説明

抗原製剤

【課題】多糖及び糖ペプチドを含む、水溶液に溶解する抗原物質(ASMP)の調製方法を提供すること。
【解決手段】多糖及び/又は糖ペプチドを含む、水溶液に溶解する抗原物質(ASMP)の調製方法であって、トリコフィトン、ミクロスポルム又はカンジダ属の好ケラチン性真菌又は酵母の真菌細胞を水性アルカリ条件下で処理する工程、その調製物の固相と液相を分離する工程、分離後にその上清を鉱酸又は有機酸で処理する工程、及び分離後にその上清からASMPを沈殿させる工程、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ケラチン性真菌及び酵母から調製可能な多糖及び/又は糖ペプチドを含む抗原製剤、その抗原製剤の調製方法、アレルギーの予防と治療用を含むがそれらに限定されない及び免疫応答をモジュレートするための医薬物質又はワクチンとしての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人口の20%を超えるヒトが様々な形のアレルギーに罹患しており、その驚くべき流行の増加、過去10年間の罹患率及び死亡率から環境疾患と呼ばれるようになった(非特許文献1)。ヒトと動物は、同様の程度までアレルギーに罹患している。
アレルギーの発症には、免疫反応が重要な役割を果たしてい(非特許文献2)。原則として2つの異なる種類のアレルギー反応が述べられている。1つは、即時型過敏症(ITH)であり、アレルゲンに対する最大アレルギー応答が数分から数時間で見られる。第2は遅延型過敏症(DTH)である。DTHの場合、アレルゲンに対するアレルギー応答は、通常、24〜48時間後に最大に達する。おそらくITHは主にIgE経路によって仲介されるが、DTHは更に複雑である。DTHの発症には、更に細胞仲介応答(即ち、Bリンパ球及びTリンパ球)が関係しているらしい。例えば、アレルギー供与動物から非アレルギー受容動物へリンパ球と抗体を移入した後、受容動物はDTHを発症した(非特許文献3)。
環境抗原に直接曝露したために最もアレルギーに罹った組織は上皮組織、特に皮膚である。例えば、皮膚科クリニックでは急性アレルギー性接触性皮膚炎及び慢性アレルギー性接触性湿疹が全皮膚病の15%とみなしている。アレルギー性喘息はヒトにおける全喘息症例の約20%とみなしている。
【0003】
ITHとして分類されるアレルギー疾患は、例えば、アトピー性湿疹、アレルギー性気管支喘息、枯草喘息、鼻炎、結膜炎である。これらは、同様に慢性に移行することがあり、IgE依存性反応とのみみなされるべきではない。DTHの例は、急性アレルギー性接触性皮膚炎及び慢性アレルギー性接触性湿疹であり、表皮の症状によってDTH(IV型)として分類される。そのような患者は、以前にアレルゲンとの接触によって感作されており、過敏症を発症している。アレルゲンに新たに接触すると急性、亜急性又は慢性炎症性接触性皮膚炎が引き起こされるのである。
動物クリニックからのアレルギー性皮膚炎の一例は、スウィートそう痒症又はクインズランドそう痒症とも呼ばれるサマー湿疹である。サマー湿疹は、ウマのアレルギー性皮膚炎であり、アトピー型のアレルギー疾患に属する(I型及びIV型反応を含む)。サマー湿疹は、カ科及びヌカカ科の小昆虫の刺傷によって引き起こされ、主にたてがみ、しっぽ及び腹部の部分に永続的なびらん及び滲出を呈する皮膚病変を特徴とする。罹患した動物は、刺激、即ち、接触、雨、風等に対して皮膚の強い感受性を示し、全体の健康状態及び動作に障害をきたす。他のアレルギーのようにこの疾患の発症は栄養によっても影響されると考えられる。この疾患の症状は3月から9月までだけ目に見えるが、皮膚のアレルゲン誘発感受性は一年中認められる。サマー湿疹は、アレルギーの研究及び抗アレルギー物質の開発の興味深い一般モデル系となる。
アレルギーの多くの治療が提案されており、臨床像に左右される。急性アレルギー性接触性皮膚炎、慢性アレルギー性接触性湿疹及び/又はアトピー性湿疹の治療については、通常、糖質副腎皮質ステロイド、抗菌物質、抗炎症剤及び/又はカルシウムを含む親油性クリームが用いられる。サマー湿疹の治療については、種々の化合物、例えば、ステロイド製剤、殺虫剤、種々のガレヌス製剤、サリチル酸塩、油又は微生物から単離したペプチドが局所又は非経口適用されている。上記の治療は全て対症療法であり、アレルギーの原因療法ではない。
免疫応答障害又は免疫不全は、たいていアレルギーの発症に重要な役割を果たしている。従って、湿疹、アトピー性湿疹、皮膚膿瘍及び自己免疫疾患の治療については、免疫治療法、例えば、BCG、レバミゾール及び他の刺激物質のような免疫刺激物質の投与が用いられた(非特許文献4)。
【0004】
ノミアレルギー性皮膚炎の治療については、抗体由来ペプチドの投与が巧妙に用いられた(特許文献1)。アトピー性湿疹の治療については、脱感作を用いて相対的に良好な結果が得られた(非特許文献4)。
アレルギーを治療するのに様々な異なった方法があるにもかかわらず我々の知る限り好ケラチン性真菌又は酵母から調製可能な抗原化合物はアレルギーの治療に用いられていない。
本発明の関係において、“可溶性”又は“不溶性”という用語は、水溶液中の溶解性を意味する。“抗原製剤”という用語は、抗原又は免疫原応答を誘発することができる物質の組成物を意味する。“免疫応答をモジュレートする”という用語は、免疫応答を刺激又は亢進する本発明の抗原製剤の能力を意味し、例えば、細胞培養内でリンパ球の増殖を刺激する能力によって証明される(詳細な説明は非特許文献5と6に見出される)。
【0005】
【特許文献1】英国特許出願第8913737号
【非特許文献1】Sutton & Gould,Nature 1993,366,p.421-428
【非特許文献2】Paul,William E.(Edit.),Fundamental Immunology,Raven Press Books Ltd.,ニューヨーク,1984
【非特許文献3】Askenase,P.W.(1973),J.exp.Med.,138,p.1144-1155
【非特許文献4】A.M.Tschernucha(Edit.),Koscha,Medicina,1982,モスクワ
【非特許文献5】Strubeら(1989)Vet.Med.Rev.,60,p.3-15,
【非特許文献6】Buettner M.(1993)Comp.Immun.Microbiol.Infect.Dis.,16,No.1,p.1-10
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで驚くべきことに、好ケラチン性真菌又は酵母から調製可能な抗原製剤が特に哺乳動物においてアレルギーの予防と治療のために及び免疫応答をモジュレートするために用いられることが見出された。
そこで、好ケラチン性真菌及び酵母から抗原物質を調製する方法も開発された。その方法に従って調製可能な抗原製剤は、多糖及び/又は糖ペプチドを含む。抗原製剤は、動物及びヒトの治療用、特にアレルギーの治療用及び免疫応答をモジュレートするための医薬組成物及びワクチンとして用いられる。本発明の医薬組成物の効用は、免疫学的及び薬理学的であることが理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の抗原物質は、好ケラチン性真菌又は酵母、例えば、真菌又は酵母細胞壁に由来する物質から調製される。
本発明の抗原製剤の調製については、3種類の異なる方法が開発された。その方法によれば、3種類の異なる抗原画分(ASMP、ANMP又はAEMP)は、以後一般に“画分”と呼ばれる、好ケラチン性真菌及び酵母から調製される。1種類を超える画分を含む抗原製剤は、以後“複合製剤”又は短く“複合体”と呼ばれる。
方法1: 本方法に従って調製可能な画分は、多糖及び/又は糖ペプチドを含む可溶性抗原物質(ASMP)からなる。実施例1に詳述される本方法は、概要として下記の工程を含む。
好ケラチン性真菌又は酵母を、欧州特許第0564620号に記載されるような寒天平板上で培養する。好適培地は、例えば、Oxoid製の麦芽エキス寒天である。好ケラチン性真菌又は酵母の増殖を行わせる他の培地も用いられる。得られた真菌バイオマスを取り上げ、アルカリ水溶液で処理する。好ましいアルカリ水溶液は、好適濃度0.1〜5%(w/v)のNaOH又はKOHである。アルカリ処理は、20〜150℃で30時間が好ましい。水性アルカリ条件下で処理した後、調製物の固相と液相を遠心分離、ろ過又は沈降等で分離する。好ましくは、分離は、真菌細胞片の良好な分離を行わせる遠心分離、例えば約3500gの遠心力で達成される。水性アルカリ条件下での処理、及び分離工程は、数回繰り返される。
アルカリ処理後、得られた上清を水性酸性条件下で、例えば、0.2〜1.5M有機酸又は0.05〜1M鉱酸処理する。例えば、HCl又は酢酸が好ましくはpH2.5〜4.5のpH値で用いられる。好ましくは、水性酸性条件下での処理は4〜8℃の温度で2〜4時間であり、その後に固体層と液体層の分離が起こる。水性酸性条件下での処理、及び分離工程は、好ましくは上記の条件下で数回繰り返される。
【0008】
次に、分離工程からの上清を沈殿工程に供する。好ましくは、沈殿は、上清に適当な有機溶媒、例えば、低級アルカノールのようなアルコール、例えば、メタノール又はエタノールを加えることにより行われる。2〜5容量のアルコールに対して1容量の上清の割合から抗原物質の良好な沈殿が生じる。当業者に既知の他の非アルコール沈殿方法も用いられ、例えば、硫酸アンモニウム又は他の塩沈殿から抗原物質の沈殿が生じる。次に、固相を分離工程に、好ましくは上記の条件下に供する。得られた固相を回収し、場合によっては水溶液、好ましくは蒸留水に溶解する。典型的には25〜100mlが用いられる。最後に、ASMP製剤を凍結乾燥し、乾燥条件下で長時間貯蔵される。
方法2: 本方法に従って調製可能な画分は、多糖及び/又は糖ペプチドを含む不溶性抗原物質(ANMP)からなる。実施例2に詳述される本方法は、概要として下記の工程を含む。
好ケラチン性真菌又は酵母を、欧州特許第0564620号に記載されるような寒天平板上で培養する。好適培地は、例えば、Oxoid製の麦芽エキス寒天である。好ケラチン性真菌又は酵母の増殖を行わせる他の培地も用いられる。得られた真菌バイオマスを取り上げ、アルカリ水溶液で処理する。好ましいアルカリ水溶液は、好適濃度0.1〜5%(w/v)のNaOH又はKOHである。アルカリ処理は、20〜150℃で30時間が好ましい。水性アルカリ条件下で処理した後、調製物の固相と液相を遠心分離、ろ過又は沈降等で分離する。好ましくは、分離は、真菌細胞片の良好な分離を行わせる遠心分離、例えば約3500gの遠心力で達成される。水性アルカリ条件下での処理、及び分離工程は、数回繰り返される。アルカリ処理後、固相を鉱酸又は有機酸で処理する。好ましくは0.2〜1.5M酢酸又は0.05〜1MHClを固相に70〜100℃の温度で0.5〜3時間加える。酸処理後、固相を水溶液、好ましくは蒸留水で洗浄する。有利には、洗浄は約5回繰り返される。最後に固相を蒸留水に懸濁させる。
方法3: 本方法に従って調製可能な画分は、多糖及び/又は糖ペプチドを含む外因性抗原物質(AEMP)からなる。実施例3に詳述される本方法は、概要として下記の工程を含む。
【0009】
好ケラチン性真菌又は酵母を、240時間水溶液中でインキュベートするか又は液体培養液中で培養する(ここで溶液又は培養液の容量は一次容量として定義される)。蒸留水(実施例3.I.を参照されたい)及び欧州特許第0564620号に記載された培養液が用いられる。インキュベート又は培養した後、真菌細胞を、例えば、遠心分離、ろ過又は沈降、好ましくは上記の条件下の遠心分離で分離する。得られた上清を凍結乾燥し、引き続き水に溶解する。好ましくは、水の容量は0.1〜0.2容量の一次容量(PV)と同量である。次に、得られた溶液を沈殿工程に供する。好ましくは、沈殿は、上清に適当な有機溶媒、例えば、低級アルカノールのようなアルコール、例えば、メタノール又はエタノールを加えることにより行われる。2〜5容量のアルコールに対して1容量の上清の割合から抗原物質の良好な沈殿が生じる。当業者に既知の他の非アルコール沈殿方法も用いられ、例えば、硫酸アンモニウム又は他の塩沈殿から抗原物質の沈殿が生じる。得られた沈殿を回収し、場合によっては水性溶媒、好ましくは蒸留水に溶解する。好ましくは、0.5〜50mgの沈殿を1mlの水性溶媒に溶解する。最後に、AEMP溶液を凍結乾燥し、乾燥条件下で、好ましくは2〜10℃で長時間貯蔵される。
上で定義された画分が調製可能である好ましい真菌属は、トリコフィトン(Trichophyton)、ミクロスポルム(Microsporum)又はカンジダ(Candida)である。
好ましい菌種は下記のものである。
‐トリコフィトン・エクイナム(Trichophyton equinum)、
‐トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、
‐トリコフィトン・サルキソビイ(Trichophyton sarkisovii)、
‐トリコフィトン・ベルコサム(Trichophyton verrucosum)、
‐ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)、
‐ミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)、又は
‐カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)。
【0010】
上記菌種の好ましい菌株は次のものである。
‐トリコフィトン・エクイナム DSM No.7276、
‐トリコフィトン・メンタグロフィテス DSM No.7279、
‐トリコフィトン・サルキソビイ DSM No.7278、
‐トリコフィトン・ベルコサム、DSM 7277、
‐ミクロスポルム・カニス DSM No.7281、
‐ミクロスポルム・カニス オベサム(obesum)型 DSM No.7280、
‐ミクロスポルム・カニス ディストルタム(distortum)型 DSM No.7275、
‐ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274、又は
‐カンジダ・アルビカンス DSM No.9656。
上記の菌株は全て、出願人により微生物の寄託に関するブダペスト条約の規定によってDSM(“Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH”,Mascheroder Weg 1B,D-38124ドイツ国ブラウンシュワイク)に寄託されている。カンジダ・アルビカンス DSM No.9656を除く菌株は全て、1991年10月21日出願のUSSR特許出願第5006861号及び対応出願、即ち、1992年10月17日出願の欧州特許第0564620号の公開特許出願に記載されている。
画分は、得られる菌種によって下記のものに従って呼ばれる。
【0011】
下記の菌種に由来する画分:
(i) トリコフィトン・エクイナムはASMP-TE、ANMP-TE又はAEMP-TEと呼ばれる、
(ii) トリコフィトン・メンタグロフィテスはASMP-TM、ANMP-TM又はAEMP-TMと呼ばれる、
(iii) トリコフィトン・サルキソビイはASMP-TS、ANMP-TS又はAEMP-TSと呼ばれる、
(iv) トリコフィトン・ベルコサムはASMP-TV、ANMP-TV又はAEMP-TVと呼ばれる、
(v) ミクロスポルム・カニスはASMP-MC、ANMP-MC又はAEMP-MCと呼ばれる、
(vi) ミクロスポルム・ジプセウムはASMP-MG、ANMP-MG又はAEMP-MGと呼ばれる、
又は(vii) カンジダ・アルビカンスはASMP-CA、ANMP-CA又はAEMP-CAと呼ばれる。
個々の菌株に関する情報が示される場合、菌種の略号に続いて個々のDSM寄託物の数字が示される。例えば、AEMP−CA9656は、カンジダ・アルビカンス株 DSM No.9656から調製可能なAEMP画分を意味する。
上記方法(1〜3)のいずれかで定義される調製可能な画分は、上記真菌の少なくとも1種から調製可能な少なくとも1種の単一抗原を含む。本発明の抗原製剤は、上で定義した画分の少なくとも1種又はその組合わせを含む。
【0012】
実施例1及び3に記載される抗原製剤(ASMP及びAEMP)は、下記のものを含む。
1)単糖、アミノ酸及びヌクレオチドを含み、大部分は高分子構造で結合されており、少ない部分は遊離モノマーである。
2)主として、単糖単位:マンノース、ガラクトース、グルコース及びキシロース等を異なる相対量で含む。
3)単糖の有意量で形成された高分子構造の混合物を含む。高分子構造の有意部分は、20000kDより大きい分子量を示す。
4)遊離又は結合アミノ酸の少量を含む。
5)DNaseIによる消化に感受性のあることがわかったDNA分子の少量を含む。
抗原製剤ASMP及びAEMPのNMR分光法から図1〜図4に示されるNMRスペクトログラムが得られた。
ケミカルシフト及びシグナル多重性(表12に纏めた)は炭水化物とアミノ酸の文献データと一致する。
【0013】
AEMP及びASMPの画分、例えば、MG 7274、TM 7279及びCA 9656については、炭水化物シグナルは3.2〜5.5 ppmの範囲であり、アミノ酸シグナルは0.75〜3.45の範囲である(αプロトンを含まない)。
ASMPは、酢酸塩−CH3の典型的シグナル1.92 ppmを示す。
AEMP画分は、二糖及びアミノ酸の典型的シグナルを示す。例えば、TM 7279スペクトルは、7.15〜7.9 ppmの範囲にフェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンのような芳香族アミノ酸のシグナルを示す。
ASMP又はAEMPの単一画分については、0.1〜50mg/mlの濃度が好ましい。ANMPの単一画分については、0.1〜5%(v/v)の濃度が好ましい。
本発明の抗原製剤の好適実施態様は、例えば、下記の画分の組合わせ(複合体)を含んでいる。
複合体1は、ASMP−TMとASMP−MGとASMP−CAを含む。好ましくは、各画分の濃度は0.1〜50mg/mlである。複合体1の非常に好適な実施態様は、ASMP−TM7279、ASMP−MG7274及びASMP−CA9656の組合わせである。
複合体1.1は、ASMP−MGとASMP−CAを含む。好ましくは、各画分の濃度は、0.1〜50mg/mlである。複合体1.1の非常に好適な実施態様は、ASMP−TM7274及びASMP−CA9656の組合わせである。
【0014】
複合体2は、ANMP−TMとANMP−MGとANMP−CAを含む。好ましくは、各画分の濃度は0.1〜50%(v/v)である。複合体2の非常に好適な実施態様は、ANMP−TM7279、ANMP−MG7274及びANMP−CA9656の組合わせである。
複合体3は、AEMP−TMとAEMP−MGとAEMP−CAを含む。好ましくは、各画分の濃度は0.1〜50mg/mlである。複合体3の非常に好適な実施態様は、AEMP−TM7279、AEMP−MG7274及びAEMP−CA9656の組合わせである。
複合体4は、ANMPとAEMPを含む。次の画分の組合わせが好ましい。
(1)ANMP−CA及びAEMP−TM又は(2)ANMP−MG、ANMP−TM及びAEMP−TM。好ましくは、ANMPの濃度は0.1〜50%(v/v)であり、AEMPは0.1〜50mg/mlである。複合体4の非常に好適な実施態様は下記の組合わせである。
4.1 ANMP-CA9656と 4.2 ANMP-MG7274と AEMP-TM7279; ANMP-TM7279と AEMP-TM7279; 複合体5は、ANMPとASMPを含む。好ましい組合わせは、ANMP−MGとANMP−TMとASMP−CAである。好ましくは、個々のANMP画分の濃度は0.1〜50%(v/v)であり、個々のASMP画分の濃度は0.1〜50mg/mlである。ANMP−MG7274とANMP−TM7279とASMP−CA9656の組合わせが非常に好ましい。
【0015】
本発明の好ましい抗原複合体は、また、例えば、ASMPとAEMP又はASMPとAEMPとANMPをASMP及びAEMPの濃度が0.1〜50mg/ml及びANMPの濃度が0.1〜50%(v/v)で含む。
本発明の抗原製剤は、不利な生理的副作用を引き起こさずバッファー、溶液又はアジュバント、例えば、塩溶液、乳酸塩溶液又はリンゲル液が挙げられる適切な生理的に許容しうる担体と共に適用される。好ましい担体は、例えば、担体A:0.85%(w/v)NaCl;担体B:5%(w/v)グルコース、0.3%(w/v)肉エキス“lab-lemco”(Oxoid)及び0.1%(w/v)酵母エキス(Oxoid);担体C:RPMI 1640培養液(Servaから購入した、カタログNo.12-702)である。
本発明の抗原製剤は、それ自体又は注射用液剤、クリーム剤、噴霧剤、エアゾル剤、錠剤及び当業者に既知の他の適用剤形として適用される。本発明の抗原製剤は、また、非常に効率のよいワクチンを供給することができる。
本発明の抗原製剤は、免疫系の細胞の増殖を促進することができ、免疫応答をモジュレートすることができる。本発明の抗原製剤は、また、ヒトケラチノサイトの増殖を阻止することができる。
【0016】
本発明の抗原製剤は、アレルギー反応、特に上皮組織の、更には皮膚のアレルギー反応に対して高度の耐性を与えることができる。アレルギーを予防及び治癒するために興味深いものであり、進行中の、実験動物(即ち、モルモット及びホワイト系マウス)及びウマ(即ち、交雑種及びアイスランド産ウマ)において生体内で証明される不利な副作用を示さない。
特に、急性アレルギー性皮膚炎及び皮膚病変は、本発明の抗原製剤を投与することにより、即ち、ワクチン注射することにより副作用なく効果的に治癒される。本発明の抗原製剤を筋肉内注射した後、アレルギー性皮膚炎に罹患した個体の皮膚のアレルギー性炎症、かゆみ及び皮膚の感受性の症状は消失する。全てのアレルギー症状からの完全な回復は最後の注射の2〜8週間後に得られ、刺激物質に対する皮膚のアレルゲン誘発感受性は消失した。更に、最後の注射の1〜6週間後にはかゆみも消える。
好適実施態様においては、本発明の抗原製剤は、ウマ、特にアイスランド産ウマのいわゆるサマー湿疹を防御及び治癒する。本発明の抗原製剤を1〜3回筋肉内又は皮内注射した後、サマー湿疹に罹患したウマのサマー湿疹が治癒及び防御される。複合体1及び1.1が好ましい。
好適実施例においては、本発明の抗原製剤は、また、哺乳動物において脱毛症を防御及び治癒する。本発明の抗原製剤を1〜3回筋肉内又は皮内注射した後、脱毛症に罹患した哺乳動物の脱毛症が治癒又は防御される。複合体1又は1.1が好ましい。
【0017】
他の好適実施態様においては、本発明の抗原製剤は、哺乳動物の毛の状態及び毛の季節的変化を回復する。1〜3回の筋肉内又は皮内注射した後、毛の状態は著しく回復し、毛の不完全変化に罹った個体においては正常な季節毛への完全変化がもたらされる。複合体1又は1.1が好ましい。
他の好適実施態様においては、本発明の抗原製剤は、湿疹を防御及び治癒する。本発明の抗原製剤を1〜3回筋肉内又は皮内注射した後又は局所処置した後、湿疹に罹患した哺乳動物、即ち、ヒトの湿疹が治癒又は防御される。画分ASMP−MG、ASMP−CA及びASMP−TM、即ち、ASMP−MG7274、ASMP−CA9656及びASMP−TM7279又は複合体1及び1.1が好ましい。
好適実施態様においては、本発明の抗原製剤は、また、神経皮膚炎を防御及び治療する。本発明の抗原製剤を局所処置した後、神経皮膚炎に罹患した哺乳動物、即ち、ヒトの神経皮膚炎が治癒又は防御される。画分ASMP−MG、ASMP−CA及びASMP−TM、即ち、ASMP−MG7274、ASMP−CA9656及びASMP−TM7279又は複合体1及び1.1が好ましい。
本発明の抗原製剤は、Urban & Schwarzenberg,“Klinische Immunologie”,Peter,H.H.(edit.),publ.1991,Urban & Schwarzenberg,ドイツ国ミュンヘンに記載されたもののような種々の症状を治療するために用いられる。例えば:
【0018】
1.アレルギー性気道疾患
1.1.アレルギー性鼻炎及び結膜炎
1.1.1.季節的鼻腔結膜炎
1.1.2.多年性鼻炎
1.2.気管支喘息
1.3.喘息状態
1.4.小児喘息
1.4.1.感染性細気管支炎後の閉塞性肺疾患
1.4.2.軽度エピソード又は軽度多年性気管支喘息
1.4.3.重度多年性気管支喘息
2.アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
3.食物アレルギー
3.1.IgE仲介食物アレルギー
3.1.1.乳児のIgE仲介食物アレルギー
3.1.2.幼少年及び成人のIgE仲介食物アレルギー
3.2.IgE及びT細胞仲介食物アレルギー
3.3.牛乳不耐性
3.4.ハイナー症候群
3.5.好酸球性胃腸炎
3.6.セリアック病
4.昆虫刺傷アレルギー
【0019】
5.じんま疹(全ての形状)
5.1.接触性じんま疹
5.2.アレルギー反応に随伴するじんま疹
5.3.添加物及びプロスタグランジン合成のインヒビターに対する不耐性に随伴するじんま疹(仮性アレルギー)
5.4.物理性じんま疹
5.4.1.皮膚描記症(人工じんま疹)
5.4.2.コリン性及びアドレナリン性じんま疹
5.4.3.寒冷じんま疹
5.4.4.光じんま疹
5.4.5.気圧じんま疹
5.4.6.他のまれな物理性じんま疹
5.5.血管炎じんま疹
5.6.肥満細胞腫及び色素性じんま疹
5.7.感染症に随伴するじんま疹
5.8.免疫甲状腺炎に随伴するじんま疹
5.9.じんま疹及びアミロイドーシス
6.血管浮腫
6.1.遺伝性血管神経性浮腫(HANE)
6.2.後天性血管神経性浮腫
7.アトピー性皮膚炎、アトピー性湿疹
8.薬物アレルギー
【0020】
【表1】

【0021】
本発明は、更に、1990年に人から単離された流行菌株No.008の培養形態学的特徴の安定化及び弱毒化に基づいて直接選択することにより得られたカンジダ・アルビカンス株DSM No.9656に関する。
カンジダ・アルビカンス株DSM No.9656の生物学的性質を表1に記載する。
カンジダ・アルビカンス株DSM No.9656は、集団安定性、栄養培地に長時間通過させることによる形態学的特徴及び毒性の低い流行菌株と異なる。本発明の抗原製剤の調製法の教示に従い、本発明の非常に効果的かつ安全な抗原製剤がこの菌株から調製される。
当業者は、本発明が目的を行うために及び言及された結果及び利点並びにその中の固有のものを行うために十分に修正されることを容易に理解するであろう。本明細書に記載された化合物、方法及び技術は、現在代表的な好適実施態様であり、例示するものであり、かつ範囲を限定するものではない。
これまで本発明を一般的に記載してきたが、具体的な説明によって示されかつ本発明を限定するものではない下記の実施例によって本発明がより容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0022】
全ての実施例について、3000〜3500gの遠心力で約30〜50分間遠心分離を行った。培地をOxoid(Unipath GmbH,Am Lippeglacis 6-8,46483 Wesel,ドイツ)又はServa(Serva Feinbiochemica GmbH & Co.KG,Carl-Benz-Str.7,69115 Heidelberg,ドイツ)から購入した。特にことわらない限り、真菌をOxoidカタログ“5.aktualisierte deutsche Ausgabe”又は欧州特許第0564 620号に記載されているように培養した。本発明の抗原製剤の調製に用いられる真菌株は、N.V.Mazkevitch,1981,“Spontannaja ismentchivost ikariologia nesovershennich gibov”,Isdatelstwo Nauka,モスクワ; 及びIvanova,L.G.,1992,“Sistematika,morphologitcheskaja charakteristika,biologitcheskii svojstva vosbuditelej dermatophitosov,obshih dljagivotnih i tcheloveka”,モスクワ,モスクワ大学図書館に記載されるように真菌株の選択及び弱毒化によって得られた。哺乳動物の細胞培養物の基本的培養技術は、Doyle,Griffiths & Newell(Eds.),Cell & Tissue Culture: Laboratory Procedures,John Wiley & Sons(1995)に容易に見出される。ケラチノサイト分析については、HaCaT細胞を用いた(Boukampら,(1988),J.Cell Biol.,106,p.761-771,Ryleら(1989),Differentiation,40,p.42-54)。単離したケラチノサイト又は他のケラチノサイト系も用いられる。ウマリンパ球は、Friemel,H.,“Immunologische Arbeitsmethoden”,publ.VEB Gustav Fischer Verlag,Jena,1984; 又はPaul,E.,“Fundamental Immunology”,publ.Raven Press,ニューヨーク,1984に記載されるように単離及び培養した。ラジオアッセイは、実質的にBoehnckeら,1994,Scand.J.Immunol.39,p.327-332及びその中に引用された文献に記載されるように行った。NaOH、KOH、HCl及び酢酸を水溶液として調製した。特にことわらない限り、可溶性という用語は水溶液中の溶解性を意味する。下記の実験に用いられる生理的に許容しうる担体は、例えば、担体A: 0.85%(w/v)NaClを含む水溶液; 担体B: 5%(w/v)グルコース、0.3%(w/v)肉エキス“lab lemco”(Oxoid)及び0.1%(w/v)酵母エキス(Oxoid)を含む水溶液; 担体C: 培養液 RPMI 1640(Serva)である。
【0023】
実施例1
多糖及び/又は糖ペプチドを含む可溶性抗原物質(ASMP)を、トリコフィトン・メンタグロフィテス(ASMP−TM)、ミクロスポルム・ジプセウム(ASMP−MG)又はカンジダ・アルビカンス(ASMP−CA)から下記の手順に従って調製した。
真菌を欧州特許第0564620号に記載されるように寒天平板上で培養した。真菌バイオマスを取り上げ、下記のものを生産した。
I.ASMP−TM:
(i)トリコフィトン・メンタグロフィテスバイオマスを4.5%(w/v)NaOHで約140℃において1時間処理し、続いて45分間遠心分離した。上清に4M酢酸溶液を最終pHが3.5になるまで加えた。2時間後、沈降物を遠心分離で分離し、3容量のエタノールを1容量の上清に加えた。アルコール沈殿から得られた沈降物を遠心分離で沈降させ、蒸留水に溶解した。最後に個々のASMP製剤を凍結乾燥した。
(ii)トリコフィトン・メンタグロフィテスバイオマスを0.2%(w/v)KOHで約140℃において1時間処理し、続いて遠心分離した。上清を1M HCl溶液で最終pHが3.5になるまで4〜10℃で4時間処理した。次に、沈降物を遠心分離で分離し、2容量のエタノールを1容量の上清に加えた。アルコール沈殿から得られた沈降物を遠心分離で沈降させ、蒸留水に溶解した。最後に個々のASMP製剤を凍結乾燥した。
【0024】
II.ASMP−MG:
(i)ミクロスポルム・ジプセウムバイオマスを0.2%(w/v)NaOHで約140℃において2時間処理し、続いて遠心分離した。沈降物を再び0.2%(w/v)NaOHで約140℃において2時間処理し、続いて遠心分離し、この手順を3回繰り返した。次に、最後の上清を8M酢酸溶液で最終pHが3.5になるまで18〜20℃で3時間処理した。次に、沈降物を遠心分離で分離し、3容量のエタノールを1容量の上清に加えた。アルコール沈殿から得られた沈降物を遠心分離で沈降させ、蒸留水に溶解した。最後に個々のASMP製剤を凍結乾燥した。
(ii)ミクロスポルム・ジプセウムバイオマスを3%(w/v)KOHで約75℃において6時間処理し、続いて遠心分離した。沈降物を再び3%(w/v)KOHで約75℃において6時間処理し、続いて遠心分離した。次に、上清を0.5M HCl溶液で最終pHが3.5になるまで4〜10℃で4時間処理した。次に、沈降物を遠心分離で分離し、3容量のメタノールを1容量の上清に加えた。アルコール沈殿から得られた沈降物を遠心分離で沈降させ、蒸留水に溶解した。最後に個々のASMP製剤を凍結乾燥した。
III.ASMP−CA:
(i)カンジダ・アルビカンスバイオマスを3.0%(w/v)NaOHで約75℃において6時間処理し、続いて遠心分離した。沈降物を再び3.0%(w/v)NaOHで約75℃において6時間処理し、続いて遠心分離し、次に、最後の上清を12M酢酸溶液で最終pHが3.5になるまで4〜10℃で2時間処理した。次に、沈降物を遠心分離で分離し、2容量のメタノールを1容量の上清に加えた。アルコール沈殿から得られた沈降物を遠心分離で沈降させ、蒸留水に溶解した。最後に個々のASMP製剤を凍結乾燥した。
(ii)カンジダ・アルビカンスバイオマスを4.5%(w/v)KOHで約35℃において3時間処理し、続いて遠心分離した。沈降物を再び4.5%(w/v)NaOHで約35℃において3時間処理し、続いて遠心分離し、この手順を3回繰り返した。次に、最後の上清を0.25M HCl溶液で最終pHが3.5になるまで18〜20℃で4時間処理した。次に、沈降物を遠心分離で分離し、2容量のエタノールを1容量の上清に加えた。アルコール沈殿から得られた沈降物を遠心分離で沈降させ、蒸留水に溶解した。最後に個々のASMP製剤を凍結乾燥した。
【0025】
実施例2
多糖及び/又は糖ペプチドを含む不溶性抗原物質(ANMP)を、トリコフィトン・メンタグロフィテス(ANMP−TM)、ミクロスポルム・ジプセウム(ANMP−MG)又はカンジダ・アルビカンス(ANMP−CA)から下記の手順に従って調製した。
真菌を欧州特許第0564620号に記載されるように寒天平板上で培養した。真菌バイオマスを取り上げ、下記のものを生産した。
I.ANMP−TM:
(i)トリコフィトン・メンタグロフィテスバイオマスを0.2%(w/v)NaOHで約35℃において24時間処理し、続いて遠心分離した。沈降物を0.3M酢酸で約60℃において約3時間処理し、蒸留水で5回洗浄した。各々洗浄工程に続いて遠心分離した。最後の沈降物を0.85%(w/v)NaCl水溶液(担体A)に最終濃度0.5%(w/v)ANMP−TMまで懸濁した。ANMP−TM製剤を2〜10℃で浮遊液として貯蔵した。
(ii)トリコフィトン・メンタグロフィテスバイオマスを0.2%(w/v)KOHで約35℃において24時間処理し、続いて遠心分離した。沈降物を0.1M HClで約70℃において約30分間処理し、蒸留水で5回洗浄した。各々洗浄工程に続いて遠心分離した。最後の沈降物をRPMI 1640(担体C)に最終濃度1.5%(v/v)ANMP−TMまで懸濁した。ANMP−TM製剤を2〜10℃で浮遊液として貯蔵した。
【0026】
II.ANMP−MG:
(i)ミクロスポルム・ジプセウムバイオマスを3%(w/v)NaOHで約75℃において6時間処理し、続いて遠心分離した。沈降物を再び3%(w/v)NaOHで約75℃において6時間処理し、続いて遠心分離した。得られた沈降物を0.7M酢酸で約60℃において約4時間処理し、蒸留水で5回洗浄した。各々洗浄工程に続いて遠心分離した。最後の沈降物を5%(w/v)グルコース、0.1%(w/v)酵母エキス(Oxoid製)及び0.3%(w/v)肉エキス“lab lemco”(Oxoid製)を含む水溶液(担体B)に最終濃度2.5%(v/v)ANMP−MGまで懸濁した。ANMP−MG製剤を2〜10℃で浮遊液として貯蔵した。
(ii)ミクロスポルム・ジプセウムバイオマスを3%(w/v)KOHで約35℃において3時間処理し、続いて遠心分離した。沈降物を再び3%(w/v)KOHで約35℃において3時間処理し、続いて遠心分離し、この手順を3回繰り返した。得られた沈降物を0.5M HClで約80℃において約30分間処理し、蒸留水で5回洗浄した。各々洗浄工程に続いて遠心分離した。最後の沈降物をRPMI1640(担体C)に最終濃度2.0%(v/v)ANMP−MGまで懸濁した。ANMP−MG製剤を2〜10℃で浮遊液として貯蔵した。
III.ANMP−CA:
(i)カンジダ・アルビカンスバイオマスを4.5%(w/v)NaOHで約140℃において2時間処理し、続いて遠心分離した。沈降物を再び4.5%(w/v)NaOHで約140℃において2時間処理し、続いて遠心分離し、この手順を3回繰り返した。得られた沈降物を1M酢酸で約60℃において1時間処理し、蒸留水で5回洗浄した。各々洗浄工程に続いて遠心分離した。最後の沈降物を0.85%(w/v)NaCl水溶液(担体A)に最終濃度1.5%(v/v)ANMP−CAまで懸濁した。ANMP−CA製剤を2〜10℃で浮遊液として貯蔵した。
(ii)カンジダ・アルビカンスバイオマスを4.5%(w/v)KOHで約140℃において2時間処理し、続いて遠心分離した。沈降物を再び4.5%(w/v)NaOHで約140℃において2時間処理し、得られた沈降物を0.1M HClで約100℃において約30分間処理し、蒸留水で5回洗浄した。各々洗浄工程に続いて遠心分離した。最後の沈降物をRPMI 1640(担体C)に最終濃度2.5%(v/v)ANMP−CAまで懸濁した。ANMP−CA製剤を2〜10℃で浮遊液として貯蔵した。
【0027】
実施例3
多糖及び/又は糖ペプチドを含む外因性抗原物質(AEMP)を、トリコフィトン・メンタグロフィテス(AEMP−TM)、ミクロスポルム・ジプセウム(AEMP−MG)又はカンジダ・アルビカンス(AEMP−CA)の液体培養液から調製した。その液体培養液を実質的に欧州特許第0564620号に記載される条件下で培養した。個々のAEMP製剤を下記の手順に従って得た。
I.AEMP−TM:トリコフィトン・メタグロフィテスを1000mlの蒸留水中26℃で240時間インキュベートした。次に、約1.2×108細胞/mlを含有する培養物を遠心分離した。上清を凍結乾燥し、100mlの蒸留水に溶解し、3容量のメタノールを加え、沈殿を水溶液に溶解した。上清を凍結乾燥し、AEMP−TMを得た。
II.AEMP−MG:ミクロスポルム・ジプセウムを200mlの担体C(RPMI 1640培養液 Serva製)中28℃で50時間培養した。約3×107細胞/mlを含有する培養物を遠心分離した。上清を凍結乾燥し、20mlの蒸留水に溶解し、2容量のメタノールを加え、沈殿を水溶液に溶解した。上清を凍結乾燥し、AEMP−MGを得た。
III.AEMP−CA: カンジダ・アルビカンスを800mlの担体B(1%(w/v)肉エキスlab-lemco Oxoid製、0.1%(w/v)酵母エキスOxoid製及び5%(w/v)デキストロース)中で37℃で30時間培養した。約108細胞/mlを含有する培養物を遠心分離した。上清を凍結乾燥し、少量の蒸留水に溶解し、2容量のメタノールを加え、沈殿を水溶液に溶解した。上清を凍結乾燥し、AEMP−CAを得た。
【0028】
実施例4
ケラチノサイト細胞培養物(HaCat細胞培養物)の増殖に対する種々の抗原製剤の影響を求めた。
I.抗原画分トリコフィトン・メタグロフィテス DSM No.7279から調製したASMP−TM、ANMP−TM及びAEMP−TM、ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274から調製したASMP−MG、ANMP−MG及びAEMP−MG及びカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から調製したASMP−CA、ANMP−CA及びAEMP−CAを種々の濃度で用いた。実施例2に従って調製されるANMP画分を凍結乾燥し、PBS(リン酸塩濃度6.7mMのリン酸塩緩衝食塩水、生理的pH約7.2;Servaから購入、カタログNo.17-516)に懸濁した。
培養については、Falcon製12ウェル組織培養プレート(平底、表面積9.6cm2)を用いた。各ウェルに約1×106細胞/ml栄養培地(10%(w/v)ウシ胎仔血清で補足したRPMI 1640)の0.15mlのケラチノサイト細胞浮遊液(HaCat細胞)、2mlの栄養培地、及びPBSに溶解した0.02〜0.1mlの抗原画分を加えた。対照ウェルに抗原画分物質を加えた。5%(v/v)CO2と37℃の温度で約48時間対照ウェルに集密的単層が生じるまで培養した。
抗原画分で処理した細胞シートの面積の大きさを比較することにより抗原画分で処理しなかった対照(対照=100%)と比べた細胞増殖の阻止を求めた。結果を表2及び3に示す。
細胞増殖の阻止は、ASMP−MG濃度0.1mg/ml、ASMP−TM濃度0.3mg/ml及びASMP−CA濃度1mg/mlで認められた。ANMP(MG、TM及びCA)については、1mg/mlの濃度で阻止が認められた。AEMP−MGについては、0.3mg/mlの濃度で細胞増殖の阻止が認められ、AEMP−CAについては1mg/mlの濃度であった。
【0029】
実施例5
ウマリンパ球の細胞増殖に対する種々の抗原製剤の影響を求めた。
抗原画分真菌株T.メタグロフィテス DSM No.7279、M.ジプセウム DSM No.7274;及びC.アルビカンス DSM No.9656のASMP及びAEMPを用いた。約40 000細胞のリンパ球(Icelandic horses製)/ml栄養培地の浮遊液を調製した。栄養培地 RPMI 1640を10%(w/v)ウシ胎仔血清で補足した。リンパ球の培養を96ウェルU-底組織培養プレート(Falcon No.3077)で行った。200μlの細胞浮遊液を各ウェルに分注し、PBSに溶解した20μlの抗原画分を加えた。対照は抗原画分物質を加えずに行った。
組織培養プレートを5%(v/v)CO2と37℃で72時間インキュベートした。
次に、栄養培地を変え、H3-チミジン含有溶液(1μl/ウェル)を加えた。第2培養工程を12時間行い、培養物をPBSで洗浄した。細胞増殖を、Boehnckeら,1994,Scand.J.Immunol.39,p.327-332に記載されるラジオアッセイ法で求めた。試験培養物と抗原画分材料に曝露しなかった対照とを比べて細胞増殖を測定した。対照値を100%として定義した。結果を表4に示す。個々の抗原画分はいずれもリンパ球細胞増殖に対して阻止又は刺激作用があった。
【0030】
実施例6
本実施例は、典型的な複合体製剤を示すものである。本実施例に記載された複合体(1〜5)は、トリコフィトン・メンタグロフィテス DSM No.7279、ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274又はカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から調製したものである。
I.複合体1は、下記の例においては、適当な担体中にASMP−TM、ASMP−MG及びASMP−CAを含む。
【0031】
【表2】

複合体1.1は、下記の例においては、適当な担体中にASMP−MG及びASMP−CAを含む。
【0032】
【表3】

II.複合体2は、下記の例においては、適当な担体中ANMP−TM、ANMP−MG及びANMP−CAを含む。
【0033】
【表4】

III.複合体3は、下記の例においては、適当な担体中にAEMP−TM、AEMP−MG及びAEMP−CAを含む。
【0034】
【表5】

IV.複合体4は、下記の例においては、適当な担体中にANMP及びAEMPを含む。
(i)複合体
4.1 ANMP-CA9656 2.5%(v/v)
AEMP-TM7279 7.1mg/ml
担体A又はB又はC中
【0035】
【表6】

V.複合体5は、下記の例においては、適当な担体中にASMP及びANMPを含む。
【0036】
【表7】

【0037】
実施例7
種々の抗原製剤の安全性を、動物モデル系(ホワイト系マウス、モルモット及びウマ)におけるワクチン注射実験で試験した。
抗原画分を、トリコフィトン・メンタグロフィテス DSM No.7279、ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274又はカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から実施例1〜3に記載されるように調製した。
ワクチン注射した動物の状態に関して下記の臨床的観察を各ワクチン注射の5日後まで毎日行った。
1.全身状態
‐食欲
‐歩行に対する影響
2.局所反応
‐注射部位の浮腫及び炎症
‐注射部位の温度変化
‐注射部位の痛みの発生
‐注射部位を薬剤で治療する必要性
I.抗原製剤を、ホワイト系マウスの腹内及びモルモットの皮下に10日の間隔で1又は2回注射した。抗原製剤、濃度及び結果を表5及び表6(A及びB)に示す。単一又は複合製剤としての真菌抗原の皮下又は腹内注射は、動物の全身状態にほとんど悪影響を及ぼさず、注射部位の局所反応は認められなかった。
II.実施例6に記載される真菌抗原の複合製剤を同じウマの異なる場所(首の左右)及び胸筋の一方に各々1回筋肉内に注射した。3頭の異なるウマに(i)妊馬、(ii)仔馬、年齢7〜8ヵ月及び(iii)牡馬、年齢6歳にワクチン注射した。抗原製剤、濃度及び結果を表7に示す。
真菌抗原の複合製剤としての筋肉内注射は、ウマの全身状態に影響を及ぼさず、注射部位の局所反応は認められなかった。これらの実験から、本発明の抗原製剤の優れた安全性が示される。
【0038】
実施例8
皮膚と毛の状態に対する種々の抗原製剤の影響を、ホワイト系マウスで実験した。
抗原製剤を、トリコフィトン・メンタグロフィテス DSM No.7279、ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274又はカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から実施例1〜3及び6に記載されるように調製した。
抗原製剤を、ホワイト系マウスの腹内に10日の間隔で2回注射した。皮膚と毛の状態の観察を5日間続けた。抗原製剤、濃度及び結果を表8に示す。抗原製剤を注射するとホワイト系マウスの皮膚と毛の状態が皮膚炎を罹患した対照マウスに比べて回復した。
【0039】
実施例9
3種類の異なる抗原製剤の効能を、プラセボ試験においてサマー湿疹に罹患したアイスランド産ウマにワクチン注射することにより実験した。
抗原製剤を、T.メンタグロフィテス DSM No.7279、M.ジプセウム DSM No.7274及びカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から実施例1〜3及び6に記載されるように調製した。個々の抗原製剤を含む担体Aの1ml容量を筋肉内に3回注射した。各々の注射の間隔は5日とした。胸筋の左右に注射を交互に投与した。抗原製剤、濃度及び結果を表9と10に示す。
ASMP−MG7274、ASMP−TM7279及びASMP−CA9656を含む抗原製剤を投与すると3回目の注射の4週間後にワクチン注射したウマ(3)全頭の完全な治癒がもたらされた。対照群(抗原を含まない担体Aの注射)のウマは回復の徴候を示さなかった。
【0040】
実施例10
3種類の異なる抗原製剤の安全性を、プラセボ試験においてサマー湿疹に罹患したアイスランド産ウマにワクチン注射することにより実験した。
抗原製剤を、T.メンタグロフィテス DSM No.7279、M.ジプセウム DSM No.7274及びカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から実施例1〜3及び6に記載されるように調製した。個々の抗原製剤を含む担体Aの1ml容量を筋肉内に3回注射した。各々の注射の間隔は5日とした。胸筋の左右に注射を交互に投与した。各々の注射後3日以内に副作用がウマに認められた。抗原製剤、濃度及び結果を表11に示す。熱又は食欲不振のような全身の副作用は認められなかった。抗原製剤の1つだけ注射部位の腫脹を引き起こした。この危険を伴わない副作用は、1頭にのみ認められた。痛みの徴候は認められなかった。
【0041】
実施例11
単一画分、ASMP−TM7279、ASMP−MG7274及びASMP−CA9656並びにASMP−TM7279、ASMP−MG7274及びASMP−CA9656を含む複合体1の抗アレルギー効能を実験動物モデルで実験した。
単一画分を、実施例1に従って調製した。複合体1は実施例1及び6に従って調製した。
CF−1マウスを、マウス耳腫脹試験のモデルと説明書に従って感作した(GadSC,Dimm BK,Dobbs DW,Reilly C,Walsh RD: Development and Validation ofan Alternative Dermal Sensitization Test: The Mouse Ear Swelling Test(MEST).Toxicology & Applied Pharmacology 84,93-114,1986)。これは、アレルギー物質を試験するよく知られ、有効性のある及びOECDが承認した試験である。実験動物における抗アレルギー効力について複合体又は単一画分の効能を証明するために、アレルゲンによって引き起こされる耳腫脹は予防されなければならない。マウス及び2種類の異なるアレルゲンを用いてプラセボ盲検法を行った。
アレルゲンに対して最も感受性のあるCF−1を用いてMESTを行った。生後6〜10週のCR−1マウスを、腹部皮膚を剃毛し、0.05mlのフロインドアジュバントを注射し、一方の試験で100μlのアレルゲン1−クロロ-2,4−ジニトロクロロベンゼン(DNCB)及び他方の試験でダニアレルゲンを剃毛した腹部皮膚に0〜4日局所投与することにより調製した。7日後、20μlのアレルゲンを試験の耳に、溶解液を対照の耳に局所投与した。24及び48時間後に耳の厚さを測定した。同じ手順を対照グループで行い、複合体、複合体の各画分の代わりにプラセボで処理した。
単一画分、ASMP−TM7279、ASMP−MG7274及びASMP−CA9656並びにASMP−TM7279、ASMP−MG7274及びASMP−CA9656を含む複合体1を投与するとダニアレルゲンで感作した後に耳腫脹が90%減少し、抗原投与の48時間後DNCBで感作した後の耳腫脹が87.5%減少した。
【0042】
実施例12
実施例1に記載されるように調製した、抗原製剤ASMP−MG7274及びASMP−CA9656を含む複合体製剤の効能を、サマー湿疹に罹患したアイスランド産ウマにワクチン注射することにより証明した。
0.2mgのMG及び0.2mgのCAを含む0.4ml容量の担体Aを3回各々の注射の間隔を5日として皮内注射すると、臨床症状の著しい減少によって証明されるように最後の注射の3週間後にワクチン注射したウマが治癒した。
実施例13
ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274から実施例1に記載されるように調製した抗原製剤の効能を、第4と第5足指間の皮膚に炎症、かゆみ及びびらんのある湿疹に罹っている41歳の男性にワクチン注射することにより証明した。
0.4mgのASMP−MG7274を含む0.1ml容量の担体Aを1回だけ皮内注射した。皮膚は、治療の4〜5日後に正常に回復した。
注射の24時間後にかゆみは消失していた。重い副作用は認められなかった。
【0043】
実施例14
カンジダ・アルビカンス DSM No.9656から実施例1(ASMP)に記載されるように調製した抗原製剤の神経皮膚炎の治療のための効能を証明した。
ASMP−CA9656をProcter & Gambleから購入した“Kamill Hand und Nagelcreme”を用いてクリームに最終濃度60mgASMP−CA9656/mlクリームまで混合した。この製剤を両耳付近の皮膚に黄色のかさぶたのある神経皮膚炎に罹っている3歳の少女に局所適用した。そのクリームを1日1回皮膚の傷部分に局所適用した。この治療の後、皮膚は正常に回復した。副作用は認められなかった。
実施例15
ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274から実施例1(ASMP)に記載されるように調製した抗原製剤の湿疹の治療のための効能を証明した。
ASMP−MG7274をProcter & Gambleから購入した“Kamill Hand und Nagelcreme”を用いてクリームに最終濃度60mgASMP−MG7274/mlクリームまで混合した。薬指に炎症、びらん及びかゆみのある湿疹に罹っている30歳の男性の皮膚の罹患部分に1日1回30日間局所適用することにより治療した。これにより、治療後に完全に治癒した。かゆみは、治療開始の数日後に消失していた。副作用は認められなかった。
【0044】
実施例16
ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274、トリコフィトン・メンタグロフィテス DSM No.7279及びカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から実施例1(ASMP)に記載されるように調製した抗原製剤の湿疹の治療のための効能を、冬毛が6月まで生えかわらなかった5歳のウマにワクチン注射することにより試験した。15mgの各抗原製剤ASMP−MG7274、ASMP−TM7279及びASMP−CA9656(最終濃度45mgASMP/ml)を含む1ml容量の担体Aを5日間隔で3回筋肉内に注射した。これにより、15日以内に正常な季節毛に完全にかわった。副作用は認められなかった。
実施例17
ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274、トリコフィトン・メンタグロフィテス DSM No.7279及びカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から実施例1(ASMP)に記載されるように調製した複合抗原製剤の脱毛症の治療のための効能を証明した。
体全体に3〜5ヵ所と7〜10ヵ所の脱毛症をもつ2頭の7歳のウマに1mlの担体A中10mgの各抗原製剤ASMP−MG7274、ASMP−TM7279及びASMP−CA9656(最終濃度30mg/ml)を含むワクチンを注射した。ワクチンを5日間隔で3回筋肉内に注射した。これにより、最後の投与の10日後に双方のウマの毛が完全に回復した。副作用は認められなかった。
【0045】
実施例18
ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274、トリコフィトン・メンタグロフィテス DSM No.7279及びカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から実施例1(ASMP)に記載されるように調製した複合抗原製剤のウマにおける脱毛症の治療のための効能を証明した。
体全体に10〜12ヵ所の脱毛症をもつ10歳のウマに1mlの担体A中15mgの各抗原製剤ASMP−MG7274、ASMP−TM7279及びASMP−CA9656(最終濃度45mg/ml)を含むワクチンを注射した。ワクチンを5日間隔で3回筋肉内に注射した。これにより、最後の投与の15日後に双方のウマの毛が完全に回復した。副作用は認められなかった。
実施例19
ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274、トリコフィトン・メンタグロフィテス DSM No.7279及びカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から実施例1(ASMP)に記載されるように調製した複合抗原製剤のイヌにおける脱毛症の治療のための効能を証明した。
体全体に10〜12ヵ所の脱毛症をもつ3歳の雌イヌに1mlの担体A中10mgの各抗原製剤ASMP−MG7274、ASMP−TM7279及びASMP−CA9656(最終濃度30mg/ml)を含むワクチンを注射した。ワクチンを5日間隔で3回筋肉内に注射した。これにより、最後の投与の15日後に毛が完全に回復した。副作用は認められなかった。
【0046】
実施例20
ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274、トリコフィトン・メンタグロフィテス DSM No.7279及びカンジダ・アルビカンス DSM No.9656から実施例1(ASMP)に記載されるように調製した複合抗原製剤のイヌにおける脱毛症の治療のための効能を証明した。
体全体に2〜4ヵ所の脱毛症をもつ5歳と8歳の2匹の雄イヌに1mlの担体A中15mgの各抗原製剤ASMP−MG7274、ASMP−TM7279及びASMP−CA9656(最終濃度45mg/ml)を含むワクチンを注射した。ワクチンを5日間隔で3回筋肉内に注射した。これにより、最後の投与の30日後に毛が完全に回復した。副作用は認められなかった。
【0047】
【表8】

【0048】
【表9】

【0049】
【表10】

【0050】
【表11】

【0051】
【表12】

【0052】
【表13】

【0053】
【表14】

【0054】
【表15】

【0055】
【表16】

【0056】
【表17】

【0057】
【表18】

【0058】
【表19】

【0059】
【表20】

【0060】
図1〜図4に示されるASMP及びAEMP画分のNMR実験は、下記に従って行われた。
スペクトルは、250MHZブルッカーデジタルNMR分光計(DRX 400型)により1H周波数400.13Mcを用いてD2O中で得られた。掃引幅は14.5ppmであり、周囲温度は300Kである。ケミカルシフトは、溶媒距離によって示される。
1H一次元標準スペクトルは、適切なブルッカーとプログラムを用いて得られた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1A】TM 7279からの画分のNMRを示す。
【図1B】TM 7279からの画分のNMRを示す。
【図1C】TM 7279からの画分のNMRを示す。
【図2】CA 9656からの画分のNMRを示す。
【図3】TM 7279からの画分のNMRを示す。
【図4】MG 7274からの画分のNMRを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多糖及び/又は糖ペプチドを含む、水溶液に溶解する抗原物質(ASMP)の調製方法であって、
- トリコフィトン、ミクロスポルム又はカンジダ属の好ケラチン性真菌又は酵母の真菌細胞を水性アルカリ条件下で処理する工程、
- その調製物の固相と液相を分離する工程、
- 分離後にその上清を鉱酸又は有機酸で処理する工程、及び
- 分離後にその上清からASMPを沈殿させる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
- 前記真菌細胞を0.1〜5% (w/v)KOH又はNaOHで20〜150℃において30分間までの間処理する工程、
- 遠心分離する工程、
- 遠心分離後にその上清を0.2〜1.5M有機酸又は0.05〜1M鉱酸で処理する工程、
- 遠心分離後にその上清を適切な有機溶媒又は塩で処理する工程、及び
- その沈殿を回収する工程、
を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
多糖及び/又は糖ペプチドを含む、水溶液に溶解しない抗原物質(ANMP)の調製方法であって、
- トリコフィトン、ミクロスポルム又はカンジダ属の好ケラチン性真菌又は酵母の真菌細胞を水性アルカリ条件下で処理する工程、
- その調製物の固相と液相を分離する工程、及び
- 分離後にその固相を鉱酸又は有機酸で処理する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
- 前記真菌細胞を0.1〜5% (w/v)KOH又はNaOHで20〜150℃で30分までの間処理する工程、
- その固相を0.2〜1.5M有機酸又は0.05〜1M 鉱酸で処理する工程、及び
- 水溶液で洗浄する工程、
を含むことを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
多糖及び/又は糖ペプチドを含む外因性抗原物質(AEMP)の調製方法であって、
- トリコフィトン、ミクロスポルム又はカンジダ属の好ケラチン性真菌又は酵母の真菌細胞を液体培養液中で培養する工程、
- その調製物の固相と液相を分離する工程、及び
- 分離後にその上清からAEMPを沈殿させる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
- その培養が250時間までの間である工程、
- 分離後にその上清にアルコールを加える工程、及び
- その沈殿を回収する工程、
を含むことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
- 分離後にその上清を凍結乾燥する工程、
- 水溶液に溶解する工程、
- 1〜5容量のアルコールで沈殿させた後にその沈殿を水溶液に溶解する工程、
- その溶液を凍結乾燥する工程、
を含むことを特徴とする請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記真菌が下記の真菌種のいずれか1種に属することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- トリコフィトン・エクイナム(Trichophyton equinum)、
- トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、
- トリコフィトン・サルキソビイ(Trichophyton sarkisovii)、
- トリコフィトン・ベルコサム(Trichophyton verrucosum)、
- ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)、
- ミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)、又は
- カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)。
【請求項9】
前記真菌が下記の真菌株のいずれか1種に属することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- トリコフィトン・エクイナム DSM No.7276、
- トリコフィトン・メンタグロフィテス DSM No.7279、
- トリコフィトン・サルキソビイ DSM No.7278、
- トリコフィトン・ベルコサム、DSM 7277、
- ミクロスポルム・カニス DSM No.7281、
- ミクロスポルム・カニス オベサム(obesum)型 DSM No.7280、
- ミクロスポルム・カニス ディストルタム(distortum)型 DSM No.7275、
- ミクロスポルム・ジプセウム DSM No.7274、又は
- カンジダ・アルビカンス DSM No.9656。
【請求項10】
多糖及び/又は糖ペプチドを含有し、哺乳動物において抗アレルギー活性を有する抗原物質であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法により得られる前記抗原物質。
【請求項11】
T.メンタグロフィテス株 DSM No.7279からのASMP、M.ジプセウム株 DSM No.7274からのASMP及びC.アルビカンス株 DSM No.9656からのASMPを含むことを特徴とする請求項10に記載の抗原物質。
【請求項12】
T.メンタグロフィテス株 DSM No.7279からのANMP、M.ジプセウム株 DSM No.7274からのANMP及びC.アルビカンス株 DSM No.9656からのANMPを含むことを特徴とする請求項10に記載の抗原物質。
【請求項13】
T.メンタグロフィテス株 DSM No.7279からのAEMP、M.ジプセウム株 DSM No.7274からのAEMP及びC.アルビカンス株 DSM No.9656からのAEMPを含むことを特徴とする請求項10に記載の抗原物質。
【請求項14】
請求項10に記載の抗原物質の組合わせを含む抗原物質。
【請求項15】
ASMP及びAEMPを含むことを特徴とする請求項10又は14記載の抗原物質。
【請求項16】
ASMP及びAEMP及びANMPを含むことを特徴とする請求項10又は14記載の抗原物質。
【請求項17】
AEMP及びANMPを含むことを特徴とする請求項10又は14記載の抗原物質。
【請求項18】
ASMP及びANMPを含むことを特徴とする請求項10又は14記載の抗原物質。
【請求項19】
請求項10〜18のいずれか1項に記載の抗原物質を含むワクチン。
【請求項20】
請求項10〜19のいずれか1項に記載の抗原物質を適切な生理的担体と共に含むワクチン。
【請求項21】
請求項10〜20のいずれか1項に記載の抗原物質を含むアレルギーの治療用又はサマー湿疹に対するワクチン用注射用液。
【請求項22】
請求項10〜21のいずれか1項に記載の抗原物質を含有するアレルギーの治療用医薬組成物。
【請求項23】
アレルギーの予防及び/又は治療用医薬品を調製するための請求項10〜21のいずれか1項に記載の抗原物質の使用。
【請求項24】
免疫応答をモジュレートする医薬品を調製するための請求項10〜21のいずれか1項に記載の抗原物質の使用。
【請求項25】
サマー湿疹の予防又は治療用医薬品を調製するための請求項10〜21のいずれか1項に記載の抗原物質の使用。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−266352(P2008−266352A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158819(P2008−158819)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【分割の表示】特願平9−508921の分割
【原出願日】平成8年8月9日(1996.8.9)
【出願人】(508148998)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】