説明

抗菌基質

抗菌剤を含有するポリマー産物を調製する方法であって、分散性ポリマーと、繊維化ポリマーと、1または複数の抗菌剤とを含むディスパージョンをエレクトロスピニングすることを含む方法が提供される。エレクトロスピニングした材料を加熱して、溶媒および繊維化ポリマーを除去し、その中に抗菌剤を組み込んだ不織布ポリマー材料をもたらす。材料は、例えば、不織布シート、不織布チューブ、または不織布被覆の形態でありうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、2010年10月14日を出願日とする米国仮出願第61/393,128号に基づき、これに対する優先権を主張する。
【0002】
本出願は、ポリマー基質への抗菌剤の組込み、およびこれにより作製される材料を対象とする。
【背景技術】
【0003】
抗菌剤は、材料に、微生物の増殖を防止および/または阻害する能力を賦与するので、各種の材料への抗菌剤の組込みは有益である。各種の抗菌剤が知られている。例えば、銀は、多様な微生物(すなわち、細菌、ウイルス、酵母、および真菌)の細胞における求核基への銀イオンの不可逆的な結合を介して作用すると考えられる、スペクトルの広範な抗菌剤である。この結合が細胞の増殖を破壊する結果、微生物の死がもたらされる。したがって、銀(例えば、特定の銀および銀被覆)および各種の銀化合物(例えば、イオン性銀化合物)が、各種の創傷ケア産物に組み込まれている。それがイオン形態へと転換されうる場合には、銀金属を用いることができる。例えば、水溶液と接触した銀は、酸化銀を形成し、これは、水中で若干可溶性であり、銀イオンを形成しうる。
【0004】
銀および銀化合物に加え、無機ナノ粒子もまた、抗菌剤として、多大な関心を惹き起こしている。ナノ構造材料は、とりわけ、生物学的適用および薬学的適用において、特異的な作用過程および選択性を達成する可能性を有する。特定の無機ナノ粒子は、それらのナノスケールサイズのために、新規で改善された物理的特性、化学的特性、および生物学的特性、ならびに新規で改善された物理的機能性、化学的機能性、および生物学的機能性を呈示することが示されている。例えば、各種の金属酸化物によるナノ粒子は、良好な抗菌活性を有することが示されている。抗菌特性を呈示することが報告されている特定の無機粒子には、ナノ銀、ナノ材料の各種の酸化物および硫化物(二酸化チタン、硫化セレニウム、酸化カドミウム、および酸化亜鉛を含めた)が含まれる。このようなナノ粒子の抗菌作用方式は、ヒドロキシル基を介して細胞組織(cellular fabric)を標的とすることである可能性があり、これにより、透過性を増大させ、代謝、老廃物の排泄、および組織の安定性を破壊する。場合によって、金属酸化物によるナノ粒子は、費用という考慮すべき点で、ナノ銀より好ましい場合がある。さらに、酸化カドミウムおよび二酸化チタンはいずれも、非毒性であり、高温に対する曝露下で化学的に安定であり、光触媒性酸化が可能である。
【0005】
ポリ(テトラフルオロエチレン)、すなわち、PTFEとは、高温および腐食性環境に対する例外的な耐性をもたらす熱可塑性物質である。不活性かつ非毒性であるため、PTFEは、医用インプラントに用いられることが多い。PTFEは、多数の適用に有用であるが、従来の溶融ポリマー法では加工が困難である。PTFEを加工しうる1つの方法は、材料をペーストとして押し出し、次いで、このペーストを、各種の形態へと引き延ばして、繊維、リボン、布、またはチューブを作製することを介する。このようにして作製されるPTFEを「引き延ばしPTFE」または「ePTFE」と称する。PTFEを加工するさらなる方法の1つは、PTFEディスパージョンを繊維形成ポリマーと組み合わせることである。次いで、この混合物をエレクトロスピニングして、ナノ繊維に基づく不織布、不織布被覆、不織布バット、または不織布複合材料を作製することができる。これらのPTFEの形態は一般に、少なくとも部分的に、高温で焼結させて、所望の機械的特性を発生させる。ePTFEおよびエレクトロスピニングしたPTFEのいずれについても、高表面積を伴う多孔性構造が創出される。
【0006】
静電スピニングは、例えば、それらの各々が参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Formhalsによる米国特許第2,158,416号;Martinらによる同第4,043,331号;Martinらによる同第4,044,404号;Simmらによる同第4,143,196号;Guignardによる同第4,287,139号;Bornatによる同第4,323,525号;Loganによる同第4,432,916号;Bornatによる同第4,689,186号;およびKleinmeyerらによる同第6,641,773号;ならびにAnneauxらによる米国特許出願公開第2010/0193999号において例示されている通り、既知の工程である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】Formhals、米国特許第2,158,416号
【特許文献2】Martinら、米国特許第4,043,331号
【特許文献3】Martinら、米国特許第4,044,404号
【特許文献4】Simmら、米国特許第4,143,196号
【特許文献5】Guignard、米国特許第4,287,139号
【特許文献6】Bornat、米国特許第4,323,525号
【特許文献7】Logan、米国特許第4,432,916号
【特許文献8】Bornat、米国特許第4,689,186号
【特許文献9】Kleinmeyer、米国特許第6,641,773号
【特許文献10】Anneauxら、米国特許出願公開第2010/0193999号
【特許文献11】Chungら、米国特許第6,743,273号
【特許文献12】Greenら、米国特許第7,815,427号
【特許文献13】Ignatiousら、米国特許出願公開第2003/0017208号
【特許文献14】Petrasら、米国特許出願公開第2008/0307766号
【特許文献15】Greenら、米国特許出願公開第2009/0127747号
【特許文献16】Greenら、米国特許出願公開第2009/0199717号
【特許文献17】Branhamら、米国特許出願公開第2010/0018641号
【特許文献18】Pepperら、米国特許出願公開第2011/0111012号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
医用適用および他の適用においてPTFEが広範に適用されているため、抗菌剤をPTFE内に組み込んで、材料に抗菌特性を賦与すれば有用であろう。PTFE製品の外側を、イオン性銀または銀金属と共に浸漬するか、またはこれらでコーティングすることにより、有機抗菌剤および無機抗菌剤のいずれもが、PTFE製品内に既に組み込まれている。しかし、このようなコーティングは適用が困難であり、産物寿命も比較的短い。したがって、抗菌剤をPTFE内に有効かつ容易に組み込みうる手段が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ディスパージョンの形態で用意することが可能なポリマー(例えば、PTFE)に1また複数の抗菌剤を組み込む方法、およびこれにより作製される、抗菌剤を含有するポリマー産物に関する。特定の実施形態では、抗菌剤が、作製される製品の一部となるように、方法が、加工(例えば、エレクトロスピニング)時に抗菌剤を材料へと組み込むことを含む。
【0010】
特定の態様では、本発明は、1または複数の抗菌剤をその中に組み込んだ不織布材料を調製する方法を提供する。例えば、方法は、オリフィスベースのスピニング装置または開放浴液槽、遊離表面ベースのスピニング装置を用いて、抗菌剤を含むディスパージョンを静電スピニングし(すなわち、エレクトロスピニングまたは「eスピニング」し)、その後、結果として得られる材料を加熱することを含みうる。このような技法のための例示的な装置には、ワイヤー、シリンダー、スパイク、シャープエッジ、または類似の形態のスピニング電極が含まれるがこれらに限定されない。
【0011】
特定の態様では、本発明は、1または複数の抗菌剤を含む不織布マットを作製する方法であって、フッ素化ポリマー、繊維化ポリマー、1または複数の抗菌剤、および溶媒を含むディスパージョンを用意することと;前記ディスパージョンをエレクトロスピニングして、マット前駆体をもたらすことと;不織布マットを形成する目的で、前記マット前駆体を、前記溶媒および前記繊維化ポリマーを除去するのに十分な温度で十分な時間にわたり加熱することとを含む方法を提供する。一部の実施形態では、前記エレクトロスピニングすることが、電荷源、および前記電荷源から所定の距離だけ離れた所に設けた標的を含む装置を用意することと;前記電荷源において第1の電荷を創出し、かつ前記標的において反対の電荷を創出する電圧源であって、前記電荷源との接触により前記ディスパージョンが静電的に帯電される電圧源を用意することと;前記静電的に帯電したディスパージョンを前記標的上に収集することとを含む。
【0012】
一部の態様では、本発明は、1または複数の抗菌剤を含むPTFEマットを作製する方法であって、PTFE、繊維化ポリマー、1または複数の抗菌剤、および溶媒を含むディスパージョンを用意することと;電荷源と、前記電荷源から一定の距離離れて設けた標的とを含む装置を用意することと;前記電荷源において第1の電荷を創出し、かつ前記標的において反対の電荷またはアースを創出する電圧源であって、前記電荷源との接触により前記ディスパージョンを静電的に帯電させる電圧源を用意することと;前記静電的に帯電したディスパージョンを前記標的上に収集して、マット前駆体を形成することと;前記マット前駆体を加熱して、前記溶媒および前記繊維化ポリマーを除去し、これにより、前記PTFEマットを形成することとを含む方法を提供する。
【0013】
特定の実施形態では、1または複数の抗菌剤が、銀、銀化合物、金属酸化物、金属硫化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される。例えば、1または複数の抗菌剤が、銀、銀化合物、金属酸化物、金属硫化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される。例えば、1または複数の抗菌剤が、銀ナノ粒子、二酸化チタン、硫化セレニウム、酸化カドミウム、および/または酸化亜鉛を含みうる。1または複数の抗菌剤の含量は変化させることができる;一部の実施形態では、マットが、1または複数の抗菌剤を、約10ppm〜約10,000ppm(例えば、約1,000ppm〜約5,000ppm)の量で含む。
【0014】
一部の実施形態では、フッ素化ポリマーが、重量で約50%〜約80%のポリマー固体を含む樹脂(例えば、水中ディスパージョン(dispersion in water))の形態で用意される。フッ素化ポリマーの粒子サイズは変化させることができる。一部の実施形態では、フッ素化ポリマーが、約0.1μm〜約0.3μmの平均粒子サイズを有する。特定の実施形態では、フッ素化ポリマーを、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデンとのコポリマー(THV)、ポリ(エチレン−co−テトラフルオロエチレン)(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ならびにこれらのコポリマー、ブレンド、および誘導体からなる群から選択することができる。特定の実施形態では、フッ素化ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレンを含む。溶媒も変化させうるが、特定の実施形態では、溶媒が水である。フッ素化ポリマーに対する繊維化ポリマーの重量比も変化させることができ、例えば、一部の実施形態では、繊維化ポリマーの量が、重量でフッ素化ポリマーの量の約3.0〜約5.5パーセントである。特定の実施形態では、繊維化ポリマーが、室温で約0.5重量パーセントを超える前記溶媒中の溶解度を有する。本発明による1つの例示的な繊維化ポリマーは、酸化ポリエチレンである。繊維化ポリマーの分子量も、変化させることができる。例えば、特定の実施形態では、繊維化ポリマー(例えば、酸化ポリエチレン)が、約50,000amu〜約4,000,000amuの数平均分子量を有する。
【0015】
ディスパージョンは、特定の粘度を有するように調製することができる。例えば、一部の実施形態では、ディスパージョンが、50,000cPを超える(約70,000cP〜約150,000cPの範囲内が含まれるがこれらに限定されない)粘度を有する。印加する電圧も変化させることができ、特定の実施形態では、電圧が約2,000〜約100,000ボルトである。特定の実施形態では、加熱することを約350℃〜約485℃で実施する。
【0016】
本発明の別の態様では、1または複数の抗菌剤を含む、不織布のフッ素化ポリマー・マットを作製する方法が提供される。例えば、特定の実施形態では、本発明は、1または複数の抗菌剤を含む、不織布のポリテトラフルオロエチレン・マットを作製する方法であって、ポリテトラフルオロエチレン;酸化ポリエチレン;銀、銀化合物、金属酸化物、金属硫化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される1または複数の抗菌剤;ならびに溶媒を含むディスパージョンを用意することと;前記ディスパージョンをエレクトロスピニングして、PTFEマット前駆体をもたらすことと;不織布のPTFEマットを形成する目的で、前記PTFEマット前駆体を、前記溶媒および酸化ポリエチレンを除去するのに十分な温度で十分な時間にわたり加熱することとを含む方法を提供する。
【0017】
本発明のさらなる態様では、抗菌剤を埋め込んだ、不織布のPTFEを含む材料が提供される。特定の実施形態では、不織布のPTFE材料が、シート、チューブ、または被覆の形態である。このような不織布のPTFE材料は、広範な適用が可能である。一部の実施形態では、不織布のPTFEを含む、濾過デバイス(例えば、医用適用または軍用適用のための)、個人防護具(例えば、手術用マスク、抗菌ワイプ、衣服、および呼吸デバイス)、創傷包帯、および/または植込み式医用品(例えば、組織スキャフォールド、ステント、グラフト、および閉塞デバイス)が提供される。
【0018】
包含される図面を参照する本明細書の残りの部分では、当業者を対象とする、その最良の方式を含めた完全かつ可能な開示をより具体的に提示する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明により用いられうる、オリフィス(ニードル)ベースのエレクトロスピニング装置についての概略図である。
【図2】オリフィス(ニードル)ベースの装置からエレクトロスピニングされた、約2500ppmの活性銀(Smartsilver(登録商標)AS)を含有するPTFE繊維についての低解像度SEM顕微鏡写真である。
【図3】オリフィス(ニードル)ベースの装置からエレクトロスピニングされた、約2500ppmの活性銀(Smartsilver(登録商標)AS)を含有するPTFE繊維についての高解像度SEM顕微鏡写真である。
【図4】遊離表面ベースの装置からエレクトロスピニングされた、約2500ppmの活性銀(Smartsilver(登録商標)AS)を含有するPTFE繊維についてのSEM顕微鏡写真である。
【図5】オリフィス(ニードル)ベースの装置からエレクトロスピニングされた、約2500ppmの活性銀(Smartsilver(登録商標)WS)を含有するPTFE繊維についてのSEM顕微鏡写真である。
【図6】遊離表面ベースの装置からエレクトロスピニングされた、約2500ppmの活性銀(Smartsilver(登録商標)WS)を含有するPTFE繊維についてのSEM顕微鏡写真である。
【図7】遊離表面ベースの装置からエレクトロスピニングされた、約1000ppmの銀元素ナノ粒子を含有するPTFE繊維についてのSEM顕微鏡写真である。
【図8】遊離表面ベースの装置からエレクトロスピニングされた、約4%の二酸化チタンを含有するPTFE繊維についてのSEM顕微鏡写真である。
【図9】遊離表面ベースの装置からエレクトロスピニングされた、約10%の二酸化チタンを含有するPTFE繊維についてのSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、本明細書の以下では、本発明のすべての実施形態ではないが、一部の実施形態が示されている付属の図面を参照しながら、本発明をより完全な形で説明する。実際、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書で示される実施形態に限定されるものとしてみなされるべきではない;むしろ、これらの実施形態は、本開示が関連法規の要求事項を満たすように示されている。本明細書の全体において、同じ番号は、同じ要素を指す。
【0021】
本発明は、ポリマー材料への1または複数の抗菌剤の封入を提供する。一般的には、1または複数の抗菌剤とポリマー材料とを組み合わせ、次いで、結果として得られる混合物を、エレクトロスピニングまたは類似の技法(すなわち、遠心分離によるスピニング、溶液のブローイング、テンプレーティングなど)により加工し、不織布材料を作製する。不織布材料は、エレクトロスピニングした(本明細書ではまた、「eスピニングした」とも称する)、ポリマー材料(例えば、PTFEが含まれるがこれに限定されない)であることが好ましい。本発明の特定の態様では、1または複数の抗菌剤を含む、エレクトロスピニングしたPTFEを調製する方法が提供される。好ましい実施形態では、それらが、作製される製品の一部となるように、1または複数の抗菌剤を、加工中のPTFEへと組み込む。方法は一般に、PTFEと1または複数の抗菌剤とを含むディスパージョンを、エレクトロスピニングすることを含む。水性ディスパージョンおよび他のディスパージョンから、PTFEを加工および静電スピニングすることに関する情報は、例えば、参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Bornatによる米国特許第4,323,525号およびMartinらによる米国特許第4,044,404号において提供されている。特定の実施形態では、本発明により用いられるエレクトロスピニング工程は、少なくとも部分的には、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Anneauxらによる米国特許出願公開第2010/0193999号において説明されている工程に基づいている。
【0022】
本説明は、PTFEに焦点を絞るが、本明細書で説明される方法および材料は、他の種類のポリマーにも適用することができる。例えば、特定の実施形態では、本明細書で詳述される方法におけるPTFEの代わりに、ディスパージョン形態で用意することが可能な任意のポリマーを用いることができる。例えば、一部の実施形態では、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いる。一部の特定の実施形態では、ポリマーが、フッ素化ポリマーを含む。例えば、本発明による、抗菌剤と共にエレクトロスピニングされうる例示的なポリマーには、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデンとのコポリマー(THV)、ポリ(エチレン−co−テトラフルオロエチレン)(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ならびにこれらのコポリマー、ブレンド、および誘導体が含まれるがこれらに限定されない。所望の材料を作製するには、本明細書で説明される方法のパラメータを若干改変することが必要とされる場合があると理解される。当業者は、他のパラメータにもまして、ディスパージョンの濃度、繊維化ポリマーの種類、エレクトロスピニングの時間、加熱時間および加熱温度などのパラメータを調整して、本明細書で説明されるPTFE材料に類似する、抗菌剤を含有するポリマー材料による不織布を容易に作製することができるであろう。
【0023】
PTFEは、ディスパージョン(本明細書では、「PTFE樹脂」と称する)として提供されることが典型的であり、緊密に混合されたディスパージョンであることが典型的である。PTFE樹脂の固体含量は、重量で約50%〜約80%であることが好ましく、重量で約55〜約65%であることがより好ましい。本発明により有用とされる特定のPTFE樹脂は、市販されているか、またはディスパージョンを作製するように、PTFEを、1もしくは複数の溶媒と混合することにより調製することができる。市販される例示的なPTFEディスパージョンの1つは、Daikin D210 PTFEであり、これは、約59〜61重量%のPTFE固体(ASTM D 4441により測定)、6.0〜7.2重量%の界面活性剤を含み、25℃でのpHが8.5〜10.5であり、比重が1.50〜1.53であり、ブルックフィールド粘度の最大値が35cPである。PTFEの特性(例えば、分子量、多分散性指数、粒子サイズ、粒子サイズの分布)は変化させることができる。一部の実施形態では、PTFEの平均粒子サイズが、約0.05μm〜約1μm(例えば、約0.1μm〜約0.3μm)でありうる。一部の実施形態では、平均粒子サイズが、約0.5μm未満、約0.4μm未満、または約0.3μm未満である。例えば、特定の実施形態では、平均粒子サイズが、約0.14μm、約0.16μm、約0.22μm、または約0.25μmでありうる。特定の実施形態では、PTFEの粒子サイズ分布が狭い。溶媒は、水溶液またはアルコール溶液(例えば、メタノール溶液、エタノール溶液、またはイソプロパノール溶液)が含まれるがこれらに限定されない、ディスパージョンを創出するのに適する任意の溶媒でありうる。
【0024】
ディスパージョンは一般に、1または複数の繊維化ポリマーをさらに含む。繊維化ポリマーとは、不織布ウェブの形成を容易にするのに十分であり、PTFEベースの材料をもたらすエレクトロスピニング工程の後に除去されうることが好ましい、任意のポリマーである。繊維化ポリマーは、ディスパージョンの溶媒における溶解度が高くなるように選択することが典型的である。例えば、溶媒が水である場合、任意の水溶性ポリマーを、繊維化ポリマーとして用いることができる。代替的に、溶媒がアルコールの場合は、任意のアルコール可溶性ポリマーを用いることができる。特定の実施形態では、例えば、繊維化ポリマーを、多糖(例えば、デンプン、キトサン、N−[(3’−ヒドロキシ-2’,3’−ジカルボキシ)エチル]キトサン、デキストラン、ならびにセルロースエーテル、イソプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、セルロースエチルエーテル、セルロースエチルヒドロキシエチルエーテル、およびセルロースメチルヒドロキシエチルエーテルを含めたセルロースポリマー);ガム(例えば、グアルガム化合物、コンジャックグルコマンナン、プルラン、キサンタンガム、i−カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸アンモニウム塩)、ポリアクリレート(例えば、ポリアクリル酸、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート−co−アクリルアミド)、ポリ(1−グリセロールメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸)90:10、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ(アクリル酸エチル/アクリル酸)、ポリ(n−ブチルアクリレート/2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ(3−クロロ−ヒドロキシプロピル−2−メタクリルオキシエチルジメチルアンモニウムクロリド、第四級ジメチルスルフェート、およびポリ(エチレン/アクリル酸)92:8)、ポリアクリルアミドおよび加水分解したポリアクリルアミド(例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)80:20、ポリ(アクリルアミド/アクリル酸)、ポリ(アクリルアミド/2−メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)、ポリ(N−イソ−プロピルアクリルアミド)、ポリ(ジメチルドデシル(2−アクリルアミドエチリル)アンモニウムブロミド))、ポリアミン(ポリ(ビニルアミン)、ポリ(4−アミノ−スルホ−アニリン)、ポリエチレンイミン、ポリ(アリルアミンヒドロクロリド)、ポリアニリン、)、ポリ(g−グルタミン酸)、ポリ(2−N−メチルピリジニウムメチレンヨージド)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ[N−(p−スルホフェニル)アミノ−3−ヒドロキシメチル−1,4−フェニレンイミノ−1,4−フェニレン)]、ポリ(ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド)、およびポリ(l−リシンヒドロブロミド));ビニルポリマーおよびビニルピリジンポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール)(12%)アセチル、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルスルホキシド)、ポリ(N−ビニルピロリドン−co−酢酸ビニル)、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジンN−オキシド)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(2−ビニルピリジン−N−オキシド)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルアミン)ヒドロクロリド、ポリ(ビニルホスホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)ナトリウム塩、ポリ(2,4−ジメチル−6−トリアジニルエチレン)、ポリ(3−モルホリニルエチレン)、ポリ(N−l,2,4−トリアゾイルエチレン)、ポリ(メトキシエチレン)、ポリ(N−ビニルピロリドン/2−ジメチルアミノエチルメタクリレート)が含まれるがこれらに限定されない、ビニルモノマーから調製されうるビニルポリマーおよびビニルピリジンポリマー);ポリ(N−プロパノイルイミノエチレン)、ポリ(N−メチルピリジニウム−2,5−ジイルエテニレン)、ポリ(N−ビニルピロリドン/酢酸ビニル)、ポリ(2−ビニル−1−メチルピリジニウムブロミド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノラウレート、ポリ(4−N−ブチルピリジニウムエチレンヨウ化物)、ポリ(スチレンスルホン酸)、N−メチル−4(4’−ホルミルスチリル)ピリジニウム、メトスルフェートアセタール、ポリ(アリルアンモニウムクロリド)、ポリ(アリルアンモニウムホスフェート)、ポリ(イタコン酸)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(マレイン酸)、ポリ(ブタジエン/マレイン酸));ポリエーテル(例えば、酸化ポリエチレン、ポリ(エチレングリコール)ビス(2−アミノエチル)、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)−ビスフェノールAジグリシジルエーテル付加物、およびポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド));ならびにこれらのコポリマー、誘導体、およびブレンドからなる群から選択することができる。特に好ましい繊維化ポリマーの1つは、酸化ポリエチレンである。
【0025】
繊維化ポリマーの分子量は変化させることができるが、約50,000amuを超えることが典型的である。有用なポリマーの分子量は、ポリマーの化学的組成に応じて変化させることができる。具体的な一実施形態では、繊維化ポリマーが、分子量を約50,000〜4,000,000amu(例えば、約200,000amu〜600,000amu)とする酸化ポリエチレンである。特定の実施形態では、酸化ポリエチレンによる繊維化ポリマーの数平均分子量が、約200,000amu、約300,000amu、約400,000amu、約500,000amu、または約600,000amuである。繊維化ポリマーの水(または他の分散媒)中の溶解度は高いことが好ましく、溶解度は室温で約0.5重量%を超えることが好ましい。繊維化ポリマーの灰分含量は、約385℃で焼結させた場合に約5重量%未満であることが好ましく、なおより低量であることがより好ましい。
【0026】
ディスパージョン中に存在させる繊維化ポリマーの量は変化させることができる;例えば、特定の実施形態では、ディスパージョンが、重量で約1%〜約10%の繊維化ポリマーを含む。特定の実施形態では、PTFEに対する繊維化ポリマーの重量比が変化する。例えば、繊維化ポリマーの量は、重量で、ディスパージョンにおけるPTFEの量の約3.0%〜約5.5%でありうる。本発明により必要とされる繊維化ポリマーの量は、ポリマーの化学的組成に応じて変化しうる。
【0027】
ディスパージョンは、当技術分野で知られる任意の方法により形成することができる。一部の実施形態では、PTFE樹脂を、水溶液中で繊維化ポリマーと混合してディスパージョンを形成し、次いで、これを、ホモジナイズさせることが好ましい。一般には水性混合物を用いるが、本発明から逸脱しない限りにおいて、他の溶媒も用いうることが留意される。特定の好ましい実施形態では、ディスパージョンの溶媒が、PTFE樹脂における溶媒と同じ溶媒である。ディスパージョンを形成するための混合時間は、変化させることができる。一般に、ポリマーディスパージョンは、高せん断を回避するように調製される。好ましい一方法では、ポリマーディスパージョンを、かき混ぜることなくゆっくりと形成させた(例えば、ゲル層の形成が明らかとなる時点までの数日間にわたり)後、ポリマーディスパージョンのジャーを一定の速度でさらに数日間にわたり回転させるジャーローラーへと移す。ジャーローラーとは、ジャーを回転させて、均一に混合した材料を調製し、かつ/またはこれを維持するための手段であり、この場合、ジャーは、材料が適切な形で混合されることを確保されるよう調整しうることが典型的な回転速度で持続的に回転させる。例示的なジャーローラーは、例えば、Diemat,Inc.、Mikrons(登録商標)グループ、Paul N.Gardner Company、Detroit Process Machinery、およびPaul O.Abbeから市販されている。目視により一般に均一であり、粘度が適切である材料を結果としてもたらすポリマーディスパージョンを作製する任意の方法を用いることができる。ディスパージョンにおいては、ある程度の一様性の欠如が許容されることが留意される;特定の実施形態では、スピニングする前にポリマーディスパージョンを濾過する。ディスパージョン中の溶媒量を変化させて、所望の稠度または粘度を得ることができる。
【0028】
本明細書で説明される工程の任意の段階で、1または複数の抗菌剤を添加する。ポリマーディスパージョンを形成した後、1または複数の抗菌剤を混合物に添加することが典型的である。一般に、ポリマーディスパージョンを形成した後に、1または複数の抗菌剤を添加し、ディスパージョンを混合して(例えば、既に説明したジャーローラーにより回転させることにより)、1または複数の抗菌剤をディスパージョン全体に分布させる。抗菌剤は、固体形態で添加することもでき、溶液または懸濁液の形態で添加することもできる。抗菌剤を添加する前にポリマーディスパージョンを形成することが一般的であるが、特定の実施形態では、抗菌剤を、工程の早期の時点で添加しうることが留意される。例えば、一部の実施形態では、抗菌剤を繊維化ポリマーと混合することが所望される場合もあり、繊維化ポリマーとPTFEとを組み合わせる前に、抗菌剤をPTFEと混合することが所望される場合もある。
【0029】
ディスパージョンに添加される抗菌剤の種類および量は、変化させることができる。本発明によれば、抗菌能を示すことが可能である(すなわち、微生物の増殖を緩徐化するか、または微生物を死滅させることが可能である)ことが知られるか、または抗菌能を示すことが可能であると考えられる任意の薬剤を用いることができる。抗菌剤には、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗生剤、および抗寄生虫剤が含まれる。例えば、特定の抗菌剤には、銀、銀イオン、銀化合物、金属酸化物(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、および酸化カドミウム)、金属硫化物(例えば、硫化セレニウム)、およびこれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0030】
1または複数の抗菌剤の量は、ある程度の抗菌活性を示すのに十分な量であることが典型的である。ある程度の抗菌活性をもたらすのに必要とされる抗菌剤の量は、選択される特定の抗菌剤に応じて変化することが典型的である。一部の実施形態では、ポリマーディスパージョンが、ディスパージョン重量で約0.001%〜約20%の量の抗菌剤を含む。例えば、約100〜7,500ppm、約500〜5,000ppm、または約1,000〜5,000ppm(例えば、本発明により提供される利点の一部を裏付けるには、約25,00〜約5,000ppmが十分である)など、約10〜10,000ppmで、銀をPTFEの内部へ、またはPTFEの表面へと組み込むことができる。
【0031】
好ましい実施形態では、ディスパージョンの粘度が、それにより均一で一様な繊維の形成を可能とするのに所望のある範囲内にある。例えば、本開示は、粘度が約50,000cPを超えるディスパージョンを用いて、均一かつ一様な繊維の形成、ならびにより迅速な構築をもたらすことを意図する。例えば、一部の実施形態では、粘度が、約50,000cP〜約300,000cP(例えば、約70,000cP〜約150,000cP)である。粘度は、例えば、Brookfield Viscometerにより測定することができる。ディスパージョンに所望される粘度は、実施されるエレクトロスピニング法に応じて変化しうる。例えば、オリフィス(ニードル)ベースの装置は、遊離表面ベースの装置よりある程度高い粘度を必要としうる。
【0032】
結果として得られる粘度の高い混合物中にほとんどまたはまったく空気が捕捉されることのない均一の溶液を創出することが好ましい。ディスパージョンは、エレクトロスピニングする前に、ある形で処理することができる。例えば、特定の好ましい実施形態では、抗菌剤を含有するディスパージョンを、比較的均一な稠度となるまで混合し、濾過して、凝集塊またはゲルを除去する。
【0033】
抗菌剤を含有するディスパージョンは、エレクトロスピニングする。例えば、特定の実施形態では、ディスパージョンを、電荷源として作用する固定型導電性エレメントを伴う制御型送液デバイスへと投入する。一実施形態では、導電性エレメントが、1または複数のオリフィスを有するエレメントであり、この場合、オリフィスを介してディスパージョンを標的へと放出し、オリフィスと標的とが反対の電荷を帯びている(または標的が接地されている)とする。本発明により用いられうる装置に関するさらなる詳細については、例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Anneauxらによる米国特許出願公開第2010−0193999号において示されている。
【0034】
特定の実施形態では、エレクトロスピニング装置は、図1に示す通りである。図1では、レザバー10にディスパージョンを投入する。送達システム11(例えば、送液デバイス)により、ディスパージョンを、レザバーから、オリフィスでありうる電荷源12へと送達する。送液デバイスからの駆出容量は、作製される形態および所望の繊維径に依存する、所定の速度に設定する。オリフィスベースのシステムを用いる場合は、オリフィスのサイズを、直径約0.01mm〜約3.0mmとすることが好ましいが、これらに限定されない。標的15は、電荷源12からある程度の距離に設置する。PTFEを含有するディスパージョン14が、標的と反対に帯電するように、DC電源を含めた(しかし、これに限定されない)電源16が、電荷源と標的との電荷差を確立する。電荷源は、高精度DC電源の陽極側と接続することが好ましい。電源の陰極側は、収集表面または標的と接続することが好ましい。好ましいわけではないが、特定の実施形態では、極性を逆にすることもできる。また、標的を接地することも可能である。PTFEを含有するディスパージョンは、静電的に標的へと誘引され、その上に沈着する。標的は、静止させることもでき、動かすこともできる(例えば、標的は、移送ローラー17上において動かすことなどにより、インパクトゾーン全体を移動する連続材料の場合もあり、連続材料に近い場合もある)。限定することを意図するものではないが、例えば、それらのすべてが参照によりそれらの全体において本明細書に組み込まれる、Chungらによる米国特許第6,743,273号、およびGreenらによる同第7,815,427号;Ignatiousらによる米国特許出願公開第2003/0017208号、Petrasらによる同第2008/0307766号、Greenらによる同第2009/0127747号、Greenらによる同第2009/0199717号、Branhamらによる同第2010/0018641号、およびPepperらによる同第2011/0111012号では、各種のエレクトロスピニング法が説明されている。
【0035】
収集表面は、例えば、ドラム(すなわち、その周りに材料を巻きつけるシリンダー)の場合もあり、シートの場合もある。沈着させる間、ドラムは回転することが典型的であり、結果として得られる三次元の材料を、この「チューブ」型の形態で用いることもでき、これを切断して、エレクトロスピニングした材料をシート形態でもたらすこともできる。シートとは、個別の寸法を有する平坦な収集表面である。一部のさらなる実施形態では、収集表面が、コーティング、すなわち、被覆が可能な任意の材料である。被覆する材料の外形、サイズ、および形状は、変化させることができる。例えば、収集表面は、植込み式医用デバイス(例えば、組織スキャフォールド、ステント、グラフト、および閉塞デバイス)が含まれるがこれらに限定されないデバイスでありうる。このような実施形態では、PTFEを含有するディスパージョンでデバイスを被覆するように、エレクトロスピニングを実施する。このような実施形態では、エレクトロスピニングされる材料が、デバイス上で被覆層を形成するように、エレクトロスピニングする前に別の材料でデバイスを被覆することもでき、デバイスを直接被覆することもできる。表面は、任意の金属、セラミック、またはポリマー材料とすることが可能であるが、特に好ましい材料は、ステンレス鋼、コバルトクローム、ニッケルチタン(例えば、ニチノール)、およびマグネシウム合金から選択することができる。電源における電圧は、ポリマー/PTFEディスパージョンを均一に送出するのに所望される電圧まで増大させる。印加される電圧は変化させうるが、約2,000〜約100,000ボルトであることが典型的である。電源を接続することにより誘導される電荷は、帯電したポリマーを、電荷源から遠ざけ、収集表面へと引き寄せる。収集標的は、ポンプおよびオリフィスによるシステムに対して垂直に設置し、表面全体が、標的へと送出された繊維で均一に被覆されるように、少なくとも1つの方向に動かす。特定の実施形態では、収集表面を回転させて、収集表面上のすべての側面を被覆することを確保することができる(例えば、この場合、収集表面が、ドラムまたは3次元デバイスを含む)。
【0036】
代替的な実施形態では、開放浴液槽によるエレクトロスピニング装置を用いて、PTFEディスパージョンをエレクトロスピニングする(例えば、繊維シートへと)。例えば、装置は、ワイヤー、シリンダー、スパイク、シャープエッジ、または類似の形状のスピニング電極を含みうる。開放浴液槽ユニットの場合、駆出容量は、ディスパージョンの粘度、ディスパージョンの導電性、ディスパージョンの表面張力、浴液槽から標的までの距離、および電圧に依存する。これらの因子はまた、繊維の太さ、および所望される繊維の直径にも影響を与えるので、これらのパラメータを最適化することが必要とされる。電荷源は、高精度DC電源の陽極側と接続することが好ましい。電源の陰極側は、収集表面と接続することが好ましい。代替的に、収集表面を接地することもできる。極性を逆にすることもできるが、これは好ましくない。印加される電圧は変化させることができるが、約40,000〜100,000ボルトであることが典型的である。電源を接続することにより誘導される電荷は、帯電したポリマーを、電荷源から遠ざけ、収集表面へと引き寄せる。開放浴液槽では、収集表面がシートであることが典型的である。シート表面は、任意の金属またはポリマー材料でありうるが、ステンレス鋼が特に好ましい材料である。電源における電圧は、ポリマー/PTFE溶液を均一に送出するのに所望される電圧まで増大させる。収集標的は、浴液槽の上部に設置し、表面全体が均一に被覆されるように、少なくとも1つの方向に動かす。
【0037】
収集表面が、本明細書で説明される方法のうちのいずれかにより十分に被覆されたら、材料を加熱することが好ましい。材料は、その場で加熱する(すなわち、収集表面全体をオーブン内に入れることにより)こともでき、加熱する前に、エレクトロスピニングした材料を、収集表面から取り去り、エレクトロスピニングした遊離材料をオーブン内に入れることにより加熱することもできる。加熱ステップは、多数の目的に用いることができる。加熱ステップは、材料を乾燥させるのに用いることができる(例えば、エレクトロスピニングした産物から溶媒を除去することにより)。加熱ステップはまた、繊維化ポリマーを揮発させ除去するのにも用いることができる。加熱ステップは、加えて、PTFE粒子の焼結も結果としてもたらしうる。
【0038】
材料を加熱する時間および温度は、変化させることができる。例えば、典型的な実施形態では、オーブンの温度を、約350℃〜約485℃とする。材料を加熱する時間は、部分的には、オーブンの温度に依存する。時間はまた、材料の厚さにも依存する場合があり、より厚い材料は、乾燥および/または焼結により長い時間を必要とする。特定の実施形態では、材料を1時間以下にわたり加熱するが、本発明から逸脱しない限りにおいて、より長い加熱時間を用いることもできる。
【0039】
乾燥、揮発化、および焼結は、同時に生じさせることもでき、一連のステップで生じさせることもできる。理論により制約されることを意図するものではないが、一部の乾燥(すなわち、溶媒の除去)は、エレクトロスピニングが完了したときに行いうると考えられている。あるわずかな程度の繊維の再構成は、この時点で行いうるとさらに考えられている。
【0040】
次いで、材料を加熱したら、溶媒および繊維化ポリマーの大半(例えば、約80%を超え、好ましくは約90%または95%を超え、最も好ましくは約98または99%を超える)をPTFE材料から除去することが好ましい。当業者には、eスピニングした繊維を加熱すると収縮することがよく知られている。理論に制約されるものではないが、収縮は、2つのステップ:初期の乾燥およびエレクトロスピニング工程の後において繊維を再構成するステップ、ならびに加熱により溶媒および繊維化ポリマーを除去するステップで生じると考えられている。
【0041】
上記で言及した通り、加熱はまた、焼結も結果としてもたらしうる。焼結とは、個々のPTFE粒子を融合させて、PTFEベースの不織布材料を生成させることを指す。材料の焼結は一般に、より強固で耐久性のある材料を結果として形成させる。焼結のレベルは、変化させることができる。加熱時には、各種の方法(例えば、熱量測定)により、材料をモニタリングして、焼結レベルを評価することができる。加熱は一般的に、例えば、目視により評価しうる物理的変化を材料に受けさせる。例えば、材料が目視により粘着性(sticky)であり、さらに粘着性(still tacky)である場合、これは一般に、この材料をより長時間にわたり加熱すべきことを示唆する。材料の変色(例えば、黄色化)が見られる場合は一般に、繊維化ポリマーの存在(すなわち、分解の不完全)を示唆し、これもまた、材料をより長時間にわたり加熱すべきことを示唆する。
【0042】
本明細書で説明される工程による産物は、1または複数の抗菌剤を含むPTFE材料である。特定の実施形態では、材料が白色である。抗菌剤は、PTFE材料の構成部分(integral part)であることが好ましい。理論に制約されるものではないが、抗菌剤は、封入材料として、または表面への結合材料として、PTFE内に組み込まれる。特定の実施形態では、抗菌剤を、不織布のPTFE材料内に埋め込む。例えば、材料全体にわたり、ある程度均一な形で、抗菌剤を埋め込むことができる。抗菌剤は、PTFE材料内の離散した位置に存在させることが典型的である(すなわち、非連続的な形で)。したがって、言い換えると、これらの材料は、材料内で抗菌剤のある程度均一な層を有する材料とは容易に識別可能である。eスピニングした材料は、繊維性であり、不織布材料として説明しうることが好ましい。特定の実施形態では、PTFE布が連続である。特に好ましいeスピニングした繊維の直径は、少なくとも0.1μmである。特に好ましい実施形態では、焼結後の産物が、それらの接点間の距離を約0.1μm〜約50μmの範囲とするような密度で、繊維を沈着させる。特定の実施形態では、接点間の距離のうち、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%、または100%が、この範囲内に収まる。しかし、一部の実施形態では、接点間の距離が、著明に短い場合もあり、かつ/または著明に長い場合もある(すなわち、接点間が約0.1μmより短い場合もあり、かつ/または50μmより長い場合もある)ことが留意される。距離は、走査電子顕微鏡により観察される繊維間の距離を推定することにより評価することができる。留意される通り、材料は、ある範囲の異なる形態(例えば、不織布シート、不織布チューブ、または不織布被覆)を含む可能性があり、多種多様な適用において有用でありうる。
【0043】
抗菌剤を含有する、エレクトロスピニングしたPTFEは、多種多様な適用に有用な材料を表わす。限定を意図するものではないが、本明細書では、潜在的な使用のうちで、特定の例示的な領域を強調する。例えば、抗菌剤を含有する、エレクトロスピニングしたPTFEは、微生物活性が、有効な分離を妨害または阻止しうる、濾過デバイス;病院、クリーンルーム、軍隊、核兵器保護システム、生物兵器保護システム、および化学兵器保護システムなど、バイオバーデンすなわち生物汚染度および微生物汚染が、空気の純度についての憂慮事となる、濾過デバイス;感染に対する医療従事者および救命従事者の保護に不可欠である手術用マスク、抗菌ワイプ、衣服、および呼吸デバイス(とりわけ、一部の緊急状況においては、清浄なマスクおよびガウンへの交換が常に可能とは限らないので);大表面積にわたる、エレクトロスピニングしたPTFEが、多大な抗菌活性の供給可能性をもたらす、創傷ケアのための外用医療適用;抗菌活性が、製品または植込み部位を、製品上または植込み時に導入された微生物から保護する内用医療適用(例えば、創傷包帯、組織スキャフォールド、ステント、グラフト、閉塞デバイス、および/もしくは他のeスピニングした植込み式PTFE、またはeスピニングしたPTFEを含有する複合デバイス)において用いると有利でありうる。
【0044】
eスピニングしたPTFEに加えて、またはこれと組み合わせて、他の多くの適切な材料をeスピニングすることができる。一部の実施形態では、複数のポリマー(抗菌剤を含有する場合もあり、抗菌剤を含有しない場合もある)を、本明細書で示す方法によるディスパージョンからeスピニングして、例えば、多層複合材料をもたらすこともできる。本明細書では、ディスパージョンからeスピニングされうる例示的なポリマーに言及する。代替的に、または加えて、本明細書で説明される、抗菌剤を含有するディスパージョンは、従来の溶液からeスピニングした材料に加えて、またはこれと組み合わせてeスピニングすることもできる。当技術分野で知られている通り、溶液中に入れることができるポリマーは、eスピニングされる可能性を有する。本開示に従い、ナイロン、ポリウレタン(PU)、ポリエステルなどが含まれるがこれらに限定されないポリマーのエレクトロスピニングを、本明細書で説明される方法と組み合わせて用いることができる。また、エレクトロスピニングされる材料は、当技術分野において知られる、複合材料をもたらす他の方法により調製される、各種の材料による層と組み合わせることもできる。本開示は、以下の例を参照することにより、よりよく理解することができる。
【0045】
実施例
eスピニングしたPTFEによる実施形態では、PTFEに対する繊維化ポリマー(例えば、PEO)の比を変化させずに、ディスパージョンに水を添加するか、またはディスパージョンから水を除去することにより、ディスパージョンの粘度を変化させることができる。
【0046】
すべての例では、まず、Smartsilver(登録商標)ASを、撹拌バーにより400RPMでかき混ぜながら、60℃の水30mL中に分散させた。これは、少量(0.25g)のSmartsilver(登録商標)ASを、30mLの水に添加することにより行った。各添加の後、後続の添加を行う前に材料を分散させることを、合計5gのSmartsilver(登録商標)ASを添加するまで行った。溶液は、暗緑色のスラリーであり、肉眼では暗色の凝集物が確認されなかった。次いで、溶液を、70mLの冷水で希釈し、最終濃度を5%(w/v)とするSmartsilver(登録商標)AS溶液を、合計約100mL作製した。次いで、この溶液を、分子量300Kの酸化ポリエチレン(PEO)40グラムを伴うDaikin D−210 PTFEディスパージョン1000mLからなる、エレクトロスピニングしたPTFEディスパージョンに添加した。組み合わせたディスパージョンを48時間にわたり回転させ、十分に混合された、グレーの粘性溶液をもたらした。これらの条件では、最終産物が、約2500ppmの活性銀を含有することになる。この混合物の結果として得られる粘性を、Brookfield LV Viscometerに取り付けた#25スピンドルを用いて25℃、2.5RPMで測定したところ、約74,000cPと決定された。
【0047】
Smartsilver(登録商標)ASは、Nanohorizons,Inc.(State College、PA)により提供される、アルコール可溶性分散性銀ナノ粒子材料であり、純粋な銀および生理学的に不活性な安定化剤(その構造が商標機密として保護されているポリマー)だけを含有する。銀含量は、51.9±2.6w/w%である。Smartsilver(登録商標)WSとは、これもまたNanohorizons,Incにより提供されている、水溶性ポリマーにより安定化させた銀ナノ粒子を含む水溶性粉末である。
【0048】
本明細書で言及されるすべての値は、「活性銀」の量、すなわち、実際に添加された銀の量に関し、添加された化合物中に含有される銀の百分率について補正されている。
【実施例1】
【0049】
オリフィス(ニードル)ベースのエレクトロスピニング装置を用いて、繊維を作製した。ステンレス鋼製の基質をマンドレルに装填し、これを、回転アームに取り付け、20RPMで回転させた。収集距離を、約7インチに設定した。エレクトロスピニングするのに用いる電圧は、10〜20kVとした。シリンジを、KD Scientific 780200L型シリンジポンプに取り付け、送液速度を0.5ml/時間に設定した。回転ドラムアセンブリーから約7インチの位置に、ニードルを配置した。ドラムアセンブリーの回転は、約60rpmとした。トラバースを用いて、ドラムの長さに沿って、eスピニングニードルを、3.0mm/秒の移動速度で移動させた。次いで、この材料を、385℃で約5分間にわたり焼結させた。焼結後における、2500ppmの活性銀を含有する、eスピニングしたPTFE布についての走査電子顕微鏡(SEM)画像を、図2および3に示す。平均繊維径は、1.15μm±0.241μmと決定された。
【実施例2】
【0050】
ワイヤー法またはトラフ法と類似の遊離表面エレクトロスピニングによってもまた、2500ppmのSmartSsilver(登録商標)ASを含有する、エレクトロスピニングしたPTFE繊維布を作製した。溶液を浴液槽へと投入し、そこで、円筒形のローラーを帯電電極として用い、これを、前述の溶液で被覆した。0.002インチ厚のステンレス鋼製のフォイルシート(15.5インチ×17.5インチ)を、導電性布の上に取り付けた。ステンレスフォイルを、eスピニングチャンバー内に入れ、そこで、複合PTFE布を沈着させた。用いる収集距離は、約230cmとし、用いる電圧は60〜70kVとした。約5フィート/分で、基質に帯電電極上を複数回にわたり通過させることを用いて、シートを収集し、約1.2ミリ厚のPTFE/SmartSsilver(登録商標)ASシートを作製した。図4は、eスピニングにより誘導されたPTFE布を示す。試料に対して実行した特徴づけ法の概要を、以下の表1に示す。
【0051】
【表1】

【実施例3】
【0052】
40gのPEOを含有する1000mLのDaikin D−210 PTFEディスパージョンを含有するエレクトロスピニングディスパージョンに、Smartsilver(登録商標)WSを直接投入した。最終的な繊維試料が、約2500ppmの活性銀を含有するように、Smartsilver(登録商標)WSを投入した。ジャーローラー内で48時間超にわたり最終溶液を回転させて、粘性の灰緑色溶液をもたらした。この混合物の結果として得られる粘性を、Brookfield LV Viscometerに取り付けた#25スピンドルを用いて25℃、2.5RPMで測定したところ、約69,000cPと決定された。
【0053】
2500ppmのSmartsilver(登録商標)WSを含有するPTFEディスパージョンを、オリフィスベースのエレクトロスピニングシステムで用いて、eスピニングしたPTFE布を作製した。10mLのシリンジに所望量のスピニング溶液を投入し、シリンジポンプに取り付け、流速を0.2ml/時間に設定した。ステンレス鋼製の基質をマンドレルに装填し、これを、回転アームに取り付け、60RPMで回転させた。収集距離を、約7インチに設定した。エレクトロスピニングするのに用いる電圧は、13〜15kVとした。焼結後における試料のSEM画像を、図5に示す。平均繊維径は、0.837μm±0.117μmと決定された。
【実施例4】
【0054】
ワイヤー法またはトラフ法を用いる遊離表面エレクトロスピニングによってもまた、2500ppmのSmartsilver(登録商標)WSを含有する、エレクトロスピニングしたPTFE繊維を作製した。溶液を浴液槽へと投入し、そこで、円筒形のローラーを帯電電極として用い、これを、前述の溶液で被覆した。用いる工程は、実施例2で論じた工程と同様とした。収集電極は鋼製ワイヤーとし、基質は、ステンレス鋼製シートとした。用いる収集距離は、約140〜180cmとし、用いる電圧は60〜80kVとした。基質に帯電電極上を複数回にわたり通過させることを用いて、シートを収集した。焼結後における試料のSEM画像を、図6に示す。平均繊維径は、0.408μm±0.086μmと決定された。
【実施例5】
【0055】
硝酸銀(AgNO)を、溶液中のPEOと反応させることにより、銀ナノ粒子(SN)を作製することができる。まず、PEO(40g)を脱イオン化水(100ml)中に溶解させ、室温で24時間にわたり回転させるかまたは撹拌して、黄色で粘性の混合物をもたらすことにより、これらのナノ粒子を作製した。次いで、PEO/水混合物に硝酸銀を添加し、少なくとも24時間にわたり反応させたところ、溶液は、時間と共に、徐々に暗色化した。反応が完了した後、混合物は、暗灰〜黒色で粘性の混合物となる。次いで、PEO/SN/水混合物を、1000mlのD−210 PTFEディスパージョンに添加する。硝酸銀の銀元素への完全な転換を仮定して、最終的な繊維試料が、約1000ppmのSNを含有するように、SNを投入した。最終溶液を48時間超にわたり回転させ、粘性で灰緑色の溶液をもたらした。この混合物の結果として得られる粘性を、Brookfield LV Viscometerに取り付けた#25スピンドルを用いて25℃、2.5RPMで測定したところ、約104,000cPと決定された。
【0056】
ワイヤー法またはトラフ法を用いる遊離表面エレクトロスピニングによって、1000ppmの銀ナノ粒子を含有する、エレクトロスピニングしたPTFE繊維を作製した。溶液を浴液槽へと投入し、そこで、円筒形のローラーを帯電電極として用い、これを、前述の溶液で被覆した。用いる工程は、実施例2で論じた工程と同様とした。収集電極は鋼製ワイヤーとし、基質は、ステンレス鋼製シートとした。用いる収集距離は、約140〜180cmとし、用いる電圧は60〜80kVとした。基質に帯電電極上を複数回にわたり通過させることを用いて、シートを収集した。焼結後における試料のSEM画像を、図7に示す。平均繊維径は、0.384μm±0.059μmと決定された。
【実施例6】
【0057】
Nanostructured and Amorphous Materials Inc.製の二酸化チタン(TiO)(ルチル)を水中に分散させ(固体を40%とし)、粒子サイズを30〜50nmとした。TiOスラリーを、Daikin D−210 PTFEディスパージョンに直接添加した。最終的な繊維試料が、約4〜10重量%のTiOを含有するように、TiOを投入した。最終溶液を48時間超にわたり回転させ、粘性でベージュ色の溶液をもたらした。この混合物の結果として得られる粘性を、Brookfield LV Viscometerに取り付けた#25スピンドルを用いて25℃、2.5RPMで測定したところ、約83,000cP(4%)および67,000cP(10%)と決定された。
【0058】
ワイヤー法またはトラフ法を用いる遊離表面エレクトロスピニングによって、4および10%のTiOを含有する、エレクトロスピニングしたPTFE繊維布を作製した。ディスパージョンを浴液槽へと投入し、そこで、円筒形のローラーを帯電電極として用い、これを、前述の溶液で被覆した。用いる工程は、実施例2で論じた工程と同様とした。収集電極は鋼製ワイヤーとし、基質は、ステンレス鋼製シートとした。用いる収集距離は、約140〜180cmとし、用いる電圧は60〜80kVとした。基質に帯電電極上を複数回にわたり通過させることを用いて、シートを収集した。焼結後における4および10%のTiOを含有する、eスピニングしたPTFE布のSEM画像を、それぞれ、図8および9に示す。試料に対して実行した特徴づけ法の概要を、4%のTiOを含有する試料については表2に示し、10%のTiOを含有する試料については表3に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【実施例7】
【0061】
AATCC試験法100−2004:「繊維材料の抗菌仕上げ」を用いて、これらのドーピングしたPTFE不織布材料を、それらの抗菌効果について調べた。処理布および非処理布の材料見本を、直径4.8±1cmの円板型に切り取り、これに1〜2×10cfu/mlの濃度の被験生物1mlを接種した。各スタックを、ネジ式栓の滅菌ジャーへと無菌的に移し、350±2℃でインキュベートした。また、接種物を伴わない、処理試料および非処理試料も、対照として準備した。0時間後、および研究の実施責任者により指定された時点において、処理材料見本および非処理材料見本のセットをインキュベーターから取り出し、100mlの中和剤で中和した。AATCC試験法100規格による各生物についての要求基準に従い、プレートカウントを実施し、インキュベーションを行った。各場合の被験生物は、Eschericia coli(E.coli)であった。結果を表4に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
抗菌試験による結果は、24時間の曝露時間後において、E.Coliをいくらかでも低減するには、少なくとも250ppmのSmartsilver(登録商標)WS投入量が必要であったことを示唆する。加えて、Smartsilver(登録商標)WSの投入量を増大させたところ、観察時間内により多くの細菌が死滅した。銀ナノ粒子(SN)を投入したPTFEは、Smartsilver(登録商標)WSより有効であることがわかり、24時間後に、>99.99%のE.Coli菌を死滅させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の抗菌剤を含む不織布マットを作製する方法であって、
フッ素化ポリマー、
繊維化ポリマー、
1または複数の抗菌剤、および
溶媒
を含むディスパージョンを用意することと;
前記ディスパージョンをエレクトロスピニングして、マット前駆体をもたらすことと;
前記マット前駆体を、前記溶媒および前記繊維化ポリマーを除去するのに十分な温度で十分な時間にわたり加熱して、不織布マットを形成することと
を含む方法。
【請求項2】
前記エレクトロスピニングすることが、
電荷源、および前記電荷源から一定の距離だけ離れた所に設けた標的を含む装置を用意することと;
前記電荷源において第1の電荷を創出し、かつ前記標的において反対の電荷を創出する電圧源であって、前記電荷源との接触により前記ディスパージョンが静電的に帯電される電圧源を用意することと;
前記静電的に帯電したディスパージョンを前記標的上に収集することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1または複数の抗菌剤が、銀、銀化合物、金属酸化物、金属硫化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1または複数の抗菌剤が銀ナノ粒子を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
金属酸化物および金属硫化物が、二酸化チタン、硫化セレニウム、酸化カドミウム、酸化亜鉛、およびこれらの混合物から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記不織布マットが、1または複数の抗菌剤を、約10ppm〜約10,000ppmの量で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記不織布マットが、1または複数の抗菌剤を、約1,000ppm〜約5,000ppmの量で含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記フッ素化ポリマーが、重量で約50%〜約80%のポリマー固体を含む樹脂の形態で用意される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フッ素化ポリマーが約0.1μm〜約0.3μmの平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フッ素化ポリマーがポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フッ素化ポリマーが、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(PFA)、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレンと、フッ化ビニリデンとのコポリマー(THV)、ポリ(エチレン−co−テトラフルオロエチレン)(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ならびにこれらのコポリマー、ブレンド、および誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
繊維化ポリマーの量が、重量でフッ素化ポリマーの量の約3.0〜約5.5パーセントである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維化ポリマーが、室温で約0.5重量パーセントを超える前記溶媒中の溶解度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維化ポリマーが酸化ポリエチレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
酸化ポリエチレンが約50,000amu〜約4,000,000amuの数平均分子量を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒が水である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ディスパージョンが50,000cPを超える粘度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
粘度が約70,000cP〜約150,000cPである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
電圧が約2,000〜約100,000ボルトである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
加熱することを約350℃〜約485℃で実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
1または複数の抗菌剤を含む、不織布のポリテトラフルオロエチレン・マットを作製する方法であって、
ポリテトラフルオロエチレン、
酸化ポリエチレン、
銀、銀化合物、金属酸化物、金属硫化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される1または複数の抗菌剤、ならびに
溶媒
を含むディスパージョンを用意することと;
前記ディスパージョンをエレクトロスピニングして、ポリテトラフルオロエチレン・マット前駆体をもたらすことと;
前記ポリテトラフルオロエチレン・マット前駆体を、前記溶媒および酸化ポリエチレンを除去するのに十分な温度で十分な時間にわたり加熱して、不織布のポリテトラフルオロエチレン・マットを形成することと
を含む方法。
【請求項22】
少なくとも1つの抗菌剤が包埋されている、不織布のポリテトラフルオロエチレンを含む材料。
【請求項23】
少なくとも1つの抗菌剤が、銀、銀化合物、金属酸化物、金属硫化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項22に記載の材料。
【請求項24】
少なくとも1つの抗菌剤が銀ナノ粒子を含む、請求項23に記載の材料。
【請求項25】
金属酸化物および金属硫化物が、二酸化チタン、硫化セレニウム、酸化カドミウム、酸化亜鉛、およびこれらの混合物から選択される、請求項24に記載の材料。
【請求項26】
抗菌剤が約10ppm〜約10,000ppmの量で存在する、請求項22に記載の材料。
【請求項27】
抗菌剤が約1,000ppm〜約5,000ppmの量で存在する、請求項26に記載の材料。
【請求項28】
材料が、シート、チューブ、または被覆の形態である、請求項22に記載の材料。
【請求項29】
請求項22に記載の材料を含む濾過デバイス。
【請求項30】
医用適用または軍用適用で用いるのに適合している、請求項29に記載の濾過デバイス。
【請求項31】
請求項22に記載の材料を含む個人防護具。
【請求項32】
手術用マスク、抗菌ワイプ、衣服、および呼吸デバイスからなる群から選択される、請求項31に記載の個人防護具。
【請求項33】
請求項22に記載の材料を含む創傷包帯。
【請求項34】
請求項22に記載の材料を含む植込み式医用品。
【請求項35】
組織スキャフォールド、ステント、グラフト、および閉塞デバイスからなる群から選択される、請求項34に記載の植込み式医用品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−520584(P2013−520584A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555215(P2012−555215)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2011/056073
【国際公開番号】WO2012/051373
【国際公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【出願人】(507152349)ゼウス インダストリアル プロダクツ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】