説明

抗菌構成物

1又はそれ以上のポリマー及び1又はそれ以上のアンモニウム塩を具えるポリマー−アンモニウム塩調合物を、アルカリ及び塩素(as Cl)対アンモニウムイオンのモル比が約1:10乃至約10:1の塩素源と混合することによって調整される抗菌構成物及び水溶液系の生物付着を制御すべくこの構成物を使用する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用の水システムにおける生物付着制御で使用される構成物に関する。特に、本発明は、1又はそれ以上のポリマー及び1又はそれ以上のアンモニウム塩を具える調合物を、アルカリ及び塩素源と混合することによって調整される抗菌構成物及び工業用の水システムにおける生物付着制御でのこの構成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素が、微生物の成長を制御するために水溶液系で一般に使用される。例えば、製紙プロセスでは、塩素が、その低いコスト、広範囲及び素早い殺菌活性により好適なハロゲン殺生物剤であり、監視及び制御するのが便利である。しかしながら、塩素の使用により、システムの部品の腐食の増加、フェルトの分解、他の水処理添加剤の添加物の破壊、染料及び漂白剤といった製紙用添加剤に対して悪影響をもたらしてしまう。
【0003】
特に生物膜及び繊維状の有機体に対する塩素の殺菌特性を改善するために、及び塩素の使用の悪影響を減らすために、窒素化合物を使用して遊離塩素を安定化しクロラミンを形成し得る。クロラミン形成及び殺菌剤としてのクロラミンの特性は、1900年代初頭から知られており、アミン含有化合物を具えた塩素のアンモニアに対する相対反応速度が、50年以上前に研究された(Weil,I.及びJ.C.Morris.1949.「Kinetic Studies on the Chloramines.The Rates of Formation of Monochloramine,N−Chlormethylamine and N−Chlordimethylamine.」J.Amer.Chem.Soc.71:1664)。また、クロラミンは、携帯用の配水システムに認められ広く使用されている(United States Environmental Protection Agency.1999.Alternative Oxidants and Disinfectants Manual,Chapter 6.EPA publication number 815−R−99−014)。
【0004】
また、塩素を安定化するための実際の構成物としてアンモニウム塩を使用することが、長年にわたって知られている。例えば、Beck(J.Beckらによる、Aqua I,25−33,1986)は、飲料水を予め殺菌するための予め形成されたモノクロラミンの使用を説明している。この研究で、1000ppmの濃度の硫酸アンモニウム及び次亜塩素酸塩溶液を混ぜて炭酸塩の沈殿を防ぐために調剤の前にpHを7.5に調整することによって、クロラミンが形成される。これが典型的なクロラミンの適用例であり、有用なアンモニウムイオン源は、アンモニア、塩化アンモニウム及び硫酸アンモニウムである。
【0005】
生物付着を制御するためにクロラミンを使用するさらなる例は、クロラミンを使用して逆浸透膜への細菌汚染を防止することを記載している米国特許4,988,444号、バラスト水に形成されたクロラミンの使用を記載している米国特許6,773,607号及び米国特許5,976,386号、6,132,628号、6,478,973号及び7,067,063号に含まれており、ここで引用する参照文献は、酸化剤、好適には活性塩素供与体、より好適にはハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩から選ばれる次亜塩素酸ナトリウム及びアンモニウム塩を混ぜて、処置すべき水溶系に殺菌濃度を速やかに加えることを開示している。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、1又はそれ以上のポリマー及び1又はそれ以上のアンモニウム塩を具える含水ポリマー−アンモニウム塩調合物を、塩素(as Cl)対アンモニウムイオンのモル比が約1:10乃至約10:1の塩素源及び十分なアルカリと混合することによって調整され、処理されるシステムで有効な抗菌活性を示す抗菌構成物である。
【0007】
別の態様では、本発明は水溶系における微生物の成長を抑制する方法であり、1又はそれ以上のポリマー及び1又はそれ以上の塩を具えた含水ポリマー−アンモニウム塩調合物を、塩素(as Cl)対アンモニウムイオンのモル比が約1:10乃至約10:1の塩素源及びアルカリと混合することによって調整された抗菌構成物でシステムを処理するステップを有している。
【0008】
本発明の構成物は、ポリマー、塩素源及び安定クロラミンの混合物を具えている。本発明は、水処理又は製紙の適用例で、構成物の殺菌特性に加えてポリマーに由来する既知の特性又は性能を得るためにポリマーを選択し得る。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、「アニオン性モノマー」は、有効な負電荷を有する本書で規定されるようなモノマーを意味する。代表的なアニオン性モノマーは、アクリル酸及びアクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウムを含むがこれらに限定されないアクリル酸の塩、メタクリル酸及びメタクリル酸ナトリウム、及びアンモニウムメタクリラートを含むがこれらに限定されないメタクリル酸の塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、AMPSのナトリウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホナート、マレイン酸及びナトリウム塩、及びアンモニウム塩、スルホン酸イタコン酸、スルホプロピルアクリル酸塩又はメタクリル酸塩を含むがこれらに限定されないマレイン酸の塩、又はこれらの又は他の重合可能なカルボン酸又はスルホン酸の他の可溶型を含むがこれらに限定されない塩である。スルホメチラートアクリルアミド、アリルスルホン酸、イタコン酸、アクリルアミドメチルブタン酸、フマル酸、ビニルホスホン酸、ビニルスルホン酸、アリルホスホン酸、スルホメチラートアクリルアミド、ホスホノメチラートアクリルアミド、等である。
【0010】
「アニオン性ポリマー」は、特定のpH範囲よりも大きい状態で全体として負の電荷を有するポリマーを意味する。アニオン性ポリマーは、1又はそれ以上のアニオン性モノマーのビニル基の付加重合によって、又は1又はそれ以上のアニオン性モノマーと1又はそれ以上の非イオン性、カチオン性又は双性イオンモノマーとの共重合によって調整される。好適なアニオン性ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド‐2‐メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルホルムアミド及びアクリルアミドのポリマー及び共重合体を有している。
【0011】
「カチオン性モノマー」は、有効な正電荷を有する本書で規定されるようなモノマーを意味する。代表的なカチオンモノマーは、ジメチルアミノエチルアクリラートメチルクロリド第4級塩(DMAEA−MCQ)、ジメチルアミノエチルアクリラートメチル硫酸塩第4級塩、ジメチルアミノエチルアクリラートベンジルクロリド第4級塩(DMAEA−BCQ)、ジメチルアミノエチルアクリラート硫酸塩、ジメチルアミノエチルアクリラート塩酸塩、ジエチルアミノエチルアクリラート、メチルクロリド第4級塩、ジメチルアミノエチルメタクリラートメチルクロリド第4級塩(DMAEM−MCQ)、ジメチルアミノエチルメタクリラートメチル硫酸塩第4級塩、ジメチルアミノエチルメタクリラートベンジルクロリド第4級塩、ジメチルアミノエチルメタクリラート硫酸塩、ジメチルアミノエチルメタクリラート塩酸塩、ジエチルアミノエチルメタクリラートメチルクロリド第4級塩といったこれらに限定されないジアルキルアミノアルキルアクリラート及びメタクリラート及びそれらの第4級又は酸塩、ジメチルアミノエチルメタアクリロイル塩酸塩、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドメチル硫酸塩第4級、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド硫酸塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩酸塩、メタアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミドメチル硫酸塩第4級塩、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド硫酸塩、ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド塩酸塩といったジアルキルアミノアルキルアクリルアミド又はメタアクリルアミド及びその第4級又は酸塩、及びジアリルジエチルアンモニウムクロリド及びジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)といったジアリルジアルキルハロゲン化アンモニウム、を有している。
【0012】
「カチオン性ポリマー」は、全体として正の電荷を有するポリマーを意味する。カチオンポリマーは、一般に、1又はそれ以上のカチオン性モノマーのビニル基の付加重合によって、又は1又はそれ以上のカチオン性モノマーと1又はそれ以上の非イオン性モノマー、任意に、1又はそれ以上の非イオン性モノマー又は双性イオンモノマーとのとの共重合によって調整され、両性ポリマーを生成する。
【0013】
最初にカチオン性ポリマーとしてポリマーを形成してもよいが、特定の非イオン性ビニル付加重合体を反応させた後に正に帯電したポリマーを生成することも可能である。このようなタイプのポリマーは、マンニッヒ誘導体を生成するためにポリアクリルアミドとジメチルアミン及びホルムアルデヒドとの反応を通して調整されたものを有している。
【0014】
「モノマー」は、重合可能なアリル化合物、ビニル化合物又は又はアクリル酸化合物を意味している。モノマーは、アニオン性、カチオン性、非イオン性又は双性イオンでよい。ビニルモノマーが好適であり、アクリルモノマーがより好適である。
【0015】
「非イオン性モノマー」は、電気的に中性な本書で規定するモノマーを意味する。代表的な非イオン性の水溶性モノマーは、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルメチルアセトアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、ジメチルヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、N−t−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、2−エチルヘキシルアクリラート、等を有している。
【0016】
「双性イオンモノマー」は、分子全体が中性となるように、等量のカチオン及びアニオンの(荷電)機能を含む重合性分子を意味している。代表的な、双性イオンモノマーは、N,N−ジメチル−N−アクリロイルオキシエチル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−アクリルアミドプロピル−N−(2−カルボキシメチル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−アクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−アクリルアミドプロピル−N−(2−カルボキシメチル)−アンモニウムベタイン、2−(メチルチオ)エチルメタクリロイル−S−(スルホプロピル)−スルホニウムベタイン、2−[(2−アクリロイルエチル)ジメチルアンモニオ]エチル2−リン酸メチル、2−(アクリロイルオキシエチル)−2’−(トリメチルアンモニウム)リン酸エチル、[(2−アクリロイルエチル)ジメチルアンモニオ]メチルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、2−[(3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]エチル2’−イソプロピルリン酸塩(AAPI)、1−ビニル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド、(2−アクリルオキシエチル)カルボキシメチル塩化メチルスルホニウム、1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウム ベタイン、N−(4−スルホブチル)−N−メチル−N,N−ジアリルアミンアンモニウムベタイン(MDABS)、N,N−ジアリル−N−メチル−N−(2−スルホエチル)アンモニウムベタイン、等を有している。
【0017】
「双性イオンポリマー」は、双性イオンモノマーから成るポリマー、場合によっては、他の非イオンモノマー、特許番号6,709,551号及び6,313,246号に記載されたカチオンモノマー及び/又はアニオンモノマーを意味する。
【0018】
「RSV」は、換算比粘度の略称である。Paul J.Floryによる「Principles of Polymer Chemistry」,Cornell University Press,Ithaca,NY,1953,第7章,「Determination of Molecular Weights」、頁266−316によれば、実質的に直鎖状且つ良く溶媒和した一連のポリマー同族体の中で、「換算比粘度(RSV)」の測定値は、ポリマーの鎖長及び平均分子量の指標である。RSVは、所定のポリマー濃度及び温度で測定され、以下のように計算される:

RSV=[(η/ηo)−1]/c

ηは、ポリマー溶液の粘度であり、ηは、同じ温度での溶媒の粘度であり、cは、溶液中のポリマーの濃度で、濃度「c」の単位は(グラム/100ml又はg/デシリットル)である。このため、RSVの単位は、dl/gである。本特許出願では、RSVの測定のために1モルの硝酸ナトリウム溶液を使用する。約0.045g/dLでのこの溶媒におけるポリマー濃度を測定する。RSVは30℃で測定する。Cannon Ubbelohde半ミクロ希釈粘度計サイズ75を用いて粘度η及びηを測定する。完全に立向き姿勢で30±0.02℃に調節される恒温槽の中に粘度計を取り付ける。RSVの計算に内在する誤差は約2dl/グラムである。一連の2つのポリマー同族体が同じRSVを有する場合、同じ分子量を有していることを示す。
【0019】
1又はそれ以上のポリマー及び1又はそれ以上のアンモニウム塩を具える水性ポリマー−アンモニウム塩調合物に、塩素(as Cl)対アンモニウムイオンのモル比が約1:10乃至約10:1の塩素源を混合することによって、さらに少なくとも7のpHを生じる十分なアルカリを混合することによって、本発明の抗菌構成物を調整する。
【0020】
適切な塩素源は、ここで記載される条件下で遊離塩素を提供し得る薬剤を有している。ある実施例では、塩素源は、塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、ジクロロイソシアヌル酸、トリロイソシアヌル酸、等である。別の実施例では、塩素源は、塩素ガス又は次亜塩素酸ナトリウムである。別の実施例では、塩素源は、次亜塩素酸ナトリウムである。別の実施例では、塩素源は、Clに基づいて約5乃至10パーセントの塩素を有する含水次亜塩素酸ナトリウム溶液である。
【0021】
ある実施例では、水性ポリマー−アンモニウム塩の調合物で使用されるポリマーが、少なくとも約100,000g/モルの平均分子量を有している。
【0022】
ある実施例では、水性ポリマー−アンモニウム塩の調合物が、含水アンモニウム塩溶液における1又はそれ以上のポリマーの水分散系である。
【0023】
含水アンモニウム塩溶液における1又はそれ以上のポリマーの水分散系を、1又はそれ以上のアンモニウム塩を含む含水連続相のモノマーを重合することによって、調整してもよい。含水連続相における水溶性ポリマーの分散重合の代表的な例は、米国特許第5,605,970号;第5,837,776号;第5,985,992号;第4,929,655号;第5,006,590号;第5,597,859号;及び第5,597,858号、欧州特許第183,466号;第657,478号;及び第630,909号で見付けることが可能である。
【0024】
典型的な合成では、水、1又はそれ以上のアンモニウム塩、1又はそれ以上の水溶性モノマー、chelantといった重合添加剤、pH緩衝剤又は連鎖移動薬剤(chain transfer agent)、及び水溶性安定化ポリマーを組み合わせることによって、ポリマー分散系を調整する。さらに、さらなる処理、構造の変更及び/又は安定化剤を混合物に加えてもよい。このような混合物の全て又は一部が、ミキサー、熱電対、窒素パージチューブ、及び復水器を具えた反応装置に装填される。溶液がしっかりと混合され、所望の温度に加熱され、その後で水溶性が加えられる。この溶液は、数時間温度及び混合を維持しながら窒素でパージされる。反応の経過中に、不連続相を含む水溶性ポリマーを形成する。開始材料の組み合わせを含む反応混合物の一部を重合の経過中に半バッチ方式で加えて、ポリマー構成物又は分子量に影響を与えてもよい。その後に、室温に生成物を冷却し、重合後の添加剤が反応装置に装填される。水溶性ポリマーの連続的な水分散系は、低せん断で測定されるように、生成物の粘度が約50乃至約10,000センチポアズの自由に流動する液体である。
【0025】
無機又は有機硫酸塩、塩化物、フッ化物、クエン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、リン酸水素(hydrogenphosphate)及びそれらの混合物を有するポリマー分散系を調整するために、付加的な無機塩類をアンモニウム塩と組み合わせて使用してもよい。代表的な付加的な無機塩は、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、等を有している。
【0026】
アニオン性ポリマーの分散系を調整するために、付加的なカチオン塩を上記の無機塩と組み合わせて使用してもよい。代表的なカチオン塩は、4乃至22個の炭素原子を有するテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、4乃至22個の炭素原子を有する置換テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、9乃至22の炭素原子を有するアリルトリアルキルアンモニウムハロゲン化物、及び9乃至22の炭素原子を有する置換アリルトリアルキルアンモニウムハロゲン化物を有している。
【0027】
また、上記の無機塩と、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硝酸ナトリウム等を含む1又はそれ以上のアニオン無機塩及び1又はそれ以上のチオシアン酸塩、過塩素酸塩、塩素酸塩、臭化物、ヨウ化物又は硝酸塩との混合物を用いて、カチオン性ポリマー分散系を調整してもよい。
【0028】
代表的なアニオン塩は、トリクロロ酢酸及びトリフルオロメタンスルホン酸の金属又はアンモニウム塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ブタンスルホン酸塩、ブタン二硫酸塩、ペンタンスルホン酸塩、ヘキサンスルホン酸塩、ヘキサン二硫酸塩、及びオクタン二硫酸塩といったスルホン酸塩及び二硫酸塩;ベンゼンスルホナート、ニトロベンゼンスルホナート、キシレンスルホナート、トルエンスルホナート、ベンゼン二硫酸塩、ナフタレンスルホナート;ジイソブチルスルホサクシネート、ジイソオクチルスルホサクシネート、ジメチルスルホサクシネート、ジエチルスルホサクシネート、ジイソプロピルスルホサクシネートといったジアルキルスルホサクシネート;ジシクロアルキルスルホサクシネート;及びジアリルスルホサクシネートといったアリル及び置換アリルスルホン酸塩及び二硫酸塩を有している。好適なアニオン塩は、ナトリウムヘキサンスルホナート、ナトリウムベンゼンスルホナート、ナトリウムキシレンスルホナートベンゼンスルホン酸ナトリウム、ナトリウムブタン二硫酸塩、ナトリウムヘキサン二硫酸塩、ナトリウムオクタン二硫酸塩、及びナトリウムデカン二硫酸塩を有している。これらの塩の比較的疎水性の性質は、分散系の形成を促進する。他の反応成分にこのような塩を任意の順序で加えてもよく、付加の順番をポリマー処理の変化に影響を与えるよう使用し得る。
【0029】
カチオン及びアニオン性ポリマー分散系を調整するための適切な高分子安定化剤は、好適には含水アンモニウム塩溶液に溶ける水溶性カチオン性ポリマーを有している。ポリマー分散系の総重量に基づいて約1乃至約10%の重量パーセント量のこの安定化剤を使用する。高分子安定化剤又はスタビライザは、個々の粒子形成を促進し凝集及びゲル生成を防止する。
【0030】
カチオン及びアニオン性ポリマー分散系を調整するための適切なカチオン安定化剤は、カチオンジアリル−N,N−二置換アンモニウムモノマーのホモポリマー、N,N−二置換−アミノエチル(メタ)アクリラートモノマー及びその第4級塩のホモポリマー、N,N−二置換−アミノプロピル(メタ)アクリルアミド及びその第4級塩のホモポリマー、ジアリル−N,N−二置換アンモニウムモノマー及びN,N−二置換−アミノエチル(メタ)アクリラートモノマー及びその第4級塩の共重合体、ジアリル−N,N−二置換アンモニウムモノマー及びN,N−二置換−アミノプロピル(メタ)アクリルアミドモノマー及びその第4級塩の共重合体を有しているが、これらに限定されず、カチオンポロマーは、少なくとも20モルパーセントの1又はそれ以上のカチオンジアリル−N,N−二置換アンモニウムモノマー、N,N−二置換−アミノエチル(メタ)アクリラートモノマー及びその第4級塩又はN,N−二置換−アミノプロピル(メタ)アクリルアミドモノマー及びその第4級塩及び1又はそれ以上の非イオン性モノマー、好適には(メタ)アクリルアミド、N−置換又はN,N−二置換(メタ)アクリルアミド又はスチレン、及びそれらの混合物を具えている。安定化剤の分子量は、好適には、約10,000乃至10,000,000g/molの範囲にある。
【0031】
アニオン性及び非イオン性ポリマー分散系を調整するための安定化剤は、約10,000乃至約10,000,000、好適には約1,000,000乃至約3,000,000の分子量を有する負に帯電した水溶性ポリマーを有している。安定化ポリマーは、食塩水に溶けるか又はわずかに溶ける必要があり、水に溶けなければならない。
【0032】
代表的なアニオン性安定化剤は、ポリアクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸及びアクリル酸及びメタクリル酸から選択されるアニオン性コモノマーの共重合体、1又はそれ以上のアニオン性モノマー及び1又はそれ以上の非イオン性モノマーのポリマー、及び上記のアニオン性安定化剤のナトリウム塩を有しているがこれらに限定されない。
【0033】
また、カチオン、アニオン、非イオン性及び双性イオンポリマー分散系を調整するための非イオン性分散剤を、単独で又は本書に記載されたカチオン、アニオン及び非イオン性安定化剤と組み合わせて使用し得る。代表的な非イオン性分散剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジノン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、可溶性デンプン、エピクロルヒドリン/ジメチルアミン、ポリ(N−ビニルピリジン)、等を有しているが、これらに限定されない。
【0034】
また、グリセリン又はエチレングリコールといった多官能アルコールを重合系に含めてもよい。これらのアルコールの存在下で微細粒子の沈殿がスムーズに行われる。
【0035】
適切な遊離基を生成する手段によって重合反応が開始する。熱的、光化学的、又は酸化還元に結合した開始システムを含む様々な従来のシステムの使用を通して開始が誘発される。ラジカル種が熱に起因する熱的に誘導されたラジカル、水溶性アゾの均一解離、過酸化物、ヒドロペルオキシド及びperester化合物が好適である。特に、好適な開始剤は、2,2’−アゾビス(2−amidinopropane)二塩酸塩及び2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミン)塩酸塩,等を有するアゾ化合物である。
【0036】
シードポリマーを、粒子の良好な分散を促進する目的でモノマーの重合開始の前に反応混合物に加えてもよい。シードポリマーは、多価のアニオン塩の水溶液には不溶性である水溶性のポリマーである。シードポリマーのモノマー構成物は、重合の際に形成される水溶性ポリマーの構成物と必ずしも同じでなくてもよい。シードポリマーは、好適には、ここで説明される分散ポリマープロセスによって調整されるポリマーである。
【0037】
代替的な実施例では、含水アンモニウム塩溶液における1又はそれ以上のポリマーの水分散系を、含水アンモニウム塩溶液に予め形成されたポリマーを分散させることによって調整してもよい。予め形成されたポリマーを、粉末、ラテックス又は溶液重合法を含む当技術分野で知られた重合方法によって調整してもよい。
【0038】
ポリマー−アンモニウム塩調合物を調整するのに使用する適切なアンモニウム塩は、本書に記載の条件下で塩素源と反応してクロラミンを形成し得るアンモニウム塩を有している。ある実施例では、アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム及びそれらの混合物から選択される。
【0039】
別の実施例では、アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム及びそれらの混合物から選択される。
【0040】
別の実施例では、アンモニウム塩が硫酸アンモニウムである。
【0041】
ポリマー分散系におけるアンモニウム塩の量は、約1:10乃至約10:1のアンモニウムイオンに対する塩素(as Cl)のモル比を生成するのに十分な量である。
【0042】
ある実施例では、ポリマー分散系におけるアンモニウム塩の量は、約1:3乃至約3:1のアンモニウムイオンに対する塩素(as Cl)のモル比を生成するのに十分な量である。
【0043】
別の実施例では、ポリマー分散系におけるアンモニウム塩の量が、約1:1の塩素(as Cl)のアンモニウムイオンに対するモル比を生成するのに十分な量である。
【0044】
ポリマー−アンモニウム塩調合物におけるアンモニウム塩に対するポリマー活性のレベルを、投与の必要性及び所望の生成物又は処理の結果に基づいて最適なレベルに調整し得る。
【0045】
生成ポリマーに、ポリマー又はポリマー−アンモニウム塩調合物に含まれているアンモニウム塩よりも高いアンモニウム塩の濃度の含水アンモニウム塩溶液を加えることによって、ポリマー−アンモニウム塩調合物におけるアンモニウム塩のレベルをポリマーに対して増量し得る。より希薄な含水アンモニウム塩溶液、水、ポリマー又は他の希釈剤を加えて、初めのポリマー−アンモニウム塩調合物に含まれているよりも低いアンモニウム塩の濃度を生成することによって、アンモニウム塩のレベルをポリマーに対して減量し得る。
【0046】
上記のような分散ポリマーのケースでは、ポリマー活性及びアンモニウム塩の相対量を、ポリマーの製造時に及び/又は上記のような重合の後に、2つの成分のレベルを調整することによって得ることができる。
【0047】
抗菌剤構成物を調合するために、ポリマー−アンモニウム塩調合物及び塩素源を十分なアルカリに混ぜ、特定の系のpH及び他のパラメータを考慮しながら、処理される系において効果的な抗菌作用を示す構成物を生成する。
【0048】
ある実施例では、十分なアルカリを使用して、約7のpHを有する構成物を調整する。別の実施例では、十分なアルカリを使用して、少なくとも約10のpHを有する構成物を調整する。別の実施例では、十分なアルカリを使用して、少なくとも約12のpHを有する構成物を調整する。
【0049】
ある実施例では、アルカリが、水酸化ナトリウム水溶液である。
【0050】
抗菌剤構成物を調合するために、ポリマー−アンモニウム塩調合物、アルカリ及び塩素源を別々に又は交互に加えてもよく、塩素源及びポリマー−アンモニウム塩調合物を混合するのに先立って、アルカリを塩素源又はポリマーアンモニウム塩調合物に調合してもよい。
【0051】
上述のように、水溶液系の微生物の成長を抑制するために、安定化塩素構成物を使用する。しかしながら、殺生物剤の添加だけでは、工業用の処理系での沈着/微生物管理に必ずしも十分ではない。細菌汚染を減らすための殺生物剤とともに、処理の有効性を改善するためのポリマーの添加は、いずれかの製品が達成し得るよりも大きくシステム性能を改善する。
【0052】
さらに、あるシステムにおけるポリマー機能を、高い微生物活動又は生物膜形成の存在の下で妥協してもよい。よく調整されたポリマー処理及び殺生物剤の適用によって、適切なポリマー性能を保証する。
【0053】
多くのポリマー製品構成物に見られる高いアンモニウム塩濃度は、塩素源と混ぜなければ処理プロセスにおいて潜在的に無駄になる可能性がある。本発明は、ポリマー製品におけるアンモニウム塩を利用して、2つの利点−1つの生成物を用いたポリマーの投与及び塩素の安定化を実現させる。
【0054】
本書で記載するポリマー−アンモニウム塩調合物の使用により、生成物を別々に処理して塩素を安定化させる必要性を無くし得る。これにより、生産在庫、保管コスト及び投与コストを減らす。
【0055】
水処理及び製紙システムで、様々なポリマー化学、製品形態及び運搬システムを使用する。特に、様々な産業界及び自治体の事業において、高分子量のポリアクリルアミドが、加工助剤及び水処理剤として一般に使用される。これらの水溶性ポリマーは、懸濁固形物及び汚染物質を除去するのを助け、様々なタイプの分離を生じさせるのを補助する。
【0056】
本発明は、加工助剤として水処理処理においてポリマーを使用し得るあらゆる産業に適用可能である。例えば、本発明に係る方法を適用し得る異なるタイプの工業用プロセスは、一般に、原水処理、廃水処理、工業用の水処理、自治体の水処理、食品及び飲料加工、製薬、電子装置製造、公共施設での操業、パルプ及び製紙処理、採鉱及び選鉱、輸送関連のプロセス、繊維加工、メッキ及び金属加工プロセス、洗濯及び洗浄工程、皮革加工及びなめし革加工、介護調合物添加剤及び塗装行程を有している。
【0057】
抗菌剤構成物を調整するのに使用されるポリマーは、非イオン性、カチオン性、アニオン性、両性又は双性イオンポリマーを具えている。ポリマー及びそれらの分子量及び電荷密度を、処理される特定のシステムに要求される性能に基づいて当業者によって容易に選択し得る。
【0058】
ある実施例では、水溶液系が製紙系である。
【0059】
製紙プロセスにおける分散ポリマーの使用は良く報告されている。例えば、滞留及び排水での適用における、ジメチルアミノエチルアクリラートメチルクロリド第4級塩(DMAEA−MCQ)/アクリルアミド共重合体及びジメチルアミノエチルアクリラートメチルクロリド第4級塩(DMAEA−BCQ)/アクリルアミド共重合体を有する高分子量のカチオン性ポリマーの使用が、特許番号6,059,930号、6,007,679号及び6,171,505B1号に記載されている。
【0060】
特許番号6,331,229B1及び6,432,271B1に記載されているように、ポリアクリルアミドアクリル酸塩/アクリルアミド重合体及びナトリウムAMPS/アクリルアミド重合体を有する高分子量のアニオン性及び非イオン性ポリマーが、製紙において増加する滞留及び排水の使用に多くの場合有益である。
【0061】
特許番号6,071,379及び6,238,521B1に記載されているように、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)/アクリルアミド重合体といった適度の分子量の凝固剤タイプのポリマーが、製紙における滞留、排水、及び工程改善の適用で有用である。
【0062】
低分子量及び高分子量のポリマーの組み合わせ、改良された溶解度及び/又はカチオン及びアニオン荷電ポリマーを製紙加工で使用する。実施例は、特許番号6,592,718B1及び米国特許出願第2006/0084771号に見受けられる。
【0063】
特許番号5,891,304及び5,466,338に記載されているように、DMAEA−MCQ/アクリルアミド重合体及びDMAEA−BCQ/アクリルアミド重合体といった、高分子量及び中程度の分子量のカチオン性ポリマーが、coated broke treatmentで有用である。
【0064】
特許番号5,938,937号、6,171,505B1及び6,413,433B1に記載されているように、DMAEA−BCQ/アクリルアミド又はDMAEA−MCQ/アクリルアミドの重合体といった高分子量のカチオン性ポリマーが製紙工場の水の浄化及び脱水で有用であり、単独で又は微粒子といった他の添加物と組み合わせて使用し得る。
【0065】
特許番号6,217,778B1に記載されているように、ポリアクリルアミド又はアクリル酸塩/アクリルアミド又はナトリウムAMPS/アクリルアミドといった、高分子量のアニオン性及び非イオン性ポリマーが、多くの場合浄化及び脱水に使用される。
【0066】
特許番号6,019,904号に記載されているように、DADMAC/アクリルアミド共重合体といった中程度の分子量の凝集タイプのポリマーが、脱墨工程の水の浄化に有用である。製紙工場の廃水の色度除去でのこのようなポリマーの使用が、特許番号5,292,793号、5,435,922号及び6,258,279号に記載されている。
【0067】
特許番号6,605,674B1に記載されたタイプの構造的に変化したポリマーが、紙の廃水処理とともに製紙工程で有用である。
【0068】
塩素源、水性ポリマー−アンモニウム塩調合物、及びアルカリ全てを、プロセスシステムの同じであるか又は間隔を空けるが概して互いに隣接した流れの地点に加えてもよい。必要に応じて、塩素源及びアルカリを予め混合してプロセスシステムの流れに加えてもよく、水性ポリマー−アンモニウム塩調合物を、同じ場所又は近くの場所のいずれかでプロセスシステムの流れに別々に加えてもよい。別のオプションでは、水性ポリマー−アンモニウム塩調合物及びアルカリを予め混合してプロセスシステムの流れに加えてもよく、塩素源を、同じ場所又は近くの場所のいずれかでプロセスシステムの流れに別々に加えてもよい。代替的に、塩素源、水性ポリマー−アンモニウム塩調合物、及びアルカリを、流れの同じ場所又は近接した場所でプロセスシステムの流れにそれぞれ別々に加えてもよい。
【0069】
ある実施例では、システムに加えるのに先立って抗菌剤構成物を調整する。
【0070】
塩素源、水性ポリマー−アンモニウム塩調合物、アルカリ源、又はそれらの混合物を、連続的又は断続的にプロセスシステムに加えてもよい。添加の頻度及びタイミングを、手で又は酸化還元電位、残留ハロゲン、pH、微生物活動、沈殿物の形成、又は他のシステムの状態といった、プロセスシステムの状態に基づいて添加を始動するタイマー又はセンサにリンクした制御自動化を使用することによって制御する。
【0071】
各添加方法では、塩素源、水性ポリマー−アンモニウム塩調合物、及びアルカリを、紙加工システムへの添加の前に混ぜてもよい。得られた安定化生成物を短期間保管した後に、必要に応じて処理されたシステムに加えてもよい。アクリルアミド/DMAEA−MCQ、アクリルアミド/DMAEA−BCQ及びアクリルアミド/DMAEM−MCQといった低電荷のカチオン性ポリマーといったポリマーは、高いpHで迅速に分解し、有益なポリマーの特性を十分に保つためにプロセスシステムへの素早い投与を要する。同様に、抗菌剤構成物を保管する際に、有用な塩素の減少が時間とともに生じてしまう。このため、プロセスシステムへの混合物の迅速な適用が好ましい。ここでは、「迅速な」とは、1時間以内、好適には抗菌剤構成物の形成の10分以内を意味する。
【0072】
微生物の十分な抑制を保持するのに必要な処理の頻度及び持続時間及び活性成分の濃度を、処理されるシステムの特性に応じて当業者によって決定し得る。一般に、約0.1乃至約100ppmの塩素(as Cl)のレベルが、効果的な制御を示すのに十分である。
【0073】
上記は、具体例として与えられ本発明の範囲を限定することを意図するものではない以下の実施例を参照することによってさらに理解できるであろう。
【0074】
実施例
次亜塩素酸ナトリウムから塩素を安定化させる代表的なポリマー−アンモニウム塩調合物の性能を見積もる目的で、3つの実験を行った。本実施例では、ポリマー−アンモニウム塩調合物が、Nalco Company,Naperville,ILから入手可能な2.26のRSVを有する含水硫酸アンモニウム溶液中におけるDADMAC/アクリルアミド分散共重合体である。
【0075】
シリーズ#1は、0.005モルの低い反応物濃度を使用する。シリーズ#2は、10倍の0.05モルの高い反応物濃度を使用する。シリーズ#3は、水酸化ナトリウムを添加するとともにシリーズ2#の高い反応物濃度を使用する。
【0076】
各シリーズは、2つの対照:A(塩素及び水);B(塩素及び硫酸アンモニウム);及び塩素及び代表的なポリマー−アンモニウム塩調合物を用いた反応物Cを有している。
【0077】
各ケースで塩素(as Cl)及び硫酸アンモニウムの濃度を、等モルの比で混合する。対照及びポリマー−アンモニウム塩調合物における硫酸アンモニウム濃度は等しい。
【0078】
各反応物の予成形の後で、生成物のpHを測定する。N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)試薬を用いて、自由及び安定化ハロゲン及びトータルの反応物収率の濃度を判定する。ハロゲン安定化物が存在しない反応物「A」のトータルの残留酸化剤(TRO)を測定することによって、実験の各組で100%の収率が判定された。各生成物における残留酸化剤の値を、安定化剤が無い反応物と比較して、ppmさらには歩留まりで報告する。結果を表1に示す。反応物の歩留まりをかっこで示す。
表1
ポリマー−アンモニウム塩調合物及び次亜塩素酸ナトリウムの混合物から得られる遊離及び安定化塩素反応生成物

DPDを用いて測定した残留酸化剤:
FRO=化学反応における遊離残留酸化剤のppm[酸化剤総量の%]
3FRO=3分のDPD反応時間後の化学反応における遊離残留酸化剤のppm[酸化剤総量の%]
TRO=化学反応におけるトータルの残留酸化剤のppm[酸化剤総量の%]
3TRO=3分のDPD反応時間後の化学反応におけるトータルの残留酸化剤のppm[酸化剤総量の%]
【0079】
本実施例は、ポリマー−アンモニウム塩調合物の塩素との反応により、少量の酸化剤だけしか喪失していない(90%以上の酸化剤を回収)ことを示しており、80%以上の安定な形態の酸化剤が良好な抗菌特性を有すると見込まれる。
【0080】
ここで記載した現在のところ好適な実施例に対する様々な変更及び修正が当業者にとって明らかであることに留意されたい。このような変更及び修正を、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくその付随する利点を弱めずに行ってもよい。このため、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によってカバーすることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又はそれ以上のポリマー及び1又はそれ以上のアンモニウム塩を具える含水ポリマー−アンモニウム塩調合物を、塩素(as Cl)対アンモニウムイオンのモル比が約1:10乃至約10:1の塩素源及び十分なアルカリと混合することによって、処理されるシステムで効果的な抗菌作用を示す構成物を生成するよう調整されることを特徴とする抗菌剤構成物。
【請求項2】
前記ポリマーが、約100,000g/モルよりも大きい平均分子量を有していることを特徴とする請求項1に記載の構成物。
【請求項3】
前記塩素源が、塩素ガス及び次亜塩素酸ナトリウムから選択されることを特徴とする請求項2に記載の構成物。
【請求項4】
前記調合物が、含水アンモニウム塩溶液における1又はそれ以上のポリマーの分散系であることを特徴とする請求項3に記載の構成物。
【請求項5】
少なくとも7のpHを有することを特徴とする請求項4に記載の構成物。
【請求項6】
前記アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項5に記載の構成物。
【請求項7】
前記含水アンモニウム塩溶液における1又はそれ以上のポリマーの分散系が、約0.5乃至約30dL/gの1N NaNO溶液の換算比粘度を有することを特徴とする請求項6に記載の構成物。
【請求項8】
約10よりも大きいpHを有していることを特徴とする請求項7に記載の構成物。
【請求項9】
前記アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項8に記載の構成物。
【請求項10】
含水アンモニウム塩溶液における1又はそれ以上のポリマーの分散系を、塩素(as Cl)対アンモニウムイオンのモル比が約1:3乃至約3:1の塩素源と混合することによって調整されることを特徴とする請求項9に記載の構成物。
【請求項11】
前記ポリマーが、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーから成る群から選択されることを特徴とする請求項10に記載の構成物。
【請求項12】
前記ポリマーが、(メタ)アクリルアミドと、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリラート塩化メチル第4級塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリラート塩化ベンジル第4級塩、(メタ)アクリル酸及びその塩、及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸から選択される1又はそれ以上のモノマーとの共重合体から選択されることを特徴とする請求項11に記載の構成物。
【請求項13】
前記ポリマーが、約2乃至約30モルパーセントの電荷を有していることを特徴とする請求項12に記載の構成物。
【請求項14】
前記アンモニウム塩が、硫酸アンモニウムであることを特徴とする請求項13に記載の構成物。
【請求項15】
含水アンモニウム塩溶液における1又はそれ以上のポリマーの分散系を、塩素(as Cl)対アンモニウムイオンのモル比が約1:1の塩素源と混合することによって調整されることを特徴とする請求項14に記載の構成物。
【請求項16】
約12よりも大きいpHを有していることを特徴とする請求項15に記載の構成物。
【請求項17】
前記ポリマー−アンモニウム塩調合物が、含水アンモニウム塩溶液の遊離基形成条件の下でモノマーを重合化することによって調整され、
前記アンモニウム塩が、硫酸アンモニウム、臭化アンモニウム、塩化アンモニウム及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の構成物。
【請求項18】
水溶液系の微生物の成長を抑制する方法であって、
抑制するのに有効な量の請求項1に記載の抗菌剤構成物で前記系を処理することを具えていることを特徴とする方法。
【請求項19】
前記水溶液系が、製紙系であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記抗菌性構成物が前記系への添加に先だって調整されることを特徴とする請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2010−514799(P2010−514799A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544283(P2009−544283)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/089013
【国際公開番号】WO2008/083263
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】