説明

抗菌剤としての3−シアノピロリジニル−フェニル−オキサゾリジノン

本発明は、式(I)(式中、R、R及びRが異なる意味を有する。)の新規なオキサゾリジノン化合物を提供する。調製法、医薬組成物、及び細菌感染の処置におけるその使用も提供される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陽性菌及びある種のグラム陰性菌に対して活性な抗微生物性オキサゾリジノン化合物であって、具体的には、グラム陽性菌のリネゾリド耐性(LNZ−R)株、及び、より具体的には、グラム陽性の病原性呼吸器系細菌に対し強力な活性を示す、抗菌性オキサゾリジノン化合物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
オキサゾリジノンは、グラム陽性の抗微生物剤である。オキサゾリジノンは、原核細胞リボソームの50Sサブユニットに結合し、タンパク質合成の開始複合体の形成を阻止する。これは、新規な作用様式である。他のタンパク質合成阻害剤は、ポリペプチドの伸長を阻止する、又はmRNAの誤読を引き起こす。米国特許第5688792号明細書に記載のリネゾリド(N−[[(5S)−3−[3−フルオロ−4−(4−モルホリニル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニル]メチル]アセトアミド)は、米国及びその他の国において、臨床用途に対し初めて承認された抗微生物性オキサゾリジノンである。リネゾリドの構造式は、
【化1】


である。
【0003】
リネゾリドの最小発育阻止濃度(MIC)は、試験様式、実験室、及び低細菌生存率(thin hazes of bacterial survival)に起因する有意性によって、わずかに変化するが、感受性分布は狭く、連鎖球菌(streptococci)、腸球菌(enterococci)及びブドウ球菌(staphylococci)に対して、MIC値が0.5から4μg/mLの一頂型(unimodal)となることを、すべての研究者が見出している。メチシリン耐性ブドウ球菌及びバンコマイシン耐性腸球菌を含め、他の抗生物質に耐性のあるグラム陽性球菌に対しては、完全活性が保持されている。モラクセッラ(Moraxella)、パスツーレッラ(Pasteurella)及びバクテロイデス属種(Bacteroides spp)に対するMICは2〜8μg/mLであるが、内因性の排出活性、及びグラム陰性菌の外膜細胞によって示される取り込みの結果、他のグラム陰性菌は耐性である。リネゾリドは、以下の感染症、すなわち併発性菌血症を含むバンコマイシン耐性エンテロコックスファエキウム(Enterococcus faecium)感染症、院内肺炎、複雑性皮膚及び皮膚組織感染症、併発性菌血症を含む市中肺炎、糖尿病性足感染症、及び非複雑性皮膚及び皮膚組織感染症の成人患者の処置が適応とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不運なことに、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(LNZ−R432)、ハエモピルスインフルエンザエ(Haemophylus influenzae)(ATCC49247)、バクテロイデスフラギリス(Bacteroides fragilis)(ATCC25285)、モラクセッラカタラリス(Moraxella catarrhalis)(HCl−78)、及びエンテロコックスファエキウム(LNZ−R)などのある種のグラム陽性菌は、リネゾリドに対して重要な耐性を示す。
【0005】
微生物感染症の処置に対し、他のオキサゾリジノンも公知である。例えば、WO2005/054234には、多剤耐性株、例えばリネゾリド耐性株に起因する感染症を含め、グラム陽性又はグラム陰性菌の感染症を処置又は予防するための、ピペリジノで置換されたフェニルオキサゾリジノンが記載されている。
【0006】
国際特許出願WO96/13502には、多置換のアゼチジニル部位又はピロリジニル部位を有するフェニルオキサゾリジノンが開示されている。これらの化合物は有用な抗微生物剤であり、これらは、多剤耐性のブドウ球菌(staphylcocci)、腸球菌(enterococci)、及び連鎖球菌(streptococci)に対してある程度の活性があることを含めて、いくつかのヒト及び動物病原体、特に、好気性グラム陽性菌に対して有効である。リネゾリド耐性グラム陽性菌に対してある程度の活性を有するある種のオキサゾリジノンが既知であるが、これらの株の一部は、敗血症及び敗血症ショックなどの重症な、且つ、時として致死性の感染症の原因となるので、これらの株に対して活性な新規なオキサゾリジノン化合物が継続的に必要とされている。グラム陽性病原性呼吸器系細菌、例えば肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ハエモピルスインフルエンザエ(Haemophylus influenzae)及びモラクセッラカタラリス(Moraxella catarrhalis)などに対して改善された薬剤も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、本出願の化合物は、強力な活性を有する抗微生物剤であり、LNZ−Rグラム陽性菌、及び、より具体的にはグラム陽性の病原性呼吸器系細菌に対して関連活性を示す。リネゾリドに対して差別化される、本発明の化合物の特有の性質により、リネゾリドを使用して適切に処置することができない重症な感染症における、その使用可能性を示す。
【0008】
第一態様では、本発明は、遊離体、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、若しくは光学異性体の形態の式(I)
【化2】


[式中、
及びRは、同一又は異なる基であり、水素及びフッ素から独立して選択され、
は、フッ素、ヒドロキシ及びORから選択される基によって、場合により置換された直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル基であり、
は、直鎖の又は分岐の(1〜6C)アルキル基である。]
の化合物に言及する。
【0009】
第二態様では、本発明は、遊離体、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、若しくは光学異性体の形態の本発明の第一態様で定義した通りの式(I)の化合物を調製する方法であって、
b)式(II)
【化3】


(式中、R及びRは、上記で定義した通りであり、Rは直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル、及び最大3つの直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル基によって場合によりフェニル置換されているベンジルから選択される。)の中間体を、式(III)
【化4】


(式中、Rは上記で定義した通りであり、Rは直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)の中間体と反応させるステップと、
(ii)遊離体又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、若しくは光学異性体の形態の得られた式(I)の化合物を回収するステップ
とを含む上記方法に言及する。
【0010】
第三態様では、本発明は、治療有効量の、本発明の第一態様による一般式(I)の化合物を、適量の医薬添加剤又は担体と一緒に含む医薬組成物に言及する。
【0011】
第四態様では、本発明は、医薬として使用するための、本発明の第一態様による式(I)の化合物に言及する。
【0012】
第五態様では、本発明は、動物又はヒトにおける細菌感染症の処置用の医薬を製造するための、本発明の第一態様による式(I)の化合物の使用に言及する。本態様を、細菌感染症の処置に使用するために、本発明の第一態様による式(I)の化合物として製剤化してもよい。
【0013】
本発明の別の目的は、治療有効量の式(I)の化合物、遊離体、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、若しくは光学異性体の形態で投与することにより、細菌感染症を患う、ヒトを含む動物を処置するための新規な方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、臭化水素酸、塩化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、アジピン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルタミン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、シュウ酸、ピバル酸、プロピオン酸、p−トルエンスルホン酸、コハク酸、酒石酸などの有機酸、及び無機酸から形成される任意の塩、並びに、アルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩、特に、ナトリウム及びカリウム塩、メチルアミン、エチルアミン、トリメチルアミンなどの低級アルキル化アミンを含むアンモニウム塩及びアミンの塩、エタノールアミン及びジエタノールアミンなどのヒドロキシ低級アルキルアミン、モルホリン及びピペラジンなどの複素環式アミンなどの、有機塩基及び無機塩基から形成される任意の塩を包含する。
【0015】
好ましい実施形態では、本発明は、本発明の第一態様による化合物に言及し、式中、Rはフッ素であり、Rはフッ素及び水素から選択され、Rはメチルである。
【0016】
好ましくは、本発明の第一態様による化合物は、
N−{(5S)−3−[3−フルオロ−4−(3−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド;
N−{(5S)−3−[3,5−ジフルオロ−4−(3−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド;
N−{(5S)−3−[3−フルオロ−4−(3(R)−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド;
N−{(5S)−3−[3,5−ジフルオロ−4−(3(R)−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド;
N−{(5S)−3−[3−フルオロ−4−(3(S)−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド;及び
N−{(5S)−3−[3,5−ジフルオロ−4−(3(S)−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド
からなる群から選択される。
【0017】
一般式(I)の化合物は、
(i)式(II)
【化5】


(式中、R及びRは、上記で定義した通りであり、Rは直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル、及び最大3つの直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル基によって場合によりフェニル置換されているベンジルから選択される。)の中間体を、式(III)
【化6】


(式中、Rは上記で定義した通りであり、Rは直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)の中間体と、不活性溶媒中及び強塩基性触媒存在下で反応させるステップと、
(ii)遊離体又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、若しくは光学異性体の形態の式(I)の得られた化合物を回収するステップ
により調製することができる。
【0018】
好ましくは、Rはベンジルであり、Rはメチルであり、Xは臭素である。
【0019】
ステップ(i)の不活性溶媒は、好ましくは非プロトン性溶媒である。適切な非プロトン性溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、又はジメトキシエチルエーテルなどの極性エーテル、又は、例えば、ジメチルホルムアミドなどのアミド、又は、例えば、N−メチルピロリドンなどのラクタム、及びそれらの混合物である。適切な溶媒は、このような非プロトン性溶媒、及び、例えば、メタノール又はエタノールなどのアルコールの混合物でもある。
【0020】
強塩基性触媒の例は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムなどの水酸化物、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、及びカリウムtert−ブトキシドなどのアルコキシド、tert−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、及びメチルリチウムなどのアルキルリチウム、リチウムジイソプロピルアミドなどのジアルキルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、及びナトリウムヘキサメチルジシラジドなどのジシリルアミド、並びに水素化リチウム、水素化ナトリウム、及び水素化カリウムなどの水素化物を含む。
【0021】
ステップ(ii)で得られた化合物を回収するための有用な方法は、当分野の技術者に公知の、結晶化法及びクロマトグラフィー法、キラル固定相を使用するクロマトグラフィー分離によるラセミ体の分割、並びに、分別晶出を含む方法などの従来の方法を含む。特に、この分別晶出は、個々の光学異性体、例えば、キラル酸(例えば、(+)−酒石酸、(−)−酒石酸、又は(+)−10−カンファースルホン酸)と形成されたジアステレオマー塩の分離を含む。
【0022】
本発明の化合物は、いくつかのヒト及び動物微生物に対して有効な、有用な抗微生物剤である。好ましい実施形態では、本発明の化合物は、リネゾリド耐性株によって生じる感染症に対して有効である。別の好ましい実施形態では、本発明の化合物は、グラム陽性の病原性呼吸器系細菌によって生じる感染症に対して有効である。これらの微生物のいくつかの非限定的な例は、黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖球菌、ハエモピルスインフルエンザエ、バクテロイデスフラギリス、モラクセッラカタラリス、及びエンテロコックスファエキウムである。例4及び6に例示されるように、本発明の化合物は、リネゾリド及び構造的に最も近い最新の置換オキサゾリジノンのどちらよりも、リネゾリド耐性株に対して活性である。これらは、リネゾリド及び構造的に最も近い最新の置換オキサゾリジノンのどちらよりも、グラム陽性の病原性呼吸器系細菌に対しても有効である。
【0023】
本発明の化合物は、医薬組成物として、標準製薬法(standard pharmaceutical practice)に準拠して、通常製剤化され得る。
【0024】
本発明の医薬組成物は、処置が望まれる病態に対する標準的な方法、例えば、経口、腸管外、吸入、直腸、経皮、又は局所投与などによって投与されてよい。このような目的のために、本発明の化合物は、当分野で公知の方法によって、例えば、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、水性又は油性溶液剤又は懸濁剤、乳剤、分散性散剤、吸入液剤、坐剤、軟膏剤、クリーム剤、ドロップ剤、及び注射用無菌水性又は無菌油性溶液剤又は懸濁剤等の形態で製剤化されてよい。医薬組成物は、適切な固体又は液体担体又は賦形剤、或いは静脈内注射、皮下注射又は筋内注射に適した懸濁剤又は溶液剤を形成するための適切な無菌媒体中に、着香剤、甘味剤などを含んでもよい。このような組成物は、通常、1から40重量%、好ましくは1から10重量%の活性化合物を含有し、組成物の残りは、薬学的に許容される担体、賦形剤、溶媒等である。
【0025】
式(I)の化合物は、0.1から100mg、好ましくは1から50mg/体重/1kg/日の量で投与される。本発明の化合物及び組成物は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によって引き起こされる院内肺炎、併発性菌血症を含む市中肺炎、ペニシリン耐性及び感受性肺炎連鎖球菌、糖尿病性足感染症、並びに皮膚及び皮膚組織感染症、並びに本発明に記載した化合物に対して感受性のある細菌によって引き起こされる、他のすべての感染症などの状態の処置に有用である。本発明の化合物は、ヒト又は動物のいくつかの病原体、バンコマイシン耐性微生物、メチシリン耐性微生物、及びLNZ−R微生物を含む臨床分離株に対して有効である。
【0026】
明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、「含む(comprise)」という語、及び「含んでいる(comprising)」などの語の変形は、他の技術的特徴、添加物、成分又はステップを排除する意図はない。本発明の追加の目的、利点、及び特徴は、明細書の吟味時に、当分野の技術者には明らかになる、又は本発明の実施により習得され得る。以下の実施例は、例示として提供され、本発明を制限する意図はない。
【実施例】
【0027】
(例1)N−{(5S)−3−[3−フルオロ−4−(3−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド
a)3−フルオロ−4−(3−シアノピロリジン−1−イル)ニトロベンゼン
【化7】


3−カルボニトリルピロリジン(133mg)及び炭酸カリウム(268mg)をジメチルホルムアミド(1mL)に溶解し、3,4−ジフルオロニトロベンゼン(198mg)を加えた。混合物を窒素下、室温で20時間撹拌した。ジクロロメタン(DCM)を反応混合物に加え、水、ブラインで洗浄し、乾燥した(硫酸マグネシウム)。残渣をカラムクロマトグラフィー(11gのシリカゲル、DCM)によって精製し、表題化合物249mgを得た(収率=80%)。
HPLC(t、%):8.04分、100%。
MS(ESI)m/z=236(M+1)
H NMR(400MHz,δ,ppm,CDCl):2.38(2H,m)、3.27(1H,m)、3.67(1H,m)、3.77(1H,m)、3.89(2H,m)、6.57(1H,t,J=9.2Hz)、7.92(2H,m)
【0028】
b)3−フルオロ−4−(3−シアノピロリジン−1−イル)フェニルアミン
【化8】


3−フルオロ−4−[3−シアノピロリジニル]ニトロベンゼン(220mg)をエタノール(20mL)に溶解し、塩化スズ(SnCl.2H0、1.5g)で処理した。混合物を撹拌し、窒素下で6時間加熱還流した。炭酸水素ナトリウム水溶液及びDCMを加え、有機層を分離し、水層をDCMで抽出した。あわせた有機層を乾燥して濃縮し、表題生成物を得た(141mg、収率=73%)。
HPLC(t、%):6.41分、100%。
MS(ESI)m/z=206(M+1)
H NMR(400MHz,δ,ppm,CDCl):2.68(2H,m)、3.21(1H,m)、3.30(2H,m)、3.35(1H,m)、3.49(1H,m)、6.45(2H,m)、6.59(1H,t,J=8Hz)
【0029】
c)3−フルオロ−4−(3−シアノピロリジン−1−イル)フェニルカルバミン酸ベンジルエステル
【化9】


3−フルオロ−4−[3−シアノピロリジニル]フェニルアミン(120mg)をアセトン(4mL)に溶解し、0℃に冷却した。水(2mL)中の炭酸水素ナトリウム(196mg、4当量)、次いで、クロロギ酸ベンジル(199mg、2当量)を30分かけて加えた。混合物を撹拌し、温度を3時間かけて周囲温度まで上昇させた。DCMを加えて、有機層を分離し、水、ブラインで洗浄した。あわせた有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥し、濃縮した。残渣を、DCM及びDCM/MeOHを98/2で溶出させたカラムクロマトグラフィー(10gのシリカゲル)によって精製し、表題生成物185mgを得た。(収率=93%)。
HPLC(t、%):9.06分、100%。
MS(ESI)m/z=340(M+1)
H NMR(400MHz,δ,ppm,CDCl):2.31(2H,m)、3.17(1H,m)、3.43(2H,m)、3.54(1H,m)、3.67(1H,m)、5.17(2H,s)、6.50(1H,m)、6.61(1H,t,J=9Hz)、6.90(1H,m)、7.38(5H,m)
【0030】
d)N−{(5S)−3−[3−フルオロ−4−(3−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド
【化10】


350μLのジメチルホルムアミド(DMF)中の175mgの3−フルオロ−4−[3−シアノピロリジニル]−フェニルカルバミン酸ベンジルエステルの溶液に、1Mのリチウムtert−ブトキシドのTHF溶液1.5mLを加え、室温で30分撹拌した。42μLのメタノール、及び350μLのDMF中の246mgの(S)−N−(3−ブロモ−2−アセトキシプロピル)アセトアミドの溶液を加え、室温で2日間放置し、この時点でHPLCは、30%の転化率を示した。同量のリチウムtert−ブトキシドのTHF溶液、メタノール、及び(S)−N−(3−ブロモ−2−アセトキシプロピル)アセトアミドを加え、反応混合物を室温でさらに2日間撹拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を反応溶液に加え、分離した有機層を水、ブラインで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を蒸発させて、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(DCM、メタノールで極性増加)によって精製し、表題化合物113mgを得た(収率=63%)。
HPLC(t、%):6.58分、100%。
MS(ESI)m/z=347(M+1)
H NMR(400MHz,δ,ppm,DMSO):2.16(1H,m)、2.30(1H,m)、3.38(4H,m)、3.66(1H,dd,J=6.8,8.8Hz)、4.05(1H,t,J=9Hz)、4.67(1H,m)、6.83(1H,t,J=9Hz)、7.11(1H,dd,J=2.4,9Hz)、7.43(1H,dd,J=2.8,16Hz)
【0031】
(例2)N−{(5S)−3−[3,5−ジフルオロ−4−(3−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド
【化11】


3−カルボニトリルピロリジンを用いて、3,4,5−トリフルオロニトロベンゼンのアルキル化から始め、例1の化合物と同様の方法で得た。
HPLC(t、%):6.94分、92%。
MS(ESI)m/z=365(M+1)
H NMR(400MHz,δ,ppm,CDCl):1.82(3H,s)、2.25(2H,m)、3.13(1H,q,J=7.2Hz)、3.58(7H,m)、3.96(1H,t,J=9.2Hz)、4.75(1H,m)、6.04(1H,NH)、7.06(2H,d,J=10.8Hz)
【0032】
(例3)医薬組成物
以下は、ヒト又は動物において抗微生物的に使用するための、式(I)の化合物又は薬学的に許容されるその塩を含む典型的な医薬組成物を例示する。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】

【0033】
緩衝液、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール若しくはエタノールなどの薬学的に許容される共溶媒又は錯化剤が、製剤化を補助するために使用されてもよい。
【0034】
上記製剤は、製薬分野において周知の従来の手順により調製されてもよい。錠剤1〜3は、従来の手段によって腸溶性被膜を施されてもよく、例えば、酢酸フタル酸セルロースの被膜を形成する。
【0035】
(例4)リネゾリドと比較した抗菌活性
MICは、米国臨床検査標準委員会(The National Committee for Clinical Laboratory Standards)(NCCLS)、第5版承認基準M7−A5、2001年、Wayne、PA、米国に準拠した、標準微量希釈法を用いて決定した。化合物はすべて、関連性のある異なる感受性及び抵抗性の特異性(specifications)を示す、グラム陽性菌及びグラム陰性菌について試験した。使用した微生物は、実験室参照細菌、及び臨床分離株から選択した。試験濃度は、96ウェルマイクロタイタープレート中、0.06μg/mLから128μg/mLの、2段希釈とした。
【0036】
MICは、嫌気性株については、補充したブルケッラ(Brucella)血液培地中で、好気性細菌については、ミューラーヒントン培養培地(陽イオン調整)で決定した。
【0037】
試験化合物は、DMSOに溶解し、各株群に対する特定の要件に準じて、異なる溶媒を用いて、2560μg/mLまで希釈した。細菌を含有した、密封した96ウェルマイクロタイタープレートを、微生物の性質に応じて、異なる実験室条件でインキュベートした。次に、好気性細菌は、35℃で16〜24時間インキュベートし、いわゆるモラクセッラカタラリス及び肺炎連鎖球菌などの難培養性細菌は、5%のCOを含む微好気性環境下(Anaerocult C、MERCK)、35℃で20〜24時間インキュベートした。これらの試験結果を、表1に示す。
【0038】
【表6】


表1のMIC値は、細菌増殖を阻害するには、例1及び2の化合物は、リネゾリドほど高い濃度を必要としないことを示す。したがって、先の結果は、リネゾリド耐性株に対し、本発明の化合物がより活性であることを示す。
【0039】
(比較例5)(S)−N−[[3−[4−(3−ヒドロキシピロリジニル)−3−フルオロフェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニル]メチル]アセトアミド
【化12】


国際特許出願WO9613502の50頁、例10に開示の方法に従って得た。
【0040】
(例6)比較例5の化合物との抗菌活性の比較
この例では、リネゾリド耐性株、及びグラム陽性の病原性呼吸器系細菌に対する本発明の例1の化合物の抗菌活性を、例5の参照化合物と比較する。例5の化合物は、構造的に最も近い最新のオキサゾリジノンであり、このオキサゾリジノンにおいて、ピロリジン環はシアノ基の代わりにヒドロキシル部位を含有する。
【0041】
両化合物の抗菌活性を比較するために、例4に記載したものと同一の方法によってMICを決定し、且つ、試験した試料も、例4で示したように調製した。
【0042】
結果が表2にまとめられている。
【表7】


表2のMIC値は、例5の化合物に関しては、細菌増殖を阻害するには、例1の化合物は、より高い濃度を必要としないことを示す。
【0043】
したがって、例1の化合物は、リネゾリド耐性株、及びグラム陽性の病原性呼吸器系細菌を含めて、試験したすべての細菌種に対して、抗菌剤としてはるかに有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離体、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、若しくは光学異性体の形態の式(I)
【化1】


[式中、
及びRは、同一又は異なる基であり、水素及びフッ素から独立して選択され、
は、フッ素、ヒドロキシ及びORから選択される基によって、場合により置換された直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル基であり、
は、直鎖の又は分岐の(1〜6C)アルキル基である。]
の化合物。
【請求項2】
がフッ素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がフッ素及び水素から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
N−{(5S)−3−[3−フルオロ−4−(3−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド;
N−{(5S)−3−[3,5−ジフルオロ−4−(3−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド;
N−{(5S)−3−[3−フルオロ−4−(3(R)−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド;
N−{(5S)−3−[3,5−ジフルオロ−4−(3(R)−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド;
N−{(5S)−3−[3−フルオロ−4−(3(S)−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド;及び
N−{(5S)−3−[3,5−ジフルオロ−4−(3(S)−シアノピロリジン−1−イル)フェニル]−2−オキソ−5−オキサゾリジニルメチル}アセトアミド
からなる群から選択される、請求項1から4までのいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
遊離体、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、若しくは光学異性体の形態の式(I)の化合物を調製する方法であって、
(i)式(II)
【化2】


(式中、R及びRは、上記で定義した通りであり、Rは直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル、及び最大3つの直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル基によって場合によりフェニル置換されているベンジルから選択される。)の中間体を、式(III)
【化3】


(式中、Rは上記で定義した通りであり、Rは直鎖又は分岐の(1〜6C)アルキル基であり、Xはハロゲン原子である。)の中間体と反応させるステップと、
(ii)遊離体又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、若しくは光学異性体の形態の得られた式(I)の化合物を回収するステップと
を含む上記方法。
【請求項7】
がベンジル、Rがメチル、及びXが臭素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
治療有効量の、請求項1から5までのいずれか一項に記載の式(I)の化合物を、適量の医薬添加剤又は担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項9】
医薬として使用するための、請求項1から5までのいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
動物又はヒトにおける、細菌感染症の処置用の医薬を製造するための、請求項1から5までのいずれか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項11】
細菌感染症の処置に使用するための、請求項1から5までのいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項12】
細菌感染症が、リネゾリド耐性株によって生じる感染症である、請求項11に記載の式(I)の化合物。
【請求項13】
細菌感染症が、グラム陽性の病原性呼吸器系細菌によって生じる感染症である、請求項11に記載の式(I)の化合物。

【公表番号】特表2011−526589(P2011−526589A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515413(P2011−515413)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058125
【国際公開番号】WO2010/000703
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(501108452)フエルレル インターナショナル,ソシエダッド アノニマ (39)
【Fターム(参考)】