説明

抗菌性組成物

【課題】 抗菌力、消臭力等に優れ、しかも長期間に亘り効果を持続することができる。
【解決手段】 この抗菌性組成物は、抗菌性金属イオンを含有した結晶性チタニウムシリケートからなり、結晶性チタニウムシリケートのSiO2/TiO2モル比は4〜50の範囲にある。抗菌性金属イオンは銀、銅、亜鉛、錫から選ばれ、金属イオンの含有量はチタニウムシリケート100重量部に対して、該金属イオンを金属として0.1〜10重量部の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗菌性金属イオンを含有した結晶性チタニウムシリケートからなる新規な抗菌性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀イオンや銅イオンが細菌や黴などに対する抗菌力を有することは周知であり、例えば、ゼオライトやシリカゲル、酸化チタン等の粉末に抗菌性を有する金属成分を担
持した抗菌性組成物が知られている。
【0003】
また、本願出願人は無機酸化物コロイド粒子に抗菌性金属成分を付着せしめた抗菌剤(特開平6−80527号公報:特許文献1)、あるいはメタ珪酸アルミン酸マグネシウムに抗菌性を有する金属イオンをイオン交換した抗菌剤(特開平3−275627号公報:特許文献2)を開示している。
しかしながら、これらの抗菌剤は用途あるいは使用環境によって、抗菌性能、防黴性能あるいは消臭性能を長期に亘って維持することができない場合があり、また変色するとともに性能が低下する問題があった。
【0004】
一方、抗菌効果の持続性および抗菌物質の安定性を改善する目的で、抗菌性金属イオンをゼオライトあるいはアルミノ珪酸塩に担持した抗菌性組成物が知られている(特開平1−283204号公報:特許文献3)。
しかしながら、これら従来公知の抗菌性組成物、例えば無定型のアルミノ珪酸塩は抗菌性能が不充分であったり、結晶性アルミノシリケートであるゼオライトは使用条件によっては耐薬品性が不充分であるために結晶構造が壊れ、このため抗菌力や抗菌効果の持続性の点で必ずしも満足のゆくものではなかった。また、充分な消臭性能を併せ持つ抗菌性組成物を得ることができなかった。
【0005】
また、これらの抗菌性組成物の粒状体は樹脂への分散性が良くなく、これらの粒状体を各種の樹脂と混合して所望の成型体とした場合、抗菌性能が粒状体の抗菌性能と比較して著しく低下するという問題点があった。
【0006】
【特許文献1】特開平6−80527号公報
【特許文献2】特開平3−275627号公報
【特許文献3】特開平1−283204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点を解決するためのもので、その目的は、抗菌力、消臭力等に優れ、しかも長期間に亘り効果を持続することができ、耐熱性、耐薬品性等に優れた抗菌性組成物を提供することにある。
さらに、本発明は分散性の良い粒状体の抗菌性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る抗菌性組成物は、抗菌性金属イオンを含有した結晶性チタニウムシリケートからなることを特徴としている。
前記結晶性チタニウムシリケートのSiO2/TiO2モル比は4〜50の範囲にあることが好ましい。
前記抗菌性金属イオンは銀、銅、亜鉛、錫から選ばれる1種または2種以上の金属イオン(金属アンミン錯イオンを含む。)であることが好ましい。
前記金属イオンの含有量がチタニウムシリケート100重量部に対して金属イオンを金属として0.1〜10重量部の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の抗菌性組成物は、抗菌成分の母材がシリカと酸化チタンとからなり、結晶構造を有するとともに高いイオン交換能を有しているため、(1)抗菌性、防黴性、消臭性、(2)耐熱性、耐薬品性、(3)樹脂等への分散性等、に優れ、このため長期間に亘り抗菌効果等を持続することができる。
また、このような抗菌性組成物を配合することによって前記抗菌性能等に優れた抗菌性樹脂成形体、抗菌性繊維、抗菌性塗料等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明に係わる抗菌性組成物について具体的に説明する。
本発明では、抗菌性組成物の母材として結晶性チタニウムシリケートを用いる。
結晶性チタニウムシリケートは、結晶性と高いイオン交換能を有していることが好ましい。
このような結晶性チタニウムシリケートとしては、イオン交換能を有していれば特に制限はないが、本願出願人の出願による特開平10−139432号公報に開示した結晶性チタニウムシリケートはイオン交換能が高く好適に用いることができる。
【0011】
具体的には、下記式(1)で表されるイオン交換能発現係数(Z)が0.75〜1である結晶性チタニウムシリケートが好適に用いられる。
Z=実測のイオン交換容量y(ミリ等量/g)/計算上のイオン交換容量Y(ミリ等量/g) ・・・(1)
但し、計算上のイオン交換容量(Y)は次式(2)により計算された値であり、式(2)において、X:結晶性チタニウムシリケート1g中のTiO2含有量(g)、「80」:二酸化チタンの分子量、「1000」:等量をミリ等量に換算するための係数である。
Y=(X/80)×1000 ・・・(2)
【0012】
イオン交換能発現係数Zが0.75未満の場合は、Tiが結晶性チタニウムシリケート骨格に有効に組み込まれてないかイオン交換点の形成に関与しないTiが多く、結果的に抗菌性金属イオンが少なくなり、抗菌性能等が不充分となる。
【0013】
また、上記において、実測のイオン交換容量(y)が0.25〜3.0ミリ当量/g、さらには1.0〜3.0ミリ当量/gの範囲にあることが好ましい。
実測のイオン交換容量(y)が0.25ミリ当量/g未満の場合は抗菌性金属イオンが少なくなり、抗菌性能等が不充分となる。
実測のイオン交換容量(y)が3.0ミリ当量/gを超えるものは得ることが困難である。
【0014】
前記結晶性チタニウムシリケートのSiO2/TiO2モル比が4〜50(TiO2含有量が25重量%〜2.6重量%)、さらには4〜20(TiO2含有量が25重量%〜6.3重量%)の範囲にあることが好ましい。
結晶性チタニウムシリケートのSiO2/TiO2モル比が50を超えると、抗菌性金属イオンのイオン交換容量が小さく抗菌性能等が不充分となる。
結晶性チタニウムシリケートのSiO2/TiO2モル比が4未満の場合は、結晶性が低下するとともに、結晶に組み込まれないTiが増加し、このためイオン交換容量が減少する傾向がある。
【0015】
つぎに、本発明に用いる結晶性チタニウムシリケートは平均粒子径が0.3〜3μm、さらには0.5〜2μmの範囲にあることが好ましい。
結晶性チタニウムシリケートの平均粒子径が0.3μm未満のものは得ることが困難であり、得られたとしても結晶性が不充分であり、抗菌性能等が不充分となることがある。
結晶性チタニウムシリケートの平均粒子径が3μmを超えると、抗菌性能等が低下する傾向があり、また樹脂および塗料に入れた場合表面の平滑性が失われ、また繊維の場合は糸切れを引き起こすことがある。
【0016】
本発明に用いる結晶性チタニウムシリケートは、前記したイオン交換能を有する結晶性チタニウムシリケートが得られれば特に制限はないが、前記した本願出願人の出願による特開平10−139432号公報に開示した結晶性チタニウムシリケートの製造方法に基づいて製造することができる。
【0017】
本発明の抗菌性組成物は、前記結晶性チタニウムシリケートに抗菌性金属イオンがイオン交換されている。
抗菌性金属イオンとしては銀、銅、亜鉛、錫から選ばれる1種または2種以上の金属イオンであることが好ましい。このとき、金属イオンには金属アンミン錯イオン等の金属錯イオンを含むことができ、金属アンミン錯イオンには、[Cu(NH3)4]2+、[Ag(NH3)2]+、[Zn(NH3)4]2+等が挙げられる。なお、本願明細書において、「金属イオン」には「金属錯イオン」を含んだ意味で使用する。
【0018】
前記、銀、銅、亜鉛、錫の金属イオンは抗菌効果、防黴効果とともに人体に対する安全性の面で望ましい。
また、銀、銅は優れた消臭効果が得られる点で望ましい。
【0019】
このような抗菌性金属イオンの含有量は、結晶性チタニウムシリケート100重量部に対して金属イオンを金属として0.1〜10重量部、さらには0.5〜8重量部の範囲にあることが好ましい。
抗菌性金属イオンの含有量が結晶性チタニウムシリケート100重量部に対して金属イオンを金属として0.1重量部未満の場合は抗菌性能、防黴性能、消臭性能が不充分となることがあり、10重量部を超えては、イオン交換によって担持することが困難であったり、イオン交換を繰り返し実施して担持できたとしても金属イオンの利用率が低下し経済性が問題となることがある。
【0020】
つぎに、抗菌性金属イオンによる結晶性チタニウムシリケートのイオン交換は、結晶性アルミノシリケート(ゼオライト)で採用されるイオン交換方法に準拠して行うことができ、金属塩水溶液に結晶性チタニウムシリケートを分散させ、必要に応じて分散液のpHを調整し、さらに、必要に応じて加温し、ついで、必要に応じて通常0.1〜5時間撹拌した後、濾過、洗浄すればよい。
【0021】
具体的には、Ag、Cu、Zn、Sn等のイオン交換は、これらの金属塩、金属錯塩が水酸化物を生成せず、しかも、チタニウムシリケートが溶解しない領域で行われる。即ち、Agの場合はpH3〜9、Cuの場合はpH3〜6、Znの場合はpH3〜9の範囲で行うことが好ましい。また、イオン交換する際の温度は特に制限はないが、通常50℃〜100℃の範囲が望ましい。
【0022】
抗菌性金属イオン源としては、抗菌性金属の水溶性の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、あるいは錯塩を用いることができる。金属塩の使用量は金属塩の種類、金属の価数によっても異なるが、結晶性チタニウムシリケート中のTiO2のモル数を1としたときに、金属塩のモル数が0.01〜5、さらには0.1〜3の範囲にあることが好ましい。
金属塩の使用量が0.01モル未満の場合は、金属イオンのイオン交換量が少なく充分な抗菌性能等が得られないことがある。
金属塩の使用量が5モルを超えても、イオン交換によって担持することができる金属の量がさらに増加することもなく金属イオンの利用率が低下し経済性が問題となることがある。
【0023】
分散液を撹拌した後、濾過し、充分な量の純水あるいは温水を掛けて金属塩のアニオンが実質的に無くなるまで洗浄する。
なお、金属イオンのイオン交換量を多くする目的で、繰り返しイオン交換を行うこともできる。
【0024】
洗浄後、乾燥して本発明の抗菌性組成物を得る。乾燥温度は50〜150℃、さらには80〜120℃の範囲にあることが好ましい。
乾燥温度が50℃未満の場合は、抗菌性組成物の使用方法にもよるが金属イオンが溶出したり、変色することがある。
【0025】
本発明の抗菌性組成物は、乾燥後、必要に応じて150〜500℃、さらには200〜450℃で加熱処理することができる。加熱処理する際の雰囲気は、金属イオンの種類、用途等によっても異なるが、酸化ガス雰囲気、不活性ガス雰囲気あるいは還元ガス雰囲気を適宜選択して行うことが好ましい。
このような条件で加熱処理を行うと抗菌性金属イオンが結晶性チタニウムシリケートにより固定されるためか使用時に抗菌性金属イオンが溶出したり、変色することを抑制することができる。
また、本発明の抗菌性組成物は、乾燥後、必要に応じて水、アルコール類等従来公知の、分散媒に分散させて用いることもできる。
【0026】
本発明の抗菌性組成物は、抗菌性能、防黴性能、消臭性能に優れるだけでなく、耐熱性、耐薬品性、耐候性等に優れているので浄水器の濾過材、人工培地、農業用薬剤、化粧品および医療材料等に好適に用いることができる。また、塗料、インク顔料などに添加したり、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの非ハロゲン系、または、ポリ塩化ビニルなどのあらゆる樹脂に添加して繊維、家庭用品、紙、台所用品、サニタリー、フィルム、シート、レザー、発泡体等の樹脂製品およびパイプ内装材、接着剤、コーキング剤等の工業、建築材料等に利用可能である。
【0027】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
抗菌性組成物(1)の調製
(結晶性チタニウムシリケート(1)の調製)
濃度20wt%のヒドロキシテトラプロピルアンモニウム(HTPA)1016.9gと濃度15wt%の水酸化アンモニウム水溶液340.6gとを混合した後、これに濃度98wt%のオルトチタン酸テトラエチル(OTTE)232.8gを添加し30分間撹拌した。次いでこの溶液をエバポレーターに移し、減圧下70℃に加温しながらOTTEが加水分解して生じたエタノールの除去を目的に、チタニアとしての濃度が約10wt%になるまで濃縮を行ない、透明性を有する溶液798.8gを得た。この溶液をA−1とする。
【0029】
次に、濃度20wt%のヒドロキシテトラプロピルアンモニウム1016.9gと濃度15wt%の水酸化アンモニウム水溶液340.6gとを混合した後、これに濃度98wt%のオルト珪酸テトラエチル(OSTE)212.6gを添加し30分間撹拌した。次いでこの溶液をエバポレーターに移し、減圧下70℃に加温しながらOSTEが加水分解して生じたエタノールの除去を目的に、シリカとしての濃度が約10wt%になるまで濃縮を行ない、透明性を有する溶液600.9gを得た。この溶液をB−1とする。
【0030】
次いで溶液A−1を8.0gと溶液B−1を180.0gとを混合し、これに純水474.0gを加えてチタニウムシリケート合成用水性混合物を調製した。この混合物も透明性を有する溶液であった。
本実施例の目標組成は酸化物モル比で、(TPA)2O:15.5、(NH42O:22.6、SiO2:30.0、TiO2:1.0、H2O:3165である。尚、(TPA)2OはHTPAを酸化物として表記したもので、HTPA2分子から水1分子が脱水した形で表したものである。
【0031】
この水性混合物を加圧式結晶化容器(オートクレーブ)に封入し、100rpmの速度で撹拌しながら、175℃で25時間加熱結晶化を行った。次いで濾過分離し、洗浄乾燥した後550℃で2時間焼成して結晶性チタニウムシリケート(1)を13.2g得た。
性状は表1に示した。得られた結晶性チタニウムシリケートは結晶度の高いMFI型に属するものであり、SiO2/TiO2モル比(k)は29.0であった。
【0032】
(イオン交換)
結晶性チタニウムシリケート(1)10gを純水100gに分散させ、攪拌しながら濃度10重量%の硝酸水溶液でpHを5.5〜6.0に調整した。別途硝酸銀0.32gを純水10gに溶解し、pH調整した結晶性チタニウムシリケート分散液を攪拌しながら添加した。添加後、スラリー温度を60℃に調整し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄し、ついで、105℃で2時間乾燥して2重量%のAgを担持したAg−結晶性チタニウムシリケートである抗菌性組成物(1)を得た。
【0033】
抗菌性組成物(1)について、組成、BET法による比表面積、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による形状観察および平均粒子径を求め、結果を表1に示した。なお、平均粒子径はTEM写真の粒子100個について粒子径を求めその平均値とした。
また、抗菌性組成物(1)について、抗菌性能、消臭性能および耐候性を以下の方法および基準で評価し、結果を表1に示した。
【0034】
抗菌性能評価用試料の調製
抗菌生組成物剤(1)6gと水系アクリル系樹脂(日本純薬製;ジュリマーFC65、濃度40重量%)20gとを混合して、抗菌性コート剤を調製した。このコート剤1.0gを10cm×10cmのガラス板に厚さ10μmのバーコートを用いて塗布し、100℃で乾燥して塗膜を形成し、抗菌性能評価用試料(1)とした。
【0035】
抗菌性の評価
緑膿菌および大腸菌を生理食塩水中に懸濁させ、その30μlを抗菌性能評価用試料(1)のガラス面に滴下し、28℃で24時間放置後、生菌数を測定して式(3)により死滅率を求めた。
死滅率(%)=100×(初期生菌数−24時間後の生菌数)/初期生菌数・・・(3)
【0036】
消臭性の評価
5Lテトラパックに抗菌性組成物(1)1gと、初期濃度100ppmのアンモニア試験臭3Lおよび初期濃度4ppmの硫化水素試験臭3Lを封入して2時間放置した後、検知管にて試験臭濃度を測定し、式(4)により消臭率を求めた。測定結果を表1に示す。
消臭率(%)=100×(初期消臭濃度−2時間後の消臭濃度)/初期消臭濃度・・・(4)
【0037】
耐候性
ウエザーメーター(ガス試験機器(株)製)を用いて200時間の耐候試験を行い、変色度合いを観察した。測定結果を表1に示す。
○ ・・変色が見られないもの
△ ・・変色が僅かに見られるもの
× ・・変色が見られるもの
【実施例2】
【0038】
抗菌性組成物(2)の調製
実施例1において、結晶性チタニウムシリケート(1)に1重量%のAgを担持した以外は同様にして抗菌性組成物(2)を調製した。
抗菌性組成物(2)について、組成、BET法による比表面積、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による形状観察および平均粒子径を求め、結果を表1に示した。
また、抗菌性組成物(2)について、抗菌性能、消臭性能および耐候性を評価し、結果を表1に示した。
【実施例3】
【0039】
抗菌性組成物(3)の調製
実施例1において、結晶性チタニウムシリケート(1)に4重量%のAgを担持した以外は同様にして抗菌性組成物(3)を調製した。
抗菌性組成物(3)について、組成、BET法による比表面積、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による形状観察および平均粒子径を求め、結果を表1に示した。
また、抗菌性組成物(3)について、抗菌性能、消臭性能および耐候性を評価し、結果を表1に示した。
【実施例4】
【0040】
抗菌性組成物(4)の調製
実施例1と同様にして調製した結晶性チタニウムシリケート(1)10gを純水100gに分散させ、攪拌しながら濃度10重量%の硝酸水溶液でpHを4.5〜5.0に調整した。別途、硝酸銅1.47gを純水10gに溶解し、pH調整した結晶性チタニウムシリケート分散液を攪拌しながら添加した。添加後、スラリー温度を60℃に調整し、1時間攪拌した後、濾過、洗浄し、ついで、105℃で2時間乾燥して2重量%のCuを担持したCu−結晶性チタニウムシリケートである抗菌性組成物(4)を得た。
抗菌性組成物(4)について、組成、BET法による比表面積、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による形状観察および平均粒子径を求め、結果を表1に示した。
また、抗菌性組成物(4)について、抗菌性能、消臭性能および耐候性を評価し、結果を表1に示した。
【実施例5】
【0041】
抗菌性組成物(5)の調製
(結晶性チタニウムシリケート(2)の調製)
実施例1で調製した溶液A−1を16.0gと溶液B−1を180.0gとを混合し、これに純水487.0gを加えてチタニウムシリケート合成用水性混合物を調製した。この混合物も透明性を有する溶液であった。
本実施例の目標組成は酸化物モル比で、(TPA)2O:8.0、(NH42O:11.6、SiO2:15.0、TiO2:1.0、H2O:1632である。
【0042】
この水性混合物を加圧式結晶化容器(オートクレーブ)に封入し、100rpmの速度で撹拌しながら、175℃で50時間加熱結晶化を行った。次いで濾過分離し、洗浄乾燥した後550℃で2時間焼成して結晶性チタニウムシリケート(2)を14.2g得た。
性状は表1に示した。得られた結晶性チタニウムシリケート(2)は結晶度の高いMFI型に属するものであり、SiO2/TiO2モル比(k)は13.5であった。
【0043】
(イオン交換)
実施例1において、結晶性チタニウムシリケート(2)を用いた以外は同様にして2重量%のAgを担持したAg−結晶性チタニウムシリケートである抗菌性組成物(5)を得た。
抗菌性組成物(5)について、組成、BET法による比表面積、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による形状観察および平均粒子径を求め、結果を表1に示した。
また、抗菌性組成物(5)について、抗菌性能、消臭性能および耐候性を評価し、結果を表1に示した。
【実施例6】
【0044】
抗菌性組成物(6)の調製
(結晶性チタニウムシリケート(3)の調製)
実施例1で調製した溶液A−1を40.0gと溶液B−1を150.0gとを混合し、
これに純水451.0gを加えてチタニウムシリケート合成用水性混合物を調製した。この混合物も透明性を有する溶液であった。
本実施例の目標組成は酸化物モル比で、(TPA)2O:3.0、(NH42O:4.4、SiO2:5.0、TiO2:1.0、H2O:612である。
【0045】
この水性混合物を加圧式結晶化容器(オートクレーブ)に封入し、100rpmの速度で撹拌しながら、175℃で75時間加熱結晶化を行った。次いで濾過分離し、洗浄乾燥した後550℃で2時間焼成して結晶性チタニウムシリケート(3)を15.4g得た。
性状は表1に示した。得られた結晶性チタニウムシリケートは結晶度の高いMFI型に属するものであり、SiO2/TiO2モル比(k)は4.2であった。
【0046】
(イオン交換)
実施例1において、結晶性チタニウムシリケート(3)を用いた以外は同様にして2重量%のAgを担持したAg−結晶性チタニウムシリケートである抗菌性組成物(6)を得た。
抗菌性組成物(6)について、組成、BET法による比表面積、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による形状観察および平均粒子径を求め、結果を表1に示した。
また、抗菌性組成物(6)について、抗菌性能、消臭性能および耐候性を評価し、結果を表1に示した。
【比較例1】
【0047】
抗菌性組成物(R1)の調製
(結晶性チタニウムシリケート(R1)の調製)
濃度20wt%のヒドロキシテトラプロピルアンモニウム1016.9gに濃度98wt%のオルトチタン酸テトラエチル(OTTE)232.8gを添加し30分間撹拌した。この時ゲルが生成しこれをチタニアヒドロゲルAとした。
次に、濃度20wt%のヒドロキシテトラプロピルアンモニウム1016.9gに濃度98wt%のオルト珪酸テトラエチル(OSTE)212.6gを添加し30分間撹拌した。この時ゲルが生成しこれをシリカヒドロゲルBとした。
【0048】
次いでAを12.5gとBを368.2gとを混合してチタニウムシリケート合成用水性混合物を調製した。即ち実施例1に於ける水酸化アンモニウムを使用せず、また減圧下で加熱濃縮すること無く合成用水性混合物を調製した。
本実施例の目標組成は酸化物モル比で、(TPA)2O:15.5、(NH42O:0.0、SiO2:30.0、TiO2:1.0、H2O:3160である。
【0049】
次いでこの水性混合物を加圧式結晶化容器(オートクレーブ)に封入し、100rpmの速度で撹拌しながら、175℃で25時間加熱結晶化を行った。結晶化後、濾過分離し、洗浄乾燥した後550℃で2時間焼成して結晶性チタニウムシリケート(R1)を13.0g得た。
性状は表1に示した。MFI型に属する結晶性チタニウムシリケートとアナターゼ型二酸化チタンが得られたが、結晶性チタニウムシリケートの結晶性は低いものであった。また得られた混合物のSiO2/TiO2モル比(k)は27.0であった。
【0050】
(イオン交換)
実施例1において、結晶性チタニウムシリケート(R1)を用いた以外は同様にして2重量%のAgを担持したAg−結晶性チタニウムシリケートである抗菌性組成物(R1)を得た。
抗菌性組成物(R1)について、組成、BET法による比表面積、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による形状観察および平均粒子径を求め、結果を表1に示した。
また、抗菌性組成物(R1)について、抗菌性能、消臭性能および耐候性を評価し、結果を表1に示した。
【比較例2】
【0051】
抗菌性組成物(R2)の調製
NaY型ゼオライト(R2)の調製
(ゲル状物水溶液の調製)
Na2O17wt%、Al2322wt%を含有するアルミン酸ナトリウム溶液463.6gに、攪拌しながら21.35wt%の水酸化ナトリウム水溶液3771.2gを加えた。この溶液をシリカ濃度24wt%の3号水硝子3675g中に、攪拌しながら加えてゲル状凝集物を発生させた。このゲル状凝集物を含有する液の組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23 = 15.9
SiO2/Al23 = 14.7
2O/Al23 = 330
であった。さらに、これを約1時間攪拌した後、30℃で12時間静置して、ゲル状凝集物を含有する液を得た。このゲル状凝集物の粒子径は1.0〜5.0μmの範囲であった。
【0052】
(マトリックスとしての複合酸化物ゾルの調製)
SiO2として30wt%を含有するシリカゾル809.3gを純水295.9gで希釈し、このゾルとシリカ濃度24wt%の3号水硝子1023.4gとを混合した。次いで、この液に、攪拌しながら、Na2O17wt%、Al2322wt%を含有するアルミン酸ソーダ溶液455.5gを加えて、次の酸化物組成を有するゲル状反応物を得た。このゲル状反応物の粒子径は5.0〜10.0μmであった。
Na2O/Al23 = 2.56
SiO2/Al23 = 8.29
2O/Al23 = 103.9
【0053】
(反応混合物の調製)
前述のゲル状反応物に、攪拌しながら、前述のゲル状凝集物を含有する液139.5gを加え3時間室温で撹絆混合した。このようにして得られたゲル状反応混合物の組成は酸化物モル比で
Na2O/Al23 = 2.8
SiO2/Al23 = 8.4
2O/Al23 = 108
であった。
【0054】
これを結晶化槽に移して、95〜98℃で50時間加温熟成を行った。熟成終了後、結晶生成物を取り出し、濾過、洗浄してNaY型ゼオライト(R2)を得た。このとき、固形分中のAl23含有量:21.7重量%、SiO2含有量:65.1重量%、Na2O含有量:13.2重量%、SiO2/Al23モル比:5.10であった。
【0055】
(イオン交換)
実施例1において、NaY型ゼオライト(R2)を用いた以外は同様にして2重量%のAgを担持したAg−NaY型ゼオライトである抗菌性組成物(R2)を得た。
抗菌性組成物(R2)について、組成、BET法による比表面積、透過型電子顕微鏡(TEM)写真による形状観察および平均粒子径を求め、結果を表1に示した。
また、抗菌性組成物(R2)について、抗菌性能、消臭性能および耐候性を評価し、結果を表1に示した。
【0056】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌性金属イオンを含有した結晶性チタニウムシリケートからなる抗菌性組成物。
【請求項2】
前記結晶性チタニウムシリケートのSiO2/TiO2モル比が4〜50の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の抗菌性組成物。
【請求項3】
前記抗菌性金属イオンが銀、銅、亜鉛、錫から選ばれる1種または2種以上の金属イオン(金属アンミン錯イオンを含む。)であることを特徴とする請求項1または2に記載の抗菌性組成物。
【請求項4】
前記金属イオンの含有量がチタニウムシリケート100重量部に対して金属イオンを金属として0.1〜10重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌性組成物。

【公開番号】特開2008−94745(P2008−94745A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277174(P2006−277174)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】