説明

抗癌剤としてのキノリン誘導体を製造および投与する方法

本発明は、キノリン誘導体化合物を調製する方法と、固形腫瘍および非固形腫瘍、特に肝臓癌の治療においてそのような化合物を投与する方法とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌剤としてのキノリン誘導体を製造および投与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物から単離された多くの塩基性かつ生理活性な含窒素化合物、特にキノリン部位を有する化合物は、様々な生理活性を示す。例えば、キニーネおよびキニジンは、マラリアおよび不整脈の治療に広く用いられている。ルオトニンAおよびBは、駱駝嵩(Peganum nigellastrum)(中国名「Luo−Tuo−Hao」)の着生部分から単離されたピロロキナゾリノキノリンアルカロイドである。この植物は、中国の伝統薬においてリューマチ、腫瘍(abseesses)、および炎症の治療に歴史的に用いられており、臨床的に有用な抗癌剤であるトポイソメラーゼIの阻害剤、カンプトセシンを著しく思い出させる。8−アミノキノロン、すなわち、シタマキン (Walter R
eed Army Institute of Research/GlaxoSmit
GlaxoSmithKline plc)は、キノリン環を含むアルカロイドの一例であり、内臓リーシュマニア、リーシュマニア症の治療用の代替の経口薬として開発された。特に、8−ヒドロキシキノリンおよびその誘導体については、抗菌性が良好であり、神経組織変成疾患の治療を補助することが可能であると報告されている。また、この新規なキノリン塩およびその誘導体については、水溶性の上昇とともに抗腫瘍活性を与えることが報告されている。
【0003】
2−置換キノリンアルカロイドは、クロマトグラフ法による分画化および精製によって、G.longifloraの根樹皮、幹樹皮、および葉から単離可能な、天然の植物産生物である。これらのアルカロイドについては、抗リーシュマニア症剤の可能性が示唆されている。2−置換テトラヒドロキノリンは、多くの生理活性アルカロイドに存在する重要な構造的特徴である。アングスツレインは、1999年にJacquemond−Colletおよびその同僚によってGalipea officinalisから最初に単離された。アングスツレインは、伝統的な薬草医療において、流行性の消化不良、赤痢、および慢性の下痢を治療するために用いられていた。また、アングスツレインについては、抗結核活性、抗マラリア活性、および細胞毒素活性が報告されている。しかしながら、非対称の水素化によって、その生理活性を調査するための新たな構造修飾の方向が開かれる。最近の研究では、高いエナンチオ選択性でテトラヒドロキノリン誘導体を容易に生成することへのブレークスルーが実証されている。
【0004】
8−ヒドロキシキノリン誘導体は、アルツハイマー病などの神経組織変成疾患の治療のために調製および研究されている。また、この誘導体については、ラットの間葉系幹細胞(rMSCs)の増殖に対する活性や抗菌性を有することが報告されている。
【0005】
本発明の目的は、キノリン誘導体化合物を抗癌剤として使用する方法、およびその製造方法を教示することである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】3つのヒト癌細胞系に対する本発明の用量応答活性を示す図。
【図2】本発明のキノリン誘導体化合物を用いる胸癌細胞系における細胞減少を示す図。
【図3】本発明が接種されたヒト乳癌細胞系を示す図。
【図4】マウスモデルにおける肝細胞癌のほぼ完全な消失を示す図。
【図5】図4に示す癌の消失を日数に基づき示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明では、キノリン誘導体化合物の調製を提供する。
さらに本発明では、固形腫瘍または非固形腫瘍の治療のために、薬学的に許容されるキャリア中のキノリン誘導体化合物を投与することを提供する。
【0008】
さらに本発明では、固形腫瘍または非固形腫瘍に対し、薬学的に許容されるキャリア中のキノリン誘導体化合物を投与することを提供する。
一定の代表的な実施形態についての以下の記述は、単なる例であり、本発明、その用途、または使用を限定することを意図したものではない。本記載の全体を通じて、用語「アルキル」および「置換アルキル」は、1〜10の炭素原子を有する、直鎖、分岐鎖、または環式炭化水素基などの基を表す。これらのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
【0009】
用語「アルケニル」および「置換アルケニル」は、1つ以上のC=C二重結合を有する、直鎖、分岐鎖、または環式炭化水素基などの基を表す。これらのアルケニル基は、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、シクロペンテニル、1−メチルシクロペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、シクロヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、4−ヘプテニル、5−ヘプテニル、6−ヘプテニル、1−オクテニル、シクロオクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、3−ノネニル、1−デセニル、3−デセニル、1,3−ブタジエニル、1,4−ペンタジエニル、1,3−シクロペンタジエニル、1,3−ヘキサジエニル、1,4−ヘキサジエニル、1,3−シクロヘキサジエニル、1,4−シクロヘキサジエニル、1,3−シクロヘプタジエニル、ならびにトリエンの直鎖および分岐鎖である。
【0010】
用語「アシル」および「置換アシル」は、芳香族、脂肪族、または複素環式のアシル基などの基を表し、例えば、アシル基は、カルバモイル、直線または分岐鎖のアルカノイル(ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、イソプロパノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル(hexnoyl)、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイルなど);アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、tert−ペンチロキシカルボニル、またはヘプチロキシカルボニルなど);シクロアルキルカルボニル(シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、またはシクロヘキシルカルボニルなど);アルキルスルホニル(メチルスルホニルまたはエチルスルホニルなど);アルコキシスルホニル(メトキシスルホニルまたはエトキシスルホニルなど);アロイル(ベンゾイル(benxoyl)、トルオイル、またはナフトイルなど);アラルカノイル(フェニルアセチル、フェニルプロパノイル、フェニルブタノイル、フェニルイソブチル、フェニルペンタノイル、フェニルヘキサノイル、ナフチルアセチル、ナフチルプロパノイル、ナフチルブタノイルなど);アラルケノイル(フェニルプロペノイル、フェニルペンテノイル、フェニルヘキセノイル、ナフチルプロペノイル、ナフチルブテノイル、ナフチルペンテノイルなど);アラルコキシカルボニル(ベンジルオキシカルボニルなど);アリールオキシカルボニル(フェノキシアセチル、ナフチルオキシカルボニルなど);アリールオキシアルカノイル(フェノキシアセチル、フェノキシプロピオニルなど);アリールカルバモイル(フェニルカルバモイルなど)、アリールチオカルバモイル(フェニルチオカルバモイルなど);アリ
ールグリオキシロイル(フェニルグリオキシロイル、ナフチルグリオキシロイルなど);アリールスルホニル(フェニルスルホニル、ナフチルスルホニルなど);複素環式カルボニル、複素環式アルカノイル(チエニルアセチル、チエニルプロパノイル、チエニルブタノイル、チエニルペンタノイル、チエニルヘキサノイル、チアゾリルアセチル、チアジアゾリルアセチル、テトラゾリルアセチルなど)、複素環式アルケノイル(複素環式プロペノイル、複素環式ブテノイル、複素環式ペンテノイル、または複素環式ヘキセノイルなど)、または複素環式グリオキシロイル(チアゾリルグリオキシロイルまたはチエニルグリオキシロイルなど)である。
【0011】
用語「アリール」および「置換アリール」は、炭素環式の芳香族系または複素環の芳香族系のような基(フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダン、またはビフェニルなど)を表す。これらの系は無置換であってもよく、1つ以上の基(ハロゲン、ハロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボニル、アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミド、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシ、チオ、またはチオアルキルなど)によって置換されていてもよい。
【0012】
用語「ヘテロ環」および「置換ヘテロ環」は、含N飽和および不飽和の複素環基(例えば、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル;ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル;インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、またはテトラゾロピリダジニル);含O飽和および不飽和の複素環基(例えば、ピラニル、フリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、モルホリニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリル);含S飽和および不飽和の複素環基(例えば、チエニル、チアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、またはチアゾリジニル)など、1つ以上のヘテロ原子を含む単環式または多環式の複素環基を表す。
【0013】
用語「ハロ」および「ハロゲン」は、1つ以上のハロゲン原子であり得る、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を表す。
用語「ヒドロキシル」は、酸素原子に結合している水素を表し、用語「置換ヒドロキシル」は、1つ以上の基(ハロゲン、保護されたヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アルキルまたは置換アルキル、アルケニルまたは置換アルケニル、アシルまたは置換アシル、アリールまたは置換アリール、ヘテロ環または置換ヘテロ環、アルコキシまたは置換アルコキシ、アシルオキシまたは置換アシルオキシ、カルボキシまたは保護されたカルボキシ、カルボキシメチルまたは保護されたカルボキシメチル、ヒドロキシメチルまたは保護されたヒドロキシメチル、アミノまたは保護されたアミノ、カルボキサミドまたは保護されたカルボキサミドなど)によって置換されたヒドロキシル基を表す。
【0014】
用語「アルコキシ」および「置換アルコキシ」は、直鎖または分岐鎖のアルキルを有する含オキソ原子(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、およびtert−ブトキシ)を表す。
【0015】
用語「チオ」および「置換チオ」は、−SHまたは−S−を含む基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ヘキシルチオ)を表す。
用語「スルホニル」および「置換スルホニル」は、−S(O)−を含む基(例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、トリクロロメタンスルホニル、または他のハロゲン置換アルキルスルホニルもしくはアリールスルホニル)を表す。
【0016】
用語「スルフィニル」および「置換スルフィニル」は、−S(=O)−を含む基(例え
ば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、ブチルスルフィニル、ヘキシルスルフィニル)を表す。
【0017】
さらに、本明細書では、用語「固形腫瘍」は、良性の癌および悪性の癌を含む、胞または液体領域を通常含まない異常な組織部分を表す。用語「非固形腫瘍」は、血液およびリンパ系に自然に移行する、造血細胞を含む血液の癌を表す。
【0018】
本発明には、キノリン誘導体化合物を調製する方法と、癌治療におけるそのようなキノリン誘導体化合物の使用とが含まれる。
本発明において、調製および使用に用いられる化合物には、式I〜IVによって表されるものおよびその塩が含まれる。
【0019】
【化1】

【0020】
ここで、各式のA、B、C、D、W、X、Y、Zは、CH−,CH−、O、N、P、およびS原子から個別に選択可能であり、化合物の特定のキラル点(記号*として示す)であってもよい;各式のRおよびRは、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、ヒドロキシル、置換ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、チオ、置換チオ、スルホニル、置換スルホニル、スルフィニル、置換スルフィニル、スルホニルアミノもしくは置換スルホニルアミノ、ハロ、SOH、アミン、CN、CF、アシルもしくは置換アリール、複素環基もしくは置換複素環基、アルコキシもしくは置換アルコキシ、アルデヒドもしくは置換アルデヒド、または置換ホスフィン;COR、CSR、およびCONHR[ここで、Rは、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヒドロキシル、置換ヒドロキシル、アリール、置換アリール、複素環基、および置換複素環基から選択可能である];OR、SR、またはNR[ここで、RおよびRは、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アシル、置換アシル、複素環基、置換複素環基、およびCNから独立に選択可能である];C〜CNR、HCNNR、またはHCNOR[ここで、RおよびRは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アシル、置換アシル、複素環基、および置換複素環基であることが可能である];SR、OR、またはNR[ここで、RおよびRは、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アシル、置換アシル、複素環基、および置換複素環基から独立に選択可能である];およびSONR1011[ここで、R10およびR11は、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アシル、置換アシル、複素環基、および置換複素環基から独立に選択可能である]から選択可能である。R/R
がABCD環およびWXYZ環の部位に2度以上現れてもよく、R/Rの両方が特定のキラル置換基であってもよい。
【0021】
式I〜IVの化合物の合成すなわち製造においては、一般に、キノリン化合物のエーテル溶液に、試薬溶液(n−ブチルリチウムのヘキサン溶液など)が加えられる。この溶液が、次いで、好適には適切な温度(例えば、18℃〜23℃)まで加温され、適切な時間(例えば、0.5〜3時間)撹拌される。さらなる試薬、例えば、ケトン、ハロゲン化アルキル(BrまたはIを含み得る)が、この溶液に加えられてもよい。所望の化合物の生成における追加の処理には、次に限定されないが、撹拌、加水分解、水素化、分離、抽出、洗浄、乾燥、希釈、および精製が含まれてよい。
【0022】
本発明の方法により生成する式I〜IVに基づく化合物の例には、以下が含まれるが、それらに限定されない。
2−エチル−キノリン
【0023】
【化2】

【0024】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.40(t,3H,J=8.5Hz),3.02(q,2H,J=8.0Hz),7.31(d,1H,J=9.0Hz),7.47−7.52(m,1H),7.67−7.70(m,1H),7.78(d,1H,J=8.5Hz),8.05(d,1H,J=8.5Hz),8.08(d,1H,J=8.0Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ14.26,32.56,121.08,125.88,126.96,127.71,129.04,129.57,136.58,148.09,164.26;質量スペクトル(ESI):158.09[M+H];収率=90%。
【0025】
2−プロピル−キノリン
【0026】
【化3】

【0027】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.03(t,3H,J=7.0Hz),1.84−1.88(m,2H),2.96−3.07(m,2H),7.30(d,1H,J=8.5Hz),7.47−7.49(m,1H),7.61−7.69(m,1H),7.77−7.79(m,1H),8.06(t,2H,J=9.0Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ14.24,23.52,41.51,121.63,125.89,126.96,127.71,129.04,129.57,136.44,148.11,163.14;質量スペクトル(ESI):172.15[M+H];収率=89%。
【0028】
2−ブチル−キノリン
【0029】
【化4】

【0030】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ0.97(t,3H,J=7.5Hz),1.41−1.49(m,2H),1.77−1.83(m,2H),2.98(t,2H,J=8.0Hz),7.32(d,1H,J=8.5Hz),7.48(t,1H,J=8.0Hz),7.67−7.69(m,1H),7.78(d,1H,J=8.0Hz),8.06(t,2H,J=8.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ14.23,22.91,32.44,39.29,121.62,125.90,126.95,127.71,128.98,129.59,136.49,148.05,163.35;質量スペクトル(ESI):186.14[M+H];収率=88%。
【0031】
2−(3−ブテニル)−キノリン
【0032】
【化5】

【0033】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ2.60−2.72(m,2H),3.07−3.09(m,2H),4.95−5.01(m,1H),5.07−5.16(m,1H),5.90−5.96(m,1H),7.30(d,1H,J=9.0Hz),7.49(t,1H,J=7.5Hz),7.62−7.69(m,1H),7.77(d,1H,J=8.5Hz),8.05−8.09(m,1H);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ34.04,38.71,115.50,121.66,126.02,127.00,127.74,129.01,129.65,136.53,137.91,148.08,162.24;質量スペクトル(ESI):184.11[M+H];収率=92%。
【0034】
2−ペンチル−キノリン
【0035】
【化6】

【0036】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ0.90(t,3H,J=6.0Hz),1.35−1.42(m,4H),1.79−1.85(m,2H),2.98(t,2H,J=8.0Hz),7.30(d,1H,J=8.5Hz),7.48(t,1H,J=8.0Hz),7.67−7.70(m,1H),7.77(d,1H,J=8
.0Hz),8.07(t,2H,J=8.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ14.26,22.81,30.02,31.99,39.53,121.62,125.91,126.95,127.72,128.96,129.61,136.52,148.01,163.36;質量スペクトル(ESI):200.16[M+H];収率=91%。
【0037】
2−フェネチル−キノリン
【0038】
【化7】

【0039】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ3.17(t,2H,J=7.0Hz),3.30(t,2H,J=7.5Hz),7.20−7.38(m,6H),7.52(t,1H,J=7.5Hz),7.71(t,1H,J=8.0Hz),7.78(d,1H,J=8.0Hz),8.05(dd,2H,J=8.0,16.0Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ36.19,41.19,121.82,126.08,126.25,127.05,127.78,128.65,128.77,129.04,129.70,136.55,141.73,148.14,162.04;質量スペクトル(ESI):234.13[M+H];収率=90%。
【0040】
2−メチル−1−(キノリン−2−イル)−プロパノール
【0041】
【化8】

【0042】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.20(s,6H),3.04(s,2H),6.09(s,1H),7.19(d,1H,J=2.0Hz),7.45(t,1H,J=8.0Hz),7.64(t,1H,J=7.5Hz),7.73(d,1H,J=8.5Hz),7.96(d,1H,J=8.0Hz),8.04(d,1H,J=8.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ29.87,49.26,71.21,123.09,126.42,126.96,127.79,128.96,130.06,137.06,147.09,161.00.質量スペクトル(ESI):202.15[M+H];収率=83%。
【0043】
1,1−ジフェニル−2−(キノリン−2−イル)−エタノール
【0044】
【化9】

【0045】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ3.89(s,2H),7.12−7.15(m,2H),7.19−7.26(m,4H),7.46−7.52(m,5H),7.66(t,1H,J=8.0Hz),7.72(d,1H,J=8.5Hz),7.97(d,1H,J=8.0Hz),8.01(d,1H,J=8.5Hz),8.13(s,1H);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ47.77,78.88,123.06,126.42,126.50,126.74,126.83,127.77,128.21,128.74,130.08,137.18,147.54,160.33;質量スペクトル(ESI):326.21[M+H];収率=79%。
【0046】
1−(キノリン−2−イルメチル)−シクロヘキサノール
【0047】
【化10】

【0048】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.32−1.71(m,10H),3.09(s,2H),7.25(d,1H,J=8.5Hz),7.48−7.52(m,1H),7.67−7.69(m,1H),7.69−7.71(m,1H),7.78−7.79(m,1H),8.01(d,1H,J=8.5Hz),8.09(d,1H,J=8.0Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl)δ22.58,26.16,38.29,47.94,72.17,123.21,126.32,126.92,127.75,129.01,129.95,136.88,147.22,160.80;質量スペクトル(ESI):242.19[M+H];収率=90%。
【0049】
酢酸キノリン−2−イルメチルエーテル
【0050】
【化11】

【0051】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ2.20(s,3H),5.40(s,2H),7.48(d,1H,J=9.0Hz),7.53−7.57(m,1H),7.71−7.74(m,1H),7.83(d,1H,J=8.5Hz),8.08(d,1H,J=8.0Hz),8.18(d,1H,J=9.0Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ21.18,67.68,119.74,126.93,127.77,127.83,129.41,130.09,137.23,147.87,156.37,170.94;質量スペクトル(ESI):202.09[M+H];収率=96%。
【0052】
8−ヒドロキシ−2−キノリンカルボキサルデヒド
【0053】
【化12】

【0054】
H−NMR(500MHz,C):δ6.76−6.79(m,1H),7.05(d,1H,J=4.0Hz),7.12(s,1H),7.33(d,1H,J=9.0Hz),7.63(d,1H,J=9.0Hz),8.02(s,1H),9.79(s,1H);13C−NMR(125MHz,C):δ111.81,118.33,118.49,130.98,131.35,137.81,138.54,150.99,154.19,192.58;質量スペクトル(ESI):174.05[M+H]
【0055】
8−メトキシ−2−メチルキノリン
【0056】
【化13】

【0057】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ2.79(s,3H),4.08(s,3H),7.02(d,1H,J=8.0Hz),7.27−7.41(m,3H),8.01(d,1H,J=8.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ25.94,56.20,107.81,119.63,122.82,125.90,127.78,136.33,139.90,155.02,158.35;質量スペクトル(ESI):174.09[M+H];収率=84%。
【0058】
8−エトキシ−2−メチルキノリン
【0059】
【化14】

【0060】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.63(t,4H,J=7.0Hz),2.80(s,3H),4.34(q,2H,J=7.0Hz),7.04(d,1H,J=7.0Hz),7.30−7.40(m,3H),8.01(d,1H,J=8.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ14.80,26.01,64.54,108.96,119.51,122.70,125.92,127.93,136.33,140.08,154.34,158.33;質量スペクトル(ESI):188.10[M+H]
【0061】
8−(2−(ピペリジン−1−イル)エトキシ)−2−メチルキノリン
【0062】
【化15】

【0063】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.46(bs,2H),1.70(bs,4H),2.71(bs,7H),3.04(bs,2H),4.34(bs,2H),6.99(d,1H,J=7.0Hz),7.24(d,1H,J=9.0Hz),7.28−7.33(m,2H),7.95(d,1H,J=8.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ23.81,24.88,25.31,54.46,57.31,64.31,109.36,120.26,122.95,125.94,127.98,136.58,139.62,153.83,158.46;質量スペクトル(ESI):271.21[M+H]
【0064】
8−(ベンジルオキシ)−2−メチルキノリン
【0065】
【化16】

【0066】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ2.82(s,3H),5.47(s,2H),7.00(d,1H,J=7.5Hz),7.27−7.38(m,6H),7.53(d,2H,J=8.0Hz),7.99(d,1H,J=8.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl)δ26.07,71.06,110.78,120.09,122.76,125.76,127.09,127.85,128.00,128.77,136.28,137.57,140.38,154.12,158.39;質量スペクトル(ESI):250.12[M+H]
【0067】
2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
【0068】
【化17】

【0069】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.13(d,3H,J=6.5Hz),1.47−1.55(m,1H),1.83−1.88(m,1H),2.62−2.79(m,3H),3.29−3.35(m,1H),6.40(d,1H,J=8.0Hz),6.53(t,1H,J=7.0Hz),6.87−6.90(m,2H);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ22.83,26.83,30.36,47.43,114.31,117.29,121.41,126.94,129.53,144.94;質量スペクトル(ESI):148.14[M+H];95%ee
;HPLC(OJ−H,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=95/5,検出器:254nm,流速:0.5mL/min),(S)t=25.6min,(R)t=28.7min。
【0070】
2−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
【0071】
【化18】

【0072】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.02(t,3H,J=7.5Hz),1.53−1.66(m,3H),1.98−2.03(m,1H),2.74−2.88(m,2H),3.17−3.22(m,1H),6.51(d,1H,J=8.0Hz),6.63(t,1H,J=7.5Hz),6.99(t,2H,J=7.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl)δ10.32,26.67,27.83,29.65,53.29,114.28,117.15,121.66,126.96,129.49,144.97;質量スペクトル(ESI):161.94[M+H];92%ee;HPLC(OJ−H,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=95/5,検出器:254nm,流速:0.5mL/min),(S)t=22.1min,(R)t=24.8min。
【0073】
2−プロピル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
【0074】
【化19】

【0075】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ0.99(t,3H,J=7.5Hz),1.42−1.53(m,4H),1.58−1.67(m,1H),1.95−2.00(m,1H),2.72−2.87(m,2H),3.25−3.29(m,1H),6.50(d,1H,J=8.0Hz),6.62(t,1H,J=7.0Hz),6.98(t,2H,J=7.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ14.45,19.15,26.67,28.35,39.12,51.55,114.31,117.17,121.66,126.94,129.50,144.93;質量スペクトル(ESI):175.94[M+H];88%ee;HPLC(OJ−H,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=95/5,検出器:254nm,流速:0.5mL/min),(S)t=20.3min,(R)t=26.4min。
【0076】
2−ブチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
【0077】
【化20】

【0078】
HNMR(500MHz,CDCl):δ0.97(t,3H,J=7.5Hz,),1.37−1.46(m,4H),1.51−1.53(m,2H),1.60−1.65(m,1H),1.97−2.00(m,1H),2.73−2.89(m,2H),3.27−3.31(m,1H),6.50(d,1H,J=7.5Hz),6.62(t,1H,J=7.5Hz),6.98(t,2H,J=7.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ14.35,23.10,26.68,28.17,28.36,36.66,51.83,114.30,117.15,121.66,126.94,129.50,144.96;質量スペクトル(ESI):189.99[M+H];90%ee;HPLC(OJ−H,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=95/5,検出器:254nm,流速:0.5mL/min),(S)t=17.7min,(R)t=21.1min。
【0079】
2−ペンチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
【0080】
【化21】

【0081】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ0.83(t,3H,J=6.5Hz,),1.18−1.43(m,9H),1.48−1.56(m,1H),1.86−1.91(m,1H),2.62−2.77(m,2H),3.13−3.18(m,1H),6.40(d,1H,J=8.0Hz),6.52(t,1H,J=7.5Hz),6.88(t,2H,J=7.0Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ14.32,22.91,25.65,26.69,28.36,32.22,36.92,51.85,114.30,117.15,121.66,126.94,129.50,144.96;質量スペクトル(ESI):204.01[M+H];91%ee;HPLC(OJ−H,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=95/5,検出器:254nm,流速:0.5mL/min),(S)t=15.7min,(R)t=17.3min。
【0082】
2,6−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
【0083】
【化22】

【0084】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.22(d,3H,J=6.5Hz),1.56−1.64(m,1H),1.91−1.96(m,1H),2.23(s,3H),2.69−2.87(m,2H),3.36−3.40(m,1H),6.43(d,1H,J=8.0Hz),6.80(d,2H,J=8.0Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ20.66,22.83,26.83,30.59,47.57,114.53,121.51,126.55,127.46,130.07,142.64;質量スペクトル(ESI):162.15[M+H];92%ee;HPLC(OJ−H,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=90/10,検出器:25
4nm,流速:0.5mL/min),(S)t=24.2min,(R)t=29.8min。
【0085】
6−メトキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
【0086】
【化23】

【0087】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.13(d,3H,J=6.0Hz),1.46−1.54(m,1H),1.82−1.87(m,1H),2.61−2.66(m,1H),2.73−2.80(m,1H),3.24−3.28(m,1H),3.65(s,3H),6.39(d,1H,J=8.5Hz),6.51(t,2H,J=8.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ22.74,27.13,30.51,47.76,56.04,113.09,114.87,115.67,122.87,138.97,152.17;質量スペクトル(ESI):178.13[M+H];94%ee;HPLC(OJ−H,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=90/10,検出器:254nm,流速:0.5mL/min),(S)t=35.2min,(R)t=42.7min。
【0088】
2−フェネチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
【0089】
【化24】

【0090】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.71−1.79(m,1H),1.86−1.96(m,2H),2.05−2.08(m,1H),2.79−2.92(m,4H),3.34−3.39(m,1H),3.77(bs,1H),6.53(d,1H,J=8.5Hz),6.69(t,1H,J=7.5Hz),7.04(t,2H,J=8.0Hz),7.28(t,3H,J=6.5Hz),7.38(t,2H,J=6.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ26.51,28.25,32.47,38.50,51.46,114.54,117.44,121.66,126.28,127.05,128.67,128.80,128.86,129.56,142.15,144.72;質量スペクトル(ESI):237.99[M+H];90%ee;HPLC(OJ,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=90/10,検出器:254nm,流速:1.0mL/min),(S)t=18.8min,(R)t=20.5min。
【0091】
1−(1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−イルメチル)−シクロヘキサノール
【0092】
【化25】

【0093】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.23−1.27(m,1H),1.38−1.68(m,13H),1.74−1.79(m,1H),2.63−2.68(m,1H),2.76−2.83(m,1H),3.48−3.53(m,1H),6.42(d,1H,J=7.5Hz),6.52(t,1H,J=8.5Hz),6.87(t,2H,J=8.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ22.39,22.45,25.97,26.83,30.11,36.00,40.83,47.40,48.11,72.81,114.80,117.07,121.29,126.93,129.47,144.65;質量スペクトル(ESI):246.07[M+H];96%ee;HPLC(OJ,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=85/15,検出器:254nm,流速:1.0mL/min),(S)t=7.9min,(R)t=5.1min。
【0094】
6−フルオロ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン
【0095】
【化26】

【0096】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.21(d,3H,J=6.0Hz),1.53−1.61(m,1H),1.90−1.95(m,1H),2.68−2.75(m,1H),2.79−2.88(m,1H),3.29−3.49(m,1H),6.37−6.42(m,1H),6.64−6.70(m,2H);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ22.71,26.94,30.11,47.54,113.30,113.47,114.94,115.00,115.53,115.70,122.73,141.18,154.81,156.67;質量スペクトル(ESI)165.90[M+H];90%ee;HPLC(OD−H,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=94/6,検出器:254nm,流速:1.0mL/min),(S)t=5.2min,(R)t=6.4min。
【0097】
2−メチル−1−(1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−イル)−プロパン−2−オール
【0098】
【化27】

【0099】
H−NMR(500MHz,CDCl):δ1.25(d,7H,J=5.5Hz
),1.50−1.69(m,3H),1.75−1.80(m,1H),2.63−2.68(m,2H),2.77−2.84(m,1H),3.48−3.52(m,1H),6.43(d,1H,J=8.0Hz),6.53(t,1H,J=7.5Hz),6.88(t,2H,J=7.5Hz);13C−NMR(125MHz,CDCl):δ26.78,28.04,29.96,33.02,48.56,49.12,72.20,114.85,117.15,121.33,126.96,129.51,144.62;質量スペクトル(ESI):205.84[M+H];95%ee;HPLC(OD−H,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=94/6,検出器:254nm,流速:1.0mL/min),(S)t=9.0min,(R)t=11.1min。
【0100】
1,2,3,4−テトラヒドロ−2−メチルキノリン−8−オール
【0101】
【化28】

【0102】
H−NMR(500MHz,DMSO):δ1.20(d,3H,J=6.5Hz),1.43−1.52(m,1H),1.86−1.89(m,1H),2.62−2.67(m,1H),2.73−2.79(m,1H),3.29−3.35(m,1H),4.48(s,1H),6.33(t,1H,J=7.5Hz),6.42(d,1H,J=7.5Hz),6.51(d,1H,J=7.5Hz),9.04(s,1H);13C−NMR(125MHz,DMSO):δ22.99,26.59,30.53,46.81,112.14,115.76,120.40,120.95,134.39,143.80;質量スペクトル(ESI):164.05[M+H];97%ee;HPLC(OJ−H,溶出液:ヘキサン/i−PrOH=90/10,検出器:254nm,流速:1.0mL/min),(S)t=22.33min,(R)t=24.69min。
【0103】
さらに本発明では、式I〜IVの化合物は、固形腫瘍および非固形腫瘍を含む癌の治療のためにヒトなどの哺乳動物に適用するのに適切である。特に、本発明の化合物は、胸癌、肝細胞癌、および慢性骨髄性白血病の治療に適切である。本発明の化合物は、蒸留水、脱イオン化水、薬学的に許容される塩水、グルコース、ジメチルスルホキシドなど、薬学的に許容されるキャリアを用いて適用可能である。
【0104】
適用される化合物の有効量は、例えば、哺乳動物の体重に対し8mg/kg/日〜約12mg/kg/日であり、好適には、5〜10日間など連続的な期間を通じて適用される。適用は、腫瘍内注入、静脈注入、経口的、経粘膜、吸入、経口摂取などによることが可能である。癌の種類に関して、本発明の化合物は、例えば、次に限定されないが、Hs578+およびT97D乳癌細胞、K562細胞、およびHep3B細胞など、広範囲の癌細胞に対する有効な治療であると考えられる。
【0105】
[実施例]
[実施例1]:8−ヒドロキシ−2−キノリンカルボキサルデヒドの合成
【0106】
【化29】

【0107】
8−ヒドロキシ−2−メチルキノリン(2g、12.4mmol)、二酸化セレン(1.74g、15.8mmol)、予め乾燥した1,4−ジオキサン(300ml)および水(1.5ml)を、1Lの丸底フラスコ中で混合し、撹拌した。得られた溶液を、次いで、24時間還流した。TLC法を用いて、反応を完了まで監視した。反応混合物を濾過して、セレン金属をジクロロメタンで洗浄し、濾液全体を減圧下で留去した。粗生成物を、減圧下での昇華、またはシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製して、純粋な黄色の針状結晶を得た。
【0108】
[実施例2]:化合物(式I)の合成
【0109】
【化30】

【0110】
キナルジン(5mmol、716mg)のエーテル溶液(15mL)に、1.6Mのn−ブチルリチウム(5.5mmol、3.5mL)のヘキサン溶液を0℃で30分間かけて加えた。この溶液を室温まで加温して、1時間撹拌した。
【0111】
上記の混合物に、温度を0℃まで冷却し、強く撹拌しつつ、エーテル(either)ケトン(5mmol)のエーテル溶液(15mL)を、15分間かけて滴下した。この混合物を終夜撹拌し、飽和の塩化アンモニウム水溶液で加水分解させた。有機層を分離し、水層をさらにエーテル(50mL、3回)で抽出した。有機層全体を塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを通して乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製して油状生成物を得た。
【0112】
[実施例3]:酢酸キノリン−2−イルメチルエーテルの合成
【0113】
【化31】

【0114】
撹拌している2−キノリンカルボキサルデヒドのメタノール溶液に、室温でNaBHを少しずつ加えた。反応をTLCによって監視した。反応の完了後、溶媒を減圧下で除去し、残留物を水へ注いで、ジクロロメタン(10mL、3回)で抽出した。有機層全体を塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを通して乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成
物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製して、無色の油分として定量的にアルコール生成物を得た。
【0115】
撹拌しているアルコール溶液に、無水酢酸およびトリエチルアミンを加えた。得られた混合物を室温で24時間撹拌した。反応を水の添加によって停止させ、混合物を塩水で抽出し、無水硫酸ナトリウムを通して乾燥させた。溶媒の除去後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィにかけ、収率96%で生成物を得た。
【0116】
[実施例4]:8−アルコキシ置換キナルジンの合成
【0117】
【化32】

【0118】
2−メチル−8−キノリノール(3mmol、477mg)、ハロゲン化アルキル(RX、3mmol、X=BrまたはCl)、およびKCOの溶液を、10mLのDMF中で撹拌した。反応を室温で行わせ、TLCによって監視した。反応の完了後、混合物をNaCOで洗浄し、クロロホルムで抽出して、無水硫酸ナトリウムを通して乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィによって精製して純粋な生成物を得た。
【0119】
[実施例5]:化合物(式II)の合成
【0120】
【化33】

【0121】
1.配位子はキラルであっても非キラルであってもよい。
2.配位子はP−Phosおよびその誘導体であってもよく、他のホスフィン配位子であってもよく、任意の可能な種類の配位子であってよい。
【0122】
乾燥した溶媒(1.0mL)中の[Ir(COD)Cl](1.0mg、0.0015mmol)および配位子(0.003mmol)の混合物を、グローブボックス中、室温で30分間撹拌した。この混合物を、乾燥した溶媒(0.5mL)中の12(4mg、0.015mmol)および基質(0.3mmol)を予め入れておいたステンレス鋼オートクレーブに注射器で移動させた。水素化を室温で20時間、H下に行った。水素を注意深く放出させた後、反応混合物を15分間かけて飽和炭酸ナトリウム溶液(2.0mL)でクエンチした。水層をEtOAc(3回、3mL)で抽出した。有機層全体を、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。シリカゲルカラムを用いてヘキサン/EtOAcで溶出させて精製することによって、純粋な状態の複素環式化合物を得た。キラルカラム(OJ−H、OD−H、またはOJ)を用いるキラルHPLCによって、鏡像体過剰率(ee)を決定した。
【0123】
[実施例6]:生体外細胞毒性活性試験
選択したアルカロイドについての予備抗癌スクリーニングの目的で、ヒト胸癌細胞系T47Dおよび慢性骨髄性白血病(CML)K562を用いた。96ウェルマイクロタイター(microtitre)プレートに24時間接種した癌細胞(ウェルあたり1×10)を、アルカロイドスクリーニング用に調製した。化合物a〜g(図1)を、ジメチルスルホキシド(DMSO)中、ストック濃度50mg/mlとして調製し、50μg/mlの濃度で加え、さらに48時間、インキュベートした。未処理のコントロールには、完全培地または0.1%のDMSOのいずれかを与えた。シスプラチン(CDDP、やはり50μg/ml)を陽性の基準とした。その後、それらのアルカロイドの抗増殖性または細胞毒性の評価を、PerkinElmerから購入したOneStepATPライトアッセイを用いて、与えられた技術マニュアルに従って検査した。各実験において3回の試験を行い、3つの独立した実験を行った。未処理のコントロールと比較したATP含有量の中間値±標準偏差(SD)として結果を示す。テーブル2には、試験済みのアルカロイド関連化合物の細胞毒性アッセイを示す。シスプラチン(CDDP)を陽性の基準として用いる。試験化合物およびCDDPの濃度はすべて、50μg/mlである。結果を、3回の実験からの中間値±SDとして示す。
【0124】
図1は、胸癌T47D、Hs578t、およびCML K562を含む3つのヒト癌細胞系に対する化合物cの用量応答活性を示す。やはり、CDDPを陽性の基準として用いる。
【0125】
【表1】

【0126】
【表2】

【0127】
[実施例7]:癌細胞に対する化合物cの細胞毒素活性についての生体外モルホロジの研究
ヒト胸癌細胞系Hs578t、T47D、および慢性骨髄性白血病K562を、モルホロジ調査の目的で用いた。培養皿に24時間接種した癌細胞(1×10)を、アルカロイドスクリーニング用に調製した。テーブル1の化合物cを、25μg/mlの濃度で加え、さらに48時間インキュベートした。未処理のコントロールには0.05%のDMSOを与えた。任意のモルホロジ変化を倒立顕微鏡下で記録した。図2に示すように、3つの癌細胞系すべてが細胞収縮を示し、2本の胸癌細胞系は付着性も喪失し、細胞が丸くなるのが観察された(d、e、f)。DMSOコントロールでは正常な成長が観察された(a、b、c)。
【0128】
[実施例8]:生体外コロニー形成アッセイ
図3に示すように、ヒト乳癌細胞系T47Dを培養板に1×10/mlの濃度で24時間接種した。後に、様々な濃度の化合物cを加えた。未処理のコントロール(0)には、0.1%のDMSOを与えた。さらなる24時間のインキュベーション後、培地をすべて除去し、新鮮な完全な培地を加えた。培養板をさらに7日間インキュベートした。最終的に、形成されたコロニーを固定し、メチレンブルーで染色し、写真を撮影した。ここでの結果は、T47D細胞の固定によるクローン原性を化合物cが用量に応じて抑制し得ることを示している。
【0129】
[実施例9]:生体内の無胸腺ヌードマウス異種移植片実験
香港中文大学(the Chinese Univercity of Hong Kong)の動物部(animal house)から購入された平均体重25gの無胸腺のヌードマウスに、ヒト肝細胞(HCC)細胞系Hep3Bを皮下注射した。それらのマウスを滅菌状態で収容した。腫瘍サイズを電子的なカリパスによって毎日測定した。腫瘍サイズが平均体積の約150mmに達したとき(腫瘍体積は式(長さ×幅×幅)/2によって算出した)、それらを無作為に2つの群へ分けた。テーブル1の化合物cを10mg/kg/日体重の濃度で、8日間連続して腹腔内注入で投与した。コントロール群にはキャリアのみを与えた。各群は5つのマウスから構成した。図4および5に示すように、
化合物cを与えたマウスにおいて、薬剤の投与から9日目に肝細胞癌Hep3B異種移植片がほぼ完全に消失するのが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における癌を治療する方法であって、薬学的に許容されるキャリア中の有効量のキノリン誘導体化合物を前記哺乳動物に投与する工程を含み、前記キノリン誘導体化合物は、次式の群から選択され、
【化1】

ここで、A、B、C、D、W、X、Y、Zは、CH−,CH−、O、N、P、およびS原子から個別に選択可能であり;RおよびRは、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルコキシ、置換アルコキシ、ヒドロキシル、置換ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、チオ、置換チオ、スルホニル、置換スルホニル、スルフィニル、置換スルフィニル、スルホニルアミノもしくは置換スルホニルアミノ、ハロ、SOH、アミン、CN、CF、アシルもしくは置換アリール、複素環基もしくは置換複素環基、アルコキシもしくは置換アルコキシ、アルデヒドもしくは置換アルデヒド、ケトンもしくは置換ケトン、または置換ホスフィン;OSO、COR、またはCSR[ここで、Rは、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、ヒドロキシル、置換ヒドロキシル、アリール、置換アリール、複素環基、および置換複素環基から選択可能である];OR、SR、またはNR[ここで、RおよびRは、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アシル、置換アシル、複素環基、置換複素環基、およびCNから独立に選択可能である];C〜CNR、HCNNR、またはHCNOR[ここで、RおよびRは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アシル、置換アシル、複素環基、および置換複素環基であることが可能である];SR、OR、またはNR[ここで、RおよびRは、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アシル、置換アシル、複素環基、および置換複素環基から独立にを選択可能である];および、SONR1011[ここで、R10およびR11は、H、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アシル、置換アシル、複素環基、および置換複素環基から独立に選択可能である]から選択可能であり、
前記キノリン誘導体化合物は、2−エチルキノリン、2−プロピルキノリン、2−ブチルキノリン、2−(3−ブテニル)キノリン、2−ペンチルキノリン、2−フェネチルキノリン、2−メチル−1−(キノリン−2−イル)−プロパノール、1,1−ジフェニル−2−(キノリン−2−イル)−エテノール、1−(キノリン−2−イルメチル)−シクロヘキサノール、酢酸キノリン−2−イルメチルエーテル、8−ヒドロキシ−2−キノリンカルボキサルデヒド、2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2−プロピル−1,2,3,4−テトラヒ
ドロキノリン、2−ブチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2−ペンチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2,6−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−メトキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2−フェネチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1−(1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−イルメチル)−シクロヘキサノール、6−フルオロ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、および2−メチル−1−(1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−イル)−プロパン−2−オールから選択される、方法。
【請求項2】
前記癌は固形腫瘍または非固形腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記キノリン誘導体化合物は、前記哺乳動物の体重に対し8mg/kg/日〜約12mg/kg/日の量で投与され、前記薬学的に許容されるキャリアは、ポリエチレングリコール、CMC、または任意の永続的に結合したキャリア剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記キノリン誘導体化合物は5〜10日間連続して投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記癌は胸癌、肝細胞、癌または慢性骨髄性白血病である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記キノリン誘導体化合物は、8−ヒドロキシ−2−キノリンカルバルデヒド、8−ベンジルオキシ−2−メチルキノリン、8−キノリンチオール塩酸塩、およびキラルまたは非キラルなテトラヒドロキノリン誘導体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記キラルまたは非キラルなテトラヒドロキノリン誘導体は、1,2,3,4−テトラヒドロ−2−メチルキノリン−8−オールまたは8−(ベンジルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−メチルキノリンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
キノリン誘導体化合物を製造する方法であって、
キノリン化合物の溶液に試薬の溶液を加える工程と、
前記試薬/キノリン溶液を適切な温度まで加温する工程と、
反応が完了するまで適切な時間、撹拌する工程と、
前記溶液にさらなる試薬を加える工程と、
撹拌、加水分解、水素化、分離、抽出、洗浄、乾燥し希釈、および精製から選択される1つ以上の追加の処理を行う工程と、を含み、
前記キノリン誘導体化合物は、2−エチルキノリン、2−プロピルキノリン、2−ブチルキノリン、2−(3−ブテニル)キノリン、2−ペンチルキノリン、2−フェネチルキノリン、2−メチル−1−(キノリン−2−イル)−プロパノール、1,1−ジフェニル−2−(キノリン−2−イル)−エテノール、1−(キノリン−2−イルメチル)−シクロヘキサノール、酢酸キノリン−2−イルメチルエーテル、8−ヒドロキシ−2−キノリンカルボキサルデヒド、2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2−プロピル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2−ブチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2−ペンチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2,6−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、6−メトキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、2−フェネチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1−(1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−イルメチル)−シクロヘキサノール、6−フルオロ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、および2−メチル−1−(1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−2−イル)−プロパン−2−オールから選択される、方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−536805(P2010−536805A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521286(P2010−521286)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/CN2008/072092
【国際公開番号】WO2009/024095
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(501060541)ザ・ホンコン・ポリテクニック・ユニバーシティ (6)
【氏名又は名称原語表記】The Hong Kong Polytechnic University
【Fターム(参考)】