説明

抗腫瘍性テトラヒドロピリミジン

迷路サンゴ、メアンドリニダエ科メアンドリナ属メアンドリテス種から得られる式(I)の抗腫瘍性化合物またはその誘導体は、抗腫瘍薬として有用である。


(式中、xはO、SまたはNraである)

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規な抗腫瘍性化合物、それらを含有する医薬組成物およびそれらの抗腫瘍剤としての使用に関する。
【0002】
背景技術
Kourany-Lefoll et al. (J. Org. Chem. 1992, 57, 3832-3835)は、二環式1,2,3,4−テトラヒドロ−6−ピロロ[1,2−α]ピリジニウム環系の初めての天然種であり、深海海綿フロエオディクチョン(Phloeodictyon)種の未記載種から得られたフロエオディクティン(Phloeodictine)A(1)およびフロエオディクティンB(2):
【化1】

の生物活性について開示している。
【0003】
これには、化合物1および2が数種の細菌に対して有意な活性を示し、次の個々のMIC(μg/mL)を有していたことが記載されている:糞便連鎖球菌(Streptococcus fecalis)(5、>15)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(1、3)、大腸菌(Escherichia coli)(1、30)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(10、>30)。
【0004】
さらに、これらのアルカロイドは、KBヒト鼻咽頭癌細胞に対してin vitro細胞傷害性を示し、1および2のIC50はそれぞれ1.5および11.2μg/mLであった。
【0005】
また、Kourany-Lefoll et al. (Tetrahedron 1994, 50, 3415-3426)は、その後、さらなる研究において同じ海綿からの生物活性剤として単離された、ピロロ[1,2−α]ピリミジンであって、フロエオディクティンA1〜A7(3〜9)およびC1〜C2(10および11)と称されるものを記載している。総ての化合物がin vitroにおいて抗菌活性を示し、KB細胞に対して中程度の細胞傷害性を示した。
【0006】
【化2】

【0007】
フロエオディクティンA、B、A1〜A7およびC1〜C2の混合物は広汎なスペクトラムの活性を有し、それぞれ以下のMIC(μg/mL)を有していた:黄色ブドウ球菌(3、30、1、3)、大腸菌(3、30、3、>30)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(30、>30、30、>30)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)(30、>30、1、>100)、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)(1、>30、3、>100)およびペプトコッカス・アサッカロリチカス(Peptococcus assaccharolyticus)(10、>30、3、>100)。さらに、これらの物質はまた、KBヒト鼻咽頭癌細胞に対するin vitro細胞傷害性を示し、フロエオディクティンA、B、A1〜A7、およびC1〜C2のIC50はそれぞれ2.2、3.5、0.6および1.8μg/mLであった。
【0008】
米国特許第4,292,429号には、1−[2−[2−(2−クロロフェニル)−2−イミダゾリン−1−イル]−エチル]−3−(p−トリル)−尿素、1−[2−[2−(4−ピリジル)−2−イミダゾリン−1−イル]−エチル]−3−(−4−カルボキシ−フェニル)−尿素および1−[2−[2−(クロロアニリノメチル)−2−イミダゾリン−1−イル]−エチル]−3−(p−トリル)−尿素について、シリアンゴールデンハムスターの肺、気管および喉頭におけるジエチルニトロサミン(DAENA)により誘導される類表皮癌に対する活性、またはマウスにおけるErhlich腹水腫に対する活性が開示されている。
【0009】
他方、他の数種の1,2−二置換環式アミドが、先行技術と関連のない分野で開示されている。具体的には、米国特許第2,743,255号は、化学反応体として有用な樹脂の製造方法を開示している。この樹脂の製造において、下記の化合物Rが好適な反応体として開示されている。
【化3】

【0010】
癌は動物およびヒトの主要な死因である。癌に苦しむ患者に投与する有効かつ安全な抗腫瘍剤を得るための取り組みが今までになされ、現在も行われている。本発明が解決する課題は、癌の治療に有用なさらなる化合物を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
一つの態様によれば、本発明は、一般式Iの化合物またはその医薬上許容される塩、誘導体、互変異性体、プロドラッグもしくは立体異性体に関する。
【化4】

[式中、R、R、RおよびRは各々独立に、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、COH、COOアルキル、置換または非置換C−C12アルキル、置換または非置換C−C12アルケニル、置換または非置換C−C12アルキニル、置換または非置換C−C18アリール、置換または非置換C−C18複素環基、置換または非置換C−C12アルコキシおよび置換または非置換C−C12アシルからなる群から選択されものであり、
Yは、置換または非置換C−C12アルキレン、置換または非置換C−C12アルケニレン、および置換または非置換C−C12アルキニレンからなる群から選択されるものであり、
Xは、O、SおよびNRからなる群から選択されるものであり、
は、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、COH、COOアルキル、置換または非置換C−C12アルキル、置換または非置換C−C12アルケニル、置換または非置換C−C12アルキニル、置換または非置換C−C18アリール、置換または非置換C−C18複素環基、置換または非置換C−C12アルコキシ、および置換または非置換C−C12アシルからなる群から選択されるものであり、
は、置換または非置換C−C30アルキル、置換または非置換C−C30アルケニル、置換または非置換C−C30アルキニル、および置換または非置換C−C30アルケニニルからなる群から選択されるものであり、かつ
点線は、Rが存在しない場合にはN−Cに、Rが存在しない場合にはC−Xに、またはRが存在しない場合にはC−Nに位置する任意の追加の結合を表す]
(ただし、下記式の化合物R:
【化5】

は除かれる)。
【0012】
本発明はまた、メアンドリニダエ(Meandrinidae)科メアンドリナ(Meandrina)属メアンドリテス(meandrites)種の迷路サンゴ(maze coral)からの式Iの化合物の単離、およびこれらの化合物由来の誘導体の形成に関する。
【0013】
別の態様によれば、本発明はまた、癌治療における、または癌治療用の薬剤の製造における、化合物Rを含む式Iの化合物、またはその医薬上許容される塩、互変異性体、誘導体、プロドラッグもしくは立体異性体を対象とする。
【0014】
別の態様によれば、本発明はまた、化合物Rを含む式Iの化合物、またはその医薬上許容される塩、互変異性体、誘導体、プロドラッグもしくは立体異性体と、医薬上許容される担体または希釈剤とを共に含んでなる医薬組成物を対象とする。
【発明の具体的説明】
【0015】
本発明は、上記で定義されたような一般式Iの化合物に関する。
これらの化合物において、置換基は次の指針に従って選択することができる。
アルキル、アルキレンおよびアルコキシ基は、好ましくは1〜30個の炭素原子を有する。アルキル、アルキレンおよびアルコキシ基のより好ましい種は1〜12個の炭素原子を有し、さらに好ましいアルキル、アルキレンおよびアルコキシ基は1〜約6個の炭素原子を有し、さらに好ましいアルキル、アルキレンおよびアルコキシ基は1〜約4個の炭素原子を有する。メチル、エチル、プロピル(イソプロピルを含む)およびブチルは、本発明の化合物において特に好ましいアルキル基である。メトキシ、エトキシ、プロポキシ(イソプロポキシを含む)およびブトキシ(tert−ブチルを含む)は、本発明の化合物において特に好ましいアルコキシ基である。アルキルおよびアルキレン基の別のより好ましい種は4〜約12個の炭素原子、より好ましくは、5〜約8個の炭素原子を有する。ペンチル、ヘキシル、ヘプチルまたはオクチルは、本発明の化合物において特に好ましいアルキル基である。アルキル基の別の好ましい種は1〜約20個の炭素原子、より好ましくは、6〜約18個の炭素原子を有する。本明細書において、アルキルとは、特に断りのない限り、環式基と非環式基の双方を指すが、環式基は少なくとも3個の炭素環員を含む。
【0016】
アルケニニル基とは、1以上の二重結合と1以上の三重結合とを含むアルキル基として定義され、好ましいアルケニニル基は4〜約30個の炭素原子を有するものである。アルケニニル基のより好ましい種は6〜約18個の炭素原子を有する。
【0017】
本発明の化合物における好ましいアルケニル、アルキニル、アルケニレンおよびアルキニレン基は、1以上の不飽和結合と2〜約30個の炭素原子とを有する。アルケニル、アルキニル、アルケニレンおよびアルキニレン基のより好ましい種は4〜約20個の炭素原子、さらに好ましくは、6〜18個の炭素原子を有する。本明細書においてアルケニル、アルキニル、アルケニレンおよびアルキニレン基とは、環式基と非環式基の双方を意味し、環式基は少なくとも3個の炭素環員を含む。本発明の化合物においてアルケニル、アルキニル、アルケニレンおよびアルキニレン基の別の好ましい種は2〜12個の炭素原子、さらに好ましくは、2〜6個の炭素原子を有する。
【0018】
アルキル、アルケニル、アルキニル、アルケニニル、アルキレン、アルケニレンおよびアルキニレン基は、OH、NO、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、所望により置換されたC−C12アルコキシ、所望により置換されたC−C12アルカノイルオキシ、所望により置換されたC−C19アロイルオキシ、所望により置換されたC−C16アラルカノイルオキシ、ハロゲン、所望により置換されたC−C18アリール、アミノ、モノ−(C−C12アルキル)アミノおよびジ−(C−C12アルキル)アミノ、所望により置換されたグアニジン、所望により置換されたC−C12アルコキシカルボニル、所望により置換されたC−C11アリールオキシカルボニル、所望により置換されたC−C11アラルキルオキシカルボニル、カルバモイル、N−(C−C20アルキル)カルバモイルおよびN,N−ジ−(C−C20アルキル)カルバモイルから選択される基によって所望により置換されていてもよい。
【0019】
本発明の化合物における好適なアリール基は、単環式基または多環式基を含み、独立もしくは縮合アリールまたはヘテロアリール環を含有する多環式基を含む。典型的なアリール基は1〜3環および4〜約18個の炭素環原子を含む。特に好ましいアリール基としては、置換または非置換フェニル、ナフチル、ビフェニル、フェナントリルおよびアントラシルが挙げられる。
【0020】
好適な複素環基としては、芳香族複素環基(heteroaromatic group)および脂環式複素環基(heteroalicyclic group)が挙げられる。本発明の化合物において好適な芳香族複素環基は、N、OおよびS原子から選択される1個、2個または3個のヘテロ原子を含み、例えば、クマリニル(8−クマリニルを含む)、キノリニル(8−キノリニルを含む)、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニルおよびベンゾチアゾール基が挙げられる。本発明の化合物において好適な脂環式複素環基は、N、OおよびS原子から選択される1個、2個または3個のヘテロ原子を含み、例えば、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリノおよびピロリジニル基が挙げられる。
【0021】
好適なアシル基は、2〜約12個の炭素原子、より好ましくは、2〜約8個の炭素原子、さらにより好ましくは2〜約6個の炭素原子、さらに一層好ましくは2個の炭素原子を有する。
【0022】
アリール基、複素環基およびアシル基は、1以上の適用可能な位置で、OH、OR’、=O、SH、SR’、SOR’、SOR’、NO、NH、NHR’、N(R’)、=NR’、NHCOR’、N(COR’)、NHSOR’、NH(C=NH)NH、NH(C=NH)NHR’、NH(C=NH)NR’、CN、ハロゲン、C(=O)H、C(=O)R’、COH、COR’、OC(=O)R’などの1以上の好適な基により置換されていてもよく、ここで、各R’基は独立に、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、=O、C(=O)H、C(=O)CH、COH、置換または非置換C−C12アルキル、置換または非置換C−C12アルケニル、置換または非置換C−C12アルキニル、および置換または非置換アリールからなる群から選択されるものである。このような基がそれ自体置換されている場合、それらの置換基は上記の一覧から選択することができる。
【0023】
本発明の化合物において好適なハロゲン置換基としては、F、Cl、BrおよびIが挙げられる。
【0024】
「医薬上許容される塩、誘導体、プロドラッグ」とは、医薬上許容される塩、エステル、溶媒和物、水和物またはその他のいずれかの化合物であって、レシピエントに投与した際に、本明細書に記載の化合物を(直接または間接的に)提供し得るものを意味する。しかしながら、医薬上許容されない塩も、医薬上許容される塩の製造に有用であり得ることから、本発明の範囲内にあると認められる。塩、プロドラッグおよび誘導体の製造は当技術分野で公知の方法により行うことができる。
【0025】
例えば、本発明で提供される化合物の医薬上許容される塩は、従来の化学法により塩基性部分または酸性部分を含む親化合物から合成される。一般に、このような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸または遊離塩基の形態を、水または有機溶媒または両者の混合物中で化学量論量の適当な塩基または酸と反応させることにより製造される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルのような非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸付加塩、ならびに例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアンモニウム塩などの無機塩、および、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N、N−ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミンおよび塩基性アミノ酸塩などの有機アルカリ塩が挙げられる。
【0026】
互変異性体とは、定義された化合物の2以上の構造異性体のうちの1つを意味し、構造異性体は平衡状態にあり、アミド−イミド、ラクタム−ラクチムなどのように、ある異性型から別の異性型へ容易に変換される。
【0027】
本発明の化合物は、遊離化合物として、または溶媒和物(例えば、水和物)として結晶形態であってもよく、両形態とも本発明の範囲内にあるものとする。溶媒和の方法は当技術分野で一般に知られている。
【0028】
式Iの化合物のプロドラッグである化合物はいずれも本発明の範囲および精神内にある。「プロドラッグ」は広義で用いられ、in vivoで本発明の化合物へ変換される誘導体を包含する。このような誘導体は当業者ならば容易に思い浮かび、例えば、遊離ヒドロキシ基がエステル誘導体に変換される化合物が挙げられる。
【0029】
上記の式Iで表される本発明の化合物は、数種の鏡像異性体を含み得る。二重結合についての異性性も存在し得るので、ある場合には、分子は(E)−または(Z)−異性体として存在し得る。単独の異性体および異性体混合物は本発明の範囲内にある。
【0030】
本発明の好ましい化合物は、Yが置換または非置換C−Cアルキレン、より好ましくは、置換または非置換C−Cアルキレンである化合物である。メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレンおよびブチレンがより好ましい。非置換Cアルキレン鎖がさらに好ましい。
【0031】
より好ましいR、R、RおよびRは各々独立に、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、COH、COOアルキル、置換または非置換C−Cアルキル、および置換または非置換C−Cアシルからなる群から選択されるものである。一実施形態では、それらは総てHである。
【0032】
好ましい実施形態によれば、XはNRであり、ここで、Rは、好ましくは、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、COH、COOアルキル、置換または非置換C−Cアルキル、および置換または非置換C−Cアシルからなる群から選択されるものであり、HおよびCOOアルキルがより好ましい。
【0033】
本発明のより好ましい化合物は、R
【化6】

である化合物である:
[式中、nは、1〜12、より好ましくは1〜8の整数であり、
mは、1〜10、より好ましくは1〜5の整数であり、
は、H、OH、NO、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、所望により置換されたC−C12アルコキシ、所望により置換されたC−C12アルカノイルオキシ、所望により置換されたC−C18アロイルオキシ(aroyloxy)、所望により置換されたC−C16アラルカノイルオキシ(aralkanoyloxy)、所望により置換されたC−C18アリール、アミノ、モノ−(C−C12アルキル)アミノ、ジ−(C−C12アルキル)アミノ、所望により置換されたグアニジン、所望により置換されたC−C12アルコキシカルボニル、所望により置換されたC−C11アリールオキシカルボニル、所望により置換されたC−C11アラルキルオキシカルボニル、カルバモイル、N−(C−C20アルキル)カルバモイル、およびN,N−ジ−(C−C20アルキル)カルバモイルからなる群から選択されるものであり、
点線は追加の一重結合または二重結合を表す]。
より好ましくは、二重結合がC−C間に位置し、三重結合がC−C間に位置する。
【0034】
より好ましくは、追加の結合は、Rが存在しない場合にはN−Cに、Rが存在しない場合にはC−Xに、またはRが存在しない場合にはC−Nに位置し、さらに好ましくは、Rが存在しない場合にC−X間に位置する。
【0035】
より詳しくは、本発明は、式IIで示される化合物、またはその医薬上許容される塩、互変異性体、誘導体、プロドラッグもしくは立体異性体を提供する:
【化7】

[式中、R、RおよびRは各々独立に、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、COH、COOアルキル、置換または非置換C−C12アルキル、置換または非置換C−C12アルケニル、置換または非置換C−C12アルキニル、置換または非置換C−C18アリール、置換または非置換C−C18複素環基、置換または非置換C−C12アルコキシ、および置換または非置換C−C12アシルからなる群から選択されるものであり、
Yは、置換または非置換C−C12アルキレン、置換または非置換C−C12アルケニレン、および置換または非置換C−C12アルキニレンからなる群から選択されるものであり、
Xは、O、SおよびNHからなる群から選択されるものであり、かつ
は、置換または非置換C−C30アルキル、置換または非置換C−C30アルケニル、置換または非置換C−C30アルキニル、および置換または非置換C−C30アルケニニルからなる群から選択されるものである]。
【0036】
式IIの好ましい化合物は、Yが置換または非置換C−Cアルキレン、より好ましくは、置換または非置換C−Cアルキレンである化合物である。メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレンおよびブチレンがさらに好ましい。非置換Cアルキレン鎖がさらに好ましい。
【0037】
より好ましいR、RおよびRは各々独立に、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、COH、COOアルキル、置換または非置換C−Cアルキル、および置換または非置換C−Cアシルからなる群から選択されるものである。一実施形態では、それらは総てHである。
好ましい実施形態では、XはNHである。
【0038】
本発明のより好ましい化合物は、Rが、
【化8】

である化合物である:
[式中、nは、1〜12、より好ましくは1〜8の整数であり、
mは、1〜10、より好ましくは1〜5の整数であり、
は、H、OH、NO、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、所望により置換されたC−C12アルコキシ、所望により置換されたC−C12アルカノイルオキシ、所望により置換されたC−C18 アロイルオキシ、所望により置換されたC−C16アラルカノイルオキシ、所望により置換されたC−C18アリール、アミノ、モノ−(C−C12アルキル)アミノ、ジ−(C−C12アルキル)アミノ、所望により置換されたグアニジン、所望により置換されたC−C12アルコキシカルボニル、所望により置換されたC−C11アリールオキシカルボニル、所望により置換されたC−C11アラルキルオキシカルボニル、カルバモイル、N−(C−C20アルキル)カルバモイル、およびN,N−ジ−(C−C20アルキル)カルバモイルからなる群から選択されるものであり、
点線は追加の一重結合または二重結合を表す]。
より好ましくは、二重結合がC−C間に位置し、三重結合がC−C間に位置する。
【0039】
本発明のより好ましい化合物は、以下のものである。
【化9】

【0040】
化合物Aは、迷路サンゴ(maze coral)メアンドリニダエ科メアンドリナ属メアンドリテス種31712の小サンプルから単離された海洋天然物である。このサンゴはカリブ海モタグア川付近の深度40mでスキューバダイビングにより採取したものであり[UTM/ NAD 1927(North American Datum 1927、区域15および16)X座標:362642;Y座標:1751928]、その説明は次の通りである:その群体は波(meandroid)形または扇(flabelloid)形の大きな構造体であり、石灰骨格中にポリープを有する。大きさは直径30cmに達し、淡黄色または褐色である。
【0041】
さらに、化合物Aはスキーム1の合成方法に従って合成された。
【化10】

スキーム1
【0042】
この方法は、以下の一連の重要な工程を含む。
a)オレイン酸メチルに対して、炭素−炭素二重結合の酸化切断を行い、対応するアルデヒド12を得た。
b)アルデヒド12を、標準的な文献の手順に従ってヨウ化ビニル13へ変換した。
c)ヨードアルケニル13と1−オクチンとの間でソノガシラ(Sonogashira)カップリング反応を行った後、塩基性媒体中でエニン14のエステル基を加水分解し、酸15を得た。
d)標準的な文献の条件下で、酸15と脱保護スペルミジン誘導体16との間のカップリング反応を行い、対応するアミド17を得た。
e)TiClの存在下で17を環化し、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン誘導体18を得た。
f)18とN,N−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−メチル−2−チオシュードウレア(N,N’-bis(tert-butoxycarbonyl)-2-methyl-2-thiopseudourea)とのカップリング反応の後、19のBoc基を脱保護し、化合物Aを得た。
【0043】
この化合物から合成有機化学の通常の手順により、種々の官能基または置換基を有する類似体が合成できる。例えば、加水分解、オゾン分解、シャープレス(Sharpless)エポキシ化、またはディールス・アルダー(Diels-Alder)反応などによる。さらに、類似体は、適切な中間体を用い、スキーム1に開示される手順を用いて合成することもできる。
【0044】
式IおよびIIの上記化合物の重要な特徴は、それらの生物活性、特にそれらの細胞傷害活性である。本発明において、発明者らは、細胞傷害活性を有する一般式IおよびIIの化合物の新規な医薬組成物、ならびにそれらの抗腫瘍剤としての使用が提供している。よって、本発明はさらに、本発明の化合物、その医薬上許容される塩、誘導体、プロドラッグまたは立体異性体と、医薬上許容される担体とを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0045】
医薬組成物の例としては、経口投与、局所投与または非経口投与用の固体(錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒など)または液体(溶液、懸濁液またはエマルション)組成物が挙げられる。
【0046】
本発明の化合物または組成物の投与は、静脈内注入、経口製剤、ならびに腹腔内および静脈内投与などの好適な方法によるものであり得る。本発明者らによれば、24時間までの注入時間が好ましく、より好ましくは2〜12時間、さらに好ましくは2〜6時間である。一晩入院せずに処置が行える短い注入時間が特に望ましい。しかし、注入は、必要であれば、12〜24時間、またはさらに長くてもよい。注入は、例えば、1〜4週間の好適な間隔で行えばよい。本発明の化合物を含有する医薬組成物は、例えば、リポソームもしくはナノスフェア封入体により、または徐放性処方物により、または他の標準的な送達手段により送達することができる。
【0047】
これらの化合物の厳密な用量は、特定の処方物、適用様式、および処置する特定の部位、宿主および腫瘍によって異なる。宿主の齢、体重、性別、食餌、投与時間、排泄率、宿主の状態、薬剤の組合せ、疾病の反応感受性および重篤度などの他の因子も考慮しなければならない。投与は最大許容量の範囲内で持続的または定期的に行うことができる。
【0048】
本発明の化合物および組成物は、他の薬剤とともに用いてよく、併用療法としてもよい。他の薬剤は同じ組成物の一部としてもよいし、あるいは同時にまたは時を異にして投与する別個の組成物として提供してもよい。
【0049】
これらの化合物の抗腫瘍活性としては、白血病、肺癌、結腸癌、腎臓癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、膵臓癌、子宮頸癌(cervix cancer)、肉腫および黒色腫が挙げられる。
【実施例】
【0050】
実施例1:サンゴおよび採取について
迷路サンゴ、メアンドリニダエ科メアンドリナ属メアンドリテス種31712のサンプルは、カリブ海モタグア川付近の深度40m[UTM/ NAD 1927(North American Datum 1927、区域15および16)X座標:362642;Y座標:1751928]でスキューバダイビングにより採取したものである。
【0051】
実施例2:化合物Aの単離
実施例1の冷凍検体(1646g)を摩砕し、イソプロパノールで2回十分抽出した。合わせた抽出液を濃縮し、粗生成物8.67gを得た。この物質をHO(500mL)に再懸濁させ、ヘキサン(3×500mL、収量1.18g)、EtOAc(3×500mL、収量87mg)、およびn−BuOH(2×250mL、収量394mg)で抽出した。
【0052】
半分取HPLC(SymmetryPrep C−18 7μm、7.8×150mmカラム、HO(0.05%TFA):CHCN(0.05%TFA)勾配、UV検出)を繰り返して、活性n−BuOH画分から化合物A(1.2mg)を単離した。
【0053】
化合物A:淡黄色油状物。HRFABMS m/z 430.3917 [M+H] (C2648の理論値 430.3910)。H(500MHz)および13C NMR(125MHz)表1参照。
【0054】
【表1】

【化11】

【0055】
実施例3:化合物Bの合成
【化12】

−78℃にて、CHCl:MeOH(1.0mL:0.1mL)中、化合物A(8.0mg、0.015mmol)の溶液にO流を、混合物が青色になるまで通した。この反応物に−78℃で10分間アルゴン流を通した後、ジメチルスルフィド(14μL、0.19mmol)を加えた。この反応物を23℃で30分間攪拌した後、真空下で溶媒を蒸発させて残渣を得、HPLC(SymmetryPrep C−18 7μm、7.8×150mmカラム、HO(0.1%TFA):CHCN(0.1%TFA)勾配、UV検出)により精製し、化合物B(2.8mg、46%)を得た。
H NMR(500 MHz,CDOD)δ3.51(m,4H),3.38(t,J=6.0 Hz,2H),2.55(t,J=7.8 Hz,2H),2.04(m,2H),1.75(m,2H),1.63(m,6H),1.38(m,14H).
13C NMR(125 MHz,CDOD)δ165.1,162.9,52.4,47.1,42.0,39.9,32.4,30.8,30.5,30.2,30.0,29.9,27.9,26.8,25.9,19.9.
HRMS(MALDI):324.2757[M+H](C1734の理論値 324.2763)。
【0056】
実施例4:化合物Aの合成
無水CHCl(100mL)中、オレイン酸メチル(10.0g、33.7mmol)の溶液を−78℃まで冷却し、この反応混合物に、その溶液がやや青色になるまで(10分)O流を通した。この混合物にアルゴンを通し、CHCl(100mL)中、PPh(19.7g、75.1mmol)の溶液をゆっくり加えた。この反応混合物を23℃まで温め、18時間攪拌した。溶媒を蒸発乾固させ、固体を冷ヘキサン(80mL)を用いて摩砕した。濾過したものを蒸発させ、黄色油状物を得た。この油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl:Hex 1:1、次いで、CHCl:EtO 1:1)により精製し、予測された2種のアルデヒド、ノナナール(4.80g、100%)と8−ホルミルオクタン酸メチル12(6.28g、100%)を、双方とも無色の油状物として得た。
H NMR(300 MHz,CDCl)δ9.76(s,1H),3.66(s,3H),2.41(t,J=7.3 Hz,2H),2.30(t,J=7.3 Hz,2H),1.61(m,4H),1.31(m,6H).
13C NMR(75 MHz,CDCl)δ202.4,173.8,51.1,43.5,33.7,28.7,28.6,28.5,24.5,21.7.
MS(APCI):187(M+1).Rf=0.2(CHCl).
【0057】
無水THF(300mL)中、(ヨードメチル)トリフェニルホスホニウムヨージド(39.89g、75.3mmol)の溶液に、NaHMDS(75.3mL、THF中1.0M、75.3mmol)を滴下し、23℃で10分間攪拌した。この反応混合物を−60℃で冷却し、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(15.3mL、126.4mmol)を滴下し、すぐに−78℃まで冷却した。このイリド溶液に、THF(290mL)中、8−ホルミルオクタン酸メチル12(5.6g、30.1mmol)の溶液を30分かけてゆっくり加え、−78℃で5分間攪拌し、23℃まで温めた。2時間後、この混合物をヘキサン(300mL)で希釈し、飽和NaCl水溶液(300mL)で洗浄した。水層をヘキサンで抽出し(3×300mL)、合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(CHCl:ヘキサン 1:1)を(Z)−メチル 10−ヨードデク−9−エノエート13(7.21g、77%)を無色の油状物として得た。
H NMR(300 MHz,CDCl)δ6.16−6.12(m,2H),3.66(s,3H),2.30(t,J=7.3 Hz,2H),2.13(m,2H),1.60(m,2H),1.40−1.20(m,8H).
13C NMR(75 MHz,CDCl)δ174.3,141.3,82.2,51.4,34.6,34.0,29.7,29.0,28.8,27.8,24.9.
MS(APCI):184(M−128).Rf=0.25(CHCl:ヘキサン,1:1).
【0058】
無水アセトニトリル:EtN(170mL:34mL)中、(Z)−メチル 10−ヨードデク−9−エノエート13(7.21g、22.9mmol)、Pd(PPhCl(1.56g、2.29mmol)、およびCuI(1.31g、6.88mmol)の懸濁液に、−20℃にて、アセトニトリル:EtN(50mL:10mL)中、1−オクチン(4.06mL、27.51mmol)の溶液を4時間かけて加えた。この反応混合物を23℃まで温めた。18時間後、HCl 1N(200mL)を加え、この混合物をCHCl(3×250mL)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(CHCl:ヘキサン、10:1〜1:1)により、(Z)−メチルオクタデク−9−エン−11−イノエート14(5.41g、81%)を無色の油状物として得た。
H NMR(300 MHz,CDCl)δ5.80(dt,J=10.3および7.3 Hz,1H),5.43(d,J=10.3 Hz,1H),3.66(s,3H),2.35−2.23(m,6H),1.61−1.40(m,6H),1.40−1.25(m,12H),0.89(br t,3H).
13C NMR(75 MHz,CDCl)δ174.3,142.4,109.4,94.5,77.3,51.4,34.1,31.3,29.9,29.1,29.0,28.9,28.8,28.7,28.5,24.9,22.5,19.5,14.0.
MS(APCI):293(M+1).Rf=0.30(CHCl:ヘキサン,1:1).
【0059】
23℃にて、メタノール(8.5mL)中、(Z)−メチルオクタデク−9−エン−11−イノエート14(2.26g、8.12mmol)の溶液に、10M NaOH(1.62mL、16.2mmol)の溶液を加えた。この溶液を3時間攪拌した後、10M NaOH(1.62mL、16.2mmol)を添加し、2時間後、新たに10M NaOH(1.62mL、16.2mmol)の添加を行った。最後の添加から2時間後に反応が完了し、溶媒を真空下で蒸発させた。この残渣をHOで希釈し、1N HClでpH=2まで酸性化した。水層をCHCl(2×200mL)で抽出し、合わせた有機層を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発乾固させ、(Z)−オクタデク−9−エン−11−イン酸15(2.0g、89%)を無色の油状物として得、これを精製せずに用いた。
H NMR(300 MHz,CDCl)δ5.79(dt,J=10.6および7.3 Hz,1H),5.42(br d,J=10.6 Hz,1H),2.37−2.24(m,6H),1.65−1.40(m,6H),1.40−1.23(m,12H),0.88(t,J=7.0 Hz,3H).
13C NMR(75 MHz,CDCl)δ179.9,142.4,109.4,94.5,77.3,34.0,31.3,29.9,29.0,28.9(2),28.8,28.7,28.5,24.6,22.6,19.5,14.0.
MS(APCI):279(M+1).Rf=0.40(CHCl:MeOH,10:1).
【0060】
THF(100mL)中、スペルミジン(3.0g、20.6mmol)の溶液に、0℃にて、THF(20mL)中、2−(Boc−オキシイミノ)−2−フェニルアセトニトリル(10.14g、20.6mmol)の溶液をゆっくり加えた。この反応混合物を0℃で1時間攪拌した後、真空下で溶媒を蒸発させた。残渣をシリカゲルで濾過し、CHCl:EtOAc 7:3、次いで、CHCl:MeOH 1:1で溶出し、4−(3−(tert−ブチルカルバメート)プロピル)ブチルカルバミン酸tert−ブチル16(5.3g、>100%)を無色の油状物として得た。
H NMR(300 MHz,CDOD)δ3.15(t,J=6.8 Hz,2H),3.08(t,J=6.8 Hz,2H),3.00(t,J=6.8Hz,4H),1.83(m,2H),1.69(m,2H),1.55(m,2H),1.44(bs,18H).
MS(APCI):346(M+1).Rf=0.18(CHCl:MeOH,8:2).
【0061】
23℃にて、CHCl(50mL)中、15(1.01g、3.65mmol)、および16(1.89g、5.47mmol)の溶液に、EtN(2.58mL、18.6mmol)およびベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(2.42g、5.47mmol)を加えた。この反応混合物を23℃で3時間攪拌した後、CHClで希釈し、1M HClおよび飽和NaCl水溶液で洗浄した。合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(CHCl:EtOAc 6: 1から3:1)により精製し、化合物17(2.14g、96%)を無色の油状物として得た。
H NMR(500 MHz,CDOD)δ5.79(dt,J=10.5および7.5 Hz,1H),5.40(bd,J=9.5 Hz,1H),3.34(m,4H),3.07−3.01(m,4H),3.35−2.25(m,4H),1.76−1.31(m,16H),1.43(s,28H),0.90(t,J=6.8 Hz,3H).
13C NMR(125 MHz,CDOD)δ175.5,175.2,158,142.9,110.7,95.0,78.4,32.4,30.9,30.5,30.4,30.3,30.1,29.9,29.9,29.5,28.8,23.6,20.1,14.4.
MS(APCI):628(M+23)
【0062】
23℃にて、無水キシレン(16mL)中、17(542mg、0.89mmol)の懸濁液にTiCl(98μL、0.89mmol)をゆっくり加えた。この混合物を165℃で1時間加熱した。この反応混合物を23℃まで冷却した後、MeOH(15mL)中、NaOH(270mg、6.75mmol)の溶液を加え、セライト(商標)で濾過し、MeOH(20mL)で洗浄した。濾液を濃縮乾固し、飽和NaCl水溶液(50mL)を加え、この混合物をCHCl(3×50mL)で抽出した。合わせた有機層を無水NaSOで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残渣を、シリカ−NHゲルでのクロマトグラフィー(CHCl:MeOH 16:1から1:1)にて精製し、(Z)−4−(2−(ペンタデク−6−エン−8−イニル)−5,6−ジヒドロピリミジン−1(4H)−イル)ブタン−1−アミン18(131mg、38%)を黄色油状物として得た。
H NMR(300 MHz,CDOD)δ5.80(dt,J=10.5および7.6,1H),5.41(d,J=10.3 Hz,1H),3.49(m,4H),3.37(m,2H),2.71(t,J=7.0 Hz,2H),2.54(t,J=7.8 Hz,2H),2.32(m,4H),2.02(m,2H),1.69−1.30(m,22H),0.92(t,J=6.8 Hz,3H).
13C NMR(75 MHz,CDCl)δ163.1,142.0,109.2,94.3,76.9,51.2,45.7,40.9,38.5,31.1,29.7,29.4,28.8,28.7,28.5,28.3,27.3,27.2,25.2,22.3,19.3,19.0,13.8(2つの13Cシグナルは認められなかった)
MS(APCI):388(M+1).Rf=0.32(Si−NH,CHCl:MeOH,8:1).
【0063】
23℃にて、無水THF(0.6mL)中、18(18mg、0.046mmol)の溶液に、1,3−ビス(tert−ブトキシカルボニル)−2−メチル−2−チオシュードウレア(20mg、0.069mmol)を加えた。この反応混合物を65℃で5時間加熱した後、23℃まで冷却した。真空下で蒸発させて残渣を得、シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl:MeOH 99:1〜9:1)により精製し、無色の油状物として19(7.8mg、28%)を得た。
H NMR(300 MHz,CDOD)δ5.79(dt,J=11.0および7.5,1H),5.41(m,1H),3.52(m,4H),3.41(t,J=6.5 Hz,2H),3.37(t,J=6.0 Hz,2H),2.55(t,J=7.5 Hz,2H),2.31(td,J=7.0および2.0,2H),2.27(t,J=7.0 Hz,2H),2.02(m,2H),1.72(m,2H),1.61(m,4H),1.52(s,9H),1.46(s,9H),1.49−1.28(m,8H),0.91(t,J=7.0 Hz,3H).
13C NMR(75 MHz,CDOD)δ165.0,164.5,157.7,154.2,142.8,110.8,95.1,84.5,80.4,78.4,52.5,47.1,40.9,39.9,32.5,32.4,30.9,30.1,30.0,29.59,28.6,28.55,27.9,27.1,25.8,23.7,20.1,20.0,14.4.
MS(APCI):630(M+1).Rf=0.10(CHCl:MeOH,94:6).
【0064】
エチレングリコール(2.2mL)中、19(22mg、3.65mmol)の溶液を200℃で2分間加熱した。この反応混合物を23℃まで冷却し、CHClと、3M NaOH(pH14)を数滴加えた飽和NaCl水溶液とで分液した。水性有機層をCHClで抽出し、合わせた有機層をNaSOで乾燥させ、濾過し、真空下で蒸発させ、31mgの粗化合物Aを得、HPLC(SymmetryPrep C−18 7μm、7.8×150mmカラム、HO(0.1%TFA):CHCN(0.1%TFA)勾配、UV検出)により精製して化合物A(6.1mg、32%)を得た、これは総てのパラメーターにおいて実施例2で得られたものと同じであった。
【0065】
実施例5:抗腫瘍スクリーニングの生物検定
これらのアッセイの最終目標は、細胞を供試サンプルに継続的に曝すことにより、「in vitro」腫瘍細胞培養物の増殖を阻害することである。
【0066】
細胞系
【表2】

【0067】
比色アッセイによる細胞増殖の阻害
細胞増殖および活性の定量測定に、スルホローダミンB(SRB)反応を用いた比色型アッセイを採用した(Philip Skehan et al. (1990), New colorimetric cytotoxicity assay for anticancer drug screening, J. Natl. Cancer Inst. 82:1107-1112に記載の手法に従う)。
【0068】
この形式のアッセイでは9mm径の96穴細胞培養マイクロプレートを用いる(Mosmann, 1983; Faircloth, 1988)。大部分の細胞系は、種々のヒト癌種由来のAmerican Type Culture Collection (ATCC)から得られる。
【0069】
細胞を、0.1g/Lペニシリンおよび0.1g/L硫酸ストレプトマイシンを添加したRPMI 1640 10%FBS中で維持した後、37℃、5%COおよび湿度98%で培養する。試験のため、密集前の培養物からトリプシンを用いて細胞を採取し、新鮮な培地に再懸濁させた後、プレーティングした。
【0070】
細胞を、96穴マイクロタイタープレートに195μLアリコート(aliquot)の培地中、1穴当たり5×10細胞で播種し、それらを薬剤フリー培地中で18時間増殖させることにより、プレート表面に付着させる。その後、サンプルを5μLアリコート中、DMSO:EtOH:PBS(0.5:0.5:99)に10〜10−8μg/mLの範囲で溶解させて加える。48時間曝した後、SRB法により抗腫瘍効果を測定する。すなわち、細胞を、50μLの冷50%(wt/vol)トリクロロ酢酸(TCA)を加えることにより固定し、4℃で60分インキュベートする。プレートを脱イオン水で洗浄し、乾燥させる。各マイクロタイターウェルにSRB溶液100μL(1%酢酸中、0.4%wt/vol)を加え、室温で10分間インキュベートする。結合しなかったSRBを、1%酢酸で洗浄することにより除去する。プレートを風乾し、結合した染色剤をトリスバッファーで可溶化する。光学密度を自動分光光度プレートリーダーにて、490nmmの単一波長で読み取る。
【0071】
3反復の穴からデータの平均+/−SDの値を算出する。細胞応答の数種のパラメーター:GI=増殖阻害、TGI=総増殖阻害(細胞傷害作用)およびLC=細胞死滅(細胞傷害性作用)を算出することができる。
【0072】
表2は 化合物A、Bおよび19の生物活性に関するデータを示す。
【0073】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Iの化合物、またはその医薬上許容される塩、互変異性体、誘導体、プロドラッグもしくは立体異性体:
【化1】

[式中、R、R、RおよびRは各々独立に、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、COH、COOアルキル、置換または非置換C−C12アルキル、置換または非置換C−C12アルケニル、置換または非置換C−C12アルキニル、置換または非置換C−C18アリール、置換または非置換C−C18複素環基、置換または非置換C−C12アルコキシ、および置換または非置換C−C12アシルからなる群から選択されるものであり、
Yは、置換または非置換C−C12アルキレン、置換または非置換C−C12アルケニレンおよび置換または非置換C−C12アルキニレンからなる群から選択されるものであり、
Xは、O、SおよびNRからなる群から選択されるものであり、
は、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、COH、COOアルキル、置換または非置換C−C12アルキル、置換または非置換C−C12アルケニル、置換または非置換C−C12アルキニル、置換または非置換C−C18アリール、置換または非置換C−C18複素環基、置換または非置換C−C12アルコキシおよび置換または非置換C−C12アシルからなる群から選択されるものであり、
は、置換または非置換C−C30アルキル、置換または非置換C−C30アルケニル、置換または非置換C−C30アルキニル、および置換または非置換C−C30アルケニニルからなる群から選択されるものであり、かつ、
点線は、Rが存在しない場合にはN−Cに、Rが存在しない場合にはC−Xに、またはRが存在しない場合にはC−Nに位置する任意の追加の結合を表す]
(ただし、下記式の化合物R:
【化2】

は除かれる)。
【請求項2】
下式IIを有する、請求項1に記載の化合物:
【化3】

[式中、R、R、R、RおよびYは請求項1で定義された通りであり、Xは、O、SおよびNHからなる群から選択されるものである]。
【請求項3】
Yが置換または非置換C−Cアルキレンであり、XがNHである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
、R、RおよびRが各々独立に、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、COH、COOアルキル、置換または非置換C−Cアルキルおよび置換または非置換C−Cアシルからなる群から選択されるものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
、RおよびRが各々独立に、H、OH、NO、NH、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、COH、COOアルキル、置換または非置換C−Cアルキル、および置換または非置換C−Cアシルからなる群から選択されるものである、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
が、
【化4】

である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物:
[式中、nは、1〜12の整数であり;
mは、1〜10の整数であり;
は、H、OH、NO、SH、CN、ハロゲン、C(=O)H、所望により置換されたC−C12アルコキシ、所望により置換されたC−C12アルカノイルオキシ、所望により置換されたC−C18アロイルオキシ、所望により置換されたC−C16アラルカノイルオキシ、所望により置換されたC−C18アリール、アミノ、モノ−(C−C12アルキル)アミノ、ジ−(C−C12アルキル)アミノ、所望により置換されていてもよいグアニジン、所望により置換されたC−C12アルコキシカルボニル、所望により置換されたC−C11アリールオキシカルボニル、所望により置換されたC−C11アラルキルオキシカルボニル、カルバモイル、N−(C−C20アルキル)カルバモイルおよびN,N−ジ−(C−C20アルキル)カルバモイルからなる群から選択されるものであり、
点線は追加の一重結合または二重結合を表す]。
【請求項7】
nが1〜8の整数であり、mが1〜5の整数であり、C−C間に二重結合が存在し、C−C間に三重結合が存在する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
下式を有する、請求項1または2に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩、互変異性体、誘導体、プロドラッグもしくは立体異性体。
【化5】

【請求項9】
下式を有する、請求項1または2に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩、互変異性体、誘導体、プロドラッグもしくは立体異性体。
【化6】

【請求項10】
下式を有する請求項1に記載の化合物、またはその医薬上許容される塩、互変異性体、誘導体、プロドラッグもしくは立体異性体。
【化7】

【請求項11】
トリフルオロ酢酸塩の形態である、先行するいずれかの請求項に記載の化合物。
【請求項12】
サンゴのメアンドリナ・メアンドリテスからの抽出および単離を含む、先行するいずれかの請求項で定義された化合物を得る方法。
【請求項13】
化合物R、またはその医薬上許容される塩、互変異性体、誘導体、プロドラッグもしくは立体異性体と、医薬上許容される希釈剤または担体とを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物を含んでなる医薬組成物。
【請求項14】
薬剤の製造における、化合物R、またはその医薬上許容される塩、互変異性体、誘導体、プロドラッグもしくは立体異性体を含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
薬剤の製造が癌の治療のためである、請求項14に記載の使用。

【公表番号】特表2008−540362(P2008−540362A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509372(P2008−509372)
【出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004117
【国際公開番号】WO2006/117197
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(505404208)ファルマ、マール、ソシエダード、アノニマ (6)
【氏名又は名称原語表記】PHARMA MRS,S.A.
【Fターム(参考)】