説明

抗癌剤としての自己集合性の両親媒性ポリマー

本発明は、親水性骨格およびペンダント疎水性基を有する、両親媒性生体適合性コポリマーを提供する。該ポリマーは、水性環境においてナノスケール分子凝集体を形成し、これは、疎水性内部を有し、ここに抗癌薬を可溶化できる。該ポリマーは、任意に、薬剤運搬凝集体の標的癌細胞への付着を媒介する結合した抗体、受容体リガンド、および他の標的部分を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性高分子、具体的には、生体適合性のミセル形成くし型ポリマーの分野に関する。本発明はまた、標的薬剤の送達および抗癌剤の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水性ブロックおよび親水性ブロックを含む両親媒性ブロックコポリマーは、周囲の溶媒を変更する場合、種々のナノ構造への自己集合能力のため、近年十分に研究されている。Cameron et al,Can.J.Chem./Rev.Can.Chim.77:1311−1326(1999)を参照されたい。水溶液中において、両親媒性高分子の疎水性分画は、水との接触を避け、系の自由界面エネルギーを最小化するために、自己集合する傾向がある。同時に、親水性ブロックは、水性環境において、水和した「コロナ」を形成するため、該凝集体は、熱力学的に安定な構造を保持する。その結果は、疎水性コアおよび親水性コロナを有するポリマー凝集体粒子の安定した、ラテックスのようなコロイド懸濁液である。
【0003】
くし型両親媒性コポリマーは、骨格が概して疎水性または親水性であるという点において、ブロックコポリマーとは異なり、異極のポリマー鎖が、それに組み込まれているのではなく、骨格からペンダント状になっている。くし型コポリマーは、疎水性骨格および親水性分岐鎖で調製され(Mayesら、米国特許第6,399,700号)、また、親水性骨格および疎水性分岐鎖でも調製されてきた(Wattersonら、米国特許第6,521,736号、Uchegbuら、米国出願公開第2006/0148982号)。前者は細胞表面受容体に多価提示を提供するために使用し、後者は薬物を可溶化し、細胞に導入するために使用した。
【0004】
両親媒性ポリマー凝集体は、不溶性薬剤、標的薬剤送達ビヒクル、およびsiRNAまたは遺伝子の送達系を可溶化するための担体として研究されてきた。それらは、鎖エンタングルメントおよび/または内部疎水性領域の結晶化度のため、従来の低分子量のミセルよりもさらに安定した構造を有する。該ビヒクルのポリマー特性により、凝集体は、臨界ミセル濃度未満に希釈する際、通常のリポゾームが受ける分解に比較的影響されなくなる。2分子膜が存在しないことによって、凝集体は細胞膜とさらに容易に融合し、細胞に直接ペイロードを送達することが可能である。また、該凝集体の両親媒性特性は、界面活性剤のような活性をもたらし、適切に標的化された凝集体は、ウイルス外被タンパク質と融合し、分離させることが可能であると考えられる。
【0005】
ポリ(エチレングリコール)(PEG)の卓越した生体適合性、および細網内皮系を避けるPEGでコーティングされた「ステルス」粒子の明らかな能力のために、PEGを組み込むミセル、リポゾーム、およびポリマーが、広範囲にわたって、薬物導入システムのための物質と見なされている。(リポゾームおよびミセルを形成する)PEG脂質の親水性成分としてのPEGの使用については多くの報告がある。例えば、Krishnadas et al,Pharm.Res.20:297−302(2003)を参照されたい。より強固な「ポリマーソーム」に自己集合する、自己集合性の両親媒性ブロックコポリマーはまた、薬剤の可溶化および送達のためのビヒクルとして研究されてきた。例えば、Jones and Leroux,Eur.J.Pharm.Biopharm.48:101−111(1999);Photos et al,J.Controlled Release,90:323−334(2003)、Kataoka et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.47:113−131(2001)、およびTorchjlin,J.Controlled ReI.73:137−172(2001)を参照されたい。
【0006】
また、Gref et al,Int.Symp.Controlled Release Mater.20:131 (1993)、Kwon et al,Langmuir,9:945(1993)、Kabanov et al,J.Controlled Release,22:141(1992)、Allen et al.,J.Controlled Release,63:275(2000)、Inoue et al.,J.Controlled Release,51:221(1998)、Yu and Eisenberg,Macromolecules,29:6359(1996)、Discher et al,Science,284:113(1999)、Kim et al., 米国特許第6,322,805号、Seo et al,米国特許第6,616,941号および第7,217,770号、Seo et al,欧州特許第EP0583955も参照されたい。この能力におけるポリ(エチレンイミン)(PEI)の使用もまた、オリゴヌクレオチドの送達に焦点を当てて報告されている(Nam et al,米国特許第6,569,528号、Wagner et al,米国特許出願公開第20040248842号)。同様に、Luoらは、ポリヌクレオチドの送達に好適なPEG共役ポリアミドアミン(「PAMAM」)デンドリマーをMacromolecules 35:3456(2002)で説明している。
【0007】
薬物を可溶化、分配、および送達する必要性に加えて、標的細胞タイプ、組織、腫瘍、または臓器に特に的を搾る標的薬物送達の必要性がある。これは、通常、標的部位の細胞壁に対する特異的親和性を有する抗体または他のリガンドの結合により達成される。しかしながら、PEGは、ポリマー鎖の末端を除いて官能基を欠き、ブロックコポリマーにおいては、末端基の大部分は、必然的に、他のブロックコポリマー成分への結合に取り込まれる。この理由により、PEGブロックコポリマーへの抗体または細胞接着分子等の標的部分の結合は、一般に非PEGブロックに限定され、これはあいにく、自己集合した凝集体のコロナに通常曝露する、コポリマーの一部ではない。
【0008】
ポリマー凝集体へのブロックコポリマーの自己集合をもたらす相分離現象は、容易に元に戻すことができ、疎水性コアに架橋結合することにより、凝集体の安定性を増加させる取り組みが行われている(欧州特許第EP0552802号を参照されたい)。またブロックコポリマーの疎水性成分へ薬物を共有結合させる取り組みも行われている(ParkおよびYoo、米国特許第6,623,729号、欧州特許第EP0397307号)。
【0009】
樹枝状ポリマーは、容易に標的部分に共役し、また、生体内の特定の細胞を標的化する(Singh et al.(1994)Clin.Chem.40:1845)、ならびにウイルス性および細菌性の病原の生体基質への付着を阻止する可能性も有する。複合シアル酸に共役するくし型分枝ポリマーおよびデンドリグラフトポリマーは、ウイルス血球凝集を阻害し、生体外哺乳類細胞の感染を阻止する能力について評価されている(Reuter et al.(1999)Bioconjugate Chem.10:271)。最も効果的なウイルス阻害剤は、くし型分枝およびデンドリグラフト高分子であり、これらのウイルスに対して50,000倍の増加活性を示した。
【0010】
近年、製薬会社のStarpharmaは、ウイルスの表面上で受容体を結合することにより、HIV感染を予防するデンドリマーに基づくバイオサイド(VivaGel(商標))についての開発の成功を報告した(Halford(2005)Chem.& Eng.News 83(24):30)。Chenら(2000)(Biomacromolecules.1:473)は、第4級アンモニウムで官能化したポリ(プロピレンイミン)デンドリマーが非常に強力なバイオサイドであることを報告した。
【0011】
患者のほぼ同一の健康な細胞に損傷を与えることなく癌細胞を殺滅することは、特に困難な事柄である。最も成功した化学療法薬剤でさえも、癌細胞に対する機構に基づく選択的毒性は、部分的にしか成し遂げられない。この理由により、癌治療薬は、標的送達が特に望ましい薬剤類であり、多大な努力が、癌特異的細胞表面マーカーのためのリガンドの開発に注がれた。(Delgado and Francis,Drug Targeting:Strategies,Principles and Applications,Humana Press,2000)
【0012】
例えば、葉酸の細胞表面受容体は、しばしば卵巣、腎臓、肺、乳房、脳、および子宮内膜の癌、ならびに造血源の骨髄細胞で上昇する。該葉酸受容体は、通常、正常な細胞において潜在性であるが、癌細胞の表面に現れるので、受容体特異的癌治療のための標的として頻繁に用いられてきた(Lu and Low,J Control Release.91:17−29(2003))。葉酸の、抗腫瘍薬、抗体(米国特許第5,547,668)、リポソーム(Liu and Lee,Drug Design Reviews Online,2:547−552(2005))、および他のナノ粒子薬物送達コンストラクト(Torchilin,Adv.Drug Delivery Rev.58:1532−1555(2006))との直接共役体も報告された適用の1つである。葉酸共役両親媒性ブロックコポリマーから形成されるミセルは、選択的にパクリタキセルを腫瘍細胞に送達することが示されている(Park et al.,J.Controlled Release 109:158−168(2005))。
【0013】
同様に、上皮細胞増殖因子受容体(ErbB1、EGFR)は、乳癌、頭頸部癌、胃癌、直腸結腸癌、食道癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、膵臓癌、および卵巣癌、ならびに非小細胞肺癌を含む、上皮性起源の幅広いヒト腫瘍に発現する。これらの所見は、受容体介在性送達系に対する別の重要の標的としてのEGFRを確立した。EGF自体は、強度の細胞分裂および血管形成活性を呈し、これは、それを標的部分としては好適ではないものにするが、EGFRに対する種々の非アゴニストリガンドがこの目的のために開発されている。
【0014】
細胞特異的または腫瘍特異的エピトープに対する抗体は、単独で(患者の補体系を活性化するため)、または放射性同位体もしくは毒素を送達するために、標的治療薬として成功裏に使用されている。例えば、CD20 B−リンパ球抗原に対するマウスIgG2aラムダモノクローナル抗体である、トシツモマブを、放射性ヨウ化し得、ヨード131を選択的にリンパ腫細胞に送達するために使用できる。これは、非ホジキンリンパ腫の治療として、診療所において功を奏するものであることを証明し、この適応のために、商標名Bexxar(商標)で市販されている。同様に、別の抗CD20モノクローナル抗体である、イブリツモマブ(Zevalin(商標))は、非ホジキンリンパ腫の放射免疫療法のためのイットリウム90を送達するために使用されている。
【0015】
他の臨床的に功を奏する癌標的抗体としては、慢性リンパ球性白血病のためのアレムツズマブ(抗CD52、Campath(商標))、結腸癌および肺癌のためのベバシズマブ(抗VEGF、Avastin(商標))、結腸、頭頸部癌のためのセツキシマブ(抗EGFR、Erbitux(商標))およびパニツムマブ(抗EGFR、Vectibix(商標))、急性骨髄性白血病のためのゲムツズマブ(抗CD33、Mylotarg(商標))、非ホジキンリンパ腫のためのリツキシマブ(抗CD20、Rituxan(商標))およびエプラツズマブ(抗CD22、Lymphocide(商標))、ならびに乳癌のためのトラスツズマブ(抗HER−2、Herceptin(商標))が挙げられる。免疫毒素Mylotarg(商標)は特殊な関連性があり、ここでは、抗CD33抗体が、細胞毒性抗腫瘍薬物である、カリケアマイシンに共役する。
【0016】
安定した、生体適合性のある、種々の標的部分の結合に適しており、かつ相当な薬物のペイロードを所望の腫瘍細胞標的に送達するのに効率的な薬物送達系に対する必要性が依然として存在する。同様に安定した、効率的、かつ生体適合性のある標的抗癌剤に対する必要性もまた存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、分枝点部分を有する親水性骨格、およびこれらの分枝点部分で結合する疎水性分岐を含む、生体適合性のある,くし型ポリマー分子を提供する。分岐点部分は、腫瘍細胞に対して特異的な標的部分が結合する、反応性官能基の形態の結合点をさらに提供する。本発明は、かかるポリマーから形成されるポリマー凝集体の水性懸濁液を提供し、また、かかる薬剤をポリマー凝集体の疎水性コアに封入することによって、抗腫瘍薬剤を可溶化するための方法を提供する。薬物を封入するための方法は、基本的に、水性または混合水性溶媒中で、薬物種を本発明のポリマーと接触させるステップを含む。得られる薬物ペイロードは、水性環境に懸濁される際、くし型ポリマーによって形成される高分子ポリマー凝集体の疎水性コア内で、可溶化した状態に維持される。好ましい実施形態においては、ポリマー凝集体を、その封入された薬物ペイロードを伴って、選択的に、標的部分によって標的癌細胞へ送達する。
【0018】
本発明はまた、癌細胞を殺滅またはその増殖もしくは再生を阻害する方法、または哺乳類の癌治療のための方法を提供し、該癌細胞に接触するステップ、または該哺乳類に、本質的に以下の構造からなるくし型ポリマー内に封入された抗癌薬を投与するステップを含む。
【0019】
【化1】

【0020】
該構造は、交互分岐点部分B、および親水性の水溶性ポリマーブロックAから形成される骨格を含む。疎水性側鎖C、および任意に標的部分Zは、分岐点部分に結合する。該ポリマー鎖は、末端基、典型的には末端B部分にHまたはポリマーブロックA、および典型的には末端AポリマーブロックにOHを有するが、本発明はすべての好的な鎖停止を包含することを理解されよう。好ましくは、該側鎖Cは、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖炭化水素、または1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30環式もしくは多環式炭化水素である。側鎖Cはまた、疎水性アミノ酸、ペプチド、またはポリマーであり得る。側鎖Cに好適な親水性置換基は、ヒドロキシル基、カルボニル基、およびアミノ基、ならびにアミド基、スルホンアミド基、スルホキシド基、およびスルホン基である。好ましい親水性置換基は、第3アミド、スルホキシド、およびスルホン等の非プロトン性極性基である。
【0021】
任意の標的部分Zは、癌細胞の表面に対して特異的な結合親和性を有するリガンドまたは抗体である。本発明のある実施形態において、2つもしくはそれ以上の異なる部分Zは、複数の細胞表面受容体および抗原を、特異性を増加する手段として標的化することができるように、所与の分岐点またはポリマー分子上に存在する。「特異的結合親和性」とは、リガンドまたは抗体が、治療を受けている哺乳類の体内で見られる多くの他の細胞表面および高分子の存在下で、生体内の癌細胞の表面に結合することができることを意味する。該親和性は、癌細胞のみに、または患者における癌性である細胞の種類に特異的であり得る。例えば、B細胞リンパ腫において、該リガンドは、すべてのB細胞に存在するCD−20受容体に対する抗体であり得る。特異性の度合いは、極端に高い必要はないが、可溶化薬物ペイロードのみよりもさらに効果的に癌を治療するのに十分でなければならない。「s」で表される部分は、結合またはスペーサ部分であり、sがスペーサであるとき、各sは、1から4つの基のZを担持し得る。nの値は、1から約100の範囲であり、pの平均値は、1から2であり、ある実施形態において、rはゼロであり得る。rがゼロではない実施形態において、rの平均値は1から4の範囲である。
【0022】
分岐点部分Bは、2つのポリマーブロックAへの結合、1〜2つの側鎖C(平均)への結合、ならびに、rがゼロではないとき、スペーサ「s」および/またはリガンドZへの1つもしくは複数の結合を有する多価部分である。特定の実施形態において、Bならびにsおよび/またはZへの結合は、複数の反応性官能基を介して確立し、これは、結合点として機能することができる。特に好ましい実施形態において、標的部分は、本発明のポリマーの分岐点部分に共有結合し、薬物は、凝集体のコアに組み込ませ、標的薬剤複合体を形成する。他の実施形態において、標的部分が、細胞表面受容体のアゴニストまたはアンタゴニストである場合、標的ポリマーまたはポリマー凝集体は、封入された抗癌薬が存在しない場合でさえ、薬物のような効果を呈し得る。
【0023】
本発明は、本明細書に記載のくし型ポリマー、凝集体、および標的ポリマー凝集体および薬物複合体の調製方法をさらに提供する。本発明のポリマーは、生体内で薬物を効率的に可溶化、分配、および送達するポリマー凝集体に自己集合し、非毒性で、生体適合性であり、かつ安定しており、さらに、それらの外部表面に複数の細胞標的部分を担持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】A549腫瘍細胞の培地の細胞増殖アッセイにおける、本発明の例示的な組成物の活性を示す図である。
【図2】H441腫瘍細胞の培地の細胞増殖アッセイにおける、本発明の例示的な組成物の活性を示す図である。
【図3】Skbr3腫瘍細胞の培地の細胞増殖アッセイにおける、本発明の例示的な組成物の活性を示す図である。
【図4】MDA−MB−231腫瘍細胞の培地の細胞増殖アッセイにおける、本発明の例示的な組成物の活性を示す図である。
【図5】BT474腫瘍細胞の培地の細胞増殖アッセイにおける、本発明の例示的な組成物の活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書において「πポリマー」と称される、本発明のポリマーの例は、2006年1月19日出願の国際出願第PCT/US06/01820号(その明細書は、参照することにより、その全体として本明細書に組み込む)に説明されている。それらは、式1に示されるとおり、交互分岐点部分Bおよび親水性の水溶性ポリマーブロックAから形成され、各分岐点部分に結合する複数の疎水性側鎖Cを有する骨格を有する、くし型構造を有する。該側鎖Cは、比較的短い疎水性部分であり、これは、脂肪族または不飽和分子、鎖もしくはオリゴマーであり得る。pの値は、理想的には、2、3、または4のいずれかの整数である。実際は、該側鎖を、しばしば、完全に効率的ではない化学反応により導入させるが、結果的に、意図した整数ではない、全体としてのポリマー調製物のpの平均値をもたらす。非整数平均値はまた、以下に述べるとおり、意図的に取得することができる。したがって、本発明のポリマーのpの平均値は1よりも大きく、4ほど大きくてもよい(1<p<4)。好ましい実施形態において、pは約2から4、最も好ましくは1.5<p<2の範囲である。以下に整数値に言及するとき、その整数は理想的なものであって、考察するポリマーの物理的試料に実際に見出される平均値に言及するものではないことを理解されたい。
【0026】
骨格ポリマーブロックAは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(エチレンイミン)、ポリビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、多糖等を含むが、これらに限定されない、親水性および/もしくは水溶性ポリマー鎖より選択する。好ましくは、ポリマー単位Aは、式−(CH2CH2O)m−のポリ(エチレングリコール)鎖であって、mは1から10,000、好ましくは3から3,000である。
【0027】
種々のグレードのポリ(エチレングリコール)の製造において、分子量の範囲を比較的狭く維持すると同時に、ポリマーの分子量を実質的に2倍にする、2つのポリ(エチレングリコール)鎖へ2価リンカー部分(例、ビスフェノールAジグリシジルエーテル)を連結することは、当業界では既知である。得られる「ポリ(エチレングリコール)」分子は、ポリマー鎖の中間で、非グリコールリンカー部分(例えば、ポリ(エチレングリコール)−ビスフェノールAジグリシジルエーテル不可物(CAS登録番号37225−26−6を参照されたい)によって、結果的に遮断される。高オリゴマー、すなわち、2つのビスフェノールAジグリシジルエーテル部分によって分離される3つのPEG鎖を有するものもまた既知であり、例えば、国際特許出願WO 00/24008を参照されたい。したがって、本明細書において使用する「ポリ(エチレングリコール))および「ポリ(プロピレングリコール))という用語は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等を含むがこれらに限定されない、非グリコールリンカー単位を組み込む、ポリ(エチレングリコール)およびポリ(プロピレングリコール)ポリマー鎖を包含する。本明細書の目的上、いかなるこのようなリンカー部分も「モノマー単位」と見なさない。
【0028】
ポリマーブロックAは、最も好ましくは、20から50のモノマー単位の平均長を有する。ポリエチレングリコール鎖は、一端もしくは両端を、アミノ、メルカプト、アクリレート、アクリルアミド、マレイン酸塩、マレイミド等を含むが、これらに限定されない、他の部分へのリンカーとしての使用に好適な官能基で末端置換させることが可能である。nの値は、1から1000、好ましくは3から100の範囲である。πポリマーの全体分子量は、1000から100,000ダルトン以上であり、好ましくは2,000ダルトン超、より好ましくは7,000ダルトン超の範囲であり得る。
【0029】
疎水性部分Cは、同一または異なり得、モノマー単位によって異なり得、例えば、直鎖炭化水素(1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換される)、多環式炭化水素(1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換される)、疎水性アミノ酸、ペプチドおよびポリマーであり得る。好適な親水性置換基としては、ヒドロキシル、エーテル、シアノ、およびアミド官能基が挙げられるが、これらに限定されない。具体的には、ωヒドロキシ、ωシアノ、ωアミド、もしくはωアルコキシ置換基を担持するC8〜C20アルキル基が想定される。このような状況において、「置換基」という用語は、部分Cの炭化水素鎖もしくは環系の炭素原子に関して、O、N、またはS等のヘテロ原子の置換を含む。したがって、エーテルおよびアミド結合、ならびに複素環を、部分Cに組み込ませることが可能である。
【0030】
疎水性部分Cは、好ましくは、比較的短鎖(C8−C20)脂肪酸であるが、短鎖オリゴマーであってもよい。好適なオリゴマーとしては、オリゴヒドロキシ酸、例えば、ポリ(グリコール酸)、ポリ(DL乳酸)、ポリ(L乳酸)、ならびにポリ(グリコール酸)およびポリ(乳酸)ヒドロキシ酸のコポリマー、ならびにポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、およびポリ(リン酸エステル)、ポリラクトン、例えば、ポリ(エプシロン−カプロラクトン)、ポリ(デルタ−バレロラクトン)、ポリ(ガンマ−ブチロラクトン)、およびポリ(ベータ−ヒドロキシ酪酸塩)が挙げられる。C部分はまた、コレステロール、コール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、および関連物質等の疎水性分子、プロスタグランジン様物質、ステロイド物質(例えば、デキサメタゾン)、レチノイン酸、レチノールおよび関連するレチノイド物質、疎水性ペプチド等から選択できる。各部分Cの分子量は、40を上回り、好ましくは50から1,000、最も好ましくは100から500である。分子C−HのlogP値(オクタノール−水)は、約1.4を上回り、好ましくは約2.0を上回り、最も好ましくは約2.5を上回る。一般に、分子C−Hが、水中で実質的に不溶性である場合、いかなる部分Cも、本発明の使用に好適であると考えられる。「実質的に不溶性」とは、液体C−Hが、水と混合した際、分離相を形成することを意味する。
【0031】
側鎖Cがポリマー鎖に沿って規則的に均一に分布していないが、クラスタ[C]pに生じることは、本発明のくし型ポリマーの際立った特徴である。これらのクラスタは、ポリマー単位Aの単分散度に応じて、ポリマー鎖に沿ってほぼ規則的に離間する。したがって、共通の分岐部分Bに結合する2つの側鎖C間の距離は、ポリマーブロックAによって分離される、異なる分岐部分に結合する2つの側鎖間の距離とは異なる。
【0032】
標的送達に特に好適な本発明の一実施形態において、分岐点部分Bは、式2に示す1つもしくは複数の反応性官能基Xをさらに含み、これは、標的部分の結合に好適である。
【0033】
【化2】

【0034】
式2において、個別の反応基Xは、同一であっても、互いに異なっていてもよく、ポリマー2の集合中に必要であり得るように、任意にブロックまたは保護されてもよい。rの平均値は、0(XまたはZ基がない実施形態において)から約8の範囲である。一般的には、反応基を、分子種間の共有結合を形成するのに有用であることが当該技術分野で既知の官能基より選択する。ある実施形態において、単一の結合点Xが存在し得る。他の実施形態において、3または4つの異なる種類の反応基が存在し得る。好適な反応基Xとしては、−OH、−NH2、−SH、−CHO、−NHNH2、−COOH、−CONHNH2、ハロアシル、アセトアセチル、−CN、−OCN、−SCN、−NCO、−NCS等、ビニル、アクリル、アリル、マレイン、桂皮等の反応二重結合、ならびにアセチレンカルボキシおよびアセチレンカルボキサミド(マイケル付加、ディールス・アルダー反応、およびフリーラジカル添加反応に好適)等の反応三重結合を有する基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
例示的な細胞標的部分としては、特異的細胞表面受容体に結合する受容体特異的リガンド、抗体、アプタマーもしくはペプチド、ならびに他の標的部分、例えば、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)アミノ酸配列もしくはチロシン−イソロイシン−セリン−アルギニン−グリシン(YISRG)モチーフを有するペプチド;上皮細胞増殖因子(EGF)、血管内皮細胞増殖因子および線維芽細胞増殖因子を含む増殖因子;葉酸、メトトレキサート、プテロイン酸、エストラジオール、エストラトリオール、テストステノン、および他のホルモン等の細胞受容体リガンド;マンノース−6−リン酸、糖、ビタミン、トリプトファン等が挙げられるが、これらに限定されない。受容体アゴニストおよび受容体アンタゴニストは、競合的またはアロステリックに関わらず、使用することが可能である。
【0036】
アプタマーは、当該技術分野で既知の方法を使用した受容体への結合のために選択することができる。受容体に結合することができるペプチドは、ハイスループット・マイクロプレートスクリーニング、ファージ提示法、ピンおのび平面アレイ等の標準方法を使用して選択することができる。抗体は、好ましくは、細胞特異的表面抗原に対するモノクローナル抗体であり、好適な標的部分としては、完全抗体のみでなく、Fab’2フラグメント、Fab’フラグメント、もしくは鎖ペプチド(例えば、相補性決定領域(CDR)ペプチド)等の活性抗原結合配列を含有する抗体フラグメント、またはかかる抗体の活性抗原結合配列の類似体が挙げられる。好適な抗体としては、NCA90、NCA95、CEA、CD15、CD20、CD22、CD33、CD52、VGEF、およびEGFR等の腫瘍抗原に対する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体は、好ましくはモノクローナルであり、任意にヒト化抗体、キメラ抗体、または完全ヒト抗体であり得、PEG化あるいは他の方法で修飾することが可能である。しかしポリクローナル抗体は、それらの多重抗原結合能により、ある状況において有利に採用することが可能である。
【0037】
特に好適な抗体としては、トシツモマブ、イブリツモマブ、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、エプラツズマブ、トシツモマブ、およびトラスツズマブ、ならびにその結合ドメインを含む抗体フラグメントまたはペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
代替の実施形態において、ビオチンは、官能基Xを介してπポリマーに結合し、アビジンおよびストレプトアビジン連結タンパク質、ペプチド、抗体、成長ホルモン、ならびに他の標的部分に対する非共有結合手段として使用できる。
【0039】
本発明のある実施形態においては、分岐点部分Bの一部の分画を、ポリマー鎖のどこか他の分岐点部分に連結させ、架橋ヒドロゲル構造を形成させる。かかる架橋は、ポリマーを、同種官能基または異種二官能基(これらのうちの少なくとも1つは、X、または第1の分岐点部分に位置するCの反応基と反応し、これらのうちの少なくとも1つは、X、または同一のポリマー分子内の第2の分岐点部分のCに存在する反応性官能基と反応する)を含有する多官能部分と反応させることによって達成できる。架橋はまた、ポリマー鎖A上の末端官能基への結合によっても行える。本発明の直鎖くし型ポリマーと同様に、かかる架橋ポリマーは、任意に標的部分を担持し得る。
【0040】
分岐点部分Bは、典型的には、複数の反応基(これらのうちの2つは、親水性ポリマー単位Aへの結合に好適であり、これらのうちの少なくとも2つは、疎水性部分Cへの結合に好適である)を有する多官能分子から派生する。部分Bは、任意に、上記で説明した1つもしくは複数の追加の反応基Xを有し得る。
【0041】
特に好ましい分岐点部分は、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリトリトール(DTE)、または2,3−ジアミノブタン−l,4−ジチオールと、マレイン酸の2つの分子との共役体である。分枝点部分と、部分Aとしてのポリエチレングリコールとの組み合わせは、式3および3aのポリマー骨格を生成する。
【0042】
【化3】

【0043】
式中、YおよびY’は、同一または異なってよく、好ましくは、OH、NH2、ONH2、NHOH、およびNHNH2から選択する。好ましい実施形態において、ジチオールのヒドロキシルまたはアミノ基は、反応基Xであり、標的または薬物部分の結合点としての役割を果たすが、官能基YおよびY’は、C部分の結合点としての役割を果たす。代替として、基YおよびY’は、標的部分の結合点としての役割を果たすが、ヒドロキシルまたはアミノ基は、C部分に結合するために使用する。
【0044】
式3および3aは、各硫黄原子が独立して、PEGエステルカルボニル基にαまたはβを結合させることができることを意味することを意図する。本発明は、単一異性組成物、ならびに1つまたは双方のC−S結合で、位置異性体の混合物を包含する。さらに、式1の4つの不斉炭素により、本発明は、すべてのキラル、メソ、およびジアステレオ異性体、ならびにその混合物を包含する。
【0045】
アセチレンジカルボキシル酸およびフランのディールス・アルダー付加物も、好適な分枝点部分としての役割を果たし得る。例えば、PEGおよびアセチレンジカルボン酸から派生するポリエステル4は、フランとのディールス・アルダー反応を受けることが既知である(M.Delerba et al,Macromol.Rapid Commun.18(8):723−728(1997))。
【0046】
【化4】

【0047】
したがって、3,4−二置換フランとのディールス・アルダー反応を受けて、5等の種を生成でき、ポリマー5は、ヒドロキシル化またはエポキシ化によって修飾し、反応基を形成することができる(例えば、スキーム1のXおよびX’)。
【0048】
同様に、PEGの、エチレンジアミン四酢酸二無水物との反応は、その後の縮合により式6のポリエステルを形成する。
【0049】
【化5】

【0050】
他の好適な分岐点部分は、酒石酸、アセチレンジカルボン酸、ニトリロ三酢酸、3,4,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸二無水物、1,2−エタンジチオールおよび1,4−ブタンジチオール等のアルカンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、2−メルカプトエチルスルフィド、ジメルカプトプロパノール、ジメルカプトプリン、ジメルカプトチアジアゾール、ジメルカプトコハク酸、ベンゼンジメタンチオール、ベンゼンジチオール、ジハロゲン化ベンゼンジメタンチオール、ジハロゲン化4,4’−チオビスベンゼンチオール等から派生させることができる。
【0051】
YおよびY’はOHである場合、疎水性基Cを、カルボキシル酸基のアミド化またはエステル化によりポリマーに結合させることができる。該疎水性基Cは、好ましくは、比較的小さい(C8−C20)および主に炭化水素部分であり、直鎖または分枝であり得、または1つもしくは複数の環を含み得る。例としては、C−H分子のn−オクタノール、n−デカノール、n−ドデシルアミン、n−ペンタデシルアミン、コレステロール、デオキシコール酸、コール酸、レチノール、ビタミンA、ならびに種々のcisおよびtransレチノイン酸異性体、種々のトコフェロール、およびアラキドン酸から派生する共有結合部分が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のポリマーは、便宜上、多くとも2つの異なる疎水性側鎖を有するのものとして表すが、ポリマー凝集体の内部溶媒特性は、種々の疎水性側鎖を特定のポリマーに導入するように、2つまたはそれ以上の疎水性化合物の混合物を採用することによって、改質または「調整」できることを理解されたい。例えば、水素結合および双極子間相互作用から生じる溶媒効果に加え、液晶相および相転移温度等の物理化学特性は修正することができる。かかる効果は、例えば、膜二重層の研究から、公知である。
【0052】
具体的な一例として、式2のポリマー(式中、X=OHであり、r=2である)は、ポリエチレングリコールを無水マレイン酸と反応させて、ポリエステル7を形成し、その後、ジチオスレイトールとの反応により、8を形成することによって調製した。その後、酸7をn−オクタデシルアミンでアミド化して、所望のくし型ポリマー9(スキーム2)を形成した。式9によって表されるDTT由来のアミドくし型ポリマーは、本明細書において、「πポリマーA」と称し、スキーム2の具体的なポリマー9は、「C18−πポリマーA」で示す。
【0053】
【化6】

【0054】
ジチオスレイトールの代わりに2,3−ビス(t−ブトキシカルボニルアミノ)ブタン−l,4−ジチオールを使用することによって(10a、DuPriest et al,米国特許第4,755,528号)、脱保護後、対応するアミノ官能基化πポリマー9b(スキーム3)をもたらす。
【0055】
【化7】

【0056】
同様に、ブタンジチオール10cを使用することによって、標的部分の後の結合のためにスペーサ基Lが適所にある、一般構造9cのポリマーをもたらす(スキーム4)。該スペーサ基Lは、C2〜C20アルキレンおよび1から10の−CH2CH2O−単位を有するオリゴ(エチレングリコール)スペーサを含むが、これらに限定されない、リガンドまたは標識を基質分子に結合させる際の使用に関して、当該技術分野で既知のスペーサ基のうちのいずれであってもよい。
【0057】
【化8】

【0058】
他の実施形態において、末端アミノ基を有するPEGポリマーは、構造10〜14に示すように、AとBとの単位間のアミド結合を有する例を調製するために使用できる。これらのポリアミドの各々は、PEGジアミンH2N−(CH2CH2O)mCH2CH2−NH2の、適切な環状無水物との反応により得ることができる。
【0059】
【化9】

【0060】
【化10】

【0061】
穏和な条件下では、上記のアミド酸は、予想された生成物である。加熱すると、イミドを形成できることが期待され、少数の反応基を有するポリマーをもたらすが、依然として疎水性C部分の結合に好適である。望ましくないイミド形成は、低温および/または水性条件下で、反応を行うことによって、低減または回避することができる。あるいは、ペンダント側鎖CをポリマーAブロックの末端に添加することができ、重合時に、分枝点部分が生じる可能性がある(スキーム5)。
【0062】
1,3−ジアミノプロパン等の単一ジアミンに加えて、スキーム5に示すように、(任意にマスクされた)反応官能基Xを有するジアミンを使用してもよく、標的部分の結合に適するポリマー15をもたらす(スキーム6)。以下の式において、pは、0〜4の範囲であり得、各Xは独立して、存在し得るいかなる他の基Xとも同一または異なる。反応基Xは、ペンダントである必要はないが、例えば、モノマーH2N−(CH23−NH−(CH23−NH2等の場合、ジアミンを構成する原子の鎖内のNH基であり得る。
【0063】
【化11】

【0064】
【化12】

【0065】
上記のとおり調製したπポリマーのうちの一部は、さらなる誘導体化に好適な反応基Xを有し、標的部分に結合し、二官能性または多官能架橋剤によるポリマー鎖の架橋を行う。特定の実施形態において、ポリマー鎖上の反応基の部分的な誘導体化は、種々の異なる反応基を有するπポリマーを生成するように行い、これは、種々の標的部分の、単一ポリマー鎖への結合を可能にする。したがって、準化学量論的な量の塩化アクリロイル(または無水マレイン酸)の、実施例1のπポリマーへの添加によって、アクリロイル(またはマレイル)基および残留ヒドロキシル基の両方を有するポリマーが生成する。準化学量論的な量のメルカプト−カルボン酸、例えば、HS−(CH23−COOHのその後のマイケル付加により、ヒドロキシル、アクリロイル、およびカルボキシル基を有するポリマーが生成する。準化学量論的な量の試薬により後に残されるいずれの残留反応基に加えて、システインの添加により、アミノおよびカルボキシル基が導入される。
【0066】
多官能性πポリマーへの別の手法には、疎水性鎖Cの分画の慎重な省略を含む。実施例1のπポリマーは、例えば、アミド化ステップにおけるペンダント形成アルキルアミンの量を制限する単純な方法によって、未反応カルボン酸基で調製することができる。さらに別の手法は、アミン混合物によるアミド化であり、この分画は、反応基Xを含有する。また、適切な条件下(ステップAでは過剰な無水マレイン酸、ステップBでは過剰なDTT)では、所望の数の遊離チオール基を有するポリマー調製物を生成できる。
【0067】
実施例1のπポリマーは、意図的に、骨格中のDTT部分から派生したヒドロキシル基を含有し、これは、反応基Xとしての役割を果たす。炭酸塩/重炭酸塩緩衝液の存在下で、これらの基の、水性媒体中の塩化アクリロイルまたは塩化メタクリロイルによるエステル化は、該−OH基上にアクリロイル置換をもたらす。該アクリレートポリマーは、容易にラジカル重合(アクリル酸化合物等のラジカルモノマー、またはビスアクリル酸化合物等の架橋剤の添加を伴う、または伴わない)に供することができ、制御した薬物導入、および局所適用(皮膚用パッチ剤または軟膏等)に適するヒドロゲル(ポリマー貯蔵または蓄積の役割を果たす)を得る。該アクリロイル基はまた、特に、タンパク質、酵素、ペプチド、抗体、Fab’2フラグメントもしくはFab’フラグメントのシステイン残基、または他の標的部分等のチオールによって、マイケル付加に供することができる(スキーム7)。
【0068】
【化13】

【0069】
反応ヒドロキシル基を有するπポリマーは、乾燥後、無水マレイン酸でエステル化して、マレイン酸塩基である、マイケル受容体に結合させ、同時に遊離カルボキシル基を生成することができる。得られるポリマーにおいて、マレイン二重結合は、特に、タンパク質、酵素、ペプチド、抗体、Fab’2フラグメントまたはFab’フラグメント、もしくは他の標的部分内のシステイン残基等のチオールとによるマイケル付加に利用可能であり(スキーム8)、カルボキシル基が、タンパク質およびペプチド内のリシン残基等の、標的部分におけるアミノ基への連結に利用可能である。
【0070】
異なる部分は、アミド化を行い、新規に導入した(または従来利用可能な)カルボン酸基にさらに結合することができる。したがって、少なくとも2つの異なる標的部分は、飽和反応状態下でさえ、結合することができる(すなわち、結合部分は、過剰な化学量で存在する)。
【0071】
【化14】

【0072】
代替の調製には、スキーム9に示すとおり、ジマレイン酸PEGのアミド化を含み、その後ジチオールとの反応を行う。アミド化は、活性エステルの使用、またはNHS、HOBT、DMAP、ピリジン、もしくはTMED等のさらなる触媒を伴う、または伴わない、EDC、DIPC、DCC等を用いる方法を含むが、これに限定されない、多くの既知のカルボン酸活性化プロセスのうちのいずれかによって行える。次いで、アミド化したジマレイン酸PEGをDTTまたは別のジチオールと反応させて、二重結合へのマイケル様添加を達成し、これによって、所望のポリマーを生成する。このプロセスの利点は、潜在的に非常に幅広い、予め形成したジマレイン酸PEGから、ポリマーに組み込みたい正確なモノマー(およびその比率)を、選択できることである。
【0073】
【化15】

【0074】
ペンダントカルボキシレート基を有するポリマーは、典型的な結合条件下で、アミンでアミド化することができ、Curtius転位を行い、イソシアネート基に変換し、その後、尿素およびカルバメートをそれぞれ形成するように、アミンまたはアルコールと結合させることもできる。かかる反応は、疎水性基Cを導入、または標的部分に結合するために使用することができる。
【0075】
遊離アミンは、ジアミンと反応基の1つを少なくとも部分的に反応させることにより、ポリマー内に導入することができる。反応条件下で、アミン基の1つを保護するか、または反応しないように、ジアミンを選択しなければならない。2つのアミノ基のpKaが大幅に異なるため、後者は、多くの場合、約7.5のpHで、エチレンジアミンを使用することによって達成することができる。好ましくは、本アミド化は、疎水性ペンダント基の導入後、分離工程として実行する。カルボン酸基を有するペプチドまたは別の分子は、その後、この遊離アミンのアミド化により結合することができる。
【0076】
したがって、飽和条件下でさえ、3つと多くの異なる標的部分を、πポリマーに結合させることができる(1つはチオールによって、1つはアミンまたはヒドロキシルによって、1つはカルボン酸基によって)。標的部分に加え、造影剤を本発明のポリマーに組み込むこともでき、それによって体内でのポリマーの分布の可視化が可能になる。198Au、32P、125I、131I、90Y、186Re、188Re、67Cu、211At、213Bi、224Ac等の放射線治療薬、およびカリケアマイシン、細菌内毒素、ゲロニン、アブリン、リシン等の細胞毒素は同様に、ポリマーに結合することができる。
【0077】
ヒドロキシル基およびチオール基も、既知の方法(例えば、ミツノブ反応)によってアミンに変換、またはアジリジンもしくはハロアルキルアミン(ブロモエチルアミンもしくはクロロエチルアミン等)との反応によって1級アミンに変換することができる。システアミンによるアミド化によって、ジスルフィドを導入し、これは、ペプチドもしくは抗体のシステインによって直接反応して、ペプチドもしくは抗体に結合するか、あるいは、ペプチドもしくは抗体とのさらなる反応のために、例えば、アミノエタンチオールもしくはDTTで最初に還元することができる。
【0078】
部分的な反応を行うことによって、以下のものを含むが、これらに限定されない、追加の反応性官能基を、本発明のポリマーに導入することができる。(1)アクリル酸またはマレイン酸誘導体等のチオール反応基、(2)アミノまたはヒドロキシル等のカルボン酸反応基、(3)カルボキシル等のアミン反応基、および(4)メルカプト等のジスルフィド反応基。ポリマー分子あたりのこのような追加官能基数は、1/rから最大rの数倍であり得、使用した試薬および使用した量により異なる。
【0079】
代替として、2つまたはそれ以上の特異的標的部分を、癌細胞表面への結合特異性を改善するように結合させることができる。2つまたはそれ以上の特異的部分はまた、異なる標的間の相互作用を生じさせるように使用することができ、例えば、ある部分は、ポリマーを癌細胞に標的化し、別の部分は、補体因子の結合、および補体経路の活性化を容易にし得る。
【0080】
本発明のポリマーの繰り返し単位への標的部分の結合は、ポリマー鎖およびナノ粒子表面上の部分の多価提示をもたらす。多価提示は、多くの場合、標的への親和性の大幅な増加をもたらす。例えば、多価抗体は、正常の2価抗体よりも標的の除去により効果的である。炭水化物結合タンパク質および炭水化物は、本来は多価であり、1価である場合、効果がないことは既知である。同様に、多価ペプチドおよび炭水化物標的部分は、モノマー単独よりもさらにより効果的であろう。
【0081】
本発明のポリマー鎖への、標的部分の結合のさらなる利点は、分子量の有意な増加であり、これは、ペプチドおよび他のリガンドの腎クリアランス率の低下をたらす。さらに、PEG骨格は、免疫学的監視の回避等の、タンパク質PEG化と同様の利点を与える。
【0082】
本発明のくし型ポリマーは、水性溶媒系において、水溶性および難溶性抗癌薬を、封入するのに有用である。水性溶媒に物質を封入する方法は、該物質およびポリマーの水溶性複合体を形成するように、水の存在下で、薬物を、本発明のくし型ポリマーに接触させるステップを含む。代替として、封入するポリマーおよび物質は、2相の水溶性−有機エマルションにおいて組み合わせ、蒸発によって有機溶媒を除去することができる。例示的なプロセスは、米国特許第6,838,089号に説明され、参照することにより本明細書に組み込まれる。ほとんどの場合、ポリマーは、粒子のコアで癒合する疎水性C鎖間で溶解した薬物を有する、ミセル様ナノ粒子に自己集合し、一方Aブロックは、界面自由エネルギーを有意に低下させ、粒子の水性懸濁液が安定なままであることを可能にする、親水性コロナを形成すると考えられる。
【0083】
一部の例では、難溶性薬物は、コアで完全に溶解することができないが、粒子のコアで、C鎖で包囲および浮遊している固体ナノ粒子またはナノ結晶として存在し得る。本発明の実践は、C鎖と難溶性物質との混合のいかなる度合いにも依存しない。該薬物は、一部の例において、C鎖の分子レベルで溶解し得るが、他の例においては、C鎖環境からの相分離のいかなる度合いをも呈し得る。一部の例において、該系は、pH、温度、もしくはせん断率等の外部条件に応じて、ある状態から他へ移行することが予測できる。例えば、血流におけるせん断率は、極めて高いことが可能であるが、リンパ系においては一般的に低い。かかる環境誘発性の状態変化を用いて、粒子コアからの薬物放出を制御することができる。
【0084】
疎水性C部分を修正することにより、ポリマー粒子の疎水性コアの溶媒力を修正することができる。好適な修正としては、疎水性コアの極性および/または分極率を増加させるための、ヒドロキシル、エーテル、アミド、スルホキシド等の、1つもしくは複数の双極性および/または親水性置換基、ならびにシアノ官能基の導入が挙げられるが、これに限定されない。
【0085】
これらのポリマーによって、封入および送達することができる抗癌薬としては、ドキソルビシン、カンプトセシン、ドセタキセル、パクリタキセル、トポテカン、イリノテカン、イマチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、アクシチニブ、パゾパニブ、エトポシド、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、クラドリビン、クラドリビン、スタウロスポリン、シタラビン、メルファラン、ロイロシン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンD、マイトマイシンA、カルミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、レチノイン酸、コルヒチン、デキサメタゾン、およびタモキシフェン、ならびにこれらの薬物の誘導体および類似体、さらに光線力学的薬剤、核酸、核酸類似体、および核酸複合体が挙げられるが、これらに限定されない。核酸類似体としては、チオリン酸、ホスホロアミド酸、およびペプチド核酸等の種が挙げられる。核酸複合体は、オリゴ核酸のイオン複合体、または実質的に電荷中和量のカチオンまたはポリカチオン種を有するその類似体である。
【0086】
本発明のポリマーの抗癌薬を封入する能力の結果、本発明はまた、医薬組成物も提供し、これは、治療有効量の1つもしくは複数の薬学的に活性な抗癌剤、および医薬として許容される担体または賦形剤と組み合わせて、本発明の1つもしくは複数のπポリマーを含む。好適な担体および賦形剤としては、水および生理食塩水、ならびに緩衝剤等の固体添加剤、塩、糖、セルロース等の多糖、およびその誘導体、ならびに当該技術分野で既知の種々の湿潤剤、滑剤、防腐剤、結合剤および分散剤が挙げられる。本発明のポリマーは、従来技術において、本来、無効量の抗癌剤であったものを、効果的なものにする。したがって、本開示の目的上、「治療有効量」は、組成物全体を効果的なものにする薬剤の量である。
【0087】
本明細書に記載のすべての特許、特許出願、および出版物は、参照することにより本明細書にすべて組み込まれる。
【実施例】
【0088】
1.一般手順
本発明はまた、本発明のくし型ポリマーの調製のためのプロセスを提供する。これらのポリマーの合成は、下に記載の手順に従い、有機合成に携わる当業者が、容易に実施する。主要な出発材料は、ポリエチレングリコールであり、好ましくは、これを使用前に乾燥および脱ガスする。これは、気泡の形成が停止するまで、高温で、融解したPEGを真空下で撹拌することにより、便宜的に実施する。これは、PEGの質により異なるが、8〜12時間かかる場合がある。乾燥した時点で、PEGは、アルゴン下で永久保存することができる。市販の工業および研究等級のPEGを、本発明のポリマーの作製に用いることができる(例えば、1430〜1570の分子量分布を有する、商業用の多分散「PEG 1500」)。かかる材料は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルを組み込んでいる場合があり、これは、PEG鎖の中心で2級ヒドロキシル基を導入する。本発明のポリマーが最も再生可能で均一な品質を有することを確証するために、該PEGは、ビスフェノールAを含まず、低分散性でないことが好ましい。Nektar Therapeutics(旧Shearwater Polymers)(Huntsville AL, and Polypure AS,Oslo,Norway)から市販されるもの等の、>95%単分散のPEGポリマーが最も好ましい。特に好ましいPEGの例は、Polypureの「PEG−28」であり、これは、>95%HO(CH2CH2O)2SH、分子量は1252である。
【0089】
すべての反応は、磁気または好ましくは、機械的撹拌を使用し、窒素またはアルゴン等の不活性雰囲気下で実施する。
【0090】
ステップAにおいて、無水PEGを融解し、無水マレイン酸(PEGモルあたり2モル)を撹拌しながら添加する。無水マレイン酸の量は、PEG末端のヒドロキシル基の数にできるだけ一致させるべきである。無水マレイン酸の不足は、ヒドロキシル末端ポリマー鎖をもたらす一方で、無水マレイン酸の過剰は、次のステップにおいてチオール基を消費し、早期の連鎖停止および末端カルボキシル基をもたらす。反応温度は臨界温度ではなく、該プロセスは、45℃〜100℃の温度で簡便に行うことができる。好ましい反応温度は、65℃〜90℃である。高温を用いる場合、無水マレイン酸は、昇華する傾向があり、諸ステップは、無水マレイン酸が溶液に残存していることを確認して行わなければならない。ヘッドスペースを最小化し、反応容器を油浴の反応槽に浸すことが、効果的な方法である。
【0091】
選択した温度によっては、該反応は2時間以内に完了する、もしくは終夜実施することができる。該反応はシリカゲルプレート上のTLCで監視することができ、該反応は、無水マレイン酸が消失した後まで継続する。視覚コントラスト、UV、およびヨード染色はすべて、該TLCプレートを試験するために使用することができる。
【0092】
ステップBにおいて、ステップAで生成した粗PEGビス−マレイン酸塩エステルを、ジチオスレイトール(DTT)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)(流動性に関して必要な場合は、水を添加)に合わせ、混合液を70℃で撹拌する。該反応は、粘度の急増によって示されるように、30分以内に完了する。DTTを最適量よりも多く、または少なく使用する場合、生成物の分子量は減少する。該生成物の分子量はまた、所望に応じて、TEMEDをTEAなどの効果の弱い第3アミン塩基で置換することにより、減少させることができる。
【0093】
ステップCにおいて、十分な水を反応混合物に添加し、粘度を低下させ、ポリマー中にカルボキシル酸基の1モルあたり0.1モルのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1.05モルのヘキサデシルアミンを添加する。(この量のNHSは、副反応の範囲を最適に最小化すると考えられる。)次いで、過剰なN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)(カルボン酸基1モルあたり1.4モルのEDC)を少しずつ添加し、必要に応じて、追加の水を添加し、撹拌を維持する。該反応混合液のpHは、7以上、好ましくは、9〜11に維持し、アルキルアミンンの反応性を最適化する。ドデシルアミンでは、この反応は、約40〜45℃で行うことができるが、オクタデシルアミンでは、温度は約55℃〜57℃である。該反応の後、一定レベルの残留アルキルアミンを認める(典型的には、終夜実行した後)まで、TLCを行う。
【0094】
反応混合液を、pH約3.0から約4.5に酸性化し、室温で最大約24時間撹拌して、未反応のEDCを破壊し、その後、1N NaOHおよび/またはTEMEDを使用して、pH7.0まで滴定する。該最終反応混合液を約800xgで1〜3時間、遠心分離機で分離し、固体混入物質および副生成物を除去する。
【0095】
遠心分離後、上清は、GPCカラム(Toyopearl(商標)、Sephadex(商標)、Sephacryl(商標)、Biogel(商標)等)でクロマトグラフィを行うことができる。πポリマーは両親媒性材料であるが、一部のGPCカラム充填剤に親和性を呈し、これは、混入物質の除去を複雑にする。代替として、該ポリマーは、大孔疎水性相互作用カラム(例えば、TOYOPEARL(商標)Phenyl 65C、Toshoh Biosciences,Montgomeryville,PA,U.S.A.)でクロマトグラフィを行い、水中のメタノールの勾配で溶出できる。好ましくは、酸性の水および中性の水を何回か交換することによって、該反応混合液を透析し、低分子量の出発材料および反応副生成物を除去する。
【0096】
反応混合液はまた、ブタノン、イソプロパノール、ブタノールまたは他の極性有機溶媒で抽出し、有機不純物を除去することができるが、相当量の両親媒性高分子が、抽出溶媒に放出される。好ましくは、反応混合物は、限外濾過を行い、好適な細胞膜を使用して、使用する濾過膜の分画に応じて、5kDa〜10kDa、10kDa〜30kDa、30kDa〜50kDa等の分子量に生成物を分画する。該ポリマーの水溶液は、濾過膜または培地の選択に応じて、滅菌溶液またはウイルス遊離溶液を生成するために全量濾過に供することができる。
【0097】
2.πポリマーの合成
実施例1:PEG−ジ(アルキルアミドスクシニル)ジチオエーテル中間分子量ポリマー(C16−πポリマーA)
ポリエチレングリコール(PEG−1500、Sigma Chemical Co.)を、気泡の形成が停止するまで、80℃で真空下で乾燥させた(8〜12時間、該PEGの質による)。乾燥させたPEGは、アルゴン下で乾燥させ永久保存することができる。
【0098】
乾燥させた該PEGを油浴でアルゴン下で融解し、無水マレイン酸(PEG1モルあたり2モル、純度に対して補正)を撹拌しながら徐々に添加した。該混合液をアルゴン下で90℃で撹拌した。無水マレイン酸は、昇華する傾向があるので、ヘッドスペースを最小化し、全反応容器を反応温度に維持した。容器壁上のいかなる濃縮した無水マレイン酸をも擦り取り、反応混合液に戻した。該反応の進行は、別々に溶媒として、エタノールおよびヘキサンを使用して、UV視覚化およびヨード染色を用いて、シリカゲルプレート上のTLCで監視した。該反応を無水マレイン酸の消失後1時間継続した。
【0099】
該粗PEGジマレイン酸エステルを2容積の水で希釈した。次いで、水(TEMEDの容積あたり2容積の水)中のジチオスレイトール(DTT、当量のPEGあたり1.01当量)およびN,N,N’,N’−テトラメチル−エチレンジアミン(TEMED、1.02当量)の溶液を、撹拌しながら反応混合液に添加した。該反応溶液を70℃でアルゴン下で2.5時間撹拌し、終夜室温に放置し、その後、再び70℃で2時間撹拌した。該反応溶液をTLCで監視し、DTTが完全消失したら完了したと判断した。
【0100】
該混合液を撹拌できるまで(約25%の固体)、水を上記の反応混合液に添加し、粘度を減少させ、該混合液を65℃でアルゴン下で撹拌し、N−ヒドロキシスクシンイミド(ジマレイン酸PEG−DTTポリマー中カルボン酸基1モルあたり0.1モル)を添加し、その後、ヘキサデシルアミン(ポリマー中カルボン酸基1モルあたり1.05モル)およびN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC、ポリマー中カルボン酸基1モルあたり0.56モル)を添加した。該混合液をアルゴン下で1時間撹拌し、EDCの第2の部分(ポリマー中カルボキシル酸基の1モルあたり0.56モル)を添加した。1時間後、EDCの第3の部分(1モルのカルボキシル酸あたり総量の1.4モルのEDCに対して、ポリマーにおいてカルボキシル酸基の1モルあたり0.28モル)をさらに添加し、加水分解のEDCの消失の原因となった。追加の固体により懸濁液を撹拌しづらくなる場合、必要に応じて追加の水を添加し、流動性を維持し、必要に応じて、1N NaOHまたは1N HClを添加することによって、pHを3.5〜7.5(好ましくは4.5〜6.5)に維持した。該混合液を65℃でアルゴン下で終夜撹拌し、アルキルアミンが安定した濃度に到達したと考えられるまで、TLC(シリカゲル、エタノールで展開)で監視し、その後、さらに4時間撹拌した(ドデシルアミンで、この反応を約40〜45℃で行なって、一方オクタデシルアミンで、温度は好ましくは55〜57℃であった。)次いで、該反応混合液を1N HClでpH約4.0〜4.5に酸性化し、24時間撹拌して、未反応のEDCを破壊し、1N NaOHの滴下添加によって、pH7.0に調節した。
【0101】
該混合液を遠心瓶に移し、約800xgで2時間卓上遠心分離機で回転させ、残留固体を分離した。遠心分離後、該反応混合液をイソプロパノールで抽出し、有機不純物を除去した。イソプロパノール抽出の代替物としては限外濾過が好ましい。
【0102】
本方法により、以下のアミノ化合物をポリマーに共役する。
実施例1a:ウンデシルアミン
実施例1b:オクタデシルアミン
実施例1c:4−ノニルベンジルアミン
実施例1d:3−[(4−フェノキシ)フェニル]プロピルアミン
【0103】
実施例1e:PEG−ジ(アルキルアミドスクシニル)ジチオエーテル(スキーム9代替経路によるC16−π−ポリマーA)
実施例1に説明するとおり、PEG(1.5kD、上記に説明するとおり脱ガスおよび乾燥)を、過剰な無水マレイン酸(PEG1モルあたり2.2モル当量超)と、溶融条件下で反応させ、反応生成物を水に溶解し、1kD分画膜を使用して、水に対して透析した。残留物をほぼ乾燥するまで蒸発させて、アミド化に好適なジマレイン酸PEGを得た。
【0104】
最小容積の水(ジマレイン酸PEG2部あたり水約1部)に溶解したジマレイン酸PEGを、反応瓶中、アルゴン下で70〜80℃に加熱した。pHはTEMEDで5.0〜5.5に調節した。この溶液に、70〜80℃の、ジマレイン酸PEG繰り返し単位のモルあたり、2モル当量のヘキサデシルアミンを添加した。次いで、最小容積の水中、N−ヒドロキシスクシンイミド(ジマレイン酸PEG1モルあたり2モル当量)の溶液を添加し、その後、ゆっくりとEDC−HCl(ジマレイン酸PEG1モルあたり3モル当量)の水溶液を添加した。TLC(シリカゲル、展開用にEtOH)が反応の完了を示すまで(ヘキサデシルアミンのスポットが無変化または存在しない)、該混合液を70〜80℃で撹拌した。該反応混合液を冷却し、過剰なカルボジイミドを、pHが2.5〜3.0で安定するまで、酢酸を添加することによって、破壊した。生成物を、最初に水性EtOH、次に水に対して、透析すること、あるいは、イソプロパノールで沈殿することによって精製した。
【0105】
このように形成されたPEGジアミドを水に溶解し、該反応混合液のpHをTEMEDで6.5〜9に調節し、温度を60〜70℃に上げた。DTT(PEGジアミド1モルあたり1.2モル当量)の溶液を添加し、該反応混合液を終夜撹拌した。過剰なチオールを、化学量論的当量のクロロアセトアミドおよびTEMEDで反応停止し、負のエルマン試験を行った。次いで、該生成物を水に対して透析することによって精製し、残留物を蒸発することによって濃縮した。
【0106】
実施例2;PEG−ジ(アルキルアミドスクシニル)ジチオエーテル高分子量ポリマー
無水マレイン酸1モルのあたり0.55モルのDTTおよび0.55モルのTEMEDを使用したことを除いては、実施例1に概略した手順に従った。粘度が急速に増加する場合、激しい撹拌が必要であった。反応のほとんどは、5〜10分内に完了し、その後、温度が55℃から80℃に上昇するにつれて、次の4時間でゆっくりと完了するようであった。
【0107】
実施例3:PEG−ジ(アルキルアミドスクシニル)ジチオエーテルポリマー
ポリマー中、カルボキシル酸基1モルあたり1.5モルのドデシルアミンを使用することを除いては、実施例1に概略した手順に従った。N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、カルボン酸基1モルあたり1.0モル)および1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI、カルボン酸基1モルあたり3.0モル)を添加し、反応物を80℃で4時間撹拌し、上記のとおり調製した。
【0108】
本方法により、以下のアミノ化合物をポリマーに共役する。
実施例3a:ウンデシルアミン
実施例3b:テトラデシルアミン
実施例3c:オクタデシルアミン
実施例3d:デヒドロアビエチルアミン
実施例3e:コレステロール2−アミノエチルエーテル
実施例3f:10−フェノキシデシルアミン
実施例3g:セバシン酸ヒドラジド
実施例3h:オレイン酸ヒドラジド
実施例3i:デヒドロアビエチン酸ヒドラジド
実施例3j:コール酸ヒドラジド
実施例3k:パルミチン酸ヒドラジド
【0109】
実施例4:PEG−コ−(アルキルコハク酸アミド)ポリマー
無水ジエチルエーテル(10ml)中、PEG(6.66ミリモル)およびトリエチルアミン(2.32ml、16.65ミリモル)の溶液をアルゴン下で0℃に冷却し、塩化メタンスルホニル(1.03ml、13.32ミリモル)で滴下処理した。撹拌は、0℃で1時間、次いで室温で2時間継続する。エーテルを蒸発させ、無水アセトン(15ml)を残渣に添加し、トリエチルアミン塩酸塩を沈殿させ、これを溶液から濾過する。濾液を臭化リチウム(2.31g、26.64ミリモル)で処理し、加熱して、20時間還流させた。次いで、該混合液をヘキサンで希釈し、Celite(商標)(0.5cm)で被覆したシリカのショートカラム(3cm)で濾過し、ヘキサンで溶出する。該濾液を乾燥させ、濾過し、蒸発させて、油としてα,ω−ジブロモ−PEGを得た。
【0110】
α,ω−ジブロモ−PEGを、Godjoian et al.,Tetrahedron Letters,37:433−6(1996)の方法によって、1当量の2,2−ジブチル−4,5−ビス(メトキシカルボニル)−l,3,2−ジオキサスタンノランと反応させる。得られる酒石酸ジメチル−PEGポリエーテルをメタノールのKOHで鹸化し、その後、上記の実施例1および3に記載のとおり、ドデシルアミンまたはヘキサデシルアミン、または実施例3a〜3kのアミンでアミド化する。
【0111】
実施例5:EDTA二無水物とのPEG共重合
実施例1に説明する方法で、無水PEGをエチレンジアミンテトラ酢酸二無水物と反応させ、その後、実施例1に説明するドデシルアミンと、または実施例3に説明するヘキサデシルと、または実施例3a〜3kに説明するアミンでアミド化する。
【0112】
同様に、以下の二無水物をPEGと共重合させ、その後アミド化する。
実施例5a:ナフタレンテトラカルボン二無水物
実施例5b:ペリレンテトラカルボン二無水物
実施例5c:ベンゾフェノンテトラカルボン二無水物
実施例5d:4,4’−(ヘクサフルオロイソプロピリジン)ジフタル酸無水物
実施例5e:ブタンテトラカルボン酸二無水物
実施例5f:ビシクロ(2,2,2)オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン二無水物
実施例5g:ジエチレンテトラミンペンタ酢酸二無水物
実施例5h:3,4,3’,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
実施例5i:3,4,3’,4−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
実施例5j:ピロメリト酸二無水物
【0113】
実施例6A:ペンダントチオエーテルとのPEG−ジアミンコポリマー
実施例1のとおりに調製したPEGジマレイン酸エステルを実施例1のDTTに使用した同様の手順を使用して、ドデカンチオール(PEGジマレイン酸エステル1当量あたり2当量)と反応させる。TEMED触媒を添加してから、チオールを添加する。TLCを使用して、出発材料の消失後、反応を行う。蒸発によるアルキルチオールの損失が著しくなるポイントまでの温度を用いることができる(最大約100℃)。わずかな過剰アルキルチオールを、マレイン基を完全に飽和するために使用してもよい。臭気またはTLCで何も検出されなくなるまで、過剰なアルキルチオールを窒素またはアルゴンで散布および/または真空下で加熱することにより、反応終了時に除去する。
【0114】
本方法により、以下のチオールをPEGジマレイン酸エステルに共役することができる。
実施例6Aa:メルカプトコハク酸ジ−t−ブチルエステル
実施例6Ab:テトラデカンチオール
実施例6Ac:ヘクサデカンチオール
実施例6Ad:2−メルカプトエタンスルホン酸
実施例6Ae:3−メルカプトプロパンスルホン酸
実施例6Af:6−メルカプトヘキサン酸t−ブチルエステル
実施例6Ag:4−メルカプト安息香酸t−ブチルエステル
実施例6Ah:メルカプト酢酸t−ブチルエステル
実施例6Ai:4−(t−ブトキシカルボニルアミノ)ブタンチオール
実施例6Aj:3−(t−ブトキシカルボニルアミノ)ベンジルメルカプタン
実施例6Ak:4−デシルベンジルメルカプタン
【0115】
反応官能基を有するチオールは、C鎖の結合に好適である、および/または反応官能基は、標的部分に対する結合点(X)としての役割を果たすことができる。
【0116】
実施例6B:ペンダントチオエーテルとのPEG−ジアミンコポリマー
【0117】
【化16】

【0118】
実施例6Aで得られたチオール付加物を、実施例1のドデシルアミンに使用した同一の手順を使用して、1,4−ジアミノブタン(2つのCOOH基あたり1当量のジアミン)でアミド化し、反応混合液の流動性の維持に必要な場合、水によって希釈する。EDCの追加の一定分量を必要に応じて添加し、完全重合を確保する。本方法により、実施例6Aおよび6Aa〜6Akのチオール付加物をPEG−ジアミノブタンポリアミドに変換する。
【0119】
本方法により、以下のジアミンを、PEGポリアミドに変換することができる(BOC=t−ブトキシカルボニル)。
実施例6Ba:2−(O−BOC)−1,3−ジアミノ−2−プロパノール
実施例6Bb:N’,N’’−ジ(BOC)ヘクサエチレンテトラアミン
実施例6Bc:N’,N’’−ジ(BOC)スペルミン
実施例6Bd:N’−BOCスペルミジン
実施例6Be:N’,N’’,N’’’−トリ(BOC)ペンタエチレンヘキサミン
実施例6Bf:アグマチン
実施例6Bg:リシンt−ブチルエステル
実施例6Bh:1,6−ジアミノヘキサン
実施例6Bi:1,4−フェニレンジアミン
実施例6Bj:1,3−フェニレンジアミン
実施例6Bk:1,4−ジアミノブタン−2,3−ジオールアセトニド
【0120】
実施例7:PEG−ジ(アルキルコハク酸)ジチオエーテル
【0121】
【化17】

【0122】
DTTの2,3−ビス−O−ヘキサデシルエーテル(メソ−2,3−ビス(ヘキサデシルオキシ)ブタン−1,4−ジチオール)を、S.Sasaki et al,Chem.Pharm.Bull.33(10):4247−4266(1985)の手順を修正して調製する。これを実施例1の方法によってジマレイン酸PEGに添加する。
【0123】
本方法により、以下のエーテルジチオールをPEGポリマーに共役する。
実施例7a:メソ−2,3−ビス(n−ブトキシ)ブタン−1,4−ジチオール
実施例7b:メソ−2,3−ビス(4−ノニルフェニルメトキシ)ブタン−1,4−ジチオール
実施例7c:メソ−2,3−ビス(ビフェニル−4−メトキシ)ブタン−1,4−ジチオール
実施例7d:4,6−ビス(デシルオキシ)ベンゼン−1,3−ジメタンチオール
実施例7e:4,5−ビス(デシルオキシ)ベンゼン−1,2−ジメタンチオール
実施例7f:3,4−ビス(デシルオキシ)チオフェン−2,5−ジメタンチオール
【0124】
実施例8A:置換コハク酸PEG
2−ドデセン−1−イル無水コハク酸を無水マレイン酸の代わりに使用することを除いては、実施例1の方法に従う。ドデセニル置換基は、最終ポリマーにおいてペンダントC鎖を提供する。
【0125】
本方法により、以下の置換無水コハク酸をPEGでエステル化する。
実施例8Aa:無水イソブテニルコハク酸
実施例8Ab:2−オクテン−l−イル無水コハク酸
実施例8Ac:無水オクタデセニルコハク酸
実施例8Ad:3−オキサビシクロ−ヘキサン−2,4−ジオン
実施例8Ae:無水シクロヘキサンジカルボン酸
実施例8Af:無水フタル酸
実施例8Ag:4−デシル無水フタル酸
実施例8Ah:ヘクサヒドロメチル無水フタル酸
実施例8Ai:テトラヒドロ無水フタル酸
実施例8Aj:無水ノルボルネンジカルボン酸
実施例8Ak:カンタリジン
実施例8Al:無水ビシクロオクテンジカルボン酸
実施例8Am:エキソ−3,6−エポキシ−1,2,3,6−無水テトラヒドロフタル酸
実施例8An:S−無水アセチルメルカプトコハク酸
【0126】
実施例8B:ペンダントアルキル基を有するPEG−ジ(アルキルアミドスクシニル)ジチオエーテル
実施例1の方法により、実施例8Aおよび8Aa〜8Anに説明するとおり得た置換コハク酸PEGをDTTと反応させる。
【0127】
本方法により、以下のジチオールを実施例8Aおよび8Aaから8Anに説明するとおりに得た置換PEGコハク酸エステルのいずれかと反応させる。
実施例8Ba:エタン−1,2−ジチオール
実施例8Bb:プロパン−1,3−ジチオール
実施例8Bc:ブタン−1,4−ジチオール
実施例8Bd:ペンタン−1,5−ジチオール
実施例8Be:ヘキサン−1,6−ジチオール
実施例8Bf:1,4−ベンゼンジチオール
実施例8Bg:1,3−ベンゼンジチオール
実施例8Bh:1,4−ベンゼンジメタンチオール
実施例8Bi:1,3−ベンゼンジメタンチオール
実施例8Bj:1,2−ベンゼンジメタンチオール
【0128】
実施例8C:ペンダントアルキル基を有するPEG−ジアミンコポリマー
実施例6Bの方法により、実施例8Aに説明するとおり得た置換コハク酸PEGを、1,4−ジアミノブタンで共重合する。
【0129】
本方法により、以下のジアミンを実施例8Aおよび8Aaから8Anのうちの置換PEGコハク酸エステルのいずれかと共重合させる。
実施例8Ca:2O−BOC1,3−ジアミノ−2−プロパノール
実施例8Cb:N’,N’’−ジ(BOC)ヘクサエチレンテトラアミン
実施例8Cc:N’,N’’−ジ(BOC)スペルミン
実施例8Cd:N’−BOCスペルミジン
実施例8Ce:N’,N’’,N’’’−トリ(BOC)ペンタエチレンヘキサミン
実施例8Cf:アグマチン
実施例8Cg:リシンt−ブチルエステル
実施例8Ch:1,6−ジアミノヘキサン
実施例8Ci:1,4−フェニレンジアミン
実施例8Cj:1,3−フェニレンジアミン
実施例8Ck:1,4−ジアミノブタン−2,3−ジオールアセトニド
【0130】
実施例9:置換酸を使用したPEG Trans−エステル化
PEGジトシレート:1モルのPEG(DMFに溶解またはそのまま融解)に、アルゴン下で撹拌しながら、2.1モルの塩化トシル(5%モル過剰)を添加した。この反応混合物に、2.2モルのテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を添加した。次いで、反応物を45℃で2時間インキュベートした。TLCを使用して、TLC溶媒として、エチルアセテート、トルエン、またはエタノールを用いて、生成物を分離した。PEGトシル酸をトルエンとの反応混合液から抽出することができる。トルンスルホニルクロリドの代わりに、メシルクロリド(実施例4を参照)、トリフリック酸無水物、またはトレシルクロリドなどの他のスルホニル剤をまた使用することもできる(米国特許出願第10/397332号、米国特許第20040006051号を参照)。
【0131】
PEGジトシレートのポリエステル化:1モルの融解PEG−ジトシレートに、アルゴン下で撹拌しながら、1モルのS,S’−ジデシル−メソ−2,3−ジメルカプトコハク酸、および2モルのTEMEDを添加する。流動性を維持する必要がある場合、DMFを添加する。反応混合液を80℃に加熱し、24時間、またはTLCにより反応が完了するまで、撹拌する。
【0132】
実施例10:PEG−ジ(スクシニル)−ジ−(O−アシル化)チオエーテル中分子量ポリマー(C16−πポリマーB)
【0133】
【化18】

【0134】
実施例1のとおりに調製したジマレイン酸PEG(10.24g、6.1ミリモル)を、乾燥した125mlフラスコに入れ、アルゴン下で70℃に加熱し、ジマレイン酸PEGを融解した。この融解した材料に、撹拌しながら、水(10mL)、ならびに水(3mL)中DTT(0.961g、6.168ミリモル)およびTEMED(0.723g、6.166ミリモル)の溶液を添加した。この溶液を70℃で約4時間撹拌した。真空下で水を除去することにより、収率約90%で固体ポリマーを得た。
【0135】
乾燥させたポリマー(5g、2.7ミリモル)を70〜90℃にアルゴン下で加熱し、融解して、TEMED(0.635g、5.5ミリモル)を添加した。塩化パルミトイル(1.689g、5.5ミリモル)を撹拌しながら添加し、混合液をアルゴン下で終夜撹拌した。(塩化アシルに対するポリマーの比率は、0〜100%の化学量の置換度を得るように変化し得る。)水を反応混合液に添加し、「C16−πポリマーB」を単離した。
【0136】
本方法により、以下の酸を、ジ(スクシニル)PEG−DTTコポリマーのヒドロキシル基でエステル化する。
実施例10a:オレイン酸
実施例10b:コハク酸コレステリル
実施例10c:ビフェニル−4−カルボン酸
実施例10d:4−オクチルフェニル酢酸
実施例10e:ヘクサデス−6−イン酸
【0137】
酸ハロゲン化物の使用の代替として、πポリマーのDTT由来ヒドロキシル基を、1,3−ビス(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イルメチル)カルボジイミド(BDDC)で活性化し、カルボン酸と直接結合させることできる。Handbook of Reagents for Organic Synthesis,Reagents for Glycoside,Nucleotide,and Peptide synthesis,Ed.David Crich,Wiley,2005 p107−108、およびその中の参考文献を参照されたい。)。
【0138】
実施例11:C16−πポリマーAのカルボキシル置換エステル
カルボン酸置換ポリマーは、標準的なペプチド結合形成方法(例えば、カルボジイミド試薬により)を使用して、反応アミノ基を有するリガンドに結合し、アミノ基をポリマーのカルボン酸官能基に結合させるために使用する。これらの材料は、環状無水物によるπポリマーヒドロキシル基のエステル化により用意に得られる。例えば、ジマレイン酸C16−πポリマーAは、以下のとおりに、無水マレイン酸をC16−πポリマーAヒドロキシル基と反応させることにより調製した。
【0139】
C16−πポリマーA(2g)および無水マレイン酸(0.85g)を乾燥乳鉢ですりつぶし、50mL丸底フラスコに移した。該フラスコを、90℃でアルゴン下で2〜3時間、撹拌しながら加熱した。その後、固体反応混合物を細かくし、水でスラリにし、混合物を透析袋(3.5kDa分画)に移した。混合物を水に対して透析して、過剰なマレイン酸および低分子量の副生成物を除去し、残留物を透析袋から除去し、60℃で一定量になるまで乾燥して、ジマレイン酸C16−πポリマーA(1.79g)を得た。ポリマーと無水マレイン酸の割合は、0〜100%の完全化学量のエステル化の置換を得るために変更することが可能である。
【0140】
実施例11a:C16−πポリマーAジグリコール塩酸
C16−πポリマーA(2g)および無水ジグリコール酸(1.0g)を上記実施例11の方法によって反応させ、C16−πポリマーAジグリコール塩酸を得た。無水マレイン酸と同様に、ポリマーAと無水物の比率は、0〜100%の完全化学量のエステル化の置換を得るように変化させることができる。
【0141】
実施例11b:C16−π−ポリマーAビス(アコニット酸)
C16−πポリマーA(2g)および無水アコニット酸(1.35g)を、上記実施例11の方法によって反応させ、C16−πポリマーAビス(アコニット酸)を得た。
【0142】
同様に、以下の無水物をC16−πポリマーAに結合させる。低可溶性の無水物を使用する際、pHは精製の補助として、透析の前に4.5〜6.5に調節することができる。0.1N HClに対する第2の透析により、所望に応じて、ポリマーの酸形態が生成する。
実施例11c:無水コハク酸
実施例11d:無水グルタル酸
実施例11e:無水フタル酸
【0143】
無水マレイン酸またはcis−無水アコニット酸とのエステル化により導入した反応二重結合はまた、以下の実施例12に説明するとおり、チオール含有リガンドをポリマーに添加するために使用することができる。
【0144】
実施例12:ジマレイン酸C16−πポリマーAのシステイン付加物:
粉末化したジマレイン酸C16−πポリマーA(実施例11)(253mg)を水(5mL)に添加し、混合液を激しく撹拌した。システイン(24mg)およびTEMED(30.5ul)を反応混合液に添加し、該混合液を室温でアルゴン雰囲気下で撹拌した。ニンヒドリンによる検出とともに、該反応の進行をTLC(シリカゲルプレート、n−ブタノール−酢酸−水、3:1:1)で監視した。該反応混合液は、ポリマーとともに移動するニンヒドリン陽性スポットを示した。システインはまた、ニンヒドリン陽性スポットを示したが、出発ポリマーは、ニンヒドリンでいずれの色も示さなかった。
【0145】
上記に説明する方法は、多重カルボキシル置換基を有するチオールを使用して、結合点としての使用のために、追加のカルボキシル基を導入するために使用した。例えば、メルカプトコハク酸を以下のC16−πポリマーAジエステルに添加した。
実施例12a:ジマレイン酸C16−πポリマーA
実施例12b:ジアクリル酸C16−πポリマーA
実施例12c:アコニット酸C16−πポリマーA(ビス)
【0146】
【化19】

【0147】
実施例12c
同様に、3−メルカプトグルタル酸を以下のC16−πポリマーAジエステルに添加した。
実施例12d:ジマレイン酸C16−πポリマーA
実施例12e:ジアクリル酸C16−πポリマーA
実施例12f:アコニット酸C16−πポリマーA(ビス)
【0148】
3.πポリマーへの標的部分の結合
実施例1:C16−πポリマーAへの葉酸の結合
葉酸(2ミリモル)を無水DMSO中で溶解し、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と大気温度で反応させ、内部無水物を形成させた。次いで、この反応混合液に、等モル量のシステアミンHClおよびTEMEDを添加し、TLCによって反応を監視しながら、反応混合液を大気温度で24時間、アルゴン下で撹拌した。反応が完了した後、反応混合液を真空下で濾過し、反応副生成物を除去した。濾液をメタノールで希釈して、橙黄色の生成物を沈殿させた。沈殿物をメタノールでスラリにし、濾過して、残留するジシクロヘキシル尿素およびDMSOを除去した。葉酸−システアミン共役体(S.Atkinson,J.Biol.Chem.,276(30):27930−27935)に、Ellman試薬を用いた試験を行なった結果、遊離スルフヒドリル基の存在は陽性と出、TLCはシステアミンの存在を示さなかった。
【0149】
次いで、該葉酸−システアミン共役体を、アルゴン下で、C16−πポリマーAのジマレイン酸エステル(実施例11、分子量約1500を有するPEGより調製)と反応させた。ポリマー凝集体の親水性を維持するために、50%の利用可能なマレイン酸塩基のみを消費するのに十分な葉酸−システアミン共役体の量を、ポリマーに添加した。反応混合液のpHを、TEMEDで6.5〜7.5に調節し、該混合液をアルゴン雰囲気下で終夜撹拌した。次いで、該反応混合液を3.5kD分画膜で水に対して透析し、いかなる低分子量の副生成物および不純物をも除去した。保持液を除去し、以下に説明する薬物封入および細胞培養アッセイのために使用した。
【0150】
実施例2:C16−πポリマーAへの上皮細胞増殖因子(EGF)の結合
上皮細胞増殖因子(Sigma)を、pH7.4のPBS−EDTA緩衝液中2当量の2−イミノチオラン(Sigma)でチオール化し、チオール化EGFを、実施例1に説明する方法によって、Cl6−πポリマーAのジマレイン酸エステルに結合させた。該EGF共役ポリマーを限外濾過によって濾過し、PBSで洗浄し、保持液を使用して、標的封入ポリマーを調製した。
【0151】
実施例3:C16−πポリマーAへの抗EGFRモノクローナル抗体の結合
腹水としてマウス抗EGFRモノクローナル抗体(Sigma)を、製造元の指示により、AffinityPak(商標)Immobilized Protein A(Pierce)カラムで、クロマトグラフィにより精製した。精製した抗体をチオール化し、実施例1に説明する方法によって、pH7.4のPBS緩衝液でC16−πポリマーAのジマレイン酸エステルに共役し、限外濾過によって濾過した。
【0152】
4.抗癌化合物の封入
実施例1:C16−π−ポリマーAへのカンプトセシンの封入:
カンプトセシン(10mg、Sigma)をDMSO中で溶解し、DMSO中C16−πポリマーA(100mg、PEG 1.5kDから派生)の溶液と混合した。ゲル状混合液を約10〜30分間超音波分解し、水で希釈し、遠心分離して、いかなる固体をも除去した。封入したカンプトセシンの存在について、透明な上清をTLCで調べた結果陽性と出た。
【0153】
実施例2:C16−πポリマーAへのドキソルビシンの封入:
ドキソルビシンHCl(5mg、Sigma)を水で溶解し、当量のTEMEDで処理して、塩酸塩を遊離アミン形態に変換した。次いで、得られた遊離アミン形態に、DMSO中C16−πポリマーA(100mg、PEG 1.5kD由来)の溶液を添加し、上記実施例1に説明するとおり、混合物を処理および試験した。
【0154】
実施例3:葉酸共役C16−πポリマーAへのカンプトセシンの封入:
DMSOに溶解して、上記で合成した、葉酸πポリマーA共役体に、DMSO中のカンプトセシンの溶液を添加した。カンプトセシンとポリマーの重量で1:10の比率をこの調製で使用した。得た混合物を上記実施例1のとおりに処理し、カンプトセシン封入についてアッセイは陽性と出た。
【0155】
実施例4:EGF共役C16−πポリマーAへのカンプトセシンの封入:
上記実施例1および3に説明するものと同様に、EGF共役C16−πポリマーAを使用して、カンプトセシンを封入した。
【0156】
実施例5:抗EGFR共役C16−πポリマーAへのカンプトセシンの封入:
上記実施例1および3に説明するものと同様に、マウス抗EGFR抗体に共役させたC16−πポリマーAを使用して、カンプトセシンを封入した。
【0157】
5.細胞増殖アッセイ
腫瘍細胞増殖アッセイで評価する前に、上記で調製した実施例を、以下に記載の組成物を有する初期濃度まで希釈した。
【0158】
CPT+πP
組成物: πポリマーと複合体を形成したカンプトセシン
繰り返し単位mw: 2278
リガンド: −
リガンドmw: −
封入した薬物: カンプトセシン
薬物mw: 348
ポリマー濃度: 0.035mg/ml
繰り返し単位内15.4μM
リガンド濃度: −

薬物濃度: 3.48mg/ml
10.0μM
【0159】
CPT
組成物: カンプトセシン(対照)
繰り返し単位mw: −
リガンド: −
リガンドmw: −
封入した薬物: カンプトセシン
薬物mw: 348
ポリマー濃度: −
リガンド濃度: −
薬物濃度: 3.48μg/ml
10.0μM
【0160】
DOX+πP
組成物: πポリマーと複合体を形成したドキソルビシン
繰り返し単位mw: 2278
リガンド: −
リガンドmw: −
封入した薬物: ドキソルビシン
薬物mw: 544
ポリマー濃度: 0.054mg/ml
繰り返し単位中23.7μm
リガンド濃度: −

薬物濃度: 5.44μg/ml
10.0μM
【0161】
DOX
組成物: ドキソルビシン(対照)
繰り返し単位mw: −
リガンド: −
リガンドmw: −
封入した薬物: ドキソルビシン
薬物mw: 544
ポリマー濃度: −
リガンド濃度: −

薬物濃度: 5.44μg/ml
10.0μM
【0162】
πP
組成物: πポリマー(対照)
繰り返し単位mw: 2278
リガンド: −
リガンドmw: −
封入した薬物: −
薬物mw: −
ポリマー濃度: 0.035mg/ml
繰り返し単位中15.4μm
リガンド濃度: −

薬物濃度: −

【0163】
CPT+FA−πP
組成物: 葉酸共役πポリマーと複合体を形成したカンプトセシン
繰り返し単位mw: 5338
リガンド: 葉酸
リガンドmw: 441
封入した薬物: カンプトセシン
薬物mw: 348
ポリマー濃度: 0.031mg/ml
繰り返し単位中5.81μM
リガンド濃度: 2.56μg/ml
5.81μM
薬物濃度: 3.48μg/ml
10.0μM
【0164】
FA−πP
組成物: 葉酸共役πポリマー(対照)
繰り返し単位mw: 5338
リガンド: 葉酸
リガンドmw: 441
封入した薬物: −
薬物mw: −
ポリマー濃度: 0.031mg/ml
繰り返し単位中5.81μm
リガンド濃度: 2.56μg/ml
5.81μM
薬物濃度: −
【0165】
FA
組成物: 葉酸(対照)
繰り返し単位mw: −
リガンド: 葉酸
リガンドmw: 441
封入した薬物: −
薬物mw: −
ポリマー濃度: −

リガンド濃度: 4.41μg/ml
10.0μM
薬物濃度: −

【0166】
CPT+EGF−πP
組成物: EGF共役πポリマーと複合体を形成したカンプトセシン
繰り返し単位mw: 5338
リガンド: EGF
リガンドmw: 6052
封入した薬物: カンプトセシン
薬物mw: 348
ポリマー濃度: 0.0868mg/ml
繰り返し単位中16.3μm
リガンド濃度: 910μg/ml
150μM
薬物濃度:9.05μg/ml
26.0μM
【0167】
EGFR Ab−πP
組成物: 抗EGFR抗体共役πポリマー(対照)
繰り返し単位mw: 5338
リガンド: 抗EGFR抗体
リガンドmw: 150,000
封入した薬物: −
薬物mw: −
ポリマー濃度: 0.106mg/ml
繰り返し単位中19.9μm
リガンド濃度: 3,000μg/ml
20.0μM
薬物濃度: −

【0168】
CPT+EGFR Ab−πP
組成物: 抗EGFR抗体共役πポリマーと複合体を形成したカンプトセシン
繰り返し単位mw: 5338
リガンド: 抗EGFR抗体
リガンドmw: 150,000
封入した薬物: カンプトセシン
薬物mw: 348
ポリマー濃度: 0.106mg/ml
繰り返し単位中19.9μm
リガンド濃度: 3,000μg/ml
20.0μM
薬物濃度: 11.0μg/ml
31.6μM
【0169】
EGF
組成物: EGFペプチド(対照)
繰り返し単位mw: −
リガンド: EGF
リガンドmw: 6052
封入した薬物: −
薬物mw: −
ポリマー濃度: −

リガンド濃度: 200μg/ml
33.0μM
薬物濃度: −
【0170】
指定した増殖培地とともに、以下の細胞株を用いた。A549(F12倍地)、MDAMB231(Lebovitz培地)、H441、BT474およびSKBR3(RPMI培地)。腫瘍細胞を、10%ウシ胎仔血清を含む完全培地に、3000細胞/ウェルで、96ウェルプレートにプレートし、24時間、37℃でインキュベートした。プレートしてから24時間後に、試験化合物を、3倍連続希釈して(上記に説明する原液の10倍希釈で開始)ウェルに添加した。したがって、原液の被験希釈液は、10:1、30:1、および90:1であり、相対濃度はそれぞれ1.00、0.33、および0.11であった。6つの試験材料が供給不足であったため、これらは、直接30:1に希釈し、10:1で試験は行わなかった。細胞を、試験化合物の添加後、完全増殖培地で、37℃で72時間インキュベートした。4日目に、Promega Cell Titer Glo Luminescent(登録商標)アッセイキットを使用して、該細胞を溶解し、100マイクロリットルの基質/緩衝液の混合液を各ウェルに添加し、混合し、室温で15分間インキュベートした。該試料を照度計で読み取り、各ウェルから細胞溶解物に存在するATPの量を測定したが、これは、そのウェルの生存細胞数に対応する。
【0171】
各細胞株の結果を図1〜5に示す。1.00の相対濃度は、上記に説明する原液の10倍希釈を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗癌薬を癌細胞に投与するための方法であって、前記癌細胞をくし型ポリマー内に封入した前記抗癌薬と接触させるステップを含み、前記くし型ポリマーは、本質的に以下の構造:
【化1】

からなり、骨格が交互する分岐点部分Bと親水性水溶性ポリマーブロックAから形成され、前記分岐点部分に結合する疎水性側鎖Cおよび標的部分Zを有する骨格を含み、式中、
各疎水性側鎖Cは、独立して、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30直鎖もしくは分岐鎖炭化水素、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30環式もしくは多環式炭化水素、ならびに疎水性アミノ酸、ペプチドおよびポリマーから選択され、
各標的部分Zは、独立して、前記癌細胞の表面に対する特異的結合親和性を有するリガンドであり、
sは結合またはスペーサ部分であり、
nの値は、1から約100の範囲であり、
pの平均値は、1より大きく4までの範囲であり、
rの平均値は、0から8の範囲である、方法。
【請求項2】
nは2から約100の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの標的部分は、受容体特異的リガンド、抗体、抗体フラグメント、および増殖因子からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの標的部分は、受容体特異的リガンド、抗体、抗体フラグメント、および増殖因子からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記リガンドは、上皮細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、葉酸、メトトレキサート、プテロイン酸、エストラジオール、エストラトリオール、テストステノン、マンノース−6−リン酸、ならびにNCA90、NCA95、CEA、CD15、CD20、CD22、CD33、CD52、VGEF、またはEGFRに対する抗体および抗体フラグメントからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記リガンドは、上皮細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子、葉酸、メトトレキサート、プテロイン酸、エストラジオール、エストラトリオール、テストステノン、マンノース−6−リン酸、ならびにNCA90、NCA95、CEA、CD15、CD20、CD22、CD33、CD52、VGEF、またはEGFRに対する抗体および抗体フラグメントからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記抗癌薬は、ドキソルビシン、カンプトセシン、ドセタキセル、パクリタキセル、トポテカン、イリノテカン、イマチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、アクシチニブ、パゾパニブ、エトポシド、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、スタウロスポリン、シタラビン、メルファラン、ロイロシン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンD、マイトマイシンA、カルミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、レチノイン酸、およびタモキシフェンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗癌薬は、ドキソルビシン、カンプトセシン、ドセタキセル、パクリタキセル、トポテカン、イリノテカン、イマチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、アクシチニブ、パゾパニブ、エトポシド、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、スタウロスポリン、シタラビン、メルファラン、ロイロシン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンD、マイトマイシンA、カルミノマイシン、アミノプテリン、タリソマイシン、ポドフィロトキシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、レチノイン酸、およびタモキシフェンからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマーブロックAは、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、およびこれらのコポリマーからなる群より選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマーブロックAは、4から700モノマー単位の平均長を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーは、以下の構造:
【化2】

(式中、mは4〜700であり、YおよびY’は、独立して、R、OR、COOR、SR、NHR、NRR’、ONHR、NHOR、NRNH2、NHNHR、NRNHR’、およびNHNRR’からなる群より選択され、RおよびR’は、独立して、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30分岐鎖もしくは直鎖炭化水素、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30環式もしくは多環式炭化水素、ならびに疎水性アミノ酸、ペプチドおよびポリマーからなる群より選択される)
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーは以下の構造:
【化3】

(式中、mは4〜700であり、WはOまたはNHであり、YおよびY’は、独立して、R、COR、COOR、CONHR、CONRR’、CONHOR、CONRNH2、CONHNHR、CONRNHR’、およびCONHNRR’からなる群より選択され、RおよびR’は、独立して、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30分岐鎖もしくは直鎖炭化水素、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30環式もしくは多環式炭化水素、ならびに疎水性アミノ酸、ペプチドおよびポリマーからなる群より選択される)
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリマーは、以下の構造:
【化4】

{式中、部分Dは、以下の一般構造:
【化5】

(式中、各Xは独立して、反応性官能基であり、pは0〜4である)
を有するジアミンに由来し、mは4〜700であり、RおよびR’は、独立して、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30分岐鎖もしくは直鎖炭化水素、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30環式もしくは多環式炭化水素、ならびに疎水性アミノ酸、ペプチドおよびポリマーからなる群より選択される}
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーは、以下の構造:
【化6】

(式中、mは4〜700であり、WはOまたはNHであり、RおよびR’は独立して、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30分岐鎖もしくは直鎖炭化水素、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30環式もしくは多環式炭化水素、ならびに疎水性アミノ酸、ペプチドおよびポリマーからなる群より選択される)
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーは、以下の構造:
【化7】

(式中、mは4〜700であり、Lは、フェニレン、C2−C6アルキレン、またはベンゼンジメチレンであり、WはOまたはNHであり、RおよびR’は、独立して、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30分岐鎖もしくは直鎖炭化水素、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30環式もしくは多環式炭化水素、ならびに疎水性アミノ酸、ペプチドおよびポリマーからなる群より選択される)
を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
1つもしくは複数の医薬として許容される担体または賦形剤、およびくし型ポリマー内に封入した抗癌薬を含む医薬組成物であって、前記くし型ポリマーは、本質的に以下の構造:
【化8】

からなり、骨格は交互する分岐点部分Bと親水性水溶性ポリマーブロックAから形成され、前記分岐点部分に結合した疎水性側鎖Cおよび標的部分Zを有する骨格を含み、式中、
各側鎖Cは独立して、1つもしくは複数の親水性置換基で任意に置換されるC6−C30直鎖もしくは分岐鎖炭化水素、1つもしくは複数の親水性置換基、および疎水性アミノ酸、ペプチドおよびポリマーで任意に置換されるC6−C30環式または多環式炭化水素からなる群より選択され、
各標的部分Zは、独立して、前記癌細胞の表面に対して特異的結合親和性を有するリガンドであり、
sは結合またはスペーサ部分であり、
nの値は、1から約100の範囲であり、
pの平均値は、1より大きく4までの範囲であり、
rの平均値は、0から8の範囲である、医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−533710(P2010−533710A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516963(P2010−516963)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/073880
【国際公開番号】WO2009/011702
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(510016209)オールエクセル,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】