化したpAVD77(pRSETa−Db−C4bp)に連結した。これは、ヒトCpn10およびC3dタンパク質フラグメントをヒトC4bpのα鎖のC末端57残基と融合した。このpAVD94と呼ばれる構築体を、PCRおよび二重消化によってチェックした。
【0132】
この構築体の融合タンパク質のアミノ酸配列は、以下の通りである:
MKFLPLFDRV LVERSAGSVD AERLKHLIVT PSGSGEQNMI GMTPTVIAVH
YLDETEQWEK FGLEKRQGAL ELIKKGYTQQ LAFRQPSSAF AAFVKRAPST
WLTAYVVKVF SLAVNLIAID SQVLCGAVKW LILEKQKPDG VFQEDAPVIH
QEMIGGLRNN NEKDMALTAF VLISLQEARD ICEEQVNSLP GSITKAGDFL
EANYMNLQRS YTVAIAGYAL AQMGRLKGPL LNKFLTTAKD KNRWEDPGKQ
LYNVEATSYA LLALLQLKDF DFVPPVVRWL NEQRYYGGGY GSTQATFMVF
QALAQYQKDA PGSETPEGCE QVLTGKRLMQ CLPNPEDVKM ALEVYKLSLE
IEQLELQRDS ARQSTLDKEL(配列番号17)。
【0133】
配列番号17の残基2〜16はヒトCpn10(エピトープ)の残基8〜22に、配列番号17の残基19〜311はヒトC3d残基995〜1287に、配列番号17の残基314〜370はヒトC4bpコアタンパク質の57個の残基に対応する。上記の配列で太字のGSリンカー配列は、3つの成分の間に現れる。
【0134】
このタンパク質は、推定分子量が41,485ダルトン、理論上のpIが5.51、かつ推定消衰係数が45090M−1cm−1である。これに基づき、濃度を計算するために、Abs 0,1%(=1g/l)=1.087を使用する。
【0135】
発現
エピトープ−C3d−C4bpコアタンパク質をコードするプラスミドpAVD94を大腸菌株C41(DE3)中で発現させた。誘導せずに25℃で終夜増殖させた後、タンパク質は十分に発現した。フレンチプレスを用いて20mMトリス−HCl緩衝液pH8/100mM NaCl中で細胞溶解した後、タンパク質のほぼ半分が上清中に存在することが判明した。
【0136】
C3d−C4bpの精製
3つの精製ステップ:陰イオン交換カラム、陽イオン交換カラムおよびゲルろ過カラムを用いて、エピトープ−C3d−C4bpの可溶性画分を培養物1リットルから精製した。
【0137】
陰イオンカラム(Mono Q HR 16/10)
このカラムは、20mMトリス−HCl緩衝液pH8/100mM NaCl中で平衡化した。20mMトリス−HCl緩衝液pH8/100mM NaCl(緩衝液A)から20mMトリス−HCl緩衝液pH8/1M NaCl(緩衝液B)の20倍カラム容積の勾配を用いてタンパク質を溶出した。タンパク質は、約350mM NaClで溶出した。
【0138】
エピトープ−C3d−C4bpを含むMono Q画分を20mMトリス−HCl緩衝液pH7/100mM NaClに対して透析してから陽イオンカラムに導入した。
【0139】
陽イオンカラム(Mono S HR 10/10)
エピトープ−C3d−C4bpを含むカラムMono Q後の画分を、20mMトリス−HCl緩衝液pH7/100mM NaClを用いて平衡化した陽イオンカラム(Mono S HR 10/10)に導入した。20mMトリス−HCl緩衝液pH7/100mM NaCl(緩衝液A)から20mMトリス−HCl緩衝液pH7/1M NaCl(緩衝液B)の20カラム体積の勾配を用いてタンパク質を溶出した。タンパク質は、約350mM NaClで溶出した。
【0140】
主要な混入物(>66Kda)を含まないエピトープ−C3d−C4bpを含む画分をプールし、濃縮しゲルろ過カラムに導入した。
【0141】
ゲルろ過カラム(Superdex 200 26/60調製グレード)
エピトープ−C3d−C4bpを含むMono Sカラムから得た画分を、50mM リン酸Na pH7.4/150mM NaClを用いて平衡化したゲルろ過カラム(Superdex 200 26/60調製グレード)に導入した。タンパク質を緩衝液152.69mlで溶出したところ、きれいな対称ピークが得られた。この溶出体積は、タンパク質がオリゴマーであることを示す。カラム後、タンパク質濃度は、0.45mg/mlであった。タンパク質を1.5mg/mlに濃縮し、10%グリセリンを用いて−70℃で保存した。タンパク質は、少なくとも90%純粋であった。
【0142】
実施例2−ヒトCpn10の可動ループへのヒトC3d分子の挿入(C3d7)
この実施例は、3つの類似したC3d7構築体の可溶性部分の精製および25℃におけるそれらの発現について記載する。
【0143】
C3d7(1)
ヒトCpn10の可動ループ(そのN末端で切断されている)と置換したヒトC3dおよびC末端mycタグエピトープをアミノ酸配列配列番号18と一緒に含む、42.85kDaの3部からなる融合タンパク質を、25℃で大腸菌株C41(DE3)中のプラスミドpAVD95から発現させた。
【0144】
MKFLPLFDRV LVERSAGSVD AERLKHLIVT PSGSGEQNMI GMTPTVIAVH
YLDETEQWEK FGLEKRQGAL ELIKKGYTQQ LAFRQPSSAF AAFVKRAPST
WLTAYVVKVF SLAVNLIAID SQVLCGAVKW LILEKQKPDG VFQEDAPVIH
QEMIGGLRNN NEKDMALTAF VLISLQEAKD ICEEQVNSLP GSITKAGDFL
EANYMNLQRS YTVAIAGYAL AQMGRLKGPL LNKFLTTAKD KNRWEDPGKQ
LYNVEATSYA LLALLQLKDF DFVPPVVRWL NEQRYYGGGY GSTQATFMVF
QALAQYQKDA PGSGKVLQAT VVAVGSGSKG KGGEIQPVSV KVGDKVLLPE
YGGTKVVLDD KDYFLFRDGD ILGKYVDeqk liseedl(配列番号18)
配列番号18のヒトCpn10アミノ酸配列は、残基1〜16および311〜377である。ヒトC3dアミノ酸配列は、配列番号18の17〜310由来であり、myc−タグエピトープアミノ酸配列は、378〜387由来である。
【0145】
この融合タンパク質をコードするDNA配列(NdeI−HindIII制限フラグメント)を、pRSET由来プラスミドのNdeI−HindIII部位の間でクローン化し、T7プロモーターの制御下にコード配列を置いた。
【0146】
C3d7(2)
ヒトCpn10の可動ループの代わりのヒトC3d挿入の位置だけ異なる第2の融合タンパク質を、同様に構築した。これは、配列番号19の配列を有する:
MKFLPLFDRV LVERSAGETV TVDAERLKHL IVTPSGSGEQ NMIGMTPTVI
AVHYLDETEQ WEKFGLEKRQ GALELIKKGY TQQLAFRQPS SAFAAFVKRA
PSTWLTAYVV KVFSLAVNLI AIDSQVLCGA VKWLILEKQK PDGVFQEDAP
VIHQEMIGGL RNNNEKDMAL TAFVLISLQE AKDICEEQVN SLPGSITKAG
DFLEANYMNL QRSYTVAIAG YALAQMGRLK GPLLNKFLTT AKDKNRWEDP
GKQLYNVEAT SYALLALLQL KDFDFVPPVV RWLNEQRYYG GGYGSTQATF
MVFQALAQYQ KDAPGKVLQA TVVAVGSGSK GKGGEIQPVS VKVGDKVLLP
EYGGTKVVLD DKDYFLFRDG DILGKYVDeq kliseedl(配列番号19)
アミノ酸残基1〜20および315〜378は、ヒトCpn10由来であり、ヒトC3dアミノ酸配列に隣接する。myc−タグエピトープアミノ酸配列は、379〜388由来である。
【0147】
C3d7(3)
同様に、以下のアミノ酸配列を含むC3d7(3)と称する第3の融合タンパク質も作製した:
MKFLPLFDRV LVERSAGETV DAERLKHLIV TPSGSGEQNM IGMTPTVIAV
HYLDETEQWE KFGLEKRQGA LELIKKGYTQ QLAFRQPSSA FAAFVKRAPS
TWLTAYVVKV FSLAVNLIAI DSQVLCGAVK WLILEKQKPD GVFQEDAPVI
HQEMIGGLRN NNEKDMALTA FVLISLQEAK DICEEQVNSL PGSITKAGDF
LEANYMNLQR SYTVAIAGYA LAQMGRLKGP LLNKFLTTAK DKNRWEDPGK
QLYNVEATSY ALLALLQLKD FDFVPPVVRW LNEQRYYGGG YGSTQATFMV
FQALAQYQKD APLQATVVAV GSGSKGKGGE IQPVSVKVGD KVLLPEYGGT
KVVLDDKDYF LFRDGDILGK YVDeqklise edl(配列番号20)
ヒトCpn10アミノ酸配列は、ヒトC3dアミノ酸配列に隣接する1〜18および313〜373であり、myc−タグエピトープアミノ酸配列は、374〜383である。
【0148】
C3d7(1)の発現
このタンパク質を可溶性形態で得るために、本発明者らは、25℃で大腸菌株C41(DE3)中でpAVD95を発現させた。0.5mM IPTGを用いて25℃で終夜誘導後、タンパク質は発現され、タンパク質のほぼ半分が上清中に存在することが判明した。
【0149】
精製
C3d7(1)の可溶性画分を、2つの精製ステップ、すなわち陰イオンカラムとそれに続くゲルろ過カラムを用いて精製した。
【0150】
陰イオンカラム(Mono Q HR 16/10)
このカラムは、20mMトリスpH8中で平衡化した。20mMトリスpH8から20mMトリスpH8、1M NaClの20カラム体積の勾配を用いてタンパク質を溶出した。タンパク質は、一画分(E3)5ml中で約350mM NaClを用いて溶出した。
【0151】
ゲルろ過カラム(Superdex 200 26/60調製グレード)
カラムMono Qの画分E3を、50mM リン酸Na pH7.4、150mM NaClを用いて平衡化したゲルろ過カラム(Superdex 200 26/60調製グレード)に導入した。タンパク質を緩衝液150mlで溶出した。同じカラムのオボアルブミンの溶出容積(MW=43Kd)は、167mlであった。これは、タンパク質がオリゴマーであることを示唆する。
【0152】
円偏光二色性
遠紫外円偏光二色性によるタンパク質の分析から、2次構造の存在が示唆された。スペクトルの逆重畳積分から、α−へリックスのパーセント値が約49%であることが示された。このパーセント値は、モデリングによって決定したパーセント値(α−へリックスの48%)と一致している。これは、タンパク質が正確に折りたたまれているという良好な指標である。
【0153】
タンパク質を、50mMリン酸ナトリウム、pH7.4、150mM NaCl中で1.2mg/mlまで濃縮した。
【0154】
実施例3−C3d7(1)およびエピトープ−C3d−C4bpのCR2結合活性
ELISAアッセイ法
実施例1のように調製したエピトープ−C3d−C4bp分子および実施例2のように調製したC3d7(1)を、500nM〜0.01nMの範囲の濃度にわたって分析し、ヒトC3d(Calbiochem)および国際公開WO 99/35260に記載のように構築し調製したC3d3またはAPT2029と称されるヒトC3d線状三量体と比較した。この結果を図2および4に示す。
【0155】
簡単に述べると、アッセイ法は、以下の通りである。
【0156】
IgG定常部−CD21融合タンパク質を組織培養細胞中で発現させ、精製し、精製したタンパク質を使用してELISAプレートのウェルをコートした。これらのウェルに様々なC3d分子をある範囲の濃度で加え、インキュベートした。インキュベーション後、ウェルを大規模に洗浄してからビオチン化抗C3dモノクローナル抗体を加えた。インキュベーションおよび洗浄の後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ビオチン抗体を加えた。さらなるインキュベーションおよび洗浄ステップに続いて、HRP用の基質を加え、HRPによる基質からの着色生成物の生成を450ナノメートルの吸光度で測定した。このアッセイを図3にイラストとして示す。
【0157】
明らかに、エピトープ−C3d−C4bp分子は、図2に示すようにいくつかの濃度において単量体C3dよりもはるかに良好に、かつさらに線状三量体C3d3よりも良好に、C3d受容体CD21と結合する。
【0158】
C3d7(1)を用いてこのアッセイを3回繰り返し、各応答の勾配を平均化し、比較した。図4に、これらのアッセイの1つの結果を示す。
【0159】
C3d7(1)とCalbiochem C3d(単量体形態である)の間の結果を比較すると、C3d7(1)のAbs450が単量体C3dよりも低濃度で増大する。これは、C3dが多量体形態であることを示唆する。
【0160】
実施例4−C3d7(1)、(2)&(3)のCR2結合活性
実施例3の第2の結合実験を、すべて実施例2で前述したように調製したC3d7(1)、(2)および(3)を用いて実施例3に記載のように繰り返した。
【0161】
ELISAアッセイにおけるこれら3つのタンパク質の結合を、図5のように示す。このデータは、C3d7(1)、C3d7(2)およびC3d7(3)が最終的にすべてCR2と結合することを示す。単量体C3d(Calbiochemより供給)とAPT2029と称されるC3d3の線状三量体の間の勾配が3.4倍増大したことによって示されるように、結合曲線の直線部の勾配から、タンパク質の多量体化の指標が得られる。3つのC3d7構築体の直線部の勾配から、それらがすべて多量体化していることが示唆される。
【0162】
実施例5−免疫蛍光フローサイトメトリーによる分析
不死化ヒトCD21+ Rajiリンパ芽球腫細胞系およびヒトCD20/CD4/CD8末梢血リンパ球に対するC3d7構築体のCR2結合活性を試験した。Becton Dickenson FACSCaliburを用いてフローサイトメトリー分析を実施し;10,000事象を獲得した。
【0163】
不死化Raji(B細胞)およびJurkat(T細胞)細胞をPBSで洗浄し、最適化したFITC接合抗ヒト、CD3(汎T細胞マーカー)、CD20(汎B細胞マーカー)およびCD21(CR2マーカー)(DAKO)モノクローナル抗体(Mabs)の希釈溶液と一緒にインキュベートした。これは、Raji細胞はCD21、CD20であるが、Jurkat細胞はCD21dim、CD3であることを証明した。
【0164】
C3d7(1〜3)の結合は、Raji(CD21/CD20)細胞では検出されるが、Jurkat(CD3/CD21dim)細胞では検出されない。
【0165】
単一染色免疫蛍光アッセイフォーマットを用いて、洗浄したRajiおよびJurkat細胞(1×10/ml)を100nM(最終希釈度)のC3d7(1)、C3d7(2)、C3d7(3)、ヒト単量体C3d(Calbiochem)およびヒト線状三量体C3d3(APT2029)と一緒に室温で30分間インキュベートし、氷冷PBS中で洗浄し、次いで最適化したCy3(ピンク色蛍光体)接合抗ヒトC3dモノクローナル抗体(Mab)の希釈溶液と一緒に暗所中4℃で30分間インキュベートし、再度洗浄し、氷冷PBS 0.5ml中に再懸濁した。図6に、この分析の結果を示す。
【0166】
C3d7(1)およびC3d7(2)は、CD21細胞と最終的に結合し、CD3/CD21dim細胞とは結合しない。シグナル強度の増大により、C3d(APT2029)における6.4倍の増大と比較したそれぞれC3d(Calbiochem)、C3d7(1)およびC3d7(2)の間の7および9倍のシグナル強度増大によって示される多量体化の指標が得られる。
【0167】
CD20/CD4/CD8ヒト末梢血リンパ球(PBL)の表面上のC3d7(1)の結合
この実験は、二重染色免疫蛍光アッセイフォーマットを用いて行った。Ficollによる密度勾配遠心分離によってヒトPBLを血液から単離した。混入した赤血球を溶解により除去した。洗浄した1×10/mlのPBLを200nM(最終希釈度)C3d7(1)またはヒト線状三量体C3d3(APT2029)と一緒に室温で30分間インキュベートし、氷冷PBS中で洗浄し、次いで最適化したCy3抗ヒトC3d MabおよびFITC抗CD4(Th細胞マーカー)、抗CD8(CTLマーカー)抗CD20(B細胞マーカー)Mab(DAKO)の希釈溶液と一緒に暗所中4℃で30分間インキュベートし、洗浄し、氷冷PBS 0.3ml中に再懸濁してからフローサイトメトリー分析を行い、5,000の事象を獲得した。
【0168】
このデータの分析から、APT2029と称される線状三量体ヒトC3d3で見られるのと同じように、C3d7(1)がPBL B(CD20)細胞集団(CD21と推定される)と最終的に結合することが示唆される。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】C4bpコアタンパク質の配列を示す図である。
【図2】単量体C3dおよびC3d3と称される線状三量体型のC3dと比較した、CR2(CD21としても知られている)に対するエピトープ−C3d−C4bp融合タンパク質およびC3d7(1)の結合を示す図である。
【図3】CR2結合アッセイのフォーマットを表すイラストである。
【図4】単量体C3dおよびC3d3と称される線状三量体型のC3dと比較した、CR2(CD21)に対するC3d7(1)の結合を示す図である。
【図5】単量体C3dおよびC3d3と称される線状三量体型のC3dと比較した、CR2(CD21)に対するC3d7(1)、(2)および(3)の結合を示す図である。
【図6】RajiおよびJurkat細胞と結合しているC3d7(1)、C3d7(2)およびC3d7(3)のフローサイトメトリー分析を示す図である。
【配列表】













【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャフォールドである第1の成分;
アジュバントである第2の成分;および
抗原である第3の成分
を含む生成物。
【請求項2】
前記第2の成分が、CD21に対するリガンドあるいはB細胞、T細胞、瀘胞樹状または他の抗原提示細胞上の細胞表面分子であるポリペプチドである、請求項1に記載の生成物。
【請求項3】
前記第3の成分がポリペプチド抗原である、請求項1または2に記載の生成物。
【請求項4】
前記第3の成分が非ポリペプチド抗原である、請求項1または2に記載の生成物。
【請求項5】
前記スキャフォールドおよび抗原が同一である、請求項1から3のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項6】
前記スキャフォールドおよび抗原がウイルスコートタンパク質である、請求項5に記載の生成物。
【請求項7】
前記ウイルスコートタンパク質がB型肝炎表面抗原である、請求項6に記載の生成物。
【請求項8】
前記スキャフォールドおよびアジュバントが同一である、請求項1から3のいずれか一項に記載の生成物。
【請求項9】
前記スキャフォールドおよびアジュバントがC4bpコアタンパク質である、請求項8に記載の生成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の生成物を薬剤として許容される担体または希釈剤と一緒に含む、薬剤組成物。
【請求項11】
対象に請求項1から10のいずれか一項に記載の生成物を有効量投与することを含む、抗原に対する免疫応答を誘発する方法。
【請求項12】
ポリペプチドスキャフォールドである第1の成分;
CD21に対するリガンドあるいはB細胞、T細胞、瀘胞樹状または他の抗原提示細胞上の細胞表面分子であるポリペプチドである第2の成分;および
ポリペプチド抗原である第3の成分
を含む生成物を作製する方法であって、
前記3つの成分をコードする核酸を融合タンパク質の形態で発現すること、および前記生成物を回収することを含む前記方法。
【請求項13】
ポリペプチドスキャフォールドである第1の成分;
CD21に対するリガンドあるいはB細胞、T細胞、瀘胞樹状または他の抗原提示細胞上の細胞表面分子であるポリペプチドである第2の成分;および
非ポリペプチド抗原である第3の成分
を含む生成物を作製する方法であって、
前記第1および第2の成分をコードする核酸を融合タンパク質の形態で発現すること、前記融合タンパク質と前記第3の成分を連結すること、ならびに前記生成物を回収することを含む前記方法。
【請求項14】
前記核酸が原核宿主細胞中で発現される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記融合タンパク質が多量体形態で回収される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組換えタンパク質が細胞培養物あたり少なくとも2mg/lの濃度で存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記宿主原核細胞が大腸菌である、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ポリペプチドスキャフォールドである第1の成分;
CD21に対するリガンドあるいはB細胞、T細胞、瀘胞樹状または他の抗原提示細胞上の細胞表面分子であるポリペプチドである第2の成分;および、場合により、ポリペプチド抗原である第3の成分
の融合タンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクターであって、
宿主細胞中で機能するプロモーターに機能しうる態様で連結した発現ベクター。
【請求項19】
請求項18の発現ベクターを用いて形質転換した細菌宿主細胞。
【請求項20】
請求項18の発現ベクターを用いて形質転換した真核宿主細胞。
【請求項21】
ヒトまたは動物の身体を治療する方法における請求項20の発現ベクターの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−505252(P2006−505252A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−528461(P2004−528461)
【出願日】平成15年8月12日(2003.8.12)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008926
【国際公開番号】WO2004/016283
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(505051792)
【Fターム(参考)】