説明

抗菌層を備える医療用デバイス

医療用デバイスは、流体のための導管を備える。この導管は、疎水性ポリマーから形成される壁を有し、この壁の上には、親水性ポリマー層が押出し成形されており、この親水性ポリマー内に、抗菌剤が、実質的に分散されている。この抗菌化合物は、所定の量の、銀のような金属が、その内部に実質的に分散している、所定の量のリンベースのガラスであり得る。この医療用デバイスは、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよび抗菌化合物によって作製される、気管内管であり得、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、および抗菌化合物を、導管に形成し、そしてこの導管の端部に、カフを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、医療用デバイスに関し、そしてより具体的には、医療用デバイスに抗菌機能を付与する方法、ならびにそのシステムおよび装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
換気器に関連する肺炎は、重大に罹患している患者における死因であり得る。気管に関連する肺炎(VAP)の約250,000の症例が、毎年報告されている。VAPに関連する死亡率は、年間約23,000の患者である(Engelmann,J.ら:Ventilator−Associated Pneumonia,Seminars in Infection Control,第1巻、第2号、2001)。
【0003】
入院の延長、換気、およびVAP感染の管理は、さらなる患者の看病に、7日間までを追加し得、そして1人の患者あたり5,000ドルを超える、増加の処置費用を加え得る。VAPに関連する費用は、1年間あたり15億ドルを超え得る。肺炎に関連する費用およびVAPの介入が減少され得ることが、望ましい。
【0004】
VAPは、侵襲性正圧医療用デバイス(例えば、医療用換気器または気管チューブ)の、長期間の使用に関連し得る。医療用デバイスは、吸引カテーテル、胃供給管、食道閉鎖具、食道バルーンカテーテル、口腔および鼻腔の気道、気管支鏡、呼吸回路、フィルタ、熱および水分の交換器、または加湿器であり得る。気管支管は、気管内(ET)管、気管カニューレ、または経気管管のような、気道管理デバイスであり得る。
【0005】
ET管のような気道管理デバイスは、VAPに関連し得る。なぜなら、これらのデバイスは、細菌のコロニー形成が起こり得る基材を提供し得るからである。コロニー形成のための細菌は、吸入されたエアロゾル、ならびに鼻腔分泌物、口腔咽頭分泌物、および胃分泌物から生じ得る。コロニー形成のための細菌はまた、汚染された医療用デバイスの表面への、微生物の接着またはバイオフィルム(biofilm)の形成から生じ得る。コロニー形成は、次に、肺の病原体の微小吸引および関連する肺感染をもたらし得る。
【0006】
図1に示されるように、コロニー形成のための細菌18は、口から、口分泌物、鼻分泌物または肺分泌物と一緒に、ET管10に沿って「流れ」得る。このような細菌は、カフ4の直前の領域まで流れ得、そしてそこに溜まり得、最終的に、ET管の外側表面に定着し得る。微生物は、非生物表面に接着し得、そして複雑なバイオフィルムを形成させ得る。この複雑なバイオフィルムは、これらの微生物を、抗菌作用に対して保護し得る。
【0007】
抗菌剤耐性バイオフィルムの増大は、感染微生物のレザバを形成し得、これらの微生物は、次いで、ETの外側表面から、保護カフを通過して移動し得、そして気管および肺を汚染し得る。微生物、血液、粘液、および細胞細片を含む肺分泌物は、ETの先端および内側管腔にコロニー形成して、抗菌剤耐性の微生物のバイオフィルムを形成し得る。このような管腔内バイオフィルムは、この気管管を閉塞し得るか、または肺内へ逆に移動し得、さらなる感染を引き起こす。
【0008】
これらのバイオフィルムおよび分泌物を、従来の吸引カテーテルを用いて除去するプロセスは、バイオフィルムの断片または感染したエアロゾルの吸引をもたらし得る。汚染された吸引カテーテル、供給管、換気器管および呼吸回路、またはフィルタ、熱および水分の交換器、ネブライザ、加熱された加湿器、あるいは他の関連する呼吸管または呼吸デバイスは、微生物汚染の源であり得、従って、バイオフィルムの形成に寄与し得る。
【0009】
細菌による管表面のコロニー形成を軽減する1つの方法は、吸引による。ETカフの上部を収集し得る声門下分泌物の吸引は、吸引の可能性を低下させ得る。声門下分泌物の慣用的な吸引は、VAPのかなりの減少に関連し得る。Mallinckrodt Hi−Lo EvacTM気管管は、一体的な声門下吸引装置を有する、ET管の一例である。
【0010】
しかし、声門下分泌物を吸引(suction)すること、吸引(aspirate)すること、または排出することは、効果的であるためには、臨床医の頻繁な介在を必要とする。VAPが、吸引に対する過度な依存なしで減少され得ることが、望ましい。VAPの発生が、効果的であるために、臨床医の側でのさらなる活動を必要とせずに減少され得ることが、望ましい。
【0011】
管表面の細菌によるコロニー形成を低減する別の方法は、多用量の抗菌剤の投与による。しかし、多用量の抗菌剤を投与することは、さらに疾患耐性の細菌型の発生を促進し得、従って、望ましくない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(要旨)
第一の実施形態において、医療用デバイスは、流体のための導管を備え、この導管は、外側表面を有する壁を備え、この壁は、疎水性ポリマーを含み、この外側表面上に、外側層が配置されており、この外側層は、第一の量の親水性ポリマーを含み、この親水性ポリマーの内部には、実質的に、抗菌化合物が分散されており、この抗菌化合物は、所定の量の金属が内部に実質的に分散した、所定の量のリンベースのガラスを含み、そしてこの壁および外側層は、押出し成形によって形成される。
【0013】
第二の実施形態において、医療用デバイスを作製する方法は、疎水性ポリマーを提供する工程、この疎水性ポリマーを押出し成形して、壁を形成する工程、内部に実質的に分散した所定の量の金属を有する、所定の量のリンベースのガラスを含む抗菌化合物を生成する工程、この抗菌化合物と親水性ポリマーとを混合する工程、ならびに内部に実質的に分散した抗菌化合物を有するこの親水性ポリマーの層を、この壁の外側表面を覆って押出し成形する工程を包含する。
【0014】
第三の実施形態において、医療用デバイスを作製するためのシステムは、疎水性ポリマーを提供するための手段、この疎水性ポリマーを押出し成形して壁を形成するための手段、所定の量の金属が内部に実質的に分散した、所定の量のリンベースのガラスを含む抗菌化合物を生成するための手段、この抗菌化合物と親水性ポリマーとを混合するための手段、および内部に実質的に分散した抗菌化合物を有するこの親水性ポリマーを、この壁の外側表面を覆って押出し成形するための手段を備える。
【0015】
第四の実施形態において、医療用デバイスは、外側表面を有する壁を備える、流体のための導管を備え、この壁は、疎水性ポリマーを含み、外側層が、この外側表面上に配置されており、この外側層は、内部に実質的に分散した抗菌化合物を有する、第一の量の親水性ポリマーを含み、この抗菌化合物は、内部に実質的に分散した所定の量の金属を有する、所定の量のリンベースのガラスを含み、そしてこの壁および外側層は、成型によって形成される。
【0016】
第五の実施形態において、医療用デバイスを作製する方法は、疎水性ポリマーを提供する工程、この疎水性ポリマーを成型して壁を形成する工程、内部に実質的に分散した所定の量の金属を有する、所定の量のリンベースのガラスを含む抗菌化合物を生成する工程、この抗菌化合物と親水性ポリマーとを混合する工程、および内部に実質的に分散した抗菌化合物を有するこの親水性ポリマーの層を、この壁の外側表面を覆って成形する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
医療用デバイスとは、生存身体の周りで使用され得るか、またはその内部に挿入され得るデバイスである。1つのこのようなデバイスは、ET管のような管であり得る。ET管が、以下の実施例において使用され得るが、本発明は、ET管に限定されない。本発明は、種々の実施形態において、他の型の医療用デバイス(例えば、管、カテーテル、ステント、供給管、呼吸回路、静脈内管、呼吸管、回路、ならびに関連する気道付属物(例えば、コネクタ、アダプタ、フィルタ、加湿器、ネブライザ、およびプロテーゼ))に、同様に適用され得る。
【0018】
微生物は、表面でのコロニー形成の開始およびバイオフィルムの形成の前に、この表面に付着し得る。微生物による表面のコロニー形成は、この微生物が、この表面に付着する前に、この表面に定着することを必要とし得る。従って、微生物が定着することを防止することにより、微生物による表面でのコロニー形成が阻害され得る。
【0019】
バイオフィルムは、一般に、コロニー協同性と記載され得る。バイオフィルムは、さらに、バイオフィルムの個々のメンバーの間での、高度な特殊化または順序を有する、混合された種であり得る。さらに、これらの生物のうちの、通常は不活性であるかまたは静かな遺伝子が、これらの生物が表面に沈降する間であるがバイオフィルム構造体の構築の前に、アップレギュレート(すなわち、オンに)され得る。アップレギュレートされた生物は、コロニー生活様式により適合可能になり得、そしてまた、過剰に悪性になり得る。
【0020】
バイオフィルムの粒子は、処置の間に、肺内に落ち得る。これらの粒子は、VAPを生じ得る。VAPはまた、カフの周りの漏出、または管の管腔から入る空気から来得る、単純なプランクトン性の(自由に浮動する)単細胞微生物によって、生じ得る。細菌は、定着し得、そしてまた、保護的な糖カリックスコーティングの増加によって、抗菌剤に対して耐性になり得、これが、経時的に、バイオフィルムになる。次いで、このバイオフィルムは、そのテクスチャーを変化させて、平滑になり得、これによって、その抗菌剤に対する防御をさらに追加する。ポリ塩化ビニル(PVC)は、いくつかの場合において、このようなバイオフィルムの形成に寄与し得る。
【0021】
微生物は、疎水性表面(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、シリコーンゴム(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS))、およびPVCの疎水性表面)上に、より定着しやすくあり得る。疎水性表面は、水をはじく。親水性表面は、対照的に、水に対する親和性によって特徴付けられ、微生物がこれらの表面に付着することを阻害し得、その結果、同様に、バイオフィルムの形成を阻害し得る。
【0022】
医療用デバイスと周囲の組織との間の摩擦は、これらの周囲の組織(例えば、声帯)の刺激を引き起こし得る。このような摩擦は、医療用デバイスを第一の位置に挿入することを、より困難にし得る。このような摩擦はまた、周囲の組織に対する外傷を生じ得る。医療用デバイスの表面が、より低い表面摩擦を有し、これによって、周囲の組織にわたってより容易にスライドすることが望ましい。
【0023】
バイオフィルムは、医療用デバイスの表面に接着し得、乾燥した分泌物の蓄積を生じる。医療用デバイスが、滑りやすい表面を有して、バイオフィルムが、この医療用デバイスの表面に接着しにくくなり得ることが望ましい。医療用デバイスが、滑りやすい表面を有して、蓄積したバイオフィルムが、吸引技術によってより容易に除去され得、これによって、頻度が低い吸引が必要とされ得ることが、さらに望ましい。
【0024】
ET管のような医療用デバイスは、カフを有し得る。このようなカフは、この管の周りにシールを形成して、そうでなければ吸引され得る分泌物を遮断し得る。このようなカフが、周囲の組織から水分を吸収する際に、厚さを膨潤させることが望ましい。このように生じる膨潤が、より低い圧力(例えば、カフと周囲の組織との間でのより低い接触圧力)でシールする能力を有することが、さらに望ましい。
【0025】
水分の連続的な濃縮および希薄化は、挿管の間、医療用デバイスにわたって起こり得る。医療用デバイスの表面が、このような濃縮勾配にわたって、例えば、浸透圧によって、水分を輸送し得ることが望ましい。気管管の内径の親水性層が、この管の低温領域において、呼息された気体から水分を濃縮および吸収し得、そして温められた水分を、乾燥したかまたは低温の吸入気体に再度蒸発させ得ることが、さらに望ましい。
【0026】
医療用デバイス、および特に、ET管は、しばしば、PVCのような疎水性材料から形成される。微生物は、この疎水性表面に渡って親水性の層を適用することによって、この疎水性表面に付着することを阻害され得る。医療用デバイスは、例えば、親水性材料でコーティングされて親水性表面を与えられた、疎水性材料から形成され得る。この親水性コーティングは、例えば、ポリウレタン(PU)(例えば、医療等級の親水性熱可塑性ポリウレタン)であり得る。親水性コーティングは、コーティング操作によって、適用され得る。
【0027】
医療用デバイス(例えば、ET管)は、呼吸を促進し得る。呼吸の二酸化炭素(CO)含有量が決定されて、その挿管が適切であるか否かを決定し得ることが望ましい。医療用デバイスの親水性表面に化学物質(例えば、酸−塩基着色色素)が注入されて、CO濃度を示すことが、さらに望ましい。
【0028】
微生物が変化して定着し、そして医療用デバイスの表面にコロニー形成する前に、これらの微生物を破壊することにより、コロニー形成を促進する条件を軽減し得る。VAPの発生が、多用量の抗菌剤への過度な依存なしで低下されることが、さらに望ましい。
【0029】
いくつかの要素(例えば、何らかの材料)は、微生物に対する有害な効果を有し得る。これらの材料のうちのいくつかは、これらが少量のみで効果を有するという点で、微量毒であり得る。いくつかの金属は、微生物の細胞壁を破壊することによって、または損細胞の代謝機能を妨害することによって、微生物を殺傷し得る。従って、これらの金属は、抗菌特性または防腐特性を有し得る。このような金属のいくつかの例は、銅、銀、または金である。例えば、銀または銀イオン(Ag)は、RSAg錯体として、細菌細胞の表面に吸着され得る。RSAg錯体は、この細胞の呼吸活動を固定し得、そして最終的に、この細胞を殺傷し得る。
【0030】
従って、親水性層は、銅、銀、または金のような金属を、金属保有材料中にさらに含み得る。いくつかの例示的な実施形態において、この金属は、銀元素、銀粉末、銀イオン(Ag)、または銀保有材料(例えば、酸化銀(AgO))であり得る。従って、親水性層は、抗菌(AM)層であり得る。この様式で、この親水性表面のコロニー形成阻害特性は、抗菌特性によって、強化され得る。
【0031】
この医療用デバイスが使用中である間に、この銀が経時的に放出されることが、望ましくあり得る。従って、1つの実施形態において、銀保有材料は、特定の処方の関数であり得る速度で水に溶解する、リンベースのガラス材料であり得る。このガラスはまた、微量の他の元素(例えば、酸化カルシウム(CaO))を含有し得る。銀が放出される速度は、さらに、このリンベースのガラス材料が水に溶解する速度の関数であり得る。銀またはリンベースのガラス材料、あるいはこれらの両方は、粉末化され得る。
【0032】
この親水性層は、使用の前に、水で濡らされ得る。この親水性層はまた、使用の間に、宿主において利用可能な水を吸引および吸収し得る。次いで、この吸収された水は、銀保有リンベースガラス材料を溶解し得、そしてこの銀を、この医療用デバイスの周囲に放出し得る。この銀保有リンベースガラス材料が水に溶解する速度は、次に、これらを溶解するために利用可能な水の量の関数であり得る。
【0033】
経時的な銀の放出(これは、溶離速度と定義され、そしてμg/cm/日で測定される)は、従って、リンベースのガラス材料の処方を特定することによって、その用途の特定の必要性にあつらえられ得る。1つの実施形態において、この銀保有材料は、約5〜10重量%(例えば、約7.5重量%)のリンベースのガラスから作製され得る。このような材料は、Giltech Limited,12 North Harbour Industrial Estate,Ayr,Scotland,Great Britain KA8 8BNから入手可能である。
【0034】
1つの実施形態において、この溶利速度は、約0.01μg/cm/日までであるべきである。別の実施形態において、この溶利速度は、約0.01μg/cm/日と1.0μg/cm/日との間であるべきである。好ましい実施形態において、この溶離速度は、例えば、約0.4μg/cm/日であるべきである。
【0035】
他の実施形態において、生物活性薬学的薬剤(例えば、気管支拡張薬、抗炎症剤、または局所麻酔剤)が、この親水性層内のリンベースのガラス材料中に、実質的に分散され得る。このような生物活性薬学的薬剤は、銀と実質的に同じ様式で、隣接組織に送達され得、そしてこの組織によって吸収され得る。銀と実質的に同じ様式での、投薬量、用利速度、および動力学の調節および制御がまた、有利な薬理学的作用または治療作用を提供し得る。
【0036】
親水性コーティングが、医療用デバイスの表面に、例えば、この表面への親水性コーティングの浸漬、スプレー、洗浄、または塗布によって、適用され得る。しかし、コーティングの体積は、このコーティングの厚さに比例するので、これらの様式のうちの1つで形成される親水性表面は、内部に銀が保有される、小さい体積のみを有し得る。さらに、浸漬、洗浄、または塗布によって、親水性コーティングが形成される場合、この銀は、このコーティングの表面のみに存在し得る。
【0037】
コーティングの体積は必然的に小さいので、この親水性コーティングは、送達前に、銀を保持する制限された能力を有し得る。さらに、銀は、この親水性コーティングの表面にのみ存在し得るので、この銀は、この医療用デバイスの使用の初期に尚早に洗浄除去され得、将来の細菌が管の表面に定着し、そしてコロニー形成することを防止するための、少ない銀を残す。
【0038】
親水性層が、医療用デバイスと供に押出し成形または成形されることが望ましい。なぜなら、押出し成形または成形の厚さの制御が、この親水性層の体積を最適にし得るからである。
【0039】
1つの実施形態において、医療用デバイスは、疎水性材料の壁を、AM材料の1つ以上の層と一緒に押出し成形することによって、形成され得る。別の実施形態において、医療用デバイスは、疎水性材料の壁を、AM材料の1つ以上の層と一緒に押出し成形することによって、形成され得る。標準的なPVC材料は、この医療用デバイスの壁を、AM材料の1つ以上の層と一緒に形成し得る。このAM層は、この医療用デバイスの壁の内側表面または外側表面に、形成され得る。このAM層は、例えば、ポリウレタン(例えば、医療等級の親水性熱可塑性ポリウレタン)から構成され得、この中に、銀を保有するリンベースのガラス材料が、実質的に分散されている。
【0040】
1つの実施形態において、このAM層は、約0.002mm〜2.5mmの範囲の厚さ、または約0.13mmの厚さであり得る。別の実施形態において、このAM層は、約0.002mm〜2.5mmの範囲の厚さであり得る。第三の実施形態において、このAM層は、約6.35mmまでの厚さであり得る。1つの実施形態において、実質的に類似の材料が、この管の内側表面と外側表面の両方を形成し得る。
【0041】
1つの実施形態において、内側または外側のAM層は、この医療用デバイスと供に、「共押出し成形」として一般的に公知のプロセスにおいて、同時に押出し成形され得る。別の実施形態において、内側と外側との両方のAM僧は、この医療用デバイスと共に、「三成分押出し成形(tri−extrusion)」と時々称されるプロセスにおいて、同時に押出し成形され得る。
【0042】
AM層を医療用デバイスの表面に適用することによって、VAPの発生を低下させ得る。AM層を、医療用デバイス上に押出し成形することによって、従来のコーティングプロセスを超える製造費用の節約もまた、得られ得る。
【0043】
1つの実施形態において、AM層はまた、医療用デバイスのカフ部分に適用される。好ましい実施形態において、このカフの外側表面のみが、AM層を有する。なぜなら、このカフの外側表面のみが、患者に曝露されるからである。AM層は、この医療用デバイスのカフ部分の外側表面に、例えば、AM層とカフの壁とを共押出し成形することによって、適用され得る。
【0044】
このカフの壁は、引き続いて、押出し成形されて、薄い壁のカフデバイスを形成し得る。このカフの壁は、例えば、押出しブロー成形のようなプロセスによって、膨張され得る。このプロセスにおいて、この押出し成形器のコアまたはマンドレルは、気体(例えば、加圧空気または窒素のような不活性ガス)を医療用デバイス内に、カフに隣接して入れるための開口部分を有する。医療用デバイスまたはパリソン(parison)が押出し成形された後に、鋳型は、マンドレルの周りにこの医療用デバイスを挟む。気体が、このマンドレルを通してこのカフの領域に入れられるにつれて、このカフは、鋳型に対して膨張する。代替において、このカフの壁は、押出し成形プロセスまたは成形プロセスに続いて、第二の別個の膨張プロセスにおいて、例えば、シャトルブロー成形プロセスを用いて、膨張され得る。
【0045】
図2には、本発明の第一の実施形態に従う医療用デバイス100が示されている。医療用デバイス100は、種々の実施形態において、カテーテル、ステント、供給管、静脈内管、ET管、回路、起動付属品、コネクタ、アダプタ、フィルタ、加湿器、ネブライザ、プロテーゼであり得る。
【0046】
医療用デバイス100は、流体のための導管102、および導管102の第一の端部114に配置された膨張可能なカフ104を有し得る。この流体は、気体、エアロゾル、懸濁物、蒸気、または気体中に分散した液体の液滴であり得る。管腔116が、カフ104を膨張させるために、導管102に沿って配置され得る。1つの実施形態において、導管102の壁112は、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよび抗菌化合物から作製される。
【0047】
図4において断面4−4で示されるように、導管102の壁412は、外側層406が親水性ポリマーから構成され、そして抗菌化合物が、壁412の外側表面408に配置されている、疎水性ポリマーから作製される。親水性ポリマーおよび抗菌化合物から構成される内側層404が、さらに、壁412の内側表面410に配置され得る。外側表面408はまた、カフ104の外側表面であり得る。
【0048】
1つの実施形態において、壁412は、親水性ポリマーおよび抗菌化合物を含む、疎水性化合物である。1つの実施形態において、親水性ポリマーおよび抗菌化合物は、実質的に分散している。すなわち、導管102の壁412を形成している疎水性化合物と混合される。別の実施形態において、親水性ポリマーおよび抗菌化合物は、例えば、カフ104を形成している親水性化合物で、カフ104内に実質的に分散される。
【0049】
第二の実施形態において、医療用デバイス100を作製する方法は、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよび抗菌化合物を提供する工程、これらの親水性ポリマーおよび抗菌化合物をあわせる工程、導管102の壁412にこの疎水性ポリマーを形成する工程、ならびにこれらの親水性ポリマーおよび抗菌化合物を、外側層406として、導管102の外側表面408上に実質的に同時に押出し成形する工程を包含する。
【0050】
別の実施形態において、この方法は、疎水性ポリマーを、導管102の端部のカフ104に形成する工程、ならびに親水性ポリマーおよび抗菌化合物を、カフ104の表面実質的に同時に押出し成形する工程を、さらに包含する。
【0051】
別の実施形態において、この方法は、壁412および外側層406が押出し成型されている間に、親水性ポリマーおよび抗菌化合物を、内側層404として、導管102の内側表面410上に実質的に同時に押出し成形する工程を、さらに包含する。
【0052】
1つの実施形態において、親水性ポリマーおよび抗菌化合物の層404の得られる厚さは、押出し成型器によって制御される。代替の実施形態において、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよび抗菌化合物を一緒に押出し成型することによって、導管102の壁412が形成される。
【0053】
1つの実施形態において、導管102の壁412は、内側層404が第一の所定の処方の親水性ポリマーおよび抗菌化合物で、導管102の内側表面410に押出し成型されている間に、疎水性化合物から押出し成形され得る。別の実施形態において、導管102の壁412は、外側層406が第二の所定の処方の親水性ポリマーおよび抗菌化合物で、導管の外側表面408に押出し成型されている間に、疎水性化合物から押出し成形され得る。代替の実施形態において、第二の所定の処方の親水性ポリマーおよび抗菌化合物から構成される外側層406は、例えば、導管102の外側表面408上に成形され得る。代替の実施形態において、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよび抗菌化合物は、例えば、一緒に配合され得、そして押出し成型されて、導管102の壁412を形成し得る。
【0054】
1つの実施形態において、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよび抗菌化合物は、例えば、一緒に配合され、そして押出し整形されて、カフ104の壁114を形成し得る。代替の実施形態において、親水性ポリマーおよび抗菌化合物は、例えば、カフ104の外側表面上に成形され得る。代替の実施形態において、親水性ポリマーおよび抗菌化合物は、例えば、カフ104の外側表面上に押出し成形され得る。代替の実施形態において、カフ104は、例えば、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよび抗菌化合物を、カフ104に押出し整形し、そしてカフ104を膨張させることによって、形成され得る。
【0055】
第三の実施形態において、医療用デバイス100を作製するためのシステムは、疎水性ポリマーを提供するための手段、この疎水性ポリマーを押出し成型して壁412を形成するための手段、内部にある量の銀が分散した、所定の量のリンベースのガラスを含む、抗菌化合物を生成するための手段、この抗菌化合物と親水性ポリマーとを混合するための手段、および内部に実質的に分散した抗菌化合物を有する親水性ポリマーの外側層406を、壁412の外側表面408を覆って押出し成型するための手段を備える。
【0056】
1つの実施形態において、導管102は、疎水性ポリマー、親水性ポリマーおよび抗菌化合物を鋳型内で成型することによって、形成される。内側層404または外側層406のうちのいずれか、あるいはこれらの両方が、壁412と一緒に、鋳型内で成形され得る。この成型プロセスは、オーバーモールディング、インサートモールディング、ブロー成型、積層ブロー成型、気体により補助される成型、熱可塑性成型、射出成型、または圧縮成型であり得る。
【0057】
壁412は、内側層404または外側層406のいずれかによって覆われた管に形成され得、そして鋳型内に挿入され得る。この管は、この鋳型の形状への適合を促進する目的で、加熱され得る。加圧空気のような流体が、この管内にポンプで入れられ得、これによって、この管は、この鋳型の内側表面に押し付けられるか、または膨張する。層404または406の厚さは、壁412と鋳型の内側表面との間のクリアランスによって、制御され得る。
【0058】
1つの実施形態において、壁412と、内側抗菌化合物層404または外側抗菌化合物層406のうちのいずれかは、医療用デバイスを形成するために、鋳型の空洞に押し込まれ得る。別の実施形態において、疎水性ポリマーから形成される壁412は、鋳型内に入れられ、そして親水性ポリマーおよび抗菌化合物の層404および406は、この壁の周りに成型される。
【0059】
図3において、本発明の実施形態と供に使用するための押出し成型器300が示されている。図3は、壁412のための疎水性ポリマーを押出し整形するためのメイン押出し成型器302、AM材料のためのサテライト押出し成型器304、および放射線非透過性材料のためのサテライト押出し成型器306を備え得る。サテライト押出し成型器304は、適合する歯車ポンプ308に供給して、AM材料を別個の層(これらの一方は、内側層404であり得、そして他方は、外側層406であり得る)に分離し得る。ヘッド310は、個々のサテライト押出し成型器からの材料の流れを収集し、これらを、壁412のための材料の流れと合流させ、そしてこれらを、医療用デバイス100に押出し成型する。
【0060】
本発明は、上で詳細に記載されたが、本発明は、記載されるような特定の実施形態に限定されることは意図されない。当業者は、ここで、本発明の概念から逸脱することなく、本明細書中に記載された特定の実施形態、ならびにこれらの実施形態の改変物および発展物の多くを使用し得ることが、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、気管内でのインサイチュの利用用デバイスを示す。
【図2】図2は、本発明の実施形態による医療用デバイスの平面図を示す。
【図3】図3は、本発明の実施形態と供に使用するための押出し成形器の概略を示す。
【図4】図4は、図2の実施形態による医療用デバイスの断面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイスであって、以下:
流体のための導管であって、該導管は、外側表面を有する壁を備え、該壁は、疎水性ポリマーを含む、導管;
該外側表面上に配置された外側層であって、該外側層は、内部に実質的に分散されている抗菌化合物を有する、第一の量の親水性ポリマーを含む、外側層;
を備え、
該抗菌化合物は、内部に実質的に分散された所定の量の金属を有する、所定の量のリンベースのガラスを含み、そして
該壁および該外側層が、押出成型によって形成されている、
医療用デバイス。
【請求項2】
前記金属が:
銅、
金、
銀粉末、
実質的に元素の銀、
銀イオン、
酸化銀、および
これらの組み合わせ、
からなる群より選択される、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項3】
前記壁が、
内側表面;
該内側表面上に配置された内側層であって、該内側層は、内部に実質的に分散された前記抗菌化合物を有する、第二の量の前記親水性ポリマーを含む、内側層、
をさらに備え;そして
該内側層が、押出成型によって形成されている、
請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記内側層の厚さが、約0.002mm〜2.5mmの範囲内である、請求項3に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記外側層の厚さが、約0.002mm〜2.5mmの範囲内である、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項6】
内部に実質的に分散された前記抗菌化合物を有する、第三の量の前記親水性ポリマーが、前記壁内に実質的に分散されている、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項7】
カフをさらに備え、該カフは、前記医療用デバイスの周りに配置されたカフ外側表面、該カフ外側表面上に配置されたカフ外側層を有し、該カフ外側層は、内部に実質的に分散された前記抗菌化合物を有する、第四の量の前記親水性ポリマーを含み;
該カフ外側層が、押出成型によって形成されている、
請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項8】
前記親水性ポリマーが、ポリウレタンを含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項9】
前記親水性ポリマーが、医療等級の親水性熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項10】
前記金属が、前記抗菌化合物から放出可能である、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項11】
前記金属が、約0.01μg/cm/日までの溶離速度で放出される、請求項10に記載の医療用デバイス。
【請求項12】
前記金属が、約0.01μg/cm/日と約1.0μg/cm/日との間の溶離速度で放出される、請求項10に記載の医療用デバイス。
【請求項13】
前記金属が、約0.4μg/cm/日の溶離速度で放出される、請求項10に記載の医療用デバイス。
【請求項14】
前記所定の量のリンベースのガラスが、前記抗菌化合物の重量の約0.1〜50%を構成する、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項15】
前記疎水性ポリマーが:
PVC、
PE、
PU、
PDMS、
ポリエステル、
シリコーン、および
ゴム、
からなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項16】
前記医療用デバイスが、気管内チューブを備える、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項17】
前記医療用デバイスが:
カテーテル、
ステント、
栄養管、
呼吸回路、
静脈内管、
回路、
補助気道、
コネクタ、
アダプタ、
フィルタ、
加湿器、
ネブライザ、および
プロテーゼ、
からなる群より選択される、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項18】
前記抗菌化合物が:
二酸化炭素濃度の指示薬、
気管支拡張薬、
抗炎症性薬剤、および
局所麻酔薬、
からなる群より選択される薬剤をさらに含有する、請求項1に記載の医療用デバイス。
【請求項19】
請求項1に記載の医療用デバイスを作製する方法であって:
疎水性ポリマーを提供する工程;
該疎水性ポリマーを押出成型して、壁を形成する工程;
内部に実質的に分散した所定の量の金属を有する、所定の量のリンベースのガラスを含む、抗菌化合物を生成する工程;
該抗菌化合物と親水性ポリマーとを混合する工程;および
内部に実質的に分散した該抗菌化合物を有する該親水性ポリマーを、該壁の外側表面を覆って押出成型する工程、
を包含する、方法。
【請求項20】
内部に実質的に分散した前記抗菌化合物を有する前記親水性ポリマーの層を、前記壁の内側表面を覆って押出成型する工程をさらに包含する、請求項19に記載の医療用デバイスを作製する方法。
【請求項21】
前記導管の端部にカフを形成する工程をさらに包含する、請求項19に記載の医療用デバイスを作製する方法。
【請求項22】
医療用デバイスを作製するためのシステムであって、以下:
疎水性ポリマーを提供するための手段;
該疎水性ポリマーを押出成型して壁を形成するための手段;
内部に実質的に分散された所定の量の金属を有する、所定の量のリンベースのガラスを含む抗菌化合物を生成するための手段;
該抗菌化合物と親水性ポリマーとを混合するための手段;および
内部に実質的に分散された該抗菌化合物を有する該親水性ポリマーの層を、該壁の外側表面を覆って押出成型するための手段、
を備える、システム。
【請求項23】
医療用デバイスであって、以下:
流体のための導管であって、該導管は、外側表面を有する壁を備え、該壁は、疎水性ポリマーを含む、導管;
該外側表面上に配置された外側層であって、該外側層は、内部に実質的に分散された抗菌化合物を有する、第一の量の親水性ポリマーを含む、外側層、
を備え;
該抗菌化合物が、内部に実質的に分散された所定の量の金属を有する、所定の量のリンベースのガラスを含み;そして
該壁および該外側層が、成型によって形成されている、
医療用デバイス。
【請求項24】
前記成型が:
オーバーモールディング、
インサートモールディング、
吹込成型、
積層吹込成型、
射出成型、および
圧縮成型、
からなる群より選択される、請求項23に記載の医療用デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−525089(P2006−525089A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513421(P2006−513421)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/013196
【国際公開番号】WO2004/096330
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(500471397)マリンクロット・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MALLINCKRODT INC.
【住所又は居所原語表記】675 McDonnell Boulevard, P.O.Box 5840, St. Louis, MO 63134, U.S.A.
【Fターム(参考)】