説明

抗菌性コーティングを医療デバイスに塗布するためのシステムおよび方法

抗菌性コーティングを医療デバイスに塗布するための方法を開示する。一般に、それらの方法は、医療デバイスを用意するステップと、抗菌性コーティングをデバイスに施こすステップと、過剰のコーティングをデバイスから洗い流すステップと、コーティングをデバイス上に硬化させるステップとを含む。一態様において、コーティングは、UV硬化性抗菌性組成物を含む。この態様において、医療デバイスを被覆することができ、コーティングを数秒間でUV光により硬化させることができる。別の態様において、コーティングは、アクリレート型ポリマーまたはアクリレート型コポリマーを含む抗菌性溶液を含む。この態様において、医療デバイスを被覆することができ、コーティングを数分間で熱硬化させることができる。UV硬化性組成物および抗菌性溶液の両方が、必要に応じて流動改質剤を含むこともできる。また、それらの組成物は、多種多様な薬剤から選択できる1つまたは複数の抗菌剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な医療用途において抗菌性コーティングを使用するためのシステムおよび方法に関する。近代の医学的治療の主な課題の1つは、微生物の感染および蔓延の抑制である。
【背景技術】
【0002】
この課題が常に提起される1つの分野は、様々な種類の点滴治療にある。点滴治療は、最も一般的な医療処置の1つである。入院患者、自宅看護患者および他の患者は、血管系に挿入された血管アクセスデバイスを介して液体、医薬および血液製剤を受ける。感染を治療し、麻酔もしくは鎮痛を提供し、栄養補助を提供し、癌成長を治療し、血圧および心臓律動性を維持するために、または多くの他の臨床的に有意な用途のために点滴治療を使用することができる。
【0003】
点滴治療は、血管アクセスデバイスによって促進される。血管アクセスデバイスは、患者の末梢または中枢血管系にアクセスすることができる。また、血管アクセスデバイスは、短期間(例えば数日間)、中期間(例えば数週間)または長期間(例えば数カ月間から数年間)にわたって留置することができる。血管アクセスデバイスを連続的点滴治療または断続的治療のために使用することもできる。
【0004】
一般的な血管アクセスデバイスは、患者の静脈に挿入されるプラスチックカテーテルである。一般に、当該カテーテルの長さは、末梢アクセスのための数センチメートルから中枢アクセスのための多センチメートルの範囲であってよい。カテーテルは経皮的に挿入することができ、または患者の皮膚の下に外科移植することができる。カテーテル、またはそれに装着された任意の他の血管アクセスデバイスは、単一の管腔、または多くの液体を同時に注入するための複数の管腔を有することができる。
【0005】
血管アクセスデバイスは、一般には、他の医療デバイスを装着できるアダプタ(例えばルアーアダプタ)を含む。例えば、投与セットを血管アクセスデバイスの一端に装着し、静脈(IV)袋を他端に装着することができる。投与セットは、液体および医薬の連続注入のための液体導管である。一般に、IVアクセスデバイスは、別の血管アクセスデバイスに装着し、血管アクセスデバイスを閉鎖し、液体および医薬の断続的注入または注射を可能にする血管アクセスデバイスである。IVアクセスデバイスは、筐体および系を閉鎖するための隔膜を含むことができる。隔膜をブラントカニューレまたは医療デバイスの雄型ルアーで開放することができる。
【0006】
血管アクセスデバイスの隔膜が適正に動作できないか、または不十分な設計特徴を有する場合は、特定の併発症が起こり得る。点滴治療に伴う併発症は、重大な罹患およびさらには死亡を引き起こし得る。1つの重大な併発症は、カテーテル関連血流感染(CRBSI)である。米国の病院では推定で年間250000〜400000件の中枢静脈カテーテル(CVC)関連血流感染(BSI)が発生している。
【0007】
現行の血管アクセスデバイスは、他の医療デバイスによる血管アクセスデバイスの装着および/またはアクセス中に適正に機能する隔膜を提供することによって、CRBSIをもたらす感染などの併発症を防止する。適正に機能する隔膜は、一部に、他の医療デバイスによる装着および/またはアクセス中に血管アクセスデバイスの内部環境と外部環境の間の感染遮断物として作用することになる。感染遮断物として適正に機能することによって、隔膜は、CRBSIおよび他の併発症を最小限に抑える。
【0008】
場合によっては、血管アクセスデバイスは、汎発性BSIをもたらす感染の核として作用し得る。これは、定期的にデバイスを洗浄することを怠ること、非無菌挿入技術、またはカテーテル挿入後に流路のいずれかの端部を介して液体流路に入る病原体によって引き起こされ得る。血管アクセスデバイスが汚染されると、病原体は、血管アクセスデバイスに接着し、コロニー形成し、生物膜を形成する。多くの当該生物膜は、様々な殺生剤に対して抵抗性を有し、患者の血流に入ってBSIを引き起こす病原体の補給源を提供する。
【0009】
過去数十年間にわたって、熱可塑性ポリウレタン溶液を抗菌性コーティングの担体として使用することが慣例であった。溶媒は、通常、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、または両者のブレンドである。THFは、非常に迅速に酸化することができ、非常に強い爆発性を有する傾向があるため、THFを溶媒として使用する場合は高価な防爆のコーティング設備が必要である。THFおよびDMFなどの強過ぎる溶媒は、毒性が強く、環境的に有害でもある。さらに、強過ぎる溶媒は、医療デバイス(例えば血管アクセスデバイス)を製造するために使用される大抵のポリマー材料(すなわちポリウレタン、シリコーン、ポリイソプレン、ブチルゴムポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、PETおよびアクリル)を攻撃する傾向がある。したがって、これらの材料で作製される医療デバイスは、変形し、かつ/またはそれらの表面に微小亀裂を形成し得る。強過ぎる溶媒を含むコーティングの別の問題は、当該コーティングが、一般に、溶媒を完全に熱蒸発させるために比較的長い時間(例えば24時間)を必要とすることである。強過ぎる溶媒を含むコーティングのさらに別の問題は、当該溶媒を医療デバイスの表面全体に均一に塗布することが困難なことである。よって、強過ぎる溶媒を使用する従来の技術は、処理および性能に関して根強い問題がある。
【0010】
医療デバイスに抗菌性を付与するための別の従来の方法は、銀塩および銀元素の使用を含む。銀塩および銀元素は、医療外科業界および全般的な産業の両方において周知の抗菌剤である。それらは、通常、ポリマーバルク材料に含められるか、またはプラズマ、熱蒸着、電気メッキ、もしくは従来の溶媒コーティング技術によって医療デバイスの表面に塗布される。しかし、これらの技術は、しばしば非常に単調で、高価で、時間がかかり、環境的に有害である。
【0011】
加えて、銀コーティング医療デバイスの性能は、せいぜい月並みである。例えば、銀塩または銀元素から電離した銀イオンが抗菌剤として一定の効果を達成できるまで8時間までの時間を要し得る。その結果、銀コーティングが一様に効果的になる前に実質的な微生物活性が生じ得る。また、銀化合物または銀元素は、濃琥珀色から黒色の不快な色を有する。
【0012】
よって、当該技術分野において、様々な種類の医療デバイス、特に点滴治療に関連するデバイスに抗菌機能を付与するための改良されたコーティングが必要である。当該抗菌性コーティングを医療デバイスに塗布する改良された方法も必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願第12/397,760号明細書
【特許文献2】米国特許出願第12/476,997号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、抗菌性コーティングを医療デバイスに塗布するための現在利用可能なシステムおよび方法によってまだ十分に解決されていない当該技術分野での問題および必要性に対応して開発された。したがって、本方法、システムおよび組成物は、医療デバイスに改良された抗菌性コーティングを塗布するための改良された方法およびシステムを提供することによって、問題(例えば、CRBSIの発生、強過ぎる溶媒によって引き起こされる医療デバイスの損傷、強過ぎる溶媒によって引き起こされる環境的損傷など)を軽減するために開発されている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一般に、本発明は、医療デバイスに抗菌性コーティングを塗布することを含む。本方法を使用して、様々な材料から作製された医療デバイスを被覆することができる。しかし、いくつかの好適な実施態様において、本方法を使用して、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリルおよびそれらの組合せを含むが、それらに限定されない1つまたは複数のポリマー基板を含む医療デバイスを被覆する。
【0016】
本方法を、広範なコーティングの1種または複数を用いて実施することができる。しかしながら、好適なコーティングは、紫外光(UV)硬化性抗菌性組成物および抗菌性溶液から選択される。
【0017】
コーティングがUV硬化性抗菌性組成物を含む場合には、UV硬化性組成物は任意の好適な成分を含むことができる。いくつかの実施態様において、UV硬化性組成物は、少なくとも1つのアクリレート型官能基を有する1つまたは複数のウレタンまたはポリエステル型オリゴマー、アクリル型モノマーおよび光開始剤を含むUV硬化性材料を含む。また、いくつかの実施態様において、UV硬化性組成物は、1つまたは複数の流動改質剤および抗菌剤をさらに含む。
【0018】
コーティングが抗菌性溶液を含む場合には、溶液は任意の好適な成分を含むことができる。実際、いくつかの実施態様において、溶液は、1つまたは複数の溶媒、コーティング樹脂、流動改質剤および抗菌剤を含む。
【0019】
本方法は、一般に、医療デバイスを用意するステップと、抗菌性コーティングをデバイスの表面に施こすステップと、過剰のコーティングをデバイスから洗い流すステップと、コーティングをデバイス上に硬化させるステップとを含む。勿論、それらの方法を任意の好適な方式で改造することができる。改造の一例において、それらの方法は、デバイスの一部をマスキングして、マスキングによって被覆された医療デバイスの部分にコーティングが堆積されることを防止するステップを含む。
【0020】
本方法において、コーティングを任意の好適な方式でデバイスの表面上に施こすことができる。一例において、装置が、計算された量のコーティングをデバイスに注入する。
【0021】
抗菌性コーティングを医療デバイスに塗布した後に、過剰のコーティングが存在すれば、それを任意の好適な方式でデバイスから除去することができる。例えば、デバイスからの過剰のコーティングに不活性ガスを吹きつけること、医療デバイスを遠心で旋回させること、デバイスを材料で拭くこと、重力を利用すること等によって過剰のコーティングを除去することができる。しかし、ここで好適ないくつかの実施態様において、窒素ガスを使用して、医療デバイスからの過剰のコーティングに吹き付けを行う。
【0022】
過剰のコーティングを医療デバイスから除去すると、コーティングを任意の好適な方式で硬化させることができる。例えば、UV硬化性組成物を、UV光への露光を介して迅速に硬化させることができる。例えば、UV硬化性組成物を医療デバイスに塗布した後に、処方および硬化条件に応じて、組成物を数秒または数分以内に硬化させることができる。別の例において、抗菌性溶液を熱(例えば赤外線熱)への曝露によって比較的迅速に硬化させることができる。実際、特定の状況下で、溶液を約5分以内に摂氏約100度(C)で熱硬化させることができる。
【0023】
本発明の方法は、IVアクセスデバイスを被覆する分野において特に有用であることが証明されたが、物体に抗菌性コーティングを塗布することを含む様々な異なる製造分野における様々な異なる用途に本方法を使用できることを当業者なら理解するであろう。
【0024】
本発明のこれらの特徴および他の特徴ならびに利点は、以降の説明および添付の特許請求の範囲において記載されているか、またはより明らかになるであろう。それらの特徴および利点を、特に添付の特許請求の範囲に指摘されている装置および組合せによって認識および取得することができる。また、本発明の特徴および利点は、本発明の実施によって学習され得るか、または以降に記載される説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の上記特徴および他の特徴ならびに利点を取得する方法を、容易に理解するために、添付の図面に示されるその具体的な実施形態を参照することによって、簡単に上述した本発明のより具体的な説明を提示する。これらの図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示すため、その範囲を限定するものと見なされるべきでないことを理解した上で、添付の図面の使用を介して、本発明をさらに具体的かつ詳細に記載および説明する。
【0026】
【図1】医療デバイスに抗菌性コーティングを塗布するための方法の代表的な実施形態の構成図である。
【図2】医療デバイスに抗菌性コーティングを塗布するための方法の代表的な実施形態の構成図である。
【図3】IVアクセスデバイスの代表的な実施形態の斜視図である。
【図4A】抗菌性コーティングを医療デバイスに塗布するためのシステムの代表的な実施形態の斜視図である。
【図4B】図4Aに示されるシステムの動作中に医療デバイスを保持するための代表的なパレットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、医療デバイスの1つまたは複数の表面に抗菌性コーティングを塗布するための方法および組成物に関する。抗菌性コーティングを医療デバイス上に硬化させると、コーティング中の抗菌剤は、コーティングがIV液または他の種類の液体によって軟化されたときにコーティングから徐々に拡散することができる。よって、医療デバイスの被覆面に接触する微生物を殺すことができ、医療デバイスは、長時間にわたって衛生状態を維持することができる。
【0028】
図1は、本コーティング方法の代表的な実施形態を示す。具体的には、図1は、医療デバイスに抗菌性コーティングを塗布するための方法10が、一般に、医療デバイス12を用意するステップと、抗菌性コーティングをデバイス14上に施こすステップと、過剰のコーティングをデバイス16から洗い流すステップと、コーティングをデバイスに硬化させるステップとを含むことを示す。本コーティング方法をより深く理解するために、以下の開示は、コーティング方法に使用できる医療デバイスおよび抗菌性コーティング、方法の様々な段階、ならびに方法を実施こすためのシステムのより詳細な開示を提供する。
【0029】
本コーティング方法に使用できる医療デバイスの種類に関して、IVアクセスデバイス、医療用チューブ、カテーテル組立品、および患者に流入する、または患者から流出する液体と接触する任意の他の実用可能な医療用装置を含むが、それらに限定されない任意の好適な医療デバイスに対してそれらの方法を使用することができる。
【0030】
医療デバイスは、本方法に使用するのに好適である任意の材料を含むことができる。しかし、いくつかの典型的な実施形態において、医療デバイスは、1つまたは複数のポリマー基板を含む。例えば、医療デバイスは、1つまたは複数のポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、シリコーン、PETプラスチック、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルおよびそれらの組合せを含むことができる。
【0031】
抗菌性コーティングは、医療デバイスに対して使用するのに好適である任意の好適な抗菌性組成物を含むことができる。しかしながら、好適な実施形態において、抗菌性コーティングは、UV硬化性抗菌性組成物および抗菌性溶液から選択される。UV硬化性組成物および抗菌性溶液をより深く理解するために、各々を以下により詳細に説明する。
【0032】
ここで好適ないくつかの実施形態において、抗菌性コーティングは、UV硬化性抗菌性組成物を含む。当該実施形態において、UV硬化性組成物は、任意の好適な成分を含むことができる。本発明の一態様において、UV硬化性コーティングは、UV硬化性ポリマー組成物を形成することが可能である材料(本明細書ではUV硬化性材料と称する)を含む。UV硬化性材料は、任意の好適な成分を含むことができるが、いくつかの好適な実施形態において、UV硬化性材料は、1つまたは複数のオリゴマー、モノマーおよび光開始剤を含む。UV硬化性材料に加えて、UV硬化性組成物は、効果的な抗菌剤をさらに含む。UV硬化性組成物を形成するために一緒に添加される様々な成分を以下に記載する。以下の説明において、UV硬化性材料は、100重量部を構成することになる。また、UV硬化性組成物を形成するためにUV硬化性材料に添加される成分は、100重量部のUV硬化性材料に添加される重量部で定義されることになる。
【0033】
UV硬化性材料は、UV硬化性組成物の他の成分と相溶性があり、本発明の範囲内で使用可能である任意のオリゴマーを含むことができる。しかしながら、オリゴマーは、一般に、1つまたは複数のアクリル化脂肪族ウレタン、アクリル化芳香族ウレタン、アクリル化ポリエステル、不飽和ポリエステル、アクリル化ポリエーテルおよびアクリル化アクリル等またはそれらの組合せから選択される。実際、いくつかの実施形態において、UV硬化性コーティングは、ウレタンまたはポリエステル型アクリレート、例えば、Electronic Materials Incs.(EMI)(EM Breckenridge,Co)の7104、7101、7124−K、7105−5K、Dymax Corporation(コネチカット州Torrington)の1168−M、I−20781、またはPermabond Engineering Adhesives(ニュージャージ州Somerset)のUV630を含む。オリゴマーがアクリル化官能基を含む場合には、官能基は、好ましくは、一官能性、二官能性、三官能性、四官能性、五官能性および六官能性アクリレートから選択される。
【0034】
オリゴマーは、UV硬化性材料の任意の好適な部分を占めることができる。しかし、典型的には、オリゴマーは、UV硬化性材料の約10%から約90%を構成することになる。いくつかの好適な実施形態において、オリゴマーは、UV硬化性材料の約20%から約80%を構成する。しかし、一部の他の実施形態において、オリゴマーは、UV硬化性材料の約30%から約70%を構成する。
【0035】
UV硬化性材料におけるモノマーを、UV硬化性組成物の他の成分と相溶性があり、本発明の範囲内で使用可能である任意のモノマーから選択することができるが、モノマーは、好ましくは、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、イソボルニルアクリレート、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメトキシフェニルアセトフェノンヘキシルメチルアクリレート、メタクリル酸1,6−ヘキサンジオール等またはそれらの組合せから選択される。
【0036】
典型的な実施形態において、モノマーは、UV硬化性材料の約5%から約90%を構成する。しかし、他の実施形態において、モノマーは、UV硬化性材料の約10%から約75%を構成する。さらに他の実施形態において、モノマーは、UV硬化性材料の約20%から約60%を構成する。
【0037】
光開始剤は、UV硬化性組成物(すなわちUV硬化性材料)の他の成分と相溶性があり、本発明の範囲内で使用可能である任意の光開始剤を含むことができる。一般に、光開始剤は、単一の分子開裂型光開始剤、例えば、1つまたは複数のベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンゾイルオキシムおよびアシルホスフィン酸化物;または水素誘引型光開始剤、例えば、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントロギオノン、ベンゾフェノン、メチルジエタノールアミンおよび2−N−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートから選択される。
【0038】
光開始剤は、典型的には、UV硬化性材料の約0.5%から約10%を構成する。実際、いくつかの実施形態において、光開始剤は、UV硬化性材料の約1%から約8.5%を構成する。さらに他の実施形態において、光開始剤は、UV硬化性材料の約2%から約7%を構成する。
【0039】
抗菌剤は、UV硬化性組成物の他の成分と相溶性があり、本発明の範囲内で使用可能である任意の抗菌剤を含むことができる。また、いくつかの実施形態において、抗菌剤は、UV硬化性組成物に溶解するか、または均一に分散され得る薬剤を含む。よって、当該実施形態において、十分な抗菌剤がUV硬化性組成物内を移動して、微生物活性の箇所に接触することができる。いずれの場合も、抗菌剤は、UV硬化性組成物の他の成分と化学的に反応しないことが好適である。UV硬化性組成物との使用に好適である抗菌剤のいくつかの例としては、1つまたは複数のアルデヒド、アニリド、ビグアニド、銀、銀化合物、ビスフェノールおよび第四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0040】
抗菌剤は、一般に、100重量部のUV硬化性材料に対して、約0.5から約50重量部の量でUV硬化性組成物に存在する。他の実施形態において、抗菌剤は、100重量部のUV硬化性材料に対して、約0.5から約30重量部の量でUV硬化性組成物に存在する。UV硬化性組成物のさらなる実施形態において、抗菌剤は、100重量部のUV硬化性材料に対して、約0.5から約20重量部の量で存在する。
【0041】
前記材料に加えて、UV硬化性組成物は、任意の他の好適な成分を含むことができる。実際、一部の実施形態において、UV硬化性組成物は、組成物の流動特性を向上させ、成分を組成物全体に均一に分散させるのに役立つ流動改質剤をも含む。当該実施形態において、流動改質剤は、好ましくは、有機粘土、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカから選択される。また、当該実施形態において、流動改質剤は、一般には、100重量部のUV硬化性材料に添加される約0.1から約30重量部を構成する(すなわち、UV硬化性材料は100重量単位であり、流動改質剤は、100重量部のUV硬化性材料に添加される追加的な重量の約0.1から約30重量部を構成する)。他の実施形態において、流動改質剤は、100重量部のUV硬化性材料に対して0.1から約20重量部を構成する。一部のさらなる実施形態において、流動改質剤は、100重量部のUV硬化性材料に対して約0.2から約10重量部を構成する。
【0042】
UV硬化性組成物は、任意の他の好適な特徴を有することもできる。例えば、いくつかの実施形態において、UV硬化性組成物は、約10000センチポアズ(cps)未満の粘度を有する。他の実施形態において、UV硬化性組成物の粘度は、約5000cps未満である。ここで好適ないくつかの実施形態において、UV硬化性組成物は、約20から約1000cpsの粘度を有する。
【0043】
UV硬化性組成物を以上に具体的に説明したが、UV硬化性組成物のより詳細な説明は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2009年3月4日に出願され、「Antimicrobial Compositions」という名称の特許文献1に見いだされる。
【0044】
抗菌性コーティングが抗菌性溶液を含む場合には、溶液は、任意の好適な成分を含むことができる。いくつかの実施形態において、抗菌性溶液は、アクリレートポリマーまたはアクリレートコポリマー、溶媒および抗菌剤を含む。抗菌性溶液をより深く理解するために、その前記成分の各々を以下により詳細に説明する。
【0045】
アクリレートポリマーまたはアクリレートコポリマーは、抗菌性溶液の他の成分と相溶性があり、本発明の範囲内で使用可能である任意のアクリレートポリマーおよび/またはコポリマーを含むことができる。いくつかの実施形態において、アクリレート型ポリマー、コポリマーまたはポリマー樹脂は、水に不溶であるが、以降に記載する溶媒の1種または複数に可溶である。例えば、アクリレートポリマーまたはアクリレートコポリマーは、一般に、1つまたは複数のアクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アルキルヒドロキシル(メタ)アクリレートおよびアルキルメトキシシンナメートアクリレートから選択される。この例において、アクリレートは、アクリル酸アルキル、アルキルヒドロキシ(メタ)アクリレートまたはメタクリル酸アルキルであり得る。また、この例において、アルキル基は、0から22の炭素数を有することができる(0は水素を指し、1はメチル基を指し、2はエチル基を指し、3はプロピル基を指すなどであるが、0から6の数字が好ましく、0から3がより好ましい)。
【0046】
抗菌性溶液における溶媒は、抗菌性溶液の他の成分と相溶性があり、溶液が意図された通りに機能することを可能にする任意の溶媒を含むことができる。例えば、溶媒は、前記アクリレートポリマーまたはアクリレートコポリマーを溶解させることが可能である様々な溶媒の1種または複数を含むことができる。好適な溶媒のいくつかの例としては、1つまたは複数の低分子量アルコール、低分子量アルカン、単純ケトンおよびそれらの組合せが挙げられる。好適な低分子量アルコールのいくつかの例は、1から6個の炭素を含むアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール)を含む。しかし、メタノールは比較的迅速に蒸発するため、いずれの実施形態においてもメタノールは好適でない。その代わり、ここで好適ないくつかの実施形態において、溶媒は、エタノールまたはイソプロパノールを含む。好適な低分子量アルカンのいくつかの好適な例は、5から7個の炭素を有するアルカン(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびそれらの異性体)を含む。実際、いくつかの好適な実施形態において、溶媒は、ヘキサンおよび/またはヘプタンを含む。また、好適な単純ケトンの例はアセトンである。しかし、アセトンを含むいくつかの実施形態において、溶媒は、好ましくは、アルコールまたはアルカンなどの別の溶媒をも含むことに留意されたい。
【0047】
溶媒は、抗菌性溶液の任意の好適な量を構成することができるが、いくつかの実施形態において、溶媒は、抗菌性溶液の乾燥重量の約67%未満を構成する。例えば、ポリマーが抗菌性溶液の約60%±10%を占める場合には、溶媒は、溶液の約40%±10%未満を占めることができる。しかし、他の実施形態において、溶媒は、組成物の乾燥重量の約50%未満を構成する。さらに他の実施形態において、溶媒は、組成物の乾燥重量の約40%未満を構成する。
【0048】
抗菌性溶液における抗菌剤は、溶液の他の成分と相溶性があり、溶液が意図した通りに機能することを可能にする任意の抗菌剤を含むことができる。実際、抗菌性溶液のための抗菌剤は、一般に、1つまたは複数のアルデヒド、アニリド、ビグアニド、銀、銀化合物、ビスフェノールおよび第四級アンモニウム化合物から選択される。場合によっては、抗菌剤は、好ましくは、塩化セチルピリジウム、セトリミド、塩化ベンズアルコニウム、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジンおよびo−フタルアルデヒドから選択される。
【0049】
抗菌剤は、抗菌性溶液の任意の好適な量を構成することができ、いくつかの実施形態において、抗菌剤は、溶液の乾燥重量の約50%未満を構成する。他の実施形態において、抗菌剤は、抗菌性溶液の乾燥重量の約30%未満を構成する。さらに他の実施形態において、抗菌剤は、抗菌性溶液の乾燥重量の約0.5%から約20%を構成する。
【0050】
前記成分に加えて、抗菌性溶液は、任意の他の好適な成分を含むことができる。実際、いくつかの実施形態において、抗菌性溶液は、一般に、有機粘土、キャスター蝋、ポリアミド蝋、ポリウレタンおよびヒュームドシリカから選択される流動改質剤を含む。当該実施形態において、流動改質剤は、一般に、抗菌性溶液の乾燥重量の約0.2%から約30%の量で存在する。すなわち、溶媒が蒸発したときの組成物の重量である。一部の他の実施形態において、流動改質剤は、抗菌性溶液の乾燥重量の約0.2%から約20%の量で存在する。一部の他の実施形態において、流動改質剤は、抗菌性溶液の乾燥重量の約0.2%から約10%の量で存在する。
【0051】
抗菌性溶液を以上に具体的に説明したが、抗菌性溶液のより詳細な説明は、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2009年6月2日に出願され、「Antimicrobial Coating Compositions」という名称の特許文献2に見いだされる。
【0052】
本方法を任意の好適な方式で実行または改造することができる。例として、図2は、医療デバイスを被覆するための本方法の好適な1つの実施形態を示す。具体的には、図2は、方法11が、医療デバイスを用意することによって12で開始する例を示す。
【0053】
次に、13において、図2は、方法10が医療デバイスの1つまたは複数の所望の部分をマスキングして、抗菌性コーティングがマスキングされた部分と接触することを防止するステップを場合によって含むことを示す。例として、図3は、医療デバイスが、ルアー構成要素102を有するIVアクセスデバイス100(例えばBECTON DICKINSONのQ−SYTE(登録商標)IVアクセスデバイス)の一部を含む場合に、ルアー102の外面が抗菌性コーティングで被覆されるのを防止するように、ルアー構成要素102を医療用チューブ104に挿入できることを示す。
【0054】
図2に戻ると、ボックス14は、方法10が、抗菌性コーティング(例えば、UV硬化性組成物または抗菌性溶液)を医療デバイス上に施こすことによって継続することを示す。任意の好適な量の抗菌性コーティングを医療デバイスの所望の(1つまたは複数の)表面上に施こすことができる。例えば、医療デバイスが図3のIVアクセスデバイスを含む場合には、約0.01から約0.05グラムの抗菌性コーティングをデバイスの内部管腔106に施こすことができる。さらに別の例において、医療デバイスが図3のIVアクセスデバイスを含む場合には、約0.02から約0.04グラムの抗菌性コーティングをデバイスの内部管腔に施こす。
【0055】
抗菌性コーティングを医療デバイス上に施した後に、図2のボックス16は、デバイス上の過剰のコーティングを洗い流すか、または医療デバイスから別のやり方で除去することを示す。このようにして、抗菌性コーティングが、被覆表面全体にわたって均一の厚さを有するようにすることができる。不活性ガスを医療デバイスの被覆表面全体に吹きつけること、医療デバイスを遠心で旋回させること、過剰の材料を引力によりデバイスから滴下させること等を含む任意の好適な方法で過剰のコーティングを除去することができる。しかしながら、ここで好適ないくつかの実施形態において、窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの加圧不活性ガスを被覆表面全体に吹きつける。例として、医療デバイスが図3のIVアクセスデバイス100を含む場合には、好ましくは、約5から約25ポンド毎平方インチ(psi)(例えば10psi±5psi)の空気圧の窒素などの不活性ガスを被覆面に吹きつける。
【0056】
本方法を通じて廃棄される抗菌性コーティングの量を減少させるために、図2のボックス17は、医療デバイスから洗い流される過剰の抗菌性コーティングを場合により回収およびリサイクルすることを示す。換言すれば、過剰の抗菌性コーティングを回収し、別の医療デバイスを被覆するために使用することができる。
【0057】
過剰の抗菌性コーティングを医療デバイスから除去すると、ボックス20および22は、デバイス上に残ったコーティングを硬化させることを示す。抗菌性コーティングを任意の好適な方法で硬化させることができるが、ボックス20は、抗菌性コーティングがUV硬化性組成物を含むいくつかの実施形態において、UV硬化性組成物をUV光に露光することによって硬化させることを示す。当該実施形態において、UV硬化性組成物を任意の波長のUV光に露光することができる。1つの例において、UV硬化性組成物を、約320から約500nmの波長のUV光に露光する。別の例において、UV硬化性組成物を、約350から約450nmの波長の光に露光することによって架橋させる。
【0058】
また、UV硬化性組成物が乾燥し、医療デバイスに硬化されることを可能にする任意の時間にわたってUV硬化性組成物をUV光に露光することができる。実際、1つの例において、UV硬化性組成物はUV光への約1分未満の露光後に硬化する。別の例において、UV硬化性コーティングはUV光への約30秒未満の露光後に硬化する。さらに別の例において、UV硬化性コーティングはUV光への約10秒未満の露光後に硬化する。最後の例において、UV硬化性コーティングはUV光への約4秒未満の露光後に硬化する。
【0059】
次にボックス22を参照すると、図2は、抗菌性コーティングが抗菌性溶液を含むいくつかの実施形態において、溶液を熱源(例えば、赤外線加熱器、対流加熱器、従来の加熱器等)からの熱に曝露することによって硬化させることを示す。当該実施形態において、デバイスを被覆する抗菌性溶液は任意の好適な温度で硬化可能である。1つの例において、溶液を約120℃未満の温度で硬化させる。別の例において、抗菌性溶液は約100℃未満の温度で硬化する。さらに別の例において、抗菌性溶液を約60℃未満の温度で硬化させる。
【0060】
抗菌性溶液は特定の条件下で任意の好適な時間内で硬化させることができるが、溶液は約60℃未満の温度への約10分未満の曝露後に硬化する。同様に、特定の条件下で、抗菌性溶液は約100℃未満の温度への約5分未満の曝露後に硬化する。
【0061】
抗菌性コーティングを硬化すると、図2のボックス24は、任意のマスキング材料を医療デバイスから場合により除去することを示す。その時点で医療デバイスを使用することができ、抗菌性コーティングが、液体(例えばIV液)に曝露したほぼ直後に有効になり得る。
【0062】
本方法を、図2に示される特徴の1つまたは複数を実施こすことが可能である任意の好適なシステムおよび/または装置によって実施こすことができる。実際、いくつかの実施形態において、本方法の少なくとも一部を医療デバイスコーティングシステムによって実施する。当該システムは、任意の好適な構成要素または特徴を含むことができるが、図4Aは、医療デバイスコーティングシステム200が、医療デバイスパレット202、コーティング施与ヘッド206およびガス施与ヘッド208を有する上部スライド204、コーティング弁210、ガス弁212、ガス溜214、過剰漏斗216ならびに加圧コーティング溜218を含む代表的な実施形態を示す。
【0063】
医療デバイスコーティングシステムを任意の好適な方法で使用することができるが、システムをより深く理解するために、その使用の典型的な例を本明細書に示す。具体的には、図4Bは、IVアクセスデバイス100などの1つまたは複数の医療デバイスを、デバイス100の内部管腔106に対する開口108が(図4Aに示される)コーティング施与ヘッド206の方に向くように医療デバイスパレット202上に配置できることを示す。
【0064】
医療デバイスがコーティング処理を通じて適正な方向にとどまるようにするために、パレットは、任意の好適な方法で医療デバイスを所望の方向に固定することができる。例示として、図4Bは、アクセスデバイス100上のリップ110がパレット202上の溝220に滑入するとIVアクセスデバイス100がパレット202に固定される実施形態を示す。
【0065】
医療デバイスをパレット202に固定すると、図4Aは、パレット202を上部スライド204の下に配置することを示す。この時点で、上部スライド204は、コーティング施与ヘッド206が(図4Aに示されない)各デバイスの開口の上に配置されるようにパレット202に対して移動することができる。
【0066】
施与ヘッドを被覆すべき医療デバイスの表面と位置合わせすると、コーティング弁210を開放して、所定量(例えば約0.01から約0.05g)の抗菌性コーティングを、加圧コーティング溜218からコーティング施与ヘッド206を介して医療デバイス上に噴出させる。この施与プロセスは任意の好適な時間をとることができるが、場合によっては、施与プロセスは、4秒以下程度の短い時間(例えば約2秒±1秒)をとる。
【0067】
コーティングを施した後に、上部スライド204は、ガス施与ヘッド208が各医療デバイスの被覆表面の上に配置されるように、矢印222の方向に移動する。ガス施与ヘッドを適正に位置合わせすると、上部スライド204は、ガス施与ヘッド208が(図4Aに示されない)医療デバイスの開口に対するシールを形成するように、矢印224の方向に移動する。シールが形成されると、ガス弁212が開放して、制御圧力における制御量の不活性ガスが過剰のコーティングを医療デバイスから洗い流すことを可能にする。次いで、この過剰のコーティングを、過剰のコーティングを将来の使用のために加圧コーティング溜218に戻す過剰漏斗216に回収する。
【0068】
過剰コーティングを医療デバイスから除去すると、パレット202を上部スライド204の下から除去し、抗菌性コーティングの組成に応じてUV光チャンバまたは加熱チャンバなどの(図示しない)硬化チャンバに配置することができる。
【0069】
硬化プロセスに続いて、プロセスを繰り返すことができるように、医療デバイスをパレットから除去し、新たなバッチの未被覆医療デバイスをパレットに配置することができる。
【0070】
本システムを任意の好適な方法で改造することができる。1つの例において、図4Aは、システム200が医療デバイスを同時に被覆(4)するように構成される実施形態を示すが、システムを、任意の好適な数の医療デバイスを同時に被覆するように改造することができる。例えば、システムを、1つ、2つ、3つ、5つ、6つ、7つまたは8つ以上の医療デバイスを同時に被覆するように改造することができる。別の例において、コーティング施与ヘッドおよび個別ガス施与ヘッドを含む代わりに、その方法の施与部分と洗い流し部分との間の時間を速くするように単一ヘッドを介して抗菌性コーティングおよび不活性ガスを医療デバイスに施こすことができる。さらに別の実施形態において、パレット、ガス施与ヘッド、または医療デバイスの近傍の何らかの他の構成要素はUV光源を含むことができる。当該実施形態において、システムは、パレットを上部スライドの下の箇所から除去することを必要とせずに医療デバイスを硬化させることができる。
【0071】
以上に説明したように、本方法、装置および組成物は、いくつかの有利な特徴を有する。1つの例において、本方法は、比較的短時間で医療デバイスを抗菌性コーティング(例えばUV硬化性組成物)で被覆することを可能にする。例えば、数時間(例えば24時間)かけて強過ぎる溶媒(例えばTHFまたはDMF)を医療デバイス上に硬化させる代わりに、UV硬化性コーティングおよび抗菌性溶液をそれぞれ数秒または数分以内に医療デバイス上に硬化させることができる。実際、抗菌性コーティングがUV硬化性組成物を含むいくつかの実施形態において、組成物を施し、洗い流し、約30秒以内で硬化させることができる。いくつかの好適な実施形態において、UV硬化性組成物を施し、洗い流し、約10秒以内で硬化させることができる。同様に、抗菌性コーティングが抗菌性溶液を含むいくつかの実施形態において、溶液を施し、洗い流し、約10分以内で硬化させる。しかし、ここで好適ないくつかの実施形態において、抗菌性溶液を施し、洗い流し、約5分以内で硬化させる。
【0072】
本方法の有益な特徴の別の例において、それらの方法は、抗菌性コーティングを医療デバイスに実質的に均一なコーティング厚さで塗布することを可能にすることができる。さらに別の例において、本方法は、過剰の抗菌性コーティングをリサイクルさせるため、全体的に一定の従来のコーティング技術より少ない抗菌性コーティングを使用することができる。
【0073】
さらに別の例において、本UV硬化性および抗菌性溶液は、一定の既知の抗菌性コーティングと比較していくつかの利点を提供する。例えば、UV硬化性および抗菌性溶液は、いくつかの競合的な抗菌性コーティング(例えばTHFおよびDMF)より毒性が弱く、安価であり、環境に優しく、医療デバイスにもたらす変形または亀裂が小さく、見た目に快く、必要な装置が安価である可能性がある。
【0074】
本発明を、本明細書および以降の特許請求の範囲に広く記載されるその構造、方法または他の実質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形で具現化することができる。本実施形態および例は、あらゆる点において、単なる例示であり、限定的でないものと見なされるべきである。したがって、本発明の範囲は、先述の説明でなく、添付の請求項によって示される。特許請求の範囲と同等の意味および範囲内にあるすべての変更が、それらの範囲内に包含されることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性コーティングを医療デバイスに塗布するための方法であって、
第1の医療デバイスを用意するステップと、
a)UV硬化性抗菌性組成物、および、(b)アクリレートポリマーまたはアクリレートコポリマーを含む抗菌性溶液、からなる群から選択される抗菌性コーティングを前記第1のデバイス上に施こすステップと、
過剰量のコーティングを前記第1のデバイスから洗い流すステップと、
前記コーティングを硬化させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記UV硬化性組成物は、
光開始剤と、
オリゴマーと、
モノマーと、
流動改質剤と、
抗菌剤と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記光開始剤は、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンゾイルオキシム、アシルホスフィン酸化物、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントロギオノン、ベンゾフェノン、メチルジエタノールアミン、2−N−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエートおよびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記オリゴマーは、アクリル化脂肪族ウレタン、アクリル化芳香族ウレタン、アクリル化ポリエステル、不飽和ポリエステル、アクリル化ポリエーテル、アクリル化アクリルおよびそれらの組合せから選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記モノマーは、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸イソオクチル、イソボルニルアクリレート、ジアクリル酸1,6−ヘキサンジオール、ジアクリル酸ジエチレングリコール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメトキシフェニルアセトフェノンヘキシルメチルアクリレート、メタクリル酸1,6−ヘキサンジオールおよびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記抗菌性溶液は、1から6個の炭素を有するアルコール、1から6個の炭素を有するアルカン、アセトンおよびそれらの組合せから選択される溶媒と、
流動改質剤と、
抗菌剤と
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アクリレートポリマーまたはアクリレートコポリマーは、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アルキルヒドロキシル(メタ)アクリレート、メトキシ桂皮酸アルキルおよびそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
過剰のコーティングを洗い流すステップは、前記デバイスからの過剰のコーティングに加圧不活性ガスを吹きつけるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記過剰のコーティングをリサイクルし、第2の医療デバイス上に施こすことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コーティングを硬化させるステップは、前記UV硬化性組成物が配置された前記第1のデバイスをUV光に露光するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
硬化ステップは、前記抗菌性溶液を有する前記第1のデバイスを熱に曝露するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抗菌性コーティングを医療デバイスに塗布するための方法であって、
医療デバイスを用意するステップと、
前記コーティングが、オリゴマー、モノマー、光開始剤、流動改質剤および抗菌剤を含むUV硬化性抗菌性組成物であって、これを前記医療デバイス上に施こすステップと、
過剰量の前記組成物を前記デバイスから洗い流すステップと、
前記組成物をUV光に露光することによって硬化させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記組成物を施こすステップ、洗い流すステップおよび硬化させるステップを、約30秒未満の時間で完了させることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物を施こすステップ、洗い流すステップおよび硬化させるステップを、約10秒未満の時間で完了させることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
抗菌性コーティングを医療デバイスに塗布するための方法であって、
医療デバイスを用意するステップと、
抗菌性溶液を前記医療デバイスに施こすステップと、
過剰量の前記組成物を前記医療デバイスから洗い流すステップと、
前記組成物を熱源で硬化させるステップと、
を含み、
前記抗菌性溶液がアクリレートポリマーまたはアクリレートコポリマーを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記抗菌性溶液は、1から6個の炭素を有するアルコール、1から6個の炭素を有するアルカン、アセトンおよびそれらの組合せから選択される溶媒をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗菌性溶液は、流動改質剤および抗菌剤をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物を施こすステップ、洗い流すステップおよび硬化させるステップを、約10分未満の時間で完了させることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物を施こすステップ、洗い流すステップおよび硬化させるステップを、約5分未満の時間で完了させることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記抗菌剤は、塩化セチルピリジウム、セトリミド、塩化ベンズアルコニウム、アレキシジン、二酢酸クロルヘキシジン、フタルアルデヒドおよびそれらの組合せから選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2012−510367(P2012−510367A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539615(P2011−539615)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/066122
【国際公開番号】WO2010/065463
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】