説明

抗炎症活性を有する化合物をスクリーニングする方法

タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、または小有機分子からなる群の中から、タンパク質Rac1の細胞外部分に結合することによりこのタンパク質の活性を増強する化合物をスクリーニングする方法であって、該方法は、以下の工程を含む:a)多孔性のメンブレン上で育てた培養内皮細胞の集密的なレイヤーを、少なくとも一つのテスト化合物と単独で、または血管透過性の刺激薬と共に、接触させる工程、b)比色分析で検出することができる適切な薬剤を用いて、血管透過性を測定する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤のスクリーニングに関する。より具体的には、本発明は、血管内皮(VE)−カドヘリンに結合して、VE−カドヘリンにより媒介される特定のシグナル伝達プロセスに影響を与えるタンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小分子のスクリーニング、同定、および特徴付けのための方法に関する。内皮細胞間の内皮接着結合が開くことを妨げ、そしてこれらの現象の結果として、特定の内皮細胞の形態学的変化を妨げるための、これらの化合物の使用にも関する。これらの特徴を有する化合物は、炎症反応、血管漏出、および内皮障害が役割を果たすすべての病気の治療に有用である。それらは、新しい毛細血管の形成を妨げることもでき、よって、癌の治療にも有用である。
【背景技術】
【0002】
すべての血管の内側を途切れなく覆う内皮層は、とても重要なバリア機能を有しており、血液由来物質、細胞、および血清等のような血液成分が下層の組織に入ることを防いでいる。バリア機能は、たくさんの近接した内皮細胞上での同所−および異所性の(homo- and heterotopic)分子間相互作用、ならびに循環している血液細胞上での分子との類似の相互作用を介して、しっかりと制御されている。このバリア機能の破綻は、重篤な生理学的影響および下層の組織への傷害につながる。それは、炎症性疾患、浮腫の形成、および血管新生の発症機序に関連しており、例えば、限定するものではないが、例えば心筋梗塞または臓器移植によって引き起こされる虚血再灌流障害、外傷/蘇生および敗血症の帰結としての全身性炎症反応症候群(SIRS)、目の黄斑変性が挙げられ、ならびに腫瘍増殖に関連する。したがって、内皮接着結合の完全性を維持することができる化合物を同定することは好ましい。これらの化合物を使用して、これらの病気のプロセスを治療または予防することができる。
【0003】
内皮バリア障害
内皮障害は、例えば、弛緩性の因子と収縮性の因子との放出の間、ならびに抗凝固および凝血源メディエーターの放出の間の不均衡として、またはバリア機能の減少として、様々な様式で現れうる(Rubanyi, Journal of Cardiovascular Pharmacology 22, Sl- 14.1993; McQuaid & Keenan Experimental Physiology 82, 369-376 (1997))。このような障害は、高コレステロール血症、高血圧、糖尿病に関連した血管疾患、アテローム性動脈硬化症、敗血性ショック、および成人呼吸促迫症候群を含む、たくさんの病態に関連している(Sinclair, Braude, Haslam & Evans, Chest. 106:535-539 (1994); Davies, Fulton & Hagen, Br J Surg. 82:1598- 610 (1995))。
【0004】
急性炎症性疾患に関連する主要な異常の一つは、内皮バリア機能の減少である。内皮の構造的および機能的な完全性は、バリア機能の維持に必要であり、もしこれらのどちらかが損なわれると、溶質および過剰の血漿が単層を通して漏出し、組織浮腫および炎症細胞の遊走を引き起こす。たくさんの薬剤が、例えば収縮または退縮等の内皮細胞の形態変化を引き起こして細胞間ギャップの形成を導くことによって、単層の透過性を増大させる(Lum & Malik, Am. J. Physiol. 267: L223-L241 (1994))。これらの薬剤は、例えば、トロンビン、ブラジキニン、および血管内皮増殖因子(VEGF)を含む。内皮細胞の収縮は、平滑筋におけるアクチン−ミオシン相互作用の制御に似ているが、より長い時間にわたって起こり、より厳密には拘縮(contracture)として記載される。この収縮のメカニズムは、細胞内Ca2+濃度の増大、ミオシン軽鎖キナーゼの活性化、ミオシン軽鎖のリン酸化、およびF−アクチンマイクロフィラメントの再構築に関与すると考えられている。退縮はより受動的なプロセスであり、ミオシン軽鎖キナーゼと独立していて、細胞−細胞および細胞−マトリックス相互作用を維持するために重要な、アクチン結合タンパク質(actin-linking protein)のプロテインキナーゼC(PKC)−刺激性リン酸化に関与する(Lum & Malik, Am. J. Physiol. 267: L223-L241 (1994))。
【0005】
血管壁の透過性亢進は、過剰の液体とタンパク質の、間質腔への漏出を可能とする。この急性炎症イベントは、よく組織虚血や急性臓器機能不全と結びついている。活性化された内皮細胞(EC)の部位において形成されたトロンビンは、隣接するEC間に大きな傍細胞の穴を形成することによって、この毛細血管バリア機能不全を惹起する(Carbajal et al, Am J Physiol Cell Physiol 279: C195-C204, 2000)。このプロセスは、F−アクチン依存性細胞骨格収縮性張力の発達を惹起するミオシン軽鎖リン酸化(MCLP)による、ECの形態における変化を特徴付ける(Garcia et al, J Cell Physiol. 1995; 163:510-522 Lum & Malik, Am J Physiol Heart Circ Physiol. 273(5): H2442 - H2451. (1997))。
【0006】
この収縮プロセスのシグナル伝達機構は、トロンビン受容体のタンパク質切断および活性化に関与する。この受容体は、Gqファミリーのヘテロ三量体Gタンパク質と共役し、該Gタンパク質は、ホスホリパーゼGβを刺激して、細胞内ストアからのCaイオンを動員するD−ミオイノシトール1,4,5−三リン酸を放出する。続いて起こる細胞内Caイオン濃度の上昇は、Caイオン−カルモジュリン依存性MLCキナーゼを活性化し、該キナーゼは、MLCのセリン19とトレオニン18をリン酸化する(Goeckeler & Wysolmerski, J. Cell Biol. 1995; 130:613- 627)。MLCPは、ミオシンのF−アクチンへの結合とそれに続くアクトミオシンストレスファイバー形成を引き起こす、ミオシンMgイオン−ATPアーゼ活性を惹起する(Ridley & Hall, Cell, 70, 389-399 (1992))。MLCのリン酸化は、非筋細胞ミオシンIIの可溶性の折り畳まれた10S型を、不溶性の折り畳まれていない6S型へ変換する。このプロセスは、ミオシンの、散在する細胞内のにごりからF−アクチンの大きな束に関連する点状のスポットおよびリボンへの再構築によって特徴付けられる(Verkhovsky et al, The Journal of Cell Biology, 131, 989-1002 (1995))。最終的な結果は、内皮細胞の持続的な形態変化、およびバリア機能の破壊である。
【0007】
血管内皮(VE)−カドヘリン
トロンビン−誘導性内皮透過性亢進は、細胞−細胞接着によっても媒介されうる(Dejana J. Clin. Invest. 98: 1949-1953 (1996))。内皮細胞−細胞接着は、血管内皮(VE)カドヘリン(カドヘリン5)、接着結合を形成するCa依存性細胞−細胞接着分子の機能によって、主として決定される。カドヘリン5の機能は、順にα−カテニン(ビンキュリンに相同)およびF−アクチン細胞骨格に結合している付属タンパク質β−カテニン、プラコグロビン(g−カテニン)およびp120との会合を通して、細胞質側から制御される。
【0008】
VE−カドヘリンは、毛細血管透過性において、ならびに血管形成に関連する形態形成の現象および増殖性の現象において、基本的な役割を果たしている接着分子として明らかになった(Vincent et al, Am J Physiol Cell Physiol, 286(5): C987 - C997 (2004))。他のカドヘリンと同様に、VE−カドヘリンは、カルシウム依存性でホモフィリックな接着を媒介し、細胞骨格の細胞膜結合部位として機能する。しかしながら、VE−カドヘリンは、血管内皮に独自に重要なシグナル伝達経路および細胞システムに組み込まれる。内皮細胞の生物学および生理学における最近の進歩は、接着分子のカドヘリンファミリーの中で独特であり得るというVE−カドヘリンの性質を明らかにする。これらの理由のため、VE−カドヘリンは、カドヘリンファミリーの典型であるけれども機能および生理学的な関連性において独特であるカドヘリンを代表する。VE−カドヘリン媒介性細胞−細胞接着は、カドヘリンおよびカテニンを含む接合部タンパク質のリン酸化と脱リン酸化とのダイナミックなバランスによって制御されるというエビデンスは、蓄積している。β−カテニンの増加したチロシンリン酸化は、カドヘリンからの、および細胞骨格からのカテニンの解離をもたらし、弱い接着結合(AJ)につながる。同様に、VE−カドヘリンとβ−カテニンのチロシンリン酸化は、緩いAJにおいて起こり、しっかりとした集密的な単層においては著しく減少した(Tinsley et al., J Biol Chem, 274, 24930-24934 (1999))。
【0009】
また、接着結合におけるVE−カドヘリンモノマーの正しいクラスター形成は、VE−カドヘリンの正しいシグナル伝達活性に必須である。なぜなら、全長VE−カドヘリン細胞質側末端を含むキメラ変異体(IL2−VE)を有する細胞は、β−カテニンおよびp120に結合できるにもかかわらず、正しいシグナル伝達を起こすことができないからである(Lampugnani et al, MoI. Biol. of the Cell, 13, 1175-1189 (2002))。
【0010】
Rho−およびRac−GTPアーゼ、ならびに血管透過性
RhoGTPアーゼは、細胞のアクチン細胞骨格上で著明な作用を有する低分子GTPアーゼのファミリーである。血管系の機能について、それらは、細胞形態、細胞収縮、細胞運動性、および細胞接着の制御に関与する。RhoGTPアーゼの3つの最も有名なファミリーメンバーは、RhoA、Racおよびcdc42である。RhoAの活性化は、細胞中にf−アクチンストレスファイバーの形成を誘導し、一方、Racおよびcdc42は、それぞれ膜ラッフルおよびマイクロスパイクを誘導することによって、アクチン細胞骨格に影響を与える(Hall, Science,279:509-5l41998)。Racおよびcdc42は、タンパク質PAKの活性化を介して、限定された程度まで、MLCK活性に影響を与えることができ(Goeckeler et al. J. Biol. Chem., 275, 24, 18366-18374 (2000))、一方、RhoAは、MLCのリン酸化状態を安定化する能力によって、アクチン−ミオシン相互作用に顕著な刺激作用を有する(Katoh et al., Am. J. Physiol. Cell. Physiol. 280, C1669-C1679 (2001))。これは、リン酸化MLCを加水分解するホスファターゼPP1Mをそのターンにおいて阻害するRhoキナーゼの活性化によって起こる。また、Rhoキナーゼは、コフィリンのアクチン−切断活性を阻害し、よって、f−アクチンファイバーを安定化する(Toshima et al., Mol. Biol. of the Cell. 12, 1131-1145 (2001))。さらに、Rhoキナーゼは、細胞膜におけるアクチン細胞骨格のタンパク質への固定にも関与することができ、よって、潜在的に結合タンパク質とアクチン細胞骨格との間の相互作用に作用しうる(Fukata et al. . Cell Biol 145:347-361 (1999))。
【0011】
トロンビンは、Gα12/13およびいわゆるグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)を介して、RhoAを活性化することができる(Seasholtz et al; Mol: Pharmacol. 55, 949-956 (1999).)。GEFは、RhoA−結合GDPをGTPに交換し、それによってRhoAが活性化される。この活性化によって、RhoAは細胞膜に移動し、そこでその親油性のゲラニル−ゲラニル−アンカーによって結合する。
【0012】
RhoAは、リゾホスファチジン酸、トロンビン、およびエンドセリンを含むたくさんの血管作動薬によって活性化されうる。膜結合RhoAは、グアニンヌクレオチド解離阻害因子(GDI)の活性化によって、またはGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)の作用の後、膜から解離される。グアニンヌクレオチド解離阻害因子(GDI)は、RhoAのカルボキシル末端に結合する制御タンパク質である。
【0013】
GDPの解離を遅らせて、細胞膜から活性化RhoAを引き離すことによって、GDIはRhoAの活性を阻害する。トロンビンは、ヒト内皮細胞において、直接RhoAを活性化し、RhoAの細胞膜への移動を誘導する。同じ条件下、関連するGTPアーゼRacは、活性化されなかった。ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)由来のC3トランスフェラーゼによるRhoAの特異的な阻害は、トロンビン誘導性の内皮MLCリン酸化および透過性の増大を減少させるが、一過的なヒスタミン依存性の透過性の増大には影響しなかった(van Nieuw Amerongen et al. Circ Res. 1998;83: 1115-11231 (1998))。特異的なRhoキナーゼ阻害剤Y27632は、同じように、トロンビン誘導性の内皮透過性を減少させるので、RhoAの作用は、Rhoキナーゼを介して媒介されているように見える。
【0014】
Rac1およびRhoAは、内皮バリア機能へ拮抗的な作用を有する。急性低酸素は、通常の成人肺動脈内皮細胞(PAEC)においてRac1を阻害してRhoAを活性化し、これはバリア機能の崩壊につながる(Wojciak-Stothard and Ridley, Vascul Pharmacol., 39: 187-99 (2002))。慢性低酸素誘導性肺高血圧症の子ブタ由来PAECは、Rac1の持続的な減少およびRhoA活性の増大を伴う、安定的な異常な表現型を有する。これらの活性は、内皮細胞骨格、接着結合、および透過性における変化と相関する。Rac1の活性化およびRhoAの阻害は、異常な表現型と透過性を通常の状態へ戻した(Wojciak-Stothard et al., Am. J. Physiol, Lung Cell MoI. Physiol. 290, Ll173-Ll182 (2006))。
【0015】
したがって、Rac1およびRhoAの活性の生理学的なバランスを、通常の安定した状態における内皮細胞で観察されるレベルに戻す物質をスクリーニングすることは、好ましい。
【0016】
接着斑キナーゼおよび内皮透過性におけるその役割
接着斑キナーゼは、大きなN−およびC−末端ドメインにより隣接された(flanked)中央の触媒ドメインから構成される。N−末端領域は、インテグリンおよび成長因子受容体を結合することができるFERMホモロジーを含む。C−末端の非触媒ドメインは、FRNK(FAK関連非キナーゼ)とも呼ばれるが、シグナル伝達のためにFAKを接着複合体に誘導するだけでなく、他の結合分子のための結合部位を提供して細胞質と相互作用する、FAT配列を持っている。今まで、少なくとも5つのチロシン残基がFAKにおいて同定されている。
【0017】
これらのチロシン残基のリン酸化は、キナーゼ活性に直接の相関がある。これは、FAK活性と単層透過性との相互関係によって、支持される。バリア構造上の接着斑形成の効果を説明するため、いくつかのモデルが提案されている。内皮細胞の細胞外マトリックスへの増強された接着は、炎症メディエーターにより産生される側方収縮力を原因とする剥離に対して、単層を安定化させるのを助けることができる。よって、接着斑の活性化は、細胞収縮と並行して起こり、炎症刺激中、減少した細胞−細胞結合を相殺しうる。そのほかの仮説は、FAK活性化および接着斑の再構築は、内皮細胞が収縮または形態を変化させるための力学的基礎を提供することによって、内皮細胞−細胞結合が開くことに、積極的に寄与することが提案されている。最後の(最小ではない)可能性は、局所的な複合体が、複数の骨格タンパク質またはシグナル伝達分子が統合される集合点として働き、バリア機能に影響を与えることである。
【0018】
MAPK、PI3K、およびeNOSのよく特徴付けられた活性化に加えて、FAKから下流の潜在的なシグナル伝達現象は、アクチン−ミオシン収縮を引き起こすミオシン軽鎖リン酸化、およびRho依存性ストレスファイバーの形成を含み、それらは傍細胞透過性の特性である(Wu, J Physiol 569. , 359-366 (2005))。したがって、内皮の完全性を促進するためにFAKリン酸化を阻害することは、好ましい。
【0019】
炎症および内皮障害:病理学的帰結および治療結果
内皮障害および内皮バリアの漏れやすさは、幅広い炎症疾患の重要な要素である。炎症反応は、重大な間質性組織浮腫をもたらす、血漿タンパク質等の血液成分および血清の血管外漏出によって特徴付けられる。
【0020】
さらに、炎症反応の主要因子である好中球は、血流から下層の組織中へ遊出することができる。
【0021】
同時に、内皮層の漏れやすさのこれらの作用は、健康な臓器および組織に実質的なダメージを引き起こす。限定するわけではないが、成人呼吸促迫症候群(ARDS)、急性肺傷害(ALI)、糸球体腎炎、急性および慢性同種移植片拒絶、炎症性皮膚疾患、関節リウマチ、喘息、アテローム性動脈硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、膠原病、血管炎、ならびに肢再接着、心筋梗塞、挫滅創、ショック、脳卒中、および臓器移植における虚血性再灌流障害を含むたくさんの病気の臓器障害に結びつけられている。それは内皮の増殖による新しい血管形成のための必要条件でもあり、よって、限定するわけではないが、滲出型加齢黄斑変性症、および癌の増殖、および転移を含むそのような血管新生が病理学的な役割を果たすことが示されている、病気となりうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
発明の簡単な説明
本発明は、内皮透過性亢進を引き起こす薬剤によって媒介される相互作用およびシグナル伝達現象を調節するタンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小分子のスクリーニング、同定、特徴付け、および使用の方法に関する。これらのスクリーニング方法によって同定された薬剤は、内皮細胞層の接着結合中に発現している血管内皮(VE)−カドヘリンに結合すること、ならびにそのコンフォメーションおよび/またはリン酸化状態を調節することによって、効果を発揮する。より具体的には、これらの薬剤は、細胞間結合におけるVE−カドヘリンのクラスター化を安定化することによって、内皮の完全性を促進する。幅広い疾患にとっての内皮バリア機能の破壊の重要性を考慮すると、これらの薬剤は、治療のおよび/または予防の医薬品として広範な適用性を有する。
【0023】
一の態様に従うと、本発明は、タンパク質Rac1の細胞外部分に結合することによりこのタンパク質の活性を増強するタンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、または小有機分子をスクリーニングする方法であって:
a.多孔性のメンブレン上で育てた培養内皮細胞の集密的な(confluent)レイヤーを、少なくとも一つのテスト化合物と単独で、または血管透過性の刺激薬と共に、接触させる工程、
b.比色分析で検出することができる適切な薬剤を用いて、内皮透過性を測定する工程
を含む該方法を提供する。
【0024】
その他の実施態様に従うと、本発明は、タンパク質Rac1の細胞外部分に結合することによりこのタンパク質の活性を増強するタンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、または小有機分子をスクリーニングする方法であって:
a.培養内皮細胞の集密的なレイヤーを、少なくとも一つのテスト化合物と接触させる工程、
b.内皮細胞をライセーションバッファー(lysation buffer)に溶解する工程、
c.Rac1活性の量を、特異的なアッセイを用いて測定する工程
を含む、該方法を提供する。
【0025】
その他の実施態様において、本発明は、RhoAの活性、およびその結果として内皮細胞の細胞骨格構造における変化を妨げるタンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子をスクリーニングする方法であって:
a.培養内皮細胞の集密的なレイヤーを、少なくとも一つのテスト化合物存在下でトロンビンと接触させる工程、
b.内皮細胞をライセーションバッファー(lysation buffer)に溶解する工程、
c.RhoA活性を、特異的なアッセイを用いて測定する工程
を含む、該方法を提供する。
【0026】
その他の実施態様において、本発明は、接着斑キナーゼのリン酸化を妨げるタンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子をスクリーニングする方法であって:
a.培養内皮細胞の集密的なレイヤーを、少なくとも一つのテスト化合物存在下でトロンビンと接触させる工程、
b.内皮細胞をライセーションバッファー(lysation buffer)に溶解する工程、および
c.接着斑キナーゼのリン酸化を、特異的なアッセイを用いて測定する工程
を含む、該方法を提供する。
【0027】
その他の実施態様において、本発明は、温血動物における全身性の炎症反応を起こす血管漏出を妨げるタンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子をスクリーニングする方法であって:
a.適当な量の細菌のリポ多糖(LPS)を適用することによる、全身性の炎症反応を開始させる工程、
b.動物を、少なくとも一つのテスト化合物に曝露する工程、
c.動物に、適当な量の、適当な大きさの蛍光標識マイクロビーズを注入する工程、
d.適当な時間が経過した後、動物を屠殺する工程、
e.動物の臓器または組織を、切り取ってホモジナイズする工程、および
f.ホモジネート中の蛍光の量を測定する工程
を含む、該方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】クレームされたスクリーニングの方法によって同定された化合物。
【図2】トロンビンで刺激して45分間インキュベーションした後の集密的なHUVECレイヤーの透過性。
【図3】化合物1Aを用いたRac1の活性化。このゲルは、実施例1に記載されているように、プルダウンアッセイの結果である。レーン1:培地対照、レーン2:トロンビンを用いた1分間のHUVEC活性化、レーン3:化合物1Aを単独で用いて1分間処理;レーン4:HUVECとトロンビンおよび化合物1A、1分間、レーン5:トロンビン5分間;レーン6:化合物1A、5分間、レーン7:トロンビンおよび化合物1A、5分間。β-アクチンは、全タンパク質含有量の対照として使用した。
【図4】化合物1Aによる、RhoAのトロンビン誘導性活性化の阻害。このゲルは、実施例1に記載されているように、プルダウンアッセイの結果である。レーン1:培地対照、レーン2:トロンビンを用いた1分間のHUVEC活性化、レーン3:化合物1Aを単独で用いて1分間処理;レーン4:HUVECとトロンビンおよび化合物1A、1分間、レーン5:トロンビン5分間;レーン6:化合物1A、5分間、レーン7:トロンビンおよび化合物1A、5分間。β-アクチンは、全タンパク質含有量の対照として使用した。
【図5】化合物1Bを用いたRac1の活性化。このゲルは、実施例1に記載されているように、プルダウンアッセイの結果である。レーン1:培地対照、レーン2:トロンビンを用いた1分間のHUVEC活性化、レーン3:化合物1Bを単独で用いて1分間処理;レーン4:HUVECとトロンビンおよび化合物1B、1分間、レーン5:トロンビン5分間;レーン6:化合物1B、5分間、レーン7:トロンビンおよび化合物1B、5分間。
【図6】トロンビンを用いた刺激後1、5、および10分の時点における、化合物1Bによる、RhoAのトロンビン誘導性活性化の阻害。
【図7】化合物1BによるRac1活性化の定量化および時間依存性。
【図8】化合物1Bによる、RhoAのトロンビン誘導性活性化の阻害の、定量化および時間依存性。
【図9】化合物1Aによる、FAKのトロンビン誘導性リン酸化の阻害。このグラフは、トロンビンによって誘導されるFAKのリン酸化の阻害の時間経過を示す。
【図10】化合物1Aによる、LPS誘導性血管漏出の阻害。血管漏出がLPS処置によって誘導されたラット由来の肺切片の蛍光画像である。切片a)は対照動物由来であり、切片b)は化合物1Aを用いて処置された動物由来である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
優先的に、これらのアッセイは、上記順序で実施され、かかる順序はスクリーニングの系図(screening tree)を構成し、選択的に、本発明によりクレームされている特定の生理学的な活性を有する化合物を同定する。
【0030】
内皮細胞の集密的なレイヤーの透過性を測定するための有用な方法は、二重チャンバー法(dual chamber method)であり、該方法において、内皮細胞は、チャンバーを分離している多孔性のメンブレン上で育てられる。細胞は、優先的にはヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、テスト化合物と単独で、または内皮透過性の刺激薬と共に、30分から120分間、インキュベートされる。優先的には、トロンビンが、そのような刺激薬として使用される。透過性は、透過する色素を用いて測定することができ、その吸収は比色分析で測定することができる。優先的に、エバンスブルーは、それ自体またはアルブミンに結合したもののどちらでも、上記色素として使用することができる。
【0031】
Rac1およびRhoAの活性化状態を分析する有用な方法は、いわゆるプルダウンアッセイの原理に基づく。このフォーマットにおいて、細胞ライセート中のそれぞれのタンパク質のGTP結合活性化状態は、固定化された結合パートナーに結合して、問題になっているタンパク質に対して特異的に作られたモノクローナル抗体(MAb)を用いて検出される。続いて、GTP結合活性化状態の量を、限定するわけではないが、ウエスタンブロッティングまたは蛍光検出を含む適した検出方法によって定量化することができる。
【0032】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)におけるRac1の活性化を測定するために、細胞は、最大30分までのさまざまな時間、適した条件下でテスト化合物とともにインキュベートされ、その後、溶解される。ライセートを、適当に固定化されたp21−活性化タンパク質キナーゼ(PAK)のp21−結合ドメイン(PBD)に加え、活性化Rac1の量を、Rac1特異的MAbを用いて定量化する。
【0033】
HUVECにおけるRhoAのトロンビン誘導性活性化の阻害を測定するために、細胞は、最大10分までのさまざまな時間、適した条件下でテスト化合物と共にまたはテスト化合物なしで、適量のトロンビンと共にインキュベートされ、その後、溶解される。ライセートを、適当に固定化されたロテキン(rhotekin)結合ドメイン(RBD)に加え、シグナルを、適した検出方法を用いて測定する。
【0034】
HUVECにおけるトロンビン媒介性FAKリン酸化の阻害を測定するために、細胞は、最大60分までのさまざまな時間、適した条件下でテスト化合物と共にまたはテスト化合物なしで、適量のトロンビンと共にインキュベートされ、その後、溶解される。ライセートを、SDS-PAGE、およびFAKリン酸化チロシン残基に対して作られた部位特異的抗体を用いたウェスタンブロット分析に供した。
【0035】
げっ歯類におけるLPS誘導性血管漏出の阻害を測定するために、動物に、全身性の炎症反応を達成するのに最適な量のグラム陰性リポ多糖(LPS)を投与する。0〜4時間の間のさまざまな時間の経過後、テスト物質を静脈内投与し、続いて、適した量の蛍光マイクロビーズを投与した。その次に動物を屠殺し、臓器(肺、腎臓、脾臓、心臓、脳)を切り取って、顕微鏡分析に適した薄いスライスに切断し、パラホルムアルデヒドを使って固定する。血管外遊出した微粒子の数を、蛍光顕微鏡を用いて数える。
【0036】
あるいは、臓器をホモジナイズし、組織中に閉じ込められたマイクロビーズの量を、適した蛍光検出装置を用いて測定する。
【0037】
本発明に従ったスクリーニング方法を用いて同定された化合物は、炎症反応および/または内皮破裂ならびに血管漏出によって引き起こされる病気の予防および/または治療のための薬剤の開発に有用である。したがって、本発明のその他の態様に従うと、本発明の化合物は、限定するわけではないが、敗血性ショック、傷関連性敗血症、例えば心筋梗塞/再灌流または臓器移植の後等の虚血後の再灌流障害、凍傷の傷またはショック、呼吸促迫症候群等の急性炎症反応媒介肺障害、急性膵炎、肝硬変、ぶどう膜炎、喘息、外傷性脳障害、腎炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、炎症性腸疾患、目の黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、および腫瘍増殖の治療および/または予防のために投与される。
【0038】
これらの病気において治療効果を達成するために、本発明の化合物は、経口または非経口で与えることができ、医薬的に許容される賦形剤または担体を用いて適した医薬製剤に製剤化することができる。したがって、本発明は、本発明に従ったスクリーニング方法によって同定された活性成分を含み、さらに医薬的に許容される賦形剤または担体を含む医薬組成物にも関する。
【0039】
医薬的に許容される賦形剤は、連邦政府または州政府の監督官庁により承認された、または米国薬局方または一般に認められている薬局方に列挙された、動物、とりわけヒトにおける使用のための賦形剤である。そのような医薬担体は、水や油(動物、野菜、および合成起源、例えばピーナッツオイル、大豆油、ミネラルオイル等を含む)等の無菌の液体とすることができる。水性の担体は、例えば、ブドウ糖やグリセロール等も含んでもよい。
【0040】
適した賦形剤としては、限定するものではないが、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレングリコール、エタノール等が含まれうる。組成物は、湿潤剤および/または乳化剤、またはpH緩衝剤も含んでもよい。
【0041】
組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、カプセル、粉末、または徐放製剤の形態とすることができる。そのような組成物は、治療的に有効量の化合物を、治療される患者への投与に適した形態および治療形態に適した形態を提供するため、適量の担体と共に含む。
【実施例】
【0042】
実施例1
VE-カドヘリン結合の安定化を介した、内皮単層のトロンビン誘導性の透過性を減少させる物質を同定するための、化合物スクリーニング方法
HUVECは、標準的な条件下、12mmトランスウェルプレート、ポリカーボネートメンブレン3μm孔径(Corning)上で育ててコンフルエンスにする。実験開始の2時間前、標準増殖培地を、上部および下部チャンバーにおいて、フェノールレッドを含まない増殖培地と交換する。透過性を誘導するために、5U/mlトロンビン(Calbiochem)または5U/mlとテスト化合物を、上部のウェルに添加する。HUVECは、45分間インキュベートされる。インキュベーション時間の最後に、上部チャンバーの培地を、フェノールレッドを含まず、4%BSAと0.67mg/mlエバンスブルーを含有する増殖培地と交換する。エバンスブルーの下部チャンバーへの拡散は10分間許され、その後、上部チャンバーは取り除かれ、下部チャンバーから回収された培地の吸光度を、620nmの波長において測定する。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例2
VE-カドヘリン結合の安定化を介した、Rac1を活性化する物質を同定するための、化合物スクリーニング方法
HUVECは、標準的な条件下で育ててコンフルエンスにする。Rac1活性を誘導する前に、HUVECを、4時間、成長因子および血清(serum supplements)を含まないIMDM(Gibco)を用いることにより飢餓状態にさせた。Rac1活性は、50μg/mlのテスト化合物を飢餓培地に、1、5、および10分間添加することによって誘導される。活性化Rac1は、UpstateのRac1/Cdc42アッセイ試薬を製品説明書に従って使用して、単離された。単離物(isolate)は、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離され、ニトロセルロースメンブレン(Bio-Rad)上にブロットされた。Rac1は、Upstateの抗−Rac1クローン23A8、抗−マウス(1:250)を用いて検出された。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例3
トロンビン誘導性RhoA活性化を阻害する物質を同定するための、化合物スクリーニング方法
HUVECは、標準的な条件下で育ててコンフルエンスにする。Rho活性を誘導する前に、HUVECを、4時間、成長因子および血清(serum supplements)を含まないIMDM(Gibco)を用いることにより飢餓状態にさせた。飢餓時間の後、5U/mlトロンビン(Calbiochem)または5Uトロンビンと50μg/mlテスト化合物を、飢餓培地に、1、5、および10分間添加する。活性化RhoAは、UpstateのRhoアッセイ試薬を製品説明書に従って使用することにより、単離された。単離物(isolate)は、15%ポリアクリルアミドゲル上で分離され、ニトロセルロースメンブレン(Bio-Rad)上にブロットされた。RhoAは、Upstateの抗−Rho(−A、−B、−C)、クローン55(1:500)を用いて検出された。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例4
自己リン酸化部位Tyr397におけるトロンビン誘導性FAKリン酸化を阻害する物質を同定するための、化合物スクリーニング方法
免疫沈降:
HUVECは、FX06(50μg/ml)、トロンビン(1U/ml、Sigma Aldrich)、およびトロンビン/テスト化合物と共に、示した時間、インキュベートした。氷冷PBS(GIBCO)を用いて洗浄した後、細胞を、培養フラスコから、トリス溶解バッファー(+1% TritonX(Bio-Rad)、NP40(Sigma Aldrich)ならびにプロテアーゼおよびフォスファターゼインヒビターカクテル(Sigma Aldrich))中に解体し(scrapped)、20分間氷上で溶解させた。ライセートは、5分ごとに重度にボルテックスした。溶解後、ライセートを遠心し(15,000rpm/10分/4℃)、上清を、全量1μgのFAK抗体(BD Transduction Laboratories)と共にプレインキュベートした50μlセファロースビーズ(Sigma Aldrich)に添加した。ビーズを、4℃にて2時間、輪(wheel)上で撹拌し、次に氷冷PBSで3回洗浄した。2xサンプルバッファーを添加し、95℃にて5分間インキュベートした。その後、サンプルバッファーは、ビーズから取り除かれ、ウエスタンブロッティングに適用された。
【0049】
ウエスタンブロット:
沈殿させたタンパク質を分離するために、10%ポリアクリルアミドゲルが用いられた(run)。ゲルは、hoeferセミドライブロッティングシステムを用いて、PVDF(Bio-Rad)メンブレン上にブロットされた。次に、メンブレンをTBS/0.5%TWEEN(TBST)で洗浄し、1%BSA/TBSTを用いて1時間、室温にてブロッキングした。次に、p397FAK抗体(0.2μg/ml;BD Transduction Laboratories)1%BSA/TBST溶液と共に、一晩、4℃にてインキュベーションした。検出のため、HRP−標識ヤギ抗マウスAb(1:25000;Bio-Rad)TBST溶液を使用して、結合されたAbを化学発光により可視化し(ECLシステム、Amersham Corp.,Arlington Heights, IL)、フィルム上に記録した。
【0050】
【表4】

【0051】
実施例5
げっ歯類においてLPS誘導性血管漏出を阻害する物質を同定するための、化合物スクリーニング方法
体重260−320gを有するオスHimOFA/SPFラット(Institute for Biomedical Research, Medical School Vienna)が、生物医学研究所、メディカルスクールウィーン(Institute for Biomedical Research, Medical School Vienna)にて飼育されている。すべての実験は、ウィーン政府(Amt der Wiener Landesregierung)、MA58により承認された。ラットは、100mg/kgチオペントン(Sandoz)を用いて麻酔される。気管をカニューレ処置して、呼吸を促進する。薬物の投与のため、右頸静脈をカニューレ処置する。平均動脈圧(MAP)を測定するため、右頸動脈中にカテーテルを設置する。手術後、動物を処置グループに無作為に選ぶ。すべてのラットは、補液(600μl 0.9%生理的食塩水を静脈内点滴として)を受け、15分間安定化される。全実験を通して、体温は、恒温性のブランケットを用いて調節される。安定化時間の後、12mg/kgLPS(大腸菌セロタイプ0.127:B8;Sigma)の急速投与によってエンドトキシンショックを誘導する。LPS投与の60分後、動物は、3mg/kgのテスト化合物または生理的食塩水の急速投与を受ける。LPS投与の5時間50分後、ラットは、蛍光微粒子;125x106ビーズ/kg体重(Fluo Spheresポリスチレンマイクロスフェア;1μm黄色−緑色蛍光(505/515)Invitrogen Molecular Probes)の急速投与を受ける。
【0052】
LPS投与の6時間後、動物を屠殺し、肺を取り出して血管漏出を評価する。肺の血管漏出は、蛍光/g組織の測定によって評価する。これらの目的のため、肺組織はエタノール性KOHを用いて消化され、「Manual for using Fluorescent Microspheres to measure organ perfusion」Fluorescent Microsphere Resource Center; University of Washingtonによって推薦されるとおり、蛍光微粒子は遠心沈降(sedimetation)によって回収される。蛍光は、スペクトルマックスジェミニエス蛍光光度計(Spectra Max Gemini S Fluorometer)を用いて測定される。
【0053】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、または小有機分子からなる群の中から、タンパク質Rac1の細胞外部分に結合することによりこのタンパク質の活性を増強する化合物をスクリーニングする方法であって:
a.多孔性のメンブレン上で育てた培養内皮細胞の集密的なレイヤーを、少なくとも一つのテスト化合物と単独で、または血管透過性の刺激薬と共に、接触させる工程、
b.比色分析で検出することができる適切な薬剤を用いて、血管透過性を測定する工程
を含む該方法。
【請求項2】
タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子からなる群の中から、タンパク質Rac1の細胞外部分に結合することによりこのタンパク質の活性を増強する化合物をスクリーニングする方法であって:
a.培養内皮細胞の集密的なレイヤーを、少なくとも一つのテスト化合物と接触させる工程、
b.内皮細胞をライセーションバッファー(lysation buffer)に溶解する工程、および
c.Rac1活性の量を測定する工程
を含む、該方法。
【請求項3】
タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子からなる群の中から、RhoAの活性、およびその結果として内皮細胞の細胞骨格構造における変化を妨げる化合物をスクリーニングする方法であって:
a.培養内皮細胞の集密的なレイヤーを、少なくとも一つのテスト化合物存在下でトロンビンと接触させる工程、
b.内皮細胞をライセーションバッファー(lysation buffer)に溶解する工程、および
c.RhoA活性を測定する工程
を含む、該方法。
【請求項4】
タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子からなる群の中から、接着斑キナーゼのリン酸化を妨げる化合物をスクリーニングする方法であって:
a.培養内皮細胞の集密的なレイヤーを、少なくとも一つのテスト化合物存在下でトロンビンと接触させる工程、
b.内皮細胞をライセーションバッファー(lysation buffer)に溶解する工程、および
c.接着斑キナーゼのリン酸化を測定する工程
を含む、該方法。
【請求項5】
タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子からなる群の中から、温血動物における全身性の炎症反応を起こす血管漏出を妨げる化合物をスクリーニングする方法であって:
a.適当な量の細菌のリポ多糖(LPS)を適用することによる、全身性の炎症反応を開始させる工程、
b.動物を、少なくとも一つのテスト化合物に曝露する工程、
c.動物に、適当な量の、適当な大きさの蛍光標識マイクロビーズを注入する工程、
d.適当な時間が経過した後、動物を屠殺する工程、
e.動物の臓器または組織を、切り取ってホモジナイズする工程、および
f.ホモジネート中の蛍光の量を測定する工程
を含む、該方法。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の一以上の方法を含むことを特徴とする、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子からなる群の中から化合物をスクリーニングする方法。
【請求項7】
請求項1〜5に記載のすべての5つの方法を含むことを特徴とする、請求項6に記載の、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子からなる群の中から化合物をスクリーニングする方法。
【請求項8】
請求項1〜5に記載のすべての5つの方法を含むことを特徴とする、請求項6に記載の、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子からなる群の中から化合物をスクリーニングする方法であって、前記方法が、請求項1または2に記載の方法から始めて、その後に請求項2、3、および4に記載の方法が実施される、該方法。
【請求項9】
タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、抗体、および小有機分子からなる群の中から、請求項1〜8のいずれか1項に記載のスクリーニング方法を用いて、炎症反応および/または内皮破裂ならびに血管漏出によって引き起こされる病気の予防および/または治療用の薬剤の開発のために同定された化合物。
【請求項10】
請求項9に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項11】
敗血性ショック、傷関連性敗血症(wound associated sepsis)、心筋梗塞/再灌流または臓器移植後のような虚血後の再灌流障害、凍傷の傷またはショック、呼吸促迫症候群のような急性炎症反応媒介肺障害、急性膵炎、肝硬変、ぶどう膜炎、喘息、外傷性脳障害、腎炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、炎症性腸疾患、目の黄斑変性、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、網膜静脈閉塞症、および腫瘍増殖の治療および/または予防のための、請求項10に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−540892(P2010−540892A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525162(P2010−525162)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【国際出願番号】PCT/AT2008/000337
【国際公開番号】WO2009/039542
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(503213165)ファイブレックス メディカル リサーチ アンド デベロップメント ゲーエムベーハー (8)
【Fターム(参考)】