説明

抗原提示細胞の選択サブセットの同時ローディング/活性化によりT細胞のエフェクタープロファイルを発生させ制御するための方法及び組成物

【解決手段】本発明は、抗原提示細胞の適切な指示と組み合わせて、IgGバックボーン内のペプチドによるMHCIの予想外のローディングを利用するTc1エフェクターに対するクラスI免疫の効果的な再指向をもたらす、新規な組成物に関する。このような組成物は、一見無効な治療法を効果の高い治療法へと転換することができ、クラスI拘束性細胞溶解性細胞及びIFN−γやIL−2を産生するT細胞の発生に関連し、更に、高毒性微生物に対する防御や悪性腫瘍プロセスからの回復に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2002年9月20日出願の米国特許出願第60/412,219号及び2003年3月14日出願の国際出願PCT/US03/07995号に基づく優先権を主張するものであり、これら出願それぞれの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
本発明は一般に、免疫応答を生じさせるための方法及び組成物に関する。より詳細には、本発明は、抗原提示細胞にロードし、目的とするT細胞応答の発生に適した状況において、輸送されたエピトープをMHCクラスI分子上に提示するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
Fcガンマレセプター(FcγR)による抗原の輸送が効果的な抗腫瘍応答或いは抗感染応答を引き起こすという直接的な証拠は未だ示されていない。例えば、イムノグロブリンつまりIgGバックボーン内でのウィルスNP(核タンパク質)由来エピトープの輸送によっては、検出可能な細胞障害性免疫は誘導されないことが先に示されている(Zaghouani et al.、Eur J Immunol.1993年11月;23(11):2746〜50)。一方、NP発現細胞(トランスフェクトーマ)の場合には、同じエピトープの輸送により顕著な細胞溶解活性が生じた。従って当時は、「APC(抗原提示細胞)は、同じ状況(1マイクロM Ig−NP)からインフルエンザ核タンパク質[NP]ペプチドをMHCクラスI拘束性T細胞に提示することはできず」、よって、「担体タンパク質を同一とする状況でMHCクラスI及びクラスII拘束性ペプチドを提示された場合、エンドサイトーシスコンパートメントはクラスII拘束性ペプチドによる提示の方を好む確立の方が少なくとも1000倍高い」という結論に至っていた。
【0003】
MHCクラスI提示経路へのNPエピトープのアクセスは輸送戦略に依存しているため、FcγRインターナリゼーションのために厳しく制限されると考えられていた。最近になって、抗原提示細胞(APC)上のFcγRの架橋或いは同時結合によって、シグナル伝達が大幅に最適化されることにより、クロスプライミング及びAPCが刺激され、その結果、MHCクラスI分子の効果的なローディングが達成され得ることが提唱された(Regnault et al.、J Exp Med.1999年1月 18;189(2):371〜80)。これは免疫複合体(多価抗原−抗体非共有結合複合体)を用いることにより可能となると考えられるが、C(補体)仲介疾患が生じる可能性があるため、この複合体はex vivoでAPCに投与されただけであった(Naama et al.、J Clin Lab Immunol.1985年6月;17(2):59〜67; Rafiq et al.、J Clin Invest.2002年7月;110(1):71〜9)。また、APC上のレセプターを指向する(Fab)2−抗原組換え融合構築物によって、レセプター架橋インターナリゼーション、及びMHCクラスII分子に関連した提示が起こり得る(Lunde et al.、Biochem Soc Trans 2002年;30(4):500〜6)。しかし、抗原の挿入によりイムノグロブリン(Ig)の定常ドメイン(CH2及びCH3)のFc部分が修飾される。このことは、このセグメントの完全性と密接に関連している2つのパラメータである半減期及び薬物動態に対して重大で予測不能な影響を及ぼす可能性がある(Spiegelberg HL、J Clin Invest 1975年9月;56(3):588〜94)。最後に、上述の戦略のいずれか一方をin vivoで適用した場合、特定のサイトカイン(IFN−γ等)を産生する最適なMHCクラスI及びII拘束性T細胞の発生に関連すると考えられる、防御的或いは治療的な抗腫瘍免疫或いは抗菌免疫が誘導される、という決定的証拠はこれまでのところ得られていない。ex vivoで適用した場合でも、ITAM+とITIM+FcγRの活性のバランスのため、免疫複合体戦略によって示される有効性は限られている(Kalergis and Ravetch、J Exp Med 2002年6月 17;195(12):1653〜9)。このように、Fcγレセプターの一価結合(monovalent ligation)により抗原をAPCへin vivo輸送することによって、効果的な抗腫瘍免疫或いは抗ウィルス免疫を誘導することが可能かどうかは、未だわかっていない。
【0004】
2002年3月14日出願のPCT出願PCT/US03/07995号及び2002年4月30日出願の米国特許出願第60/364,490号を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。また、Geneva BioInformaticsより入手可能なSwiss-Protein/Trembl Protein Knowledgebase(商標)(CD−ROM版)の全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
予想に反して、本発明では、Fc部分を修飾することなくIgGバックボーンに共有結合したペプチドエピトープを用いて、FcγRの一価結合(monovalent engagement)によってAPCをin vivo及びex vivoでロードすることによって、このエピトープがMHC Iプロセシング及び提示経路にアクセスすることができ、MHCクラスI分子を効果的にロードすることができることを実証するものである。意外にも、この結果、IL−2やIFN−γではなくIL−4を産生しIgGバックボーン内でこのエピトープを認識するMHCクラスI拘束性T細胞により特徴付けられる強いTc2応答が発生する。
【0006】
また、この「逸脱した」応答の発生は、腫瘍増殖に関連する病理的プロセスの制御には効果的ではなく、細胞溶解性T細胞の顕著なプライミングとも関連していなかった。このことは、先に同様の状況において免疫誘導が検出できなかったことの主な説明となり、また意外にも、APC上のFcγRの架橋や多価結合(免疫複合体やFab2−抗原化合物の場合等)がMHCクラスI分子へのペプチドの効果的なローディングの必須条件ではないことを示している。このことが重要であるのは、この概念が(免疫複合体とは対照的に)in vivoに応用することができるためであり、またFc部分の完全性、よってPKプロファイルを維持することができる(Fab2−抗原組換え分子とは対照的に)ためである。MHCクラスI分子の効果的なローディングにもかかわらず、APCは、IgGバックボーン内でペプチドエピトープによりin vivoでロードされた場合に、防御的抗腫瘍免疫や抗菌免疫を引き起こすことができなかった。
【0007】
更に、本願は、IgGバックボーン内でのペプチドによるMHC Iの予想外のローディングを利用するTc1エフェクターに対するクラスI免疫の効果的な再指向(redirection)をもたらす、新規な組成物を開示する。このような組成物は、一見無効なMHCクラスII及びクラスI拘束性ペプチドを効果の高いペプチドへと転換することができる。新規な合成ポリヌクレオチドによるAPCの刺激に関連するFcγRによるAPCのロードは、クラスI拘束性細胞溶解性細胞及びIFN−γやIL−2を産生するT細胞の発生をもたらし、更に、高毒性微生物に対する防御や悪性腫瘍プロセスからの回復に関連する。また、本技術の変法・変形例は、誤って或いは先に提示されたように適用すると、ウィルスや腫瘍に対する防御的免疫(特にMHCクラスI拘束性)の発生において最適ではないことも示される。本願は、過去の失敗の理由を示すと共に、最適な効果を得るために本技術の各構成要素を獲得し適用する方法について教示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は次の実施態様を含む。
1.Ig、Igバックボーンバックボーン或いはその一部に結合した少なくとも一種のペプチドエピトープを用いて抗原提示細胞にロードし、抗原或いはペプチドエピトープに対するT細胞応答を発生させることによりIg−ペプチド分子/複合体或いはその一部を形成する方法であって、in vivo或いはex vivoで患者に投与すると、該エピトープは抗原提示細胞のMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、抗原提示細胞上のMHCクラスI分子が効果的にロードされ、MHCクラスI−ペプチド複合体が生じる、方法。
2.Ig−ペプチド分子/複合体或いはその一部がRNA鎖と共に投与される、パラグラフ1に記載の方法。
3.RNAがdsRNA鎖でありpA:pUである、パラグラフ2に記載の方法。
【0009】
る、パラグラフ3に記載の方法。
5.IgバックボーンがヒトIg由来である、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
6.IgバックボーンがヒトIgG由来である、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
7.Igバックボーンはヒト化Igである、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
8.抗原提示細胞はFcγRの一価結合(monovalent engagement)によってロードされる、パラグラフ1に記載の方法。
9.抗原提示細胞はin vivo或いはex vivoでロードすることができる、パラグラフ1に記載の方法。
10.ペプチドエピトープはIgバックボーンに共有結合している、パラグラフ1に記載の方法。
11.ペプチドエピトープはIgのFc部分の修飾無しでIgバックボーンに結合している、パラグラフ1に記載の方法。
12.ペプチドエピトープはイムノグロブリン分子のCDR領域内に挿入されている、パラグラフ1に記載の方法。
13.ペプチドエピトープはイムノグロブリン分子のCDR領域内に挿入或いは欠失(insertion or deletion)により挿入されている、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
14.MHCクラスI−ペプチド複合体によって、IL−2産生やIFN−γ産生ではなくIL−4産生により特徴付けられる強いTc2応答が発生する、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
15.ペプチドエピトープは、インフルエンザウィルスM1或いはM2;C型肝炎ウィルスNS3;B型肝炎ウィルスコア抗原;ヒトパピローマウィルスHPV18−E7、HPV16−E7、HPV18E6、HPV16E6;メラノーマ−gp100;MART−1;TRP−2;癌胎児抗原前駆体;Her−2;破傷風毒素ユニバーサルTヘルパーエピトープ;HIV−1:逆転写酵素;HIV1:gag;インスリン前駆体−ヒト;ヒトGad65;前立腺腫瘍抗原;ムチン1;単純ヘルペス抗原;及び呼吸器合胞体ウィルス抗原から成る群から選択される、 パラグラフ1に記載の方法。
16.血清の負の影響が回避される、パラグラフ1に記載の方法。
17.Igペプチド分子及びdsRNAは皮下注射或いは腹腔内注射によって投与される、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
18.抗原提示細胞は、樹状細胞、単球、マクロファージ及びB細胞から成る群から選択される、パラグラフ1に記載の方法。
19.抗原提示細胞は、CD11c+APC及びCD11b+APCから成る群から選択される、パラグラフ1に記載の方法。
20.in vivo輸送によって形成されるMHC−ペプチド複合体は最大1〜2週間発現される、パラグラフ1に記載の方法。
21.MHC−ペプチド複合体によってT細胞が活性化する、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
22.T細胞応答は、APC上のITAM+及びITIM+Fcγレセプターによって決まる、パラグラフ21に記載の方法。
23.ITAM+FcγRアイソフォームのγ鎖の発現がT細胞応答を誘導し、ITIM+FcγRIIがT細胞応答を制限する、パラグラフ21に記載の方法。
24.単球がTh2及びTr1細胞を誘導し、樹状細胞及び単球の双方がTh3細胞を誘導し、T細胞エピトープのIgG仲介輸送に引き続く調節応答を引き起こす上で樹状細胞よりもCD11b+単球の方が強力である、パラグラフ18又は19に記載の方法。
25.in vivoでIgバックボーン内で輸送されたペプチドによるAPCのローディングによってTh2免疫が誘導される、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
26.in vivoでIgバックボーン内で輸送されたペプチドによるAPCのローディングによってTh3及びTr1免疫が誘導される、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
27.T細胞応答は、抗CD40mAb、組換えIL−12及び合成dsRNAから成る群から選択される一種と共に同時刺激することによって増強される、パラグラフ1に記載の方法。
28.IL−2、IFN−γ及びIL−4は用量依存的にダウンレギュレートされ、IL−10及びTGF−βは用量依存的にアップレギュレートされる、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
29.ペプチドエピトープはrecNPであり、IL−4産生Tc2細胞から成るNP特異的MHCクラスI拘束性T細胞免疫を誘導する、パラグラフ1、2、3又は4に記載の方法。
30.RNAモチーフを用いて免疫応答を修飾する(modified)ことを更に含む、パラグラフ1に記載の方法。
31.RNAモチーフはdsRNAである、パラグラフ30に記載の方法。
32.IgG1及びIgG2a抗体応答は増強され、増強されたTh1及びTh2応答と関連する、パラグラフ27に記載の方法。
33.dsRNAは、pA:pU、pI:pC及びpC:pGから成る群から選択される、パラグラフ2、27又は30に記載の方法。
34.dsRNAはpA:pUであり、MHCクラスI拘束性Tc1細胞を誘導してIFN−γを産生する、パラグラフ27又は30に記載の方法。
35.dsRNAは10〜50Kdである、パラグラフ33又は34に記載の方法。
36.RNAモチーフは、p(A)、p(C)、p(G)、p(I)及びp(U)から成る群から選択されるssRNAである、パラグラフ2又は30に記載の方法。
37.ペプチド−エピトープはNPであり、dsRNAモチーフを同時投与することによりIL−2及びIFN−γを効果的に誘導することを更に含む、パラグラフ1に記載の方法。
38.APCはex vivoでロードされてMHCクラスI−ペプチド複合体を形成し、Tc応答を発生させる、パラグラフ1に記載の方法。
39.APCは養子移入によって患者に投与される、パラグラフ38に記載の方法。
40.MHCクラスI−ペプチド複合体の形成によって、IL−4を産生するがIFN−γは産生しないTc2細胞の分化が生じる、パラグラフ38に記載の方法。
41.RNAモチーフを投与して、IFN−γ産生Tc1細胞を含むようにT細胞プロファイルを広げる工程を更に含む、パラグラフ38に記載の方法。
【0010】
42.患者の免疫方法であって、Igバックボーン或いはその一部に結合した抗原の少なくとも一種のペプチドエピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによりIg−ペプチド分子を形成し、dsRNAモチーフと共にIg−ペプチド分子をin vivoで患者に投与することを含み、エピトープがMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、in vivoでの抗原への曝露に続くMHCクラスI拘束性T細胞の効果的二次増殖をもたらす、方法。
43.抗原はウィルスである、パラグラフ42に記載の方法。
44.ウィルスはインフルエンザウィルスである、パラグラフ43に記載の方法。
45.ペプチド−エピトープはrecIgG−NP(Kd)である、パラグラフ42に記載の方法。
46.dsRNAはpA:pUである、パラグラフ42に記載の方法。
47.T細胞は細胞障害性Tリンパ球である、パラグラフ42に記載の方法。
48.in vivoでの抗原への曝露に続くMHCクラスI拘束性T細胞の二次増殖は、組換え抗原を無菌生理食塩水にいれて投与しただけの場合よりも大きい、パラグラフ42に記載の方法。
【0011】
49.IgGバックボーン或いはその一部に結合した少なくとも一種の腫瘍関連T細胞エピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによってIgG−ペプチド分子を形成し、dsRNAと共にIg−ペプチド分子をin vivoで投与することによる、臨床診断後の腫瘍の制御及び処置方法。
50.MHC I経路により腫瘍関連T細胞エピトープが効果的にプロセシングされて提示され、その結果、抗原提示細胞上のMHCクラスI分子が効果的にロードされ、MHCクラスI−ペプチド複合体が生じる、パラグラフ49に記載の方法。
51.腫瘍関連T細胞エピトープに対する免疫応答と腫瘍拒絶を生じさせる、パラグラフ49に記載の方法。
52.dsRNAがpA:pUである、パラグラフ49、50又は51に記載の方法。
53.IgG−ペプチド複合体及びdsRNAは抗腫瘍治療として繰り返し投与される、パラグラフ49に記載の方法。
54.腫瘍拒絶に際し、Tc1免疫が腫瘍関連エピトープに対して生じる、パラグラフ49に記載の方法。
55.IgG−ペプチド及びdsRNAの投与に際し、Tc2免疫が腫瘍関連エピトープに対して生じる、パラグラフ49に記載の方法。
56.同種の腫瘍関連エピトープに対する有効な記憶応答を更に誘導する、パラグラフ49に記載の方法。
57.腫瘍細胞変異体に対する継続的な免疫(continued immunity)を生じさせる、パラグラフ49に記載の方法。
58.腫瘍関連T細胞エピトープは、メラノーマ−gp100、MART−1、TRP−2、癌胎児抗原前駆体XP064845/NCB1、Her−2、前立腺腫瘍抗原及びMUC1から成る群から選択される、パラグラフ49、50、51、52、53、54、55、56又は57に記載の方法。
【0012】
59.CH2領域に隣接するCH3領域を含み、ヒンジ領域により抗原がCH2領域に結合し、抗原はヒンジ領域に結合したオリゴ−グリシンリンカーを有する、APCのFcγRに結合可能な組換えヒトIg分子或いはその一部。
60.抗原は、そこから延長しリーダーへと続くフランキング配列を有する、パラグラフ59に記載の組換えヒトIg分子。
61.ヒトIg分子はIgG分子である、パラグラフ59に記載の組換えヒトIg分子。
62.抗原はウィルス抗原或いは腫瘍抗原である、パラグラフ59に記載の組換えヒトIg分子。
63.CH3領域のアミノ酸配列は、GQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK及びその保存的に修飾された変異体[配列番号1]である、パラグラフ59に記載の組換えヒトIg分子。
64.CH2領域のアミノ酸配列は、APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVFNKALPAPIEKTISKAK及びその保存的に修飾された変異体[配列番号2]である、パラグラフ59に記載の組換えヒトIg分子。
65.ヒンジ領域のアミノ酸配列は、EPKSCDKTHTCPPCP及びその保存的に修飾された変異体[配列番号3]である、パラグラフ59に記載の組換えヒトIg分子。
66.フランキング領域のアミノ酸配列は、QVQLQ及びその保存的に修飾された変異体[配列番号4]である、パラグラフ53に記載の組換えヒトIg分子。
【0013】
67.抗原に対する免疫応答を増強するための組成物であって、この組成物はポリヌクレオチドであり、このポリヌクレオチドは、アデニン、ウラシル、グアニン、シトシン及びイノシンから成る群から選択される化合物で構成されている、組成物。
68.上記ポリヌクレオチドはdsRNAである、パラグラフ67に記載の組成物。
69.上記dsRNAは、pA:pU及びpI:pCから成る群から選択される、パラグラフ68に記載の組成物。
70.dsRNAはpA:pUであり、アデニン及びウラシルの一部は、ポリヌクレオチド鎖に沿ってグアニン、シトシン或いはイノシンによって置換されることもある、パラグラフ69に記載の組成物。
71.抗原はウィルスである、パラグラフ69に記載の組成物。
72.抗原はイムノグロブリン或いはその一部に結合しており、in vivoで投与される、パラグラフ69に記載の組成物。
73.抗原はタンパク質或いはペプチドである、パラグラフ72に記載の組成物。
74.抗原は腫瘍関連エピトープである、パラグラフ67、68、69又は70に記載の組成物。
75.抗原はT細胞エピトープである、パラグラフ74に記載の組成物。
76.dsRNAは前記抗原と共に投与される、パラグラフ67、68、69又は70に記載の組成物。
77.ポリヌクレオチドはdsRNAであり、抗原と同時投与される、パラグラフ67に記載の組成物。
78.抗原は既に体内に存在している、パラグラフ67に記載の組成物。
79.抗原は医薬的に許容し得る担体に添加されて投与される、パラグラフ67に記載の組成物。
【0014】
80.患者の抗原に対する免疫応答を増強させるための医薬の製造におけるdsRNAの使用であって、前記dsRNAを前記抗原と共に患者に投与することを含む使用。
81.前記抗原のエピトープはイムノグロブリン或いはその一部で患者に輸送される、パラグラフ80に記載の使用。
82.dsRNAはpA:pUを含む、パラグラフ80又は81に記載の使用。
83.dsRNAはpI:pCを含む、パラグラフ80又は81に記載の使用。
84.dsRNAは、アデニン、シトシン、ウラシル、グアニン及びイノシンから成る群から選択される塩基から成る、パラグラフ81に記載の使用。
85.抗原に対するTh1及び/又はTc1応答が増強される、パラグラフ81、82又は83に記載の使用。
86.抗原に対するTc1細胞応答が誘導される、パラグラフ81、82又は83に記載の使用。
87.免疫応答は増強されたB細胞応答を含む、パラグラフ81、82又は83に記載の使用。
88.前記抗原は別の抗原と共に投与される、パラグラフ81、82又は83に記載の使用。
89.CXC及びCCケモカインの発現を誘導する、パラグラフ81、82又は83に記載の使用。
90.dsRNAの投与によりCD11b+単球が増加及び活性化して、T細胞応答或いはB細胞応答、又はT細胞応答及びB細胞応答の両方が増強される、パラグラフ81、82又は83に記載の使用。
91.dsRNAの投与により樹状細胞が増加及び活性化して、T細胞応答或いはB細胞応答、又はT細胞応答及びB細胞応答の両方が増強される、パラグラフ81、82又は83に記載の使用。
92.dsRNA組成物により抗原提示細胞が増加して免疫応答が増強される、パラグラフ81、82又は83に記載の使用。
93.抗原提示細胞はプロフェッショナル抗原提示細胞である、パラグラフ92に記載の使用。
94.抗原提示細胞はナイーブ抗原提示細胞である、パラグラフ92に記載の使用。
95.抗原は非感染性抗原であり、MHCクラスI拘束性T細胞はdsRNAによりクロスプライミングされる、パラグラフ81、82又は83に記載の使用。
96.組成物及び抗原は、粘膜投与、呼吸器投与、静脈内投与、皮下投与及び筋肉内投与から成る群から選択される一によって投与される、パラグラフ81、82又は83に記載の使用。
97.抗原はイムノグロブリン或いはその一部、或いはイムノグロブリンバックボーンで投与される、パラグラフ81に記載の使用。
98.抗原はペプチドエピトープである、パラグラフ97に記載の使用。
【0015】
99.患者における抗原に対する高域寛容を阻止する方法であって、前記抗原をdsRNA組成物と共に投与することを含み、dsRNA組成物は、ポリアデニン、ポリウラシル、ポリグアニン、ポリシトシン及びポリイノシンから成る群から選択される少なくとも一種の化合物を含む、方法。
100.抗原は非感染性である、パラグラフ99に記載の方法。
101.抗原は高用量で投与されるか、或いは既に体内に存在している、パラグラフ99に記載の方法。
102.dsRNAは、pA:pU及びpI:pCから成る群から選択される、パラグラフ99、100又は101に記載の方法。
103.B細胞の不応答が阻止される、パラグラフ99、100、101又は102に記載の方法。
【0016】
104.患者にdsRNAを投与することを含む、病原体に曝露された患者において免疫系を増強する方法。
105.dsRNAはpA:pU及びpI:pCから成る群から選択される、パラグラフ104に記載の方法。
106.dsRNAは100μg/mL〜1mg/mLの濃度で患者に投与される、パラグラフ104又は105に記載の方法。
107.病原体は未知である、パラグラフ104、105又は106に記載の方法。
108.dsRNAは医薬的に許容し得る担体に添加されて投与される、パラグラフ104、105、106又は107に記載の方法。
109.病原体に対するT細胞応答が増強される、パラグラフ104に記載の方法。
【0017】
110.患者における免疫応答の増強方法であって、Igバックボーンに結合した抗原の少なくとも一種のペプチドエピトープを用いて抗原提示細胞にロードすることによりIg−ペプチド複合体或いは分子を形成し、dsRNAモチーフと共にIg−ペプチド複合体或いは分子をin vivoで投与することを含み、エピトープが抗原提示細胞のMHC経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHC分子が効果的にロードされ、in vivoでの抗原への曝露に続くMHC分子の効果的二次増殖をもたらす、方法。
111.MHC経路はMHC I経路である、パラグラフ110に記載の方法。
112.MHC経路はMHC II経路である、パラグラフ110に記載の方法。
113.抗原提示細胞上のMHCクラスI分子の効果的なローディングをもたらす、パラグラフ111に記載の方法。
114.抗原提示細胞上のMHCクラスII分子の効果的なローディングをもたらす、パラグラフ112に記載の方法。
115.dsRNAはpA:pUである、パラグラフ110、111又は112に記載の方法。
116.MHCクラスI拘束性T細胞の二次増殖をもたらす、パラグラフ110、111又は113に記載の方法。
117.抗原はウィルスである、パラグラフ115に記載の方法。
118.ウィルスはインフルエンザウィルスである、パラグラフ117に記載の方法。
119.抗原は腫瘍関連エピトープである、パラグラフ115に記載の方法。
120.T細胞は細胞障害性Tリンパ球である、パラグラフ115に記載の方法。
【0018】
121.患者において抗原に対して免疫応答を発生させる方法であって、患者にイムノグロブリン或いはその一部を投与することを含み、前記イムノグロブリンは、前記イムノグロブリン或いはその一部に結合した前記抗原の少なくとも一種のペプチドエピトープを有し、前記イムノグロブリン或いはその一部はdsRNAセグメントと共に投与される、方法。
122.イムノグロブリン或いはその一部と前記dsRNAセグメントとは一緒に投与される、パラグラフ121に記載の方法。
123.イムノグロブリン或いはその一部と前記dsRNAセグメントとは別々に投与される、パラグラフ121に記載の方法。
124.前記患者はヒトである、パラグラフ121に記載の方法。
125.前記患者への前記イムノグロブリン或いはその一部の投与に際して、イムノグロブリン或いはその一部は、抗原提示細胞のFcγRとの結合により抗原提示細胞をロードし、前記ペプチドエピトープが抗原提示細胞のMHC I経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされる、パラグラフ121に記載の方法。
126.ペプチドエピトープは、イムノグロブリン或いはその一部のCDR領域内で結合している、パラグラフ121に記載の方法。
127.免疫応答によって、抗原に対する効果的なT細胞応答が発生する、パラグラフ121に記載の方法。
128.T細胞は細胞障害性Tリンパ球である、パラグラフ121に記載の方法。
129.dsRNAセグメントはpA:pU及びpI:pCから成る群から選択される、パラグラフ121に記載の方法。
130.ペプチドエピトープはT細胞エピトープである、パラグラフ121に記載の方法。
131.ペプチドエピトープは、インフルエンザウィルスM1或いはM2;C型肝炎ウィルスNS3;B型肝炎ウィルスコア抗原;ヒトパピローマウィルスHPV18−E7、HPV16−E7、HPV18E6、HPV16E6;メラノーマ−gp100;MART−1;TRP−2;癌胎児抗原前駆体;Her−2;破傷風毒素ユニバーサルTヘルパーエピトープ;HIV−1:逆転写酵素;HIV1:gag;インスリン前駆体−ヒト;ヒトGad65;前立腺腫瘍抗原;ムチン1;単純ヘルペス抗原;及び呼吸器合胞体ウィルス抗原から成る群から選択される、 パラグラフ121に記載の方法。
132.イムノグロブリン或いはその一部とdsRNAセグメントは、静脈内投与及び大量瞬時投与から成る群から選択される一方法によって投与される、パラグラフ121に記載の方法。
133.イムノグロブリン或いはその一部とdsRNAは医薬的に許容し得る担体に添加されて投与される、パラグラフ121に記載の方法。
134.ペプチドエピトープに対する有効な記憶応答を誘導する、パラグラフ121に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
定義:
次の定義は指針としての役割を意図したものであり、本明細書を通して現れる用語を何ら限定するものではない。
アジュバント−抗原に対する免疫応答の適応力(adaptive arm)を増強する物質。
養子移入−同種ハプロタイプの一動物から他動物への細胞集団の移入。
抗原−免疫系の適応要素(B細胞、T細胞、或いはその両方)によって特異的に認識され得る分子。
抗原提示細胞−高効率な免疫賦活能力を有する白血球異質集団。
BALB/Cマウス−広く流通しており、最もよく用いられる近交系マウス。
B細胞−骨髄で発生するリンパ球の一種。B細胞の各々は、特定の抗原に特異的な表面レセプターをコードする。特定の抗原を認識する際、B細胞は増殖して多量の抗体を産生し、一方、産生した抗体はB細胞を活性化する抗原へ結合する。
B細胞不応答−B細胞による抗原特異的応答の欠如。
CDR−相補性決定領域:イムノグロブリンにおける抗原結合部位を生じる超可変領域。3種類のCDR領域(CDR1、CDR2及びCDR3)がある。
ケモカイン−少なくとも25種類の小さなサイトカインからなる群であり、これらサイトカインは全てヘパリンに結合する。
完全フロイントアジュバント−ミコバクテリア細胞壁成分を含む水中油型エマルジョン。
クロスプライム−抗原提示細胞が感染組織から抗原を獲得した後、その抗原を同属T細胞に提示すること。
樹状細胞−抗原提示細胞のサブタイプの1種(即ち、CD11c+)。
ダウンレギュレーション−特定の化合物や作用の発現や活性を減少させること。
エピトープ−抗体或いはT細胞レセプターの抗原結合部位に接触する抗原の部分。
FcγR−細胞表面上のIgレセプターであり、3種類の認識群(FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16))がある。
ヘテロ二量体−2種類のタンパク質配列から成る二量体タンパク質。
高域寛容−特定の抗原に特異的な不応答状態であり、高濃度の前記抗原によるチャレンジの際に誘導される。
IL−2−インターロイキン2を意味する。
IL−4−インターロイキン4を意味する。
イムノグロブリン−全ての哺乳類の血清及び組織液に存在する糖タンパク質の群であり、B細胞の表面に位置し、血液やリンパ液中で自由に抗体として作用する。次の5種類のイムノグロブリンクラスが存在する。IgG(70〜75%)、IgM(10%)、IgA(15〜20%)、IgD(>1%)、及びIgE(全ての個体の好塩基球及びマスト細胞上に存在する)。IgGには4種類のヒトサブクラスがある(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)。
イムノグロブリンバックボーン−イムノグロブリン分子或いはその一部を意味し、少なくとも1個のCDR領域は挿入されたペプチドエピトープを受け取ることができる。
イムノグロブリンアイソタイプスイッチング−B細胞を刺激して、一イムノグロブリンアイソタイプから他イムノグロブリンアイソタイプへと産生を切り換えること。
不完全フロイントアジュバント−ミコバクテリア細胞壁成分を含まない水中油型エマルジョン。
自然免疫−自然免疫系は、抗原特異性を欠くが後天性免疫をガイドする能力を有する、広範で比較的に非特異的な宿主防御を提供する。自然免疫に関与する細胞種としては、樹状細胞やマクロファージがある。
腹腔内に−腹膜腔(peritoneal cavity)内に
静脈内に−脈管構造(vasculature)内に
アイソフォーム−タンパク質のグリコシル化やリン酸化、脱アミド、或いは他の翻訳後修飾による各種分子形。
ITAM−イムノレセプターチロシンベースの活性化モチーフ。
ITIM−イムノレセプターチロシンベースの抑制モチーフ。
マクロファージ−骨髄の単球幹細胞由来の単核活性食細胞。
MHC−主要組織適合性複合体を意味する。
修飾された免疫応答−増強或いは減少された免疫応答。
単球−リンパ節、脾臓、骨髄及び疎性結合組織に存在する単核白血球。
ナイーブ−非分化不活性化細胞。
ペプチド−ペプチド結合により互いに結合した2種以上のアミノ酸から成る化合物。
ポリヌクレオチド−ヌクレオチドのポリマー
プロフェッショナル抗原提示細胞−成熟しており、抗原エピトープを提示できる。
増加(recruitment)−細胞集団を炎症部位へ誘引すること。
二次増殖−特定の抗原への2回目以降の接触に引き続く免疫応答
自己抗原−宿主由来の抗原
皮下に−皮膚の下に
Tc1免疫−細胞障害性T細胞タイプ1、CD8+。
Th1細胞−細胞仲介炎症反応に関与するTヘルパー1細胞であり、IFNγ、TNFβ及びIL−2の産生により同定される。
Th2細胞−抗体の産生を促進するTヘルパー2細胞であり、IL−4及びIL−5の産生により同定される。
Th3細胞−Tヘルパー調節細胞であり、トランスフォーミング増殖因子(TGF)−βを産生することで知られる。
TR1細胞−T調節細胞であり、インターロイキン10を産生することで知られる。
アップレギュレーション−特定の化合物や作用の発現や活性を増強させること。
【0020】
材料及び方法
抗原提示細胞サブセットの選択的in vivoローディング用に、図1Aで概略的に示した化合物を用いた。(A)は天然IgG(L鎖−H鎖ヘテロ二量体)、(B)は抗原(Ag)由来ペプチドをCDR3、CDR2、CDR1或いは枠組み領域に挿入したもの、(C)はVHセグメントを抗原或いは断片で置換したもの、(D)はVHセグメントとCH1セグメントを抗原或いは抗原断片で置換したものを示す。この種の分子は、当該技術分野で知られた方法を用い、次に記載したように設計される。
【0021】
モデル組換えIgGの構築
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)突然変異誘発を用いて、VH鎖のCDR3領域を上述のエピトープで置換した。即ち、マウス抗アルソネート抗体(91A3)のVH遺伝子を保有する5.5kbのEcoRI断片を宿したpUC19プラスミドを2種類のPCRにおいて鋳型DNAとして用い、相補性決定領域3’(CDR3)ループの多様性セグメント(D)を除去し、各種抗原エピトープをコードするDNA断片を挿入した。次いで、EcoRIダンシル(dns)接合VH遺伝子を切り出したプラスミドpSV2ΔHgptDNSVH-hCγ1内で、これらキメラVH遺伝子と野生型VH遺伝子とをIgγ1のH鎖定常領域に結合した。VH及び挿入エプト−プの配列はDNA配列決定によって確認した。これらキメラIgGをマウス91A3VH−ヒトCγ1H鎖遺伝子及びマウス−ヒトキメラkL鎖遺伝子と共に発現させるために、マウス91A3κL鎖遺伝子全体をコードする8kbのBamHI断片をpUC19プラスミドのBamHI部位にサブクローニングした。次いで、κL鎖プロモーターとVκ領域コード配列とを有するHindIII断片をこのプラスミドから切り出し、dns接合Vk(dnsVk)を切除したヒトkL鎖C領域(Ck)をコードする遺伝子のpSV184ΔHneoDNSVk−hCk上流のHindIII部位にサブクローニングした。マウス91A3Vk−ヒトCkL鎖をコードするこのプラスミドを「pSV184Δhneo91A3Vk−hCk」と称する。
【0022】
ヒト組換えIgGの構築
ヒトIgGバックボーンは、RT−PCRによってIgGA1骨髄腫細胞株から得た。上述のエピトープを挿入することによって組換えヒトIgGをクローニングし、ヒトIgG1バックボーンのCDR2及びCDR3領域を置換した。即ち、PCR突然変異誘発によってT細胞エピトープを産生し、CDR2/CDR3領域にサブクローニングした。次いで、組換えH鎖をBamHI及びXbaI部位によってpMGベクター(インヴィヴォゲン社(Invivogen)、カリフォルニア州サンディエゴ)にサブクローニングした。H鎖の発現はhCMVプロモーターによって制御した。これと平行して、ヒトκL鎖をStuI及びNheI部位によってpMGベクターにサブクローニングした。L鎖の発現はEF−1α及びHTLV−1 LTRハイブリッドプロモーターによって制御した。次いで、組換えH鎖とL鎖の両方を保有する二重発現ベクターを発現細胞株にトランスフェクトした。
【0023】
Fc−ペプチドは、VH及びCH1断片を切断し、上述のウィルス抗原或いは腫瘍抗原(8〜150Aas)で置換することによって構築した。即ち、ヒトIgG1H鎖をEcoRI及びXhoI部位によってpCDNA3ベクターにサブクローニングした。次いで、PCR突然変異誘発によって、IgG1のリーダー配列とヒンジ領域との間に上述の抗原を挿入した。融合抗原の柔軟性(flexibility)を上げるために、オリゴ−グリシンリンカー(5グリシン)を抗原挿入後に添加した。ヒトIgG組換え分子の発現は、図1Bに示した戦略のいずれか一方を用いて行うことができる。
【0024】
ヒトIgGバックボーンは、FcγRへ結合する能力や各種状態における補体及びサイトカイン活性化に基づいて合理的に選択される。選択されたヒトIgGバックボーンの特性を図1Cに示し、H鎖の定常領域の配列及び予定構築物(prospective construct)の概略を図1Dに示す。
【0025】
モデル組換えIgGに用いたエピトープを図1Eに示す(マウスMHCクラスII拘束性HAエピトープ及びマウスMHCクラスI拘束性NPエピトープ)。組換え構築物の名称はrecIgG−エピトープ(HA或いはNP)−拘束エレメント(I−Ed或いはKd)である。即ち、IgHA或いはIgNPと称することができる。所定のマウス自己エピトープ(MBP或いはPLP由来)を含むモデル分子を同様に構築した。バックボーンとして用いた抗アルソネート抗体のH鎖の可変領域の配列を図1Eに示す。この構築技法は当該技術分野ではよく知られており(ザグホウアニ(Zaghouani)ら、Science 1993年1月 8;259(5092):224〜7)、この文献の内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0026】
図1E〜1Mには、バックボーンに挿入し得る(一以上のエピトープにまたがる最大150AAの大きな部分)或いは結合し得る抗原やエピトープ(ボールド体で示す)の例を示す。図示の抗原/エピトープを含むこのような構築物は、感染性疾患や腫瘍性疾患に対する医薬として用いることができる。図1Iには、HLA−A2アンカーモチーフを示す。このモチーフによって、潜在的に治療的な細胞障害性エピトープのタンパク質内での位置を予測することが可能となり、組換えイムノグロブリンに用いる抗原断片の選択が容易になる。
【0027】
図1Jには、「ユニバーサル」Tヘルパーエピトープ(クマー(Kumar)ら、J Immunol 1992年3月 1;148(5):1499〜505)の例を示す。このエピトープは、MHC拘束性の観点から優性且つ乱交雑(promiscuous)であり、MHCクラスI拘束性エピトープに対する免疫を誘導或いは増強する目的で、[抗原断片]−[ユニバーサルThエピトープ]−Fc(IgG)等の化合物を利用して複合分子を構築するために用いることができる。
【0028】
このような構築物の例を図1K(下段)に概略的に示す。
【0029】
図1Kの上段には、ボールド体で示すエピトープを有するヒト自己抗原の例を示す。この自己抗原は、自己免疫/炎症性障害に対する組換えIgG分子を発生させるために用いることができる。
【0030】
図1L及び1Mには、上述のイムノグロブリン構築物の構築に用いることのできる他の抗原配列を示す。所望の抗原断片は、MHCクラスIエピトープを予測する方法(リム(Lim)ら、Mol Immunol.1996年2月;33[2]:221〜30)を用いて規定することができる。
【0031】
組換えIgGの産生
SP2/0細胞株(American Type Culture Collection)を用いて、本特許出願に記載の組換えIgG(rIgG)全てを産生する。安定な発現細胞株(即ち、トランスフェクトーマ)は、抗ヒ酸塩マウスIgGのH鎖及びL鎖をコードするプラスミドを用いた二重トランスフェクションプロトコルを用いて産生した。各トランスフェクトーマはH鎖のCDR3領域の配列のみが異なっている。細胞株の増殖方法、及び本願に記載の実験に用いる各種精製rIgGの産生方法は全てのケースで同じである。
【0032】
SP2/0トランスフェクトーマは、先ず、5%(v/v)の熱不活化ウシ胎児血清、0.5mg/mMのゲンタマイシン及び2.5μg/mLのFugizoneを添加したQuantum Yield 培地(BDバイオサイエンス社)で増殖した。培養は加湿CO2インキュベータ内で37℃に維持して行った。各細胞株を市販の各種無血清培地(Lymphocyte Growth Media 2(クローンティクス社(Clonetics);Cell MAb Growth Media Serum Free(BDバイオサイエンス社;及びAnimal Component Free Cell Media(BDバイオサイエンス社))での増殖に適応させるよう努力した。各無血清培地を上述の抗生物質を添加した。分泌されたIgGを含む培養液を上述の各培地から産生した。この実験中(SDS−PAGEによる分子量解析(後述する)、ELISPOTアッセイ、及びマウスにおける免疫応答)、各培地で産生したIgG間に違いは見られなかった。
【0033】
分泌されたrIgG量はELISAを用いて測定した。捕獲抗体としてヤギ抗マウスIgG(シグマ社)、二次抗体として抗マウスIgG HRPコンジュゲート(シグマ社)を用いた。精製マウスIgG(シグマ社)を標準品として用いた。
【0034】
4種類の方法(フラスコ、撹拌容器、パックド・ベッド・バイオリアクター(ニュー・ブルンスウィック・セラゲン社(New Brunswick Cellagen)、CELLineフラスコ(BDバイオサイエンス社))を用いて、各種rIgGを含む培地(即ち、条件培地「CM」)を産生した。フラスコに産生したCMの場合、週に2回、細胞をフィード及び/又は回収し、生存度を少なくとも50%に維持したが、生存度は通常70%よりも高かった。回収した培地をろ過し4℃で維持した。撹拌容器(1L)の場合、200mLの開始量(starting volume)に106個/mLの細胞を播種した。トータル量が800mLに達するまで細胞数を107個〜106個/mLに維持するように培地を毎週添加した。この時点で細胞生存度を求め(通常80%より高かった)、生存度が50%より低くなるまで実験を継続した。次いで、培地を回収し、滅菌ろ過して細胞を除去し4℃で維持した。パックド・ベッド・バイオリアクターの場合、各ユニットにおいて400mLの培地に約108個の細胞を播種し、常に撹拌しながらCO2インキュベーター内で37℃で維持し、培地を3〜4日毎に変えてCMを上述のようにろ過し、CM中のrIgGの産生をELISAでモニターした。バイオリアクター実験は、rIgGの産生が低下し始めるか、或いは容器が汚染されるまで継続した。1LのCELLineフラスコは製造者の指示に従って用いた。各フラスコにおいて、細胞区画(cell compartment)ではトータル量40mLに107〜108個の細胞を播種し、1Lの培地をフィード区画(feed compartment)に添加し、2〜3週間後、或いは細胞の生存度が20%より低くなった時点で細胞区画からCMを回収した。
【0035】
rIgGの精製
上述の方法で産生したrIgGは2種類の方法の一方で精製した。FBSを含むCMの場合、抗マウスIgG免疫親和性樹脂を用いた。この免疫親和性樹脂は次のプロトコルを用いて合成した。10mLの臭化シアン活性化セファロース4B(シグマ社)を製造者の指示に従って1mMのHClで洗浄し、10〜20mgのヤギ抗マウスIgG(シグマ社)をカップリング緩衝液(0.1M 炭酸ナトリウム[pH8.4]/0.5M NaCl)に2mg/mLの濃度で溶解し、このIgG溶液を洗浄した樹脂に添加し、得られたスラリーを室温で回転させながら(end-over-end)混合し、カップリングの程度をBradfordアッセイを用いてモニターし、残存する可溶性IgGの量を求め、可溶性IgGの量が開始濃度の10%未満になった時点(約45分)でエタノールアミンを最終濃度が10mMとなるように添加することによりカップリングを終了させた。次いで、免疫親和性樹脂を次の緩衝液(PBS、10mM グリシン(pH2.4)、20mM Tris/1M NaCl(pH8.0)、PBS)で洗浄した。得られた樹脂をPBS中に4℃で保存した。rIgGをこの樹脂で精製するためのプロトコルは、CMをカラムに1〜2mL/分で通過させることによって開始した。次いで、この樹脂を非結合タンパク質が存在しなくなるように次のプロトコル(100mLのPBS/0.5M NaClで洗浄後、50mLの1mM Tris(pH8)で洗浄)を用いて洗浄した。Bradfordアッセイを用いて各画分のタンパク質をモニターした。特異的に結合したrIgGを低pH緩衝液(5mM グリシン(pH2.4)/0.5M NaCl)で溶出させた。溶出したタンパク質を回収し、4℃で維持して更なる処理(後述する)に備えた。
【0036】
無血清培地で産生したrIgGはプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。通常、5mLのrプロテインAカラム(HiTrap rProtein A FF、アマシャムファルマシアバイオテック社)をPBSで平衡化し、FPLCユニット(ファルマシア社)を用いてサンプルをカラムに2mL/分で通過させた。樹脂を非特異的結合タンパク質が存在しなくなるようにPBSで洗浄した後、20mM Tris(pH8.0)/1M NaClで洗浄し、次いで水で洗浄した。特異的に結合したrIgGを1mM グリシン(pH2.4)で溶出させた。溶出したピークを回収し、4℃で維持して更なる処理に備えた。
【0037】
一般に、各rIgG画分をプールし、Centricon限外ろ過ユニット(アミコン社)を用いて最終濃度が1〜4mg/mL(標準品としてIgGを用いたBradfordアッセイによる)となるまで濃縮した。次いで、濃縮した画分を1mM グリシン(pH2.4)に透析し、1mg/mLのIgG溶液に対し吸光係数1.4を用いたA280によって最終濃度を求め、100μLの画分に等分し、−80℃のフリーザーで保存した。精製したrIgGは、構造的完全性及び純度についてSDSゲル電気泳動により解析した。ゲルはクーマシーブルー(ピアースケミカル社(Pierce Chemical))で染色した。全ての場合において、上述の実験で用いたrIgGは、タンパク質標準品や対照IgGと比べて予想される分子量(分子量の低下及び非低下)を示した。一般に、精製したrIgGの純度は95%より高かったが、この純度は、染色されたバンドを目視検査し、同じゲル上で電気泳動させた濃度既知の対照IgGのバンドと比較することにより求めた。
【0038】
RNAセグメント
本発明の二本鎖RNA(dsRNA)或いは一本鎖RNA(ssRNA)セグメントは、次の方法に従って作成することができる(また、市販されている)。1)ssRNA:ポリヌクレオチド(ポリA、ポリU)は、ヌクレオチドとポリヌクレオチド−ホスホリラーゼを用い酵素的に調製されるが、調製プロセスには動物由来の材料は入らない。2)dsRNA:ポリアデニル酸(ポリA、即ちpA)をポリウリジル酸(ポリU、即ちpU)と共にアニールする。
【0039】
一般に、本発明のdsRNA及びssRNAはホモポリマーであり、dsRNAの場合は、単一の塩基或いはヌクレオチド(例えば、アデニン)が一本の鎖を一貫して形成し、その補体が他の鎖を一貫して形成する。ssRNAの場合、一本鎖は同一のヌクレオチドで一貫して形成される。しかし、混合ヌクレオチド(dsRNAの場合はその補体と共に或いは補体無しで)で構成されたdsRNA或いはssRNA組成物を使用することは、本発明の範囲内である。例えば、非相補的ヌクレオチド(グアニンやシトシン、イノシン等)によって置換されることもあるポリA:ポリU dsRNAセグメント。本発明のdsRNA及びssRNA組成物は、塩基/ヌクレオチドであるアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)、及びイノシン(I)を含み、また、DNA塩基であるチミン(T)を数パーセント含むこともある。表I及び図8AのRNA組成物は、実施例で用いられる各種RNA組成物を説明するものである。本発明のRNA組成物は、実施例30において調製され精製された。
【0040】
本発明で用いる各種RNA鎖は、一般に長さが100〜2000の塩基対であるが、1〜20、20〜40、40〜60、60〜80、80〜100、1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、800〜900、1000〜1100、1100〜1200、1200〜1300、1300〜1400、1400〜1500、1500〜1600、1600〜1700、1700〜1800、1800〜1900、1900〜2000、2000〜2100、2100〜2200、2300〜2400、2400〜2500、2500〜3000、3000〜4000、4000〜5000、5000〜10000の塩基対であってもよく、また長さが10000より長い塩基対及び/又はそれらの混合物であってもよい。
【実施例】
【0041】
実施例1では、T細胞エピトープを含むペプチドの活性を制限する重要な因子は、APCのin vivoローディングの減少をもたらす不十分な薬物動態(poor pharmacokinetics)であることを示す。
ナイーブBALB/cマウス一個体の脾臓組織から抗原提示細胞(APC)を得た。洗浄後、300万個のAPCを13.5nMのHA110−120ペプチドと共に1mLのHL−1培地中で37℃で3時間インキュベートした。得られた細胞を洗浄し、細胞接種物(inoculi)を3等分し、ナイーブBALB/cマウス三個体に注射投与した(半分は皮下投与で、もう半分は腹腔内投与)。2週間後、マウスを殺し、HA110−120ペプチドに対する免疫応答を次の通りELISPOT分析により測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで20μg/mLのHA110−120ペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。
【0042】
プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次いで、プレートを室温で24時間乾燥させた。データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)を用いて得た。これと並行して、ナイーブBALB/cマウス3個体の各々に、無菌PBSに溶解したHAペプチド(4.5nM)を注射投与した(半分は皮下投与で、もう半分は腹腔内投与)。2週間後、マウスを殺し、ELISPOT分析によってT細胞応答を上述のように特徴付けた。
【0043】
図2(A)には実験プロトコルを示す。図2(B)には、実験結果を、バックグラウンドを差し引いた後の脾臓1個当りのIFN−γ、IL−2及びIL−4スポット形成コロニー数として示した(平均±SEM)。「HA−APC」は養子移入前にex vivoでロードした抗原提示細胞(樹状細胞)を示す。また、「HA」はマウスに直接注射投与したペプチドを示す。
【0044】
図2A〜2Bに示した結果から、生理食塩水に溶解したペプチドエピトープの注射投与は免疫原性ではなかったが、APCのex vivoローディングに用いたペプチドの同様の投与によって、養子移入の際、相当の免疫応答が効果的に引き起こされたことが分かった。この結果は、ペプチドを直接注射投与した場合、APC(即ち、免疫応答を効果的に誘導するための必須条件)にはペプチドが効果的に到達しないことを示す。
【0045】
実施例2では、IgG内のペプチドエピトープの組み込み(incorporation)によってその薬物動態プロファイルが改善されたことを示す。
BALB/c Scidマウス(3匹/群)に60nMのSFERFEIFPKE(HA)[配列番号5]ペプチド或いは2.4nMのrecHA(I−Ed)−IgG(「Ig−HA」)を静脈内注射投与し、様々な間隔で血液を回収した。血清を即座に分離し、−70℃で急速に冷凍した。その後、血清サンプルを、2×104細胞/ウェル/50μLのHA特異的T細胞ハイブリドーマ(TcH)及び1×104細胞/ウェル/50μLのM12B細胞リンパ腫APCと共に、無血清HL−1培地中、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。翌日、プレートを15分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した後、上清をはじき飛ばし(flicked)、新しく作成した冷固定液(1×PBSにホルムアルデヒド2%とグルタルアルデヒド0.2%を溶解したもの)で細胞を固定し、プレートを再度、3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。固定液をプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞をPBS(200μL/ウェル)で1回洗浄し、プレートを3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。PBSをプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞を、次の通り新しく調製したX−gal基質(X−galをDMSOに溶解(40mg/mL)して得たX−gal保存液(200μL)を10mLの基質緩衝液(1×PBSに5mMのフォロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウム、及び2mMのMgCl2を溶解して調製)に溶解して調製)(200μL/ウェル)と共に37℃で一晩インキュベートした。青色の活性化したTcHを顕微鏡を用いて視覚的に記録した。
【0046】
TcHの活性化は注射投与後時間の関数として表わした。エピトープは、recHA(I−Ed)−IgGを注射投与したマウスの場合にのみ、約1日の間隔で血液中に検出された。これに対し、HAペプチドをそのまま注射投与した場合、大過剰モル濃度(25倍)で用いたにも拘らず、末梢では検出されなかった。
【0047】
このように、図3に示す結果から、Igバックボーン内でのエピトープの輸送は、体循環でのその安定性を非常に好むことが分かる。
【0048】
実施例3では、T細胞エピトープを含むペプチドは、血清の存在下でAPCによって特定のT細胞に効果的に提示されないこと、また、この現象がIgGバックボーン内のペプチドエピトープの組み込みによって矯正されることを示す。
図4(A)は、血清がT細胞エピトープペプチドの提示に及ぼす悪影響について示したものである。M12 B細胞リンパ腫APCを、無血清HL−1培地(「HA+HL−1」)或いはBALB/c scidマウス由来のマウス血清20%を添加したHL−1培地(「HA+血清」)中で、様々な量のSFERFEIFPKE(HA)ペプチドの存在下、TcHと共にインキュベートした。インキュベートした細胞の数は、血清添加HL−1培地或いは血清添加無しのHL−1培地100μL当り2×104M12及び1×104TcHであった。翌日、プレートを15分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した後、上清をはじき飛ばし(flicked)、新しく作成した冷固定液(1×PBSにホルムアルデヒド2%とグルタルアルデヒド0.2%を溶解したもの)で細胞を固定し、プレートを再度、3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。固定液をプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞をPBS(200μL/ウェル)で1回洗浄し、プレートを3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。PBSをプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞を、次の通り新しく調製したX−gal基質(X−galをDMSOに溶解(40mg/mL)して得たX−gal保存液(200μL)を10mLの基質緩衝液(1×PBSに5mMのフォロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウム、及び2mMのMgCl2を溶解して調製)に溶解して調製)(200μL/ウェル)と共に37℃で一晩インキュベートした。青色の活性化したTcHを顕微鏡を用いて視覚的に記録した。
【0049】
血清は、免疫原性MHC−ペプチド複合体の形成及び/又は提示に対し負の干渉を示した。
【0050】
図4B:血清は、免疫原性MHC−ペプチド複合体の形成及び/又は提示に対し負の干渉を示した。
【0051】
この現象は、先ず、ペプチド(HAペプチド)或いはrecHA(I−Ed)−IgG(「IgHA」)をAPC或いは血清と共に逐次的にインキュベートし、1時間後に、TcHと血清、或いはAPCとTcHを添加することによって更に検討した。血清を添加せずに抗原と共にインキュベートした細胞を対照とする(Ctrl)。インキュベートした細胞の数は、血清添加HL−1培地或いは血清添加無しのHL−1培地100μL当り2×104M12及び1×104TcHであった。翌日、プレートを15分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した後、上清をはじき飛ばし(flicked)、新しく作成した冷固定液(1×PBSにホルムアルデヒド2%とグルタルアルデヒド0.2%を溶解したもの)で細胞を固定し、プレートを再度、3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。固定液をプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞をPBS(200μL/ウェル)で1回洗浄し、プレートを3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。PBSをプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞を、次の通り新しく調製したX−gal基質(X−galをDMSOに溶解(40mg/mL)して得たX−gal保存液(200μL)を10mLの基質緩衝液(1×PBSに5mMのフォロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウム、及び2mMのMgCl2を溶解して調製)に溶解して調製)(200μL/ウェル)と共に37℃で一晩インキュベートした。青色の活性化したTcHを顕微鏡を用いて視覚的に記録した。
【0052】
結果は、recHA(I−Ed)−IgG(「IgHA」)(2μg/mL)或いはHAペプチド(40μg/mL)(組換えIgに対して1000モル過剰)の濃度における活性化T細胞(β−gal+TcH)/ウェルの百分率で示した。
【0053】
図4に示した結果から、ペプチドを血清と共にプリインキュベートすることによってTcH活性化が低下することが分かる。APCパルシング後の血清の添加はTcH活性化に影響を及ぼさなかった。一方、MHC−ペプチド複合体の形成は、ペプチドを単独で用いる代わりにペプチドを保有する組換えイムノグロブリンを用いた場合、血清によって妨害されなかった。
【0054】
実施例4では、IgGバックボーン内のT細胞ペプチドエピトープの組み込みによってAPCによるエピトープの特定のT細胞への提示が改善され、その割合はAPCの特性に依存することを示す。
図5Aに示すように、脾臓由来の抗原提示細胞(APC)上でのMHC−ペプチド複合体のex vivo形成は次の通りに測定した。抗MHCII抗体を用いた磁気選別(magnetic sorting)により脾臓APCを単離した。抗MHCII抗体に結合した磁気ビーズを用いた分離は、磁気細胞セパレータ及びミルテニイバイオテック社(ドイツ)から入手した試薬を用い、次の通り行った。脾臓を処理して単一細胞浮遊液を調製し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、MACS緩衝液(2mMのEDTAと0.5%のBSAを添加したPBS)に再懸濁した。磁気標識された細胞を、MACSセパレータの磁場に設置した分離カラムに通した。磁気標識されたポジティブ画分はカラム内に保持されるが、ネガティブ画分はカラムを通過する。カラムを磁場から移動させた後、磁気的に保持されたポジティブ細胞をカラムから溶出させ、細胞を洗浄、計数後、HL1完全培地に再懸濁し、様々な量のSFERFEIFPKE(HA)ペプチド或いはrecHA(I−Ed)−IgG(「IgHA」)の存在下、I−Ed+SFERFEIFPKEを認識する特定のT細胞ハイブリドーマと共に、一晩インキュベートした。ウェル1個当り、2×104個のAPCを1×104個のTcHと共にインキュベートした。翌日、プレートを15分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した後、上清をはじき飛ばし(flicked)、新しく作成した冷固定液(1×PBSにホルムアルデヒド2%とグルタルアルデヒド0.2%を溶解したもの)で細胞を固定し、プレートを再度、3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。固定液をプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞をPBS(200μL/ウェル)で1回洗浄し、プレートを3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。PBSをプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞を、次の通り新しく調製したX−gal基質(X−galをDMSOに溶解(40mg/mL)して得たX−gal保存液(200μL)を10mLの基質緩衝液(1×PBSに5mMのフォロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウム、及び2mMのMgCl2を溶解して調製)に溶解して調製)(200μL/ウェル)と共に37℃で一晩インキュベートした。青色の活性化したTcHを顕微鏡を用いて視覚的に記録した。活性化したTcHの数を測定し、結果をエピトープのモル量に対する活性化として示した。
【0055】
(B)上述同様のプロトコルをM12B細胞リンパ腫APCに適用した。
図5Bに示す結果から、MHC−ペプチド複合体形成の相対効率は、抗原及びAPCの性質によって大幅に変化することが分かる。モル基準で見ると、IgGバックボーン内のペプチドエピトープは、遊離ペプチド自身と比べて、リンパ器官由来のMHCII+APCによって10倍効果的に処理され、形質転換B細胞リンパ腫細胞によって1000倍効果的に処理される。このように、エピトープの細胞ハンドリングとIgG内輸送に引き続くMHC−ペプチド複合体の形成とは、APCの性質によって大幅に変化する。
【0056】
実施例5では、T細胞エピトープ含有ペプチドのFcγR仲介輸送によって、より効果的な細胞ハンドリングと含有プロフェッショナルAPC数が少ない細胞集団(末梢白血球)による提示とがもたらされることを示す。
(A)APCを定量化するため、末梢血単核細胞(PBMC)をフィコール勾配遠沈によりBALB/cマウスから分離し、CD11c、CD11b及びB220発現用FACS分析を行った。結果を、血液中及びプロトタイプ二次リンパ器官(脾臓)内のAPCとT細胞の百分率として図6Aに示す。プロフェッショナルAPC(CD11c+細胞等)の数は、脾臓と比べて血液中では大幅に(2log)減少している。B220+細胞及びCD11b+細胞も同様に(1桁(1 order of magnitude))減少した。次の材料及び方法を用いた。
【0057】
材料:
フィコール:フィコール−ハイパーク(Ficoll-hypaque)(1.077、アマシャム社、カタログ番号17−1440−02)
抗体:CD11b(カタログ番号01715A)、CD11c(カタログ番号557401)、B220(カタログ番号01125A)、全てPEコンジュゲート(BDファーミンジェン社)
フローサイトメータ:FACSCalibur(ベクトンディッキンソン社)
FACS緩衝液:PBS、1%FCS、0.1%アジ化ナトリウム
【0058】
方法:
1.動物の血液を回収し、単核細胞をフィコール勾配遠沈により分離した。
2.細胞を懸濁させ、蛍光タグ化抗マウスCD−11c、CD11b或いはB220(2μg/mL)で20分間、氷上で標識した。
3.細胞を1回洗浄し、300μLのFACS緩衝液に再懸濁させた。
4.フローサイトメトリー分析を行い、各特定抗体で標識した全細胞集団の画分を測定した。
【0059】
(B)PBMCをAPCとしてSFERFEIFPKE(HA)特異的TcHと共に、同族ペプチド或いはrecHA(I−Ed)−IgGの存在下で用いた。細胞を24時間同時インキュベートした(2×104個のAPC+1×104個のTcH)。翌日、プレートを15分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した後、上清をはじき飛ばし(flicked)、新しく作成した冷固定液(1×PBSにホルムアルデヒド2%とグルタルアルデヒド0.2%を溶解したもの)で細胞を固定し、プレートを再度、3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。固定液をプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞をPBS(200μL/ウェル)で1回洗浄し、プレートを3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。PBSをプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞を、次の通り新しく調製したX−gal基質(X−galをDMSOに溶解(40mg/mL)して得たX−gal保存液(200μL)を10mLの基質緩衝液(1×PBSに5mMのフォロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウム、及び2mMのMgCl2を溶解して調製)に溶解して調製)(200μL/ウェル)と共に37℃で一晩インキュベートした。青色の活性化したTcHを顕微鏡を用いて視覚的に記録した。結果は、様々なモル濃度のエピトープにおける、ウェル1個当りの活性化したTcH数として示す。
【0060】
図6A〜6Bに示す結果から、血液由来APCによる処理の際にTcH活性化を誘導する上で、IgGバックボーン内のペプチドエピトープは、ペプチド単独よりもモル基準で(1桁)効果的であったことが分かるが、この結果から、プロフェッショナルAPCの数が制限された次善最適条件(suboptimal conditions)下では、IgバックボーンがMHC−ペプチド複合体の形成を大幅に促進することが示唆される。
【0061】
実施例6では、IgGバックボーン内でのT細胞エピトープ輸送は、中枢リンパ器官内ではなく二次リンパ器官(流入リンパ節及び脾臓)内でのAPCによるエピトープのローディング及び提示を劇的に改善することを示す。ペプチドエピトープのIFAへの乳化或いは用量を100倍増加させることによっては、同程度のローディングを再現することができなかった。このように、IgGバックボーン内へのエピトープ挿入によって、用量増加或いは蓄積効果(depot effect)によって補償できないような、ペプチドベース戦略に関連する限定因子が排除される。
MHC−ペプチド複合体のin vivoでの形成の評価、及び生理食塩水或いは標準水中油型エマルジョン内でのペプチドとの比較は、I−Ed+BALB/cマウスにて行った。BALB/cマウスは、recHA(I−Ed)−IgG、生理食塩水に溶解したペプチド、或いは不完全フロイントアジュバント(IFA)に乳化したペプチドを皮下注射及び腹腔内注射投与(用量は図7Bに示す)することによって処理した。投与24時間後、局所(腸間膜)リンパ節(LN)、脾臓及び胸腺を回収し、単一細胞浮遊液を作成し、脾臓、LN及び胸腺から溶解した赤血球をコラゲナーゼ消化した。全ての細胞を洗浄、計数後、I−Ed+SFERFEIFPKE(MHCクラスII−HA)複合体を認識するTcHと共にインキュベートした。TcHの数は1×104個/ウェルであった。このようなMHC−ペプチド複合体の形成は、一定数のTcHでAPCの数を滴定し、インキュベーションを一晩行った後にTcH活性化を測定することによって評価した。翌日、プレートを15分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した後、上清をはじき飛ばし(flicked)、新しく作成した冷固定液(1×PBSにホルムアルデヒド2%とグルタルアルデヒド0.2%を溶解したもの)で細胞を固定し、プレートを再度、3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。固定液をプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞をPBS(200μL/ウェル)で1回洗浄し、プレートを3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。PBSをプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞を、次の通り新しく調製したX−gal基質(X−galをDMSOに溶解(40mg/mL)して得たX−gal保存液(200μL)を10mLの基質緩衝液(1×PBSに5mMのフォロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウム、及び2mMのMgCl2を溶解して調製)に溶解して調製)(200μL/ウェル)と共に37℃で一晩インキュベートした。青色の活性化したTcHを顕微鏡を用いて視覚的に記録した。
【0062】
データは、実施例5及び6で上述するように得たin vitro標準曲線に基づき、APC数に対するTcH活性化として示し(図7A)、また、MHC−ペプチド複合体を発現するAPCの推定百分率として示す(図7B)。
【0063】
図7A〜7Bに示すデータから、水中油型アジュバント(IFA)を用いることにより、脾臓や胸腺ではなくリンパ節のAPC上でのMHC−ペプチド複合体のin vivo形成が適度に増強されたことが分かる。生理食塩水或いはエマルジョンに溶解したペプチドの実質的な用量増加は、ロードされたAPC及び/又はin vivoでAPC上に生成するMHC−ペプチド複合体の増加とは比例しない。一方、Igバックボーン内でペプチドを用いることにより、二次リンパ器官(リンパ節や脾臓等)由来のAPC上でのMHC−ペプチド複合体の形成は大幅に増強する。胸腺由来のAPC上でのMHCII−ペプチド複合体の形成は制限されたままであり、これは、ペプチドを単独で用いた場合と同様である。ペプチドをIgG内に組み込むことによって得られる増強因子は予想外に高かった(約2〜3桁)が、これは、細胞ハンドリング(例えば、上述の薬物動態や防御作用)以外の他の因子が関与したことを示す。ペプチドを単独で生理食塩水やIFAに溶解して用いた場合、用量を100倍に増加させても、IgGバックボーン内のペプチドによる上述のAPCのin vivoローディングを回復させることができなかった。
【0064】
実施例7では、FcγRを発現する3種類の主要APCサブセット(DC、単球/マクロファージ、及びB細胞)の内、B細胞ではなく、CD11c+(DC)とCD11b+(大部分が単球)とが、IgGバックボーンによるin vivo輸送後のペプチドエピトープの提示において細胞1個基準で最も強力であることを示す。APCローディングとその結果もたらされる提示の効率は、遊離ペプチドの輸送によってもたらされる効率より実質的に高い。
APC上でのMHC−ペプチド複合体のin vivo形成の評価は、IgGバックボーン内のペプチドエピトープの投与に引き続き、各種APCサブセットを分離した後に行った。
【0065】
(A)抗MHCII mAb或いは抗CD11c mAbと結合した磁気ビーズを用いた分離は、磁気細胞セパレータ及びミルテニイバイオテック社(ドイツ)から入手した試薬を用い、次の通り行った。脾臓を処理して単一細胞浮遊液を調製し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、MACS緩衝液(2mMのEDTAと0.5%のBSAを添加したPBS)に再懸濁した。磁気標識された細胞を、MACSセパレータの磁場に設置した分離カラムに通した。磁気標識されたポジティブ画分はカラム内に保持されるが、ネガティブ画分はカラムを通過する。カラムを磁場から移動させた後、磁気的に保持されたポジティブ細胞をカラムから溶出させ、細胞を洗浄、計数後、HL1完全培地に再懸濁し、ELISPOTプレート内でインキュベートした。通常、BALB/cマウス一個体から分離される総数約9000万個の脾細胞の内、約2000万個の脾細胞が抗MHCII抗体に結合した磁気ビーズと結合し、300万個の脾細胞が抗CD11c mAbと相互作用する。このように、MHCクラスII拘束性エピトープを提示することのできる脾細胞は20パーセント未満であり、約2〜3パーセントは樹状細胞である(図8A参照)。これらの数値は特定の抗体を用いたFACS分析によって確認した。
【0066】
(B)APCのin vivoローディングとMHCII+脾細胞上でのMHCII−ペプチド複合体の形成は、0.72μMのrecHA(I−Ed)−IgG(「IgHA」)或いは18μMのHAペプチドを静脈内注射投与したBalb/cマウスにおいて比較的に評価した。投与24時間後、上述のようなMACSにより脾臓からMHCクラスII+APCを単離し、ペプチド特異的TcH(1×104個/ウェル)と共に、用量反応的にインキュベートした。翌日、プレートを15分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した後、上清をはじき飛ばし(flicked)、新しく作成した冷固定液(1×PBSにホルムアルデヒド2%とグルタルアルデヒド0.2%を溶解したもの)で細胞を固定し、プレートを再度、3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。固定液をプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞をPBS(200μL/ウェル)で1回洗浄し、プレートを3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。PBSをプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞を、次の通り新しく調製したX−gal基質(X−galをDMSOに溶解(40mg/mL)して得たX−gal保存液(200μL)を10mLの基質緩衝液(1×PBSに5mMのフォロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウム、及び2mMのMgCl2を溶解して調製)に溶解して調製)(200μL/ウェル)と共に37℃で一晩インキュベートした。青色の活性化したTcHを顕微鏡を用いて視覚的に記録した。
【0067】
結果は、ウェル1個当りの活性化TcHの数として図8Bに示す。対照として、ナイーブBALB/cマウス由来のMHCII+APCをin vitroで一晩、最適濃度のHAペプチド(50μg/mL)と共にインキュベートし、何度も洗浄し、細胞個数を変えて上述のようにTcHと共にインキュベートした。得られた結果から、エピトープをIgGバックボーン内で輸送すると、脾臓APC上でのMHCII−ペプチド複合体の形成が少なくとも2桁、より効果的になることが分かる。
【0068】
(C)recHA(I−Ed)−IgG投与後の各種APCサブセットのin vivoローディングの比較的評価は、ミルテニイバイオテック社から入手したCD11c、CD11b及びCD19マイクロビーズを用いた、上述同様のプロトコルによるCD11c+、CD11b+及びCD19+APCの磁気分離によって行った。組換えイムノグロブリン(0.72μM)の静脈内投与24時間後、APCを単離し、一定数のペプチド特異的TcHと共に用量作用的に(in a dose effect manner)インキュベートした。更に24時間後、上述のようにアッセイを行い、結果はウェル1個当りの活性化TcH数として表した。図8Cに示す結果から、細胞1個基準で見ると、IgGバックボーン内でペプチドを用いることによって、CD11c+APC(樹状細胞)上での免疫原性MHCII−ペプチド複合体の顕著な形成と、それに続くCD11b+単球上での複合体形成がもたらされるが、CD19+B細胞上での複合体形成への効果は非常に低いことが分かる。
【0069】
(D)ペプチド輸送後のCD11c+APC上でのMHCII−ペプチド複合体のin vivo形成効率と組換えIg輸送後のその効率との比較を、セクションBで上述したようにマウスを処置した後に行った。CD11c+脾臓DCを、CD11cマイクロビーズを用いたMACSにより単離し、細胞個数を変えて1×104TcH/ウェルと共にインキュベートした。活性化したTcHは上述のように定量化し、結果はウェル1個当りのX−gal+T細胞の数で表した。対照として、ペプチドによりex vivoでロードしたナイーブマウス由来のCD11c+APCをセクションBに示したように用いた。図8Dに示す結果から、ペプチドエピトープをIgGバックボーン内で輸送すると、MHCII−ペプチド複合体の形成が少なくとも3桁、より効果的になったことが分かる。
【0070】
結論として、IgGバックボーン内でのペプチドエピトープの輸送によって、CD11c+DC上でのより効果的なMHCII−ペプチド複合体の形成がもたらされた。また、APCローディング及びMHCII−ペプチド複合体形成の効率は、ペプチドをIgGバックボーン内で輸送した場合、実質的に高かった。図8A〜8Dに示す結果から、ペプチドのFcgR仲介輸送を用いることによって、CD11c+APC及びCD11b+APC上での免疫原性MHCII−ペプチド複合体の優先的な形成がもたらされることが分かる。
【0071】
実施例8では、IgGバックボーンによる投与後、APC(DC及び単球)上でMHC−ペプチド複合体がin vivoで長期間存続することを示す。
特定のAPCサブセット上でのMHCII−ペプチド複合体の存続は、2μMのrecHA(I−Ed)−IgGを静脈内注射投与後、様々な間隔でCD11c+DC及びCD11b+単球を磁気分離することによって測定した。即ち、磁気分離は、磁気細胞セパレータ及びミルテニイバイオテック社(ドイツ)から入手した試薬を用い、次の通り行った。脾臓を処理して単一細胞浮遊液を調製し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、MACS緩衝液(2mMのEDTAと0.5%のBSAを添加したPBS)に再懸濁した。磁気標識された細胞を、MACSセパレータの磁場に設置した分離カラムに通した。磁気標識されたポジティブ画分はカラム内に保持されるが、ネガティブ画分はカラムを通過する。カラムを磁場から移動させた後、磁気的に保持されたポジティブ細胞をカラムから溶出させ、細胞を洗浄、計数後、HL1完全培地に再懸濁し、インキュベートした。様々な個数の分離APC(A−CD11b+単球、B−CD11c+樹状細胞、C−全脾細胞集団)を、HAペプチドに特異的なTcH(1×104個)と共に一晩インキュベートした。
【0072】
対照(ctrl)として、ナイーブマウス由来のAPCを用いたが、このAPCは最適量のHAペプチド(50μg/mL)によりin vitroで一晩ロードし、洗浄した後にインキュベートした。翌日、プレートを15分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した後、上清をはじき飛ばし(flicked)、新しく作成した冷固定液(1×PBSにホルムアルデヒド2%とグルタルアルデヒド0.2%を溶解したもの)で細胞を固定し、プレートを再度、3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。固定液をプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞をPBS(200μL/ウェル)で1回洗浄し、プレートを3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。PBSをプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞を、次の通り新しく調製したX−gal基質(X−galをDMSOに溶解(40mg/mL)して得たX−gal保存液(200μL)を10mLの基質緩衝液(1×PBSに5mMのフォロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウム、及び2mMのMgCl2を溶解して調製)に溶解して調製)(200μL/ウェル)と共に37℃で一晩インキュベートした。青色の活性化したTcHを顕微鏡を用いて視覚的に記録し、処置後様々な間隔で回収したAPCの数に対し、ウェル1個当りの活性化TcHの数をプロットした。
【0073】
得られた結果から、DC及び単球上で、内因性MHCIIへのペプチドの発現が長時間持続することが分かる。上述の複合体は、このアッセイ(APC分離の戦略及びMHCII−ペプチドの検出)に用いた条件下、これら2種類のAPCサブセット上で1〜2週間存続した。
【0074】
図9A〜9Cに示す結果から、Igによるエピトープのin vivo輸送後に、選択されたAPC上に形成されたMHC−ペプチド複合体は、寿命が長いことが分かる。
【0075】
実施例9では、Fcレセプター(I及びIII)のγ鎖は、DC及び単球によるIgGバックボーン内に輸送されたT細胞エピトープの効果的なin vivoローディング及び提示に必須であることを示す。
APCローディングのFcγRとの相互作用に対する依存性については、機能性FcRγ遺伝子を欠いたBALB/cマウスに2μMのrecHA(I−Ed)−IgGを投与することによって検討した。静脈内処置1日後、MACSによって脾臓からCD11c+APC及びCD11b+APCを分離した。抗CD11c抗体及び抗CD11b抗体と結合した磁気ビーズを用いた分離は、磁気細胞セパレータ及びミルテニイバイオテック社(ドイツ)から入手した試薬を用い、次の通り行った。脾臓を処理して単一細胞浮遊液を調製し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、MACS緩衝液(2mMのEDTAと0.5%のBSAを添加したPBS)に再懸濁した。磁気標識された細胞を、MACSセパレータの磁場に設置した分離カラムに通した。磁気標識されたポジティブ画分はカラム内に保持されるが、ネガティブ画分はカラムを通過する。カラムを磁場から移動させた後、磁気的に保持されたポジティブ細胞をカラムから溶出させ、細胞を洗浄、計数後、HL1完全培地に再懸濁し、様々な個数の細胞を、HAペプチドに特異的なTcH(1×104個)と共に一晩インキュベートした。対照として、FcRγ適格性BALB/cマウス由来のAPCを用いた。翌日、プレートを15分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した後、上清をはじき飛ばし(flicked)、新しく作成した冷固定液(1×PBSにホルムアルデヒド2%とグルタルアルデヒド0.2%を溶解したもの)で細胞を固定し、プレートを再度、3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。固定液をプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞をPBS(200μL/ウェル)で1回洗浄し、プレートを3分/4℃/1500RPMの条件で遠沈した。PBSをプレートからはじき飛ばし(flicked off)、細胞を、次の通り新しく調製したX−gal基質(X−galをDMSOに溶解(40mg/mL)して得たX−gal保存液(200μL)を10mLの基質緩衝液(1×PBSに5mMのフォロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウム、及び2mMのMgCl2を溶解して調製)に溶解して調製)(200μL/ウェル)と共に37℃で一晩インキュベートした。青色の活性化したTcHを顕微鏡を用いて視覚的に記録した。結果は、各種APCサブセット(CD11c+DC(A)或いはCD11b+単球(B))或いは対照(全脾細胞集団(C))に対する、ウェル1個当りの活性化TcHの数として表す。
【0076】
図10に示す結果から明らかなように、ペプチドエピトープのIgG仲介輸送後のDCや単球上でのMHCII−ペプチド複合体の形成は、γ鎖を含むITAM+FcgRに大きく依存している。また、その点で、γ鎖陰性FcRアイソフォームは、γ鎖+FcRアイソフォームの欠如を補償できない。
【0077】
実施例10では、IgGバックボーン内で輸送されたペプチドによるT細胞活性化の効率は、APC上での(活性を促進する)γ鎖+FcγR及び(活性を制限する)FcγRIIBの発現に依存することを示す。また、本実験では、ITIM保有FcγRIIBが、IgGバックボーン内で輸送されたペプチドに対する免疫応答を抑制する(keeps in check)ことを示す。
IgGバックボーン内でペプチドエピトープによって引き起こされる免疫応答に対するFcRγ+アイソフォームとFcRγ−アイソフォームの役割の差について、APCのex vivoローディングとそれに引き続く養子移入とによって検討した。野生型BALB/cマウス、FcRγ−BALB/cマウス、或いはFcRIIB−BALB/cマウス由来の脾細胞を次の通り370℃で3時間インキュベートした。1000万個の細胞/1mLの無血清HL−1培地を、50μg/mLのHA110−120ペプチド或いは10μg/mLのrecHA(I−Ed)−IgGと混合した。次に、細胞を洗浄し、ナイーブBALB/cマウスに養子移入した(100万個の細胞を200μLの無血清HL−1に懸濁させ、接種物を2等分し、皮下投与及び腹腔内投与を行った)。2週間後、レシピエントマウスを殺し、脾臓を回収し、HA110−120ペプチドに対するT細胞応答を次の通りELISPOT分析により測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで50μg/mLのHA110−120ペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。
【0078】
プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。
【0079】
翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、培地のみでインキュベート、或いはHA110−120ペプチド(10μg/mL)を添加した培地と共にインキュベートして得たサイトカイン産生(A:IL−2、B:IL−4、及びC:IFN−γ)スポット形成コロニーの頻度として、図11に示す(三連のデータの平均+SEM、3マウス/群に相当)。
【0080】
図11に示す結果から、ITAM+FcgRアイソフォームのγ鎖の発現は、IgGバックボーン内でペプチドによりロードされたAPCに対するT細胞応答の誘導に必要であることが分かる。しかし、この発現は、ペプチドでパルシングされたAPCの免疫原性作用には必要なかった。逆に、ITIM+FcgRIIの欠如によって、HAペプチドではなく組換えIgGによってパルシングされたAPCに対するT細胞応答の著しい増強がもたらされる。総合すると、これらのデータから、ペプチドエピトープを保有する組換えIgGに対するT細胞応答は、APC上のITAM+FcγレセプターとITIM+Fcγレセプターとの複雑な相互作用によって決まることが分かる。
【0081】
実施例11では、意外にも、IgGバックボーン内に挿入されたエピトープでin vivoロードしたAPCの各サブセットは、それぞれ別個の調節サブセットを誘導すること、即ち、単球がTh2及びTr1細胞をより効果的に誘導する一方、樹状細胞と単球の双方はTh3細胞を誘導することを示す。また、細胞集団レベルでは、CD11b+単球は、T細胞エピトープのIgG仲介輸送後の調節応答を引き起こす上で樹状細胞よりも強力である。
BALB/cマウス4個体に対し、2μMのrecHA(I−Ed)−IgGを静脈内注射投与した。1日後、脾臓を回収し、磁気ビーズに結合した抗CD11c、抗CD11b或いは抗CD19モノクローナル抗体を用いたMACSによってAPCを単離した。抗CD11b、抗CD11c或いは抗CD19mAbに結合した磁気ビーズを用いた分離は、磁気細胞セパレータ及びミルテニイバイオテック社(ドイツ)から入手した試薬を用い、次の通り行った。脾臓を処理して単一細胞浮遊液を調製し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、MACS緩衝液(2mMのEDTAと0.5%のBSAを添加したPBS)に再懸濁した。磁気標識された細胞を、MACSセパレータの磁場に設置した分離カラムに通した。磁気標識されたポジティブ画分はカラム内に保持されるが、ネガティブ画分はカラムを通過する。カラムを磁場から移動させた後、磁気的に保持されたポジティブ細胞をカラムから溶出させ、細胞を洗浄、計数後、無血清HL−1培地に次のように再懸濁した(3×106/mLのCD11c+DC、28×106/mLのCD11b+、或いは84×106/mLのCD19+B細胞)。この数値分布は、脾臓組織から単離した各APCサブセットの比率と関係する。細胞を皮下注射及び腹腔内注射投与によってナイーブBALB/cマウスに移入した(100+100μL/マウス、n=2マウス/群)。養子移入2週間後、マウスを殺し、T細胞応答をELISPOT(IL−4及びIFN−γ)で測定し、或いは、細胞培養上清中のサイトカイン産生をELISA TGF−β1キット(R&Dシステム社、カタログ番号DY240)及びIL−10キット(バイオソースインターナショナル社、カタログ番号KMC0104)によって測定した。
【0082】
結果は、再刺激に用いたHAペプチドの様々な濃度における、脾臓1個当りのスポット形成コロニー数(二連のデータの平均;パネルA、B)として、或いは上清中で測定したサイトカイン量(pg/mL、二連のデータの平均;パネルC、D)として図12に示す。
【0083】
得られた結果(図12、パネルA〜D)から明らかなように、予想外に、且つ効力/細胞基準(実施例8)とは対照的に、生体レベルにおいては、CD11b+単球の場合、IgGバックボーン内で輸送されたペプチドエピトープに対する免疫応答への影響が最も強い。このように、CD11b+APCサブセットはTh2、Tr1及びTh3細胞を誘導した。一方、CD11c+DCはTh3細胞を誘導したが、Th2応答をより減少させた。最後に、CD19+B細胞の場合、その数がかなり多かったにも拘らず、IgGバックボーン内でのペプチドエピトープに対するT細胞免疫を十分に誘導することができなかった。試験した各APCサブセットのいずれによっても明確なTh1応答は誘導されなかった。
【0084】
実施例12では、IgGバックボーン内で輸送されたペプチドによるin vivoでのAPCローディングによって、Th2免疫は誘導されるが、Th1免疫は誘導されないことを示す。
BALB/cマウスに対し、100μgのrecHA(I−Ed)−IgG(「IgHA」)或いはモル当量のHAペプチドエピトープ(2μg)を皮下注射投与して免疫感作し、 2週間後に殺した。免疫応答は、処置マウス由来の脾細胞をレスポンダーとして用い、ナイーブマウス由来の脾細胞をマイトマイシンで処置したものをスティミュレーターとして用いたELISPOT分析によって次の通りに測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで20μg/mLのHA110−120ペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。
【0085】
スティミュレーター細胞は、次の通りにナイーブマウスから調製した。脾臓から単一細胞浮遊液を調製し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄し、HL1完全培地に再懸濁し、マイトマイシンで30分間処置した。その後、細胞を3回洗浄し、計数後、無血清HL1培地に再懸濁した。プレートを37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。
【0086】
翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。
【0087】
結果は、10μg/mLのHAペプチド或いは細胞培養培地のみで脾細胞を再刺激した場合の、脾臓1個当りのIL−4産生T細胞コロニー数(A)或いはIFN−γ産生T細胞コロニー数(B)して図13に示す(三連のデータの平均±SEM)。このように、本実施例から、組換えIgバックボーン内でのFcgR仲介T細胞エピトープ輸送によって、Th1応答ではなくTh2応答がもたらされることが分かる。
【0088】
実施例13では、IgGバックボーン内で輸送されたペプチドによるin vivoでのAPCの反復ローディングによって、Th3免疫及びTr1免疫が誘導されることを示す。
BALB/cマウスに対し、40μgの熱凝集(63℃、15分間)したrecHA(I−Ed)−IgG(「IgHA」)を経鼻注入で投与して免疫感作し、2週間後、組換えイムノグロブリンを生理食塩水に溶解したもの(100μg)を皮下注射投与して追加免疫を行った。対照として、熱凝集IgG2bアイソタイプ対照でプライミングしたマウスを用いた。更に2週間後、マウスを殺し、HAペプチドで脾細胞をin vitro再刺激し、ELISPOT分析を次の通りに行うことによってT細胞応答を評価した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。
【0089】
脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで20μg/mLのHA110−120ペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。
【0090】
翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0091】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。TGF−β及びIL−10の産生は、ELISA TGF−β1キット(R&Dシステム社、カタログ番号DY240)及びIL−10キット(バイオソースインターナショナル社、カタログ番号KMC0104)によって測定した。結果は、バッククラウンドを差し引いた後のサイトカイン濃度(三連のデータの平均)として示す。
【0092】
図14に示すデータから、組換えイムノグロブリンを保有するエピトープによる粘膜プライミングによってTh3細胞及びTr1細胞が分化し、次いで全身追加免疫によってこれら細胞が増殖したことが分かる。
【0093】
実施例14では、IgGバックボーン内に挿入されたペプチドエピトープに対する有意なTh1応答を引き起こすことができるのは、従来のアジュバントCFAではなく、ウィルスのみであったことを示す。
BALB/cマウスに対し、100μgのrecHA(I−Ed)−IgGを生理食塩水に溶解、或いは完全フロイントアジュバント(CFA)に乳化したもの、或いはHAエピトープを有する105 TCID50のインフルエンザウィルス株WSNを腹腔内投与して免疫感作した。免疫感作2週間後、マウス(n=3/群)を殺し、HAペプチドに対するT細胞応答をELISPOT分析により次の通りに測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで20μg/mLのHA110−120ペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。
【0094】
プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0095】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、脾臓内のサイトカイン産生コロニーの頻度の平均±SEMとして示す。
【0096】
図15に示す結果から、IgGバックボーン内のペプチドエピトープは、従来のアジュバント(CFA)によって増強されるがスイッチングされないTh2プロファイルの細胞応答を引き起こすことが分かる。一方、生ウィルス免疫(live virus immunization)によって得られるこのプロファイルはTh1バイアスであった。
【0097】
実施例15では、IgG仲介輸送後のペプチドエピトープの提示によってT細胞応答がもたらされ、このT細胞応答は、抗CD40mAb、組換えIL−12或いは合成dsRNAによる同時刺激を増強させることによって更にマニピュレートし得ることを示す。
ナイーブBALB/cマウス由来の樹状細胞を、MACSにより脾臓細胞浮遊液から次のように回収した。抗CD11cに結合した磁気ビーズを用いた分離は、磁気細胞セパレータ及びミルテニイバイオテック社(ドイツ)から入手した試薬を用い、次の通り行った。脾臓を処理して単一細胞浮遊液を調製し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、MACS緩衝液(2mMのEDTAと0.5%のBSAを添加したPBS)に再懸濁した。磁気標識された細胞を、MACSセパレータの磁場に設置した分離カラムに通した。磁気標識されたポジティブ画分はカラム内に保持されるが、ネガティブ画分はカラムを通過する。カラムを磁場から移動させた後、磁気的に保持されたポジティブ細胞をカラムから溶出させ、細胞を洗浄、計数後、HL1完全培地に再懸濁し、ex vivoパルシングを無血清HL−1培地中(濃度:300万個/mL)で2時間行ったが、その際、50μg/mLのrecHA(I−Ed)−IgGのみ、或いは5ng/mLのrecIL−12、50μg/mLの二本鎖RNA(pA:pU或いはpI:pC)を添加したものを用いた。或いは、細胞を、組換えIgと10μg/mLの抗CD40mAbでプレコートしたウェルとを用いてインキュベートした。細胞を回収し、洗浄した後、無血清HL−1培地に溶解し(in serum free HL-1 medium)、ナイーブBALB/cマウスに養子移入した(30万個の細胞の内、半分を皮下投与し、もう半分を腹腔内投与した)。
【0098】
2週間後、マウスを殺し、HAに対するT細胞応答をELISPOT分析により次の通りに測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。
【0099】
脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで50μg/mLのHA110−120ペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次いで、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0100】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)を用いて得た。結果は、各ex vivo刺激組合せについて、バックグラウンドを差し引いた後のIL−2或いはIL−4産生に対するスポット形成コロニーの頻度の平均+SEM(n=3)として示す。
【0101】
図16に示す結果から、APCによるペプチド提示は、輸送プラットフォームとして組換えIgGを用いた抗原によるローディングの後、同時刺激を制限した場合に(in context of)生じることが分かる。IL−12、抗CD40或いは合成dsRNAがあると、FcgRにより抗原でロードしたAPCによって、IL−2をプライミングすることができ、且つ、同族(HA)ペプチドに対するT細胞免疫をもたらすIL−4を増強することができる。
【0102】
実施例16:IgG−ペプチドによるAPCのin vivoローディングによって引き起こされる、長寿命IL−4産生Th2細胞の活性は、内因性APCとの継続的相互作用に依存し、コンピテントCD4を必要とする。
BALB/cマウスに対し100μgのrecHA(I−Ed)−IgG或いはHAペプチドを皮下投与して免疫感作し、2週間後に殺し、T細胞応答をELISPOT分析によって次の通りに測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL4に対して4μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。
【0103】
脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで20μg/mLのHA110−120ペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。
【0104】
翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次いで、プレートを室温で24時間乾燥させた。データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)を用いて得た。
【0105】
(A)HA刺激時には、ブロッキング抗CD4或いは抗CD8mAbを選択したウェルに10μg/mLで添加した。結果は、バックグラウンドを差し引いた後の脾臓1個当りのHA刺激IL−4産生コロニー数の平均+SEMとして図17Aに示す(n=3マウス/群)。
【0106】
(B)上述のように組換えIgで免疫感作したマウス由来の脾細胞をそのままELISPOTプレートでインキュベートし、或いは、内因性MHCII+APCの磁気ディプリーション(magnetic depletion)後、ナイーブBALB/cマウス由来のMHCII+と共に、培地のみと共に、或いは10μg/mLのHAペプチドの存在下でインキュベートした。抗MHCIIに結合した磁気ビーズを用いた分離は、磁気細胞セパレータ及びミルテニイバイオテック社(ドイツ)から入手した試薬を用い、次の通り行った。脾臓を処理して単一細胞浮遊液を調製し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、MACS緩衝液(2mMのEDTAと0.5%のBSAを添加したPBS)に再懸濁した。磁気標識された細胞を、MACSセパレータの磁場に設置した分離カラムに通した。磁気標識されたポジティブ画分はカラム内に保持されるが、ネガティブ画分はカラムを通過する。カラムを磁場から移動させた後、磁気的に保持されたポジティブ細胞をカラムから溶出させ、細胞を洗浄、計数後、HL1完全培地に再懸濁し、ELISPOTアッセイによりインキュベートした(プロトコルは次の通り)。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで50μg/mLのHA110−120ペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。
【0107】
プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。
【0108】
翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次いで、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0109】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)を用いて得た。結果は、IL−4産生T細胞の頻度の平均±SEMとして示す。図17A〜17Bに示す結果から、recHA(I−Ed)−IgGの投与によって引き起こされるHA特異的IL−4産生T細胞の活性は、CD8ではなくCD4に依存していることが分かる。また、プライミングされたT細胞による長寿命IL−4の産生は、内因性APCとの安定な相互作用に依存している。
【0110】
実施例17では、T細胞エピトープのFcγR仲介輸送は、活性化した特定のT細胞のフェノタイプに差別的に影響を及ぼす上で、ペプチドよりも効果的であることを示す(IL−2、IFN−γ及びIL−4の用量依存的ダウンレギュレーションとIL−10及びTGF−βのアップレギュレーション)
BALB/cマウスを、100μgのSFERFEIFPKEペプチドをCFAに溶解したもので免疫感作し、2週間後、活性化したSFERFEIFPKE特異的T細胞をマウスから分離した。得られた細胞を、様々な量のrecHA(I−Ed)−IgG或いは対応するペプチドの存在下、マイトマイシン処置脾細胞と共にインキュベートした。細胞増殖及びサイトカイン産生(IFN−γ、IL−4、IL−2)についてはELISPOT分析により次の通り評価した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで20μg/mLのHA110−120ペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。
【0111】
プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0112】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)を用いて得た。また、TGF−β及びIL−10の産生については、インキュベーション48時間後、TGF−β1キット(R&Dシステム社、カタログ番号DY240)及びIL−10キット(バイオソースインターナショナル社、カタログ番号KMC0104)を用いたELISAによって測定した。結果は、スポット形成細胞(SFC)の頻度、或いはin vitroで添加した抗原量に対するサイトカイン濃度として示す。
【0113】
図18に示す結果から、T細胞エピトープのIgG仲介輸送は、活性化したT細胞によるサイトカイン産生や増殖に対し著しく差別的な(differential)影響を及ぼすことが分かる(IL−2、IFN−γ、そして、驚くべきことにIL−4も用量関連的にダウンレギュレートされた)。Ig−ペプチドは、ペプチド自身と比べて、サイトカイン産生を調節する上で実質的により効果的であった。一方、Ig−ペプチドのみでも、用量依存的にIL−10とTGF−βの産生を効果的に開始させた(turned on)。このように、Igバックボーン内のT細胞エピトープは、活性化した細胞の機能を独立的ではなく差別的に調節した。
【0114】
実施例18では、驚くべきことに、免疫複合体でもレセプター架橋抗体でもないIgGバックボーン内で輸送されたペプチドによって、クラスI拘束性免疫応答が誘導されることを示す。この応答のプロファイルは、生ウィルス(IFN−γ産生ではなくIL−4に存在するTc2タイプ)によって引き起こされるプロファイルとは異なった。
BALB/cマウスに対し、MHCクラスI拘束性ペプチドTYTQTRALV(配列番号6)を含むrecNP(Kd)−IgG(50μg)を皮下注射投与した。2週間後、マウスを殺し、ペプチド特異的サイトカインの産生をELISPOT分析により次の通りに測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。
【0115】
脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで様々な濃度のNPペプチドと共にインキュベートした。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0116】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)を用いて得た。結果は、脾臓1個当りのスポット形成コロニー(SFC)の総数(n=3の平均)として図19Aに示す。対照として、ナイーブマウス、或いは105TCID50の生WSNインフルエンザウィルスを腹腔内注射投与したマウスを用いた。
【0117】
図19A〜19Bに示す結果から、同族ペプチドを有するインフルエンザウィルス株によるウィルス免疫感作とは対照的に、Ig仲介ペプチド輸送は、IFN−γ産生Tc1細胞を引き起こす上で効果的ではなかったことが分かる。しかし、Ig−ペプチドの投与によって、MHCクラスI−ペプチド複合体の形成がもたらされ、IL−4産生Tc2細胞に存在する、顕著なNP特異的MHCクラスI拘束性T細胞免疫が誘導された。
【0118】
実施例19では、選択されたAPCを疾患関連エピトープでin vivoローディングすることにより、エピトープ特異的自己反応性Tを除去するのではなく増殖することによって自己免疫の悪化状態が抑えられたことを示す。
SJLマウスに対し、完全フロイントアジュバントに乳化したラット脳ホモジネート(200μL)を皮下注射投与し、6時間後及び2日後に、50ngの百日咳毒素で追加免疫を行った。マウスは、麻痺性疾患の悪化、進行性状態を示した。マウスの半数には、MBPエピトープを有する組換えイムノグロブリン(recMBP(I−As)−IgG)とPLPエピトープを有する組換えイムノグロブリン(recPLP(I−As)−IgG)との組合せを、皮下注射投与した(疾患誘発後、8日目、12日目、18日目に150μg/分子を投与)。パネルAには、処置マウス及び未処置マウスそれぞれの平均臨床スコアを示す(n=8)。
【0119】
70日間の観察後、マウスを殺し、脾臓を回収し、ELISPOT分析を次の通り行った。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、1×106個/ウェルで20μg/mLのペプチド(PLP或いはMBP)と共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。
【0120】
プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0121】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)を用いて得た。結果(図20B)は、ペプチド刺激条件下でのIFN−γ産生T細胞の頻度に対してプロットした、添加PLPペプチド非存在下でのIL−4産生T細胞コロニーの頻度として示した。完全四肢麻痺が進行しているマウス(1.5以上のスコア)は黒印で示した。四肢麻痺が進行していないマウスは白印で示した。図20Cにおいて、in vitro刺激条件下での脾臓1個当りのIL−4スポット形成コロニー総数(平均±SEM)はnil、MBP或いはPLPペプチドで示した。IgG2bアイソタイプ対照で処置したマウス由来の脾細胞から成る追加対照(additional control)を用いた。これと並行して、in vitro培養を中和抗IL−4mAb(40μg/mL)の存在下で行い、IFN−γ産生T細胞の数をパネルDに示した。
【0122】
図20A〜Dに示す結果から、組換えIgGを用いたMBPエピトープとPLPエピトープの同時投与によって、疾患の慢性進行が有意に抑制されたことが分かる。麻痺が進行しなかったマウスは、意外にも、自己エピトープであるMBPとPLPに対する反応性の向上を示したが、これはそれぞれ、ベースライン及びペプチド刺激IL−4産生或いはベースライン及びペプチド刺激IFN−γ産生の増強によって明白に示されている。最後に、IFN−γ産生T細胞の反応性はIL−4によって抑制されるが、これは、IgG仲介エピトープ輸送によって引き起こされる複雑な免疫調節メカニズムを示唆している。
【0123】
実施例20では、実施例1〜19で提供されたデータに基づき、IgG/FcγR仲介によるエピトープ輸送がT細胞応答に及ぼす影響について要約する。
先ず、APCのローディング(the loading of APC)、IgG仲介によるT細胞エピトープ輸送に対するT細胞応答は、機能的に対抗する2種類のレセプター、即ち、APC上のITIMFc(γ+)保有レセプターとITAMFc(γ+)保有レセプターによって制御される。ITIM+FcγRIIBはT細胞の活性化の度合いを制限し、γ+FcRは、エピトープがIgGバックボーン経由で輸送される際に、MHC−ペプチド複合体の効果的な形成に必要である。このようなエピトープのin vivo輸送によって、胸腺APC上ではなく、末梢CD11c+APC及びCD11b+APC上でのMHC−ペプチド複合体の効果的な形成がもたらされる。しかし、ITIM+FcγRとITAM+FcγRとの相互作用によって、得られるT細胞応答の性質や大きさを実験を行わずに予測することは困難となる。
【0124】
図21に示すデータから、IgG仲介によるペプチドエピトープ輸送によって、同時刺激が制限された場合に(in context of)、ペプチドでロードしたAPCへのT細胞の曝露がもたらされ、ナイーブT細胞と活性化したT細胞への作用が差別的になる(即ち、1)Th2細胞、Tc2細胞、Th3細胞及びTr1細胞の新しい誘導、及び2)活性化したTr1細胞及びTh3細胞の刺激による活性化したTh1細胞、Th2細胞のダウンレギュレーション)ことが分かる。全体的な作用は、(Th1及びTc1免疫に関連する)炎症誘発性ではなく、免疫調節性である。
【0125】
実施例21.天然のdsRNAは、自然免疫応答と適応免疫応答を橋渡しする。実施例21では、インフルエンザウィルス感染により産生された天然の非感染性二本鎖RNAが、タンパク質抗原に対する特定の免疫応答に関し、大きな影響を及ぼすことを示す。
許容MDCK細胞をWSNインフルエンザウィルス(108TCID50/1×109細胞)に感染させ、24時間後、細胞を回収して洗浄し、RNA分離キット(キアゲン社、カリフォルニア州バレンシア)で全RNAを抽出した。更に、RNAse−free DNAseI(ストラタジーン社、カリフォルニア州サンディエゴ)でRNAを更に精製した。次に、S1ヌクレアーゼ(アンビオン社(Ambion, Inc.)、テキサス州オースチン)(5U/RNAμg)と共に37℃で30分間インキュベートし、サンプル中の一本鎖RNAを除去した。分解前後に、ゲル電気泳動によりRNAを分析した。精製dsRNAには感染性がないことを、標準的なインフルエンザウィルス滴定により確認した。対照として、109個の非感染MDCK細胞から同様に精製し処理した材料を用いた。核酸濃度は分光測定法(A260mm)により測定し、エンドトキシンがないことはリムルスアッセイにより確認した。精製dsRNA及び対照のRNAは、単独で、或いはgp140組換え抗原(25μgのRNAと2μgの抗原を25mLの無菌PBSに溶解したもの)との混合物として用いた。
【0126】
感染性のないことを確認した後、40μgのdsRNA或いは対照RNAを40μgの組換えトランケート抗原(HIVエンベロープのgp140)と混合し、BALB/cマウスに経鼻注入(n=3/群)により投与した。付加的な対照として、40μgのgp140タンパク質を生理食塩水に溶解したもので免疫感作した動物(n=3/群)を用いた。マウスへの追加免疫をプライミング2週間後に一度行った。追加免疫の2週間後、血液を採取し、血清を調製し、gp140に対する抗体反応をELISAにより測定した。即ち、ウェルを抗原(2μg/mLのgp140)でコーティングし、SeaBlock(ピアース社、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行った後、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、SoftMaxソフトウェアを備えた自動マイクロタイタープレートリーダー(モレキュラーデバイス社、ThermoMax)で測定した。
【0127】
図22Aは実験の一般原理を示す。図22Bは、全IgGを用いた場合の各血清希釈液のアッセイ実施後の吸収を示す。図22Bは、IgG2a及びIgG1抗体アイソタイプを用いた場合の1/50血清希釈液の吸収を示す。
【0128】
全体としては、図22A〜Bのデータから、インフルエンザウィルスに感染したMDCK細胞からの天然の非感染性dsRNAは、プロトタイプ抗原に対する適応応答を増強する効果が予想外に高いことが分かる。IgG1抗体反応及びIgG2a抗体反応も亢進したことから、強いTヘルパー1及びTヘルパー2反応が誘導されたことが分かる。
【0129】
実施例22.自然免疫応答に対する選択したRNAモチーフの作用:異種モチーフ。この実施例は、各種合成RNAモチーフが、意外にも、タンパク質抗原に対する適応特異的免疫応答に別個の作用を有することを示す。
図23Aは、合成RNAモチーフを広く含むライブラリーを示し、合成RNAモチーフは複数のプールにグループ分けされて次の2段階のタイタースクリーニング工程に用いられる。
(A)マウスを各RNAプールで気管内免疫感作し、経鼻注入による追加免疫を2週間毎に2回行った。抗体反応はELISAにより測定し(図23B)、結果はIgGエンドポイントタイターの平均±SEMとして示した(n=4/群)。対照として、OVAを無菌PBSに溶解したもの、OVAをコレラ毒サブユニットB(CTB)と一緒に用いたもの、及びPBSのみをそれぞれ用量を合わせて用いた。即ち、ウェルを抗原(10μg/mLのOVA)でコーティングし、SeaBlock(ピアース社、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行った後、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、SoftMaxソフトウェアを備えた自動マイクロタイタープレートリーダー(モルキュラーデバイス社、ThermoMax)で測定した。
【0130】
(B)OVAに対する抗体反応の誘導に与える各種dsRNAモチーフの影響:結果を図23Cに示す。データは独立した2種類の実験結果である。INSET:OVAに対する平均IgG2aタイターとIgG1タイターの比。この実験のために、ビオチンコンジュゲート抗マウスIgG1抗体及びIgG2a抗体を用い、ストレプトアビジン−AKPコンジュゲートと共にインキュベートした。左右の順序は図23Cのメインパネルと同様である:PBS OVA、CTB OVA、pC:pG OVA、pI:pC OVA及びpA:pU OVA。
【0131】
(C)雌性C57BL/6マウスにおける、OVA及び各種dsRNAモチーフにより誘導されたT細胞応答の大きさ及びプロフィル。細胞応答の測定のために、脾臓を70ミクロンナイロンファルコンストレーナ(ベクトンディッキンソン社、カタログ番号352350)に付し、次いで赤血球溶解緩衝液(シグマ社、カタログ番号R7757)によって赤血球を溶解することにより脾臓細胞浮遊液を得た。肺組織をコラゲナーゼ(シグマ社、カタログ番号C9891)で消化し、次いでフィコールパーク(アマシャムファルマシア社、カタログ番号17−1440−02)勾配遠沈によって、肺関連脂質組織からリンパ球を単離した。T細胞応答はELISPOT分析によって次のように測定した。96ウェルの45ミクロン混合セルロースエステルプレート(ミリポア社、カタログ番号MAHA S4510)を、4μg/mLのラット抗マウス抗IFNγ、抗IL−2或いは抗IL−4モノクロナール抗体(BDファーミンジェン社、カタログ番号554430、カタログ番号18161D、カタログ番号554387)でコーティングした。10%FCSを含む無菌生理食塩水により37℃で1時間ブロッキングした後、脾臓細胞浮遊液を抗原/ペプチドと共に、或いは抗原/ペプチド無しで、5×105細胞/ウェルで添加した。刺激のために、段階的に量を変えた抗原(OVA)を用いた。刺激から72時間後、ビオチン化ラット抗マウスサイトカイン抗体(BDファーミンジェン社)、次いでストレプトアビジン−HRP(バイオソース社、カリフォルニア州カマリロ)と不溶性AEC基質を用いたアッセイを行った。結果は多重パラメータ解析ソフトウェア(Image Pro、メディアサイバネティックス社)を備えた自動イメージングシステム(Navitar/Micromate)を用い測定した。結果を、脾臓1個当りのIFN−γ及びIL−4スポット形成コロニー(SFC)の数の平均±SEMとして図23Dに示す(n=4/群)。結果は独立した2種類の実験結果である。
【0132】
図23B〜Dに示す結果から、各合成RNAは、プロトタイプのタンパク質抗原に対するB細胞応答及びT細胞応答に対し増強作用を有することがわかる。更に、各モチーフは、特定のヌクレオチドの組合せを含むが、T1対T2誘導及びその後のイムノグロブリンアイソタイプスイッチングに関し、モチーフによって異なる特定の効果を有する。
【0133】
実施例23.選択された合成RNAモチーフを用いることにより、MHCクラスI拘束性Tc1細胞の誘導が促進され、IFN−γが産生される。
(A)dsRNAモチーフにより刺激されるクロスプライミングをBALB/cマウスを用いて検討した。マウスは、10μgの人工的に組み換えたHIV gp140抗原とpA:pUとで処理(プライミング+2回の追加免疫)して用いた。応答は、実施例22に記載したように、V3ドメイン由来のMHCクラスI拘束性コグネイトペプチドR10Kによるin vitro刺激を用いたELISPOT分析により測定した。対照として、用量を合わせたgp140抗原を用いた。結果を、脾臓1個当りのIFN−γ及びIL−4 SFCの数(n=4/群)の平均±SEMとして図24Aに示す。
【0134】
(B)dsRNAモチーフにより刺激されるクロスプライミングを、100μgの全OVAとpA:pUとで処理したC57BL/6マウスを用いて検討した。検討は、実施例22に記載したように、MHCクラスI拘束性ペプチドSIINFEKL[配列番号 ]によるin vitro刺激を用いたELISPOT分析により測定した。対照として、用量を合わせた、生理食塩水或いは無菌PBSに溶解したOVA抗原を用いた。結果を、脾臓1個当りのIFN−γ及びIL−4 SFCの数(n=4/群)の平均±SEMとして図24Bに示す。
【0135】
図24A〜Bに示す結果から、大きな抗原(ポリペプチド)に含まれる各種MHCクラスI拘束性ペプチドに対し、選択された合成RNAモチーフがT細胞免疫の亢進を促進できたことがわかる。この免疫応答は、IFN−γを産生するMHCクラスI拘束性T細胞に含まれるTc1成分を含む。
【0136】
実施例24では、予想外ではあるが、合成RNAモチーフはそれぞれ異なるレセプターに結合すること、即ち、RNAモチーフを区別する複数のレセプターが存在することを示す。
CD11b+ APCへの蛍光タグ化pA:pUのin vitroにおける結合をFACS分析により測定した。MACS分離APCを4℃で30分間、10μg/mLのタグ化pA:pU([PA:pU]−F)と共にインキュベートし、洗浄して分析した。これとは別に、APCをそれぞれ20μg/mL、100μg/mLの非タグ化pA:pU、pA或いはpI:pCと共に10分間プレインキュベートし、タグ化pA:pUで染色してFACS分析を行った。染色された細胞(白い領域)、染色されていない細胞(黒い領域)のプロファイルと、染色程度の高いAPCの百分率とを各パネルに示す(x軸は対数)。データは、独立した2種類の測定結果を示し、各サンプルに対し10000回測定したものである。
【0137】
材料:
1.マウスCD11b及びCD11c磁気分離ビーズ:ミルテニイバイオテック社、それぞれカタログ番号130−049−601及びカタログ番号130−052−001;
2.ULYSIS核酸標識キット:Alexa488、モレキュラープローブス社、カタログ番号U21650;
3.RNAモチーフ:
・pA:pU、(シグマ社、ロット番号22K4068);
・pI:pC、(シグマ社、ロット番号52K4047);
・pA、(シグマ社、ロット番号22K4022);
4.FACS緩衝液:PBS、1% FCS、0.1%アジ化ナトリウム;
5.MACs緩衝液:PBS、2mM EDTA、0.5% BSA;
6.コラゲナーゼ緩衝液:0.225mg BSA及び0.0062mg コラゲナーゼを50mL RPMIに溶解したもの;
7.70μm細胞ストレーナ:(ファルコン/ベクトンディッキンソン社、カタログ番号352350)
【0138】
方法:
I.RNAモチーフの標識:
1.次のプロトコルにより、各RNAモチーフをULYSIS Alexa488標識でタグ化した。
II.脾臓細胞の調製:
1.C57BL/6マウス(雌性、4匹)から脾臓細胞及び肺細胞を単離;
・肺細胞は、脾臓細胞とは異なり、切り刻んだ後、コラゲナーゼ緩衝液中37℃で30分間インキュベートしてから、次のステップに進むことを要する;
・70μmファルコン細胞ストレーナを通す;
・洗浄後、再度MACS緩衝液に懸濁させる:
2.推奨プロトコルに従い、CD11b特異的或いはCD11c特異的MACSビーズで標識する;
3.次いで細胞に次の処理を行った:
・非タグ化pA、pA:pU、或いはpI:pC(20或いは100μg/mL)、室温、10分間;
・各モチーフの染料:dsRNA比に合うように、ULYSISタグ化pA及びpA:pU(それぞれ1.5μg/チューブ及び10μg/チューブ)を添加した。
4.混合、氷上で30分間インキュベート。
5.洗浄(1回)し、FACS緩衝液に再度懸濁。
III.フローサイトメトリー:
フローサイトメトリー分析を行い、タグ化RNAモチーフと非タグ化RNAモチーフの競合阻害及び細胞レセプターの結合を測定/比較する。
【0139】
図25に示す結果から、pA:pU及びpI:pCは、異なる細胞レセプターに結合することが分かる。pI:pCはTLR3に結合するため、TLR3とは異なる別のレセプターがRNA認識免疫機能に関与していることが分かる。
【0140】
実施例25では、選択された合成RNAモチーフが、免疫学的活性に重要な、ケモカイン遺伝子のin vivoでの発現を引き起こすことを示す。
dsRNAモチーフによるケモカイン遺伝子発現の局所的なアップレギュレーションを、経気道投与1日後に抽出した肺組織からのRNAを用いたDNAアレイ技法により測定した。全RNAをRNeasyキット(キアゲン社、カリフォルニア州バレンシア)を用いて肺から単離した。このRNAをRNase−free DNaseI(ストラタジーン社、カリフォルニア州サンディエゴ)で処理し更に精製した。DNAアレイはスーパーアレイ社(メリーランド州ベセスダ)のNonrad−GEArrayキットを用い行った。即ち、cDNAプローブをビオチン−16−dUTPを含有するdNTPmixと共にMMLV逆転写酵素を用いて合成した。GEArray膜を68℃で1〜2時間プリハイブリダイゼーションした。ハイブリダイゼーションは、ビオチン標識cDNAと共に膜をインキュベートすることにより行った。ハイブリダイズした膜を、2×SSC−1%SDSで2回、0.1×SSC−0.5%SDSで2回洗浄した。膜をアルカリホスファターゼ抱合型ストレプトアビジン(バイオソース社、カリフォルニア州カマリロ)と共に更にインキュベートし、最終的に、CDP−Star化学発光基質を用い現像した。シグナルの強度は、Gel−Proソフトウェアを備えたImage−Pro解析システム(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)によって測定した。
【0141】
結果は、非処理マウスの肺組織で測定された発現レベルに対する遺伝子発現の増加倍率で示す。dsRNA(50μgのpA:pU及びpI:pC)により引き起こされたケモカインの発現パターンを、1μgのLPSにより誘導されたパターンと比較した。Th1細胞及びTh2細胞上のレセプターと選択的に結合したケモカインを、それぞれ実線及び破線で囲った。
【0142】
図26に示す結果から、pA:pU及びpI:pCは広範な種類のケモカインの発現を引き起こし、その発現パターンはモチーフに依存し且つLPS(エンドトキシン)のパターンとは異なることが分かる。
【0143】
実施例26では、選択された合成RNAモチーフは、肺ウィルスによる感染を制御できる免疫防御を高めることを示す。
各dsRNAモチーフは、インフルエンザウィルス感染に対する免疫防御を高める能力が異なる。C3H/HeJマウスを、亜致死量のインフルエンザウィルスによる肺感染の1日前及び後に、経呼吸器ルートで50μgのpI:pC、pA:pU或いは50μLの生理食塩水で処理した。ウィルスチャレンジのために、C57BL/6及びTLR4−/−C3H/HeJマウスを、メトファン麻酔下で亜致死量(TCID50:104組織培養感染量50%)の生WSNウィルスに経鼻感染させた。感染5日後、マウスを殺し肺を摘出し、ホモジネートして−70℃で保存した。ウィルスタイターは、許容MDCK細胞による試料の段階希釈液を48時間インキュベートし、次いでニワトリ赤血球細胞(アニマルテクノロジー社から入手)による標準血球凝集反応により測定した。エンドポイントタイターは3回の測定の補間によって評価し、TCID50/器官として表した(平均±SEM;n=6/群;結果はC3H/HeJ TLR−4−/−マウス及びコンピテントマウスにおける独立した2種類の試験の結果である)。TLR4コンピテントのC57BL/6マウスでも同様の結果が得られた。
【0144】
図27に示す結果から、選択された合成RNAモチーフを用いることによりインフルエンザウィルスの複製を制御できることが分かる(dsRNA1はpA:pUであり、dsRNA2はpI:pCである)。
【0145】
実施例27では、選択された複数の合成RNAモチーフを同時投与することにより、高用量の標準抗原に対する免疫寛容が破壊されることを示す。
dsRNAモチーフは、ヒトIgGを注射投与したマウスにおいて高域寛容を阻止する。先ず、マウス(C57BL/6)を寛容原性用量である200μgのhIgGのみ(黒印)、又はこれと100μgのpI:pC或いはpA:pUを一緒に(白印)静脈内注射し、免疫原性用量である100μgのhIgGのCFA乳化物を皮下注射し追加免疫を行った。hIgGに対する抗体のタイターをELISAにより(コーティングに10μg/mLのhIgGを用いた以外は実施例23と同様に)測定した。測定は、最初の注射後、各時間に行った。対照として、100μgのhIgGのCFA乳化物で免疫感作したマウスを用いて得た最大タイターをグラフに示す(破線)。
【0146】
結果は、エンドポイントタイターの平均±SEMとして図28に示す(n=5/群)。TLR4欠損(C3H/HeJ)マウス及びLPS−応答性C3H/SnJマウスでも同様の結果が得られた。このように、図28に示す結果から、選択された合成RNAモチーフであるpI:pC及びpA:pUは、大量の精製タンパク質投与に通常伴う高域寛容を著しく阻害することが分かる。
【0147】
実施例28では、選択されたRNAモチーフが、ヒトAPCによる各種サイトカインの産生を誘導することを示す。
分化後のヒトTHP−1単球細胞を各種濃度の合成RNA(pA:pU、pI:pC或いはpA)と共に24時間インキュベートし、細胞上清を回収した。IL−12及びTNF−αの濃度をELISAにより測定した。結果は、各培養条件に対する各サイトカインのpg/mL(濃度)として図29に示す。
【0148】
材料:
1.THP−1ヒト単球細胞系:ATCC、カタログ番号TIB−202;
2.IL−12サイトカイン:ヒトELISA、IL−12超感受性(US)カタログ番号KHC0123;
3.TNFαサイトカイン:ヒトELISA、TNFα カタログ番号KHC3012;
4.RNAモチーフ:
・pA:pU、(シグマ社、ロット番号22K4068);
・pI:pC、(シグマ社、ロット番号52K4047);
・pA、(シグマ社、ロット番号22K4022)
【0149】
方法:
1.THP−1細胞に、10ng/mLのPMAを加え、10%FCSを含有する培地において分化させた。
2.細胞を穏やかに洗浄し、FCSを含まない培地(HL−1)を加え、処理物(RNAモチーフ及び対照)(濃度:3〜100μg/mL)を付着性THP−1細胞に添加した。
3.24時間インキュベートした後、細胞上清を回収し、IL−12及びTNFαの濃度をELISAにより測定した。
【0150】
図29に示す結果から、選択された合成RNAモチーフはヒト単球細胞に作用し、この作用はモチーフ(ヌクレオチド組成物)の化学構造によって不均一であることがわかる。合成RNAモチーフ全てではないが、選択された合成RNAモチーフは、ヒト単球細胞による、重要なT1調節サイトカインであるIL−12の産生を引き起こすことができる。
【0151】
実施例29では、2種類の別個の合成RNAモチーフがヒトTHP−1単球細胞に結合するときに、互いに異なるレセプターと相互作用を示すことを示す。
THP−1細胞を、様々な量の非標識合成RNAと共に室温で15分間インキュベートした。次に、タグ化したpA:pUを4℃で30分間添加し、細胞を洗浄し、蛍光をFACS分析により定量した。結果を図30A及び30Bに棒グラフとして示す。図30Aは大型細胞のサブセットを示し、図30Bは全細胞集団を示す。染色された細胞の百分率を各図に示した。
【0152】
材料:
1.ULYSIS:核酸蛍光標識(モレキュラープローブス社、カタログ番号U−21650)
2.RNAモチーフ:
・pA:pU、(シグマ社、ロット番号22K4068);
・pI:pC、(シグマ社、ロット番号52K4047);
3.Detoxi−Gelカラム:(ピアース社、カタログ番号20344)
【0153】
方法:
ポリアデニル−ポリウリジル酸(pA:pU)の標識:
1.Detoxi−Gelカラムを用いてエンドトキシンを除去した後、pA:pUの標識を、ULYSIS核酸標識システムを用いてAlexa Fluor488蛍光染料により行った。
2.概略:
・酢酸ナトリウム及びエタノールを用いて−70℃でpA:pUを沈澱させた。
・pA:pUを熱変性させ、Alexa Fluor488試薬により90℃で標識した。
・反応を停止させ、標識されたpA:pUをエタノール沈澱させた。
【0154】
細胞の処理:
1.THP−1細胞を2×106細胞/mLの濃度で懸濁させた。
2.この懸濁液(50μL、5×104細胞)を12×75mmチューブに入れた。
3.非タグ化pA:pU或いはpI:pCを20或いは100μg/mLの濃度でTHP−1細胞に添加し、15分間インキュベートした。
ULYSIS標識されたpA:pUを100μg/mLの濃度で30分間、氷上で添加した。
4.THP−1細胞を1回洗浄し、FACS緩衝液に懸濁させた後、フローサイトメトリー分析を行って、異なる処理を施した集団間の蛍光の相対差を測定した。
【0155】
図30A〜30Bに示す結果から、非タグ化pA:pUは、大型細胞のサブセット及び全細胞集団の両方のレベルにおいてタグ化pA:pUのヒトTHP−1単球細胞への結合に対して競合(compete out)できるが、非タグ化pI:pCは競合できないことがわかる。
【0156】
実施例30では、アジュバント合成RNAを、最も有効な形式で使用するために事前にどのように調製・精製するかを示す。
バルク合成RNA材料を標準的な有機合成法により得る。その後、エンドトキシンを含まない無菌生理食塩水にこの材料を溶解し、LPS濃度が0.005EU/μgを下回るようになるまでエンドトキシン除去カラムに通す。LPSの測定は標準的なリムルスアッセイにより行う。その後、材料を一連の遠沈工程に付し、有孔率が規定されたフィルタを通して分画する(図31参照)。
【0157】
有用な画分は、サイズが20bp未満から最大100bpの合成RNAを含むが、より大きいRNA断片を用いてもよい。精製後、材料を標準的な各種アッセイ、即ち分光測光(OD260nm);ゲル電気泳動;リムルスアッセイによるエンドトキシンの定量;ヒトTHP−1細胞に対する生物学的活性(実施例28と同様)により測定し評価する。
【0158】
実施例31では、選択された合成RNA化合物の各画分は、意外にも、RNAのサイズによって生物学的活性が異なることを示す。
分化したヒトTHP−1単球細胞を、異なる濃度の合成RNA(pA:pU、実施例30に記載したように分画した)と共に24時間インキュベートし上清を回収した。TNF−αの濃度をバイオソースインターナショナル社(カリフォルニア州カマリロ)のキットを用いてELISAにより測定した。結果を、図32に培養条件毎にpg/mL(濃度)として示す。
【0159】
図32に示す結果から、選択された合成RNA化合物の分子量が小さい程、その画分は、ヒト単球THP−1細胞によるサイトカイン産生に関する生物学的活性が高いことが分かる。
【0160】
実施例32.選択された合成RNAモチーフは、意外にも、モチーフによって抗RNA抗体の産生に関する免疫プロファイルが異なる。
BALB/cマウスを、腹腔内及び皮下経由で50μg+50μgのhIgG及び合成RNA(pI:pC或いはpA:pU)で免疫感作し、1週間後血清サンプルを調製した。対照として、生理食塩水に溶解したhIgGを注射投与したマウスを用いた。pA:pU、pI:pC、pA及びhIgGに対する抗hIgG及びdsRNA IgG抗体タイターをELISAにより測定した。即ち、ウェルを抗原(10μg/mLのhIgG或いは合成RNA)でコーティングし、SeaBlock(ピアース社、イリノイ州ロックフォード、カタログ番号37527)でブロッキングした。血清と気管支肺胞洗浄液の段階希釈液は、室温で少なくとも2時間インキュベートした。洗浄後、アルカリホスファターゼ(シグマ社、カタログ番号A7434)結合抗マウスIgG抗体を用いたアッセイを行った後、基質(pNPP、シグマ社、カタログ番号N2765)を添加し、SoftMaxソフトウェアを備えた自動マイクロタイタープレートリーダー(モルキュラーデバイス社、ThermoMax)で測定した。
【0161】
結果を、エンドポイントタイターの平均±SEM(n=3/群)として図33に示す。図33に示す結果から、pI:pCは、pA:pUと異なり、それ自身に対する抗体反応を誘導し、別のRNAモチーフに対する交叉反応性成分を有することが分かる。
【0162】
実施例33.組換えIgGをAPCにin vivoでローディングすると、付加的な条件を満たした場合のみ、Tc1型のMHCクラスI応答が発生する。
BALB/cマウスを、50μgの選択された合成RNA(pA:pU或いはpI:pC)と混合した50μgのrecIgG−NP(Kd)で皮下免疫感作した。対照として、ナイーブマウス或いは組換えIgGのみで免疫感作したマウスを用いた。免疫感作3週間後、T細胞応答を次の通りELISPOT分析により測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルでNP147−155ペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。
【0163】
翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0164】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。サイトカイン産生T細胞がNPペプチドと反応する頻度を測定し、刺激に使用されたペプチドの量に対して示した。結果を三連のデータの平均+SEM(n=3マウス/群)として示す。
【0165】
先に図19で示したように、NP MHCクラスI拘束性エピトープを有する組換えIgGの投与によって、Tc2免疫は発生するがTc1応答は発生しないが、これは、特定の同時刺激プロファイルを有するクラスIペプチド複合体がin vivoで形成されたことを示唆している。図34A及び34Bに示す結果から、選択された複数の合成RNAを同時に使用することにより、MHCクラスI拘束性エピトープのIgG仲介による輸送に続き、IL−2及びIFN−γの効果的な誘導が促進されることが分かる(dsRNA1はpA:pUであり、dsRNA2はpI:pCである)。
【0166】
実施例34:FcγRによるAPCローディングとRNAレセプターによる活性化の同時操作による、MHCクラスIペプチドの効果的形成とその結果のT細胞応答の指示
脾臓APCをナイーブBALBcマウスから単離し、1μgのNPペプチド、或いは50μgのrecIgG−NP(Kd)を単独で或いは50μg/mLの選択された合成dsRNA(pA:pU)を組合せたもので、ex vivoでのパルシングを一晩行った。細胞を洗浄し、5×106個の細胞をナイーブBALB/cマウスにs.c.及びi.p.で等量投与した。3週間後、応答を次の通りELISPOT分析により測定した:ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、5×105個/ウェルで30μg/mL、10μg/mL或いは3μg/mLのNPペプチドと共にインキュベートし、或いは培地のみでインキュベートしてバックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0167】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、ex vivo刺激に用いたペプチド濃度に対するサイトカイン産生スポット形成コロニーの頻度(平均±SEM、n=3マウス/群)として図35に示す。更に、刺激に用いたペプチド濃度に対するエリア/コロニーの平均をIFN−γ及びIL−4に対してプロットした(任意単位)。
【0168】
図35に示す結果から、組換えIgGによるAPCのex vivoローディングは、ペプチド自体を使用する場合に比べ、MHCクラスI−ペプチド複合体を形成し、Tc応答を発生させる上で顕著により効果的であることが分かる。更に、IgG/FcγRによるエピトープの輸送後、MHCクラスI−ペプチド複合体が単に形成された場合は、IL−4は産生するがIFN−γは産生しないTc2細胞の分化が引き起こされる。選択された合成RNAでAPCを同時に処理することにより、T細胞プロファイルがIFN−γ産生Tc1細胞にまで拡大される。
【0169】
実施例35では、IgG−ペプチドと選択された共刺激モチーフとを同時プライミングすることにより、ウィルス感染後にMHCクラスI拘束性T細胞のより効果的な二次増殖が起こることを示す。
BALB/cマウスに、recIgG−NP(Kd)とpA:pUとを別々に、或いはこれらを組み合わせて注射投与した(50μg/注射)。対照として、ナイーブマウスを用いた。処理3週間後、マウスにA/WSN/32 H1N1インフルエンザウィルスの104TCID50を気道経由で感染させた。感染4日後、NPペプチド刺激をex vivoで行った後、脾臓のT細胞プロファイルをELISPOT分析により次の通りに測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2及び抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計数後、20μg/mLのNPペプチドと共に、或いは培地のみで5×105個/ウェルでインキュベートし、バックグラウンドを評価した。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、ビオチン化抗サイトカインAbs(2μg/mL)をPBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)に溶解したもの(100μL/ウェル)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0170】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、サイトカイン産生コロニーを形成するNP特異的MHCクラスI拘束性T細胞の頻度(平均±SEM、n=4マウス/群)として図36に示す。
【0171】
図36に示す結果から、選択された合成RNAの同時投与を実施すると、クラスI拘束性エピトープのIgG仲介輸送がクラスI拘束性Tc1応答のプライミングに最も効果的であることがわかる。このようなプライミングされた前駆体は、インフルエンザウィルス感染後、急速に増殖した。
【0172】
実施例36では、MHCクラスI拘束性エピトープを認識する細胞障害性リンパ球の最も効果的なプライミングは、IgGバックボーン内に挿入されたペプチドエピトープを選択されたRNAモチーフと共に同時投与することにより生じることを示す。
上述の実施例と同様に、BALBcマウスに対しrecIgG−NP(Kd)による免疫感作及びチャレンジを行い、インフルエンザウィルス感染4日後に殺した。脾臓細胞を調製し、HL−1培地に500万個/mLで懸濁し、5U/mLの組換えIL−2の存在下、10μg/mLのNP147−155ペプチドと共に5日間同時インキュベートした。4マウス/群からの脾臓細胞をプールし、フラスコ中でインキュベートした。
【0173】
増殖後、生存細胞をフィコール勾配遠沈により回収し、洗浄後、種々の細胞数に分けてV底プレート中で5時間インキュベートした。インキュベーションは、固定数のsp20ターゲット細胞を添加し、NPペプチド(20μg/mL)の存在下或いは非存在下で行った。プレートの遠沈後、上清を回収し、LDHの濃度を、Promegaキット(カタログ番号G1780)を用いて測定した。結果は、各E:T比(エフェクター対ターゲットの比)における比溶解(%)として示す。
【0174】
図37に示す結果から、抗ウィルス細胞障害性T細胞の効果的なプライミングには、IgGにより輸送されたクラスI拘束性エピトープのin vivoでのAPCへの効果的なローディングと、選択された合成RNAモチーフ(即ちpA:pU)による適切な指示との両方が必要であることが分かる。
【0175】
実施例37では、ウィルス性MHCクラスI拘束性エピトープを有するIgGと、選択された合成RNAモチーフとを一緒にワクチン投与することにより、プロトタイプウィルスによる感染チャレンジに対する防御が提供されることを示す。
BALB/cマウスに、50μgのrecIgG−NP(Kd)及び50μgの選択された合成RNA(pA:pU)を皮下注射して免疫感作を行った。免疫感作3週間後、マウスに対し104TCID50の感染性WSNインフルエンザウィルスによりチャレンジを行い、5日後に殺した。次の標準MDCK血球凝集アッセイにより肺ウィルスを肺ホモジネートに滴定した:1日目、MDCK細胞を96ウェルプレートに添加し(2×104個/ウェル/200μL)、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。翌日、肺ホモジネートのDMEM培地10倍希釈液(25μL)をトリプシン処理MDCKプレート中、3連で短時間(1分間)インキュベートした後、37℃でインキュベートした。1時間後、175μLの完全DMEM培地を添加し、プレートを37℃、5%CO2で48時間インキュベートした。2日後、MDCKプレートから得た細胞培養上清と共に室温で30分間インキュベートしたニワトリ赤血球を用いて、血球凝集阻止を行った。結果は、全肺ウィルスの平均±SEMとして示す(n=4マウス/群)。対照として、免疫感作を行っていないマウスを用いた。
【0176】
図38に示す結果から、ウィルス性クラスI拘束性エピトープを有する組換えIgGと一緒に、選択された合成dsRNA(pA:pU)によって免疫感作を行うことにより、感染チャレンジ後のウィルス複製を制限できる免疫応答がプライミングされることが分かる。
【0177】
実施例38.図39に、Ig−ペプチドベースの分子の効力をテストするために用いた腫瘍モデルを示す。
Balb−cマウス(Kd拘束性)を用い腫瘍モデルを確立した。通常、腫瘍細胞(100μL中に100万〜1500万個)はマウスの側腹部に注射した(図39の上部写真中の矢印参照)。原発腫瘍(注射部位の腫瘍)は、先ずその領域を触診することにより検出し、次いでカリパスで腫瘍サイズを測定することにより定量化した(図39参照)。一連の実験において、トランスフェクトしていない細胞、或いは安定にトランスフェクトされ異種タンパク質(H鎖のCDR3領域に異なるエピトープペプチドを発現する組換えIgG、或いは完全なNPタンパク質)を発現する細胞のいずれかであるマウス骨髄腫細胞系(SP2/0)を用い、マウスに腫瘍を誘導した。SP2/0細胞内の異種タンパク質の発現は、免疫適格マウスにおける各種抗腫瘍戦略のテストのための特異的腫瘍関連抗原(TAA)を提供した。典型的には、未処置マウスには、注射後1週間で触知可能な固形原発腫瘍が発生し、次の4週間に亘り病的状態や死をもたらした。注射したマウスの死後剖検により、転移病変が明らかになった(図39参照)。Sp2/0細胞は、原発腫瘍組織から培養し、更に、腫瘍を有するマウスから採取した脾臓からも培養した(データは示さず)。SP2/0細胞には、MHCI拘束性NPエピトープ(アミノ酸147〜155、図39参照)等のH鎖のCDR3領域に導入された特定のエピトープ配列以外は全てが同一である組換えIgG発現プラスミドが安定的にトランスフェクトされた。また、SP2/0細胞には、CMVプロモーターの制御下、WSNウィルスのNPタンパク質全体のためのコード配列を含むプラスミドも安定的にトランスフェクトされた。全てのトランスフェクト細胞系は、野生型SP2/0細胞の場合と同一のフレームに原発腫瘍を引き起こした。
【0178】
本腫瘍モデルは、Balb−cマウスに転移腫瘍を誘導することが先に示された腺癌細胞系(4T1、ATCC CRL−2539、Kd拘束性)を含むように拡張された。4T−1細胞系は、SP/0系に関する上述のものと類似していた。Balb−cマウス側腹部への100万〜1500万個の4T−1細胞の注射投与は、触診可能な原発腫瘍をSP2/0細胞の注射投与の場合と同様の時間フレームで生じさせ、最終的には死をもたらした。各種器官からの組織の死後採取は原発腫瘍のみならず、脾臓、肺からも4T−1が回収できることを示した(図示せず)。4T−1細胞に、上述のNP−発現プラスミドを安定的にトランスフェクトした。SP2/0の場合のように、4T−1細胞へのトランスフェクトは、腫瘍の増殖過程や疾患の致死率に影響を与えなかった。
【0179】
実施例39は、選択された共刺激RNAモチーフと共に組換えIgG内の腫瘍関連T細胞エピトープを用いた、臨床診断後の腫瘍のコントロールと処置の成功例を示す。
Balb/cマウスに、H鎖(IgNP)のCDR3領域内にMHCI(Kd)NPエピトープペプチドを有する組換えIgGを安定的に発現するSP2/0細胞を注射投与した(100μL中1500万個)。投与後第7日、全てのマウスは触診可能な腫瘍を有し、それらのマウスを無作為に3群(共刺激モチーフ(ポリマーpApUを含むdsRNA)単独、精製IgTAAタンパク質(IgNP)、及びdsRNA pA:pUと精製IgTAAタンパク質の両者)に振り分けた。処置時間は図40中、矢印で示し、各注射投与では図示の化合物を50μg含ませた。図中、転移疾患を発現し死亡したマウスを「D」で表す。
【0180】
これらのデータから、治療開始時に原発腫瘍を有する全てのマウスにおいて、dsRNA(共刺激モチーフ)とIgTAA(IgNP)の組合せが劇的な防御応答を生じることが分かる。dsRNA化合物或いはIgTAA化合物のいずれか一方で処置したマウスの全ては、疾患により死亡したが、これら両者を用いて処置したマウスの100%は、処置開始後3週間後でも生存していた。これらのマウスは、T細胞応答の測定のために殺された時にも良好な臨床状態であった。これらのデータは、APCへのTAAのin vivoローディング(APCのFcレセプターを介したIgNPの摂取によって達成される)は、強い抗腫瘍応答に対して十分ではないことを示す。IgNPとpApU dsRNAとの組み合わせで処置したマウスにおいて示される腫瘍の拒絶と生存は、腫瘍関連抗原による腫瘍の処置が共刺激に関して重要な役割を果たすことを示している。
【0181】
結論として、図40に示す結果から、腫瘍関連抗原のAPCへの効果的なin vivoローディングと、選択された合成RNAモチーフによる同時活性化との両者を共に行うことが、腫瘍成長の効果的な制御と腫瘍拒絶の誘導のために必要且つ十分であることが分かる。
【0182】
実施例40.本実施例は、腫瘍細胞を亜致死量接種した場合に、腫瘍抗原に対する最適未満の応答を、IgGバックボーン内のペプチドエピトープを共刺激モチーフと共に用いる治療によって修正できることを示す。
Balb/cマウスに、H鎖のCDR3内にWSNウィルス核タンパク質のMHCI(Kd)エピトープ(アミノ酸147〜155)を含む組換えIgG(IgNP)を安定的に発現するSP2/0細胞を注射投与した。細胞接種物は、マウス当たり100万個の細胞(100μL中)であった。マウスを、注射部位に触診可能な腫瘍が検出されるまで観察した。この時点で腫瘍を測定し、マウス8個体には処置を施さず(対照)、6個体には精製IgTAA(即ち、精製IgNP、2mg/kg)とdsRNA(pApU、4mg/kg)を一週間毎に腫瘍内注射した。腫瘍は一週間毎に測定した。
【0183】
図41のパネルAは、8匹の対照マウスの内の6匹は、誘導された腫瘍が進行し最終的に死に到ったが、これらのマウスの内の2匹は、自発的に腫瘍を完全に拒絶したことを示す。図41のパネルBは、IgNP/dsRNAによる3回の一週間毎の処置(矢印で示す)が、6匹のマウスの内の4匹において腫瘍の完全な拒絶を刺激し、他のマウスでは腫瘍の大幅な軽減を刺激したことを示す。
【0184】
図41に示す結果から、腫瘍関連抗原のAPCへの効果的なin vivoローディングと、選択された合成RNAによる同時活性化の両者を行うことによって、腫瘍関連抗原に対する効果的な免疫応答を引き起こすことができることが分かる。
【0185】
実施例41では、IgGバックボーン内の腫瘍エピトープと共刺激合成dsRNAとを共に用いた腫瘍を有するマウスの治療は、腫瘍浸透リンパ球の活性状態へと回復可能であることを示す。
BALB/cマウス二個体に、1000万個のNP−Kdエピトープ発現sp20トランスフェクトーマを注射投与した。腫瘍の発生後、マウス一個体に、50μgの選択されたdsRNAモチーフ(pApU)と50μgの「IgNP」−recIgG−NP(Kd)とを生理食塩水に溶解したものを腫瘍内に注射した。24時間後にマウスを殺し、腫瘍を摘出し、コラゲナーゼで消化し、70μmのフィルタで濾過し、次いで生存細胞をフィルコール勾配で単離した。細胞をTCRβ、CD25、或いはアイソタイプ対照に対してmAbsで染色し、FACS分析で評価した。結果を、染色された細胞の百分率と共に、ヒストグラムで示した。
【0186】
材料:
1.SP20細胞系(ATCC);
2 BALB/cマウス(Harland Sprague Dawley);
2.ファルコン70ミクロンフィルタ(ベクトンディッキンソン社、カタログ番号352350);
3.コラゲナーゼ(シグマ社、カタログ番号C−9891);
4.BSA、fractionV(シグマ社、カタログ番号A−4503);
5.コラゲナーゼ緩衝液:0.225gm BSA+0.00625gm(50mLのRPMI中);
6.フィコール−ハイパーク(1.077、アマシャム社、カタログ番号17−1440−02);
7.FACS緩衝液:1%ウシ胎児血清+0.1%アジド(PBS中);
8.抗体:全てBDファーミンジェン社から入手;
9.フローサイトメータ:FACSCalibur(ベクトンディッキンソン社)。
【0187】
方法:腫瘍細胞単離及びFACS分析:
1.6週間前に腫瘍を上述のように誘導した。
2.BALB/cマウスから腫瘍を単離した。
3.殺菌ハサミで腫瘍を切り刻み、コラゲナーゼ緩衝液10mLを添加した。
4.37℃で40分間インキュベート。
5.腫瘍を、RPMIで洗浄しながら3mLの注射器プランジャを用い70μmのファルコンフィルタを通し50mLチューブに濾過。
6.1回洗浄し4mLの温RPMI緩衝液に再懸濁。
7.等量の細胞浮遊液を用いフィコール上で層とし、室温、2000RPMで15分間遠沈。
8.層を単離し、HL−1緩衝液で1回洗浄し、FACS緩衝液中に2×106/mLで再懸濁し、フローサイトメトリー分析を実施。
9.残存細胞はELISPOT分析に用いた。
10.細胞を12×75mmのチューブに入れ(50μL/チューブ)、FITC標識抗マウス抗体(2μg/チューブ)とマウス血清(1μL/チューブ)で染色した。
・アイソタイプ対照
・抗CD40
・抗CD8
・抗CD4
・抗CD25
・抗TCRγδ
・抗TCRβ
11.氷上で30分間インキュベート。
12.FACS緩衝液で1回洗浄し、300μLのFACS緩衝液に再懸濁。
【0188】
図42に示す結果から、腫瘍関連エピトープを有する組換えイムノグロブリンと選択された合成dsRNAモチーフとを共に用いて処置をすると、T細胞レセプターマーカーTCRβを提示する腫瘍浸透リンパ球が、活性マーカーCD25の発現を獲得したことが分かる。
【0189】
実施例42では、IgGバックボーン内のペプチドエピトープと選択された共刺激分子とを共に用いた腫瘍を有するマウスの治療の成功は、Tc2に加えTc1を含むTcの特定の分化パターンに関連することを示す。
腫瘍関連エピトープを有する組換えIgと選択された合成dsRNAモチーフとを共に用いる、実施例40に記載の処置により腫瘍の拒絶に成功したマウスを殺し、腫瘍関連エピトープに対するT細胞応答をELISPOT分析によって測定した。ELISPOTプレート(ミリポア社、モレシェイム、フランス)を、無菌PBS(50μL/ウェル)に溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2と抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37°Cで1時間ブロッキングした。
【0190】
脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計測後、各種濃度のNPペプチドと共に5×105個/ウェルでインキュベートした。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、100μL/ウェルのビオチン化抗サイトカインAbs(PBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)中に2μg/mL)と共に、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0191】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリング)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、IL−4、IL−2、及びIFN−γに対応するコロニーを形成するスポットの数(平均±SEM)として表した。対照として、腫瘍を拒絶できなかった非処置マウスを用いた(n=4/群)。
【0192】
図43に示す結果から、腫瘍の拒絶に成功した処置マウスは、治療性Ig上に腫瘍関連エピトープに対するTc1応答を発現し、それと共にTc2免疫を発現したことが分かる。対照的に、腫瘍を拒絶できなかったマウスはTc2免疫のみを示した。
【0193】
実施例43では、IgGバックボーン内のT細胞エピトープと選択された共刺激モチーフとを共に用いた腫瘍を有するマウスの特定の処置後の効果的記憶応答の誘導を示す。
NP−KdTAA発現sp2/0腫瘍を有するマウスを、実施例40に記載したように、TAAを有する組換えIgと選択された合成RNAモチーフとを共に注射投与することにより処置した。腫瘍の拒絶後、マウスを1500万個のNP−Kdエピトープ発現SP2/0細胞を対側投与する皮下注射によってチャレンジした。これと並行して、4匹の対照ナイーブマウスに、腫瘍形成/致死量の同タイプ細胞を同様に注射した。腫瘍の発生とサイズをモニタし、直径(mm)をチャレンジからの時間に対して示した。
【0194】
図44に示す結果から、図示の処置により有効な腫瘍の拒絶が誘導されると、その後は同種の腫瘍をチャレンジしてもこれに対し効果的な防御が行われ、効果的な免疫記憶が発現することが分かる。
【0195】
実施例44では、驚くべきことに、TAAを有するIgGと共刺激物dsRNAモチーフとを共に用いることによる腫瘍拒絶の誘導は、TAAを欠いた或いはTAAの変異体を示す多数の腫瘍細胞変異体に対する交叉保護をもたらすことを示す。
実施例43に記載したような相同チャレンジに対して保護されたマウスに、1500万個の腫瘍細胞(TAAを欠いた(抗原変異体なし)同種の腫瘍細胞、或いはNP−Kdエピトープを欠いたTAAの変異体を有する同種の腫瘍細胞)を用いて引き続きチャレンジを行った。更に、マウスに、図45Aに添付の表に示される異なる型の腫瘍細胞系(4T−1腺癌)を対照として用いチャレンジを行った。いずれの場合にもナイーブ対照が含まれる。
【0196】
腫瘍変異体による多重チャレンジに対して保護されたマウスのT細胞免疫の状態は、TAA(NP−Kdペプチド)、HA(MHCクラスII拘束性ペプチド)、或いは細胞溶解物から抽出したタンパク質で刺激した脾臓細胞浮遊液を用いたELISPOT分析で評価した。ELISPOTプレート(ミリポア社、フランス、モールスハイム)を、無菌PBS(50μL/ウェル)溶解した精製抗サイトカインAbs(抗IL2と抗IL4に対しては4μg/mL、抗IFNγに対しては8μg/mL、BDファーミンジェン社製)と共に、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートをDMEM培地で2回洗浄し、FBSを含む200μL/ウェルの完全DMEM培地により37℃で1時間ブロッキングした。
【0197】
脾臓から単一細胞浮遊液を作成し、赤血球を溶解し、細胞を洗浄、計測後、各種濃度の抗体と共に5×105個/ウェルでインキュベートした。プレートは37℃、5%CO2で72時間インキュベートした。3日後、プレートをPBS−tween20 0.05%(洗浄緩衝液)で5回洗浄し、100μL/ウェルのビオチン化抗サイトカインAbs(PBS−tween20 0.05%−FBS 0.1%(ELISPOT緩衝液)中に2μg/mL)と共に、4℃で一晩インキュベートした。翌日、プレートを洗浄緩衝液で5回洗浄し、ストレプトアビジン−HRPのELISPOT緩衝液希釈液(1:1000)と共に1時間インキュベートした。反応は、3−アミノ−9−エチルカルバゾール基質(シグマ社、ミズーリ州セントルイス)によって開始させ、水道水でプレートを2回洗浄することにより停止させた。次に、プレートを室温で24時間乾燥させた。
【0198】
データは、ImagePro−Plus)ソフトウェア(メディアサイバネティックス社、メリーランド州シルバースプリングス)を備えた自動化システム(ナビター社、ニューヨーク州ロチェスター)により得た。結果は、IL−4、IL−2、及びIFN−γに対応するコロニーを形成するスポットの数(平均±SEM)として表した。対照として、腫瘍を拒絶できなかった非処置マウスを用いた(n=4/群)。対照としてはナイーブマウスが含まれる。データは、器官当たりのサイトカイン産生細胞数(平均±SEM)として表す(n=3/群)。
【0199】
図45A〜45B(図45Aの表を含む)に示す結果から、腫瘍の拒絶を生じる図示の処置の結果として出現した免疫は、抗原変異体非存在下でのチャレンジに対する防御となり、サイトカイン産生細胞の全体に亘る増殖に関係付けられることが分かる。このことは、提案に係る投薬計画によって増強される抗腫瘍リンパ球の、免疫療法分子によって担われているのではない腫瘍関連抗原に対するレパートリーの広がりを示す。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1A】(A)は天然IgG(L鎖−H鎖ヘテロ二量体)、(B)は抗原(Ag)由来ペプチドをCDR(相補性決定領域)3、2、1或いは枠組み領域に挿入したもの、(C)はVH(H鎖、可変領域)セグメントを抗原或いは断片で置換したもの、(D)はVHセグメントとCH1セグメントを抗原或いは抗原断片で置換したものを示す。
【図1B】IgGペプチド及びFcペプチドを概略的に示す。
【図1C】選択されたヒトIgGバックボーンの特性を示す。
【図1D】H鎖の定常領域の配列と予定構築物(prospective construct)の概略図を示す。
【図1E】イムノグロブリンに挿入し得る、本願に記載の各種抗原及びエピトープの配列を示す[配列は、インターネットでncbi.nlm.nih.gov(正しいアドレスプレフィックス、http://www.を付けること)にアクセスし、提供された受託番号を用いて「タンパク質」セクションをサーチして得ることができる。このデータベースの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する]。
【図1F】イムノグロブリンに挿入し得る、本願に記載の各種抗原及びエピトープの配列を示す[配列は、インターネットでncbi.nlm.nih.gov(正しいアドレスプレフィックス、http://www.を付けること)にアクセスし、提供された受託番号を用いて「タンパク質」セクションをサーチして得ることができる。このデータベースの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する]。
【図1G】イムノグロブリンに挿入し得る、本願に記載の各種抗原及びエピトープの配列を示す[配列は、インターネットでncbi.nlm.nih.gov(正しいアドレスプレフィックス、http://www.を付けること)にアクセスし、提供された受託番号を用いて「タンパク質」セクションをサーチして得ることができる。このデータベースの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する]。
【図1H】イムノグロブリンに挿入し得る、本願に記載の各種抗原及びエピトープの配列を示す[配列は、インターネットでncbi.nlm.nih.gov(正しいアドレスプレフィックス、http://www.を付けること)にアクセスし、提供された受託番号を用いて「タンパク質」セクションをサーチして得ることができる。このデータベースの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する]。
【図1I】イムノグロブリンに挿入し得る、本願に記載の各種抗原及びエピトープの配列を示す[配列は、インターネットでncbi.nlm.nih.gov(正しいアドレスプレフィックス、http://www.を付けること)にアクセスし、提供された受託番号を用いて「タンパク質」セクションをサーチして得ることができる。このデータベースの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する]。
【図1J】イムノグロブリンに挿入し得る、本願に記載の各種抗原及びエピトープの配列を示す[配列は、インターネットでncbi.nlm.nih.gov(正しいアドレスプレフィックス、http://www.を付けること)にアクセスし、提供された受託番号を用いて「タンパク質」セクションをサーチして得ることができる。このデータベースの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する]。
【図1K】イムノグロブリンに挿入し得る、本願に記載の各種抗原及びエピトープの配列を示す[配列は、インターネットでncbi.nlm.nih.gov(正しいアドレスプレフィックス、http://www.を付けること)にアクセスし、提供された受託番号を用いて「タンパク質」セクションをサーチして得ることができる。このデータベースの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する]。
【図1L】イムノグロブリンに挿入し得る、本願に記載の各種抗原及びエピトープの配列を示す[配列は、インターネットでncbi.nlm.nih.gov(正しいアドレスプレフィックス、http://www.を付けること)にアクセスし、提供された受託番号を用いて「タンパク質」セクションをサーチして得ることができる。このデータベースの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する]。
【図1M】イムノグロブリンに挿入し得る、本願に記載の各種抗原及びエピトープの配Mを示す[配列は、インターネットでncbi.nlm.nih.gov(正しいアドレスプレフィックス、http://www.を付けること)にアクセスし、提供された受託番号を用いて「タンパク質」セクションをサーチして得ることができる。このデータベースの全内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する]。
【図2】図2A〜2Bは、生理食塩水に溶解したペプチドエピトープの注射投与は免疫原性ではなかったが、APCのex vivoローディングに用いたペプチドの同様の投与によって、養子移入の際、実質的な免疫応答が効果的に引き起こされたことを示す。
【図3】Igバックボーン内でのエピトープの輸送は、全身体循環でのその安定性を非常に好むことを示す。
【図4】図4A〜4Bは、ペプチドを血清と共にプリインキュベートすることによってTcH活性化が低下することを示す。
【図5】図5A〜5Bは、MHC−ペプチド複合体形成の相対効率は、抗原及びAPCの性質によって大幅に異なることを示す。
【図6】図6A〜図6Bは、血液由来APCによる処理の際にTcH活性化を誘導する上で、IgGバックボーン内のペプチドエピトープは、ペプチド単独よりもモル基準で(1桁)効果的であったことを示す。
【図7A】水中油型アジュバント(不完全フロイントアジュバント、IFA)を用いることにより、APC上でのMHC−ペプチド複合体のin vivo形成がリンパ節ではほんの少し向上した一方、脾臓や胸腺では向上しなかったことを示す。
【図7B】水中油型アジュバント(不完全フロイントアジュバント、IFA)を用いることにより、APC上でのMHC−ペプチド複合体のin vivo形成がリンパ節ではほんの少し向上した一方、脾臓や胸腺では向上しなかったことを示す。
【図8】図8A〜8Dは、ペプチドのFcγR仲介輸送を用いることによって、CD11c+及びCD11b+APC上での免疫原性MHCII−ペプチド複合体の優先的な形成がもたらされることを示す。
【図9】図9A〜9Cは、DC(樹状細胞)及び単球上で、内因性MHCIIへのペプチドの発現が長時間持続することを示す。
【図10】ペプチドエピトープのIgG仲介輸送後の樹状細胞や単球上でのMHCII−ペプチド複合体の形成は、γ鎖を含むITAM+FcγRに大きく依存していることを示す。
【図11】ITAM+FcγRアイソフォームのγ鎖の発現は、IgGバックボーン内でペプチドによりロードされたAPCに対するT細胞応答の誘導に必要であることを示す。
【図12】図12A〜12Dは、予想外に、且つ効力/細胞基準(実施例8)とは対照的に、生体レベルにおいては、CD11b+単球の場合、IgGバックボーン内で輸送されたペプチドエピトープに対する免疫応答への影響が最も強いことを示す。
【図13】図13A〜13Bは、組換えIgバックボーン内でのFcγR仲介T細胞エピトープ輸送によって、Th1応答ではなくTh2応答がもたらされることを示す。
【図14】組換えIgバックボーン内でのFcγR仲介T細胞エピトープ輸送によって、Th1応答ではなくTh2応答がもたらされることを示す。
【図15】IgGバックボーン内のペプチドエピトープは、従来のアジュバント(CFA)によって増強されるがスイッチングされないTh2プロファイルの細胞応答を引き起こすことを示す。
【図16】APCによるペプチド提示は、輸送プラットフォームとして組換えIgGを用いた抗原によるローディングの後、同時刺激を制限した場合に(in context of)生じることを示す。
【図17】図17A〜17Bは、recHA(I−Ed)−IgGの投与によって引き起こされるHA(110−120赤血球凝集素ペプチド)特異的IL−4産生T細胞の活性は、CD8ではなくCD4に依存していることを示す。
【図18】T細胞エピトープのIgG仲介輸送は、活性化したT細胞によるサイトカイン産生や増殖に対し著しく示差的な(profound and differential)影響を及ぼす(IL−2、IFN−γ、そして、驚くべきことにIL−4も用量関連的にダウンレギュレートされた)ことを示す。
【図19A】同族ペプチドを有するインフルエンザウィルス株によるウィルス免疫感作とは対照的に、Ig仲介ペプチド輸送は、細胞障害性応答を引き起こす上で効果的ではなかったことを示す。
【図19B】同族ペプチドを有するインフルエンザウィルス株によるウィルス免疫感作とは対照的に、Ig仲介ペプチド輸送は、細胞障害性応答を引き起こす上で効果的ではなかったことを示す。
【図20A】図20A〜20Bは、組換えIgGを用いたMBPエピトープとPLPエピトープの同時投与によって、疾患の慢性進行が抑制されたことを示す。
【図20B】図20C〜20Dは、組換えIgGを用いたMBPエピトープとPLPエピトープの同時投与によって、疾患の慢性進行が抑制されたことを示す。
【図21】実施例2〜20で提供されたデータに基づき、IgG/FcγR仲介によるエピトープ輸送がT細胞応答に及ぼす影響について要約する。
【図22】図22A〜22Bは、インフルエンザウィルス感染中に産生された天然の非感染性二本鎖RNAが、タンパク質抗原に対する特異的免疫応答に大きな効果を有することを示す。
【図23A】図23Aは、合成RNAモチーフの広範なライブラリーを示す。
【図23B】図23B〜23Dは、各種合成RNAが、プロトタイプタンパク質抗原に対するB細胞応答及びT細胞応答を増強する効果を有することを示す。
【図24】図24A〜24Bは、自然免疫応答に対する選択されたRNAモチーフの作用を示す。
【図25】別個のRNAモチーフが抗原提示細胞上の異なるレセプターに結合することを示す。
【図26】別個のRNAモチーフがケモカインの様々なアップレギュレーションを誘導することを示す。
【図27】選択された合成RNAモチーフを用いることにより、インフルエンザウィルスの複製が制御できることを示す。
【図28】選択された合成RNAモチーフであるpI:pC及びpA:pUは、精製タンパク質の多量投与に通常伴う高域寛容を著しく阻害することを示す。
【図29】選択された合成RNAモチーフはヒト単球細胞に作用することを示す。
【図30A】非タグ化pA:pUは、タグ化pA:pUのヒトTHP−1単球細胞への結合に対し競合(compete out)できるが、非タグ化pI:pCは競合できないことを示す。
【図30B】非タグ化pA:pUは、タグ化pA:pUのヒトTHP−1単球細胞への結合に対し競合(compete out)できるが、非タグ化pI:pCは競合できないことを示す。
【図31】dsRNAの精製工程及び分画工程を示す。
【図32】選択された合成RNA化合物の低分子量画分は、様々な生物学的活性を有することを示す。
【図33】pI:pCは、pA:pUと異なり、それ自身に対する抗体反応を誘導し、別のRNAモチーフに対する交叉反応性成分を有することを示す。
【図34】図34A〜34Bは、選択された複数の合成RNAを同時に使用することにより、IgG仲介によるMHCクラスI拘束性エピトープの輸送に続き、IL−2及びIFN−γの効果的な誘導が促進されることを示す。
【図35】組換えIgGによるAPCのex vivoローディングは、遊離ペプチド自体を使用する場合に比べ、MHCクラスI−ペプチド複合体を形成し、Tc応答を発生させる上でより効果的であることを示す。
【図36】選択された合成RNAの同時投与を実施すると、クラスI拘束性エピトープのIgG仲介輸送がクラスI拘束性Tc1応答のプライミングに最も効果的であることを示す。
【図37】抗ウィルス細胞障害性T細胞の効果的なプライミングには、IgGにより輸送されたクラスI拘束性エピトープのin vivoでのAPCへの効果的なローディングと、選択された合成RNAモチーフによる適切な指示との両方が必要であることを示す。
【図38】ウィルス性クラスI拘束性エピトープを有する組換えIgGと一緒に、選択された合成dsRNAによって免疫感作を行うことにより、感染チャレンジ後のウィルス複製を制限できる免疫応答がプライミングされることを示す。
【図39】Ig−ペプチドベースの分子の効力をテストするために用いた腫瘍モデルを示す。
【図40】腫瘍関連抗原のAPCへの効果的なin vivoローディングと、選択された合成RNAモチーフによる同時活性化との両者を共に行うことが、腫瘍成長の効果的な制御と腫瘍拒絶の誘導のために必要且つ十分であることを示す。
【図41】腫瘍関連抗原のAPCへの効果的なin vivoローディングと、選択された合成RNAによる同時活性化の両者を行うことによって、腫瘍関連抗原に対する効果的な免疫応答を引き起こすことができることを示す。
【図42】腫瘍関連エピトープを有する組換えイムノグロブリンと選択された合成dsRNAモチーフとを共に用いて処置をすると、T細胞レセプターマーカーTCRβを提示する腫瘍浸透リンパ球が、活性マーカーCD25の発現を獲得したことを示す。
【図43】腫瘍の拒絶に成功した処置マウスは、治療性Ig上に腫瘍関連エピトープに対するTc1応答を発現し、それと共にTc2免疫を発現したことを示す。
【図44】図示の処置により有効な腫瘍の拒絶が誘導されると、その後は同種の腫瘍をチャレンジしてもこれに対し効果的な防御が行われ、効果的な免疫記憶が発現することを示す。
【図45A】腫瘍の拒絶を生じる図示の処置の結果として出現した免疫は、抗原変異体非存在下でのチャレンジに対する防御となり、サイトカイン産生細胞の全体に亘る増殖に関係付けられることを示す。
【図45B】腫瘍の拒絶を生じる図示の処置の結果として出現した免疫は、抗原変異体非存在下でのチャレンジに対する防御となり、サイトカイン産生細胞の全体に亘る増殖に関係付けられることを示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において抗原に対して免疫応答を発生させる方法であって、患者にイムノグロブリン或いはその一部を投与することを含み、前記イムノグロブリンは、前記イムノグロブリン或いはその一部に結合した前記抗原の少なくとも一種のペプチドエピトープを有し、前記イムノグロブリン或いはその一部はRNAセグメントと共に投与される、方法。
【請求項2】
イムノグロブリン或いはその一部と前記RNAセグメントとは一緒に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イムノグロブリン或いはその一部と前記RNAセグメントとは別々に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者はヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者への前記イムノグロブリン或いはその一部の投与に際して、イムノグロブリン或いはその一部は、抗原提示細胞のFcγRとの結合により抗原提示細胞をロードし、前記ペプチドエピトープが抗原提示細胞のMHCI経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ペプチドエピトープは、イムノグロブリン或いはその一部のCDR領域内で結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
免疫応答によって、抗原に対する効果的なT細胞応答が発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
T細胞は細胞障害性Tリンパ球である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
RNAセグメントはdsRNAであり、pA:pU及びpI:pCから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ペプチドエピトープはT細胞エピトープである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ペプチドエピトープは、インフルエンザウィルスM1或いはM2;C型肝炎ウィルスNS3;B型肝炎ウィルスコア抗原;ヒトパピローマウィルスHPV18−E7、HPV16−E7、HPV18E6、HPV16E6;メラノーマ−gp100;MART−1;TRP−2;癌胎児抗原前駆体;Her−2;破傷風毒素ユニバーサルTヘルパーエピトープ;HIV−1:逆転写酵素;HIV1:gag;インスリン前駆体−ヒト;ヒトGad65;前立腺腫瘍抗原;ムチン1;単純ヘルペス抗原;及び呼吸器合胞体ウィルス抗原から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
イムノグロブリン或いはその一部とRNAセグメントは、静脈内投与及び大量瞬時投与から成る群から選択される一方法によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
イムノグロブリン或いはその一部とRNAは医薬的に許容し得る担体に添加されて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ペプチドエピトープに対する有効な記憶応答を誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
Igバックボーン或いはその一部に結合した少なくとも一種のペプチドエピトープを用いて抗原提示細胞にロードし、T細胞応答を発生させることによりIg−ペプチド分子を形成する方法であって、in vivoで投与される際に、該エピトープはMHCI経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、MHCクラスI−ペプチド複合体が生じる、方法。
【請求項16】
IgバックボーンはIgGバックボーンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
APCはFcγRの一価結合(monovalent engagement)によってロードされる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
APCはin vivo或いはex vivoでロードすることができる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
ペプチドエピトープはIgGバックボーンに共有結合している、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドエピトープはIgGのFc部分の修飾無しでIgGバックボーンに結合している、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
MHCクラスI−ペプチド複合体によって、IL−2産生やIFN−γ産生ではなくIL−4産生により特徴付けられる強いTc2応答が発生する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
ペプチドエピトープは、インフルエンザウィルスM1或いはM2;C型肝炎ウィルスNS3;B型肝炎ウィルスコア抗原;ヒトパピローマウィルスHPV18−E7、HPV16−E7、HPV18E6、HPV16E6;メラノーマ−gp100;MART−1;TRP−2;癌胎児抗原前駆体;Her−2;破傷風毒素ユニバーサルTヘルパーエピトープ;HIV−1:逆転写酵素;HIV1:gag;インスリン前駆体−ヒト;ヒトGad65;前立腺腫瘍抗原;ムチン1;単純ヘルペス抗原;及び呼吸器合胞体ウィルス抗原から成る群から選択される、 請求項15に記載の方法。
【請求項23】
血清の負の影響が回避される、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
MHC−ペプチド複合体の形成がもたらされる、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
IgGペプチド分子は皮下注射或いは腹腔内注射によって投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
抗原提示細胞は、樹状細胞、単球、マクロファージ及びB細胞から成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
抗原提示細胞は、CD11c+APC及びCD11b+APCから成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
in vivo輸送によって形成されるMHC−ペプチド複合体は最大1〜2週間発現される、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
MHC−ペプチド複合体によってT細胞が活性化する、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
T細胞応答は、APC上のITAM+及びITIM+Fcγレセプターによって決まる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
ITAM+FcγRアイソフォームのγ鎖の発現がT細胞応答を誘導し、ITIM+FcγRIIがT細胞応答を制限する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
APCがin vivoでロードされる場合、APCは別個の調節サブセットを誘導する、請求項15に記載の方法。
【請求項33】
単球がTh2及びTr1細胞を誘導し、樹状細胞及び単球の双方がTh3細胞を誘導し、T細胞エピトープのIgG仲介輸送に引き続く調節応答を引き起こす上で、樹状細胞よりもCD11b+単球の方が強力である、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
in vivoでIgGバックボーン内で輸送されたペプチドによるAPCのローディングによってTh2免疫が誘導される、請求項15に記載の方法。
【請求項35】
in vivoでIgGバックボーン内で輸送されたペプチドによるAPCのローディングによってTh3及びTr1免疫が誘導される、請求項15に記載の方法。
【請求項36】
T細胞応答は、抗CD40mAb、組換えIL−12及び合成dsRNAから成る群から選択される一種と共に同時刺激することによって増強される、請求項15に記載の方法。
【請求項37】
IL−2、IFN−γ及びIL−4は用量依存的にダウンレギュレートされ、IL−10及びTGF−βは用量依存的にアップレギュレートされる、請求項15に記載の方法。
【請求項38】
ペプチドエピトープはrecNPであり、IL−4産生Tc2細胞から成るNP特異的MHCクラスI拘束性T細胞免疫を誘導する、請求項15に記載の方法。
【請求項39】
RNAモチーフを用いて免疫応答を増強させることを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項40】
RNAモチーフはdsRNAである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
IgG1及びIgG2a抗体応答は増強され、増強されたTh1及びTh2応答と関連する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
dsRNAは、pA:pU、pI:pC及びpC:pGから成る群から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
dsRNAはpA:pUであり、MHCクラスI拘束性Tc1細胞を誘導してIFN−γを産生する、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
dsRNAは10〜50Kdである、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
RNAモチーフは、p(A)、p(C)、p(G)、p(I)及びp(U)から成る群から選択されるssRNAである、請求項39に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において抗原に対して免疫応答を発生させる方法であって、患者にイムノグロブリン或いはその一部を投与することを含み、前記イムノグロブリン或いはその一部は、前記イムノグロブリン或いはその一部に結合した前記抗原の少なくとも一種のペプチドエピトープを有し、前記イムノグロブリン或いはその一部はRNAセグメントと共に投与される、方法。
【請求項2】
イムノグロブリン或いはその一部と前記RNAセグメントとは一緒に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
イムノグロブリン或いはその一部と前記RNAセグメントとは別々に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者はヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者への前記イムノグロブリン或いはその一部の投与に際して、イムノグロブリン或いはその一部は、抗原提示細胞のFcγRとの結合により抗原提示細胞をロードし、前記ペプチドエピトープが抗原提示細胞のMHCI経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、該ペプチドに対して特異的なT細胞が活性化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ペプチドエピトープは、イムノグロブリン或いはその一部のCDR領域内で結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記患者に前記医務のグロブリン或いはその一部を投与すると、イムノグロブリン或いはその一部は、抗原提示細胞のFcγRとの結合により抗原提示細胞をロードし、前記ペプチドエピトープが抗原提示細胞のMHCII経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスII分子が効果的にロードされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
T細胞は細胞障害性Tリンパ球である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
RNAセグメントはdsRNAであり、pA:pU、pI:pC、pC:pG,および混合ヌクレオチドのdsRNAセグメントから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ペプチドエピトープはT細胞エピトープである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ペプチドエピトープは、インフルエンザウィルスM1或いはM2;C型肝炎ウィルスNS3;B型肝炎ウィルスコア抗原;ヒトパピローマウィルスHPV18−E7、HPV16−E7、HPV18E6、HPV16E6;メラノーマ−gp100;MART−1;TRP−2;癌胎児抗原前駆体;Her−2;破傷風毒素ユニバーサルTヘルパーエピトープ;HIV−1:逆転写酵素;HIV1:gag;インスリン前駆体−ヒト;ヒトGad65;前立腺腫瘍抗原;ムチン1;単純ヘルペス抗原;及び呼吸器合胞体ウィルス抗原から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ペプチドエピトープに対する有効な記憶応答を誘導する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
イムノグロブリン或いはその一部に結合した少なくとも一種のペプチドエピトープを用いて、Igペプチド複合体を形成することにより、抗原提示細胞をロードし、患者において抗原に対する免疫応答を発生させる方法であって、患者にin vivoでdsRNAと組合わせてIgペプチド複合体を投与すると、該エピトープはMHCI経路により効果的にプロセシングされて抗原提示細胞によって提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、MHCクラスI−ペプチド複合体が生じ、該搬送された抗原に対するT細胞の強化された応答が発生する、方法。
【請求項14】
前記イムノグロブリンがヒトIgGである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗原提示細胞が、抗原提示材棒のFcγRの一価結合によってロードされる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ペプチドエピトープがイムノグロブリンに二価結合によって結合している、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ペプチドエピトープは、IgのFc部分を変更することなくイムノグロブリンに結合している、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
MHCクラスI−ペプチド複合体によって、IL−2産生やIFN−γ産生ではなくIL−4産生により特徴付けられる強いTc2応答が発生する請求項13に記載の方法。
【請求項19】
ペプチドエピトープは、インフルエンザウィルスM1或いはM2;C型肝炎ウィルスNS3;B型肝炎ウィルスコア抗原;ヒトパピローマウィルスHPV18−E7、HPV16−E7、HPV18E6、HPV16E6;メラノーマ−gp100;MART−1;TRP−2;癌胎児抗原前駆体;Her−2;破傷風毒素ユニバーサルTヘルパーエピトープ;HIV−1:逆転写酵素;HIV1:gag;インスリン前駆体−ヒト;ヒトGad65;前立腺腫瘍抗原;ムチン1;単純ヘルペス抗原;及び呼吸器合胞体ウィルス抗原から成る群から選択される、 請求項13に記載の方法。
【請求項20】
IgGペプチド分子は皮下注射或いは腹腔内注射によって投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
抗原提示細胞は、樹状細胞、単球、マクロファージ及びB細胞から成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
in vivo輸送によって形成されるMHC−ペプチド複合体は最大1〜2週間発現される、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
MHC−ペプチド分子をロードすることにより、該ペプチドに特異的なT細胞が活性化する、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
イムノグロブリン内で搬送されたペプチドにより抗原提示細胞をロードすることによって、Th2免疫が誘導させる、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
IL−2、IFN−γ及びIL−4は用量依存的にダウンレギュレートされ、IL−10及びTGF−βは用量依存的にアップレギュレートされる、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
IgG1及びIgG2a抗体応答は増強され、増強されたTh1及びTh2応答と関連する、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
dsRNAは、pA:pU、pI:pC及びpC:pGから成る群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
dsRNAはpA:pUであり、MHCクラスI拘束性Tc1細胞を誘導してIFN−γを産生する、請求項13に記載の方法。
【請求項29】
dsRNAは10〜50Kdである、請求項13に記載の方法。
【請求項30】
抗原に対する免疫応答の強化を必要とする患者において免疫応答を強化する方法であって、
イムノグロブリン或いはその一部に結合した該抗原の少なくとも一種のペプチドエピトープを患者に投与し、Igペプチド複合体を形成し、該Igペプチド複合体をdsRNAと共にin vivoで患者に投与し、Igペプチド複合体は、Fcレセプターを有する細胞によって取り込まれることができ、エピトープが、MHC経路により効果的にプロセシングされて提示され、その結果、MHCクラスI分子が効果的にロードされ、in vivoでの抗原への曝露に続くMHCクラスI拘束性T細胞の効果的二次増殖をもたらす、方法。
【請求項31】
前記細胞が抗原提示細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
イムノグロブリンがヒトIgGである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記MHC経路がMHC I経路である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
強化されたT細胞応答が、Th1細胞、Th2細胞、及び細胞障害性T細胞からなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
dsRNAは、pA:pU、pI:pC、pC:pG、および混合ヌクレオチドのdsRNAセグメントから成る群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
ペプチドエピトープは、インフルエンザウィルスM1或いはM2;C型肝炎ウィルスNS3;B型肝炎ウィルスコア抗原;ヒトパピローマウィルスHPV18−E7、HPV16−E7、HPV18E6、HPV16E6;メラノーマ−gp100;MART−1;TRP−2;癌胎児抗原前駆体;Her−2;破傷風毒素ユニバーサルTヘルパーエピトープ;HIV−1:逆転写酵素;HIV1:gag;インスリン前駆体−ヒト;ヒトGad65;前立腺腫瘍抗原;ムチン1;単純ヘルペス抗原;及び呼吸器合胞体ウィルス抗原から成る群から選択される、 請求項30に記載の方法。

【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図1G】
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【図1H】
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【図1I】
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【図1J】
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【図1K】
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【図1L】
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【図1M】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45A】
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【図45B】
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【公表番号】特表2006−514920(P2006−514920A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−538491(P2004−538491)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/030188
【国際公開番号】WO2004/027049
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(505430791)マルチセル・イミュノセラピューティクス,インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】