説明

抗癌剤により誘発される末梢神経障害を予防および/または処置するための医薬品

本発明は、末梢神経障害誘発性抗癌剤の投与により誘発される末梢神経障害を予防および/または処置するための医薬品の製造のためにアセチルL-カルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩の使用を開示するものである。特に、該抗癌剤は、プラチン化合物ファミリー、タキサン、エポシロン類およびビンカアルカロイド、ファルネシル転移酵素阻害剤、サリドマイド、5-フルオロウラシル、クリプトフィジンアナログ、プロテアソーム阻害剤からなる群から選択される。該医薬品は、協調的方法で、該末梢神経障害に罹患しているか、または該末梢神経障害に罹患すると予測される被検者に投与され得る。患者のクオリティー・オブ・ライフに対する有益な効果が達成され、抗癌剤の治療上の指標の改善が得られる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本明細書に記載の本発明は、腫瘍の処置において有用な医薬品の製造におけるL-カルニチンおよびアルカノイルL-カルニチンの使用、特に抗癌剤との組合せにおける使用に関する。
【0002】
本発明の背景
ヒトの治療における抗癌剤の使用により、患者の生命を脅かし得る多くの毒性または副作用を引き起こされることはよく知られている。実際に、これらの合併症は、薬剤の用量を低下させ、時には治療自体の中断へと導き得る。
【0003】
多くの場合に、用量低下または治療の中断により、それが再発の発現をもたらしやすいために、個体の全般的な症状の悪化を引き起こし、時として患者にとって致命的な結果を伴う。
【0004】
病院環境内および腫瘍患者の家族の間において、もう一つの非常に重要かつ強く感ずる側面は、処置を受けている患者の「クオリティー・オブ・ライフの改善」に関する概念である。
【0005】
癌に対して通例の複数の化学療法をうけている患者は、大きく体重が減少する傾向があることもまたよく知られている。
【0006】
ヒトの治療で使用される抗癌剤の数および重要性が増すのは、毒性または副作用の出現が続くことが主な限界であって、この問題はいまだ大きな関心の種であることを意味する。
【0007】
すなわち、ヒトの治療において使用される抗癌剤によって引き起こされる毒性または副作用を実質的に低下し得る、新規薬剤または様々な薬剤の新規の適切な組合せ物を発見することが大いに望まれる。
【0008】
抗癌剤との組合せにおけるL-カルニチンの従前の使用は既知である。
【0009】
実験動物モデルにおいて、ドキソルビシン単独で処置されたラットは、同物質とL-カルニチンとの組合せで処置されたラット群よりも大きな体重減少を示すことが立証されてきた(Senekowitsch R, Lohninger A, Kriegel H., Staniek H., Krieglsteiner HP., Kaiser E. Protective effects of carnitine on adriamycin toxicity to heart. In: Kaiser E., Lohninger A.,(eds.). Carnitine:its role in lung and heart disorders: 126-137. Karger, Basel-New York, 1987)。
【0010】
米国特許番号4,713,370には、カルニチンを、細胞増殖抑制剤、例えばダウノマイシン、N−アセチル-ダウノマイシンおよびダウノマイシンオキシムと組合せて使用して、これらの化合物の心臓毒性を低下させることが記載されている。米国特許番号4,267,163には、カルニチンを、細胞増殖抑制剤、例えばアドリアマイシン、アドリアマイシン-14-オクタノエート、4'-エピ-アドリアマイシン、アドリアマイシン β-アノマーおよび4'-エピ-アドリアマイシン γ-アノマーと組合せて使用して、これらの化合物の心臓毒性を低下させることが記載されている。米国特許番号4,751,242には、末梢神経障害の治療的処置のためにアセチルL-カルニチンを使用することが記載されている。この後者の特許において、末梢神経障害は、末梢軸索ならびにそれらの付随支持構造体とも関係して、脳幹および脊髄および/または第一次知覚ニューロンおよび/または末梢自立神経モーターニューロンの永続的障害の一群として定義される。それらの病因に関して、末梢神経障害は、それらの病因がウイルス感染(ヘルペス帯状疱疹)、虚血(動脈硬化症)、代謝不均衡(糖尿病、腎および肝臓不全)、薬物誘発毒性(アドリアマイシン、イソニアジド、ニトロフラントイン)、物理的ストレス(圧迫、絞扼(entrapment)、骨の骨折または脱臼)、放射物、遺伝的素因および免疫系の病因に対して二次的であるために、異質な疾患分類を構成する。しかし、疾患形態の実際の病因がいかなるものであっても、細胞脂質、コレステロールおよびガングリオシドの変化から起こる膜流動性の変化を検出することは常に可能である。脂質は、三量体および四量体タンパク質構造を明確に示す際に、またアデノシン−トリホスファターゼ構造の安定性を維持する際にも非常に重要な役割をはたす。実際に、それらの不存在により酵素不活性はもたらされる。その引例において、アセチルL-カルニチンは、4価と2価の間の嫌気性経路の代謝変換を制御するシトクロームオキシダーゼの活性が低下するために、不規則または不十分な灌流の状態あるいは炎症プロセス中で形成するフリーラジカル(スーパーオキシド、ヒドロペルオキシド)に対する「スカベンジャー」効果を果たしているらしいことが仮定されている。最も重要な抗酸化代謝物の1つである還元グルタチオンのレベル、および恐らくシトクロームオキシダーゼのレベルを増加させることにより、アセチルL-カルニチンは、フリーラジカルの除去をもたらし、一般的には4価の酸化-還元呼吸メカニズム、特にニューロンの再生をもたらす。さらに、アセチルL-カルニチンは、最適な神経伝達に対して不可欠なATPアーゼおよびAChEの増加をもたらすことによってニューロンに影響する。
【0011】
その他の試験は、アントラサイクリン誘発性の心臓毒性に対するカルニチンの保護効果の評価を指向してきた (Neri B., Comparini T., Milani A., Torcia M., Clin. Trial J. 20, 98-103, 1983; De Leonardis V., De Scalzi M., Neri B., et al. Int. J. Clin. Pharm. Res. 70, 307-311, 1987)。
【0012】
上記で引用した特許および参考文献は、多大な努力が抗癌剤の毒性または副作用を低下させる試みについて為されてきたが、満足のいく方法でこれらの深刻な問題を解決できなかったことを示している。
【0013】
カルボプラチンは、シスプラチンの構造アナログであり、それに関連した腎毒性は決して無視できるものではないが、シスプラチンの毒性よりも低い。末梢神経毒は、抗腫瘍剤であるシスプラチンの用量を制限する副作用である(Cavaletti et al. Journal of the Peripheral Nervous System, Vol. 6, Number 3; September 2001, 136 2001 Meeting of the Peripheral Nerve Society)。
【0014】
ビンクリスチンは、特に免疫系のレベルで毒性効果を有する既知の抗癌剤である。
【0015】
タキソールは、Taxus brevifoliaの樹皮から最初に単離された天然抽出物であり、抗癌特性を有し、ヒト被検者において神経毒性および骨髄毒性を立証してきた。タキソールはプラチナ治療法に対して抵抗性の腫瘍処置に使用されているが、末梢神経系において比較的大きな蓄積性の毒性をもたらす。タキソールが、処置された被検者において好中球減少症を誘発することも確かめられた(Rowinsky et al.; Semin. Oncol. (1993), Aug. 20 (4 suppl 3), 1-15; Onetto et al. J. Natl. Cancer Inst. Monogr. (1993); (15):131-9)。
【0016】
様々な分類の化学療法剤は、末梢神経毒性を誘発する。それらのなかのいくつかを列挙する:タキソイド、プラチナ化合物、ビンカアルカロイド、エポシロン類、ファルネシル転移酵素阻害剤、サリドマイド、5-フルオロウラシル、クリプトフィジンアナログ、プロテアソーム阻害剤。
【0017】
重度の末梢神経障害は治療の変更を誘発し得るし、一方で軽度または中程度の場合でも、患者のクオリティー・オブ・ライフを制限する重大な耐容性の問題を依然示している。
【0018】
ビンカアルカロイドはチューブリンと結合し、可溶性ダイマーから微小管への重合を阻害し、一方でタキソイドは、微小管の形成を促進させ、それらの脱重合化を阻害し、多数の頑強な微小管を生成する。
【0019】
微小管は、細胞形状の維持、多様な細胞運動および軸索原形質輸送のための主な成分である。神経および軸索における微小管の機能欠陥は、化学療法剤の両ファミリーの神経毒性の起源であり得る。
【0020】
タキソイドは、基本的には対称に分布した末端の知覚神経障害を誘発し、その障害は薬剤の単回および累積用量の両方と関連し、また用法に依存する可能性がある。タキソールの神経毒性は、作用に関する独特のメカニズムによる;チューブリンに結合して、微小管の会合を促進する(Schiff P.B. et al., Nature 1979; Parnass J. and Horowitz S.B., J. Cell. Biol. 1981)。タキソールの存在下で形成した微小管は、カルシウムと低温の存在を含む通常のそれらの脱重合化させる条件下で安定である。また、パクリタキセルは、会合開始前に通常観察される3〜4分の時間のずれを除いて、微小管会合のキネティックを変化させる(Horowitz S.B. et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 1986)。このメカニズムは微小管会合を阻害するビンカアルカロイドのものと対照的である。
【0021】
この対照的なメカニズムにより、2つの異なる誘発性神経障害に対して同時に作用している薬物を発見することは困難となる。
【0022】
骨髄毒性の造血成長ファクターレスキューを使用すると、神経毒性は用量制限ファクターとなる(Schiller et al., J. Clin. Oncol. 1994)。症状は、単回高用量(>250 mg/m2)による処置後、早ければ24〜72時間程度で開始し得るが、該神経毒性は、一般的に累積的で高用量と低用量の両方において各処置後に症状は進行する。
【0023】
症状は一般的に耐容性である(NCIグレード1または2)。神経学的試験により、閾値亢進、および末端、対称、両側対称性パターンでの振動知覚の特性が示された。一般的に、大径線維様式(振動、固有受容)は、小径線維様式(痛み、温度)の欠如よりも影響されていることが多い。深部腱反射も、末端(足関節)反射が常にないか、軽減されているので影響されていることが多い。
【0024】
神経伝達試験は、対称の、末端の、長さ依存様式において知覚神経活動電位振幅の軽減を示す。腓腹の知覚神経活動電位振幅は、症候患者において実質的に軽減されるか、または存在しないのが常である。
【0025】
軽度の知覚症状は、タキソールの中断後の数ヶ月以内に完全に改善されるか解消されるのが普通である。
【0026】
シスプラチンは、長い直径と、程度は少ないが短い直径の知覚繊維に影響する末梢知覚軸索神経障害を引き起こす。知覚異常および障害性固有受容器症(impaired propiocepsis)は、最も一般的な症状である(Thompson S.W. et al., Cancer 1984)。シスプラチンは、後根神経節に蓄積してそれを損傷させ、軸索変化は神経損傷に二次的となる(Warner E., Int. J. Gynecol. Cancer 1995)。
【0027】
シスプラチン誘発性神経障害の発症率は、累積用量によるところが大きく、症状の開始は、シスプラチン330〜400mg/m2の総用量で見られた。シスプラチンは、神経組織に対して頑強かつ不可逆的に結合しており、これはシスプラチン治療の中止後に時折発生する神経症状の悪化を説明するものである。
【0028】
ビンカアルカロイドは、末梢知覚-運動の多発性神経炎および自立神経障害を誘発し、数ヶ月後、部分的に可逆的であることがわかった(Potsma T.J. et al., J. Neurooncol. 1993)。
【0029】
エポシロンファミリーは、タキサンファミリーに類似した毒物学的プロファイルを有する(Lee FY et al Proc Am Assoc Cancer Res, 2002, 792)。
【0030】
癌の処置に使用されるいくつかの他の化合物は、軽度から重度の神経障害を示す。その他のもので、特別な説明がなされているのは次のものである:ファルネシル転移酵素阻害剤、例えばR11577(Adjei, A.A., et al., J. Clin. Oncol., 2003, May, 1; 21 (9): 1760-6);サリドマイド(Rajkumar, S.V., et al., Leukemia, 2003, Apr; 17 (4): 775-9);5-フルオロウラシル(van Laarhoven, H.W., et al., Anticancer Res., 2003, Jan-Feb; 231 (1B): 647-8);ドセタキセル(Thongprasert, S., et al., J. Med. Assoc. Thai, 2002, Dec; 85 (12): 1296-300);クリプトフィジン(cryptophycin)アナログ、例えばLY355703(Sessa, C., et al., Eur. J. Cancer., 2002, Dec; 38 (18): 2388-96)およびプロテアソーム阻害剤、例えばPS431(Aghajanian, C., et al., Clin. Cancer Res., 2002, Aug; 8 (8): 2505-11)。
【0031】
薬理学的治療の一般的な問題の1つは、薬剤の治療上の指標、すなわち毒性用量、つまり副作用を発生させる用量に対する治療上有効用量の割合である。
【0032】
医薬学界では、抗癌性化学療法の場合には特に支援することが困難である該処置に患者が向かいあい、同時に許容し得るクオリティー・オブ・ライフを保つことのできる治療管理の必要性を認めている。これらの考慮すべき問題は、動物、例えば、いわゆるペットの治療的処置にも適用される。
【0033】
用量を低下させる自然的傾向、すなわち患者に薬剤を頻繁に摂取させずに治療上有用な投与に適した剤形を使用することは、各抗癌剤の一般的な最小有効用量とは対照をなす。
【0034】
国際出願WO 00/06134では、抗癌剤を用いる医薬品製造においてL-カルニチンおよびそのアルカノイル誘導体の使用が開示されている。特に、該出願では、治療上指標の改善および抗癌性の化学療法の典型的な副作用の低下を伴うアルカノイルL-カルニチンと抗癌剤の組合せ物の使用が開示されている。特に、該出願では、抗癌剤に対して生存時間または体重減少として示される一般的な毒性に対するL-カルニチンの効果が開示されている。より詳細には、この引用出願は、抗癌活性、例えば、タキソールに対するプロピオニルL-カルニチンによる相乗効果を提供する。いくつかの抗癌剤の特異的毒性に関する限りでは、この引用された出願は、ブレオマイシンの肺毒性、タキソールによって誘発された好中球減少症、およびタキソール誘発性末梢神経障害に対する保護効果の例を提供する。
【0035】
カルニチンファミリーに対するこの一般的な開示は、当業者を、幾つかの抗癌剤によって誘発される末梢神経障害の予防および/または処置においてアセチルL-カルニチンの特異的活性を予測するように導かないであろう。
【0036】
同じ理由が、シスプラチンによって誘発される末梢神経障害の予防および/または処置においてアセチルL-カルニチンの効果を説明する場合にも適用され得る(Vitali, G. et al., Annals of Oncology, Vol. 13, 2002, Supplement 5: 179, 659P; Cavaletti, G. et al., Journal of Neurology, Vol. 249, Suppl. 1, June 2002: 1/28, 78; Cavaletti, G. and Zanna, C., European Journal of Cancer, 38 (2002): 1832-7)。
【0037】
本発明の要約
本明細書において、末梢神経障害誘発性抗癌剤およびアセチルL-カルニチンの協調的使用−この用語は正確に下記に定義される−は、該抗癌剤の神経障害誘発活性に対して、予防的および/または処置的効果を発揮することがわかった。
本明細書に記載の本発明の内容において、治療上有効量の末梢神経障害誘発性抗癌剤、特にプラチン化合物ファミリー、タキサン、エポシロン類およびビンカアルカロイド、ファルネシル転移酵素阻害剤、サリドマイド、5-フルオロウラシル、クリプトフィジンアナログ、プロテアソーム阻害剤、と解毒量のアセチルL-カルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩の中の1つとの協調的使用は、その他のものの間でその効力を損なわないで、抗癌剤の末梢神経毒性および副作用に対する強力な保護効果を与え得る、すなわちヒト被検者または動物であっても、処置される対象のクオリティー・オブ・ライフの実質的な改善および対象自身の延命を高め得る。
【0038】
本発明の目的は、末梢神経障害誘発性抗癌剤、但し該抗癌剤はタキソールまたはシスプラチンでない、の投与によって誘発される末梢神経障害を予防および/または処置するための医薬品製造のためのアセチルL-カルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩の使用であって、該医薬品は、末梢神経障害に罹患しているか、または末梢神経障害に罹患すると予測される被検者に協調的方法で投与すべきである。
【0039】
本発明で説明されている本発明の別の目的は、末梢神経障害誘発性抗癌剤および該関連医薬組成物とアセチルL-カルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩との組合せ物である。
【0040】
アセチルL-カルニチンは毒性または副作用がないことがよく知られているため、この化合物の使用は、長期投与であっても特に安全である。
【0041】
本明細書中に記載の本発明の手段は、処置される患者のクオリティー・オブ・ライフを改善することに寄与する;クオリティー・オブ・ライフの改善は末梢神経障害により生じる身体的苦痛に関してのみ考慮すればよい。
【0042】
本明細書中に記載の本発明のこれらおよび他の目的は、本発明の実施態様において、実施例によっても詳細に説明されている。
【0043】
本明細書中に記載の本発明の内容において、用語「抗腫瘍性」、「抗癌性」および「増殖抑制性」は、基本的には同義であると解される。
【0044】
本発明の詳細な説明
本明細書中に記載の本発明の内容において、前記化合物の「協調的使用」によって意味するものは、(i)共投与、すなわち、アセチルL-カルニチンまたはその薬理学的に許容し得る塩と1つの抗癌剤との実質的に同時または逐次投与、または(ii)所望により薬学的に許容される賦形剤および/またはビヒクルを加えて、組合せを混合物の形で上記活性成分を含む組成物の投与のいずれかである。
【0045】
このように、本明細書中に記載の本発明は、アセチルL-カルニチンまたはその薬理学的に許容し得る塩と該抗癌剤との共投与、および経口的、経腸的または経鼻的に投与され得る徐放形態を含めて混合物中にその2つの活性成分を含む医薬組成物、の両方を包含する。
【0046】
本発明の内容において共投与の意図された使用は、抗癌剤の起こりうる副作用、すなわち末梢神経障害についての予防的処置(予防として意図される)の可能性を意味する。別の実施態様において、共投与の意図される使用によって、本発明は、該抗癌剤の悪影響に関する治療的処置(処置または治療を意図される)を意味する。予防的処置の場合において、アセチルL-カルニチンは、末梢神経障害を意味することが知られている抗癌剤による処置の必要性の点から投与される。投与開始、開始後のスケジュール(すなわち、薬量学)および抗癌剤による処置開始後の投与継続の決定は、抗癌剤の種類、予測される悪影響の型および重篤度および患者の症状によるが、臨床医の知識の範囲内であろう。この例のために、アセチルL-カルニチンの投与は、腫瘍の外科的除去の直前または直後に開始され得るが、抗癌剤の投与開始前にどのような場合でも、また手術前に該薬剤が投与される場合でも開始し得る。抗癌剤の投与が、手術前または手術を予測される場合、その場合はいつでも予防および処置の両方が適用し得る。
【0047】
また、共投与は、患者の症状を基にした一次診療医師(指定医)によって確立された用法に従って活性成分の協調的同時性または時間計画的服用のための指示書と共に、アセチルL-カルニチンの個別投与形態またはその薬理学的に許容し得る塩および抗癌剤の一つを含む物品または製造品を意味する。この物品は予防および処置の両方に適している。本発明の多様な実施態様において、物品または製造品は、抗癌剤およびアセチルL-カルニチンの両方を含む単位用量からなる。
【0048】
アセチルL-カルニチンの薬理学的に許容し得る塩が意味することは、毒性または副作用を生じさせない酸と後者とのあらゆる塩である。これらの酸は、薬理学者や医薬技術の専門家達によく知られている。
【0049】
L-カルニチンまたはアルカノイルL-カルニチンの薬理学的に許容し得る塩の例は、塩化物;臭化物;ヨウ化物;アスパラギン酸塩;酸アスパラギン酸塩;クエン酸塩;酸クエン酸塩;酒石酸塩;酸酒石酸塩;リン酸塩;酸リン酸塩;フマレート;酸フマル酸;グリセロリン酸塩;グルコースリン酸塩;乳酸塩;マレイン酸塩;酸マレエート;ムケート(Mucate);オロチン酸塩;シュウ酸塩;酸シュウ酸塩;硫酸塩;酸硫酸塩;トリクロロ酢酸;トリフルオロ酢酸;メタンスルホネート;パモエートおよび酸パモエートを含むが、これらに限定するものではない。該塩は、本出願者の名前で出願された幾つかの特許に開示されている。
【0050】
臨床的使用のためのアセチルL-カルニチンの一日用量に関する一つの好ましい形態は、0.1〜3g、好ましくは0.5〜3gのアセチルL-カルニチンの量、または等量の薬学的に許容し得る塩を含む組成物である。
【0051】
本明細書中に記載の本発明は、末梢神経障害の予防または処置の点で有利である。
【0052】
実質的な保護効果が意味することは、統計学的に有意な範囲までの副作用の予防、低下または排除あるいは全ての処置方法である。
【0053】
本明細書中に記載の本発明の実施態様は、禁忌を理由として該処置を中断せずに、計画された処置プロトコールの維持または化学療法剤の用量増加に関する可能性のために、治療上の成功が増加するおかげで、患者の治癒および延命に寄与する。
【0054】
本明細書中に記載の本発明によって得られた別の価値は、処置される被検者のクオリティー・オブ・ライフに関連する;実際、すでに記載したように、末梢神経障害によって起こる身体的苦痛の排除または低下が、患者の自立すべき能力を支持する。経済的見地からは、病院施設または患者を介護する家族によって負担される費用の明白な倹約がある。
【0055】
本明細書中に記載の本発明の第一の好ましい実施態様において、アセチルL-カルニチンは、プラチン化合物ファミリー、タキサン、エポシロン類およびビンカアルカロイド、ファルネシル転移酵素阻害剤、サリドマイド、5-フルオロウラシル、クリプトフィジン アナログ、プロテアソーム阻害剤からなる群から選択される抗癌剤との協調的方法で投与される。
【0056】
本明細書中に記載の本発明の好ましい第二の実施態様において、アセチルL-カルニチンは、カルボプラチン、オキサリプラチン、ドセタキセル、エポシロン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ファルネシル転移酵素阻害剤R11577、サリドマイド、クリプトフィジンアナログLY355703、プロテアソーム阻害剤PS341からなる群から選択される抗癌剤によって誘発される末梢神経障害に対して予測し得ない程度の保護活性を示した。この保護効果は、副作用の予防として、および保護効果の処置としての両方であると解される。
【0057】
本発明者は、論理的考察に縛られることは望んでいないが、当業者の知識を基にして全く予測し得なかったアセチルL-カルニチンによる当該保護活性(予防的および治療上の両方)が、どのようにして判明したかを強調するものである。背景技術で記載したように、アセチルL-カルニチンは、還元グルタチオンのレベルを増加させることによってフリーラジカルに対して「スカベンジャー」効果を為す傾向があると仮定する。この部分では、本発明において目的とする抗癌剤が末梢神経に損傷を与えるメカニズムが説明される。プラチンファミリーの場合において、ラジカルスカベンジャー剤が薬剤活性に作用する傾向があり、該剤がラジカルメカニズムを通じて作用するため、ラジカルスカベンジャーの使用が望ましくないことはよく知られている。
【0058】
アセチルL-カルニチン(ALC)は、神経成長因子(NGF)の効果を増強することによって、本明細書中で目的とする抗癌剤によって誘発された末梢神経障害に対するその保護効果を働かせる(Cavaletti, G. et al., Journal of Neurology, Vol. 249, Suppl. 1, June 2002: 1/28, 78)。NGFは、シスプラチンおよびタキソールの神経毒性の関係において神経保護剤として当分野で広く試験される。アセチルL-カルニチンは、マイクロアレイ分析によって評価されるように、様々な遺伝子の発現を強めることによってPC12細胞に対するNGFの効果を強化し得るし、そしてPC12神経炎副産物を増進する際にNGFとアセチルL-カルニチンとの関係も報告された。アセチルL-カルニチンとNGFとの間の明確な関係は、慢性的なシスプラチン誘発性知覚神経障害の動物モデルでも見出された。このモデルにおいて、知覚神経障害の開始とNGF循環レベルにおける低下との密接な関係は、以前にすでに報告されていた。
【0059】
重症度が顕著に軽減した神経障害は、タキソール-アセチルL-カルニチン処置群でのタキソール神経毒性のイン・ビボのモデルにおいて観察された。シスプラチン処置動物においてNGFの低下を減少させる効果に加えて、アセチルL-カルニチンは、NGFに対する細胞応答を増加させる。アセチルL-カルニチンの保護効果の根拠に対する分子メカニズムに関して、本発明で行った該試験は、遺伝子発現の調節に関与しているヒストンアセチル化を介して神経性NGF応答を増強する保護剤の能力を示した。アセチルL-カルニチンのアセチル基は、NGF分化PC12細胞中のヒストンに転移される。アセチルL-カルニチンの存在により、NGF誘発性ヒストンアセチル化が増加した。さらに、アセチルL-カルニチンのPC12細胞への添加により、NGFI−Aの発現、すなわち腫瘍サプレッサー効果による転写因子をコードする遺伝子の発現が顕著に刺激された。さらに、NGFI−Aタンパク質はいくつかの生理学的プロセスにおいて影響し、組織修復において重要な役割を持つことが示唆された。結論として、本発明は、アセチルL-カルニチンが、本発明の目的とする抗癌剤による処置後の化学療法誘発性の神経障害についての特異的な保護剤であることを示唆するものである。薬剤の抗腫瘍活性とあらゆる干渉がないことはこの点と関連している。最終的に、アセチルL-カルニチンは、化学療法誘発性神経障害の間、生理学的NGFのささえとなる効果(supportive effect)を増強し得るし、それによってこの神経保護ストラテジーの主な問題であるNGFの外因性投与の局所的および全体的な副作用の問題を避けることである。
【0060】
本明細書中に記載の本発明に従ってALCが使用される場合、薬剤の抗癌作用に対して悪影響がないことが判った。
【0061】
ALCは経口的に投与され得るのが便利であるが、その理由から、当業者によって確立されるように、当業者が、特に注射によって、例えば同じ点滴バイアル中で、その抗癌剤と共に、同時または逐次的に投与するよう勧め得る他の投与経路を排除しない。
【0062】
L-カルニチンと他のアルカノイルL-カルニチン(本明細書中、まとめて「カルニチン」として呼ばれる)、特にプロピオニル L-カルニチン(PLC)は、前記WO 00/06134で開示されたような抗癌剤の治療活性を有する価値のある効果を示したので、個別用量形態でも、またはいくつかの方法を組合せた形でも、保護剤としてアセチルL-カルニチンと1以上の「カルニチン」とを本発明の抗癌剤と一緒にした組合せを提供することが有利であり得る。この組合せには、本明細書中に記載の本発明の組合せ物の結果として、実質的に軽減された副作用、より具体的には末梢神経障害を誘発する他の抗癌剤も含まれる。この後者の実施態様は、多剤化学療法の場合に有利である。また、L-カルニチンを上記組合せに加えることも有利であり得る。
【0063】
従って、さらなる証拠として、個別用量形態であっても、またはいくつかの方法を組合せた形でも、保護剤としてアセチルL-カルニチンと、相乗作用的な薬剤としてプロピオニルL-カルニチンと、本発明の抗癌剤の1つとの3つの組合せを提供することが有利である。この組合せは、本明細書中に記載の本発明の組合せの結果として、相乗効果を示すか、実質的に軽減された副作用を誘発する他の抗癌剤も含む。この後者の実施態様は、多剤化学療法の場合に有利である。また、L-カルニチンを上記組合せに加えることも有利であり得る。
【0064】
本明細書中に記載の本発明の1つの特別な目的は、治療上有効量の本発明の抗癌剤の1つを、保護しうる量のアセチルL-カルニチンと相乗的な量のプロピオニルL-カルニチンを、医薬的に許容し得るビヒクルおよび/または賦形剤との混合物の形で共に含む、医薬組成物である。
【0065】
産業上利用に関するそれらの態様に関して、本明細書中に記載の本発明は、可能な実施態様の1つにおいて、次のものを含有するキットも提供する:a)治療上有効量の抗癌剤を含む医薬組成物;b)該抗癌剤の末梢神経系の副作用に対して実質的な保護作用を生み出すために適当な量のアセチルL-カルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物。本明細書中に記載の本発明のキットは次のような形態で提供され得る:a)治療上有効量の抗癌剤を含む医薬組成物;b)該抗癌剤の副作用に対して実質的な保護作用を生み出すために適当な量のアセチルL-カルニチンを含む医薬組成物。
【0066】
キットについてのガイドラインは、特に他のカルニチン類との組合せにおいて、上記WO 00/6134に見出され得る。
【0067】
我々は、抗癌剤としてオキサリプラチンまたはエポシロンまたはビノレルビンを用いて、好ましい実施態様を参照して本明細書中に記載の本発明を実施する方法を、ここに開示する。
【0068】
当業者らは、彼らが仕事をしている領域での、自身の一般知識を用いるか、必要な場合には近接分野へ問い合わせて実験プロトコールを完成し得ると解されている。
【0069】
我々は、L-カルニチンまたはその誘導体と上記抗癌剤の組合せによって得られた予測し得ない、驚くべき保護効果を示すのに適切な最も重要な実験結果を下記に報告する。実験の詳細については、WO 00/6134および該発明で引用された文献を参照し得る。
【0070】
実施例1
オキサリプラチン誘発性末梢神経障害予防処置の実験モデルに対するアセチルL-カルニチンの保護効果
この試験の目的は、4週間のオキサリプラチン処置の1日前に投与されるアセチルL-カルニチンの保護特性を、予防法として実証し、評価することである。
【0071】
4週間の間(全8回投与)、1週間に2回、滅菌処理した蒸留水に溶解したオキサリプラチン(2.7 mg/kg/1.5 ml)を腹膜内投与することによって、末梢神経障害を誘発した。
【0072】
アセチルL-カルニチンを、蒸留水に溶解し、皮下投与した。100mg/1.5 ml/Kg/日の用量を、個体の体重を基準にして投与した。ALC処置を、オキサリプラチン処置の前の日に開始して、4週間の間毎日行った。対照およびオキサリプラチン群を、ビヒクルでs.c.処置した。
【0073】
処置開始前(基底)とオキサリプラチンの最終投与の次の日(最終)に、ハロタン麻酔下で各動物について神経伝導速度(NCV)を測定した。
【0074】
NCVを下記方法で決定した:該動物を、0.45ハロタン、窒素初級酸化物および酸素を含むガス状混合物により麻酔した。尾部の尾元に刺激電極を、そして対の記録リング電極を、該刺激電極に対して尾部末端5および10cmに配置し、神経伝導速度を尾部で測定した。
【0075】
神経刺激後の2つの部位で記録した電位差の遅延(ピークからピーク)を測定し、神経伝導速度をそれに応じて計算した。
【0076】
各動物で行った反復試験では、刺激と記録の位置をパーマネント・インクで尾に印を付けて確定した。
【0077】
尾部神経の記録および刺激は、100マイクロセカンド(μs)の持続時間と、閾値に等しい刺激強度を用いるOte Biomedica Phasis II 筋電計を使用して行った。動物の体温に依存する神経伝導速度に関する文献報告の見解から、後者は動物に対してBM 70002-型温度調節器(Biomedica Mangoni)によって、直腸プローブで体温を測定して、実験全体を通して一定に保つことが必要である。
【0078】
該速度を、基底条件および処置5週間後の両方の全ての動物群で測定した。
【0079】
該結果を、平均±標準偏差として示した;有意性は「t検定」を用いて、統計学的有意なカット−オフ値、p<0.05を用いて独立および対データの両方について評価した。
【0080】
尾部神経で測定した知覚神経伝導速度データを、下記表1に示した。
表1
オキサリプラチン誘発性神経障害:基底条件およびアセチルL-カルニチン処置後の動物の尾部で測定した知覚神経伝導速度(m/s)
【表1】


値は平均±標準偏差
t検定(独立データ)
*=p<0.001 vs 対照
§=p<0.001 vs オキサリプラチン
【0081】
実施例2
オキサリプラチン誘発性末梢神経障害の実験モデルに対するアセチルL-カルニチンの保護効果治療的処置
この試験の目的は、3週間の観察期間中に、オキサリプラチン処置の終了時点で投与したアセチルL-カルニチンの保護特性を、治療方法として実証し、評価することである。
【0082】
4週間(全8回投与)の間、1週間に2回、滅菌処理した蒸留水に溶解したオキサリプラチン(3mg/kg/1.5 ml)を腹膜内投与することによって末梢神経障害を誘発した。
【0083】
アセチルL-カルニチンを、蒸留水に溶解し、観察期間中皮下投与した。100mg/1.5 ml/Kg/日の用量を、個体の体重を基準にして投与した。ALC処置を、最後のオキサリプラチン投与の次の日に開始した。
【0084】
対照およびオキサリプラチン群をビヒクルでs.c.処置した。
【0085】
処置開始前(基底)、オキサリプラチン最終投与の次の日(最終)、そして3週間の観察期間 (回復)後の週毎にハロタン麻酔下で、各動物について、神経伝導速度(NCV)を測定した。
【0086】
NCVを、実施例1のように測定した。
尾部神経で測定した知覚神経伝導速度データを、下記表2に示した。
【0087】
表2
オキサリプラチン誘発性神経障害:基底条件およびアセチルL-カルニチンによる処置後の動物の尾部で測定した知覚神経伝導速度(m/s)
【表2】


値は平均±標準偏差
t検定(独立データ)
*=p<0.01 vs 対照;**=p<0.005 vs 対照;
***=p<0.01 vs 対照
§=p<0.05 vs オキサリプラチン;§§=p<0.01 vs オキサリプラチン
【0088】
実施例3
オキサリプラチン誘発性障害由来の末梢神経に対するアセチルL-カルニチンの保護効果−治療的および予防的処置
後肢払いのけ試験(Randall-Sellitto)を用いて、機械的な痛覚過敏を扱った。侵害受容限界値を、左および右後肢を加圧することにより、Ugo Basile analgesimeterを用いて測定した。侵害受容限界値を、ラットが自身の脚をひっこめた時点の圧力(grams)として定義した。低い限界値は、痛覚過敏に対する高い刺激感応性に相当する。この挙動試験を、薬剤またはビヒクル投与からの様々な時間(日数)で行った。試験前の週に、ラットを、試験方法と研究員によって取り扱われることに慣れさせた。
【0089】
約10週令のウィスター・メス・ラット(Charles River)を用いた。オキサリプラチンの生理食塩水溶液(3mg/kg i.p.)を、1週間に3回投与した。最初の2週間、次いで、2週間の間は1週間に2回、次に1週間に1回。
【0090】
予防的処置を次のとおりに行った:オキサリプラチン3mg/kg i.p.+ALC100 mg/Kg s.c., オキサリプラチン処置の初日から毎日。
【0091】
治療的処置を次のとおりに行った:オキサリプラチン3mg/kg i.p.+ALC100 mg/Kg s.c., オキサリプラチン処置24日目から毎日。
【0092】
侵害受容限界データ(Randall-Sellitto)を、下記表3に示した。
【0093】
表3
オキサリプラチン誘発性神経障害:動物の後肢で測定した侵害受容限界(g) (平均±S.D.)
【表3】

ANOVA: ダンネットの多重比較検定 vs オキサリプラチン。
a=p<0.05, d=p<0.001。
【0094】
統計学的分析を、下記表4に示した。
表4
【表4】

【0095】
実施例4
ビノレルビン誘発性障害由来の末梢神経に対するアセチルL-カルニチンの保護効果−治療的および予防的処置
後肢払いのけ試験 (Randall-Sellitto)を実施例3のとおりに用いた。
約3月令(約350g)のSprague Dawley オス・ラット(Harlan)を用いた。ビノレルビンの生理食塩水溶液(0.200 mg/kg i.p.)を、試験の終了時まで1週間に3回投与した。
【0096】
予防的処置を次のとおりに行った:ビノレルビン3mg/kg i.p.+ALC100 mg/Kg s.c.,オキサリプラチン処置の初日から毎日(1週間に6日)。ALCによる処置を25日まで行った。
【0097】
治療的処置を次のとおりに行った:オキサリプラチン3mg/kg i.p.+ALC100 mg/Kg s.c., ビノレルビン処置の9日目から毎日(1週間に6日)。ALCによる処置を25日まで行った。
【0098】
該試験を1週間に2回行った。
侵害受容限界データ(Randall-Sellitto)を、下記表5に示した。
【0099】
表5
ビノレルビン誘発性神経障害:動物の後肢で測定した侵害受容限界(g) (平均±S.D.)
【表5】


Student's t検定 vs ビノレルビン a=p<0.05,b=p<0.02,c=p<0.01 d=p<0.001。
【0100】
実施例5
ビンクリスチン誘発性障害由来の末梢神経に対するアセチルL-カルニチンの保護効果−治療的および予防的処置
【0101】
後肢払いのけ試験 (Randall-Sellitto)を実施例3のとおりに用いた。
約3月令(約350g)のSprague Dawley オス・ラット(Harlan)を用いた。ビンクリスチンの生理食塩水溶液(0.150 mg/kg i.p.)を、試験の終了時まで1週間に3回投与した。
【0102】
予防的処置を次のとおりに行った:ビンクリスチン0.150 mg/kg i.p. 1週間に3回+ALC100 mg/Kg s.c., 毎日(1週間に6日)。
【0103】
治療的処置を次のとおりに行った:ビンクリスチン0.150 mg/kg i.p.+ALC100 mg/Kg s.c., ビンクリスチン処置の15日目から毎日(1週間に6日)。
【0104】
該試験を1週間に2回行った。
侵害受容限界データ(Randall-Sellitto)を、下記表6および7に示した。
【0105】
表6
ビノレルビン誘発性神経障害:動物の後肢で測定した侵害受容限界(g) (平均±S.D.)−予防的処置
【表6】

Student's t検定 vsビンクリスチン d=p<0.001
Student's t検定 vs ビンクリスチン d=p<0.001
【0106】
表7
ビンクリスチン誘発性神経障害:動物の後肢で測定した侵害受容限界(g) (平均±S.D.)−治療的処置
【表7】

Student's t検定 vs ビンクリスチン b=p<0.02, c=p<0.01 d=p<0.001

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末梢神経障害誘発性抗癌剤、但し該抗癌剤はタキソールやシスプラチンではない、の投与によって誘発される末梢神経障害を予防および/または処置するための医薬品製造のためのアセチルL-カルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩の使用。
【請求項2】
該医薬品が協調的方法による投与に適当である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
該末梢神経障害誘発性抗癌剤が、プラチン化合物ファミリー、タキサン、エポシロン類およびビンカアルカロイド、ファルネシル転移酵素阻害剤、サリドマイド、5-フルオロウラシル、クリプトフィジンアナログ、プロテアソーム阻害剤から選択される、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
該抗癌剤が、カルボプラチン、オキサリプラチン、ドセタキセル、エポシロン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ファルネシル転移酵素阻害剤R11577、サリドマイド、クリプトフィジンアナログLY355703、プロテアソーム阻害剤PS341からなる群から選択される、請求項3記載の使用。
【請求項5】
該投与が実質的に同時である、請求項2〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
該投与が逐次的である、請求項2〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
該投与が、該アセチルL-カルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩を、抗癌剤、さらに所望により薬学的に許容し得る賦形剤および/またはビヒクルとの組合せを混合物として含む組成物の形態にある、請求項2〜5のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
0.1〜3g/日のアセチルL-カルニチンまたは等量のその薬学的に許容し得る塩が投与される、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
該アセチルL-カルニチンの薬理学的に許容し得る塩が、塩化物、臭化物、オロチン酸塩、酸アスパラギン酸塩、酸クエン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸および酸フマル酸、マレイン酸塩および酸マレイン酸、酸シュウ酸塩、酸硫酸塩、グルコースリン酸塩、酒石酸塩および酸酒石酸塩からなる群から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
該医薬品が、該抗癌剤による処置が必要と考えられる被検者に投与されるものである、請求項1〜4および6〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
該医薬品が、腫瘍の外科的除去の直前または直後に投与されるものである、請求項10記載の使用。
【請求項12】
該抗癌剤が腫瘍の外科的除去に代わるものである、請求項10記載の使用。
【請求項13】
別のカルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩が添加される、請求項1〜12のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
さらなる抗癌剤が添加される、請求項1〜13のいずれか記載の使用。
【請求項15】
a)アセチルL-カルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩、
b)末梢神経障害誘発性抗癌剤
を組み合わせて含む、組成物。
【請求項16】
該抗癌剤が、プラチン化合物ファミリーの群、タキサン、エポシロン類、ビンカアルカロイドから選択される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
該抗癌剤が、プラチン化合物、タキサン、エポシロン類およびビンカアルカロイド、ファルネシル転移酵素阻害剤、サリドマイド、5-フルオロウラシル、クリプトフィジンアナログ、プロテアソーム阻害剤からなる群から選択される、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
該抗癌剤が、カルボプラチン、オキサリプラチン、ドセタキセル、エポシロン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ファルネシル転移酵素阻害剤R11577、サリドマイド、クリプトフィジンアナログLY355703、プロテアソーム阻害剤PS341からなる群から選択される、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
アセチルL-カルニチンの薬理学的に許容し得る塩が、塩化物、臭化物、オロチン酸塩、酸アスパラギン酸塩、酸クエン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸塩および酸フマル酸塩、マレイン酸塩および酸マレイン酸塩、酸シュウ酸塩、酸硫酸塩、グルコースリン酸塩、酒石酸塩および酸酒石酸塩からなる群から選択される、請求項15〜18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
別のカルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩が添加される、請求項15〜19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
別の抗癌剤が添加される、請求項15〜20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
a)治療上有効量の末梢神経障害誘発性抗癌剤を含む医薬組成物、
b)該抗癌剤の投与によって誘発された末梢神経障害に対して実質的な保護作用を生ずるのに適切な量で、アセチルL-カルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物を含む、
キット。
【請求項23】
該抗癌剤が、プラチン化合物群、タキサン、エポシロン類およびビンカアルカロイド、ファルネシル転移酵素阻害剤、サリドマイド、5-フルオロウラシル、クリプトフィジンアナログ、プロテアソーム阻害剤から選択される、請求項22記載のキット。
【請求項24】
該抗癌剤が、カルボプラチン、オキサリプラチン、ドセタキセル、エポシロン、ビノレルビン、ビンクリスチン、ファルネシル転移酵素阻害剤R11577、サリドマイド、クリプトフィジンアナログLY355703、プロテアソーム阻害剤PS341からなる群から選択される、請求項23記載のキット。
【請求項25】
アセチルL-カルニチンの薬理学的に許容し得る塩が、塩化物、臭化物、オロチン酸塩、酸アスパラギン酸塩、酸クエン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸塩および酸フマル酸塩、マレイン酸塩および酸マレイン酸、酸シュウ酸塩、酸硫酸塩、グルコースリン酸塩、酒石酸塩および酸酒石酸塩からなる群から選択される、請求項22〜24のいずれかに記載のキット。
【請求項26】
さらなるカルニチンまたはその薬学的に許容し得る塩が添加される、請求項22〜25のいずれかに記載のキット。
【請求項27】
さらなる抗癌剤が添加される、請求項22〜26のいずれかに記載の組成物。

【公表番号】特表2006−508958(P2006−508958A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551161(P2004−551161)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/IT2003/000656
【国際公開番号】WO2004/043454
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】