説明

抗菌活性を有するランチビオティック型化合物

本発明は、式(I)のアクタガルジン、アクタガルジンBおよびデオキシアクタガルジンB誘導体を提供する。式中:X1は残基がLeu;Val;またはIleであることを示し;X2は残基がLeu;Val;またはIleであることを示し;R1は少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されているアルキルまたはヘテロアルキル基を表し、かつR2は水素、または少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されていてもよいアルキルもしくはヘテロアルキル基を表するか、あるいはR1およびR2は窒素原子と一緒になって、少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有する複素環基を表し、ここで複素環基は任意に1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含み;Zはアミノ酸残基、-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7、-NR5C(NR8)NR6R7、または-N=R9であり、ここでR3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、独立に水素であるか、またはR9が水素ではないとの条件で、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルから選択される、置換されていてもよい基であり;かつYは-S-または-S(O)-である。化合物は微生物感染症の処置において用いられる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年7月18日提出のGB特許出願第0714029.6号に関連し、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、抗菌活性を有するランチビオティック型化合物、それらの生成法、およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ランチオニン含有抗生物質ペプチド、すなわち「ランチビオティック」は、様々なグラム陽性菌によって分泌される天然物群である。このクラスの化合物を規定する構造上の特徴は、リボソームで合成される直鎖ペプチド前駆体に作用する特定の生合成経路により生成されるチオエーテルアミノ酸であるランチオニンおよびメチルランチオニンの存在である。
【0004】
ランチビオティックはA型およびB型の2つのクラスに分類されている。A型ランチビオティックは一般に、それらの構造にかなりの直鎖部分を保持している伸長型両親媒性物質である。A型ランチビオティックの例はナイシンおよびサブチリンである。ナイシンおよび関連分子は、細菌細胞壁合成における不可欠な中間体であるリピドIIに結合することができる。加えて、A型ランチビオティックは原形質膜に細孔を形成することができる。A型ランチビオティックの強力な抗菌活性は、それらのリピドII結合および細孔形成能の組み合わせに由来すると考えられる。
【0005】
B型ランチビオティックは一般に、折りたたまれ、架橋して球形となり、長い直鎖ペプチド部分を持たない、小さいペプチドである。B型ランチビオティックの例はメルサシジン、アクタガルジンおよびシンナマイシンである。A型ランチビオティックと同様、これらは抗菌活性を有するが、細菌の膜に細孔を形成することはできないため、この活性はリピドIIに結合する能力に主に由来すると考えられる。
【0006】
メルサシジンおよびアクタガルジンは連鎖球菌(Streptococcus)、腸球菌(Enterococcus)およびクロストリジウム(Clostridium)属を含む一連のグラム陽性菌に対して強力な抗菌活性を有する。
【0007】
総説については、Sahl and Bierbaum (1998) Annual Rev. Microbiol. 52:41-79(非特許文献1); van Kraaij, de Vos, Siezen and Kuipers, Nat. Prod. Rep. 1999, 16, 575(非特許文献2); Chatterjee, Paul, Xie and van der Donk, Chem. Rev. 2005, 105, 633(非特許文献3)を参照されたい。
【0008】
アクタガルジンおよび類縁体はアクチノプラネス(Actinoplanes)の2つの種;A.ガルバジネンシス(A.garbadinensis)およびA.リグリアエ(A. liguriae)によって産生されることが報告されている[Parenti, Pagani, Beretta, J. Antibiotics, 1976, 29, 501(非特許文献4); 米国特許第6,022,851号(特許文献1)]。アクタガルジンはプレプロペプチドから産生され、そのC末端部分はポリペプチド配列:

を有する。このポリペプチドは下記の架橋により修飾されて、二次および三次構造を作る:架橋1-6、ランチオニン(Ser-Cys);架橋7-12、ベータ-メチルランチオニン(Thr-Cys);架橋9-17、ベータ-メチルランチオニン(Thr-Cys);架橋14-19、ベータ-メチルランチオニンスルホキシド(Thr-Cys)。同様に同時産生されるのは、架橋14および19が酸化されていない類縁体[Zimmerman, Metzger and Jung, Eur.J. Biochem 1995, 228, 786(非特許文献5)]、すなわちベータ-メチルランチオニンスルホキシドではなくベータ-メチルランチオニンであり、これは本明細書においてデオキシアクタガルジンと命名する。
【0009】
C末端配列:

を有し、残基14と19との間の架橋上のスルホキシドを持たないプロペプチドから誘導される、本明細書においてデオキシアクタガルジンBと呼ぶさらなる変異体も、A.リグリアエから単離されている(同時係属中の特許出願PCT/GB2007/000138(国際公開公報第2007/083112号)(特許文献2)に論じるとおりであり、その内容は参照により本明細書に組み入れられる)。
【0010】
アクタガルジンおよびデオキシアクタガルジンBの構造を以下に示す。

米国特許第6,022,851号(特許文献1)は、A.ガルバジネンシスおよびA.リグリアエの単離株からのアクタガルジンおよび関連体の単離を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,022,851号
【特許文献2】特許出願PCT/GB2007/000138(国際公開公報第2007/083112号)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Sahl and Bierbaum (1998) Annual Rev. Microbiol. 52:41-79
【非特許文献2】van Kraaij, de Vos, Siezen and Kuipers, Nat. Prod. Rep. 1999, 16, 575
【非特許文献3】Chatterjee, Paul, Xie and van der Donk, Chem. Rev. 2005, 105, 633
【非特許文献4】Parenti, Pagani, Beretta, J. Antibiotics, 1976, 29, 501
【非特許文献5】Zimmerman, Metzger and Jung, Eur.J. Biochem 1995, 228, 786
【発明の概要】
【0013】
発明の開示
本発明は、抗菌活性を有するランチビオティック型化合物、それらの生成法、およびそれらの使用に関する。これらの化合物はアクタガルジンと類似の抗菌活性スペクトルを有し、このランチビオティックの新しく有用な代替物を提供する。一つの局面において、本発明は、アクタガルジン、アクタガルジンBおよびデオキシアクタガルジンBの新規誘導体を提供する。もう一つの局面において、本発明のランチビオティック型化合物を、ランチビオティック、ならびにランチビオティック変異体および誘導体のC末端、および任意にN末端の修飾により調製する。本発明の化合物は、それらの誘導元のアクタガルジン、アクタガルジンBおよびデオキシアクタガルジンB化合物と比べて、改善された抗菌活性を有しうる。
【0014】
本発明は、本発明の化合物を薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む薬学的組成物も提供する。
【0015】
さらなる局面において、本発明は、本発明の化合物および組成物の治療における使用を提供する。特に、本発明は、対象の微生物感染症の処置または予防の方法であって、該対象に本発明の化合物または組成物を投与する段階を含む方法を提供する。化合物または組成物は経口、直腸、静脈内、膣、筋肉内または局所で投与してもよい。最も好ましくは、本発明の化合物および組成物は経口投与する。感染症は細菌感染症でありうる。好ましくは、感染症はクロストリジウム感染症、好ましくはウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、クロストリジウム ディフィシレ(Clostridium difficile)、破傷風菌(Clostridium tetani)またはボツリヌス菌(Clostridium botulinum)感染症、最も好ましくはC.ディフィシレ感染症である。これらの方法は、A型ランチビオティック、バンコマイシンまたはメトロニダゾールを用いての処置の方法に対する新しく有用な代替法を提供する。
【0016】
本明細書に記載の化合物、ならびにその誘導体および変異体は、C.ディフィシレに対して選択的でありうる。これらの化合物は、バンコマイシンまたはメトロニダゾールと比べて、他の共生腸内細菌叢、特にビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属およびバクテロイデス(Bacteroides)属に対して低い活性を有しうる。
【0017】
本明細書に記載の化合物はC.ディフィシレに対してバンコマイシンと類似の活性を有し、対象の微生物感染症の処置または予防の方法において、バンコマイシンの新しく有用な代替物を提供する。
【0018】
本明細書に記載の化合物はナイシンと比べて酵素分解に対する高い安定性を有しうる。特に、化合物はナイシンと比べて腸液に対する改善された安定性を有しうる。本発明の化合物の基本になるB型ランチビオティック構造は、A型化合物よりも小型で、A型の長い直鎖特性を有していない。したがって、これらはタンパク質分解に対する易損性が低く、したがって下部腸管の細菌感染などの感染部位に到達しやすいと考えられる。
【0019】
本発明は、インビボまたはインビトロで用いるための抗菌剤としての本発明の化合物および組成物の使用も提供する。
【0020】
さらなる局面において、本発明は、ランチビオティックまたはその変異体および/もしくは誘導体からの本発明の化合物の合成法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】C.ディフィシレ関連盲腸炎のハムスターモデルにおける化合物IIIのインビボでの有効性を示す図である。
【図2】C.ディフィシレ関連盲腸炎のハムスターモデルにおける化合物Iのインビボでの有効性を示す図である。
【図3】分析用HPLCにより追跡した化合物Iを生成する反応の経過を示す図である。(a)から(c)は、反応経過中のデオキシアクタガルジンBのモノアミド化合物Iおよび少量のジアミドへの変換を示す図である。
【図4】人工胃液(SGF)中の(a)ナイシンおよびメルサシジンならびに(b)化合物IおよびIIIの安定性を示す図である。
【図5】人工腸液(SIF)中の(a)ナイシンおよびメルサシジンならびに(b)化合物IIIの安定性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、ランチビオティック、特にアクタガルジン、アクタガルジンBおよびデオキシアクタガルジンBなどのB型ランチビオティックを基本とする化合物に関する。
【0023】
本明細書において提供するランチビオティック型化合物は、それらの誘導元の親ランチビオティックと比べて、改善された溶解性および/もしくは他の物理化学的性質ならびに/または生物活性を有しうる。改善された溶解性は、経口および静脈内投与のための本発明の化合物の製剤のために著しい利点を有する。さらに、改善された溶解性により、作用部位に高濃度の抗生物質が存在することが可能となり、より高い有効性を増強する。
【0024】
化合物
本発明の第一の局面において、式(I)の化合物:

またはその薬学的に許容される塩が提供される。
式中、AはLeu;Val;またはIleアミノ酸側鎖であり;BはLeu;Val;またはIleアミノ酸側鎖であり;Xは-NR1R2であり;かつY、Z、R1およびR2は以下に定義するとおりである。
【0025】
または、化合物またはその薬学的に許容される塩の構造は下記のとおりに都合よく表しうる。

式中、
X1は残基がLeu;Val;またはIleであることを示し;
X2は残基がLeu;Val;またはIleであることを示し;
R1は少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されているアルキルまたはヘテロアルキル基を表し、かつR2は水素、または少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されていてもよいアルキルもしくはヘテロアルキル基を表すか、あるいはR1およびR2は窒素原子と一緒になって、少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有する複素環基を表し、ここで複素環基は任意に1つまたは複数のヘ テロ原子をさらに含み;
Zはアミノ酸残基、-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7、-NR5C(NR8)NR6R7、または-N=R9であり、ここでR3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、独立に水素であるか、またはR9が水素ではないとの条件で、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルから選択される、置換されていてもよい基であり;
Yは-S-または-S(O)-である。さらなる局面において、本発明はこれらの化合物の変異体および生物活性誘導体を提供する。
【0026】
定義
基-NH2であるZに関して、この部分は前述の化合物の1位におけるアラニン残基のN末端を表すことが理解されるであろう。アミノ酸残基である基Zに関して、この部分はアミド結合により1位のアラニンに連結された、当技術分野においてXaa(0)と都合よく呼ぶアミノ酸を表すことが理解されるであろう。-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7、-NR5C(NR8)NR6R7、または-N=R9である基Zに関して、これらの基は1位のアラニンのN末端の修飾を表すことが理解されるであろう。
【0027】
前述の表現において、アミノ酸残基は適当な3文字コードで示されることが理解されるであろう。Abuは、構造式から明らかであるとおり、4-アミノ酪酸由来のアミノ酸残基を指す。
【0028】
基-NR1R2(-X)に関して、この部分はアミド結合により19位のアラニン残基に連結された基を表し、すなわちここでR1およびR2が結合している窒素原子はアミド結合の一部を形成することも理解されるであろう。この基は19位のアラニンのC末端の修飾を表すことが理解されるであろう。
【0029】
アミノ酸残基であるZへの言及は、R6がアミノ酸残基のアミノおよび側鎖官能基を表す、基-NR5COR6への言及であることも理解されるであろう。例えば、アミノ酸残基グリシンについて、R6は-CH2NH2である。典型的には、アミノ酸残基に関して、R6はアミノ置換基を有し、さらに適宜置換されていてもよい、C1-7アルキル基である。
【0030】
X1およびX2がそれぞれValおよびIleであり、かつYが-S(O)-である場合、化合物はアクタガルジン誘導体と呼んでもよい。
【0031】
X1およびX2がそれぞれLeuおよびValであり、かつYが-S-である場合、化合物はデオキシアクタガルジンB誘導体と呼んでもよい。
【0032】
X1およびX2がそれぞれLeuおよびValであり、かつYが-S-であり、Zが-NH2であり、R1が-CH2CH2OHであり、かつR2が水素である場合、化合物はデオキシアクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミドとも呼ぶ。
【0033】
アルキル:本明細書において用いられる「アルキル」なる用語は、1から20個の炭素原子を有し(特に記載がない限り)、飽和でも不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)でもよい、炭化水素化合物の炭素原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関する。
【0034】
ヘテロアルキル:本明細書において用いられる「ヘテロアルキル」なる用語は、N、S、またはOヘテロ原子で置き換えられた1つまたは複数の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0035】
アルキル基の文脈において、添え字(prefix)(例えば、C1-4、C1-7、C1-20、C2-7、C3-7など)は炭素原子の数、または炭素原子の数の範囲を示す。例えば、本明細書において用いられる「C1-4アルキル」なる用語は、1から4個の炭素原子を有するアルキル基に関する。アルキル基群の例には、C1-4アルキル(「低級アルキル」)、C1-7アルキル、およびC1-20アルキルが含まれる。最初の添え字は他の制限に応じて変動しうることに留意されたく;例えば、不飽和アルキル基について、最初の添え字は少なくとも2でなければならず;環式アルキル基について、最初の添え字は少なくとも3でなければならず;他も同様である。
【0036】
(無置換)飽和アルキル基の例には、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)、ヘプチル(C7)、オクチル(C8)、ノニル(C9)、デシル(C10)、ウンデシル(C11)、ドデシル(C12)、トリデシル(C13)、テトラデシル(C14)、ペンタデシル(C15)、およびエイコデシル(C20)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0037】
(無置換)飽和直鎖アルキル基の例には、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)、およびn-ヘプチル(C7)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0038】
(無置換)飽和分枝アルキル基の例には、イソ-プロピル(C3)、イソ-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソ-ペンチル(C5)、およびネオ-ペンチル(C5)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0039】
シクロアルキル:本明細書において用いられる「シクロアルキル」なる用語は、シクリル基でもあるアルキル基;すなわち、炭素環式化合物の炭素環の脂環式環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関し、この炭素環は飽和でも不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)でもよく、この部分は3から20個の環原子を含む、3から20個の炭素原子を有する(特に記載がない限り)。好ましくは、各環は3から7個の環原子を有する。シクロアルキル基群の例には、C3-20シクロアルキル、C3-15シクロアルキル、C3-10シクロアルキル、C3-7シクロアルキルが含まれる。
【0040】
ヘテロシクリル:本明細書において用いられる「ヘテロシクリル」なる用語は、複素環式化合物の環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分に関し、この部分は3から20個の環原子を有し(特に記載がない限り)、そのうち1から10個は環ヘテロ原子である。好ましくは、各環は3から7個の環原子を有し、そのうち1から4個は環ヘテロ原子である。
【0041】
本文脈において、添え字(例えば、C3-20、C3-7、C5-6など)は、炭素原子またはヘテロ原子のいずれであろうと、環原子の数、または環原子の数の範囲を示す。例えば、本明細書において用いられる「C5-6ヘテロシクリル」なる用語は、5または6個の環原子を有するヘテロシクリル基に関する。ヘテロシクリル基群の例には、C3-20ヘテロシクリル、C5-20ヘテロシクリル、C3-15ヘテロシクリル、C5-15ヘテロシクリル、C3-12ヘテロシクリル、C5-12ヘテロシクリル、C3-10ヘテロシクリル、C5-10ヘテロシクリル、C3-7ヘテロシクリル、C5-7ヘテロシクリル、およびC5-6ヘテロシクリルが含まれる。
【0042】
単環式ヘテロシクリル基の例には、下記から誘導されるものが含まれるが、それらに限定されるわけではない:
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロールまたは3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7);
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7);
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7);
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、およびジオキセパン(C7);
O3:トリオキサン(C6);
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリジン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6);
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソオキサゾール(C5)、ジヒドロイソオキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6);
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6);
N2O1:オキサジアジン(C6);
O1S1:オキサチオール(C5)およびオキサチアン(チオキサン)(C6);ならびに
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0043】
置換(非芳香族)単環式ヘテロシクリル基の例には、環式型の糖類、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、およびキシロフラノースなどのフラノース(C5)、ならびにアロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース、およびタロピラノースなどのピラノース(C6)から誘導されるものが含まれる。
【0044】
R1およびR2はアミド結合の窒素原子と一緒になって、少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有するヘテロシクリル基を表しうる。ヘテロシクリル基は前述のN1の例から選択される基でありうる。ヘテロシクリル基は1つまたは複数のさらなるヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロシクリル基は前述のN2、N1O1、N1S1、N2O1およびN1O1S1の例から選択される基でありうる。
【0045】
アリール:本明細書において用いられる「アリール」なる用語は、芳香族化合物の芳香環原子から水素原子を除去することにより得られる一価の部分を指し、該化合物は1つの環、または2つ以上の環(例えば、縮合環)を有する。
【0046】
ヘテロアリール:本明細書において用いられる「ヘテロアリール」なる用語は、N、S、Oヘテロ原子であるが、それらに限定されるわけではない原子で置き換えられた1つまたは複数の炭素原子を有するアリール基を指す。この場合、基は「C5-20ヘテロアリール」基と都合よく呼んでもよく、ここで「C5-20」は、炭素原子またはヘテロ原子のいずれであろうと、環原子を示す。好ましくは、各環は5から7個の環原子を有し、そのうちの0から4個は環ヘテロ原子である。
【0047】
アラルキル:本明細書において用いられるアラルキルなる用語は、1つまたは複数、好ましくは1つの、上で定義したアリール基で置換されている、上で定義したアルキル基を指す。
【0048】
ヘテロアラルキル:本明細書において用いられる「ヘテロアラルキル」なる用語は、1つまたは複数、好ましくは1つの、上で定義したアリール基で置換されている、上で定義したアルキル基であって、アルキルおよび/またはアリール基の1つまたは複数の炭素原子が、N、S、Oヘテロ原子であるが、それらに限定されるわけではない原子で置き換えられている基を指す。
【0049】
C5-20アリール:本明細書において用いられる「C5-20アリール」なる用語は、C5-20芳香族化合物の芳香環原子から水素原子を除去することにより得られ、5から20個の環原子を有する一価の部分に関し、該環の少なくとも1つは芳香環である。好ましくは、各環は5から7個の環原子を有する。
【0050】
環ヘテロ原子を持たないC5-20アリール基(すなわち、C5-20カルボアリール基)の例には、ベンゼン(すなわち、フェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、およびピレン(C16)から誘導されるものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0051】
縮合環を含むC5-20ヘテロアリール基には、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドールから誘導されるC9ヘテロアリール基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジンから誘導されるC10ヘテロアリール基;アクリジンおよびキサンテンから誘導されるC14ヘテロアリールが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0052】
前述の基は、単独またはもう一つの置換基の一部のいずれであろうと、それら自体がそれら自体および下記の追加の置換基から選択される1つまたは複数の基で置換されていてもよい。
【0053】
ハロ:-F、-Cl、-Br、および-I。
【0054】
ヒドロキシル:-OH。
【0055】
エーテル:-OR、ここでRはエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルコキシ基とも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも呼ぶ)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも呼ぶ)、好ましくはC1-7アルキル基である。
【0056】
ニトロ:-NO2
【0057】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
【0058】
アシル(ケト):-C(=O)R、ここでRはアシル置換基、例えば、H、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルまたはC1-7アルカノイルとも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも呼ぶ)、またはC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも呼ぶ)、好ましくはC1-7アルキル基である。アシル基の例には、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(ブチリル)、および-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0059】
カルボキシ(カルボン酸):-COOH。
【0060】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR、ここでRはエステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例には、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3、および-C(=O)OPhが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0061】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):-C(=O)NR1R2、ここでR1およびR2は独立に、アミノ基について定義したアミノ置換基である。アミド基の例には、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3、および-C(=O)N(CH2CH3)2、ならびにR1およびR2がそれらが結合している窒素原子と一緒になって、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、およびピペラジニルカルボニルにおけるような複素環式構造を形成するアミド基が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0062】
アミノ:-NR1R2、ここでR1およびR2は独立にアミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノまたはジ-C1-7アルキルアミノとも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基、もしくはC5-20アリール基、好ましくはHもしくはC1-7アルキル基であるか、または、「環式」アミノ基の場合、R1およびR2はそれらが結合している窒素原子と一緒になって、4から8個の環原子を有する複素環を形成する。アミノ基の例には、-NH2、-NHCH3、-NHCH(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、および-NHPhが含まれるが、それらに限定されるわけではない。環式アミノ基の例には、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、ペルヒドロジアゼピニル、モルホリノ、およびチオモルホリノが含まれるが、それらに限定されるわけではない。特に、環式アミノ基はそれらの環上で、ここで定義する任意の置換基、例えば、カルボキシ、カルボキシレートおよびアミドにより置換されていてもよい。
【0063】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2、ここでR1はアミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはHまたはC1-7アルキル基、最も好ましくはHであり、R2はアシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルアミド基の例には、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3、および-NHC(=O)Phが含まれるが、それらに限定されるわけではない。R1およびR2は一緒になって、例えば、スクシンイミジル、マレイミジル、およびフタルイミジル:

におけるような環式構造を形成してもよい。
【0064】
アミノカルボニルオキシ:-OC(=O)NR1R2、ここでR1およびR2は独立に、アミノ基について定義したアミノ置換基である。アミノカルボニルオキシ基の例には、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NHMe、-OC(=O)NMe2、および-OC(=O)NEt2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0065】
ウレイド:-N(R1)CONR2R3、ここでR2およびR3は独立に、アミノ基について定義したアミノ置換基であり、R1はウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは水素またはC1-7アルキル基である。ウレイド基の例には、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2、-NMeCONEt2および-NHCONHPhが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0066】
グアニジノ:-NH-C(=NH)NH2
【0067】
テトラゾリル:

4個の窒素原子および1個の炭素原子を有する5員芳香環。
【0068】
イミノ:=NR、ここでRはイミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはHまたはC1-7アルキル基である。イミノ基の例には、=NH、=NMe、および=NEtが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0069】
アミジン(アミジノ):-C(=NR)NR2、ここで各Rはアミジン置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはHまたはC1-7アルキル基である。アミジン基の例には、-C(=NH)NH2、-C(=NH)NMe2、および-C(=NMe)NMe2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0070】
ニトロ:-NO2
【0071】
ニトロソ:-NO。
【0072】
アジド:-N3
【0073】
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN。
【0074】
イソシアノ:-NC。
【0075】
シアナト:-OCN。
【0076】
イソシアナト:-NCO。
【0077】
チオシアノ(チオシアナト):-SCN。
【0078】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R、ここでRはアシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルオキシ基の例には、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、-OC(=O)C6H4F、および-OC(=O)CH2Phが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0079】
イソチオシアノ(イソチオシアナト):-NCS。
【0080】
チオール:-SH。
【0081】
チオエーテル(スルフィド):-SR、ここでRはチオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも呼ぶ)、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。C1-7アルキルチオ基の例には、-SCH3および-SCH2CH3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0082】
ジスルフィド:-SS-R、ここでRはジスルフィド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基(本明細書においてC1-7アルキルジスルフィドとも呼ぶ)である。C1-7アルキルジスルフィド基の例には、-SSCH3および-SSCH2CH3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0083】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド):-S(=O)R、ここでRはスルフィン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィン基の例には、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0084】
スルホキシド(スルフィニル):-S(=O)R、ここでRはスルホキシド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホキシド基の例には、-S(=O)CH3および-S(=O)CH2CH3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0085】
スルホニル(スルホン):-S(=O)2R、ここでRはスルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホン基の例には、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3、-S(=O)2CH2CH3、および4-メチルフェニルスルホニル(トシル)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0086】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR1R2、ここでR1およびR2は独立に、アミノ基について定義したアミノ置換基である。アミド基の例には、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2、および-C(=S)NHCH2CH3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0087】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R、ここでR1はアミノ基について定義したアミノ置換基であり、Rはスルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホンアミノ基の例には、-NHS(=O)2CH3、-NHS(=O)2Phおよび-N(CH3)S(=O)2C6H5が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0088】
スルフィン酸(スルフィノ):-S(=O)OH、-SO2H。
【0089】
スルホン酸(スルホ):-S(=O)2OH、-SO3H。
【0090】
スルフィネート(スルフィン酸エステル):-S(=O)OR;ここでRはスルフィネート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィネート基の例には、-S(=O)OCH3(メトキシスルフィニル;スルフィン酸メチル)および-S(=O)OCH2CH3(エトキシスルフィニル;スルフィン酸エチル)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0091】
スルホニルオキシ:-OS(=O)2R、ここでRはスルホニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホニルオキシ基の例には、-OS(=O)2CH3(メシレート)および-OS(=O)2CH2CH3(エシレート)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0092】
硫酸エステル:-OS(=O)2OR;ここでRは硫酸エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。硫酸エステル基の例には、-OS(=O)2OCH3および-SO(=O)2OCH2CH3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0093】
スルファミル(スルファモイル;スルフィン酸アミド;スルフィンアミド):-S(=O)NR1R2、ここでR1およびR2は独立に、アミノ基について定義したアミノ置換基である。スルファミル基の例には、-S(=O)NH2、-S(=O)NH(CH3)、-S(=O)N(CH3)2、-S(=O)NH(CH2CH3)、-S(=O)N(CH2CH3)2、および-S(=O)NHPhが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0094】
スルホンアミド(スルフィナモイル;スルホン酸アミド;スルホンアミド):-S(=O)2NR1R2、ここでR1およびR2は独立に、アミノ基について定義したアミノ置換基である。スルホンアミド基の例には、-S(=O)2NH2、-S(=O)2NH(CH3)、-S(=O)2N(CH3)2、-S(=O)2NH(CH2CH3)、-S(=O)2N(CH2CH3)2、および-S(=O)2NHPhが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0095】
スルファミノ:-NR1S(=O)2OH、ここでR1はアミノ基について定義したアミノ置換基である。スルファミノ基の例には、-NHS(=O)2OHおよび-N(CH3)S(=O)2OHが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0096】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R、ここでR1はアミノ基について定義したアミノ置換基であり、Rはスルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホンアミノ基の例には、-NHS(=O)2CH3および-N(CH3)S(=O)2C6H5が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0097】
スルフィンアミノ:-NR1S(=O)R、ここでR1はアミノ基について定義したアミノ置換基であり、Rはスルフィンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィンアミノ基の例には、-NHS(=O)CH3および-N(CH3)S(=O)C6H5が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0098】
ホスフィノ(ホスフィン):-PR2、ここでRはホスフィノ置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。ホスフィノ基の例には、-PH2、-P(CH3)2、-P(CH2CH3)2、-P(t-Bu)2、および-P(Ph)2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0099】
ホスホ:-P(=O)2
【0100】
ホスフィニル(ホスフィンオキシド):-P(=O)R2、ここでRはホスフィニル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基またはC5-20アリール基である。ホスフィニル基の例には、-P(=O)(CH3)2、-P(=O)(CH2CH3)2、-P(=O)(t-Bu)2、および-P(=O)(Ph)2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0101】
ホスホン酸(ホスホノ):-P(=O)(OH)2
【0102】
ホスホン酸エステル(ホスホノエステル):-P(=O)(OR)2、ここでRはホスホン酸エステル置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。ホスホン酸エステル基の例には、-P(=O)(OCH3)2、-P(=O)(OCH2CH3)2、-P(=O)(O-t-Bu)2、および-P(=O)(OPh)2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0103】
リン酸(ホスホノオキシ):-OP(=O)(OH)2
【0104】
リン酸エステル(ホスホノオキシエステル):-OP(=O)(OR)2、ここでRはリン酸エステル置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。リン酸エステル基の例には、-OP(=O)(OCH3)2、-OP(=O)(OCH2CH3)2、-OP(=O)(O-t-Bu)2、および-OP(=O)(OPh)2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0105】
亜リン酸:-OP(OH)2
【0106】
亜リン酸エステル:-OP(OR)2、ここでRは亜リン酸エステル置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。亜リン酸エステル基の例には、-OP(OCH3)2、-OP(OCH2CH3)2、-OP(O-t-Bu)2、および-OP(OPh)2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0107】
ホスホルアミダイト:-OP(OR1)-NR22、ここでR1およびR2はホスホルアミダイト置換基、例えば、-H、(置換されていてもよい)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。ホスホルアミダイト基の例には、-OP(OCH2CH3)-N(CH3)2、-OP(OCH2CH3)-N(i-Pr)2、および-OP(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0108】
ホスホルアミダート:-OP(=O)(OR1)-NR22、ここでR1およびR2はホスホルアミダート置換基、例えば、-H、(置換されていてもよい)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。ホスホルアミダート基の例には、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(CH3)2、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(i-Pr)2、および-OP(=O)(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0109】
シリル:-SiR3、ここでRはシリル置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。シリル基の例には、-SiH3、-SiH2(CH3)、-SiH(CH3)2、-Si(CH3)3、-Si(Et)3、-Si(iPr)3、-Si(tBu)(CH3)2、および-Si(tBu)3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0110】
オキシシリル:-Si(OR)3、ここでRはオキシシリル置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、またはC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、またはC5-20アリール基である。オキシシリル基の例には、-Si(OH)3、-Si(OMe)3、-Si(OEt)3、および-Si(OtBu)3が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0111】
シロキシ(シリルエーテル):-OSiR3、ここでSiR3は上で定義したシリル基である。
【0112】
オキシシロキシ:-OSi(OR)3、ここでOSi(OR)3は上で定義したオキシシリル基である。
【0113】
多くの場合、置換基はそれら自体置換されている。
【0114】
前述のとおり、上に挙げた置換基を形成する基、例えば、アルキル、ヘテロシクリルおよびアリールは、それら自体置換されていてもよい。したがって、前述の定義は置換されている置換基を対象とする。
【0115】
好ましい化合物
本発明の第一の局面の好ましい化合物を以下に記載する。
【0116】
好ましくは、X1はLeuであり、X2はValもしくはIleであるか;またはX1はValであり、X2はValもしくはIleである。最も好ましくは、X1はLeuであり、X2はValであるか;またはX1はValであり、X2はIleである。
【0117】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は置換されていてもよいか、または適宜さらに置換されていてもよい。しかし、いくつかの態様において、これらの基は無置換であるか、または適宜さらに置換されていない。
【0118】
R1またはR2がアルキル基である場合、アルキル基はC1-7アルキル基、最も好ましくはC1-4アルキル基であってもよい。R1またはR2アルキル基は好ましくは完全飽和である。
【0119】
R1またはR2は1、2、3、4、5、6または7個の炭素原子を有していてもよい。
【0120】
R1およびR2がアミドの窒素原子と一緒になって、1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含む複素環基を表す場合、好ましくはヘテロ原子は複素環の隣接する位置ではない。
【0121】
R1およびR2がアミドの窒素原子と一緒になって、1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含む複素環基を表す場合、複素環基は好ましくはC3-20複素環基である。好ましくは複素環基はC5-10複素環基である。複素環基は5、6または7個の環原子を有していてもよい。
【0122】
R1およびR2はいずれも1つまたは複数のヒドロキシル置換基を有していてもよい。それらの間に、R1およびR2は2つ以上のヒドロキシル置換基を有していてもよい。好ましくは、R1は1、2または3個のヒドロキシル置換基を有する。
【0123】
R1およびR2は同じであってもよい。
【0124】
好ましくはR1はアルキル基である。好ましくはR2は水素である。
【0125】
R1およびR2がヒドロキシル置換基を有するヘテロアルキル基である場合、ヒドロキシル置換基はヘテロアルキル基の炭素原子上の置換基である。
【0126】
R1およびR2が2つ以上のヒドロキシル置換基を有するアルキルまたはヘテロアルキル基である場合、各ヒドロキシル置換基はアルキルまたはヘテロアルキル基の異なる炭素原子上の置換基である。
【0127】
一つの態様において、R1およびR2アルキル基は非環式である。一つの態様において、R1およびR2アルキル基は直鎖である。
【0128】
一つの態様において、R1およびR2は置換されているか、または適宜さらに置換されている。置換基は下記からなる群より選択される1つまたは複数の基であってもよい:カルボキシ、エステル、アシルオキシ、アミド、アシルアミド、ならびにアリールおよびヘテロアリール。好ましくは、置換基は下記からなる群より選択される1つまたは複数の基である:カルボキシ、エステル、アシルオキシ、アリールおよびヘテロアリール。
【0129】
好ましくはR1またはR2は独立に下記の置換基:

の1つであり、ここで、*は窒素原子への結合点を示す。
【0130】
加えて、または代わりに、R1またはR2は下記の置換基:

の1つから独立に選択してもよく、ここで、*は窒素原子への結合点を示す。
【0131】
一つの態様において、R1は前述の置換基群のいずれかに示す置換基の1つから独立に選択される。この態様において、R2は好ましくは水素である。
【0132】
または、R1およびR2は窒素原子と一緒になって、すなわちXは、下記の群:

より選択される置換基であってもよく、ここで、*はC末端のカルボニル炭素への結合点を示す。
【0133】
加えて、または代わりに、R1またはR2は下記の置換基:

から独立に選択してもよく、ここで*は窒素原子への結合点を示す。
【0134】
好ましくは、R1は-CH2CH2OHである。
【0135】
一つの態様において、Zは-NH2、アミノ酸または-NR5COR6である。好ましくは、Zは-NH2、またはアミノ酸である。一つの態様において、Zは-NR5COR6であり、R5は水素である。
【0136】
Zがアミノ酸残基である場合、アミノ酸残基は、好ましくは遺伝コードによってコードされる天然アミノ酸残基またはそのD-イソ型、より好ましくはIle-、Lys-、Phe-、Val-、Glu-、Asp-、His-、Leu、Arg-、Ser-およびTrp-の群より選択されるアミノ酸残基である。一つの局面において、アミノ酸残基はIle-、Lys-、Phe-、Val-、Glu-、Asp-、His-、Leu-、Arg-およびSer-の群より選択してもよい。そのような変異体は、米国特許第6,022,851号に記載のとおり、Zが-NH2である化合物への残基の化学的付加によって生成してもよく、この特許の内容は参照により本明細書に組み入れられる。アミノ酸の化学的付加によってアミノ酸はL-またはD-配置になりうることが理解されるであろう。これには、前述のものなどの他のアミノ酸のD型に加えて、D-Alaが含まれる。
【0137】
アミノ酸残基は、例えば、セリン、システインおよびトレオニン残基の翻訳後修飾中に生成される残基などの、修飾天然アミノ酸であってもよい。本発明の化合物内の残基は下記の群:

に示す脱水アミノ酸から選択してもよい。
【0138】
これらの構造の第二のものは、デヒドロアミノ酪酸残基と呼んでもよい。加えて、アミノ酸残基は下記の群:

に示す環式残基から選択してもよい。
【0139】
理解されるであろうとおり、これらの環式構造の合成は典型的に、セリン、トレオニンまたはシステイン残基側鎖の、典型的であるが、本質的ではない、隣接アミノ酸残基のアミドカルボニルとの環化を含む。
【0140】
したがって、前述の構造は、隣接するアミノ酸などの隣接する基の一部を含む。または、隣接する基はセリン、トレオニンまたはシステイン残基と一緒になって残基のN末端のアミド結合を形成する基から誘導してもよい。これを、セリン残基のN末端のアミド結合を通じて隣接する基と連結されているセリン残基から誘導されるオキサゾリンアミノ酸残基についての下記の例:

において逆合成的に示す。
【0141】
アステリスク(*)は隣接する基のカルボニル炭素に由来するオキサゾリンの炭素原子の位置を示す。逆合成は例示のために示すにすぎず、前述の翻訳後修飾アミノ酸残基は別の前駆体から調製してもよい。
【0142】
アミノ酸残基は非天然または異常天然アミノ酸であってもよい。アミノ酸はセレノセリン、アミノ酪酸、アミノイソ酪酸、ブチルグリシン、シトルリン、シクロヘキシルアラニン、ジアミノプロピオン酸、ホモセリン、ヒドロキシプロリン、ノルロイシン、ノルバリン、オルニチン、ペニシラミンピログルタミン酸、サルコシン、スタチン、テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、およびチエニルアラニンからなる群より選択してもよい。LまたはD型を選択してもよい。
【0143】
アミノ酸はα-、β-、またはγ-アミノ酸であってもよい。アミノ酸のアミノ基はモノまたはジアルキル化されていてもよい。Zがアミノ酸残基である場合、アミノ酸のアミノ基は修飾されていてもよい。したがって、N末端は-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7および-NR5C(NR8)NR6R7から選択される基であってもよく、ここでR3、R4、R5、R6、R7およびR8は上で定義したとおりである。
【0144】
Zがアミノ酸残基である場合、アミノ酸残基は保護アミノ酸残基であってもよい。アミノ基のそのような保護基はFmoc、Boc、Ac、BnおよびZ(またはCbz)からなる群より選択してもよい。側鎖も適宜保護してもよい。側鎖保護基は、側鎖に対して適宜、Pmc、Pbf、OtBu、Trt、Acm、Mmt、tBu、Boc、ivDde、2-ClTrt、tButhio、Npys、Mts、NO2、Tos、OBzl、OcHx、Acm、pMeBzl、pMeOBz、OcHx、Bom、Dnp、2-Cl-Z、Bzl、For、および2-Br-Zからなる群より選択してもよい。
【0145】
天然および非天然アミノ酸と、それらの保護体、ならびに保護基脱保護法は周知である。多くはMerck Novabiochem(商標)のカタログ'Reagents for Peptide and High-Throughput Synthesis' (2006/7)(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に概説されている。
【0146】
R3およびR4の1つは、置換されていてもよい、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルから選択される基であってもよい。
【0147】
R3およびR4は両方とも水素であってもよい。
【0148】
Zが-NH2である、すなわちR3およびR4が両方とも水素である場合、この基は保護型であってもよい。保護基はFmoc、Boc、Ac、BnおよびZ(またはCbz)からなる群より選択してもよい。保護型に関して以下に記載するものなどの、別の保護基を用いてもよい。
【0149】
好ましくは、R5は水素である。
【0150】
好ましくは、Zは-NH2、アミノ酸または-NR5COR6である。Zが-NR5COR6である場合、好ましくはR5は水素であり、R6はヒドロキシル基で置換されているアラルキル基であり、最も好ましくはアラルキル基は基のアルキル部分で置換されている。R6は-CH(OH)Ph(すなわち、Zはマンデリル基で修飾されている)であってもよい。
【0151】
R9は好ましくは、置換されていてもよい、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルから選択される基であってもよい。
【0152】
本発明の第一の局面の好ましい化合物は下記の化合物である:
化合物I:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
化合物II:デオキシ-アクタガルジンB N-[4-ブタノールアミン]モノカルボキサミド
化合物III:アクタガルジンN-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
化合物IV:デオキシ-アクタガルジンB(3-アミノ-1,2-プロパンジオール)モノカルボキサミド
化合物V:デオキシ-アクタガルジンB(2-アミノ-1,3-プロパノール)モノカルボキサミド
化合物VI:デオキシ-アクタガルジンB[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]モノカルボキサミド
化合物VII:デオキシ-アクタガルジンB(1-アミノ-2-プロパノール)モノカルボキサミド
化合物VIII:デオキシ-アクタガルジンB(1-アミノ-3-プロパノール)モノカルボキサミド
化合物IX:(L)-フェニルアラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物X:(L)-トリプトファニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XI:(L)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XII:(D)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XIII:(L)-イソロイシル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XIV:(L)-ロイシニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XV:N-フェニルアセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XVI:N-アセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XVII:N-マンデリルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XVIII:デオキシアクタガルジンB(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)モノカルボキサミド
【0153】
加えて、または代わりに、本発明の第一の局面の好ましい化合物は下記の化合物から選択してもよい:
化合物XX:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミン]モノカルボキサミド
化合物XXI:デオキシ-アクタガルジンB(L-セリンメチルエステル)モノカルボキサミド
化合物XXII:デオキシアクタガルジンB(N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)モノカルボキサミド
化合物XXIII:デオキシ-アクタガルジンB(2-ヒドロキシピペラジン)モノカルボキサミド
【0154】
加えて、または代わりに、本発明の第一の局面の好ましい化合物は下記の化合物から選択してもよい:
化合物XXX:(L)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XXXI:(D)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XXXII:(L)-イソロイシニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XXXIII:(L)-ロイシニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XXXIV:N-フェニルアセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XXXV:N-アセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
化合物XXXVI:N-マンデリルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
【0155】
最も好ましい化合物は下記である:
化合物I:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
化合物III:アクタガルジン N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
【0156】
最も好ましい化合物は、それらの誘導元のアクタガルジンおよびデオキシアクタガルジンB化合物と比べて改善された抗菌活性を有する。
【0157】
本発明は、式(I)の化合物の変異体、誘導体および前駆体も提供する。これらを以下に詳細に記載する。
【0158】
変異体
式(I)の化合物の変異体には、1つまたは複数、例えば、1、2、3または4つなどの、1から5つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている化合物が含まれる。好ましくは、アミノ酸は式(I)の化合物の2、3、4、5、8、10、11、13、15、16または18位から選択される位置にある。
【0159】
置換は1つのアミノ酸の別の天然アミノ酸によるものであってもよく、保存的または非保存的置換であってもよい。保存的置換には以下の表に示すものが含まれ、ここで2つ目のカラムの同じブロック、好ましくは3つ目のカラムの同じ行のアミノ酸は互いに置換されてもよい。

【0160】
または、アミノ酸は前述の修飾、非天然または異常アミノ酸の1つで置換されていてもよい。
【0161】
本発明の化合物の変異体には、1つまたは複数の架橋がチオニン架橋以外の架橋である化合物が含まれてもよい。代替の架橋には、適当な場合には、ジスルフィド架橋、ならびにアミドおよびエステル架橋(それぞれ、いわゆるマクロラクタムおよびマクロラクトン誘導体)が含まれる。
【0162】
誘導体
本発明の化合物の誘導体(変異体を含む)は、本発明の化合物の1つまたは複数のアミノ酸側鎖が、例えば、エステル化、アミド化または酸化により修飾されているものである。
【0163】
本発明の化合物の誘導体は、アクタガルジンのカルボキシ官能基の1つにおけるモノアミド誘導体であってもよい。誘導体には、内部残基の側鎖のカルボキシ官能基、例えば、残基Glu11のものが-COOHからR10が水素、(C1-C4)アルキルまたは(C1-C4)アルコキシ(C2-C4)アルキルである基-COOR10に修飾されている化合物が含まれうる。または、内部残基の側鎖のカルボキシ官能基、例えば、残基Glu11のものが-COOHからR1およびR2がC末端アミド置換基に関して上で定義された基-CONR1R2に修飾されている。
【0164】
化合物(I)を下記の架橋と共に示す:架橋1-6、ランチオニン(Ser-Cys);架橋7-12、ベータ-メチルランチオニン(Thr-Cys);および架橋9-17、ベータ-メチルランチオニン(Thr-Cys)。本発明の一つの態様において、これらの架橋の1、2または3つはチオニンスルホキシド架橋であってもよい。
【0165】
他の型の包含
前述の化合物およびポリペプチド前駆体に含まれるのは、周知のイオン、塩、溶媒和物、および保護型である。例えば、カルボン酸(-COOH)への言及は、アニオン(カルボキシレート)型(-COO-)、その塩または溶媒和物、ならびに通常の保護型も含む。同様に、アミノ基への言及は、プロトン化型(-N+HR1R2)、アミノ基の塩または溶媒和物、例えば、塩酸塩、ならびにアミノ基の通常の保護型を含む。同様に、ヒドロキシル基への言及も、アニオン型(-O-)、その塩または溶媒和物、ならびにヒドロキシル基の通常の保護型を含む。
【0166】
例えば、グルタミン酸(Glu)のカルボン酸含有側鎖は、本発明の化合物中の残基としての特徴となり、これへの言及はカルボキシレート型を含む。Zが-NH2である場合、この基への言及はこのアミノ基のプロトン化型を含む。
【0167】
異性体、塩、溶媒和物、保護型、およびプロドラッグ
特定の化合物は、シスおよびトランス型;EおよびZ型;c、t、およびr型;エンドおよびエキソ型;R、S、およびメソ型;DおよびL型;dおよびl型;(+)および(-)型;ケト、エノール、およびエノレート型;シンおよびアンチ型;向斜および背斜型;αおよびβ型;アキシアルおよびエカトリアル型;舟型、椅子型、ねじれ型、エンベロープ型、および半椅子型;ならびにその組み合わせを含むが、それらに限定されるわけではない、1つまたは複数の特定の幾何、光学、鏡像異性、ジアステレオマー、エピマー、立体異性、互変異性、配座、またはアノマー型で存在してもよく、以下、総称して「異性体(isomers)」(または「異性体(isomeric forms)」)と呼ぶ。
【0168】
例えば、本明細書に記載のアミノ酸残基は特定の立体異性型の任意の1つで存在してもよい。同様に、R1およびR2基は特定の立体異性型の任意の1つが存在する場合、そのような型で存在してもよい。同様に、基R3 R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は特定の立体異性型の任意の1つが存在する場合、そのような型で存在してもよい。
【0169】
本発明の化合物または前駆体ポリペプチドがジヒドロアミノ酪酸残基を含む場合、残基はシスまたはトランス型のいずれかで存在してもよい。
【0170】
化合物が結晶型である場合、これはいくつかの異なる多形型で存在してもよい。
【0171】
互変異性体について以下に論じるものを除き、本明細書において用いられる「異性体」なる用語から特に除外されるものは、構造(structural(またはconstitutional))異性体(すなわち、単に空間における原子の位置によるのではなく、原子間の連結において異なる異性体)であることに留意されたい。例えば、メトキシ基、-OCH3への言及は、その構造異性体であるヒドロキシメチル基、-CH2OHへの言及と解釈されるべきではない。同様に、オルト-クロロフェニルへの言及は、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルへの言及と解釈されるべきではない。しかし、構造のクラスへの言及は、そのクラスに属する構造異性体を適切に含むこともある(例えば、C1-7アルキルはn-プロピルおよびイソ-プロピルを含み;ブチルはn-、イソ-、sec-、およびtert-ブチルを含み;メトキシフェニルはオルト-、メタ-、およびパラ-メトキシフェニルを含む)。
【0172】
前述の除外は互変異性体、例えば、下記の互変異性対におけるような、例えば、ケト型、エノール型、およびエノラート型に関するものではない:ケト/エノール、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、およびニトロ/aci-ニトロ。
【0173】
「異性体」なる用語に特に含まれるものは、1つまたは複数の同位体置換を有する化合物であることに留意されたい。例えば、Hは1H、2H(D)、および3H(T)を含む任意の同位体であってもよく;Cは12C、13C、および14Cを含む任意の同位体であってもよく;Oは16Oおよび18Oを含む任意の同位体であってもよく;他も同様である。
【0174】
特に記載がない限り、特定の化合物への言及は、そのラセミおよび他の混合物を含む(全体または部分的)、すべてのそのような異性体を含む。そのような異性体の調製(例えば、不斉合成)および分離(例えば、分別晶出およびクロマトグラフィ手段)の方法は、当技術分野において公知であるか、または本明細書において教示する方法、もしくは公知の方法を、公知の様式で適合させることにより容易に得られる。
【0175】
特に記載がない限り、特定の化合物への言及は、例えば、以下に論じるとおり、そのイオン、塩、溶媒和物、および保護型、ならびにその異なる多形型も含む。
【0176】
活性化合物の対応する塩、例えば、薬学的に許容される塩を調製、精製、および/または取り扱うことは好都合または望ましいことでありうる。薬学的に許容される塩の例は、Berge, et al., ''Pharmaceutically Acceptable Salts'', J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)に記載されている。
【0177】
例えば、化合物がアニオン性であるか、またはアニオン性でありうる官能基(例えば、-COOHは-COO-でありうる)を有する場合、塩を適当なカチオンと生成しうる。適当な無機カチオンの例には、Na+およびK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類イオン、ならびにAl3+などの他のカチオンが含まれるが、それらに限定されるわけではない。適当な有機カチオンの例には、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)および置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。いくつかの適当な置換アンモニウムイオンの例は下記から誘導されるものである:エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、およびトロメタミン、ならびにリシンおよびアルギニンなどのアミノ酸。一般的な4級アンモニウムイオンの例はN(CH3)4+である。
【0178】
化合物がカチオン性であるか、またはカチオン性でありうる官能基(例えば、-NH2は-NH3+でありうる)を有する場合、塩を適当なアニオンと生成しうる。適当な無機アニオンの例には、下記の無機酸由来のものが含まれるが、それらに限定されるわけではない:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、および亜リン酸。適当な有機アニオンの例には、下記の有機酸由来のものが含まれるが、それらに限定されるわけではない:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセチルオキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、吉草酸、およびグルコン酸。適当な高分子アニオンの例には、下記の高分子酸由来のものが含まれるが、それらに限定されるわけではない:タンニン酸、カルボキシメチルセルロース。
【0179】
活性化合物の対応する溶媒和物を調製、精製、および/または取り扱うことは好都合または望ましいことでありうる。「溶媒和物」なる用語は、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)および溶媒の複合体を指すために、通常の意味で本明細書において用いられる。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物などと都合よく呼んでもよい。
【0180】
化学的に保護された型の活性化合物を調製、精製、および/または取り扱うことは好都合または望ましいことでありうる。本明細書において用いられる「化学的に保護された型」なる用語は、1つまたは複数の反応性官能基が望ましくない化学反応から保護されている、すなわち、保護された、または保護基(マスクされた、もしくはマスク基、またはブロックされた、もしくはブロック基としても公知である)の型である化合物に関する。反応性官能基を保護することにより、保護された基に影響をおよぼすことなく、他の非保護反応性官能基に関与する反応を行うことができ;保護基は、通常はその後の段階で、分子の残りの部分に実質的に影響をおよぼすことなく除去しうる。例えば、''Protective Groups in Organic Synthesis'' (T. Green and P. Wuts; 3rd Edition; John Wiley and Sons, 1999)参照。
【0181】
例えば、アミン基を上のZが-NH2である場合に前述したとおりに保護してもよい。加えて、アミン基をアミドまたはウレタンとして、例えば、下記として保護してもよい:メチルアミド(-NHCO-CH3);ベンジルオキシアミド(-NHCO-OCH2C6H5、-NH-Cbz);t-ブトキシアミド(-NHCO-OC(CH3)3、-NH-Boc);2-ビフェニル-2-プロポキシアミド(-NHCO-OC(CH3)2C6H4C6H5、-NH-Bpoc)、9-フルオレニルメトキシアミド(-NH-Fmoc)、6-ニトロベラトリルオキシアミド(-NH-Nvoc)、2-トリメチルシリルエチルオキシアミド(-NH-Teoc)、2,2,2-トリクロロエチルオキシアミド(-NH-Troc)、アリルオキシアミド(-NH-Alloc)、2(-フェニルスルホニル)エチルオキシアミド(-NH-Psec);または、適当な場合には、N-オキシド(>NO・)。
【0182】
例えば、カルボン酸基を上のアミノ酸残基に関連して前述したとおりに保護してもよい。例えば、カルボン酸基をエステルとして、例えば、下記として保護してもよく:C1-7アルキルエステル(例えば、メチルエステル;t-ブチルエステル);C1-7ハロアルキルエステル(例えば、C1-7トリハロアルキルエステル);トリC1-7アルキルシリル-C1-7アルキルエステル;もしくはC5-20アリール-C1-7アルキルエステル(例えば、ベンジルエステル;ニトロベンジルエステル);またはアミドとして、例えば、メチルアミドとして保護してもよい。
【0183】
例えば、ヒドロキシル基をエーテル(-OR)またはエステル(-OC(=O)R)として、例えば、下記として保護してもよい:t-ブチルエーテル;ベンジル、ベンズヒドリル(ジフェニルメチル)、もしくはトリチル(トリフェニルメチル)エーテル;トリメチルシリルもしくはt-ブチルジメチルシリルエーテル;またはアセチルエステル(-OC(=O)CH3、-OAc)。
【0184】
例えば、アルデヒドまたはケトン基をそれぞれアセタールまたはケタールとして保護してもよく、ここでカルボニル基(>C=O)は、例えば、1級アルコールとの反応によってジエーテル(>C(OR)2)に変換される。アルデヒドまたはケトン基は酸存在下、大過剰の水を用いて、加水分解により容易に再生される。
【0185】
プロドラッグの型の活性化合物を調製、精製、および/または取り扱うことは好都合または望ましいことでありうる。本明細書において用いられる「プロドラッグ」なる用語は、代謝(例えば、インビボで)されると所望の活性化合物を生じる化合物に関する。典型的には、プロドラッグは不活性であるか、または活性化合物よりも活性が低いが、好都合な取り扱い、投与、または代謝特性を提供しうる。
【0186】
例えば、いくつかのプロドラッグは活性化合物のエステル(例えば、生理的に許容される代謝的に不安定なエステル)である。代謝中に、エステル基(-C(=O)OR)は切断されて活性薬物を生じる。そのようなエステルは、例えば、親化合物の任意のカルボン酸基(-COOH)のエステル化によって生成してもよく、適当な場合には、親化合物中に存在する任意の他の反応性基を事前に保護し、続いて必要があれば脱保護する。そのような代謝的に不安定なエステルの例には、RがC1-20アルキル(例えば、-Me、-Et);C1-7アミノアルキル(例えば、アミノエチル;2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル;2-(4-モルホリノ)エチル);およびアシルオキシ-C1-7アルキル(例えば、アシルオキシメチル;アシルオキシエチル;例えば、ピバロイルオキシメチル;アセトキシメチル;1-アセトキシエチル;1-(1-メトキシ-1-メチル)エチル-カルボニルオキシエチル;1-(ベンゾイルオキシ)エチル;イソプロポキシ-カルボニルオキシメチル;1-イソプロポキシ-カルボニルオキシエチル;シクロヘキシル-カルボニルオキシメチル;1-シクロヘキシル-カルボニルオキシエチル;シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシメチル;1-シクロヘキシルオキシ-カルボニルオキシエチル;(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシメチル;1-(4-テトラヒドロピラニルオキシ)カルボニルオキシエチル;(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシメチル;および1-(4-テトラヒドロピラニル)カルボニルオキシエチル)であるものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0187】
さらに適当なプロドラッグ型には、ホスホネートおよびグリコレート塩が含まれる。特に、ヒドロキシ基(-OH)は、亜リン酸クロロジベンジルと反応させ、続いて水素化して、ホスホネート基-O-P(=O)(OH)2を生成することにより、ホスホネートプロドラッグとすることができる。そのような基は代謝中にホスファターゼ酵素によって切断されて、ヒドロキシ基を有する活性薬物を生じることができる。
【0188】
同様に、いくつかのプロドラッグは酵素的に活性化されて、活性化合物、またはさらなる化学反応後に活性化合物を生じる化合物を生じる。例えば、プロドラッグは糖誘導体もしくは他のグリコシド結合体であってもよく、またはアミノ酸エステル誘導体であってもよい。
【0189】
本発明の化合物の調製法
発明者らは以前にランチビオティック化合物、ならびにその誘導体および変異体や、前駆体の調製法を記載してきた。発明者らの同時係属中の以前の出願であるPCT/GB2007/000138(国際公開公報第2007/083112号)はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。この文書中に記載の化合物を本発明に記載の化合物の出発原料として用いてもよい。
【0190】
発明者らの同時係属中の出願における下記の項を特に参照する:
発現構築物;
組換え発現ベクター;
発現カセット;
発現ライブラリ;
「ランチビオティック産生宿主細胞」および「非産生細胞」を含む宿主細胞;
本発明の化合物の生成;ならびに
実施例1〜4および7。
【0191】
本明細書に記載の化合物を、本発明において用いる他の化合物の合成用の出発原料として用いてもよい。
【0192】
本発明において用いるアクタガルジン化合物は、公知のアクタガルジン化合物から調製してもよい。好ましくは、本発明のアクタガルジン化合物はアクタガルジン、アクタガルジンBおよびデオキシアクタガルジンBから調製する。これらのランチビオティックは「親ランチビオティック」または「ランチビオティック出発原料」と呼んでもよい。
【0193】
アクタガルジン化合物は、核酸の発現により、例えば、LanA遺伝子などの適当なランチビオティック遺伝子を、必要があれば前駆体ポリペプチドのアクタガルジン化合物への変換に必要な関連クラスター遺伝子と共に担持する宿主細胞において、組換え発現ベクター中に担持される前駆体ポリペプチドをコードする発現構築物の形で産生してもよい。変異体アクタガルジン化合物は、当技術分野においてそれ自体は公知のLanA遺伝子の適当な改変により産生してもよい。
【0194】
LanO遺伝子はアクタガルジン遺伝子クラスターの一部として同定されており、アクタガルジン化合物のデオキシ型を酸化してYが-S(O)-であるアクタガルジンとする原因タンパク質をコードすると考えられる。この遺伝子の改変により、別の架橋構造を有する誘導体化合物の産生が可能となりうる。LanO遺伝子の改変により、宿主細胞中で産生される化合物の酸化(Y=-S(O))および還元(Y=-S-)型の相対レベルを変えることも可能となる。
【0195】
LanM遺伝子もアクタガルジン遺伝子クラスターの一部として同定されており、前駆体ポリペプチドのランチビオティック化合物への変換に必要なタンパク質をコードすると考えられる。この遺伝子および改変タンパク質をコードする他の遺伝子の調節により、別の架橋構造を有する誘導体化合物の産生が可能となりうる。これらの遺伝子の調節により、リーダー配列などのアクタガルジン化合物のN末端に結合しているアミノ酸配列を有する、または保持する化合物の産生も可能となりうる。
【0196】
典型的には、細胞培養によって産生される化合物は遊離アミンN末端(すなわち、zが-NH2である)および遊離カルボン酸C末端(すなわち、Xが-OHである)を有することになる。これらの末端を、以下に詳細に記載するとおり、誘導体化してもよい。アクタガルジン化合物が修飾N末端を有する場合、出発原料は典型的には遊離アミンN末端を有することになる。細胞培養によって産生される化合物は修飾N末端を有しうることが理解されるであろう。したがって、出発原料として用いる化合物には、Zが-NHR3であり、ここでR3は式(I)の化合物に従って規定される化合物が含まれうる。
【0197】
本発明が、X1およびX2がそれぞれLeuおよびValを表す、アクタガルジン化合物出発原料から誘導される化合物の使用に関する場合、宿主細胞はいかなるそれ以上の改変もないA.リグリアエ NCIMB 41362でありうる。
【0198】
宿主細胞が出発原料化合物の混合物、例えば、Yが-S-または-S(O)-であるものを産生する場合、生成物をHPLCなどの標準の分離技術を用い、例えば、アクタガルジンおよびAla-アクタガルジン生成のために米国特許第6,022,851号に記載のとおりに単離してもよい。
【0199】
細胞の培養後、ランチビオティック出発原料を宿主細胞培養物から未修飾で回収してもよい。回収し、修飾した化合物を薬学的組成物の形で、任意に薬学的に許容される塩の形で製剤してもよい。
【0200】
または、ランチビオティック出発原料、またはその前駆体、変異体および誘導体を、化学的ペプチド合成、例えば、固相ペプチド合成(SPPS)によって得てもよい。そのような技術は当技術分野において周知である。好ましくは、ランチビオティック出発原料は細胞培養から得る。
【0201】
本発明の化合物は実質的に単離された型であってもよい。本発明の単離化合物は、化合物の誘導元のポリペプチドなどの、化合物が関連する材料を含まない、または実質的に含まない、単離された型の、上で定義したものである。化合物は当然のことながら希釈剤または補助剤と共に製剤され、それでもなお実際上は単離されていてもよい。
【0202】
本発明の化合物は実質的に精製された型であってもよく、その場合、一般には製剤中に化合物を含むことになり、ここで製剤中の化合物の90%よりも多く、例えば、95%、98%または99%は本発明の化合物である。
【0203】
本発明の化合物を、カルボキシルC末端を有するランチビオティック出発原料を2から6倍モル過剰の適当なアミノアルキルまたはアミノヘテロアルキル基と、ジメチルホルムアミドなどの適当な溶媒中、典型的には0℃から室温までの間の温度および適当な縮合剤存在下で反応させることにより調製する。縮合剤の代表例は、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカルボジイミド誘導体、DPPAなどのホスホアジデートまたはPyBop(商標)、HATUもしくはTBTUなどのベンゾトリアゾール系カップリング試薬である。
【0204】
Zがアミノ酸または-NR5COR6である本発明の化合物を、アミノ基N末端を有するランチビオティック出発原料から、ジシクロヘキシルカルボジイミド、DPPAなどのホスホアジデートまたはPyBop(商標)、HATUもしくはTBTUなどのベンゾトリアゾール系カップリング試薬存在下、適当なカルボン酸とのカップリング反応により調製してもよい。反応を促進するために、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンなどの有機アミン塩基を一般に加える。
【0205】
または、ペンタフルオロフェニルエステルなどの、あらかじめ生成した適当な酸の活性化誘導体を、ランチビオティックN末端と反応させるための試薬として用いてもよい。HOBtなどの触媒を加えて、反応を促進してもよい。溶媒は典型的にはDMFである。
【0206】
ランチビオティックに結合するカルボン酸がカップリング反応に干渉しうるさらなる官能基を含む場合、当業者には公知の適当な保護基を用いてもよい。例えば、ランチビオティックのN末端に結合するアミノ酸誘導体のために、FmocまたはtBoc保護基を用いてもよい。
【0207】
Zが-NR3R4である本発明の化合物を、アミノ基N末端を有するランチビオティックから、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシドまたは酢酸などの有機溶媒中、水素化ホウ素ナトリウムまたはナトリウムトリアセトキシボロヒドリドなどの適当な還元剤存在下、アルデヒドまたはケトンとのカップリング反応により調製してもよい。そのような還元剤は溶液中またはポリスチレンなどの適当な樹脂に結合して用いてもよい。反応条件、用いるアルデヒドまたはケトンおよび反応中に用いる試薬の比率に応じて、N末端のモノ-およびジ-アルキル化の両方が可能である。または、反応を還元剤なしで行ってもよい。その場合、Zが-N=R9である本発明の化合物を得ることができる。
【0208】
Zが-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7または-NR5C(NR8)NR6R7である本発明の化合物を、アミノ基N末端を有するランチビオティック出発原料から、適当に活性化された置換基試薬とのカップリング反応により調製してもよい。したがって、Zが-NR5C(O)OR6である化合物を、ClC(O)OR6などを用いて調製してもよい。同様に、Zが-NR5SO2R6である化合物は、保護基で保護された追加の官能基でありうる。保護基は、適宜、カップリング反応後に除去してもよい。
【0209】
Zが-NH2以外である本発明の化合物(すなわち、R3およびR4が水素ではない化合物)を、CまたはN末端のいずれかで修飾されている出発原料から調製してもよい。次いで、他方の末端を修飾して本発明の化合物を提供してもよい。したがって、置換の順序はN末端修飾と、続くC末端修飾を特徴とすることができ、逆も同じである。位置選択性の問題が生じる場合、例えば、C末端置換基がアミノ基を特徴とする場合、適当な保護戦略を用いてもよい。
【0210】
したがって、化合物のN末端がアミノ酸残基、-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6、-NR5C(S)NR6R7、-NR5C(NR8)NR6R7、または-N=R9である(本発明の化合物に関して前に定義したとおり)ランチビオティック出発原料を、C末端でアミノアルコールと等しく結合させてもよい。
【0211】
発明者らは、アミノアルコールを親ランチビオティックのカルボキシルC末端に結合させるために用いるカップリング条件下で、グルタミン酸などの側鎖アミノ酸残基のカルボキシル基も修飾されうることを観察した。C末端およびアミノ酸の側鎖がいずれも修飾される、そのような化合物も本発明の範囲内である。アミノ酸の側鎖が修飾された生成物の量を改変するために、反応条件の適当な操作を用いてもよい。または、保護および脱保護戦略を用いて、側鎖が修飾されないようにしてもよい。適当なアミノ酸残基側鎖保護基は周知で、前述の保護基が含まれる。
【0212】
反応生成物をLC-MSによって同定してもよい。反応の進行をHPLCにより追跡してもよい。例えば、図3参照。HPLCを用いて出発原料の消費、生成物の出現および副生成物または分解産物(あれば)の生成を追跡してもよい。
【0213】
生成物および出発原料をNMR分光法で分析してもよい。そのような技術は発明者らがPCT/GB2007/000138(国際公開公報第2007/083112号)において以前に記載している。生成物ランチビオティック型化合物の構造を、COSY、HMBC、TOCSY、HSQCおよびNOESY、ならびにNOE技術などの標準の技術を用いて確認してもよい。
【0214】
薬学的に許容される塩
「薬学的に許容される塩」は、塩基が化合物の生物学的有効性および特性を保持し、生理的に許容される、酸付加塩であってもよい。そのような塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸と形成されるものが含まれる。
【0215】
塩にはアルカリまたはアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムまたはマグネシウム塩などの塩基性塩も含まれる。
【0216】
加えて、または代わりに、塩はN-メチル-D-グルカミン、L-アルギニン、L-タイシン(L-tysine)、コリン、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのいずれか1つと形成してもよい。
【0217】
薬学的組成物
本発明のランチビオティック型化合物は、薬学的に許容される担体、補助剤、賦形剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定化剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、着香剤、および甘味剤を含むが、それらに限定されるわけではない、当業者には周知の1つまたは複数の他の薬学的に許容される成分と共に製剤してもよい。製剤は他の活性物質、例えば、他の治療または予防薬剤をさらに含んでいてもよい。したがって、本発明は、上で定義した薬学的組成物、および薬学的組成物の調製法であって、少なくとも1つの上で定義した活性化合物を1つまたは複数の当業者には周知の他の薬学的に許容される成分、例えば、担体、補助剤、賦形剤などと共に混合する段階を含む方法をさらに提供する。分離した単位(例えば、錠剤など)として製剤する場合、各単位はあらかじめ決められた量(用量)の活性化合物を含む。
【0218】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される」なる用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、当該対象(例えば、ヒト)の組織と接触して用いるのに適し、妥当な損益比に見合った、化合物、成分、材料、組成物、剤形などに関する。それぞれの担体、補助剤、賦形剤なども、製剤中の他の成分と適合するという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0219】
組成物を、任意の適当な投与経路および投与手段のために製剤してもよい。薬学的に許容される担体または希釈剤には、経口、直腸、鼻、局所(口腔および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外を含む)投与に適した製剤中で用いられるものが含まれる。製剤は、単位剤形で都合よく提示してもよく、薬学の技術分野において周知の任意の方法によって調製してもよい。そのような方法は、活性成分を1つまたは複数の補助成分を構成する担体と混合する段階を含む。一般に、製剤は活性成分を液体担体もしくは微粒子状固体担体または両方と均一かつ密接に混合し、次いで、必要があれば、生成物を成形することにより調製する。
【0220】
固体組成物のために、例えば、薬学的等級のマンニトール、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどを含む、通常の非毒性固体担体を用いてもよい。上で定義した活性化合物は、例えば、ポリアルキレングリコール、アセチル化トリグリセリドなどを担体として用いて、坐剤として製剤してもよい。液体の薬学的に投与しうる組成物は、例えば、上で定義した活性化合物および任意の薬学的補助剤を、水、食塩水水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどの担体中に溶解、分散などして、それにより溶液または懸濁液を生成することにより調製することができる。望まれる場合には、投与する薬学的組成物は、湿潤または乳化剤、pH緩衝化剤など、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなどの、少量の非毒性補助物質を含んでいてもよい。そのような剤形の実際の調製法は、当業者には公知であるか、または明らかであり;例えば、''Remington: The Science and Practice of Pharmacy'', 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkins参照。投与する組成物または製剤は、任意の事象において、治療中の対象の症状を軽減するのに有効な量の活性化合物を含むことになる。
【0221】
0.25から95%の範囲の活性成分を含み、残りは非毒性担体からなる剤形または組成物を調製してもよい。
【0222】
経口投与のために、薬学的に許容される非毒性組成物を、例えば、薬学的等級のマンニトール、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウムなどの、通常用いられる任意の賦形剤を組み込むことにより生成する。そのような組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤などの形を取る。そのような組成物は、1%〜95%の活性成分、より好ましくは2〜50%、最も好ましくは5〜8%の活性成分を含んでいてもよい。
【0223】
非経口投与は一般に、皮下、筋肉内または静脈内のいずれかの注射により特徴づけられる。注射剤は、液剤もしくは懸濁剤、注射前に液体中の液剤もしくは懸濁剤とするのに適した固体剤形、または乳剤のいずれかとして、通常の剤形に調製することができる。適当な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。加えて、望まれる場合には、投与する薬学的組成物は、湿潤または乳化剤、pH緩衝化剤など、例えば、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、トリエタノールアミン酢酸ナトリウムなどの、少量の非毒性補助物質を含んでいてもよい。
【0224】
局所投与のために、薬学的に許容される組成物を、1つまたは複数の担体中に懸濁または溶解した活性成分を含む、適当な軟膏またはゲル剤に製剤してもよい。本発明の化合物の局所投与のために、担体には、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が含まれるが、それらに限定されるわけではない。または、薬学的に許容される組成物を、1つまたは複数の薬学的に許容される担体中に懸濁または溶解した活性成分を含む、適当なローション剤またはクリーム剤に製剤することもできる。適当な担体には、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0225】
そのような非経口または組成物中に含まれる活性化合物のパーセンテージは、その特定の性質、ならびに化合物の活性および対象の必要性に強く依存する。しかし、0.1重量%から10重量%の活性化合物のパーセンテージを用いることができ、組成物が後で前述のパーセンテージに希釈される固体である場合には、より高くなるであろう。好ましくは、組成物は溶液中に0.2〜2重量%の活性物質を含むことになる。
【0226】
適当な担体、補助剤、賦形剤などに関するさらなる教示は、標準の薬学のテキスト、例えば、''Remington: The Science and Practice of Pharmacy'', 20th Edition, 2000, pub. Lippincott, Williams & Wilkins; およびHandbook of Pharmaceutical Excipients, 2nd edition, 1994において見いだすことができる。
【0227】
化合物の投与
本発明のランチビオティック型化合物および組成物を対象に、医学的処置または予防の方法において投与してもよい。対象はヒトまたは動物の対象でありうる。動物の対象は哺乳動物、または他の脊椎動物でありうる。
【0228】
したがって、対象の処置または予防の方法において用いるための、本発明の化合物が提供される。対象の処置または予防の方法において用いるための薬剤を製造するための、本発明の化合物の使用も提供される。
【0229】
特に、本発明の化合物を用いて、対象の微生物、典型的には細菌感染症を処置してもよい。
【0230】
「微生物感染症」なる用語は、宿主動物の病原性微生物による侵入を指す。これは、動物の体の中または上に通常存在する微生物の過剰な増殖を含む。より一般的には、微生物感染症は、微生物集団の存在が宿主動物に損害を与える、任意の状況でありうる。したがって、動物は、動物の体の中もしくは上に過剰な数の微生物集団が存在する時、または微生物集団の存在が動物の細胞もしくは他の組織に損害を与える時に、微生物感染症を「患っている」。
【0231】
感染症は胃腸管、好ましくは腸、最も好ましくは結腸の感染症でありうる。特に、本発明の1つの局面において、細菌感染症の処置の方法が提供される。好ましくは、感染症はクロストリジウム感染症、好ましくはウェルシュ菌、クロストリジウム ディフィシレ、破傷風菌またはボツリヌス菌感染症、最も好ましくはC.ディフィシレ感染症である。これらの方法は、A型ランチビオティック、バンコマイシンまたはメトロニダゾールを用いた処置の方法の、新しく、有用な代替法を提供する。
【0232】
細菌感染症は腸球菌属、連鎖球菌属、ブドウ球菌属、またはクロストリジウム ディフィシレの感染症でありうる。
【0233】
本発明は、腸、好ましくは結腸の細菌感染によって引き起こされる疾患の処置の方法も提供する。この方法を用いて、偽膜性結腸炎またはクロストリジウム ディフィシレ関連下痢(CDAD)を処置してもよい。好ましくは、感染症はクロストリジウム感染症、好ましくはウェルシュ菌、クロストリジウム ディフィシレ、破傷風菌またはボツリヌス菌感染症、最も好ましくはC.ディフィシレ感染症である。
【0234】
本発明は、対象の処置または予防の方法であって、本発明の化合物または組成物を対象に投与する段階を含む方法も提供する。好ましくは、化合物または組成物を経口投与する。
【0235】
本発明は、クロストリジウム ディフィシレ、ヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)またはバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)感染症の処置または予防にも関する。好ましくは、本発明はクロストリジウム ディフィシレ感染症に関する。
【0236】
本発明は、別の活性化合物、好ましくはB型ランチビオティックではない化合物での処置によって根絶されなかった感染症の処置にも関する。他の活性化合物はバンコマイシンでありうる。
【0237】
本発明の化合物を、別の活性化合物での処置によって根絶されなかった感染症を有する対象に投与する場合、B型ランチビオティックを他の活性化合物の最後の投与の1日、1週間または1ヶ月以内に投与してもよい。
【0238】
化合物および組成物を、菌血症(カテーテル関連菌血症を含む)、肺炎、皮膚および皮膚構造感染症(手術部位感染症を含む)、心内膜炎ならびに骨髄炎の全身処置のために用いてもよい。これらおよび他のそのような処置は、ブドウ球菌、連鎖球菌、腸球菌などの原因微生物を対象としてもよい。本発明の化合物またはその組成物を、ざ瘡、すなわちプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)ざ瘡を含む皮膚感染症の局所処置のために用いてもよい。化合物およびその組成物を、結膜炎などの眼感染症の処置において用いてもよい。
【0239】
化合物を、創傷または熱傷における皮膚の感染症の処置または予防において用いてもよい。加えて、本発明において用いるための本明細書に記載の化合物および組成物を、予防法において用いてもよい。これは感染症のリスクが高い対象(例えば、病院に入院中の患者)またはそのような感染症の保菌者であるリスクが高い医療専門家もしくは他の介護者において実施してもよい。
【0240】
最も好ましくは、化合物および組成物を、多剤耐性C.ディフィシレを含むクロストリジウム ディフィシレによって引き起こされるもの(偽膜性結腸炎)などの腸の重複感染を処置するために用いてもよい。化合物または組成物は経口投与してもよい。ヘリコバクター ピロリに関連する腸感染症も処置してもよい。
【0241】
本発明は、CDADを処置するための方法も提供する。処置終了までのCDAD症状の完全な鎮静とは、1日に便通(有形または無形にかかわらず)3回未満までの回復と、発熱、WBC(白血球)数上昇、または腹痛を伴わないことと定義しうる。
【0242】
処置の方法は、皮膚、粘膜、腸または全身感染症を含む、細菌感染症の処置方法であってもよい。
【0243】
本発明の化合物は、経腸(経口)、非経口(筋肉内または静脈内)、直腸、膣、または局部(局所)投与することができる。これらは液剤、散剤(錠剤、マイクロカプセル剤を含むカプセル剤)、軟膏(クリーム剤またはゲル剤)、または坐剤の形で投与することができる。この型の製剤用の可能な補助剤は薬学的に通例の液体もしくは固体充填剤および増量剤、溶媒、乳化剤、滑沢剤、矯臭剤、着色剤ならびに/または緩衝剤である。
【0244】
好都合な用量として、体重1kgあたり0.1〜1,000、好ましくは0.2〜100mgを投与する。これらは、本発明の化合物の少なくとも有効1日量、例えば、30〜3,000、好ましくは50〜1,000mgを含む用量単位で都合よく投与する。好ましくは、投与する化合物の有効量は、患者1人あたり1日に約100から約2,000mgである。
【0245】
その最良の様式を含む、本発明の実験的基本原理を添付の図面を参照しながらさらに詳細に記載するが、これは例示のためにすぎない。
【0246】
ランチビオティック型化合物の合成
親ランチビオティック、ならびに基X1、X2、Zと、R1およびR2が下記のとおりである、以下の化合物を調製した。

【0247】
アステリスクはR1が、19位のアラニン残基にアミド結合により連結されている窒素原子に結合している点を示す。
【0248】
親ランチビオティック、ならびに基X1、X2、Zと、R1およびR2が下記のとおりである、以下の化合物も調製した。

【0249】
化合物I〜VIII、XVIII、およびXX〜XXIIIの調製
一般法1
無水ジメチルホルムアミド(2ml)中のランチビオティック(例えば、アクタガルジン、アクタガルジンB、またはデオキシ-アクタガルジンB)(200mg、108nmol)、適当なアミノアルコール(330nmol)およびジイソプロピルエチルアミン(410nmol)の溶液に、無水ジメチルホルムアミド(1.5ml)中のヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム(PyBop(商標))(125mg、258nmol)の溶液を分割して加えた。混合物をHPLCで分析して反応の進行を追跡し、すべての出発原料が消費されるまでPyBop(商標)溶液の一定量を追加した。この段階のHPLC分析は様々な量(5〜20%)のジアミドも示した(図3参照)。反応完了後、混合物を30%アセトニトリル/20mM Kpi水性リン酸緩衝液、pH7(10ml)で希釈し、モノアミドを調製用HPLCで表1に記載の条件を用いて精製した。適当な画分をそれらの元の量の25%まで濃縮し、あらかじめコンディショニングしたC18 Bond Elutカラム(500mg)に添加することにより脱塩し、このカラムはその後カラムの2倍量の30、40、70および90%水性メタノールで連続溶出することにより洗浄した。適当な画分を蒸発させて、所望の生成物を白色固体で得た。試料をLC-MSで下記の条件を用いて分析した。
【0250】
(表1)ランチビオティック(例えば、アクタガルジン、アクタガルジンB、またはデオキシ-アクタガルジンB)とアミノアルコール誘導体化生成物との分離のための調製用HPLC条件

【0251】
化合物I:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとエタノールアミンとのカップリングから得た。収量18mg、収率85%。[M+2H 2+]計算値979.0、実測値980.2。
【0252】
化合物II:デオキシ-アクタガルジンB N-[4-ブタノールアミン]モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとブタノールアミンとのカップリングから得た。収量9mg、収率43%。[M+2H 2+]計算値972.50、実測値979.9.2
【0253】
化合物III:アクタガルジン N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとエタノールアミンとのカップリングから得た。収量11mg、収率53%。[M+2H 2+]計算値966.5、実測値966.1
【0254】
化合物IV:デオキシ-アクタガルジンB(3-アミノ-1,2-プロパンジオール)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBと3-アミノ-1,2-プロパンジオールとのカップリングから得た。収量18mg、収率87%。[M+2H 2+]計算値973.5.0、実測値973.9
【0255】
化合物V:デオキシ-アクタガルジンB(2-アミノ-1,3-プロパノール)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBと2-アミノ-1,3-プロパノールとのカップリングから得た。収量20mg、収率96%。[M+2H 2+]計算値973.5、実測値973.9
【0256】
化合物VI:デオキシ-アクタガルジンB[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンとのカップリングから得た。収量13mg、収率69%。[M+2H 2+]計算値988.5、実測値988.6
【0257】
化合物VII:デオキシ-アクタガルジンB(1-アミノ-2-プロパノール)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBと1-アミノ-2-プロパノールとのカップリングから得た。収量16mg、収率78%。[M+2H 2+]計算値965.5、実測値965.6
【0258】
化合物VIII:デオキシ-アクタガルジンB(1-アミノ-3-プロパノール)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBと1-アミノ-3-プロパノールとのカップリングから得た。収量19mg、収率87%。[M+2H 2+]計算値965.5、実測値965.3
【0259】
化合物XVIII:デオキシアクタガルジンB(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンとのカップリングから得た。収量48%。[M+2H 2+]計算値1002.0、実測値1002.3
【0260】
化合物XX:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミン]モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとN-[2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミン]とのカップリングから得た。[M+2H 2+]計算値995.5、実測値995.8。
【0261】
化合物XXI:デオキシ-アクタガルジンB(L-セリンメチルエステル)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとL-セリンメチルエステルとのカップリングから得た。[M+2H 2+]計算値987.5、実測値986.9。
【0262】
化合物XXII:デオキシアクタガルジンB(N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBとN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミンとのカップリングから得た。[M+2H 2+]計算値980、実測値979.8。
【0263】
化合物XXIII:デオキシ-アクタガルジンB(2-ヒドロキシピペラジン)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、デオキシアクタガルジンBと2-ヒドロキシピペラジンとのカップリングから得た。[M+2H 2+]計算値978.5、実測値977.7。
【0264】
化合物IXおよびXの調製
一般法2:(L)-トリプトファニル-(O)-デオキシアクタガルジンBについて例示
N-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-トリプトファン-O-ペンタフルオロフェニルエステル(80mg、135nmol)を無水ジメホルムアミド(1ml)中の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(18mg、135nm)の溶液に加えた。次いで、混合物を無水ジメチルホルムアミド(0.5ml)中のデオキシアクタガルジンB(50mg、27nmol)の溶液に加えた。混合物を室温で15分間放置し、その後すべての出発原料が消費された。水(0.05ml)およびピペリジン(0.1ml)を加え、混合物を室温で1時間放置した。反応混合物を30%水性メタノール中で希釈し、得られた白色懸濁液を1gのC18固相抽出カートリッジに添加した。材料を40%、50%、60%および70%水性メタノールの画分で溶出した。60%画分を蒸発乾固させて、黄褐色固体を得た。収量=35mg(63%)[M+2H 2+]計算値1030.0、実測値1030.1
【0265】
化合物X:(L)-トリプトファニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、(L)-トリプトファニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(50mg)とエタノールアミンとのカップリングから得た。収量23mg、収率45%。[M+2H 2+]計算値1051.5、実測値1051.8
【0266】
(L)-フェニルアラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB
この化合物を、一般法2に従い、デオキシアクタガルジンBとN-(9-フルオレニルメトキシカルボニル)-フェニルアラニン-O-ペンタフルオロフェニルエステルとのカップリングから得た。収量65%。[M+2H 2+]計算値1010.5、実測値1011.0
【0267】
化合物IX:(L)-フェニルアラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド
この化合物を、一般法1に従い、(L)-フェニルアラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(50mg)とエタノールアミンとのカップリングから得た。収量23mg、収率45%。[M+2H 2+]計算値1032.0、実測値1032.2
【0268】
化合物XI〜XVIIIおよびXXX〜XXXVIを前述の方法と同様の様式で調製してもよい。
【0269】
高性能液体クロマトグラフィ
HPLC分析を、Hewlett Packard 1050シリーズHPLC装置を用い、下記のパラメーターで実施した。

【0270】
高性能液体クロマトグラフィ-質量分析(HPLC-MS)
HPLC-MS分析を、Micromass(商標) Platform LCに連結したHewlett Packard(商標) 1050シリーズHPLC装置(MassLynx(商標)バージョン3.5ソフトウェアで操作)を用い、下記のパラメーターで実施した。

【0271】
実施例1:アルコールアミン誘導体の溶解性
典型的に、本発明の化合物をリン酸緩衝液を用いて単離した。デオキシアクタガルジンBの水溶性は4.5g/lと測定されたが、対応するエタノールアミド誘導体化合物Iの水溶性は15g/lと測定された。
【0272】
実施例2:アルコールアミン誘導体の抗菌活性
本発明の化合物はインビトロおよびインビボで抗菌活性を示す。これらは腸球菌属、連鎖球菌属およびクロストリジウム ディフィシレに対して最も活性で(表2〜4A)、いくつかの誘導体は親ランチビオティックと比べて改善された活性を有する。
【0273】
感受性試験を、肺炎連鎖菌(Streptococcus pneumoniae)を除くすべての好気性生物について、特に記載がない限り、50μg/ml Ca2+を補足したMueller-Hinton Broth中で抗生物質を連続2倍希釈することにより行った。肺炎連鎖菌についての感受性試験を、特に記載がない限り、50μg/ml Ca2+を補足したBrain-Heart-Infusion Broth中で抗生物質を連続2倍希釈することにより行った。活発に増殖中の培養液培養物を、OD600を0.2〜0.3に調節することにより、105から106CFU/mlを含むように希釈した。次いで、これらを新鮮滅菌培養液中でさらに1:100希釈した。検定を滅菌96穴マイクロタイタープレート中、64μg/mlから0.06μg/mlの濃度範囲で、全量200μl(培養液160μl、抗菌剤20μl、接種材料20μl)で二重に行った。プレートを37℃で18〜20時間、振盪しながら好気的にインキュベートし、最小阻害濃度(MIC)を可視増殖を阻止する薬物の最低濃度と定義した。クロストリジウム ディフィシレの臨床分離菌をWilkins-Chalgren Anaerobe Agar中、嫌気性条件下で試験した。すべての場合に、バンコマイシンを基準抗生物質として用いた。
【0274】
(表2)アクタガルジン、デオキシ-アクタガルジンB、バンコマイシンおよび化合物I〜VIIIの一連の一般的病原体に対するMICデータ(μg/ml)

上の表中、Acta.はアクタガルジンを指し、Deoxyacta. Bはデオキシアクタガルジン-Bを指し、Vanc.はバンコマイシンを指す。
【0275】
(表3)アクタガルジン、デオキシ-アクタガルジンBならびに化合物IおよびIIの一連のブドウ球菌、腸球菌および連鎖球菌に対するMICデータ(μg/ml)





【0276】
(表4)アクタガルジン、デオキシ-アクタガルジンB、バンコマイシンおよび化合物I〜VIIIのクロストリジウム ディフィシレに対するMICデータ(μg/ml)

上の表中、Acta.はアクタガルジンを指し、Deoxyacta. Bはデオキシアクタガルジン-Bを指し、Vanc.はバンコマイシンを指す。
【0277】
加えて、化合物XX〜XXIIIをクロストリジウム ディフィシレに対して試験し、MICデータを以下に示す。
【0278】
(表4A)B型ランチビオティックのC.ディフィシレに対する活性

【0279】
実施例3. C.ディフィシレ関連盲腸炎のハムスターモデルにおけるB型ランチビオティックのインビボでの有効性
C.ディフィシレ感染症の処置における本発明の化合物の2つ(化合物IおよびIII)のインビボでの有効性を、CDADの標準的動物モデル、すなわちハムスターにおけるクリンダマイシン誘導性盲腸炎において評価した。結果を図1および2にまとめている。
【0280】
第一の実験(図1)において、6匹の動物群にC.ディフィシレ菌株VPI 10463の細胞約107個を投与し、24時間後に10mg/kgのリン酸クリンダマイシンを皮下投与した。さらに24時間後、動物群を媒体、バンコマイシンまたは化合物IIIのいずれかにより50mg/kg/日で1日3回処置した。
【0281】
前述の方法は試験動物でC.ディフィシレ感染症を誘導し、このうち媒体のみで処置した動物はすべて3日以内に死亡した。これとは対照的に、バンコマイシンまたは化合物IIIで処置した動物はすべて全5日間の投与期間中生存し、この化合物の保護効果を示した。
【0282】
第二の実験(図2)において、6匹のハムスター群にまず10mg/kgのリン酸クリンダマイシンを皮下投与し、続いて24時間後、C.ディフィシレ菌株ATCC BAA-1382の細胞約107個を投与した。さらに24時間後、動物群を媒体、バンコマイシンまたは化合物Iのいずれかにより50mg/kg/日で1日3回処置した。第二の実験について記載した方法はC.ディフィシレ感染を確立させ、そこから動物を有効な抗生物質で救出しうる。図2に示すとおり、化合物Iは動物の救出において、現行の認められている臨床標準であるバンコマイシンと同等に有効であった。
【0283】
実施例4. 他の腸内生物に対するB型ランチビオティックの活性。
本明細書において提供する化合物は、バンコマイシンと比べて病原菌に対する改善された選択性を有する可能性がある。これらの化合物は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属およびバクテロイデス(Bacteroides)属などの腸菌叢よりもクロストリジウム ディフィシレに対する改善された選択性を有しうる。
【0284】
いくつかの化合物(デオキシアクタガルジン、バンコマイシンおよび化合物III)の、腸菌叢の一部として一般的に出現するいくつかの種に対する活性を測定し、バンコマイシンと比較した(表5)。化合物はビフィドバクテリウム属およびバクテロイデス属に対して低い効力を有することが明らかとなり、したがってこれらはバンコマイシンとは異なり、治療的用量レベルで腸菌叢に著しい効果を持たないであろうとはっきり想定することができる。
【0285】
(表5)腸菌叢中の一般的な生物に対するB型ランチビオティックの活性

【0286】
実施例5:人工胃および腸液中でのB型ランチビオティックの安定性
本明細書において提供するランチビオティック型化合物は、ナイシンなどのA型ランチビオティックと比べて酵素分解に対する高い安定性を有する可能性がある。特に、化合物はA型ランチビオティックと比べて腸液に対する改善された安定性を有する可能性がある。
【0287】
ナイシン、メルサシジン、化合物Iおよび化合物IIIを、胃内での酵素消化に対するそれらの感受性について試験した。ナイシン、メルサシジンおよび化合物IIIを、腸内での酵素消化に対するそれらの感受性について試験した。SGFおよびSIFは人工胃液および人工腸液のための標準USP溶液に基づいており、それらの活性をウシ血清アルブミンに対して確認した(Hilger et al, Clin. Exp. Immunol. 2001, 123, 387-94)。化合物をSGFまたはSIF中、37℃でインキュベートし、それらの濃度を分析用HPLC(210nmでUV検出)で定量した。各化合物の分解の可能性を、ミクロコッカス ルテウス(Micrococcus luteus)に対するインビトロ抗菌活性を測定することでも定量的に追跡した。
【0288】
図4は、人工胃液中の(a)ナイシンおよびメルサシジンならびに(b)化合物IおよびIIIの濃度を、時間の関数として示している。試験した化合物はSGF中で認めうる分解を示さなかった。
【0289】
対照的に、図5(a)はナイシンがSIF中で速やかに分解され、半減期が約15分であったことを示している。この媒質中でのナイシンの急速な分解は、化合物を注意深く製剤することにより分解酵素から保護することができない限り、結腸感染を処置するためのナイシンの臨床上の有用性が非常に限られるとの知見を裏付けるものである。
【0290】
図5(b)は、化合物IIIがSIF中で基本的に安定であり、これらの化合物にとって、代謝的不安定は結腸のC.ディフィシレ感染症を処置する上でそれらの有効性に影響をおよぼす因子とはならないであろうことも示している。HPLCから得た濃度データはM.ルテウスに対するインビトロ活性によって実証され、実験経過中にメルサシジンおよびデオキシアクタガルジンBの活性は未変化で保持された。
【0291】
実施例6:B型抗生物質のインビボでの安定性
腸クロストリジウム ディフィシレ感染症を経口投与した非吸収抗生物質で処置するためには、化合物が、感染部位、典型的には結腸において高濃度を達成しうるように、消化酵素および腸菌叢による代謝に対して抵抗性であることが非常に重要である。胃液および腸液のインビトロモデルは化合物の胃腸での安定性を早期に示すことができるが、インビボ実験は化合物が感染部位に到達したという、より直接的な証拠を提供しうる。
【0292】
雄Sprague-Dawleyラットに化合物Iを100mg/kgで経口投与した。糞尿を48時間にわたり2バッチ(投与後24時間と48時間)で回収した。血液試料を最初の24時間の様々な時点で採取した。
【0293】
親化合物についての様々な生物試料の分析により、化合物Iの少なくとも35%は糞便中に未変化で排出されることが示され、B型ランチビオティックの高い結腸濃度が得られることが明らかとなった。経口投与後に血漿または尿から回収された材料はなく、この結果は低い胃腸吸収と一致していた。
【0294】
本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明の方法および組成物において様々な改変および変更を加えうることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、それらが添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内であることを条件として、本発明の改変および変更を対象とすることが意図される。
【0295】
引用文献
下記の引用文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式の化合物またはその薬学的に許容される塩:

式中、
X1は残基がLeu;Val;またはIleであることを示し;
X2は残基がLeu;Val;またはIleであることを示し;
R1は少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されているアルキルまたはヘテロアルキル基を表し、かつR2は水素、または少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されていてもよいアルキルもしくはヘテロアルキル基を表すか、あるいはR1およびR2は窒素原子と一緒になって、少なくとも1つのヒドロキシル置換基を有する複素環基を表し、ここで複素環基は任意に1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含み;
Zはアミノ酸残基、-NR3R4、-NR5COR6、-NR5C(O)OR6;-NR5SOR6、-NR5SO2R6;-NR5C(S)NR6R7、-NR5C(NR8)NR6R7、または-N=R9であり、ここでR3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、独立に水素であるか、またはR9が水素ではないとの条件で、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルから選択される、置換されていてもよい基であり;
Yは-S-または-S(O)-である。
【請求項2】
Zが-NH2、アミノ酸または-NR5COR6である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
ZがAla、Ile-、Lle、Lys-、Phe-、Val-、Glu-、Asp-、His-、Leu-、Arg-、Ser-およびTrp-の群より選択されるアミノ酸であり、該アミノ酸がD-またはL-配置である、請求項1または請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Zが-NR5COR6であり、かつR5が水素である、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
R2が水素である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
X1がLeuであり、かつX2がValもしくはIleであるか;またはX1がValであり、かつX2がValもしくはIleである、 前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項7】
R1が少なくとも1つのヒドロキシル置換基で置換されているC1-7アルキル基である、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項8】
R1が1、2または3つのヒドロキシル基置換基を有する、前記請求項のいずれか一項記載の化合物。
【請求項9】
R1が下記からなる群より選択される、請求項1から6のいずれか一項記載の化合物:

式中、*は窒素原子への結合点を示す。
【請求項10】
R1が-CH2CH2OHである、請求項1から8のいずれか一項記載の化合物。
【請求項11】
R1が下記からなる群より選択される、請求項1から6のいずれか一項記載の化合物:


【請求項12】
下記からなる群より選択される、請求項1記載の化合物:
化合物I:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド;
化合物II:デオキシ-アクタガルジンB N-[4-ブタノールアミン]モノカルボキサミド;
化合物III:アクタガルジンN-[2-エタノールアミン]モノカルボキサミド;
化合物IV:デオキシ-アクタガルジンB(3-アミノ-1,2-プロパンジオール)モノカルボキサミド;
化合物V:デオキシ-アクタガルジンB(2-アミノ-1,3-プロパノール)モノカルボキサミド;
化合物VI:デオキシ-アクタガルジンB[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン]モノカルボキサミド;
化合物VII:デオキシ-アクタガルジンB(1-アミノ-2-プロパノール)モノカルボキサミド;
化合物VIII:デオキシ-アクタガルジンB(1-アミノ-3-プロパノール)モノカルボキサミド;
化合物IX:(L)-フェニルアラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物X:(L)-トリプトファニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XI:(L)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XII:(D)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XIII:(L)-イソロイシル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XIV:(L)-ロイシニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XV:N-フェニルアセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XVI:N-アセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XVII:N-マンデリルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XVIII:デオキシアクタガルジンB(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)モノカルボキサミド;
化合物XX:デオキシ-アクタガルジンB N-[2-ヒドロキシ-2-フェニルエチルアミン]モノカルボキサミド;
化合物XXI:デオキシ-アクタガルジンB(L-セリンメチルエステル)モノカルボキサミド;
化合物XXII:デオキシアクタガルジンB(N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン)モノカルボキサミド;
化合物XXIII:デオキシ-アクタガルジンB(2-ヒドロキシピペラジン)モノカルボキサミド;
化合物XXX:(L)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XXXI:(D)-アラニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XXXII:(L)-イソロイシニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XXXIII:(L)-ロイシニル-(O)-デオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XXXIV:N-フェニルアセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;
化合物XXXV:N-アセチルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド;および
化合物XXXVI:N-マンデリルデオキシアクタガルジンB(エタノールアミン)モノカルボキサミド。
【請求項13】
1、2、3または4つのアミノ酸が別のアミノ酸で置換されている、請求項1から12のいずれか一項記載の化合物の変異体。
【請求項14】
1、2、3または4つのアミノ酸が化合物の2、3、4、5、8、10、11、13、15、16または18位から選択される位置にある、請求項13記載の変異体。
【請求項15】
前記請求項のいずれか一項記載の化合物または変異体および薬学的に許容される担体または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項16】
治療において用いるための、請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物、請求項13もしくは14のいずれか一項記載の変異体、または請求項15記載の薬学的組成物。
【請求項17】
対象の微生物感染症の処置または予防において用いるための、請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物、請求項13もしくは14のいずれか一項記載の変異体、または請求項15記載の薬学的組成物。
【請求項18】
対象の微生物感染症の処置または予防のための薬剤の調製における、請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物、請求項13もしくは14のいずれか一項記載の変異体、または請求項15記載の薬学的組成物の使用。
【請求項19】
対象の微生物感染症の処置または予防のための方法であって、該対象に請求項1〜12のいずれか一項記載の化合物、請求項13もしくは14のいずれか一項記載の変異体、または請求項15記載の薬学的組成物を投与する段階を含む方法。
【請求項20】
微生物感染症が細菌感染症である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
細菌感染症が腸球菌(Enterococcus)属、連鎖球菌(Streptococcus)属、ブドウ球菌(Staphylococcus)属またはクロストリジウム ディフィシレ(Clostridium difficile)感染症である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
細菌感染症がクロストリジウム ディフィシレ感染症である、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−533696(P2010−533696A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516583(P2010−516583)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002465
【国際公開番号】WO2009/010765
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(508215762)ノヴァクタ バイオシステムズ リミティッド (6)
【Fターム(参考)】