説明

抗菌組成物

本発明は、クロルヘキシジンおよびペンタン−1,5−ジオールを含む抗菌組成物に関する。この組成物を用いて、微生物と闘うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、クロルヘキシジンおよびペンタン−1,5−ジオールを含む抗菌組成物に関し、さらに微生物と闘うための該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物と闘う理由によって、異なる方法で微生物と闘うことができる。目的が微生物の増殖を防止するため、微生物のさらなる増殖を抑制するため、または微生物を減少させて除去するためであるかによって、アプローチは異なる。さらに、このアプローチは、微生物が位置する場所、たとえば液体中、表面上、哺乳類の体内などによって異なってくる。
【0003】
米国特許出願公開第2004/0191274(A1)は、局所用組成物を開示する。この組成物は、消毒剤および/または殺菌剤として使用されることができる。開示されたこの局所用組成物は、C1〜C4アルコールうちの少なくとも1つ、クロルヘキシジンなどの少なくとも1つの抗菌物質、およびポリエチレングリコールなどの少なくとも1つの皮膚軟化剤を含む。
【0004】
中国公開特許第1130020号、Tawil,G.G.et al Alexandria Journal of Pharmaceutical Sciences,1988,2(1),58−60およびFrank M. von et al Pharmaceutische Industrie,1991,53(5) 512−516、これらすべては、クロルヘキシジンとプロピレングリコールの組み合わせを開示している。Frank M.von et alは、クロルヘキシジンとプロピレングリコールの間の組み合わせにおいて何ら相乗作用が見出すことができないと結論付けている。反対に、Tawil,G.G.et alの以前の知見では、プロピレングリコールがクロルヘキシジンの殺菌作用を促進するはずであると述べている。しかしながら、Tawil,G.G.et alは、単体で検査を行なった際のプロピレングルコールのデータを提示していない。日本公開特許第2003267862号は、クロルヘキシジンと1,3−ブタンジオールの組み合わせを開示している。
【0005】
国際公開第07/063065号は、哺乳類からの臭い、たとえば尿、月経、糞便、下腿潰瘍と褥瘡性潰瘍由来の体液、血液および汗からの臭いなどを減少させるならびに/または除去するためにペンタン−1,5−ジオールを含む組成物の使用を開示している。さらに、国際公開第07/063065号は、哺乳類からの臭い、たとえば尿、月経、糞便、下腿潰瘍と褥瘡性潰瘍由来の体液、血液および汗からの臭いを減少させるならびに/または除去するためにペンタン−1,5−ジオールを含む吸収製品を開示している。
【0006】
抗菌性を有することが周知の種々の組成物および化合物がある。
【0007】
抗菌性を有することが周知の化合物の一例としては、プロパン−1,2−ジオール(プロピレングリコール)があり、該プロピレングリコールは皮膚科学で微生物と闘うために広く使用されているジオールである。プロピレングリコールほど広く使われていないが、ペンタン−1,5−ジオールも、皮膚科学では微生物と闘うために用いられている。
【0008】
国際公開第04/112765号によれば、ペンタン−1,5−ジオールの抗菌効果は、他の低分子量の脂肪族ジオール類に共通であると思われる。さらに、ペンタン−1,5−ジオールの使用は、細菌の多耐性菌株に対して効果があることが開示されている。
【0009】
クロルヘキシジンは、化学消毒剤である。クロルヘキシジンは、グラム陽性およびグラム陰性の両微生物に対して殺菌性がある。さらに、クロルヘキシジンは静菌性である。この作用機序は膜破壊であって、以前に考えられていたようなATPアーゼ不活性化ではないと考えられている。クロルヘキシジンは、一般的な皮膚洗浄のため、たとえば術前皮膚処置のための手術時スクラブ式手洗いで使用される。クロルヘキシジンは、作用持続性が長く、低毒性である。クロルヘキシジンに対する皮膚敏感性が報告されてきた。また、クロルヘキシジンは、高濃度で神経毒性になる可能性があるため、その効果を維持しつつ、クロルヘキシジンの濃度を低下させることが有利となるであろう。
【0010】
抗生物質に対する細菌の多耐性は、ますます一般的になってきている。保健セクター部門では、今日、従来の抗菌剤を将来使用することに関しての懸念が世界的に高まっている。代替法およびアプローチを用いて、効果的な抗菌剤を製造する必要がある。
【0011】
したがって、それを効果的に用いて微生物を不活性化することができる新しい抗菌組成物を特定する医療ニーズが高まっている。特に、抗生物質に対して耐性を持つようになる細菌、ウイルスおよび真菌などの微生物のリストが増えている。さらに、抗生物質製剤で使用される種々の抗生物質または防腐剤成分に対してアレルギーを起こす個体群が増加し、従来の技術の代替案として用いられる新規の組成物のニーズを引き起こしている。
【0012】
新規の抗生物質を見つけることに加えて、周知の抗菌性化合物の新規の相乗混合物を特定することも、極めて望ましい。単体で投与されるとき、いくつかの既知の抗生物質は、適用される用量で副作用を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【0013】
したがって本発明は、0.000001〜5重量%のクロルヘキシジンと、1〜75重量%のペンタン−1,5−ジオールとを含む組成物を提供することによって、上述の欠陥のうちの1つ以上を緩和する、軽減する、回避するまたは除去することを追求する。さらに、本発明の種々の実施形態は、グラム陽性およびグラム陰性の細菌、酵母、カビおよび皮膚糸状菌を含む真菌、ならびにウイルスからなる群から選択される微生物、特に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)およびアクネ菌(P.acnes)を不活性化するためにクロルヘキシジンとジオールとを含む組成物の使用に関する。
【0014】
本発明の有利な特徴は、従属請求項で定義する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲と関連して、「C3〜C8アルカンジオール」は、3〜8の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の飽和炭化水素を含む有機化合物を意味することを意図し、この有機化合物は異なる炭素原子に結合される2つのヒドロキシル基を有する。このC3〜C8アルカンジオールの例としては、以下を含むがこれらに限定されない:プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、2−メチルプロパン−1,2−ジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、2−ヒドロキシメチル−1−プロパノール、ペンタン−1,2−ジオール、ペンタン−2,3−ジオール、2−ヒドロキシメチル−1−ブタノール、2−メチルブタン−1,2−ジオール、3−メチルブタン−1,2−ジオール、2−メチルブタン−1,3−ジオール、3−メチルブタン−1,3−ジオール、2−メチルブタン−1,4−ジオール、ヘキサン−1,2−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、2−メチルペンタン−1,5−ジオール、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2−メチル−2,4−ペンタン、ヘプタン−1,7−ジオール、ヘプタン−1,2−ジオール、オクタン−1,2−ジオールおよびオクタン−1,8−ジオール。
【0016】
本明細書および添付の特許請求の範囲と関連して、クロルヘキシジンはクロルヘキシジンの種々の形状を含むことを意図する。この形状としては、以下を含むがこれらに限定されない。ジヒドロクロリド、ジアセテートまたはD−ジグルコネートなどのクロルヘキシジン塩類、クロルヘキシジンの溶媒和化合物およびクロルヘキシジンの溶媒和塩類を含まないクロルヘキシジン。
【0017】
本発明の一実施形態は、クロルヘキシジンおよびC3〜C8アルカンジオール(たとえばC3〜C5ジオール)を含む医薬組成物などの組成物に関する。特定の一実施形態では、C3〜C8アルカンジオールは、ペンタン−1,5−ジオール、プロパン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ペンタン−1,2−ジオール、ヘキサン−1,2−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、および2−メチル−ペンタン−2,4−ジオールから選択される。他の特定の一実施形態では、C3〜C8アルカンジオールは、プロパン−1,2−ジオールおよびペンタン−1,5−ジオールから選択される。
【0018】
さらに一実施形態では、以下の実施例によりC3〜C8アルカンジオールは、ペンタン−1,5−ジオールである。
【0019】
クロルヘキシジンをペンタン−1,5−ジオールなどのC3〜C8アルカンジオールと組み合わせると、相乗抗菌効果が達成されることを本発明者は予想した。したがって、クロルヘキシジンと、ペンタン−1,5−ジオールなどのC3〜C8アルカンジオールの両方を含む組成物は、クロルヘキシジンまたはペンタン−1,5−ジオールなどのC3〜C8アルカンジオールのいずれかを同じ濃度で含む組成物よりも高い抗菌効果があることが予想された。
【0020】
クロルヘキシジンとペンタン−1,5−ジオールの間の相乗効果を、具体的に以下の実施例で示す。国際公開第07/063065号は、哺乳類からの臭いを減少させるために使用する場合、ペンタン−1,5−ジオールは消毒剤と組み合わせることができることを開示しているが、可能性のあるいかなる相乗効果についても述べていない。さらに、国際公開第07/063065号は、医薬組成物で使用される前記成分の適切な濃度について述べていない。国際公開第07/063065号によると、少なくとも0.1重量%のペンタン−1,5−ジオールが使用されなければならない。しかしながら、本明細書に開示するように、クロルヘキシジンと組み合わせると、この濃度は、いかなる相乗効果も得るには低すぎる。
【0021】
しかし、クロルヘキシジンと、ペンタン−1,5−ジオール以外の別のC3〜C8アルカンジオールとの組み合わせによっても相乗効果が得られることはおそらくないが、ペンタン−1,5−ジオールは毒性プロフィールが好ましいこと、感受性および皮膚刺激性のリスクが低いことでよく知られているので、ペンタン−1,5−ジオールが好ましい。この相乗抗菌効果のために、各成分を少なく使用しても所望の効果を得ることが可能である。さらに、各成分を少なく用いることによって、各成分は、単体で用いられるよりも副作用および重篤な副作用を引き起こすことが少ない。クロルヘキシジンとペンタン−1,5−ジオールとの両方を含む組成物は、1つの活性成分だけを含む組成物よりも、微生物と闘うためにはより効果的である。
【0022】
どのような理論にも縛られることなく、クロルヘキシジンの作用機序、すなわち脂質膜の破壊は、C3〜C8アルカンジオールの特異的な疎水性によって補助されると想定することができる。特に、ペンタン−1,5−ジオールの疎水性は、この点で著しく適していると思われる。さらに、C3〜C8アルカンジオールの可溶化特性は、これと関連して重要になることもある。あるいは、C3〜C8アルカンジオールの抗菌効果は、クロルヘキシジンに起因する脂質膜の同時破壊によって向上する。別の理論によると、C3〜C8アルカンジオールの抗菌効果の作用機序によって、脂質膜を溶解し、それによって前記脂質膜を破壊するクロルヘキシジンの能力が高まる、またその逆も同様である。この溶解効果およびペンタン−1,5−ジオールの疎水性は、それらの間の相乗効果を最大にする方法でクロルヘキシジンと協同すると思われる。
【0023】
クロルヘキシジンおよびペンタン−1,5−ジオールを含む医薬組成物を治療で使用してもよい。治療で使用するとき、この医療組成物を局所的に投与することができる。この局所的に投与される組成物を用いて、種々の感染症、たとえば皮膚または粘膜に影響を及ぼす感染症を治療することができる。この皮膚の感染症の例としては、膿痂疹、二次感染性アトピー性皮膚炎および二次感染による他の皮膚疾患が挙げられる。クロルヘキシジンおよびペンタン−1,5−ジオールを用いて、たとえば足白癬、体部白癬、爪白癬、皮膚および粘膜のカンジダ感染症などの皮膚真菌感染症および粘膜感染症、ならびにたとえばヘルペス感染症(たとえば口唇ヘルペス)、パピローマおよび皮膚水痘または粘膜感染症などのウイルス感染症を治療することもできる。
【0024】
クロルヘキシジンおよびペンタン−1,5−ジオールを含む医薬組成物を用いて、グラム陽性およびグラム陰性の細菌、酵母と、カビと、皮膚糸状菌とを含む真菌、およびウイルスからなる群から選択される微生物を不活性化することもできる。この微生物の例としては以下を含むが、これらに限定されない:黄色ブドウ球菌、アクネ菌、連鎖球菌(Streptococci)、グラム陰性桿菌、カンジダアルビカンス(Candida albicans)、カンジダグラブラタ(Candida glabrata)、マラセジア(Malassezia)、カビのアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)および皮膚糸状菌の紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、毛瘡白癬菌(T.mentagrophytes)、エピデルモフィトン・フロッコーサム(Epidermophyton floccosum)、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)、パピローマウイルス、ヘルペスウイルスおよびポックスウイルス。クロルヘキシジンとペンタン−1,5−ジオールとを含む組成物は、以下の実施例で開示するように、黄色ブドウ球菌およびアクネ菌に作用する、すなわち全滅させる、闘うまたは防止することに特に効果的であることが示された。
【0025】
局所投与のための組成物は、液体、半液体または固形殺菌製剤、静菌溶液剤または殺菌溶液剤、ローション剤、クリーム剤、石鹸、シャンプー、軟膏、ペースト剤、ウェットタオル、衛生食器、パッチ、おむつまたは類似の個人的な衛生予防用具の形態をとる(または組み入れる)ことができる。
【0026】
皮膚または粘膜への適用を目的とする場合、本発明の実施形態による組成物は、塩化ナトリウム、尿素および乳酸などの等張化剤または吸湿剤、炭酸カルシウムおよび酸化亜鉛などの湿潤剤、着色剤ならびに、エーテル油などの香料の1つまたはいくつかを含んでもよい。本発明の組成物は、陽イオン洗剤、中性洗剤または陰イオン洗剤、特に脂肪酸塩を含んでもよい。
【0027】
クロルヘキシジンおよびC3〜C8アルカンジオール、好ましくはペンタン−1,5−ジオールを含む組成物が好ましく、担体も含む。この担体は、水溶性担体または脂質担体であってもよく、さらに増粘剤を含んでもよい。この増粘剤は、セルロース誘導体、特にメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロースから選択してもよい。本発明のさらなる実施形態によると、担体は脂肪酸塩を含む。
【0028】
本発明の別の実施形態は、上記に開示したように医薬品組成物に関し、該医薬品組成物は、1つ以上の医薬的に許容されるジュバントまたは賦形剤をさらに含む。この医薬組成物は、当技術分野で周知の方法で調製することができ、かつ十分な保存安定性があり、ヒトおよび動物への投与に適している。
【0029】
本明細書に開示するように局所投与される医薬組成物は、当業者にとって容易に理解されるように、軟膏、ローション剤、ペースト剤、クリーム剤、ゲル剤、タルク剤、スプレー剤、溶液剤および乳剤の形状にすることができる。この軟膏、ローション剤、クリーム剤およびゲル剤は、たとえば動物性および植物性の脂肪、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含んでもよい。タルク剤およびスプレー剤は、たとえばラクトース、タルク、ケイ素酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミドの粉末またはそれらの混合物などの賦形剤を含んでもよい。スプレー剤は、クロロフルオロ炭化水素などの推進剤も含んでもよい。溶液剤および乳剤は、たとえば溶剤、可溶化剤、たとえば水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジル安息香酸、プロピレンアルコール、ジメチルホルムアミドなどの乳化剤、たとえば綿実油、ラッカセイ油、トモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油などの油類、グリセロール、グリセロールフォルマール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびたとえばソルビタンなどの脂肪酸エステル、またはそれらの混合物の賦形剤を含んでもよい。
【0030】
本明細書に開示するように医薬組成物を、医薬的有効量で患者に投与することができる。「医薬的有効量」によって、それが投与される状態に関して望ましい効果をもたらすのに十分である用量を意味する。正確な用量は化合物の活性、投与方法、障害の性質および重症度、患者の年齢および体重に依存し、かつ異なる用量が必要になることもある。この用量の投与は、個々の用量単位の形状での単回投与によって、またはいくつかのより小量の用量単位もしく特定の間隔で細分した用量の複数回投与によっての両方で行なうことができる。
【0031】
本発明の目的のための「患者」には、ヒトおよび他の哺乳類の両方を含む。このように、この方法はヒト治療応用および獣医学応用の両方に適用できる。
【0032】
本発明のさらに一実施形態は、少なくとも0.000001重量%(たとえば少なくとも0.00005重量%)のクロルヘキシジンおよび少なくとも1重量%のC3〜C8アルカンジオール(たとえばペンタン−1,5−ジオール)を含む医薬組成物などの組成物に関する。
【0033】
本発明の別の実施形態は、0.000001重量%〜5重量%(たとえば0.00005〜5重量%または0.00005〜1重量%)クロルヘキシジンおよび1〜75重量%(たとえば1〜25重量%、2〜15重量%または3〜15重量%)のC3〜C8アルカンジオール(たとえばペンタン−1,5−ジオール)を含む医薬組成物などの組成物に関する。
【0034】
本発明の別の実施形態は、少なくとも0.00001重量%クロルヘキシジンおよび少なくとも3重量%のペンタン−1,5−ジオールを含む医薬組成物などの組成物に関する。低い濃度を用いることも可能であるが、抗菌効果はこれらの濃度でまたはほぼこれらの濃度でより明白である。
【0035】
本発明の別の実施形態は、少なくとも0.0001重量%クロルヘキシジンおよび少なくとも5重量%のペンタン−1,5−ジオールを含む医薬組成物などの組成物に関する。
【0036】
より高い濃度は副作用のリスクを増加させる可能性があるので、本発明の別の実施形態は、0.0001重量%〜5重量%(たとえば0.001〜2.5重量%)のクロルヘキシジンおよび3〜25重量%(たとえば5〜15重量%)のペンタン−1,5−ジオールを含む医薬組成物などの組成物に関する。
【0037】
本発明の別の実施形態は、少なくとも0.001重量%クロルヘキシジンおよびC3〜C8アルカンジオール(たとえばペンタン−1,5−ジオール)を含む医薬組成物に関する。
【0038】
本発明の別の実施形態は、クロルヘキシジンおよび少なくとも2重量%のC3〜C8アルカンジオール(たとえばペンタン−1,5−ジオール)を含む医薬組成物に関する。
【0039】
本発明の別の実施形態は、クロルヘキシジンおよび少なくとも5重量%のC3〜C8アルカンジオール(たとえばペンタン−1,5−ジオール)を含む医薬組成物に関する。
【0040】
クロルヘキシジンおよびペンタン−1,5−ジオールは、組み合わせると、以下の実施例で示すように相乗抗菌効果をもたらす。これらの相乗効果は、可能な限りのそれぞれの化合物の低い量を使用しても、依然として所望の効果をもたらす。クロルヘキシジンとペンタン−1,5−ジオールの組み合わせは、種々の微生物の増殖を抑制するのに効果的である。この微生物は、細菌、真菌およびウイルスを含む。この細菌には黄色ブドウ球菌およびアクネ菌が含まれるがこれらに限定されない。
【0041】
クロルヘキシジンと同様に、クロルヘキシジンおよびC3〜C8アルカンジオールを含む組成物も、たとえば術前皮膚処置のための手術時スクラブ式手洗いなどの一般的な皮膚洗浄のために使用することができる。この組成物を用いることによって達成される消毒は、クロルヘキシジンだけを使用する場合よりもより効果的である。さらに、皮膚に塗布すると、ジオールの周知の保水効果により、皮膚にとって最高のモイスチャライザーがもたらされ、したがってこの処置の不快感を少なくすることとなる。
【0042】
さらに、クロルヘキシジンおよびC3〜C8アルカンジオールを含む組成物は、他のタイプの消毒および洗浄で使用してもよい。限定することなくこの消毒は、たとえば床、壁、テーブルトップ、ベンチトップ、テーブルリーフおよび手術器具などの種々の表面の消毒処置が挙げられる。この消毒は、オートククレーブと組み合わせることも可能であり、またはオートクレーブと置き換えることも可能である。一実施形態では、この消毒は皮膚の消毒を含むが、消毒に関する他の実施形態は、人体または動物の体の一部の消毒を除外する。人体または動物の体の一部の消毒を除くこの消毒は、治療法と区別されることになる。
【0043】
クロルヘキシジンおよびC3〜C8アルカンジオールを含む組成物を用いて動物の体または人体の一部でない表面を消毒および/または洗浄する一実施形態では、C3〜C8アルカンジオールの含有量は、1〜95重量%であってもよく、およびクロルヘキシジンの含有量は0.000001%〜10重量%であってもよい。
【0044】
本発明は特定の例示的な実施形態に関して上述したが、本明細書に記載する特定の形状に限定することを意図するものではない。むしろ、本発明は添付の請求項によってのみ限定され、上述の特定の実施形態以外の実施形態も、添付の特許請求の範囲内で同等に可能である。
【0045】
特許請求の範囲では、「含む(comprises/comprising)」という用語は、他の種またはステップの存在を除外するものではない。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれることもあるが、これらの特徴を組み合わせ得ることも有利であり、かつ異なる請求項に含むことは、特徴の組み合わせが実行可能でないおよび/または有利でないことを暗示するものではない。さらに、単数引用は、複数を除外しない。「1つ」、「第1」、「第2」などの用語は、複数を除外しない。
【実施例】
【0046】
以下の実施例は、本発明をさらに説明することを意図するだけであって、添付の請求項によって定義されるように、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。

実施例1.ペンタン−1,5−ジオールおよびクロルヘキシジンの黄色ブドウ球菌に対するMIC
【0047】
ペンタン−1,5−ジオールおよびクロルヘキシジンの黄色ブドウ球菌に対する最小阻止濃度(MIC)は、6×106(20μlをDST寒天平板上に塗布した)の細菌濃度を用いて決定した。結果を以下の表1および表2に示す。

[表1]ペンタン−1,5−ジオールの黄色ブドウ球菌およびアクネ菌に対するMIC
【表1】

a:+++:いかなるクロルヘキシジンおよび/またはペンタン−1,5−ジオールも含まない対照の平板上での増殖と同じ増殖
++:対照と比較して増殖が減少
+:極めて弱い増殖
−:増殖なし

[表2] グルコン酸クロルヘキシジンの黄色ブドウ球菌に対するMIC
【表2】

実施例2.クロルヘキシジンと組み合わせたペンタン−1,5−ジオールの黄色ブドウ球菌に対するMIC
【0048】
クロルヘキシジンと組み合わせたペンタン−1,5−ジオールの黄色ブドウ球菌に対する最小阻止濃度(MIC)は、6×106(20μlをDST寒天平板上に塗布した)の細菌濃度を用いて決定した。結果を以下の表3に示す。

[表3]グルコン酸クロルヘキシジンと組み合わせたペンタン−1,5−ジオールの黄色
ブドウ球菌に対するMIC
【表3】

【0049】
表1〜3に示すように、ペンタン−1,5−ジオールとグルコン酸クロルヘキシジンとの組み合わせでは明らかな相乗抗菌効果がある。0.00005%以下の濃度のクロルヘキシジンまたは8%以下の濃度のペンタン−1,5−ジオールのいずれも黄色ブドウ球菌に対して効果がないが、5%以上のペンタン−1,5−ジオールと0.00005%クロルヘキシジンの組み合わせは効果がある。さらに、それぞれ0.00001%と7%の低濃度でのクロルヘキシジンおよびペンタン−1,5−ジオールも、組み合わせると効果がある。

実施例3.ペンタン−1,5−ジオールおよびクロルヘキシジンのアクネ菌に対するMIC
【0050】
ペンタン−1,5−ジオールおよびクロルヘキシジンのアクネ菌に対する最小阻止濃度(MIC)は、6×106(20μlを血液寒天平板上に塗布した)の細菌濃度を用いて決定した。結果を以下の表4および表5に示す。

[表4]ペンタン−1,5−ジオールのアクネ菌に対するMIC
【表4】

[表5]グルコン酸クロルヘキシジンのアクネ菌に対するMIC
【表5】

実施例4.クロルヘキシジンと組み合わせたペンタン−1,5−ジオールのアクネ菌に対するMIC
【0051】
クロルヘキシジンと組み合わせたペンタン−1,5−ジオールのアクネ菌に対する最小阻止濃度(MIC)は、6×106(20μlを血液寒天平板上に塗布した)の細菌濃度を用いて決定した。結果を以下の表6に示す。

[表6]グルコン酸クロルヘキシジンと組み合わせたペンタン−1,5−ジオールのアク
ネ菌に対するMIC
【表6】

【0052】
表4〜6に示すように、グルコン酸クロルヘキシジンとペンタン−1,5−ジオールとの組み合わせでは明らかな相乗抗菌効果がある。0.00005%以下の濃度のクロルヘキシジンまたは5%以下の濃度のペンタン−1,5−ジオールのいずれもアクネ菌に対して効果がないが、3%以上のペンタン−1,5−ジオールと0.00005%クロルヘキシジンの組み合わせは効果がある。

実施例5.クロルヘキシジンと組み合わせたペンタン−1,5−ジオールの化膿連鎖球菌(S. pyogenes)A CCUG 4208に対するMIC
【0053】
クロルヘキシジンと組み合わせたペンタン−1,5−ジオールの化膿連鎖球菌A CCUG 4208に対する最小阻止濃度(MIC)は、6×107(20μlを血液寒天平板上に塗布した)の細菌濃度を用いて決定した。結果を以下の表7および表8に示す。

[表7]グルコン酸クロルヘキシジンおよび1,5−ペンタンジオールの化膿連鎖球菌に
対するMIC
【表7】

陽性対照(物質を含まない寒天平板)は、+++に相当するMIC値を示した。

[表8]グルコン酸クロルヘキシジンと組み合わせたペンタン−1,5−ジオールの化膿
連鎖球菌に対するMIC
【表8】

【0054】
表7および表8に示すように、グルコン酸クロルヘキシジンとペンタン−1,5−ジオールとの組み合わせでは明らかな相乗抗菌効果がある。0.0005%以下の濃度のクロルヘキシジンまたは6%以下の濃度のペンタン−1,5−ジオールのいずれも化膿連鎖球菌に対して効果がないが、4%以上のペンタン−1,5−ジオールと0.00001%クロルヘキシジンの組み合わせは効果がある。

実施例6.クロルヘキシジンと組み合わせたペンタン−1,5−ジオールのMIC
【0055】
グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)溶液、20%の水、C9394−25ML(Sigma、St.Louis, USA)およびPD(BASF AG,Ludwigshafen、Germany)を試験で用いていて、以下の参考菌株を検査した:カンジダアルビカンス(CCUG 5594)、黄色ブドウ球菌(CCUG 17621)およびアクネ菌(CCUG 1794)。
【0056】
CHGおよびペンタン−1,5−ジオール(PD)の最小阻止濃度を、寒天平板希釈アッセイ法によって決定した。各化合物の一連の希釈物は、アクネ菌の場合には血液寒天培地で、カンジダアルビカンスおよび黄色ブドウ球菌の場合には診断感受性試験(DST)寒天培地(Oxoid,Basingstoke,UK)で調製した。各薬剤による希釈シリーズは、48〜50℃で新たに調製した寒天で行なった。最終濃度範囲は、以下の通りであった:CHG溶液、0.00001〜1%(w/v)およびPD、1〜30%(v/v)。調製した平板を凝固させて、直ちに使用した。
【0057】
各微生物について、血液寒天上で微生物を増殖させることによって種菌を調製した。コロニーをリン酸緩衝食塩水(PBS)中で懸濁せて、カンジダアルビカンスおよびアクネ菌の場合は、およそ6×106 CFU/mLに、黄色ブドウ球菌の場合は、6×105 CFU/mLに懸濁液を調整した。寒天平板に20μlスポットで播種して、カンジダアルビカンスおよび黄色ブドウ球菌の場合は1日、アクネ菌の場合は3日間インキュベートした。次いで、分離株の増殖を阻害している化合物の最低濃度としてMICを決定した。
【0058】
最初に、CHGおよびPDのそれぞれのMICを微生物ごとに決定した。次いで、一連のCHGとPDの組み合わせの濃度を微生物ごとに検査して、相乗作用の活性があったかどうかを決定した。相乗効果の定義は、以下の通りである:「効果とは、2種類の薬物の作用の合計(たとえば式:1+1...)よりもより大きい場合」各分離株を2回検査した。
【0059】
CHGは、すべての微生物に対して効果的であった(表9)。CHGのMICは、カンジダアルビカンスに対して0.0005(w/v%)であり、黄色ブドウ球菌およびアクネ菌に対して0.0001(w/v%)であった。
【0060】
PDは、カンジダアルビカンス、黄色ブドウ球菌およびアクネ菌に対してそれぞれ5、9および6(v/v%)の活性を示した。CHGのMICは、カンジダアルビカンスに対しての1×10-4、黄色ブドウ球菌に対して6×10-5、およびアクネ菌に対して9×10-5の因数を有するPDよりも非常に低かった(表9)。
【0061】
CHGとPDを組み合わせると、それらのそれぞれのMICよりも低い濃度では、それらの抗菌作用が増加した。カンジダアルビカンスの増殖を完全に抑制するために、CHGのMICは0.0005〜0.00005(w/v%)まで、PDのMICは5〜3(v/v%)まで減少した。黄色ブドウ球菌のために、CHGのMICは0.0001〜0.00001(w/v%)まで、PDのMICは9〜8(v/v%)まで減少した。アクネ菌の増殖を完全に抑制するために、CHGのMICは0.0001〜0.00005(w/v%)まで、PDのMICは6〜3(v/v%)まで減少した(表9)。

[表9]カンジダアルビカンス、黄色ブドウ球菌およびアクネ菌に対して寒天希釈法に
よるグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)(w/v%)およびペンタン−1,5−ジオール(PD)(v/v%)の単体および組み合わせの最小阻止濃度(MIC)。比率は、CHGとPDの単体および組み合わせのMICの減少を示す。
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロルヘキシジンおよびペンタン−1,5−ジオールを含む抗菌組成物であって、クロルヘキシジンの量が0.000001〜5重量%であり、かつペンタン−1,5−ジオールの量が1〜75重量%である組成物。
【請求項2】
クロルヘキシジンの量が0.00001〜5重量%であり、かつペンタン−1,5−ジオールの量が3〜25重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
クロルヘキシジンの量が0.001〜2.5重量%であり、かつペンタン−1,5−ジオールの量が5〜15重量%である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が医薬組成物である、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が局所投与用である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が担体および増粘剤を含む、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
治療で使用するためのものである、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
非治療的な消毒で使用するためのものである、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
感染症の治療で使用するためのものである、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記感染症が皮膚に影響を及ぼす感染症である、請求項9に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−527347(P2011−527347A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518682(P2011−518682)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050854
【国際公開番号】WO2010/005378
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(511016383)
【Fターム(参考)】