説明

抗疲労組成物

【課題】 本発明の目的は、抗疲労効果を示す、食品素材と発酵菌の組み合わせを見出すことにより、発酵食品の新たな利用分野を拡大することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、麹菌による大豆胚芽発酵物からなる抗疲労用組成物に関するものであり、前記組成物を含む抗疲労用食品に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麹菌による大豆胚芽発酵物からなる抗疲労組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通機関の発達や、情報社会のグローバル化に伴い、世界各地の様々な食品が日本にいながらにして手に入るようになった。このように、食生活が豊かになるにつれ、食事は単なる栄養補給のための行為の範疇を超え、精神的な満足、更には肉体的な健康を求める行為となっている。そのような消費者の需要に応えるため、現在までに様々な機能性を持った食品が製造されている。
【0003】
このような機能性食品の中で、近年抗疲労効果を目的とした食品の開発が盛んに行われている。抗疲労効果を持つ食品としては、例えば特許文献1に開示されるような食肉製品、特許文献2に開示されるような冬虫夏草の抽出物、特許文献3に開示されるようなプロアントシアニジンを含有する抗疲労ドリンク剤、特許文献4に開示されるようなイミダゾールジペプチド類を含有することを特徴とする抗疲労組成物などが挙げられる。しかしながら、これらの抗疲労効果を目的とする食品の多くは、様々な化学物質による処理を経て作られるものであり、日本において長期的な食経験がなく、安全性に関して消費者の不安を払拭することが出来ていなかった。そのような中で、日本の伝統的な発酵食品が安全な機能性食品としての価値を見直されている。
【特許文献1】特開2003−135033号公報
【特許文献2】国際公開番号WO96/00580号公報
【特許文献3】特開平11−318402号公報
【特許文献4】特開2002−173442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、抗疲労効果を示す、食品素材と発酵菌の組み合わせを見出すことにより、発酵食品の利用分野を拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、麹菌による大豆胚芽発酵物からなる抗疲労用組成物に関するものであり、前記組成物を含む抗疲労用食品に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、麹菌による大豆胚芽発酵物からなる抗疲労用組成物が得られ、安全かつ簡便に摂取可能な抗疲労用食品を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、下記実施形態の記載により限定して解釈するべきでなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0008】
本発明で用いられる麹菌としては、Aspergillus awamori、Aspergillus oryzae、Aspergillus
kawachii、Aspergillus saitoi、Aspergillus glaucusなどが挙げられる。
【0009】
本発明で用いられる麹菌として特に制限されるものではないが、得られる発酵物の風味の良さなどから、好ましくはAspergillus Awamoriが用いられる。
【0010】
本発明で用いられる大豆の品種としては、フクユタカ、タチナガハ、ミヤギシロメ、エンレイ、リュウホウ、スズユタカ、タマホマレ、トヨコマチ、おおすず、トヨムスメなどが挙げられる。
【0011】
本発明で用いられる大豆としては、前記の大豆品種を1種単独または2種以上を混合して使用することが出来、特に制限されるものではない。
【0012】
本発明で用いられる大豆胚芽として特段の制限はなく、前記の大豆から常法により得られる大豆胚芽が用いられる。
【0013】
本発明において大豆胚芽を発酵するに当たっては、洗浄、乾燥、粉砕、蒸煮、加熱、冷却、加水、pH調整、殺菌など、常法の発酵において行われる操作を行うことが出来、特に制限されるものではない。
【0014】
本発明の大豆胚芽発酵物の発酵条件としては、好気条件、嫌気条件が選ばれ得る。
【0015】
本発明の大豆胚芽発酵物の発酵時間としては、特に制限されるものではないが、得られる発酵物の風味の良さから24〜72時間、特に36〜60時間発酵に供されることが好ましい。
【0016】
本発明に用いられる発酵の方法は常法によるものであればよく、特に制限されるものではない。
【0017】
本発明で用いられる大豆胚芽発酵物の製造方法としては特段の制限はないが、特許第3014145号に開示される製造法が好適に用いられる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。
【0019】
(調製例1:麹菌による大豆胚芽発酵物の製造)
大豆胚芽99.85質量部に対し、水を35質量部、酢酸(食品グレード)を1.1質量部添加し、100℃で150分間蒸煮した。その後30℃に保ち3時間放冷を行った。冷却後1.1質量部のAspergillus awamoriを播種し、35℃で24時間製麹を行った。その後70℃で90分乾燥を行い、蒸気殺菌し、調製例1を得た。
【0020】
(調製例2:麹菌による大豆胚芽発酵物の製造)
大豆胚芽99.85質量部に対し、水を35質量部、酢酸(食品グレード)を1.1質量部添加し、100℃で150分間蒸煮した。その後30℃に保ち3時間放冷を行った。冷却後1.1質量部のAspergillus awamoriを播種し、35℃で36時間製麹を行った。その後70℃で90分乾燥を行い、蒸気殺菌し、調製例2を得た。
【0021】
(調製例3:麹菌による大豆胚芽発酵物の製造)
大豆胚芽99.85質量部に対し、水を35質量部、酢酸(食品グレード)を1.1質量部添加し、100℃で150分間蒸煮した。その後30℃に保ち3時間放冷を行った。冷却後1.1質量部のAspergillus awamoriを播種し、35℃で48時間製麹を行った。その後70℃で90分乾燥を行い、蒸気殺菌し、調製例3を得た。
【0022】
(調製例4:麹菌による大豆胚芽発酵物の製造)
大豆胚芽99.85質量部に対し、水を35質量部、酢酸(食品グレード)を1.1質量部添加し、100℃で150分間蒸煮した。その後30℃に保ち3時間放冷を行った。冷却後1.1質量部のAspergillus awamoriを播種し、35℃で60時間製麹を行った。その後70℃で90分乾燥を行い、蒸気殺菌し、調製例4を得た。
【0023】
(調製例5:麹菌による大豆胚芽発酵物の製造)
大豆胚芽99.85質量部に対し、水を35質量部、酢酸(食品グレード)を1.1質量部添加し、100℃で150分間蒸煮した。その後30℃に保ち3時間放冷を行った。冷却後1.1質量部のAspergillus awamoriを播種し、35℃で72時間製麹を行った。その後70℃で90分乾燥を行い、蒸気殺菌し、調製例5を得た。
【0024】
(比較例1:無発酵大豆胚芽の製造)
大豆胚芽99.85質量部に対し、水を35質量部、酢酸(食品グレード)を1.1質量部添加し、100℃で150分間蒸煮した。その後30℃に保ち3時間放冷を行った。その後、35℃で48時間無菌状態で静置した。その後70℃で90分乾燥を行い、蒸気殺菌し、比較例1を得た。
【0025】
(比較例2:乳酸菌による大豆胚芽発酵物の製造)
大豆胚芽99.85質量部に対し、水を35質量部、酢酸(食品グレード)を1.1質量部添加し、100℃で150分間蒸煮した。その後30℃に保ち3時間放冷を行った。冷却後1.1質量部のLactobacillus plantarumを播種し、35℃で48時間発酵を行った。その後70℃で90分乾燥を行い、蒸気殺菌し、比較例2を得た。
【0026】
(比較例3:酵母菌による大豆胚芽発酵物の製造)
大豆胚芽99.85質量部に対し、水を35質量部、酢酸(食品グレード)を1.1質量部添加し、100℃で150分間蒸煮した。その後30℃に保ち3時間放冷を行った。冷却後1.1質量部のSaccharomyces cerevisiaeを播種し、35℃で48時間発酵を行った。その後70℃で90分乾燥を行い、蒸気殺菌し、比較例3を得た。
【0027】
(比較例4:麹菌による大豆発酵物の製造)
大豆99.85質量部に対し、水を35質量部、酢酸(食品グレード)を1.1質量部添加し、100℃で150分間蒸煮した。その後30℃に保ち3時間放冷を行った。冷却後1.1質量部のAspergillus Awamoriを播種し、35℃で48時間製麹を行った。その後70℃で90分乾燥を行い、蒸気殺菌し、比較例4を得た。
【0028】
(比較例5:麹菌による米胚芽発酵物の製造)
米胚芽99.85質量部に対し、水を35質量部、酢酸(食品グレード)を1.1質量部添加し、100℃で150分間蒸煮した。その後30℃に保ち3時間放冷を行った。冷却後1.1質量部のAspergillus Awamoriを播種し、35℃で48時間製麹を行った。その後70℃で90分乾燥を行い、蒸気殺菌し、比較例5を得た。
【0029】
(試験例:抗疲労効果試験)
本発明の抗疲労効果は、被験者85人を17人ずつの5群に対し、調製例1〜5群及び比較例1〜5群をそれぞれ500mg/日、4週間を1クールとし、摂取物の内容が分からないような状態で摂取させた。1クール終了の後、2週間の間隔をあけ、2クール目の試験を行った。1クールと2クールでは群構成を無作為に変更した。
【0030】
試験期間中は日常の生活習慣からの逸脱がないようにし、通常の運動負荷、食事量で生活をさせた。
【0031】
(抗疲労効果の評価法)
摂取前、摂取後1週間、2週間、3週間及び4週間後に疲労に関する体感性アンケート(VAS: Visual analogue scale)を行い、抗疲労効果を評価した。各群の被験者の評点の平均点を、抗疲労効果の評点とした。
【0032】
体感性の項目としては、「疲労感」、「倦怠感」、「朝起きるのがつらい」、「眠りが浅い」、「集中出来ない」、「肩こりがひどい」、の6項目を評価した。評価は毎週の月曜日に行い、曜日間の差が出ないようにし試験を行った。
【0033】
(VASアンケートの評点)
10cmの直線の中央を0とし、両端(中央から各5cmの位置)を「これまで経験したことがないような最悪の状態」「これまで経験したことがないような最良の状態」とし、各質問項目について、ここ1週間の状態が直線上のどこに当てはまるかを記入させた。
【0034】
摂取前の測定値を基準0点とし、摂取後の変化値が試験の評点である。各項目とも数値が減少するほど体感性が良い状態、増加するほど体感性が悪い状態に変化していることを表す。
【0035】
「疲労感」に関する試験結果を表1及び表2に、「倦怠感」に関する試験結果を表3及び表4に、「朝起きるのがつらい」に関する試験結果を表5及び表6に、「眠りが浅い」に関する試験結果を表7及び表8に、「集中出来ない」に関する試験結果を表9及び表10に、「肩こりがひどい」に関する試験結果を表11及び表12に示す。
【0036】

【0037】

【0038】

【0039】

【0040】

【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】

【0046】

【0047】

【0048】
摂取後4週間の結果をそれぞれ比較した。調整例3〜5(麹菌による発酵大豆胚芽群)の摂取後3週目、4週目は、摂取前と比較し、「疲労感」、「倦怠感」、「朝起きるのがつらい」、「集中出来ない」の4項目に関して改善が見られた(t検定においてp<0.01で有意差あり)。中でも調製例3、4及び5は、比較例1に対して摂取後3週目、4週目における比較で「疲労感」、「倦怠感」、「集中出来ない」の3項目に関して改善が見られた(t検定においてp<0.05で有意差あり)。
【0049】
また、試験期間中に、試験食品摂取による重篤な有害事象は見られなかった。
【0050】
このことから、大豆胚芽を麹菌により発酵させた組成物は、抗疲労効果を持つことが期待される。また、大豆胚芽、麹菌は古来より日本の食生活に深く浸透した食品素材であり、安全性の面でも消費者の需要を満たすことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の麹菌による大豆胚芽発酵物は、抗疲労効果を有しており、食品としての安全性も期待されることから、長期的に摂取することが可能な食品素材として利用することが出来る。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
麹菌による大豆胚芽発酵物からなる抗疲労用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物を含む抗疲労用食品。


【公開番号】特開2010−43046(P2010−43046A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209835(P2008−209835)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(398028503)株式会社東洋新薬 (182)
【Fターム(参考)】